JP2015507916A - グルタミン酸安定化インスリン類似体 - Google Patents

グルタミン酸安定化インスリン類似体 Download PDF

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Abstract

【解決手段】 インスリン類似体は、酸性2残基伸長GluB31−GluB32を含有するB鎖ポリペプチド、及び任意で、酸性置換GluA8を含有するA鎖ポリペプチド、またさらに任意でPheB24の非標準型改変を有する。その類似体は、皮下注射または注入後のインスリン類似体製剤の吸収率を向上させることが当技術分野で公知である、さらなるB鎖置換もまた含有しても良い。その類似体は、ヒトインスリンなどの哺乳類インスリンの類似体であっても良い。そのようなインスリン類似体をコードしている核酸もまた、提供される。患者を治療する方法は、生理的に有効な量のインスリン類似体または生理的に許容可能なその塩を患者に投与する工程を有する。その類似体は、速効性特性を維持しつつ、高濃度で投与されうる。半合成の方法は、非標準型アミノ酸置換による内因性トリプシン部位の改変を用いて、無保護のオクタペプチドを使用する。【選択図】 なし

Description

連邦政府により後援された研究または開発に関する供述
本発明は、National Institutes of Healthにより助成金第DK40949号及び第DK074176号のもと授与された、共同契約下の政府支援でなされた。米国政府は、本発明に対して一定の権利を有しうる。
本発明は、より高い熱力学的安定性、より高い生物学的活性、または医薬製剤において通常使用されるより高いポリペプリド濃度でのより速い薬物動態などの増強された薬学的特性を示す、ポリペプチドホルモン類似体に関する。本発明は、脊椎動物の代謝を制御し、また糖尿病の治療のためにヒト及び他の哺乳類において幅広く用いられる、二本鎖のポリペプチドホルモンであるインスリンに関係する。インスリンの配列は、図1に概略図形式で示されている。個々の残基は、アミノ酸(一般に標準的な三文字符号を用いて)、鎖、及び配列位置(一般に上付き文字として)の識別により表示される。
A8、B31、及びB32の位置において提供される3個のグルタミン酸残基は、pHが医薬製剤において望ましい6.5〜8.0の範囲にある溶液に溶解された場合、インスリン分子の、及びその亜鉛安定化六量体の実効負電荷を増加させる。本発明は、(i)インスリン類似体の熱力学的安定性が野生型インスリンのそれと比べ同程度またはより高く、(ii)生物学的有効性が野生型インスリンのそれと比べ同程度またはより高く、(iii)濃度U−100での野生型ヒトインスリンと比較して速効性の薬物動態(PK)及び薬力学的(PD)特性が保持され、かつ(iv)その分裂促進特性が野生型ヒトインスリンまたは現在臨床使用されているインスリン類似体と同程度であるように、1mlあたり100単位(U−100)より高い濃度でのインスリン類似体の製剤化を可能にする。
治療薬及びワクチンを含む非標準型タンパク質の工学的操作は、幅広い医学的及び社会的な有益性を有しうる。医学的な有益性の一例は、タンパク質の薬物動態特性の最適化であろう。さらなる社会的な有益性の一例は、高いタンパク質濃度での製剤化に脆く、またその製剤のPK/PD特性の低下を伴うタンパク質の工学的操作であろう。さらなる社会的な有益性の一例は、長期化された貯蔵寿命を有するタンパク質製剤である。治療用タンパク質の一例は、インスリンにより提供される。中性pHにおいてより大きい実効負電荷、及び任意で非標準型アミノ酸置換を含有するインスリンの類似体は、原理的には、安定性、生物学的有効性、またはPK/PD若しくはPK/PDの製剤中インスリン濃度に対する依存性に関してより優れた特性を示しうる。後者は、インスリンの高濃度製剤は肥満及び著しいインスリン抵抗性を有する患者に医学的な有益性をもたらしうるため、公衆衛生において特に重要である。そのような患者は、しばしば、アフリカ系アメリカ人女性及びその他の恵まれない少数派民族である。皮下注射後のインスリン吸収の薬物動態により引き起こされる難題は、糖尿病(DM)を有する患者の厳格な血糖管理を実現する能力に影響し、またインスリンポンプの安全性及び成果を制限する。
インスリン抵抗性とは、本ホルモンの典型的な標的組織(脂肪組織、筋肉、及び肝臓)が、正常な血流中インスリン濃度に反応して健常者が示すのと同じ生物学的反応を実現するのに、より高い濃度の血流中インスリンまたはインスリン類似体を必要とする状態である。インスリン抵抗性には、通常2型糖尿病が伴う。特定の医学的な必要性は、肥満に伴うDMを有する一定の患者により、インスリン抵抗性に対する遺伝的素因に伴うDMを有する一定の患者により、及び、リポジストロフィー、コルチコステロイドを用いる治療、または内因性コルチコステロイドの過剰分泌(クッシング症候群)に対する二次的なDMを有する患者により示される、インスリンに対する著しい抵抗性により引き起こされる。著しいインスリン抵抗性を有する患者の数は、先進及び発展途上世界における肥満の世界的流行(「diabesity」症候群へと至る)のため、及び、インスリン抵抗性が異常に深刻でありうるミトコンドリアDNA中の突然変異から生じる一遺伝子性のDMへの認識がますます増加しているため(van den Ouweland, J.M., Lemkes, H.H., Ruitenbeek, W., Sandkuijl, L.A., de Vijlder, M.F., Struyvenberg, P.A., van de Kamp, J.J., & Maassen, J.A.(1992) Mutation in mitochondrial tRNA(Leu)(UUR) gene in a large pedigree with maternally transmitted type II diabetes mellitus and deafness. Nature Genet. 1, 368−71)、増加している。そのような他の点においては多様な患者の亜集団の治療には、一般に大容量の標準インスリン製剤(濃度U−100、通常はインスリンまたはインスリン類似体0.6mM)の皮下注射を必要とする。そのような大容量の注射は、苦痛、及びインスリン作用の開始速度及び持続期間の変動性をもたらしうる。野生型インスリンのU−500製剤(商標Humulin(登録商標)R U−500下で販売、Eli Lilly and Co.)が臨床用途で利用可能であるが、0.6mMから3mMへのインスリン濃度の上昇は、Humulin(登録商標)R U−500(または類似のそのような製品)のPK/PD特性が、プロタミン亜鉛含有インスリン六量体の微結晶性懸濁液のそれに相似するように、インスリン作用の開始遅延及び延長をもたらす。この製剤は長い間、neutral protamine Hagedorn(NPH)と呼ばれてきた。それゆえ、皮下注射による野生型インスリンのU−500製剤の食事前の使用は、血糖管理の効能を減少させ、また低血糖発作の危険性を増加させると予期されるだろう。同様に、Humulin(登録商標)R U−500(または類似のそのような製品)の継続的インスリン皮下注入用装置(CSII、「インスリンポンプ」)での使用は、患者、または血液グルコース濃度の現在または過去の測定値に基づいてインスリン注入速度に有効な調節を施す管理アルゴリズムの能力を妨害し、その結果最適以下の血糖管理及び低血糖発症の危険性の上昇をもたらすと予期されるだろう。
インスリン薬理学の確立した原理は、注射されたインスリン分子の凝集状態を、溜まりからの吸収から毛細血管へ、故に体循環への経時変化と関係づける。一般に、インスリン分子が高分子量複合体へとより凝集するほど、吸収の遅延はより大きく、またインスリン作用はより長く持続する。自身の自己集合性を弱めるインスリン分子中のアミノ酸置換は、野生型ヒトインスリンと比較してより迅速な吸収と関連することが、当技術分野では公知である。例は、ProB28→Aspの置換(insulin aspart、商標Novolog(登録商標)下で販売されているインスリン製品の有効成分、Novo−Nordisk, Ltd)、並びにProB28→Lys及びLysB29→Proの組み合わせ置換(insulin Lispro、商標Humalog(登録商標)下で販売されているインスリン製品の有効成分、Eli Lilly and Co.)により提供される。反対に、その等電点(pI)にpH約5からpH約7への変化を引き起こす、インスリン分子のアミノ酸伸長または化学的改変は、皮下の溜まり中の改変インスリンの等電沈殿をもたらすことが、当技術分野において公知である。そのような高分子量複合体は、基礎インスリン製剤として、延長された吸収を提供する。例は、商標NovoSol Basal(登録商標)下で販売されたインスリン製品(ThrB27がArgで置換され、またThrB30のC末端カルボン酸部位がアミド化された、Novo−Nordiskの生産中止製品)、及びinsulin glargine(商標Lantus(登録商標)下で販売されているインスリン製品の有効成分、B鎖がジペプチドArgB31−ArgB32により伸長された基礎製剤、Sanofi−Aventis, Ltd.)により提供される。(NovoSol Basal(登録商標)及びLantus(登録商標)はそれぞれ、AsnA21の脱アミノ化による化学分解が起こることなく酸性条件(それぞれpH3及びpH4)下で可溶性の製剤化を可能にするため、追加の置換AsnA21→Glyを含有する。)典型的な微結晶性インスリン懸濁液(NPH、セミレンテ、レンテ、及びウルトラレンテ)の延長は、これらの微結晶のそれぞれの生理化学的特性及びそれらの相対的な分解速度を反映しつつ、中間型から持続型の範囲のPK/PD特性を示す。
野生型ヒトインスリンまたは動物インスリンの現在及び過去の製剤を含む上記のインスリン製品は、化学的安定性を実現する手段として、線維形成を避ける手段として、PK/PD特性を調整する手段として、またはこれらの目的の組み合わせを実現する手段として、インスリン分子の自己集合性を利用している、または利用した。しかしそれでも、インスリン自己集合は、好ましくない、または望ましくない特性をもたらすこともまたありうる。Humulin(登録商標)R U−500(または類似のそのような製品)の非最適な延長されたPK/PD特性は例えば、おそらく、製剤中及び皮下溜まり中での六量体−六量体結合の結果である(図2)。実際、レーザー光散乱による生体外での野生型ウシインスリン亜鉛六量体の研究は、0.3〜3mMの濃度範囲において進行中の六量体−六量体結合の証拠を提供した。インスリン製剤の構成及びインスリン類似体の設計の、現在及び過去の方法は、それゆえ、速効性の超高濃度インスリン製剤の開発への解決し難い難関に直面している、及び直面してきた。自己集合性は化学的及び物理的安定性を得るのに必要である一方、0.6mMより高い濃度での進行性の性質は、好ましくないPK/PDの延長をもたらす。それゆえ私たちは、理論とは無関係に、そのPK/PD特性が0.6〜3.0mMの範囲にあるインスリン類似体濃度によって著しくは影響を受けないような、濃度U−100の野生型ヒトインスリンの調節製剤(例えば、Humulin R(登録商標)U−100、Eli Lilly and Co.)と比べ同程度またはより迅速なPK/PD特性を有するインスリン類似体を創案することを試みた。
インスリンの投与は、糖尿病の治療法として長い間確立されてきた。インスリンは、脊椎動物の代謝において中心的な役割を果たす、小さな球状のタンパク質である。インスリンは、21残基を含有するA鎖、及び30残基を含有するB鎖の、2本鎖を含有する。本ホルモンは、膵β細胞内でZn2+安定化六量体として貯蔵されているが、無Zn2+単量体として血流中で機能を果たす。インスリンは、1本鎖前駆体プロインスリンの産物であり、プロインスリンでは連結領域(35残基)がB鎖のC末端残基(残基B30)をA鎖のN末端残基に連接させている。成熟貯蔵顆粒内の亜鉛インスリン六量体の結晶配列は、電子顕微鏡法(EM)により可視化されている。
DMを有する患者におけるインスリン補充療法の主要な目的は、健常人に特有な正常範囲より上または下への逸脱を防止するための、血液グルコース濃度の厳格な管理である。正常範囲より下への逸脱は、即座に現れるアドレナリン様または神経低糖症の症状と関連付けられ、それは重い発作では痙攣、昏睡状態、及び死に至らしめる。正常範囲より上への逸脱は、網膜症、失明、及び腎不全を含む微小血管障害の長期的危険性の上昇と関連付けられている。U−100より高い濃度で製剤化されている場合、野生型ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体の吸収の薬物動態が食後の代謝恒常性の生理的要件と比較してしばしば遅すぎる、長すぎる、及び変動しすぎるため、著しいインスリン抵抗性に伴うDMを有する患者はしばしば最適な血糖の目標に達し損ね、それ故に即時及び長期的両方の合併症の危険性が高まった状態にある。故に、自己集合したインスリンまたはインスリン類似体の濃度が約0.6mMより高くなるにつれ、標準及び速効性インスリン製品の安全性、有効性、及び実世界での利便性は、 PK/PDの延長により制限されてきた。
規制基準を満たすまたは超えるのに十分な化学的安定性及び十分な物理的安定性を有する製剤を実現するための仕組みとして、亜鉛を介したインスリン六量体の集合は確保するが、高度な六量体−六量体の自己集合の度合は縮小させる必要性がある。化学分解は、Asnの脱アミノ化、イソ−Aspの形成、及びジスルフィド架橋の切断などの、インスリン分子内における原子配置の変化を意味する。インスリンの化学分解に対する感受性は、(化学的変性実験により調べられる)その熱力学的安定性と相互関係がある。化学分解に最も敏感な化学種は単量体であるため、その速度は自己集合体内での単量体の隔離により低下する。物理分的解とは線維形成(線維化)を意味し、それはベータシートに富んだ構造に何千も(またはそれより多く)のインスリンプロトマーを含有する線形構造をもたらす非天然型の自己集合である。線維化は、インスリン及びインスリン類似体の室温より高い温度での、製造、貯蔵、及び使用において重大な懸念点である。線維化率は、より高い温度、より低いpH、攪拌、または、尿素、グアニジン、エタノール共溶媒、若しくは疎水性表面の存在で高まる。現在の米国薬物規定は、1%またはそれより高いレベルで線維化が起こるとインスリンが廃棄されることを要する。線維化はより高い温度で亢進するため、DMを有する患者は使用前はインスリンを最適に冷蔵保存しなければならない。インスリンまたはインスリン類似体の線維化は、外部インスリンポンプを使用しているそのような患者にとっては格別な懸念点となりうる。外部インスリンポンプでは、一定間隔で少量のインスリンまたはインスリン類似体が患者の体内へと注射される。そのような使用法においては、インスリンまたはインスリン類似体はポンプ装置内では冷蔵保存されず、インスリンの線維化は体内にインスリンまたはインスリン類似体を注射するのに用いられるカテーテルの遮断をもたらし、その結果潜在的に、血液グルコースレベルの予測不能な変動または危険な高血糖症さえも起こしうる。少なくとも1つの最近の報告が、insulin lispro(KP−insulin、B28及びB29残基が野生型ヒトインスリンのその位置と比較して置き換えられている類似体、商標Humalog(登録商標)下で販売)は、線維化及びその結果生じるインスリンポンプのカテーテルの閉塞に特に敏感であるかもしれないと指摘している。インスリンは、25℃より高い温度において10℃上昇する毎に10倍またはそれより大きい分解率の増加を示す。従って、指針は、<30℃の温度での好ましくは冷蔵での貯蔵を要求している。そのような製剤は一般に、天然のインスリン自己集合体が優勢を有する。
タンパク質線維化の本理論は、線維化の仕組みは部分的に折り畳まれた中間状態を介して進行することを仮定している。その中間状態は次々に凝集し、アミロイド形成核を形成する。本理論においては、天然状態を安定化させるアミノ酸置換が、部分的に折り畳まれた中間状態を安定するまたはしないかもしれず、また天然状態と中間状態の間の自由エネルギー障壁を増加(または減少)させるまたはさせないかもしれない可能性がある。それ故に、本理論はインスリン分子中の与えられたアミノ酸置換が線維化の危険性を増大させるまたは減少させる傾向は、非常に予測不能であることを示している。特に、検出可能な線維化の開始前に観測される時間差は、(化学的変性実験により調べられる)天然状態の単量体の熱力学的安定性の測定値と相互関連しない。所定の置換が天然状態全体及びアミロイド形成性の部分的な折り畳みの両方を安定化させ、そして故に線維化開始を遅延させるうる一方で、別の置換は天然状態は安定化させるがアミロイド形成性の部分的な折り畳みは安定化させず、そして故に時間差には殆どまたは全く影響しないかもしれない。更に他の置換は、天然状態を不安定化させるがアミロイド形成性の部分的な折り畳みを安定化させ、そして故に見かけ上の安定化特性にも関わらず線維化の加速をもたらすかもしれない。
故に、相当する野生型インスリンの活性の少なくとも一部を示し、その化学的及び/または物理的安定性の少なくとも一部を維持しつつ、0.6mMから3.0mMの(一般にUー100からU−500の範囲の製剤濃度に相当する)幅広いインスリン濃度下でDMを治療するための、迅速なPK/PDを示すインスリン類似体への需要がある。
故に、皮下注射後に迅速な吸収を付与するタンパク質濃度範囲及び形での製剤化を可能にするのに十分な化学的及び物理的安定性を有する、亜鉛安定化インスリン六量体を提供するインスリン類似体を提供することは、本発明の一側面である。本発明は、超高濃度インスリン製剤及びインスリン類似体製剤の以前までの限界、即ち、それらが食後の血糖管理を最適化する、またはインスリンポンプでの使用を可能にするのに十分に素早くは効果を示さないこと、という問題に取り組んでいる。本発明の3つのグルタミン酸残基のセット[GluA8、GluB31、GluB32]は、インスリン六量体分解の加速を引き起こすことが当技術分野で公知である、または皮下注射後に同様の剤型の野生型インスリンと比較してより迅速なインスリン類似体の吸収を伴う、B鎖の置換と組み合わせて用いられても良い。
さらに特には、本発明は、(a)位置A8におけるグルタミン酸(Glu)、(b)B鎖のGluB31−GluB32二残基伸長、及び(c)任意で、位置B24における非標準型アミノ酸の組み込みにより改変されたインスリン類似体に関する。B24における任意の非標準型アミノ酸置換は、シクロヘキサニルアラニン、またはフェニルラニン(Phe)の芳香環がハロゲン化された誘導体であっても良い。そのような配列は、皮下注射後のインスリン吸収の迅速性を強化させることが当技術分野において公知である、インスリン類似体のAまたはB鎖中の他の位置において任意で標準型アミノ酸置換を含有しても良い。後者の例は、AspB28(商標Novolog(登録商標)下で販売されている現行のインスリン製品に見られる)または[LysB28, ProB29](商標Humalog(登録商標)下で販売されている現行のインスリン製品に見られる)により提供される。
私たちは、インスリン六量体の0.6mM(標準のU−100製剤)より高いタンパク質濃度において高度な自己会合が起こる傾向を回避することを試みた。この目的を果たすため、私たちは、結晶格子(図2)に可視化されているように、六量体−六量体の境界面に追加的な負電荷を有する側鎖を配置することを試みた。野生型六量体の静電表面が、図3A及び3B(六量体の上部及び底部)に示されている。本発明の類似体は、下記の3つの追加的なグルタミン酸(Glu)残基を含有する。(i)GluB31及びGluB32。insulin glargine(Lantus(登録商標)の有効成分)が(2つの追加的な正電荷を付与する)追加的なB鎖残基ArgB31及びArgB32を含有するのに対し、本発明の類似体は(2つの追加的な負電荷を付与する)酸性残基GluB31及びGluB32を含有する。Lantus(登録商標)により試みられたように、持続型溜まりを形成する中性pHにおける等電沈殿を介するのではなく、本電荷反転はインスリンの等電点を中性から遠ざける方へ低下させる(pI<5)。B鎖のこの酸性の伸長による予測される静電効果が、図3C及び3Dに示されている。(ii)GluA8。静電反発の原理は、A鎖置換ThrA8→Gluを安定化することにより拡張される。B鎖の酸性の伸長と合わせたGluA8による予測される静電効果は、図3E及び3Fに示されている。B31、B32、及びA8における負電荷は、連続する六量体の平たい上部及び下部表面の間に反発を導入することが予測される。本発明はこの理論に依存しないまたは束縛されないが、野生型インスリン六量体の整然とした集合(結晶格子中のように一方が他方の上に積み重ねられる)、及びそのような積み重なりの静電反発が、それぞれ図4A及び4Bに図式的に例証されている。酸性のB31−B32タグはまた、1型IGF受容体(IGF−1R)への分裂促進性の交差結合も弱めることも、また留意されるべきである。 これは、insulin glargine特有のIGF−1R結合の増強とはまた正反対の効果である。
(本発明のインスリン類似体において一斉に用いられる)GluB31、GluB32、及びGluA8の3つの負電荷は、インスリン六量体の二量体または三量体形成表面を不安定かさせ、そして故に同じまたは同様の剤型の野生型インスリンと比較して可溶性の亜鉛含有製剤のより迅速な吸収を付与することが当技術分野において公知である置換と、組み合わせられても良い。そのような置換の例は、AspB28(商標Novolog(登録商標)下で販売されているインスリン製品の有効成分、insulin aspartに見られる)、[LysB28, ProB29](商標Humalog(登録商標)下で販売されているインスリン製品の有効成分、insulin Lisproに見られる)、及び[LysA3,GluB29](商標Apidra(登録商標)下で販売されているインスリン製品の有効成分、insulin Glulisineに見られる)である。しかしながら、3つのグルタミン酸のセット(GluB31、GluB32、及びGluA8)と他の置換または改変との組み合わせは、後者3製品で用いられているB鎖の置換に限定されない。実際に過去十年において、インスリン分子への特定の化学的改変が、目的の適用性を促進するために、そのタンパク質の1つまたは別の特定の特性を選択的に改変することが述べられてきた。組替えDNA時代の初め(1980)には野生型インスリンが多様な治療の状況における使用に最適であると想像されていたが、過去十年におけるインスリン類似体の幅広い臨床利用は、未だ実現していない特定の需要に取り組むためにそれぞれ適合された一揃いの非標準型類似体が、著しい医学的及び社会的有益性を提供するであろうことを提唱する。あるタンパク質中の特定の位置における1つの天然型アミノ酸の別の天然型アミノ酸による置換は、当技術分野では周知であり、また本明細書においては標準型置換と呼ばれる。インスリン中の非標準型置換は、0.6〜3.0mMの範囲のインスリン類似体濃度に応じ、PK/PDを悪化させることなく安定性の向上または吸収の加速の可能性を提供する。本発明の類似体は特に、シクロヘキサニルアラニン(Cha)またはPheB24の芳香環がハロゲン化された誘導体による置換などの、PheB24の非標準型改変を含む。
請求項に係る発明は、位置B24における非標準型アミノ酸置換の任意な組み込みにより、PheB24の置換に関するものを含む以前の設計に関する制限を回避する。これは、大きさ及び形がフェニルアラニンと類似のハロゲンで修飾された芳香性類似体による、芳香性のアミノ酸側鎖の置換により実現される。その類似体はまた、天然型の芳香性側鎖を含有する対応するインスリンまたはインスリン類似体の生物学的活性の少なくとも一部は維持する。非標準型のアミノ酸側鎖(位置B24における2−F−PheB24、2−Cl−PheB24、または2−Br−PheB24、それぞれ、オルト−モノフルオロ−PheB24、オルト−モノクロロ−PheB24、オルト−モノブロモ−PheB24とも呼ばれる)は、単離されたインスリン単量体を著しく安定化させる。インスリン単量体の同様な安定化は、環の水素原子5つのそれぞれがフッ素原子で置き換えられている、ペンタ−フルオロ−Phe24により付与される。非標準型アミノ酸側鎖(位置B24における4−F−PheB24、4−Cl−PheB24、または4−Br−PheB24、それぞれ、パラ−モノフルオロ−PheB24、パラ−モノクロロ−PheB24、パラ−モノブロモ−PheB24とも呼ばれる)は、六量体の分解率をさらに変化させ、また故にインスリン類似体の[GluA8, GluB31, GluB32]ファミリーの速効性特性を増強させるのに含められても良い。B24における非標準型置換はまた、天然様の生物学的活性を可能にするが亜鉛インスリン六量体の分解を促進する非平面かつ非芳香性の環である、シクロヘキサニルアラニンであっても良い。
芳香性アミノ酸フェニルアラニン(Phe)は、位置B24において脊椎動物のインスリン配列の間で保存されている。これはインスリン中の3つのフェニルアラニン残基(位置B1、B24、及びB25)のうちの1つである。構造的に類似しているチロシンは、位置B26に存在する。インスリン単量体中のPheB24の構造的環境がリボンモデルで(図5A)、また空間充填モデルで(図5B)示されている。PheB24の芳香環は、疎水性コアに寄りかかるように(しかし中には入らずに)充填され、B鎖の超二次構造を安定化させると信じられている。PheB24は、典型的な受容体結合表面に位置すると信じられ、また受容体に結合するとすぐに立体構造の変化を指揮すると提案されてきた。PheB24はまた、インスリンの二量体境界面において充填されており、またインスリン六量体の3つの境界面においても同様であると信じられている。インスリン単量体中のその構造的環境は、それらの境界面での構造的環境とは異なる。特に、PheB24の側鎖が得られる周囲の体積は、単量体においての方が二量体や六量体におけるよりも大きい。
一般に球状タンパク質においてそうであるように、インスリンの芳香性側鎖は、隣接する芳香環だけでなく他の正または負の静電ポテンシャル源も巻き込みながら、様々な疎水性及び弱極性相互作用に携わりうる。例は、ペプチド結合における主鎖のカルボニル及びアミド基を含む。芳香性側鎖の疎水性充填は、タンパク質のコア内及びタンパク質間の非極性境界面において起こりうる。そのような芳香性側鎖は脊椎動物のタンパク質間で保存されている可能性があり、構造または機能に対するそれらの重要な寄与を反映している。天然型の芳香性アミノ酸の一例は、フェニルアラニンである。その芳香環系は、平面的な六角形として配置された6つの炭素を含有する。芳香族性とは、それら6つの炭素間の結合配置の集団的特性であり、その環の平面の上及び下のπ電子軌道をもたらす。5つのC−H部分を含有する環の端が部分的な正の静電ポテンシャルを示すのに対し、これらの面は部分的な負の静電ポテンシャルを示す。部分電荷のこの非対称的な分布は、四極子の静電モーメントを生じ、またタンパク質中の他の形式または部分電荷との弱極性相互作用に参加しうる。芳香性の側鎖のさらなる一つの特徴的な特色は、その体積である。この体積の決定要素は、平面環の端における5つのC−H部分の分布の等高線を含む。
PheB24の非標準型改変は、シクロヘキサニルアラニン(Cha)による置換に伴うような平面性及び芳香族性の喪失を含む。他のPheB24の非標準型改変は、芳香属性は維持するが、その静電的特性に変化を生じさせる。PheB24の環中に含有されている1つまたはそれより多い水素原子のハロゲン原子(フッ素、塩素、または臭素、つまりFl、Cl、またはBr)による置換は、これらのハロゲン原子の電気陰性度との関係で、双極子及び四極子の静電モーメントに特徴的な変化を引き起こす。1つのC−H部分の、例えばC−F、C−Cl、またはC−Brによる置換は、その芳香属性を維持することが予測されるであろうが、ハロゲン原子の電気陰性度、及びその結果生じる環の平面の上及び下のπ電子軌道の歪みのため、環内に著しい双極子モーメントをもたらした。C−F部分の大きさが天然型のC−H部分のそれと同程度である(また故に原理的には多様なタンパク質環境において適応される)一方、その局所的な電気陰性度、及び環特有のフッ素誘発性の静電双極子モーメントは、タンパク質内の隣接する原子団と共に好ましいまたは好ましくない静電相互作用をもたらしうる。そのような隣接する原子団の例は、CO−NHペプチド結合単位、ジスルフィド架橋中の硫黄原子の孤立電子対、側鎖カルボキサミド官能基(Asn及びGln)、他の芳香環(Phe、Tyr、Trp、及びHis)、並びに、酸性側鎖(Asp及びGlu)、塩基性側鎖(Lys及びArg)、インスリン製剤に用いられる範囲のpKを潜在的に有する滴定可能な側鎖(His)、滴定可能なN及びC末端の鎖末端、結合した金属イオン(Zn2+またはCa2+など)、及びタンパク質と結合した水分子の形式正及び負電荷を含むが、これに制限されない。
さらに、[GluA8, GluB31, GluB32]の置換セットは、インスリンの分裂促進性が増加しないように、インスリンのI型IGF受容体(IGF−IR)への交差結合を減少させる。そのような類似体が、無亜鉛の製剤に、pH7〜8で、U−100からU−500の濃度で、濃度U−100での野生型ヒトインスリンの標準製剤のそれと比較して同程度またはより迅速で短期のPK/PD特性を維持しながら配合されうることは、本発明のまた別の一側面である。
概して本発明は、GluA8を含有する変異型A鎖と共に、2つのGlu残基(GluB31及びGluB32)により伸長される32残基のB鎖ポリペプチドを有する、インスリン類似体を提供する。1つの例においては、B鎖ポリペプチドは追加的な速効性特性を付与するために[LysB28, ProB29]もまた組み込む。別の実施形態においては、類似体は[LysB28, ProB29]だけでなく、化学的及び物理的安定性を強化するために位置B24において2Br−PheB24もまた含有する。別の実施形態においては、イスリン類似体は、ヒトインスリンの類似体などの哺乳類インスリンの類似体である。
さらにまたは代わりに、インスリン類似体はB鎖の位置29において非標準型アミノ酸置換を含有しても良い。1つの特定の例においては、B29における非標準型アミノ酸はノルロイシン(Nle)である。別の特定の例においては、B29における非標準型アミノ酸はオルニチン(Orn)である。
2残基C末端伸長(GluB31及びGluB32)を含有する32残基B鎖ポリペプチドを有するインスリン類似体をコードしている核酸、または、任意で位置B24もしくはB29もしくは両方において非標準型アミノ酸もさらに組み込むそのような核酸もまた提供される。1つの例においては、非標準型アミノ酸は、核酸配列TAGなどの終止コドンによりコードされている。発現ベクターはそのような核酸を有し、また宿主細胞はそのような発現ベクターを含有しうる。
本発明は、患者を治療する方法もまた提供する。その方法は、生理的に有効な量のインスリン類似体または生理的に許容可能なその塩を患者に投与する工程を有する。そのインスリン類似体または生理的に許容可能なその塩は、上記開示の通り、2残基伸長(GluB31及びGluB32)を組み込むB鎖ポリペプチド、及びGluA8変異型A鎖を含有する。1つの実施形態においては、患者に投与されるインスリン類似体中の2Br−Phe(または他の非標準型アミノ酸)は、位置B24に位置する。さらに別の実施形態においては、インスリン類似体は、ヒトインスリンの類似体などの哺乳類インスリン類似体である。
図1Aは、A鎖及びB鎖、並びに、隣接する二塩基性切断部位(黒円)及びC−ペプチド(白円)と共に示された連結領域を含む、ヒトプロインスリンの配列(配列ID番号1)の概略図である。 図1Bは、インスリン様部分及び無秩序な連結ペプチド(破線)から成る、プロインスリンの構造モデルである。 図1Cは、B鎖中のB24残基の位置を示した、ヒトインスリンの配列(配列ID番号2及び3)の概略図である。 図2は、結晶格子状のインスリン六量体の積み重なりの構造モデルを提供する。(A)亜鉛安定化T亜鉛六量体(側面図)は、六量体1つあたり軸上の2つの亜鉛イオンを含有する(赤紫の球)。A鎖は濃い灰色で、またB鎖は薄い灰色で示されている。3つの六量体のみしか示されていないが、結晶格子中では、連続的な六量体の継続的な積み重なりが疑似無限的な列を生じる。そのような格子の集合は、溶液中の連続的な六量体−六量体相互作用に対するモデルを提供する。(B)境界面領域の拡大(パネルA中の囲み)。(C)六量体−六量体境界面でのGluA4、GluB31、及びGluB32の予想される位置を示す、野生型結晶構造に基づいた対応するモデル。 図3は、静電表面の説明図を提供する。(A及びB)亜鉛六量体としてのその結晶構造に基づく、野生型インスリン六量体の静電表面。赤色は、負の静電ポテンシャルを意味し、青色は正の静電ポテンシャルを意味する。上部及び底部の表面は、パネルA及びBに示されている。(C及びD)B鎖伸長GluB32及びGluB32(緑の棒)を含有する変異型インスリン六量体の、予想される静電表面。その他の色コードは、パネルAと同様である。上部及び底部の表面は、パネルC及びDに示されている。(E及びF)B鎖伸長GluB32及びGluB32(緑の棒)のみならずGluA8(黄色の棒)も含有している変異型インスリン六量体の、予測される静電表面。その他の色コードは、パネルAと同様である。上部及び底部の表面は、パネルE及びFに示されている。 図4は、野生型の六量体−六量体自己会合、及び静電的工学操作による提唱されるその防止方法の概略図を提供する。(A)亜鉛インスリン六量体の連続的な積み重なりの略図(図2中のリボンモデルも見よ)。(B)B鎖残基[GluB31, GluB32](赤色のタグ、六量体1つあたり6つで、うち1つは六量体の後ろに隠されている(灰色))を有する酸性伸長の追加は、静電反発により六量体−六量体の自己会合を防止するように設計されている。これは、U−500製剤においてでさえも、非凝集型六量体の優勢をもたらすことが予測されている。本モデルは、ブタモデルにおけるPD実験により支持されている。 図5Aは、3つのジスルフィド架橋に対するPheB24の芳香性残基を示す、インスリン単量体のリボンモデルである。近接するPheB24(矢印)及びPheB24の側鎖が示されている。その他は、A鎖及びB鎖はそれぞれ薄い及び濃い灰色で、またシステインの硫黄原子は円で示されている。 図5Bは、疎水性コアの端のポケット内のPheB24側鎖を示す、インスリンの空間充填モデルである。 図6は、インスリン類似体の受容体結合実験の結果を示す、一組のグラフである。(上パネル)インスリン受容体(IR−B)のBアイソフォームに対する相対活性は、受容体に結合した125I−標識ヒトインスリンが、増加する濃度のKP−インスリン(■)またはその類似体である[GluB31, GluB32]−インスリン(◆)、[GluA8, GluB31, GluB32]−インスリン(▲)、及び2−Br−PheB24−[GluA8, GluB31, GluB32](▼)により置き換えられる、競合的結合測定法により測定される。(下パネル)I型IGF受容体(IGF−1R)に対する相対活性は、受容体に結合した125I−標識IGF−Iが、増加する濃度のKP−インスリン(■)またはその類似体である[GluB31, GluB32]−インスリン(◆)、[GluA8, GluB31, GluB32]−インスリン(▲)、及び2−Br−PheB24−[GluA8, GluB31, GluB32]−インスリン(▼)により置き換えられる、競合的結合測定法により測定される。 図7は、青年期のヨークシャーブタモデルにおける、野生型インスリン及びインスリン類似体の薬力学的(PD)解析に関する、一連のグラフである。図7A〜7Eのそれぞれは、所定のブタにおける相対的PD実験の結果を示す。5匹それぞれのブタが分析された。図7Aは、LillyのHumulin U−500 R(■及び黒色の線)対LillyのHumalog U−100(▲及び灰色の線)のベースライン比較を提供する。図7Bは、名目上の濃度U−500(3.0mM)での[GluB31, GluB32]−KP−インスリン(◆及び灰色の線、「Hexalog」と呼ぶ)対、対照製品であるLillyのHumulin U−500 R(■及び黒色の線)、及びLillyのHumalog U−100(▲及び灰色の線)を提供する。右にある影付きの水平の矢印はLillyのHumulin U−500 Rの延長された末尾を示す。図7Cは、2匹目のブタでの、名目上の濃度U−500(3.0mM)での[GluB31, GluB32]−KP−インスリン(●及び灰色の線、「Hexalog」と呼ぶ)対、対照製品であるLillyのHumulin U−500 R(■及び黒色の線)の、独立な試験の結果を示す。図7Dは、3匹目のブタでの、名目上の濃度U−500(3.0mM)での[GluB31, GluB32]−KP−インスリン(◆及び灰色の線、「Hexalog」と呼ぶ)対、対照製品であるLillyのHumulin U−500 R(■及び黒色の線)の、別の独立な試験からの結果のグラフである。図7Eは、名目上の濃度U−500(3.0mM)での[GluA8, GluB31, GluB32]−KP−インスリンの4−Cl−PheB24誘導体(▲及び灰色の線、「Hexalog−Cle」と呼ぶ)対、対照製品であるLillyのHumulin U−500 R(■及び●、黒色の線)、及びLillyのHumalog U−100(◆及び灰色の線)の独立な試験を示す。
本発明は、U−100からU−500の幅広い範囲のインスリン濃度で迅速なPK及びPDが維持されることを可能にする、インスリン類似体を対象とする。その類似体はさらに、対応する非改変型インスリンまたはインスリン類似体の生物学的活性の少なくとも一部を維持し、また同程度または向上した熱力学的安定性及び線維形成に対する耐性を維持する。
本発明は、位置A8、B31、及びB32における3つのグルタミン酸置換のセットに関係する。それは、その皮下注射後のインスリンの吸収率を高めることが当技術分野で公知であるB鎖の置換を任意で伴い、またPheB24の非標準型改変を任意で伴う。B24における後者の改変は、Chaによる、またはPheB24の芳香環のハロゲン誘導体(フッ化、塩化、または臭化)による置換を含む。そのような改変は、皮下注射後の安定性または吸収の迅速性に関して、超高濃度インスリン製剤の特性を向上させることを意図している。1つの例においては、インスリン類似体は少なくとも1つの追加的な置換を含有する。
実施例は、insulin lispro([LysB28, ProB29]−インスリン、KP−インスリン)の誘導体により提供される。2つの実施形態([GluA8, GluB31, GluB32]−KP−インスリン、及び2−Br−PheB24−[GluA8, GluB31, GluB32]−KP−インスリン)のいずれにおいても、本発明は、野生型インスリンまたは現在臨床利用中のインスリン類似体のそれと同程度のインスリン受容体に対する親和性、及び野生型ヒトインスリンまたは現在臨床利用中のインスリン類似体のそれと比較して同程度またはより低いI型IGF受容体に対する親和性を示す、インスリン類似体を提供する。しかしながら、本発明は上記開示の2つのKP−インスリンの誘導体及びその類似体に限定されない。これらの置換が、非限定的な例としてであるが、ブタ、ウシ、ウマ、及びイヌのインスリンなどの動物性インスリンに由来する六量体の類似体においても、また施されうることもまた想像される。
[GluA8, GluB31, GluB32]−KP−インスリン、及び2−Br−PheB24−[GluA8, GluB31, GluB32]−KP−インスリンは、Lilly Dilluent中で配合され、かつストレプトゾトシンにより糖尿病に罹ったオスのルイスラットでの皮下注射の後には、同じ剤型の野生型ヒトインスリンのそれと比べ同程度またはより大きい効力で、血液グルコース濃度の減少を指揮することが分かっている。[GluA8, GluB31, GluB32]−KP−インスリン、及び2−Br−PheB24−[GluA8, GluB31, GluB32]−KP−インスリンは、フェノール類の保存剤とともに亜鉛含有緩衝液中で配合され、かつ内因性のb細胞のインスリン分泌がオクトレオチドの静脈内投与により抑制されている麻酔下のヨークシャーブタでの皮下注射後には、同じ剤型の野生型ヒトインスリンと同程度の効力で、また同程度のタンパク質濃度及び同様の製剤化緩衝液中の野生型ヒトインスリンのそれよりも迅速な薬物動態を伴いながら、血液グルコース濃度の減少を指揮することもまた分かっている。
本発明のインスリン類似体は、AspB28、またはこの位置における他の置換もまた含有しても良い。さらに、または代わりに、本発明のインスリン類似体は、B鎖の位置29において標準型または非標準型アミノ酸置換を含有しても良い。その位置は、野生型インスリンではリジン(Lys)である。1つの特定の例においては、B29での非標準型アミノ酸は、ノルロイシン(Nle)である。別の特定の例においては、B29での非標準型アミノ酸は、オルニチン(Orn)である。
さらに、ヒト及び動物性インスリン間の類似点、及び糖尿病を有するヒトの患者における動物性インスリンの過去の使用を鑑みると、インスリン配列中における他の小さな改変、特に「保存的」とみなされる置換もまた取り入れられても良いこともまた想起される。例えば、本発明から逸れることなく、同様の側鎖を有するアミノ酸群内において、追加的なアミノ酸の置換が施されても良い。それらは、中性の疎水性アミノ酸である、アラニン(AlaまたはA)、バリン(ValまたはV)、ロイシン(LeuまたはL)、イソロイシン(IleまたはI)、プロリン(ProまたはP)、トリプトファン(TrpまたはW)、フェニルアラニン(PheまたはF)、及びメチオニン(MetまたはM)を含む。同様に、中性の極性アミノ酸は、グリシン(GlyまたはG)、セリン(SerまたはS)、スレオニン(ThrまたはT)、チロシン(TyrまたはY)、システイン(CysまたはC)、グルタミン(GlnまたはQ)、及びアスパラギン(AsnまたはN)のその群内においてお互いに置換されても良い。塩基性アミノ酸は、リジン(LysまたはK)、アルギニン(ArgまたはR)、及びヒスチジン(HisまたはH)を含むとみなされている。酸性アミノ酸は、アスパラギン酸(AspまたはD)及びグルタミン酸(GluまたはE)である。別途記述されない限り、または文脈から明らかである場合はいつでも、本明細書で言及されるアミノ酸はL−アミノ酸であるとみなされるべきである。標準型アミノ酸もまた、同じ化学的分類に属する非標準型アミノ酸により置換されても良い。非限定的な例としてであるが、塩基性側鎖Lysは、より短い側鎖を有する塩基性アミノ酸(オルニチン、ジアミノ酪酸、またはジアミノプロピオン酸)により置き換えられても良い。Lysはまた、中性の脂肪族同配体であるノルロイシン(Nle)により置き換えられても良く、また同様により短い脂肪族側鎖を含有する類似体(アミノ酪酸またはアミノプロピオン酸)により置換されても良い。
本明細書及び請求項において用いられるように、インスリンまたはインスリン類似体中の様々なアミノ酸は、当該アミノ酸残基、続いて任意で上付き文字で表されたアミノ酸の位置により記述されうる。当該アミノ酸の位置は、置換が位置するインスリンのAーまたはB鎖を含む。故に、PheB24は、インスリンのB鎖の24番目のアミノ酸に位置するフェニルアラニンを意味する。
理論により拘束されることを望まないが、本発明は、3つのグルタミン酸残基の組み合わせ(GluA8、GluB31、及びGluB32)が、(i)0.6〜3.0mMのタンパク質濃度範囲において六量体−六量体相互作用の度合いを減少させ、(ii)インスリン類似体の熱力学安定性を向上させ、(iii)室温より高い温度での穏やかな攪拌とともに起こる線維化開始を遅延させ、かつ(iv)分裂促進性のI型IGF受容体への交差結合を減少させるように、受容体結合表面の機能的特色を変化させる効果を有する、負の静電ポテンシャルをもたらすことを想像する。その3つのGlu残基は、これらの好ましい効果のそれぞれに対して均等に貢献するとは信じられていない。GluA8が熱力学的安定性の増大に有力な寄与をもたらすと考えられているのに対し、例えば、酸性のB鎖伸長はIGF受容体への交差結合の減少に有力な寄与をなすと信じられている。故にその3つのGlu残基が協力して、好ましい特性の特有の組み合わせを提供すると考えられている。
本発明の類似体は、PheB24の非標準型改変を任意で含有しても良い。B24におけるフェニルアラニンは、機能型インスリン中の非変異型アミノ酸であり、芳香性の側鎖を含有する。インスリンにおけるPheB24の生物学的重要性は、ヒト糖尿病を引き起こす臨床突然変異(SerB24)により示唆される。理論により拘束されることを望まない一方、PheB24は典型的な受容体結合表面における疎水性コアの端で充填されると信じられている。そのモデルは、結晶学的プロトマー(2−Zn molecule 1、Protein Darabank識別名4INS)に基づく。B鎖(B24−B28残基)のC末端β−ストランド内に位置しつつ、PheB24は中心のα−ヘリックス(B9−B19残基)と隣り合う。インスリン単量体中では、芳香環の一方の面及び端がLeuB15及びCysB19により定義される浅いポケット内に座っている。他方の面及び端は、溶媒にさらされている。このポケットは、部分的には主鎖のカルボニル及びアミド基により囲まれており、故に不規則かつ厳密でないな立体上の境界を伴う複雑かつ不均整な静電環境を生み出す。インスリン二量体中、及びインスリン六量体の3つの二量体境界面のそれぞれにおいては、PheB24の側鎖は、二量体境界面1つあたりの8つの芳香環(TyrB16、PheB24、PheB25、TyrB26、及びそれらの二量体関連の相棒)の群れの一部としての、より密接に詰まった空間環境内に充填される。理論とは無関係に、PheB24の芳香環のChaまたはPhe誘導体のハロゲン誘導体による置換は、六量体解体率の好ましい増加、またはその熱力学的な安定性が増加するようなインスリン単量体内での好ましい不均整な静電相互作用をもたらしつつ、二量体境界面内の全体的な疎水性充填は保持する。
本発明は、U−100よりも高くかつU−500までの濃度で配合されうるインスリン類似体に関係し、それはインスリン類似体の濃度とは無関係に、その製剤が標準野生型ヒトインスリンU−100製剤のそれと同程度の皮下注射後の吸収の迅速性及び薬理学的活性を維持するように配合される。後者の例は、Humulin(登録商標)R U−100(Eli Lilly and Co)またはNovalin(登録商標)R U−100(Novo−Nordisk)である。本発明の置換は、存在している多くのインスリン類似体のいずれにおいてもなされうることが想像される。例えば、本明細書で提供される3つのグルタミン酸残基は、insulin Lispro([LysB28, ProB29]−インスリン、本明細書ではKP−インスリンと略される)、insulin Aspart(AspB28−インスリン)、insulin Glulisine([LysB3,GluB29]−インスリン)、またはその他の改変インスリン若しくはインスリン類似体において、あるいは、ヒトインスリンに加え、標準インスリン、NPHインスリン、レンテインスリン、またはウルトラレンテインスリンなどの様々な医薬製剤においてなされうる。insulin LisproがLysB28及びProB29置換を含有し商標Humalog(登録商標)下で知られまた販売されているのに対し、insulin Aspartは、AspB28置換を含有し商標Novolog(登録商標)下で販売されている。insulin GlulisineはLysB28及びProB29置換を含有し商標Apidra(登録商標)下で知られまた販売されている。これらの類似体は、米国特許第5,149,777号、第5,474,978号、及び第7,452,860号において開示されている。これらの類似体はそれぞれ、速効性インスリンとして知られている。
ヒトプロインスリンのアミノ酸配列が、比較の目的のため、配列ID番号1として提供される。
配列ID番号1(ヒトプロインスリン)
Phe−Val−Asn−Gln−His−Leu−Cys−Gly−Ser−His−Leu−Val−Glu−Ala−Leu−Tyr−Leu−Val−Cys−Gly−Glu−Arg−Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Pro−Lys−Thr−Arg−Arg−Glu−Ala−Glu−Asp−Leu−Gln−Val−Gly−Gln−Val−Glu−Leu−Gly−Gly−Gly−Pro−Gly−Ala−Gly−Ser−Leu−Gln−Pro−Leu−Ala−Leu−Glu−Gly−Ser−Leu−Gln−Lys−Arg−Gly−Ile−Val−Glu−Gln−Cys−Cys−Thr−Ser−Ile−Cys−Ser−Leu−Tyr−Gln−Leu−Glu−Asn−Tyr−Cys−Asn
ヒトインスリンのA鎖のアミノ酸配列が、配列ID番号2として提供される。
配列ID番号2(ヒトA鎖)
Gly−Ile−Val−Glu−Gln−Cys−Cys−Thr−Ser−Ile−Cys−Ser−Leu−Tyr−Gln−Leu−Glu−Asn−Tyr−Cys−Asn
ヒトインスリンのB鎖のアミノ酸配列が、配列ID番号3として提供される。
配列ID番号3(ヒトB鎖)
Phe−Val−Asn−Gln−His−Leu−Cys−Gly−Ser−His−Leu−Val−Glu−Ala−Leu−Tyr−Leu−Val−Cys−Gly−Glu−Arg−Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Pro−Lys−Thr
本発明の変異型A鎖のアミノ酸配列が、配列ID番号5として提供される。
配列ID番号5(変異型ヒトA鎖)
Gly−Ile−Val−Glu−Gln−Cys−Cys−Glu−Ser−Ile−Cys−Ser−Leu−Tyr−Gln−Leu−Glu−Asn−Tyr−Cys−Asn
ヒトインスリンの伸長されたB鎖のアミノ酸配列が、配列ID番号6として提供される。
配列ID番号6(ヒトB鎖)
Phe−Val−Asn−Gln−His−Leu−Cys−Gly−Ser−His−Leu−Val−Glu−Ala−Leu−Tyr−Leu−Val−Cys−Gly−Glu−Arg−Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Pro−Lys−Thr−Glu−Glu
KP−インスリンの伸長されたB鎖のアミノ酸配列が、配列ID番号7として提供される。
配列ID番号7(伸長されたKPのB鎖)
Phe−Val−Asn−Gln−His−Leu−Cys−Gly−Ser−His−Leu−Val−Glu−Ala−Leu−Tyr−Leu−Val−Cys−Gly−Glu−Arg−Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Lys−Pro−Thr−Glu−Glu
insulin aspartの伸長されたB鎖のアミノ酸配列が、配列ID番号8として提供される。
配列ID番号8(伸長されたAspB28B鎖)
Phe−Val−Asn−Gln−His−Leu−Cys−Gly−Ser−His−Leu−Val−Glu−Ala−Leu−Tyr−Leu−Val−Cys−Gly−Glu−Arg−Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Asp−Pro−Thr−Glu−Glu
insulin glulisineの伸長されたB鎖のアミノ酸配列が、配列ID番号9として提供される。
配列ID番号9(伸長されたLysA3, GluB29B鎖)
Phe−Val−Lys−Gln−His−Leu−Cys−Gly−Ser−His−Leu−Val−Glu−Ala−Leu−Tyr−Leu−Val−Cys−Gly−Glu−Arg−Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Pro−Glu−Thr−Glu−Glu
ヒトインスリンのB鎖のアミノ酸配列は、同時係属中の国際出願第PCT/US2009/52477号、米国出願シリアル番号第12/884,943号及び第13/018,011号、並びに米国仮特許出願シリアル番号第61/507,324号においてより十分に開示されるように、位置24において非標準型アミノ酸の置換により改変されても良い。これらの出願の開示は、本参照により本願に組み込まれるものである。そのような配列の例は、配列ID番号10として提供される。
配列ID番号10
Phe−Val−Xaa−Gln−His−Leu−Cys−Gly−Ser−Xaa−Leu−Val−Glu−Ala−Leu−Tyr−Leu−Val−Cys−Gly−Glu−Arg−Gly−Xaa−Phe−Tyr−Thr−Xaa−Xaa−Thr−Glu−Glu
[XaaはCha、ペンタ−フルオロ−Phe、2−F−Phe、2−Cl−Phe、2−Br−Phe、4−F−Phe、4−Cl−Phe、4−Br−Phe。XaaはAsp、Pro、Lys、またはArg。XaaはLys、Pro、またはAla。XaaはHis、Asp、またはGlu。XaaはAsn、またはLys。]
位置B24における非標準型アミノ酸の置換は、SEQ. ID.番号11に提供されるような位置B29における非標準型置換と任意で組み合わせられても良い。
配列ID番号11
Phe−Val−Asn−Gln−His−Leu−Cys−Gly−Ser−Xaa−Leu−Val−Glu−Ala−Leu−Tyr−Leu−Val−Cys−Gly−Glu−Arg−Gly−Xaa−Phe−Tyr−Thr−Xaa−Xaa−Thr−Glu−Glu
[XaaはCha、ペンタ−フルオロ−Phe、2−F−Phe、2−Cl−Phe、2−Br−Phe、4−F−Phe、4−Cl−Phe、4−Br−Phe。XaaはAsp、Pro、Lys、またはArg。XaaはAsp、Glu、またはPro。Xaaは、オルニチン、ジアミノ酪酸、ジアミノプロピオン酸、ノルロイシン、アミノ酪酸、またはアミノプロピオン酸。XaaはHis、Asp、またはGlu。]
トリプシンを介した半合成は、配列ID番号12〜17に提供されるようなGluB31及びGluB32を含有する合成デカペプチドもまた用いる。
配列ID番号12
Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Pro−Lys−Thr−Glu−Glu
配列ID番号13
Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Lys−Pro−Thr−Glu−Glu
配列ID番号14
Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Asp−Lys−Thr−Glu−Glu
配列ID番号15
Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Pro−Glu−Thr−Glu−Glu
配列ID番号16
Gly−Xaa−Phe−Tyr−Thr−Asp−Lys−Thr−Glu−Glu
[XaaはCha、ペンタ−フルオロ−Phe、2−F−Phe、2−Cl−Phe、2−Br−Phe、4−F−Phe、4−Cl−Phe、4−Br−Phe。]
配列ID番号17
Gly−Xaa−Phe−Tyr−Thr−Xaa−Pro−Thr−Glu−Glu
[XaaはCha、ペンタ−フルオロ−Phe、2−F−Phe、2−Cl−Phe、2−Br−Phe、4−F−Phe、4−Cl−Phe、4−Br−Phe。XaaはLeu、Lys、またはAsp。]
KP−インスリンの3つの類似体は、トリプシン触媒による半合成によって作製され、また高速液体クロマトグラフィーにより精製された(Mirmira, R.G., and Tager, H.S., 1989. J. Biol. Chem. 264: 6349−6354.)。本プロトコルは、(i)(N)−GFFYTKPTEE残基(改変残基(F)、「KP」置換(下線)、及び2残基の酸性伸長(太字)を含む)を代表する合成デカペプチド、及び(ii)短縮型類似体である、デス−オクタペプチド[B23−B30]−インスリン、またはGluA8−デス−オクタペプチド[B23−B30]−インスリンを用いる。そのデカペプチドは野生型B23−B30配列(GFFYTPKTEE)とはProB28及びLysB29の置き換え(斜字体)により異なるため、トリプシン処理の間にはリジンε−アミノ基の保護は必須でない。簡潔には、デス−オクタペプチド(15mg)及びオクタペプチド(15mg)が、10mM酢酸カルシウム及び1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有するジメチルアセトアミド/1,4−ブタンジオール/0.2M酢酸トリス(pH8)の混合物(35:35:30、v/v、0.4mL)に溶解された。最終pH値は、10μLのN−メチルモルホリンを用いて7.0に調節された。その溶液は12℃にまで冷却され、1.5mgのTPCK−トリプシンが加えられ12℃で2日間温置された。24時間後、1.5mgのさらなるトリプシンが加えられた。反応は、0.1%トリフルオロ酢酸で酸性化され、分取逆相HPLC(C4)で精製された。マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間(MALDI−TOF、Applied Biosystems、Foster City、CA)を用いた質量分析は、それぞれの事例において予想された値を与えた(表示は無し)。固相合成用のプロトコルは、開示されている通りである(Merrifield et al., 1982. Biochemistry 21: 5020−5031)。9−フルオレン−9−イル−メトキシ−カルボニル(F−moc)で保護されたフェニルアラニン類似体は、Chem−Implex International(Wood Dale, IL)から購入された。
上記のプロトコルは、以下の3つのインスリン類似体を調整するためにもまた用いられた。[GluB31, GluB32]−KP−インスリン、[GluA8, GluB31, GluB32]−KP−インスリン、及び2−Br−PheB24−[GluA8, GluB31, GluB32]−KP−インスリン。そのインスリン類似体は、以下の分析のいくらかまたは全ての対象とされた。生物学的有効性は、ラット糖尿病モデルにおいて、及び正常血糖クランプ試験により麻酔下のヨークシャーブタにおいて評価された。示される受容体結合活性値は、ヒトインスリンに対するホルモン受容体の解離定数比(故に、定義によればヒトインスリンの活性は1.0であり、別に記述がない限り一般に25%より小さい活性値の標準誤差を伴う)に基づく。熱力学的安定性値(変性自由エネルギー、ΔG)は、変性剤濃度ゼロに外挿されるように二状態モデルに基づき25℃において評価された。線維形成に体する耐性は、無亜鉛のリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中で30℃において穏やかな攪拌とともに起こるタンパク質の線維化の開始に必要な時間差(日数)の測定により、開示にあるように評価された(Yang, Y., Petkova, A.T., Huang, K., Xu, B., Hua, Q.X., Y, I.J., Chu, Y.C., Hu, S.Q., Phillips, N.B., Whittaker, J., Ismail−Beigi, F., Mackin, R.B., Katsoyannis, P.G., Tycko, R., & Weiss, M.A. (2010) An Achilles‘ Heel in an amyloidogenic protein and its repair. Insulin fibrillation and therapeutic design. J. Biol. Chem. 285, 10806−10821)。
円二色性スペクトル(CD)は、4℃及び/または25℃においてAvivの分光偏光計を用いて得られた(Weiss et al., Biochemistry 39: 15429−15440)。試料は、50mMリン酸カリウム(pH7.4)中に約25μMのDKP−インスリンまたは類似体を含有した。試料は、25℃におけるグアニジン誘発性の変性実験のために、5μMまで希釈された。変性の自由エネルギーを取り出すため、Sosnick et al., Methods Enzymol. 317: 393−409により開示されているように、変性の変遷は、非線形最小二乗法により二状態モデルに当てはめられた。
KP−インスリンの熱力学的安定性のベースラインは、25℃での変性の二状態モデルから推測されるように、2.8±0.1 kcal/moleである。3つの類似体は、以下のようにより高い安定性を示した。[GluB31, GluB32]−KP−インスリン、3.1±0.1 kcal/mole。[GluA8, GluB31, GluB32]−KP−インスリン、3.6±0.1 kcal/mole。2−Br−PheB24−[GluA8, GluB31, GluB32]−KP−インスリン、4.3±0.1 kcal/mole。
さらに、温置の間に三連で評価された類似体の物理的安定性は、KP−インスリンのそれよりも著しくより高いことが分かった。タンパク質は、45℃において穏やかな攪拌下で、pH7.4においてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で300μMに調整された。試料は、20日間、または沈殿の兆候もしくはガラス製薬瓶に着霜が観察されるまで、観察された。KP−インスリンの時間差は1及び2日の間であった一方、類似体のそれぞれの時間差は以下の様に延長されていた。[GluB31, GluB32]−KP−インスリン、5日。[GluA8, GluB31, GluB32]−KP−インスリン、12及び13日の間。2−Br−PheB24−[GluA8, GluB31, GluB32]−KP−インスリン、試験されず。
相対的な受容体結合活性は、125I−ヒトインスリンを用いた競合的置換測定法より測定される、野生型ヒトインスリンに対する類似体のホルモン受容体の解離定数比として定義される。マイクロタイターストリッププレート(Nunc Maxisorb)は、4℃においてAU5 IgG(リン酸緩衝生理食塩水中に40mg/mlで100μl/well)とともに一晩温置された。結合データは、二点逐次モデルにより解析された。データは、非特異的結合(ヒトインスリン1μMの存在下での、膜に結合したままの放射能量)について補正がなされた。対応する分析が、I型IGF受容体及びトレーサーとして125I−標識ヒトIGF−Iを用いて行われた。すべての分析において、競合するリガンドの非存在下で結合したトレーサーの百分率は、リガンド枯渇の人為的結果を回避するべく15%より低かった。結果は、3つの類似体の親和性がKP−インスリンのそれの45−75%の間であることを実証した。IGF受容体に対する交差結合は、KP−インスリンのそれと比べ同程度またはより弱かった。代表的な結合データは、図6に提供されている。
インスリン類似体の血糖降下効力を評定するため、オスのルイスラット(平均体質量〜300グラム)がストレプトゾトシンでの処理により糖尿病を与えられた。(本モデルは、(i)野生型インスリン、KP−インスリン、及びAspB28−インスリンは血液グルコース濃度の類似した様式の効果を示し、また(ii)これらの様式は、インスリン六量体の集合を確実にするのに十分な化学量論性下では、製剤中の亜鉛イオンの存在または非存在により影響されないため、効力の精査は提供するが、薬物動態の加速度合いは提供しない。)野生型ヒトインスリン、インスリン類似体、または緩衝液のみを含有するタンパク質溶液(Eli Lilly and Co.から入手した無タンパク質性の無菌性希釈剤、pH7.4においてグリセリン16mg、メタ−クレゾール1.6mg、フェノール0.65mg、及びリン酸ナトリウム3.8mgで構成される)が皮下注射され、また生じた血液グルコースの変化が臨床血糖値測定器(Hypoguard Advance Micro−Drawメータ)を用いた連続測定により監視された。製剤の均一性を確保するため、インスリン類似体は、それぞれ逆相高速液体クロマトグラフィー(rp−HPLC)により再度精製され、粉末へと乾燥され、同じ最大タンパク質濃度(300μg/mL)で希釈剤に溶解され、また分析C4 rp−HPLCにより再度定量された。希釈は、上記の緩衝駅を用いてなされた。ラットは、時刻t=0において300gのラット1匹あたり、緩衝液100μl中のインスリン20μgを皮下注射された。この用量は、約67μg/体重kgに相当し、それは国際単位(IU)ではに2IU/体重kg相当する。KP−インスリンの用量反応実験は、本用量において、注射後の初めの1時間におけるほぼ最大のグルコース消失率が実現されたことを示した。ラットは、30匹の糖尿病ラットのコロニーから無作為に選ばれた。2つのグループは、実験開始時には同程度の平均血液グルコース濃度を示した。血液は、時刻0から90分まで10分毎に、切断された尾の先端から得られた。いくらかの実験においてはその期間が180分または240分まで延長された。血液グルコース濃度を降下させるインスリンの作用の有効性は、濃度の経時変化(線形降下の最小二乗平均及び初期領域を用いる)を注射されたインスリンの濃度で割ったものを用いて計算された。タンパク質濃度0.6mMにおいてラット1匹あたり20マイクログラムの用量で行われたラットの分析は、3つの類似体が少なくともKP−インスリンと同じだけ有効性があることを示した。それどころか、[GluA8, GluB31, GluB32]−KP−インスリン、及び2−Br−PheB24−[GluA8, GluB31, GluB32]−KP−インスリンはKP−インスリンと比べ、より有効性があるようであった。
ヒトでの薬理学的特性の予測となる動物モデルにおいてインスリン類似体のPK、PD、及び有効性を評定するため、AspB10を含有するヒトンスリンの2F−PheB24誘導体が青年期のヨークシャーファームブタ(重さ35−45kg)で研究された。実験当日には、それぞれの動物が、テラゾールでの麻酔導入及びイソフルランでの全身麻酔を受けた。それぞれの動物は、酸素飽和度及び呼吸終末呼気二酸化炭素の監視付き挿管が気管内に施された。動物は糖尿病を患ってはいなかったが、クランプ実験開始の約30分前及び以降2時間おきの酢酸オクトレオチド(44mg/kg)の皮下注射により、手術室において膵機能が抑制された。静脈内カテーテルが設置され、正常血糖のベースラインが10%デキストロース注入で確立された後、カテーテルを介してインスリンの皮下注射が与えられた。末梢インスリンを介したグルコース取り込みを定量するため、およそ85mg/dlの血液グルコース濃度を維持するために様々な速度のグルコース注入が与えられた。このグルコース注入は、概して5〜6時間の間、つまりHumulin(登録商標)の対照実験においてグルコース注入速度が一般にインスリン前のベースライン値に戻ったことが観察されるまで必要となる。グルコース濃度は、10分毎にHemocue 201携帯用グルコース分析器で(標準誤差1.9%で)測定された。
グルコースクランピングのためのコンピュータ化されたプロトコルは、開示されている通りであった(Matthews, D.R., and Hosker, J. P.(1989) Diabetes Care 12, 156−159)。簡潔には、インスリン分析のための2mlの血液試料が、以下のスケジュールに従って得られた。インスリン送達後0〜40分は5分間隔、50〜140分は10分間隔、及び160分−GIRがベースラインに戻る時点までは20分間隔。PK/PDについては、20分間の移動平均曲線の近似及びフィルタが適用される。PDは、半最大効果までの時間(初期)、半最大効果までの時間(後期)、最大効果までの時間、及びベースラインより上の曲線下面積(AUC)として測定された。これらの分析のそれぞれについて、生データではなく近似曲線が、続く分析においては用いられた。3匹のブタそれぞれが、2つの実験を経験した。1つはChlorolog(4−Cl−PheB24, LysB28, ProB29インスリン)を用いて(また1つは同用量(0.5最大用量)でのU−500の比較用Humulin(登録商標)R U−500(Eli Lilly and Co., Indianapolis, IN)、並びにU−100の比較用Humalog(登録商標)及び対照Humulin(登録商標)(Lilly Laboratories, Indianapolis, IN)を用いて)である。これらの結果は、3つの類似体[GluB31, GluB32]−KP−インスリン、[GluA8, GluB31, GluB32]−KP−インスリン、及び2−Br−PheB24−[GluA8, GluB31, GluB32]−KP−インスリンがそれぞれ、Humulin(登録商標)R U−500よりも速い薬物動態を伴い、Humulin(登録商標)R U−500と少なくとも同じだけ高い有効性を示したことを示す。
グルタミン酸安定化インスリン類似体の相対的な薬力学的特性もまた、Eli Lilly & Coにより製造された対照インスリン製品である、濃度U−500での野生型標準インスリン製剤(Lilly Humulin U−500 R)、及び濃度U−100での食事前のインスリン類似体insulin lispro(Lilly Humalog U−100 R)に関して、以下のように評価された。ブタは、インスリンに対する感受性において、またその皮膚の吸収特性に関して相違するため、比較は同一のブタ内でなされた。故に、一連の独立したブタが用いられた。データは図7A〜7Eに示され、得られたPDパラメータは表1A〜1Eに要約されている。予想通りに、対照実験は、Lilly Humulin U−500 RのPD特性が、Lilly Humalog U−100 Rと比較して図7Aで例証されるように著しく延長されることを示した。対照的にLilly Humulin U−500 RのPD特性は、3.0mMのタンパク質濃度で、つまりLilly Humulin U−500 Rに相当する濃度及び剤型で再度配合された場合(データ表示なし)の、insulin lisproのそれと同程度であった。そのような類似性は、lispro改変が類似体六量体を高度な自己集合から保護しないことを示す。それは、類似体の結晶構造におけるそのような六量体間の天然様格子の接触点に則った発見である(Ciszak, E., et al. Structure 3, 615−22 (1995))。
Figure 2015507916
GluB31及びGluB32によるB鎖の酸性伸長は、(位置B28及びB29における当技術分野において公知の)KP改変と共同で、大変高いタンパク質濃度において速効性である、新規のインスリン類似体(「Hexalog」と呼ばれる)を共にもたらす。図7B〜7D及び表1B〜1Dは、3.0mMのタンパク質濃度における[GluB31, GluB32]−KP−インスリンのPD特性が、Lilly Humulin U−500 Rよりも著しく速く、また延長された末尾を伴わないことを示す。その曲線下面積は、本製剤の濃度は少なくともU−500であることを示唆する。
Figure 2015507916
Figure 2015507916
Figure 2015507916
図7E及び表1Eは、4−Cl−PheB24改変(つまり、PheB24の芳香環のパラ位のクロロ置換)が[GluA8, GluB31, GluB32]−KP−インスリン置換に加わった、改変されたグルタミン酸安定化インスリン類似体の類似データを提供する。いかなる特定の理論で特許性を制約することも望まないが、4−Cl−PheB24改変は、位置B28及びB29でのKP改変によりもたらされるのを超えて六量体分解をさらに加速させると信じられている。GluA8改変は、六量体間の静電反発をさらに増強し、また単量体の化学的及び物理的安定性も増大させ、それにより分解を遅らせると信じられている。
Figure 2015507916
患者を治療する方法は、[GluA8, GluB31, GluB32]改変、または、当技術分野で公知のもしくは本明細書に開示のA鎖もしくはB鎖における追加のアミノ酸置換を含有する、インスリン類似体を投与する工程を有する。さらに別の例においては、インスリン類似体は外部または埋め込み式のインスリンポンプにより投与される。本発明のインスリン類似体は、同時係属中の米国特許出願第12/419,169号においてより十分に開示されているB鎖のC末端及びA鎖のN末端の間の係留鎖などの、他の改変もまた含んでも良い。その出願の開示は、本参照により本願に組み込まれるものである。
医薬組成物は、そのようなインスリン類似体を有しても良く、またそれは任意で亜鉛を含んでも良い。亜鉛イオンは、インスリン類似体の六量体1つあたり2.2と3.0の間の分子比レベルで、そのような組成物に含まれても良い。そのような製剤においては、そのインスリン類似体の濃度は、概して約0.1及び約3mMの間であろう。インスリンポンプのリザーバーにおいては、3mMまでの濃度が用いられうる。摂食時のインスリン類似体の改変体は、(a)Humulin(登録商標)(Eli Lilly and Co.)、Humalog(登録商標)(Eli Lilly and Co.)、Novalin(登録商標)(Novo−Nordisk)、及びNovalog(登録商標)(Novo−Nordisk)の「標準」製剤、並びにヒトでの使用が現在認可されている他の速効性インスリン製剤、(b)上記及び他のインスリン類似体の「NPH」製剤、並びに(c)そのような製剤の混合物について開示されたように、配合されうる。
賦形剤は、グリセロール、グリシン、アルギニン、トリス、他の緩衝液及び塩、並びにフェノール及びメタクレゾールなどの抗微生物性保存剤を含みうる。後者の保存剤は、インスリン六量体の安定性を増大させることが知られている。そのような医薬組成物は、患者に生理学的に有効な量の組成物を投与することにより、糖尿病または他の医学的状態を有する患者を治療するのに用いられうる。本発明のインスリン類似体は、亜鉛イオンの非存在下で、かつ、5〜10mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはエチレングリコール四酢酸(EGTA)の存在下で配合されても良い。
位置B24において非標準型アミノ酸置換を伴うインスリンのB鎖を少なくともコードする配列を含有する、インスリン類似体をコードするポリペプチドをコードする配列を有する核酸もまた、想像される。これは、サプレッサーtRNA(アンバーコドンが用いられた場合はアンバーサプレッサーtRNA)及び相当するtRNA合成酵素を伴う、位置B24における終止コドン(TAGなどのアンバーコドン)の導入を通じて達成されうる。これは、以前に開示されているように、終止コドンに応答して非標準型アミノ酸をポリペプチドに組み込む(Furter, 1998, Protein Sci. 7:419−426; Xie et al., 2005, Methods. 36: 227−238)。その特定の配列は、核酸配列が導入されることになる種の、好んで用いられるコドンの使用法に依存しうる。その核酸はまた、野生型インスリンの他の改変をもコードしても良い。その核酸配列は、ポリペプチドまたは改変プロインスリン類似体のあらゆる箇所に関連のない置換または伸長を含有する、改変AまたはB鎖配列をコードしても良い。その核酸はまた発現ベクターの一部であっても良く、またそのベクターは、E. coli細胞株のような原核生物の宿主細胞、あるいはS. cereviciaeまたはPichia pastoris系統若しくは細胞株などの真核生物の細胞株に挿入されても良い。
例えば合成遺伝子は、酵母菌Pichia pastoris及び他の微生物においてB鎖ポリペプチドの発現を指揮するように合成されうると想像される。位置B24においてその位置で非標準型アミノ酸置換を組み込むことを目的として終止コドンを用いたB鎖ポリペプチドの核酸配列は、以下のまたはそれらの変異型のいずれかでありうる。
(a)ヒトで好まれるコドンを用いて
TTTGTGAACCAACACCTGTGCGGCTCACACCTGGTGGAAGCTCTCTACCTAGTGTGCGGGGAACGAGGCTAGTTCTACACACCCAAGACCGAAGAA (配列ID番号18)
(b)Pichiaで好まれるコドンを用いて
TTTGTTAACCAACATTTGTGTGGTTCTCATTTGGTTGAAGCTTTGTACTTGGTTTGTGGTGAAAGAGGTTAGTTTTACACTCCAAAGACTGAAGAA (配列ID番号19)
前述の開示に基づけば、今となっては、提供されたインスリン類似体が、本明細書で先に述べられた目的を成し遂げるであろうことが明らかであるはずだ。つまり、これらのインスリン類似体は、0.6〜3.0mMの幅広い範囲のタンパク質濃度下(概して、野生型インスリン及び食事前のインスリン類似体の場合、濃度U−100からU−500に相当)で配合された場合、野生型インスリンの生物学的活性の少なくとも一部を維持しながら、向上した皮下溜まりからの吸収率及び血液グルコース濃度の制御における薬理学的作用を示すであろう。さらに、3.0mM(濃度U−500)ほど高いインスリン類似体濃度において速効性の薬物動態及び薬力学的特性が維持されている製剤は、著しいインスリン耐性であっても、安全で有効な糖尿病の治療において、向上した有用性を提供するであろう。それゆえ、請求項に係る発明の範囲内に明らかに入るいかなる変化、また故に特定の成分要素の選択は、本明細書で開示及び記述された本発明の意図から逸れることなく決定されうると理解されるべきである。
本明細書において開示される試験及び分析法が当業者により理解されるであろうことを示すために、以下の文献が引用される。
Furter, R., 1998. Expansion of the genetic code: Site−directed p−fluoro−phenylalanine incorporation in Escherichia coli. Protein Sci. 7: 419−426.
Merrifield, R.B., Vizioli, L.D., and Boman, H.G. 1982. Synthesis of the antibacterial peptide cecropin A (1−33). Biochemistry 21: 5020−5031.
Mirmira, R.G., and Tager, H.S., 1989. Role of the phenylalanine B24 side chain in directing insulin interaction with its receptor: Importance of main chain conformation. J. Biol. Chem. 264: 6349−6354.
Sosnick, T.R., Fang, X., and Shelton, V.M. 2000. Application of circular dichroism to study RNA folding transitions. Methods Enzymol. 317: 393−409.
Wang, Z.X., 1995. An exact mathematical expression for describing competitive binding of two different ligands to a protein molecule FEBS Lett. 360: 111−114.
Weiss, M.A., Hua, Q.X., Jia, W., Chu, Y.C., Wang, R.Y., and Katsoyannis, P.G. 2000. Hierarchial protein "un−design": insulin‘s intrachain disulfide bridge tethers a recognition α−helix. Biochemistry 39: 15429−15440.
Whittaker, J., and Whittaker, L. 2005. Characterization of the functional insulin binding epitopes of the full length insulin receptor. J. Biol. Chem. 280: 20932−20936.
Xie, J. and Schultz, P.G. 2005. An expanding genetic code. Methods. 36: 227−238.

Claims (19)

  1. インスリン分子であって、2残基伸長GluB31及びGluB32を含有するインスリンB鎖ポリペプチドを有し、置換GluA8を含有するインスリンA鎖を選択的に有する、インスリン分子。
  2. 請求項1記載のインスリン類似体において、前記B鎖ポリペプチドが、位置B28、位置B29、またはその両方における置換をさらに有する、インスリン類似体。
  3. 請求項2記載のインスリン類似体において、前記B鎖ポリペプチドが置換AspB28をさらに有する、インスリン類似体。
  4. 請求項2記載のインスリン類似体において、前記B鎖ポリペプチドが置換LysB28及びProB29をさらに有する、インスリン類似体。
  5. 請求項2記載のインスリン類似体において、前記B鎖ポリペプチドが置換GluB29をさらに有する、インスリン類似体。
  6. 請求項1記載のインスリン類似体において、前記B鎖ポリペプチドが非標準型B24置換をさらに有する、インスリン類似体。
  7. 請求項1〜6のいずれか1つに記載のインスリン類似体において、前記B鎖ポリペプチドが、シクロヘキサニルアラニン、ペンタ−フルオロ−フェニルアラニン、オルト−モノフルオロ−フェニルアラニン、オルト−モノクロロ−フェニルアラニン、及びオルト−モノブロモ−フェニルアラニンから成る群から選択される位置B24における置換をさらに有する、インスリン類似体。
  8. 請求項1または請求項2記載のインスリン類似体において、前記B鎖ポリペプチドが、ノルロイシン、アミノ酪酸、アミノプロピオン酸、オルニチン、ジアミノ酪酸、及びジアミノプロピオン酸から成る群から選択される位置B29における非標準型置換をさらに有する、インスリン類似体。
  9. 請求項1記載のインスリン類似体において、前記類似体が哺乳類インスリンの類似体である、インスリン類似体。
  10. 請求項1記載のインスリン類似体において、前記類似体がヒトインスリンの類似体である、インスリン類似体。
  11. 請求項1〜10のいずれか1つに記載のインスリン類似体をコードする核酸。
  12. 請求項6記載のインスリン類似体をコードする核酸であって、位置24における非標準型アミノ酸が終止コドンによってコードされている、核酸。
  13. 請求項21記載の核酸において、前記終止コドンが核酸配列TAGである、核酸。
  14. 請求項11〜13のいずれか1つに記載の核酸配列を有する発現ベクター。
  15. 請求項14記載の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
  16. 患者の血糖レベルを低下させる方法であって、生理的に有効な量のインスリン類似体または生理的に許容可能なその塩を前記患者に投与する工程を有し、前記インスリン類似体または生理的に許容可能なその塩が2残基伸長GluB31−GluB32を組み込むB鎖ポリペプチドを含有するものである、方法。
  17. 患者の血糖レベルを低下させる方法であって、0.6〜3.0mMのインスリン類似体を含有する医薬製剤に溶解された、生理的に有効な濃度の請求項1〜10のいずれか1つに記載のインスリン類似体または生理的に許容可能なその塩を前記患者に投与する工程を有する、方法。
  18. 患者の血糖レベルを低下させる方法であって、5〜10mMの範囲の濃度でエチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはエチレングリコール四酢酸(EGTA)を含有する医薬製剤に溶解された、生理的に有効な濃度の請求項1〜10のいずれか1つに記載のインスリン類似体または生理的に許容可能なその塩を前記患者に投与する工程を有する、方法。
  19. 請求項27記載の製剤を有する患者を治療する方法であって、前記インスリン溶液が注射器、ペン型装置によって、または継続的にポンプによって皮下注射される、方法。
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