JP2005281537A - ハードコートフィルム及びそれを用いた偏光板 - Google Patents

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Abstract

【課題】 オレフィン系フィルムを基材とし、安価で表面保護フィルムとしての性能に優れたハードコートフィルムを提供すること、及び、光学異方性がなく透明性が高いだけでなく、耐久性にも優れた偏光板を提供すること
【解決手段】 オレフィン系樹脂フィルムからなる基材と、該基材の少なくとも一方の面に順次設けられたアンカーコート層及びハードコート層からなるハードコートフィルム、及びそれを用いた偏光板。前記アンカーコート層中にハロゲンを含有しない変性ポリオレフィン系樹脂が含有されていることが特徴となっている。
【選択図】 なし

Description

本発明は、各種ディスプレイ等の表面保護に使用されるハードコートフィルムに関し、特に基材としてポリオレフィン系のフィルムを用い、基材とハードコート層の密着度に優れたハードコートフィルムに関する。
従来、殆どのパソコン、ワープロ、テレビなどの液晶ディスプレイの表面保護フィルムには、偏光膜の保護を兼ねてトリアセチルセルロース(TAC)フィルム表面にハードコート層を形成したハードコートフィルムが使用されている。上記のTACフィルムは、キャスティング法で製造されているため、光学異方性がないだけでなく透明性が高いのでディスプレイ材料に適している。しかしながら、吸湿性があるために寸法安定性が低い上、偏光板に加工するときに水分を透過して偏光膜を破壊するので、偏光板の耐久性が低いという欠点があった。
そこで近年、TACフィルムと同等の光学特性を有すると共に寸法安定性が良好で耐久性の高いポリオレフィン系樹脂フィルムを、表面保護フィルムに用いることが検討されている。しかしながら、このポリオレフィン系樹脂フィルム上に電離放射線硬化型樹脂をハードコート層として塗工しても、オレフィン系樹脂フィルムとハードコート層の塗膜密着性が悪いので、表面保護フィルムとしての性能を得ることは困難であった。
上記の問題を解決する手段として、ハロゲン化炭化水素重合体からなるプライマー層を基材上に形成する方法が提案された(特許文献1)。しかしながらこの方法では、基材のオレフィン系樹脂フィルムとプライマー層との密着度は良好であるものの、表層の硬さを高めるためにハードコート層としてアクリルウレタン系などの極性の高い樹脂を使用した場合には、該ハードコート層の塗膜密着度が十分でない上、ハロゲン含有化合物を使用することによって廃棄が困難になるという欠点があった。
また、フィルム表面をコロナ放電処理して、フィルム表面の自由エネルギーを高めてからハードコート層を形成する方法も提案されており(特許文献2)、この場合に使用する基材の一つとしてノルボルネンフィルムも記載されている。しかしながら、この方法では、TACやポリエチレンテフタレート(PET)など、極性基を導入することが比較的容易なフィルムの塗膜密着度は向上するものの、非極性のノルボルネンフィルムの場合には十分な効果が得られない。更に、コロナ放電処理設備は非常に高額である上、コロナ処理時に有毒なオゾンが発生するという欠点があった。
更に、塗膜との密着性を高めるために、ノルボルネン樹脂に特定の官能基を導入する方法が提案されている(特許文献3)が、この場合には、前処理のための工程が増えることと、フィルム自身の品質の変動が避けられないため、表面保護フィルムとしての製品安定性が問題となる可能性がある上、汎用性に欠けるという欠点もあった。
特許3189365号公報 特開2002−298666号公報 特開2003−14901号公報
そこで本発明者等は、非極性のポリオレフィン系樹脂フィルムを、表面にハードコート層を有する表面保護フィルムの基材とするために鋭意検討した結果、非極性のポリオレフィン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、ハロゲンを含有しない変性ポリオレフィン系樹脂を含有するアンカーコート層を形成し、その上に極性の高い電離放射線硬化型樹脂を用いてハードコート層を形成することによって、そのハードコート層の塗膜密着度が向上したハードコートフィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。
従って本発明の第1の目的は、オレフィン系フィルムを基材とし、安価で表面保護フィルムとしての性能に優れたハードコートフィルムを提供することにある。
本発明の第2の目的は、光学異方性がなく透明性が高いだけでなく、耐久性にも優れた偏光板を提供することにある。
本発明の上記の諸目的は、オレフィン系樹脂フィルムからなる基材と、該基材の少なくとも一方の面に順次設けられたアンカーコート層及びハードコート層からなるハードコートフィルムであって、前記アンカーコート層中にハロゲンを含有しない変性ポリオレフィン系樹脂が含有されていることを特徴とするハードコートフィルム、及びそれを用いた偏光板によって達成された。上記ハロゲンを含有しない変性ポリオレフィン系樹脂は、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の誘導体、及び(メタ)アクリル化合物から選択された少なくとも1種によってグラフト変性されると共に、その平均分子量が15,000〜150,000の範囲にあるポリオレフィン系樹脂であことが好ましい。また、アンカーコート層の厚さは0.1〜1.5μmであることが好ましく、ハードコート層は、フッ素系、シロキサン系、アクリル系、アセチレングリコール系から選択された少なくとも1種のレベリング剤を含有することが好ましい。
本発明により、透明性、耐擦傷性、密着性に優れ、大量生産が可能なポリオレフィン系樹脂フィルムを基材とするハードコートフィルムを得ることができる。
本発明のハードコートフィルムの基材として用いることのできるポリオレフィン系樹脂フィルムは、フィルム厚さが25μm〜250μm程度で極性の低いポリオレフィン系フィルムである。このようなポリオレフィン系樹脂フィルムとしては、例えばノルボルネンフィルム(NB)、ZEONOR(商品名:日本ゼオン(株)製)、ARTON(商品名:JSR(株)製)、エスシーナ(商品名:セキスイ化学(株)製)等を挙げることができる。
本発明のハードコートフィルムのアンカーコート層には、ハロゲンを含有しない変性ポリオレフィン系樹脂を用いることが必須である。ハロゲンを含有する変性ポリオレフィン系樹脂を用いると、基材とアンカーコート層の密着度は良好であるが、ハードコート層にアクリルウレタン系などの極性の高い樹脂を使用すると、ハードコート層とアンカーコート層との間で十分な塗膜密着度を得ることが困難となる。
前記ハロゲンを含有しない変性ポリオレフィン系樹脂は、GPCによるエチレン換算分子量が15,000〜150,000の範囲であるものが好ましい。分子量が15,000より小さいとハードコート層との間で十分な密着度が得られず、150,000より大きいと塗膜が白濁するため、フィルムの透過率が低下する。
本発明におけるアンカーコート層に用いることのできる、フッ素、塩素、臭素等のハロゲンを含有しない変性ポリオレフィン系樹脂とは、ポリオレフィン系樹脂を、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の誘導体、(メタ)アクリル化合物、ポリアミド等の極性を有するモノマーあるいはオリゴマーによってグラフト変性したものである。本発明においては、特に、不飽和カルボン酸無水物及び/又は(メタ)アクリル化合物を用いることが、ポリオレフィン基材への付着性やコストの観点から好ましい。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1,4−メチル−1−ペンテン等の、炭素数2以上20以下、好ましくは2〜6のα−オレフィン、あるいはシクロペンテン、シクロヘキセン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、ジビニルベンゼン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン等の鎖状あるいは環状ポリエン、あるいはスチレン、置換スチレンなどの重合体または共重合体が挙げられる。
重合体中におけるこれらモノマーの割合は任意に選択することが出来るが、ポリエチレンやポリプロピレンを被着体とする場合には、エチレン−プロピレン、プロピレン−ブテン、エチレン−プロピレン−ブテン等の共重合体が好ましい。本発明においては、特に、これらの樹脂中におけるプロピレン単位の存在割合が50モル%〜98モル%であることが好ましい。50モル%より少ないと被着体への付着性が劣り、98モル%より多いと柔軟性が不足する。
変性する前のポリオレフィン系樹脂の分子量は特に制限されることはないが、変性後の変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は15,000〜150,000の範囲である必要がある。該変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が150,000より大きい重合体の場合には、熱やラジカルの存在下で公知の減成を行い、分子量を適当な範囲に調整することによって使用可能になる。これらは、単独で使用することも、複数を併用することもできる。
上述したように、本発明で使用するハロゲンを含有しない変性ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂を極性を有するモノマーあるいはオリゴマーでグラフト変性したものである。上記極性を有するモノマーあるいはオリゴマーとしては、例えば不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の誘導体、(メタ)アクリル化合物、ポリアミド等を、単独でまたは組み合わせて使用することができる。
上記した不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、アコニット酸、フタル酸、トリメリット酸、ノルボルネンジカルボン酸、(メタ)アクリル酸等を用いることができる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、不飽和カルボン酸の酸無水物、酸ハライド、アミド、イミド、エステルなどである。不飽和カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸等を用いることができるが、特に無水イタコン酸及び無水マレイン酸を使用する事が好ましい。これらは、単独で使用することも複数を併用することもできる。
これらの不飽和カルボン酸や不飽和カルボン酸の誘導体の、前記変性ポリオレフィン樹脂中のグラフト重量は、0.1〜90重量%であることが好ましく、より好ましくは1〜85重量%、特に好ましくは2〜80重量%である。グラフト重量が0.1重量%より少ないと、アンカーコート層を構成する組成物中の他成分と変性ポリオレフィン系樹脂との相溶性が低下する他、ハードコート層や基材に対する変性ポリオレフィン系樹脂の接着性が低下する。また、90重量%より多いと、組成物中のポリオレフィン量が減少すること、未反応物の増加やポリオレフィン骨格にグラフト化されてないホモポリマーやコポリマーが生成することにより、ハードコート層や基材への接着性が低下するので好ましくない。
前記(メタ)アクリル化合物とは、例えば(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アクリルアミド等の(メタ)アクリル基を、分子中に少なくとも1個含む化合物である。これらは単独で使用する事も混合して使用することもでき、その混合割合は自由に設定することができる。
本発明においては、特に、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種の化合物を20重量%以上含むものが好ましい。この条件を充たすことにより、溶剤溶解性や他樹脂との相溶性が向上する。
CH=CRCOOR (1)
上式中、RはH又はCH、RはC2n+1であり、nは8〜18の整数である。本発明においては、これらの内、特にオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートが、基材やハードコート層への接着性やコストの観点から好ましい。
(メタ)アクリル化合物の変性ポリオレフィン系樹脂中のグラフト重量は、0.1〜90重量%であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜85重量%、更に好ましくは、1〜80重量%である。グラフト重量が0.1重量%より少ないと変性ポリオレフィン樹脂の溶解性やアンカーコート層組成物中の他成分との相溶性が低下し、ハードコート層や基材への接着性が低下する。一方、90重量%より多いと、反応性が高い為に超高分子量体を形成して溶剤溶解性が悪化したり、ポリオレフィン骨格にグラフトしないホモポリマーやコポリマーの生成量が増加して、ハードコート層や基材への接着性が低下するので好ましくない。
本発明においては、上述したハロゲンを含有しない変性ポリオレフィン系樹脂を溶剤に溶解し、支持体上に塗布乾燥してアンカーコート層を形成する。この場合に使用する溶剤は希釈溶剤は、変性ポリオレフィン系樹脂を溶解しうる脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール、ケトン、アルデヒドなどの中から適宜選択することができるが、特に、沸点が70℃〜150℃である、ヘプタン及びその異性体、オクタン及びその異性体、ノナン及びその異性体、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、2−ブタノール、2−ペンタノール、3−ヘプタノール等が好ましい。これらは、単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。
アンカーコート層の乾燥後の塗膜の厚さは0.1μm〜1.5μmであることが好ましい。アンカーコート層の厚さが0.1μmよりも薄いと、基材及びハードコート層との十分な密着度が得られず、1.5μmより厚いとアンカーコート層の白化が生じ、フィルム透過率の低下やハード性の低下を生ずるので好ましくない。
本発明におけるハードコート層は、電離放射線硬化型樹脂を電子線(EB)または紫外線(UV)等を照射することによって硬化させた透明な樹脂であれば特に限定されるものではないが、透明性が優れる点でアクリル系樹脂を用いることが好ましい。上記アクリル系樹脂としては、ウレタンアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂及びエポキシアクリレート系樹脂等を用いることができる。また、電離放射線硬化型樹脂の含有量は、塗料組成物の硬化時の固形分に対して50.0〜85.0重量%であることが好ましい。
好ましい電離放射線硬化型樹脂としては、分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する、紫外線硬化可能な多官能(メタ)アクリレートからなるものが挙げられる。このような多官能アクリレートの具体例としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、(メタ)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなどのエポキシ(メタ)アクリレート;多価アルコールと多価カルボン酸及び/またはその無水物と(メタ)アクリル酸とをエステル化することによって得ることが出来るポリエステル(メタ)アクリレート;多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレート;ポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの重合性(メタ)アクリレートは、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
なお、上記の多官能(メタ)アクリレートの他に、ハードコート層用塗料の硬化時の電離放射線硬化型樹脂固形分に対して、好ましくは10.0重量%以下の、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の中から選択される少なくとも1種の単官能(メタ)アクリレートを配合しても良い。
また、ハードコート層には、硬度を調整する目的で重合性オリゴマーを添加することができる。このようなオリゴマーとしては、末端(メタ)アクリレートポリメチルメタクリレート、末端スチリルポリ(メタ)アクリレート、末端(メタ)アクリレートポリスチレン、末端(メタ)アクリレートポリエチレングリコール、末端(メタ)アクリレートアクリロニトリル−スチレン共重合体、末端(メタ)アクリレートスチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体などのマクロモノマーを挙げることができる。その含有量は塗料組成物の硬化時の固形分に対して、好ましくは5.0〜50.0重量%である。
また、電離放射線硬化型樹脂は重合開始剤を含み、これに電離線あるいは紫外線を照射することにより樹脂が硬化する。上記重合開始剤は、ベンゾフェノン系開始剤、ジケトン系開始剤、アセトフェノン系開始剤、ベンゾイン系開始剤、チオキサントン系開始剤、キノン系開始剤、フェニルフォスフィンオキサイド系開始剤等の公知の重合開始剤の中から適宜選択することができる。通常重合開始剤は、電離放射線硬化型樹脂に対して1.0〜10.0重量%用いられる。
本発明においては、これらの諸成分を有機溶剤等に溶解し、粘度を調整した塗工液を基材フィルムに塗工し、乾燥させた後、電離線あるいは紫外線を照射し、硬化させてハードコート層を形成する。ハードコート層用塗工液に用いることのできる有機溶剤としては、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、セロソルブ類などから適宜選択して用いることができる。これらの有機溶剤は、必要に応じて数種類を混合して用いてもよい。塗工後には前記有機溶剤を蒸発させる必要があるため、沸点が70℃〜200℃の範囲であることが望ましい。
また、オレフィン系のアンカーコート上に塗工するため、オレフィン系樹脂を侵さない、極性の高いアルコール系またはケトン系の溶剤を使用することが特に好ましい。また、上記ハードコート層塗工液の塗工適性を得るために、塗工後の塗膜表面に作用し、その表面張力を低下させるレベリング性添加剤を加えてもよい。前記添加剤としては、フッ素系添加剤、シロキサン系添加剤、アクリル系添加剤、アセチレングリコール系添加剤などが挙げられる。
上記のフッ素系添加剤としては、例えば住友スリーエム社製のフロラードFC−430、FC170(何れも商品名)や大日本インキ化学工業社製のメガファックF177、F471(何れも商品名)が挙げられ、シロキサン系添加剤としてはビックケミー社製のBYK−300、BYK−077(何れも商品名)、アクリル系添加剤としてはビックケミー社製のBYK−380や楠本化成社製のディスパロンL−1984−50、L−1970(何れも商品名)、アセチレングリコール系添加剤としては信越化学工業社製のサーフィノール61、サーフィノール485(何れも商品名)などが挙げられる。また、これらのレベリング系添加剤は、単独で使用する事も併用して使用する事もできる。
本発明で用いられるレベリング性添加剤の好ましい配合量は、ハードコート層用塗料の硬化時の固形分に対して0.05重量%以上10.0重量%以下であり、より好ましくは0.2重量%以上5.0重量%以下である。レベリング性添加剤の配合量が0.05重量%未満であると、添加剤の有するレベリング性が発現しない。一方、10.0重量%を超えると、一般的に上記添加剤は反応性官能基を有していないため、得られたハードコートフィルムのハード性が著しく低下する。なお、反応性官能基とは、エポキシ基、ビニル基、及びアルコキシル基など熱により重合反応する基、あるいはアクリル基、メタクリル基など電離放射線により重合反応する基などを指す。
本発明においては、塗料組成物の塗工適性を得る観点から、塗料組成物の固形分濃度は15.0重量%以上65.0重量%以下であることが好ましい。固形分濃度が15.0重量%より低いと塗料の粘度が低下し、塗工面の乾燥ムラが顕著に発生する傾向がある。固形分濃度が65.0重量%より高い場合には、塗料組成物の粘度が高くなり、塗工面の均一性が得られない傾向がある。
さらに、性能改良のため、本発明の効果に影響を与えない範囲で、ハードコート層中に消泡剤、チクソトロピー剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤等を含有することができる。また、ハードコート層表面を凹凸形状にして防眩性を付与するため、本発明の効果に影響を与えない範囲で、ポリウレタン、ポリスチレン、メラミン樹脂、PMMA等の樹脂ポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系微粒子や、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛などの無機系微粒子を添加することもできる。
ハードコート層の塗工方法は特に限定されるものではないが、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、バー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工、デイップコートなど、塗膜厚さの調整が容易な方式による塗工方法が好ましい。
本発明のハードコートィルムは偏光板の保護フィルムとして好適に用いることができる。偏光板とは、一般にポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに偏光膜となるヨウ素及び/又は二色性染料を吸着させて延伸したもの、あるいはポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などのポリエン配向フィルムからなる偏光フィルムであるが、親水性高分子フィルムを使用しているため水分を透過し偏光膜を破壊する。本発明のハードコートィルムは水分透過性が無いことから耐久性が高い上、耐擦傷性が良好な偏光板保護フィルムであり、これを偏光板に貼着する事により、ハードコートを用いた偏光板を得る事が出来る。
以下に、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
各層に使用した塗料を以下に示す。
[塗料a](ポリオレフィン系アンカーコート塗料1)
アウローレン200S(分子量55,000〜75,000、固形分濃度15%、メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン=8/2溶液、日本製紙ケミカル(株)製)100gにトルエン200gを加えて十分に攪拌し、#300のメッシュで濾過し、塗料を調整した。
[塗料b](ポリオレフィン系アンカーコート塗料2)
アウローレン150S(分子量55,000〜65,000、日本製紙ケミカル(株)製)5gにトルエン95gを加えて十分に攪拌し、#300のメッシュで濾過し、塗料を調整した。
[塗料c](ポリオレフィン系アンカーコート塗料3)
アウロレン200S 100gに2−ブタノール200gを加えて十分に攪拌し、#300のメッシュで濾過し、塗料を調整した。
[塗料d](ハードコート塗料1)
ビームセット575(紫外線硬化樹脂、荒川化学工業(株)製)93重量部にダロキュア1173(光開始剤、チバガイギー社製)5部を混合し、イソプロピルアルコール100部に溶解した。この塗料にレベリング剤としてBYK−320(ビックケミー社製)2部を添加した。
[塗料e](ハードコート塗料2)
ビームセット575(紫外線硬化樹脂、荒川化学工業(株)製)93重量部にダロキュア1173(光開始剤、チバガイギー社製)5部を混合し、イソプロピルアルコール100部に溶解した。この塗料にレベリング剤としてメガファックF177(大日本インキ化学工業(株)製)2部を添加した。
[塗料f](ハードコート塗料3)
ビームセット575(紫外線硬化樹脂、荒川化学工業(株)製)88重量部にダロキュア1173(光開始剤、チバガイギー社製)5部を混合し、イソプロピルアルコール100部に溶解した。この液に、サイロホービック200(シリカ微粒子、富士シリシア社製)を5重量部、レベリング剤としてBYK−320(ビックケミー社製)2部を添加し、十分に攪拌した。
厚さ100μmのノルボルネンフィルム(商品名:ZEONOR−ZF14、日本ゼオン(株)製)に塗料aをマイヤーバー#12を用いて塗工し、80℃に調整した、送風乾燥機内で2分間乾燥した。アンカー層の厚さは1.0μmであった。このフィルムの上に塗料dをマイヤーバー#8を用いて塗工し、80℃に調整した送風乾燥機で1分間乾燥した。次いで350mj/cmの紫外線照射量により塗膜を硬化させ、ハードコートフィルムを得た。ハードコート層の厚さは5μmであった。
厚さ100μmのノルボルネンフィルム(商品名:ZEONOR−ZF14、日本ゼオン(株)製)に塗料aをマイヤーバー#12で塗工し、80℃に調整した、送風乾燥機内で2分間乾燥した。アンカー層の厚さは1.0μmであった。このフィルムの上に塗料eをマイヤーバー#8で塗工し、80℃に調整した送風乾燥機で1分間乾燥した。次いで350mj/cmの紫外線照射量により塗膜を硬化させ、ハードコートフィルムを得た。ハードコート層の厚さは5μmであった。
厚さ100μmのノルボルネンフィルム(商品名:ZEONOR−ZF14、日本ゼオン(株)製)に塗料aをマイヤーバー#5で塗工し、80℃に調整した、送風乾燥機内で2分間乾燥した。アンカー層の厚さは0.5μmであった。このフィルムの上に塗料dをマイヤーバー#8で塗工し、80℃に調整した送風乾燥機で1分間乾燥した。次いで350mj/cmの紫外線照射量により塗膜を硬化させ、ハードコートフィルムを得た。ハードコート層の厚さは5μmであった。
厚さ100μmのノルボルネンフィルム(商品名:エスシーナ、積水化学(株)製)に塗料cをマイヤーバー#12で塗工し、80℃に調整した、送風乾燥機内で2分間乾燥した。アンカー層の厚さは1.0μmであった。このフィルムの上に塗料dをマイヤーバー#8で塗工し、80℃に調整した送風乾燥機で1分間乾燥した。次いで、350mj/cmの紫外線照射量により塗膜を硬化させ、ハードコートフィルムを得た。ハードコート層の厚さは5μmであった。
厚さ100μmのノルボルネンフィルム(商品名:ZEONOR−ZF14、日本ゼオン(株)製)に塗料bをマイヤーバー#12で塗工し、80℃に調整した、送風乾燥機内で2分間乾燥した。アンカー層の厚さは1.0μmであった。このフィルムの上に塗料dをマイヤーバー#8で塗工し、80℃に調整した送風乾燥機で1分間乾燥した。次いで350mj/cmの紫外線照射量により塗膜を硬化させ、ハードコートフィルムを得た。ハードコート層の厚さは5μmであった。
厚さ100μmのノルボルネンフィルム(商品名:ZEONOR−ZF14、日本ゼオン(株)製)に塗料aをマイヤーバー#12で塗工し、80℃に調整した、送風乾燥機内で2分間乾燥した。アンカー層の厚さは1.0μmであった。このフィルムの上に塗料fをマイヤーバー#8で塗工し、80℃に調整した送風乾燥機で1分間乾燥した。ついで350mj/cmの紫外線照射量により塗膜を硬化し、ハードコートフィルムを得た。ハードコート層の厚さは5μmであった。
厚さ100μmのノルボルネンフィルム(商品名:ZEONOR−ZF14、日本ゼオン(株)製)に塗料aをマイヤーバー#22で塗工し、80℃に調整した、送風乾燥機内で2分間乾燥した。アンカー層の厚さは2μmであった。このフィルムの上に塗料dをマイヤーバー#8で塗工し、80℃に調整した送風乾燥機で1分間乾燥した。350mj/cmの紫外線照射量により塗膜を硬化し、ハードコートフィルムを得た。ハードコート層の厚さは5μmであった。
厚さ100μmのノルボルネンフィルム(商品名:ZEONOR−ZF14、日本ゼオン社製)に塗料aをマイヤーバー#3で塗工し、80℃に調整した、送風乾燥機内で2分間乾燥した。アンカー層の厚さは0.3μmであった。このフィルムの上に塗料dをマイヤーバー#8で塗工し、80℃に調整した送風乾燥機で1分間乾燥した。次いで350mj/cmの紫外線照射量により塗膜を硬化し、ハードコートフィルムを得た。ハードコート層の厚さは5μmであった。
比較例1.
厚さ100μmのノルボルネンフィルム(商品名:ZEONOR−ZF14、日本ゼオン社製)に塗料dをマイヤーバー#8で塗工し、80℃に調整した送風乾燥機で1分間乾燥した。次いで350mj/cmの紫外線照射量により塗膜を硬化し、ハードコートフィルムを得た。ハードコート層の厚さは5μmであった。
比較例2.
特許3189365号公報に記載された方法で、塩素化ポリプロピレン(ハードレンMLJ−13、東洋化成社製)を2.0μmの厚さになるよう塗工した。このフィルムの上に塗料dをマイヤーバー#8で塗工し、80℃に調整した送風乾燥機で1分間乾燥した。350mj/cmの紫外線照射量により塗膜を硬化し、ハードコートフィルムを得た。ハードコート層の厚さは5μmであった。
比較例3.
厚さ100μmのノルボルネンフィルム(商品名:ZEONOR−ZF14、日本ゼオン社製)に100mVのコロナ処理を行い、この上に塗料dをマイヤーバー#8で塗工し、80℃に調整した送風乾燥機で1分間乾燥し、350mj/cmの紫外線照射量により塗膜を硬化し、ハードコートフィルムを得た。ハードコート層の厚さは5μmであった。
実施例、比較例で作成したハードコートフィルムのアンカーコート層について表1にまとめた。
実施例、比較例で作成したハードコートフィルムについて下記の項目について試験を行い、結果を表1に示した。
・密着度:JIS K 5400に準拠して、1mm角クロスハッチによる基板目テープ法により評価した。粘着テープ(日東電工 No.9)剥離を5回繰り返した後碁盤目の傷の状態を下記式により評価した。密着度が100%である場合を「良好」、100%未満である場合を「不良」とした。
密着度(%)=(1−剥がれ面積/評価面積)×100
・透過率:島津製作所分光光度計UV3100で550nmの透過率を測定し、視感補正値を記載した。
・透明性(ヘイズ度):村上色彩技術研究所製ヘイズメーターHR150を使用し、JIS K 7136に準拠してヘイズを測定し、透明性の評価を行った。ヘイズが1.0%未満を「特に良好」、1.0%以下2.0%未満を「良好」、2.0%以上を「不良」とした。
・鉛筆硬度:JIS K 5600に準拠して鉛筆硬度試験を実施した。鉛筆硬度が3Hを「特に良好」、2Hを「良好」、Hを「不良」とした。尚、試験は5回実施し、そのうち4回でキズが入らない場合に合格とした。
表2に示されるように、アンカーコート層中にハロゲンを含有しない変性ポリオレフィン系樹脂を含有させた実施例1〜6のハードコートフィルムは、ポリオレフィン系の基材に対して密着度が高く、鉛筆硬度が非常に高かった。ただし、アンカーコート層の厚さが2μmの実施例7のハードコートフィルムはヘイズ度がやや低下した。また、アンカーコート層の厚さが0.5μmの実施例8のハードコートフィルムは密着度がやや低下した。さらに、ハードコート層中にシリカ微粒子を含有する実施例6の防眩用ハードコートフィルムにおいても優れた密着度が得られた。尚、実施例6は防眩の目的の観点から、ヘイズ度は高くなっている。これに対して、アンカーコート層を設けていない比較例1、3のハードコートフィルムは密着度が劣っていた。また、アンカーコート層中にハロゲンを含有する変性ポリオレフィン系樹脂を含有させた比較例2のハードコートフィルムは密着度が劣っていた。
本発明により、透明性、耐擦傷性、密着性に優れ、大量生産が可能なポリオレフィン系樹脂フィルムを基材とするハードコートフィルムを得ることができる。また、ポリオレフィン系樹脂フィルムは吸湿性がないので、本発明のハードコートフィルムを用いた偏光板は耐久性が優れている。

Claims (5)

  1. オレフィン系樹脂フィルムからなる基材と、該基材の少なくとも一方の面に順次設けられたアンカーコート層及びハードコート層からなるハードコートフィルムであって、前記アンカーコート層中にハロゲンを含有しない変性ポリオレフィン系樹脂が含有されていることを特徴とするハードコートフィルム。
  2. ハロゲンを含有しない変性ポリオレフィン系樹脂が、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の誘導体、及び(メタ)アクリル化合物から選択された少なくとも1種によってグラフト変性されたポリオレフィン系樹脂であると共に、その平均分子量が15,000〜150,000の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載されたハードコートフィルム。
  3. アンカーコート層の厚さが0.1〜1.5μmである請求項1または2に記載されたハードコートフィルム。
  4. ハードコート層が、フッ素系、シロキサン系、アクリル系、アセチレングリコール系から選択された少なくとも1種のレベリング剤を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載されたハードコートフィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載されたハードコートフィルムを用いた偏光板。
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