JP2019128544A - ハードコートフィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】シクロオレフィンポリマー系フィルムを基材として用いた場合のハードコート層との密着性(特に経時密着性)に優れたハードコートフィルムを提供する。【解決手段】このハードコートフィルムは、シクロオレフィンポリマー系基材フィルムの少なくとも片面にプライマー層を介して、電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層が積層されている。そして、このプライマー層の表面の静摩擦係数が0.6〜2.0の範囲である。【選択図】なし

Description

本発明は、光学部材に用いられるハードコートフィルム及びその製造方法に関する。更に詳しくは、エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示装置等のパネルディスプレイ、タッチパネル等の表示装置部品等の保護フィルムとして使用することができるハードコートフィルムに関する。
たとえば液晶表示装置(LCD)等の液晶ディスプレイの表示面には、取り扱い時に傷が付いて視認性が低下しないように耐擦傷性を付与することが要求されている。そのため、基材フィルムにハードコート層を設けたハードコートフィルムを利用して、ディスプレイの表示面の耐擦傷性を付与することが一般的に行われている。近年、表示画面上で表示を見ながら指やペン等でタッチすることでデータや指示を入力できるタッチパネルの普及により、この様な光学部材に用いるハードコートフィルムに対する機能的要求はさらに高まっている。
ところで、シクロオレフィンポリマーフィルムは、基材フィルムとして透明性、耐熱性、寸法安定性、低吸湿性、低複屈折性、及び光学的等方性に優れるため、この様な光学部材用途への利用が期待されており、このシクロオレフィンフィルム上にハードコート層を設けることが提案されている。しかし、このシクロオレフィンポリマーフィルムは、アクリルフィルムやポリエステルフィルムと異なりフィルム表面に極性基の数が少ないため、シクロオレフィンポリマーフィルムを基材として用いた場合、ハードコート層との密着性が劣るという問題点があった。
そこで、従来、シクロオレフィンポリマーフィルムにハードコート層との易接着性を付与する方法が特許文献1、特許文献2等に開示されている。
特開2001−147304号公報 特開2006−110875号公報
従来、シクロオレフィンポリマーフィルムにハードコート層との易接着性を付与する方法として、特許文献1では、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が開示されているが、これらの方法では、シクロオレフィンポリマーフィルムとハードコート層の密着性は不十分であり、特に経時的な密着不良が発生しやすいという問題点があった。
また、特許文献2では、シクロオレフィンポリマーフィルム上にオレフィン系樹脂からなるアンカーコート剤を塗設する方法が開示されている。このアンカーコート処理により、シクロオレフィンポリマーフィルムとハードコート層の密着性はある程度改善されるが、未だ不十分であり、特に経時的な密着不良が発生しやすいという問題点があった。さらには耐熱条件下ではハードコート層表面にクラックが発生しやすい問題点もあった。このような特定の材質のアンカーコート処理を行っても、基材フィルムとハードコート層の密着性の改善は不十分であった。
したがって、従来のハードコートフィルムでは、シクロオレフィンポリマーフィルムを基材として用いた場合のハードコート層との密着性、特に経時密着性の改善が大きな課題となっていた。
そこで、本発明は、シクロオレフィンポリマー系フィルムを基材として用い、ハードコート層との密着性、特に経時密着性に優れたハードコートフィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、以下の構成を有することにより上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
(第1の発明)
シクロオレフィンポリマー系基材フィルムの少なくとも片面に、プライマー層を介して、電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層が積層されたハードコートフィルムであって、前記プライマー層の表面の静摩擦係数が、0.6〜2.0の範囲であることを特徴とするハードコートフィルム。
(第2の発明)
前記プライマー層の表面自由エネルギーが、22mN/m以上であることを特徴とする第1の発明に記載のハードコートフィルム。
(第3の発明)
前記プライマー層表面の水の接触角が、110度以下であることを特徴とする第1又は第2の発明に記載のハードコートフィルム。
(第4の発明)
前記ハードコート層は、前記電離放射線硬化型樹脂として、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートを含有することを特徴とする第1乃至第3の発明のいずれかに記載のハードコートフィルム。
(第5の発明)
シクロオレフィンポリマー系基材フィルム上に、プライマー層を介して、電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層を有するハードコートフィルムの製造方法であって、前記シクロオレフィンポリマー系基材フィルム上に、プライマー層用塗料を塗布し、乾燥して得られるプライマー層の表面の静摩擦係数が、0.6〜2.0の範囲であり、次いで、該プライマー層上に、電離放射線硬化型樹脂を含むハードコート層用塗料を塗布し、乾燥してハードコート層を形成した後、電離放射線照射を施すことを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。
(第6の発明)
前記プライマー層の表面自由エネルギーが、22mN/m以上であることを特徴とする第5の発明に記載のハードコートフィルムの製造方法。
(第7の発明)
前記プライマー層表面の水の接触角が、110度以下であることを特徴とする第5又は第6の発明に記載のハードコートフィルムの製造方法。
本発明によれば、シクロオレフィンポリマー系フィルムを基材として用い、ハードコート層との密着性、特に経時密着性に優れたハードコートフィルムを得ることができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「○○〜△△」とは、特に断りのない限り、「○○以上△△以下」を意味するものとする。
上記第1の発明にあるとおり、本発明のハードコートフィルムは、シクロオレフィンポリマー系基材フィルムの少なくとも片面に、プライマー層を介して、電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層が積層されたハードコートフィルムであって、前記プライマー層の表面の静摩擦係数が、0.6〜2.0の範囲であることを特徴とするものである。
以下、このハードコートフィルムの構成を詳しく説明する。
[基材フィルム]
まず、上記ハードコートフィルムの基材フィルムについて説明する。
本発明において、ハードコートフィルムの基材フィルムとしては、透明性、耐熱性、寸法安定性、低吸湿性、低複屈折性、及び光学的等方性等に優れるシクロオレフィンポリマー系フィルムを用いる。具体的には、シクロオレフィン類単位がポリマー骨格中に交互に又はランダムに重合し分子構造中に脂環構造を有するものであり、ノルボルネン系化合物、単環の環状オレフィン、環状共役ジエンおよびビニル脂環式炭化水素から選択される少なくとも一種の化合物を含んでなる共重合体であるシクロオレフィンコポリマーフィルム又はシクロオレフィンポリマーフィルムが対象となり何れかを適宜選択し使用できる。
また、本発明において、上記シクロオレフィンポリマー系フィルムの厚さは、用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性、表示装置の薄膜化等の観点から、10μm〜300μmの範囲であることが好ましく、更に好ましくは20μm〜200μmの範囲である。
また、上記シクロオレフィンポリマー系フィルムの耐熱性については、ハードコートフィルム用途に用いる場合には、試料に温度変化を与えた時にその熱変化を測定する熱重量測定(TG)法や示差走査熱量測定(DSC)法等で測定されるガラス転移温度が、120℃〜170℃程度のフィルムの使用が好ましい。
本発明において、上記シクロオレフィンポリマー系フィルムの片面にプライマー層を介してハードコート層を形成する場合には、ハードコート層が形成されないシクロオレフィンポリマー系フィルムの裏面には、シクロオレフィンポリマー系フィルム巻取りの圧着防止やハードコート層を形成時のフィルムの走行性向上を目的に、シクロオレフィンポリマー系フィルム製膜時に、共押し出し法でシクロオレフィンポリマー系フィルムとの離型性に優れるポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、或いはポリエステル樹脂を保護層として積層したフィルムとしてもよい。また、裏面に弱粘着層が形成されているポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、或いはポリエステル樹脂等の保護フィルムを貼着したものを用いることも可能である。
上記シクロオレフィンポリマー系フィルムとしては、例えば、市販されているゼオノア(商品名:日本ゼオン株式会社製)、オプティカ(商品名:三井化学株式会社製)、アートン(商品名:JSR株式会社製)、コゼック(商品名:倉敷紡績株式会社製)等が挙げられる。
[プライマー層]
次に、上記ハードコートフィルムのプライマー層について説明する。
本発明のハードコートフィルムにおいては、上記プライマー層の表面の静摩擦係数が、0.6〜2.0の範囲であることが重要である。
本発明のハードコートフィルムは、基材フィルムとハードコート層の間にプライマー層を用いており、このプライマー層は、その表面の静摩擦係数が、0.6〜2.0の範囲である表面特性を備えることにより、シクロオレフィンポリマー系フィルムを基材として用いた場合のハードコート層の密着性を向上させることができ、特に経時密着性を大幅に改善することができる。
なお、上記のプライマー層の表面とは、プライマー層上に積層されたハードコート層と接触する側の表面のことをいうものとする。
上記の静摩擦係数とは、2つの物体が接触しながら静止しているとき、接触面に働く最大摩擦力と接触面に垂直な抗力の大きさの比である。
本発明において、上記プライマー層の表面の静摩擦係数は、協和界面科学株式会社製の自動摩擦摩耗解析装置TSf−502を用いて、荷重200gf/cm、対金属板(ハードクロムメッキ表面、表面仕上げ3.2s)で測定された値である。
本発明において、ハードコート層の密着性(特に経時密着性)を向上させるためには、上記プライマー層の表面の静摩擦係数が0.6〜2.0の範囲であることが重要である。この静摩擦係数が2.0よりも大きい(2.0を超える)と、加工適性(ハードコート層塗工時のコーターでの搬送性)に不具合が生じることがある。また、この静摩擦係数が小さすぎても、上述の加工適性の不具合が生じるので、静摩擦係数の下限値としては、0.6以上であることが好ましい。本発明において、上記プライマー層の静摩擦係数は、0.6〜1.7の範囲であることが特に好ましい。
上記プライマー層の表面の静摩擦係数は、たとえば、プライマー層への微粒子の添加、プライマー層に使用する樹脂の種類、プライマー層塗料の溶媒の種類、プライマー層塗工時の乾燥条件の変更等によって調整することが可能である。
本発明のハードコートフィルムにおいて、プライマー層の表面の静摩擦係数が本発明の範囲内であることにより、ハードコート層の密着性(特に経時密着性)を向上させることができる理由は以下のように推測される。
静摩擦係数は、表面凹凸が大きい場合、接触面が点接触になり、小さい値となることが分かっていて、表面凹凸状態を巨視的に示すひとつの指標である。
プライマー層に表面凹凸があることでハードコート層との接触界面が大きくなること(プライマー層の表面積の増大)、更に、プライマー層の表面凹凸の中にハードコート層が入り込み固まってクサビのような働き(投錨力)も作用し、特に経時での密着性を向上させる効果がある。但し、プライマー層の過剰な表面凹凸はハードコート層塗工後の外観不良の原因となる。
このようにプライマー層表面の静摩擦係数は、プライマー層の表面凹凸状態の指標でもあり、ハードコート層との密着性に関与する。それゆえ、プライマー層表面の静摩擦係数を本発明の範囲内にすると、プライマー層最表層の表面凹凸状態を、ハードコート層との密着性が最適な範囲に調整することができる。
また、本発明においては、さらに、上記プライマー層の表面の静摩擦係数と動摩擦係数の比(静摩擦係数/動摩擦係数)が、2.5以下であることが好ましい。
ここで、上記の動摩擦係数とは、2つの物体が接触しながら運動しているとき、接触面に働く摩擦力と接触面に垂直な抗力の大きさの比である。本発明において、上記プライマー層の表面の動摩擦係数は、協和界面科学株式会社製の自動摩擦摩耗解析装置TSf−502を用いて、荷重200gf/cm、対金属板(ハードクロムメッキ表面、表面仕上げ3.2s)で測定された値である。また、静摩擦係数については上記したとおりである。
上記プライマー層の表面の静摩擦係数と動摩擦係数の比(静摩擦係数/動摩擦係数)は、真実接触点の面積(真実接触面積)の分子間力による凝着を切るのに必要な力の指標を示すようなものであるが、本発明において、この比が2.5以下であることにより、静摩擦係数と動摩擦係数との差異が少ないために、プライマー層上に積層したハードコート層の、特に動的な密着性(剥離界面で起こる、連続的な剥離に抗する)に対しても好適な密着性を示すことができる。この比が2.5よりも大きい(2.5を超える)と、静摩擦係数と動摩擦係数の差が大きくなるため密着性に劣り、更に加工適性(ハードコート層塗工時のコーターでの搬送性)に不具合が生じることがある。
本発明において、上記プライマー層の表面の静摩擦係数と動摩擦係数の比(静摩擦係数/動摩擦係数)は、1.0〜2.0の範囲であることが特に好ましい。
なお、上述のプライマー層への微粒子の添加、プライマー層樹脂の種類、プライマー層塗料の溶媒の種類、プライマー層塗工時の乾燥条件の変更等によってプライマー層表面の静摩擦係数だけでなく動摩擦係数についても調整することは可能である。これにより、プライマー層表面の静摩擦係数と動摩擦係数の比(静摩擦係数/動摩擦係数)についても調整することが可能である。
また、本発明においては、さらに、上記プライマー層表面における表面自由エネルギーが、22mN/m以上であることが好ましい。
ここで、上記の表面自由エネルギーとは、「表面の単位面積が持つ自由エネルギー」として定義され、プライマー層表面が層内部(バルク)に比べて過剰に持つエネルギーのことである。固体の表面自由エネルギーが大きいほど、気体や微粒子は吸着されやすく、液体は濡れやすく、他の固体と付着しやすくなる。
この表面自由エネルギーは接触角計などを用い、水とヘキサデカンでの接触角をKaelble−Uy法にて解析することによって測定することができる。本発明において、上記プライマー層の表面自由エネルギーは、具体的には、協和界面科学株式会社製の全自動接触角計DM−701を用いて、プライマー層表面に水(純水)を1μL滴下し、30秒後の接触角を測定し、更に、プライマー層表面にn-ヘキサデカンを1μL滴下し、30秒後測定し、得られた水の接触角、及びn-ヘキサデカンの接触角を用いて、Kaelble−Uyの方法によって算出した値である。
プライマー層の表面自由エネルギーの値は、ハードコート層の樹脂との付着性の指標を示すものであり、本発明において、この表面自由エネルギーが22mN/m以上であることにより、ハードコート層樹脂の分子とプライマー層の分子との分子間力が大きくなるため、ハードコート層の密着性向上に寄与する。この表面自由エネルギーが22mN/m未満であると、ハードコート層との密着性が劣化する問題が生じたり、ハードコート層の塗工時にハジキ欠陥が発生することがある。
本発明において、上記プライマー層の表面自由エネルギーは、25mN/m以上であることが特に好ましい。
なお、上記プライマー層の表面自由エネルギーが大きすぎても、汚れが付着しやすくなり異物混入を招いたり、耐擦傷性が低下する問題が生じるので、上限値としては、40mN/m以下であることが好ましく、38mN/m以下であることがさらに好ましく、35mN/m以下がより好ましい。
なお、プライマー層の表面自由エネルギーは、たとえば、プライマー層に使用する樹脂の種類、プライマー層へのレベリング剤の添加(レベリング剤の種類や添加量等)によって調整することが可能である。
また、本発明においては、さらに、上記プライマー層表面の水の接触角が、110度以下であることが好ましい。
本発明においては、上記プライマー層表面の水の接触角は、後述の方法によって測定された値である。すなわち、協和界面科学株式会社製の全自動接触角計DM−701を用いて、プライマー層表面に水(純水)を1μL滴下し、30秒後の接触角を測定した。
プライマー層表面の水の接触角の値は、ハードコート層に使用している樹脂との付着性を示すひとつの指標であるが、本発明において、このプライマー層表面の水の接触角が110度以下であることにより、ハードコート層樹脂の分子とプライマー層の分子との分子間力が大きくなるため、その結果ハードコート層の密着性向上に寄与する。他方、この接触角が110度よりも大きいと、ハードコート層との密着性が劣化する問題が生じたり、ハードコート層の塗工時にハジキ欠陥が発生することがある。
本発明において、上記プライマー層表面の水の接触角は、105度以下であることが特に好ましい。
なお、この水接触角が低すぎると、プライマー層の耐擦傷性に劣る傾向があり、50度以上であることが望ましい。
なお、プライマー層表面の水の接触角は、たとえば、プライマー層へのレベリング剤の添加(レベリング剤の種類や添加量等)、プライマー層に使用する樹脂の種類の変更等によって調整することが可能である。
また、本発明においては、さらに、上記プライマー層の表面の算術平均表面粗さ(Ra)が、0.5nm〜15.0nmの範囲であることが好ましい。
上記の算術平均表面粗さ(Ra)とは、JIS B 0031(1994)/JIS B 0061(1994)付属書で定義される、ある基準長さにおける粗さ曲線の平均線からの絶対偏差を平均化した値であり、つまり平均線以下の粗さ曲線部分を正値側に折り返した時の凹凸の平均値をいう。算術平均表面粗さ(Ra)の具体的な評価法(測定法)は後述する。
ハードコート層の密着性(特に経時密着性)を向上させる観点から、上記プライマー層の表面の算術平均表面粗さ(Ra)は0.5nm〜15.0nmの範囲であることが好ましい。この算術平均表面粗さ(Ra)が0.5nm未満であると、ハードコート層の密着性が劣化したり、加工適性(ハードコート層塗工時のコーターでの搬送性)が悪化したりする場合がある。また、この算術平均表面粗さ(Ra)が15.0nmよりも大きい(15.0nmを超える)と、ハードコート層塗工後に外観不良となる場合がある。上記プライマー層の算術平均表面粗さ(Ra)は、1.0nm〜13.0nmの範囲であることが更に好ましい。
上記プライマー層の算術平均表面粗さ(Ra)は、たとえば、プライマー層への微粒子の添加、プライマー層に使用する樹脂の種類、プライマー層塗料の溶媒の種類、プライマー層塗工時の乾燥条件の変更等によって調整することが可能である。
本発明のハードコートフィルムにおいては、上記プライマー層の表面の静摩擦係数が0.6〜2.0の範囲であることが重要であるが、さらに、プライマー層表面の算術平均表面粗さ(Ra)が上記の好ましい範囲内であると、プライマー層最表層の表面凹凸状態を、ハードコート層との密着性がより最適な範囲に調整することができ、その結果、ハードコート層の密着性(特に経時密着性)をより向上させることができる。
本発明において、上記プライマー層に使用される樹脂としては、被膜を形成する樹脂であれば特に制限なく用いることができる。
たとえば、上記基材フィルム(シクロオレフィンポリマー系フィルム)との密着性の観点からは、ポリオレフィン系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、メチルメタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、イソシアネート系樹脂、繊維素系樹脂、またはこれらの樹脂の2種類以上の混合物などを好ましく用いることができる。
このプライマー層には、フィルム面同士のブロッキング防止の観点から、無機または有機微粒子を含むことができる。また、プライマー層にこのような無機または有機微粒子を含むことにより、上述のプライマー層の表面特性(静摩擦係数、算術平均表面粗さ(Ra)など)を調整することもできる。
無機微粒子としては、アルミナ、酸化亜鉛、シリカ、酸化チタン、酸化セリウム等の微粒子を例示することができ、有機微粒子としては、アクリル、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、ポリエチレン、スチレンアクリル、ポリエステル等の微粒子を例示することができる。粒子径としては、例えば0.05μm〜0.20μmの微粒子の使用が好ましい。
また、上記プライマー層には、表面特性(表面自由エネルギー、水接触角など)の調整や、塗工性の改善を目的にレベリング剤の配合が可能であり、例えばフッ素系、アクリル系、シロキサン系、及びそれらの付加物或いは混合物などの公知のレベリング剤を使用可能である。配合量は、例えば表面特性の調整や塗工性に応じて適宜決定される。
また、上記プライマー層に添加するその他の添加剤として、本発明の効果を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、消泡剤、防汚剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤等を必要に応じて配合してもよい。
本発明における上記プライマー層の塗膜厚みは、特に制約されるわけではないが、基材フィルム及びハードコート層との密着性、或いはハードコート層の鉛筆硬度などに悪影響を及ぼさない範囲の0.1μm〜5.0μmの範囲が好適である。なお、プライマー層の塗膜厚みは、マイクロメーターで実測することにより測定可能である。
本発明において、上記プライマー層は、プライマー層を形成する樹脂に、必要に応じて、無機又は有機微粒子、レベリング剤、その他の添加剤等を適当な有機溶媒に溶解、分散した塗料(プライマー層用塗料)を上記シクロオレフィンポリマー系フィルム(基材フィルム)上に塗工、乾燥して形成される。この場合の有機溶媒としては、含有される上記樹脂の溶解性に応じて適宜選択でき、少なくとも固形分(樹脂、その他添加剤)を均一に溶解或いは分散できる溶媒であること、及び塗工時の作業性、乾燥性の観点から、たとえば沸点が50℃〜160℃の有機溶媒の使用が好ましい。そのような有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、n−ヘプタン等の芳香族系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブタノール系等のアルコール系溶剤等の公知の有機溶媒を単独或いは適宜数種類組み合わせて使用することも可能である。
本発明において、上記のプライマー層用塗料を基材フィルム上に塗工する方法としては、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、ファウンテンバー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知の塗工方式で塗工することができる。シクロオレフィンポリマー系フィルム上に塗工された塗料は、乾燥条件(乾燥炉内温度、炉内風速、乾燥時間など)を適宜調節しながら、通常50〜120℃程度の温度で乾燥し溶剤を除去し、塗膜を形成させる。
[ハードコート層]
次に、上記ハードコートフィルムのハードコート層について説明する。
本発明において、上記ハードコート層に含まれる樹脂としては、被膜を形成する樹脂であれば特に制限なく用いることができるが、特にハードコート層の表面硬度(鉛筆硬度、耐擦傷性)を付与し、また、紫外線の露光量によって架橋度合を調節することが可能であり、ハードコート層の表面硬度の調節が可能になるという点で電離放射線硬化型樹脂を用いることが好ましい。
本発明に用いる電離放射線硬化型樹脂は、紫外線(以下、「UV」と略記する。)や電子線(以下、「EB」と略記する。)を照射することによって硬化する透明な樹脂であれば、特に限定されるものではないが、塗膜硬度及びハードコート層が3次元的な架橋構造を形成するために1分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するUVまたはEBにて硬化可能な多官能アクリレートからなるものが好ましい。分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するUVまたはEB硬化可能な多官能アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等を挙げることができる。なお、多官能アクリレートは単独で使用するだけでなく、2種以上の複数を混合し使用してもよい。
さらに、本発明に用いる電離放射線硬化型樹脂は、重量平均分子量が700〜3600の範囲内であるポリマーを用いることが好ましく、重量平均分子量700〜3000の範囲のものがより好ましく、重量平均分子量700〜2400がさらに好ましい。重量平均分子量が700未満であると、UVやEB照射により硬化した際の硬化収縮が大きく、ハードコートフィルムがハードコート層面側に反りかえる現象(カール)が大きくなり、その後の加工工程を経るに不具合が生じ、加工適性が悪い。また、重量平均分子量が3600を超えると、ハードコート層の柔軟性が高まるが、硬度が不足するため適さない。
また、本発明に用いる電離放射線硬化型樹脂は、重量平均分子量が1500未満である場合は、1分子中の官能基数は3個以上10個未満であることが望ましい。また、上記電離放射線硬化型樹脂の重量平均分子量が1500以上である場合は、1分子中の官能基数は3個以上20個以下であることが望ましい。上記範囲内であれば、耐熱条件下(100℃で5分間保存)でのクラックの発生を抑えつつ、カールが抑制でき、適切な加工適性を維持できる。
また、上記ハードコート層に含まれる樹脂としては、上述の電離放射線硬化型樹脂の他に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、アクリル、スチレン−アクリル、繊維素等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、ウレア樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ、珪素樹脂等の熱硬化性樹脂をハードコート層の硬度、耐擦傷性を損なわない範囲内で配合してもよい。
また、上記ハードコート層に無機酸化物微粒子を含有させ、表面硬度(耐擦傷性)の更なる向上を図ることも可能である。この場合、無機酸化物微粒子の平均粒子径は5〜50nmの範囲であることが好ましく、更に好ましくは平均粒子径10〜20nmの範囲である。平均粒子径が5nm未満であると、十分な表面硬度を得ることが困難である。一方、平均粒子径が50nmを超えると、ハードコート層の光沢、及び透明性が低下し易く、また、可撓性も低下するおそれがある。
本発明において、上記無機酸化物微粒子としては、例えばアルミナやシリカなどを挙げることができる。これらの中でも、アルミニウムを主成分とするアルミナは高硬度を有するため、シリカよりも少ない添加量で効果を得られることから特に好適である。
本発明において、無機酸化物微粒子の含有量は、ハードコート層3の電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して0.1〜10.0重量部であることが好ましい。無機酸化物微粒子の含有量が0.1重量部未満であると、表面硬度(耐擦傷性)の向上効果が得られ難い。一方、含有量が10.0重量部を超えると、ヘイズが上昇するため好ましくない。
上記ハードコート層を形成するためのハードコート塗料には、光重合開始剤を含むことができる。そのような光重合開始剤としては、市販のIRGACURE 651やIRGACURE 184(いずれも商品名:BASF社製)などのアセトフェノン類、また、IRGACURE 500(商品名:BASF社製)などのベンゾフェノン類を使用できる。
上記ハードコート層には、塗工性の改善を目的にレベリング剤の使用が可能であり、たとえばフッ素系、アクリル系、シロキサン系、及びそれらの付加物或いは混合物などの公知のレベリング剤を使用可能である。配合量は、ハードコート層の樹脂の固形分100重量部に対し0.03重量部〜3.0重量部の範囲での配合が可能である。また、タッチパネル用途等において、タッチパネル端末のカバーガラス(CG)、透明導電部材(TSP)、液晶モジュール(LCM)等との接着を目的に光学透明粘着剤OCRを用いた対接着性が要求される場合には、表面自由エネルギーの高い(凡そ40mN/m以上)アクリル系レベリング剤やフッ素系のレベリング剤の使用が好ましい。
上記ハードコート層に添加するその他の添加剤として、本発明の効果を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、消泡剤、表面張力調整剤、防汚剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤等を必要に応じて配合してもよい。
上記ハードコート層は、上述の電離放射線硬化型樹脂の他に、光重合開始剤、その他の添加剤等を適当な溶媒に溶解、分散したハードコート塗料を上記プライマー層上に塗工、乾燥した後、UV又はEB等の電離放射線を照射することにより、光重合が起こりハード性に優れるハードコート層を得ることができる。溶媒としては、配合される上記樹脂の溶解性に応じて適宜選択でき、少なくとも固形分(樹脂、光重合開始剤、その他添加剤等)を均一に溶解あるいは分散できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、n−ヘプタンなどの芳香族系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール系等のアルコール系溶剤等の公知の有機溶媒を単独或いは適宜数種類組み合わせて使用することもできる。
上記ハードコート層を形成するハードコート塗料の塗工方法については、特に限定はないが、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、ファウンテンバー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知の塗工方式で塗設した後、通常50〜120℃程度の温度で乾燥する。
上記ハードコート層の塗膜厚さは、特に制約されるわけではないが、例えば1.0μm〜5.0μmの範囲であることが好ましく、更に好ましくは1.5μm〜3.5μmの範囲である.塗膜厚さが1.0μm未満では、必要な耐擦傷性の低下、及び鉛筆硬度が低下するため好ましくない。また、塗膜厚さが5.0μmを超えた場合は、カールが強く発生しやすく製造工程などで取扱い性が低下するため好ましくない。なお、ハードコート層の塗膜厚さは、マイクロメーターで実測することにより測定可能である。
[ハードコートフィルムの製造方法]
本発明は、以上説明した構成のハードコートフィルムの製造方法についても提供する。
すなわち、本発明は、シクロオレフィンポリマー系基材フィルム上に、プライマー層を介して、電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層を有するハードコートフィルムの製造方法であって、前記シクロオレフィンポリマー系基材フィルム上に、プライマー層用塗料を塗布し、乾燥して得られるプライマー層の表面の静摩擦係数が、0.6〜2.0の範囲であり、次いで、該プライマー層上に、電離放射線硬化型樹脂を含むハードコート層用塗料を塗布し、乾燥してハードコート層を形成した後、電離放射線照射を施すことを特徴とするハードコートフィルムの製造方法である。
上記のプライマー層用塗料およびハードコート層用塗料の調製や、これらの塗料の塗工方法、塗工膜の乾燥方法等については上記したとおりである。また、上記ハードコート層形成後の電離放射線(UV、EB等)の照射量は、ハードコート層に十分なハード性を持たせるに必要な照射量であればよく、電離放射線硬化型樹脂の種類等に応じて適宜設定することができる。
また、上記の基材フィルム上に、プライマー層用塗料を塗布し、乾燥して得られる上記プライマー層表面における表面自由エネルギーが22mN/m以上であることがさらに好ましい。また、上記プライマー層表面の水の接触角が110度以下であることがさらに好ましい。
また、上記プライマー層の表面の静摩擦係数と動摩擦係数の比(静摩擦係数/動摩擦係数)が、2.5以下であることがさらに好ましい。また、上記プライマー層の表面の算術平均表面粗さ(Ra)が、0.5nm〜15.0nmの範囲であることがさらに好ましい。
以上詳細に説明したように、本発明によれば、シクロオレフィンポリマー系基材フィルムの少なくとも片面に、プライマー層を介して、電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層が積層され、上記プライマー層の表面の静摩擦係数が、0.6〜2.0の範囲であることにより、シクロオレフィンポリマー系フィルムを基材として用いた場合のハードコート層との密着性、特に経時密着性に優れたハードコートフィルムを得ることができる。
次に、実施例を挙げて本発明の実施の形態をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、特に断りのない限り、以下に記載する「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。
[実施例1]
<プライマー層塗料の調製>
ポリオレフィン系樹脂(変性ポリオレフィン)「ユニストールP-802(商品名)」(固形分22%、三井化学株式会社製)を、酢酸ブチル/トルエン=85/15(重量%)にて固形分濃度(塗料濃度)が7.0%となるまで希釈しプライマー層塗料を調製した。
<ハードコート層塗料の調製>
ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂「ARTRESIN UN−908(商品名)」(固形分100%、(メタ)アクリロイルオキシ基数:9、重量平均分子量:3600、根上工業株式会社製)100部を主剤とし、イルガキュア184(光重合開始剤、BASF社製)3.5部と、TINUVIN 292(ヒンダードアミン系光安定化剤、BASF社製)2.5部と、レベリング剤メガファックRS75(フッ素系レベリング剤、DIC株式会社製)0.3部を酢酸ブチル/n−プロピルアルコール=50/50(重量部)で紫外線硬化型樹脂の塗料中の固形分濃度が35%となるまで希釈し十分攪拌してハードコート層塗料を調製した。
<プライマー層塗布フィルムの作製>
シクロオレフィンフィルムとして厚さ40μmのゼオノアフィルムZF14(日本ゼオン株式会社製)の片面に、上記のプライマー層塗料を、バーコーター(#4)を用いて塗工し、100℃の乾燥炉で、炉内の風速1m/秒とし、60秒間熱風乾燥させて乾燥固化し、塗膜厚み0.4μmのプライマー層を形成させ、プライマー層塗布フィルムを得た。
こうして得られたプライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を以下の項目について測定した。その結果を他の実施例及び比較例とともに纏めて表1に示した。
(1)静摩擦係数
協和界面科学株式会社製の自動摩擦摩耗解析装置TSf−502を用いて、荷重200gf/cm、対金属板(ハードクロムメッキ表面、表面仕上げ3.2s)での静摩擦係数を測定した。
また、同様にして動摩擦係数を測定した。その結果から、静摩擦係数と動摩擦係数の比(静摩擦係数/動摩擦係数)を算出した。
(2)表面自由エネルギー
協和界面科学株式会社製の全自動接触角計DM−701を用いて、プライマー層表面に水(純水)を1μL滴下し、30秒後の接触角を測定する。更に、プライマー層表面にn-ヘキサデカンを1μL滴下し、30秒後測定する。このようにして測定した水の接触角、及びn-ヘキサデカンの接触角を用いて、Kaelble−Uyの方法により表面自由エネルギーを算出した。
(3)水の接触角
協和界面科学株式会社製の全自動接触角計DM−701を用いて、プライマー層表面に水(純水)を1μL滴下し、30秒後の接触角を測定した。
(4)算術平均表面粗さ(Ra)
(株)菱化システム製の三次元表面粗計「VertScan2.0」を用いて測定した。
[光学条件]
Camera:SONY HR−50 1/3型
Objective:10×(10倍)
Tube:1×Body
Relay:No Relay
Filter:530white
※光量調節:Lampの値が50〜95の範囲内に入るよう自動で実施。
[測定条件]
Mode:Phaze
Size:640×480
Range(μm):Start(10)、Stop(−10)
<ハードコートフィルムの作製>
次に、上記とまったく同様にして作製したプライマー層塗布フィルムのプライマー層上に、上記のハードコート層塗料を、バーコーターを用いて塗工し、80℃の乾燥炉で1分間熱風乾燥させ、塗膜厚み2.5μmの塗工層を形成した。これを、塗工面より60mmの高さにセットされたUV照射装置を用い、UV照射量180mJ/cmにて硬化させてハードコート層を形成し、本実施例のハードコートフィルムを作製した。
[実施例2]
実施例1のプライマー層塗料に配合した樹脂を、ポリオレフィン系樹脂(変性ポリオレフィン)「ユニストールP−901(商品名)」(固形分22%、三井化学株式会社製)に変更し、固形分濃度を7.0%としたプライマー層塗料を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてプライマー層塗布フィルムおよびハードコートフィルム(実施例2)を作製した。また、プライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を実施例1と同様に測定した。
[実施例3]
実施例1のプライマー層塗料に配合した樹脂を、ポリオレフィン系樹脂(変性ポリオレフィン)「ユニストールP−902(商品名)」(固形分22%、三井化学株式会社製)に変更し、固形分濃度を7.0%としたプライマー層塗料を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてプライマー層塗布フィルムおよびハードコートフィルム(実施例3)を作製した。また、プライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を実施例1と同様に測定した。
[実施例4]
実施例3のプライマー層塗料の塗工後の乾燥条件を、60℃の乾燥炉で、炉内の風速1m/秒とし、60秒間熱風乾燥としたこと以外は、実施例3と同様にしてプライマー層塗布フィルムおよびハードコートフィルム(実施例4)を作製した。また、プライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を実施例1と同様に測定した。
[実施例5]
プライマー層塗料に配合した樹脂を、実施例1と同じポリオレフィン系樹脂(変性ポリオレフィン)「ユニストールP−802(商品名)」(固形分22%、三井化学株式会社製)とし、固形分濃度を5.5%としたプライマー層塗料を用い、塗膜厚み0.3μmのプライマー層としたこと以外は、実施例1と同様にしてプライマー層塗布フィルムおよびハードコートフィルム(実施例5)を作製した。また、プライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を実施例1と同様に測定した。
[実施例6]
実施例5のプライマー層塗料に、さらにレベリング剤フタージェント−602A(フッ素系レベリング剤、株式会社ネオス製)0.5%を配合したプライマー層塗料を用いたこと以外は、実施例5と同様にしてプライマー層塗布フィルムおよびハードコートフィルム(実施例6)を作製した。また、プライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を実施例1と同様に測定した。
[実施例7]
実施例5のプライマー層塗料に、さらにレベリング剤メガファックRS−75(フッ素系レベリング剤、DIC株式会社製)0.5%を配合したプライマー層塗料を用いたこと以外は、実施例5と同様にしてプライマー層塗布フィルムおよびハードコートフィルム(実施例7)を作製した。また、プライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を実施例1と同様に測定した。
[実施例8]
実施例1のプライマー層塗料に配合した樹脂を、ポリオレフィン系樹脂(変性ポリオレフィン)「ユニストールP−901(商品名)」(固形分22%、三井化学株式会社製)に変更し、固形分濃度を5.5%としたプライマー層塗料を用い、塗膜厚み0.3μmのプライマー層としたこと以外は、実施例1と同様にしてプライマー層塗布フィルムおよびハードコートフィルム(実施例8)を作製した。また、プライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を実施例1と同様に測定した。
[実施例9]
実施例8のプライマー層塗料に、さらにレベリング剤フタージェント−602A(フッ素系レベリング剤、株式会社ネオス製)0.5%を配合したプライマー層塗料を用いたこと以外は、実施例8と同様にしてプライマー層塗布フィルムおよびハードコートフィルム(実施例9)を作製した。また、プライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を実施例1と同様に測定した。
[実施例10]
実施例8のプライマー層塗料に、さらにレベリング剤メガファックRS−75(フッ素系レベリング剤、DIC株式会社製)0.5%を配合したプライマー層塗料を用いたこと以外は、実施例8と同様にしてプライマー層塗布フィルムおよびハードコートフィルム(実施例10)を作製した。また、プライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を実施例1と同様に測定した。
[実施例11]
実施例1のプライマー層塗料に配合した樹脂を、ポリオレフィン系樹脂(変性ポリオレフィン)「ユニストールP−902(商品名)」(固形分22%、三井化学株式会社製)に変更し、固形分濃度を5.5%としたプライマー層塗料を用い、塗膜厚み0.3μmのプライマー層としたこと以外は、実施例1と同様にしてプライマー層塗布フィルムおよびハードコートフィルム(実施例11)を作製した。また、プライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を実施例1と同様に測定した。
[実施例12]
実施例11のプライマー層塗料に、さらにレベリング剤フタージェント−602A(フッ素系レベリング剤、株式会社ネオス製)0.5%を配合したプライマー層塗料を用いたこと以外は、実施例11と同様にしてプライマー層塗布フィルムおよびハードコートフィルム(実施例12)を作製した。また、プライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を実施例1と同様に測定した。
[実施例13]
実施例11のプライマー層塗料に、さらにレベリング剤メガファックRS−75(フッ素系レベリング剤、DIC株式会社製)0.5%を配合したプライマー層塗料を用いたこと以外は、実施例11と同様にしてプライマー層塗布フィルムおよびハードコートフィルム(実施例13)を作製した。また、プライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を実施例1と同様に測定した。
[実施例14]
実施例1のプライマー層塗料に配合した樹脂を、ポリオレフィン系樹脂(変性ポリオレフィン)「アウローレンS−5419T(商品名)」(固形分15%、日本製紙株式会社製)に変更し、固形分濃度を3.0%としたプライマー層塗料を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてプライマー層塗布して、塗工厚み0.2μmのプライマー層を形成させ、プライマー層塗布フィルムおよびハードコートフィルム(実施例14)を作製した。また、プライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を実施例1と同様に測定した。
[実施例15]
実施例14のプライマー層塗料を、バーコーター(#6)を用いて塗工し、塗膜厚み0.3μmのプライマー層を形成させたこと以外は、実施例14と同様にしてプライマー層塗布フィルムおよびハードコートフィルム(実施例15)を作製した。また、プライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を実施例1と同様に測定した。
[実施例16]
実施例7のプライマー層塗料を、バーコーター(#6)を用いて塗工し、塗膜厚み0.6μmのプライマー層を形成させたこと以外は、実施例7と同様にしてプライマー層塗布フィルムおよびハードコートフィルム(実施例16)を作製した。また、プライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を実施例1と同様に測定した。
[実施例17]
実施例7のプライマー層塗料を、バーコーター(#10)を用いて塗工し、塗膜厚み1.0μmのプライマー層を形成させたこと以外は、実施例7と同様にしてプライマー層塗布フィルムおよびハードコートフィルム(実施例17)を作製した。また、プライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を実施例1と同様に測定した。
[実施例18]
実施例5のプライマー層塗料に、さらにシリカ微粒子スラリー「NanoTek Slurry(商品名)」(シリカ平均粒径30nm、プロピレングリコールモノメチルエーテル溶媒、固形分15%、CIKナノテック株式会社製)を固形分として30%を添加したプライマー層塗料を用いたこと以外は、実施例5と同様にしてプライマー層塗布フィルムおよびハードコートフィルム(実施例18)を作製した。また、プライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を実施例1と同様に測定した。
[比較例1]
スチレンアクリル系樹脂「ARUFON−UG4040(商品名)」(固形分100%、東亜合成株式会社製)を、酢酸ブチル/トルエン=85/15(重量%)にて固形分濃度(塗料濃度)が5.5%となるまで希釈しプライマー層塗料を調製した。
実施例1と同じ厚さ40μmのゼオノアフィルムZF14(日本ゼオン株式会社製)の片面に、上記のプライマー層塗料を、バーコーター(#4)を用いて塗工し、100℃の乾燥炉で、炉内の風速1m/秒とし、60秒間熱風乾燥させて乾燥固化し、塗膜厚み0.3μmのプライマー層を形成させ、プライマー層塗布フィルムを得た。
こうして得られたプライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を実施例1と同様に測定した。
次に、上記とまったく同様にして作製したプライマー層塗布フィルムのプライマー層上に、実施例1のハードコート層塗料を実施例1と同様にして塗工し、UV照射で硬化させてハードコート層を形成し、比較例1のハードコートフィルムを作製した。
[比較例2]
比較例1のプライマー層塗料の塗工後の乾燥条件を、60℃の乾燥炉で、炉内の風速1m/秒とし、60秒間熱風乾燥としたこと以外は、比較例1と同様にしてプライマー層塗布フィルムおよびハードコートフィルム(比較例2)を作製した。また、プライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を実施例1と同様に測定した。
[比較例3]
比較例1のプライマー層塗料に配合した樹脂を、アクリル系樹脂「サーモラックLG−45M−30(商品名)」(固形分30%、綜研化学株式会社製)に変更し、固形分濃度を5.5%としたプライマー層塗料を用いたこと以外は、比較例1と同様にしてプライマー層塗布フィルムおよびハードコートフィルム(比較例3)を作製した。また、プライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を実施例1と同様に測定した。
[比較例4]
比較例3のプライマー層塗料の塗工後の乾燥条件を、60℃の乾燥炉で、炉内の風速1m/秒とし、60秒間熱風乾燥としたこと以外は、比較例3と同様にしてプライマー層塗布フィルムおよびハードコートフィルム(比較例4)を作製した。また、プライマー層塗布フィルムのプライマー層の表面特性を実施例1と同様に測定した。
以上のようにして作製した実施例及び比較例の各ハードコートフィルムを次の項目について評価し、その結果を纏めて表1に示した。
(1)塗膜の厚み
プライマー層及びハードコート層の塗膜の形成厚みは、Thin−Film Analyzer F20(商品名)(FILMETRICS社製)を用いて測定した。
(2)密着性(初期密着性および経時密着性(湿熱密着性))
初期密着性は、JIS−K5600−5−6に準じて評価した。具体的には、各ハードコートフィルムについて、通常条件下、すなわち恒温恒湿条件下(23℃、50%RH)で、碁盤目剥離試験治具を用い1mmのクロスカットを100個作製し、積水化学工業株式会社製の粘着テープNo.252をその上に貼り付け、ヘラを用いて均一に押し付け後、60度方向に剥離し、ハードコート層の残存個数を4段階評価した。評価基準は下記の通りであり、◎と○評価品(つまりハードコート層の残存率90%以上)を密着性は合格と判定した。
◎:100個
○:99〜90個
△:89〜50個
×:49〜0個
また、湿熱密着性(湿熱条件下での経時密着性)は、各ハードコートフィルムを湿熱条件下(80℃、90%RH)に30日間保存した後、上記と同様にして碁盤目剥離試験を行い、ハードコート層の密着性を4段階評価した。評価基準は上記の初期密着性の場合と同様である。
(3)鉛筆硬度
各ハードコートフィルムについて、JIS−K−5600−5−4に準じた試験法により鉛筆硬度を測定した。表面に傷の発生なき硬度を測定した。判定基準については、硬度3B以上は合格とした。
(4)耐擦傷性
各ハードコートフィルムについて、JIS−K−5600−5−10に準じた試験法にて、ハードコート層面を、スチールウール#0000を用い、荷重1kgを掛け10往復摩擦し、傷のつき具合を次の基準で評価した。○評価品を耐擦傷性は良好とした。△評価品も製品として使用可能である。
○:傷の発生なし
△:傷が少し発生する
×:傷が無数に発生する
Figure 2019128544
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例によれば、シクロオレフィンポリマー系フィルムを基材として用い、ハードコート層との密着性、特に経時密着性に優れたハードコートフィルムを得ることができる。また、本発明の実施例によれば、ハードコート層のハード性(鉛筆硬度、耐擦傷性)にも優れたハードコートフィルムを得ることができる。
一方、プライマー層の表面の静摩擦係数が本発明の範囲を満たしていない比較例のハードコートフィルムでは、特に初期密着性、経時密着性がいずれも劣っており、ハードコート層の密着不良が発生しやすい。なお、比較例のハードコートフィルムにおいては、ハードコート層の密着不良が原因で、上記の鉛筆硬度試験は適正に評価出来なかった。

Claims (7)

  1. シクロオレフィンポリマー系基材フィルムの少なくとも片面に、プライマー層を介して、電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層が積層されたハードコートフィルムであって、
    前記プライマー層の表面の静摩擦係数が、0.6〜2.0の範囲であることを特徴とするハードコートフィルム。
  2. 前記プライマー層の表面自由エネルギーが、22mN/m以上であることを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルム。
  3. 前記プライマー層表面の水の接触角が、110度以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のハードコートフィルム。
  4. 前記ハードコート層は、前記電離放射線硬化型樹脂として、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートを含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のハードコートフィルム。
  5. シクロオレフィンポリマー系基材フィルム上に、プライマー層を介して、電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層を有するハードコートフィルムの製造方法であって、
    前記シクロオレフィンポリマー系基材フィルム上に、プライマー層用塗料を塗布し、乾燥して得られるプライマー層の表面の静摩擦係数が、0.6〜2.0の範囲であり、
    次いで、該プライマー層上に、電離放射線硬化型樹脂を含むハードコート層用塗料を塗布し、乾燥してハードコート層を形成した後、電離放射線照射を施すことを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。
  6. 前記プライマー層の表面自由エネルギーが、22mN/m以上であることを特徴とする請求項5に記載のハードコートフィルムの製造方法。
  7. 前記プライマー層表面の水の接触角が、110度以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載のハードコートフィルムの製造方法。

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