JP2013170013A - ハードコートフィルムロールおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】保護フィルムを用いずに、静電容量方式タッチパネル内面用ハードコートフィルムとしても好適に用いることができる程度に欠点が抑制されたハードコートフィルムを得ることができる、ハードコートフィルムロールおよびそれを製造するための製造方法を提供すること。
【解決手段】厚み20〜55μmの基材フィルムの片面にハードコート層を有し、該ハードコート層表面における中心線平均表面粗さRahが0.2〜2.0nm、他方の表面における中心線平均表面粗さRasが1.0〜5.0nmであるハードコートフィルムを巻き取って得られるハードコートフィルムロールの製造方法であって、ロールにおいて巻き重なるハードコートフィルム間に保護フィルムを有さず、巻き取りにおいてタッチロールを実質的に用いず、巻き取り張力40〜110N/m、巻き取り速度10〜40m/分、の巻き取り条件でロールを巻き取った後、巻き取り張力を40〜110N/mに保持したまま1〜10分間保持する、ハードコートフィルムロールの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ハードコートフィルムロールの製造方法およびかかる製造方法により得られたハードコートフィルムロールに関する。
近年、タッチパネルは、透明ないし半透明の入力デバイスをLCD(液晶表示装置)等のディスプレイ上に直接設けることにより、画面を見ながら入力操作することが可能であり、誰にでも簡単に操作ができ、また文字や絵の入力も可能であることから、マン/マシンインターフェースとして多く用いられるようになってきた。
タッチパネルは、光学方式、超音波方式、電磁誘導方式、静電容量方式、抵抗膜方式などがある。このうち、使用するフィルムの枚数が少ないために透明性に優れる、導電膜同士の接触がないために磨耗による劣化がない、複数点での検知が可能等の理由から、近年、静電容量方式のタッチパネルがよく用いられるようになってきた。
静電容量方式のタッチパネルは、キャリアフィルムとしてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの上に、エッチング処理されたITO層を有するPETフィルムを複数枚積層した後、ディスプレイにおいておもて面となる側の表面にハードコート層もしくはハードコートフィルムを積層して得られる。そして、得られた静電容量方式のタッチパネルは、キャリアフィルム側をLCD等のディスプレイに載せて(この場合空気層が間に存在する)、あるいは粘着剤等を用いてLCD等のディスプレイに貼り合わされて用いられる(特許文献1)。
特開2011−177938号公報
上述したような静電容量方式のタッチパネルの製造工程においては、PETフィルムであるキャリアフィルムが搬送中等において傷つき易いという問題がある。そこで、キャリアフィルムにハードコート層を設けることが考えられるが、ハードコート層を設けると滑性に劣り、ロール形状に巻き取ることが困難となる。そこで、一般に保護フィルムを貼り合わせて巻き取ることが行われる。
しかしながら、静電容量方式の高透明性である特徴を活かすために、かかる用途に用いられるフィルムには、従来よりもさらに欠点数の減少が要求されてきているところ、本発明者は、上記欠点は、保護フィルムが有する欠点の転写によっても発生することに着目した。
そこで本発明は、保護フィルムを用いずに、上述の静電容量方式タッチパネルの製造工程におけるハードコート層を有するキャリアフィルム(以下、静電容量方式タッチパネル内面用ハードコートフィルムと呼称する場合がある。)としても好適に用いることができる程度に欠点が抑制されたハードコートフィルムを得ることができる、ハードコートフィルムロールおよびそれを製造するための製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、ハードコートフィルムロールを製造するに際して、保護フィルムを用いずに、また巻き取りに際する張力等の条件を特定範囲とすることによって、上記課題が解決できることを見出し本発明に到達した。
すなわち本発明は、以下の構成を有するものである。
1.厚み20〜55μmの基材フィルムの片面にハードコート層を有し、該ハードコート層表面における中心線平均表面粗さRahが0.2〜2.0nm、他方の表面における中心線平均表面粗さRasが1.0〜5.0nmであるハードコートフィルムを巻き取って得られるハードコートフィルムロールの製造方法であって、
ロールにおいて巻き重なるハードコートフィルム間に保護フィルムを有さず、
巻き取りにおいてタッチロールを実質的に用いず、
巻き取り張力40〜110N/m、
巻き取り速度10〜40m/分、
の巻き取り条件でロールを巻き取った後、巻き取り張力を40〜110N/mに保持したまま1〜10分間保持する、ハードコートフィルムロールの製造方法。
2.ハードコート層表面における水の接触角が70度以上、86度以下、n−ドデカンの接触角が22度以下である、上記1に記載のハードコートフィルムロールの製造方法。
3.上記1に記載の製造方法によって得られたハードコートフィルムロールであって、
ロール表面における径1.0mm以上のピンプル状欠点が1個/m以下、
ロール端面における端面ズレが2mm以下であるハードコートフィルムロール。
4.ハードコートフィルムが、静電容量方式タッチパネル内面用ハードコートフィルムである、上記3に記載のハードコートフィルムロール。
本発明によれば、保護フィルムを用いずに、静電容量方式タッチパネル内面用ハードコートフィルムとしても好適に用いることができる程度に欠点が抑制されたハードコートフィルムを得ることができる、ハードコートフィルムロールおよびそれを製造するための製造方法を提供することができる。
よって本発明の製造方法によって得られたハードコートフィルムロールは、近年の高精細化ディスプレイに対応したタッチパネル用として、さらに静電容量方式タッチパネル用として、とりわけ静電容量方式タッチパネル内面用として好適に用いることができる。
[ハードコートフィルム]
本発明におけるハードコートフィルムは、基材フィルムの片面にハードコート層を有するものである。ハードコート層を有する面と反対側の面には、本発明の目的を阻害しない範囲において、例えば易接着層、粘着層、アンチブロッキング層、平滑化層等の任意の層を有することができる。
本発明におけるハードコートフィルムは、ハードコート層表面における中心線平均表面粗さRahが0.2〜2.0nmである。このような態様とすることにより、タッチパネル用として、特に静電容量方式タッチパネル内面用として用いたとしても、視認性を低下させずに好ましい。粗すぎると視認性に劣る傾向にあり、他方これよりも平滑な表面を形成することは非常に困難である。このような観点から、かかるRahは、好ましくは0.3〜1.2nm、さらに好ましくは0.4〜0.8nmである。Rahは、ハードコート層に含有する粒子の態様により調整することができる。例えば、ハードコート層に粒子を添加しないか、添加するとしても粒子径の小さな粒子を用いたりすることで、Rahを小さくすることができる。
また、他方の表面における中心線平均表面粗さRasは、1.0〜5.0nmである。このような態様とすることにより、タッチパネル用として、特に静電容量方式タッチパネル内面用として用いたとしても、視認性を低下させずに好ましい。また、巻き取りに際して、ハードコート層における凹状欠点の形成などを抑制することができる。粗すぎると視認性に劣る傾向にある。また、巻き取った際にハードコート層に欠点を形成しやすくなる傾向にある。他方これよりも平滑な表面を形成するには、平滑化層を設ける等が必要となり、コスト的に好ましくない。このような観点から、かかるRasは、好ましくは1.5〜4.0nm、さらに好ましくは2.0〜3.0nmである。かかる中心線平均表面粗さRasは、ハードコートフィルムが基材フィルムとハードコート層とからなる場合は、基材フィルムの表面粗さを表すこととなる。かかるRasは、基材フィルムに含有する粒子の態様により調整することができる。また、粒子を含有する被膜層により調整することができる。
(ヘイズ)
本発明におけるハードコートフィルムは、ヘイズが2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。ヘイズが2.0%以下の場合は、タッチパネルにした時のクリア感が十分であり、スマートフォン等に適し、タッチパネル用として、特に静電容量方式タッチパネル内面用として用いることができる。また、ヘイズが1.0%以下の場合は、さらにタッチパネルにした時のクリア感に優れ、タッチパネル用として、特に静電容量方式タッチパネル内面用としてさらに好適に用いることができる。
(鉛筆硬度)
本発明におけるハードコートフィルムのハードコート層表面における鉛筆硬度は、H以上であることが好ましい。これにより、静電容量方式タッチパネルの製造工程において生じる傷を抑制することができ、静電容量方式タッチパネル内面用として好適である。
[ハードコート層]
本発明におけるハードコート層は、主に後述する放射線硬化型樹脂からなる。ここで「主に」とは、ハードコート層の全質量中に80質量%以上、好ましくは90質量%以上であることを示す。
(放射線硬化型樹脂)
本発明における放射線硬化型樹脂は、放射線により硬化させることができるモノマー、オリゴマー、あるいはポリマーである。本発明における放射線硬化型樹脂としては、硬化後の架橋密度を高くすることができ、表面硬度の向上効果を高くすることができ、かつ透明性の向上効果を高くすることができるという観点から、多官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、あるいは多官能(メタ)アクリレートポリマー等の多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
かかる多官能(メタ)アクリレート化合物は、分子内に(メタ)アクリロイル基を含有する化合物であるが、分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含有することが好ましく、そのような態様とすることによって、放射線硬化型樹脂の架橋反応が進行しやすくなり、表面硬度の向上効果をより高くすることができる。また、本発明における多官能(メタ)アクリレート化合物は、分子内に(メタ)アクリロイル基以外の他の重合性官能基を含有してもよい。
分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えばネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート)、メラミン(メタ)アクリレート等、およびこれらのうち少なくとも1種からなる1〜22量体程度のオリゴマーや、これらのうち少なくとも1種からなるポリマーを挙げることができる。このような多官能(メタ)アクリレート化合物は、一種類を単独で用いても良いし、二種類以上を併用して用いても良い。
本発明おける放射線硬化型樹脂としては、上記多官能(メタ)アクリレート化合物からなるアクリルポリマーの主鎖もしくは側鎖に、(ポリ)アルキレングリコール成分が共重合された(ポリ)アルキレングリコール成分含有放射線硬化型樹脂であることが好ましく、これをハードコート層に用いる方法を、本発明が好ましく規定する水およびn−ドデカンの接触角を達成するための特に好ましい方法として例示することができる。かかる(ポリ)アルキレングリコール成分としては、エチレングリコールやプロピレングリコール等のアルキレングリコールを好ましく例示することができ、中でもエチレングリコールが好ましい。かかる(ポリ)アルキレングリコール成分は、繰り返し構造を有さずにモノ(アルキレングリコール)であってもよいし、繰り返し構造を有してオリゴ(アルキレングリコール)あるいはポリ(アルキレングリコール)であってもよい。好ましい態様としては、(ポリ)アルキレングリコール成分の両末端に(メタ)アクリロイル基を官能基として有する態様、多官能(メタ)アクリレート化合物(オリゴマーまたはポリマー)に(ポリ)アルキレングリコール成分をランダム共重合またはブロック共重合した態様が挙げられる。特に好ましい態様は、多官能(メタ)アクリレート化合物(オリゴマーまたはポリマー)の主鎖あるいは側鎖に(ポリ)アルキレングリコール成分をブロック共重合した態様である。
(ポリ)アルキレングリコール成分は、数平均分子量Mnが、好ましくは46〜1000000、さらに好ましくは60〜500000である。数平均分子量Mnが上記数値範囲にあると、ハードコート層の表面における水の接触角とn−ドデカンの接触角とを、本発明が好ましく規定する数値範囲とすることが容易となる。数平均分子量Mnが高すぎる場合は、水の接触角が高くなりすぎる傾向にある。また、塗剤の粘度が高くなりすぎるため、塗工が困難となる傾向にある。また極性の低い溶剤に溶けにくくなる傾向にあるため、塗剤としての扱いが困難となる傾向にある。
(ポリ)アルキレングリコール成分の共重合量は、多官能(メタ)アクリレート化合物からなるアクリルポリマーの質量に対して、好ましくは1質量%以上5質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以上4質量%以下、特に好ましくは2質量%以上3質量%以下である。(ポリ)アルキレングリコール成分の共重合量が上記数値範囲にあると、ハードコート層の表面における水の接触角とn−ドデカンの接触角とを、本発明が好ましく規定する数値範囲とすることが容易となる。(ポリ)アルキレングリコール成分の共重合量を増やすと、水の接触角は小さくなる傾向にあるが、n−ドデカンの接触角にはあまり大きな影響を及ぼさない。そのため、(ポリ)アルキレングリコール成分を用いる方法によると、通常の界面活性剤を添加するのみでは得られない水の接触角の範囲とn−ドデカンの接触角の範囲の組み合わせとすることができる。
以上のような放射線硬化型樹脂の数平均分子量Mnは、好ましくは100〜1000000、さらに好ましくは1000〜500000である。数平均分子量Mnが高すぎる場合は、粘度が高すぎるため、塗工が困難となる傾向にある。
(光重合開始剤)
また、本発明においては、より硬度に優れたハードコート層を形成するために、ハードコート層には、光重合開始剤を添加することが好ましい。光重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フロオレノン、アントラキノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−1−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等を挙げることができる。かかる光重合開始剤の添加量は、放射線硬化型樹脂100質量%を基準として、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。添加量を上記数値範囲とすることによって、ハードコート層の表面硬度の向上効果をより高くすることができる。添加量が多すぎる場合は、添加した光重合開始剤が可塑剤として働く傾向にあり、ハードコート層の強度が低くなってしまう恐れがある。
(任意に添加してもよいその他の添加剤)
本発明におけるハードコート層においては、本発明の目的が損なわれない範囲において、無機微粒子、有機微粒子、光増感剤、レベリング剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、染料等を加えることができる。
(接触角)
本発明においては、ハードコート層表面における水の接触角が78度以上、86度以下であると同時に、n−ドデカンの接触角が22度以下であることが好ましい。ハードコート層表面における濡れ性を上記数値範囲とすることによって、静電容量方式タッチパネル内面用として用いた際において、上記ハードコート層表面とLCD等のディスプレイ表面、あるいはその他の材料フィルムとを粘着剤で貼り合わせた際の密着性により優れると同時に、耐擦傷性により優れる。水の接触角が78度よりも小さい場合は、耐擦傷性に優れたハードコートフィルムを得ることが困難になる傾向にある。また、親油性が同時に低下してしまい、粘着剤の種類によっては粘着剤等に対する密着性の向上効果が低くなる場合がある。他方、水の接触角が86度よりも大きい場合は、極性溶媒に対する濡れ性の向上効果が極端に低くなるため、粘着加工がしにくい、あるいは親水性基を持つ粘着層との密着性の向上効果が低くなる傾向にある。また、n−ドデカンの接触角が22度を超える場合は、親油性が低くなる傾向にあり、粘着等との密着性の向上効果が著しく低下する傾向にある。このような観点から、水の接触角は、より好ましくは80度以上、85度以下であり、特に好ましくは82度以上、85度以下であり、かつn−ドデカンの接触角が22度以下であることが好ましい。なお、ここで接触角が22度以下といういうことは、接触角測定において液滴が濡れ広がってしまい、角度の測定が不可能な状態を意味する。
上記のような接触角を達成するためには、例えば前述の(ポリ)アルキレングリコール成分含有放射線硬化型樹脂を用いればよい。このような放射線硬化型樹脂としては、例えばKZ6404(JSR株式会社製)、ルシフラールG−004(日本ペイント工業製)、ビームセット1460(荒川化学工業製)等が挙げられる。
このような接触角の調整は、濡れ性を調整し得る界面活性剤のような独立した添加剤の単純な添加によっては達成できない。すなわち界面活性剤を添加した場合は、塗工・硬化後のハードコート層表面には界面活性剤の親水基と疎水基とが混在してしまうため、水に対する濡れ性と油(n−ドデカン)に対する濡れ性とが同時に悪くなってしまう。一方で界面活性剤を添加していない一般的なアクリル系のハードコート層は、n−ドデカンの接触角の範囲は達成されるが、水の接触角の範囲は達成されない。いずれにしても通常のハードコート層やそれに界面活性剤を添加したものでは、本発明において好ましい上記接触角の範囲を実現できず、すなわち優れた密着性が得られない。
(ハードコート層の厚み)
本発明におけるハードコート層の厚みは、好ましくは1〜10μmである。ハードコート層が厚い方が水の接触角が低くなる傾向があり、他方、薄い方が水の接触角が高くなる傾向がある。また、厚い方が硬度が高くなる傾向にある。水の接触角を本発明が好ましく規定する範囲に調整することを容易にするという観点、および好ましい硬度が得やすいという観点から、ハードコート層の厚みは、より好ましくは1〜8μm、さらに好ましくは1〜6μm、特に好ましくは1〜3μmである。
また、静電容量方式タッチパネル内面用に用いる際は、ハードコート層の厚みは1μm以上、3μm以下が好ましい。ハードコート層の厚みが上記数値範囲にあると、上述のように水の接触角の調整が容易になることに加えて、加熱時等においてハードコートフィルムがカールし難くなる傾向にある。このような観点から、静電容量方式タッチパネル内面用に用いる際は、ハードコート層の厚みは、1μm以上、2.2μm以下がさらに好ましい。
[ハードコート層の形成方法]
本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層を形成するための塗液を、後述する基材フィルム上のハードコート層を形成したい側の表面に塗工し、加熱乾燥し、硬化することにより得ることができる。
本発明におけるハードコート層を形成するための塗液は、溶媒に、放射線硬化型樹脂、好ましく添加される光重合開始剤、および任意に添加してもよいその他の添加剤を添加し、混合した溶液である。各成分の添加にあたっては、粉体等の固体として添加してもよいし、固体を適当な溶媒を用いて溶液あるいは分散体の態様としたものを添加してもよい。ハードコート層を形成するための塗液に用いられる溶媒は、特に限定はされないが、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、セカンダリーブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸ブチル、酢酸エチルなどのエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類等を用いることができ、ハードコート層を形成するための塗液の分散性が良好となり、ハードコート層の外観が良好となる。中でも、溶解性が良好であるという観点から、ケトン類が好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが特に好ましい。ハードコート層を形成するための塗液の固形分濃度としては、1〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましく、このような態様とすることによって、塗り斑等の欠点を低減することができる。
ハードコート層を形成するための塗液を塗布する方法としては、それ自体公知の方法を採用できる。例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、バーコーター法等を好ましく挙げることができる。これらの塗布方法によって、基材フィルム上にハードコート層を形成するための塗液を塗布し、ハードコート塗膜を形成し、得られたハードコート塗膜を加熱乾燥する。加熱乾燥の条件としては、50〜150℃で10〜180秒間加熱することが好ましく、50〜122℃で22〜150秒間加熱することがさらに好ましく、50〜80℃で30〜122秒間加熱することが特に好ましい。加熱乾燥後、紫外線照射または電子線照射によりハードコート塗膜を硬化する。紫外線照射の場合、その照射量は、好ましくは10〜2200mJ/cm、さらに好ましくは50〜1500mJ/cm、特に好ましくは100〜1000mJ/cmである。
[基材フィルム]
本発明における基材フィルムは、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリスチレントリアセチルセルロース、アクリル等からなるシートあるいはフィルムを挙げることができる。中でも、透明性等の光学特性、機械特性、耐熱性、価格のバランスが良いという観点から、ポリエステルフィルムが好ましく、中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートからなるフィルムが好ましい。
基材フィルムの厚みは、20〜55μmである。このような態様とすることにより、適度な剛性を付与することができ、また透明性にも優れ、タッチパネル用、とりわけ静電容量方式タッチパネル内面用として好適に用いることができる。また、ハンドリング性にも優れる。薄すぎると剛性が低下する傾向にあり、取り扱いづらくなる傾向にあり、他方厚すぎると透明性が低下する傾向にあり、また不必要な厚みは不経済である。このような観点から、全体厚みは、好ましくは30〜50μm、さらに好ましくは35〜45μmである。
[易接着層]
本発明においては、ハードコート層と基材フィルムとの接着性を高める等の目的で、ハードコート層と基材フィルムとの間にポリエステル樹脂と架橋剤とを構成成分として含む易接着層を設けることが好ましい。さらに、かかる易接着層により、水の接触角およびn−ドデカンの接触角を本発明が好ましく規定する範囲とすることがより容易となる。また、好ましい態様を具備する易接着層によっては、基材フィルムに易滑性を付与することができる。また、Rasの値を調整することができる。
かかる易接着層は、ポリエステル樹脂と架橋剤とを構成成分として含むものである。以下、易接着層を構成する各構成成分について説明する。
(ポリエステル樹脂)
易接着層に用いるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分とから得られるポリエステルである。ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を例示することができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン等や、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを例示することができる。
かかるポリエステル樹脂としては、2種以上のジカルボン酸成分かつ/または2種類以上のジオール成分を用いた共重合ポリエステルを用いることが好ましく、接着性により優れる。ポリエステル樹脂には、若干量であればマレイン酸、イタコン酸等の不飽和多塩基酸成分、或いはp−ヒドロキシ安息香酸等の如きヒドロキシカルボン酸成分が含まれていてもよい。
かかるポリエステル樹脂のガラス転移点温度(Tg)は、好ましくは40〜100℃である。Tgがこの範囲であれば、優れた接着性や耐傷性を得ることができる。また、ハードコート層表面の接触角を、本発明が好ましく規定する態様にしやすくなる。ガラス転移点温度が40℃未満であると耐ブロッキング性に劣る傾向にあり、他方、100℃を超えると易接着層が硬くて脆くなり、耐傷性が悪化する傾向にある。このような観点から、Tgは、さらに好ましくは60〜80℃である。
また、ポリエステル樹脂の固有粘度(IV)は、0.4以上0.7未満であることが好ましい。IVがこの範囲であれば、ポリエステル樹脂自体からの低分子量物の発生をより高度に抑制でき、かつポリエステル樹脂の凝集力がより高くなる故に、より優れた接着性や耐傷性を得ることができる。また、ハードコート層表面の接触角を、本発明が好ましく規定する態様にしやすくなる。固有粘度が0.4未満であるとポリエステル樹脂自体からの低分子量物の発生が起こり易くなり、基材の透明性を悪化させ易くなる。このような観点から、IVは、さらに好ましくは0.5以上0.7未満である。
また、ポリエステル樹脂は水に可溶性または分散性のものが好ましいが、多少の有機溶剤を含有する水に可溶なものも用いることができる。
ポリエステル樹脂は例えば次の方法で製造することができる。ジカルボン酸成分とジオール成分とをエステル交換反応器に仕込み、触媒を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃に制御して、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行う。次いで、温度を徐々に255℃まで上昇させ、系内を減圧下にして重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂を得ることができる。重縮合時に分子量が上昇してくると溶融粘度が高くなり、系内の攪拌が難しくなる。易接着層に使用されるポリエステル樹脂はホモのポリエチレンテレフタレートと比較すると分子量が低い割に溶融粘度が高くなり、系内の攪拌が非常に難しく、攪拌設備のモーターのトルクを上げること、羽根の形状を工夫すること、重合時間を延ばすこと等で固有粘度を上げることができる。
ポリエステル樹脂の含有量は、易接着層の全質量中に、好ましくは50〜95質量%、さらに好ましくは60〜90質量%であり、接着性により優れ、ハードコート層表面における濡れ性を、本発明が好ましく規定する数値範囲にし易くなる。
(架橋剤)
易接着層に用いる架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メラミン系架橋剤およびイソシアネート系架橋剤が好ましく、オキサゾリン系架橋剤が特に好ましい。易接着層が架橋剤を含有することで、耐ブロッキング性を高くすることができる。また、易接着層の強度(凝集力)を高くすることができ、接着性に優れる。さらに、ハードコート層表面の接触角を、本発明が好ましく規定する態様にしやすくなる。とりわけオキサゾリン系架橋剤は取り扱いやすく、易接着層を形成するための塗液のポットライフが長いことから好ましい。なお、これらは1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
エポキシ系架橋剤は、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等が挙げられる。ここで、ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトール、ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルが挙げられる。グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。
オキサゾリン系架橋剤は、オキサゾリン基を含有する重合体が好ましい。かかる重合体は、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2ーエチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等のア(メタ)クリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N、N−ジアルキルアクリルアミド、N、N−ジアルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸のエステル部にポリアルキレンオキシドを付加させたもの等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα、β−不飽和モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、等のα、β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
メラミン系架橋剤は、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロールメラミン誘導体に低級アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等を反応させてエーテル化した化合物及びそれらの混合物が好ましい。メチロールメラミン誘導体としては、例えば、モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等が挙げられる。
イソシアネート系架橋剤は、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、1,6−ジイソシアネートヘキサン、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ポリオール変性ジフェニルメタン−4、4´−ジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3´−ビトリレン−4,4´ジイソシアネート、3,3´ジメチルジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
架橋剤の含有量は、易接着層の全質量中に、好ましくは0.1〜35質量%、さらに好ましくは10〜30質量%である。0.1質量%より少ないと易接着層の凝集力が発現しない場合があり、接着性が不足する場合があり好ましくない。35質量%より多いと易接着層が非常に硬くなり、応力緩和が少なくなり接着性が発現しない場合や、易接着層を有するフィルムを回収使用した場合に架橋体による異物が発生しやすくなる傾向にある。
(微粒子)
本発明においては、易接着層には微粒子を含有することが好ましい。これにより基材フィルムに易滑性を付与することができる。また、Rasの値を調整することができる。
本発明で使用する微粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、ケイ酸ソーダ、水酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化錫、三酸化アンチモン、カーボンブラック、二硫化モリブデン等の無機微粒子;アクリル系架橋重合体、スチレン系架橋重合体、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂等の有機微粒子を用いることができる。これらは1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
かかる微粒子は、平均粒子径が、好ましくは22〜220nm、さらに好ましくは40〜122nmである。平均粒子径が220nmより大きいと微粒子の脱落が発生しやすくなり、22nmよりも小さいと十分な滑性、耐傷性が得られない場合があり好ましくない。
微粒子の含有量は、易接着層の全質量中に、0.1〜10質量%が好ましい。0.1質量%未満であると十分な滑性、耐傷性が得られず、10質量%を超えると塗膜の凝集力が低くなり接着性が悪化し好ましくない。また、ハードコート層表面における接触角を、本発明が好ましく規定する態様とすることが困難となる傾向にある。また、微粒子を含有する易接着層によりRasを調整するに際しては、含有量は、1〜10質量%が好ましく、2〜8質量%がさらに好ましい。
(脂肪族ワックス)
本発明においては、易接着層には脂肪族ワックスを含有することが好ましい。
脂肪族ワックスの具体例としては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、パームワックス、ロジン変性ワックス、オウリキュリーワックス、サトウキビワックス、エスパルトワックス、バークワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ロウ、イボタロウ、セラックワックス等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシンワックス等の鉱物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス;フィッシャートロプッシュワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素系ワックスを挙げることができる。就中、ハードコート層や基材フィルムに対する接着性に優れ、また滑性が良好なことから、カルナバワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスが特に好ましい。これらは環境負荷の低減が可能であることおよび取扱い易さから水分散体として用いることが好ましい。
脂肪族ワックスの含有量は、易接着層の全質量中に、好ましくは0.5〜30質量%、さらに好ましくは1〜10質量%である。含有量が0.5質量%未満ではフィルム表面の滑性が十分には得られないことがあり好ましくない。30質量%を超えると基材フィルムやハードコート層に対する接着性の向上効果が低くなる傾向にある。
[易接着層の形成方法]
本発明において上記各構成成分は、易接着層を形成するための塗液(水溶液、水分散液或いは乳化液等の水性塗液。以下、塗液と呼称する場合がある。)の形態で使用されることが好ましい。かかる塗液には、必要に応じて、前記各構成成分以外の他の樹脂、例えば帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤を添加することができる。
本発明に用いる塗液の固形分濃度は、通常22質量%以下が好ましいが、特に1〜10質量%であることが好ましい。この割合が1質量%未満であると、基材フィルムへの塗れ性が不足することがあり、22質量%を超えると塗液の安定性や易接着層の外観が悪化することがあり好ましくない。
塗液の塗布は、任意の段階で実施することができるが、基材フィルムの製造過程で実施する、いわゆるインラインコーティングが好ましく、更には配向結晶化が完了する前のフィルムに塗布するのが好ましい。ここで、結晶配向が完了する前のフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に延伸した一軸延伸フィルム、更には縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸せしめたもの(最終的に縦方向また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。なかでも、未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムに、塗液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。
塗液を基材フィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理として基材フィルム表面にコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは塗液に界面活性剤を添加することが好ましい。かかる界面活性剤は、フィルムへの塗液の濡れを促進する機能や塗液の安定性を向上させるものであり、例えば、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤の添加量は、塗液中に、0.01〜2質量%含まれていることが好ましい。
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独または組み合わせて用いることができる。なお、塗膜は必要に応じフィルムの片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。
易接着層の厚さは、好ましくは0.01〜0.3μm、より好ましくは0.02〜0.25μmであり、すなわち塗液の塗布量は、易接着層の厚さが上記数値範囲となるような量であることが好ましい。易接着層の厚さが薄過ぎると、接着性に劣る傾向にあり、逆に厚過ぎると、ブロッキングを起こしたり、ヘイズ値が高くなったりする傾向にある。
[保護フィルム]
本発明でいう保護フィルムは、ハードコート層の表面を保護したり、表面が平滑なハードコートフィルムを巻き取る際に、ハードコートフィルム間に保護フィルムを配することにより、巻き取り性を向上させたりする機能を有するものである。本発明においては、一般的に保護フィルムとして入手できるものを指し、特に限定されない。例えば、ベースフィルムの片面に密着層を設けた構成であるものを挙げることができる
保護フィルムの上記ベースフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィン等のポリオレフィンフィルム、トリアセチルセルロースフィルム等が例示できる。かかるベースフィルムの厚みとしては、例えば10〜150μmである。
保護フィルムは、ハードコートフィルムに貼り付けた際に適度な強度で固定できるという目的において、通常片面に密着層を有する。かかる密着層としては、例えばアクリル系粘着剤からなる粘着層がある。また、例えばエチレンビニルアルコール共重合体など軟らかい樹脂からなる吸着層がある。
[ハードコートフィルムロールの製造方法]
本発明においては、以上のようなハードコートフィルムを巻き取って、ハードコートフィルムロールを製造する。かかる巻き取りは、ハードコートフィルムの製造工程(ハードコート層の形成工程)における巻き取りであっても良いし、ハードコートフィルムの製造工程において得られたロール(親ロール)を、巻き出し側に親ロールを設置し、それを巻き出して、巻き取り側で子ロールを巻き取る巻き取り装置を用いた巻き取りであっても良い。ここで巻き取り装置とは、親ロールを単に巻き取りなおして子ロールを巻き取って得る装置であってもよいし、親ロールから必要なサイズに切断しながら単数もしくは複数の子ロールを巻き取って得る装置(いわゆるスリッター)であってもよい。例えば、親ロールは、基材フィルムにハードコート層を塗工形成する工程において巻き取られたロール(ジャンボロールやマスターロールという。)であり、それをスリッター等の巻き取り装置の巻き出し側に設置し、スリットせずにまたは例えば顧客が要求するサイズにスリットしながら巻き取り側で巻き取った製品ロールが子ロールである。
以下、上記の巻き取り装置を用いた場合を例に挙げて説明するが、ハードコートフィルムの製造工程における巻き取り等においても、これに準じて同様に行うことができる。
本発明においては、かかる工程において、保護フィルムを用いないことが特徴である。
通常、表面が平滑なハードコートフィルムを巻き取ってハードコートフィルムロールを製造するに際しては、親ロールにおいては、そもそも遠方への運送をするものではないために、ピンプルを抑制するために若干巻きを緩くしたとしても、巻きずれる恐れが小さいものであるし、また、ロールの両端部分にナーリングと呼ばれる凹凸の突起を設けたり、ロールの端部に静電気を付与したり等の巻き取りを容易にする物理的な処理等によって巻き取りを容易化することができる。一方、子ロールにおいては、ナーリングが施せない場合や、スリットしてナーリング部分を除去するような場合においては、子ロールの巻き取りが困難となるために、一般には、ハードコートフィルムのいずれか一方の面に保護フィルムを貼り付けながら巻き取ることをする。これにより、得られる子ロールにおいては、巻き重なるハードコートフィルム間に保護フィルムを有する態様となる。しかしながら、本発明者らは、近年の高い要求品質、例えばタッチパネルにおける高い要求品質、特に静電容量方式タッチパネル内面用に求められる高い要求品質に対しては、上記のように保護フィルムを用いることにより、保護フィルムが有する欠点に起因して、ハードコートフィルムロール上にピンプル欠点が発生したり、かかるロールを形成するハードコートフィルムにおいては、ハードコートフィルム上に凹状欠点が形成されたりすることが問題となることを見出し、これに着目した。よって本発明においては、保護フィルムを用いず、すなわち巻き重なるハードコートフィルム間に保護フィルムを有しないことにより、これら欠点の抑制されたハードコートフィルムロールを得ることができる。
また、従来公知の条件で巻き取るのみでは、ハードコートフィルムロールの表面にピンプル欠点が発生したり、端面において端面ズレが生じたりしてしまうため、本発明においては、以下の特定の条件を採用することにより、これら欠点を抑制する。
まず、巻き取りにおいてタッチロールを実質的に用いないことが必要である。巻き取り装置においては、巻き取り側において子ロールに対してタッチロールを実質的に用いないことが必要である。ここでタッチロールとは、巻き取るフィルムロール(子ロール)に接して、圧力(接圧)をかけて、ロールの巻き硬さを調整するためのロールを示す。なお、「実質的に用いない」とは、タッチロールがタッチロールとしての機能を十分に奏さない程度に用いる態様を含むものとする。例えばタッチロールの接圧としては、0m/N以上であって、3.0m/N以下、好ましくは1.0m/N以下、さらに好ましくは0.3m/N以下、特に好ましくは0.1m/N以下である態様も、「実質的に用いない」に含まれる。最も好ましい態様は、タッチロールが巻き取るロール(子ロール)に触れていない(タッチロールを用いない、接圧が0m/Nである)ことである。
また、ロールを巻き取り中の巻き取り張力を40〜110N/mとすることが必要である。巻き取り装置においては、子ロールを巻き取り中の巻き取り張力を40〜110N/mとすることとなる。好ましくは55〜110N/m、さらに好ましくは70〜110N/mである。
巻き取り張力は、巻き取り中は上述した範囲とするものであるが、初期巻き取り張力からテーパーをつけて、巻き取り量に応じて巻き取り張力を低減させることが好ましい。ここで初期巻き取り張力とは、ロールを巻き取り始める際の、巻き取るロールにかかる張力である。巻き取り装置においては、巻き取り側の子ロールを巻き取り始める際の、子ロールにかかる張力である。巻き始めから少なくとも10mの範囲における張力をいうこととする。初期巻き取り張力としては、好ましくは40〜110N/m、より好ましくは55〜110N/m、さらに好ましくは70〜110N/mである。
そして、最終巻き取り張力を、初期巻き取り張力の50〜100%とすることが好ましい。ここで最終巻き取り張力とは、ロールを巻き取り終わる際の、巻き取るロールにかかる張力である。巻き取り装置においては、巻き取り側の子ロールを巻き取り終わる際の、子ロールにかかる張力である。巻き終わりから少なくとも10mの範囲における張力をいうこととする。好ましくは、初期巻き取り張力の60〜90%、より好ましくは70〜80%である。
さらに、巻き取り速度を10〜40m/分とすることが必要である。ここで巻き取り速度とは、ロールを巻き取る速度である。巻き取り装置においては、巻き取り側の子ロールを巻き取る速度である。好ましくは10〜30m/分である。
上記のような条件でロールを巻き取った後、巻き取られたロールに40〜110N/mの張力をかけて、1〜10分間保持することが必要である。具体的には、上記条件で巻き取り後、すぐにフィルムをカットしたり、装置の張力制御を解除したりせず、上記張力がロールにかかった状態で保持すればよい。かかる張力は、好ましくは45〜90N/mである。また、保持時間は、好ましくは3〜7分間である。
本発明においては、ロールの巻き取りに際して、上記の条件を全て具備することにより、保護フィルムを用いずに、ロール表面におけるピンプル状欠点が抑制され、またロール端面における端面ズレの抑制された、ハードコートフィルムロールを得ることができる。
上記条件において、タッチロールの条件および巻き取り張力の条件は、ハードコートフィルム間の空気の巻き込みを適度に残存させる作用があり、ピンプル状欠点抑制の効果に関与する。巻き取り張力が低すぎると、端面ズレが生じ易くなる。他方、接圧が高すぎたり巻き取り張力が高すぎたりすると、空気の巻き込みを適度に残存させる作用が弱まり、ピンプル状欠点が発生しやすくなる。また、テーパーや最終巻き取り張力の条件は、より適度に空気を残存させることができるようになるため、ピンプル状欠点抑制の向上効果を高めることができる。巻き取り速度の条件も、適度に空気を残存させる作用をし、ピンプル状欠点抑制や端面ズレ抑制に貢献する。そして、最後に特定張力をかけた状態で特定時間保持することで、子ロール内のハードコートフィルム間に残存する余分な空気を適度に排出させる作用があり、端面ズレ、特にフィルムが竹の子状に巻きずれてしまう現象の抑制となる。これは、上記巻き取り条件を採用することにより、子ロール内に余分な空気が残存するために行うものである。このように、すべての条件を同時に採用することによって、優れたハードコートフィルムロールを得ることができる。
また、ハードコートフィルムを構成する基材フィルムの厚みが比較的薄い場合においては、巻き取りに用いるコアの表面欠点の転写の影響を受けやすく、ピンプル状欠点が発生しやすいため、クッションコアを使用する等によりこれを抑制することが好ましい。
[ハードコートフィルムロール]
上記にて得られたハードコートフィルムロールは、ロール表面における径1.0mm以上のピンプル状欠点が1個/m以下である。ここでピンプル状欠点とは、ロール表面において凸状となる欠点であり、例えば異物や微小なしわを起因として発生する欠点である。好ましくは0.5個/m以下であり、最も好ましくは0個/mである。
また、上記にて得られたハードコートフィルムロールは、ロール端面における端面ズレが2mm以下である。ここで端面ズレは、後述の測定方法により求められる値である。好ましくは1mm以下であり、さらに好ましくは0.5mm以下であり、最も好ましくは0mmである。
ハードコートフィルムロールに上記範囲を超える欠点を有していると、かかるロールから得られるハードコートフィルムは、タッチパネル用として、とりわけ静電容量方式タッチパネル内面用としては、欠点が多すぎることとなり、画面上の欠点や、視認性の低下を招くこととなり、用いることが困難となる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中における各評価は下記の方法に従った。
(1)水の接触角
ハードコート層表面に5mmの高さから0.2mLの蒸留水をシリンジにてゆっくりと滴下し、30秒間放置後、その接触角(ハードコート層表面と液滴の接線が成す角)をCCDカメラで観察して測定した。同様の操作を5回繰り返し、平均値を用いた
(2)n−ドデカンの接触角
測定用の液体としてn−ドデカンを使用した以外は水の接触角と同様にして測定した。なお、接触角が20度以下の領域においては、接触角の数値を正確に求めることができないため、接触角が20度以下であるという結果を以って、測定値とした。
(3)ヘイズ
ハードコートフィルムのヘイズ(Hz)は、JIS K7150に準拠して、スガ試験機(株)製のヘイズメーターHCM−2Bにて測定を行った。測定光は、ハードコート層側から入射した。測定は、任意の5箇所について実施し、それらの平均値をヘイズ(Hz)(単位:%)とした。
(4)エチレングリコールユニットの含有量の測定方法
放射線硬化型樹脂組成物を分取GPCによって各含有成分に分け、それぞれの成分につき熱分解GC−MSを行うことで構成する構造を同定した。その後H−NMRのピーク積分値から各成分の定量を行い、グリコール成分の含有量を同定した。
[分取GPC条件]
カラム:JAIGEL−2H×2本 600×20mmI.D.(日本分析工業製)
移動相溶媒:クロロホルム3.5ml/min
[熱分解GC−MS条件]
熱分解温度:600℃単純熱分解およびオンラインメチル化熱分解
メチル化剤:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)
カラム:ZB−1,長さ30m×内径0.32mm,膜厚0.5μm
GC温度:40℃(0min),15℃/min,320℃(10min)
H−NMRによる定量]
計算式:含有量=分子量×(積分比/1H数),合計が100になるように規格化。
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートは、GPCの面積比が重量比と一致すると仮定し、H−NMRのアクリル基の積分値(1000)をその比率に割り振った値とした。
(5)基材フィルム厚み
打点式厚み測定器により測定した。任意の10点の平均値として求めた。
(6)ハードコート層の膜厚み
サンプルフィルムを鋭利な剃刀にてカットし、得られた断面を光学顕微鏡によって観察することでハードコート層の厚みを測定した。測定は、任意の10箇所について実施し、それらの平均値をハードコート層の膜厚み(単位;μm)とした。
(7)鉛筆硬度
JIS K5600に準拠し実施した。
評価は、ハードコートフィルムのハードコート層表面において実施した。
(8)端面ズレ
巻き取り装置から子ロールを取り外し、ホイストを用いて、静かにフィルムロールを置くための台車まで運搬し、該台車に静地した。フィルムロール幅とコア長さが同一の場合は、巻き取りコア端の位置を0mmとして、金尺を使用してロール端面の飛び出し量を両側について測定し、飛び出し量の最大値を端面ズレ量とした。なお、フィルムロール幅に対してコア長さが長い場合は、一巻き目のフィルム端面の位置を0mmとして測定する。
(9)ピンプル
ハードコートフィルムロール(子ロール)表面全周にわたって目視により確認する。直径1mm以上のピンプル(凸状欠点)の個数を数え、ロールの周表面積で除して、単位面積あたりの個数(個/m)として求めた。
(10)ガラス転移点温度(Tg)
樹脂サンプルの場合は約10mg、フィルムサンプル(基材フィルム)の場合は約20mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差走査熱量計(DSC)(DuPont Instrument910 DSC)に装着し、25℃から20℃/分の速度で290℃まで昇温させ、290℃で3分間保持した後取り出し、直ちに氷の上に移して急冷した。このパンを再度DSCに装着し、25℃から20℃/分の速度で昇温させて、ガラス転移点温度Tg(単位:℃)を測定した。
(11)中心線平均表面粗さ(Ra)
非接触光学粗さ計(ZYGO社製:商品名NewView5022)を使用し、倍率25倍にて283μm×213μmの領域についてスキャンを実施し、表面プロファイルを得た。得られた表面プロファイルから中心線平均表面粗さ(Rah、Ras)を算出した。測定は、任意の5箇所について実施し、それらの平均値を測定値とした。
[実施例1]
(基材フィルムおよび易接着層)
易接着層を有する38μm厚みのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを、基材フィルムとして用いた。
ここで、易接着層は、以下の構成成分からなり、以下のようにして形成した。
(易接着層)
ポリエステル樹脂:ジカルボン酸成分が2,6−ナフタレン時カルボン酸65モル%/イソフタル酸30モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されている。Tg=80℃、、数平均分子量Mn13000。
架橋剤:メチルメタクリレート30モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン30モル%/ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート10モル%/アクリルアミド30モル%で構成されている。Tg=50℃。
微粒子:シリカフィラー(平均粒子径100nm)(日産化学(株)製、商品名:スノーテックスZL)
脂肪族ワックス:カルナバワックス(中京油脂(株)製、商品名:セロゾール524)
界面活性剤:ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成社製、商品名:ナロアクティーN−70)
これらの構成成分を、固形分の質量比で、ポリエステル樹脂/架橋剤/微粒子/脂肪族ワックス/界面活性剤=65/20/5/5/5となるように混合し、イオン交換水により固形分濃度5質量%となるように希釈して易接着層を形成するための塗液を得た。
得られた塗液を、基材フィルムの製造工程(常法の二軸延伸PETフィルムの製造工程)において、縦一軸延伸の後、横延伸工程の前において両面にインラインコーティングすることにより、厚み0.15μmの易接着層を両面に有する基材フィルムを得た。
(ハードコート層の塗設)
次いで、ロールコーターを用いて、基材フィルムの一方の表面(易接着層の表面)に、乾燥・硬化後の膜厚みが1.7μmとなるように、下記で得られたハードコート剤を均一に塗布し、70℃で2分間の条件で乾燥した。次いで、紫外線照射装置(FusionUV Systems Japan(株)製:商品名フュージョンHバルブ)を用いて、光量200mJ/cmの条件で紫外線を照射し、幅1100mm、長さ2200mのナーリング付きのハードコートフィルムマスターロール(親ロール)を得た。
(ハードコート剤の調整)
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを主成分とし、グリコール成分として繰り返しエチレングリコール単位を2.7質量%含有する放射線硬化型樹脂組成物(商品名:ビームセット1460、荒川化学工業製、固形分濃度90質量%)をMEKで希釈し、固形分濃度40質量%のハードコート剤とした。
(ハードコートマスターロールのスリット)
スリッターを用い、上記で得られたハードコートフィルムマスターロールを親ロールとして用い、巻き出し側に設置し、これを巻き出し、下記の条件でスリットを実施して、幅500mm、長さ400mのハードコートフィルムロール(子ロール)を巻き取って得た。
(巻き取り条件)
巻き取りタッチロール接圧:0.1N/m(タッチロール実質的に不使用)
初期巻き取り張力:70N/m
巻き取り張力テーパー:70%(最終巻き取り張力49N/m)
巻き取り速度:30m/分
巻き取り後の保持張力:49N/m
巻き取り後の保持時間:5分
子ロール巻き取りコア:3インチのプラスティックコア(ポリスチレンクッション付き)
用いたハードコートフィルムの構成、および得られたハードコートフィルムロールの評価結果を表1に示す。実施例1からは、端面ズレやピンプルのない高品質なハードコートフィルムロールが得られた。
[実施例2]
巻き取り条件およびコアを下記に示す条件に変更する以外は、すべて実施例1と同様にしてハードコートフィルムロールを得た。
(巻き取り条件)
巻き取りタッチロール接圧:0N/m(タッチロール不使用、ニア巻き条件)
初期巻き取り張力:110N/m
巻き取り張力テーパー:80%(最終巻き取り張力88N/m)
巻き取り速度:10m/分
巻き取り後の保持張力:88N/m
巻き取り後の保持時間:5分
子ロール巻き取りコア:3インチのプラスティックコア(ポリスチレンクッションなし)
用いたハードコートフィルムの構成、および得られたハードコートフィルムロールの評価結果を表1に示す。実施例2からは、端面ズレやピンプルのない高品質なハードコートフィルムロールが得られた。
[比較例1]
巻き取り条件を下記に変更する以外は、すべて実施例1と同様にしてハードコートフィルムロールを得た。
(巻き取り条件)
巻き取りタッチロール接圧:50N/m(タッチロール使用)
初期巻き取り張力:70N/m
巻き取り張力テーパー:70%(最終巻き取り張力:49N/m)
巻き取り速度:30m/分
巻き取り後の保持張力:49N/m
巻き取り後の保持時間:5分
子ロール巻き取りコア:3インチのプラスティックコア(ポリスチレンクッション付き)
用いたハードコートフィルムの構成、および得られたハードコートフィルムロールの評価結果を表1に示す。比較例1でえられたハードコートフィルムロールは、ピンプル状欠点が非常に多いものであった。
[比較例2]
巻き取り条件およびコアを下記に変更する以外は、すべて実施例1と同様にしてハードコートフィルムロールを得た。
(巻き取り条件)
巻き取りタッチロール接圧:1.0N/m(タッチロール実質的に不使用)
初期巻き取り張力:150N/m
巻き取り張力テーパー:70%(最終巻き取り張力:105N/m)
巻き取り速度:30m/分
巻き取り後の保持張力:105N/m
巻き取り後の保持時間:5分
子ロール巻き取りコア:3インチのプラスティックコア(ポリスチレンクッションなし)
用いたハードコートフィルムの構成、および得られたハードコートフィルムロールの評価結果を表1に示す。比較例2で得られたハードコートフィルムロールは、ピンプル状欠点が非常に多いものであった。
Figure 2013170013
本発明の製造方法により得られたハードコートフィルムロールは、光学用、中でもタッチパネル用として好適に用いることができる。特に、欠点が少ないため、静電容量方式タッチパネル用として、また、静電容量方式タッチパネル内面用としても好適に用いることができる。

Claims (4)

  1. 厚み20〜55μmの基材フィルムの片面にハードコート層を有し、該ハードコート層表面における中心線平均表面粗さRahが0.2〜2.0nm、他方の表面における中心線平均表面粗さRasが1.0〜5.0nmであるハードコートフィルムを巻き取って得られるハードコートフィルムロールの製造方法であって、
    ロールにおいて巻き重なるハードコートフィルム間に保護フィルムを有さず、
    巻き取りにおいてタッチロールを実質的に用いず、
    巻き取り張力40〜110N/m、
    巻き取り速度10〜40m/分、
    の巻き取り条件でロールを巻き取った後、巻き取り張力を40〜110N/mに保持したまま1〜10分間保持する、ハードコートフィルムロールの製造方法。
  2. ハードコート層表面における水の接触角が70度以上、86度以下、n−ドデカンの接触角が22度以下である、請求項1に記載のハードコートフィルムロールの製造方法。
  3. 請求項1に記載の製造方法によって得られたハードコートフィルムロールであって、
    ロール表面における径1.0mm以上のピンプル状欠点が1個/m以下、
    ロール端面における端面ズレが2mm以下であるハードコートフィルムロール。
  4. ハードコートフィルムが、静電容量方式タッチパネル内面用ハードコートフィルムである、請求項3に記載のハードコートフィルムロール。
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