本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
本発明において使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の1種または2種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の1種または2種以上が挙げられる。
ポリエステルの重合触媒としては、特に制限は無く、従来公知の化合物を使用することができ、例えば、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等が挙げられる。触媒のコストの観点から、アンチモン化合物またはチタン化合物が好ましい。
本発明のポリエステルフィルム中にはフィルムの耐候性の向上、液晶などの劣化防止のために、紫外線吸収剤を含有させることも可能である。紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する化合物で、ポリエステルフィルムの製造工程で付加される熱に耐えうるものであれば特に限定されない。
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤があるが、透明性の観点から有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などが挙げられる。耐久性の観点からは環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系がより好ましい。また、紫外線吸収剤を2種類以上併用して用いることも可能である。
本発明のフィルムのポリエステル層中には、高い透明性を付与するために粒子を含有させないことが好ましいが、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合してもよい。
本発明のフィルムのポリエステル層中に配合できる粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は2種類以上を併用してもよい。
粒子を配合する場合、粒子の平均粒径は、通常5μm以下、好ましくは0.01〜3μmの範囲である。5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程においてハードコート層等の各種の表面機能層を形成させる場合等に不具合が生じる場合がある。
粒子を配合する場合、ポリエステル層中の粒子含有量は、フィルムの透明性を向上させる観点から、通常5重量%未満、好ましくは0.0005〜3重量%の範囲である。粒子含有量が5重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
ポリエステル層中に粒子を配合する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜350μm、好ましくは25〜250μmの範囲である。
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を乾燥したペレットを、押出機を用いてダイから溶融シートとして押し出し、冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
また、本発明においては積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
次に本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成について説明する。塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。より好ましくはインラインコーティングにより形成されるものである。
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押し出ししてから延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻き上げ前のフィルムの何れかにコーティングする。以下に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と塗布層形成を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、また。コーティング後に延伸を行うために、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングフィルムに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。また、延伸前にフィルム上に塗布層を設けることにより、塗布層を基材フィルムと共に延伸することができ、それにより塗布層を基材フィルムに強固に密着させることができる。さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造において、クリップ等によりフィルム端部を把持しつつ延伸することで、フィルムを縦および横方向に拘束することができ、熱固定工程において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。それゆえ、塗布後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、塗布層の造膜性が向上し、塗布層と基材フィルムをより強固に密着させることができ、さらには、強固な塗布層とすることができ、塗布層上に形成され得る各種の機能層との密着性や耐湿熱性等の性能を向上させることができる。
次に、本発明においてフィルムに設ける塗布層について述べる。本発明においては、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、縮合多環式芳香族化合物と、アクリル樹脂と、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、およびカルボジイミド化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有する塗布液から形成された塗布層を有し、当該塗布層の最表面に実質的に縮合多環式芳香族化合物が存在しないことを必須の要件とするものである。
本発明のフィルムにおける塗布層は、ハードコート層などの種々の表面機能層と良好な密着性を有し、また表面機能層を形成した際に、外光による干渉ムラを抑制するために屈折率が調整されたものである。
本発明のフィルムにおける塗布層に使用される縮合多環式芳香族化合物とは、下記式で例示されるような、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ナフタセン、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[a]フェナントレン、ピレン、ベンゾ[c]フェナントレン、ペリレン等の縮合多環式芳香族構造を有する化合物のことである。
ポリエステルフィルム上への塗布性を考慮すると、縮合多環式芳香族を有する化合物は、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の高分子化合物が好ましい。特にポリエステル樹脂にはより多くの縮合多環式芳香族を導入することができるためより好ましい。
縮合多環式芳香族をポリエステル樹脂に組み込む方法としては、例えば、縮合多環式芳香族に置換基として水酸基を2つあるいはそれ以上導入してジオール成分あるいは多価水酸基成分とするか、あるいはカルボン酸基を2つあるいはそれ以上導入してジカルボン酸成分あるいは多価カルボン酸成分として作成する方法がある。
積層ポリエステルフィルム製造工程において、着色がしにくいという点で、塗布層に含有する縮合多環式芳香族はナフタレン構造を有する化合物が好ましい。また、透明性が良好であるという点で、ポリエステル構成成分としてナフタレン構造を組み込んだ樹脂が好適に用いられる。当該ナフタレン構造としては、代表的なものとして、1,5−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。
なお、縮合多環式芳香族には、水酸基やカルボン酸基以外にも、硫黄元素を含有する置換基、フェニル基等の芳香族置換基、ハロゲン元素基等を導入することにより、屈折率の向上が期待でき、塗布性や密着性の観点から、アルキル基、エステル基、アミド基、スルホン酸基、カルボン酸基、水酸基等の置換基を導入してもよい。
本発明のフィルムにおける塗布層の形成には、塗布外観や各種の上塗り層との密着性を向上させる目的で、アクリル樹脂が使用される。本発明のフィルムにおける塗布層の形成に使用されるアクリル樹脂とは、アクリル系、メタアクリル系のモノマーに代表されるような、炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体いずれでも差し支え無い。また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタンなど)との共重合体も含まれる。例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。あるいは、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合成モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、または分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。各種上塗り層との密着性向上の観点から、ガラス転移温度が60℃以下のアクリル樹脂が好ましく、ガラス転移温度が−30℃から40℃のアクリル樹脂がより好適に用いられる。
上記炭素−炭素二重結合を持つ重合成モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキシルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリルなどのような種々の窒素含有化合物;スチレン、α―メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのような種々の珪素含有重合成モノマー類;燐含有ビニルモノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。
なお、本発明のフィルムにおける塗布層の形成には、縮合多環式芳香族化合物やアクリル樹脂以外の高分子化合物を併用することも可能である。
高分子化合物の具体例としては、縮合多環式芳香族化合物を含有しないポリエステル樹脂、縮合多環式芳香族化合物を含有しないポリウレタン樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。
本発明のフィルムにおける塗布層の形成には、塗布層の塗膜を強固にし、ハードコート層など各種の上塗り剤と十分な密着性を有し、耐熱特性を向上させるために、架橋剤としてオキサゾリン化合物、メラミン化合物、カルボジイミド化合物から選ばれる、少なくとも1種の化合物が使用される。中でも、塗布層の強度を向上させる観点から、メラミン化合物を含有することが好ましい。
本発明のフィルムにおける塗布層の形成に使用されるメラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール等が好適に用いられる。また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
本発明のフィルムにおける塗布層の形成に使用されるオキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物であり、特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の含ハロゲンα,β−不飽和モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、等のα,β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
オキサゾリン化合物に含有されるオキサゾリン基の含有量は、オキサゾリン基量で、通常0.5〜10mmol/g、好ましくは1〜9mmol/g、より好ましくは3〜8mmol/g、さらに好ましくは4〜6mmol/gの範囲である。上記範囲での使用が、塗膜強度の向上のために好ましい。
本発明のフィルムにおける塗布層の形成に使用されるカルボジイミド化合物とは、カルボジイミド構造を有する化合物のことであり、分子内にカルボジイミド構造を1つ以上有する化合物である。より良好な密着性等を得るために、分子内に2つ以上有するポリカルボジイミド化合物がより好ましい。
本発明のフィルムにおける塗布層の形成に使用されるカルボジイミド化合物は従来公知の技術で合成することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物の縮合反応が用いられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
さらに本発明の効果を消失させない範囲において、ポリカルボジイミド化合物の水溶性や水分散性を向上するために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの4級アンモニウム塩、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加して用いてもよい。
本発明のフィルムにおける塗布層の形成に使用されるカルボジイミド化合物に含有されるカルボジイミド基の含有量は、カルボジイミド当量(カルボジイミド基1molを与えるためのカルボジイミド化合物の重さ[g])で、通常100〜1000、好ましくは250〜800、より好ましくは300〜700、さらに好ましくは350〜650の範囲である。上記の範囲を外れる場合は、塗布層の強度や各種上塗り層との密着性が悪化する懸念がある。
また、本発明のフィルムにおける塗布層には、架橋剤としてオキサゾリン化合物、メラミン化合物、カルボジイミド化合物以外の化合物を併用することも可能である。例えば、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。これらの中から、2種以上の架橋剤を併用してもよい。
本発明のフィルムにおける塗布層に用いられる架橋剤は、乾燥過程や、製膜過程において、反応させて塗布層の性能を向上させる設計で用いている。できあがった塗布層中には、これら架橋剤の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
本発明のフィルムにおける塗布層は、その最表面に実質的に縮合多環式芳香族化合物が存在しないことを必須の要件とするものである。縮合多環式芳香族化合物は塗布層の屈折率を調整する上で有用であるが、縮合多環式芳香族化合物が塗布層の最表面に存在すると、各種上塗り層を設けた際に塗布層との親和性が低く、十分な密着性が出ない場合がある。一方、縮合多環式芳香族化合物が塗布層の最表面に存在しない場合、すなわち塗布層の最表面にアクリル樹脂やオキサゾリン化合物、メラミン化合物、カルボジイミド化合物が存在する場合は、例えばアクリル系樹脂からなるハードコート層との親和性が向上し、湿熱処理後も十分な密着性を持たせることができる。
塗布層の最表面の組成の分析は、例えばToF−SIMSなどで行うことができる。未処理の積層ポリエステルフィルムの塗布層の最表面の組成と、Arガスクラスター等で塗布層をエッチングして塗布層の内部の組成を分析して比較することにより、最表面に縮合多環式芳香族化合物が実質的に存在しないことを確認することができる。塗布層の最表面に実質的に縮合多環式芳香族化合物が存在しないとは、例えばToF−SIMSなどで塗布層の最表面の組成を分析した場合に、縮合多環式芳香族化合物が検出限界以下となることを意味する。
塗布層の最表面に実質的に縮合多環式芳香族化合物を存在させないためには、縮合多環式芳香族化合物としてポリエステル樹脂を用いることが好ましい。基材となるポリエステルフィルムとのπ電子相互作用や分子間力が強くなることで、縮合多環式芳香族化合物がポリエステルフィルム基材側に、塗布層中の他の成分が基材と逆側に分離しやすくなると考えられる。
また、本発明のフィルムにおける塗布層は、フィルムへの塗布液の塗工が終了した時点から、乾燥装置に至るまでに一定以上の時間を設けることが好ましい。具体的には3秒以上が好ましく、より好ましくは5〜120秒、さらに好ましくは8〜60秒の範囲である。一定以上の時間を設けることで、縮合多環式芳香族化合物がポリエステルフィルム基材側に、塗布層中の他の成分が基材と逆側に十分に分離すると考えられる。
本発明におけるポリエステルフィルムは少なくとも片面に塗布層を有するが、フィルムの反対面に同様のあるいは他の塗布層や機能層を設けていても、本発明の概念に当然含まれるものである。
本発明におけるポリエステルフィルムの反対面に設けられる塗布層としては、各種上塗り層との密着性に優れた塗布層、離型性を有する塗布層、帯電防止性能を有する塗布層などが挙げられるが、タッチパネルなど干渉ムラの軽減が必要な用途においては、反対面にも干渉ムラを軽減する塗布層を設けることが好ましい。
本発明におけるポリエステルフィルムの反対面に設けられる干渉ムラを軽減する塗布層としては、例えば、本発明と同様に縮合多環式芳香族化合物、アクリル樹脂、およびオキサゾリン化合物、メラミン化合物、カルボジイミド化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する塗布液から形成された塗布層や、金属酸化物を用いて屈折率を調整した塗布層が挙げられる。
本発明におけるポリエステルフィルムの反対面に設けられる干渉ムラを軽減する塗布層に使用されうる金属酸化物としては、例えば酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化イットリウム、酸化スズ、酸化ランタン、酸化インジウムなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。フィルムの透明性を保ちつつ屈折率を向上させるために、酸化ジルコニウムまたは酸化チタンがより好適に用いられる。
本発明のフィルムにおける塗布層には、滑り性やブロッキングの改良のため、塗布層の構成成分として、粒子を併用することが好ましい。
粒子の平均粒径は、フィルムの透明性の観点から好ましくは1.0μm以下の範囲であり、さらに好ましくは0.5μm以下の範囲である。易滑性と透明性を両立させる観点から粒径0.05〜0.15μmの粒子と、易滑性とブロッキング抑制の観点から0.20〜1.0μmの粒子を併用することが好ましい。
粒子の具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、有機粒子等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、塗布層には必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等が含有されてもよい。これらの添加剤は単独で用いてもよいし、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
本発明のフィルムにおける塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、縮合多環式芳香族化合物は通常15〜90重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜60重量%の範囲である。この範囲で使用することにより、塗布層の屈折率の調整が容易になり、ハードコート層など表面機能層を設けた場合に干渉ムラを抑制しやすくなる。また、この範囲を超える場合は表面機能層との密着性が低下する場合があり、この範囲を下回る場合は干渉ムラの抑制が十分でない場合がある。
本発明のフィルムにおける塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、アクリル樹脂は通常5〜80重量%、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは15〜35重量%の範囲である。この範囲を超える場合はハードコート層等の表面機能層形成後の干渉ムラにより、視認性が良くない場合があり、この範囲を下回る場合はハードコート層等の表面機能層との密着性が低下する可能性が懸念される場合がある。
本発明のフィルムにおける塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、カルボジイミド化合物の合計量は通常3〜80重量%、好ましくは5〜35重量%、より好ましくは10〜30重量%の範囲である。これらの範囲より外れる場合は、ハードコート層等の表面機能層との密着性が低下する可能性が懸念される場合や、ハードコート層等の表面機能層形成後の干渉ムラにより、視認性が良くない場合がある。
本発明のフィルムにおける塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、粒径0.05〜0.15μmの粒子の含有量は0.1〜10重量%の範囲であることが好ましく、0.2〜8重量%の範囲であることがより好ましく、0.3〜5重量%の範囲であることがさらに好ましい。0.1重量%未満の場合、滑り性の付与が不十分となる場合がある。また10重量%を超える場合、塗布層の透明性の低下、塗布層の連続性が損なわれることによる塗膜強度の低下、あるいは易接着性の低下が懸念される。
本発明のフィルムにおける塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、粒径0.20〜1.0μmの粒子の含有量は0.05〜5重量%の範囲であることが好ましく、0.1〜4重量%の範囲であることがより好ましく、0.2〜3重量%の範囲であることがさらに好ましい。0.05重量%未満の場合、ブロッキングを防止する効果が不十分となる場合がある。また5重量%を超える場合、塗布層の透明性の低下、塗布層の連続性が損なわれることによる塗膜強度の低下、あるいは易接着性の低下が懸念される。
塗布層中の各種成分の分析は、例えば、ToF−SIMS、ESCA、蛍光X線等の分析によって行うことができる。
本発明においては、ディスプレイ用途等、透明性が要求される用途に使用する場合のために、透明性が高いフィルムがより好ましい。例えば、透明性の1つの指標としてヘーズが挙げられ、その値は、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.8%以下、更に好ましくは1.5%以下の範囲である。ヘーズが高い場合は、フィルムの視認性が低下する場合がある。
本発明のフィルムにおける塗布層は外光反射による干渉ムラの発生を抑制するために屈折率の調整がなされたものであり、その屈折率は基材のポリエステルフィルムとハードコート層等の表面機能層の相乗平均付近、具体的には、塗布層の屈折率が1.55〜1.65の範囲になるよう設計したものである。塗布層の絶対反射率は、波長400〜800nmの範囲に極小値が一つ存在、より好ましくは波長500〜700nmの範囲に極小値が1つ存在するものである。また、その反射率の極小値が、好ましくは3.5〜5.5%、より好ましくは3.8〜5.2%、さらに好ましくは4.0〜5.0%の範囲である。波長400〜800nmの範囲にある極小値が1つではない場合、また絶対反射率の極小値が上記の値を外れる場合は、ハードコート層等の表面機能層を形成後に干渉ムラが発生し、フィルムの視認性が低下する場合がある。
インラインコーティングによって塗布層を設ける場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1〜50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
本発明のフィルムにおける塗布層の膜厚は、通常0.04〜0.20μm、好ましくは0.07〜0.15μmの範囲である。膜厚が上記範囲より外れる場合は、表面機能層を積層後の干渉ムラにより、視認性が悪化する場合がある。
本発明のフィルムにおいて、塗布層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
本発明のフィルムにおいて、ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
一方、インラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、70〜280℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
本発明のポリエステルフィルムには、塗布層の上にハードコート層等の表面機能層を設けるのが一般的である。ハードコート層に使用される材料としては、特に限定されないが、例えば、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、テトラエトキシシラン等の反応性珪素化合物等の硬化物が挙げられる。これらのうち生産性および硬度の両立の観点より、活性エネルギー線硬化性の多官能(メタ)アクリレートを含む組成物の重合硬化物であることが特に好ましい。
活性エネルギー線硬化性の多官能(メタ)アクリレートを含む組成物としては特に限定されるものではない。例えば、公知の紫外線硬化性の多官能(メタ)アクリレートを1種類以上混合したもの、紫外線硬化性ハードコート剤として市販されているもの、あるいはこれら以外に本実施形態の目的を損なわない範囲において、その他の成分をさらに添加したものを用いることができる。
活性エネルギー線硬化性の単官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、ジアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリール(メタ)アクリレート、フェニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性の二官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ) アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール変性ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性の多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等のウレタンアクリレート等が挙げられる。
また、ハードコート層等の表面機能層は、基材となるポリエステルフィルムの屈折率が高いために、特に干渉ムラを軽減するために、高く設計することが好ましい場合がある。高屈折率化のための方法として、金属酸化物を使用することが挙げられる。金属酸化物とは、従来公知の金属酸化物を使用することができ、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズ、酸価イットリウム、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化亜鉛、アンチモンチンオキサイド、インジウムチンオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、環境面、耐候性や価格を考慮すると酸化ジルコニウムが好ましい。
活性エネルギー線硬化性の(メタ)アクリレートを含む組成物に含まれるその他の成分は特に限定されるものではない。例えば、無機又は有機の微粒子、重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤及びレベリング剤等が挙げられる。また、ウェットコーティング法において成膜後乾燥させる場合には、任意の量の溶媒を添加することができる。
ハードコート層等の表面機能層の形成方法は、有機材料を用いた場合にはロールコート法、ダイコート法等の一般的なウェットコート法が採用される。形成されたハードコート層には必要に応じて加熱や紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射を施し、硬化反応を行うことができる。なお、塗布層の上に形成される表面機能層の屈折率は、一般的に1.45〜1.65、好ましくは1.50〜1.60である。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない範囲において、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次の通りである。
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)平均粒径の測定方法
TEM(Hitachi社製 H−7650、加速電圧100V)を使用して塗布層を観察し、粒子10個の粒径の平均値を平均粒径とした。
(3)塗布層の膜厚測定方法
塗布層の表面をRuO4で染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片をRuO4染色し、塗布層断面をTEM(Hitachi株式会社製 H−7650、加速電圧100V)を用いて測定した。
(4)ガラス転移点の測定
樹脂の水分散液をシャーレ内で乾燥させて樹脂皮膜を得た。得られた皮膜をNETZSCH社製DSC 204F Phoenixを用いて、−100℃〜100℃の温度範囲で、10℃/分の速度で昇温させてDSCチャートを測定し、さらに熱容量の変化からガラス転移点を測定した。
(5)ヘーズの測定方法
村上色彩技術研究所製ヘーズメーターHM−150を使用して、JIS K 7136で測定した。
(6)塗布層表面からの絶対反射率の測定
あらかじめ、ポリエステルフィルムの測定裏面に黒テープ(ニチバン株式会社製、ビニールテープVT−50)を貼り、分光光度計(日本分光株式会社製、紫外可視分光光度計V−670、および自動絶対反射測定装置ARM−500N)を使用して同期モード、入射角5°、N偏光、レスポンスFast、データ取区間隔1.0nm、バンド幅10nm、走査速度1000nm/minで塗布層面を波長範囲400〜800nmの絶対反射率を測定し、その極小値における反射率を評価した。
(7)塗布層の干渉ムラの評価
ポリエステルフィルムの塗布層上に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート72重量部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート18重量部、酸化ジルコニウム10重量部、光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)1重量部、メチルエチルケトン200重量部の混合塗液を乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、紫外線を照射して硬化させ、屈折率1.55のハードコート層を形成した。得られたフィルムを3波長光域型蛍光灯下で目視にて、干渉ムラを観察し、干渉ムラが確認できないものを○、薄くまばらな干渉ムラが確認されるものを△、明瞭な干渉ムラが確認されるものを×とした。
(8)塗布層の密着性の評価
上記(7)で得られたハードコート塗工フィルムに対して、60℃、90%RHの環境下で100時間後、10×10のクロスカットをして、18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−18を貼り付け、180°の剥離角度で急激に剥がした後の剥離面を観察し、剥離面積が10%未満なら○、10%以上50%未満なら△、50%以上なら×とした。
(9)塗布層の組成の分析方法
TOF−SIMS5(ION−TOF社製)およびTRIFTV(アルバック・ファイ社製)を用い、一次イオンとしてBi3 2+を照射し、塗布層表層の組成分析を行い、塗布層の最表面の縮合多環式芳香族化合物の有無を確認した。
実施例、比較例中で使用したポリエステル原料は次のとおりである。
<ポリエステル(1)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加した後、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、固有粘度0.65に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、固有粘度0.65のポリエステル(1)を得た。
<ポリエステル(2)の製造方法>
ポリエステル(1)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加後、平均粒径2.3μmのエチレングリコールに分散させたシリカ粒子を0.3重量部、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、固有粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止させた以外は、ポリエステル(1)の製造方法と同様の方法を用いて固有粘度0.65のポリエステル(2)を得た。
(E1):下記の組成で共重合した、縮合多環構造を有するポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)2,6−ナフタレンジカルボン酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ジエチレングリコール=92/8//80/20(mol%)
(E2):下記の組成で共重合した、縮合多環構造を有するポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)2,6−ナフタレンジカルボン酸/セバシン酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ヘキサンジオール/ジエチレングリコール=72/22/6//54/34/12(mol%)
(E3):下記の組成で共重合した、縮合多環構造を有さないポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4−ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)
(A1):下記の組成で重合した、ガラス転移点が40℃のアクリル樹脂水分散体
エチルアクリレート/n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N−メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(重量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
(C1):ヘキサメトキシメチロール化メラミン
(C2):オキサゾリン化合物
オキサゾリン基含有アクリルポリマー、エポクロス(登録商標)、オキサゾリン基量4.5mmol/g、株式会社日本触媒製
(C3):カルボジイミド化合物
ポリカルボジイミド化合物、カルボジライト(登録商標)、カルボジイミド当量430、日清紡株式会社製
(F1):平均粒径0.14μmのシリカ粒子
(F2):平均粒径0.30μmのシリカ粒子
実施例1:
ポリエステル(1)を押出機に供給し、285℃に加熱溶融して押出し、表面温度40〜50℃の鏡面冷却ドラムに密着させながら冷却固化させ、このフィルムを85℃の加熱ロール郡を通過させながら長手方向に3.7倍延伸し、一軸配向フィルムとした。この一軸延伸フィルムの片面に、下記表1に示す水系の塗布液1を塗布し、次いで10秒後に塗布部分がテンター延伸機に至るようフィルムを導き、100℃で幅方向に4.0倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施した後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、塗布層の膜厚(乾燥後)が0.09μmの塗布層を有する、厚み125μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムの絶対反射率を測定したところ、塗布層の400〜800nmの波長における絶対反射率の極小値は4.2%であり、ハードコート層を積層後のフィルムには明瞭な干渉ムラはなく、密着性も良好であった。また、ToF−SIMSの結果、塗布層の最表層の縮合多環式芳香族化合物のピークはスペクトルのノイズ以下(検出限界以下)であり、塗布層の最表層には縮合多環式芳香族化合物は含有されていなかった。このフィルムの特性を下記表2に示す。
実施例2〜14:
実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。これらの特性を下記表2に示す。
実施例15:
ポリエステル(1)とポリエステル(2)とを重量比で92/8でブレンドしたものをA層、およびポリエステル(1)のみをB層の原料として、押出機にそれぞれを供給し、285℃に加熱溶融し、A層を二分配して最外層(表層)、B層を中間層とする2種三層(A/B/A)の層構成で、押出条件で厚み構成比がA/B/A=3/94/3となるよう共押出し、表面温度40〜50℃の鏡面冷却ドラムに密着させながら冷却固化させ、このフィルムを85℃の加熱ロール郡を通過させながら長手方向に3.7倍延伸し、一軸配向フィルムとした。この一軸延伸フィルムの片面に、下記表1に示す水系の塗布液1を塗布し、次いで10秒後に塗布部分がテンター延伸機に至るようフィルムを導き、100℃で幅方向に4.0倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施した後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、塗布層の膜厚(乾燥後)が0.09μmの塗布層を有する、厚み125μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルムの特性を下記表2に示す。
比較例1〜4:
実施例1において、第1塗布層の塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムは下記表2に示すとおり、干渉ムラが悪いものや、ハードコートに対する密着性が劣るものであった。