本発明におけるポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。例えば、表層原料に高機能化されたポリエステルフィルムを用いて、効果的に各種の特性の向上を図る目的で、表層と中間層の原料を変えて、3層構成にすることも可能である。
本発明において使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
ポリエステルの重合触媒としては、特に制限はなく、従来公知の化合物を使用することができ、例えば、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等が挙げられる。この中でも、チタン化合物やゲルマニウム化合物は触媒活性が高く、少量で重合を行うことが可能であり、フィルム中に残留する金属量が少ないことから、フィルムの輝度が高くなるため好ましい。さらに、ゲルマニウム化合物は高価であることから、チタン化合物を用いることがより好ましい。
本発明のフィルムのポリエステル層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することも可能であるが、透明性の観点から粒子を配合しないものであることが好ましい。粒子を配合する場合、配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
また、粒子を配合する場合、粒子の平均粒径は、通常3μm以下、好ましくは0.01〜1.5μmの範囲である。平均粒径が3μmを超える場合には、フィルムの透明性が悪化する場合や、粒子による粒々感が発生し視認性が悪化する場合や、粒子による光の散乱が原因でフィルムの輝度が低下する場合がある。
粒子の含有量は、平均粒径にも依存するが、粒子を含有するポリエステルフィルムの層において、通常1000ppm以下の範囲、好ましくは500ppm以下の範囲、さらに好ましくは50ppm以下の範囲(意図して含有しないこと)である。1000ppmを超える場合は、透明性が悪化する場合や、粒子による粒々感が発生し視認性が悪化する場合や、粒子による光の散乱が原因でフィルムの輝度が低下する場合がある。
使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
本発明のポリエステルフィルム中にはフィルムの耐候性の向上、例えば、タッチパネル等に用いられる液晶ディスプレイの液晶等の劣化防止のために、紫外線吸収剤を含有させることも可能である。紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する化合物で、ポリエステルフィルムの製造工程で付加される熱に耐えうるものであれば特に限定されない。
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤があるが、透明性の観点からは有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などが挙げられる。耐久性の観点からは環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系がより好ましい。また、紫外線吸収剤を2種類以上併用して用いることも可能である。
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子や紫外線吸収剤以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜300μm、好ましくは25〜250μmの範囲である。
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料ペレットを乾燥し、単軸押出機を用いて、ダイから押し出された溶融フィルムを冷却ロールで冷却固化して未延伸フィルムを得る方法が好ましい。この場合、フィルムの平面性を向上させるためフィルムと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法や液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸フィルムは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸フィルムに非耐熱性粒子を含有する塗布液を塗布、乾燥して塗布層を形成する方法が挙げられる。その後、一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
また、本発明においてはポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸フィルムに非耐熱性粒子を含有する塗布液を塗布し、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
本発明においては、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、非耐熱性粒子および金属キレート化合物を含有する塗布液から形成された塗布層を有することを必須の要件とするものである。
本発明者らは、ポリエステルフィルム中に粒子を含有させ、透明性と滑り性を確保する手法として、粒子の平均粒径の変更、粒子の添加量の変更、粒子を含有するポリエステルフィルムの層(3層構成で最表層のみに粒子を含有させ、透明性を向上させつつ、滑り性も確保する方法)の厚み変更等を検討したが、いずれも高度な透明性と十分な滑り性を確保することが困難な結果であった。
本発明の目的の1つとしては、塗布層をフィルム製造工程初期の段階で形成することにより、溶融押し出し後に形成された未延伸フィルムに塗布層を形成した後から高温処理前までの各種工程において、十分な滑り性を確保するために用いられるものである。
また、通常、粒子が存在すると、光の散乱により白っぽく見えるが、非耐熱性の粒子を使用すると、後工程にて、高温で溶かして粒径を小さくする、変形させる、あるいはなくすことができるために、白っぽさを軽減できることを見出し、高度な透明性を実現することができた。
本発明のフィルムにおける塗布層の形成は、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられても良く、また、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングも可能である。製膜と同時に塗布が可能であり、製造コストを低く抑えることが可能であることもあり、インラインコーティングが好ましい。その中でも、非耐熱性粒子を熱処理して高透明化させるために、溶融押し出し後に形成された未延伸フィルム後から高温処理前までの任意の段階で行うことがより好ましい。特にロールによる傷つきを防止するために、初期の段階で行うことが好ましい。また、ロール等、フィルムと接触させて延伸する方法においては、フィルムへの傷つきが大きくなるため延伸前の段階で形成することが好ましい。
さらに、後工程で、非耐熱性粒子を溶かして粒径を小さくする、変形させる、あるいはなくすために、耐熱温度(熱変形する温度)を超える高温で処理することが、透明性を高くするために好ましい。
本発明のフィルムにおける塗布層に関して、以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、未延伸フィルム形成後、初期の段階で、塗布層を形成し、その後、最初の延伸を行い、さらに二度目の延伸を行なった後に高温処理を行うことで、より好適なポリエステルフィルムを製造することができる。塗布層を形成する場所は上記に限られたものではなく、その他の場所の候補として、例えば、逐次二軸延伸の場合、最初の延伸の後、二度目の延伸の前の段階で形成しても良い。
本発明のフィルムにおける塗布層は、例えば、より傷がつきやすい箇所を克服する等のために、フィルムのどちらか一方の側のみでもよいし、また、両面に形成してもよい。また、両面の場合、形成の箇所は同時でもよいし、異なっていてもよい。
本発明で用いる非耐熱性粒子とは、耐熱性の低い粒子のことであり、高温で粒子が変形するものである。特に、ポリエステルフィルムの製造工程で、フィルム化した後の温度が高い工程で、粒子が変形、あるいは溶解するようなものである。しかしながら、例えば、最初の延伸でロール等、フィルムと接触させて延伸する方法を選択する場合、当該延伸の工程においては易滑性を出すために粒子として十分な形を保持する必要があるので、ある程度の耐熱性は必要である。
すなわち、非耐熱性粒子に求められる熱特性は、120℃未満の温度では熱変形がなく、120℃以上の温度で熱変形するものが好ましい。
非耐熱性粒子の軟化点は、好ましくは120〜270℃の範囲、より好ましくは150〜250℃の範囲、さらに好ましくは180〜230℃の範囲である。120℃未満の場合、最初の延伸でロール等、フィルムと接触させて延伸する方法を選択した場合、延伸の温度によっては、粒子の熱変形が起こる可能性があり、滑り性が悪化してしまう懸念がある。また、一方、270℃を超える場合、最終製品として、粒子が熱変形しておらず、白っぽさが残るフィルムとなる懸念がある。
非耐熱性粒子としては、上記の熱特性を維持できるものであれば、特に限定されないが、上記の熱特性を達成しやすいという点において、一般的には無機粒子よりも有機粒子、すなわち、非耐熱性有機粒子であることが好ましい。また、粒子の大きさや形状のコントロールや、水を含め各種の溶媒への分散性を考慮した場合、有機粒子は高分子タイプ、すなわち、非耐熱性高分子粒子であることがより好ましい。
非耐熱性高分子粒子としては、本発明の主旨を損なわない範囲において、架橋タイプあるいは非架橋タイプの高分子粒子を使用することができるが、熱特性をより本発明の目的に合わせるためには、非架橋のタイプ、すなわち非耐熱性非架橋高分子粒子であることがさらに好ましい。
非耐熱性非架橋高分子粒子における非架橋とは、三次元構造を有しないか、少ない高分子粒子で、耐熱性が高くないものである。例えば、後述するような重合性モノマーによる粒子の場合、架橋性重合性モノマーが重合性モノマー全体の5重量%未満が好ましく、1重量%未満の範囲であることがより好ましい。
非耐熱性非架橋高分子粒子の高分子とは、従来公知の化合物を使用することができ、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂等が挙げられる。これらの高分子の中でも目的とする熱特性を有する化合物が製造しやすいという観点から炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーから形成されるアクリル樹脂、スチレン樹脂およびビニル樹脂がより好ましい。またこれらの樹脂の場合、高温処理することにより熱変形するので、粒子の脱落が防止でき、さらには、粒子としての機能ばかりでなく、例えば、上に形成する各種の表面機能層との密着性を上げる等、別の性能を発現させることも可能である。
炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーとは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;フッ化ビニル、塩化ビニル、塩化ビリデンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。
これらの中でも(メタ)アクリル系の重合性モノマーを主成分として重合させたアクリル樹脂が最適である。また、(メタ)アクリル系の重合性モノマーを主成分として、スチレン誘導体と共重合させたスチレン・アクリル樹脂も好適に用いることが可能である。
すなわち、本発明のフィルムにおける、塗布層の形成に用いる非耐熱性粒子の最良の形態は、上述したような、非耐熱性非架橋アクリル樹脂粒子および非耐熱性非架橋スチレン・アクリル樹脂粒子である。
非耐熱性非架橋アクリル樹脂粒子を用いる場合、当該樹脂粒子のガラス転移点は、好ましくは0〜150℃の範囲、より好ましくは50〜120℃の範囲である。0℃未満の場合、滑り性を十分に発揮できない懸念があり、150℃を超える場合は、粒子の熱変形が十分でない懸念がある。
非耐熱性粒子の平均粒径は、膜厚にも依存するため一概には言えないが、好ましくは0.01〜3μmの範囲、より好ましくは0.03〜1μmの範囲、さらに好ましくは0.05〜0.5μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合は、滑り性を十分に出すことができない場合があり、また、3μmを超える場合は、粒子が十分に変形せず、フィルムとして白っぽさが残ってしまう場合がある。
本発明においては、主に、ハードコート層等の各種の表面機能層が形成された後の外光反射による干渉ムラの軽減のために、塗布層の屈折率を高くする目的で、塗布層の形成には金属キレート化合物を使用する。
金属キレート化合物の具体例としては、チタントリエタノールアミネート、チタンラクテート、チタンアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、ポリチタンアセチルアセトナート、チタンエチルアセトアセテート等のチタン類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート等のジルコニウム類;アルミニウムアセチルアセトナート等のアルミニウム類;鉄アセチルアセトナート等の鉄類;コバルトアセチルアセトナート等のコバルト類;銅アセチルアセトナート等の銅類;亜鉛アセチルアセトナートヒドレート等の亜鉛類;等の金属キレート化合物が挙げられる。これらは1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。
上記金属キレート化合物の中でも、塗布層の屈折率を高くしやすさから、チタンキレート化合物やジルコニウムキレート化合物が好ましく、さらに、インラインコーティングへの適用等を配慮した場合、水溶性チタンキレート化合物や水溶性ジルコニウムキレート化合物がより好ましい。また、水系で使用する場合の塗布液の安定性の観点から、チタントリエタノールアミネート、チタンラクテートがさらに好ましい。
また、塗布液の安定性や塗布外観を考慮すると、金属キレート化合物は2種類以上併用することが好ましく、特に、チタンキレート化合物を2種類併用することが好ましい。すなわち、最適な形態は、チタントリエタノールアミネートとチタンラクテートを併用することである。
塗布層の形成には、塗布外観の向上、塗布面上にハードコート層等の種々の表面機能層が形成されたときの干渉ムラの低減、透明性や密着性の向上等のために各種のポリマーを併用することが好ましい。ポリマーとしては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。それらの中でもハードコート層等の表面機能層との密着性向上、塗布外観向上の観点から、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂を使用することが好ましく、分子内にベンゼン環等の芳香族化合物を数多く含有させることができ、それにより屈折率を高くすることができるという観点から、ポリエステル樹脂がより好ましい。
また、さらに塗布層の屈折率をより調整しやすくするため、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ナフタセン、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[a]フェナントレン、ピレン、ベンゾ[c]フェナントレン、ペリレン等の縮合多環式芳香族構造を有する化合物を併用することが好ましい。
ポリエステルフィルム上への塗布性を考慮すると、縮合多環式芳香族を有する化合物は、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の高分子化合物が好ましい。特にポリエステル樹脂にはより多くの縮合多環式芳香族を導入することができるためより好ましい。
縮合多環式芳香族をポリエステル樹脂に組み込む方法としては、例えば、縮合多環式芳香族に置換基として水酸基を2つあるいはそれ以上導入してジオール成分あるいは多価水酸基成分とするか、あるいはカルボン酸基を2つあるいはそれ以上導入してジカルボン酸成分あるいは多価カルボン酸成分として作成する方法がある。
積層ポリエステルフィルム製造工程において、着色がしにくいという点で、塗布層に含有する縮合多環式芳香族はナフタレン構造を有する化合物が好ましい。また、塗布層上に形成される各種表面機能層との密着性や、透明性が良好であるという点で、ポリエステル構成成分としてナフタレン構造を組み込んだ樹脂が好適に用いられる。当該ナフタレン構造としては、代表的なものとして、1,5−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。
なお、縮合多環式芳香族には、水酸基やカルボン酸基以外にも、硫黄元素を含有する置換基、フェニル基等の芳香族置換基、ハロゲン元素基等を導入することにより、屈折率の向上が期待でき、塗布性や密着性の観点から、アルキル基、エステル基、アミド基、スルホン酸基、カルボン酸基、水酸基等の置換基を導入してもよい。
塗布層の形成には、塗布層の塗膜を強固にするために架橋剤を併用することも可能である。架橋剤としては、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。
なお、上述した金属キレート化合物や架橋剤は、乾燥過程や、製膜過程において、反応させて塗布層の性能を向上させる設計で用いている。できあがった塗布層中には、これら架橋剤の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
また、最終的なフィルムにおいて、ブロッキングや滑り性改良を目的として、耐熱性粒子を併用することも可能である。その平均粒径はフィルムの透明性の観点から好ましくは0.5μm以下の範囲であり、さらに好ましくは0.2μm以下の範囲である。粒子の具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、耐熱性のある有機粒子等が挙げられる。
本発明のフィルムにおける塗布層の形成に関して、上述の一連の化合物を溶液または溶媒の分散体として、固形分濃度が0.1〜80重量%程度を目安に調整した塗布液を未延伸ポリエステルフィルム上に塗布する要領にてポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。特にインラインであることを考慮して、水溶液または水分散体であることがより好ましいが、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には有機溶剤を含有していてもよい。また、有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
本発明のフィルムにおける塗布層を構成する非耐熱性粒子の量は、目的が達成されれば特に限定されるものではない。また、用いる粒子の熱特性、大きさや塗布層の膜厚にも依存するので一概には言えないが、片面側のみの量として、乾燥後(延伸前)のフィルムで、好ましくは0.01〜200mg/m2の範囲、より好ましくは0.1〜150mg/m2の範囲、さらに好ましくは1〜70mg/m2の範囲である。
また、塗布層(乾燥後、延伸前)の塗布量は、片面側のみで、粒子の大きさや延伸倍率や塗布位置等にも依存するので、一概には言えないが、好ましくは0.1〜5g/m2以下の範囲、より好ましくは0.4〜3g/m2の範囲、さらに好ましくは1.0〜2.5g/m2の範囲である。塗布量が上記範囲より外れる場合は、ブロッキング、塗布外観の悪化、粒子の脱落や表面機能層を形成後の外光反射による干渉ムラの悪化が懸念される。
本発明におけるポリエステルフィルムに関して、ポリエステルフィルム上に設けられる塗布層の最終膜厚は、乾燥、延伸後のフィルムとして、通常0.04〜0.20μm、好ましくは0.05〜0.16μm、より好ましくは0.07〜0.13μmの範囲である。膜厚が上記範囲より外れる場合は、表面機能層を形成した後の外光反射による干渉ムラにより、視認性が悪化する場合がある。
本発明のフィルムにおいて、塗布層を形成する方法としては、例えば、グラビアコート、リバースロールコート、ダイコート、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、カーテンコート、ナイフコート、トランスファロールコート、スクイズコート、含浸コート、キスコート、スプレーコート、カレンダコート、押出コート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
また、フィルムに塗布層を形成する際に、必要に応じてコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
また、本発明においては、本発明のフィルムの塗布層の上に、さらに塗布層を形成(2層構成)することも可能である。例えば、本発明のフィルムの塗布層を形成し、少なくとも一方向に延伸後、各種の性能を付与するために第2の塗布層を形成することも可能である。また、第2の塗布層は、本発明のフィルムの塗布層が形成された面とは反対面側に形成することも可能である。また、フィルムの片面側のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。さらに、第2の塗布層を本発明の塗布層とすることも可能である。
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、上述の塗布層の形成には必要に応じて耐熱性粒子、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等を使用することができる。
塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、非耐熱性粒子は、粒径や膜厚にも依存するので一概には言えないが、通常0.01〜50重量%の範囲、好ましくは0.1〜20重量%の範囲、より好ましくは0.3〜10重量%の範囲である。上記範囲を外れる場合は、滑り性が十分でない場合、透明性が十分でない懸念、塗布層の屈折率が低くなることによる表面機能層を形成した後の外光反射による干渉ムラが悪化する場合がある。
塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、金属キレート化合物は、通常5〜99.99重量%の範囲、好ましくは10〜90重量%の範囲、より好ましくは20〜80重量%の範囲である。上記範囲を外れる場合はハードコート層等の表面機能層を形成した後の外光反射による干渉ムラの軽減が十分でない場合がある。
塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、ポリマーは、通常80重量%以下の範囲、好ましくは5〜70重量%の範囲、より好ましくは20〜60重量%の範囲である。上記範囲内で使用する場合、ハードコート層等の表面機能層との密着性が向上する。
塗布層の形成に用いられる非耐熱性粒子の最終形態や、塗布層中の他の成分等の分析は、例えば、TOF−SIMS、ESCA、蛍光X線、各種表面・断面観察等によって行うことができる。
本発明におけるポリエステルフィルムは優れた透明性が必要な用途に使用できるものであり、その内部ヘーズは、好ましくは0.0〜1.0%の範囲、より好ましくは0.0〜0.5%の範囲、さらに好ましくは0.0〜0.3%の範囲である。内部ヘーズが1.0%を超える場合は、フィルムの上の各種の表面機能層を設けても十分にヘーズを下げることができず、フィルムとして白っぽさが残ってしまい、十分な視認性を達成することができない。
本発明におけるポリエステルフィルムのヘーズは、フィルム上に各種の表面機能層を設ける場合は、表面ヘーズは下げられるので一概には言えないが、好ましくは0.0〜2.0%の範囲、より好ましくは0.0〜1.5%の範囲、さらに好ましくは0.0〜1.0%の範囲である。2.0%を超える場合は、フィルムの外観が悪く見える場合や、各種の表面機能層を設けても十分にヘーズを下げることができず、視認性が十分でないものになる場合がある。
本発明における塗布層は干渉ムラの発生を抑制するために、屈折率の調整がされたものであり、その屈折率(1.55〜1.65)は基材のポリエステルフィルム(1.60〜1.70)とハードコート層等の表面機能層の屈折率(1.45〜1.65)の相乗平均付近に設計したものである。塗布層の屈折率と塗布層の反射率は密接な関係がある。本発明のフィルムの塗布層の絶対反射率は、横軸に波長、縦軸に反射率を示すグラフを描き、反射率の極小値が波長400〜800nmの範囲に1つであり、その極小値は4.0%以上であることが好ましい。本発明の絶対反射率の範囲においては、その極小値が同じ波長に現れるならば、極小値の反射率は、屈折率が高い場合は高い値となり、屈折率が低い場合は低い値となる。
本発明における塗布層の絶対反射率は、好ましくは波長400〜800nmの範囲に極小値が1つ存在、より好ましくは波長500〜700nmの範囲に極小値が1つ存在するものである。また、その極小値の値が、好ましくは4.0〜6.5%、より好ましくは4.5〜6.2%の範囲である。波長400〜800nmの範囲にある極小値が1つではない場合、また、極小値の絶対反射率が上記の値を外れる場合は、ハードコート層等の表面機能層を形成後に干渉ムラが発生し、フィルムの視認性が低下する場合がある。
本発明のポリエステルフィルムには、塗布層の上にハードコート層等の表面機能層を設けるのが一般的である。ハードコート層に使用される材料としては、特に限定されないが、例えば、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、テトラエトキシシラン等の反応性珪素化合物等の硬化物が挙げられる。これらのうち生産性及び硬度の両立の観点より、活性エネルギー線硬化性の(メタ)アクリレートを含む組成物の重合硬化物であることが特に好ましい。
活性エネルギー線硬化性の(メタ)アクリレートを含む組成物は特に限定されるものでない。例えば、公知の活性エネルギー線硬化性の単官能(メタ)アクリレート、二官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートを一種類以上混合したもの、活性エネルギー線硬化性ハードコート用樹脂材として市販されているもの、あるいはこれら以外に本実施形態の目的を損なわない範囲において、その他の成分をさらに添加したものを用いることができる。
活性エネルギー線硬化性の単官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、ジアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリール(メタ)アクリレート、フェニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性の二官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ) アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール変性ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性の多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等のウレタンアクリレート等が挙げられる。
また、ハードコート層等の表面機能層は、基材となるポリエステルフィルムの屈折率が高いために、特に干渉ムラを軽減するために、高く設計することが好ましい場合がある。高屈折率化のための方法として、金属酸化物を使用することが挙げられる。金属酸化物とは、従来公知の金属酸化物を使用することができ、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズ、酸価イットリウム、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化亜鉛、アンチモンチンオキサイド、インジウムチンオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、環境面、耐候性や価格を考慮すると酸化ジルコニウムが好ましい。
活性エネルギー線硬化性の(メタ)アクリレートを含む組成物に含まれるその他の成分は特に限定されるものではない。例えば、無機又は有機の微粒子、重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤及びレベリング剤等が挙げられる。また、ウェットコーティング法において成膜後乾燥させる場合には、任意の量の溶媒を添加することができる。
ハードコート層等の表面機能層の形成方法は、有機材料を用いた場合にはロールコート法、ダイコート法等の一般的なウェットコート法が採用される。形成されたハードコート層には必要に応じて加熱や紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射を施し、硬化反応を行うことができる。なお、塗布層の上に形成される表面機能層の屈折率は、前述の通り、一般的に1.45〜1.65である。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの極限粘度の測定方法
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)粒子の平均粒径の測定方法
電子顕微鏡(HITACHI製S−4500)を使用してフィルムを観察し、粒子10個の粒子径の平均値を平均粒子径とした。なお、非耐熱性粒子に関しては、高温の工程前、すなわち縦延伸後、横延伸前のフィルムで観察を行なった。
(3)内部ヘーズの測定方法
スガ試験機株式会社製のヘーズメーター HZ−2を用いて、フィルムをエタノールに浸してJIS K 7136に準じて測定した。
(4)ヘーズの測定方法
株式会社村上色彩技術研究所製ヘーズメーター HM−150を使用して、JIS K 7136で測定した。
(5)フィルム表面の粗さ(Sa)
三次元非接触表面形状計測システム(株式会社菱化システム製 MN537N−M100)を用いて、高温の工程前、すなわち縦延伸後、横延伸前の冷却固化された面側のフィルムの粗さSaを測定した。Saとして、5nm未満の場合は、滑り性が悪いため、延伸工程等、ロール等と接触する場合、傷が入る懸念がある。より好ましい形態としては、5nm以上である。
(6)透明性の評価方法
フィルムを3波長光域型蛍光灯下で目視にて観察したときに、粒子感(フィルム中の粒子に起因する点々)が観察されずクリア感がある場合を○、粒子感がある場合や、白っぽさが観察される場合を×とした。
(7)ポリエステルフィルムにおける塗布層表面からの絶対反射率の評価方法
あらかじめ、ポリエステルフィルムの測定裏面に黒テープ(ニチバン株式会社製ビニールテープVT―50)を貼り、分光光度計(日本分光株式会社製 紫外可視分光光度計 V−570 および自動絶対反射率測定装置 ARM−500N)を使用して同期モード、入射角5°、N偏光、レスポンス Fast、データ取区間隔1.0nm、バンド幅10nm、走査速度1000m/minで塗布層面を波長範囲400〜800nmの絶対反射率を測定し、その極小値における波長(ボトム波長)と反射率を評価した。
(8)干渉ムラの評価方法
ポリエステルフィルムの塗布層上に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート72重量部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート18重量部、酸化ジルコニウム10重量部、光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)1重量部、メチルエチルケトン200重量部の混合塗液を乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、紫外線を照射して硬化させハードコート層を形成した。得られたフィルムを3波長光域型蛍光灯下で目視にて、干渉ムラを観察し、干渉ムラが確認できないものを◎、薄くまばらな干渉ムラが確認されるものを○、薄いが線状の干渉ムラが確認できるものを△、明瞭な干渉ムラが確認されるものを×とした。
(9)塗布層の密着性の評価方法
上記(8)の評価で得られたハードコート層を形成したフィルムに対して、10×10のクロスカットをして、その上に18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−18)を貼り付け、180度の剥離角度で急激にはがした後の剥離面を観察し、剥離面積が10%未満ならば○、10%以上50%未満なら△、50%以上ならば×とした。
(10)軟化点の測定方法
株式会社島津製作所製フローテスター CFT−500Dを用いて非耐熱性粒子が半分流出する温度を軟化点として測定した。
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部、エチルアシッドフォスフェートを生成ポリエステルに対して30ppm、触媒として酢酸マグネシウム・四水和物を生成ポリエステルに対して100ppmを窒素雰囲気下、260℃でエステル化反応をさせた。引き続いて、テトラブチルチタネートを生成ポリエステルに対して50ppm添加し、2時間30分かけて280℃まで昇温すると共に、絶対圧力0.3kPaまで減圧し、さらに80分、溶融重縮合させ、極限粘度0.63のポリエステル(A)を得た。
<ポリエステル(B)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部、触媒として酢酸マグネシウム・四水和物を生成ポリエステルに対して900ppmを窒素雰囲気下、225℃でエステル化反応をさせた。引き続いて、正リン酸を生成ポリエステルに対して3500ppm、二酸化ゲルマニウムを生成ポリエステルに対して70ppm添加し、2時間30分かけて280℃まで昇温すると共に、絶対圧力0.4kPaまで減圧し、さらに85分、溶融重縮合させ、極限粘度0.64のポリエステル(B)を得た。
<ポリエステル(C)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、溶融重合前に平均粒径0.1μmのシリカ粒子を生成ポリエステルに対して0.5重量%添加する以外はポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(C)を得た。
<ポリエステル(D)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、溶融重合前に平均粒径3.2μmのシリカ粒子を生成ポリエステルに対して0.5重量%添加する以外はポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(D)を得た。
各塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
・非耐熱性粒子:(IA)メチルメタクリレート/スチレン=70/30の組成で共重合した平均粒径0.37μm、軟化点220℃、ガラス転移点110℃の非耐熱性非架橋スチレン・アクリル樹脂粒子
・非耐熱性粒子:(IB)メチルメタクリレート/ブチルアクリレート=80/20の組成で共重合した平均粒径0.09μm、軟化点210℃、ガラス転移点60℃の非耐熱性非架橋アクリル粒子
・シリカ粒子:(IC)平均粒径0.07μmのシリカ粒子
・シリカ粒子:(ID)平均粒径0.30μmのシリカ粒子
・金属キレート化合物:(IIA) チタントリエタノールアミネート
・金属キレート化合物:(IIB) チタンラクテート
・金属キレート化合物:(IIC) ジルコニウムアセテート
・縮合多環式芳香族を有するポリエステル樹脂:(IIIA)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)2,6−ナフタレンジカルボン酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ジエチレングリコール=92/8//80/20(mol%)
・ポリエステル樹脂:(IIIB)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4−ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)
・ウレタン樹脂:(IIIC)
イソホロンジイソシアネートユニット:テレフタル酸ユニット:イソフタル酸ユニット:エチレングリコールユニット:ジエチレングリコールユニット:ジメチロールプロパン酸ユニット=12:19:18:21:25:5(mol%)から形成されるポリエステル系ポリウレタン樹脂の水分散体。
実施例1:
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ97%、3%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ97%、3%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1:18:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸フィルムを得た。その後、下記表1に示す水系の塗布液A1を未延伸フィルムの両面に塗布、乾燥し、塗布量(乾燥後)が片面で1.8g/m2の塗布層を有するフィルムを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、テンターに導き、横方向に120℃で4.0倍延伸し、230℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、厚さ125μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、縦延伸後のフィルムの粗さは十分であり、かつ、透明性は良好で、干渉ムラ特性も良好であった。このフィルムの特性を下記表2および3に示す。
実施例2〜11:
実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更し、塗布量を表2に示す量に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは下記表2および3に示すとおり、縦延伸後のフィルムの粗さは十分であり、かつ、透明性は良好で、干渉ムラ特性も良好であった。
実施例12:
ポリエステル(A)、(B)、(C)をそれぞれ96%、3%、1%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ97%、3%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1:18:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸フィルムを得た。その後、下記表1に示す水系の塗布液A2を未延伸フィルムの両面に塗布、乾燥し、塗布量(乾燥後)が片面で1.8g/m2の塗布層を有するフィルムを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、テンターに導き、横方向に120℃で4.0倍延伸し、230℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、厚さ125μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、縦延伸後のフィルムの粗さは十分であり、かつ、透明性は良好で、干渉ムラ特性も良好であった。このフィルムの特性を下記表2および3に示す。
実施例13:
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ97%、3%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ97%、3%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1:18:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸フィルムを得た。その後、下記表1に示す水系の塗布液B1を未延伸フィルムの両面に塗布、乾燥し、塗布量(乾燥後)が0.2g/m2の塗布層を有するフィルムを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの両面に、下記表1に示す水系の塗布液A4を塗布し、テンターに導き、横方向に120℃で4.0倍延伸し、230℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、塗布層の塗布量(乾燥・延伸後)が片面で0.1g/m2の第2の塗布層を有する厚さ125μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、縦延伸後のフィルムの粗さは十分であり、かつ、透明性は良好で、干渉ムラ特性も良好であった。このフィルムの特性を下記表2および3に示す。
比較例1:
実施例1において、塗布層を設けないこと以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムを評価したところ、下記表2に示すとおり、縦延伸後のフィルムの粗さは小さく、傷が入りやすい懸念があるものであった。
比較例2〜4:
実施例1において、塗布剤組成を下記表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは表2および3に示すとおり、ヘーズが高く、フィルムとして白っぽさのあるフィルムである場合や、縦延伸後のフィルムの粗さが十分でない場合、干渉ムラ特性が悪い場合が見られた。なお、比較例2はヘーズが高く、正確な絶対反射率を測定することができなかった。
比較例5:
ポリエステル(A)、(B)、(D)をそれぞれ92%、3%、5%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ97%、3%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1:18:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸フィルムを得た。その後、下記表1に示す水系の塗布液B3を未延伸フィルムの両面に塗布、乾燥し、塗布量(乾燥後)が片面で1.8g/m2の塗布層を有するフィルムを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、テンターに導き、横方向に120℃で4.0倍延伸し、230℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、厚さ125μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、粒子感が観察され、白っぽさのあるフィルムであった。このフィルムの特性を下記表2および3に示す。