JP2020023144A - ハードコートフィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】シクロオレフィンポリマー系フィルムを基材として用いた場合のハードコート層との密着性に優れたハードコートフィルムを提供する。【解決手段】このハードコートフィルムは、シクロオレフィンポリマー系基材フィルムの少なくとも片面にプライマー層を介して、電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層が積層されている。このプライマー層は、プロピレンーエチレン系共重合体が、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体、及び(メタ)アクリル酸エステルでグラフト変性されている変性ポリオレフィン系樹脂を含有している。【選択図】なし

Description

本発明は、光学部材に用いられるハードコートフィルム及びその製造方法に関する。更に詳しくは、エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示装置等のパネルディスプレイ、タッチパネル等の表示装置部品等の保護フィルムとして使用することができるハードコートフィルムに関する。
たとえば液晶表示装置(LCD)等の液晶ディスプレイの表示面には、取り扱い時に傷が付いて視認性が低下しないように耐擦傷性を付与することが要求されている。そのため、基材フィルムにハードコート層を設けたハードコートフィルムを利用して、ディスプレイの表示面の耐擦傷性を付与することが一般的に行われている。近年、表示画面上で表示を見ながら指やペン等でタッチすることでデータや指示を入力できるタッチパネルの普及により、この様な光学部材に用いるハードコートフィルムに対する機能的要求はさらに高まっている。
ところで、シクロオレフィンポリマーフィルムは、基材フィルムとして透明性、耐熱性、寸法安定性、低吸湿性、低複屈折性、及び光学的等方性に優れるため、この様な光学部材用途への利用が期待されており、このシクロオレフィンフィルム上にハードコート層を設けることが提案されている。しかし、このシクロオレフィンポリマーフィルムは、アクリルフィルムやポリエステルフィルムと異なりフィルム表面に極性基の数が少ないため、シクロオレフィンポリマーフィルムを基材として用いた場合、ハードコート層との密着性が劣るという問題点があった。
そこで、従来、シクロオレフィンポリマーフィルムにハードコート層との易接着性を付与する方法が特許文献1、特許文献2等に開示されている。
特開2001−147304号公報 特開2006−110875号公報
従来、シクロオレフィンポリマーフィルムにハードコート層との易接着性を付与する方法として、特許文献1では、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が開示されているが、これらの方法では、シクロオレフィンポリマーフィルムとハードコート層の密着性は不十分であるという問題点があった。
また、特許文献2では、シクロオレフィンポリマーフィルム上にオレフィン系樹脂からなるアンカーコート剤を塗設する方法が開示されている。このアンカーコート処理により、シクロオレフィンポリマーフィルムとハードコート層の密着性はある程度改善されるが、未だ不十分であるという問題点があった。さらには耐熱条件下ではハードコート層表面にクラックが発生しやすい問題点もあった。このような特定の材質のアンカーコート処理を行っても、基材フィルムとハードコート層の密着性の改善は不十分であった。
したがって、従来のハードコートフィルムでは、シクロオレフィンポリマーフィルムを基材として用いた場合のハードコート層との密着性の改善が大きな課題となっていた。
そこで、本発明は、シクロオレフィンポリマー系フィルムを基材として用い、特にハードコート層との密着性に優れたハードコートフィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、プライマー層に特定の樹脂を用いることによりハードコート層との密着性を改善できることを見出した。
すなわち、本発明は上記課題を解決するため以下の構成を有するものである。
(第1の発明)
シクロオレフィンポリマー系基材フィルムの少なくとも片面に、プライマー層を介して、電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層が積層されたハードコートフィルムであって、前記プライマー層は、プロピレンーエチレン系共重合体が、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体、及び(メタ)アクリル酸エステルでグラフト変性されている変性ポリオレフィン系樹脂を含有していることを特徴とするハードコートフィルム。
(第2の発明)
前記プロピレンーエチレン系共重合体におけるプロピレン成分とエチレン成分の比率(重量%)は、プロピレン成分/エチレン成分=60/40〜92/8の範囲であることを特徴とする第1の発明に記載のハードコートフィルム。
(第3の発明)
前記α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体は、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、無水ハイミック酸、及び(メタ)アクリル酸から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする第1又は第2の発明に記載のハードコートフィルム。
(第4の発明)
前記ハードコート層は、前記電離放射線硬化型樹脂として、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートを含有することを特徴とする第1乃至第3の発明のいずれかに記載のハードコートフィルム。
(第5の発明)
シクロオレフィンポリマー系基材フィルム上に、プライマー層を介して、電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層を有するハードコートフィルムの製造方法であって、前記シクロオレフィンポリマー系基材フィルム上に、プロピレンーエチレン系共重合体が、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体、及び(メタ)アクリル酸エステルでグラフト変性されている変性ポリオレフィン系樹脂を含有するプライマー層用塗料を塗布し、乾燥してプライマー層を形成し、次いで、該プライマー層上に、電離放射線硬化型樹脂を含むハードコート層用塗料を塗布し、乾燥してハードコート層を形成した後、電離放射線照射を施すことを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。
(第6の発明)
前記プロピレンーエチレン系共重合体におけるプロピレン成分とエチレン成分の比率(重量%)は、プロピレン成分/エチレン成分=60/40〜92/8の範囲であることを特徴とする第5の発明に記載のハードコートフィルムの製造方法。
(第7の発明)
前記α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体は、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、無水ハイミック酸、及び(メタ)アクリル酸から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする第5又は第6の発明に記載のハードコートフィルムの製造方法。
本発明によれば、シクロオレフィンポリマー系フィルムを基材として用い、特にハードコート層との密着性に優れたハードコートフィルムを得ることができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「○○〜△△」とは、特に断りのない限り、「○○以上△△以下」を意味するものとする。
上記第1の発明にあるとおり、本発明のハードコートフィルムは、シクロオレフィンポリマー系基材フィルムの少なくとも片面に、プライマー層を介して、電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層が積層されたハードコートフィルムであって、前記プライマー層は、プロピレンーエチレン系共重合体が、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体、及び(メタ)アクリル酸エステルでグラフト変性されている変性ポリオレフィン系樹脂を含有していることを特徴とするものである。
以下、このハードコートフィルムの構成を詳しく説明する。
[基材フィルム]
まず、上記ハードコートフィルムの基材フィルムについて説明する。
本発明において、ハードコートフィルムの基材フィルムとしては、透明性、耐熱性、寸法安定性、低吸湿性、低複屈折性、及び光学的等方性等に優れるシクロオレフィンポリマー系フィルムを用いる。具体的には、シクロオレフィン類単位がポリマー骨格中に交互に又はランダムに重合し分子構造中に脂環構造を有するものであり、ノルボルネン系化合物、単環の環状オレフィン、環状共役ジエンおよびビニル脂環式炭化水素から選択される少なくとも一種の化合物を含んでなる共重合体であるシクロオレフィンコポリマーフィルム又はシクロオレフィンポリマーフィルムが対象となり何れかを適宜選択し使用できる。
また、本発明において、上記シクロオレフィンポリマー系フィルムの厚さは、用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性、表示装置の薄膜化等の観点から、10μm〜300μmの範囲であることが好ましく、更に好ましくは20μm〜200μmの範囲である。
また、上記シクロオレフィンポリマー系フィルムの耐熱性については、ハードコートフィルム用途に用いる場合には、試料に温度変化を与えた時にその熱変化を測定する熱重量測定(TG)法や示差走査熱量測定(DSC)法等で測定されるガラス転移温度が、120℃〜170℃程度のフィルムの使用が好ましい。
本発明において、上記シクロオレフィンポリマー系フィルムの片面にプライマー層を介してハードコート層を形成する場合には、ハードコート層が形成されないシクロオレフィンポリマー系フィルムの裏面には、シクロオレフィンポリマー系フィルム巻取りの圧着防止やハードコート層を形成時のフィルムの走行性向上を目的に、シクロオレフィンポリマー系フィルム製膜時に、共押し出し法でシクロオレフィンポリマー系フィルムとの離型性に優れるポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、或いはポリエステル樹脂を保護層として積層したフィルムとしてもよい。また、裏面に弱粘着層が形成されているポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、或いはポリエステル樹脂等の保護フィルムを貼着したものを用いることも可能である。
上記シクロオレフィンポリマー系フィルムとしては、例えば、市販されているゼオノア(商品名:日本ゼオン株式会社製)、オプティカ(商品名:三井化学株式会社製)、アートン(商品名:JSR株式会社製)、コゼック(商品名:倉敷紡績株式会社製)等が挙げられる。
[プライマー層]
次に、上記ハードコートフィルムのプライマー層について説明する。
本発明のハードコートフィルムにおいては、上記プライマー層は、プロピレンーエチレン系共重合体が、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体、及び(メタ)アクリル酸エステルでグラフト変性されている変性ポリオレフィン系樹脂(以下、「本発明の変性ポリオレフィン系樹脂」とも呼ぶ。)を含有していることが重要である。
本発明のハードコートフィルムは、基材フィルムとハードコート層の間にプライマー層を用いており、このプライマー層が上記の特定の変性ポリオレフィン系樹脂(本発明の変性ポリオレフィン系樹脂)を含有することにより、シクロオレフィンポリマー系フィルムを基材として用いた場合の特にハードコート層の密着性を向上させることができる。
このように、本発明のハードコートフィルムのプライマー層に上記の特定の変性ポリオレフィン系樹脂(本発明の変性ポリオレフィン系樹脂)を用いることによるハードコート層との密着性向上効果が発現する理由は次のように推測される。
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂(変性プロピレンーエチレン系樹脂)は、低極性基材であるポリプロピレンと、アクリル樹脂やウレタン樹脂等の高極性樹脂を主成分とする上塗り層との間のプライマー層として、双方に対して密着性が良好であることがわかっている。本発明の基材フィルム(シクロオレフィンポリマー系フィルム)は、ポリプロピレンと同様にオレフィン系の低極性基材であり、また、ハードコート層は高極性のアクリル系樹脂が主成分であるため、本発明の変性プロピレン−エチレン系樹脂を用いることで、基材フィルムとハードコート層との間のプライマー層として良好な密着性を示すものと考えられる。
本発明における上記プライマー層を構成する主成分の樹脂は、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂、すなわち、プロピレンーエチレン系共重合体が、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体、及び(メタ)アクリル酸エステルでグラフト変性されている変性ポリオレフィン系樹脂である。
上記のプロピレンーエチレン系共重合体(以下、単に「成分(A)」と呼ぶこともある。)とは、主にプロピレン成分とエチレン成分からなる共重合体である。
この場合のプロピレンーエチレン系共重合体におけるプロピレン成分とエチレン成分の比率(重量%)は、ハードコート層の密着性向上効果の観点からは、プロピレン成分/エチレン成分=60/40〜92/8の範囲であることが好ましい。
プロピレンーエチレン系共重合体におけるプロピレン成分とエチレン成分の比率が上記の範囲外、つまり、例えばプロピレン成分の比率が92重量%を超える(エチレン成分が8重量%未満)場合、または、プロピレン成分の比率が60重量%未満(エチレン成分が40重量%を超える)の場合は、ハードコート層との密着性向上効果が十分に得られない。プロピレンーエチレン系共重合体におけるプロピレン成分とエチレン成分の比率(重量%)は、特に好ましくは、プロピレン成分/エチレン成分=85/15〜90/10の範囲である。
本発明においては、上記プロピレンーエチレン系共重合体は、プロピレン成分とエチレン成分の2成分からなる共重合体であることが特に好ましいが、本発明による作用効果を損なわない範囲で、これらプロピレン成分とエチレン成分以外の共重合成分が含まれていてもよい。この場合のプロピレン成分とエチレン成分以外の共重合成分としては、例えば、ブテン成分などが挙げられるが、その成分の比率は、全体の15重量%以下であることが望ましい。
上記プロピレンーエチレン系共重合体における各成分(共重合成分)の比率は、オルトジクロロベンゼン(d4)を測定溶媒として、120℃にてH−NMR(プロトン核磁気共鳴)分析を実施することによって測定することが可能である。このプロピレンーエチレン系共重合体(成分(A))は、公知の合成方法で得ることが可能である。
なお、後述の実施例を含む本発明では、上記プロピレンーエチレン系共重合体における各成分の比率は、上記の測定法によって測定された値をいうものとする。
また、上記のα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(以下、単に「成分(B)」と呼ぶこともある。)としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、無水ハイミック酸、(メタ)アクリル酸などが例示され、特に無水マレイン酸が好ましい。これらの化合物から選ばれる1種以上の化合物であればよく、この場合、α,β−不飽和カルボン酸1種以上と、α,β−不飽和カルボン酸の誘導体1種以上の組み合わせであってもよい。
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂中の上記成分(B)のグラフト重量は、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂を100重量%とした場合に、0.1〜10重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜4重量%の範囲である。成分(B)のグラフト重量が0.1重量%以上であることにより、得られる本発明の変性ポリオレフィン系樹脂をプライマー層に用いて、ハードコート層との密着性を向上させることが可能である。また、成分(B)のグラフト重量が10重量%以下であることにより、グラフト未反応物が多量に発生することを抑止することができる。なお、上記成分(B)のグラフト重量%は、変性ポリオレフィン系樹脂を100重量%とした場合に、実際にポリマー鎖にグラフトした成分(B)ユニットの百分率である。
成分(B)のグラフト重量%は、公知の方法で測定することができる。例えば、アルカリ滴定法或いはフーリエ変換赤外分光法によって求めることができる。
また、上記の(メタ)アクリル酸エステル(以下、単に「成分(C)」と呼ぶこともある。)は、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルであり、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記成分(C)は、下記一般式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましく、下記一般式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルであることがより好ましい。
CH=CRCOOR ・・・(I)
一般式(I)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、特にメチル基であることが好ましい。Rは−C2n+1を表す。ここで、nは8〜18の整数を表し、8〜15の整数であることが好ましく、8〜14の整数であることがより好ましく、8〜13の整数であることが更に好ましい。一般式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルとしては、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレートが好ましく、ラウリルメタクリレート、オクチルメタクリレートがより好ましい。
これにより、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂を合成する際に、成分(C)のホモ重合体の発生を抑止し、プロピレンーエチレン系共重合体(成分(A))と、成分(B)、成分(C)との間の高効率なグラフト反応を実現することができるため、得られる変性ポリオレフィン系樹脂の溶剤溶解性、溶液の低温安定性などを向上させることができる。なお、一般式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルは単独でも複数種でも任意の割合で混合して使用することができる。
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂中の上記成分(C)のグラフト重量は、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂を100重量%とした場合に、0.1〜10重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜7重量%の範囲である。成分(C)のグラフト重量が0.1重量%以上であることにより、高効率なグラフト反応を実現することができるため、溶剤溶解性、溶液の低温安定性などを良好に保持することができる。また、極性部位をポリマー中に導入することによってハードコート層との密着性改善に寄与する。また、成分(C)のグラフト重量が10重量%以下であることにより、グラフト未反応物の発生を防止することができる。なお、上記成分(C)のグラフト重量%は、変性ポリオレフィン系樹脂を100重量%とした場合に、実際にポリマー鎖にグラフトした成分(C)ユニットの百分率である。
成分(C)のグラフト重量%は、公知の方法で測定することができる。例えば、フーリエ変換赤外分光法或いはH−NMR(プロトン核磁気共鳴)分析によって求めることができる。
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂では、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂を100重量%とした場合に、上記成分(B)のグラフト重量及び上記成分(C)のグラフト重量のうちのいずれかが0.1〜10重量%の範囲であることが好ましく、両方が0.1〜10重量%の範囲であることがより好ましい。
本発明では、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分(B)、(C)以外のグラフト成分を併用してもよい。使用可能なグラフト成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸、成分(C)以外の(メタ)アクリル酸誘導体(例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等)が挙げられる。本発明の変性ポリオレフィン系樹脂中の成分(B)、(C)以外のグラフト成分は、単独であってもよいし、或いは複数種の組み合わせで併用してもよく、この成分(B)、(C)以外のグラフト成分の合計のグラフト重量が成分(B)、(C)の合計のグラフト重量を超えないことが好ましい。
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、上記のプロピレンーエチレン系共重合体(成分(A))に少なくとも上記成分(B)及び(C)をグラフト重合することで得ることができる。この変性ポリオレフィン系樹脂の合成方法は、公知の方法で行うことが可能であり、製造の際にはラジカル発生剤(以下、単に「成分(D)」と呼ぶこともある。)を用いてもよい。例えば、成分(A)、(B)及び(C)の混合物を、トルエン等の有機溶剤に加熱溶解し、これに成分(D)を添加する溶液法、或いは、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等の混練機を使用して、成分(A)、(B)、(C)及び(D)を添加し、加熱下で溶融混練反応により変性ポリオレフィン系樹脂を得る方法が挙げられる。後者の方法の場合、成分(A)、(B)、(C)及び(D)は一括添加しても、逐次添加してもよい。
上記成分(D)としてのラジカル発生剤は、公知のラジカル発生剤の中より適宜選択することができるが、特に有機過酸化物系化合物が好ましい。この有機過酸化物系化合物としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,4−ビス[(t−ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンセン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート等が挙げられ、中でもジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド及びジラウリルパーオキサイドが好ましい。成分(D)は、単独のラジカル発生剤でもよいし、複数種のラジカル発生剤の組み合わせであってもよい。
グラフト重合反応における成分(D)の添加量は、成分(B)の添加量および成分(C)の添加量の合計(重量)に対し、1〜100重量%であることが好ましく、より好ましくは、10〜50重量%である。成分(D)の添加量が1重量%以上であることにより、十分なグラフト効率を保持することができる。また、成分(D)の添加量が100重量%以下であることにより、変性ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)の低下を防止することができる。
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、40,000〜150,000の範囲であることが好ましい。変性ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(標準物質:ポリスチレン)によって測定し、算出された値である。
また、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、その融点(Tm)が例えば50℃〜150℃の範囲であることが好ましい。変性ポリオレフィン系樹脂の融点(Tm)は、例えば、示差走査型熱量計(DSC)を用い、JIS K7121−1987に準拠した条件で測定することが可能である。
本発明では、上記プライマー層を構成する樹脂として本発明の変性ポリオレフィン系樹脂を用いるが、本発明の作用効果を損なわない範囲で、他の樹脂、例えば、スチレンアクリル系樹脂、メチルメタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、イソシアネート系樹脂、繊維素系樹脂などを併用してもよい。
このプライマー層には、フィルム面同士のブロッキング防止の観点から、無機または有機微粒子を含むことができる。
無機微粒子としては、アルミナ、酸化亜鉛、シリカ、酸化チタン、酸化セリウム等の微粒子を例示することができ、有機微粒子としては、アクリル、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、ポリエチレン、スチレンアクリル、ポリエステル等の微粒子を例示することができる。粒子径としては、例えば0.05μm〜0.20μmの微粒子の使用が好ましい。
また、上記プライマー層には、表面特性の調整や、塗工性の改善を目的にレベリング剤の配合が可能であり、例えばフッ素系、アクリル系、シロキサン系、及びそれらの付加物或いは混合物などの公知のレベリング剤を使用可能である。配合量は、例えば表面特性の調整や塗工性に応じて適宜決定される。
また、上記プライマー層に添加するその他の添加剤として、本発明の効果を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、消泡剤、防汚剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤等を必要に応じて配合してもよい。
本発明における上記プライマー層の塗膜厚みは、特に制約されるわけではないが、基材フィルム及びハードコート層との密着性、或いはハードコート層の鉛筆硬度などに悪影響を及ぼさない範囲の0.1μm〜5.0μmの範囲が好適である。なお、プライマー層の塗膜厚みは、マイクロメーターで実測することにより測定可能である。
本発明において、上記プライマー層は、プライマー層を形成する樹脂に、必要に応じて、無機又は有機微粒子、レベリング剤、その他の添加剤等を適当な有機溶媒に溶解、分散した塗料(プライマー層用塗料)を上記シクロオレフィンポリマー系フィルム(基材フィルム)上に塗工、乾燥して形成される。この場合の有機溶媒としては、含有される上記樹脂の溶解性に応じて適宜選択でき、少なくとも固形分(樹脂、その他添加剤)を均一に溶解或いは分散できる溶媒であること、及び塗工時の作業性、乾燥性の観点から、たとえば沸点が50℃〜160℃の有機溶媒の使用が好ましい。そのような有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、n−ヘプタン等の芳香族系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブタノール系等のアルコール系溶剤等の公知の有機溶媒を単独或いは適宜数種類組み合わせて使用することも可能である。
本発明において、上記のプライマー層用塗料を基材フィルム上に塗工する方法としては、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、ファウンテンバー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知の塗工方式で塗工することができる。シクロオレフィンポリマー系フィルム上に塗工された塗料は、乾燥条件(乾燥炉内温度、炉内風速、乾燥時間など)を適宜調節しながら、通常50〜120℃程度の温度で乾燥し溶剤を除去し、塗膜を形成させる。
[ハードコート層]
次に、上記ハードコートフィルムのハードコート層について説明する。
本発明において、上記ハードコート層に含まれる樹脂としては、被膜を形成する樹脂であれば特に制限なく用いることができるが、特にハードコート層の表面硬度(鉛筆硬度、耐擦傷性)を付与し、また、紫外線の露光量によって架橋度合を調節することが可能であり、ハードコート層の表面硬度の調節が可能になるという点で電離放射線硬化型樹脂を用いることが好ましい。
本発明に用いる電離放射線硬化型樹脂は、紫外線(以下、「UV」と略記する。)や電子線(以下、「EB」と略記する。)を照射することによって硬化する透明な樹脂であれば、特に限定されるものではないが、塗膜硬度及びハードコート層が3次元的な架橋構造を形成するために1分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するUVまたはEBにて硬化可能な多官能アクリレートからなるものが好ましい。分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するUVまたはEB硬化可能な多官能アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等を挙げることができる。なお、多官能アクリレートは単独で使用するだけでなく、2種以上の複数を混合し使用してもよい。
さらに、本発明に用いる電離放射線硬化型樹脂は、重量平均分子量(Mw)が700〜3600の範囲内であるポリマーを用いることが好ましく、重量平均分子量700〜3000の範囲のものがより好ましく、重量平均分子量700〜2400がさらに好ましい。重量平均分子量が700未満であると、UVやEB照射により硬化した際の硬化収縮が大きく、ハードコートフィルムがハードコート層面側に反りかえる現象(カール)が大きくなり、その後の加工工程を経るに不具合が生じ、加工適性が悪い。また、重量平均分子量が3600を超えると、ハードコート層の柔軟性が高まるが、硬度が不足するため適さない。
また、本発明に用いる電離放射線硬化型樹脂は、重量平均分子量が1500未満である場合は、1分子中の官能基数は3個以上10個未満であることが望ましい。また、上記電離放射線硬化型樹脂の重量平均分子量が1500以上である場合は、1分子中の官能基数は3個以上20個以下であることが望ましい。上記範囲内であれば、耐熱条件下(100℃で5分間保存)でのクラックの発生を抑えつつ、カールが抑制でき、適切な加工適性を維持できる。
また、上記ハードコート層に含まれる樹脂としては、上述の電離放射線硬化型樹脂の他に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、アクリル、スチレン−アクリル、繊維素等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、ウレア樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ、珪素樹脂等の熱硬化性樹脂をハードコート層の硬度、耐擦傷性を損なわない範囲内で配合してもよい。
また、上記ハードコート層に無機酸化物微粒子を含有させ、表面硬度(耐擦傷性)の更なる向上を図ることも可能である。この場合、無機酸化物微粒子の平均粒子径は5〜50nmの範囲であることが好ましく、更に好ましくは平均粒子径10〜20nmの範囲である。平均粒子径が5nm未満であると、十分な表面硬度を得ることが困難である。一方、平均粒子径が50nmを超えると、ハードコート層の光沢、及び透明性が低下し易く、また、可撓性も低下するおそれがある。
本発明において、上記無機酸化物微粒子としては、例えばアルミナやシリカなどを挙げることができる。これらの中でも、アルミニウムを主成分とするアルミナは高硬度を有するため、シリカよりも少ない添加量で効果を得られることから特に好適である。
本発明において、無機酸化物微粒子の含有量は、ハードコート層3の電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して0.1〜10.0重量部であることが好ましい。無機酸化物微粒子の含有量が0.1重量部未満であると、表面硬度(耐擦傷性)の向上効果が得られ難い。一方、含有量が10.0重量部を超えると、ヘイズが上昇するため好ましくない。
上記ハードコート層を形成するためのハードコート塗料には、光重合開始剤を含むことができる。そのような光重合開始剤としては、市販のOmnirad 651やOmnirad 184(いずれも商品名:IGM Resins社製)などのアセトフェノン類、また、Omnirad 500(商品名:IGM Resins社製)などのベンゾフェノン類を使用できる。
上記ハードコート層には、塗工性の改善を目的にレベリング剤の使用が可能であり、たとえばフッ素系、アクリル系、シロキサン系、及びそれらの付加物或いは混合物などの公知のレベリング剤を使用可能である。配合量は、ハードコート層の樹脂の固形分100重量部に対し0.03重量部〜3.0重量部の範囲での配合が可能である。また、タッチパネル用途等において、タッチパネル端末のカバーガラス(CG)、透明導電部材(TSP)、液晶モジュール(LCM)等との接着を目的に光学透明粘着剤OCRを用いた対接着性が要求される場合には、表面自由エネルギーの高い(凡そ40mN/m以上)アクリル系レベリング剤やフッ素系のレベリング剤の使用が好ましい。
上記ハードコート層に添加するその他の添加剤として、本発明の効果を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、消泡剤、表面張力調整剤、防汚剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤等を必要に応じて配合してもよい。
上記ハードコート層は、上述の電離放射線硬化型樹脂の他に、光重合開始剤、その他の添加剤等を適当な溶媒に溶解、分散したハードコート塗料を上記プライマー層上に塗工、乾燥した後、UV又はEB等の電離放射線を照射することにより、光重合が起こりハード性に優れるハードコート層を得ることができる。溶媒としては、配合される上記樹脂の溶解性に応じて適宜選択でき、少なくとも固形分(樹脂、光重合開始剤、その他添加剤等)を均一に溶解あるいは分散できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、n−ヘプタンなどの芳香族系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール系等のアルコール系溶剤等の公知の有機溶媒を単独或いは適宜数種類組み合わせて使用することもできる。
上記ハードコート層を形成するハードコート塗料の塗工方法については、特に限定はないが、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、ファウンテンバー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知の塗工方式で塗設した後、通常50〜120℃程度の温度で乾燥する。
上記ハードコート層の塗膜厚さは、特に制約されるわけではないが、例えば1.0μm〜5.0μmの範囲であることが好ましく、更に好ましくは1.5μm〜3.5μmの範囲である.塗膜厚さが1.0μm未満では、必要な耐擦傷性の低下、及び鉛筆硬度が低下するため好ましくない。また、塗膜厚さが5.0μmを超えた場合は、カールが強く発生しやすく製造工程などで取扱い性が低下するため好ましくない。なお、ハードコート層の塗膜厚さは、マイクロメーターで実測することにより測定可能である。
[ハードコートフィルムの製造方法]
本発明は、以上説明した構成のハードコートフィルムの製造方法についても提供する。
すなわち、本発明は、シクロオレフィンポリマー系基材フィルム上に、プライマー層を介して、電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層を有するハードコートフィルムの製造方法であって、前記シクロオレフィンポリマー系基材フィルム上に、プロピレンーエチレン系共重合体が、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体、及び(メタ)アクリル酸エステルでグラフト変性されている変性ポリオレフィン系樹脂を含有するプライマー層用塗料を塗布し、乾燥してプライマー層を形成し、次いで、該プライマー層上に、電離放射線硬化型樹脂を含むハードコート層用塗料を塗布し、乾燥してハードコート層を形成した後、電離放射線照射を施すことを特徴とするハードコートフィルムの製造方法である。
上記のプライマー層用塗料およびハードコート層用塗料の調製や、これらの塗料の塗工方法、塗工膜の乾燥方法等については上記したとおりである。また、上記ハードコート層形成後の電離放射線(UV、EB等)の照射量は、ハードコート層に十分なハード性を持たせるに必要な照射量であればよく、電離放射線硬化型樹脂の種類等に応じて適宜設定することができる。
また、上記のプロピレンーエチレン系共重合体におけるプロピレン成分とエチレン成分の比率(重量%)は、プロピレン成分/エチレン成分=60/40〜92/8の範囲であることが特に好ましい。
また、上記のα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、無水ハイミック酸、及び(メタ)アクリル酸から選ばれる1種以上の化合物であることが好ましい。
以上詳細に説明したように、本発明によれば、シクロオレフィンポリマー系基材フィルムの少なくとも片面に、プライマー層を介して、電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層が積層され、このプライマー層は、プロピレンーエチレン系共重合体が、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体、及び(メタ)アクリル酸エステルでグラフト変性されている変性ポリオレフィン系樹脂を含有していることにより、シクロオレフィンポリマー系フィルムを基材として用いた場合の特にハードコート層との密着性に優れたハードコートフィルムを得ることができる。
次に、実施例を挙げて本発明の実施の形態をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、特に断りのない限り、以下に記載する「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。
[実施例1]
<変性ポリオレフィン系樹脂1の製造>
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、プロピレンーエチレン共重合体(プロピレン成分88重量%、エチレン成分12重量%、重量平均分子量60,000、Tm=65℃)100重量部をトルエン400g中に加熱溶解させた後、系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、無水マレイン酸4.2重量部、ラウリルメタクリレート2.6重量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド2重量部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応後、室温まで冷却した後、反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、重量平均分子量50,000、Tm=65℃、無水マレイン酸のグラフト重量が3.2重量%、ラウリルメタクリレートのグラフト重量が2.0重量%の変性ポリオレフィン系樹脂1を得た。なお、無水マレイン酸のグラフト重量はアルカリ滴定法により測定し、ラウリルメタクリレートのグラフト重量は、H−NMRにより測定した。以下の実施例等においても同様の方法により測定した。
<プライマー層塗料の調製>
上記のようにして製造した変性ポリオレフィン系樹脂1を、酢酸ブチル/トルエン=85/15(重量%)にて固形分濃度(塗料濃度)が5.5%となるまで希釈しプライマー層塗料を調製した。
<ハードコート層塗料の調製>
ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂「ARTRESIN UN−908(商品名)」(固形分100%、(メタ)アクリロイルオキシ基数:9、重量平均分子量:3600、根上工業株式会社製)100部を主剤とし、Omnirad 184(光重合開始剤、IGM Resins社製)3.5部と、TINUVIN 292(ヒンダードアミン系光安定化剤、BASF社製)2.5部と、レベリング剤メガファックRS75(フッ素系レベリング剤、DIC株式会社製)0.3部を酢酸ブチル/n−プロピルアルコール=50/50(重量部)で紫外線硬化型樹脂の塗料中の固形分濃度が35%となるまで希釈し十分攪拌してハードコート層塗料を調製した。
<ハードコートフィルムの作製>
シクロオレフィンフィルムとして厚さ40μmのゼオノアフィルムZF14(日本ゼオン株式会社製)の片面に、上記のプライマー層塗料を、バーコーター(#4)を用いて塗工し、100℃の乾燥炉で、炉内の風速1m/秒とし、60秒間熱風乾燥させて乾燥固化し、塗膜厚み0.4μmのプライマー層を形成させ、プライマー層塗布フィルムを得た。
次に、上記のプライマー層塗布フィルムのプライマー層上に、上記のハードコート層塗料を、バーコーター(#6)を用いて塗工し、80℃の乾燥炉で1分間熱風乾燥させ、塗膜厚み2.5μmの塗工層を形成した。これを、塗工面より60mmの高さにセットされたUV照射装置を用い、UV照射量180mJ/cmにて硬化させてハードコート層を形成し、本実施例のハードコートフィルムを作製した。
[実施例2]
<変性ポリオレフィン系樹脂2の製造>
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、プロピレンーエチレン共重合体(プロピレン成分88重量%、エチレン成分12重量%、重量平均分子量100,000、Tm=65℃)100重量部をトルエン400g中に加熱溶解させた後、系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、無水マレイン酸1.0重量部、オクチルメタクリレート1.2重量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド1重量部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応後、室温まで冷却した後、反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、重量平均分子量70,000、Tm=65℃、無水マレイン酸のグラフト重量が0.8重量%、オクチルメタクリレートのグラフト重量が1.0重量%の変性ポリオレフィン系樹脂2を得た。
<ハードコートフィルムの作製>
実施例1のプライマー層塗料に配合した樹脂を、上記の変性ポリオレフィン系樹脂2に変更したプライマー層塗料を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム(実施例2)を作製した。
[実施例3]
<変性ポリオレフィン系樹脂3の製造>
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、プロピレンーエチレン共重合体(プロピレン成分88重量%、エチレン成分12重量%、重量平均分子量100,000、Tm=65℃)100重量部をトルエン400g中に加熱溶解させた後、系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、無水マレイン酸2.5重量部、ラウリルメタクリレート1.8重量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド1重量部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応後、室温まで冷却した後、反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、重量平均分子量70,000、Tm=65℃、無水マレイン酸のグラフト重量が2.2重量%、ラウリルメタクリレートのグラフト重量が1.6重量%の変性ポリオレフィン系樹脂3を得た。
<ハードコートフィルムの作製>
実施例1のプライマー層塗料に配合した樹脂を、上記の変性ポリオレフィン系樹脂3に変更したプライマー層塗料を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム(実施例3)を作製した。
[実施例4]
<変性ポリオレフィン系樹脂4の製造>
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、プロピレンーエチレン共重合体(プロピレン成分73重量%、エチレン成分27重量%、重量平均分子量200,000、Tm=80℃)100重量部をトルエン400g中に加熱溶解させた後、系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、無水マレイン酸4.2重量部、オクチルメタクリレート2.6重量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド2重量部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応後、室温まで冷却した後、反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、重量平均分子量90,000、Tm=80℃、無水マレイン酸のグラフト重量が3.1重量%、オクチルメタクリレートのグラフト重量が2.0重量%の変性ポリオレフィン系樹脂4を得た。
<ハードコートフィルムの作製>
実施例1のプライマー層塗料に配合した樹脂を、上記の変性ポリオレフィン系樹脂4に変更したプライマー層塗料を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム(実施例4)を作製した。
[実施例5]
<変性ポリオレフィン系樹脂5の製造>
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、プロピレンーエチレン共重合体(プロピレン成分80重量%、エチレン成分20重量%、重量平均分子量170,000、Tm=72℃)100重量部をトルエン400g中に加熱溶解させた後、系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、無水マレイン酸4.2重量部、オクチルメタクリレート2.6重量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド2重量部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応後、室温まで冷却した後、反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、重量平均分子量80,000、Tm=72℃、無水マレイン酸のグラフト重量が3.2重量%、オクチルメタクリレートのグラフト重量が2.1重量%の変性ポリオレフィン系樹脂5を得た。
<ハードコートフィルムの作製>
実施例1のプライマー層塗料に配合した樹脂を、上記の変性ポリオレフィン系樹脂5に変更したプライマー層塗料を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム(実施例5)を作製した。
[実施例6]
<変性ポリオレフィン系樹脂6の製造>
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、プロピレンーエチレン共重合体(プロピレン成分89重量%、エチレン成分11重量%、重量平均分子量300,000、Tm=60℃)100重量部をトルエン400g中に加熱溶解させた後、系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、無水マレイン酸4.2重量部、ラウリルメタクリレート2.6重量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド2重量部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応後、室温まで冷却した後、反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、重量平均分子量140,000、Tm=60℃、無水マレイン酸のグラフト重量が3.1重量%、ラウリルメタクリレートのグラフト重量が2.0重量%の変性ポリオレフィン系樹脂6を得た。
<ハードコートフィルムの作製>
実施例1のプライマー層塗料に配合した樹脂を、上記の変性ポリオレフィン系樹脂6に変更したプライマー層塗料を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム(実施例6)を作製した。
[実施例7]
<変性ポリオレフィン系樹脂7の製造>
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、プロピレンーエチレン−1−ブテン共重合体(プロピレン成分57重量%、エチレン成分31重量%、1−ブテン成分12重量%、重量平均分子量220,000、Tm=85℃)100重量部をトルエン400g中に加熱溶解させた後、系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、無水マレイン酸8.0重量部、オクチルメタクリレート8.0重量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド4.5重量部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応後、室温まで冷却した後、反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、重量平均分子量100,000、Tm=85℃、無水マレイン酸のグラフト重量が6.2重量%、オクチルメタクリレートのグラフト重量が6.5重量%の変性ポリオレフィン系樹脂7を得た。
<ハードコートフィルムの作製>
実施例1のプライマー層塗料に配合した樹脂を、上記の変性ポリオレフィン系樹脂7に変更したプライマー層塗料を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム(実施例7)を作製した。
[比較例1]
<変性ポリオレフィン系樹脂8の製造>
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、プロピレンー1−ブテン共重合体(プロピレン成分67重量%、1−ブテン成分33重量%、重量平均分子量350,000、Tm=75℃)100重量部をトルエン400g中に加熱溶解させた後、系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、無水マレイン酸1.5重量部、ラウリルメタクリレート1.8重量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド1重量部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応後、室温まで冷却した後、反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、重量平均分子量130,000、Tm=75℃、無水マレイン酸のグラフト重量が1.3重量%、ラウリルメタクリレートのグラフト重量が1.6重量%の変性ポリオレフィン系樹脂8を得た。
<ハードコートフィルムの作製>
実施例1のプライマー層塗料に配合した樹脂を、上記の変性ポリオレフィン系樹脂8に変更したプライマー層塗料を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム(比較例1)を作製した。
以上のようにして作製した実施例及び比較例の各ハードコートフィルムを次の項目について評価し、その結果を纏めて表1に示した。
(1)塗膜の厚み
プライマー層及びハードコート層の塗膜の形成厚みは、Thin−Film Analyzer F20(商品名)(FILMETRICS社製)を用いて測定した。
(2)密着性
密着性は、JIS−K5600−5−6に準じて評価した。具体的には、各ハードコートフィルムについて、通常条件下、すなわち恒温恒湿条件下(23℃、50%RH)で、碁盤目剥離試験治具を用い1mmのクロスカットを100個作製し、積水化学工業株式会社製の粘着テープNo.252をその上に貼り付け、ヘラを用いて均一に押し付け後、60度方向に剥離し、ハードコート層の残存個数を残存率(%)として評価した。ハードコート層の残存率90%(残存個数90個)以上を密着性は合格と判定した。
(3)鉛筆硬度
各ハードコートフィルムについて、JIS−K−5600−5−4に準じた試験法により鉛筆硬度を測定した。表面に傷の発生なき硬度を測定した。判定基準については、硬度3B以上は合格とした。
(4)耐擦傷性
各ハードコートフィルムについて、JIS−K−5600−5−10に準じた試験法にて、ハードコート層面を、スチールウール#0000を用い、荷重1kgを掛け10往復摩擦し、傷のつき具合を次の基準で評価した。○評価品を耐擦傷性は良好とした。△評価品も製品として使用可能である。
○:傷の発生なし
△:傷が少し発生する
×:傷が無数に発生する
Figure 2020023144
上記表1の結果から明らかなように、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂をプライマー層に用いた実施例のハードコートフィルムによれば、シクロオレフィンポリマー系フィルムを基材として用いた場合のハードコート層の密着性に優れたハードコートフィルムを得ることができる。また、本発明の実施例によれば、ハードコート層のハード性(鉛筆硬度、耐擦傷性)にも優れたハードコートフィルムを得ることができる。
一方、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂とは異なる樹脂をプライマー層に用いた比較例のハードコートフィルムでは、密着性が劣っており、ハードコート層の密着不良が発生しやすい。なお、比較例のハードコートフィルムにおいては、ハードコート層の密着不良のため、上記の鉛筆硬度試験は適正に評価出来なかった。

Claims (7)

  1. シクロオレフィンポリマー系基材フィルムの少なくとも片面に、プライマー層を介して、電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層が積層されたハードコートフィルムであって、
    前記プライマー層は、プロピレンーエチレン系共重合体が、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体、及び(メタ)アクリル酸エステルでグラフト変性されている変性ポリオレフィン系樹脂を含有していることを特徴とするハードコートフィルム。
  2. 前記プロピレンーエチレン系共重合体におけるプロピレン成分とエチレン成分の比率(重量%)は、プロピレン成分/エチレン成分=60/40〜92/8の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルム。
  3. 前記α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体は、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、無水ハイミック酸、及び(メタ)アクリル酸から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のハードコートフィルム。
  4. 前記ハードコート層は、前記電離放射線硬化型樹脂として、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートを含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のハードコートフィルム。
  5. シクロオレフィンポリマー系基材フィルム上に、プライマー層を介して、電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層を有するハードコートフィルムの製造方法であって、
    前記シクロオレフィンポリマー系基材フィルム上に、プロピレンーエチレン系共重合体が、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体、及び(メタ)アクリル酸エステルでグラフト変性されている変性ポリオレフィン系樹脂を含有するプライマー層用塗料を塗布し、乾燥してプライマー層を形成し、
    次いで、該プライマー層上に、電離放射線硬化型樹脂を含むハードコート層用塗料を塗布し、乾燥してハードコート層を形成した後、電離放射線照射を施すことを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。
  6. 前記プロピレンーエチレン系共重合体におけるプロピレン成分とエチレン成分の比率(重量%)は、プロピレン成分/エチレン成分=60/40〜92/8の範囲であることを特徴とする請求項5に記載のハードコートフィルムの製造方法。
  7. 前記α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体は、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、無水ハイミック酸、及び(メタ)アクリル酸から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする請求項5又は6に記載のハードコートフィルムの製造方法。
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