JP2005276440A - 自己融着性絶縁電線 - Google Patents
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Abstract
【課題】自己融着性絶縁電線から発生するフェノール系溶剤臭気、およびこの自己融着性絶縁電線をコイル巻線機により偏向ヨークコイルに成形する時に発生するフェノール系溶剤臭気を低減する。
【解決手段】絶縁電線上に、融着層を設けて成る自己融着性絶縁電線において、該融着層は105〜150℃の温度範囲中に融点がある結晶性共重合ポリアミド樹脂とアルコール可溶性共重合ポリアミド樹脂とをアルコール系有機溶剤を含む混合有機溶剤に溶解してなる融着塗料を塗布焼き付けしてなる自己融着性絶縁電線によって上記課題を解決しうる。
【選択図】 なし
【解決手段】絶縁電線上に、融着層を設けて成る自己融着性絶縁電線において、該融着層は105〜150℃の温度範囲中に融点がある結晶性共重合ポリアミド樹脂とアルコール可溶性共重合ポリアミド樹脂とをアルコール系有機溶剤を含む混合有機溶剤に溶解してなる融着塗料を塗布焼き付けしてなる自己融着性絶縁電線によって上記課題を解決しうる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、テレビ受像器やコンピューターディスプレイ用の偏向ヨークコイルの製造に用いる自己融着性絶縁電線に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自己融着絶縁電線は、最外層に融着層が設けられていることから、金型にコイル巻後、通電加熱または溶剤処理法等により最外層の融着層が溶解または膨潤し、線間相互を融着固化せしめうることから、簡単に自己支持型のコイルを作ることが可能である。このように自己融着性絶縁電線は電気機器コイルの生産性を高め、製造コストを低減させることから、家庭電気機器、OA機器、電装品、CRTディスプレイ用偏向ヨーク等のコイル用途に広く実用化されている。
【0003】
近年のCRTディスプレイ装置は、小型化、耐熱化、高電圧化、高周波化が進んでいる。そのため、CRTディスプレイの重要部分である偏向ヨークコイルは、コイル形成時、すなわち、巻線用金型にコイル巻線後、熱融着して成形されたときに初期歪み(コイルの寸法と巻線用金型寸法との差であり、コイルのネック径やネジレ量を測定することにより評価できる)が小さいことや、常温および高温時における寸法変化が少ないこと等が望まれている。その要求に対応できる自己融着性絶縁電線としては、常温および高温時においても優れた耐熱変形性と接着強度特性を有することが必要である。
【0004】
また、近年では、CRTディスプレイの高精細度化、高周波数化に伴う偏向ヨークコイルでの過電流損や表皮効果損失によるコイル自体の発熱を低減するため、導体径の細い自己融着性絶縁電線を撚り合わされた自己融着性リッツ線が用いられることが多い。
【0005】
従来、自己融着性絶縁電線の融着層を形成する融着樹脂としては、エポキシ樹脂(フェノキシ樹脂)が使用されていたが、近年では、耐熱性や接着性のバランスが良好な共重合ポリアミドが使用されている。
【0006】
このような自己融着性絶縁電線は、導体上に、絶縁塗料、例えば、ポリエステルイミド塗料、ポリエステルイミドウレタン塗料、ポリウレタン塗料を、複数回、塗布、焼き付けして成る絶縁電線の上層に、共重合ポリアミド樹脂を主成分とする樹脂成分をクレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール系有機溶剤等に溶解せしめた融着塗料をダイスにより塗布し、これを焼付炉内に導入して溶剤を蒸発させ融着層を形成することにより製造されている。この製造方法は、融着塗料用として、溶剤に溶解する樹脂であればいかなる樹脂でも使用できること、絶縁電線への塗布時に必要な粘度低下が可能であること、等の利点がある。しかし、このように融着塗料を絶縁電線上に塗布焼き付けする際には必然的にフェノール系有機溶剤が作業環境に揮散して環境を汚染し、しかも得られる自己融着性絶縁電線中にフェノール系有機溶剤が微量ながら残留する問題があった。
【0007】
また、自己融着性絶縁電線は上記したように金型にコイル巻後、通電加熱され電気機器コイルに形成されるが、このように自己融着性絶縁電線の融着層中にフェノール系有機溶剤が微量ながら残留しているとコイル巻作業時の通電加熱時等に揮散するという問題がある。
【0008】
フェノール系有機溶剤は臭気、環境面で有害であるため、これらの問題を解決するためには融着層中に残留するフェノール系有機溶剤量をできる限り低減する必要がある。
【0009】
これにたいして、融着塗料の有機溶剤として臭気、環境面で効果的なベンジルアルコールを使用することにより、このような問題点を解消することが提案されているが、(例えば特許文献1,2参照)ベンジルアルコールは樹脂の溶解性が不十分であり、アルコールに可溶な特殊な共重合ポリアミドしか溶解できないという問題に加え、ベンジルアルコールは融着皮膜中に残留しやすいという問題もある。
【0010】
また、有機溶剤としてアミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、またはオクチルアルコール等のアルコール系溶剤とクレゾール、キシレン主成分の芳香族有機溶剤の混合有機溶剤を使用し、さらにフェノール樹脂を添加することでDYコイル巻線後の変形を改善することが提案されているが(例えば特許文献3参照)、DYコイル巻線時にフェノール樹脂から臭気が発生するという問題がある。
【0011】
【特許文献1】特開平8−17251号(段落番号0007)
【0012】
【特許文献2】特開平8−287727(段落番号0022)
【0013】
【特許文献3】特開平11−53952(段落番号0005)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような自己融着性絶縁電線における従来技術の問題点を解消し、自己融着性絶縁電線の融着層中に残留するフェノール系有機溶剤量を少なくでき、また該自己融着性絶縁電線を用いて電気機器コイルを成形する際に、フェノール系有機溶剤が揮散することが無いため、臭気環境面での問題がない自己融着性絶縁電線を提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、絶縁電線上に、融着層を設けて成る自己融着性絶縁電線において、該融着層は結晶性共重合ポリアミド樹脂とアルコール可溶性共重合ポリアミド樹脂とを、アルコール系有機溶剤を含む混合有機溶剤に溶解して成る融着性塗料を塗布、焼付けして形成するものであることを特徴とする自己融着性絶縁電線に関する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明における結晶性共重合ポリアミド樹脂は、特に限定されないが、105〜150℃の温度範囲中に融点を有するもの、好ましくは120〜150℃の温度範囲中に融点を有するものが好ましい。結晶性共重合ポリアミド樹脂の融点が105℃以下であると自己融着性絶縁電線の耐熱性が不十分となる傾向にある。一方、融点が150℃を越えると、偏向ヨークコイルの成形時の接着性が悪くなり、線バラケ等の不具合が生じる場合がる。
【0017】
なお、このような結晶性共重合ポリアミドとしては、6-ナイロン、66ナイロン、610ナイロン、612ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、イソホロンジアミン−アジペート等の共重合体があげられ、市販品としては、ダイセル・デグサ社のX−7079、431、451、471、アトフィナ社のM1186、M2269、MX2441、MX2447、MX2454等が挙げられる。
【0018】
前記アルコール可溶性共重合ポリアミド樹脂は、イソホロンジアミンとセバシン酸の反応物、イソホロンジアミンとアゼライン酸の反応物、イソホロンジアミンとアジピン酸の反応物、ナイロン6モノマー単位、ナイロン66モノマー単位、ナイロン610モノマー単位、ナイロン11モノマー単位、ナイロン12モノマー単位の中から選ばれた少なくとも2種以上を含むものであり、アルコール系溶剤に溶解するものであればよい。
【0019】
このようなアルコール可溶性共重合ポリアミド樹脂の添加量は、主成分である結晶性共重合ポリアミド樹脂100重量部に対して、5〜20重量部であることが好ましい。5重量部以下では、巻線用金型にコイル巻線後、熱融着して成形されたときに偏向ヨークコイルの初期歪みが悪くなり、20重量部以上では線間接着力、熱変形性が低下する。
【0020】
本発明においては、融着塗料に各種添加剤を配合してもよい。添加剤としては、前記共重合ポリアミド樹脂の熱劣化を防止して、偏向ヨークコイルの線間接着力が実用使用時に低下しないようにするために、一般的に知られている酸化防止剤であれば特に限定することなく用いることができる。
また、自己融着性絶縁電線に良好な潤滑性を付与して自己潤滑性絶縁電線として使用するために、本発明の効果を損なわない範囲で適当な潤滑剤を融着性塗料中に添加しても良い。
【0021】
本発明の自己融着性絶縁電線は、前記共重合ポリアミド樹脂を主成分とする樹脂、必要に応じて酸化防止剤、潤滑剤等の添加剤を、アルコール系有機溶剤を含む混合有機溶剤に溶解した融着塗料を絶縁電線上に塗布、焼き付けして形成したものである。
【0022】
前記アルコール系有機溶剤としては、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、アミルアルコール等がある。これらの中では、2−エチルヘキサノールが樹脂溶解性に優れていることから好ましい。
【0023】
融着塗料に用いる有機溶剤中のアルコール系有機溶剤の含有量は5〜30重量%であることが、溶解性、塗料安定性等の点で適切である。さらに好ましくは10〜25重量%である。アルコール系有機溶剤の含有量が10重量%未満の場合は、臭気的に悪化し本発明の効果が得られない。さらに、30重量%を超えると溶解性および塗料安定性の面で問題となる。
【0024】
前記有機溶剤は、アルコール系有機溶剤以外の有機溶剤を含有して混合有機溶剤として用いる。たとえばクレゾール(クレゾール酸)、フェノール、キシレノール等のフェノール系有機溶剤やN−メチルピロリドンも使用できる。また、ソルベントナフサ、各種芳香族炭化水素、キシレン、トルエンなどの貧溶媒も前記良溶媒とともに用いることができる。これらは単独で用いても良く2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】
アルコール系有機溶剤を用いることにより、フェノール系有機溶剤などの含有量を低減させることができるので、本発明の融着塗料に用いる有機溶剤中のフェノール系有機溶剤の含有量は、40重量%以下であることが好ましい。40重量%を超えると、該融着塗料を用いて形成される自己融着性絶縁電線中のフェノール系有機溶剤の残留溶剤量が増加するため、臭気が悪化し、本発明の効果が得られない。さらに20重量%未満の場合は、塗料の溶解性に問題が生じる。
【0026】
また、本発明の融着塗料に用いる有機溶剤中の芳香族炭化水素の含有量は、30〜60重量%であることが、臭気および溶解性の点で適切である。さらに好ましくは、35〜55重量%である。有機溶剤中の芳香族炭化水素の含有量が35重量%未満の場合は、臭気的に悪化し本発明の効果が得られない。60重量%を超えると溶解性および塗料安定性の面で問題となる。
【0027】
前記融着塗料の樹脂分濃度としては、使用する絶縁電線のサイズにより異なるが、10〜25重量%であることが好ましい。前記樹脂分濃度が10重量%未満の場合には目標とする融着層を形成するために多数回の塗布、焼き付けが必要で生産性が低下するだけでなく、融着層中の残留溶剤量が多くなる。また、25重量%を超える場合には融着塗料としたときの粘度が上り、それにより塗布、焼き付け時の作業性が急激に悪化するだけでなく、融着塗料に用いる溶剤に均一に溶解できない場合も生じる。
【0028】
本発明の自己融着性絶縁電線に用いられる絶縁電線は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の導体上に、ポリエステルイミドやポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルイミドウレタン、ポリアミドイミド、ポリアミドイミドウレタン、ポリイミド、ポリエステルアミド、ポリエステルアミドイミド等で被覆し、絶縁層を設けたものである。
【0029】
前記融着塗料を絶縁電線上に塗布する方法としては、通常知られている塗布方法であれば特に限定はなく、たとえば、ダイス絞り法、フェルト絞り法などの方法が挙げられる。
【0030】
本発明の自己融着性絶縁電線における融着層の厚さは、自己融着性絶縁電線の品種、サイズにより異なるが、5〜20μm、概ね10μm程度である。前記融着層の厚さが5μm未満の場合には、偏向コイルとしたときに適切な接着力が得られなくなり、20μmを超える場合にはコストが高くなる。
【0031】
また、本発明の自己融着性絶縁電線に良好な潤滑性を付与して自己潤滑性絶縁電線として使用するために、本発明の効果を損なわない範囲内で適当な潤滑剤を本発明の自己融着性絶縁電線上に塗布してもよい。
【0032】
【実施例】
つぎに、本発明の自己融着性絶縁電線を実施例および比較例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、比較例および実施例における評価方法を下記にまとめて示す。
(樹脂分濃度)
融着塗料約1.5gを170℃で2時間加熱した後、不揮発分重量を測定し、不揮発分重量/融着塗料重量により樹脂分濃度を算出した。
(樹脂溶解性)
樹脂溶解性は、融着樹脂を溶剤に溶解させた後、室温まで冷却した時の塗料の状態で評価し、固化・ゲル化がしなければ○、固化・ゲル化した場合は×とした。
(保存安定性)
保存安定性は、融着樹脂を溶剤に溶解させて得られた塗料を室温中に168時間放置した後の塗料の状態により評価し、流動性がほとんど変化しないものを○、増粘、固化・ゲル化した場合は×とした。
(臭気)
コイル巻線機により、巻線、融着、プレス成形された直後の偏向ヨークコイルの臭気を嗅ぎ、フェノール系有機溶剤の臭気が感じられないものを○、少しでも感じ取れるものを×とした。
(残留溶剤量)
得られた偏向ヨークコイルをパージ&トラップガスクロマトグラフィーにより測定し、偏向ヨークコイルの融着層重量当たりの残留溶剤量の割合で示した。アルコール系有機溶剤は自己融着絶縁電線の融着皮膜中に一部残留するが、上記のパージ&トラップガスクロマトグラフ後の質量分析により確認することができる。
(コイル寸法)
図2に示した測定部位について、ネック径はノギスで、ネジレ量はスキマゲージで測定した。
(線間接着力)
得られた偏向ヨークコイルを室温で24時間放置した後、図3に示したように、偏向ヨークコイルの内側部分1ターンの接着力をテンションゲージで測定した。
(耐熱後のネック径変化量(耐熱変形性))
得られた偏向ヨークコイルを120℃あるいは130℃に設定したオーブン中で2時間加熱した後、室温で放冷し、コイルのネック径を測定した。加熱前のネック径と加熱後の変化量を表した。
【0033】
(実施例1)
ダイセル・デグサ社の結晶性共重合ポリアミド樹脂であるX―7079 100重量部に対して、アルコール可溶性結晶性ポリアミド樹脂としてイソホロンジアミンとセバシン酸の反応物とナイロン12モノマー単位を含む共重合ポリアミド樹脂を10重量部含有して成る樹脂成分を、クレゾール酸とC9芳香族ナフサである丸善石油化学社製スワゾール1000と2−エチルヘキサノールとの重量比が40:40:20である混合有機溶剤に、樹脂分濃度15重量%になるように溶解して、融着塗料を得た。得られた融着塗料の粘度は、30℃において20dPa・sであった。この融着塗料を導体径0.15mm、絶縁外径0.19mmのポリエステルイミド絶縁電線上に塗布(ダイス絞り法にて塗布)、焼付け(炉長3.0m、炉温300℃、線速60m/min)を3回繰り返し、融着皮膜厚さ10μmの自己融着性絶縁電線を得た。
得られた自己融着性絶縁電線の10本を撚り合わせて自己融着性リッツ線とし、次にこの自己融着性リッツ線を、成形条件が58ターン*2本巻、通電時間1.5秒、通電電流60A、冷却プレス25秒、金型温度40℃に設定した巻線機により、巻線、通電融着、加圧成形して図1に示す偏向ヨークコイルを作製した。なお、図1中、1は巻き始めの電線、2は上部フランジ部、3は巻線部、4は下部フランジ部、5は巻き終わりの電線を示す。
得られた偏向ヨークコイルを95℃で10分間加熱し、発生したガスを一次トラップ管に捕集し、パージ&トラップガスクロマトグラフィーを行なった。測定装置として、日本分析工業株式会社製のアウトガスサンプラ「HDD―500」、キューリーポイントパージ&トラップサンプラ「JHS―100A」、キューリーポイントパイロライザー「JHP―3」、ガスクロマトグラフィーは島津製作所社製「GC―14B」を用いた。
また、得られた偏向ヨークについて、図2に示した寸法を測定し、図3のように接着力を測定した。以上の結果を表1に示す。
【0034】
(実施例2)
クレゾール酸とC9芳香族ナフサである丸善石油化学社製スワゾール1000と2−エチルヘキサノールとの重量比が40:50:10である混合有機溶剤とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表1に示す。
【0035】
(実施例3)
クレゾール酸とC9芳香族ナフサである丸善石油化学社製スワゾール1000と2−エチルヘキサノールとの重量比が30:50:20である混合有機溶剤とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表1に示す。
【0036】
(実施例4)
クレゾール酸とC9芳香族ナフサである丸善石油化学社製スワゾール1000と2−エチルヘキサノールとの重量比が40:35:25である混合有機溶剤とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表1に示す。
【0037】
(実施例5)
クレゾール酸とC9芳香族ナフサである丸善石油化学社製スワゾール1000と2−エチルヘキサノールとの重量比が35:55:10である混合有機溶剤とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表1に示す。
【0038】
(実施例6)
アルコール可溶性共重合ポリアミド樹脂としてイソホロンジアミンとセバシン酸の反応物とナイロン12モノマー単位を含む共重合ポリアミドの添加量をダイセル・デグサ社の結晶性共重合ポリアミド樹脂X―7079 100重量部に対して15重量部とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表1に示す。
【0039】
(実施例7)
アルコール可溶性共重合ポリアミド樹脂としてイソホロンジアミンとセバシン酸の反応物とナイロン12モノマー単位を含む共重合ポリアミドの添加量をダイセル・デグサ社の結晶性共重合ポリアミド樹脂であるX―7079 100重量部に対して20重量部とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表1に示す。
【0040】
(比較例1)
有機溶剤をベンジルアルコール 100重量%とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表2に示す。
【0041】
(比較例2)
有機溶剤をクレゾール酸 100重量%とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表2に示す。
【0042】
(比較例3)
クレゾール酸とC9芳香族ナフサである丸善石油化学社製スワゾール1000の重量比が70:30である混合有機溶剤とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表2に示す。
【0043】
(比較例4)
クレゾール酸とC9芳香族ナフサである丸善石油化学社製スワゾール1000の重量比が60:40である混合有機溶剤とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表2に示す。
【0044】
(比較例5)
ベンジルアルコールとクレゾール酸とC9芳香族ナフサである丸善石油化学社製スワゾール1000の重量比が60:15:25である混合有機溶剤とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表2に示す。
【0045】
(比較例6)
アルコール可溶性共重合ポリアミド樹脂として、イソホロンジアミンとセバシン酸の反応物とナイロン12モノマー単位を含む共重合ポリアミドを添加しない以外は実施例1と同様にして行なった。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【発明の効果】
本発明の自己融着性絶縁電線は、融着層に含まれる残留フェノール溶剤量が従来の自己融着性絶縁電線よりも少ないため、臭気や作業環境面での問題がない。したがって、本発明の自己融着性絶縁電線は工業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】自己融着性絶縁電線および自己融着性リッツ線を用いて作製した偏向ヨークコイルの説明図である。
【図2】作製した偏向ヨークコイルの寸法測定部位についての説明図である。
【図3】作製した偏向ヨークコイルの接着力の測定方法についての説明図である。
【符号の説明】
1 巻き始めの電線
2 上部フランジ部
3 巻線部
4 下部フランジ部
5 巻き終りの電線
6 テンションゲージ
A ネック径
B ネジレ量
H 水平面
【発明の属する技術分野】
本発明は、テレビ受像器やコンピューターディスプレイ用の偏向ヨークコイルの製造に用いる自己融着性絶縁電線に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自己融着絶縁電線は、最外層に融着層が設けられていることから、金型にコイル巻後、通電加熱または溶剤処理法等により最外層の融着層が溶解または膨潤し、線間相互を融着固化せしめうることから、簡単に自己支持型のコイルを作ることが可能である。このように自己融着性絶縁電線は電気機器コイルの生産性を高め、製造コストを低減させることから、家庭電気機器、OA機器、電装品、CRTディスプレイ用偏向ヨーク等のコイル用途に広く実用化されている。
【0003】
近年のCRTディスプレイ装置は、小型化、耐熱化、高電圧化、高周波化が進んでいる。そのため、CRTディスプレイの重要部分である偏向ヨークコイルは、コイル形成時、すなわち、巻線用金型にコイル巻線後、熱融着して成形されたときに初期歪み(コイルの寸法と巻線用金型寸法との差であり、コイルのネック径やネジレ量を測定することにより評価できる)が小さいことや、常温および高温時における寸法変化が少ないこと等が望まれている。その要求に対応できる自己融着性絶縁電線としては、常温および高温時においても優れた耐熱変形性と接着強度特性を有することが必要である。
【0004】
また、近年では、CRTディスプレイの高精細度化、高周波数化に伴う偏向ヨークコイルでの過電流損や表皮効果損失によるコイル自体の発熱を低減するため、導体径の細い自己融着性絶縁電線を撚り合わされた自己融着性リッツ線が用いられることが多い。
【0005】
従来、自己融着性絶縁電線の融着層を形成する融着樹脂としては、エポキシ樹脂(フェノキシ樹脂)が使用されていたが、近年では、耐熱性や接着性のバランスが良好な共重合ポリアミドが使用されている。
【0006】
このような自己融着性絶縁電線は、導体上に、絶縁塗料、例えば、ポリエステルイミド塗料、ポリエステルイミドウレタン塗料、ポリウレタン塗料を、複数回、塗布、焼き付けして成る絶縁電線の上層に、共重合ポリアミド樹脂を主成分とする樹脂成分をクレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール系有機溶剤等に溶解せしめた融着塗料をダイスにより塗布し、これを焼付炉内に導入して溶剤を蒸発させ融着層を形成することにより製造されている。この製造方法は、融着塗料用として、溶剤に溶解する樹脂であればいかなる樹脂でも使用できること、絶縁電線への塗布時に必要な粘度低下が可能であること、等の利点がある。しかし、このように融着塗料を絶縁電線上に塗布焼き付けする際には必然的にフェノール系有機溶剤が作業環境に揮散して環境を汚染し、しかも得られる自己融着性絶縁電線中にフェノール系有機溶剤が微量ながら残留する問題があった。
【0007】
また、自己融着性絶縁電線は上記したように金型にコイル巻後、通電加熱され電気機器コイルに形成されるが、このように自己融着性絶縁電線の融着層中にフェノール系有機溶剤が微量ながら残留しているとコイル巻作業時の通電加熱時等に揮散するという問題がある。
【0008】
フェノール系有機溶剤は臭気、環境面で有害であるため、これらの問題を解決するためには融着層中に残留するフェノール系有機溶剤量をできる限り低減する必要がある。
【0009】
これにたいして、融着塗料の有機溶剤として臭気、環境面で効果的なベンジルアルコールを使用することにより、このような問題点を解消することが提案されているが、(例えば特許文献1,2参照)ベンジルアルコールは樹脂の溶解性が不十分であり、アルコールに可溶な特殊な共重合ポリアミドしか溶解できないという問題に加え、ベンジルアルコールは融着皮膜中に残留しやすいという問題もある。
【0010】
また、有機溶剤としてアミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、またはオクチルアルコール等のアルコール系溶剤とクレゾール、キシレン主成分の芳香族有機溶剤の混合有機溶剤を使用し、さらにフェノール樹脂を添加することでDYコイル巻線後の変形を改善することが提案されているが(例えば特許文献3参照)、DYコイル巻線時にフェノール樹脂から臭気が発生するという問題がある。
【0011】
【特許文献1】特開平8−17251号(段落番号0007)
【0012】
【特許文献2】特開平8−287727(段落番号0022)
【0013】
【特許文献3】特開平11−53952(段落番号0005)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような自己融着性絶縁電線における従来技術の問題点を解消し、自己融着性絶縁電線の融着層中に残留するフェノール系有機溶剤量を少なくでき、また該自己融着性絶縁電線を用いて電気機器コイルを成形する際に、フェノール系有機溶剤が揮散することが無いため、臭気環境面での問題がない自己融着性絶縁電線を提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、絶縁電線上に、融着層を設けて成る自己融着性絶縁電線において、該融着層は結晶性共重合ポリアミド樹脂とアルコール可溶性共重合ポリアミド樹脂とを、アルコール系有機溶剤を含む混合有機溶剤に溶解して成る融着性塗料を塗布、焼付けして形成するものであることを特徴とする自己融着性絶縁電線に関する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明における結晶性共重合ポリアミド樹脂は、特に限定されないが、105〜150℃の温度範囲中に融点を有するもの、好ましくは120〜150℃の温度範囲中に融点を有するものが好ましい。結晶性共重合ポリアミド樹脂の融点が105℃以下であると自己融着性絶縁電線の耐熱性が不十分となる傾向にある。一方、融点が150℃を越えると、偏向ヨークコイルの成形時の接着性が悪くなり、線バラケ等の不具合が生じる場合がる。
【0017】
なお、このような結晶性共重合ポリアミドとしては、6-ナイロン、66ナイロン、610ナイロン、612ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、イソホロンジアミン−アジペート等の共重合体があげられ、市販品としては、ダイセル・デグサ社のX−7079、431、451、471、アトフィナ社のM1186、M2269、MX2441、MX2447、MX2454等が挙げられる。
【0018】
前記アルコール可溶性共重合ポリアミド樹脂は、イソホロンジアミンとセバシン酸の反応物、イソホロンジアミンとアゼライン酸の反応物、イソホロンジアミンとアジピン酸の反応物、ナイロン6モノマー単位、ナイロン66モノマー単位、ナイロン610モノマー単位、ナイロン11モノマー単位、ナイロン12モノマー単位の中から選ばれた少なくとも2種以上を含むものであり、アルコール系溶剤に溶解するものであればよい。
【0019】
このようなアルコール可溶性共重合ポリアミド樹脂の添加量は、主成分である結晶性共重合ポリアミド樹脂100重量部に対して、5〜20重量部であることが好ましい。5重量部以下では、巻線用金型にコイル巻線後、熱融着して成形されたときに偏向ヨークコイルの初期歪みが悪くなり、20重量部以上では線間接着力、熱変形性が低下する。
【0020】
本発明においては、融着塗料に各種添加剤を配合してもよい。添加剤としては、前記共重合ポリアミド樹脂の熱劣化を防止して、偏向ヨークコイルの線間接着力が実用使用時に低下しないようにするために、一般的に知られている酸化防止剤であれば特に限定することなく用いることができる。
また、自己融着性絶縁電線に良好な潤滑性を付与して自己潤滑性絶縁電線として使用するために、本発明の効果を損なわない範囲で適当な潤滑剤を融着性塗料中に添加しても良い。
【0021】
本発明の自己融着性絶縁電線は、前記共重合ポリアミド樹脂を主成分とする樹脂、必要に応じて酸化防止剤、潤滑剤等の添加剤を、アルコール系有機溶剤を含む混合有機溶剤に溶解した融着塗料を絶縁電線上に塗布、焼き付けして形成したものである。
【0022】
前記アルコール系有機溶剤としては、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、アミルアルコール等がある。これらの中では、2−エチルヘキサノールが樹脂溶解性に優れていることから好ましい。
【0023】
融着塗料に用いる有機溶剤中のアルコール系有機溶剤の含有量は5〜30重量%であることが、溶解性、塗料安定性等の点で適切である。さらに好ましくは10〜25重量%である。アルコール系有機溶剤の含有量が10重量%未満の場合は、臭気的に悪化し本発明の効果が得られない。さらに、30重量%を超えると溶解性および塗料安定性の面で問題となる。
【0024】
前記有機溶剤は、アルコール系有機溶剤以外の有機溶剤を含有して混合有機溶剤として用いる。たとえばクレゾール(クレゾール酸)、フェノール、キシレノール等のフェノール系有機溶剤やN−メチルピロリドンも使用できる。また、ソルベントナフサ、各種芳香族炭化水素、キシレン、トルエンなどの貧溶媒も前記良溶媒とともに用いることができる。これらは単独で用いても良く2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】
アルコール系有機溶剤を用いることにより、フェノール系有機溶剤などの含有量を低減させることができるので、本発明の融着塗料に用いる有機溶剤中のフェノール系有機溶剤の含有量は、40重量%以下であることが好ましい。40重量%を超えると、該融着塗料を用いて形成される自己融着性絶縁電線中のフェノール系有機溶剤の残留溶剤量が増加するため、臭気が悪化し、本発明の効果が得られない。さらに20重量%未満の場合は、塗料の溶解性に問題が生じる。
【0026】
また、本発明の融着塗料に用いる有機溶剤中の芳香族炭化水素の含有量は、30〜60重量%であることが、臭気および溶解性の点で適切である。さらに好ましくは、35〜55重量%である。有機溶剤中の芳香族炭化水素の含有量が35重量%未満の場合は、臭気的に悪化し本発明の効果が得られない。60重量%を超えると溶解性および塗料安定性の面で問題となる。
【0027】
前記融着塗料の樹脂分濃度としては、使用する絶縁電線のサイズにより異なるが、10〜25重量%であることが好ましい。前記樹脂分濃度が10重量%未満の場合には目標とする融着層を形成するために多数回の塗布、焼き付けが必要で生産性が低下するだけでなく、融着層中の残留溶剤量が多くなる。また、25重量%を超える場合には融着塗料としたときの粘度が上り、それにより塗布、焼き付け時の作業性が急激に悪化するだけでなく、融着塗料に用いる溶剤に均一に溶解できない場合も生じる。
【0028】
本発明の自己融着性絶縁電線に用いられる絶縁電線は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の導体上に、ポリエステルイミドやポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルイミドウレタン、ポリアミドイミド、ポリアミドイミドウレタン、ポリイミド、ポリエステルアミド、ポリエステルアミドイミド等で被覆し、絶縁層を設けたものである。
【0029】
前記融着塗料を絶縁電線上に塗布する方法としては、通常知られている塗布方法であれば特に限定はなく、たとえば、ダイス絞り法、フェルト絞り法などの方法が挙げられる。
【0030】
本発明の自己融着性絶縁電線における融着層の厚さは、自己融着性絶縁電線の品種、サイズにより異なるが、5〜20μm、概ね10μm程度である。前記融着層の厚さが5μm未満の場合には、偏向コイルとしたときに適切な接着力が得られなくなり、20μmを超える場合にはコストが高くなる。
【0031】
また、本発明の自己融着性絶縁電線に良好な潤滑性を付与して自己潤滑性絶縁電線として使用するために、本発明の効果を損なわない範囲内で適当な潤滑剤を本発明の自己融着性絶縁電線上に塗布してもよい。
【0032】
【実施例】
つぎに、本発明の自己融着性絶縁電線を実施例および比較例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、比較例および実施例における評価方法を下記にまとめて示す。
(樹脂分濃度)
融着塗料約1.5gを170℃で2時間加熱した後、不揮発分重量を測定し、不揮発分重量/融着塗料重量により樹脂分濃度を算出した。
(樹脂溶解性)
樹脂溶解性は、融着樹脂を溶剤に溶解させた後、室温まで冷却した時の塗料の状態で評価し、固化・ゲル化がしなければ○、固化・ゲル化した場合は×とした。
(保存安定性)
保存安定性は、融着樹脂を溶剤に溶解させて得られた塗料を室温中に168時間放置した後の塗料の状態により評価し、流動性がほとんど変化しないものを○、増粘、固化・ゲル化した場合は×とした。
(臭気)
コイル巻線機により、巻線、融着、プレス成形された直後の偏向ヨークコイルの臭気を嗅ぎ、フェノール系有機溶剤の臭気が感じられないものを○、少しでも感じ取れるものを×とした。
(残留溶剤量)
得られた偏向ヨークコイルをパージ&トラップガスクロマトグラフィーにより測定し、偏向ヨークコイルの融着層重量当たりの残留溶剤量の割合で示した。アルコール系有機溶剤は自己融着絶縁電線の融着皮膜中に一部残留するが、上記のパージ&トラップガスクロマトグラフ後の質量分析により確認することができる。
(コイル寸法)
図2に示した測定部位について、ネック径はノギスで、ネジレ量はスキマゲージで測定した。
(線間接着力)
得られた偏向ヨークコイルを室温で24時間放置した後、図3に示したように、偏向ヨークコイルの内側部分1ターンの接着力をテンションゲージで測定した。
(耐熱後のネック径変化量(耐熱変形性))
得られた偏向ヨークコイルを120℃あるいは130℃に設定したオーブン中で2時間加熱した後、室温で放冷し、コイルのネック径を測定した。加熱前のネック径と加熱後の変化量を表した。
【0033】
(実施例1)
ダイセル・デグサ社の結晶性共重合ポリアミド樹脂であるX―7079 100重量部に対して、アルコール可溶性結晶性ポリアミド樹脂としてイソホロンジアミンとセバシン酸の反応物とナイロン12モノマー単位を含む共重合ポリアミド樹脂を10重量部含有して成る樹脂成分を、クレゾール酸とC9芳香族ナフサである丸善石油化学社製スワゾール1000と2−エチルヘキサノールとの重量比が40:40:20である混合有機溶剤に、樹脂分濃度15重量%になるように溶解して、融着塗料を得た。得られた融着塗料の粘度は、30℃において20dPa・sであった。この融着塗料を導体径0.15mm、絶縁外径0.19mmのポリエステルイミド絶縁電線上に塗布(ダイス絞り法にて塗布)、焼付け(炉長3.0m、炉温300℃、線速60m/min)を3回繰り返し、融着皮膜厚さ10μmの自己融着性絶縁電線を得た。
得られた自己融着性絶縁電線の10本を撚り合わせて自己融着性リッツ線とし、次にこの自己融着性リッツ線を、成形条件が58ターン*2本巻、通電時間1.5秒、通電電流60A、冷却プレス25秒、金型温度40℃に設定した巻線機により、巻線、通電融着、加圧成形して図1に示す偏向ヨークコイルを作製した。なお、図1中、1は巻き始めの電線、2は上部フランジ部、3は巻線部、4は下部フランジ部、5は巻き終わりの電線を示す。
得られた偏向ヨークコイルを95℃で10分間加熱し、発生したガスを一次トラップ管に捕集し、パージ&トラップガスクロマトグラフィーを行なった。測定装置として、日本分析工業株式会社製のアウトガスサンプラ「HDD―500」、キューリーポイントパージ&トラップサンプラ「JHS―100A」、キューリーポイントパイロライザー「JHP―3」、ガスクロマトグラフィーは島津製作所社製「GC―14B」を用いた。
また、得られた偏向ヨークについて、図2に示した寸法を測定し、図3のように接着力を測定した。以上の結果を表1に示す。
【0034】
(実施例2)
クレゾール酸とC9芳香族ナフサである丸善石油化学社製スワゾール1000と2−エチルヘキサノールとの重量比が40:50:10である混合有機溶剤とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表1に示す。
【0035】
(実施例3)
クレゾール酸とC9芳香族ナフサである丸善石油化学社製スワゾール1000と2−エチルヘキサノールとの重量比が30:50:20である混合有機溶剤とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表1に示す。
【0036】
(実施例4)
クレゾール酸とC9芳香族ナフサである丸善石油化学社製スワゾール1000と2−エチルヘキサノールとの重量比が40:35:25である混合有機溶剤とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表1に示す。
【0037】
(実施例5)
クレゾール酸とC9芳香族ナフサである丸善石油化学社製スワゾール1000と2−エチルヘキサノールとの重量比が35:55:10である混合有機溶剤とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表1に示す。
【0038】
(実施例6)
アルコール可溶性共重合ポリアミド樹脂としてイソホロンジアミンとセバシン酸の反応物とナイロン12モノマー単位を含む共重合ポリアミドの添加量をダイセル・デグサ社の結晶性共重合ポリアミド樹脂X―7079 100重量部に対して15重量部とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表1に示す。
【0039】
(実施例7)
アルコール可溶性共重合ポリアミド樹脂としてイソホロンジアミンとセバシン酸の反応物とナイロン12モノマー単位を含む共重合ポリアミドの添加量をダイセル・デグサ社の結晶性共重合ポリアミド樹脂であるX―7079 100重量部に対して20重量部とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表1に示す。
【0040】
(比較例1)
有機溶剤をベンジルアルコール 100重量%とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表2に示す。
【0041】
(比較例2)
有機溶剤をクレゾール酸 100重量%とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表2に示す。
【0042】
(比較例3)
クレゾール酸とC9芳香族ナフサである丸善石油化学社製スワゾール1000の重量比が70:30である混合有機溶剤とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表2に示す。
【0043】
(比較例4)
クレゾール酸とC9芳香族ナフサである丸善石油化学社製スワゾール1000の重量比が60:40である混合有機溶剤とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表2に示す。
【0044】
(比較例5)
ベンジルアルコールとクレゾール酸とC9芳香族ナフサである丸善石油化学社製スワゾール1000の重量比が60:15:25である混合有機溶剤とした以外は実施例1と同様にして行なった。結果を表2に示す。
【0045】
(比較例6)
アルコール可溶性共重合ポリアミド樹脂として、イソホロンジアミンとセバシン酸の反応物とナイロン12モノマー単位を含む共重合ポリアミドを添加しない以外は実施例1と同様にして行なった。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【発明の効果】
本発明の自己融着性絶縁電線は、融着層に含まれる残留フェノール溶剤量が従来の自己融着性絶縁電線よりも少ないため、臭気や作業環境面での問題がない。したがって、本発明の自己融着性絶縁電線は工業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】自己融着性絶縁電線および自己融着性リッツ線を用いて作製した偏向ヨークコイルの説明図である。
【図2】作製した偏向ヨークコイルの寸法測定部位についての説明図である。
【図3】作製した偏向ヨークコイルの接着力の測定方法についての説明図である。
【符号の説明】
1 巻き始めの電線
2 上部フランジ部
3 巻線部
4 下部フランジ部
5 巻き終りの電線
6 テンションゲージ
A ネック径
B ネジレ量
H 水平面
Claims (9)
- 絶縁電線上に、105〜150℃の温度範囲中に融点がある結晶性共重合ポリアミド樹脂とアルコール可溶性共重合ポリアミド樹脂とをアルコール系有機溶剤を含む混合有機溶剤に溶解して成る融着塗料を塗布焼き付けして成る融着層が形成されたものであることを特徴とする自己融着性絶縁電線。
- 前記融着塗料のアルコール系有機溶剤の含有量が全溶剤量の5〜30重量%であることを特徴とする請求項1記載の自己融着性絶縁電線。
- 前記融着塗料のアルコール系有機溶剤が2−エチルヘキサノールであることを特徴とする請求項1または2記載の自己融着性絶縁電線。
- 前記融着塗料のアルコール系有機溶剤以外の有機溶剤としてフェノール系有機溶剤および/または芳香族系炭化水素を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自己融着性絶縁電線。
- 混合有機溶剤におけるフェノール系有機溶剤の含有量が40重量%以下であることを特徴とする請求項1〜4記載の自己融着性絶縁電線。
- 混合有機溶剤における芳香族炭化水素の含有量が30〜60重量%であることを特徴とする請求項1〜4記載の自己融着性絶縁電線。
- アルコール可溶性共重合ポリアミド樹脂がイソホロンジアミンとセバシン酸の反応物、イソホロンジアミンとアゼライン酸の反応物、イソホロンジアミンとアジピン酸の反応物、ナイロン6モノマー単位、ナイロン66モノマー単位、ナイロン610モノマー単位、ナイロン11モノマー単位、ナイロン12モノマー単位の中から選ばれた少なくとも2種以上を含むものであることを特徴とする請求項1記載の自己融着性絶縁電線。
- 前記アルコール可溶性共重合ポリアミド樹脂の添加量が結晶性共重合ポリアミド樹脂100重量部に対して5〜20重量部であることを特徴とする請求項1〜7記載の自己融着性絶縁電線。
- 請求項1〜8記載の自己融着性絶縁電線において融着層中のアルコール系有機溶剤の含有量が、0.1〜100ppmの範囲であることを特徴とする自己融着性絶縁電線。
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