JP2005252250A - 発光装置およびそれを用いた照明装置、画像表示装置 - Google Patents

発光装置およびそれを用いた照明装置、画像表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 発光強度が高く安定している発光装置を提供、即ち、発光装置の励起光源として、380nm〜410nmを発光ピークとするLEDやLDを用いた場合、その発光波長の多少のずれに対しても、赤色蛍光体の発光強度が大きく変化せず、明るさのみならず、青色、緑色蛍光体と混合した場合のバランスが保たれた発光装置を提供する。
【解決手段】 Eu3+を発光中心イオンとして有する蛍光体であって、励起スペクトルにおける励起波長380nm〜410nmの範囲の最低発光強度が最高発光強度の65%以上であり、400nmでの発光効率が20%以上である蛍光体と、近紫外光から可視光領域の光を発光する半導体発光素子を備えることを特徴とする発光装置。
【選択図】図3

Description

本発明は、発光装置、照明装置、画像表示装置に関し、より詳しくは、半導体発光素子と赤色蛍光体とを組み合わせた発光装置、それを使用した照明装置、画像表示装置に関する。
従来から、放電灯や半導体発光素子の光を蛍光体で色変換させた発光装置が照明装置や表示装置に使用されている。これらの発光装置は、青色、緑色、赤色の蛍光体を混合し、白色または任意の色の光を発光するものであり、近年、より高い演色性または色再現性を求めて様々な検討がなされている。中でも、発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)等の半導体発光素子を用いた発光装置は、発光効率が高く、水銀等の有害物質を含まないことから、LEDやLDと蛍光体を組み合わせた発光装置、特に効率の高い370nm以上の近紫外領域から可視領域のLEDやLDを使用した発光装置の開発が盛んである。
しかしながら、現在発光装置中に主に使用されているY22S:Eu等の赤色蛍光体は、360nm以上の近紫外領域の波長での吸収が少ないため、近紫外〜可視領域の光を励起源とした場合、著しく発光効率が低下するという問題があった。
これらの問題の改良として、例えば、La22S:Eu(化成オプトニクス株式会社製KX−680)や特開2003−4152号公報に記載のLiEuW28等、近紫外領域でより高い効率で励起され得る蛍光体が報告されている。一方、Eu3+を有する蛍光性錯体は、高効率でシャープな赤色発光をすることが知られており、配位子の適当な選択により、励起波長を調整できることから、これらの蛍光性錯体を赤色蛍光体としてLEDやLDと組み合わせた発光装置の報告もなされている。例えば、WO02/91487号公報によれば、Eu3+のf−f遷移に由来する、近紫外領域の特定波長で高い励起効率を示すEu錯体が報告されている。また、特開2003−81986号公報によれば、高効率なEu3+/β−ジケトン錯体を含有する、可視領域の400nm以上でも励起され得る発光材料が報告されている。
しかし、上記の赤色蛍光体の励起スペクトルは、近紫外〜可視領域である380nm〜410nmでは、急峻な変化を示している。一方、LEDやLDは発光波長を精度よく安定して生産することが難しく、加えて、温度や電流の変化によっても発光波長がシフトして、中心波長から±5nm以上ずれることもある。従って、上記赤色蛍光体の励起光源として、380nm〜410nmを発光ピークとするLEDやLDを用いた場合、その発光波長のずれにより、赤色蛍光体の発光強度が大きく変化し、明るさのみならず、青色、緑色蛍光体と混合した場合のバランスが変わり、色変換した発光色の色度や色温度も変化してしまう。
また、USP6,366,033B1公報によれば、近紫外〜可視領域において変化率の少ない励起スペクトルを示すEu3+/β−ジケトン錯体が報告されているが、一般的に、高効率であるEu3+/β−ジケトン錯体における配位子の吸収による発光強度は、Eu3+のf−f遷移に由来する465nm励起の発光強度と比較して、充分大きいものであるにも関わらず、上記公報中のEu3+/β−ジケトン錯体では、最高発光強度が465nm励起の発光強度の2倍程度しか得られておらず、青色、緑色の蛍光体とのバランスを考えた際に、発光強度が不十分である。
従って、LEDやLDの波長の変化に対して、発光特性が大きく変化せず、高い発光強度を有する赤色蛍光体の開発が望まれており、青色、緑色、赤色の蛍光体を混合して、白色光または任意の色の発光とする場合、それぞれの蛍光体に十分な発光強度と、混合したものが全体で高い色再現性を示すための色度とスペクトル特性を持つことが求められている。さらに、LED、LDの発光波長のばらつきによって、発光出力、色度が変化しないことが望まれている。
特開2003−4152号公報 WO02/91487号公報 特開2003−81986号公報 USP6,366,033B1公報
本発明は、前述の従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、近紫外〜可視領域である380nm〜410nmの励起光に対して高効率な赤色蛍光体を開発することにより、発光強度が高く、色再現性に優れた発光装置およびそれを用いた照明装置、画像表示装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討の結果、Eu3+は、エネルギー的な制約により、一般的に350nm以下の紫外領域での励起光に対して、比較的高い発光効率を有しているが、Eu3+の周囲の環境を適切に選択することにより、より長波長領域での励起が可能となることを見出した。そして、Eu3+を主な発光中心とする赤色蛍光体、特に、蛍光性錯体に関して、励起エネルギーに関する特性の改善、すなわち、励起エネルギーの分子間相互作用の環境を適切に選択することにより、近紫外〜可視領域の励起光により高効率で赤色発光し、且つ、励起波長のずれに対して安定な発光強度を有する赤色蛍光体を得られることを見出した。
従って本発明者らは、Eu3+を主な発光中心イオンとし、励起スペクトルにおける励起波長380nm〜410nmの範囲で最低発光強度と最高発光強度との差が少なく、近紫外〜可視領域、特に400nm前後の励起光に対し、高効率で発光する赤色蛍光体と、近紫外光から可視光領域の光を発光する半導体発光素子を備えることを特徴とする発光装置によって上記目的は達成されることを見出し本発明に到達した。
即ち、本発明の要旨は、Eu3+を発光中心イオンとして有する蛍光体であって、励起スペクトルにおける励起波長380nm〜410nmの範囲の最低発光強度が最高発光強度の65%以上であり、400nmでの発光効率が20%以上である蛍光体と、近紫外光から可視光領域の光を発光する半導体発光素子を備えることを特徴とする発光装置、これを備える照明装置及び画像表示装置、に存する。
なお、希土類イオン錯体の発光機構としては、光を配位子が吸収し、その励起エネルギーが希土類イオンに移動して該イオンが励起され発光する機構が知られている。配位子の励起エネルギーレベルが希土類イオンの励起エネルギーに比べ低すぎる場合には、エネルギー移動が起きず発光しない。例えば、赤色蛍光体に用いるEu3+錯体の場合、配位子は光を吸収して励起一重項(S1)状態になり、そこから励起三重項(T1)状態に系間交差し、T1状態からEu3+の励起状態(51)へエネルギー移動し、Eu3+50から7
2への遷移が主成分の赤色の発光が起きると考えられている(図1参照)。このような
エネルギー移動の機構における三重項状態のエネルギーの効果を調べるために、配位子分子の三重項エネルギー(T1)とEu錯体とテルビウムイオン(Tb3+)錯体の発光を測定しその関係を議論した研究が報告されている。(文献−1:Susumu Sato and Masanobu Wada, Bulletin of The Chemical Society of Japan,Vol.43,1955−1962(1970))。
この論文では、種々の芳香族基を有するβ−ジケトンの三重項エネルギーとユーロピウムイオンおよびテルビウムイオンの励起状態エネルギーの関係と錯体発光の有無を調べ、配位子の三重項エネルギーレベルが発光に関係していることを報告している。配位子の三重項エネルギーが希土類イオンの励起状態のエネルギーレベルより低い錯体では発光しないことが記載されている。
これらの化合物では、錯体分子の吸収スペクトルは配位子のものとほぼ一致するが、これらの化合物が、分子間相互作用が可能な状態にある場合、その吸収特性は必ずしも分子状態すなわち希薄溶液状態のものとは一致せず、吸収ピークの長波長へのシフトとスペクトル幅の拡がりが観測される。吸収スペクトルの吸収ピーク値と吸収形状は、分子間相互作用の状態や周囲の環境状態により左右され、充分幅広い吸収スペクトルを得ることにより、励起スペクトルはフラットで幅広いものとなる。加えて、分子間相互作用のある状態では、分子状態の場合とは異なり、配位子が吸収した励起エネルギーは分子間を移動することが知られている。この励起エネルギーの移動状態を粒子の移動のように見なして、この粒子を励起子(exciton)とも言う。励起子の移動は側鎖や主鎖に光を吸収する分子単位を有する高分子のフィルムやバインダー樹脂に分子を溶解した固溶体でも起きる。
本発明で使用される希土類イオン錯体分子の場合は、錯体分子間を移動する励起子はある錯体分子に到達したとき配位子から希土類イオンにエネルギー移動し発光する。この移動途中で不純物や結晶欠陥、エネルギートラップなどで励起子が失活すると、発光に寄与する励起子の数が減少し励起子寿命を縮めることになり、結果として発光効率が低下する。このため、発光効率を高めるためには、不純物の除去や、最適な配位子や、結晶状態等の環境の選択が必要であり、同一化合物であっても、周囲の環境状態によっては、発光強度が著しく異なる場合がある。
本発明によれば、発光強度が高く安定している発光装置を提供することができる。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、これらの内容に特定はされない。
本発明で使用される蛍光体は、Eu3+を発光中心イオンとして有し、その励起スペクトルにおける励起波長380nm〜410nmの範囲の最低発光強度が最高発光強度の65%以上であり、400nmの光で励起したときの発光効率が20%以上である蛍光体である。この蛍光体は、通常赤色に発光する。
また、蛍光体の発光強度が高くなる点で、励起スペクトルにおいて、最高発光強度が、Eu3+のf−f遷移の励起帯である465nm付近のピークの強度の3倍以上であることが好ましい。なお、Eu3+のf−f遷移の励起帯である465nm付近のピークの強度Y(ff)は、そのピークトップの波長をx、そのときの発光強度をY(x)としたき、(x−2
)nmと(x+2)nmでの発光強度Y(x-2)とY(x+2)の値から、下記式で求められる。
Figure 2005252250
前記蛍光体は、前述のような物性が得られる限り特に制限されず、有機化合物でも無機化合物でもよいが、代表的には有機化合物が好ましい。中でも、蛍光性錯体であることが好ましく、蛍光性錯体としては、より長波長での励起が可能になることから、芳香族環または複素芳香族環を配位子中に有する錯体であることが好ましく、より好ましくは、β−ジケトネート錯体や芳香族カルボン酸錯体であり、更により好ましくはβ−ジケトネート錯体である。以下、β−ジケトネート錯体について説明する。
β−ジケトネート錯体は、一般式Eu(β−ジケトネート)3nで表され、β−ジケトン化合物から誘導されるβ−ジケトネートアニオンを配位子とする錯体である。Lは単座または複座を有する中性配位子であり、nは1または2である。
β−ジケトネートアニオンが誘導されるβ−ジケトン化合物は、特に限定されないが、励起波長域の点から、その構造中に、β−ジケトン構造と、少なくとも1つの、置換基を有することがある芳香族環または芳香族複素環(以下、芳香族基、という)を置換基として有することが好ましい。β−ジケトン構造と芳香族基の連結方法は、直接でも2価の基で連結してもよいが、少なくとも一方のケトンに直接芳香族環が連結しているものが好ましい。
芳香族環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、インデン、ビフェニレン、アセナフテン、フルオレン、テトラリン、インダン等の芳香族単環式炭化水素または芳香族縮合多環式炭化水素が挙げらる。芳香族複素環としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピリジン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾピラン、カルバゾール、キサンテン、キノリン、トリアジン等の芳香族単環式複素環または芳香族縮合多環式複素環等が挙げられる。
芳香族環または芳香族複素環の置換基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基;トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル等のフルオロアルキル基;エチニル基;フェニルエチニル、ピリジルエチニル、チエニルエチニル等のアリールエチニル基;メトキシ、エトキシ等のアルコキシ基;フェニル、ナフチル基等のアリール基;ベンジル、フェネチル等のアラルキル基;フェノキシ、ナフトキシ、ビフェニルオキシ等のアリールオキシ基;ヒドロキシル基;アリル基;アセチル、プロピオニル、ベンゾイル、トルオイル等のアシル基;アセトキシ、プロピオニルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル等のアリールオキシカルボニル基;カルボキシル基;カルバモイル基;アミノ基;ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、アセチルメチルアミノ等の置換アミノ基;メチルチオ、エチルチオ、フェニルチオ、ベンジルチオ等の置換チオ基;メルカプト基;エチルスルフォニル、フェニルスルフォニル等の置換スルフォニル基;シアノ基;フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード等のハロゲン基等が挙げられる。これらの置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。
β−ジケトン化合物を構成する芳香族基以外の置換基としては、前述した芳香族環または芳香族複素環の置換基と同様な置換基(但し、ハロゲン基は除く)が挙げられる。
以下に、β−ジケトネートアニオンが誘導されるβ−ジケトン化合物の具体例をしめす
が、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
Figure 2005252250
Figure 2005252250
中性配位子Lは特に限定されないが、Eu3+に配位可能な、N,Oの原子を有する化合物であり、アミン、アミンオキシド、ホスフィンオキシド、ケトン、スルホキシド、エーテル等が挙げられ、これらを単一で、または組み合わせて、Eu3+への合計配位数が7または8となるように選択される。
中性配位子Lは、例えば、アミンとしては、置換基を有することもあるピリジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、2,2'−ビピリジン、1,10−フェナントロリン等
が挙げられる。アミンオキシドとしては置換基を有することもあるピリジン−N−オキシド、イソキノリン−N−オキシド、2,2'−ビピリジン−N,N'−ジオキシド、1,10−フェナントロリン−N,N'−ジオキシド等上記アミンのN−オキシド等が挙げられる。ホスフィンオキシドとしては、置換基を有することもあるトリフェニルホスフィンオキシド、トリエチルホスフィンオキシドやトリオクチルホスフィンオキシド等のアルキルホスフィンオキシド、1,2−エチレンビス(ジフェニレンホスフィンオキシド)、(ジフェニルホスフォンイミド)トリフェニルホスフォラン、リン酸トリフェニルエステル等が挙げられる。ケトンとしては、置換基を有することもあるジピリジルケトン、ベンゾフェノン等が挙げられ、スルホキシドとしては、置換基を有することもあるジフェニルスルホキシド、ジベンジルスルホキシド、ジオクチルスルホキシド等が挙げられる。エーテルとしては、置換基を有することもあるエチレングリコールジメチルエーテルやジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
また、これらに置換する置換基としては、前述した置換基が例示される。
以下に、中性配位子Lの具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
Figure 2005252250
Figure 2005252250
本発明に用いられる蛍光体は、Eu3+を発光中心イオンとするものであるが、その発光特性を損なわない範囲で、他の金属を含有してもよい。含有してもよい金属は、特に限定されないが、例えば、Y,Gd,La,Lu,Tb等が挙げられる。
また、本発明の蛍光体は、本発明で規定する物性が得られる限り特に制限されないが、化合物の種類だけで必ずしも特定されるわけではなく、結晶構造により、本発明の物性を達成することが出来る場合がある。結晶構造の違いは、例えば、融点、X線回折ピーク等
の相違により判別することが出来る。
例えば、β−ジケトネート錯体Eu(β−ジケトネート)3nは、一般的に、塩化ユーロピウム、β−ジケトン化合物、中性配位子Lおよび塩基を1:3:n:3のモル比で反応させることによって製造することができるが、得られるβ−ジケトネート錯体は、その製造方法により結晶構造が異なる場合があるため、同一化合物であっても、発光特性は異なることがある。そのため、塩基種、反応溶媒、反応温度、反応濃度、反応時間等の反応条件を化合物に応じて適切に選択する必要がある。錯体の種類にもよるため、一概には言えないが、例えば、錯体の生成速度を遅くすること、具体的には、原料の添加速度を遅くしたり、溶媒の種類や量を調整して、生成した錯体の溶解度を調整することにより、晶析の速度を遅くすること、等が挙げられる。
具体的には、ジベンゾイルメタンアニオン(D)を配位子とし、トリフェニルホスフィンオキシド(T)を補助配位子とする、下記式(a)で表される7配位型ユーロピウム(III)錯体の場合、以下に限定されるものではないが、例えば、結晶構造が下記に示す状態のときに、本発明の物性を達成する。

3EuT (a)

(結晶構造)
結晶系;三斜晶系、
空間群;P1
格子定数;a=12.3±1Å,b=18.7±1Å,c=11.5±1Å,
α=95.8±2゜,β=103.1±2゜,γ=87.8±2゜

この錯体の場合、錯体の晶析速度を制御することにより、上記の結晶構造となる錯体を得ることができるが、晶析速度が適切でないと、生成する錯体はアモルファス性の固体、または異なる結晶形を含有する状態となり、発光強度が低下する傾向にある。
反応溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、アセトニトリルおよびこれらの混合溶媒、またはこれらと水の混合溶媒が挙げられるが、アルコール系溶媒が好ましく、エタノール、イソプロパノールおよびこれらと水の混合溶媒系が特に好ましい。
反応濃度、反応温度は、上記反応溶媒に反応基質が溶解する範囲であれば特に制限されないが、錯体が結晶性の状態で析出できる程度に調整する。得られた結晶性の錯体は、精製操作を行っても良いが、特に精製操作を行わなくても、十分な蛍光発光強度を有している。
なお、アモルファス性、または異なる結晶形を含有する状態で得られたからも、再結晶により上記結晶構造を有する結晶性の錯体を製造することができる。

また、2−テノイルトリフルオロアセトンアニオン(A)を配位子とし、1,10−フェナントロリン(P)を補助配位子とする、下記式(b)で表される8配位型ユーロピウム(III)錯体の場合、以下に限定されるものではないが、例えば、結晶構造が下記に示す状態のときに、本発明の物性を達成する。

3EuP (b)

(結晶構造)
結晶系;三斜晶系、
空間群;P1
格子定数;a=13.2±1Å,b=15.2±1Å,c=9.7±1Å,
α=92.5±2゜,β=102.6±2゜,γ=91.6±2゜

この錯体の場合、錯体の晶析速度を制御することにより、上記の結晶構造となる錯体を得ることができるが、晶析速度が適切でないと、生成する錯体はアモルファス性の固体、または異なる結晶形を含有する状態となり、発光強度が低下する傾向にある。
反応溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、アセトニトリルおよびこれらの混合溶媒、またはこれらと水の混合溶媒が挙げられるが、アルコール系溶媒が好ましく、エタノール、イソプロパノールが特に好ましい。
反応濃度、反応温度は、上記反応溶媒に反応基質が溶解する範囲であれば特に制限されないが、錯体が上記の結晶形の状態で析出できる程度に調整する。得られた結晶性の錯体は、精製操作を行っても良いが、特に精製操作を行わなくても、十分な蛍光発光強度を有している。
なお、アモルファス性、または異なる結晶形を含有する状態で得られた錯体からも、再結晶により上記の結晶構造を有する結晶性の錯体を製造することができる。
本発明に使用される蛍光体の発光効率に関して、以下に、量子吸収効率αq、内部量子効率ηiを求める方法を説明する。まず、測定対象となる粉末状などにした蛍光体サンプルを、測定精度が保たれるように、十分に表面を平滑にしてセルに詰め、積分球などがついた分光光度計に取り付ける。この分光光度計としては、例えば大塚電子株式会社製MCPD7000などがある。積分球などを用いるのは、サンプルで反射したフォトンおよびサンプルからフォトルミネッセンスで放出されたフォトンを全て計上できるようにする、すなわち、計上されずに測定系外へ飛び去るフォトンをなくすためである。この分光光度計に蛍光体を励起する発光源を取り付ける。この発光源は、例えばXeランプ等であり、発光ピーク波長が400nmとなるようにフィルター等を用いて調整がなされる。この400nmの波長ピークを持つように調整された発光源からの光を測定しようとしているサンプルに照射し、その発光スペクトルを測定する。この測定スペクトルには、実際には、励起発光光源からの光(以下では単に励起光と記す。)でフォトルミネッセンスによりサンプルから放出されたフォトンの他に、サンプルで反射された励起光の分のフォトンの寄与が重なっている。吸収効率αqは、サンプルによって吸収された励起光のフォトン数Nabsを励起光の全フォトン数Nで割った値である。まず、後者の励起光の全フォトン数Nは、次のように求める。すなわち、励起光に対してほぼ100%の反射率Rを持つ物質、例えばLabsphere製Spectralon(400nmの励起光に対して98%の反射率を持つ)等の反射板を、測定対象として該分光光度計に取り付け、反射スペクトルIref(λ)を測定する。ここでこの反射スペクトルIref(λ)から(式1)で求められた数値は、Nに比例する。
〔(1/R)∫λ〕・Iref(λ)dλ (式1)
ここで、積分区間は実質的にIref(λ)が有意な値を持つ区間のみで行ったもので良い。例えば、370nmから420nmの範囲で取れば十分である。前者のNabsは(式2)で求められる量に比例する。
〔(1/R)∫λ〕・Iref(λ)dλ−∫λ・I(λ)dλ (式2)
ここで、I(λ)は,αqを求めようとしている対象サンプルを取り付けたときの、反射スペクトルである。(式2)の積分範囲は(式1)で定めた積分範囲と同じにする。このように積分範囲を限定することで、(式2)の第二項は,対象サンプルが励起光を反射することによって生じたフォトン数に対応したもの、すなわち、対象サンプルから生ずる全フォトンのうち励起光によるフォトルミネッセンスで生じたフォトンを除いたものに対応したものになる。実際のスペクトル測定値は、一般にはλに関するある有限のバンド幅で区切ったデジタルデータとして得られるため、(式1)および(式2)の積分は、そのバンド幅に基づいた和分によって求まる。以上より、αq=Nabs/N=(式2)/(式1)と求まる。
次に、内部量子効率ηiを求める方法を説明する。ηiは、フォトルミネッセンスによって生じたフォトンの数NPLをサンプルが吸収したフォトンの数Nabsで割った値である。
ここで、NPLは、(式3)で求められる量に比例する。
∫λ・I(λ)dλ (式3)
この時、積分区間は、サンプルからフォトルミネッセンスによって生じたフォトンが持つ波長域に限定する。サンプルから反射されたフォトンの寄与をI(λ)から除くためである。具体的に(式3)の積分の下限は、(式1)の積分の上端を取り、フォトルミネッセンス由来のスペクトルを含むのに好適な範囲を上端とする。例えば590nmから710nmを(式3)における積分範囲に取れば良い。以上により、ηi=(式3)/(式2)と求まる。なお、デジタルデータとなったスペクトルから積分を行うことに関しては、αqを求めた場合と同様である。以上より、発光効率は量子吸収効率αqと内部量子効率ηiとの積、αq・ηiにより求められる。
本発明に用いられる蛍光体は、上記の発光特性を得られる状態で使用されれば特に限定されないが、分子間相互作用の効果が大きく、フラットな励起スペクトルが得られることから、固体状態で使用されることが好ましい。固体状態とは、結晶状態、アモルファス状態、固溶体状態であり、特に励起子寿命の長い結晶状態の微粒子で使用されることが好ましい。使用状態としては、バインダー樹脂中に錯体を溶解した固溶体状態、錯体の微粒子をバインダー樹脂に分散した分散状態などがあり、照明装置内にバインダー樹脂により固定され、LEDなどの光を吸収して発光する。
これらに使用される樹脂としては、通常、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体的には、例えば、ポリメタアクリル酸メチル等のメタアクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。
本発明の発光装置は、上記赤色蛍光体と共に、さらに青色蛍光体、緑色蛍光体とを備え、これらを組み合わせることにより白色光を発することができる。例えば、青色蛍光体としては、ZuS:Ag、Sr5(PO43Cl:Eu、BaMgAl1017:Eu等の無
機蛍光体が挙げられる。緑色蛍光体としては、例えば、ZuS:Cu、ZnS:CuAl、BaMgAl1017:Eu,Mn等の無機蛍光体が挙げられる。また、この他に、青色蛍光体としてはツリウム錯体が、緑色蛍光体としてはテルビウム錯体等の有機蛍光性錯体が挙げられる。これらの配位子としては本発明にて使用されるEu3+錯体の配位子の他に、公知の配位子を使用することができる。
白色光を発光させるには、赤色蛍光体と青色蛍光体及び緑色蛍光体の混合物を含む蛍光体樹脂層を、半導体発光素子上に配置すればよい。この場合、赤色蛍光体は、青色蛍光体、緑色蛍光体とは必ずしも同一の樹脂中に混合されなくてもよく、例えば、青色蛍光体と緑色蛍光体を含有する樹脂層の上に赤色蛍光体を含有する樹脂層が積層されていてもよい。
本発明の発光装置において、赤色蛍光体を含む蛍光体樹脂層は半導体発光素子の上部に設けられ、蛍光体樹脂層は、半導体発光素子と封止樹脂部との間の接触層として、または、封止樹脂部の外側のコーティング層として、または、外部キャップの内側のコーティング層として提供できる。また、封止樹脂内に蛍光体を含有させた形態をとることもできる。
本発明の発光装置は、蛍光体の耐久性向上の観点から、蛍光体層の外側に、350nm以下の紫外線を遮蔽する処理を設けることが好ましい。
本発明の発光装置の一例を図3に示す。図3に示された発光装置10は、ブランケット18と、ブランケット18の上部を覆い、例えばガラス等の光透過性材料でドーム型に形成された外部キャップ13と、ブランケット18に取り付けられたマウントリード16b及びインナーリード16aと、ブランケット18の下部に取り付けられ、マウントリード16b及びインナーリード16aと導通する電気接点19と、マウントリード16b上部のカップ内に収納された半導体発光素子11と、マウントリード16b上部のカップ内に充填され、半導体発光素子11を固定するエポキシ樹脂等の封止樹脂部17と、蛍光体がバインダー樹脂中に混合分散され、外部キャップ13の内側に塗布された被膜の蛍光体層12と、蛍光体層12と外部キャップ13との間に挟まれて形成された紫外線吸収層14bと、インナーリード16aと半導体発光素子11とを導通する導電性ワイヤ15aと、半導体発光素子11とマウントリード16bとを導通する導電性ワイヤ15bと、を有し、外部キャップ13の内部は、真空又は窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス14aが充填されている。
半導体発光素子11は、近紫外光から可視光領域で発光する。この光を蛍光体層12に含まれる蛍光体が吸収し、より長波長の可視光を発光する。蛍光体に用いられる蛍光性錯体は、酸素存在下で光劣化しやすいことから、外部キャップ13の内部に不活性ガス14aを充填し、酸素を除去して耐光性の向上をはかることが好ましい。不活性ガス14aを充填する代わりに、真空状態に保つことにより、蛍光体層12の耐光性を向上させ、発光装置10の耐久性を高めることも可能である。外部キャップ13の内部における酸素濃度を100ppm以下、好ましくは20ppm以下となるように酸素を除去することが好ましく、このような雰囲気下において、蛍光性錯体の耐光性は著しく向上する。また、低湿度下においても耐光性は向上する。
近紫外光から可視光領域で発光する半導体発光素子11としては、半導体レーザ(LD)又は発光ダイオード(LED)等が用いられる。ピーク波長が過度に短波長側にある半導体発光素子11は、錯体及びバインダ樹脂等の有機化合物が光劣化しやすい傾向があるので好ましくない。又、ピーク波長が過度に長波長側にある場合は、蛍光性錯体の発光に必要な光励起エネルギーが得られず、蛍光体が発光できない。以上の理由から、半導体発光素子11の発光ピーク波長としては、370nmから470nmの範囲にあることが好ましく、特に、380nmから470nmにピーク波長を有する光を発光するレーザーダイオード(LD)または発光ダイオード(LED)であることが好ましく、特にGaN系LDやLEDが好ましい。
蛍光体層12は、蛍光性錯体とバインダ樹脂からなる樹脂組成物を、外部キャップ13の内側に塗布により形成された被膜の形態で設けられている。尚、蛍光体層12には、前述の蛍光性錯体や無機蛍光体を適宜併用することも可能である。
本発明の発光装置は、単独で、又は複数個を組み合わせることにより、種々の照明装置または画像表示装置として使用することができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
Eu(TTA)3(TPPO)2の合成
0.67g(3.0mmol)の4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオン(H−TTA)、0.56g(2.0mmol)のトリフェニルホスフィンオキシド(TPPO)および0.32g(3.0mmol)の2,2'−イミノ
ジエタノールをイソプロパノール40mlに溶解した。この溶液へ、0.37g(1mmol)の塩化ユーロピウム(III)6水和物を水/イソプロパノール=1/4の混合溶媒
20mlへ溶解させた溶液を室温にて2時間かけて滴下し、さらに1時間室温にて撹拌を続けた。生成した沈殿を吸引ろ過し、水およびイソプロパノールで洗浄した。得られた淡黄色粉体を、50℃にて真空乾燥し、下記構造式で表される目的物Eu(TTA)3(T
PPO)2を得た。この錯体の融点は248−251℃であった。
Figure 2005252250
Eu(TTA)3Phenの合成
6.67g(30mmol)のH−TTA、1.98g(10mmol)の1,10−フェナントロリン(Phen)1水和物および3.16g(30mmol)の2,2'−
イミノジエタノールをエタノール500mlに溶解した。この溶液へ、3.67g(10mmol)の塩化ユーロピウム(III)6水和物をエタノール200mlに溶解した溶液
を室温にて4時間かけて滴下し、さらに数時間室温にて静置した後、生成した沈殿を吸引濾過し、エタノールにて洗浄した。得られた淡黄色粉体を、50℃にて真空乾燥し、下記構造式で表される目的物Eu(TTA)3Phenを得た。
この錯体を元素分析したところ、 C43.33%;H2.36%;N2.78%であり、計算値C43.43%;H2.02%;N2.81%とほぼ同じであった。また、この錯体の融点は242−243℃であった。
得られたEu(TTA)3Phen錯体について、粉末X線回折測定を行った。その粉
末X線回折パターンを図4に示す。図4からわかる通り、結晶性の化合物であることを確認した。また、X線結晶構造解析を行ったところ、以下の結果となった。
結晶系;三斜晶系、
空間群;P1
格子定数;a=13.0Å,b=15.0Å,c=9.6Å,
α=92.9゜,β=102.8゜,γ=91.5゜
Figure 2005252250
Eu(TTA)3IQNOの合成
0.67g (3mmol)のH−TTA、0.15g(1mmol)のイソキノリン−N−オキシド(IQNO)および0.32g(3mmol)の2,2'−イミノジエタ
ノールをエタノール25mlに溶解した。この溶液へ、0.37g(10mmol)の塩化ユーロピウム(III)6水和物をエタノール20mlに溶解した溶液を室温にて滴下し
た後、水15mlを加えて、室温にて、数時間撹拌した。生成した沈殿を吸引濾過し、水にて洗浄した。得られた淡黄色粉体を、50℃にて真空乾燥し、下記構造式で表される目的物Eu(TTA)3IQNOを得た。この錯体の融点は249−251℃であった。
Figure 2005252250
Eu(2MTTA)3Phenの合成
0.71g(3.0mmol)の4,4,4−トリフルオロ−1−{5−(2−メチルチエニル)}−1,3−ブタンジオン(H−2MTTA)、0.20g(1.0mmol)のPhen1水和物および0.32g(3.0mmol)の2,2'−イミノジエタノールをエタノール30mlに溶解した。この溶液へ、0.37g(10mmol)の塩化ユーロピウム(III)6水和物をエタノール20mlに溶解した溶液を、室温にて2時間かけて滴下した。さらに1時間撹拌を続けた後、室温にて数時間静置した。生成した沈殿を吸引濾過し、冷エタノールにて洗浄した。得られた淡黄色粉体を、50℃にて真空乾燥し、下記構造式で表される目的物Eu(2MTTA)3Phenを得た。この錯体の融点は247−249℃であった。
Figure 2005252250
Eu(2NFA)3Phenの合成
0.80g(3.0mmol)の4,4,4−トリフルオロ−1−(2−ナフチル)−1,3−ブタンジオン(H−2NFA)、0.20g(1.0mmol)のPhen1水和物および0.32g(3.0mmol)の2,2'−イミノジエタノールをエタノール/イソプロパノール=1/2の混合溶媒40mlに溶解した。この溶液へ、0.37g(10mmol)の塩化ユーロピウム(III)6水和物をエタノール20mlに溶解した溶液を、室温にて2時間かけて滴下した。さらに1時間撹拌を続けた後、室温にて数時間静置した。生成した沈殿を吸引濾過し、冷エタノールにて洗浄した。得られた淡黄色粉体を、80℃にて真空乾燥し、下記構造式で表されるEu(2NFA)3Phen目的物を得た。この錯体の融点は216−218℃であった。
Figure 2005252250
Eu(DBM)3Phenの合成
0.67g(3mmol)のジベンゾイルメタン(H−DBM)、0.20g(1.0mmol)のPhen1水和物および0.32g(3.0mmol)の2,2'−イミノ
ジエタノールをエタノール50mlに溶解した。この溶液へ、0.37g(10mmol)の塩化ユーロピウム(III)6水和物をエタノール20mlに溶解した溶液を、室温にて2時間かけて滴下した。さらに1時間撹拌を続けた後、生成した沈殿を吸引濾過し、エタノールにて洗浄した。得られた黄色粉体を、50℃にて真空乾燥し、下記構造式で表される目的物Eu(DBM)3Phenを得た。この錯体の融点は171−174℃であった。
Figure 2005252250
Eu(DBM)3TPPOの合成
1.34g(6mmol)のH−DBM、0.84g(3mmol)のTPPOおよび0.63g(6mmol)の2,2'−イミノジエタノールをイソプロパノール/エタノ
ール=95/5の混合溶媒130mlに溶解した。この溶液へ、0.73g(2mmol)の塩化ユーロピウム(III)6水和物を水/イソプロパノール=1/1の混合溶媒30mlへ溶解させた溶液を室温にて3時間かけて滴下し、ゆっくりと沈殿を生成させた。生成した沈殿を吸引濾過し、イソプロパノールにて洗浄した。得られた黄色粉体を、50℃にて真空乾燥し、下記構造式で表される目的物Eu(DBM)3TPPOを得た。この錯体の融点は176−177℃であった。
得られたEu(DBM)3TPPO錯体について、粉末X線回折測定を行ったところ、
結晶性の化合物であることを確認した。また、X線結晶構造解析を行ったところ、以下の結果となった。
結晶系;三斜晶系、
空間群;P1
格子定数;a=12.38Å,b=18.80Å,c=11.55Å,
α=95.68゜,β=103.12゜,γ=87.86゜
Figure 2005252250
Eu(2NFA)3(TPPO)2の合成
0.80g(3mmol)のH−2NFA、0.56g(2mmol)のTPPOおよび0.32g(3mmol)の2,2'−イミノジエタノールをイソプロパノール/エタ
ノール=7/1の混合溶媒40mlに溶解した。この溶液へ、0.37g(1mmol)の塩化ユーロピウム(III)6水和物を水/イソプロパノール=1/1の混合溶媒20m
lへ溶解させた溶液を室温にて2時間かけて滴下し、さらに1時間撹拌した後、数時間室温にて静置した。生成した沈殿を吸引濾過し、イソプロパノール/水混合溶媒にて洗浄した。得られた微橙色粉体を、50℃にて真空乾燥し、下記構造式で表される目的物Eu(2NFA)3(TPPO)2を得た。この錯体の融点は、86−98℃であった。
Figure 2005252250
Eu(2NFA)3DPPhenの合成
0.80g(3mmol)のH−2NFA、0.33g(1mmol)の4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DPPhen)および0.32g(3mmol)の2,2'−イミノジエタノールをエタノール20mlに溶解した。この溶液へ、0.37g(1mmol)の塩化ユーロピウム(III)6水和物を水/エタノール=1/1の混合溶媒20mlへ溶解させた溶液を室温にて30分かけて滴下した。生成した沈殿を吸引濾過し、水で洗浄した後、得られた微橙色粉体を、50℃にて真空乾燥した。この粉末を、無溶媒の状態で一瞬130℃まで加熱した後、エタノール/イソプロパノール=1/1の混合溶媒を加えて、懸濁状態で30分間還流し、その後、室温までゆっくりと冷却した。得られた沈殿を吸引ろ過し、エタノールで洗浄後、50℃にて真空乾燥し、下記構造式で表される目的物Eu(2NFA)3DPPhenを得た。この錯体の融点は173−176℃であった。
Figure 2005252250
(比較例1)
Eu(DBM)3TPPOの合成
1.34g(6mmol)のH−DBM、0.84g(3mmol)のTPPOおよび0.63g(6mmol)の2,2'−イミノジエタノールをエタノール80mlに溶解
した。この溶液へ、0.73g(2mmol)の塩化ユーロピウム(III)6水和物を水
/エタノール=1/1の混合溶媒20mlへ溶解させた溶液を室温にて滴下した。得られた黄色透明溶液に、水50mlを少量ずつ加え、生成した沈殿を吸引ろ過し、水で洗浄した。得られた黄色粉体を50℃にて真空乾燥し、目的物Eu(DBM)3TPPOを得た
。この錯体の融点は78−85℃であった。
得られたEu(DBM)3TPPO錯体について、粉末X線回折測定を行ったところ、
結晶性のピークは観察されず、アモルファス性の化合物であることを確認した。
(比較例2)
Eu(TTA)3Phenの合成
13.34g(60mmol)のH−TTA、3.60g(20mmol)のPhenおよび6.32g(60mmol)の2,2'−イミノジエタノールをエタノール400
mlに溶解した。この溶液へ、7.33g(20mmol)の塩化ユーロピウム(III)
6水和物をエタノール100mlに溶解した溶液を室温にて1時間かけて滴下し、さらに1時間室温にて撹拌した。生成した沈殿を吸引濾過し、エタノールにて洗浄した。得られた白色粉体を、50℃にて真空乾燥し、下記構造式で表される目的物Eu(TTA)3
henを得た。
この錯体を元素分析したところ、C43.15%;H2.32%;N2.83%であり、計算値C43.43%;H2.02%;N2.81%とほぼ同じであった。また、この錯体の融点は240−242℃であった。
得られたEu(TTA)3Phen錯体について、粉末X線回折測定を行った。その粉
末X線回折パターンを図5に示す。図4と図5を比較すると、結晶構造が異なる化合物であることがわかる。
(比較例3)
Eu(2NFA)3Phenの合成
0.80g(3.0mmol)のH−2NFA、0.18g(1.0mmol)のPhenおよび0.32g(3.0mmol)の2,2'−イミノジエタノールをエタノール
20mlに溶解した。この溶液へ、0.37g(10mmol)の塩化ユーロピウム(III)6水和物をエタノール/水=1/1の混合溶媒20mlに溶解した溶液を、室温にて30分かけて滴下した。さらに1時間撹拌を続けた後、室温にて数時間静置した。生成した沈殿を吸引濾過し、水にて洗浄した。得られた淡黄色粉体を、50℃にて真空乾燥し、目的物Eu(2NFA)3Phenを得た。
この錯体を元素分析したところ、C57.25%;H2.71%;N2.51%であり、計算値C57.51%;H2.86%;N2.48%とほぼ同じであった。また、この錯体の融点は157−159℃であった。
(比較例4)
Eu(2NFA)DPPhenの合成
0.80g(3mmol)のH−2NFA、0.33g(1mmol)の4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DPPhen)および0.32g(3mmol)の2,2'−イミノジエタノールをエタノール20mlに溶解した。この溶液へ、0.37g(1mmol)の塩化ユーロピウム(III)6水和物を水/エタノール=1/1の混合溶媒20mlへ溶解させた溶液を室温にて30分かけて滴下した。生成した沈殿を吸引濾過し、水で洗浄した後、得られた微橙色粉体を、50℃にて真空乾燥した。この粉末500mgを、エタノール20mlに還流下で溶解し、その後、氷浴にて冷却した。得られた沈殿を吸引ろ過し、冷エタノールで洗浄後、50℃にて真空乾燥し、目的物Eu(2NFA)DPPhenを得た。この錯体の融点は138−150℃であった。
(比較例5)
Eu(HFA)3(TPPO)2の合成
1.87g(9mmol)のヘキサフルオロアセチルアセトン(HFA)、1.70g(6mmol)のTPPOおよび0.95g(9mol)の2,2'−イミノジエタノー
ルをイソプロパノール40mlに溶解した。個の溶液へ、1.10g(3mmol)の塩化ユーロピウム(III)6水和物を水/イソプロパノール=1/1の混合溶媒20mlへ
溶解させた溶液を室温にて30分かけて滴下した。得られた黄色透明溶液に水20mlを少量ずつ添加し、更に室温にて1時間撹拌した後、数時間静置した。生成した沈殿を吸引濾過し、水で洗浄した後、得られた微橙色粉体を、50℃にて真空乾燥し、下記構造式で表される目的物Eu(HFA)3(TPPO)2を得た。この錯体の融点は、290℃以上であった。
Figure 2005252250
(比較例6)
Eu(HFA)3DMGEの合成
0.62g(3mmol)のHFA、0.13g(1mmol)のジエチレングリコールジメチルエーテル(DMGE)および0.32g(3mmol)の2,2'−イミノジ
エタノールをエタノール/水=1/3の混合溶媒40mlに溶解した。この溶液へ、0.37g(1mmol)の塩化ユーロピウム(III)6水和物を水20mlへ溶解させた溶液を室温にて30分かけて滴下し、さらに1時間撹拌した。生成した沈殿を吸引ろ過し、水で洗浄した後、得られた白色粉体を50℃にて真空乾燥し、下記構造式で表される目的物Eu(HFA)3DMGEを得た。この錯体の融点は65−69℃であった。
Figure 2005252250
以上の実施例、比較例にて製造した赤色蛍光体およびLa22S:Eu(化成オプトニクス株式会社製「KX−681」)(比較例7)、Y22S:Eu(化成オプトニクス株式会社製「P22−RE3」)(比較例8)の発光特性を表1に示す。表1においてλmaxは励起スペクトルにおける最大発光強度を示す励起波長、λHおよびλLはそれぞれ、380nmから410nmの励起波長の範囲における最高発光強度および最低発光強度を示す励起波長を表している。L/Hは380nmから410nmの励起波長の範囲における最低発光強度と最高発光強度の比である。400nm励起の発光効率は先述の方法により測定した。
なお、本実施例での測定方法と同様の方法により、蛍光体の標準品として、Y23:Euを用いて、254nm励起での発光効率を測定し、文献値56.0%(J,Illum.Engng.Inst.Jpn,Vol.83 No.2 1999)に対して58.5%の値を得たことから、発光効率の値は信頼性があるといえる。
図3に、実施例6と比較例7の蛍光体の励起スペクトルを示す。励起波長380nm−410nmにおいて、比較例7の蛍光体の蛍光強度は、急激に変化しているが、実施例6の蛍光体の蛍光強度はほとんど変化していないことがわかる。
図6に、実施例2と比較例2の励起スペクトルを示す。同一化合物であっても、結晶構造の違いにより発光特性が異なることがわかる。
図7に、実施例7と比較例1の励起スペクトルを示す。同一化合物であっても、結晶構造の違いにより発光特性が異なることがわかる。
実施例の蛍光体は、発光効率が高く、かつL/Hの値が高いため、これらの蛍光体を、波長380nm〜410nmを発光ピークとするLEDやLDを励起光源とした発光装置に使用した場合、明るく、かつ、励起光源の波長のずれによる発光強度の変化が小さい発光装置となる。
Figure 2005252250
赤色蛍光体に用いるEu3+錯体の発光機構 本発明の発光装置の例 実施例6および比較例7の励起スペクトル 実施例2の化合物の粉末X線回折パターン 比較例2の化合物の粉末X線回折パターン 実施例2および比較例2の励起スペクトル 実施例7および比較例1の励起スペクトル
符号の説明
10…発光装置
11…半導体発光素子
12…蛍光体層
13…外部キャップ
14a…不活性ガス
14b…紫外線吸収層
15a,15b…導電性ワイヤ
16a…インナーリード
16b…マウントリード
17…封止樹脂部
18…ブランケット
19…電気接点


Claims (10)

  1. Eu3+を発光中心イオンとして有する蛍光体であって、励起スペクトルにおける励起波長380nm〜410nmの範囲の最低発光強度が最高発光強度の65%以上であり、400nmでの発光効率が20%以上である蛍光体と、近紫外光から可視光領域の光を発光する半導体発光素子を備えることを特徴とする発光装置。
  2. 前記蛍光体が、励起スペクトルにおいて、最高発光強度が、Eu3+のf−f遷移の励起帯である465nm付近のピークの強度の3倍以上である蛍光体であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
  3. 前記蛍光体がEu3+を有する蛍光性錯体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
  4. 前記蛍光体が、配位子中に芳香族基を含む蛍光性錯体であることを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
  5. 前記蛍光体が、固体状態にあることを特徴とする請求項1〜4に記載の発光装置。
  6. 白色光を発光する請求項1〜5に記載の発光装置。
  7. 前記半導体発光素子が、ピーク波長が370nm〜470nmの範囲にある光を発光するレーザーダイオードまたは発光ダイオードであることを特徴とする請求項1〜6に記載の発光装置。
  8. 前記蛍光体に350nm以下の紫外光が照射されないように紫外光遮蔽処理がされていることを特徴とする請求項1〜7に記載の発光装置。
  9. 請求項1〜8に記載の発光装置を備えることを特徴とする照明装置。
  10. 請求項1〜8に記載の発光装置を備えることを特徴とする画像表示装置。


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