JP2017079181A - 光変換材料、光変換フィルム、及び発光素子 - Google Patents

光変換材料、光変換フィルム、及び発光素子 Download PDF

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Abstract

【課題】450nm付近の波長の光を励起光として好適に利用することが可能な光変換材料、光変換フィルム、及び発光素子を提供する。【解決手段】[M−(Lig1)n1(Lig2)n2]n3で表される光変換材料。〔式中、Mは希土類金属を表し、Lig1とLig2とはMに配位する配位子を表し、Lig1とLig2とは互いに異なる構造である。n1は1〜12の整数を表し、n2は0〜8の整数を表し、n1が2以上の場合には、Lig1は同一の構造であっても異なる構造であってもよく、n2が2以上の場合には、Lig2は同一の構造であっても異なる構造であってもよい。n3は1以上の整数を表す。少なくとも1つのLig1の最低励起一重項状態S1のエネルギー準位と当該Lig1の最低励起三重項状態T1のエネルギー準位との差の絶対値ΔEstは0.5eV以下である。〕【選択図】図3

Description

本発明は、光変換材料、光変換フィルム、及び発光素子に関する。
近年、照明装置(家庭用照明、車用照明等)、表示装置(表示デバイス、ディスプレイ等)をはじめとする様々な分野において、光源に関する研究開発が進められている。
そして、光源としては、例えば、電子と正孔との再結合に基づく発光現象を利用した発光ダイオード(以下、適宜「LED」という)がある。
このLEDを使用して白色の発光を得る方式はいくつか存在するが、主流となっている一つの方式として、青色LEDとYAG(Yttrium Aluminum Garnet)系の黄色蛍光体を組み合わせる方式がある。
しかし、前記方式を照明装置に適用する場合、電球色のような光を得るためには色温度を低くする必要があるが、その際、大量のYAG系の黄色蛍光体が必要になる。加えて、蛍光体の量子収率は原理上100%とはならないため、色温度を低くするのに伴い、照明装置の発光効率は低下、すなわち、照明装置の消費電力は増大してしまう。
また、前記方式を表示装置のバックライトに適用する場合、緑色と赤色の色再現性に劣り、色再現域が狭く(NTSC比が小さく)なってしまう。
この色再現域が狭くなるという問題を解消するために、量子ドット蛍光体(以下、適宜「QD」という)を含有させたQDシートの研究が進められている。QDシートをバックライトの導光板などに搭載することにより、青色LEDをそのまま光源として使用することができるとともに、シャープなスペクトルの緑色光、赤色光を発することができる。
ところが、このQDシートには大きな問題が2つある。
1つは、発光効率を重視すると、QDを形成する無機半導体結晶として、CdS、InAs、CdTeといった環境負荷が極めて大きい材料を使用せざるを得ないという環境上の問題である。もう1つは、QDをシート状にするだけでは酸素や水の影響によって発光輝度が即座に低下してしまうという安定性上の問題である。
これら2つの問題については、未だに好適な解決策は見出されていない。
本発明者らは、このような状況を打破すべく、QDと同程度のシャープなスペクトルの発光が得られるとともに、QDと比較して環境性や安定性に優れる「希土類金属錯体」を用いた解決策を鋭意検討した。
なお、この希土類金属錯体について、例えば、特許文献1では、所定の希土類金属錯体をLEDや半導体レーザーと組み合わせた発光装置が開示されている。
特開2003−81986号公報
ここで、特許文献1の図4を確認すると明らかなように、特許文献1に開示された希土類金属錯体の吸収スペクトルの吸収帯は370〜430nm付近であり、最大吸収波長(λmax)は400nmであることがわかる。
したがって、特許文献1に開示された希土類金属錯体は、450nm付近に発光極大波長を持つ青色LEDを励起光源とする場合、好適に励起光を吸収することができない。つまり、特許文献1に開示された希土類金属錯体では、450nm付近に発光極大波長を持つ青色LEDを励起光源として好適に利用することができないという問題があった。
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その課題は、450nm付近の波長の光を励起光として好適に利用することが可能な光変換材料、光変換フィルム、及び発光素子を提供することである。
すなわち、本発明の上記課題は、下記の構成により解決される。
1.励起光によって励起され、前記励起光とは異なる波長で発光し、下記一般式(1)で表されることを特徴とする光変換材料。
Figure 2017079181
〔式中、Mは希土類金属を表し、Lig1とLig2とはMに配位する配位子を表し、Lig1とLig2とは互いに異なる構造である。n1は1〜12の整数を表し、n2は0〜8の整数を表し、n1が2以上の場合には、Lig1は同一の構造であっても異なる構造であってもよく、n2が2以上の場合には、Lig2は同一の構造であっても異なる構造であってもよい。n3は1以上の整数を表す。少なくとも1つのLig1の最低励起一重項状態(S1)のエネルギー準位と当該Lig1の最低励起三重項状態(T1)のエネルギー準位との差の絶対値(ΔEst)は0.5eV以下である。〕
2.前記少なくとも1つのLig1が420〜500nmの波長の励起光で励起されることを特徴とする前記1に記載の光変換材料。
3.前記MがPr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybからなる群から選ばれることを特徴とする前記1又は前記2に記載の光変換材料。
4.前記MがEu又はTbであることを特徴とする前記1から前記3のいずれか1つに記載の光変換材料。
5.前記少なくとも1つのLig1の最低励起三重項状態(T1)のエネルギー準位が、前記Mの発光準位より高いことを特徴とする前記1から前記4のいずれか1つに記載の光変換材料。
6.前記Lig1又は前記Lig2が多座配位子であることを特徴とする前記1から前記5のいずれか1つに記載の光変換材料。
7.希土類金属錯体ポリマーであることを特徴とする前記1から前記6のいずれか1つに記載の光変換材料。
8.前記ΔEstが0.01〜0.30eVであることを特徴とする前記1から前記7のいずれか1つに記載の光変換材料。
9.前記1から前記8のいずれか1つに記載の光変換材料を含有することを特徴とする光変換フィルム。
10.前記1から前記8のいずれか1つに記載の光変換材料を含有することを特徴とする発光素子。
本発明によれば、450nm付近の波長の光を励起光として好適に利用することが可能な光変換材料、光変換フィルム、及び発光素子を提供することができる。
希土類金属としてEu3+を用いた場合の希土類金属錯体のエネルギー準位を示す図である。 希土類金属としてEu3+を用いた場合であって、配位子を長波長化した希土類金属錯体のエネルギー準位を示す図である。 希土類金属としてEu3+を用いた場合であって、配位子を長波長化するとともに配位子のΔEstを小さな値とした希土類金属錯体のエネルギー準位を示す図である。 本発明の発光素子(有機EL素子)を用いた表示装置の一例を示した概略斜視図である。 図4に示す表示部Aの構成の一例を示した概略斜視図である。 本発明の発光素子(有機EL素子)を用いた照明装置の一例を示した概略斜視図である。 本発明の発光素子(有機EL素子)を用いた照明装置の一例を示した概略断面図である。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。本発明において、特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない限りにおいて、好ましい様態は任意に変更して実施しうる。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
まず、本発明に係る光変換材料による「光変換の原理」について説明する。
≪光変換の原理≫
本発明に係る光変換材料は、希土類金属と希土類金属に配位する配位子とを含んで構成される「希土類金属錯体」である。そして、この希土類金属錯体は、配位子が励起光を吸収し、その励起エネルギーが希土類金属に移動し、希土類金属の4f−4f遷移に起因して発光する。
詳細については、希土類金属としてEu3+を用いた場合の希土類金属錯体のエネルギー準位を示す図1〜3を用いて説明する。
図1に示すように、まず、配位子が励起光を吸収すると、配位子は基底状態(S0)から最低励起一重項状態(S1)となる。そして、項間交差が起きることにより、配位子はS1から最低励起三重項状態(T1)となる。次に、T1となった配位子から希土類金属にエネルギー移動が起こり、エネルギーを受け取り励起状態となった希土類金属が励起状態から基底状態に4f−4f遷移することによって、励起光とは異なる波長の光を発する現象(光変換現象)が起こる。このような現象を引き起こすためには、希土類金属の発光準位より高いエネルギー準位からのエネルギーの移動が必要、言い換えると、配位子のT1のエネルギー準位が希土類金属の発光準位より高くなっている必要がある。
なお、希土類金属の「発光準位」とは、発光に関与する励起状態のエネルギー準位(図1における)であり、準位が下がる際に発光現象が起こるような励起状態のエネルギー準位である。よって、希土類金属の「発光準位」には、発光に直接的に関与しない励起状態のエネルギー準位、例えば、熱エネルギーの放出により失活することで発光準位(図1における)まで下がるような励起状態のエネルギー準位は含まれない。
ここで、前記したとおり、特許文献1に記載されているような従来の希土類金属錯体は、吸収スペクトルの吸収帯が370〜430nm付近、最大吸収波長(λmax)が400nm付近となっている。よって、特許文献1に記載の希土類金属錯体は、450nm付近の波長の光を励起光として用いる材料として好適であるとは言えない。
したがって、この希土類金属錯体の配位子についてλmaxが450nm付近となるように設計を変更することにより、450nm付近の波長の光を励起光として利用することに適した材料とすることが考えられる。
しかしながら、配位子のλmaxを長波長化させるということは、配位子のS0とS1の間隔を狭めることであるが、その際、S1のエネルギー準位の低下に伴ってT1のエネルギー準位も低下してしまう。その結果、図2に示すように、配位子のT1のエネルギー準位が希土類金属の発光準位より低くなってしまうと、配位子から希土類金属にエネルギー移動が起こらず、発光現象(光変換現象)は起こらない。
本発明に係る光変換材料は、図3に示すように、配位子のS1とT1とのエネルギー準位差(ΔEst)の小さな配位子を用いることにより、配位子のT1のエネルギー準位を希土類金属の発光準位より上位としている。その結果、本発明に係る光変換材料は、配位子のλmaxを長波長化しS1のエネルギー準位が下がったとしても、図3に示すような配位子から希土類金属へのエネルギー移動を可能とし、発光現象(光変換現象)の好適な実現を可能としている。
≪光変換材料≫
本発明に係る光変換材料は、励起光によって励起され、励起光とは異なる波長で発光し、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。そして、本発明に係る光変換材料は、「希土類金属」(一般式(1)ではMと表示)と、この希土類金属に配位する「配位子」(一般式(1)ではLig1、Lig2と表示)と、を含んで構成される希土類金属錯体である。
Figure 2017079181
一般式(1)中、Mは希土類金属を表し、Lig1とLig2とはMに配位する配位子を表し、Lig1とLig2とは互いに異なる構造である。そして、n1は1〜12の整数を表し、n2は0〜8の整数を表し、n1が2以上の場合には、Lig1は同一の構造であっても異なる構造であってもよく、n2が2以上の場合には、Lig2は同一の構造であっても異なる構造であってもよい。そして、n3は1以上の整数を表す。そして、少なくとも1つのLig1の最低励起一重項状態(S1)のエネルギー準位と当該Lig1の最低励起三重項状態(T1)のエネルギー準位との差の絶対値(ΔEst)は0.5eV以下である。
<光変換材料の構造のタイプ>
本発明に係る光変換材料は、モノマー(一般式(1)のn3が1)であっても、ポリマー(一般式(1)のn3が2以上の整数)であってもよい。なお、n3の上限は特に限定されないものの、例えば、ポリスチレン換算の重量平均分子量が500,000以下となる整数であればよい。
光変換材料がポリマーである場合、構造のタイプは特に限定されず、例えば、ペンダント型ポリマー、グラフト型ポリマー、主鎖型ポリマー、超分子ポリマー、三次元ネットワークを形成するポリマー等が挙げられる。
光変換材料がペンダント型ポリマー又はグラフト型ポリマーである場合、少なくとも1つの配位子が直接結合又は連結基を介して任意のポリマー主鎖に結合していればよい。また、ポリマーの主鎖構造は特に限定されず、配位子も連結基も任意に設計できる。ただし、主鎖としては、希土類金属錯体の配位結合を切断しないという観点から、アクリレートポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリウレタン、ポリアルキレン、ポリアリーレン、シリコーン等の合成高分子、セルロース、アミロース、ポリ乳酸等の天然高分子が好ましい。
光変換材料が主鎖型ポリマー又は超分子ポリマーである場合、希土類金属錯体を繰り返し単位の主鎖構造に持つものが好ましい。また、光変換材料が超分子ポリマーの場合、配位子の少なくとも1つが、複数の希土類金属イオンとイオン結合又は配位結合を形成するものであることが好ましい。
光変換材料が3次元ネットワークを形成するポリマーである場合、ポリマー鎖間は共有結合、配位結合、イオン結合等の結合で形成されていてもよいし、π−π相互作用、CH−π相互作用、双極子−双極子相互作用等の分子間の相互作用で形成されていてもよい。
なお、本発明に係る光変換材料は、希土類金属錯体であり、希土類金属と配位子とは配位結合によって結合している。よって、配位結合の箇所が、その配位結合よりも強い結合を形成し得る物質(例えば、ルイス酸や鉱酸、メルカプト化合物や硫化水素)にさらされると、安定性が低下してしまう。また、希土類金属錯体は乖離と錯形成が平衡状態となっていることから、配位結合の箇所が大量の水分子や酸素分子に直接さらされることも不安定化の要因となる。
ここで、光変換材料の安定性については、光変換材料をどのようなマトリックス中に存在させるかにもよるが、安定性の低いものから高いものを並べると、以下のような序列となる。
低分子錯体(モノマーを含む)<低分子複核錯体<ペンダント型ポリマー、グラフト型ポリマー<主鎖型ポリマー(超分子ポリマーを含む)<三次元ネットワークを形成するポリマー(超分子ポリマーであって三次元ネットワークを形成するポリマーを含む)
本発明に係る光変換材料は、安定性を考慮すると、モノマーよりもポリマーのほうが好ましく、前記序列の後方のものがより好ましい。
以下、本発明に係る光変換材料の具体例(Eu−01〜Eu−23、Eu−101〜Eu−123、Tb−01〜Tb−03、Tb−101〜Tb−103)を示すが、これらに限定されるものではない。なお、具体例中、nは2以上の整数であり、ポリマーであることを示す。
Figure 2017079181
Figure 2017079181
Figure 2017079181
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Figure 2017079181
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Figure 2017079181
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<希土類金属>
本発明に係る光変換材料は、希土類金属を含んで構成される。
希土類金属とは、周期律表で希土類(ランタノイド)と定義された全ての元素と、スカンジウム及びイットリウムである。具体的には、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)、Nd(ネオジム)、Pm(プロメチウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユウロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)、Lu(ルテチウム)である。
ランタノイドの+3価イオンは、4f軌道の外側の5s、5p、6sの軌道には電子が埋まっており、4f軌道には原子番号が大きくなるにしたがい一つずつ電子が埋まっていく。ここで、4f軌道の電子が、希土類特有の色や蛍光といった光学的な性質等を左右しているが、この4f軌道は、5s、5p、6s軌道に守られていることによって、4f軌道の電子は外部からの影響を受けにくい。
したがって、本発明に係る光変換材料の希土類金属は、外部からの影響を受けにくい4f−4f遷移に起因したスペクトルのシャープな蛍光を発するPr3+、Nd3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+、Yb3+を用いるのが好ましい。この中でも、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+がより好ましく、Nd3+、Eu3+、Tb3+がさらに好ましく、Eu3+、Tb3+が特に好ましい。
<配位子>
本発明に係る光変換材料は、希土類金属に配位する配位子(Lig1、Lig2)を含んで構成される。
本発明に係る光変換材料の配位子(Lig1)は、最低励起一重項状態(S1)のエネルギー準位との最低励起三重項状態(T1)のエネルギー準位との差の絶対値(ΔEst)が0.5eV以下である。そして、ΔEstは0.01〜0.30eVであることが好ましい。
本発明に係る光変換材料がこのような配位子を含むことにより、配位子のλmaxを長波長化しS1のエネルギー準位が下がったとしても、配位子から希土類金属へのエネルギー移動を可能とし、発光現象(光変換現象)を好適に実現することができる。
なお、本発明に係る光変換材料が異なる構造の配位子(Lig1)を2つ以上含む場合、少なくとも1つのLig1がエネルギー準位に関する条件を満たせばよいが、全てのLig1がエネルギー準位に関する条件を満たすのが好ましい。
本発明に係る光変換材料の配位子(Lig1)のT1のエネルギー準位は、希土類金属の発光準位より高い方が好ましい。
本発明に係る光変換材料がこのような配位子を含むことにより、配位子から希土類金属へのエネルギー移動をより確実なものとし、発光現象(光変換現象)をより好適に実現することができる。
なお、本発明に係る光変換材料の配位子(Lig1)のT1のエネルギー準位は、希土類金属の最低の発光準位(最低発光準位:lowest luminescent Level)と比較して高ければ発光現象(光変換現象)を実現することができる。図3を用いて説明すると、配位子(Lig1)のT1のエネルギー準位が、Eu3+の最低発光準位であるよりも高ければ問題はない。
ただし、発光現象(光変換現象)をさらに好適に実現するという観点から、配位子(Lig1)のT1のエネルギー準位は、希土類金属の最低発光準位よりも高い発光準位(例えば、図3に示すよりも高い)と比較して高くなっているのが好ましく、希土類金属の発光準位の中でも最も高い発光準位に対して高くなっているのがより好ましい。
本発明に係る光変換材料の配位子(Lig1)は、420〜500nmの波長の励起光で励起されるものが好ましく、430〜480nmの波長の励起光で励起されるものがより好ましい。さらに、配位子(Lig1)のλmaxは、427〜520nmであることが好ましく、430〜500nmであることがより好ましい。
本発明に係る光変換材料がこのような配位子を含むことにより、450nm付近の波長の光を励起光として好適に利用することができる。
なお、励起光の波長を中心として配位子のλmaxを説明すると、本発明に係る光変換材料の配位子(Lig1)のλmaxは、励起光の最大励起波長の±30nmの範囲にあるのが好ましく、±20nmの範囲にあるのがより好ましい。
本発明に係る光変換材料がこのような配位子を含むことにより、450nm付近の波長の光を励起光として好適に利用できるのは勿論のこと、様々な波長の光を励起光として使用することも可能である。
具体的には、希土類金属がEuの場合、配位子(Lig1)のT1のエネルギー準位は、2.36〜2.90eVであることが好ましい。そして、配位子(Lig1)のλmaxは、427〜523nmであることが好ましい。
希土類金属がTbの場合、配位子(Lig1)のT1のエネルギー準位は、2.50〜2.90eVであることが好ましい。そして、配位子(Lig1)のλmaxは、427〜490nmであることが好ましい。
なお、配位子のエネルギー準位については、構造の最適化の計算を行った後、最適化された構造に対して時間依存密度汎関数法による励起状態計算を実施することによって算出することができる。また、配位子のλmaxは配位子のS1のエネルギー準位を用いて算出することができる。
<チャージバランス・発光量子収率の側面からの配位子の設計について>
本発明に係る光変換材料は、チャージバランスが全体でゼロとなるように配位子(Lig1、Lig2)を設計するのが好ましい。
また、本発明に係る光変換材料は、発光量子収率を高めるために、輻射失活速度定数(Kr)に対して無輻射失活速度定数(knr)が小さくなるように配位子を設計するのが好ましい。knrが大きくなってしまうことを防止するため、言い換えると、励起された希土類金属錯体が光ではなく熱の放出により基底状態に戻ってしまうことを防止するため、マクロな観点から、配位子は配位状態での揺らぎが少ないものが好ましい。すなわち、配位子は、キレートタイプの配位形態をとるか、希土類金属イオンとの間に強い配位結合を形成するように、電子密度が高いユニットで配位させることが好ましい。
具体的には、+3価イオンの希土類金属を用いるとともに8配位が安定となる希土類金属錯体の場合、8つの配座のうち3つが−1価の価数をとることができる置換基、例えば、O−、S−、N−、又はC−を含む配位子であることが好ましく、残りの5つの配座は、電子密度が高く希土類金属に強く配位できる置換基、例えば、C=O、C=S、C=N−、P=O、又はS=Oを含む配位子であることが好ましい。
さらに、ミクロな観点から考えると、光変換材料の元素の振動による熱失活も発光量子収率の低下につながる。この点を考慮し、振動が小さな重い元素で配位子を形成することにより、具体的には、配位子の水素原子を水素とできるだけ同じ大きさでかつ重い元素であるフッ素や重水素で置換することにより、元素の振動に基づく熱失活を抑制することができる。したがって、本発明に係る光変換材料は、水素原子を前記のような元素で置換された配位子を用いるのが好ましい。
また、希土類金属錯体は完全な対称体であると発光の強度が低くなる傾向があるため、本発明に係る光変換材料の配位子としては、対称性を崩すような配座構造となるように配位子を設計するのが好ましい。
<安定性の側面からの配位子の設計について>
本発明に係る光変換材料の配位子は、構造の安定性を高めるため、単座配位子よりも、二座配位子が好ましく、多座配位子がより好ましい。
つまり、本発明に係る光変換材料の配位子(Lig1)は、エネルギー準位に関する条件に基づいて設計すればよいが、更に、チャージバランス、発光量子収率、安定性を考慮して設計するのが好ましい。一方、本発明に係る光変換材料の配位子(Lig2)は、エネルギー準位に関する条件を考慮する必要はなく、チャージバランス、発光量子収率、安定性を考慮して設計すればよい。
以下に、本発明に係る光変換材料の配位子(Lig1)の具体例(L−01〜L−23)と、配位子(Lig2)の具体例(L−101〜L−115)を示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 2017079181
Figure 2017079181
<励起光源>
本発明に係る光交換材料の励起光源としては、420〜500nmの波長の光を発する光源を用いるのが好ましく、430〜480nmの波長の光を発する光源を用いるのがより好ましい。また、本発明に係る光交換材料の励起光源としては、前記の範囲に発光極大波長を有する光を発する光源を用いるのが好ましい。
具体的な励起光源としては、前記の波長の光を発するものであれば特に限定されないものの、青色LEDをはじめ、例えば、近紫外LED、半導体レーザーダイオード、有機EL等が挙げられる。
≪光変換フィルム≫
本発明に係る光変換フィルムは、前記の光変換材料を含有して構成され、通常、フィルムの形状を構成するためにバインダー樹脂が用いられる。
なお、本発明に係る光変換フィルムは、光変換材料、バインダー樹脂のほか、光散乱物質等を含有していてもよい。
本発明に係る光変換フィルムの厚さは特に限定されないものの、照明装置や表示装置に適用する場合、励起光を十分に吸収させるべく、100nm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。一方、光変換フィルムの厚さが厚過ぎると光の透過率が低下してしまうため、100μm以下が好ましい。
そして、本発明に係る光変換フィルムにおける光変換材料の含有量は、励起光の波長を好適に変換させるべく、光変換フィルムの質量を100質量%とした場合、5〜100質量%が好ましく、10〜90質量%がより好ましい。
<バインダー樹脂>
本発明に係る光変換フィルムは、通常、バインダー樹脂を含有して構成される。
バインダー樹脂は、光変換フィルムの光変換効果を損なわないものであれば特に限定されないが、透明樹脂が好ましい。
なお、透明樹脂の透明性については、厚さ0.1mmでの全光線透過率(JISK7375:2008)が、好ましくは60%以上であり、より好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。このような透明樹脂を用いることにより、光変換フィルムは良好な透明性を発揮する。
バインダー樹脂としては、例えば、環状ポリオレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド(アラミド)系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、及びシルセスキオキサン系紫外線硬化樹脂等を挙げることができる。
<光変換フィルムの光散乱性について>
本発明に係る光変換フィルムは、表示装置のバックライト等のような光散乱現象を起こす必要のある装置に適用する場合、光散乱物質を含んでいてもよい。
光散乱物質は、光を散乱させる物質であればよく、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウムといった無機粒子、フィラーに代表される無機系散乱剤、セルロースナノファイバー、ケブラー繊維、シリコーンオイル(樹脂)といった有機系散乱剤等から選択される1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、本発明に係る光変換材料の屈折率は、1.8程度、あるいはそれ以上の高い値を示すものが多いため、光散乱物質としては、光変換材料の前記の屈折率とは異なる屈折率を示すものを用いるのが好ましい。このような光散乱物質を使用することにより、ミー散乱性の光散乱現象を発現させることができる。
なお、前記のバインダー樹脂として、互いに相溶しない2種以上の樹脂を使用することでも、ミー散乱性の光散乱現象を発現させることができる。
また、光変換フィルムを延伸して形成する際、各物質間にボイド(屈折率:1.0程度)が形成される場合があり、このボイドを形成させることによって、ミー散乱性の光散乱現象を発現させることもできる。
本発明に係る光変換フィルムの光散乱性を向上させる手段としては、前記の各手段を単独で適用してもよいが、当然、組み合わせて適用してもよい。
<光変換フィルムの製造方法>
本発明に係る光変換フィルムの製造方法は、フィルム作製工程を含むとともに、延伸工程を含めてもよい。
フィルム作製工程における作製方法は、既存のいずれの方法を用いてもよい。例えば、前記の各材料(光変換材料、バインダー樹脂、必要に応じて光散乱物質等)を溶剤に溶かしキャストする溶剤キャスト法、溶融状態で混練してダイなどから押し出しフィルムにする溶融押し出し成型法、プレスなどでフィルムにするプレス成型法などが挙げられる。これらの中でも、溶剤キャスト法又は押出成型法が好ましく、厚みの精度調整に優れている溶剤キャスト法がさらに好ましい。
なお、溶剤キャスト法における溶剤としては、前記の各材料を十分に溶解でき、フィルム化できるものであれば制限なく用いることができる。
延伸工程における延伸方法も、既存のいずれの方法を用いてもよい。例えば、テンター延伸法、ロール間圧縮延伸法などの方法が例示される。厚み方向の屈折率の制御性及びフィルム面内レターデーションの均一性等の点で、ロール間延伸法又は、テンター延伸法により1軸延伸する方法が望ましい。
≪発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)の構成層≫
本発明に係る発光素子として、有機EL素子を例に挙げて説明するが、有機EL素子は、前記の光変換材料を含有して構成され、通常、前記の光変換フィルムを光変換層として用いて構成される。
本発明の有機EL素子における代表的な素子構成としては、以下の構成を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(1)光変換層/陽極/発光層/陰極
(2)光変換層/陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(3)光変換層/陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(4)光変換層/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)光変換層/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(6)光変換層/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(7)光変換層/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/(電子阻止層/)発光層/(正孔阻止層/)電子輸送層/電子注入層/陰極
(8)陽極/発光層/陰極/光変換層
(9)陽極/発光層/電子輸送層/陰極/光変換層
(10)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極/光変換層
(11)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極/光変換層
(12)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極/光変換層
(13)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極/光変換層
(14)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/(電子阻止層/)発光層/(正孔阻止層/)電子輸送層/電子注入層/陰極/光変換層
上記の中で(7)の構成が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
なお、陽極、陰極の両側から光を取り出す場合は、両極の外方側に光変換層を設けてもよい。
本発明に係る発光層は、単層又は複数層で構成されており、発光層が複数の場合は各発光層の間に非発光性の中間層を設けてもよい。
必要に応じて、発光層と陰極との間に正孔阻止層(正孔障壁層ともいう)や電子注入層(陰極バッファー層ともいう)を設けてもよく、また、発光層と陽極との間に電子阻止層(電子障壁層ともいう)や正孔注入層(陽極バッファー層ともいう)を設けてもよい。
本発明に係る電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層であり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。また、複数層で構成されていてもよい。
本発明に係る正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層であり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。また、複数層で構成されていてもよい。
上記の代表的な素子構成において、陽極と陰極を除いた層を「有機層」ともいう。
(タンデム構造)
また、本発明に係る有機EL素子は、少なくとも1層の発光層を含む発光ユニットを複数積層した、いわゆるタンデム構造の素子であってもよい。
タンデム構造の代表的な素子構成(電極間の構成)としては、例えば以下の構成を挙げることができる。
陽極/第1発光ユニット/第2発光ユニット/第3発光ユニット/陰極
陽極/第1発光ユニット/中間層/第2発光ユニット/中間層/第3発光ユニット/陰極
ここで、上記第1発光ユニット、第2発光ユニット及び第3発光ユニットは全て同じであっても、異なっていてもよい。また二つの発光ユニットが同じであり、残る一つが異なっていてもよい。
また、第3発光ユニットはなくてもよく、一方で第3発光ユニットと電極の間に更に発光ユニットや中間層を設けてもよい。
複数の発光ユニットは直接積層されていても、中間層を介して積層されていてもよく、中間層は、一般的に中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、中間絶縁層とも呼ばれ、陽極側の隣接層に電子を、陰極側の隣接層に正孔を供給する機能を持った層であれば、公知の材料構成を用いることができる。
中間層に用いられる材料としては、例えば、ITO(インジウム・スズ酸化物)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)、ZnO、TiN、ZrN、HfN、TiOx、VOx、CuI、InN、GaN、CuAlO、CuGaO、SrCu、LaB、RuO、Al等の導電性無機化合物層や、Au/Bi等の2層膜や、SnO/Ag/SnO、ZnO/Ag/ZnO、Bi/Au/Bi、TiO/TiN/TiO、TiO/ZrN/TiO等の多層膜、またC60等のフラーレン類、オリゴチオフェン等の導電性有機物層、金属フタロシアニン類、無金属フタロシアニン類、金属ポルフィリン類、無金属ポルフィリン類等の導電性有機化合物層等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
タンデム型有機EL素子の具体例としては、例えば、米国特許第6337492号明細書、米国特許第7420203号明細書、米国特許第7473923号明細書、米国特許第6872472号明細書、米国特許第6107734号明細書、米国特許第6337492号明細書、国際公開第2005/009087号、特開2006−228712号公報、特開2006−24791号公報、特開2006−49393号公報、特開2006−49394号公報、特開2006−49396号公報、特開2011−96679号公報、特開2005−340187号公報、特許第4711424号、特許第3496681号、特許第3884564号、特許第4213169号、特開2010−192719号公報、特開2009−076929号公報、特開2008−078414号公報、特開2007−059848号公報、特開2003−272860号公報、特開2003−045676号公報、国際公開第2005/094130号等に記載の素子構成や構成材料等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
以下、本発明の有機EL素子を構成する各層について説明する。
≪発光層≫
本発明に用いられる発光層は、電極又は隣接層から注入されてくる電子及び正孔が再結合し、励起子を経由して発光する場を提供する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても、発光層と隣接層との界面であってもよい。本発明に用いられる発光層は、本発明で規定する要件を満たしていれば、その構成に特に制限はない。
発光層の膜厚の総和は、特に制限はないが、形成する膜の均質性や、発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、且つ、駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、2nm〜5μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2nm〜500nmの範囲に調整され、更に好ましくは5nm〜200nmの範囲に調整される。
また、本発明において個々の発光層の層厚としては、2nm〜1μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2〜200nmの範囲に調整され、更に好ましくは3〜150nmの範囲に調整される。
本発明用いられる発光層には、発光ドーパント(単にドーパントともいう)と、ホスト化合物(発光ホスト、単にホストともいう)とを含有することが好ましい。
(1)発光ドーパント
本発明に用いられる発光ドーパントについて説明する。
発光ドーパントとしては、リン光発光性ドーパント(リン光ドーパント、リン光性化合物ともいう)と、蛍光発光性ドーパント(蛍光ドーパント、蛍光性化合物ともいう)が好ましく用いられる。本発明においては、少なくとも1層の発光層がリン光発光性ドーパントを含有することが好ましい。
発光層中の発光ドーパントの濃度については、使用される特定のドーパント及びデバイスの必要条件に基づいて、任意に決定することができ、発光層の層厚方向に対し、均一な濃度で含有されていてもよく、また任意の濃度分布を有していてもよい。
また、本発明に用いられる発光ドーパントは、複数種を併用して用いてもよく、構造の異なるドーパント同士の組み合わせや、蛍光発光性ドーパントとリン光発光性ドーパントとを組み合わせて用いてもよい。これにより、任意の発光色を得ることができる。
本発明の有機EL素子、光変換材料、光変換フィルムで変換された光の色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ(株)製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
本発明においては、420〜500nmの波長の光を発するように発光ドーパントを選択するのが好ましく、430〜480nmの波長の光を発するように発光ドーパントを選択するのがより好ましい。また、前記の範囲に発光極大波長を有するように発光ドーパントを選択するのが好ましい。
本発明においては、1層又は複数層の発光層が、発光色の異なる複数の発光ドーパントを含有し、白色発光を示すことも可能である。なお、白色を示す発光ドーパントの組み合わせについては特に限定はないが、例えば青と橙や、青と緑と赤との組み合わせ等が挙げられる。
ここでの白色とは、特に限定はなく、橙色寄りの白色であっても青色寄りの白色であってもよいが、2度視野角正面輝度を前述の方法により測定した際に、1000cd/mでのCIE1931表色系における色度がx=0.39±0.09、y=0.38±0.08の領域内にあればよい。
(1.1)リン光発光性ドーパント
本発明に用いられるリン光発光性ドーパント(以下、「リン光ドーパント」ともいう)について説明する。
本発明に用いられるリン光ドーパントは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に係るリン光ドーパントは、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
リン光ドーパントの発光は原理としては二種挙げられ、一つはキャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光ドーパントに移動させることでリン光ドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型である。もう一つはリン光ドーパントがキャリアトラップとなり、リン光ドーパント上でキャリアの再結合が起こりリン光ドーパントからの発光が得られるというキャリアトラップ型である。いずれの場合においても、リン光ドーパントの励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
本発明において使用できるリン光ドーパントとしては、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
本発明に使用できる公知のリン光ドーパントの具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられる。
Nature 395,151(1998)、Appl.Phys.Lett.78,1622(2001)、Adv.Mater.19,739(2007)、Chem.Mater. 17,3532(2005)、Adv.Mater.17,1059(2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許公開第2006/835469号明細書、米国特許公開第2006/0202194号明細書、米国特許公開第2007/0087321号明細書、米国特許公開第2005/0244673号明細書、Inorg.Chem.40,1704(2001)、Chem.Mater.16,2480(2004)、Adv.Mater.16,2003(2004)、Angew.Chem.lnt.Ed.2006,45,7800、Appl.Phys.Lett.86,153505(2005)、Chem.Lett.34,592(2005)、Chem.Commun.2906(2005)、Inorg.Chem.42,1248(2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2002/015645号、国際公開第2009/000673号、米国特許公開第2002/0034656号明細書、米国特許第7332232号明細書、米国特許公開第2009/0108737号明細書、米国特許公開第2009/0039776号、米国特許第6921915号明細書、米国特許第6687266号明細書、米国特許公開第2007/0190359号明細書、米国特許公開第2006/0008670号明細書、米国特許公開第2009/0165846号明細書、米国特許公開第2008/0015355号明細書、米国特許第7250226号明細書、米国特許第7396598号明細書、米国特許公開第2006/0263635号明細書、米国特許公開第2003/0138657号明細書、米国特許公開第2003/0152802号明細書、米国特許第7090928号明細書、Angew.Chem.lnt.Ed.47,1(2008)、Chem.Mater.18,5119(2006)、Inorg.Chem.46,4308(2007)、Organometallics 23,3745(2004)、Appl.Phys.Lett.74,1361(1999)、国際公開第2002/002714号、国際公開第2006/009024号、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/019373号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2007/004380号、国際公開第2006/082742号、米国特許公開第2006/0251923号明細書、米国特許公開第2005/0260441号明細書、米国特許第7393599号明細書、米国特許第7534505号明細書、米国特許第7445855号明細書、米国特許公開第2007/0190359号明細書、米国特許公開第2008/0297033号明細書、米国特許第7338722号明細書、米国特許公開第2002/0134984号明細書、米国特許第7279704号明細書、米国特許公開第2006/098120号明細書、米国特許公開第2006/103874号明細書、国際公開第2005/076380号、国際公開第2010/032663号、国際公開第2008/140115号、国際公開第2007/052431号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2011/157339号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2009/113646号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/004639号、国際公開第2011/073149号、米国特許公開第2012/228583号明細書、米国特許公開第2012/212126号明細書、特開2012−069737号公報、特開2012−195554号公報、特開2009−114086号公報、特開2003−81988号公報、特開2002−302671号公報、特開2002−363552号公報等である。
中でも、好ましいリン光ドーパントとしてはIrを中心金属に有する有機金属錯体が挙げられる。更に好ましくは、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含む錯体が好ましい。
(1.2)蛍光発光性ドーパント
本発明に用いられる蛍光発光性ドーパント(以下、「蛍光ドーパント」ともいう)について説明する。
本発明に用いられる蛍光ドーパントは、励起一重項からの発光が可能な化合物であり、励起一重項からの発光が観測される限り特に限定されない。
本発明に用いられる蛍光ドーパントとしては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、ペリレン誘導体、フルオレン誘導体、アリールアセチレン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、アリールアミン誘導体、ホウ素錯体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、シアニン誘導体、クロコニウム誘導体、スクアリウム誘導体、オキソベンツアントラセン誘導体、フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体、ピリリウム誘導体、ペリレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、又は希土類錯体系化合物等が挙げられる。
また、近年では遅延蛍光を利用した発光ドーパントも開発されており、これらを用いてもよい。
遅延蛍光を利用した発光ドーパントの具体例としては、例えば、国際公開第2011/156793号、特開2011−213643号公報、特開2010−93181号公報等に記載の化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
(2)ホスト化合物
本発明に用いられるホスト化合物は、発光層において主に電荷の注入及び輸送を担う化合物であり、有機EL素子においてそれ自体の発光は実質的に観測されない。
好ましくは室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が、0.1未満の化合物であり、更に好ましくはリン光量子収率が0.01未満の化合物である。また、発光層に含有される化合物の内で、その層中での質量比が20%以上であることが好ましい。
また、ホスト化合物の励起状態エネルギーは、同一層内に含有される発光ドーパントの励起状態エネルギーよりも高いことが好ましい。
ホスト化合物は、単独で用いてもよく、又は複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。
本発明で用いることができるホスト化合物としては、特に制限はなく、従来有機EL素子で用いられる化合物を用いることができる。低分子化合物でも繰り返し単位を有する高分子化合物でもよく、また、ビニル基やエポキシ基のような反応性基を有する化合物でもよい。
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能又は電子輸送能を有しつつ、且つ、発光の長波長化を防ぎ、更に、有機EL素子を高温駆動時や素子駆動中の発熱に対して安定して動作させる観点から、高いガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。好ましくはTgが90℃以上であり、より好ましくは120℃以上である。
ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
本発明の有機EL素子に用いられる、公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報、米国特許公開第2003/0175553号明細書、米国特許公開第2006/0280965号明細書、米国特許公開第2005/0112407号明細書、米国特許公開第2009/0017330号明細書、米国特許公開第2009/0030202号明細書、米国特許公開第2005/0238919号明細書、国際公開第2001/039234号、国際公開第2009/021126号、国際公開第2008/056746号、国際公開第2004/093207号、国際公開第2005/089025号、国際公開第2007/063796号、国際公開第2007/063754号、国際公開第2004/107822号、国際公開第2005/030900号、国際公開第2006/114966号、国際公開第2009/086028号、国際公開第2009/003898号、国際公開第2012/023947号、特開2008−074939号公報、特開2007−254297号公報、欧州特許第2034538号明細書等である。
≪電子輸送層≫
本発明において電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。
本発明に用いられる電子輸送層の総層厚については特に制限はないが、通常は2nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2〜500nmであり、更に好ましくは5〜200nmである。
また、有機EL素子においては発光層で生じた光を電極から取り出す際、発光層から直接取り出される光と、光を取り出す電極と対極に位置する電極によって反射されてから取り出される光とが干渉を起こすことが知られている。光が陰極で反射される場合は、電子輸送層の総層厚を5nm〜1μmの間で適宜調整することにより、この干渉効果を効率的に利用することが可能である。
一方で、電子輸送層の層厚を厚くすると電圧が上昇しやすくなるため、特に層厚が厚い場合においては、電子輸送層の電子移動度は10−5cm/Vs以上であることが好ましい。
電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)としては、電子の注入性又は輸送性、正孔の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
例えば、含窒素芳香族複素環誘導体(カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体(カルバゾール環を構成する炭素原子の一つ以上が窒素原子に置換されたもの)、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリダジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、アザトリフェニレン誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体等)、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、シロール誘導体、芳香族炭化水素環誘導体(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン等)等が挙げられる。
また、配位子にキノリノール骨格やジベンゾキノリノール骨格を有する金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
また、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
本発明に用いられる電子輸送層においては、電子輸送層にドープ材をゲスト材料としてドープして、n性の高い(電子リッチ)電子輸送層を形成してもよい。ドープ材としては、金属錯体やハロゲン化金属など金属化合物等のn型ドーパントが挙げられる。このような構成の電子輸送層の具体例としては、例えば、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等の文献に記載されたものが挙げられる。
本発明の有機EL素子に用いられる、公知の好ましい電子輸送材料の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
米国特許第6528187号明細書、米国特許第7230107号明細書、米国特許公開第2005/0025993号明細書、米国特許公開第2004/0036077号明細書、米国特許公開第2009/0115316号明細書、米国特許公開第2009/0101870号明細書、米国特許公開第2009/0179554号明細書、国際公開第2003/060956号、国際公開第2008/132085号、Appl.Phys.Lett.75,4(1999)、Appl.Phys.Lett.79,449(2001)、Appl.Phys.Lett.81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.79,156(2001)、米国特許第7964293号明細書、米国特許公開第2009/030202号明細書、国際公開第2004/080975号、国際公開第2004/063159号、国際公開第2005/085387号、国際公開第2006/067931号、国際公開第2007/086552号、国際公開第2008/114690号、国際公開第2009/069442号、国際公開第2009/066779号、国際公開第2009/054253号、国際公開第2011/086935号、国際公開第2010/150593号、国際公開第2010/047707号、欧州特許第2311826号明細書、特開2010−251675号公報、特開2009−209133号公報、特開2009−124114号公報、特開2008−277810号公報、特開2006−156445号公報、特開2005−340122号公報、特開2003−45662号公報、特開2003−31367号公報、特開2003−282270号公報、国際公開第2012/115034号等である。
本発明におけるよりより好ましい電子輸送材料としては、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体が挙げられる。
電子輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
≪正孔阻止層≫
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する層であり、好ましくは電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が小さい材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
また、前述する電子輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係る正孔阻止層として用いることができる。
本発明の有機EL素子に設ける正孔阻止層は、発光層の陰極側に隣接して設けられることが好ましい。
本発明に用いられる正孔阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲である。
正孔阻止層に用いられる材料としては、前述の電子輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、前述のホスト化合物として用いられる材料も正孔阻止層に好ましく用いられる。
≪電子注入層≫
本発明に用いられる電子注入層(「陰極バッファー層」ともいう)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陰極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
本発明において電子注入層は必要に応じて設け、上記の如く陰極と発光層との間、又は陰極と電子輸送層との間に存在させてもよい。
電子注入層はごく薄い膜であることが好ましく、素材にもよるがその層厚は0.1〜5nmの範囲が好ましい。また構成材料が断続的に存在する不均一な膜であってもよい。
電子注入層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、電子注入層に好ましく用いられる材料の具体例としては、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等に代表されるアルカリ金属化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等に代表されるアルカリ土類金属化合物、酸化アルミニウムに代表される金属酸化物、リチウム8−ヒドロキシキノレート(Liq)等に代表される金属錯体等が挙げられる。また、前述の電子輸送材料を用いることも可能である。
また、上記の電子注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、複数種を併用して用いてもよい。
≪正孔輸送層≫
本発明において正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する材料からなり、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有していればよい。
本発明に用いられる正孔輸送層の総層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2〜500nmであり、更に好ましくは5nm〜200nmである。
正孔輸送層に用いられる材料(以下、正孔輸送材料という)としては、正孔の注入性又は輸送性、電子の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
例えば、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、イソインドール誘導体、アントラセンやナフタレン等のアセン系誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体、及びポリビニルカルバゾール、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー、ポリシラン、導電性ポリマー又はオリゴマー(例えばPEDOT:PSS、アニリン系共重合体、ポリアニリン、ポリチオフェン等)等が挙げられる。
トリアリールアミン誘導体としては、αNPDに代表されるベンジジン型や、MTDATAに代表されるスターバースト型、トリアリールアミン連結コア部にフルオレンやアントラセンを有する化合物等が挙げられる。
また、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体も同様に正孔輸送材料として用いることができる。
更に不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報の各公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されているような、いわゆるp型正孔輸送材料やp型−Si、p型−SiC等の無機化合物を用いることもできる。更にIr(ppy)に代表されるような中心金属にIrやPtを有するオルトメタル化有機金属錯体も好ましく用いられる。
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、アザトリフェニレン誘導体、有機金属錯体、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー等が好ましく用いられる。
本発明の有機EL素子に用いられる、公知の好ましい正孔輸送材料の具体例としては、上記で挙げた文献の他、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
例えば、Appl.Phys.Lett.69,2160(1996)、J.Lumin.72−74,985(1997)、Appl.Phys.Lett.78,673(2001)、Appl.Phys.Lett.90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.51,913(1987)、Synth.Met.87,171(1997)、Synth.Met.91,209(1997)、Synth.Met.111,421(2000)、SID Symposium Digest,37,923(2006)、J.Mater.Chem.3,319(1993)、Adv.Mater.6,677(1994)、Chem.Mater.15,3148(2003)、米国特許公開第2003/0162053号明細書、米国特許公開第2002/0158242号明細書、米国特許公開第2006/0240279号明細書、米国特許公開第2008/0220265号明細書、米国特許第5061569号明細書、国際公開第2007/002683号、国際公開第2009/018009号、欧州特許第650955号明細書、米国特許公開第2008/0124572号、米国特許公開第2007/0278938号明細書、米国特許公開第2008/0106190号明細書、米国特許公開第2008/0018221号明細書、国際公開第2012/115034号、特表2003−519432号公報、特開2006−135145号公報、米国特許出願番号13/585981号等である。
正孔輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
≪電子阻止層≫
電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層の機能を有する層であり、好ましくは正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
また、前述する正孔輸送層の構成を必要に応じて、本発明に用いられる電子阻止層として用いることができる。
本発明の有機EL素子に設ける電子阻止層は、発光層の陽極側に隣接して設けられることが好ましい。
本発明に用いられる電子阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲である。
電子阻止層に用いられる材料としては、前述の正孔輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、前述のホスト化合物として用いられる材料も電子阻止層に好ましく用いられる。
≪正孔注入層≫
本発明に用いられる正孔注入層(「陽極バッファー層」ともいう)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陽極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
本発明において正孔注入層は必要に応じて設け、上記の如く陽極と発光層又は陽極と正孔輸送層との間に存在させてもよい。
正孔注入層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、正孔注入層に用いられる材料としては、例えば前述の正孔輸送層に用いられる材料等が挙げられる。
中でも銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン誘導体、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体、酸化バナジウムに代表される金属酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体等に代表されるオルトメタル化錯体、トリアリールアミン誘導体等が好ましい。
前述の正孔注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
≪含有物≫
前述した本発明における有機層は、更に他の含有物が含まれていてもよい。
含有物としては、例えば臭素、ヨウ素及び塩素等のハロゲン元素やハロゲン化化合物、Pd、Ca、Na等のアルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属の化合物や錯体、塩等が挙げられる。
含有物の含有量は、任意に決定することができるが、含有される層の全質量%に対して1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500ppm以下であり、更に好ましくは50ppm以下である。
ただし、電子や正孔の輸送性を向上させる目的や、励起子のエネルギー移動を有利にするための目的等によってはこの範囲内ではない。
≪有機層の形成方法≫
本発明に用いられる有機層(正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等)の形成方法について説明する。
本発明に用いられる有機層の形成方法は、特に制限はなく、従来公知の例えば真空蒸着法、湿式法(ウェットプロセスともいう)等による形成方法を用いることができる。ここで、有機層が、ウェットプロセスで形成された層であることが好ましい。すなわち、ウェットプロセスで有機EL素子を作製することが好ましい。有機EL素子をウェットプロセスで作製することで、均質な膜(塗膜)が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の効果を奏することができる。なお、ここでの膜(塗膜)とは、ウェットプロセスによる塗布後に乾燥させた状態のものである。
湿式法としては、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)等があるが、均質な薄膜が得られやすく、且つ高生産性の点から、ダイコート法、ロールコート法、インクジェット法、スプレーコート法等のロール・to・ロール方式適性の高い方法が好ましい。
本発明に係る有機EL材料を溶解又は分散する液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、DMF、DMSO等の有機溶媒を用いることができる。
また、分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
更に層毎に異なる製膜法を適用してもよい。製膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10−6〜10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、厚さ0.1nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
本発明に用いられる有機層の形成は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる製膜法を施しても構わない。その際は作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
≪陽極≫
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上、好ましくは4.5V以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、又はパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
又は、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式製膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。
陽極の厚さは材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
≪陰極≫
陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、厚さは通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が透明又は半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陰極に上記金属を1〜20nmの厚さで作製した後に、陽極の説明で挙げる導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
≪支持基板≫
本発明の有機EL素子に用いることのできる支持基板(以下、基体、基板、基材、支持体等とも言う)としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また透明であっても不透明であってもよい。支持基板側から光を取り出す場合には、支持基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な支持基板としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい支持基板は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル、又はポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)若しくはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
樹脂フィルムの表面には、無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が0.01g/(m・24h)以下のバリア性フィルムであることが好ましく、更には、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、10−3ml/(m・24h・atm)以下、水蒸気透過度が、10−5g/(m・24h)以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
バリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。更に該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
バリア膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
不透明な支持基板としては、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
本発明の有機EL素子の発光の室温における外部取り出し量子効率は、1%以上であることが好ましく、5%以上であるとより好ましい。
ここで、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
≪封止≫
本発明の有機EL素子の封止に用いられる封止手段としては、例えば、封止部材と、電極、支持基板とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されていればよく、凹板状でも、平板状でもよい。また、透明性、電気絶縁性は特に限定されない。
具体的には、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属又は合金からなるものが挙げられる。
本発明においては、有機EL素子を薄膜化できるということからポリマーフィルム、金属フィルムを好ましく使用することができる。更には、ポリマーフィルムはJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/(m・24h・atm)以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%)が、1×10−3g/(m・24h)以下のものであることが好ましい。
封止部材を凹状に加工するのは、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等が使われる。
接着剤として具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
なお、有機EL素子が熱処理により劣化する場合があるので、室温から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、前記接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。封止部分への接着剤の塗布は市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
また、有機層を挟み支持基板と対向する側の電極の外側に該電極と有機層を被覆し、支持基板と接する形で無機物、有機物の層を形成し封止膜とすることも好適にできる。この場合、該膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。
更に該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることが好ましい。これらの膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙には、気相及び液相では、窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また、真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
≪保護膜、保護板≫
有機層を挟み支持基板と対向する側の前記封止膜又は前記封止用フィルムの外側に、素子の機械的強度を高めるために、保護膜若しくは保護板を設けてもよい。特に、封止が前記封止膜により行われている場合には、その機械的強度は必ずしも高くないため、このような保護膜、保護板を設けることが好ましい。これに使用することができる材料としては、前記封止に用いたのと同様なガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等を用いることができるが、軽量かつ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
≪光取り出し向上技術≫
有機エレクトロルミネッセンス素子は、空気よりも屈折率の高い(屈折率1.6〜2.1程度の範囲内)層の内部で発光し、発光層で発生した光のうち15%から20%程度の光しか取り出せないと一般的に言われている。これは、臨界角以上の角度θで界面(透明基板と空気との界面)に入射する光は、全反射を起こし素子外部に取り出すことができないことや、透明電極ないし発光層と透明基板との間で光が全反射を起こし、光が透明電極ないし発光層を導波し、結果として、光が素子側面方向に逃げるためである。
この光の取り出しの効率を向上させる手法としては、例えば、透明基板表面に凹凸を形成し、透明基板と空気界面での全反射を防ぐ方法(例えば、米国特許第4774435号明細書)、基板に集光性を持たせることにより効率を向上させる方法(例えば、特開昭63−314795号公報)、素子の側面等に反射面を形成する方法(例えば、特開平1−220394号公報)、基板と発光体の間に中間の屈折率を持つ平坦層を導入し、反射防止膜を形成する方法(例えば、特開昭62−172691号公報)、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法(例えば、特開2001−202827号公報)、基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法(特開平11−283751号公報)等が挙げられる。
本発明においては、これらの方法を本発明の有機EL素子と組み合わせて用いることができるが、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法、又は基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法を好適に用いることができる。
本発明は、これらの手段を組み合わせることにより、更に高輝度又は耐久性に優れた素子を得ることができる。
透明電極と透明基板の間に低屈折率の媒質を光の波長よりも長い厚さで形成すると、透明電極から出てきた光は、媒質の屈折率が低いほど、外部への取り出し効率が高くなる。
低屈折率層としては、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマー等が挙げられる。透明基板の屈折率は一般に1.5〜1.7程度の範囲内であるので、低屈折率層は、屈折率がおよそ1.5以下であることが好ましい。また更に1.35以下であることが好ましい。
また、低屈折率媒質の厚さは、媒質中の波長の2倍以上となるのが望ましい。これは、低屈折率媒質の厚さが、光の波長程度になってエバネッセントで染み出した電磁波が基板内に入り込む層厚になると、低屈折率層の効果が薄れるからである。
全反射を起こす界面又は、いずれかの媒質中に回折格子を導入する方法は、光取り出し効率の向上効果が高いという特徴がある。この方法は、回折格子が1次の回折や、2次の回折といった、いわゆるブラッグ回折により、光の向きを屈折とは異なる特定の向きに変えることができる性質を利用して、発光層から発生した光のうち、層間での全反射等により外に出ることができない光を、いずれかの層間若しくは、媒質中(透明基板内や透明電極内)に回折格子を導入することで光を回折させ、光を外に取り出そうとするものである。
導入する回折格子は、二次元的な周期屈折率を持っていることが望ましい。これは、発光層で発光する光はあらゆる方向にランダムに発生するので、ある方向にのみ周期的な屈折率分布を持っている一般的な一次元回折格子では、特定の方向に進む光しか回折されず、光の取り出し効率がさほど上がらない。
しかしながら、屈折率分布を二次元的な分布にすることにより、あらゆる方向に進む光が回折され、光の取り出し効率が上がる。
回折格子を導入する位置としては、いずれかの層間、若しくは媒質中(透明基板内や透明電極内)でも良いが、光が発生する場所である有機発光層の近傍が望ましい。このとき、回折格子の周期は、媒質中の光の波長の約1/2〜3倍程度の範囲内が好ましい。回折格子の配列は、正方形のラチス状、三角形のラチス状、ハニカムラチス状等、二次元的に配列が繰り返されることが好ましい。
≪集光シート≫
本発明の有機EL素子は、支持基板(基板)の光取り出し側に、例えばマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、又は、いわゆる集光シートと組み合わせることにより、特定方向、例えば素子発光面に対し正面方向に集光することにより、特定方向上の輝度を高めることができる。
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を二次元に配列する。一辺は10〜100μmの範囲内が好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚さが厚くなり好ましくない。
集光シートとしては、例えば液晶表示装置のLEDバックライトで実用化されているものを用いることが可能である。このようなシートとして例えば、住友スリーエム社製輝度上昇フィルム(BEF)等を用いることができる。プリズムシートの形状としては、例えば基材に頂角90度、ピッチ50μmの△状のストライプが形成されたものであってもよいし、頂角が丸みを帯びた形状、ピッチをランダムに変化させた形状、その他の形状であっても良い。
また、有機EL素子からの光放射角を制御するために光拡散板・フィルムを、集光シートと併用してもよい。例えば、(株)きもと製拡散フィルム(ライトアップ)等を用いることができる。
≪用途≫
本発明の有機EL素子は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。
発光光源として、例えば、照明装置(家庭用照明、車内照明)、時計や液晶用バックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではないが、特に液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
本発明の有機EL素子においては、必要に応じ製膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもよいし、電極と発光層をパターニングしてもよいし、素子全層をパターニングしてもよく、素子の作製においては、従来公知の方法を用いることができる。
≪表示装置≫
以下、本発明の有機EL素子を有する表示装置の一例を図面に基づいて説明する。
図4は、本発明の有機EL素子から構成される表示装置の構成の一例を示した概略斜視図であって、有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。図4に示すとおり、ディスプレイ1は、複数の画素を有する表示部A、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部B等からなる。
制御部Bは表示部Aと電気的に接続されている。制御部Bは、複数の画素それぞれに対し、外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送る。その結果、各画素が走査信号により走査線毎に画像データ信号に応じて順次発光し、画像情報が表示部Aに表示される。
図5は、図4に記載の表示部Aの模式図である。
表示部Aは基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、複数の画素3等とを有する。
表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。
図5においては、画素3の発光した光が白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料から構成されている。走査線5とデータ線6は互いに格子状に直交して、その直交する位置で画素3に接続されている(詳細は図示していない)。
画素3は、走査線5から走査信号が送信されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。
発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を適宜同一基板上に並列配置することによって、フルカラー表示が可能となる。
≪照明装置≫
本発明の有機EL素子を具備した、本発明の照明装置の一態様について説明する。
本発明の有機EL素子の非発光面をガラスケースで覆い、厚さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材として、エポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止し、図6、図7に示すような照明装置を形成することができる。
図6は、照明装置の概略図を示し、本発明の有機EL素子101はガラスカバー102で覆われている(なお、ガラスカバーでの封止作業は、有機EL素子101を大気に接触させることなく窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)で行う。)。
図7は、照明装置の断面図を示し、図7において、105は陰極、106は有機EL層(発光ユニット)、107は透明電極付きガラス基板を示す。なお、ガラスカバー102内には窒素ガス108が充填され、捕水剤109が設けられている。
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明に係る光変換材料、光変換フィルム、及び発光素子について説明する。
まず、実施例1では、光変換材料に使用する「配位子」のエネルギー準位について確認した。
≪配位子のエネルギー準位の計算≫
各配位子のS1のエネルギー準位(E(S1)と表示)、T1のエネルギー準位(E(T1)と表示)、ΔEst、及びλmaxは、構造の最適化の計算、及び励起状態の計算によって求めた。
すなわち、汎関数としてB3LYP、基底関数として6−31G(d)を用いた構造最適化の計算を行い、この最適化された構造に対して時間依存密度汎関数法(Time−Dependent DFT)による励起状態計算を実施し、配位子のE(S1)、E(T1)を求め、更にΔEst=E(S1)−E(T1)を算出した。また、λmaxはE(S1)の値を用いて算出(λmax=1239.8/E(S1))した。
なお、前記の計算において使用した量子化学計算プログラムはGaussian09であった。
以下、前記の計算によって算出した結果を表1に示す。なお、表1の配位子の番号は、前記した配位子の具体例の番号に対応している。
Figure 2017079181
≪結果の検討:実施例1≫
表1に示すとおり、番号L−01〜L−23の配位子については、ΔEstが0.5eV以下であって、図3に示すようなエネルギー移動を実現できるものであり、本発明に係る光変換材料の配位子(Lig1)として好適に使用可能であることが確認できた。
一方、番号L−101〜L115の配位子については、ΔEstが0.5eVを超えていることが確認できた。
なお、番号L−101〜L115の配位子については、本発明に係る光変換材料の配位子(Lig1)には適さないものの、配位子(Lig2)としては使用可能である。
次に、実施例2では、モノマーの光変換材料を含有させた光変換フィルムの性能について確認した。
≪評価用フィルムの作製≫
ポリメチルメタクリレート25gと表2に記載した希土類金属錯体0.5gとを塩化メチレン67gに溶解し、希土類金属錯体含有の塗布溶液を作製した。この塗布溶液をナイフコーター(株式会社小平製作所製)で平板な基材に製膜した後、60℃、60分間の乾燥処理を施し、乾燥膜厚が100μmの評価用フィルム2−1〜2−24を作製した。
≪評価項目:初期発光量子収率≫
作製した評価用フィルムについて、450nmの励起光を用いた場合の初期発光量子収率(φ0)を積分球ユニット(日本分光株式会社製 ILF−533、φ=100mm)と接続した分光蛍光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス社製 F−7000)により測定した。
≪評価項目:連続稼働後の発光量子収率の変化率≫
作製した評価用フィルムに450nmのLED光を励起光として1000時間連続照射し、照射後の評価用フィルムの発光量子収率(φ1)を初期発光量子収率の測定方法と同様の方法で測定し、変化率(Ra:Ra=|φ0−φ1|/φ0×100)を算出した。
この変化率の値が小さいほど、連続稼働前後におけるフィルムの特性の変化が小さく、稼働時の高い耐久性を示しており、表2中では0%以上20%以下の変化率の場合を「○」、20%を超え40%以下の変化率の場合を「△」、40%を超える変化率の場合を「×」で表した。
以下、各評価の結果を表2に示す。
なお、表2の希土類金属錯体、Lig1、Lig2の番号は、前記した希土類金属錯体の具体例の番号、及び前記した配位子の具体例の番号に対応している。また、表2の「比較01」の希土類金属錯体は、特開2003−81986号公報に記載されているEu(hfa−H)(TPPO)である。
Figure 2017079181
≪結果の検討:実施例2≫
表2に示すとおり、評価用フィルム2−2〜2−24については、ΔEstが0.5eV以下となる配位子を備えた希土類金属錯体を使用していた。その結果、これらの評価用フィルムは、初期発光量子収率が高いとともに、連続稼働後の発光量子収率の変化率も小さく、450nm付近の波長の光を励起光として好適に利用できる光変換フィルムであることが確認できた。
一方、評価用フィルム2−1については、ΔEstが0.5eV以下となるような配位子を備えていない希土類金属錯体を使用していた。その結果、この評価用フィルムは、初期発光量子収率が非常に低いとともに、連続稼働後の発光量子収率の変化率も大きく(×)、450nm付近の波長の光を励起光として好適には利用できないフィルムであることが確認できた。
次に、実施例3では、ポリマーの光変換材料を含有させた光変換フィルムの性能について確認した。
≪評価用フィルムの作製≫
希土類金属錯体を表3に記載の化合物に変更した以外は実施例2と同様の方法によって、評価用フィルム3−1〜3−25を作製した。
≪評価項目:初期発光量子収率≫
実施例2の初期発光量子収率の測定方法と同様の方法で評価用フィルム3−1〜3−25の初期発光量子収率(φ0)を測定した。
≪評価項目:高温保存後の発光量子収率の変化率≫
作製した評価用フィルムを85℃、85%RHの環境下で1000時間の加速劣化処理を施した後の発光量子収率(φ2)を初期発光量子収率の測定方法と同様の方法で測定し、変化率(Ra:Ra=|φ0−φ2|/φ0×100)を算出した。
この変化率の値が小さいほど、高温保存前後におけるフィルムの特性の変化が小さく、稼働時の高い耐久性を示しており、表3中では0%以上20%以下の変化率の場合を「○」、20%を超え40%以下の変化率の場合を「△」、40%を超える変化率の場合を「×」で表した。
以下、各評価の結果を表3に示す。
なお、表3の希土類金属錯体、Lig1、Lig2の番号は、前記した希土類金属錯体の具体例の番号、及び前記した配位子の具体例の番号に対応している。また、表3の「比較02」の希土類金属錯体は、WO2012/150712に記載されている[Eu(hfa)(dpb)]であり、「比較03」の希土類金属錯体としては、同文献の[Eu(hfa)(dppcz)]である。
Figure 2017079181
≪結果の検討:実施例3≫
表3に示すとおり、評価用フィルム3−3〜3−25については、ΔEstが0.5eV以下となる配位子を備えた希土類金属錯体を使用していた。その結果、これらの評価用フィルムは、初期発光量子収率が高いとともに、高温保存後の発光量子収率の変化率も小さく、450nm付近の波長の光を励起光として好適に利用できる光変換フィルムであることが確認できた。
一方、評価用フィルム3−1、3−2については、ΔEstが0.5eV以下となるような配位子を備えていない希土類金属錯体を使用していた。その結果、この評価用フィルムは、初期発光量子収率が非常に低いとともに、高温保存後の発光量子収率の変化率も大きく(×又は△)、450nm付近の波長の光を励起光として好適には利用できないフィルムであることが確認できた。
次に、実施例4では、発光素子の性能について確認した。
≪発光素子の作製≫
100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウムチンオキシド)を100nm製膜した基板(NHテクノグラス社製 NA45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
この透明支持基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、H.C. スタルク社製、CLEVIO P VP AI 4083)を純水で70%に希釈した溶液を用い、3000rpm、30秒の条件でスピンコート法により薄膜を形成した後、200℃にて1時間乾燥し、層厚20nmの第1正孔輸送層を設けた。
この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートに正孔輸送材料としてα−NPDを200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにホスト化合物としてHOST−1を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに電子輸送材料としてET−1を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにドーパントとしてDoup−1を100mg入れ、真空蒸着装置に取り付けた。
次いで、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、α−NPDの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で透明支持基板上に蒸着し、層厚20nmの第2正孔輸送層を設けた。
更に、ホスト化合物としてHOST−1とドーパントとしてDoup−1の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.1nm/秒、0.006nm/秒で前記第2正孔輸送層上に共蒸着して層厚40nmの発光層を設けた。
更にET−1が入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で前記発光層上に蒸着して層厚30nmの電子輸送層を設けた。
なお、蒸着時の基板温度は室温(25℃)であった。
引き続き、フッ化リチウムを蒸着して層厚0.5nmの陰極バッファー層を形成し、更にアルミニウムを蒸着して層厚110nmの陰極を形成し、有機EL素子を作製した。この有機EL素子のITO電極を陽極とし、対向電極を陰極として、直流電圧10Vを印加したところ、470nmをピークとした青色発光を観測できた。
なお、発光素子の作製に使用した「α−NPD」、「HOST−1」、「ET−1」、「Doup−1」は以下のとおりである。
Figure 2017079181
≪評価用素子の作製≫
希土類金属錯体を表4に記載の化合物に変更した以外は実施例2と同様の方法によって、評価用素子4−1〜4−52に使用する評価用フィルムを作製した。
その後、発光素子の発光層とは反対面の基板上に、評価用フィルムを貼り合わせ、評価用素子4−1〜4−52を作製した。
≪評価項目:発光色の確認≫
作製した評価用素子のITO電極を陽極とし、対向電極を陰極として、直流電圧10Vを印加し、評価用フィルムで変換された発光色を観測した。
以下、各評価の結果を表4に示す。なお、表4の希土類金属錯体、Lig1、Lig2の番号は、前記した希土類金属錯体の具体例の番号、及び前記した配位子の具体例の番号に対応している。
Figure 2017079181
≪結果の検討:実施例4≫
表4に示すとおり、評価用素子4−1〜4−52については、ΔEstが0.5eV以下となる配位子を備えた希土類金属錯体を使用していた。その結果、これらの評価用素子は、OLED光源からの450nm付近(470nm)の青色光を好適に赤色光や緑色光に変換できることが確認できた。
1 ディスプレイ
3 画素
5 走査線
6 データ線
A 表示部
B 制御部
101 有機EL素子
102 ガラスカバー
105 陰極
106 有機EL層
107 透明電極尽きガラス基板
108 窒素ガス
109 捕水剤

Claims (10)

  1. 励起光によって励起され、前記励起光とは異なる波長で発光し、下記一般式(1)で表されることを特徴とする光変換材料。
    Figure 2017079181
    〔式中、Mは希土類金属を表し、Lig1とLig2とはMに配位する配位子を表し、Lig1とLig2とは互いに異なる構造である。n1は1〜12の整数を表し、n2は0〜8の整数を表し、n1が2以上の場合には、Lig1は同一の構造であっても異なる構造であってもよく、n2が2以上の場合には、Lig2は同一の構造であっても異なる構造であってもよい。n3は1以上の整数を表す。少なくとも1つのLig1の最低励起一重項状態(S1)のエネルギー準位と当該Lig1の最低励起三重項状態(T1)のエネルギー準位との差の絶対値(ΔEst)は0.5eV以下である。〕
  2. 前記少なくとも1つのLig1が420〜500nmの波長の励起光で励起されることを特徴とする請求項1に記載の光変換材料。
  3. 前記MがPr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybからなる群から選ばれることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光変換材料。
  4. 前記MがEu又はTbであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光変換材料。
  5. 前記少なくとも1つのLig1の最低励起三重項状態(T1)のエネルギー準位が、前記Mの発光準位より高いことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光変換材料。
  6. 前記Lig1又は前記Lig2が多座配位子であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光変換材料。
  7. 希土類金属錯体ポリマーであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光変換材料。
  8. 前記ΔEstが0.01〜0.30eVであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の光変換材料。
  9. 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の光変換材料を含有することを特徴とする光変換フィルム。
  10. 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の光変換材料を含有することを特徴とする発光素子。
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