JP2005206793A - 塩化ビニル系重合樹脂及びその製造方法 - Google Patents

塩化ビニル系重合樹脂及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 粒子表面粗さを小さくさせ、嵩比重が高く、粉体流動性に優れる、塩化ビニル系モノマーと二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーからなる、塩化ビニル系重合樹脂を提供することを課題とする。
【解決手段】 塩化ビニル系モノマーを主成分とする塩化ビニル系重合樹脂を重合するに際し、塩化ビニル系モノマーと、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーを含有することを特徴とする、塩化ビニル系重合樹脂。
【選択図】 なし

Description

本発明は塩化ビニル系重合樹脂及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、可塑剤の吸収性に優れ、嵩比重が高く粉体流動特性に優れた塩化ビニル系重合樹脂及びその製造方法に関する。
塩化ビニル系重合樹脂は、機械的物性、化学的物性に優れ、また可塑剤を使用することで硬質から軟質までの成形体が得られるため種々の用途に使用されている。
塩化ビニル系重合樹脂の製造方法については、乳化重合法、懸濁重合法、微細懸濁重合法等の方法があり、目標とする水性分散体の粒子径分布により適宜選択される。
各用途において塩化ビニル系重合樹脂に要求される品質特性は種々あるが、一般的には生産性向上や加工成形性改善、あるいは空気移送の観点から、嵩比重が高いことや、粉体流動性の良さが求められることが多く、そのための粒子形状としては、粒子間の摩擦が少ない、表面粗さの小さい粒子が望まれていた。
嵩比重を高める方法として、単量体を重合途中で追加し、粒子界面のポリマー分子量を低下させる方法(特許文献1)や、重合度とケン化度の異なる部分ケン化ポリビニルアルコールを分散剤として使用して、粒子を形成する方法(特許文献2)が開示されているが、粒子表面粗さ(Ra)に課題があり、粉体流動性の改善程度も不充分であった。
特開昭59−168008号公報 特開平09−241308号公報
本発明は、粒子表面粗さを小さくし、嵩比重が高く粉体流動性に優れる塩化ビニル系重合樹脂を提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意研究の結果、塩化ビニル系モノマーと、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーを含有させることにより、塩化ビニル系モノマー液滴中または界面付近のモノマー組成を改良することで粒子表面粗さを小さくし、嵩比重が高く粉体流動性に優れる塩化ビニル系重合樹脂を得ることが出来ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち本発明は、
(1)塩化ビニル系モノマー(A)と、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマー(B)の組成比率(A/B)が99.95重量%/0.05重量%〜60重量%/40重量%であることを特徴とする塩化ビニル系重合樹脂(請求項1)、
(2)二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーが重合性反応基を有し、該重合性反応基が、1分子あたり少なくとも1個、下記一般式
−OC(O)C(R)=CH2 (1)
(式中、Rは水素、又は、炭素数1〜20の有機基を表す。)
を含む構造であることを特徴とする請求項1記載の塩化ビニル系重合樹脂(請求項2)、
(3)塩化ビニル系モノマーを、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーを用い、水性媒体中で重合することを特徴とする、請求項1〜2の何れか1項に記載の塩化ビニル系重合樹脂の製造方法 (請求項3)、
(4)塩化ビニル系モノマーと、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマー、を用いた塩化ビニル系重合樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の塩化ビニル系重合樹脂組成物(請求項4)、に関する。
本発明により、粒子表面粗さ(Ra)を小さくする事ができる。また、本発明により、嵩比重を高くする事ができる。また、本発明により、粉体流動性に優れる塩化ビニル系重合樹脂を得ることが出来る。
本発明の塩化ビニル系重合樹脂は、塩化ビニル系モノマーに、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーを含有させ、重合される。
本発明の塩化ビニル系重合樹脂は、本願発明の効果を奏するものであれば、塩化ビニル系モノマー及びマクロモノマーの組成比率は特に制約されないが、塩化ビニル系モノマーとマクロモノマーの総量(100重量%)に占めるマクロモノマーの好ましい組成比率(重量%)としては、0.05重量%以上40重量%以下、より好ましくは、0.05重量%以上20重量%以下である。
0.05%以上40重量%、0.05重量%以上20重量%の範囲であれば、粒子表面粗さ(Ra)を小さくさせ、嵩比重が高く、粉体流動性が優れるため好ましい。
また、懸濁重合で得られた塩化ビニル系重合樹脂の場合、0.05重量%以上5重量%以下、好ましくは0.05重量%以上3重量%以下、特に好ましくは0.05重量%以上1重量%未満の範囲では夏場等での高温・多湿下の環境においても粒子同士のブロッキングが少なくなり、塩化ビニル系樹脂自身の物性への影響が少ないため好ましい。
本発明で使用される塩化ビニル系モノマーとしては特に限定はなく、例えば塩化ビニルモノマー、塩化ビニリデンモノマー、酢酸ビニルモノマーまたはこれらの混合物、または、この他にこれらと共重合可能で、好ましくは重合後の重合体主鎖に反応性官能基を有しないモノマー、例えばエチレン、プロピレンなどのα−オレフィン類から選ばれる1種または2種以上の混合物を用いてもよい。2種以上の混合物を使用する場合、塩化ビニル系モノマー全体に占める塩化ビニルモノマーの含有率としては50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である事が好ましい。
一般にマクロモノマーとは、重合体の末端に反応性の官能基を有するオリゴマー分子である。本発明で使用される二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーは、反応性官能基として、アリル基、ビニルシリル基、ビニルエーテル基、ジシクロペンタジエニル基、下記一般式(1)から選ばれる重合性の炭素−炭素二重結合を有する基を、少なくとも1分子あたり1個、分子末端に有する、ラジカル重合によって製造されたものである。
特に、塩化ビニル系モノマーとの反応性が良好なことから、重合性の炭素−炭素二重結合を有する基が、下記一般式
−OC(O)C(R)=CH2 (1)
で表される基であることが好ましい。
式中、Rの具体例としては特に限定されないが、例えば、−H、−CH3、−CH2CH3、−(CH2nCH3(nは2〜19の整数を表す)、−C65、−CH2OH、−CNの中から選ばれる基が好ましく、更に好ましくは−H、−CH3を用いることができる。
また、本発明で用いるマクロモノマーの主鎖である、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなるビニル系重合体は、ラジカル重合によって製造される。ラジカル重合法は、重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物などを使用して、特定の官能基を有するモノマーとビニル系モノマーとを単に共重合させる「一般的なラジカル重合法」と、末端などの制御された位置に特定の官能基を導入することが可能な「制御ラジカル重合法」に分類できる。
「一般的なラジカル重合法」は、特定の官能基を有するモノマーは確率的にしか重合体中に導入されないので、官能化率の高い重合体を得ようとした場合には、このモノマーをかなり大量に使用する必要がある。またフリーラジカル重合であるため、分子量分布が広く、粘度の低い重合体は得にくい。
「制御ラジカル重合法」は、さらに、特定の官能基を有する連鎖移動剤を使用して重合を行うことにより末端に官能基を有するビニル系重合体が得られる「連鎖移動剤法」と、重合生長末端が停止反応などを起こさずに生長することによりほぼ設計どおりの分子量の重合体が得られる「リビングラジカル重合法」とに分類することができる。
「連鎖移動剤法」は、官能化率の高い重合体を得ることが可能であるが、開始剤に対して特定の官能基を有する連鎖移動剤を必要とする。また上記の「一般的なラジカル重合法」と同様、フリーラジカル重合であるため分子量分布が広く、粘度の低い重合体は得にくい。
これらの重合法とは異なり、「リビングラジカル重合法」は、本件出願人自身の発明に係る国際公開WO99/65963号公報に記載されるように、重合速度が大きく、ラジカル同士のカップリングなどによる停止反応が起こりやすいため制御の難しいとされるラジカル重合でありながら、停止反応が起こりにくく、分子量分布の狭い、例えば、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比(Mw/Mn)が1.1〜1.5程度の重合体が得られるとともに、モノマーと開始剤の仕込み比によって分子量は自由にコントロールすることができる。
従って「リビングラジカル重合法」は、分子量分布が狭く、粘度が低い重合体を得ることができる上に、特定の官能基を有するモノマーを重合体のほぼ任意の位置に導入することができるため、本発明において、上記の如き特定の官能基を有するビニル系重合樹脂の製造方法としてはより好ましい重合法である。
「リビングラジカル重合法」の中でも、有機ハロゲン化物あるいはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する「原子移動ラジカル重合法」(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)は、上記の「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲン等を末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはさらに好ましい。この原子移動ラジカル重合法としては例えばMatyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁等が挙げられる。
本発明におけるマクロモノマーの製法として、これらのうちどの方法を使用するかは特に制約はないが、通常、制御ラジカル重合法が利用され、さらに制御の容易さなどからリビングラジカル重合法が好ましく用いられ、特に原子移動ラジカル重合法が最も好ましい。
本発明におけるマクロモノマーの製法として、特に制約はないが、通常、制御ラジカル重合法が利用され、更に制御の容易さなどからリビングラジカル重合法が好ましく用いられ、特に原子移動ラジカル重合法が最も好ましい。制御ラジカル重合法、詳しくはリビングラジカル重合で製造された二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーは、末端を完全に塩化ビニル系樹脂と共重合させることができ、塩化ビニル系モノマー液滴中または界面付近のモノマー組成を改良することで、粒子表面粗さを小さくさせることができるため好ましい。
また、本発明で用いるマクロモノマーの主鎖が有する、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体としては特に制約は無く、該重合体を構成する二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーとしては、各種のものを用いることが出来る。詳しくは、(メタ)アクリル酸系モノマー;スチレン系モノマー;フッ素含有ビニルモノマー;ケイ素含有ビニルモノマー;マレイミド系モノマー;ニトリル基含有ビニル系モノマー;アミド基含有ビニル系モノマー;ビニルエステル類;アルケン類;共役ジエン類;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;塩化アリル、アリルアルコール等を意味する。
本発明において、(メタ)アクリル酸系モノマーとは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等を意味する。ここで、例えば、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸或いはアクリル酸を意味するものである。
本発明において、スチレン系モノマーとは、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等を意味する。
本発明において、フッ素含有ビニルモノマーとは、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等を意味する。
本発明において、ケイ素含有ビニルモノマーとは、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等を意味する。
本発明において、マレイミド系モノマーとは、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等を意味する。
本発明において、ニトリル基含有ビニル系モノマーとは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を意味する。
本発明において、アミド基含有ビニル系モノマーとは、アクリルアミド、メタクリルアミド等を意味する。
本発明において、ビニルエステル類とは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等を意味する。
本発明において、アルケン類とは、エチレン、プロピレン等を意味する。
本発明において、共役ジエン類とは、ブタジエン、イソプレン等を意味する。
本発明のマクロモノマーを構成する二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーの内、本発明では生成物の物性等から、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル酸系モノマーを用いることが好ましい。より好ましくは、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーであり、更に好ましくは、アクリル酸エステルモノマーであり、最も好ましくはアクリル酸−n−ブチルである。本発明においては、これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合させても良く、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40%以上含まれていることが好ましい。
また、本発明の二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーは1種のみを用いてもよく、構成するエチレン性不飽和モノマーが異なるマクロモノマーを2種以上併用してもよい。
本発明で使用される、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーは、分子量分布、即ち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略す)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が好ましくは1.8未満であり、さらに好ましくは1.6以下であり、特に好ましくは1.4以下である。本発明におけるGPC測定の際には、Waters社製GPCシステム(製品名510)を用い、クロロホルムを移動相として、昭和電工(株)製Shodex K−802.5及びK−804(ポリスチレンゲルカラム)を使用し、室温環境下で測定した。分子量分布が1.8未満のマクロモノマーを使用すると、重合が安定に進行し、粒子表面粗さが小さくなり、1.4以下のマクロモノマーを使用すると、塩化ビニル系モノマー滴界面張力のバラツキが低く、表面状態の整った安定な粒子が均一にできるため好ましい。
本発明で使用される、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーの、GPCで測定した数平均分子量は特に限定されないが、500〜100,000の範囲が好ましく、更に好ましくは、3,000〜40,000であり、最も好ましくは5,000〜20,000である。この範囲であるマクロモノマーを用いた塩化ビニル系重合樹脂は、可塑剤吸収性が良好となり好ましい。
本発明の塩化ビニル系重合樹脂の製造方法については、特に制限はないが、重合制御の簡便性より、水性重合が好ましく、例えば、懸濁重合法、微細懸濁重合法、乳化重合法等の製造方法が挙げられる。特に好ましくは、粒子制御の簡便性、乾燥処理の簡便性より懸濁重合法、微細懸濁重合法で製造されることが望ましい。
本発明の塩化ビニル系重合樹脂は、水性分散体で使用しても、乾燥した樹脂粉体として使用してもよく、ハンドリング性が良好なことから乾燥樹脂粉体として用いられることが望ましい。
本発明の塩化ビニル系重合樹脂の水性分散体の重量平均粒径としては特に制限はないが、0.01〜500μm、好ましくは0.1〜250μm、さらに好ましくは1〜200μmの範囲であることが望ましい。塩化ビニル系重合樹脂がこの範囲であると、塩化ビニル系重合樹脂の水性分散体が、重合安定性に優れるため望ましい。
塩化ビニル系重合樹脂の水性分散体の乾燥方法も特に制限はないが、例えば重合終了後の水性分散体を、遠心脱水の後、流動床等で乾燥する方法、蒸気中に脱水樹脂を吹込みサイクロン等の集塵機で集める方法、二流体ノズルやアトマイザーを用いて粉体乾燥する方法等により、塩化ビニル系重合樹脂粉体を得ることができる。
塩化ビニル系樹脂粉体とは、塩化ビニル系重合体の水性分散体に熱を加え、水分を可能な限り取り除いた単独或いは複数の粒子の凝集状態からなる乾燥体であり、塩化ビニル系重合樹脂粉体の粒子径としては特に制約はないが、10μm〜1000μm、好ましくは20μm〜500μm、更に好ましくは30μm〜200μmである。塩化ビニル系重合樹脂粉体がこの範囲であると、粉体流動性に優れるため望ましい。
本発明の塩化ビニル系重合樹脂の平均重合度または平均分子量は特に限定されず、通常製造又は使用される塩化ビニル系樹脂と同様に、JIS K 7367−2に従って測定したK値が50〜95の範囲である。
本発明の、マクロモノマーの添加の方法は特に制限されないが、予め塩化ビニル系モノマーに混合・溶解して用いても、分散剤とともに混合して塩化ビニル系モノマーに添加して用いてもよい。界面状態の制御がしやすいことから、塩化ビニル系モノマー中に混合した後で、分散剤等を添加し重合を開始することが好ましい。
本発明の塩化ビニル系重合樹脂を製造する際に用いられる懸濁重合法は特に制約はないが、原料の仕込みは通常用いられる技術を任意に用いることができる。例えば最も一般的な方法として、先に水を仕込んだのち塩化ビニル系モノマー及びマクロモノマーを仕込む方法、重合温度まで昇温する時間を短縮する目的で先に塩化ビニル系モノマー及びマクロモノマーを仕込んだのち温水を仕込む方法、さらに仕込み及び昇温時間を短縮する目的で塩化ビニル系モノマー及びマクロモノマーと温水を同時に仕込む方法等を用いることができる。
また本発明の塩化ビニル系重合樹脂を製造する際に用いられる懸濁重合法または微細懸濁重合法においては、懸濁分散剤を、特に制約されずに用いることができる。そのような懸濁分散剤としては、例えば、部分鹸化ポリビニルアルコール;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の水溶性セルロースエーテル;ポリエチレンオキサイド;ポリビニルピロリドン;ポリアクリル酸;酢酸ビニル−マレイン酸共重合体;スチレン−マレイン酸共重合体;ゼラチン;デンプン、等の有機高分子分散剤が使用可能であり、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
さらに本発明の塩化ビニル系重合樹脂を製造する際に用いられる微細懸濁重合法または乳化重合法においては、特に制約されずに用いることができる。そのような界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩類、アルキルアリールスルフォン酸塩類、アルキルスルホコハク酸エステル塩類、脂肪酸塩類、α-オレフィンスルホン酸塩類、アルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類などのアニオン性界面活性剤(ここで、「塩類」とは、カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。);ゾルビタンエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類などの親水性のノニオン性界面活性剤類が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また本発明の塩化ビニル系重合樹脂を製造する際に用いられる微細懸濁重合法または乳化重合法においては、分散助剤を使用することができる。そのような分散助剤としては、特に制約はないが、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸類;高級脂肪酸のエステル類;高級脂肪族炭化水素類;ハロゲン化炭化水素類;水溶性高分子等が好適に挙げられ、これらは単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
さらに本発明の塩化ビニル系重合樹脂を製造する際に用いられる懸濁重合法または微細懸濁重合法においては、油溶性重合開始剤を特に制約されず使用添加することができるが、これらの開始剤のうち10時間半減期温度が30〜65℃のものを1種または2種以上使用するのが好ましい。このような重合開始剤としては、アセチルシクロヘキシルスルフォニルパーオキサイド、2,4,4トリメチルペンチル−2−パーオキシネオデカノエート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等の有機過酸化物系重合開始剤;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。これら油溶性重合開始剤は有機溶剤に溶解して用いるが、その有機溶剤の例としては、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジオクチルフタレート等のエステル類が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また本発明の塩化ビニル系重合樹脂を製造する際に用いられる乳化重合法においては、特に制限なく水溶性重合開始剤を使用することができる。そのような水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素水等が挙げられ、必要に応じて、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート2水塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム等の還元剤を併用する事ができる。これらは単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
その他、抗酸化剤、重合度調節剤、連鎖移動剤、粒子径調節剤、pH調節剤、ゲル化性改良剤、帯電防止剤、安定剤、スケール防止剤等も、一般に塩化ビニル系樹脂の製造に使用されるものを、必要に応じて特に制約されず、任意の量で用いることができる。
本発明の塩化ビニル系重合樹脂組成物は特に制約はないが、必要に応じて塩化ビニル単独重合樹脂を併用することもでき、更に必要に応じて可塑剤、充填剤、熱安定剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、強化剤、改質剤、顔料等を配合することができる。
本発明の塩化ビニル系重合樹脂は、単独使用するか、又は塩化ビニル系単独樹脂を1種類以上混合して使用することもできる。塩化ビニル系重合樹脂を混合する場合は、特に制約はないが、水性分散体同士の混合、別途乾燥した樹脂粉体と水性分散体との混合、樹脂粉体同士の混合等が挙げられる。塩化ビニル単独重合樹脂を併用する場合は、全塩化ビニル樹脂に占める、本発明の塩化ビニル系重合樹脂の割合が3〜90重量%の範囲であることが好ましく、5〜80重量%の範囲がより好ましく、10〜50重量%の範囲が最も好ましい。3〜90重量%の範囲で使用されると、混合された樹脂粉体の嵩比重が改善され、10〜50重量%の範囲で使用されると、粉体流動性に優れるため好ましい。
本発明の塩化ビニル系重合樹脂組成物の柔軟性を調整するために、適宜可塑剤を添加することもできる。例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP),ジ−n−オクチルフタレート,ジイソノニルフタレート(DINP),ジブチルフタレート(DBP)等のフタル酸エステル系可塑剤;トリクレジルフォスフェート(TCP),トリキシリルホスフェート(TXP),トリフェニルフォスフェート(TPP)等のリン酸エステル系可塑剤;ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DEHA),ジ−2−エチルヘキシルセバケート等の脂肪酸エステル系可塑剤、ポリアクリル酸ブチル、アクリル酸−n−ブチル/メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル/メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸−n−ブチル共重合体等のポリアクリル系可塑剤等から選ばれる一種または二種以上の可塑剤が使用できる。可塑剤量としては、本発明の塩化ビニル系重合樹脂単独で使用する場合は、塩化ビニル系重合樹脂組成物の望ましい柔軟性を調整する量を添加するため、本発明の塩化ビニル系重合樹脂、塩化ビニル系樹脂からなる塩化ビニル樹脂100重量部に対し、10〜100重量部の範囲で使用することが好ましい。より好ましくは20〜70重量部の範囲で使用され、最も好ましくは20〜50重量部の範囲である。
塩化ビニル系重合樹脂組成物の熱安定性を調整するために適宜熱安定剤を用いることができる。そのような熱安定剤としては、例えばジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫安定剤;ステアリン酸鉛、二塩基性亜燐酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤;カルシウム−亜鉛系安定剤;バリウム−亜鉛系安定剤;カドミウム−バリウム系安定剤等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。またその使用量も特に制約はないが、本発明の塩化ビニル系重合樹脂、塩化ビニル系樹脂からなる塩化ビニル樹脂100重量部に対し0〜5重量部の範囲で使用されることが好ましい。
さらに安定化助剤としては、特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲のものを用いることができる。そのような安定化助剤としては、例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、燐酸エステル等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。またその使用量も特に制約はない。
充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、カオリングレー、石膏、マイカ、タルク、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、硼砂等があげられ、特に制約はないが、透明用途から強化剤として使用する適量の範囲で用いることができ、一般的に本発明の塩化ビニル系重合樹脂、塩化ビニル系樹脂からなる塩化ビニル樹脂100重量部に対して、0〜500重量部使用することが好ましい。より好ましくは、0〜200重量部の範囲で使用され、最も好ましくは0〜100重量部の使用範囲である。
本発明の塩化ビニル系重合樹脂組成物の製造方法には特に限定はなく、本発明の塩化ビニル系重合樹脂を所定量配合し、必要に応じ例えば他の塩化ビニル系樹脂等も所定量配合し、さらに要すれば使用される各種添加剤(熱安定剤、滑剤、安定化助剤、加工助剤、充填剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料、可塑剤等)を配合したものを、例えばヘンシェルミキサー等の混合機等を用いて、ホットブレンドまたはコールドブレンド等の常法によって均一に混合するなどの方法で製造すれば良い。その際の配合順序等に特に限定はない。例えば本発明の塩化ビニル系重合樹脂及び各種添加剤を一括して配合する方法、液状の添加剤を均一に配合する目的で先に本発明の塩化ビニル系重合樹脂及び粉粒体の各種添加剤を配合したのち液状添加剤を配合する方法等を用いることができる。
本発明の塩化ビニル系重合樹脂の用途としては、本発明の重合樹脂を使用可能なものであれば特に制約は無いが、例示すれば、硬質用途であればパイプ、継手、波板、平板、フィルム、シート、ブロー成形等による成形品、雨樋・デッキ・建材用途等で使用される異形押出品等が挙げられる。軟質用途であれば、一般・農業用途で使用されるシート、ガスケット・ホース・チューブ・止水板等に用いられる軟質押出品、帆布、テープ、マット等が挙げられる。ペースト用樹脂としての用途であれば、メカニカルエンボス法・ケミカルエンボス法・ロータリースクリーン印刷法等による壁紙、クッションフロア・タイルカーペット等の床材、アンダーコート、シーラント、レザー、帆布、塩ビ鋼板等が挙げられる。
次に本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。ここで、特に断りのない限り、実施例中の「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を意味する。
<平均粒径、嵩比重、表面粗さ、粉体流動性の評価>
平均粒径、嵩比重、表面粗さ、粉体流動性は、以下の方法により評価した。
(イ)平均粒径
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られた樹脂については、23℃/50%RHの条件下で24時間放置した後、JIS K 6721に準拠し、目開き355μm、250μm、180μm、150μm、125μm、106μm、75μmの篩を使用して、株式会社セイシン企業製音波式全自動篩い分け測定器(型番:ロボットシフターRPS−85)にて23℃/50%RHの条件下で篩分けを行い、50%通過径をもって重量平均径(μm)とした。
実施例6〜12及び比較例4〜7で得られた樹脂については、重合後のスラリーまたはラテックスを23℃/50%RHの条件下で24時間放置した後、コールター・エレクトロニクス・リミティド社製MULTISIZERIIを用いて23℃/50%RHの条件下で測定し、累積重量分布で50%となる粒子径をもって重量平均径とした。
(ロ)嵩比重
JIS K 6721に準じて測定した。
(ハ)粒子表面粗さ(Ra)
実施例1〜12および比較例1〜7で得られた樹脂については、23℃/50%RHの条件下で24時間放置した後、JIS B 0610に記載の表面粗さの規定に準じ、株式会社キーエンス製超深度カラー三次元形状測定顕微鏡(型番VK−9510)を用い、23℃/50%RHの条件下で数十個の樹脂粒子表面の算術平均粗さRa(μm)の平均値を求めて評価した。
(ニ)粉体流動性
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られた樹脂については、23℃/50%RHの条件下で24時間放置した後、23℃/50%RHの条件下で図1の漏斗の口に栓をしたものに、JIS K6721に記載の嵩比重測定方法で得られた100mlの樹脂を投入し、投入完了後漏斗の口の栓を抜き、樹脂が全量落下するまでの時間t(sec)を測定して、このtと、その樹脂100mlの重さW(g)から、単位時間当たりに落下する樹脂の重量;
W/t(g/sec)
を算出し、これを粉体流動性の指標として用いた。
実施例6〜12及び比較例4〜7で得られた樹脂については、23℃/50%RHの条件下で樹脂を24時間放置した後、岩城産業製KM−Shaker(Model:V−SX)上に固定した目開き250μmのJIS標準篩上に樹脂100gを載せ、篩側面に当たるよう、50g分銅を30cm長さの紐の先に固定し、垂直面に対し60°の角度から分銅を自由落下させることを30回行い、篩を通過した樹脂の重量(g)で求めた。
(ホ)ブロッキング性
実施例1〜12及び比較例1〜7で得られた樹脂約50gをフェロ板で挟み、1g/cm2となるように重りを置き、50℃/80%RHの条件下で24時間放置した後、樹脂の状態を目視観察した。
○;調整前の状態と変わりなく、粒子間の凝集がない。
△;一部の粒子が凝集している、或いは凝集している樹脂を指で擦れば直ぐに解れる。
×;全体が凝集している、或いは凝集している樹脂を指で強く擦らないと解れない。
<二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーの製造>
少なくとも一種のビニル系重合体を構成成分とするマクロモノマーの製造は、下記の手順に従って行った。なお、得られたマクロモノマーの数平均分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算値として算出し、分子量分布は、同じくポリスチレン換算の重量平均分子量と数平均分子量の比として算出した。このGPC測定の際には、Waters社製GPCシステム(製品名510)を用い、テトラヒドロフランを移動相として、昭和電工(株)製Shodex K−802.5及びK−804(ポリスチレンゲルカラム)を使用し、23℃、50%湿度の環境下で測定した。
(製造例1) 還流管および攪拌機付きの2Lのセパラブルフラスコに、CuBr(5.54g)を仕込み、反応容器内を窒素置換した。アセトニトリル(73.8ml)を加え、オイルバス中70℃で30分間攪拌した。これにアクリル酸−n−ブチル(132g)、2−ブロモプロピオン酸メチル(7.2ml)、ペンタメチルジエチレントリアミン(4.69ml)を加え、反応を開始した。70℃で加熱攪拌しながら、アクリル酸−n−ブチル(528g)を90分かけて連続的に滴下し、更に80分間加熱攪拌した。
反応混合物をトルエンで希釈し、活性アルミナカラムを通した後、揮発分を減圧留去することにより、片末端Br基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)を得た。
フラスコに、メタノール(800ml)を仕込み、0℃に冷却した。そこへ、t−ブトキシカリウム(130g)を数回に分けて加えた。この反応溶液を0℃に保持して、アクリル酸(100g)のメタノール溶液を滴下した。滴下終了後、反応液の温度を0℃から室温に戻したのち、反応液の揮発分を減圧留去することにより、アクリル酸カリウム(CH2=CHCO2K)を得た。
還流管付き500mLフラスコに、得られた片末端Br基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)(150g)、アクリル酸カリウム(7.45g)、ジメチルアセトアミド(150ml)を仕込み、70℃で3時間加熱攪拌した。反応混合物よりジメチルアセトアミドを留去し、トルエンに溶解させ、活性アルミナカラムを通した後、トルエンを留去することにより片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを得た。なお、数平均分子量は12000、分子量分布は1.11であった。
(製造例2) 製造例1で使用の2−ブロモプロピオン酸メチルの量を14.4mlにした以外は、製造例1と同様の製造方法にて、数平均分子量6000、分子量分布1.14の片末端アクロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを得た。
<塩化ビニル系重合樹脂の製造>
塩化ビニル系重合樹脂の製造は、下記の手順に従って行った。
(実施例1)
ジャケット及び攪拌機を備えた内容量25リットルのステンレス鋼製重合機に、鹸化度約80モル%、平均重合度約2000の部分鹸化ポリビニルアルコール0.05部、平均分子量が約450万のポリエチレンオキサイド0.005部、t−ブチルパーオキシネオデカノエート0.03部、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート0.01部を仕込み、脱気後に塩化ビニルモノマー99.95部及び製造例1の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマー0.05部を仕込んだのち60℃の温水120部を仕込み、重合温度57℃で約6時間重合した。重合機内の未反応モノマーを回収したのち重合機を冷却し、スラリーを払い出した。得られたスラリーを脱水して熱風乾燥機にて55℃で24時間乾燥し、塩化ビニル系重合樹脂粉体Aを得た。
得られた樹脂粉体Aの平均粒径、嵩比重、表面粗さ、粉体流動性を評価し、表1に示した。
(実施例2)
実施例1において、塩化ビニルモノマーを99.5部及び製造例2の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを0.5部とした以外は、実施例1と同様に重合、脱水、乾燥し、塩化ビニル系重合樹脂粉体Jを得た。
得られた樹脂粉体Jの平均粒径、嵩比重、表面粗さ、粉体流動性を評価し、表1に示した。
(実施例3)
実施例1において、塩化ビニルモノマーを99部及び製造例2の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを1部とした以外は、実施例1と同様に重合、脱水、乾燥し、塩化ビニル系重合樹脂粉体Bを得た。
得られた樹脂粉体Bの平均粒径、嵩比重、表面粗さ、粉体流動性を評価し、表1に示した。
(実施例4)
実施例1において、塩化ビニルモノマーを90部及び製造例1の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを10部とした以外は、実施例1と同様に重合、脱水、乾燥し、塩化ビニル系重合樹脂粉体Kを得た。
得られた樹脂粉体Kの平均粒径、嵩比重、表面粗さ、粉体流動性を評価し、表1に示した。
(実施例5)
実施例1において、塩化ビニルモノマーを60部及び製造例1の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを40部とした以外は、実施例1と同様に重合、脱水、乾燥し、塩化ビニル系重合樹脂粉体Lを得た。
得られた樹脂粉体Lの平均粒径、嵩比重、表面粗さ、粉体流動性を評価し、表1に示した。
(実施例6)
充分に脱気、窒素置換した20L耐圧容器に、塩化ビニルモノマー99.95部、製造例1の片末端アクロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマー0.05部、t−ブチルパーオキシネオデカノエート0.03部、メトキシル基含量21%、ヒドロキシプロポキシル基含量8%、2%水溶液の20℃における粘度が30000mPa・sであるヒドロキシプロピルメチルセルロース0.12部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.13部、脱気純水160部を添加し、攪拌しながら容器内を54.5℃に保温して重合を開始した。約5時間後に容器内の圧力が低下しはじめたことから、重合機内のモノマーを回収し、容器内を冷却した後、スラリーを払い出した(塩化ビニルモノマーの転化率は約90%であった)。遠心脱水後、スラリーを60℃で流動乾燥し、塩化ビニル系重合樹脂粉体Cを得た。
得られた樹脂粉体Cの平均粒径、嵩比重、表面粗さ、粉体流動性を評価し、表2に示した。
(実施例7)
実施例6において、塩化ビニルモノマーを99.5部及び製造例1の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを0.5部とした以外は、実施例6と同様に重合、脱水、乾燥し、塩化ビニル系重合樹脂粉体Mを得た。
得られた樹脂粉体Mの平均粒径、嵩比重、表面粗さ、粉体流動性を評価し、表2に示した。
(実施例8)
実施例6において、塩化ビニルモノマーを99部及び製造例1の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを1部とした以外は、実施例6と同様に重合、脱水、乾燥し、塩化ビニル系重合樹脂粉体Dを得た。
得られた樹脂粉体Dの平均粒径、嵩比重、表面粗さ、粉体流動性を評価し、表2に示した。
(実施例9)
実施例6において、塩化ビニルモノマーを94部及び製造例1の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを6部とした以外は、実施例6と同様に重合、脱水、乾燥し、塩化ビニル系重合樹脂粉体Nを得た。
得られた樹脂粉体Nの平均粒径、嵩比重、表面粗さ、粉体流動性を評価し、表2に示した。
(実施例10)
実施例6において、塩化ビニルモノマーを80部及び製造例2の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを20部とした以外は、実施例6と同様に重合、脱水、乾燥し、塩化ビニル系重合樹脂粉体Oを得た。
得られた樹脂粉体Oの平均粒径、表面粗さ、粉体流動性を評価し、表2に示した。
(実施例11)
充分に脱気、窒素置換した15L耐圧容器に、塩化ビニルモノマー99.95部、製造例2の片末端アクロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマー0.05部、α、α´―アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル0.07部、ステアリルアルコール1.4部を添加し、2分間ホモジナイズした後、ラウリル硫酸ナトリウム1.17部を予め溶解した水溶液300部を容器内に添加し、再度3分間ホモジナイズして、モノマー分散液を得た。5L反応容器にモノマー分散液を移送し、容器内を50℃に保温して重合を開始した。約6時間後に容器内の圧力が低下しはじめたことから、重合機内のモノマーを回収し、容器内を冷却した後、ラテックスを払い出した(塩化ビニルモノマーの転化率は約90%であった)。スプレー式乾燥機(入口110℃/出口50℃)でラテックスを乾燥し、塩化ビニル系重合樹脂粉体Eを得た。
得られた樹脂粉体Eの平均粒径、表面粗さ、粉体流動性を評価し、表3に示した。
(実施例12)
実施例11において、塩化ビニルモノマーを99部及び製造例2の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを1部とした以外は、実施例11と同様に重合、乾燥し、塩化ビニル系重合樹脂粉体Fを得た。
得られた樹脂粉体Fの平均粒径、表面粗さ、粉体流動性を評価し、表3に示した。
(比較例1)
実施例1において、塩化ビニルモノマーを100部使用し、製造例1の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様に重合、脱水、乾燥し、塩化ビニル系樹脂粉体Gを得た。
得られた樹脂粉体Gの平均粒径、嵩比重、表面粗さ、粉体流動性を評価し、表1に示した。実施例1及び2に比べ、表面粗さが大きく、嵩比重及び粉体流動性が低い。
(比較例2)
実施例1において、塩化ビニルモノマーを45部使用し、製造例1の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを55部とした以外は、実施例1と同様に重合を実施した。
重合の進行が遅く、塩化ビニルモノマーを回収した後、重合機の中を確認したところ、全体が凝集した状態となり、樹脂が得られなかった。
(比較例3)
実施例1において、塩化ビニルモノマーを99.98部使用し、製造例1の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを0.02部とした以外は、実施例1と同様に重合、脱水、乾燥し、塩化ビニル系樹脂粉体Pを得た。
得られた樹脂粉体Pの平均粒径、嵩比重、表面粗さ、粉体流動性を評価し、表1に示した。実施例1に比べ、表面粗さが大きく、嵩比重及び粉体流動性が低い。
(比較例4)
実施例6において、塩化ビニルモノマーを100部使用し、製造例1の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを使用しなかったこと以外は、実施例6と同様に重合、脱水、乾燥し、塩化ビニル系樹脂粉体Hを得た。
得られた樹脂粉体Hの平均粒径、嵩比重、表面粗さ、粉体流動性を評価し、表2に示した。実施例6及び7に比べ、表面粗さが大きく、嵩比重及び粉体流動性が低い。
(比較例5)
実施例6において、塩化ビニルモノマーを45部使用し、製造例2の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを55部としたこと以外は、実施例6と同様に重合を実施した。
重合の進行が遅く、塩化ビニルモノマーを回収した後、重合機の中を確認したところ、全体が凝集した状態となり、樹脂が得られなかった。
(比較例6)
実施例6において、塩化ビニルモノマーを99.98部使用し、製造例1の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを0.02部とした以外は、実施例6と同様に重合、脱水、乾燥し、塩化ビニル系樹脂粉体Qを得た。
得られた樹脂粉体Qの平均粒径、嵩比重、表面粗さ、粉体流動性を評価し、表2に示した。実施例5に比べ、表面粗さが大きく、嵩比重及び粉体流動性が低い。
(比較例7)
実施例11において、塩化ビニルモノマーを100部使用し、製造例2の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを使用しなかったこと以外は、実施例11と同様に重合、脱水、乾燥し、塩化ビニル系樹脂粉体Iを得た。
得られた樹脂粉体Iの平均粒径、表面粗さ、粉体流動性を評価し、表3に示した。嵩比重は、粒子径が小さすぎて有意差を検知できなかったため記載していない。実施例11及び12に比べ、表面粗さが大きく、粉体流動性が低い。
Figure 2005206793
Figure 2005206793
Figure 2005206793
粉体流動性評価の際に用いる漏斗

Claims (4)

  1. 塩化ビニル系モノマー(A)と、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマー(B)の組成比率(A/B)が99.95重量%/0.05重量%〜60重量%/40重量%であることを特徴とする塩化ビニル系重合樹脂。
  2. 二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーが重合性反応基を有し、該重合性反応基が、1分子あたり少なくとも1個、下記一般式
    −OC(O)C(R)=CH2 (1)
    (式中、Rは水素、又は、炭素数1〜20の有機基を表す。)
    を含む構造であることを特徴とする請求項1記載の塩化ビニル系重合樹脂。
  3. 塩化ビニル系モノマーと、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーを用い、水性媒体中で重合することを特徴とする、請求項1〜2の何れか1項に記載の塩化ビニル系重合樹脂の製造方法。
  4. 塩化ビニル系モノマーと、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマー、を用いた塩化ビニル系重合樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の塩化ビニル系重合樹脂組成物。
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