JP2005168136A - モータの制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】インバータを備えたモータの制御装置において、インバータを構成するスイッチング素子に設けられている還流ダイオードに起因する発熱を効果的に低減する技術を提供する。
【解決手段】モータの制御装置100は、モータ200に対応した相数のインバータ110を備え、インバータ110は、それぞれに還流素子が配設された双方向スイッチング素子を相数に応じて複数個備え、各双方向スイッチング素子121,122,123,131,132,133をオンオフ制御することにより、モータ200の2相間を通電する駆動信号を出力してモータ200を駆動し、モータ200の進角制御を行う場合には、各双方向スイッチング素子121,122,123,131,132,133がオン状態である位相期間につき、360度をモータ200の相数で除した位相期間よりも大きくなるように設定し、これによって還流素子1への通電規制を行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、インバータを備えたモータの制御装置の発熱対策に資する技術に関する。
従来より、インバータを備えたモータの制御装置を用いて多相モータを駆動する技術が知られている。一般的に、インバータは多相ブリッジ接続された複数のスイッチング素子を備えており、モータの制御装置は、各スイッチング素子をオン・オフ制御してモータの各相に位相をずらした信号を出力し、これによりモータの2相間を選択的に順次通電してモータを駆動する。
ところで、通電状態となった2相間に流れる相電流は、当該相に対応するスイッチング素子がオフ状態となっても、各相コイルのインダクタンス等の影響により流れ続けようとする。このため、一般的に、インバータを構成するスイッチング素子には、其々の出力側(例えばFETの場合、ドレイン・ソース間)に逆並列接続された還流ダイオードが設けられている。これにより、スイッチング素子がオフしても該スイッチング素子に流れ続けようとする相電流が存在する場合には、還流ダイオードを介してこれを還流させることでスイッチング素子を保護している。
このように構成されたモータの制御装置を用いてモータを駆動した場合の各種信号波形の一例を、図14のタイミングチャート図に示す。図14には、3相ブラシレスモータを3相インバータを備えたモータの制御装置を用いて120度通電方式で駆動する場合の、モータのロータ位置検出装置(例えば、ホールセンサ)による位置検出信号Ha,Hb,Hc、インバータの出力信号U,V,W、モータのU相誘起電圧Vu、U相端子電圧TEu、U相電流Iuの対応関係が示されている。このように、U相には、インバータの出力信号Uに伴い交番する波形のU相電流が流れる。そして、例えば、1サイクル中の期間A1,A2では、インバータ出力信号Uが0レベルになった瞬間(前述した、U相に対応するスイッチング素子がオフ状態になった瞬間)には、U相コイルのインダクタンス等の影響によりU相電流が流れ続けようとするが、U相に対応するスイッチング素子の還流ダイオードを介して還流されることで瞬時に解消されている。このようにして、U相電流は、図14に示すように、概ね、120度正方向通電、60度非通電、120度負方向通電、60度非通電を1サイクルとして繰り返すことが知られている。
ここでは、便宜上、U相のみに着目して説明したが、V相、及びW相についてもU相と同様であり、U相、V相、W相に発生する相電流は互いに120度ずつ位相がずれている。
一方、特開平7−184384号公報に開示されているように、モータの制御装置は、インバータからモータの各相に出力する信号の出力タイミングを、各相の位置検出信号よりも所定期間ずつ早くして、モータのインダクタンスによる各相電流の遅れを補償する進角制御を行う場合がある(特許文献1参照)。進角制御は、モータを等価弱め界磁制御する場合にも用いられることが知られている。
このように、モータを進角制御(進角45度)した場合のモータの制御装置とモータの各種信号波形の一例を、図15のタイミングチャート図に示す。図15では、進角制御に起因し、図14に示した進角制御をしていない場合と比較して、モータのU相誘起電圧Vuとインバータ出力電圧Uの位相差が大きくなることで、モータのU相誘起電圧Vuとインバータ出力電圧Uの電位差が大きくなり、1サイクル中概ね全ての期間で両者に電位差が生じている(U相端子電圧TEuの波形を参照)。このため、U相に対応するインバータのスイッチング素子がオフであっても、U相電流は1サイクル中(0度〜360度)概ね全ての期間で流れ続け、なおかつ進角制御をしていない場合と比較して電流値が大きい。
この現象は、V相、W相に関しても同様であり、したがって、進角制御をしていない場合と比較して、還流ダイオードを介して電流が流れている期間が長くなる傾向にあることが知られている。例えば、図15に示す期間B1では、インバータ出力信号Uは0レベルであり、U相に対応するスイッチング素子はオフしているが、U相負方向電流が所定のスイッチング素子の還流ダイオードを介して流れている。また、期間B2では、インバータ出力信号Uは0レベルであり、U相に対応するスイッチング素子はオフしているが、U相正方向電流が所定のスイッチング素子の還流ダイオードを介して流れている。
特開平7−184384号公報
前記した還流ダイオードは電流が流れることで発熱し易く、このため、還流ダイオードが設けられたスイッチング素子に放熱フィン等が取り付けられて発熱対策が施されている。しかしながら、特に進角制御をしている場合には各還流ダイオードに電流が流れる期間が長く電流値も大きいことから、スイッチング素子への影響、ひいてはモータの制御装置の高温化等種々の問題点が生じていた。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、インバータを備えたモータの制御装置において、インバータを構成するスイッチング素子に設けられている還流ダイオードに起因する発熱を効果的に低減する技術を提供することを目的とする。
上記課題を達成するため、各請求項記載の発明が構成される。
請求項1に記載の発明によれば、所定相数モータに対応した相数のインバータを備えたモータの制御装置が構成される。該インバータは、それぞれに還流素子が配設された双方向スイッチング素子を相数に応じて複数個備えている。モータの制御装置は、各双方向スイッチング素子をオンオフ制御することによりモータの2相間を通電する駆動信号を出力して当該モータを駆動する。
「所定相数モータ」としては、インバータで駆動されるとともに、後述するように進角制御が可能なモータを広く包含する。例えば、3相インバータで駆動される3相ブラシレスモータが好適に包含される。
「所定相数モータに対応した相数のインバータ」とは、典型的には、モータと同一相数のインバータとして構成され、一般的に当該相数と同数のスイッチング素子が、上アーム、及び下アームにそれぞれ配設されるとともにブリッジ接続されている。然るに、当該相数の2倍の個数のスイッチング素子が設けられている。
このようにインバータを構成するスイッチング素子としては、ドレインからソース、及びソースからドレインの双方向に導通可能なFET等の「双方向スイッチング素子」が好適に用いられるが、双方向に通電可能なスイッチング素子であれば足りる。中でも、パワーMOSFETは高速スイッチングを行うために好適な素子であることが知られている。また、各双方向スイッチング素子に配設されている「還流素子」としては、例えば、前記したFETの場合には、ドレイン・ソース間に逆並列接続された寄生ダイオードが用いられる。勿論、ドレイン・ソース間に外付けの還流ダイオードを配設する場合も包含される。このような還流素子は、一般的に、スイッチング素子のドレイン・ソース間よりも内部抵抗が大きく、電流が流れると比較的発熱し易い特徴を有している。
このような構成のインバータの各双方向スイッチング素子をオンオフ制御することで、モータの所定相数のうちの2相間を通電する「駆動信号」を出力する。「駆動信号」は、典型的には、インバータの出力信号としてモータの各相に出力される交番信号を示す。例えば、u相、v相、w相を有する3相モータの各相に出力される駆動信号としては、互いに120度ずつ位相がずれた交番信号が出力される。これにより、u相→v相、u相→w相、v相→w相、v相→u相、w相→u相、w相→v相を1サイクルとして各2相間を順次通電する。このように、3相モータの2相間を順次通電してモータを駆動する方法として120度通電方式が多用されている。120度通電方式では、各相に出力される駆動信号は、120度正方向通電、60度非通電、120度負方向通電、60度非通電を繰り返す。このような駆動信号が出力され、モータの各相には各相のコイルによる誘起電圧が発生し、しいては相電流が流れる。前述した「還流素子」は、モータの各相に対応する双方向スイッチング素子がオフ状態となっても、モータの当該相に設けられているコイルのインダクタンス等の影響で流れ続けようとする相電流を還流させ、双方向スイッチング素子を保護する。
ところで、上記したように、インバータを用いて所定相数のモータを駆動し、なおかつモータを進角制御する場合、前記した還流素子へ流れる電流に起因して種々の不都合が生じることがある。従来の技術に記載したように、進角制御を行うと、進角制御を行わない場合と比較して、前記した還流素子に流れる相電流の電流値が大きくなるとともに流れている期間が長くなることが知られている。そして、還流素子は、流れる電流値が大きいほど、また流れている期間が長くなるほど(すなわち、流れる電流量が多くなるほど)発熱し易く、還流素子が発熱することでスイッチング素子が高温化する傾向にある。このように、電子部品が高温化することは機器の信頼性の低下の一因となり得る。
そこで、請求項1に記載の発明によれば、所定相数のモータを進角制御する場合には、各双方向スイッチング素子がオン状態である位相期間を、360度を前記相数で除した位相期間よりも大きくなるように設定する。
ここで「位相期間」とは、インバータからモータに出力される各相駆動信号の1サイクルを0度〜360度とする電気角における期間(度)を示す。
従来は、「各双方向スイッチング素子がオン状態である位相期間」は、360度をモータの相数で除した位相期間であり、例えば、3相モータを前述した120度通電方式で駆動する場合には、各双方向スイッチング素子を120度の位相期間選択的にオン状態とし、各相へのインバータ出力信号としては、120度正方向通電、60度非通電、120度負方向通電、60度非通電を繰り返す信号を出力していた。インバータ出力信号において60度非通電の期間は、当該相に対応するスイッチング素子がオフ状態の場合であり、従来の技術に記載したように、進角制御を行うと、特にこの期間に当該相に対応するスイッチング素子の還流ダイオードを介して相電流が流れ易い。本発明のモータの制御装置によれば、各双方向スイッチング素子がオン状態である位相期間は、360度を前記相数で除した位相期間よりも大きく設定されるので、当該還流素子が配設されている双方向スイッチング素子のオン状態が所定期間継続されることで、従来は還流素子を流れていた相電流が、内部抵抗値の低いオン状態のスイッチング素子を逆方向に流れる。これにより、還流ダイオードに流れていた電流を低減させ、しいては還流ダイオードの発熱を低減させることができる。
このオン状態を継続する位相期間は、本発明においては存在すればよく、結果的に各スイッチング素子が360度を前記相数で除した位相期間よりも長い時間オン状態を継続していれば足りる。すなわち、例えば、前述した120度通電方式の場合には、非通電期間の60度内で所定期間オン状態が継続されていればよい。
本発明により、各相電流が還流素子を流れる期間を減少させ、還流素子の発熱量を低減させることが可能となった。従来は、還流素子の発熱対策として、例えば、還流素子が設けられたスイッチング素子に放熱フィン等が配設されていた。しかしながら、放熱フィンが配設されても熱はインバータ近傍に籠りがちであり、然るに電子部品が高温化して機器の信頼性の低下の一因となる可能性があった。さらには、放熱フィンが配設されることにより部品配設に必要な実装面積が広くなり、しいては、モータの制御装置の小型化が困難となる傾向にあった。そこで、本発明によれば、上記したように還流素子の発熱を低減させ、電子部品の発熱を防止して信頼性を高め、さらには、放熱フィンが不要もしくは小型化が可能な状態となることで部品配設に必要な実装面積が小さくなり、モータの制御装置の小型化が可能となった。
(請求項2に記載の発明)
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載のモータの制御装置は、さらにオンタイミング設定手段を有している。
オンタイミング設定手段は、前記したインバータの各双方向スイッチング素子を、通常進角制御を行っている場合にオン状態とするタイミングよりも、所定の遅延時間だけ遅らせたタイミングでオン状態とする。
ここで、「オン状態とするタイミング」とは、オフ状態からオン状態に切り替わる時、すなわちオン状態が開始される時を示す。また、「遅延時間」は、前記した位相期間で設定されている場合、時間で設定されている場合等を好適に包含する。
モータの制御装置は、典型的には、CPUと、モータ制御プログラムが予め記憶されたROM等の記憶手段とを備えていて、CPUは記憶手段からモータ制御プログラムを読み出してモータの制御を実行する。本発明では、この制御プログラムに、各双方向スイッチング素子をオン状態にするタイミングに所定の遅延時間を設けるステップを備えていて、典型的には、このプログラムのステップが本発明のオンタイミング設定手段に対応する。
一般的に、スイッチング素子がブリッジ接続された所定相数のインバータでは、上アームのスイッチング素子と、該上アームスイッチング素子に接続されている下アームのスイッチング素子は、同時にオン状態となることがないようにオンオフ制御されている。本発明のように、各スイッチング素子において、360度をモータ及びインバータの相数で除した位相期間よりも長い期間オン状態が継続される場合にも、上アームのスイッチング素子と下アームのスイッチング素子が、瞬間的にでも同時にオン状態となり短絡が生じる可能性を回避する必要がある。
そこで、本発明のモータの制御装置では、オン状態を継続した上アームもしくは下アームのスイッチング素子が、確実にオフ状態となってから他方のスイッチング素子がオン状態となるように、オンタイミング設定手段を用いて各双方向スイッチング素子をオン状態とするタイミングに所定の遅延時間を設けている。所定の遅延時間とは、前述したよう短絡の発生を防止できる微小な時間でも足りる。これにより、インバータを構成する各スイッチング素子に短絡が発生する可能性を回避することができる。
(請求項3に記載の発明)
請求項3に記載の発明によれば、請求項1、2に記載のモータの制御装置は、さらにモータのロータ位置検出装置と、オフタイミング設定手段を有している。
オフタイミング設定手段は、前記ロータ位置検出装置から出力されるロータの位置検出信号に基づいて、前記したインバータの各双方向スイッチング素子をオフ状態とするタイミングを設定する。
「モータのロータ位置検出装置」とは、モータのロータ位置検出装置から出力される位置検出信号に基づいて、モータの制御装置が、前述したインバータを制御可能な信号を出力できる装置であればよく、典型的には、ブラシレスモータのホールセンサ等これに対応する。
典型的には、前述したモータの制御装置に記憶されているモータ制御プログラムに、位置検出信号を受信したら所定時間経過後にスイッチング素子をオフ状態とするステップを備えていて、このプログラムのステップが本発明のオフタイミング設定手段に対応する。
このようなオフタイミング設定手段により、オン状態を継続した上アームもしくは下アームのスイッチング素子が確実にオフ状態となってから他方のスイッチング素子をオン状態とすることで、請求項2に記載の発明と同様の効果を帰し、インバータを構成する各スイッチング素子に短絡が発生する可能性を回避することができる。
本発明によれば、インバータを備えたモータの制御装置において、インバータを構成するスイッチング素子に設けられている還流ダイオードに起因する発熱を効果的に低減する技術を提供されることとなった。
以下に、本発明を実施するための最良の形態の一例につき、図面を参照しつつ説明する。本実施の形態では、本発明の一例として3相ブラシレスモータを進角制御するモータの制御装置について説明する。
まず、3相ブラシレスモータ200と本発明のモータの制御装置100の構成が図1のブロック図に模式的に示される。また、該モータの制御装置100が備えている3相インバータ110を構成するNチャネルパワーMOSFET121〜123,131〜133の概略構成と、各FETの通電状態に対応する回路図が図2〜図9に示される。そして、該モータ200とモータの制御装置100の、位置検出信号Ha,Hb,Hc、インバータの出力信号U,V,W、モータのU相誘起電圧Vu、U相端子電圧、U相電流Iuの対応関係を示すタイミングチャート図が図10に示される。
まず、図1を用いて、本実施の形態の3相ブラシレスモータ200と、該モータを駆動制御するモータの制御装置100の構成を説明する。
3相ブラシレスモータ200には、Y結線されたU相巻線(界磁コイル)211、V相巻線212、W相巻線213が設けられたステータ210と、ステータ210の中空部に配置され永久磁石で構成されたロータ220が設けられている。
ステータ210には、位置検出装置231,232,233が、ロータ220の側面に近接しつつ互いに120度ずつずれた位置に配置されている。位置検出装置231,232,233はホールセンサを用いて構成され、ロータ220の回転位置を検出して、モータの制御装置100の制御部140に、位置検出信号Ha,Hb,Hcを出力する。これらの位置検出信号Ha,Hb,Hcは、U相コイル211、V相コイル212、W相コイル213のうち通電する2相を切り替えるタイミングを決定するのに、後述するモータの制御装置100で用いられる。
このようなモータ200を駆動制御するモータの制御装置100には、3相インバータ110、電源部150、制御部140が設けられている。
3相インバータ110は、上アーム120、下アーム130にそれぞれ3個ずつのパワーMOSFET121〜123、131〜133を備えており、各FET121〜123、131〜133は3相ブリッジ接続されている。上アーム120の各FETのドレイン側コモンは電源部150に接続され、下アーム130の各FETのソース側コモンは接地されている。
また、各FET121〜123,131〜133には、還流ダイオード121a〜123a,131a〜133aがドレイン・ソース間に逆並列接続されている。
このFET121〜123,131〜133が本発明の「双方向スイッチング素子」に対応する要素である。
制御部140は、特に図示していないが、CPU、及びモータ制御プログラムが予め記憶されているROM等の記憶手段を備えている。そして、制御部140は、記憶手段から読み出したモータ制御プログラムに基づいて3相インバータ110の各FETをオン・オフ制御する。これにより、インバータ110は、モータ200に、モータ200を駆動するインバータ出力信号U,V,Wを出力する。
このインバータ出力信号U,V,Wが本発明の「駆動信号」に対応する要素である。
次に、引き続き図1を用いて、モータの制御装置100を用いたモータ200の一般的な駆動方法について詳細を説明する。
制御部140は、インバータ110の上アーム120のFET121〜123のいずれか、及び下アーム130のFET131〜133のいずれかを選択的にオン状態にし、これに対応するモータ200の2相(U,V,W相のうちの2相)間を通電する。制御部140は、オン状態にするFET121〜123,131〜133を順次切り替えてモータ200の通電する2相を順次切り替える。
具体的には、以下の(1)〜(6)までの状態が順次切り替えられる。
状態(1)FET121、FET132をオン状態にしてU相→V相通電
状態(2)FET121、FET133をオン状態にしてU相→W相通電
状態(3)FET122、FET133をオン状態にしてV相→W相通電
状態(4)FET122、FET131をオン状態にしてV相→U相通電
状態(5)FET123、FET131をオン状態にしてW相→U相通電
状態(6)FET123、FET132をオン状態にしてW相→V相通電
上記した状態(1)〜(6)を繰り返すことで、モータ200のステータ210に回転磁界を発生させ、これにより永久磁石で構成されているロータ220を回転させる。
ここで、このように選択的にオン状態にされるFETの概略構成と、オン状態時やオフ状態時での通電態様を、図2〜図9を参照しつつ説明する。以下では、FET121について説明し、他のFETについては、FET121の場合と同様であるので、説明及び図示を省略する。
まず、FET121がオフ状態の場合の回路図を図2に、概略構成図を図3に示す。ここでは、FET121のゲート・ソース間にゲート電圧が印加されておらず、FET121はオフ状態となっている。ところで、図2、図3に示すように、FET121のドレイン・ソース間に逆並列接続されている還流ダイオード121aは、FET121のドレイン・ソース間に形成されている半導体のPN接合による寄生ダイオードとして構成されている。
次に、FET121が正方向導通状態の場合の回路図を図4に、概略構成図を図5に示す。正方向導通状態では、FET121のゲート・ソース間にゲート電圧が印加されFET121はオン状態となっている。そして、ドレイン・ソース間には正方向電圧が印加され(ドレイン側にプラス、ソース側にマイナス)、図5に示すように、ゲート電極下に配置されたゲート酸化膜Gsが当接するP層にチャネル層が形成されてドレイン→ソース方向に電流が流れている。
次に、FET121に逆並列接続された還流ダイオード121aに電流が流れている状態の回路図を図6に、概略構成図を図7に示す。還流ダイオード導通状態では、FET121のゲート・ソース間にゲート電圧が印加されておらず、FET121はオフ状態となっている。そして、ドレイン・ソース間には逆方向電圧が印加され(ドレイン側にマイナス、ソース側にプラス)ているので、還流ダイオード121aに電流が流れている。
次に、FET121が逆方向導通状態の場合の回路図を図8に、概略構成図を図9に示す。逆方向導通状態では、FET121のゲート・ソース間にゲート電圧が印加されFET121はオン状態となっている。そして、ドレイン・ソース間には逆方向電圧が印加され、図9に示すように、ゲート酸化膜Gsが当接するP層にチャネル層が形成されてソース→ドレイン方向に電流が流れている。
次に、前述した、図1に示したモータの制御装置100の構成と、図2〜図9に示したFET121〜123、131〜133のオン・オフ状態を示す回路図と概略構成図を参照しつつ、モータ200に進角制御を行っている場合の各種信号波形を、図10を用いて説明する。図10には、位置検出信号Ha,Hb,Hc、インバータ110の出力信号U,V,W、モータ200のU相誘起電圧Vu、U相端子電圧TEu、U相電流Iuの対応関係を示すタイミングチャート図が示されている。
図10に示すように、位置検出信号Haの立ち上がりを電気角0度(t0)とし、位相が1サイクルするまでの期間を電気角360度(t6)とすれば、位置検出信号Haは電気角0度(t0)〜180度(t3)の期間ハイレベルとなっている。位置検出信号Hbは位置検出信号Haから120度位相が遅れた信号、位置検出信号Hcは位置検出信号Hbからさらに120度位相が遅れた信号となっている。このようにして、位置検出装置からは、120度ずつ位相がずれ、なおかつ180度ずつハイレベルを出力する位置検出信号Ha,Hb,Hcが出力される。モータの制御装置100の制御部140は、この位相検出信号Ha,Hb,Hcに基づいて、各FET121〜123,131〜133をオン状態とするタイミングを決定し、インバータ110からモータ200にインバータ出力信号U,V,Wを出力する。
進角を45度とする場合、位置検出信号Haの立ち上がりよりも45度早いタイミングでインバータ出力電圧Uが立ち上がるように設定される。そこで、t0〜t5よりもそれぞれ45度早いタイミングをs0〜s5とすると、s0〜s1ではFET121とFET132及びFET123が、s1〜s2ではFET121とFET133及びFET132が、s2〜s3ではFET122とFET133及びFET121が、s3〜s4ではFET122とFET131及びFET133が、s4〜s5ではFET123とFET131及びFET122が、s5〜s6ではFET123とFET132及びFET131がオン状態となっている。
これにより、インバータ110から図10に示すようなインバータ出力信号U,V,Wがモータ200のU相,V相,W相に出力される。
インバータ出力信号Uは、s0〜s3の180度間でプラス電圧、s3〜s6の180度間でマイナス電圧を1サイクルとして繰り返す交番信号として出力される。インバータ出力信号Vはインバータ出力信号Uと120度位相がずれた信号、インバータ出力信号Wはインバータ出力信号Vとさらに120度位相がずれた信号として出力される。
一般的に、進角制御を行う場合、位置検出信号Ha,Hb,Hcより早いタイミングでインバータ出力信号U,V,Wを変化させることとなるので、進角制御を行っていない状態よりもロータ220の回転が速くなり、モータ200の各コイル211,212,213に発生する誘起電圧波形の振幅が進角制御を行ってない場合よりも大きくなることが知られている。また、進角制御を行うので、各相コイルの誘起電圧波形と対応するインバータ出力信号の位相差が大きくなることにより、1サイクル中に両者に電位差が生じている期間が長くなることが知られている。
例えば、図10には、U相誘起電圧Vuの波形とインバータ出力信号Uの波形に基づくU相端子電圧TEuが示されているが、前述した図14に示す進角制御を行っていない場合と比較して、1サイクル中に両者に電位差が生じている期間が長く、その振幅の差も平均して大きい。これにより、図10に示すようなU相電流Iuが生じることとなり、このU相電流IuはU相にインバータ出力信号Uを出力するFET121,131がオフ状態であっても、常に通電状態となることが知られている。すなわち、進角制御をしていない場合のような非通電期間がないことが知られている。ここでは、U相の場合について説明したがV相、W相に関しても同様である。
この場合の、s0〜s6間のFETの状態を、FET121,131に着目して以下に説明する。
図10,11に示すように、U相電流Iuの波形は、s1とs2の間の時刻sXでプラス側からマイナス側に振れて方向が逆転している。また、s4とs5の間の時刻sYでマイナス側からプラス側に振れて方向が逆転している。
そこで、図11に示すように、本発明のモータの制御装置100では、s0〜sXでは、U相電流IuはU相がプラス側となって流れているとともにFET121はオン状態であるので、FET121のドレインからソースに電流が流れる。すなわち、図4、図5に示した正方向導通状態となっている。
また、sX〜s3では、図13に示すように、U相電流IuはU相がマイナス側となって流れているとともにFET121はオン状態であるので、FET121のソースからドレインに電流が流れる。すなわち、図8、図9に示す逆方向導通状態となっている。
また、s3〜s6では、FET121はオフ状態であるとともにFET121に接続されている下アームのFET131がオン状態であるので、U相電流IuはFET131の方に流れてFET121には流れない。すなわち、図2、図3に示したオフ状態となっている。
ここで、従来のモータの制御装置においては(併せて、図15参照)、sX〜s2では、本実施の形態と同様でありFET121は逆方向導通状態となっているが、s2〜s3では、図12に示すように、U相電流IuはU相がマイナス側となって流れているとともにFET121はオフ状態であるので、FET121の還流ダイオード121aに電流が流れていた。すなわち、図6、図7に示す還流ダイオード導通状態となっていた。
一方、FET131は、s0〜s3ではオフ状態であるとともにFET131に接続されている上アームのFET121がオン状態であるので、U相電流IuはFET121の方に流れてFET131には流れない。すなわち、図2、図3に示したオフ状態となっている。
また、s3〜sYでは、U相電流IuはU相がマイナス側となって流れているとともにFET131はオン状態であるので、FET131のドレインからソースに電流が流れる。すなわち、図4、図5に示した正方向導通状態となっている。
また、sY〜s6では、U相電流IuはU相がプラス側となって流れているとともにFET131はオン状態であるので、FET131のソースからドレインに電流が流れる。すなわち、図8、図9に示す逆方向導通状態となっている。
ここで、従来のモータの制御装置では(併せて、図15参照)sY〜s5では、本実施の形態と同様であり、FET131は逆方向導通状態となっているが、s5〜s6では、U相電流IuはU相がプラス側となって流れているとともにFET131はオフ状態であるので、FET131の還流ダイオード131aに電流が流れていた。すなわち、図6、図7に示す還流ダイオード導通状態となっていた。
ここでは、U相電流IuとFET121及びFET131に関して説明したが、V相電流IvとFET122及びFET132、W相電流IwとFET123及びFET133に関しても、互いに120度ずつ位相がずれているが同様の状態となっている。
然るに、再び図10を参照すれば、インバータ出力信号U,V,Wにより、s0〜s1では、前述した状態(1)(U相→V相通電)であるとともに、FET123のオン状態が継続されて前の期間のW相電流IwがFET123を逆方向に流れている。s1〜s2では、前述した状態(2)(U相→W相通電)であるとともに、FET132のオン状態が継続されて前の期間のV相電流IvがFET132を逆方向に流れている。s2〜s3では、前述した状態(3)(V相→W相通電)であるとともに、FET121のオン状態が継続されて前の期間のU相電流IuがFET121を逆方向に流れている。s3〜s4では、前述した状態(4)(V相→U相通電)であるとともに、FET133のオン状態が継続されて前の期間のW相電流IwがFET133を逆方向に流れている。s4〜s5では、前述した状態(5)(W相→U相通電)であるとともに、FET122のオン状態が継続されて前の期間のV相電流IvがFET122を逆方向に流れている。s5〜s6では、前述した状態(6)(W相→V相通電)であるとともに、FET131のオン状態が継続されて前の期間のU相電流IuがFET131を逆方向に流れている。この状態が繰り返される。
このように、各FET122〜123,131〜133がオン状態である期間を継続することで、各FETに設けられている還流ダイオードに電流が流れる期間を減少させ、各還流ダイオードの発熱を効果的に低減させることができる。本実施の形態では、各還流ダイオードは、各FET122〜123,131〜133の寄生素子として構成されているので、FETの発熱を低減させることができる。
ここで制御部140は、オン状態を継続した上アームもしくは下アームのスイッチング素子が、確実にオフ状態となってから他方のスイッチング素子がオン状態となるように各双方向スイッチング素子をオン状態とするタイミングに微少な遅延時間を設けている。すなわち、このような処理を行うステップを含むモータ制御プログラムが制御部140の記憶手段(図示省略)に予め記憶されていて、制御部140のCPU(図示省略)は該記憶手段から制御プログラムを読み出してモータの制御を実行する。
このモータ制御プログラムのステップが、本発明の「オンタイミング設定手段」に対応する要素である。
これにより、例えば、図10に示すs3で、FET121が確実にオフ状態となってからFET131をオン状態とすることができる。そして、上アームのスイッチング素子と下アームのスイッチング素子が同時にオン状態となることで、短絡が発生する可能性を回避できる。
また、制御部140は、オン状態を継続した上アームもしくは下アームのスイッチング素子が、確実にオフ状態となってから他方のスイッチング素子がオン状態となるように、位置検出信号Ha,Hb,Hcに基づいて各スイッチング素子をオフ状態としてもよい。すなわち、このような処理を行うステップを含むモータ制御プログラムが制御部140の記憶手段(図示省略)に予め記憶されていて、制御部140のCPU(図示省略)は該記憶手段から制御プログラムを読み出してモータの制御を実行する。
このモータ制御プログラムのステップが、本発明の「オフタイミング設定手段」に対応する要素である。
これにより、モータ制御装置100は、上記した「オンタイミング設定手段」を備える場合と同様の効果を奏する。
また、「オンタイミング設定手段」と「オフタイミング設定手段」は、両方が設けられていてもよいし、片方でもよい。また、必要がない場合には設けられていなくても良い。「オンタイミング設定手段」と「オフタイミング設定手段」が両方が設けられていれば、確実にスイッチング素子の短絡が発生する可能性を回避できる。
本実施の形態では、モータ200に進角制御を行う場合について説明したが、同じモータを、進角制御を行わない場合には、FETをオン状態とする位相期間を360度をモータの相数で除した位相期間(すなわち、3相モータであれば120度)として駆動制御し、進角制御を行う場合には、FETをオン状態とする位相期間を360度をモータの相数で除した位相期間よりも大きくなるように駆動制御してもよい。
また、本実施の形態では、モータ200の正転の場合について説明したが、モータ200の逆転の場合についても同様にして各FETに設けられている還流ダイオードに電流が流れる期間を減少させ、各還流ダイオードの発熱を効果的に低減させることができる。
さらに本発明の趣旨に鑑み、以下の態様を構成することができる。
(態様1)
「3相ブラシレスモータに対応した3相インバータを備え、前記インバータは、それぞれに還流素子が配設された双方向スイッチング素子を6個備え、各双方向スイッチング素子をオンオフ制御することにより、前記モータの2相間を通電する駆動信号を出力して当該モータを駆動するモータの制御装置を備えた電動工具であって、
前記モータの制御装置は、前記モータの進角制御を行う場合に、前記双方向スイッチング素子がオン状態である位相期間につき、120度よりも大きくなるように設定し、これによって前記還流素子への通電規制を行うことを特徴とする電動工具。」
この態様によれば、電動工具に用いるモータの制御装置につき、請求項1と同様の効果を奏する。特に、本発明は、進角制御により弱め界磁を行いつつネジを締め付けるドライバ等に好適に用いられる。電動工具では一般的に本体の小型化が試みられていて、本体が小さい場合には特に、内部の部品が発した熱が内部に篭もり易く、これにより電動工具自体が熱くなると作業に支障をきたす可能性がある。この態様により、電動工具に発熱対策を講じることができ、発熱する部品に取り付けられていた放熱フィン等が不要になれば、ないしは小型化できれば、さらに電動工具本体を小型化することも可能となる。
本実施の形態に係るモータの制御装置100を用いてモータ200の駆動制御を行った場合のブロック図を示す。 モータの制御装置100が備えているインバータ110が有するFETがオフ状態での回路図を示す。 FETがオフ状態での該FETの概略構成図を示す。 FETが正方向導通状態での回路図を示す。 FETが正方向導通状態での該FETの概略構成図を示す。 FETの還流ダイオードが導通している状態での回路図を示す。 FETの還流ダイオードが導通している状態での該FETの概略構成図を示す。 FETが逆方向導通状態での回路図を示す。 FETが逆方向導通状態での該FETの概略構成図を示す。 モータの制御装置100を用いてモータ200に進角制御を行った場合の各信号波形のタイミングチャート図を示す。 U相電流Iuに対応させた、FET121,131の通電態様を示す。 従来のモータの制御装置を用い、FET121が還流ダイオード導通状態である時の通電状態を記載したブロック図を示す。 本発明のモータの制御装置100を用い、FET121がオン状態を継続している時の通電状態を記載したブロック図を示す。 従来のモータの制御装置を用いてモータ200に進角制御を行わず駆動制御している場合の各信号波形のタイミングチャート図を示す。 従来のモータの制御装置を用いてモータ200に進角制御を行っている場合の各信号波形のタイミングチャート図を示す。
符号の説明
100 モータ制御装置
110 インバータ
120 上アーム
121,122,123,131,132,133 FET
121a,122a,123a,131a,132a,133a, 還流ダイオード
130 下アーム
140 制御部
150 電源部
200 モータ
211 U相コイル
212 V相コイル
213 W相コイル
231,232,233 位置検出装置
Ha,Hb,Hc 位相検出信号
Iu U相電流
Iv V相電流
Iw W相電流
U,V,W インバータ出力信号
Vu U相誘起電圧

Claims (3)

  1. 所定相数モータに対応した相数のインバータを備え、前記インバータは、それぞれに還流素子が配設された双方向スイッチング素子を前記相数に応じて複数個備え、前記各双方向スイッチング素子をオンオフ制御することにより、前記モータの2相間を通電する駆動信号を出力して当該モータを駆動するモータの制御装置であって、
    前記モータの進角制御を行う場合に、前記各双方向スイッチング素子がオン状態である位相期間につき、360度を前記相数で除した位相期間よりも大きくなるように設定し、これによって前記還流素子への通電規制を行うことを特徴とするモータの制御装置
  2. 請求項1に記載のモータの制御装置であって、
    前記インバータの各双方向スイッチング素子をオン状態とするタイミングに所定の遅延時間を設けるオンタイミング設定手段を有すること特徴とするモータの制御装置。
  3. 請求項1または2に記載のモータの制御装置であって、
    前記モータのロータ位置検装置を備え、前記ロータ位置検出装置から出力される位置検出信号に基づいて当該モータを制御するモータの制御装置であって、
    前記位置検出信号に基づいて、前記インバータの各双方向スイッチング素子をオフ状態とするタイミングを設定するオフタイミング設定手段を有することを特徴とするモータの制御装置。
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