JP2005142508A - 磁気記憶素子及び磁気メモリ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 記憶層3の複数層の磁性層16,18,20,22,24,26の間に90°反強磁性結合を誘導するように、記憶層3の磁性層16,18,20,22,24,26を隔てる各非磁性層17,19,21,23,25の膜厚か、或いは記憶層の各磁性層の膜厚か、いずれかの膜厚が変調されている磁気記憶素子1を構成する。また、この磁気記憶素子1と、それぞれ交差する第1の配線と第2の配線とを有し、第1の配線及び第2の配線とが交差する交点付近に、それぞれ磁気記憶素子1が配置されて成る磁気メモリを構成する。
【選択図】 図1
Description
しかし、DRAMは電源を切ると情報が消えてしまう揮発性メモリであるため、情報が消えない不揮発のメモリが望まれている。
特に、不揮発性メモリは、機器の高機能化に必要不可欠な部品と考えられている。
例えば、電源の消耗やトラブル、サーバーとネットワークが何らかの障害により切断された場合でも、不揮発性メモリはシステムや個人の重要な情報を保護することができる。
また、最近の携帯機器は、不要の回路ブロックをスタンバイ状態にしてできるだけ消費電力を抑えるように設計されているが、高速のワークメモリと大容量ストレージメモリを兼ねることができる不揮発性メモリを実現することができれば、消費電力とメモリの無駄を無くすことができる。
さらに、高速の大容量不揮発性メモリが実現できれば、電源を入れると瞬時に起動できる“インスタント・オン”機能も可能になってくる。
しかしながら、フラッシュメモリは、書き込み速度がμ秒のオーダーと遅いため、高速なアクセスに向かないという欠点がある。
一方、FRAMにおいては、書き換え可能回数が1012〜1014と有限であるため、完全にSRAMやDRAMを置き換えるには耐久性が小さく、また強誘電体キャパシタの微細加工が難しいという問題が指摘されている。
しかし、これらの構成では、負荷のメモリセル抵抗が10〜100Ωと低いため、読み出し時のビット当たりの消費電力が大きく大容量化が難しいという欠点があった。
当初は、室温における抵抗変化率が1〜2%しかなかったが(非特許文献4参照)、近年では20%近くの抵抗変化率が得られるようになり(非特許文献5参照)、TMR効果を利用したMRAMに注目が集まるようになってきている。
アステロイド特性を利用した方法は、選択性が各記憶素子の保磁力特性に依存するために、素子の寸法や磁気特性のばらつきに弱いという欠点があった。
これに対して、スイッチング特性を利用した方法は、素子選択に使える磁界範囲が広いので、素子ごとの特性ばらつきが多少あっても、大規模なメモリを実現しやすい、という利点がある。
メモリセルに記録された情報を読み出すために、メモリセルを電気的に選択するためには、ダイオードまたはMOSトランジスタ等を用いることができるが、図7に示す構成はMOSトランジスタを用いている。
第1の磁化固定層112及び第2の磁化固定層114の2層の磁性層は、非磁性層113を介して配置されていることにより、反強磁性結合している。さらに、第1の磁化固定層112は、反強磁性層111と接して配置されており、これらの層間に働く交換相互作用によって、強い一方向の磁気異方性を有する。そして、これら4層111,112,113,114により固定層102が構成される。
第1の記憶層116及び第2の記憶層118の2層の磁性層は、非磁性層117を介して配置されていることにより、反強磁性結合している。これら第1の記憶層116及び第2の記憶層118は、それぞれの磁化M1,M2の向きが比較的容易に回転するように構成される。そして、これら3層116,117,118により記憶層(自由層)103が構成される。
第2の磁化固定層114と第1の記憶層116との間、即ち固定層102と記憶層(自由層)103との間には、トンネル絶縁層115が形成されている。このトンネル絶縁層115は、上下の磁性層116及び114の磁気的結合を切るとともに、トンネル電流を流す役割を担う。これにより、磁性層の磁化の向きが固定された固定層102と、トンネル絶縁層115と、磁化の向きを変化させることが可能な記憶層(自由層)103とにより、TMR(Tunneling Magnetoresistance )素子が構成されている。
そして、上述の各層111〜118と、下地膜110及びトップコート膜119により、TMR素子から成る磁気記憶素子101が構成されている。
磁気記憶素子101のトップコート膜119は、その上のビット線(BL)106に接続されている。また、磁気記憶素子101の下方には絶縁膜を介して、書き込みワード線(WL)105が配置されている。
通常、第1の磁化固定層112と第2の磁化固定層114とは、飽和磁化膜厚積が等しい構成とされるため、磁極磁界の漏洩成分は無視できるくらい小さい。
磁気記憶素子101は、平面形状が楕円形状であり、楕円の長軸方向に磁化容易軸60があり、楕円の短軸方向に磁化困難軸61があり、これら磁化容易軸60と磁化困難軸61とが直交している。
また、ビット線106及びワード線105は、格子状に配置され、両者のなす角度αは一定(図8ではほぼ直交している)である。磁気記憶素子101は、その磁化容易軸60がワード線105に対して傾斜角度θ(0<θ<90°)を有するように、ワード線105及びビット線106の交点に配置されている。
そして、電流磁界Hb,Hwの印加によって、第1の記憶層116の磁化M1の向き及び第2の記憶層118の磁化M2の向きを変えることにより、記憶層103に情報(例えば、情報”1”又は情報”0”)を記録することができる。
また、記録された情報の読み出しは、磁気抵抗効果によるトンネル電流の変化を検出して行うことができる。
第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2の合成磁化Mの大きさは、外部磁界の大きさによって顕著に変化する。
最初のしきい値はスピンフロッピング磁界Hsfである。外部磁界Hがこのスピンフロッピング磁界Hsf以下ならば、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2が、常に反平行状態(↑↓)を保つ。
外部磁界HがHsfを超えると、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2が、交差磁化状態をとって外部磁界Hに拮抗する。ただし、二つの磁化M1,M2がなす角度は180度以下である。この状態から外部磁界Hを取り去れば、最初の反平行状態に戻ることが多い。
次のしきい値は飽和磁界Hsatである。外部磁界Hが飽和磁界Hsatを超えると、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2は平行状態(↑↑)となる。一旦、飽和磁界Hsat以上の外部磁界Hを印加してしまうと、記憶層103は最初の反平行状態の記憶を忘却するので、外部磁界を取り去っても最初の磁化状態に戻るとは限らない。
外部磁界Hを印加することにより、図9に示したように、記憶層103の第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2の向きが変化するが、外部磁界Hを印加する前の状態と、外部磁界Hを取り去った後の状態との関係により、3種類の動作に大別することができる。
また、外部磁界Hの印加の前の状態と、外部磁界Hを取り去った後の状態とで、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2の向きが同じ向きになる(2つの磁化M1,M2の向きが入れ替わらない)動作がある。以下、このような動作を、No switching動作と呼ぶ。
さらにまた、外部磁界Hの印加の前の状態に係わらず、外部磁界Hを取り去った後の状態では、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2が、それぞれ決まった向きに変化する動作がある。この動作では、外部磁界Hを印加している間に、2層の磁化M1,M2が同じ向き(平行)になってしまい、外部磁界Hを印加する前の反平行状態の記憶が失われるため、外部磁界Hを除去した後の状態では、2層の磁化M1,M2が一方通行な磁化回転をして、ある決まった向きに変化する。以下、このような動作を、Direct動作と呼ぶ。
図10では、1ビットの記録を行うサイクルにおいて、時間原点を時刻T0として、時刻T1,T2,T3,T4と時刻が経過して、最後に定常状態に戻るまでの磁化M1,M2の向き及びTMR素子の電気抵抗Rの変化を示している。以下、他の動作の場合の図でも同様である。
このように電流パルスに時間差を設けることにより、各電流磁界Hw,Hbの合成磁界を回転磁界として、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2の向きを回転させることができる。
TMR素子の電気抵抗Rは、第1の記憶層116の磁化M1と第2の磁化固定層114の磁化M12の向きが等しい場合に、低抵抗(これを例えば情報”0”とする)となり、第1の記憶層116の磁化M1と第2の磁化固定層114の磁化M12の向きが反平行である場合に、高抵抗(これを例えば情報”1”とする)となる。
時刻T1から時刻T2までの間に、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2とがなす角度が180度以下になる。
時刻T2から時刻T3までの間には、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2とがなす角度が鋭角(90度以下)になる。
時刻T3以降で第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2とがスピンフロップし、時刻T4を過ぎて再び反平行状態に戻る。このとき、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2は、それぞれ初期状態に対して向きが逆転している。
この例では、ワード線電流Iwのパルスを図10とは逆の向きにしている。ビット線電流Ibのパルスは図10と同じである。
このように電流パルスに時間差を設けることにより、各電流磁界Hw,Hbの合成磁界を回転磁界として、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2の向きを回転させることができる。
時刻T1から時刻T2までの間に、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2とがなす角度が180度以下になる。
この場合は、時刻T2から時刻T3までの間で、ワード線電流磁界Hw及びビット線電流磁界Hbにより形成される回転磁界の向きが、磁気記憶素子101の磁化容易軸の方向(正方向または負方向のいずれか)を向かないので、スピンフロッピングが起こらない。 その結果、時刻T4以降では、磁化状態は初期状態に対して変化しない。
図12に示す例では、電流パルスをいずれも図10と同じ向きにしている。一方、図13に示す例では、電流パルスをいずれも図10とは逆の向きにしている。
このように電流パルスに時間差を設けることにより、各電流磁界Hw,Hbの合成磁界を回転磁界として、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2の向きを回転させることができる。
時刻T1から時刻T2までの間に、スピンフロッピングが起こり、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2がなす角度は90度以下になる。
時刻T2から時刻T3までの間に、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2の向きが、ほぼ同じ向きに揃ってしまい、ワード線電流磁界Hw及びビット線電流磁界Hbにより形成される回転磁界の向きとほぼ等しくなる。
時刻T3以降では、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2が、スピンフロップして再び反平行状態に戻るが、その磁化状態は初期状態に依存しない。
一方、ビット線電流磁界Hb及びワード線電流磁界Hwの合成磁界が飽和磁界Hsatを超えたところは、Direct動作の領域82となることが多い。
そして、ビット線電流磁界Hb及びワード線電流磁界Hwの合成磁界がスピンフロッピング磁界Hsf以上飽和磁界Hsat未満であり、かつ、第一象限及び第三象限に属する範囲は、Toggle動作の領域80となることが期待できる。
一方、ワード線またはビット線を共有する選択されていないメモリセルが磁化反転するのを避けるには、非選択メモリセルへ印加される合成磁界が、No switching動作の領域81の範囲に含まれていることが必要である。
そして、これら2層以上の強磁性層が、各層間において、180°反強磁性結合又は静磁結合している。
飽和磁界は、図14に示したような磁化回転モード図におけるToggle動作の領域80の上限を決定し、スピンフロッピング磁界は、同じくToggle動作の領域80の下限を決定する。
従って、180°反強磁性結合を利用した磁気メモリは、Toggle動作の領域80即ち動作領域は広いが、電流パルスの波高値が大きくなる、という問題点がある。
従って、静磁結合を利用した磁気メモリは、電流パルスの波高値は低いが、動作領域が狭くなる、という問題がある。
磁化の向きを反転する動作を可能にする磁界の大きさの範囲は、下限がスピンフロッピングであり、上限が飽和磁界となるため、スピンフロッピング磁界が低減され、飽和磁界が増大されることにより、磁化の向きを反転する動作領域を上下にそれぞれ拡げることが可能になる。
このため、磁化の向きを反転する動作領域を上下にそれぞれ拡げることが可能になる。
そして、特に、磁気記憶素子が、記憶層の磁性層の間に90°反強磁性結合を誘導するように、記憶層の磁性層を隔てる各非磁性層の膜厚か、或いは記憶層の各磁性層の膜厚か、いずれかの膜厚が変調されている構成となっていることにより、前述したように、磁化の向きを反転する動作領域を上下にそれぞれ拡げることが可能になる。
そして、特に、磁気記憶素子が、記憶層の磁性層の間に90°反強磁性結合を誘導するように、各磁性層の磁化容易軸方向が少なくとも異なる2方向以上存在する構成となっていることにより、前述したように、磁化の向きを反転する動作領域を上下にそれぞれ拡げることが可能になる。
従って、磁気記憶素子の微細化を図った場合でも、高い歩留まりを得ることが可能になり、また書き込みエラーの低減を図って高い信頼性で情報の書き込み(記録)や読み出しを行うことができる。
これにより、磁気記憶素子の微細化によって高密度化を図り、磁気メモリの記憶容量の増大や磁気メモリの小型化を図ることが可能になる。
従って、本発明により、磁気メモリの微細化、高信頼化、大容量化、低消費電力化が容易になる。
反強磁性層11の下には、下地膜10が形成されている。この下地膜10は、上方に積層される層の結晶性を高める作用がある。
記憶層(自由層)3を構成する各非磁性層17,19,21,23,25には、ルテニウム、カッパー、タンタル等の非磁性材料やパラ磁性材料を用いることができる。
疑似周期関数は、例えばFibonacci数列等から求めることができる。
特に、180°反強磁性結合(bilinear 結合)の平均が零であり分散が大きい場合に、記憶層3の磁性層16,18,20,22,24,26の磁化M1,M2,M3,M4,M5,M6がエネルギー的に交差磁化状態をとりやすくなる。
このような結合のしかたを90°反強磁性結合(biquadratic 結合)という。
従って、スピンフロッピング磁界Hsf及び飽和磁界Hsatをそれぞれ下限と上限とする、記憶層3の磁性層の磁化を反転する動作の領域を、上下に拡げることが可能になる。
図2において、磁気記憶素子1以外の部分は、図7に示した従来のスイッチング特性を利用したMRAMのメモリセルと同様になっている。
即ち、シリコン基板30中に選択用MOSトランジスタ31が形成され、この選択用MOSトランジスタ31の一方の拡散層33上に接続プラグ8を介して、引き出し電極9が形成されている。この引き出し電極9上に、磁気記憶素子1が接続されている。選択用MOSトランジスタ31のもう一方の拡散層32は、図示しないが、接続プラグを介してセンス線に接続されている。選択用MOSトランジスタのゲート7は、選択信号線と接続されている。
磁気記憶素子1の上面は、その上のビット線(BL)6に接続されている。また、磁気記憶素子1の下方には絶縁膜を介して、書き込みワード線(WL)5が配置されている。
このように磁気メモリを構成した場合に、あるメモリセルの磁気記憶素子1の記憶層3に情報を記録するためには、多数あるワード線5及びビット線6から、記録を行うメモリセルに対応するそれぞれ1本のワード線5及びビット線6を選択し、ワード線5及びビット線6に電流を流して、記録を行うメモリセルの磁気記憶素子1に対して電流磁界(ワード線電流磁界及びビット線電流磁界)を印加する。これにより、そのメモリセルの磁気記憶素子1の記憶層3に回転磁界が印加され、その記憶層3において、各記憶層16,18,20,22,24,26の磁化M1,M2,M3,M4,M5,M6が反転(Toggle動作)して、情報の書き込み(記録)が行われる。
一方、情報の記録を行わないメモリセルでは、ワード線5或いはビット線6の少なくとも一方は選択されていないため、各記憶層16,18,20,22,24,26の磁化M1,M2,M3,M4,M5,M6の向きが反転(Toggle動作)するために充分な回転磁界が印加されず、情報の書き込み(記録)が行われないことから、記憶層3に既に記録されている情報が保持される。
各非磁性層の膜厚が同じであり、各記憶層(磁性層)の膜厚も同じであり、各記憶層間に静磁結合のみが生じている場合(Jq=0)と、各非磁性層の膜厚を変調して90°反強磁性結合Jqの大きさを0.01erg/cm2にした場合と、各非磁性層の膜厚を変調して90°反強磁性結合Jqの大きさを0.013erg/cm2にした場合とについて、それぞれ印加される磁界の大きさの変化に対する記憶層の磁化量の変化を調べて、磁化曲線を作成した。なお、いずれの場合も、磁気記憶素子の平面形状を、0.72μm(長軸方向)×0.48μm(短軸方向)の楕円形状とした。
それぞれの場合の磁化曲線を重ねて、図3に示す。
即ち、90°反強磁性結合を強めていくことにより、記憶層の各磁性層の磁化の向きを反転する動作(Toggle動作)の領域の下限であるスピンフロッピング磁界Hsfが低減される。また、90°反強磁性結合を強めていくことにより、上述の動作(Toggle動作)の領域の上限である飽和磁界Hsatが大きくなっていく。
従って、上述の動作(Toggle動作)の領域が、上下に拡がっていくことがわかる。
磁気記憶素子の平面形状を、図3と同様に、0.72μm(長軸方向)×0.48μm(短軸方向)の楕円として、従来のように記憶層の各磁性層間の非磁性層の膜厚が同一とされている場合と、本実施の形態のように記憶層の各磁性層間の非磁性層の膜厚が変調されている場合とで、素子の磁化回転モードの分布を比較した。
それぞれの磁化回転モードの分布を図4A及び図4Bに示す。図4Aは記憶層の各磁性層間の非磁性層の膜厚が同一とされている場合であり、図4Bは記憶層の各磁性層間の非磁性層の膜厚が変調されている場合である。
ワード線電流Iwやビット線電流Ibで、これだけの大きさの磁界を発生させようとすると、十数mAもの大電流が必要になる。
前述したように、磁気メモリ素子の低消費電力化や信頼性の向上を図るためには、できるだけ電流値が低いことが望ましいため、このようにToggle動作の領域80の下限が大きいことは好ましくない。
即ち、各磁性層間の非磁性層の膜厚を変調して90°反強磁性結合を発生させることにより、Toggle動作の領域80の下限を下げて、記録に必要な電流磁界を発生させるための電流量を低減し、消費電力を低減できることがわかる。
これにより、スピンフロッピング磁界Hsfを低減することができ、また飽和磁界Hsatを増加させることができる。
従って、記憶層(自由層)3の各記憶層(磁性層)16,18,20,22,24,26の磁化M1,M2,M3,M4,M5,M6の向きを反転させて情報の記録を行うことができる領域、即ち磁化回転モード図におけるToggle動作の領域を、下方及び上方にそれぞれ拡げることが可能になる。
従って、磁気記憶素子1の微細化を図った場合でも、高い歩留まりを得ることが可能になると共に、書き込みエラーの低減を図り高い信頼性でビット情報等の情報の書き込み(記録)や読み出しを行うことができる。
これにより、磁気記憶素子1の微細化によって高密度化を図り、磁気メモリの記憶容量の増大や磁気メモリの小型化を図ることが可能になる。
従って、磁気メモリの微細化、高信頼化、大容量化、低消費電力化が容易になる。
通常、均一な非磁性膜または磁性層を成膜する際には、ターゲット槽が1×10−6Torr以下の超真空度に到達していることが必要であるが、膜面で膜厚を変調するためには1mTorr以上の低真空中でスパッタリングすることが有効である。
本実施の形態においては、特に記憶層(自由層)3を構成する第1の記憶層16及び第2の記憶層18の2つの磁性層を、それぞれ磁化容易軸60の方向が互いに異なるように形成して磁気記憶素子41を構成している。
具体的には、第1の記憶層16の磁化容易軸60の傾斜角度(図8の傾斜角度θと同様に電流磁界を印加する配線に対する傾斜角度)θ1が比較的小さく、第2の記憶層18の磁化容易軸60の傾斜角度θ2が比較的大きくなっており、図5では0°<θ1<45°<θ2<90°となっている。
このように、平面パターンが同一で、かつ磁化容易軸方向が異なる構成であるため、磁性層の形状異方性による磁化容易軸方向の設定ではなく、別の方法により第1の記憶層16及び第2の記憶層18のそれぞれの磁化容易軸方向を設定することになる。
例えば、結晶磁気異方性や、磁場中熱処理等による誘導磁気異方性を、主に利用することにより、それぞれの磁化容易軸方向を設定すればよい。
これにより、スピンフロッピング磁界Hsfを下げると共に、飽和磁界Hsatを増加させることができる。
図6において、磁気記憶素子41以外の部分は、図7に示した従来のスイッチング特性を利用したMRAMのメモリセルや図2に示した先の実施の形態のメモリセルと同様になっているため、説明を省略する。
これにより、先の実施の形態と同様に、スピンフロッピング磁界Hsfを低減することができ、また飽和磁界Hsatを増加させることができるため、記憶層(自由層)3の各記憶層(磁性層)16,18の磁化M1,M2の向きを反転させて情報の記録を行うことができる領域(Toggle動作の領域)を、下方及び上方にそれぞれ拡げることが可能になる。
これにより、磁気記憶素子41の微細化によって高密度化を図り、磁気メモリの記憶容量の増大や磁気メモリの小型化を図ることが可能になる。
従って、磁気メモリの微細化、高信頼化、大容量化、低消費電力化が容易になる。
この場合は、磁性層を平面パターンが異なるように形成することにより、形状磁気異方性によって主に定義される磁化容易軸方向を異ならせることができる。
3層以上の磁性層により記憶層(自由層)を構成した場合には、磁性層の磁化容易軸方向が少なくとも異なる2方向以上である構成とすることにより、磁性層間に90°反強磁性結合を発生させることができる。
GMR素子から成る磁気記憶素子を構成した場合に適用しても、同様に本発明の効果を得ることができる。
固定層を設けた構成以外の他の検出手段としては、例えば、ホール素子を利用した構成や、光学的手段により検出を行う構成が考えられる。
Claims (10)
- 情報を磁性体の磁化状態によって保持する記憶層が、複数層の磁性層から成り、
前記記憶層の前記磁性層の間に90°反強磁性結合を誘導するように、前記記憶層の磁性層を隔てる各非磁性層の膜厚か、或いは前記記憶層の各磁性層の膜厚か、いずれかの膜厚が変調されている
ことを特徴とする磁気記憶素子。 - 前記各非磁性層の膜厚、或いは前記記憶層の各磁性層の膜厚が、擬似周期関数、周期関数と乱数の組み合わせ、フラクタル関数、のいずれかにより変調されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気記憶素子。
- 前記記憶層に対して、非磁性層を介して、磁化の向きが固定された磁化固定層が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気記憶素子。
- 情報を磁性体の磁化状態によって保持する記憶層が、複数層の磁性層から成り、
前記記憶層の前記磁性層の間に90°反強磁性結合を誘導するように、各前記磁性層の磁化容易軸方向が少なくとも異なる2方向以上存在する
ことを特徴とする磁気記憶素子。 - 前記記憶層に対して、非磁性層を介して、磁化の向きが固定された磁化固定層が配置されていることを特徴とする請求項4に記載の磁気記憶素子。
- 情報を磁性体の磁化状態によって保持する記憶層が、複数層の磁性層から成り、
前記記憶層の前記磁性層の間に90°反強磁性結合を誘導するように、前記記憶層の磁性層を隔てる各非磁性層の膜厚か、或いは前記記憶層の各磁性層の膜厚か、いずれかの膜厚が変調されている磁気記憶素子と、
互いに交差する第1の配線と第2の配線とを備え、
前記第1の配線と前記第2の配線とが交差する交点付近に、それぞれ前記磁気記憶素子が配置されて成る
ことを特徴とする磁気メモリ。 - 前記磁気記憶素子において、前記各非磁性層の膜厚、或いは前記記憶層の各磁性層の膜厚が、擬似周期関数、周期関数と乱数の組み合わせ、フラクタル関数、のいずれかにより変調されていることを特徴とする請求項6に記載の磁気メモリ。
- 前記磁気記憶素子において、前記記憶層に対して、非磁性層を介して、磁化の向きが固定された磁化固定層が配置されていることを特徴とする請求項6に記載の磁気メモリ。
- 情報を磁性体の磁化状態によって保持する記憶層が、複数層の磁性層から成り、
前記記憶層の前記磁性層の間に90°反強磁性結合を誘導するように、各前記磁性層の磁化容易軸方向が少なくとも異なる2方向以上存在する磁気記憶素子と、
互いに交差する第1の配線と第2の配線とを備え、
前記第1の配線と前記第2の配線とが交差する交点付近に、それぞれ前記磁気記憶素子が配置されて成る
ことを特徴とする磁気メモリ。 - 前記磁気記憶素子において、前記記憶層に対して、非磁性層を介して、磁化の向きが固定された磁化固定層が配置されていることを特徴とする請求項9に記載の磁気メモリ。
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