JP4631267B2 - 磁気記憶素子及び磁気メモリ - Google Patents

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本発明は、磁気記憶素子及び磁気メモリに関するものであり、特に不揮発性メモリに用いて好適なものである。
コンピュータ等の情報機器においては、ランダム・アクセス・メモリとして、動作が高速で、高密度のDRAMが広く使用されている。
しかし、DRAMは電源を切ると情報が消えてしまう揮発性メモリであるため、情報が消えない不揮発のメモリが望まれている。
情報通信機器、特に携帯端末等の個人用小型機器の飛躍的な普及に伴い、これを構成するメモリやロジック等の素子に対して、高集積化、高速化、低電力化等、一層の高性能化が要請されている。
特に、不揮発性メモリは、機器の高機能化に必要不可欠な部品と考えられている。
例えば、電源の消耗やトラブル、サーバーとネットワークが何らかの障害により切断された場合でも、不揮発性メモリはシステムや個人の重要な情報を保護することができる。
また、最近の携帯機器は、不要の回路ブロックをスタンバイ状態にしてできるだけ消費電力を抑えるように設計されているが、高速のワークメモリと大容量ストレージメモリを兼ねることができる不揮発性メモリを実現することができれば、消費電力とメモリの無駄を無くすことができる。
さらに、高速の大容量不揮発性メモリが実現できれば、電源を入れると瞬時に起動できる“インスタント・オン”機能も可能になってくる。
不揮発性メモリとしては、半導体を用いたフラッシュメモリや、強誘電体を用いたFRAM(Ferro electric Random Access Memory )等が挙げられる。
しかしながら、フラッシュメモリは、書き込み速度がμ秒のオーダーと遅いため、高速なアクセスに向かないという欠点がある。
一方、FRAMにおいては、書き換え可能回数が1012〜1014と有限であるため、完全にSRAMやDRAMを置き換えるには耐久性が小さく、また強誘電体キャパシタの微細加工が難しいという問題が指摘されている。
これらの欠点がない不揮発性メモリとして注目されているのが、磁性体の磁化で情報を記録する磁気ランダム・アクセス・メモリ(MRAM;Magnetic Random Access Memory )である(例えば、非特許文献1参照)。
初期のMRAMは、AMR(anisotropic magnetoresistive)効果や、GMR(Giant magnetoresistance )効果等を利用した、スピンバルブをベースにした構成であった(非特許文献2及び非特許文献3参照)。
しかし、これらの構成では、負荷のメモリセル抵抗が10〜100Ωと低いため、読み出し時のビット当たりの消費電力が大きく大容量化が難しいという欠点があった。
そこで、TMR(Tunnel Magnetoresistance)効果を利用した構成のMRAMが提案されている。
当初は、室温における抵抗変化率が1〜2%しかなかったが(非特許文献4参照)、近年では20%近くの抵抗変化率が得られるようになり(非特許文献5参照)、TMR効果を利用したMRAMに注目が集まるようになってきている。
MRAMでは、マトリクス状に配列されたTMR効果型の記憶素子を有するとともに、その素子群のうち特定の素子に情報を記録するために、素子群を縦横に横切るワード書き込み線とビット書き込み線を有しており、その交差領域に位置する記憶素子のみに、選択的に情報の記録(書き込み)を行うように構成されている。
そして、記憶素子に情報の記録を行う方法には、アステロイド特性を利用した方法(例えば、特許文献1参照)とスイッチング特性を利用した方法(例えば、特許文献2参照)がある。
アステロイド特性を利用した方法は、選択性が各記憶素子の保磁力特性に依存するために、素子の寸法や磁気特性のばらつきに弱いという欠点があった。
これに対して、スイッチング特性を利用した方法は、素子選択に使える磁界範囲が広いので、素子ごとの特性ばらつきが多少あっても、大規模なメモリを実現しやすい、という利点がある。
ここで、スイッチング特性を利用したMRAMの模式的断面図を図8に示す。
メモリセルに記録された情報を読み出すために、メモリセルを電気的に選択するためには、ダイオード又はMOSトランジスタ等を用いることができるが、図8に示す構成はMOSトランジスタを用いている。
まず、MRAMのメモリセルを構成する磁気記憶素子101の構成を説明する。
第1の磁化固定層112及び第2の磁化固定層114の2層の磁性層は、非磁性層113を介して配置されていることにより、反強磁性結合している。さらに、第1の磁化固定層112は、反強磁性層111と接して配置されており、これらの層間に働く交換相互作用によって、強い一方向の磁気異方性を有する。そして、これら4層111,112,113,114により固定層102が構成される。
第1の記憶層116及び第2の記憶層118の2層の磁性層は、非磁性層117を介して配置されていることにより、反強磁性結合している。これら第1の記憶層116及び第2の記憶層118は、それぞれの磁化M1,M2の向きが比較的容易に回転するように構成される。そして、これら3層116,117,118により記憶層(自由層)103が構成される。
第2の磁化固定層114と第1の記憶層116との間、即ち固定層102と記憶層(自由層)103との間には、トンネル絶縁層115が形成されている。このトンネル絶縁層115は、上下の磁性層116及び114の磁気的結合を切るとともに、トンネル電流を流す役割を担う。これにより、磁性層の磁化の向きが固定された固定層102と、トンネル絶縁層115と、磁化の向きを変化させることが可能な記憶層(自由層)103とにより、TMR(Tunneling Magnetoresistance )素子が構成されている。
そして、上述の各層111〜118と、下地膜110及びトップコート膜119により、TMR素子から成る磁気記憶素子101が構成されている。
また、シリコン基板130中に選択用MOSトランジスタ131が形成され、この選択用MOSトランジスタ131の一方の拡散層133上に接続プラグ108を介して、引き出し電極109が形成されている。この引き出し電極109上に、磁気記憶素子101の下地膜110が接続されている。選択用MOSトランジスタ131のもう一方の拡散層132は、図示しないが、接続プラグを介してセンス線に接続されている。選択用MOSトランジスタのゲート130は、選択信号線と接続されている。
磁気記憶素子101のトップコート膜119は、その上のビット線(BL)106に接続されている。また、磁気記憶素子101の下方には絶縁膜を介して、書き込みワード線(WL)105が配置されている。
定常状態において、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2とは、概ね反平行状態(向きが正反対の状態)にある。同様に、非磁性層113を介した強い反強磁性結合により、第1の磁化固定層112の磁化M11と第2の磁化固定層114の磁化M12とは、ほぼ完全な反平行状態にある。
通常、第1の磁化固定層112と第2の磁化固定層114とは、飽和磁化膜厚積が等しい構成とされるため、磁極磁界の漏洩成分は無視できるくらい小さい。
また、図8のMRAMを直上より見た模式的平面図を図9に示す。
磁気記憶素子101は、平面形状が楕円形状であり、楕円の長軸方向に磁化容易軸60があり、楕円の短軸方向に磁化困難軸61があり、これら磁化容易軸60と磁化困難軸61とが直交している。
また、ビット線106及びワード線105は、格子状に配置され、両者のなす角度αは一定(図9ではほぼ直交している)である。磁気記憶素子101は、その磁化容易軸60がワード線105に対して傾斜角度θ(0<θ<90°)を有するように、ワード線105及びビット線106の交点に配置されている。
この構成のメモリセルにおいて、磁気記憶素子101の記憶層103に情報を記録する際には、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2の向きを反転させるために、ビット線106及びワード線105に、それぞれ、ビット電流Ib及びワード線電流Iwを流す。ビット線電流Ib及びワード線電流Iwは、それぞれ、ビット線電流磁界Hb及びワード線電流磁界Hwを誘起する。ワード線電流磁界Hwとビット線電流磁界Hbの合成磁界は、後述するように、時計回りまたは反時計回りに回る回転磁界を形成する。
そして、電流磁界Hb,Hwの印加によって、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2の向きの向きを変えることにより、記憶層103に情報(例えば、情報”1”又は情報”0”)を記録することができる。
また、記録された情報の読み出しは、磁気抵抗効果によるトンネル電流の変化を検出して行うことができる。
ここで、図8に示した構成の磁気記憶素子101の磁化容易軸方向に外部磁界Hが印加されたときの磁化曲線の例を図10に示す。
第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2の合成磁化Mの大きさは、外部磁界の大きさによって顕著に変化する。
最初のしきい値はスピンフロッピング磁界Hsfである。外部磁界Hがこのスピンフロッピング磁界Hsf以下ならば、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2が、常に反平行状態(↑↓)を保つ。
外部磁界HがHsfを超えると、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2が、交差磁化状態をとって外部磁界Hに拮抗する。ただし、二つの磁化M1,M2がなす角度は180度以下である。この状態から外部磁界Hを取り去れば、最初の反平行状態に戻ることが多い。
次のしきい値は飽和磁界Hsatである。外部磁界Hが飽和磁界Hsatを超えると、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2は平行状態(↑↑)となる。一旦、飽和磁界Hsat以上の外部磁界Hを印加してしまうと、記憶層103は最初の反平行状態の記憶を忘却するので、外部磁界を取り去っても最初の磁化状態に戻るとは限らない。
続いて、図8のMRAMの磁気記憶素子101において、外部磁界Hとしてワード線電流磁界Hwとビット線電流磁界Hbを印加したとき、記憶層103の第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2の向きの変化を説明する。
外部磁界Hを印加することにより、図10に示したように、記憶層103の第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2の向きが変化するが、外部磁界Hを印加する前の状態と、外部磁界Hを取り去った後の状態との関係により、3種類の動作に大別することができる。
まず、外部磁界Hの印加の前の状態と、外部磁界Hを取り去った後の状態とで、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2の向きが反転する(2つの磁化M1,M2の向きが入れ替わり、交番的に変化する)動作がある。以下、このような動作を、Toggle動作と呼ぶ。
また、外部磁界Hの印加の前の状態と、外部磁界Hを取り去った後の状態とで、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2の向きが同じ向きになる(2つの磁化M1,M2の向きが入れ替わらない)動作がある。以下、このような動作を、No switching動作と呼ぶ。
さらにまた、外部磁界Hの印加の前の状態に係わらず、外部磁界Hを取り去った後の状態では、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2が、それぞれ決まった向きに変化する動作がある。この動作では、外部磁界Hを印加している間に、2層の磁化M1,M2が同じ向き(平行)になってしまい、外部磁界Hを印加する前の反平行状態の記憶が失われるため、外部磁界Hを除去した後の状態では、2層の磁化M1,M2が一方通行な磁化回転をして、ある決まった向きに変化する。以下、このような動作を、Direct動作と呼ぶ。
次に、3種類の動作のそれぞれにおいて、ワード線電流Iw及びビット線電流Ibの電流パルスと、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2の向きの時間変化と、磁化M1,M2の変化に伴う磁気記憶素子101のTMR素子の電気抵抗Rの時間変化を示す。
まず、Toggle動作における、電流パルス、各記憶層の磁化の向きの時間変化、TMR素子の電気抵抗の時間変化の一例を、図11に示す。
図11では、1ビットの記録を行うサイクルにおいて、時間原点を時刻T0として、時刻T1,T2,T3,T4と時刻が経過して、最後に定常状態に戻るまでの磁化M1,M2の向き及びTMR素子の電気抵抗Rの変化を示している。以下、他の動作の場合の図でも同様である。
ワード線電流Iwのパルスは、時間原点T0からある時間経過した時刻T1に立ち上がり、時刻T3に立ち下がる。ビット線電流Ibのパルスは、ワード線電流Iwのパルスより遅れて、時刻T2に立ち上がり、時刻t4に立ち下がる。
このように電流パルスに時間差を設けることにより、各電流磁界Hw,Hbの合成磁界を回転磁界として、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2の向きを回転させることができる。
TMR素子の電気抵抗Rは、第1の記憶層116の磁化M1と第2の磁化固定層114の磁化M12の向きが等しい場合に、低抵抗(これを例えば情報”0”とする)となり、第1の記憶層116の磁化M1と第2の磁化固定層114の磁化M12の向きが反平行である場合に、高抵抗(これを例えば情報”1”とする)となる。
まず、時刻T0において、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層114の磁化M2は、反平行状態をとっており、二つの磁化M1,M2の向きがなす角度は180度となっている。
時刻T1から時刻T2までの間に、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2とがなす角度が180度以下になる。
時刻T2から時刻T3までの間には、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2とがなす角度が鋭角(90度以下)になる。
時刻T3以降で第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2とがスピンフロップし、時刻T4を過ぎて再び反平行状態に戻る。このとき、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2は、それぞれ初期状態に対して向きが逆転している。
次に、No switching動作における、電流パルス、各記憶層の磁化の向きの時間変化、TMR素子の電気抵抗の時間変化の一例を、図12に示す。
この例では、ワード線電流Iwのパルスを図11とは逆の向きにしている。ビット線電流Ibのパルスは図11と同じである。
ワード線電流Iwのパルスは、時間原点の時刻T0からある時間経過した時刻T1に立ち上がり、時刻T3に立ち下がる。ビット線電流Ibのパルスは、ワード線電流Iwのパルスより遅れて、時刻T2に立ち上がり、時刻t4に立ち下がる。
このように電流パルスに時間差を設けることにより、各電流磁界Hw,Hbの合成磁界を回転磁界として、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2の向きを回転させることができる。
まず、時刻T0において、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層114の磁化M2は、反平行状態をとっており、二つの磁化M1,M2の向きがなす角度は180度となっている。
時刻T1から時刻T2までの間に、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2とがなす角度が180度以下になる。
この場合は、時刻T2から時刻T3までの間で、ワード線電流磁界Hw及びビット線電流磁界Hbにより形成される回転磁界の向きが、磁気記憶素子101の磁化容易軸の方向(正方向または負方向のいずれか)を向かないので、スピンフロッピングが起こらない。 その結果、時刻T4以降では、磁化状態は初期状態に対して変化しない。
次に、Direct動作における、電流パルス、各記憶層の磁化の向きの時間変化、TMR素子の電気抵抗の時間変化の例を、図13及び図14にそれぞれ示す。
図13に示す例では、電流パルスをいずれも図11と同じ向きにしている。一方、図14に示す例では、電流パルスをいずれも図11とは逆の向きにしている。
図13及び図14において、ワード線電流Iwのパルスは、時間原点の時刻T0からある時間経過した時刻T1に立ち上がり、時刻T3に立ち下がる。ビット線電流Ibのパルスは、ワード線電流Iwのパルスより遅れて、時刻T2に立ち上がり、時刻t4に立ち下がる。
このように電流パルスに時間差を設けることにより、各電流磁界Hw,Hbの合成磁界を回転磁界として、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2の向きを回転させることができる。
まず、時刻T0において、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層114の磁化M2は、反平行状態をとっており、二つの磁化M1,M2の向きがなす角度は180度となっている。
時刻T1から時刻T2までの間に、スピンフロッピングが起こり、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2がなす角度は90度以下になる。
時刻T2から時刻T3までの間に、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2の向きが、ほぼ同じ向きに揃ってしまい、ワード線電流磁界Hw及びビット線電流磁界Hbにより形成される回転磁界の向きとほぼ等しくなる。
時刻T3以降では、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2が、スピンフロップして再び反平行状態に戻るが、その磁化状態は初期状態に依存しない。
続いて、ワード線電流磁界Hw及びビット線電流磁界Hbの各振幅・向きを変化させたときに、3種類の磁化回転動作のそれぞれの発生状況を表す磁化回転モード図を、図15に示す。
図15に示すように、ビット線電流磁界Hb及びワード線電流磁界Hwの合成磁界がスピンフロッピング磁界Hsf以下ならば、その領域は全てNo switching動作の領域81である。ビット線電流磁界Hb及びワード線電流磁界Hwの合成磁界が磁化容易軸方向以外になる、第二象限及び第四象限も、概ねNo switching動作の領域81である。
一方、ビット線電流磁界Hb及びワード線電流磁界Hwの合成磁界が飽和磁界Hsatを超えたところは、Direct動作の領域82となることが多い。
そして、ビット線電流磁界Hb及びワード線電流磁界Hwの合成磁界がスピンフロッピング磁界Hsf以上飽和磁界Hsat未満であり、かつ、第一象限及び第三象限に属する範囲は、Toggle動作の領域80となることが期待できる。
なお、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2のなす2つの安定状態(↑↓及び↓↑)に非対称性がある場合は、Toggle動作の領域80とNo switching動作の領域81の境界に、Direct動作の領域が現れることがある。
マトリクス状に配列されたメモリセル群において、ワード線とビット線の交点に配置された特定のメモリセルのみを選択的に磁化反転させるには、選択されたメモリセルが所属するワード線及びビット線に電流を流す。
このとき、選択されたメモリセルに印加される合成磁界が、Toggle動作の領域80又はDirect動作の領域82の範囲内に含まれている必要がある。
一方、ワード線またはビット線を共有する選択されていないメモリセルが磁化反転するのを避けるには、非選択メモリセルへ印加される合成磁界が、No switching動作の領域81の範囲に含まれていることが必要である。
Wang et al.,IEEE Trans.Magn.,1997,Vol.33,p.4498 J.M.Daughton,Thin Solid Films,1992,vol.216,p.162-168 D.D.Tang et al.,IEDM Technical Digest,1997,p.995-997 R.Meservey et al.,Pysics Reports,1994,vol.238,p.214-217 T.Miyazaki et al.,J.Magnetism & Magnetic Material,1995,vol.139,L231 特開平10−116490号公報 米国特許出願公開第2003/0072174号明細書
上述したように、スイッチング特性を利用したMRAMの従来の構成においては、記憶層103として2層以上の強磁性層を用いて、ビット情報の記録を行っている。
しかしながら、上述したスイッチング特性を利用したMRAMの従来の構成では、これら記憶層の2層以上の強磁性層が、層間で反強磁性結合または静磁結合しているため、スピンフロッピング磁界が大きくなるという問題がある。
このスピンフロッピング磁界の大きさによって、記憶層の磁化を反転させるために必要となる、ビット線やワード線に流す電流の下限しきい値が決まるため、スピンフロッピング磁界が大きくなると、電流量を大きくする必要があり、記録に必要となる消費電力が増大してしまう。
従って、例えば、消費電力に関する制約の大きい携帯機器にMRAMを応用したり、メモリセルをより微細化したりするためには、このスピンフロッピング磁界を低減して、より低い電流で磁化を反転させることを可能にする必要がある。
上述した問題の解決のために、本発明においては、情報の記録に必要となる消費電力を低減することが可能な構成の磁気記憶素子及び磁気メモリを提供するものである。
本発明の磁気記憶素子は、情報を磁性体の磁化状態によって保持する記憶層が非磁性層を介して配置された複数層の強磁性体層から成り、記憶層に対して、非磁性層を介して、磁化の向きが固定された磁化固定層が配置され、磁化固定層に対して、記憶層とは反対の側に、反強磁性層が配置され、磁化固定層が非磁性層を介して配置された2層の強磁性体層からなり、反強磁性層と、2層の強磁性体層のうちの反強磁性層に近い側の一方の強磁性体層とが2層の強磁性体層のうちの記憶層に近い側の他方の強磁性体層よりも磁化容易軸方向に大きいパターンに形成され、回転磁界を記憶層に印加することにより、スイッチング特性を利用したトグル動作によって記憶層の複数層の強磁性体層の磁化の向きを反転させて、情報の記録が行われるものである。
上述の本発明の磁気記憶素子の構成によれば、情報を磁性体の磁化状態によって保持する記憶層が非磁性層を介して配置された複数層の強磁性体層から成り、記憶層に対して、非磁性層を介して、磁化の向きが固定された磁化固定層が配置され、磁化固定層に対して、記憶層とは反対の側に、反強磁性層が配置され、磁化固定層が非磁性層を介して配置された2層の強磁性体層からなり、反強磁性層と、2層の強磁性体層のうちの反強磁性層に近い側の一方の強磁性体層とが2層の強磁性体層のうちの記憶層に近い側の他方の強磁性体層よりも磁化容易軸方向に大きいパターンに形成され、回転磁界を記憶層に印加することにより、スイッチング特性を利用したトグル動作によって記憶層の複数層の強磁性体層の磁化の向きを反転させて、情報の記録が行われることにより、一方の強磁性体層の方が他方の強磁性体層よりも飽和磁化が大きくなるため、磁化固定層からの磁化困難軸方向の磁極磁界の発生を抑制して、磁化固定層から磁化容易軸方向の磁極磁界を発生させることができる。
この磁化容易軸方向の磁極磁界により、スピンフロッピング磁界を低磁界側にシフトさせることができる。
これにより、記憶層の各強磁性体層の磁化の向きを反転させて、情報の記録を行うために必要となる、電流磁界(ワード線電流磁界やビット線電流磁界)のしきい値を低減することができ、情報の記録に必要となる電流量を低減することが可能になる。
また、磁化困難軸方向の磁極磁界の発生を抑制することにより、記憶層の各強磁性体層の磁化が特定の向きに変化して元の状態の記憶が失われる動作(前述のDirect動作)の領域の拡大を抑制することができる。
本発明の磁気メモリは、情報を磁性体の磁化状態によって保持する記憶層が非磁性層を介して配置された複数層の強磁性体層から成り、記憶層に対して、非磁性層を介して、磁化の向きが固定された磁化固定層が配置され、磁化固定層に対して、記憶層とは反対の側に、反強磁性層が配置され、磁化固定層が非磁性層を介して配置された2層の強磁性体層からなり、反強磁性層と、2層の強磁性体層のうちの反強磁性層に近い側の一方の強磁性体層とが2層の強磁性体層のうちの記憶層に近い側の他方の強磁性体層よりも磁化容易軸方向に大きいパターンに形成され、回転磁界を記憶層に印加することにより、スイッチング特性を利用したトグル動作によって記憶層の複数層の強磁性体層の磁化の向きを反転させて、情報の記録が行われる磁気記憶素子と、互いに交差する第1の配線と第2の配線とを備え、第1の配線と第2の配線とが交差する交点付近に、それぞれ磁気記憶素子が配置されて成り、第1の配線に流れる電流による電流磁場と、第2の配線に流れる電流による電流磁場とによる回転磁界を記憶層に印加することにより、記憶層の複数層の強磁性体層の磁化の向きを反転させて、情報の記録が行われるものである。
上述の本発明の磁気メモリの構成によれば、情報を磁性体の磁化状態によって保持する記憶層が非磁性層を介して配置された複数層の強磁性体層から成り、記憶層に対して、非磁性層を介して、磁化の向きが固定された磁化固定層が配置され、磁化固定層に対して、記憶層とは反対の側に、反強磁性層が配置され、磁化固定層が非磁性層を介して配置された2層の強磁性体層からなり、反強磁性層と、2層の強磁性体層のうちの反強磁性層に近い側の一方の強磁性体層とが2層の強磁性体層のうちの記憶層に近い側の他方の強磁性体層よりも磁化容易軸方向に大きいパターンに形成され、回転磁界を記憶層に印加することにより、スイッチング特性を利用したトグル動作によって記憶層の複数層の強磁性体層の磁化の向きを反転させて、情報の記録が行われる磁気記憶素子と、互いに交差する第1の配線と第2の配線とを備え、第1の配線と第2の配線とが交差する交点付近に、それぞれ磁気記憶素子が配置されて成り、第1の配線に流れる電流による電流磁場と、第2の配線に流れる電流による電流磁場とによる回転磁界を記憶層に印加することにより、記憶層の複数層の強磁性体層の磁化の向きを反転させて、情報の記録が行われることにより、第1の配線や第2の配線に電流を流すことにより磁気記憶素子に磁場(電流磁場)を印加することが可能であり、2つの配線からの磁場による回転磁界により記憶層の各強磁性体層の磁化の向きを変化させて情報を記録することが可能である。
そして、特に、磁気記憶素子が、情報を磁性体の磁化状態によって保持する記憶層が非磁性層を介して配置された複数層の強磁性体層から成り、記憶層に対して、非磁性層を介して、磁化の向きが固定された磁化固定層が配置され、磁化固定層に対して、記憶層とは反対の側に、反強磁性層が配置され、磁化固定層が非磁性層を介して配置された2層の強磁性体層からなり、反強磁性層と、2層の強磁性体層のうちの反強磁性層に近い側の一方の強磁性体層とが2層の強磁性体層のうちの記憶層に近い側の他方の強磁性体層よりも磁化容易軸方向に大きいパターンに形成されている構成となっていることにより、前述したように、磁化固定層から磁化容易軸方向の磁極磁界を発生させて、スピンフロッピング磁界を低磁界側にシフトさせることができ、情報の記録に必要となる電流量を低減することが可能になる。また、磁化困難軸方向の磁極磁界の発生を抑制して、Direct動作の領域の拡大を抑制することができる。
上述の本発明によれば、磁化固定層から磁極磁界を発生させて、スピンフロッピング磁界を低磁界側にシフトさせることができ、情報の記録に必要となる電流量を低減することが可能になるので、従来よりも低い電流量で情報を記録することが可能になる。
従って、情報の記録に必要となる消費電力を低減することが可能になる。
また、本発明により、磁気メモリを構成する磁気記憶素子を微細化して、磁気メモリの小型化や記憶容量の増大を図ることが、容易に可能となる。
また、情報の記録に必要となる電流量を低減することが可能になるため、記録用の電流を流す配線におけるエレクトロン・マイグレーション破断の発生を低減することができ、これにより信頼性の向上を図ることができる。
本発明の一実施の形態として、スイッチング特性を利用したMRAMの概略構成図(模式的断面図)を図1に示す。
本実施の形態においても、図8に示した従来の構成と同様に、メモリセルの読み出しのために選択用MOSトランジスタを用いている。
まず、MRAMのメモリセルを構成する磁気記憶素子1の構成を説明する。
第1の磁化固定層12及び第2の磁化固定層14の2層の磁性層は、非磁性層13を介して配置されていることにより、反強磁性結合している。さらに、第1の磁化固定層12は、反強磁性層11と接して配置されており、これらの層間に働く交換相互作用によって、強い一方向の磁気異方性を有する。そして、これら4層11,12,13,14により固定層2が構成される。
第1の記憶層16及び第2の記憶層18の2層の磁性層は、非磁性層17を介して配置されていることにより、反強磁性結合している。これら第1の記憶層16及び第2の記憶層18は、それぞれの磁化M1,M2の向きが比較的容易に回転するように構成される。そして、これら3層16,17,18により記憶層(自由層)3が構成される。
第2の磁化固定層14と第1の記憶層16との間、即ち固定層2と記憶層(自由層)3との間には、トンネル絶縁層15が形成されている。このトンネル絶縁層15は、上下の磁性層16及び14の磁気的結合を切るとともに、トンネル電流を流す役割を担う。これにより、磁性層の磁化の向きが固定された固定層2と、トンネル絶縁層15と、磁化の向きを変化させることが可能な記憶層(自由層)3とにより、TMR(Tunneling Magnetoresistance )素子が構成されている。
第2の記憶層18の上には、トップコート膜19が形成されている。このトップコート膜19は、磁気記憶素子1と接続された配線(ビット線)6との相互拡散防止、接触抵抗の低減及び第2の記憶層18の酸化防止という役割がある。
反強磁性層11の下には、下地膜10が形成されている。この下地膜10は、上方に積層される層の結晶性を高める作用がある。
第1及び第2の磁化固定層12及び14と、第1及び第2の記憶層16及び18とには、例えば、ニッケルまたは鉄またはコバルト、或いはこれらの合金を主成分とする強磁性体が用いられる。
非磁性層13,17の材料としては、例えば、タンタル、クロム、ルテニウム等が使用できる。
反強磁性層11の材料としては、例えば、鉄、ニッケル、白金、イリジウム、ロジウム等のマンガン合金、コバルトやニッケル酸化物等が使用できる。
下地膜10には、例えば、クロム、タンタル等を使用できる。
トップコート膜19には、例えば、銅、タンタル、TiN等の材料が使用できる。
これらの磁性層12,14,16,18及び導体膜10,13,17,19は、主にスパッタリング法により形成される。
トンネル絶縁層15は、スパッタリングで形成された金属膜を酸化、もしくは窒化させることにより得ることができる。
そして、上述の各層11〜18と、下地膜10及びトップコート膜19により、TMR素子から成る磁気記憶素子1が構成されている。
また、シリコン基板30中に選択用MOSトランジスタ31が形成され、この選択用MOSトランジスタ31の一方の拡散層33上に接続プラグ8を介して、引き出し電極9が形成されている。この引き出し電極9上に、磁気記憶素子1の下地膜10が接続されている。選択用MOSトランジスタ31のもう一方の拡散層32は、図示しないが、接続プラグを介してセンス線に接続されている。選択用MOSトランジスタのゲート30は、選択信号線と接続されている。
磁気記憶素子1のトップコート膜19は、その上のビット線(BL)6に接続されている。また、磁気記憶素子101の下方には絶縁膜を介して、書き込みワード線(WL)5が配置されている。
定常状態において、第1の記憶層16の磁化M1と第2の記憶層18の磁化M2とは、概ね反平行状態(向きが正反対の状態)にある。同様に、非磁性層13を介した強い反強磁性結合により、第1の磁化固定層12の磁化M11と第2の磁化固定層14の磁化M12は、ほぼ完全な反平行状態にある。
本実施の形態においては、特に、固定層2を構成する2層の磁化固定層12,14の膜厚を異ならせて、これら第1の磁化固定層12及び第2の磁化固定層14の飽和磁化膜厚積(M×t)が異なるように、磁気記憶素子1を構成している。具体的には、第1の磁化固定層12よりも第2の磁化固定層14が厚く形成されている。
これにより、後述するように、図8に示した従来の構成と比較して、スピンフロッピング磁界Hsfを低減することができる。
MRAMの磁気記憶素子において、固定層を2層の磁化固定層により構成する場合には、一般に、固定層を構成する2層の磁化固定層が、同一の磁性材料で形成され、かつ膜厚も等しい構成とされる。このため、固定層を構成する2層の磁化固定層の飽和磁化膜厚積(M×t)が等しくなっている。
図8に示した従来の構成では、第1の磁化固定層112(飽和磁化M11・膜厚t1)と第2の磁化固定層114(飽和磁化M12・膜厚t2)の飽和磁化膜厚積(M×t)が等しい。
ところで、スイッチング特性を利用したMRAMでは、前述したToggle動作を磁化反転の原理とするため、スイッチングを行う際に、図15に示す磁化回転モード図の全ての象限を使う必要がない。
図15に示す磁化回転モード図において、第一象限或いは第三象限のいずれかに含まれる範囲であり、ビット線電流パルスやワード線電流パルスの振幅がToggle動作の領域80に入るように調整すれば、磁気記憶素子1の記憶層3において所望の動作を行わせることが可能である。
ワード線電流やビット線電流の低電流化を阻止している原因となっているスピンフロッピング磁界Hsfを低減するためには、図10に示される磁化曲線を横軸の磁界軸H上においてシフトさせて、スピンフロッピング磁界Hsfをできるだけ原点に接近させることが有効である。
スピンフロッピング磁界Hsf自体は、磁界軸Hの正側・負側の両側に存在するため、磁気メモリをToggle動作させる目的であれば、図15の磁化回転モード図を第一象限側・第三象限側のどちらに移動させても、同じ結果が得られる。
そこで、本実施の形態では、スピンフロッピング磁界Hsfを低磁界側にシフトさせることを目的として、第1の磁化固定層12と第2の磁化固定層14の膜厚を異ならせて、これら磁化固定層12,14の飽和磁化膜厚積(M×t)のバランスを崩し、固定層2から磁極磁界を発生させるように構成している。この固定層2からの磁極磁界により、スピンフロッピング磁界Hsfを低磁界側にシフトさせることができる。
そして、磁化反転に必要な電流を低減する効果を充分に得るためには、飽和磁化M11で膜厚t1である第1の磁化固定層12と、飽和磁化M12で膜厚t2である第2の磁化固定層14とにおいて、
|M11・t1−M12・t2|/|M11・t1+M12・t2|>0.1 (1)
の条件を満たすことが望ましい。
また、図1のMRAMを直上より見た模式的平面図を図2に示す。
磁気記憶素子1は、図9の磁気記憶素子101と同様に、平面形状が楕円形状になっている。
楕円の長軸方向に磁化容易軸60があり、楕円の短軸方向に磁化困難軸61があり、これら磁化容易軸60と磁化困難軸61とが直交している。
また、ビット線(BL)6及びワード線(WL)5は、そのなす角度αが一定(ほぼ直交する)となっている。磁気記憶素子1は、その磁化容易軸60がワード線5に対して傾斜角度θ(0<θ<90°)を有するように、ワード線5及びビット線6の交点に配置されている。
この構成のメモリセルにおいて、磁気記憶素子1の記憶層3に情報を記録する際には、第1の記憶層16の磁化M1及び第2の記憶層18の磁化M2の向きを反転させるために、ビット線6及びワード線5に、それぞれ、ビット電流Ib及びワード線電流Iwを流す。ビット線電流Ib及びワード線電流Iwは、それぞれ、ビット線電流磁界Hb及びワード線電流磁界Hwを誘起する。ワード線電流磁界Hwとビット線電流磁界Hbの合成磁界は、後述するように、時計回りまたは反時計回りに回る回転磁界を形成する。
また、磁気記憶素子1の記憶層3に記録された情報を読み出す際には、ビット線6と、選択用MOSトランジスタ31の拡散層32に接続されたセンス線との間に電圧をかけて、選択用MOSトランジスタ31のゲート7をオン状態にすることにより、磁気記憶素子1の膜厚方向に電流を流す。これにより、トンネル絶縁層15を挟む磁性層(第2の磁化固定層14及び第1の記憶層16)におけるトンネル磁気抵抗効果を利用して、記憶層3の磁性層の磁化の向きを検出することにより、記憶層3に記録された情報を読み出すことができる。
そして、図1に示した構成のメモリセルを用いて、それぞれ多数のワード線(WL)5及びビット線(BL)6に対して、各交点に磁気記憶素子1を配置することにより、多数のメモリセルを有し、記憶容量の大きい磁気メモリ(磁気記憶装置)を構成することができる。
このように磁気メモリを構成した場合に、あるメモリセルの磁気記憶素子1の記憶層3に情報を記録するためには、多数あるワード線5及びビット線6から、記録を行うメモリセルに対応するそれぞれ1本のワード線5及びビット線6を選択し、ワード線5及びビット線6に電流を流して、記録を行うメモリセルの磁気記憶素子1に対して電流磁場Hw,Hbを印加する。これにより、そのメモリセルの磁気記憶素子1の記憶層3に回転磁界が印加され、その記憶層3において、第1の記憶層16の磁化M1及び第2の記憶層18の磁化M2が反転(Toggle動作)して、情報の書き込み(記録)が行われる。
一方、情報の記録を行わないメモリセルでは、ワード線5或いはビット線6の少なくとも一方は選択されていないため、第1の記憶層16の磁化M1及び第2の記憶層18の磁化M2が反転(Toggle動作)するに充分な回転磁界が印加されず、情報の書き込み(記録)が行われないことから、記憶層3に既に記録されている情報が保持される。
ここで、本実施の形態によって得られる磁化回転モードの改善効果を調べた。
磁気記憶素子1の固定層2を、第1の磁化固定層12と第2の磁化固定層14にCoFeを、非磁性層13にRuを、それぞれ用いた構成として、非磁性層13の膜厚を0.8nmに固定して、第1の磁化固定層12の膜厚t1と第2の磁化固定層14の膜厚t2とを、t1+t2=4.0nmの下で変化させて、それぞれ素子の磁化回転モードの分布を調べた。
結果を図3A〜図3Dに示す。図3Aはt1=2.2nm,t2=1.8nm(図1とは逆に第1の磁化固定層12より第2の磁化固定層14が少し薄い)の場合を示し、図3Bはt1=1.5nm,t2=2.5nmの場合を示し、図3Cはt1=1.0nm,t2=3.0nmの場合を示し、図3Dはt1=0.5nm,t2=3.5nmの場合を示している。
なお、図3A〜図3Dでは、磁界の範囲が0〜100Oeと図15と比較して小さいため、磁界が大きいときのDirect動作の領域は現れていない。
図3A〜図3Dより、第1の磁化固定層12と第2の磁化固定層14との膜厚の差を大きくしてバランスを崩していくと、Toggle動作の領域80が低磁界側に移動していくことがわかる。
図3AではToggle動作の領域80のしきい値が60Oe程度と非常に高いのに対して、図3Dでは20Oe程度まで低減されていることがわかる。
即ち、しきい値となるスピンフロッピング磁界Hsfが低磁界側に移動したことによって、電流振幅を1/3に低減することが可能になることがわかる。これは、消費電力に換算すると、1/9に低減することが可能になることを示している。
なお、記憶層3の第1の記憶層16及び第2の記憶層18のそれぞれの磁化M1,M2のなす、前述した2つの安定状態に非対称性が生じているため、図3A〜図3Dでは、Toggle動作の領域80とNo switching動作の領域81との境界に、Direct動作の領域82が現れている。特に、記憶層3に近い側の第2の磁化固定層14を厚くするに従い、この境界のDirect動作の領域82が広くなっている。
上述の本実施の形態の構成によれば、固定層2を構成する、第1の磁化固定層12及び第2の磁化固定層14が、異なる膜厚である磁気記憶素子1を構成したことにより、これら第1の磁化固定層12及び第2の磁化固定層14の飽和磁化膜厚積が異なるため、固定層2から磁極磁界を発生させることができ、この磁極磁界の作用により、スピンフロッピング磁界Hsfを低磁界側にシフトさせることができる。
これにより、記憶層3の各記憶層16,18の磁化M1,M2の向きを反転させて、情報の記録を行うために必要となる、電流磁界(ワード線電流磁界やビット線電流磁界)のしきい値を低減することができ、情報の記録に必要となる電流量を低減することが可能になる。
従って、本実施の形態の構成により、情報の記録に必要となる消費電力を低減することが可能になる。
また、前述したように、磁気記憶素子を微細化するためには、情報の記録に必要となる消費電力を低減する必要があるため、本実施の形態の構成により、MRAMのメモリセルを構成する磁気記憶素子1を微細化して、MRAMの小型化や記憶容量の増大を図ることが、容易に可能となる。
また、情報の記録に必要となる電流量を低減することが可能になるため、記録用の電流を流す配線におけるエレクトロン・マイグレーション破断の発生を低減することができ、これにより信頼性の向上を図ることができる。
なお、上述の実施の形態では、第1の磁化固定層12の膜厚t1と第2の磁化固定層14の膜厚t2とを異ならせて、飽和磁化膜厚積を異ならせているが、第1の磁化固定層と第2の磁化固定層とを飽和磁化が異なる構成としても、同様に飽和磁化膜厚積を異ならせて、発生する磁極磁界によってスピンフロッピング磁界Hsfを低磁界側にシフトさせて、情報の記録に必要となる電流量を低減することが可能である。これにより、情報の記録に必要となる消費電力を低減することが可能になる。
2層の磁化固定層の飽和磁化を異ならせるには、例えば、異なる磁性材料を用いたり、異なる合金組成としたりすることが考えられる。
また、第1の磁化固定層と第2の磁化固定層とにおいて、飽和磁化と膜厚が共に異なっていて、これにより飽和磁化膜厚積が異なっている構成としても、同様に、情報の記録に必要となる電流量を低減する効果が得られる。
次に、本発明の他の実施の形態として、スイッチング特性を利用したMRAMの概略構成図(模式的断面図)を図4に示す。
本実施の形態では、特に、MRAMのメモリセルを構成する磁気記憶素子41が、記憶層3の上方にも固定層4が設けられ、下層の固定層2と上層の固定層4により記憶層3を上下に挟んだ構成となっている。
上層の固定層4は、第3の磁化固定層20、非磁性層21、第4の磁化固定層22、並びに反強磁性層23が積層されて成る。第3の磁化固定層20の磁化M13と第4の磁化固定層22の磁化M14は互いに逆の向きになっている。また、固定層4の第3の磁化固定層20の磁化M13は、固定層2の第1の磁化固定層12の磁化M11の向きと同じになっている。
また、記憶層3と上層の固定層4との間は、トンネル絶縁層25になっており、記憶層3と下層の固定層2との間のトンネル絶縁層18と併せて、二重磁気トンネル抵抗素子となっている。
そして、下層の固定層2は、先の実施の形態と同様に、第1の磁化固定層12の膜厚t1と第2の磁化固定層14の膜厚t2が異なっている。本実施の形態では、第1の磁化固定層12の方が厚く(t1>t2)なっている。
また、上層の固定層4でも、第3の磁化固定層20の膜厚t3と第4の磁化固定層22の膜厚t4が異なり、第3の磁化固定層20の方が厚く(t3>t4)なっている。
このように磁気記憶素子41を構成したことにより、下層の固定層2及び上層の固定層4において、2層の磁化固定層の飽和磁化膜厚積を異ならせて、これら下層の固定層2及び上層の固定層4から発生する磁極磁界の作用によって、スピンフロッピング磁界Hsfを低磁界側にシフトさせることができる。
これにより、記憶層3の各記憶層16,18の磁化M1,M2を反転させるために必要な電流を低減することができる。
磁化反転に必要な電流を低減する効果を充分に得るためには、飽和磁化M13で膜厚t3である第3の磁化固定層20と、飽和磁化M14で膜厚t4である第4の磁化固定層22とにおいて、
|M13・t3−M14・t4|/|M13・t3+M14・t4|>0.1 (2)
の条件を満たすことが望ましい。
また、先の実施の形態と同様に、前述の(1)式の条件を満たすことが望ましい。
そして、下層の固定層2からの磁極磁界の作用と、上層の固定層4からの磁極磁界の作用とが、互いに打ち消し合うのではなく、互いに強めあうように、各磁化固定層12,14,20,22を構成することが望ましい。
その他の構成は、先の実施の形態と同様であるので、同一符号を付して重複説明を省略する。
上述の本実施の形態の構成によれば、下層の固定層2において第1の磁化固定層12の膜厚t1と第2の磁化固定層14の膜厚t2とが異なり、上層の固定層4において第3の磁化固定層20の膜厚t3と第4の磁化固定層22の膜厚t4とが異なる磁気記憶素子41を構成したことにより、下層の固定層2及び上層の固定層4において、2層の磁化固定層の飽和磁化膜厚積が異なることから、各固定層2,4で発生する磁極磁界の作用によって、スピンフロッピング磁界Hsfを低磁界側にシフトさせることができる。
これにより、記憶層3の第1の記憶層16及び第2の記憶層18の磁化M1,M2の向きを反転して情報の記録を行うために必要となる、電流磁界のしきい値を低減することができ、情報の記録に必要となる電流量を低減することが可能になる。
従って、本実施の形態の構成により、情報の記録に必要となる消費電力を低減することが可能になる。
また、MRAMの小型化や記憶容量の増大を図ることが容易に可能となり、信頼性の向上を図ることができる。
次に、本発明のさらに他の実施の形態として、スイッチング特性を利用したMRAMの概略構成図(模式的断面図)を図5に示す。
本実施の形態では、図4に示した実施の形態と同様に、記憶層(自由層)3の上層に固定層4を設け、この上層の固定層4を構成する第3の磁化固定層20及び第4の磁化固定層22の膜厚が異なるように磁気記憶素子42を構成している。
そして、図4に示した先の実施の形態と同様に、下層の固定層2は、第1の磁化固定層12の膜厚t1と第2の磁化固定層14の膜厚t2が異なり、第1の磁化固定層12の方が厚く(t1>t2)なっており、上層の固定層4は、第3の磁化固定層20の膜厚t3と第4の磁化固定層22の膜厚t4が異なり、第3の磁化固定層20の方が厚く(t3>t4)なっている。
本実施の形態では、記憶層3と上層の固定層4との間が非磁性層19となっている。
これにより、図4に示した実施の形態のようにトンネル絶縁層を2層設けた場合と比較して、磁気記憶素子全体の抵抗を低くすることができる。
このように磁気記憶素子42を構成したことにより、図4に示した実施の形態と同様に、下層の固定層2及び上層の固定層4から発生する磁極磁界の作用によって、スピンフロッピング磁界Hsfを低磁界側にシフトさせることができ、これにより、記憶層3の各記憶層16,18の磁化M1,M2を反転させるために必要な電流を低減することができる。
本実施の形態でも、磁化反転に必要な電流を低減する効果を充分に得るためには、前述した(1)式の条件や(2)式の条件を満たすことが望ましい。
そして、下層の固定層2からの磁極磁界の作用と、上層の固定層4からの磁極磁界の作用とが、互いに打ち消し合うのではなく、互いに強めあうように、各磁化固定層12,14,20,22を構成することが望ましい。
その他の構成は、図4に示した実施の形態と同様であるので、同一符号を付して重複説明を省略する。
上述の本実施の形態の構成によれば、図4に示した先の実施の形態と同様に、下層の固定層2において第1の磁化固定層12の膜厚t1と第2の磁化固定層14の膜厚t2とが異なり、上層の固定層4において第3の磁化固定層20の膜厚t3と第4の磁化固定層22の膜厚t4とが異なる磁気記憶素子42を構成したことにより、下層の固定層2及び上層の固定層4でそれぞれ発生する磁極磁界の作用により、スピンフロッピング磁界Hsfを低磁界側にシフトさせることができる。
これにより、情報の記録に必要となる電流量を低減することが可能になり、情報の記録に必要となる消費電力を低減することが可能になる。
また、MRAMの小型化や記憶容量の増大を図ることが容易に可能となり、信頼性の向上を図ることができる。
なお、図4及び図5にそれぞれ示した各実施の形態では、下層の固定層2の第1の磁化固定層12及び第2の磁化固定層14、並びに上層の固定層4の第3の磁化固定層20及び第4の磁化固定層22において、共に膜厚が異なる構成となっている。
これに対して、下層の固定層2或いは上層の固定層4のいずれか一方において、2層の磁化固定層の膜厚が異なる構成としても、同様に本発明の効果を得ることが可能である。
また、膜厚を異ならせる構成の代わりに、飽和磁化を異ならせる構成としても、同様に本発明の効果を得ることが可能である。
次に、本発明の別の実施の形態として、スイッチング特性を利用したMRAMの概略構成図(模式的斜視図)を図6に示す。図6では、ビット線やワード線、選択用MOSトランジスタの図示を省略して磁気記憶素子のみを図示している。
本実施の形態では、MRAMのメモリセルを構成する磁気記憶素子43が、図4に示した磁気記憶素子41と同様に、記憶層3の上方にも固定層4が設けられ、下層の固定層2と上層の固定層4により記憶層3を上下に挟んだ構成となっている。
また、図4に示した磁気記憶素子41と同様に、記憶層3と上層の固定層4との間がトンネル絶縁層25になっており、二重磁気トンネル抵抗素子となっている。
また、好ましくは、下層のトンネル絶縁層15と上層のトンネル絶縁層25とを同じ膜厚とする。
これにより、下層の固定層2から記憶層3への磁極磁界の作用と、上層の固定層4から記憶層3への磁極磁界の作用とを、ほぼ同一に揃えることができる。
本実施の形態では、特に、下層の固定層2の磁性層が磁化固定層12の1層のみであり、かつ上層の固定層4の磁性層が磁化固定層20の1層のみである構成となっている。さらに、記憶層3が、第1の記憶層16、第2の記憶層18、第3の記憶層26の3層の磁性層から構成されている。第3の記憶層26は、第2の記憶層18上に非磁性層19を介して配置されている。
第1の記憶層16の磁化M1及び第3の記憶層26の磁化M3と、第2の記憶層18の磁化M2とは互いに逆の向きになっている。
また、上層の固定層4の磁化固定層20の磁化M21の向きは、下層の固定層2の磁化固定層12の磁化M11の向きと同じになっている。
このように磁化記憶素子43を構成したことにより、下層の固定層2の磁化固定層12及び上層の固定層4の磁化固定層20から、それぞれ発生する磁極磁界の作用によって、スピンフロッピング磁界Hsfを低磁界側にシフトさせることができる。
これにより、記憶層3の各記憶層16,18,26の磁化M1,M2,M3を反転させるために必要な電流を低減することができる。
また、飽和磁化M16で膜厚t16である第1の記憶層16と、飽和磁化M18で膜厚t18である第2の記憶層18と、飽和磁化M26で膜厚t26である第3の記憶層26において、
|M18・t18−M16・t16−M26・t26|/| M16・t16+M18・t18+M26・t26|≦0.1 (3)
の条件を満たすことが望ましい。
さらに、Toggle動作の領域が過剰にシフトしないようにするために、飽和磁化M12で膜厚t12である下層の磁化固定層12と、飽和磁化M20で膜厚t20である上層の磁化固定層24と、記憶層(自由層)3の各磁性層16,18,26において、
| M12・t12+M20・t20|/| M16・t16+M18・t18+M26・t26|<1.0 (4)
の条件を満たすことが望ましい。
そして、下層の固定層2からの磁極磁界の作用と、上層の固定層4からの磁極磁界の作用とが、互いに打ち消し合うのではなく、互いに強めあうように、各磁化固定層12,20を構成することが望ましい。
上述の本実施の形態の構成によれば、下層の固定層2及び上層の固定層4を、それぞれ1層の磁性層(磁化固定層12、磁化固定層20)から構成したことにより、各固定層2,4で発生する磁極磁界の作用によって、スピンフロッピング磁界Hsfを低磁界側にシフトさせることができる。
これにより、記憶層3の各磁性層(第1の記憶層16、第2の記憶層18、第3の記憶層26)の磁化M1,M2,M3の向きを反転して情報の記録を行うために必要となる、電流磁界のしきい値を低減することができ、情報の記録に必要となる電流量を低減することが可能になる。
従って、本実施の形態の構成により、情報の記録に必要となる消費電力を低減することが可能になる。
また、MRAMの小型化や記憶容量の増大を図ることが容易に可能となり、信頼性の向上を図ることができる。
さらに、下層の固定層2から記憶層3に誘起される漏洩磁界の大きさと、上層の固定層4から記憶層3に誘起される漏洩磁界の大きさをほぼ同一に揃えて、記憶層3の各磁性層16,18,26に対称なバイアス磁界を印加することが可能になる。これにより、良好なToggle動作を行うことができる。
なお、本実施の形態では、図4に示した磁気記憶素子41と同様に、記憶層(自由層)3と上層の固定層4との間をトンネル絶縁層25として、二重磁気トンネル抵抗素子を構成しているが、図5に示した磁気記憶素子42のように、記憶層(自由層)3と上層の固定層4との間を導電性の非磁性層としてもよい。
この場合も、好ましくは、導電性の非磁性層を下層のトンネル絶縁層と同じ膜厚とする。
これにより、下層の固定層2から記憶層3への磁極磁界の作用と、上層の固定層4から記憶層3への磁極磁界の作用とを、ほぼ同一に揃えることができる。
次に、本発明のさらに別の実施の形態として、スイッチング特性を利用したMRAMの概略構成図(模式的斜視図)を図7に示す。図7では、ビット線やワード線、選択用MOSトランジスタの図示を省略して磁気記憶素子のみを図示している。
本実施の形態では、特に、記憶層(自由層)3のパターンと比較して、固定層2の一部の層のパターン、具体的には反強磁性層11及び第1の磁化固定層12のパターンが、磁化容易軸方向に大きくなるように形成されて、磁気記憶素子51が構成されている。
このような構成の磁気記憶素子51は、固定層2の一部(反強磁性層11及び第1の磁化固定層12)のみが磁化容易軸方向に露出するように、パターニングを行うことにより、作製することができる。
磁極磁界をメモリ素子の磁化容易軸方向に印加して、スピンフロッピング磁界を低磁界側にシフトすることにより、上述したように、ワード線電流及びビット線電流を低減することができる。
ところが、磁化困難軸方向に磁極磁界が加わると、不要なDirect動作の領域が拡大する場合がある。
そこで、本実施の形態のように、固定層2の一部のみが磁化容易軸方向に露出するようにパターニングを行うことによって、Direct動作の領域の拡大を阻止することができる。
上述の本実施の形態の構成によれば、記憶層(自由層)3のパターンと比較して、反強磁性層11及び第1の磁化固定層12のパターンが、磁化容易軸方向に大きくなるように形成されており、第2の磁化固定層14のパターンと比較して、第1の磁化固定層12のパターンが磁化容易軸方向に大きくなっている。
これにより、第1の磁化固定層12の飽和磁化が第2の磁化固定層14の飽和磁化よりも大きくなり、第1の磁化固定層12及び第2の磁化固定層14の飽和磁化膜厚積が異なる。
従って、固定層2の2層の磁化固定層12,14の飽和磁化膜厚積が異なり、第1の磁化固定層12のパターンが磁化容易軸方向に大きくなっていることによって、磁化容易軸方向に磁極磁界を発生させて、スピンフロッピング磁界Hsfを低磁界側にシフトさせることができ、前述した実施の形態と同様に、記録に必要となる消費電力を低減する効果を得ることができる。
また、固定層2の2層の磁化固定層12,14は、図7に示すように、磁化困難軸方向の端部のパターンが同じであるため、磁化困難軸方向に加わる磁極磁界を小さく抑えることができ、これにより不要なDirect動作の領域の拡大を抑制することができる。
そして、図7に示した本実施の形態の磁気記憶素子51に対して、先に示した各実施の形態と同様に、ワード線やビット線、選択用MOSトランジスタを設けてメモリセルを構成することができる。
さらに、多数本のワード線及びビット線の各交点付近に磁気記憶素子を設けて、磁気メモリ(MRAM)を構成することができる。
なお、上述した各実施の形態の構成に対して、磁気記憶素子の下の引き出し電極を反強磁性体により構成して、反強磁性層と兼用してもよい。
上述の各実施の形態では、いずれも、記憶層3と下層の固定層2との間にトンネル絶縁層を設けてTMR素子から成る磁気記憶素子を構成していたが、トンネル絶縁層の代わりに非磁性導電層を設けてGMR素子から成る磁気記憶素子を構成してもよい。
GMR素子から成る磁気記憶素子を構成した場合に適用しても、同様に本発明の効果を得ることができる。
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
本発明の一実施の形態のスイッチング特性を利用したMRAMの模式的断面図である。 図1のMRAMを直上より見た模式的平面図である。 A〜D 磁化回転モードの分布を比較する図である。 本発明の他の実施の形態のスイッチング特性を利用したMRAMの模式的断面図である。 本発明のさらに他の実施の形態のスイッチング特性を利用したMRAMの模式的断面図である。 本発明の別の実施の形態のスイッチング特性を利用したMRAMの模式的断面図である。 本発明のさらに別の実施の形態のスイッチング特性を利用したMRAMの模式的斜視図である。 スイッチング特性を利用したMRAMの模式的断面図である。 図8のMRAMを直上より見た模式的平面図である。 図8の磁気記憶素子の磁化容易軸方向に外部磁界が印加されたときの磁化曲線の一例である。 Toggle動作における、電流パルス、各記憶層の磁化の向きの時間変化、TMR素子の電気抵抗の時間変化の一例を示す図である。 No swiching動作における、電流パルス、各記憶層の磁化の向きの時間変化、TMR素子の電気抵抗の時間変化の一例を示す図である。 Direct動作における、電流パルス、各記憶層の磁化の向きの時間変化、TMR素子の電気抵抗の時間変化の一例を示す図である。 Direct動作における、電流パルス、各記憶層の磁化の向きの時間変化、TMR素子の電気抵抗の時間変化の一例を示す図である。 図8の磁気記憶素子の磁化回転モードの分布を示す図である。
符号の説明
1,41,42,43,51 磁気記憶素子、2,4 固定層、3 記憶層(自由層)、5 ワード線、6 ビット線、11 反強磁性層、12 第1の磁化固定層、13,17 非磁性層、14 第2の磁化固定層、15,25 トンネル絶縁層、16 第1の記憶層、18 第2の記憶層、20 第3の磁化固定層、22 第4の磁化固定層、30 シリコン基板、31 選択用MOSトランジスタ

Claims (2)

  1. 情報を磁性体の磁化状態によって保持する記憶層が、非磁性層を介して配置された複数層の強磁性体層から成り、
    前記記憶層に対して、非磁性層を介して、磁化の向きが固定された磁化固定層が配置され、
    前記磁化固定層に対して、前記記憶層とは反対の側に、反強磁性層が配置され、
    前記磁化固定層が非磁性層を介して配置された2層の強磁性体層からなり、前記反強磁性層と、前記2層の強磁性体層のうちの前記反強磁性層に近い側の一方の強磁性体層とが、前記2層の強磁性体層のうちの前記記憶層に近い側の他方の強磁性体層よりも磁化容易軸方向に大きいパターンに形成され、
    回転磁界を前記記憶層に印加することにより、スイッチング特性を利用したトグル動作によって前記記憶層の複数層の強磁性体層の磁化の向きを反転させて、情報の記録が行われる
    磁気記憶素子。
  2. 情報を磁性体の磁化状態によって保持する記憶層が、非磁性層を介して配置された複数層の強磁性体層から成り、
    前記記憶層に対して、非磁性層を介して、磁化の向きが固定された磁化固定層が配置され、
    前記磁化固定層に対して、前記記憶層とは反対の側に、反強磁性層が配置され、
    前記磁化固定層が非磁性層を介して配置された2層の強磁性体層からなり、前記反強磁性層と、前記2層の強磁性体層のうちの前記反強磁性層に近い側の一方の強磁性体層とが、前記2層の強磁性体層のうちの前記記憶層に近い側の他方の強磁性体層よりも磁化容易軸方向に大きいパターンに形成され、回転磁界を前記記憶層に印加することにより、スイッチング特性を利用したトグル動作によって前記記憶層の複数層の強磁性体層の磁化の向きを反転させて、情報の記録が行われる磁気記憶素子と、
    互いに交差する第1の配線と第2の配線とを備え、
    前記第1の配線と前記第2の配線とが交差する交点付近に、それぞれ前記磁気記憶素子が配置されて成り、
    前記第1の配線に流れる電流による電流磁場と、前記第2の配線に流れる電流による電流磁場とによる前記回転磁界を前記記憶層に印加することにより、前記記憶層の複数層の強磁性体層の磁化の向きを反転させて、情報の記録が行われる
    磁気メモリ。
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