JP4631267B2 - 磁気記憶素子及び磁気メモリ - Google Patents
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Description
しかし、DRAMは電源を切ると情報が消えてしまう揮発性メモリであるため、情報が消えない不揮発のメモリが望まれている。
特に、不揮発性メモリは、機器の高機能化に必要不可欠な部品と考えられている。
例えば、電源の消耗やトラブル、サーバーとネットワークが何らかの障害により切断された場合でも、不揮発性メモリはシステムや個人の重要な情報を保護することができる。
また、最近の携帯機器は、不要の回路ブロックをスタンバイ状態にしてできるだけ消費電力を抑えるように設計されているが、高速のワークメモリと大容量ストレージメモリを兼ねることができる不揮発性メモリを実現することができれば、消費電力とメモリの無駄を無くすことができる。
さらに、高速の大容量不揮発性メモリが実現できれば、電源を入れると瞬時に起動できる“インスタント・オン”機能も可能になってくる。
しかしながら、フラッシュメモリは、書き込み速度がμ秒のオーダーと遅いため、高速なアクセスに向かないという欠点がある。
一方、FRAMにおいては、書き換え可能回数が1012〜1014と有限であるため、完全にSRAMやDRAMを置き換えるには耐久性が小さく、また強誘電体キャパシタの微細加工が難しいという問題が指摘されている。
しかし、これらの構成では、負荷のメモリセル抵抗が10〜100Ωと低いため、読み出し時のビット当たりの消費電力が大きく大容量化が難しいという欠点があった。
当初は、室温における抵抗変化率が1〜2%しかなかったが(非特許文献4参照)、近年では20%近くの抵抗変化率が得られるようになり(非特許文献5参照)、TMR効果を利用したMRAMに注目が集まるようになってきている。
アステロイド特性を利用した方法は、選択性が各記憶素子の保磁力特性に依存するために、素子の寸法や磁気特性のばらつきに弱いという欠点があった。
これに対して、スイッチング特性を利用した方法は、素子選択に使える磁界範囲が広いので、素子ごとの特性ばらつきが多少あっても、大規模なメモリを実現しやすい、という利点がある。
メモリセルに記録された情報を読み出すために、メモリセルを電気的に選択するためには、ダイオード又はMOSトランジスタ等を用いることができるが、図8に示す構成はMOSトランジスタを用いている。
第1の磁化固定層112及び第2の磁化固定層114の2層の磁性層は、非磁性層113を介して配置されていることにより、反強磁性結合している。さらに、第1の磁化固定層112は、反強磁性層111と接して配置されており、これらの層間に働く交換相互作用によって、強い一方向の磁気異方性を有する。そして、これら4層111,112,113,114により固定層102が構成される。
第1の記憶層116及び第2の記憶層118の2層の磁性層は、非磁性層117を介して配置されていることにより、反強磁性結合している。これら第1の記憶層116及び第2の記憶層118は、それぞれの磁化M1,M2の向きが比較的容易に回転するように構成される。そして、これら3層116,117,118により記憶層(自由層)103が構成される。
第2の磁化固定層114と第1の記憶層116との間、即ち固定層102と記憶層(自由層)103との間には、トンネル絶縁層115が形成されている。このトンネル絶縁層115は、上下の磁性層116及び114の磁気的結合を切るとともに、トンネル電流を流す役割を担う。これにより、磁性層の磁化の向きが固定された固定層102と、トンネル絶縁層115と、磁化の向きを変化させることが可能な記憶層(自由層)103とにより、TMR(Tunneling Magnetoresistance )素子が構成されている。
そして、上述の各層111〜118と、下地膜110及びトップコート膜119により、TMR素子から成る磁気記憶素子101が構成されている。
磁気記憶素子101のトップコート膜119は、その上のビット線(BL)106に接続されている。また、磁気記憶素子101の下方には絶縁膜を介して、書き込みワード線(WL)105が配置されている。
通常、第1の磁化固定層112と第2の磁化固定層114とは、飽和磁化膜厚積が等しい構成とされるため、磁極磁界の漏洩成分は無視できるくらい小さい。
磁気記憶素子101は、平面形状が楕円形状であり、楕円の長軸方向に磁化容易軸60があり、楕円の短軸方向に磁化困難軸61があり、これら磁化容易軸60と磁化困難軸61とが直交している。
また、ビット線106及びワード線105は、格子状に配置され、両者のなす角度αは一定(図9ではほぼ直交している)である。磁気記憶素子101は、その磁化容易軸60がワード線105に対して傾斜角度θ(0<θ<90°)を有するように、ワード線105及びビット線106の交点に配置されている。
そして、電流磁界Hb,Hwの印加によって、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2の向きの向きを変えることにより、記憶層103に情報(例えば、情報”1”又は情報”0”)を記録することができる。
また、記録された情報の読み出しは、磁気抵抗効果によるトンネル電流の変化を検出して行うことができる。
第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2の合成磁化Mの大きさは、外部磁界の大きさによって顕著に変化する。
最初のしきい値はスピンフロッピング磁界Hsfである。外部磁界Hがこのスピンフロッピング磁界Hsf以下ならば、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2が、常に反平行状態(↑↓)を保つ。
外部磁界HがHsfを超えると、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2が、交差磁化状態をとって外部磁界Hに拮抗する。ただし、二つの磁化M1,M2がなす角度は180度以下である。この状態から外部磁界Hを取り去れば、最初の反平行状態に戻ることが多い。
次のしきい値は飽和磁界Hsatである。外部磁界Hが飽和磁界Hsatを超えると、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2は平行状態(↑↑)となる。一旦、飽和磁界Hsat以上の外部磁界Hを印加してしまうと、記憶層103は最初の反平行状態の記憶を忘却するので、外部磁界を取り去っても最初の磁化状態に戻るとは限らない。
外部磁界Hを印加することにより、図10に示したように、記憶層103の第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2の向きが変化するが、外部磁界Hを印加する前の状態と、外部磁界Hを取り去った後の状態との関係により、3種類の動作に大別することができる。
また、外部磁界Hの印加の前の状態と、外部磁界Hを取り去った後の状態とで、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2の向きが同じ向きになる(2つの磁化M1,M2の向きが入れ替わらない)動作がある。以下、このような動作を、No switching動作と呼ぶ。
さらにまた、外部磁界Hの印加の前の状態に係わらず、外部磁界Hを取り去った後の状態では、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2が、それぞれ決まった向きに変化する動作がある。この動作では、外部磁界Hを印加している間に、2層の磁化M1,M2が同じ向き(平行)になってしまい、外部磁界Hを印加する前の反平行状態の記憶が失われるため、外部磁界Hを除去した後の状態では、2層の磁化M1,M2が一方通行な磁化回転をして、ある決まった向きに変化する。以下、このような動作を、Direct動作と呼ぶ。
図11では、1ビットの記録を行うサイクルにおいて、時間原点を時刻T0として、時刻T1,T2,T3,T4と時刻が経過して、最後に定常状態に戻るまでの磁化M1,M2の向き及びTMR素子の電気抵抗Rの変化を示している。以下、他の動作の場合の図でも同様である。
このように電流パルスに時間差を設けることにより、各電流磁界Hw,Hbの合成磁界を回転磁界として、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2の向きを回転させることができる。
TMR素子の電気抵抗Rは、第1の記憶層116の磁化M1と第2の磁化固定層114の磁化M12の向きが等しい場合に、低抵抗(これを例えば情報”0”とする)となり、第1の記憶層116の磁化M1と第2の磁化固定層114の磁化M12の向きが反平行である場合に、高抵抗(これを例えば情報”1”とする)となる。
時刻T1から時刻T2までの間に、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2とがなす角度が180度以下になる。
時刻T2から時刻T3までの間には、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2とがなす角度が鋭角(90度以下)になる。
時刻T3以降で第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2とがスピンフロップし、時刻T4を過ぎて再び反平行状態に戻る。このとき、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2は、それぞれ初期状態に対して向きが逆転している。
この例では、ワード線電流Iwのパルスを図11とは逆の向きにしている。ビット線電流Ibのパルスは図11と同じである。
このように電流パルスに時間差を設けることにより、各電流磁界Hw,Hbの合成磁界を回転磁界として、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2の向きを回転させることができる。
時刻T1から時刻T2までの間に、第1の記憶層116の磁化M1と第2の記憶層118の磁化M2とがなす角度が180度以下になる。
この場合は、時刻T2から時刻T3までの間で、ワード線電流磁界Hw及びビット線電流磁界Hbにより形成される回転磁界の向きが、磁気記憶素子101の磁化容易軸の方向(正方向または負方向のいずれか)を向かないので、スピンフロッピングが起こらない。 その結果、時刻T4以降では、磁化状態は初期状態に対して変化しない。
図13に示す例では、電流パルスをいずれも図11と同じ向きにしている。一方、図14に示す例では、電流パルスをいずれも図11とは逆の向きにしている。
このように電流パルスに時間差を設けることにより、各電流磁界Hw,Hbの合成磁界を回転磁界として、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2の向きを回転させることができる。
時刻T1から時刻T2までの間に、スピンフロッピングが起こり、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2がなす角度は90度以下になる。
時刻T2から時刻T3までの間に、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2の向きが、ほぼ同じ向きに揃ってしまい、ワード線電流磁界Hw及びビット線電流磁界Hbにより形成される回転磁界の向きとほぼ等しくなる。
時刻T3以降では、第1の記憶層116の磁化M1及び第2の記憶層118の磁化M2が、スピンフロップして再び反平行状態に戻るが、その磁化状態は初期状態に依存しない。
一方、ビット線電流磁界Hb及びワード線電流磁界Hwの合成磁界が飽和磁界Hsatを超えたところは、Direct動作の領域82となることが多い。
そして、ビット線電流磁界Hb及びワード線電流磁界Hwの合成磁界がスピンフロッピング磁界Hsf以上飽和磁界Hsat未満であり、かつ、第一象限及び第三象限に属する範囲は、Toggle動作の領域80となることが期待できる。
一方、ワード線またはビット線を共有する選択されていないメモリセルが磁化反転するのを避けるには、非選択メモリセルへ印加される合成磁界が、No switching動作の領域81の範囲に含まれていることが必要である。
この磁化容易軸方向の磁極磁界により、スピンフロッピング磁界を低磁界側にシフトさせることができる。
これにより、記憶層の各強磁性体層の磁化の向きを反転させて、情報の記録を行うために必要となる、電流磁界(ワード線電流磁界やビット線電流磁界)のしきい値を低減することができ、情報の記録に必要となる電流量を低減することが可能になる。
また、磁化困難軸方向の磁極磁界の発生を抑制することにより、記憶層の各強磁性体層の磁化が特定の向きに変化して元の状態の記憶が失われる動作(前述のDirect動作)の領域の拡大を抑制することができる。
そして、特に、磁気記憶素子が、情報を磁性体の磁化状態によって保持する記憶層が非磁性層を介して配置された複数層の強磁性体層から成り、記憶層に対して、非磁性層を介して、磁化の向きが固定された磁化固定層が配置され、磁化固定層に対して、記憶層とは反対の側に、反強磁性層が配置され、磁化固定層が非磁性層を介して配置された2層の強磁性体層からなり、反強磁性層と、2層の強磁性体層のうちの反強磁性層に近い側の一方の強磁性体層とが2層の強磁性体層のうちの記憶層に近い側の他方の強磁性体層よりも磁化容易軸方向に大きいパターンに形成されている構成となっていることにより、前述したように、磁化固定層から磁化容易軸方向の磁極磁界を発生させて、スピンフロッピング磁界を低磁界側にシフトさせることができ、情報の記録に必要となる電流量を低減することが可能になる。また、磁化困難軸方向の磁極磁界の発生を抑制して、Direct動作の領域の拡大を抑制することができる。
従って、情報の記録に必要となる消費電力を低減することが可能になる。
また、情報の記録に必要となる電流量を低減することが可能になるため、記録用の電流を流す配線におけるエレクトロン・マイグレーション破断の発生を低減することができ、これにより信頼性の向上を図ることができる。
本実施の形態においても、図8に示した従来の構成と同様に、メモリセルの読み出しのために選択用MOSトランジスタを用いている。
第1の磁化固定層12及び第2の磁化固定層14の2層の磁性層は、非磁性層13を介して配置されていることにより、反強磁性結合している。さらに、第1の磁化固定層12は、反強磁性層11と接して配置されており、これらの層間に働く交換相互作用によって、強い一方向の磁気異方性を有する。そして、これら4層11,12,13,14により固定層2が構成される。
第1の記憶層16及び第2の記憶層18の2層の磁性層は、非磁性層17を介して配置されていることにより、反強磁性結合している。これら第1の記憶層16及び第2の記憶層18は、それぞれの磁化M1,M2の向きが比較的容易に回転するように構成される。そして、これら3層16,17,18により記憶層(自由層)3が構成される。
第2の磁化固定層14と第1の記憶層16との間、即ち固定層2と記憶層(自由層)3との間には、トンネル絶縁層15が形成されている。このトンネル絶縁層15は、上下の磁性層16及び14の磁気的結合を切るとともに、トンネル電流を流す役割を担う。これにより、磁性層の磁化の向きが固定された固定層2と、トンネル絶縁層15と、磁化の向きを変化させることが可能な記憶層(自由層)3とにより、TMR(Tunneling Magnetoresistance )素子が構成されている。
反強磁性層11の下には、下地膜10が形成されている。この下地膜10は、上方に積層される層の結晶性を高める作用がある。
非磁性層13,17の材料としては、例えば、タンタル、クロム、ルテニウム等が使用できる。
反強磁性層11の材料としては、例えば、鉄、ニッケル、白金、イリジウム、ロジウム等のマンガン合金、コバルトやニッケル酸化物等が使用できる。
下地膜10には、例えば、クロム、タンタル等を使用できる。
トップコート膜19には、例えば、銅、タンタル、TiN等の材料が使用できる。
トンネル絶縁層15は、スパッタリングで形成された金属膜を酸化、もしくは窒化させることにより得ることができる。
磁気記憶素子1のトップコート膜19は、その上のビット線(BL)6に接続されている。また、磁気記憶素子101の下方には絶縁膜を介して、書き込みワード線(WL)5が配置されている。
これにより、後述するように、図8に示した従来の構成と比較して、スピンフロッピング磁界Hsfを低減することができる。
図8に示した従来の構成では、第1の磁化固定層112(飽和磁化M11・膜厚t1)と第2の磁化固定層114(飽和磁化M12・膜厚t2)の飽和磁化膜厚積(M×t)が等しい。
図15に示す磁化回転モード図において、第一象限或いは第三象限のいずれかに含まれる範囲であり、ビット線電流パルスやワード線電流パルスの振幅がToggle動作の領域80に入るように調整すれば、磁気記憶素子1の記憶層3において所望の動作を行わせることが可能である。
スピンフロッピング磁界Hsf自体は、磁界軸Hの正側・負側の両側に存在するため、磁気メモリをToggle動作させる目的であれば、図15の磁化回転モード図を第一象限側・第三象限側のどちらに移動させても、同じ結果が得られる。
|M11・t1−M12・t2|/|M11・t1+M12・t2|>0.1 (1)
の条件を満たすことが望ましい。
磁気記憶素子1は、図9の磁気記憶素子101と同様に、平面形状が楕円形状になっている。
楕円の長軸方向に磁化容易軸60があり、楕円の短軸方向に磁化困難軸61があり、これら磁化容易軸60と磁化困難軸61とが直交している。
また、ビット線(BL)6及びワード線(WL)5は、そのなす角度αが一定(ほぼ直交する)となっている。磁気記憶素子1は、その磁化容易軸60がワード線5に対して傾斜角度θ(0<θ<90°)を有するように、ワード線5及びビット線6の交点に配置されている。
このように磁気メモリを構成した場合に、あるメモリセルの磁気記憶素子1の記憶層3に情報を記録するためには、多数あるワード線5及びビット線6から、記録を行うメモリセルに対応するそれぞれ1本のワード線5及びビット線6を選択し、ワード線5及びビット線6に電流を流して、記録を行うメモリセルの磁気記憶素子1に対して電流磁場Hw,Hbを印加する。これにより、そのメモリセルの磁気記憶素子1の記憶層3に回転磁界が印加され、その記憶層3において、第1の記憶層16の磁化M1及び第2の記憶層18の磁化M2が反転(Toggle動作)して、情報の書き込み(記録)が行われる。
一方、情報の記録を行わないメモリセルでは、ワード線5或いはビット線6の少なくとも一方は選択されていないため、第1の記憶層16の磁化M1及び第2の記憶層18の磁化M2が反転(Toggle動作)するに充分な回転磁界が印加されず、情報の書き込み(記録)が行われないことから、記憶層3に既に記録されている情報が保持される。
磁気記憶素子1の固定層2を、第1の磁化固定層12と第2の磁化固定層14にCoFeを、非磁性層13にRuを、それぞれ用いた構成として、非磁性層13の膜厚を0.8nmに固定して、第1の磁化固定層12の膜厚t1と第2の磁化固定層14の膜厚t2とを、t1+t2=4.0nmの下で変化させて、それぞれ素子の磁化回転モードの分布を調べた。
結果を図3A〜図3Dに示す。図3Aはt1=2.2nm,t2=1.8nm(図1とは逆に第1の磁化固定層12より第2の磁化固定層14が少し薄い)の場合を示し、図3Bはt1=1.5nm,t2=2.5nmの場合を示し、図3Cはt1=1.0nm,t2=3.0nmの場合を示し、図3Dはt1=0.5nm,t2=3.5nmの場合を示している。
なお、図3A〜図3Dでは、磁界の範囲が0〜100Oeと図15と比較して小さいため、磁界が大きいときのDirect動作の領域は現れていない。
図3AではToggle動作の領域80のしきい値が60Oe程度と非常に高いのに対して、図3Dでは20Oe程度まで低減されていることがわかる。
即ち、しきい値となるスピンフロッピング磁界Hsfが低磁界側に移動したことによって、電流振幅を1/3に低減することが可能になることがわかる。これは、消費電力に換算すると、1/9に低減することが可能になることを示している。
これにより、記憶層3の各記憶層16,18の磁化M1,M2の向きを反転させて、情報の記録を行うために必要となる、電流磁界(ワード線電流磁界やビット線電流磁界)のしきい値を低減することができ、情報の記録に必要となる電流量を低減することが可能になる。
従って、本実施の形態の構成により、情報の記録に必要となる消費電力を低減することが可能になる。
また、情報の記録に必要となる電流量を低減することが可能になるため、記録用の電流を流す配線におけるエレクトロン・マイグレーション破断の発生を低減することができ、これにより信頼性の向上を図ることができる。
2層の磁化固定層の飽和磁化を異ならせるには、例えば、異なる磁性材料を用いたり、異なる合金組成としたりすることが考えられる。
上層の固定層4は、第3の磁化固定層20、非磁性層21、第4の磁化固定層22、並びに反強磁性層23が積層されて成る。第3の磁化固定層20の磁化M13と第4の磁化固定層22の磁化M14は互いに逆の向きになっている。また、固定層4の第3の磁化固定層20の磁化M13は、固定層2の第1の磁化固定層12の磁化M11の向きと同じになっている。
また、上層の固定層4でも、第3の磁化固定層20の膜厚t3と第4の磁化固定層22の膜厚t4が異なり、第3の磁化固定層20の方が厚く(t3>t4)なっている。
これにより、記憶層3の各記憶層16,18の磁化M1,M2を反転させるために必要な電流を低減することができる。
|M13・t3−M14・t4|/|M13・t3+M14・t4|>0.1 (2)
の条件を満たすことが望ましい。
また、先の実施の形態と同様に、前述の(1)式の条件を満たすことが望ましい。
そして、下層の固定層2からの磁極磁界の作用と、上層の固定層4からの磁極磁界の作用とが、互いに打ち消し合うのではなく、互いに強めあうように、各磁化固定層12,14,20,22を構成することが望ましい。
これにより、記憶層3の第1の記憶層16及び第2の記憶層18の磁化M1,M2の向きを反転して情報の記録を行うために必要となる、電流磁界のしきい値を低減することができ、情報の記録に必要となる電流量を低減することが可能になる。
従って、本実施の形態の構成により、情報の記録に必要となる消費電力を低減することが可能になる。
そして、図4に示した先の実施の形態と同様に、下層の固定層2は、第1の磁化固定層12の膜厚t1と第2の磁化固定層14の膜厚t2が異なり、第1の磁化固定層12の方が厚く(t1>t2)なっており、上層の固定層4は、第3の磁化固定層20の膜厚t3と第4の磁化固定層22の膜厚t4が異なり、第3の磁化固定層20の方が厚く(t3>t4)なっている。
これにより、図4に示した実施の形態のようにトンネル絶縁層を2層設けた場合と比較して、磁気記憶素子全体の抵抗を低くすることができる。
そして、下層の固定層2からの磁極磁界の作用と、上層の固定層4からの磁極磁界の作用とが、互いに打ち消し合うのではなく、互いに強めあうように、各磁化固定層12,14,20,22を構成することが望ましい。
これにより、情報の記録に必要となる電流量を低減することが可能になり、情報の記録に必要となる消費電力を低減することが可能になる。
また、MRAMの小型化や記憶容量の増大を図ることが容易に可能となり、信頼性の向上を図ることができる。
これに対して、下層の固定層2或いは上層の固定層4のいずれか一方において、2層の磁化固定層の膜厚が異なる構成としても、同様に本発明の効果を得ることが可能である。
また、膜厚を異ならせる構成の代わりに、飽和磁化を異ならせる構成としても、同様に本発明の効果を得ることが可能である。
また、図4に示した磁気記憶素子41と同様に、記憶層3と上層の固定層4との間がトンネル絶縁層25になっており、二重磁気トンネル抵抗素子となっている。
これにより、下層の固定層2から記憶層3への磁極磁界の作用と、上層の固定層4から記憶層3への磁極磁界の作用とを、ほぼ同一に揃えることができる。
また、上層の固定層4の磁化固定層20の磁化M21の向きは、下層の固定層2の磁化固定層12の磁化M11の向きと同じになっている。
これにより、記憶層3の各記憶層16,18,26の磁化M1,M2,M3を反転させるために必要な電流を低減することができる。
|M18・t18−M16・t16−M26・t26|/| M16・t16+M18・t18+M26・t26|≦0.1 (3)
の条件を満たすことが望ましい。
| M12・t12+M20・t20|/| M16・t16+M18・t18+M26・t26|<1.0 (4)
の条件を満たすことが望ましい。
これにより、記憶層3の各磁性層(第1の記憶層16、第2の記憶層18、第3の記憶層26)の磁化M1,M2,M3の向きを反転して情報の記録を行うために必要となる、電流磁界のしきい値を低減することができ、情報の記録に必要となる電流量を低減することが可能になる。
従って、本実施の形態の構成により、情報の記録に必要となる消費電力を低減することが可能になる。
これにより、下層の固定層2から記憶層3への磁極磁界の作用と、上層の固定層4から記憶層3への磁極磁界の作用とを、ほぼ同一に揃えることができる。
ところが、磁化困難軸方向に磁極磁界が加わると、不要なDirect動作の領域が拡大する場合がある。
これにより、第1の磁化固定層12の飽和磁化が第2の磁化固定層14の飽和磁化よりも大きくなり、第1の磁化固定層12及び第2の磁化固定層14の飽和磁化膜厚積が異なる。
さらに、多数本のワード線及びビット線の各交点付近に磁気記憶素子を設けて、磁気メモリ(MRAM)を構成することができる。
GMR素子から成る磁気記憶素子を構成した場合に適用しても、同様に本発明の効果を得ることができる。
Claims (2)
- 情報を磁性体の磁化状態によって保持する記憶層が、非磁性層を介して配置された複数層の強磁性体層から成り、
前記記憶層に対して、非磁性層を介して、磁化の向きが固定された磁化固定層が配置され、
前記磁化固定層に対して、前記記憶層とは反対の側に、反強磁性層が配置され、
前記磁化固定層が非磁性層を介して配置された2層の強磁性体層からなり、前記反強磁性層と、前記2層の強磁性体層のうちの前記反強磁性層に近い側の一方の強磁性体層とが、前記2層の強磁性体層のうちの前記記憶層に近い側の他方の強磁性体層よりも磁化容易軸方向に大きいパターンに形成され、
回転磁界を前記記憶層に印加することにより、スイッチング特性を利用したトグル動作によって前記記憶層の複数層の強磁性体層の磁化の向きを反転させて、情報の記録が行われる
磁気記憶素子。 - 情報を磁性体の磁化状態によって保持する記憶層が、非磁性層を介して配置された複数層の強磁性体層から成り、
前記記憶層に対して、非磁性層を介して、磁化の向きが固定された磁化固定層が配置され、
前記磁化固定層に対して、前記記憶層とは反対の側に、反強磁性層が配置され、
前記磁化固定層が非磁性層を介して配置された2層の強磁性体層からなり、前記反強磁性層と、前記2層の強磁性体層のうちの前記反強磁性層に近い側の一方の強磁性体層とが、前記2層の強磁性体層のうちの前記記憶層に近い側の他方の強磁性体層よりも磁化容易軸方向に大きいパターンに形成され、回転磁界を前記記憶層に印加することにより、スイッチング特性を利用したトグル動作によって前記記憶層の複数層の強磁性体層の磁化の向きを反転させて、情報の記録が行われる磁気記憶素子と、
互いに交差する第1の配線と第2の配線とを備え、
前記第1の配線と前記第2の配線とが交差する交点付近に、それぞれ前記磁気記憶素子が配置されて成り、
前記第1の配線に流れる電流による電流磁場と、前記第2の配線に流れる電流による電流磁場とによる前記回転磁界を前記記憶層に印加することにより、前記記憶層の複数層の強磁性体層の磁化の向きを反転させて、情報の記録が行われる
磁気メモリ。
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