JP2017059740A - 磁気トンネル接合素子及び半導体記憶装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】磁気トンネル接合の抵抗値の電圧依存性を利用したデータ読み出し動作において十分な動作マージンを実現する磁気トンネル接合素子を提供する。
【解決手段】磁気トンネル接合素子は、第1の磁化自由層と第1の方向に磁化が向いた第1の磁化固定層とを含む第1の磁気トンネル接合と、スペーサを挟んで第1の磁化自由層に結合された第2の磁化自由層と第1の方向と反対の第2の方向に磁化が向いた第2の磁化固定層とを含む第2の磁気トンネル接合とを含み、第1の磁化自由層の磁化方向は第1の方向又は第2の方向のうち選択的に設定されたいずれか一方の方向に不揮発的に維持可能であり、第2の磁化自由層の磁化の反転し易さが第1の磁化自由層の磁化方向に応じて異なる。
【選択図】図2

Description

本願開示は、磁気トンネル接合素子及び半導体記憶装置に関する。
磁気抵抗変化メモリ(Magnetoresistive Random Access Memory:以下MRAM)では、各メモリ素子において、トンネル絶縁膜の上下に強磁性金属電極が配置されている。これら強磁性金属電極の相対的な磁化の向きに応じて、磁気トンネル接合(Magnetic Tunnel Junction:以下MTJ)のトンネル抵抗を変化させることにより、データを記録する。2つの強磁性金属電極のうちの一方は、磁化の方向が固定された磁化固定層(Pinned Layer)であり、他方は磁化の方向が反転可能な磁化自由層(Free Layer)である。MTJは、磁化固定層の磁化の向きと磁化自由層の磁化の向きとが平行状態(Parallel State)の場合は低抵抗値を示し、反平行状態(Antiparallel State)の場合は高抵抗値を示す。
磁化自由層の磁化の向きは、配線に電流を流すことで誘導される磁場を用いて反転させることができる。この場合、磁化の反転に必要な書き込み電流の量は、磁化自由層の体積に反比例するため、メモリ素子を微細化することが容易ではない。それに対して、スピン偏極した電子のトルク(Spin-Transfer Torque:STT)により磁化自由層の磁化を反転できることが知られている。この場合、書き換えに必要な電流の量がMTJの磁化自由層の体積に比例するために、素子の微細化に伴い書き換えに必要な電流量も減少する。したがって、スピン注入磁化反転方式を用いることで、微細化が可能な不揮発性メモリとしてMRAMの実用可能性が高まっている。
MRAMが抱える課題として、MTJの低抵抗状態"0"と高抵抗状態"1"との間の抵抗変化量(Magnetoresistance Ratio:以下MR比)が低いことがあげられる。この課題を解決するための技術として、トンネル絶縁膜にMgOを用い強磁性金属電極にCoFeBを用いたCoFeB/MgO/CoFeB構造が、比較的高いMR比を示すことが知られている(例えば特許文献1、2参照)。また、MgOとCoFeBの界面で誘起される界面垂直磁気異方性を利用することで、従来は面内磁化型MTJであったCoFeB/MgO/CoFeBを、垂直磁化型MTJとして利用できることが知られている(例えば非特許文献1参照)。垂直磁化型MTJは面内磁化型MTJに比べてスピン注入磁化反転の効率が良く、MRAMを作製した場合には、同等の熱安定性を実現しながらも、より低い書き換え電流での素子の情報書き換えが実現できると期待されている。現在、CoFeB/MgO/CoFeB構造による界面垂直MTJを利用した、スピン注入磁化反転方式のMRAM(STT−MRAM)の研究開発が活発に行われている(例えば非特許文献2参照)。
前述のようにSTT−MRAMでは、書き換え電流量の観点から、MTJを微細化することが可能である。しかし一方で、MTJを微細化すると素子面積の相対的なばらつき(素子面積のばらつき量を素子面積の平均値で規格化した値)が増加し、結果として素子抵抗の相対的なばらつき(素子抵抗のばらつき量を素子抵抗の平均値で規格化した値)も増加する。前述のMgO/CoFeB界面の垂直磁気異方性を利用した界面垂直MTJでは、CoFeBの膜厚を一定量以下に抑える必要があり、その抵抗変化量は2倍(MR比で100%)から最大でも3倍(MR比で200%)程度である。
上記のような2倍や3倍という値は、他の不揮発性メモリの抵抗変化量と比較すると格段に小さい。そのため、MTJを微細化することで抵抗値の相対的なばらつきが大きくなると、規模の大きいメモリアレイにおいては"0"のメモリ素子の抵抗分布と"1"のメモリ素子の抵抗分布とが互いにオーバーラップしてしまう。その結果、誤読み出しの問題が生じる。
上記の問題を解決するために読み出し対象のMTJそのものをリファレンスセルとして利用するセルフリファレンス回路が提案されている(例えば非特許文献3参照)。一般的なセルフリファレンス回路の動作シーケンスは、例えば以下のステップから構成される。
1)読み出し電流I1をMTJに流して現れた電圧V1をキャパシタC1に保存する。
2)MTJに"0"を書き込む(低抵抗状態への書き込み)。
3)読み出し電流I2(>I1)をMTJに流して現れた電圧V2をキャパシタC2に保存する。
4)C1の電圧V1とC2の電圧V2とを比較し、V1>V2であればデータ"1"を検出し、V1<V2であればデータ"0"を検出する。
5)判定結果が"1"であればMTJに"1"を書き戻す。
上記のセルフリファレンス回路を用いることでリファレンスセルは不要となり、素子の抵抗ばらつきが大きくても素子の状態を正しく読み出すことができる。その一方で、セルフリファレンス回路では1つの情報を読み出すために、2回の読み出し動作、及び少なくとも1回の書き込み動作又は多い場合には2回の書き込み動作が必要となり、読み出し時間が遅くなるとともに比較的大きな電力が消費される。
上記のセルフリファレンス回路の問題点を解決するため、読み出し時に書き込み動作が不要な非破壊セルフリファレンス回路が提案されている(例えば非特許文献4参照)。この回路ではMTJの抵抗値の電圧依存性が抵抗状態(データ書き込み状態)に依存することを利用する。MTJでは一般的に、低抵抗状態における抵抗の電圧依存性が小さく、高抵抗状態における抵抗の電圧依存性が大きい。したがって、例えば以下の動作シーケンスにおいて、読み出し電流I1とI2との比及び分圧回路の比を適切に調整することで、2回の読み出し動作のみにより素子の状態を判別することができる。
1)読み出し電流I1をMTJに流して現れた電圧V1をキャパシタC1に保存する。
2)I2(>I1)をMTJに流して現れた電圧を分圧して電圧V2を得る。
3)V1とV2とを比較し、V1>V2であればデータ"1"を検出し、V1<V2であればデータ"0"を検出する。
上記の非破壊セルフリファレンス回路では、読み出し時の書き込み動作が不要であり、従来のセルフリファレンス回路に比べて高速かつ低消費電力な読み出し動作が可能となる。その一方で、"0"の書き込み状態と"1"の書き込み状態とで抵抗の電圧依存性が異なる点を利用して読み出しを行うために、動作マージンが小さい。その結果、読み出し電流の比と分圧回路の比とを精度良く制御しないと、適切なデータ読み出し動作を実現できないという問題がある。
国際公開第WO2005088745号パンフレット 特開2006−80116号公報 国際公開第WO2010137679号パンフレット
S. Ikeda, 他9名, "A perpendicular-anisotropy CoFeB-MgO magnetic tunnel junction," Nature Materials, Vol. 9, September 2010, pp 721-724 D. C. Worledge, 他9名, "Spin torque switching of perpendicular Ta|CoFeB|MgO-based magnetic tunnel junctions," Applied Physics Letters 98 022501(2011) Gitae Jeong, 他6名, "A 0.24μm 2.0V 1T1MTJ 16kb NV Magnetoresistance RAM with Self Reference Sensing," 2003 IEEE International Solid-State Circuits Conference, Session 16, Paper 16.2 Y Chen, その他5名, "A Nondestructive Self-Reference Scheme for Spin-Transfer Torque Random Access Memory (STT-RAM)," DATE '10 Proceedings of the Conference on Design, Automation and Test in Europe, pp 148-153
以上を鑑みると、MTJの抵抗値の電圧依存性を利用したデータ読み出し動作において十分な動作マージンを実現するMTJ素子及び半導体記憶装置が望まれる。
磁気トンネル接合素子は、第1の磁化自由層と第1の方向に磁化が向いた第1の磁化固定層とを含む第1の磁気トンネル接合と、スペーサを挟んで前記第1の磁化自由層に磁気的に結合された第2の磁化自由層と前記第1の方向と反対の第2の方向に磁化が向いた第2の磁化固定層とを含む第2の磁気トンネル接合とを含み、前記第1の磁化自由層の磁化方向は前記第1の方向又は前記第2の方向のうち選択的に設定されたいずれか一方の方向に不揮発的に維持可能であり、前記第2の磁化自由層の磁化の反転し易さが前記第1の磁化自由層の磁化方向に応じて異なる。
半導体記憶装置は、磁気トンネル接合素子と、前記磁気トンネル接合素子の両端電圧が異なる2つの条件間で前記磁気トンネル接合素子の抵抗値に応じた電気変量を比較し、前記電気変量の比較結果に応じて前記磁気トンネル接合素子の記憶データの判定値を出力する回路とを含み、前記磁気トンネル接合素子は、1の磁化自由層と第1の方向に磁化が向いた第1の磁化固定層とを含む第1の磁気トンネル接合と、スペーサを挟んで前記第1の磁化自由層に磁気的に結合された第2の磁化自由層と前記第1の方向と反対の第2の方向に磁化が向いた第2の磁化固定層とを含む第2の磁気トンネル接合とを含み、前記第1の磁化自由層の磁化方向は前記第1の方向又は前記第2の方向のうち選択的に設定されたいずれか一方の方向に不揮発的に維持可能であり、前記第2の磁化自由層の磁化の反転し易さが前記第1の磁化自由層の磁化方向に応じて異なる。
少なくとも1つの実施例によれば、MTJの抵抗値の電圧依存性を利用したデータ読み出し動作において十分な動作マージンを実現するMTJ素子及び半導体記憶装置を提供することができる。
磁気トンネル接合の基本的な構成及び動作を示す図である。 磁気トンネル接合素子の実施例の構成の一例を示す図である。 図2に示すMTJ素子の動作の一例を示す図である。 MTJ素子の電圧対抵抗特性の一例を示す図である。 第1のMTJの電圧対抵抗特性と第2のMTJの電圧対抵抗特性とを別々に示す図である。 試作したMTJ素子の電圧対抵抗特性及び読み出し電圧の一例を示す図である。 MTJ素子の読み出し動作時の抵抗値差分の一例を示す図である。 MTJ素子の読み出し回路の構成の一例を示す図である。 半導体記憶装置の構成の一例を示す図である。 試作したMTJ素子の構成を示す図である。 試作したMTJ素子の磁界対抵抗特性を示す図である。 MTJ素子を製造する工程の一例を示す図である。 MTJ素子を製造する工程の一例を示す図である。 MTJ素子を製造する工程の一例を示す図である。 MTJ素子を製造する工程の一例を示す図である。 MTJ素子を製造する工程の一例を示す図である。 MTJ素子を製造する工程の一例を示す図である。 MTJ素子を製造する工程の一例を示す図である。 MTJ素子を製造する工程の一例を示す図である。 磁化固定層の構成の一例を示す図である。 磁化自由層の構成の一例を示す図である。 磁化自由層の構成の一例を示す図である。
以下に、本発明の実施例を添付の図面を用いて詳細に説明する。なお以下の図面において、同一又は対応する構成要素は同一又は対応する番号で参照し、その説明は適宜省略する。
図1は、磁気トンネル接合の基本的な構成及び動作を示す図である。図1(a)及び(b)に示す磁気トンネル接合(MTJ)は、磁化自由層10、トンネル絶縁膜11、及び磁化固定層12を含む。図1(a)及び(b)に示すMTJは、垂直磁化型MTJであり、各層の面に平行な方向ではなく各層の面に垂直な方向(即ち層の厚さ方向)に磁化方向が向いている。
図1(a)に示す状態では、磁化自由層10の磁化方向が層内の矢印で示すように上を向いており、磁化固定層12の磁化方向が層内の矢印で示すように上を向いている。このように磁化自由層10の磁化方向と磁化固定層12の磁化方向とが平行状態(同一の方向を向いている状態)において、MTJは低抵抗値を示す低抵抗状態となる。図1(b)に示す状態では、磁化自由層10の磁化方向が層内の矢印で示すように下を向いており、磁化固定層12の磁化方向が層内の矢印で示すように上を向いている。このように磁化自由層10の磁化方向と磁化固定層12の磁化方向とが反平行状態(反対の方向を向いている状態)において、MTJは高抵抗値を示す高抵抗状態となる。MTJを低抵抗状態又は高抵抗状態に設定することにより、MTJに情報を記憶することができる。
前述のように、スピン偏極した電子のトルク(STT)を用いたスピン注入磁化反転により、磁化自由層10の磁化を反転できる。例えば図1(b)に示される磁化方向の状態において、磁化自由層10を正極側に接続し、磁化固定層12を負極側に接続するように電圧を印加する。この電圧印加に伴い、磁化固定層12側から磁化自由層10側に電子が流れる(即ち図面上方向に向かい電子が流れる)。磁化固定層12の磁化方向と逆方向のスピンを有する電子が磁化固定層12を通過する確率が低い一方で、磁化固定層12の磁化方向と同方向のスピンを有する電子は高確率で磁化固定層12を通過し、磁化自由層10に到達する。この磁化固定層12の磁化方向と同方向のスピンを有する電子の影響により、磁化自由層10の磁化方向は反転され、磁化固定層12の磁化方向と同一の向きの磁化を有する状態(図1(a)に示す状態)に磁化自由層10が設定される。
また図1(a)に示される磁化方向の状態において、磁化固定層12を正極側に接続し、磁化自由層10を負極側に接続するように電圧を印加する。この電圧印加に伴い、磁化自由層10側から磁化固定層12側に電子が流れる(即ち図面下方向に向かい電子が流れる)。磁化固定層12の磁化方向と同方向のスピンを有する電子は磁化固定層12を高確率で通過する一方で、磁化固定層12の磁化方向と逆方向のスピンを有する電子の一部は磁化固定層12に反射されて磁化自由層10に影響を与える。磁化固定層12の磁化方向と逆方向のスピンを有する電子の影響により、磁化自由層10の磁化方向は反転され、磁化固定層12の磁化方向と反対向きの磁化を有する状態(図1(b)に示す状態)に磁化自由層10が設定される。
図2は、磁気トンネル接合素子の実施例の構成の一例を示す図である。図2に示す磁気トンネル接合素子(MTJ素子)20は、第1のMTJ101と第2のMTJ102とを含む。第1のMTJ101は、第1の磁化自由層23と第1の方向(図2の例では図面上向き方向)に磁化が向いた第1の磁化固定層21とを含む。第1のMTJ101において、第1の磁化固定層21と第1の磁化自由層23との間にはトンネル絶縁膜22が設けられている。
第2のMTJ102は、スペーサ24を挟んで第1の磁化自由層23に結合された第2の磁化自由層25と、第1の方向と反対の第2の方向(図2の例では図面下向き方向)に磁化が向いた第2の磁化固定層27とを含む。第2のMTJ102において、第2の磁化自由層25と第2の磁化固定層27との間にはトンネル絶縁膜26が設けられている。第2の磁化固定層27の層内の矢印で示す第2の磁化固定層27の磁化方向は、第1の磁化固定層21の層内の矢印で示す第1の磁化固定層21の磁化方向とは反対の方向を向いている。なお磁化の方向は相対的に反対向きであればよく、第1の磁化固定層21の磁化方向が図面下向き方向を向いており、第2の磁化固定層27の磁化方向が図面上向き方向を向いていてもよい。
第1のMTJ101は、図1で説明したMTJと同様に不揮発的な情報記憶が可能な素子である。即ち、第1のMTJ101において、第1の磁化自由層23の磁化方向は第1の方向(図面上向き方向)又は第2の方向(図面下向き方向)のうち選択的に設定されたいずれか一方の方向に不揮発的に維持可能である。具体的には、外部からMTJ素子20に電圧や磁界の印加がない状態において、第1の磁化自由層23の磁化方向は第1の方向又は第2の方向の何れか一方に安定的に維持される。
第1のMTJ101の第1の磁化自由層23と第2のMTJ102の第2の磁化自由層25とはスペーサ24を介して磁気的に結合されており、スペーサ24を介して互いに隣接している。従って、第1の磁化自由層23の磁化の方向に応じて、第1の磁化自由層23から第2の磁化自由層25に影響を与える漏洩磁界の方向が異なることになる。その結果、第1の磁化固定層21、第1の磁化自由層23、及び第2の磁化固定層27が全体として第2の磁化自由層25に与える漏洩磁界の大きさが、第1の磁化自由層23の磁化の方向に応じて異なることになる。
上記の構成により、第2のMTJ102において、第2の磁化自由層25の磁化の反転し易さは、第1の磁化自由層23の磁化方向に応じて異なる。具体的には、MTJ素子20に電圧又は磁界を印加したときに、第2の磁化自由層25の磁化が反転する印加電圧又は印加磁界の大きさが、第1の磁化自由層23の磁化方向に応じて異なる。なお第2の磁化自由層25の保磁力は、第1の磁化自由層23の保磁力に比較して十分に小さくてよい。具体的には、印加電圧又は印加磁界がゼロの状態においては、第1の磁化自由層23の磁化方向に関わらず、第2の磁化固定層27からの漏洩磁界により第2の磁化自由層25の磁化方向が常に第2の方向に向いてよい。
図3は、図2に示すMTJ素子20の動作の一例を示す図である。MTJ素子20は、図3に示すように状態M00、状態M10、及び状態M01の3つの状態のうちの何れか1つの状態をとる。文字Mの後の第1番目の添え字の"0"又は"1"は第1のMTJ101の抵抗状態に対応し、第2番目の添え字の"0"又は"1"は第2のMTJ102の抵抗状態に対応する。"0"が低抵抗状態に対応し、"1"が高抵抗状態に対応する。
状態M00及び状態M01において、第1のMTJ101の第1の磁化自由層23は第1の方向(第1の磁化固定層21の磁化方向と同一の方向)に磁化されている。即ち、第1のMTJ101は低抵抗状態に設定されている。状態M10において、第1のMTJ101の第1の磁化自由層23は第2の方向(第1の磁化固定層21の磁化方向と反対の方向)に磁化されている。即ち、第1のMTJ101は高抵抗状態に設定されている。
状態M00及び状態M10において、第2のMTJ102の第2の磁化自由層25は第2の方向(第2の磁化固定層27の磁化方向と同一の方向)に磁化されている。即ち、第2のMTJ102は低抵抗状態に設定されている。状態M01において、第2のMTJ102の第2の磁化自由層25は第1の方向(第2の磁化固定層27の磁化方向と反対の方向)に磁化されている。即ち、第2のMTJ102は高抵抗状態に設定されている。
外部からMTJ素子20に電圧や磁界の印加がない状態においては、前述のように、第2のMTJ102の第2の磁化自由層25の磁化方向は、常に、第2の磁化固定層27の磁化方向と同一の方向である第2の方向に向いていてよい。以下の説明では、初期状態として、電圧や磁界の印加がない状態において、MTJ素子20は状態M00にあるとする。この状態M00において、第1のMTJ101は低抵抗状態にある。なお以下の説明においては、電圧を印加して状態遷移を起こさせる場合について説明するが、原理的には、外部から磁界を印加しても同様の状態遷移を起こさせることができる。
状態M00において、第1の磁化固定層21を正極側に接続し、第2の磁化固定層27を負極側に接続し、電圧を印加する。この印加電圧を十分に大きくすると、図1において説明したのと同様のスピン注入磁化反転により、第1の磁化自由層23の磁化方向を反転して、第2の方向に向けさせることができる。これにより、MTJ素子20は状態M10に遷移する。即ち、第1のMTJ101が高抵抗状態に書き込まれる。
状態M10に遷移した後に、外部からの電圧や磁界の印加がない状態にしても、状態M10は保持される。何故ならば、第1のMTJ101の第1の磁化自由層23は十分な保磁力を有しており、不揮発的に安定して現在の磁化方向を維持することができるからである。また更に、第2のMTJ102の第2の磁化自由層25は保磁力が小さく、電圧や磁界の印加がない状態では常に第2の磁化固定層27の磁化方向と同一の方向を向くからである。
状態M10において、第1の磁化固定層21を負極側に接続し、第2の磁化固定層27を正極側に接続し、電圧を印加する。この印加電圧を十分に大きくすると、図1において説明したのと同様のスピン注入磁化反転により、第1の磁化自由層23の磁化方向を反転して、第1の方向に向けさせることができる。また第1のMTJ101の第1の磁化自由層23の磁化方向が反転するのと同時に、第2のMTJ102の第2の磁化自由層25の磁化方向が反転してよい。同時反転するのは、印加電圧に応じた電子のスピンのトルクが第2の磁化自由層25の磁化を反転させる方向に働いており、それに加え更に第1の磁化自由層23からの漏洩磁界が当該磁界と同一の方向を向くように第2の磁化自由層25に働きかけるからである。これにより、MTJ素子20は状態M01に遷移する。即ち、第1のMTJ101が低抵抗状態に書き込まれる。
状態M01に遷移した後に、外部からの電圧や磁界の印加がない状態にすると、MTJ素子20は状態M01から状態M00に遷移する。何故ならば、第1のMTJ101の第1の磁化自由層23は十分な保磁力を有しており、不揮発的に安定して現在の磁化方向を維持することができるからである。また更に、第2のMTJ102の第2の磁化自由層25は保磁力が小さく、電圧や磁界の印加がない状態では常に第2の磁化固定層27の磁化方向と同一の方向を向くからである。
上記のようにして、MTJ素子20の第1のMTJ101を高抵抗状態に書き込んだり、低抵抗状態に書き込んだりし、更には、第1のMTJ101に書き込まれた抵抗状態を外部からの電圧や磁界の印加が無い状態において維持することができる。MTJ素子20から書き込まれたデータを読み出す際には、第2の磁化自由層25の磁化の反転し易さが、第1の磁化自由層23の磁化方向に応じて異なることを利用する。以下にこれについて説明する。
図3において、状態M00と状態M01との間の矢印が両方向を向いていることが示すように、MTJ素子20は状態M00と状態M01との間では何れの方向にも遷移することができる。一方、状態M10には状態M00からしか遷移できず、また状態M10からは基本的に状態M01にしか遷移できない。なお前述のように、外部からの電圧や磁界の印加がない状態では、MTJ素子20は状態M10又は状態M00にある。MTJ素子20を状態M10から状態M01に遷移させる、又は状態M00から状態M01に遷移させるためには、第1の磁化固定層21を負極側に接続し、第2の磁化固定層27を正極側に接続し、電圧を印加する。
状態M10から状態M01への遷移については、保磁力が比較的強く磁化状態を不揮発的に保持可能な第1の磁化自由層23の磁化の方向を反転させる必要があり、比較的高い電圧の印加により状態M01への遷移が可能となる。また状態M10においては、第2の磁化自由層25の磁化方向は隣接する第1の磁化自由層23の磁化方向と同じ向きであるので、第2の磁化自由層25の磁化状態は比較的安定している。従って、第2の磁化自由層25を反転させるためには、比較的高い印加電圧が必要となる。
一方、状態M00から状態M01への遷移については、保磁力が比較的弱く磁化状態を不揮発的に保持していない第2の磁化自由層25の磁化の方向を反転させればよいので、比較的低い電圧の印加により状態M01への遷移が可能となる。また状態M00においては、第2の磁化自由層25の磁化方向は隣接する第1の磁化自由層23の磁化方向と逆向きであるので、第2の磁化自由層25の磁化状態は比較的不安定であり、比較的低い電圧の印加により状態M01への遷移が可能となる。
以上を纏めると、状態M00から状態M01への状態遷移のために必要な電圧をV1とし、状態M10から状態M01への状態遷移のために必要な電圧をV2とすると、V1<V2である。ここで、vr1<V1<vr2<V2であるような印加電圧vr1及びvr2を考える。状態M10のMTJ素子20に対しては、電圧vr1を印加しても、電圧vr2を印加しても、状態M10が維持される。即ち、第1のMTJ101の高抵抗状態と第2のMTJ102の低抵抗状態はそのまま維持される。従って、電圧vr1の条件下でのMTJ素子20の全体の抵抗値と、電圧vr2の条件下でのMTJ素子20の全体の抵抗値とは、同一抵抗状態での抵抗値となる。実際には、各MTJの抵抗値には電圧依存性があり印加電圧が増大すると抵抗値が減少するので、電圧vr1の条件下での全体の抵抗値r1よりも、電圧vr2の条件下での全体の抵抗値r2は減少する。即ち、r1>r2となる。
一方、状態M00のMTJ素子20に対しては、電圧vr1を印加したときには状態M00が維持されるが、電圧vr2を印加すると、状態M10への遷移が起こる。即ち、電圧vr1では第1のMTJ101の低抵抗状態と第2のMTJ102の低抵抗状態はそのまま維持されるが、電圧vr2では第1のMTJ101は低抵抗状態に維持され第2のMTJ102は高抵抗状態に遷移する。従って、電圧vr1の条件下でのMTJ素子20の全体の抵抗値と、電圧vr2の条件下でのMTJ素子20の全体の抵抗値とは、第2のMTJ102が異なる抵抗状態での抵抗値となる。この抵抗状態の変化による第2のMTJ102の抵抗値の増大が各MTJの電圧依存性による抵抗値の減少よりも大きい場合、電圧vr1の条件下での全体の抵抗値r1よりも、電圧vr2の条件下での全体の抵抗値r2は増大する。即ち、r1<r2となる。実際のところ、低抵抗状態でのMTJの抵抗値の電圧依存性は比較的小さいので、r1<r2という条件は容易に満たされる。
以上のようにして、印加電圧vr1の条件下での全体の抵抗値r1と印加電圧vr2の条件下での全体の抵抗値r2とを比較することで、MTJ素子20が状態M10にあるのか状態M00にあるのかを判別することができる。即ち、第1のMTJ101が高抵抗状態にあるのか低抵抗状態にあるのかを判別することができる。具体的には、r1>r2であれば、状態M10であると判定し、r1<r2であれば、状態M00であると判定する。
このように、2つの異なる状態(M10とM00)において、比較対象の抵抗値r1とr2との大小関係が反転するので、十分なマージンを確保した正確なデータ判定を実現することができる。なお従来のように単一のMTJを用いて抵抗値の電圧依存性を利用してデータ判定をする場合には、MTJが高抵抗状態であるか低抵抗状態であるかに関わらず印加電圧の増大に伴い抵抗値が減少するので、比較対象の抵抗値の大小関係は反転しない。それに対してMTJ素子20の場合には、第1のMTJ101が情報記憶用のMTJとして機能し、第2のMTJ102が第1のMTJ101の記憶情報に応じて異なる電圧対抵抗特性を提供する読み出し用のMTJとして機能する。このようなデータ読み出し用の第2のMTJ102を設けることにより、十分なマージンを確保した正確なデータ判定を実現することができる。
図4は、MTJ素子20の電圧対抵抗特性の一例を示す図である。横軸はMTJ素子20への印加電圧を示し、縦軸はMTJ素子20の全体の抵抗値を示す。印加電圧が負である領域では、第1の磁化固定層21が負極側であり、第2の磁化固定層27が正極側である。印加電圧が正である領域では、第1の磁化固定層21が正極側であり、第2の磁化固定層27が負極側である。各電圧値に対してMTJ素子20の全体が示す抵抗値は、ヒステリシス特性30で示すような値となる。
電圧及び抵抗条件(以降単に条件と呼ぶ)S1においては、十分に大きな負電圧が印加されており、MTJ素子20は前述の状態M01に書き込まれている。負方向の印加電圧を小さくしていくと、抵抗値の電圧依存性に従い僅かに抵抗値が増加していき、条件S2に到達する。条件S2よりも印加電圧を小さくすると矢印A1で示される状態遷移が発生し、MTJ素子20が状態M01から状態M00に遷移する。この状態遷移では第2のMTJ102が高抵抗状態から低抵抗状態に変化するので、図4において条件S2及び条件S3の縦軸位置の差として示されるように、全体の抵抗値が大きく減少する。
その後条件S3から印加電圧をゼロにすると条件S4となる。この印加電圧ゼロの条件S4においては、状態M00が維持されており、全体の抵抗値も小さいままである。その後正の電圧を印加し、正方向の印加電圧を大きくしていくと、条件S5に到達する。条件S5よりも印加電圧を大きくすると矢印A2で示される状態遷移が発生し、MTJ素子20が状態M00から状態M10に遷移する。この状態遷移では第1のMTJ101が低抵抗状態から高抵抗状態に変化するので、図4において条件S5及び条件S6の縦軸位置の差として示されるように、全体の抵抗値が大きく増大する。なお第1の磁化自由層23の磁化方向の反転による第1のMTJ101の抵抗値の変化量(S5とS6の縦軸位置の差)は、第2の磁化自由層25の磁化方向の反転による第2のMTJ102の抵抗値の変化量(S2とS3の縦軸位置の差)よりも小さくてよい。データ読み出しには第2のMTJ102が重要であり、この条件により、確実なデータ読みだしを実現できる。
その後条件S6から更に正方向の印加電圧を大きくしていくと、条件S7に到達し、MTJ素子20の第1のMTJ101を十分に強い反平行状態に設定することができる。その後条件S7から正方向の印加電圧を小さくして印加電圧をゼロにすると条件S8になる。この印加電圧ゼロの条件S8においては、条件S6において設定された状態M10が維持されており、全体の抵抗値も比較的高い状態が維持される。
その後負の電圧を印加し、負方向の印加電圧を大きくしていくと、条件S9に到達する。条件S9よりも印加電圧を大きくすると矢印A3で示される状態遷移が発生し、MTJ素子20が状態M10から状態M01に遷移する。この状態遷移では第1のMTJ101が高抵抗状態から低抵抗状態に変化して大きな抵抗値の減少をもたらすと共に、第2のMTJ102が低抵抗状態から高抵抗状態に変化して小さな抵抗値の増大をもたらす。その結果、図4において条件S9及び条件S10の縦軸位置の差として示されるように、全体の抵抗値が減少する。
図5は、第1のMTJ101の電圧対抵抗特性と第2のMTJ102の電圧対抵抗特性とを別々に示す図である。図5において、横軸は各MTJへの印加電圧を示し、縦軸は各MTJの抵抗値を示す。図5(a)は、図4と同様の図であり、MTJ素子20に印加する電圧とMTJ素子20の全体の抵抗値とを示す。図5(b)は、第2のMTJ102に印加する電圧と第2のMTJ102の抵抗値とを示す。図5(c)は、第1のMTJ101に印加する電圧と第1のMTJ101の抵抗値とを示す。なお図4においてMTJ素子20に印加された電圧と同一の電圧方向が図5においても用いられている。即ち、図5(b)の第2のMTJ102の場合は、正の印加電圧方向は、第2の磁化自由層25が正極側であり第2の磁化固定層27が負極側である配置に相当する。また図5(c)の第1のMTJ101の場合は、正の印加電圧方向は、第1の磁化自由層23が負極側であり第1の磁化固定層21が正極側である配置に相当する。
図5(c)に示される第1のMTJ101の場合、ヒステリシス特性32で示されるように、正の印加電圧を大きくすると矢印A7で示す状態遷移が起こり、低抵抗状態から高抵抗状態に遷移する。その後負の印加電圧を大きくすると矢印A6で示す状態遷移が起こり、高抵抗状態から低抵抗状態に遷移する。ヒステリシス特性32のループ位置が、印加電圧がゼロである位置に重なっているので、印加電圧がゼロである状態において2つの異なる安定状態が存在し、これらの2つの安定状態により"0"又は"1"の情報を記憶することができる。
図5(b)に示される第2のMTJ102の場合、ヒステリシス特性31で示されるように、負の印加電圧を大きくすると矢印A4で示す状態遷移が起こり、低抵抗状態から高抵抗状態に遷移する。その後負の印加電圧を小さくすると矢印A5で示す状態遷移が起こり、高抵抗状態から低抵抗状態に遷移する。ヒステリシス特性31のループ位置が、印加電圧がゼロである位置によりも左側(負電圧側)に位置しているため、印加電圧がゼロである状態においては1つの安定状態しか存在しない。なお厳密には、第2のMTJ102に対する第1のMTJ101からの漏洩磁界の影響を考えた場合、ヒステリシス特性31の矢印A4で示す遷移の位置は、図5(c)に示す第1のMTJ101の抵抗状態(記憶状態)に依存して異なることになる。
図5(a)は、MTJ素子20の電圧対抵抗特性を示し、図5(b)に示す第2のMTJ102の電圧対抵抗特性と、図5(c)に示す第1のMTJ101の電圧対抵抗特性との和が、MTJ素子20の電圧対抵抗特性となる。即ち、図5(b)に示す第2のMTJ102のヒステリシス特性31と、図5(c)に示す第1のMTJ101のヒステリシス特性32との和が、図5(a)に示すヒステリシス特性30となる。図5(a)に示すヒステリシス特性30の矢印A1で示す遷移が、図5(b)の矢印A4及びA5で示す遷移に相当する。また図5(a)に示すヒステリシス特性30の矢印A3で示す遷移が、図5(c)の矢印A6で示す遷移及び図5(b)の矢印A4で示す遷移に相当する。更に、図5(a)に示すヒステリシス特性30の矢印A2で示す遷移が、図5(c)の矢印A7で示す遷移に相当する。なお実際には、図5(a)に示すヒステリシス特性30の矢印A1で示す遷移も、図5(b)の矢印A4及びA5で示す遷移同様にヒステリシス特性のループを有するが、図示を簡略化して、単なる電圧対抵抗特性のステップ状の変化として遷移を示してある。
図5(a)乃至(c)の説明から分かるように、図4に条件S8及び条件S4として示す外部からの印加電圧ゼロの場合に存在する状態M10と状態M00との2つの安定状態は、第1のMTJ101のヒステリシス特性のループによりもたらされる。また条件S2及びS3として示す状態M00と状態M01との間の状態遷移(矢印A1で示す状態遷移)は、第2のMTJ102のヒステリシス特性のループによってもたらされる。仮に第2のMTJ102のヒステリシス特性のループが図4(図5(b)参照)に示されるよりも右側に位置すると、印加電圧ゼロの状態において状態M01が安定状態となる場合があり得る。
仮に条件S4において状態M00ではなく状態M01が安定状態であるとすると、状態M00と状態M01との間の全体の抵抗値の変化を検出するためには、2つの異なる印加電圧の少なくとも一方は図4に示す正側の電圧となる。状態M00に対応する側の読み出し電圧をvr1として状態M01に対応する側の読み出し電圧をvr2とすると、vr1の時の抵抗値r1とvr2の時の抵抗値r2とはr1<r2となる。この場合、これら2つの異なる印加電圧に対してもう一方の安定状態(記憶状態)である状態M10が示す抵抗値を考えた場合、vr1の時の抵抗値r1とvr2の時の抵抗値r2とが、必ずしもr1>r2とはならず、r1<r2となってしまう可能性がある。即ち、MTJ素子20の高抵抗状態の読み出し時と、MTJ素子20の低抵抗状態の読み出し時とで、比較対象の抵抗値r1とr2との大小関係が反転しない状態となってしまう。従って、比較対象の抵抗値の大小関係を反転させて十分な電圧マージンを確保するためにも、印加電圧ゼロにおいては、第2の磁化自由層25の磁化方向が常に第2の方向に向くように、第2の磁化自由層の保磁力25が設定されていることが望ましい。
図6は、試作したMTJ素子20の電圧対抵抗特性及び読み出し電圧の一例を示す図である。ここまで説明したような特性を有するMTJ素子20を、後述するような構造(図10参照)を用いて試作した。図6において、横軸はMTJ素子20への印加電圧を示し、縦軸はMTJ素子20の全体の抵抗値を示す。
実際に試作したMTJ素子20の電圧対抵抗特性は、図6において白丸の各プロットで示すように、図4に模式的に示したヒステリシス特性30と同様のものとなる。この電圧対抵抗特性を有するMTJ素子20に対して図6に示す電圧vr1(約−0.1V)を印加すると、状態M00の場合には抵抗値R01を示し、状態M11の場合には抵抗値R11を示す。またMTJ素子20に対して図6に示す電圧vr2(約−0.27V)を印加すると、状態M00の場合には抵抗値R02を示し、状態M10の場合には抵抗値R12を示す。
MTJ素子20の第1のMTJ101が低抵抗状態(平行状態)である状態M00では、読み出し電圧vr1及びvr2にそれぞれ対応する2つの抵抗値はR01<R02となる。またMTJ素子20の第1のMTJ101が高抵抗状態(反平行状態)である状態M10では、読み出し電圧vr1及びvr2にそれぞれ対応する2つの抵抗値はR11>R12となる。即ち、第1のMTJ101、スペーサ24、及び第2のMTJ102の合計の抵抗値は、第1の磁化自由層23の磁化方向が第1の方向の場合に印加電圧の増加に伴い増加する電圧位置が存在する。また上記合計の抵抗値は、第1の磁化自由層23の磁化方向が第2の方向の場合に印加電圧の増加に伴い単調に減少する。このようにMTJ素子20の書き込み状態に応じて、比較対象の抵抗値の大小関係が反転するので、十分なマージンを確保した正確なデータ読み出しが可能となる。
図7は、MTJ素子の読み出し動作時の抵抗値差分の一例を示す図である。棒グラフ41は、図6に示す状態M00のMTJ素子20に対して電圧vr1(約−0.1V)を印加したときの抵抗値R01と電圧vr2(約−0.27V)を印加したときの抵抗値R02との差分R02−R01を示す。棒グラフ42は、図6に示す状態M10のMTJ素子20に対して電圧vr1(約−0.1V)を印加したときの抵抗値R11と電圧vr2(約−0.27V)を印加したときの抵抗値R12との差分R12−R11を示す。棒グラフ43は、状態00時の差分R02−R01と状態10時の差分R12−R11との差を示す。状態00時の差分R02−R01と状態10時の差分R12−R11とは符号が反転しているため、両差分の差は大きな値となっている。
棒グラフ44は、比較対象である低抵抗状態の単一のMTJに対して、電圧vr1(約−0.1V)を印加したときの抵抗値RC01と電圧vr2(約−0.27V)を印加したときの抵抗値RC02との差分RC02−RC01を示す。棒グラフ45は、比較対象である高抵抗状態のMTJに対して電圧vr1(約−0.1V)を印加したときの抵抗値RC11と電圧vr2(約−0.27V)を印加したときの抵抗値RC12との差分RC12−RC11を示す。棒グラフ46は、低抵抗状態のときの差分RC02−RC01と高抵抗状態のときの差分RC12−RC11との差を示す。前述のように、MTJの抵抗値には電圧依存性があり印加電圧が増大すると抵抗値が減少する。この抵抗値の減少の度合いは、MTJが高抵抗状態では強く、MTJが低抵抗状態では弱い。しかしながら電圧増大と共に抵抗値が減少することには変わりがなく、低抵抗状態のときの差分R02−R01と高抵抗状態のときの差分R12−R11とは符号が同一であるため、両差分の差は小さな値となっている。このように通常のMTJでは読み出しマージンの小さな読み出し判定となり、信頼性が低く誤判定する可能性がある。
図8は、MTJ素子の読み出し回路の構成の一例を示す図である。図8に示す回路は、MTJ素子51、MOSトランジスタ52乃至54、電流源55及び56、MOSトランジスタ57及び58、容量素子59、抵抗素子60及び61、及びセンスアンプ62を含む。図8に示す回路では、非破壊型のセルフリファレンス読み出し動作が実現される。MTJ素子51は、上記説明したMTJ素子20であってよい。
データ書き込み時には、ワード線WLが活性化されてMOSトランジスタ52が導通される。更に、ビット線BL及びソース線SLを介して、書き込みデータに応じた方向に電流が流れるようにMTJ素子51に電圧が印加され、MTJ素子51に対するデータ書き込みが行われる。
データ読み出し時には、ワード線WLが活性化されてMOSトランジスタ52が導通されると共に、ビット線BLがグランド電位に接続される。更に制御信号ITとSTとが活性化され、MOSトランジスタ53及びMOSトランジスタ57が導通される。MOSトランジスタ53が導通されることにより、電流源55からの電流量Iの電流がMTJ素子51を介してビット線BLのグランド電位に流れる。これにより、MTJ素子51の抵抗値と電流量Iとに応じた電圧vr1(即ちMTJ素子51の抵抗値と電流量Iとの積に応じた電圧)がソース線SLに現れる。その結果、ソース線SLにMOSトランジスタ57を介して接続される容量値Cの容量素子59が、この電圧値vr1に充電される。その後、制御信号ITとSTとが非活性とされ、MOSトランジスタ53及びMOSトランジスタ57が遮断される。
次に、制御信号ITとSTとが活性化され、MOSトランジスタ54及びMOSトランジスタ58が導通される。MOSトランジスタ54が導通されることにより、電流源55の電流量Iよりも大きな電流源56からの電流量Iの電流がMTJ素子51を介してビット線BLのグランド電位に流れる。これにより、MTJ素子51の抵抗値と電流量Iとに応じた電圧vr2(即ちMTJ素子51の抵抗値と電流量Iとの積に応じた電圧)がソース線SLに現れる。抵抗値RU及びRDをそれぞれ有する抵抗素子60及び61が直列接続された分圧回路が、ビット線BLの電圧vr2を分圧し、当該分圧電圧vdがセンスアンプ62の一方の端子に印加される。センスアンプ62のもう一方の端子は容量素子59に接続されている。センスアンプ62は、容量素子59に保持されている電圧vr1と分圧電圧vdとを比較し、比較結果に応じた出力を生成する。具体的には、センスアンプ62は、vr1<vr2であれば"0"を出力し、vr1>vr2であれば"1"を出力してよい。
上記のようにして、センスアンプ62は、MTJ素子51の両端電圧が異なる2つの条件間でMTJ素子51の抵抗値に応じた電気変量(図8の例の場合は電圧)を比較する。センスアンプ62は、当該電気変量の比較結果に応じてMTJ素子51の記憶データの判定値を出力する。
図9は、MTJ素子20を利用した半導体記憶装置の構成の一例を示す図である。図9に示す半導体記憶装置は、メモリアレイ70、行デコーダ71、アドレスバッファ72、列選択回路73、列デコーダ74、ライトドライバ75、センスアンプ76、制御回路77、及び入出力バッファ78を含む。
図9において、各ボックスで示される各回路又は機能ブロックと他の回路又は機能ブロックとの境界は、基本的には機能的な境界を示すものであり、物理的な位置の分離、電気的な信号の分離、制御論理的な分離等に対応するとは限らない。各回路又は機能ブロックは、他のブロックと物理的にある程度分離された1つのハードウェアモジュールであってもよいし、或いは他のブロックと物理的に一体となったハードウェアモジュール中の1つの機能を示したものであってもよい。
制御回路77は、各種制御信号を外部からコマンド入力として受け取る。制御回路77は、これら制御信号に基づいて動作して、半導体記憶装置の各部の動作を制御する。
メモリアレイ70には、図8に示されるMTJ素子51及びMOSトランジスタ52を1つのメモリセルとして、複数のメモリセルが縦横にマトリクス状に配置されている。メモリセルの各行に対応してワード線が設けられており、図8と同様にワード線WLがメモリセルに接続されている。またメモリセルの各列に対応してビット線とソース線が設けられており、図8と同様にビット線BLとソース線SLがメモリセルに接続されている。
入出力バッファ78は、外部からデータを受け取り、このデータをライトドライバ75に供給する。アドレスバッファ72は、外部から供給されるアドレス信号を受け取り保持すると共に、このアドレス信号を行デコーダ71及び列デコーダ74に供給する。行デコーダ71は、アドレスバッファ72から供給されたアドレスをデコードし、メモリアレイ70に設けられた一本のワード線をデコード結果に応じて選択的に活性化させる。
列デコーダ74は、アドレスバッファ72から供給されたアドレスをデコードして、デコードアドレス信号に基づいて指定された列を列選択回路73により選択させる。これにより列選択回路73は、メモリアレイ70のビット線とソース線を選択的にセンスアンプ76のセンスアンプに接続する。
センスアンプ76は、非破壊型のセルフリファレンス読み出し動作を行う。具体的には、図8の回路において、MOSトランジスタ57及び58、容量素子59、抵抗素子60及び61、及びセンスアンプ62がセンスアンプ76に対応してよい。センスアンプ76は、行デコーダ71及び列デコーダ74によって指定されたメモリアレイ70中のメモリセルから、MTJ素子への印加電圧を異ならせた複数の条件下で読み出された複数の電気変量(例えば電圧又は電流)同士を比較する。センスアンプ76は、この比較結果に応じて、指定されたメモリセルに記憶されたデータが0であるか1であるかの判定を行う。判定結果は読み出しデータとして、入出力バッファ78に供給される。
書き込み動作時には、行デコーダ71及び列デコーダ74によって指定されたメモリアレイ70中のメモリセルに対して、ライトドライバ75がビット線BL及びソース線SLを書き込みデータに応じた適当な電位に設定する。これにより、指定されたメモリセルに所望のデータが書き込まれる。
図10は、試作したMTJ素子の構成を示す図である。試作したMTJ素子は各層の厚さ方向に垂直な断面において直径約50nmの円形形状を有する。第1の磁化固定層21は、第1の磁性体層21A、中間層21B、及び第2の磁性体層21Cを含む。第1の磁性体層21Aの磁化方向は下向きであり、第2の磁性体層21Cの磁化方向は上向きとなっている。第1の磁性体層21Aよりも第2の磁性体層21Cの方が磁化が強く、第1の磁化固定層21全体では磁化の方向は上向きとなっている。第1の磁化固定層21を1つの磁性体層で構成してもよいが、第1の磁化固定層21の磁化が強すぎると相対的に磁化固定層27の磁化も強くなり、磁化自由層23における面内方向の漏洩磁界が大きくなりすぎて好ましくなく、第1の磁化固定層21の磁化が弱すぎると安定的に磁化を保持できないという問題がある。そこで、互いに異なる2つの磁化方向を有する2つの磁性体層を貼り合わせて第1の磁化固定層21とすることで、安定的に所望の磁化の大きさを実現している。第1の磁性体層21Aは厚さ9nmのCoPt(厚さ1nmのCo/Ptが9層:以下同様)である。中間層21Bは厚さ1nmのRuである。第2の磁性体層21Cは、図面上から順番に厚さ6nmのCoPt、厚さ0.4nmのTa、及び厚さ1.7nmのCoFeBである。前述のように高いMR比を実現するためにCoFeBを用いており、更に、互いに結晶構造が異なるCoPtとCoFeBとを1つの磁性体として強磁性的に結合するためにTaを用いている。
トンネル絶縁膜22は厚さ0.9nmのMgOである。なおこのMgOは、Mgを0.7nm成膜し、続いて酸素雰囲気中で60秒Mgを酸化させ、次に界面の過酸化を防ぐためにMgを0.2nm成膜することにより生成してある。第1の磁化自由層23は、厚さ0.8nmのCoFeBである。
スペーサ24は、図面上から順番に、厚さ1nmのTa、厚さ2nmのRu、及び厚さ1nmのTaである。スペーサ24の上下界面はCoFeBの垂直磁気異方性を誘起させるためにTaが有効であり、Ruは第1の磁化自由層23と第2の磁化自由層25との間の距離を調整するために用いられる。スペーサ24の膜厚は、1nm以上且つ10nm以下であると、第1の磁化自由層23から第2の磁化自由層25への漏洩磁界強度をより適切に制御することができる。
第2の磁化自由層25は、厚さ1.7nmのCoFeBである。トンネル絶縁膜26は、厚さ0.9nmのMgOである。第2の磁化固定層27は、図面上から順番に厚さ0.85nmのCoFeB、厚さ0.4nmのTa、及び厚さ6nmのCoPtである。前述のように高いMR比を実現するためにCoFeBを用いており、更に、互いに結晶構造が異なるCoPtとCoFeBとを1つの磁性体として強磁性的に結合するためにTaを用いている。
図11は、試作したMTJ素子の磁界対抵抗特性を示す図である。試作したMTJ素子は前述のように図6に示す電圧対抵抗特性を有し、ヒステリシス特性を示す。試作したMTJ素子の磁界対抵抗特性も同様に、図11に示すようなヒステリシス特性を示す。図6の負の方向の電圧印加は図11の負の方向の磁界印加に対応し、図6の正の方向の電圧印加は図11の正の方向の磁界印加に対応する。図6と図11との違いは、同一のMTJ素子が示す状態遷移を電圧と磁界との2つの異なる物理量の視点から見ているためであり、基本的には同一の素子の同一の振る舞いを見ているにすぎない。
磁界が負方向に大きく印加された状態では、MTJ素子は状態M01となる。その後印加磁界を小さくしていくと状態M00に遷移し、印加磁界がゼロのときに状態M00が維持される。その後正方向に磁界を印加し、磁界を大きくしていくと、状態M00から状態M10に遷移し、正方向の磁界をそれ以上大きくしても状態M10の状態が維持される。
その後印加磁界を小さくしていくと、印加磁界がゼロのときに状態M10が維持される。その後負方向に磁界を印加し、磁界を大きくしていくと、状態M10から状態M01に遷移し、負方向の磁界をそれ以上大きくしても状態M01の状態が維持される。
図12乃至図19は、MTJ素子を製造する工程の一例を示す図である。図12において、選択トランジスタとMTJ素子の下部電極とを接続する下層Cu配線81がSiO等の絶縁膜80に埋め込まれ、露出している状態から説明する。まず、スパッタ法により下部電極82となるTa(15)/Ru(25)/Ta(3)(記載の順番は図面上部からの位置の順番、カッコ内の数値はnmで示した膜厚)を順番に成膜する。下部電極82の中間Ruはシート抵抗を下げる効果を持ち、Ta単膜で同じシート抵抗を得る場合に比べて表面の平坦性が向上する。Ru上のTaはMTJをドライエッチングする際のエッチングストッパ層である。
次に図13に示すように、スパッタ法によりMTJ83(図2の第2のMTJ102)を成膜する。MTJ83の膜構成は、CoFeB(1.7)/MgO(0.9)/CoFeB(0.85)/Ta(0.4)/CoPt(6)/Ru(8)である。CoPt(6)はCoPt(1)が6層積層されていることを意味する。CoFeB(0.85)とCoPt(6)とは、薄いTa(0.4)を介して強磁性的に互いに結合している。なおCoFeBの組成比はCo:Fe=1:3で固定し、B組成を20〜25(atomic%)で調整してよい。
次に図14に示すように、スパッタ法によりスペーサ84を成膜する。スペーサ84の膜構成は、Ta(1)/Ru(2)/Ta(1)である。スペーサの上下界面はCoFeBの垂直磁気異方性を誘起させるためにTaが有効であり、Ruは2つのMTJ(図2に示す第1のMTJ101と第2のMTJ102)の距離を調整するために用いる。
次に図15に示すように、スパッタ法によりMTJ85(図2の第1のMTJ101)を成膜する。MTJ85はトップピン構造でその膜構成はCoPt(9)/Ru(1)/CoPt(6)/Ta(0.4)/CoFeB(1.7)/MgO(0.9)/CoFeB(0.8)である。MTJ85の中で、MgOの形成のみ自然酸化法を用いてよい。自然酸化法ではMgを0.7nm成膜し、続いて酸素雰囲気中で60秒Mgを酸化させ、次に界面の過酸化を防ぐためにMgを0.2nm成膜してよい。磁化固定層のCoFeB(1.7)とCoPt(6)とは薄いTa(0.4)を介して互いに強磁性的に結合している。
次に図16に示すように、スパッタ法により上部電極86のエッチングストッパである厚さ7nmのRuと上部電極86である厚さ100nmのTaを成膜する。更に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により厚さ100nmのSiOであるハードマスク87を成膜する。
次に図17に示すように、MTJのレジストパターンを液浸のArFリソグラフィと3層レジストプロセスにより直径50nmの円形に露光し、ドライエッチングにより3層レジスト、ハードマスク87、上部電極86、MTJ素子83乃至85までエッチングする。エッチングは下部電極82のTaでストップさせる。上部のエッチングストッパからMTJ83の磁化固定層までのエッチングに関しては、エッチングガスとして例えばメタノールを用いたエッチングを行い、エッチングストッパであるTaにてエッチングを止めてよい。エッチングが終了した段階で、ハードマスクであるSiOはエッチングにより消滅しており、上部電極86のTaが露出している。
次に図18に示すように、層間絶縁膜88であるSiNを30nm成膜し、続けて厚い層間絶縁膜89であるSiOを100nm成膜して平坦化を行う。更に、複数のMTJ間(この例では1つのみ示してある)を電気的に分離するために、下部電極82のレジストパターンを液浸のArFリソグラフィと3層レジストプロセスによりMTJとCuプラグを覆う形で露光する。更にドライエッチングにより3層レジスト、SiO(89)、SiN(88)、下部電極82までエッチングして、下部電極82より下のSiO(80)でエッチングをストップさせる。その後は通常のCuデュアルダマシンプロセスとほぼ同様であり、層間絶縁膜であるSiOを300nm成膜し、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法により平坦化を行う。更に、ビアが必要である部分にはビアを開口し、MTJの上部は配線部分のエッチングにより上部電極86を露出させ、露出部分にCuを埋め込み、CMP法で平坦化することで図19に示すように上部配線90を形成する。その後は、更に上部のCu配線およびAlパッド等を形成してよい。
なお上記実施例で用いた材料、膜厚、条件などは一例であって限定を意図するものではない。例えば、CoFeBの多くの組成に対してMgO/CoFeB界面における界面垂直磁気異方性が誘起されることが知られており、適用可能な組成は特定の組成に限られるものではない。またトンネル絶縁膜であるMgOの成膜方法は、MgOターゲットを用いたダイレクトスパッタ法でも、金属Mgをスパッタ成膜後に酸化する方法でもよい。磁化固定層のCoFeBをアシストするために用いたCoPtについても、変わりにCo/PdやCo/Niといった垂直磁化を持つ強磁性体を用いたり、あるいはこれらの強磁性体を適宜組み合わせた構造を用いたりすることが可能である。スペーサの材料としてはTa/Ru/Taを用いたが、2つのMTJの磁化自由層が垂直磁気異方性を維持できる材料であればよい。スペーサの膜厚は2つの磁化自由層間で磁場の干渉が生じる厚さであればよく、1nm〜10nmの厚さであることが好ましい。また本実施例では下側のMTJが第2のMTJ102であり、上側のMTJが第1のMTJ101である構造を用いたが、この上下関係を逆転させた構造でもよい。
また図10に示す構造では、第1の磁化固定層21のみが複数層構造であり、第2の磁化固定層27が単層構造となっている。第1の磁化固定層21だけでなく第2の磁化固定層27についても、複数層を含む構成としてよい。
図20は、磁化固定層の構成の一例を示す図である。図20に示す磁化固定層は、第1の磁性体層101A、中間層101B、及び第2の磁性体層101Cを含む。第1の磁性体層101Aの磁化方向は下向きであり、第2の磁性体層101Cの磁化方向は上向きとなっている。第1の磁性体層101Aと第2の磁性体層101Cとで磁化の大きさが異なり、磁化固定層全体で所望の磁化方向を実現してよい。磁化固定層を1つの磁性体層で構成したのでは、磁化が強すぎると面内方向の漏洩磁界が大きくなりすぎて好ましくなく、逆に磁化が弱すぎると安定的に磁化を保持できないという問題がある。そこで、互いに異なる2つの磁化方向を有する2つの磁性体層をRuを介して反強磁性結合して磁化固定層とすることで、安定的に所望の磁化の大きさを実現することができる。
図21は、磁化自由層の構成の一例を示す図である。上記の図20に示す構成と同様に、磁化自由層についても、複数層を含む構成としてよい。図21に示す磁化自由層は、第1の磁性体層102A、中間層102B、及び第2の磁性体層102Cを含む。2つの磁性体層をRuを介して反強磁性結合して磁化自由層とすることで、安定的に所望の磁化の大きさを実現することができる。
図22は、磁化自由層の構成の別の一例を示す図である。図22に示す磁化自由層は、第1の磁性体層103A、中間層103B、及び第2の磁性体層103Cを含む。2つの磁性体層をRuを介して強磁性結合して磁化自由層とすることで、安定的に所望の磁化の大きさを実現することができる。
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で様々な変形が可能である。
10 磁化自由層
11 トンネル絶縁膜
12 磁化固定層
21 第1の磁化固定層
22 トンネル絶縁膜
23 第1の磁化自由層
24 スペーサ
25 第2の磁化自由層
26 トンネル絶縁膜
27 第2の磁化固定層
70 メモリアレイ
71 行デコーダ
72 アドレスバッファ
73 列選択回路
74 列デコーダ
75 ライトドライバ
76 センスアンプ
77 制御回路
78 入出力バッファ
101 第1のMTJ
102 第2のMTJ

Claims (11)

  1. 第1の磁化自由層と第1の方向に磁化が向いた第1の磁化固定層とを含む第1の磁気トンネル接合と、
    スペーサを挟んで前記第1の磁化自由層に磁気的に結合された第2の磁化自由層と前記第1の方向と反対の第2の方向に磁化が向いた第2の磁化固定層とを含む第2の磁気トンネル接合と、
    を含み、前記第1の磁化自由層の磁化方向は前記第1の方向又は前記第2の方向のうち選択的に設定されたいずれか一方の方向に不揮発的に維持可能であり、前記第2の磁化自由層の磁化の反転し易さが前記第1の磁化自由層の磁化方向に応じて異なる磁気トンネル接合素子。
  2. 前記第2の磁化自由層の磁化を反転させる印加電圧又は印加磁界の大きさが前記第1の磁化自由層の磁化方向に応じて異なる請求項1記載の磁気トンネル接合素子。
  3. 印加電圧又は印加磁界がゼロの状態においては、前記第1の磁化自由層の磁化方向に関わらず、前記第2の磁化自由層の磁化方向が常に前記第2の方向に向くように、前記第2の磁化自由層の保磁力が設定されている請求項1又は2記載の磁気トンネル接合素子。
  4. 前記第1の磁化自由層の磁化方向が前記第1の方向の場合、第1の電圧を印加したときに前記第2の磁化自由層の磁化方向は前記第2の方向であり、且つ、前記第1の電圧より大きい第2の電圧を印加したときに前記第2の磁化自由層の磁化方向は前記第1の方向であり、前記第1の磁化自由層の磁化方向が前記第2の方向の場合、前記第1の電圧を印加したときに前記第2の磁化自由層の磁化方向は前記第2の方向であり、且つ、前記第2の電圧を印加したときに前記第2の磁化自由層の磁化方向は前記第2の方向である請求項1乃至3いずれか一項記載の磁気トンネル接合素子。
  5. 前記第1の磁気トンネル接合、前記スペーサ、及び前記第2の磁気トンネル接合の合計の抵抗値は、前記第1の磁化自由層の磁化方向が前記第1の方向の場合に印加電圧の増加に伴い増加する電圧位置が存在し、前記第1の磁化自由層の磁化方向が前記第2の方向の場合に印加電圧の増加に伴い単調に減少する請求項1乃至4いずれか一項記載の磁気トンネル接合素子。
  6. 前記第1の磁化自由層の磁化方向の反転による前記第1の磁気トンネル接合の抵抗値の変化量は、前記第2の磁化自由層の磁化方向の反転による前記第2の磁気トンネル接合の抵抗値の変化量よりも小さい請求項1乃至5いずれか一項記載の磁気トンネル接合素子。
  7. 前記スペーサの膜厚は1nm以上且つ10nm以下である請求項1乃至6いずれか一項記載の磁気トンネル接合素子。
  8. 磁気トンネル接合素子と、
    前記磁気トンネル接合素子の両端電圧が異なる2つの条件間で前記磁気トンネル接合素子の抵抗値に応じた電気変量を比較し、前記電気変量の比較結果に応じて前記磁気トンネル接合素子の記憶データの判定値を出力する回路と
    を含み、前記磁気トンネル接合素子は、
    第1の磁化自由層と第1の方向に磁化が向いた第1の磁化固定層とを含む第1の磁気トンネル接合と、
    スペーサを挟んで前記第1の磁化自由層に磁気的に結合された第2の磁化自由層と前記第1の方向と反対の第2の方向に磁化が向いた第2の磁化固定層とを含む第2の磁気トンネル接合と、
    を含み、前記第1の磁化自由層の磁化方向は前記第1の方向又は前記第2の方向のうち選択的に設定されたいずれか一方の方向に不揮発的に維持可能であり、前記第2の磁化自由層の磁化の反転し易さが前記第1の磁化自由層の磁化方向に応じて異なる半導体記憶装置。
  9. 前記第2の磁化自由層の磁化が反転する前記磁気トンネル接合素子への印加電圧の大きさが前記第1の磁化自由層の磁化方向に応じて異なる請求項8記載の半導体記憶装置。
  10. 前記磁気トンネル接合素子への印加電圧がゼロの状態においては、前記第1の磁化自由層の磁化方向に関わらず、前記第2の磁化固定層からの磁界により前記第2の磁化自由層の磁化方向が常に前記第2の方向に向くように、前記第2の磁化自由層の保磁力が設定されている請求項8又は9記載の半導体記憶装置。
  11. 前記第1の磁化自由層の磁化方向が前記第1の方向の場合、前記磁気トンネル接合素子に第1の電圧を印加したときに前記第2の磁化自由層の磁化方向は前記第2の方向であり、且つ、前記第1の電圧より大きい第2の電圧を前記磁気トンネル接合素子に印加したときに前記第2の磁化自由層の磁化方向は前記第1の方向であり、前記第1の磁化自由層の磁化方向が前記第2の方向の場合、前記磁気トンネル接合素子に前記第1の電圧を印加したときに前記第2の磁化自由層の磁化方向は前記第2の方向であり、且つ、前記磁気トンネル接合素子に前記第2の電圧を印加したときに前記第2の磁化自由層の磁化方向は前記第2の方向である請求項8乃至10いずれか一項記載の半導体記憶装置。
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