JP7352930B2 - 磁気素子、磁気メモリチップ、磁気記憶装置及び磁気素子の書き込み方法 - Google Patents

磁気素子、磁気メモリチップ、磁気記憶装置及び磁気素子の書き込み方法 Download PDF

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Description

本発明は、磁気素子、磁気メモリチップ及び前記磁気素子を備える磁気記憶装置、並びに磁気素子の書き込み方法に関する。
近年、磁気抵抗効果(Magneto Resistance、MR)素子として、トンネル磁気抵抗効果素子(TMR素子)、巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)、超巨大磁気抵抗素子(Colossal Magneto Resistance(CMR))等の磁気素子の研究開発が進められている。トンネル磁気抵抗素子は、主たる層として、二つの強磁性層と、これらの強磁性層の積層構造の間に非磁性の絶縁体層からなるトンネル障壁層とを有する。トンネル磁気抵抗素子は、トンネル磁気抵抗効果を示す強磁性トンネル接合を有するので、強磁性トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)素子とも呼ばれる。
例えば、TMR素子では、強磁性層/非磁性絶縁体層/強磁性層を構成する層は、それぞれ厚さが1~数ナノメートルの薄い層からなる。上下の強磁性層の電極に電圧を加えると、非磁性絶縁体層を通してトンネル電流が流れる。二つの強磁性体層の持つ磁化の向きが平行な時と反平行な時で、TMR素子の電気抵抗が大きく変化する。この抵抗変化率を磁気抵抗(MR:Magnetoresistance)比と呼ぶ。
磁気素子は、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)等の磁気メモリ、乱数発生器、磁気センサなどに利用される。
磁気素子を用いたMRAMは、不揮発性、高速性、高書き換え耐性、低消費電力、低電圧駆動、高集積等の特徴を有する。MRAMには、データ書き込み方式の違いにより、磁界書き込み型MRAM、電流書き込み型MRAM(STT(Spin Transfer Torque)-MRAM)、電圧書き込み型MRAM(電圧トルクMRAM)の3種類がある。
MRAMでは、TMR素子に含まれる二つの強磁性層の磁化の相対的な方向により高抵抗状態と低抵抗状態をとり、それぞれ、「1」と「0」に対応させて情報を記憶できる。MRAMに用いられるTMR素子では、一方の強磁性層は、「磁化自由層」であり、情報を記憶する機能を有するので「記憶層」とも呼び、他方の強磁性層は記憶層情報の判定基準であるので「参照層」と呼ぶ。
ところで、電流書き込み型では双極性書き込み(書き込み時の極性が双方向であること)が可能であるが、安定して電流書き込みが可能なのは、面積抵抗RAが10Ωμmより小さい磁気素子であることが知られている(非特許文献1参照)。
一方、従来の電圧書き込み型は、単極性(電圧を一方向にのみ印加すること)の超高速パルス電圧によって双方向書き込みを行うものであった。これに対して、双極性電圧を印加することにより双方向の磁化反転を誘起して書き込みを行う双極性電圧書き込み型が報告されている(特許文献1参照。)。特許文献1には、電圧書き込み型の磁気メモリ素子に関して、磁気トンネル接合の接合断面形状を、「鏡面対称性も回転対称性もない形状(例えば不等辺三角形)」又は「特定の1軸に対してのみ鏡面対称性を有する形状(例えば二等辺三角形)」のように低対称な形状とすることにより、双極性電圧による双方向磁化反転の高速性、磁化反転の安定性などの観点で優れていることが報告されている。
また、電圧書き込み型の磁気素子に関して、外部磁界と電圧がかかっていない状態で、磁気素子の磁化を傾かせる方法として、層間交換結合磁界と交換バイアス磁界を用いる方法が報告されている(特許文献2参照)。特許文献2では、磁気素子のMTJ構造を有する積層体に、磁界を印加する磁界印加部の構成が複数示されている。磁界印加部の構造の例として、MTJ構造の積層体の積層方向に沿って該積層体にさらに積層されている強磁性層による漏洩磁界を利用する構造や、MTJ構造の積層体の積層方向に積層されずに積層体の側部に配置される構造が示されている。
発明者らによる先行技術文献(特許文献3参照)には、電流書き込み型の磁気素子において、外部磁界と電圧がかかっていない状態で、磁気素子の磁化を傾かせる方法として、コーン磁化自由層を用いる方法が示されている。
発明者らによる先行技術文献(特許文献4、非特許文献2参照)には、第1磁性層と第1非磁性層を備える磁気素子において、非磁性層から磁性層に向かう方向と磁性層の磁化方向の角度θ(0)が、0°<θ(0)<90°、又は90°<θ(0)<180°を満たし、第1非磁性層を介して第1磁性層に単極性の電圧を印加することにより双方向の情報書き込みを行うことが、示されている。
特開2018-14376号公報 特開2014-67929号公報 国際公開2016/186178明細書 国際公開2018/198713明細書
J. Z. Sunら、Physical Review B、 96、 064437 (2017) R. Matsumoto et al.、 Phys. Rev. Applied 9、 014026、 (2018).
従来の電圧書き込み型の磁気素子は、電流書き込み型に比べ、省電力性及び高速性が見込まれるものの、まだ開発途上であり実用的でなかった。
従来の電圧書き込みは、単極性電圧で動作し、トグル方式で書き込みが行われる。トグル方式では、書き込み直前の記憶状態にかかわらず書き込み動作により必ず情報を書き換える。即ち、「0」から「1」、または「1」から「0」に書き換える。しかしながら、デジタル情報記録では、同じ状態(「0」から「0」に、または「1」から「1」に)を書き込むことも必要であるため、書き込み前に「事前読み込み」(プレリード(preread)ともいう。)をして、情報書き換えの必要性があるか判断しなければならない。プレリードの時間を要するために、動作時間が遅くなってしまう。双極性書き込みが可能な素子では事前読み込みが不要となるので、双極性書き込みが望まれる。
また、従来技術の電圧書込み方式では、電圧をかけていないとき、磁化は、磁気エネルギーの低い方向に向き、メモリの「0」状態に対応する例えば上向き、またはメモリの「1」状態に対応する例えば下向きで安定している。ここに超高速の電圧パルスをかけると、瞬間的に磁気異方性が変化して記録層の磁化が回転し始める。ちょうど磁化が初期状態と反対向きになった時に電圧を切ると、回転が止まり、磁化が反対向きに固定され、メモリの書込みが行われる。よって、電圧パルスを途中で切る必要があり、パルス時間幅の制約が厳しいという問題がある。
従来の特許文献4の電圧書き込み式の磁気素子においても、事前読み込みが必要である問題、及び電圧パルス時間幅の制約の問題があった。
従来の特許文献1の双極性電圧書き込み型の磁気素子では、バイアス電圧の印加で磁化方向の分布を生じさせるために、対称性の低い形状が必要であった。しかし、特許文献1の磁気素子は、鏡面対称性も回転対称性ももたない形状の素子であるので、形成工程で形状のばらつきがあり、また微細加工において素子のエッジが丸まり易いという問題があった。また、その結果、素子の磁化反転の高速性や安定性のばらつきにつながってしまう問題があった。
本発明は、これらの問題を解決しようとするものであり、本発明は、省電力で、磁化反転の高速性や安定性に優れ、かつこれらのばらつきの少ない磁気素子を提供することを目的とする。また、これにより高性能化を実現した磁気メモリチップ又は磁気記憶装置を提供することを目的とする。また、高性能化を実現した磁気素子の書き込み方法を提供することを目的とする。
本発明は、前記目的を達成するために、以下の特徴を有するものである。
(1) 参照層と、磁化自由層と、前記参照層と前記磁化自由層の間に挟まれるトンネル障壁層とを少なくとも含む積層構造を備え、前記磁化自由層の面内形状は、回転対称性又は2軸以上に対して鏡面対称性を有し、前記磁化自由層に電圧と外部磁界が実質的に印加されていない状態で、前記磁化自由層の磁化方向は、[磁化自由層からトンネル障壁層に向かう第1方向]と[磁化自由層の磁化方向]の間の角度θ(0)が、0°<θ(0)<90°、又は90°<θ(0)<180°の角度であり、前記トンネル障壁層の面積抵抗が10Ωμm以上であり、双極性電圧の印加に対応して磁化自由層の磁化方向が双極反転する特性を有することを特徴とする磁気素子。
(2) 前記磁化自由層の面内方向に異方性を与える次の第一群乃至第三群の磁界について、第一群:形状磁気異方性による磁界、第二群:立方磁気異方性又は誘導磁気異方性の少なくとも1つによる磁界、第三群:磁化自由層以外の磁性層からの漏洩磁界を第1磁界と呼び、層間交換結合による磁界、交換バイアス磁界、及び前記層間交換結合による磁界と前記交換バイアス磁界の合成磁界のいずれかを第2磁界と呼ぶとき、前記第1磁界又は前記第2磁界の少なくとも1つによる磁界、前記第一群乃至第三群のうち異なる群から選択される少なくとも2つの磁界が、磁化自由層に与えられていて、当該少なくとも2つの磁界のうち、2つのそれぞれの磁界による面内方向に関する容易磁化方向が異なる方向であることを特徴とする、前記(1)記載の磁気素子。
(3) 前記磁気素子は、前記磁化自由層の、前記参照層側とは反対側に、非磁性層を介して磁化固定層を備える構造を含むことを特徴とする前記(1)又は(2)記載の磁気素子。
(4) 前記磁化自由層は面内方向に関して形状磁気異方性を有し、前記第二群又は前記第三群から選択される少なくとも1つの磁界が、磁化自由層に与えられていて、当該少なくとも1つの磁界が、前記形状磁気異方性による磁界による面内方向に関する容易磁化方向と異なる方向であることを特徴とする、前記(2)又は(3)記載の磁気素子。
(5) 前記磁化自由層は楕円柱形状であることを特徴とする、前記(4)記載の磁気素子。
(6) 前記参照層が垂直方向又は面内方向の磁化方向を有し、前記磁化自由層は楕円柱形状であり、前記磁化自由層に与えられる前記第三群の磁界の方向が、前記形状磁気異方性による磁界による面内方向に関する容易磁化方向と異なる方向であることを特徴とする、前記(2)又は(3)記載の磁気素子。
(7) 前記磁化自由層は、面内方向に関して形状磁気異方性を有さず、前記第二群または第三群のうち異なる群から選択される少なくとも2つの磁界が、前記磁化自由層に与えられていて、当該少なくとも2つの磁界のうち、2つのそれぞれの磁界による面内方向に関する容易磁化方向が異なる方向であることを特徴とする、前記(2)記載の磁気素子。
(8) 前記参照層が面に垂直方向の磁化方向を有する場合は、前記角度θ(0)が、15°≦θ(0)<90°あるいは90°<θ(0)≦165°であり、前記参照層が面内方向の磁化方向を有する場合は、30°<θ(0)<85°と95°<θ(0)<150°であることを特徴とする前記(1)記載の磁気素子。
(9) 前記磁気素子は、前記参照層の、前記トンネル障壁層側とは反対側に、非磁性層を介して、参照層の磁化方向に対して垂直方向の磁化方向をもつ漏洩磁化印加のための磁性層を備える構造を含むことを特徴とする前記(1)又は(2)記載の磁気素子。
(10) ギルバートダンピング定数αは0.05以上0.5以下であることを特徴とする、前記(1)乃至(9)のいずれか1項に記載の磁気素子。
(11) 前記(1)乃至(10)のいずれか1項記載の磁気素子の複数の集合体である磁気メモリチップ。
(12) 前記(1)乃至(11)記載のいずれか1項記載の磁気素子を複数含む、不揮発性の磁気記憶装置。
(13) 参照層と、磁化自由層と、前記参照層と前記磁化自由層の間に挟まれるトンネル障壁層とを少なくとも含む積層構造を備え、前記磁化自由層の面内形状は、回転対称性又は2軸以上に対して鏡面対称性を有し、前記磁化自由層に電圧と外部磁界が実質的に印加されていない状態で、前記磁化自由層の磁化方向は、[磁化自由層からトンネル障壁層に向かう第1方向]と[磁化自由層の磁化方向]の間の角度θ(0)が、0°<θ(0)<90°、又は90°<θ(0)<180°の角度であり、前記トンネル障壁層の面積抵抗が10Ωμm以上である磁気素子に、双極性のパルス電圧を印加して、双方向磁化反転を誘起することにより、パルス電圧の極性に対応した情報書き込みを行うことを特徴とする、磁気素子の書き込み方法。
従来技術の双極性電圧書き込み型では、対称性の低い形状を必要としていたのに対して、本発明の磁気素子によれば、対称性の高い形状の磁気素子において、双極性電圧による双方向磁化反転の高速性、磁化反転の安定性を実現できた。本発明によれば、磁化自由層が対称性の高い形状であるので、微細加工が容易であり、素子間のばらつきが少ない。よって、特性の揃った複数個からなる双極性電圧書き込み型の素子を備える磁気メモリチップまたは磁気記憶装置を、実現できる。
従来技術の磁気素子では、電圧書き込みにおいて、歳差運動の半周期で電圧パルスを切る必要があり、書き込み操作に問題があった。これに対して、本発明の磁気素子によれば、双極性電圧をかけたままでも所望の状態が保持されるため、磁化反転のための電圧パルスの時間幅に対する制約が緩和される。
本発明は、電圧書き込み型に適する磁気素子であるので、電流で誘起されるスピントランスファートルクによる書き込み方式よりも、低消費電力で書き込みが可能である。本発明の磁気素子、磁気メモリチップや磁気記憶装置は、不揮発性である。また、本発明の磁気素子、磁気メモリチップや磁気記憶装置は、双極性電圧による双方向磁化反転による、双極性書き込みが可能であるので、メモリの高速化が実現できる。また、本発明の磁気素子は、外部磁界の印加のための素子の設置を必要としない構造であるので、メモリのより大容量化が可能となる。
本発明の実施形態の磁気素子の磁化自由層における、電圧書き込みの原理を説明する図である。 本発明の実施形態の磁気素子を説明するための基礎となる構造図である。 本発明の実施形態の磁気素子を説明するための座標を示す図である。 第1の実施形態の磁気素子の形状を説明するための図である。 第1の実施形態の磁気素子の、xz平面で切った断面模式図である。 第1の実施形態の磁気素子の一部の磁化方向を説明するための模式的な斜視図である。 第1の実施形態の磁気素子の磁化自由層に関するシミュレーション結果を表す図である。 第1の実施形態の磁気素子の磁化自由層に関するシミュレーション結果を表す図である。 第2の実施形態の磁気素子を説明するための模式的な斜視図である。 第2の実施形態の磁気素子の磁化自由層に関するシミュレーション結果を表す図である。 第2の実施形態の磁気素子の磁化自由層に関するシミュレーション結果を表す図である。 第3の実施形態の磁気素子の断面模式図である。 第3の実施形態の磁気素子の模式的な斜視図である。 第3の実施形態の磁気素子の磁化自由層に関するシミュレーション結果を表す図である。 第3の実施形態の磁気素子の磁化自由層に関するシミュレーション結果を表す図である。 第4の実施形態の磁気記憶装置の断面模式図である。 第4の実施形態の磁気記憶装置における、書き込み動作を説明する図である。 第4の実施形態の磁気記憶装置における、書き込み動作を説明する図である。 第4の実施形態の磁気記憶装置における、読み出し動作を説明する図である。 第5の実施形態の磁気素子における磁化自由層の面内形状の例を示す図である。 第5の実施形態の磁気素子における磁化自由層の面内形状の例を示す図である。
本発明の実施形態について以下説明する。
本発明の実施形態の磁気素子は、参照層と、磁化自由層と、前記参照層と前記磁化自由層の間に挟まれるトンネル障壁層とを少なくとも含む積層構造を備え、前記磁化自由層の面内形状は、回転対称性又は2軸以上に対して鏡面対称性を有し、双極性電圧の印加に対応して磁化自由層の磁化方向が双極反転する特性を有する。前記磁化自由層に電圧と外部磁界が実質的に印加されていない状態で、前記磁化自由層の磁化方向は、[磁化自由層からトンネル障壁層に向かう第1方向]と[磁化自由層の磁化方向]の間の角度θ(0)が、0°<θ(0)<90°、又は90°<θ(0)<180°の角度である。前記角度θ(0)は、0°から180°以内しかとらない極座標系のθを想定している。180°より大きく360°以下の値は、「360°-θ」によって0°から180°の表現に集約される。なお、[磁化自由層からトンネル障壁層に向かう第1方向]は、より正確には、[磁化自由層からトンネル障壁層に向かう第1の向き]ということもできる。本願では、上付きの(0)が付いたパラメータは、磁化自由層に電圧が実質的に印加されていない状態でのパラメータを表す。
磁化自由層に電圧と外部磁界が実質的に印加されていない状態とは、次の状態である。外部磁界が実質的に印加されていない状態とは、地磁気などの微弱な磁界が印加された状態も、実質的に磁界が印加されていない状態に含む。また、「実質的に」を略して「外部磁界が印加されていない状態」と記載した場合も、磁気素子等の技術分野では「地磁気などの微弱な磁界が印加された状態」は「外部磁界が印加されていない状態」に普通含まれる。また、電圧が実質的に印加されていない状態とは、完全にゼロのことを指すのみでなく、磁気素子として機能しないような、電圧を印加されないに等しい程度の電圧までを含む。例えば、本実施形態の磁気素子は、書き込みと読み出しの際に、電圧を印加する。読み出し電圧値は書き込み電圧値より小さい。よって、電圧が印加されていない状態とは、例えば、読み出しに必要な電圧値以下を含む。電圧が0から読出しに必要な電圧値以下の電圧を、「ゼロバイアス電圧」付近とも呼ぶ。
本発明の磁気素子の積層構造を構成する磁化自由層、参照層は、いずれも磁性層である。これらの磁性層の組成は、例えば、Fe、Co、Ni、Cr、Mn、Gd、Nd、Sm、及びTbからなる群から選択された少なくとも1つを含む。磁性層の厚さは、例えば、0.5nm以上10nm以下であることが好ましい。参照層を構成する磁化固定層は、磁化方向が変化し難い、磁化方向が固定された層である。一方、磁化自由層は、磁化方向が、参照層の磁化方向に比べて、変化し易い磁性層である。
磁化自由層の厚さは、磁化自由層の体積Vに関連するが、それ以外の因子にも関連がある。即ち、磁化自由層が薄い場合、小さい電圧で磁化反転が起きるので好ましいが、逆に、熱安定性は低下するという問題が発生する。また、磁化自由層が薄い場合、磁化自由層を連続膜として形成するのが難しくなるという問題も発生する。一方、磁化自由層が厚くなるに従って、大きい電圧を印加しないと磁化反転が起きないという問題が発生する。従って、磁化自由層の膜厚は、例えば、0.5以上10nm以下程度であり、好ましくは1以上3nm以下程度である。
本発明の実施形態では、垂直型の磁気素子であっても、面内型の磁気素子であってもよい。垂直型とは、参照層である固定磁化層の磁化方向が、層に垂直方向である。面内型とは、参照層である固定磁化層の磁化方向が、層の面内方向である。明細書中で、垂直型又は面内型のいずれかのみに関して特記して記載した箇所以外は、双方の型において共通する。
参照層を構成する磁化固定層の磁化方向を垂直磁化とする磁気素子の場合、磁化自由層の磁化の極角θ(0)は90°に近いほど、磁化反転がより安定して起こりやすく、安定した書き込みが可能になる。たとえば5°≦θ(0)<90°あるいは90°<θ(0)≦175°の場合、比較的安定した書き込みが可能となる。15°≦θ(0)<90°あるいは90°<θ(0)≦165°の場合、より安定した書き込みが可能となる。30°≦θ(0)<90°あるいは90°<θ(0)≦150°の場合、さらに安定した書き込みが可能となる。45°≦θ(0)<90°あるいは90°<θ(0)≦135°の場合、さらに一層安定した書き込みが可能となる。
参照層を構成する磁化固定層の磁化方向を垂直磁化とする場合、読み出し時の出力信号の大きさはcosθ(0)の絶対値に比例する。このため、θ(0)が0°あるいは180°に近いほど読み出し出力信号が大きくなり、より高速な読み出しが可能となる。このため、高速読み出しの観点では、たとえば0°<θ(0)≦60°あるいは120°≦θ(0)<180°の場合、比較的高速な読み出しが可能となる。0°<θ(0)≦45°あるいは135°≦θ(0)<180°の場合、より高速な読み出しが可能となる。0°<θ(0)≦30°あるいは150°≦θ(0)<180°の場合、さらに高速な読み出しが可能となる。0°<θ(0)≦15°あるいは165°≦θ(0)<180°の場合、さらに一層高速な読み出しが可能となる。
SRAM代替、DRAM代替、ストレージクラスメモリ代替等、各応用で要求される書き込みの安定性と電圧磁化反転の容易さと読み出し速度を上手くバランスできるθ(0)を実現する必要がある。そのために、磁気素子の各構成要素の材料および構造を調整すればよい。垂直型であれば、たとえば、5°≦θ(0)≦60°あるいは120°≦θ(0)≦175°が好ましい範囲であり、15°≦θ(0)≦45°あるいは135°≦θ(0)≦165°がより好ましい範囲である。また、面内型であれば30°<θ(0)<85°あるいは95°<θ(0)<150°が好ましい範囲である。垂直型の場合は、読み出し速度と書き込みの安定性をバランスする必要がある。面内型の場合は、読み出し速度と電圧磁化反転の容易さをバランスする必要がある。面内型では、θ(0)の調整のために積極的にKu2 (0)を利用する必要はない。K1,eff (0)とHexchでθ(0)の調整する方が実施し易いからである。しかし。Ku2 (0)を利用してもよい。例えば、K1,eff (0)<0において|K1,eff (0)|が大きいほどθ(0)は90°に近づく。Ku2 (0)が大きいほどθ(0)は0°か180°に近づく。第1の実施形態において詳しく説明するが、Ku1及びKu2は、それぞれ、電界効果を考慮した1次と2次の磁気異方性定数である。1次の磁気異方性定数に対しては、Ku1 (0)およびKu1から反磁界エネルギーの寄与が差し引かれた実効的な1次の異方性定数をK1,eff (0)およびK1,effを用いて示す。
垂直型の磁気素子では、より長い記憶保持時間を保証するためにはより大きなKu2 (0)が必要となる。記憶保持時間の要請を満たすKu2 (0)を得るために、磁化自由層は第1領域と第2領域を含んでいても良い。第1領域はCoを含み、第2領域はPt及びPdからなる群より選択された少なくとも1つを含む。この場合、第1領域は、トンネル障壁層と第2領域との間に設けられる。すなわち、例えば、基板側から、[Pt及びPdからなる群より選択された少なくとも1つを含む第2領域]/[Coを含む第1領域]/トンネル障壁層である。または、Ku2 (0)を大きくするために、磁化自由層は、z軸方向において交互に設けられた複数の第1領域および複数の第2領域を含んでいても良い。第1領域は、六方最密充填構造(hcp)構造または面心立方格子(fcc)(111)構造を有することが望ましい。第2領域は、fcc(111)構造を有することが好ましい。または、第1領域はfcc(001)構造を有し、第2領域はfcc(001)構造を有していても良い。垂直型の場合に好ましい磁化自由層の例であるが、面内型に用いてもよい。
例えば、磁化自由層が第1領域と第2領域を含む場合、磁気素子は、次の構造1又はまたは構造2とすることができる。構造1は、Pt及びPdからなる群より選択された少なくとも1つを含む第2領域/Coを含む第1領域/トンネル障壁層である。構造2は、[Pt及びPdからなる群より選択された少なくとも1つを含む第2領域/Coを含む第1領域]/トンネル障壁層である。[ ]は、[ ]内の積層構造を複数回繰り返すことを示す。構造1の場合、Ptを含む第2領域の上に積層される第1領域の1層の厚さ(z軸方向における長さ)は、Co原子の大きさの10~15個分に相当することが好ましい。Pdを含む第2領域の上に積層される第1領域の1層の厚さは、Co原子の大きさの4.5~6個分に相当することが好ましい。垂直型の場合に好ましい磁化自由層の例であるが、面内型に用いてもよい。構造2の場合で、第1領域はCoを含み、第2領域はPtを含んでいる場合、第1領域の厚さは0.9nm以上1.1nm以下であり、第2領域の厚さは2nm程度であることが好ましい。一例として、第1領域と第2領域は、z軸方向において交互に8つずつ設けられる。または、第1領域は、1または2原子層のCoであり、第2領域は、1または2原子層のPtであっても良い。この場合、第1領域と第2領域は、例えば、z軸方向において交互に二層から数十層ずつ設けられても良い。
磁化自由層は、θ(0)の調整に必要なKu2 (0)を得るために、[六方最密充填(hcp)構造を有するCo]あるいはコバルト基合金薄膜を含んでいても良い。Co基合金薄膜とは、Coを50原子%以上含むものをいう。前記コバルト基合金薄膜は、Coを母材として含み、かつPt、Ir、B、Rh、Pd及びNiの少なくとも一つを含むことができる。特にPtを含むコバルト基合金薄膜の場合、シード層としてRuを用いることができる。または、シード層として、Ru、Re、Pt、Au、Pd、Ir、Cuの少なくとも1つを選ぶことができる。シード層を用いて、コバルト基合金の格子定数比、つまりc/a(なお、cは面直方向の格子定数、aは面内方向の格子定数)を大きくすることがより好ましい。
または、θ(0)の調整に必要なKu2 (0)を得るために、磁化自由層は、z軸方向に磁化容易軸を有する磁性膜(以下、垂直磁化膜という。)と、面内方向に磁化容易軸を有する磁性膜(以下、面内磁化膜という。)とを積み重ねることで構成されていても良い。この場合、磁化自由層の磁化方向が全体としてz軸方向から傾くように、垂直磁化膜及び面内磁化膜は合わせて2nm以下となることが好ましい。例えば、面内方向に磁化容易軸を有するbcc構造のコバルト基合金薄膜層の上に、z軸方向に磁化容易軸を有するbcc構造の鉄基合金薄膜層を積み重ね、さらに酸化マグネシウム層を積層する。ここで酸化マグネシウム層と接する鉄基合金薄膜層はz軸方向に磁化容易軸を有する。コバルト基合金薄膜層と鉄基合金薄膜層は、B、C、N、Si、P、Crを含んでもよいし、含まなくてもよい。
または、θ(0)の調整に必要なKu2 (0)を得るために、磁化自由層は、磁性膜と非磁性層を重ねたものとしても良い。材料の具体例として、例えばCo/Pt、Co/Pd、Co/Au、Co/Ir、Co/Ru、Co/Cr、Co/Rh、Co/Cu、Fe/Pt、Fe/Pd、Fe/Ag、Fe/Ta、Fe/Hf、Fe/Cu、Fe/Au、Fe/Mg-O、Ni/Cu、Ni/Ga-As、Ni/Auの組み合わせが適用できる。
磁化自由層の面内形状は、面内方向に関して形状磁気異方性を有する場合と、面内方向に関して形状磁気異方性を有さない場合とがある。磁化自由層の面内形状の縦横比を1に近づける場合は、面内方向に関して形状磁気異方性が小さくなってしまうため、代わりに面内方向に関して他の磁気異方性を持たせる。例えば、立方磁気異方性や誘導磁気異方性を持つことが好ましい。立方磁気異方性は、磁性層に立方晶磁性体、例えばFe、Co、Ni、およびそれらの合金、それらの立方晶の酸化物、例えば、Fe、γ-Fe、MnFe、CoFe、NiFe、を含ませること等によって得られる。誘導磁気異方性は、Fe、Co、Ni、それらの合金に、B、C、N、Si、P、Crを添加した磁性層を、磁場中熱処理または磁場中成膜すること等によって得られる。面内方向に関して他の磁気異方性を持たせるための立方磁気異方性や誘導磁気異方性を、組み合わせて用いても構わない。
参照層を構成する磁化固定層の磁化方向を面内磁化とする場合は、磁化自由層の面内形状の縦横比にかかわらず、双極性電圧磁化反転を可能とするために0°<|φ(0)|<90°または90°<|φ(0)|<180°とする。なお、φは磁化方向のベクトルmの面内成分がx軸となす角度を表す。φの定義は後述する図3においてのφの定義と同じである。x軸方向、すなわちφ=0°の方向は、第一群乃至第三群の磁界の一つの面内方向に関する容易磁化方向である。5°≦|φ(0)|≦85°または95°≦|φ(0)|≦175°とすることで双極性電圧磁化反転の安定性が増す。10°≦|φ(0)|≦80°または100°≦|φ(0)|≦170°とすることで双極性電圧磁化反転の安定性がさらに増す。
参照層を構成する磁化固定層の磁化方向を面内磁化とする場合、磁化自由層の磁化の傾き角θ(0)が90°に近くなるほど、素子のMR比は大きくなる。そのため読み出し速度(MR比に比例)は大きくなる。しかし、逆にθ(0)が90°に近いほど、大きな、Voltage Control Magnetic Anisotropy(以下、VCMAという。)が必要になる。なお、VCMAとは、磁性体表面に電界を印加するとその磁気異方性が変化する効果をいう。つまり、参照層を構成する磁化固定層の磁化方向を面内磁化とする場合では、大きな|K1,eff-K1,eff (0)|が必要になる。従って、読み出し時間の短さと電圧磁化反転の容易さとの双方を考慮すると、θ(0)は、0°<θ(0)<90°と90°<θ(0)<180°が好ましく、より好ましくは30°<θ(0)<85°と95°<θ(0)<150°であり、さらに好ましくは40°<θ(0)<80°と100°<θ(0)<140°であり、特に好ましくは50°<θ(0)<70°と110°<θ(0)<130°である。方位角に関しては、0°<|φ(0)|<90°と90°<|φ(0)|<180°で双極性電圧磁化反転が可能である。双極性電圧磁化反転の起こりやすさはφ(0)によって変化する。一方で、|φ(0)|が90°に近いほど、素子のMR比および熱擾乱耐性Δ(0)は小さくなる。従って、双極性磁化反転の安定性、読み出し時間の短さ、熱耐性の大きさを考慮すると、|φ(0)|は、0°<|φ(0)|<90°と90°<|φ(0)|<180°が好ましく、より好ましくは5°<|φ(0)|<70°と110°<|φ(0)|<175°であり、さらに好ましくは10°<|φ(0)|<65°と115°<|φ(0)|<170°であり、特に好ましくは15°<|φ(0)|<60°と120°<|φ(0)|<165°である。参照層を構成する磁化固定層の磁化方向を垂直磁化とする場合でも面内磁化とする場合でも、VCMAを大きくするためにFe、Co及びNiを含む強磁性層にIr及びOsを添加してもよい。
磁化自由層と参照層に挟まれたトンネル障壁層には、トンネル障壁層として知られる非磁性材料の絶縁体、半導体、誘電体のいずれかを用いることができる。トンネル障壁層は、例えば、Mg、Si、Al、Ti、Zr、Hf、Ta、Zn、Sr、Bi、及びBaからなる群から選択された少なくとも1つを含む酸化物または窒化物またはフッ化物を含む。具体的に挙げれば、例えば、Al、SiO、MgO、AlN、Ta-O、Al-Zr-O、Bi、MgF、CaF、SrTiO、AlLaO、Al-N-O、または、Si-N-Oなどである。また、トンネル障壁層は、例えば、非磁性半導体(ZnO、InMn、GaN、GaAs、TiO、Zn、Te、または、これらに遷移金属がドープされたもの)などを用いることもできる。トンネル障壁層の厚さは、例えば、0.5nm以上4nm以下であることが好ましい。
トンネル障壁層は、面積抵抗(RA:Resistance area product)が、10Ωμm以上であることが好ましい。これにより、例えば、電圧書き込み動作において、低い消費電力が得られる。トンネル障壁層の面積抵抗に関する情報は、例えば、磁気素子の抵抗の測定結果と、SEM(Scanning Electron Microscope)またはTEM(Transmission Electron Microscope)などによる素子のサイズの測定結果、などから得られる。
トンネル障壁層の面積抵抗は、例えば、20Ωμmよりも大きくてもよい。これにより、電流書き込み動作型の場合の1/2の、低い消費電力が得られる。また、トンネル障壁層の面積抵抗は、例えば、100Ωμm以上でもよい。これにより、例えば、電流書き込み動作型の場合の1/10の、さらに低い消費電力が得られる。トンネル障壁層の面積抵抗は、例えば、500Ωμm以上でもよい。これにより、例えば、電流書き込み動作型の場合の1/50の、さらに低い消費電力が得られる。一方、トンネル障壁層の面積抵抗が20Ωμm以下になると、書き込みに要するエネルギーが増大する。トンネル障壁層の面積抵抗が10Ωμm未満になると、書き込みに要するエネルギーの増大は、さらに加速する。
一方、電圧読み出し動作においては、トンネル障壁層の面積抵抗が大きいほど、読み出しに要する時間は長くなる。例えば、トンネル障壁層の面積抵抗が20Ωμm、100Ωμm、500Ωμmである場合、読み出しに要する時間は、10Ωμmの場合を基準として、それぞれ2倍、10倍、50倍と長くなる。このため、高速読み出しの観点からは、トンネル障壁層の面積抵抗は、低い方が好ましい。実際の磁気記憶装置においては、個々の応用で要求される消費電力と読み出し速度を両立するために最適なトンネル障壁層の面積抵抗を用いればよい。大容量化に向けて接合面積を小さくすると電流(接合面積に比例)は減るので、そのぶん面積抵抗を小さくする。
本実施形態の磁気素子を構成する各層は、非常に薄いので基板の上に真空薄膜形成技術によって作製できる。例えば、スパッタリング法、蒸着法、MBE法、ALE法、CVD法等の従来からある技術を適宜用いることができる。
本願発明のように、磁化自由層と参照層とトンネル障壁層とを含む磁気素子における電圧書き込みの原理について、以下図1及び式(数1)を用いて説明する。式(数1)は、磁界中での磁化ベクトルmの歳差運動を記述するランダウ-リフシッツ-ギルバード方程式(The Landau-Lifshitz-Gilbert equation)(以下、LLG方程式ともいう。)である。式の第1項は歳差トルクを示し、第2項はダンピングトルクを示す。γは、電子の磁気回転比である。Heffは、有効磁界である。なお、有効磁界は、外部磁界と内部磁界に相当する。内部磁界は後述する第一群乃至第三群の磁界に相当する。αはギルバートダンピング定数である。図1に、磁化自由層における、磁場Heff、磁化ベクトルm、歳差トルクa、ダンピングトルクbを図示した。
Figure 0007352930000001
従来の技術では、歳差トルクによる歳差運動が用いられてきた。これに対して、本願発明は、ダンピングトルクに注目したものであり、ダンピングトルクを用いることにより、一斉磁化反転方式での双極性電圧書き込みを可能とした。双極性電圧書き込みを可能とするため、αは0.05以上0.5以下が好ましい。
図2は、本発明の実施形態の磁気素子を説明するための基礎となる構造図である。本図の磁気素子は、参照層1と、磁化自由層3と、前記参照層1と前記磁化自由層3の間に挟まれるトンネル障壁層2とを少なくとも含む積層構造を備える。図2では、各層の磁化が、磁気素子の集合体であるメモリチップの外側から印加する外部磁界Hext0がゼロの場合の一例を示す。磁化自由層3は、磁化方向が固定されていない磁性層である。トンネル障壁層2は、非磁性層であり、磁化自由層と参照層との間でトンネル障壁の機能を有する特性と厚さを備える。参照層1は、磁気素子における磁気抵抗効果による情報読み出しに必要な、磁化方向が参照層の面内又は面直等の特定の方向に固定された磁化固定層である。
特許文献4で提案した本発明者らによる磁気素子の構造も、図2と同様の外観を有する。特許文献4の磁気素子では、コーン磁化と楕円柱形状による形状磁気異方性磁界により、外部磁界も第三群の第1磁界も不要で、電圧トルク磁化反転が可能である。特許文献4の電圧書き込み型の磁気素子は、単極性電圧で動作し、トグル方式で書き込みが行われる。トグル方式では、書き込み直前にプレリードが必要であった。また、電圧書き込みにおいて、ちょうど磁化が初期状態と反対向きになった時に電圧を切る必要があり、電圧パルス時間幅の制約があった。
本発明の磁気素子は、例えば円や楕円等の対称性の高い形状であっても、双極性電圧書込みが可能である。例えば、本実施形態の磁気素子に、正の電圧をかけると、書き込み前の状態(「0」または「1」)にかかわらず「1」の状態になる。負の電圧をかけると、書き込み前の状態にかかわらず「0」の状態になる。
本実施形態の磁気素子では、電圧と外部磁界が印加されていない状態において、磁化自由層の磁化を面直方向からも面内方向からも傾けさせる。かつ、例えば、形状が楕円の場合は、楕円長軸方向(磁化が向きやすい方向)からも磁化は傾けさせる。また、例えば、形状が円の場合は、面内で結晶磁気異方性のある材料を選び、磁化が向きやすい結晶方向からも磁化を傾けさせる。具体的には、各実施形態で説明する。
図3は、本実施形態の磁気素子を説明するための座標を示す図である。本実施形態の説明のために、磁気素子の膜面垂直方向に平行な方向をz軸とおき、面内方向にx軸とy軸をとる。正確には、[磁化自由層からトンネル障壁層に向かう第1の向き]が、z軸方向である。磁気素子が楕円柱形状の場合は、楕円長軸方向に平行な方向をx軸とおく。円柱形状の場合は、立方異方性の容易磁化方向の一つに平行な方向をx軸とおく。図3において、磁化方向のベクトルmがz軸となす角度をθ、同ベクトルmのxy平面成分がx軸となす角度をφとおく。
本実施形態の磁気素子では、磁化自由層の面内方向に異方性を与える磁界を、次の第一群乃至第三群の磁界に定義して説明する。本実施形態の磁気素子では、前記第一群乃至第三群のうち異なる群から選択される少なくとも2つの磁界が、磁化自由層に与えられていて、当該少なくとも2つの磁界のうち、2つのそれぞれの磁界による面内方向に関する容易磁化方向が異なる方向である。
第一群:形状磁気異方性による磁界。
第二群:立方磁気異方性又は誘導磁気異方性の少なくとも1つによる磁界。
第三群:磁化自由層以外の磁性層からの漏洩磁界を第1磁界(以下、Hext1とも書く。)呼び、層間交換結合による磁界(以下、HIECとも書く。)、交換バイアス磁界、及び前記層間交換結合による磁界と前記交換バイアス磁界の合成磁界のいずれかを第2磁界(以下、Hexchとも書く)と呼ぶとき、前記第1磁界又は前記第2磁界の少なくとも1つによる磁界。
磁化自由層の面内方向に異方性を与える磁界を、第一群乃至第三群のうちの所定の磁界とすることにより、電圧書き込みにおいて、ダンピングトルクを有効に利用することができる。本発明の磁気素子は、電圧書き込みにおいて、「0」の状態からの書き込みと「1」の状態からの書き込みとで、磁化自由層が受けるダンピングトルクが異なること(以下、「ダンピングトルクの非対称性」と呼ぶ。)を実現したものである。
第三群の第1磁界「磁化自由層以外の磁性層からの漏洩磁界」とは、磁化自由層が所属する磁化自由層以外の磁性層からの磁界を指す。第1磁界には、1以上の磁気素子の積層構造内に漏洩磁界を与えるための磁性層を設ける構造による磁界や、1以上の磁気素子の積層構造以外の積層構造に永久磁石膜を設ける構造による磁界を含む。例えば、磁気素子を複数有する磁気メモリの場合、当該磁気メモリ内の他の磁気素子の磁性層からの漏洩磁界を含む。例えば、磁気素子の集合体であるメモリチップであれば、メモリチップ内の磁性層からの漏洩磁界を含む。また、磁気素子に磁界を印加するために、メモリチップ内に磁界印加構造を設けることを含む。磁界印加構造には、例えば、磁気素子のMTJ構造を有する積層体の積層方向に沿って該積層体にさらに積層される磁性層による漏洩磁界を利用する構造がある。また、磁界印加構造には、MTJ構造の積層体の積層方向に積層されずに積層体の側部に配置される磁性層による漏洩磁界を利用する構造がある。磁性層には磁化固定層や永久磁石膜等を含む。本願の実施形態でいう「第三群の第1磁界」には、メモリチップ外に設けられる磁界印加部からの外部磁界は含まない。
第三群の第2磁界のうちの、層間交換結合(Interlayer Exchange Coupling)による磁界HIECを得るためには、磁化自由層の、参照層側とは反対側に、非磁性層と磁化固定層を隣接させる。「磁化自由層+非磁性層+磁化固定層」は、「磁化自由層を含む多層膜」の一例である。ここで、非磁性層としてRu、Ir、Rh、Mo、Os、V、Cr、Cu、Nb、Te、Ta、W、Re、Au、Ag、Al、およびそれらを含む合金のうちの少なくともいずれかが利用できる。非磁性層の膜厚のばらつきが、有効磁界の大きさ、ひいては反転時間のばらつきにならないように、膜厚変化が緩やかな材料が好ましい。また、非磁性層は、熱処理耐性が高い材料が好ましい。これらの観点から、例えば、Ru、Ir又はこれらの少なくともいずれかを含む合金が好ましい。非磁性層の厚さは、5nm以下が好ましい。
第三群の第2磁界のうちの、交換バイアス磁界を得るためには、磁化自由層の、参照層側とは反対側にバイアス層を隣接させる。「磁化自由層+バイアス層」は、「磁化自由層を含む多層膜」の一例である。バイアス層は、Cr、Mn、Fe、Co、Niの群から選択された少なくとも一つの元素と、Ru、Rh、Pd、Ag、Os、Ir、Pt、Auの群から選択された少なくとも一つの元素と、を含む合金からなる。合金は反強磁性となることが好ましい。バイアス層を構成する合金の例としては、Pt-Mn合金、Ir-Mn合金、Fe-Mn合金が挙げられる。垂直交換バイアスを発現させるための反強磁性層として、Co-O、Ir-Mn、Fe-Mn、Cr-Oを用いることができる。
本実施形態の磁気素子は、垂直型又は面内型のいずれであっても、集積度を上げる観点から、第三群の第1磁界を用いずに双極性電圧磁化反転が可能であることがより好ましい。Hext1の代わりに、Hexchを磁化自由層に与えることにより、外部磁界を印加する手段も第三群の第1磁界を印加する手段もなくすことが可能である。
(第1の実施形態)
本実施形態は、面内方向に関して形状磁気異方性を有する磁化自由層を含む磁気素子の場合に関する。図4は、本実施形態の磁気素子の形状を説明するための図である。図4では、参照層とトンネル障壁層の図示を省略し、磁化自由層3と非磁性層4と磁化固定層5の積層構造を示した。磁気素子の全体形状が楕円柱形状の例である。磁化自由層3が楕円柱形状で、長軸方向の長さがL1、短軸方向の長さがL2、層の厚みがtである。
図5は、本実施形態の垂直型の磁気素子の、xz平面で切った断面模式図である。本実施形態は、垂直型の積層構造である。本図の磁気素子は、参照層1と、トンネル障壁層2と、磁化自由層3と、非磁性層4と、磁化固定層5を主として備える。図のように、磁化自由層3の、参照層1側とは反対側に、非磁性層4を介して磁化固定層5を備える構造、即ち合成反強磁性構造又は合成強磁性構造を採用すれば、外部磁界も第三群の第1磁界も不要である。合成反強磁性構造では、磁化自由層3と磁化固定層5が反平行磁化状態になろうとする。すなわち、図5の磁化配置では、紙面手前から奥へ向かう方向の層間交換結合磁界が磁化自由層へかかる。これが外部磁界と第三群の第1磁界の代わりとなる。磁化自由層3と磁化固定層5が平行磁化状態になろうとする合成強磁性構造とする場合は、紙面奥から手前へ向かう方向の層間交換結合磁界が磁化自由層へかかる。
磁化固定層5の磁化方向は、面内方向であり、第一群または第二群の磁界に関する容易磁化方向と平行でも反平行でもない方向を向く。本図では紙面奥から手前へ向いている。第1の実施形態では、第一群に関する容易磁化方向が紙面横方向(楕円長軸方向)である。後述する第2の実施形態では、第二群に関する容易磁化方向が紙面横方向である。磁化自由層の磁化方向は、ゼロバイアス電圧付近で紙面上下方向からも紙面横方向からも傾いている。図5の磁化自由層3の矢印が示すように、バイアス電圧の印加により紙面上側から下側へ、または下側から上側へ磁化反転する。
図6は、本実施形態の磁気素子の一部の磁化方向を説明するための模式的な斜視図である。図6では、トンネル障壁層と参照層も必要だが、図示を省略している。本実施形態の磁気素子は、図4の形状を有する。磁気素子の全体形状が楕円柱形状であるので、楕円長軸方向に面内方向の形状磁気異方性を有する。層間交換結合による磁化自由層への有効磁界(HIEC)を有する。即ち、図示するように、「HIEC」は、固定磁化層(y軸方向でyの負への向き)との層間交換結合による磁化自由層へ有効磁界(y軸方向)を有する。
本実施形態では、磁化自由層の磁化方向を、面内方向に関して、楕円長軸方向から傾かせる必要がある。そのために、楕円長軸方向とは面内方向に関する容易磁化方向が異なる方向である、第二群又は第三群の磁界が必要である。即ち、「立方磁気異方性による磁界」、「誘導磁気異方性による磁界」、「磁化自由層以外の磁性層からの漏洩磁界」、「層間交換結合による磁界」「交換バイアス磁界」、及び「前記層間交換結合による磁界と前記交換バイアス磁界の合成磁界」のいずれかの磁界のうちのいずれか1以上で、楕円長軸方向とは面内方向に関する容易磁化方向が異なる方向である磁界が、磁化自由層に与えられている必要がある。なお層間交換結合による磁界と交換バイアス磁界は、いずれも磁化自由層に接する磁性膜や多層膜から受ける有効磁界である。この共通性から、層間交換結合による磁界や交換バイアス磁界のいずれか又は両方は、上述の通りまとめてHexchと表記する。
本実施形態では、非磁性層4と磁化固定層5を設けて、層間交換結合による磁界HIECを採用した構造を示した。HIECを採用する場合、非磁性層(トンネル障壁層ではない方)の厚さを調整することにより、「HIEC」の大きさを容易に調整できる点で優れている。
また、本実施形態では、磁化自由層の磁化は、面直方向から傾かせるためにコーン磁化を採用している。なお、図5に示される磁化自由層の矢印は、電圧印加時の磁化運動の概念図であり、コーン磁化状態を説明しているものではない。
以下、シミュレーションを用いて理論計算を行った結果を説明する。ここで、シミュレーションに用いたパラメータ及び計算条件は以下のとおりである。図7及び図8は、磁化自由層に関するシミュレーション結果を表す図である。ここでは、磁気素子に電圧が実質的に印加されていない状態における、磁化自由層の磁気エネルギー密度ε(0)を、以下の式(数2)で表す。
Figure 0007352930000002
ここで、μは透磁率、Mは飽和磁化、である。(N、N、N)は反磁界係数、(m、m、m)は単位磁化ベクトルであり、添え字のx、y、zは、x軸方向成分、y軸方向成分、z軸方向成分をそれぞれ表す。(m、m、m)と(θ、φ)とは、m=(m、m、m)=(sinθcosφ、sinθsinφ、cosθ)の関係にある。Ku1 (0)及びKu2 (0)は、それぞれ、電圧が実質的に印加されていない状態における1次と2次の磁気異方性定数である。Kcubicは立方磁気異方性定数である。数式中のHexchは、本実施形態では、例えば、層間交換結合による磁界や交換バイアス磁界のいずれか又は両方である。数式中のHextは磁界の合計Hext=Hext0+Hext1を表す。Hext0は磁気素子の集合体であるメモリチップの外側から印加する外部磁界であり、Hext1は磁化自由層以外の磁性層からの漏洩磁界である。第1乃至3の実施形態では、Hext0はゼロであるため、結果的にHext=Hext1となる。
有限の電圧を印加した状態における磁化自由層の磁気エネルギー密度εを、以下の式(数3)で表す。
Figure 0007352930000003
式(数3)におけるKu1及びKu2は、それぞれ、電界効果を考慮した1次と2次の磁気異方性定数である。1次の磁気異方性定数に対しては、Ku1 (0)およびKu1から反磁界エネルギーの寄与が差し引かれた実効的な1次の異方性定数K1,eff (0)およびK1,effを用いて示す。
磁化方向(m、m、m)の時間発展の計算には、LLG方程式を用いた。図7及び図8の計算では、磁化自由層の条件は以下の[条件1]の通りに設定した。なお、図6の場合の磁化自由層の磁気エネルギー密度ε(0)とεは、式(数2)と式(数3)で表される。
[条件1] 磁化自由層の厚さt=1.1[nm]。磁化自由層の長さL1=120[nm]。磁化自由層の長さL2=50[nm]。N=0.0116、N=0.0398、N=0.9486。面内の形状磁気異方性磁界H=M(N-N)=39.6[kA/m](497[Oe])。磁化自由層の、参照層と磁化自由層に挟まれた非磁性層(トンネル障壁層)と接する面の面積A=π(L1/2)(L2/2)[nm]。磁化自由層の飽和磁化M=1400[kA/m](=1400[emu/cm])。磁化自由層のギルバートダンピング定数α=0.20。磁気素子への印加電圧V=0における磁化自由層の界面及び結晶の磁気異方性定数について、1次の磁気異方性定数Ku1 (0)=1068.5[kJ/m](K1,eff (0)=Ku1 (0)-(1/2)μ =-85.5[kJ/m])、2次の磁気異方性定数Ku2 (0)=129.9[kJ/m]、Kcubic=0[kJ/m]。磁化固定層との層間交換結合による楕円短軸方向(y方向)に磁化自由層にかかる有効磁界Hexch=7.77[kA/m](=97.6[Oe])。メモリチップの外側から印加する外部磁界Hext0=0[kA/m]、磁化自由層以外の磁性層からの漏洩磁界Hext1=0[kA/m]、すなわちHext=0[kA/m]。以上の条件から温度300[K]では熱擾乱耐性Δ(0)=73.2。なお、熱擾乱耐性Δ(0)は、磁化自由層の記憶保持時間の評価指標である。Δが大きいほど磁化は安定、つまり、”1”、”0”の情報が消えにくい。Δ(0)は、”1”の状態と”0”の状態の間にあるエネルギー障壁高さと温度300Kでの熱エネルギーの比として算出する。
上記条件[1]における印加電圧V=0のときの、磁気エネルギー密度ε(0)は、(m、m、m)=(m (0)、m (0)、m (0))=(sinθ(0)cosφ(0)、sinθ(0)sinφ(0)、cosθ(0))=(±0.54、0.20、±0.82)で最低値を取る。なお、ここで、m (0)、m (0)、m (0)、θ(0)、φ(0)、等の記号の上付きの(0)は、電圧が実質的に印加されていないときの値であることを表す。θ(0)は35°か145°で、コーン磁化状態の実現により、磁化自由層の磁化はz軸方向から面内方向に35°か145°傾くことがわかる。φ(0)は20°か160°であり、磁化固定層との層間交換結合により楕円の長軸方向からも傾くことがわかる。シミュレーション結果から、図7(a)において、初期磁化状態で磁化は、例えば、m (0)が正の位置P01を向く。なお、図7及び図8では、初期磁化方向P0をP01(m (0)が正)またはP02(m (0)が負)とした。図7及び図8ではP0を白丸で表している。
図7(a)及び(b)は、上記条件[1]における磁気素子に第一電圧を印加したときの磁化方向の変化の軌跡を表す。第一電圧は、磁気素子が磁化反転するに足りる値の電圧である。0nsから2nsまでの時間範囲の軌跡を示している。点と点の間の時間間隔は0.02nsである。このシミュレーションにおいては、第一電圧の印加により磁化自由層のK1,effとKu2の絶対値は増大し、K1,eff=-207[kJ/m]、Ku2=136[kJ/m]となる。図7(a)及び(b)に表したように、電圧が印加されると、磁化自由層の磁化ダイナミクスが誘起される。図7(a)に表したように、m (0)>0のP01を始点とした場合は、磁化ベクトルはm<0の下半球に入り反転する。一方で、図7(b)に表したように、m (0)<0のP02を始点とした場合は、磁化ベクトルは上半球に到達せず反転しない。
図8(a)及び(b)は、上記条件[1]における磁気素子に第一電圧とは極性が逆の第二電圧を印加したときの磁化方向の変化の軌跡を表す。0nsから5nsまでの時間範囲の軌跡を示している。点と点の間の時間間隔は0.1nsである。このシミュレーションにおいては、第二電圧の印加により磁化自由層のK1,effとKu2の絶対値は減少し、K1,eff=-24.6[kJ/m]、Ku2=15.7[kJ/m]となる。図8(a)及び(b)に表したように、電圧が印加されると、磁化自由層の磁化ダイナミクスが誘起される。図8(a)に表したように、m (0)>0のP01を始点とした場合は、磁化ベクトルは下半球に到達せず反転しない。一方で、図8(b)に表したように、m (0)<0のP02を始点とした場合は、m>0の上半球に入り反転する。
シミュレーション結果から、電圧印加前のm (0)の正負にかかわらず第一電圧を印加すると負のmとなり、電圧印加前のm (0)の正負にかかわらず第1電圧とは極性が逆の第二電圧を印加すると正のmとなることがわかる。つまり磁化自由層の磁化方向が双極的にスイッチングされることがわかる。
本実施形態における磁気素子を構成する積層構造の各層の1例について説明する。ただし、本実施形態の磁気素子は、例示する材料組成や厚さ等に限定されない。本発明の実施形態における磁気素子に用いるトンネル障壁層は、MgOで厚さは例えば1.3nm程度である。なお、後述する第2及び第3実施形態においても、同様のトンネル障壁層を用いることができる。本実施形態及び後述する第2の実施形態の磁気素子における、参照層とその周辺の構造は、基板側から順に、トンネル障壁層/参照層/[合成反強磁性体(SAF)構造の残り]である。参照層は合成反強磁性体(SAF)構造に含まれているので、左記のように表現した。参照層は、例えば、CoFeB(1.4nm)/W(0.3nm)/Co(0.5nm)/[Pt(0.6nm)/Co(0.4nm)]等である。[合成反強磁性体(SAF)構造の残り]は、Ru(0.45nm)/Co(0.3nm)/[Pt(0.3nm)/Co(0.3nm)]等である。例えば、SAF構造を書き下すと、CoFeB(1.4nm)/W(0.3nm)/Co(0.5nm)/[Pt(0.6nm)/Co(0.4nm)]/Ru(0.45nm)/Co(0.3nm)/[Pt(0.3nm)/Co(0.3nm)]である。
本実施形態及び後述する第2の実施形態における、HIECを与えるための磁化固定層を含むSAF構造とその周辺の構造は、基板側から順に、反強磁性体層であるPtMn(15nm)/CoFe(2.5nm)/Ru(厚さは各実施形で異なる)/Pt(0.16nm)/磁化自由層である。このうち磁化固定層は、CoFe(2.5nm)である。本実施形態における、磁化自由層は、例えば、(Ru(1nm)/Pt(0.16nm)/)Co(1.1nm)(/トンネル障壁層と参照層が続く)である。
(第2の実施形態)
本実施形態は、磁化自由層が面内方向に関して形状磁気異方性を有さない場合で、立方磁気異方性を有する場合の磁気素子に関する。本実施形態は、垂直型の積層構造である。図4及び図5の構成は第1の実施形態と同様である。図9は、本実施形態の磁気素子を説明するための模式的な斜視図である。図9に示される磁気素子は、コーン磁化で、円柱形状でかつ立方磁気異方性の型の例である。本実施形態の磁気素子は、参照層1と、トンネル障壁層2と、磁化自由層3と、非磁性層4と、磁化固定層5を主として備える。図9では、磁化自由層3と非磁性層4と磁化固定層5の積層構造を示したものである。本実施形態の磁気素子にはトンネル障壁層と参照層も必要だが、図9では図示を省略している。磁気素子の全体形状が円柱形状の例である。磁化自由層3が円柱形状で、図4の定義の、直径がL1=L2、層の厚みがtである。
磁化自由層3の、参照層とは反対側に、非磁性層4を介して磁化固定層5を備える構造、即ち合成(反)強磁性構造を採用すれば、外部磁界も第三群の第1磁界も不要である。
図9のように、磁化固定層5の磁化方向は、面内方向で、例として図中ではy軸方向の負の方向とx軸方向の負の方向の間であるφ=220°の方向を向く。磁化自由層の磁化方向は、非磁性層を介して磁化固定層5と反平行結合と立方磁気異方性によりφ(0)=36°の方向を向く。図9では、HIEC(層間交換結合(Interlayer Exchange Coupling)による磁化自由層への有効磁界)は、xy面内上、φ=40°の方向の例を図示した。
本実施形態では、磁化自由層の磁化方向を、面内成分に関して、面内(立方磁気異方性の容易磁化方向の一つの)方向から傾かせる必要がある。そのために、面内(立方磁気異方性の容易磁化方向の一つの)方向とは異なる方向である、第二群又は第三群の磁界が必要である。即ち、「立方磁気異方性による磁界」に加えて、「誘導磁気異方性による磁界」、「磁化自由層以外の磁性層からの漏洩磁界」、「層間交換結合による磁界」「交換バイアス磁界」、及び「前記層間交換結合による磁界と前記交換バイアス磁界の合成磁界」のいずれかの磁界のうちのいずれか1以上で、立方磁気異方性の容易磁化方向とは面内方向に関する容易磁化方向が異なる方向である磁界が、磁化自由層に与えられている必要がある。本実施形態では、例えば、第1の実施形態と同様の理由により「HIEC」を用いることがより好ましい。例えば、「HIEC」と「立方磁気異方性による磁界」の組み合わせることがより好ましい。また、面直方向から傾かせるためにコーン磁化を採用している。なお「立方磁気異方性による磁界」と「誘導磁気異方性による磁界」を組み合わせても構わないが、両立は難しい。そのため「立方磁気異方性による磁界」と「誘導磁気異方性による磁界」は第二群という同一群に含められている。
以下、シミュレーションを用いて理論計算を行った結果を説明する。ここで、シミュレーションに用いたパラメータ及び計算条件は以下のとおりである。なお、第1の実施形態と異なる点について詳しく説明する。図10及び図11は、第2の実施形態の磁気素子の磁化自由層に関するシミュレーション結果を表す図である。磁化自由層の条件は以下[条件2]の通りに設定した。なお、図9の場合の磁化自由層の磁気エネルギー密度ε(0)とεは、式(数2)と式(数3)で表される。
[条件2] 磁化自由層の厚さt=1.1[nm]。[磁化自由層の長さL1]=[自由層の長さL2]=100[nm]。N=0.0107、N=0.0107、N=0.9787。面内の形状磁気異方性磁界H=M(N-N)=0[kA/m]。磁化自由層のトンネル障壁層と接する面の面積A=π(L1/2)(L2/2)[nm]。磁化自由層の飽和磁化M=1400[kA/m](=1400[emu/cm])。磁化自由層のギルバートダンピング定数α=0.20。磁気素子への印加電圧V=0における磁化自由層の界面及び結晶の磁気異方性定数について、1次の異方性定数Ku1 (0)=1068.5[kJ/m](K1,eff (0)=-85.5[kJ/m)、2次の異方性定数Ku2 (0)=129.9[kJ/m]、Kcubic=47[kJ/m]。メモリチップの外側から印加する外部磁界Hext0=0[kA/m]、磁化自由層以外の磁性層からの漏洩磁界Hext1=0[kA/m]、すなわちHext=0[kA/m]。磁化固定層との層間交換結合による磁化自由層にかかる有効磁界の大きさはHexch=39.8[kA/m](=500[Oe])で、そのx軸からの方位角は40°である。以上の条件から温度300[K]では熱擾乱耐性Δ(0)=60.1。
上記[条件2]における印加電圧V=0のときの、磁気エネルギー密度ε(0)は、(m、m、m)=(m (0)、m (0)、m (0))=(sinθ(0)cosφ(0)、sinθ(0)sinφ(0)、cosθ(0))=(0.55、0.41、±0.72)で最低値を取る。θ(0)は44°か136°で、φ(0)は36°である。シミュレーション結果から、図10(a)において、初期磁化状態で磁化は、例えば、m (0)が正の位置P03を向く。図10及び図11では、初期磁化方向P0をP03(m (0)が正)またはP04(m (0)が負)とした。
図10(a)(b)は、上記[条件2]における磁気素子に第一電圧を印加したときの磁化方向の変化の軌跡を表す。0nsから2nsまでの時間範囲の軌跡を示している。点と点の間の時間間隔は0.02nsである。このシミュレーションにおいては、第一電圧の印加により磁化自由層のK1,effとKu2の絶対値は増大し、K1,eff=-221.7[kJ/m]、Ku2=169[kJ/m]となる。図10(a)(b)に表したように、電圧が印加されると、磁化自由層の磁化ダイナミクスが誘起される。図10(a)に表したように、m (0)>0のP03を始点とした場合は、磁化ベクトルはm<0の下半球に入り反転する。一方で、10(b)に表したように、m (0)<0のP04を始点とした場合は、磁化ベクトルは上半球に到達せず反転しない。
図11(a)(b)は、上記[条件2]における磁気素子に第一電圧とは極性が逆の第二電圧を印加したときの磁化方向の変化の軌跡を表す。0nsから5nsまでの時間範囲の軌跡を示している。点と点の間の時間間隔は0.1nsである。このシミュレーションにおいては、第二電圧の印加により磁化自由層のK1,effとKu2の絶対値は減少し、K1,eff=-24.6[kJ/m]、Ku2=49[kJ/m]となる。図11(a)(b)に表したように、電圧が印加されると、磁化自由層の磁化ダイナミクスが誘起される。図11(a)に表したように、m (0)>0のP03を始点とした場合は、磁化ベクトルは下半球に到達せず反転しない。一方で、図11(b)に表したように、m (0)<0のP04を始点とした場合は、m>0の上半球に入り反転する。
上記[条件2]のシミュレーション結果から、電圧印加前のm (0)の正負にかかわらずK1,effとKu2の絶対値が増大するような第一電圧を印加すると負のmとなり、電圧印加前のm(0)の正負にかかわらず第一電圧とは逆の極性の第二電圧を印加すると正のmとなることがわかる。つまり、図9のように、層間交換相互作用による磁化固定層5との反平行結合等により、磁化自由層に、面内(立方磁気異方性の容易磁化方向の一つの)方向とは面内方向に関する容易磁化方向が異なる方向である磁界を印加することにより、磁化自由層が対称性の高い円柱形状で、その磁化方向が双極的にスイッチングする特性を有することがわかる。
本実施形態における磁気素子を構成する積層構造の各層の1例について説明する。本実施形態における磁気素子は第1の実施形態で示した例と同様である。また、例えば、磁化自由層は、(Ru(0.84nm)/Pt(0.16nm)/)Co(0.8nm)/FeB(0.3nm)(/トンネル障壁層と参照層が続く)であることが好ましい。
(第3の実施形態)
第1と第2の実施形態が垂直型の例であるのに対して、本実施形態の磁気素子は、面内型の積層構造の例である。図12は、本実施形態の磁気素子の断面模式図である。図13は、模式的な斜視図である。磁気素子は、参照層1と、トンネル障壁層2と、磁化自由層3と、非磁性層4と、磁化固定層5を主として備える。図13は、磁化自由層3と非磁性層4と磁化固定層5の積層構造を示したものである。本磁気素子として、トンネル障壁層と参照層も必要だが、図13では図示を省略している。磁気素子の全体形状が楕円柱形状の例である。図4に図示するように、磁化自由層3が楕円柱形状で、長軸方向の長さがL1、短軸方向の長さがL2、層の厚みがtである。xyz軸方向は、第1の実施形態と同様であり、楕円長軸方向をx軸方向、楕円短軸方向をy方向とおく。
図12に、磁化方向の例を示す。参照層1は、面内方向の磁化方向を有する。磁化固定層5の磁化方向は面直方向で参照層の反対側向きである。第三群の第1磁界を○中に×のマークで示すように紙面垂直方向で紙面表から裏へ向くように印加する。
また、磁化自由層3の、参照層1側とは反対側に、非磁性層4を介して磁化固定層5を備える積層構造において、図12の図示とは異なり、磁化固定層5の磁化を、例えばy軸方向に傾けた構造にした場合は、外部磁界も第三群の第1磁界も不要である。
図13では、第三群の第1磁界Hext1を面内方向に印加し、かつ層間交換相互作用による磁化自由層への有効磁界HIECを、z方向に平行に印加する場合を示す。図13のように、本実施形態の磁気素子は、楕円柱形状で、磁化自由層に、第三群の第1磁界及び層間交換相互作用による有効磁界のいずれか1以上による「合成」磁界を、楕円長軸方向と非平行となるように印加する。
本実施形態では、第1の実施形態と同様、磁化自由層の磁化方向を、面内方向に関して、楕円長軸方向から傾かせる必要がある。そのために、第二群又は第三群の少なくとも1つの磁界のうち、楕円長軸方向とは面内方向に関する容易磁化方向が異なる方向である磁界が、磁化自由層に与えられている必要がある。本実施形態では、第三群の磁界の1つである、第1磁界Hext1(磁化自由層以外の磁性層からの漏洩磁界)を使用した。本実施形態では、面内方向から磁化を傾かせるために「HIEC」がすでに使われているからである。磁化固定層の磁化が面直から楕円短軸方向に傾いた構造の場合は、「HIEC」で「面内から面直方向に磁化を傾かせ」つつ「楕円長軸方向から短軸方向へも磁化を傾かせる」ことで第1磁界Hext1が不要になり、より好ましい。
以下、シミュレーションを用いて理論計算を行った結果を説明する。ここで、シミュレーションに用いたパラメータ及び計算条件は以下のとおりである。なお、第1の実施形態と異なる点について詳しく説明する。図14及び図15は、第3の実施形態の磁気素子の磁化自由層に関するシミュレーション結果を表す図である。磁化自由層の条件は以下[条件3]の通りに設定した。なお、磁化自由層の磁気エネルギー密度ε(0)とεは、式(数2)と式(数3)で表される。
[条件3]
磁化自由層の厚さt=1.78[nm]。磁化自由層の長さL1=297.2[nm]。磁化自由層の長さL2=66.8[nm]。N=0.0058、N=0.0494、N=0.9447。面内の形状磁気異方性磁界H=M(N-N)=61[kA/m](767[Oe])。磁化自由層の、参照層と磁化自由層に挟まれた非磁性層(トンネル障壁層)と接する面の面積A=π(L1/2)(L2/2)[nm]。磁化自由層の飽和磁化M=1400[kA/m](=1400[emu/cm])。磁化自由層のギルバートダンピング定数α=0.10。磁気素子への印加電圧V=0における磁化自由層の界面及び結晶の磁気異方性定数について、1次の異方性定数Ku1 (0)=1106.2[kJ/m](K1,eff (0)=-50[kJ/m)、2次の異方性定数Ku2 (0)=0[kJ/m]、Kcubic=0[kJ/m]。メモリチップの外側から印加する外部磁界Hext0=0[kA/m]、磁化自由層以外の磁性層からの漏洩磁界Hext1=4.60[kA/m](=57.8[Oe])、すなわちHext=Hext1=4.60[kA/m]で、その方向は+y方向、つまり面内にありx軸からの方位角は90°である。磁化固定層との層間交換結合による磁化自由層にかかる有効磁界の大きさはHexch=28.4[kA/m](=357[Oe])で、その方向は+z方向、つまりそのz軸からの極角は0°である。以上の条件から温度300[K]では熱擾乱耐性Δ(0)=72.5。
上記[条件3]における印加電圧V=0のときの、磁気エネルギー密度ε(0)は、(m、m、m)=(m (0)、m (0)、m (0))=(sinθ(0)cosφ(0)、sinθ(0)sinφ(0)、cosθ(0))=(±0.863、0.075、0.500)で最低値を取る。θ(0)は60°で、φ(0)は5°か175°である。シミュレーション結果から、図14(a)において、初期磁化状態で磁化は、例えば、m (0)が正の位置P05を向く。図14では、初期磁化方向P0をP05(m (0)が正)またはP06(m (0)が負)とした。
図14(a)(b)は、上記[条件3]における磁気素子に第一電圧を印加したときの磁化方向の変化の軌跡を表す。0nsから1nsまでの時間範囲の軌跡を示している。点と点の間の時間間隔は0.005nsである。このシミュレーションにおいては、第一電圧の印加により磁化自由層のK1,effの絶対値は増大し、K1,eff=-376[kJ/m]となる。図14(a)(b)に表したように、電圧が印加されると、自由層の磁化ダイナミクスが誘起される。図14(a)に表したように、m (0)>0のP05を始点とした場合は、磁化ベクトルはm<0半球に到達せず反転しない。一方で、図14(b)に表したように、m (0)<0のP06を始点とした場合は、m>0の半球に入り反転する。
図15(a)(b)は、上記[条件3]における磁気素子に第一電圧とは極性が逆の第二電圧を印加したときの、磁化自由層の磁化方向の変化の軌跡を表す。0nsから10nsまでの時間範囲の軌跡を示している。点と点の間の時間間隔は0.05nsである。このシミュレーションにおいては、第二電圧の印加により自由層のK1,effの絶対値は減少し、K1,eff=-31.1[kJ/m]となる。図15(a)(b)に表したように、電圧が印加されると、磁化自由層の磁化ダイナミクスが誘起される。図15(a)に表したように、m (0)>0のP05を始点とした場合は、m<0の半球に入り反転する。一方で、図15(b)に表したように、m (0)<0のP06を始点とした場合は、磁化ベクトルはm>0の半球に到達せず反転しない。
上記のシミュレーション結果から、電圧印加前のm (0)の正負にかかわらず第一電圧を印加すると正のmとなり、電圧印加前のm (0)の正負にかかわらず第1電圧とは極性が逆の第二電圧を印加すると負のmとなることがわかる。つまり磁化自由層が2次の異方性エネルギーを持たない材料であってもその磁化方向が双極的にスイッチングされることがわかる。
本実施形態における磁気素子を構成する積層構造の各層の1例について説明する。本実施形態における磁気素子は第1の実施形態で示した例と同様である。本実施形態における磁気素子の参照層とその周辺の構造は、例えば、基板側から順に、トンネル障壁層/参照層/[合成反強磁性体(SAF)構造の残り]/[反強磁性体層であるPtMn(15nm)]である。参照層は合成反強磁性体(SAF)構造に含まれている。参照層は、CoFeB(2.2nm)/CoFe(0.8nm)等である。[合成反強磁性体(SAF)構造の残り]は、Ru(0.85nm)/CoFe(2.5nm)等である。例えば、SAF構造を書き下すと、CoFeB(2.2nm)/CoFe(0.8nm)/Ru(0.85nm)/CoFe(2.5nm)である。本実施形態における、HIECを与えるための磁化固定層を含むSAF構造は、例えば、基板側から順に、[Co(0.24nm)/Pt(0.16nm)]/Co(0.24nm)/Ru(0.79nm)/磁化自由層である。また、磁化自由層は、例えば、CoFeB(1.78nm)(/トンネル障壁層と参照層が続く)である。
(第4の実施形態)
本実施形態では、第1乃至第3の実施形態の磁気素子を磁気メモリ素子として複数個備えた磁気記憶装置について、図16を参照して説明する。図16は、本実施形態の複数の磁気素子を備える磁気記憶装置の断面模式図である。磁気記憶装置210は、第1磁気素子110と、第2磁気素子120と、第1磁気素子110に電圧を印加するために第1磁気素子110を挟む第1導電層31及び第2導電層32と、第2磁気素子120に電圧を印加するために第2磁気素子を挟む第3導電層33及び第4導電層34とを主として含む。磁気記憶装置210は、第1磁気素子と第2磁気素子を絶縁分離する絶縁部40を含む。磁気記憶装置210は、例えば、図示のように、第1導電層31及び第3導電層33と電気接続される第1配線71と、第2導電層32及び第4導電層34と電気接続される第2配線72と、制御部70と、スイッチ(72a、72b)とを含む。第1磁気素子110は、参照層11と、磁化自由層を含む多層膜12と、参照層11と前記多層膜12とに挟まれるトンネル障壁層21とを含む積層構造を有する。第2磁気素子120も、第1磁気素子110と同様に、参照層13と、磁化自由層を含む多層膜14と、参照層13と前記多層膜14とに挟まれるトンネル障壁層22とを含む積層構造を有する。磁化自由層を含む多層膜(12、14)は、例えば、磁化自由層/非磁性層/磁化固定層の多層膜の積層構造を備える。磁気記憶装置210では、第1、第2、第3、第4の導電層に加えて、さらに、キャップ層、保護膜、シード層、バッファ層等を適宜設けることができる。また、図示を省略するが、磁気記憶装置210は、基板を備え、基板側にシード層やバッファ層等を積層してから磁性多層膜を積層する構造も含む。また、図では、磁化自由層を含む多層膜(12、14)は参照層(11、13)より下にあるが、磁化自由層が参照層より上に積層されていても良い。また、3次元積層プロセス技術により、基板側が上になり基板が除去される場合もある。第1導電層31、第2導電層32、第3導電層33及び第4導電層34は、非磁性である。いずれも導電層も、例えば、Ta、Ru、W、Ir、Au、Ag、Cu、Al、Cr、Pt、及びPdからなる群から選択された少なくとも1つを含む。これらの導電層(31、32、33、34)のそれぞれの厚さは、例えば、1nm以上200nm以下である。より好ましくは、これらの導電層の厚さは、磁化自由層の長さL1または長さL2より長く、200nm以下である。これにより、良好な平坦性と、低い抵抗値と、が得られる。絶縁部40は、例えば、非磁性の絶縁性化合物を含む。前記絶縁性化合物は、例えば、Si、Al、Ti、Mg、及びTaからなる群より選択された少なくともいずれかの元素の、酸化物、窒化物、または弗化物である。
本実施形態に係る磁気記憶装置の動作例について説明する。図17(a)~図19(h)は、本磁気記憶装置の動作を説明する模式図である。図の横軸は、時間を表す。図の縦軸は、第1配線71と第2配線72との間に加わる信号S1の電位を表す。信号S1は、磁化自由層を含む多層膜12と参照層11との間、または磁化自由層を含む多層膜14と参照層13との間に加わる信号に、実質的に対応する。磁化自由層を含む多層膜12と参照層11との間の電気抵抗は、参照層11と電気的に接続されている第1配線71と、磁化自由層を含む多層膜12と電気的に接続されている第2配線72と、の間の電気抵抗に対応する。
[書き込み動作]
図17(a)に表すように、制御部70は、第1配線71と第2配線72との間に、第一電圧の第1書き込みパルスWP1を印加する第1動作OP1を実施する。第1動作OP1において、磁化自由層を含む多層膜12と参照層11との間に、第1書き込みパルスWP1(第1パルス時間幅T1、第1パルス高さH1)が供給される。これにより、磁化自由層を含む多層膜12と参照層11との間の電気抵抗が増加または減少する。すなわち、第1書き込みパルスWP1により、記憶された情報が書き換えられる。例えば、第1動作OP1の後における磁化自由層を含む多層膜12と参照層11との間の第2電気抵抗は、第1動作OP1の前における磁化自由層を含む多層膜12と参照層11の第1電気抵抗とは、異なる。この電気抵抗の変化は、第1書き込みパルスWP1による磁化自由層を含む多層膜12の磁化方向の変化に基づく。磁化自由層を含む多層膜12と参照層11との間において、磁化方向の相対関係が、第1書き込みパルスWP1により変化する。電気抵抗が異なる複数の状態は、それぞれ、記憶される情報に対応する。
なお、第2電気抵抗の状態で、第一電圧の第1書き込みパルスWP1を印加する第1動作OP1を実施しても、電気抵抗は第2電気抵抗から第1電気抵抗に変化しない。すなわち情報書き換えは起こらない。更に言い換えれば、第1動作OP1の後に第1動作OP1を繰り返しても、後者のパルス印加による書き換えは起こらない。第1動作OP1の後に第1動作OP1を印加した後における、磁化自由層を含む多層膜12と参照層11との間の電気抵抗を第2α電気抵抗とよぶとすれば、第2電気抵抗と第2α電気抵抗は同じである。
図17(b)に示すように、第一電圧と極性が逆である第二電圧の第2書き込みパルスWP2(第2パルス時間幅T2、第2パルス高さH2)を印加する第2動作OP2を実施する。第2電気抵抗の状態で、第2動作OP2を実施すると、電気抵抗は第2電気抵抗から第1電気抵抗に変化する。すなわち、第2書き込みパルスWP2により、記憶された情報が書き換えられる。図示のような逆極性の第2書き込みパルスWP2を用いる場合、パルス高さH2の絶対値は、第1書き込みパルスWP1のパルス高さH1の絶対値よりも小さくても良く、同じでも良く、大きくても良い。
第1電気抵抗または第2電気抵抗の状態として記憶されている情報を書き換えないときには、図17(c)に示すように、制御部70は、第3動作OP3を実施してもよい。第3動作OP3においては、第1書き込みパルスWP1も第2書き込みパルスWP2も印加されない。
なお、第1電気抵抗の状態で、第2動作OP2を実施しても、電気抵抗は第1電気抵抗から第2電気抵抗に変化しない。すなわち情報書き換えは起こらない。更に言い換えれば、第2動作OP2の後に第2動作OP2を繰り返しても、後者のパルス印加による書き換えは起こらない。第2動作OP2の後に第2動作OP2を実施した後における、磁化自由層を含む多層膜12と参照層11との間の電気抵抗を第1α電気抵抗とよぶとすれば、第1電気抵抗と第1α電気抵抗は同じである。
図18(d)に示すように、パルスの立ち上がりにかかる時間をτ、立ち下がりにかかる時間をτと呼ぶ。第1書き込みパルスWP1および第2書き込みパルスWP2のτは、書き込みの安定化の観点からゼロに近いことが好ましい。第1書き込みパルスおよび第2書き込みパルスのτはそれらのτと同じでも構わないが、書き込みの安定化の観点からはτは長い方が好ましい。一方でτが長くなり過ぎると消費電力が大きくなり好ましくない。したがって、第1書き込みパルスWP1および第2書き込みパルスWP2のτは、それらのτと同じくゼロ近傍以上で10ns以下が好ましい。
適切なパルス時間幅の第1書き込みパルスWP1または第2書き込みパルスWP2が印加されたときに、情報の書き換えが可能になる。このとき、磁化自由層を含む多層膜12と参照層11との間の電気抵抗は、高抵抗状態から低抵抗状態に、又は、低抵抗状態から高抵抗状態に、変化する。一方、適切ではない時間幅のパルスが印加された場合は、所望の変化をしない。適切なパルス時間幅は有効磁界Heffに依存して変化し、例えば、(第1の実施形態)においてT1=0.6nsおよびT2=1.5ns、(第2の実施形態)においてT1=0.7nsおよびT2=2.4ns、(第3の実施形態)においてT1=4nsおよびT2=4nsである。一方でパルス時間幅は適切な第1パルス時間幅T1および適切な第2パルス時間幅T2より長くても構わない。しかしパルス時間幅が長くなるほど消費電力が大きくなるので不必要にパルス時間幅を長くすることは好ましくない。
書き込み動作において、図18(e)に示すような、図17(a)とは異なる、適切なパルス時間幅より短いパルス時間幅のパルスWP1x(例:第1パルス時間幅T1の0.3倍のパルス時間幅と、第1パルス高さH1)が印加される場合には、電気抵抗の変化が実質的に生じない。また、(第3の実施形態)においては第2電気抵抗の状態で1nsのパルス時間幅のパルスWP1xを印加すると第1電気抵抗に変化する誤書き込みが起こる。一方で、図18(f)に示すような、適切なパルス時間幅より長いパルス時間幅のパルスWP1y(例:第1パルス時間幅T1の2倍のパルス時間幅と、第1パルス高さH1)が印加される場合には、電気抵抗の変化が生じる。パルスP1xを、磁化自由層を含む多層膜12と参照層11との間に印加した後の、磁化自由層を含む多層膜12と参照層11との間の第3電気抵抗と、別のパルスP1xを、磁化自由層を含む多層膜12と参照層11との間に印加する前の第4電気抵抗と、の差の絶対値は、第2電気抵抗と第1電気抵抗との差の絶対値よりも小さい。すなわち、パルスP1xを印加したときには、電気抵抗の変化は実質的にゼロで、第1書き込みパルスWP1およびパルスWP1yを印加したときの電気抵抗の変化よりも小さい。
[読み出し動作]
情報読み出しは、図19(g)に表すように、第1読み出しパルスRP1を印加する第4動作OP4によって行う。制御部70は、磁化自由層を含む多層膜12と参照層11との間(第1配線71と第2配線72との間)に、第1読み出しパルスRP1を印加する。第1読み出しパルスRP1の極性は、第1書き込みパルスWP1の極性に対して同じでも逆でもよい。ただし、第1読み出しパルスRP1のパルス高さH4の絶対値は、[第1書き込みパルスWP1の第1パルス高さH1の絶対値]および[第2書き込みパルスWP2の第2パルス高さH2の絶対値]のいずれよりも小さい。第1読み出しパルスRP1のτとτは、第1書き込みパルスWP1および第2書き込みパルスWP2のそれらと同じでも構わないが、リード・ディスターバンス防止の観点からは長い方が好ましい。一方でτとτが長くなり過ぎると読み出し速度が遅くなるので好ましくない。したがって、第1読み出しパルスRP1のτとτは、第1書き込みパルスWP1および第2書き込みパルスWP1のτと同程度の長さから100倍以内の長さが好ましい。
図19(h)に示すように、制御部70は、第1動作OP1および第2動作OP2の前に第4動作OP4をプレリードとしてさらに実施しても構わないが、本発明の磁気記憶装置では双極性書き込みが可能であるため第4動作OP4は省略することができる。
(第5の実施形態)
第1乃至3の実施形態では、楕円柱形状と円柱形状の場合について説明したが、これらに限定されない。磁化自由層の面内形状は、回転対称性又は2軸以上に対して鏡面対称性を有する形状であれば、よい。
図20及び図21に磁化自由層の形状の例を図示する。回転対称性を有する形状は、例えば、(a)円、(b)楕円、(c)回転対称性のある四角形の(c)菱形や(d)平行四辺形等である。菱形等のように、回転対称性及び2軸以上に対する鏡面対称性の双方の対称性を有するものもある。さらに、回転対称性を有する形状は、例えば、正多角形((e)正三多角形、(f)正四角形、(g)正五角形、(h)正六角形、正七角形等)等である。さらに、正偶数角形の平行な二辺を伸縮させたものでもよい。例えば、正方形を伸ばした(i)長方形や、(j)正六角形を伸ばした六角形でもよい。また、回転対称性を有する形状は、星形正多角形((k)星形正五角形、(l)星形正六角形、(m)星形正七角形、星型正八角形等)等である。さらに、星形正多角形の鏡面対称軸の一つを中心に伸縮させたもの((n)六角形、(o)六角形)でもよい。また、回転対称性又は2軸以上に対して鏡面対称性を有する形状の例として、図示するような、図形の組み合わせで対称性が高いもの(p)(q)(r)(s)(t)でもよい。また、回転対称性又は2軸以上に対して鏡面対称性を有していれば、穴があいているもの((u)穴を有する円、(v)穴を有する四角形等)でもよい。また、磁気素子の面内形状や磁化自由層の面内形状は、回転対称性又は2軸以上に対して鏡面対称性を有していれば、図21に示すように、角が丸まったもの(w)角が丸い正方形、(x)角の丸異長方形等)や、ルーローの多角形(y)でもよい。ルーローの多角形とは、正奇数角形(正三角形、正五角形、正七角形等)の辺を膨らませてできる定幅図形をいう。
なお、上記実施形態等で示した例は、発明を理解しやすくするために記載したものであり、この形態に限定されるものではない。
本発明の磁気素子は、電圧書き込みにより磁化方向が双極反転する特性を有することから、磁気メモリ素子等として、省電力及び高速性を図ることができるので、産業上有用である。
1、11、13 参照層
2、21、22 トンネル障壁層
3 磁化自由層
4 非磁性層
5 磁化固定層
12、14 磁化自由層を含む多層膜
31 第1導電層
32 第2導電層
33 第3導電層
34 第4導電層
40 絶縁部
70 制御部
71 第1配線
72 第2配線
72a、72b スイッチ
110 第1磁気素子
120 第2磁気素子
210 磁気記憶装置

Claims (13)

  1. 参照層と、磁化自由層と、前記参照層と前記磁化自由層の間に挟まれるトンネル障壁層とを少なくとも含む積層構造を備え、
    前記磁化自由層の面内形状は、回転対称性又は2軸以上に対して鏡面対称性を有し、
    前記磁化自由層に電圧と外部磁界が実質的に印加されていない状態で、前記磁化自由層の磁化は、
    前記磁化自由層からトンネル障壁層に向かう第1方向と磁化自由層の磁化方向との間の角度θ(0)が、0°<θ(0)<90°、又は90°<θ(0)<180°の方向であり、
    面内成分の角度φ(0)が0°<|φ(0)|<90°または90°<|φ(0)|<180°の方向であり、但し角度φ(0)は、面内方向に異方性を与える
    第一群:形状磁気異方性による磁界、
    第二群:立方磁気異方性又は誘導磁気異方性の少なくとも1つによる磁界、および
    第三群:磁化自由層以外の磁性層からの漏洩磁界を第1磁界と呼び、層間交換結合による磁界、交換バイアス磁界、及び前記層間交換結合による磁界と前記交換バイアス磁界の合成磁界のいずれかを第2磁界と呼ぶとき、前記第1磁界又は前記第2磁界の少なくとも1つによる磁界、のうちの一つによる容易磁化方向となす角度であり、
    前記トンネル障壁層の面積抵抗が10Ωμm以上500μm以下であり、
    双極性電圧の印加に対応して磁化自由層の磁化方向が双極反転する特性を有することを特徴とする磁気素子。
  2. 前記第一群乃至第三群のうち異なる群から選択される少なくとも2つの磁界が、磁化自由層に与えられていて、当該少なくとも2つの磁界のうち、2つのそれぞれの磁界による面内方向に関する容易磁化方向が異なる方向であることを特徴とする、請求項1記載の磁気素子。
  3. 前記磁気素子は、前記磁化自由層の、前記参照層側とは反対側に、非磁性層を介して磁化固定層を備える構造を含むことを特徴とする、請求項1又は2記載の磁気素子。
  4. 前記磁化自由層は面内方向に関して形状磁気異方性を有し、前記第二群又は前記第三群から選択される少なくとも1つの磁界が前記磁化自由層に与えられていて、当該少なくとも1つの磁界が、前記形状磁気異方性による磁界による面内方向に関する容易磁化方向と異なる方向であることを特徴とする、請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の磁気素子。
  5. 前記磁化自由層は楕円柱形状であることを特徴とする、請求項4記載の磁気素子。
  6. 前記参照層が垂直方向又は面内方向の磁化方向を有し、前記磁化自由層は楕円柱形状であり、前記磁化自由層に与えられる前記第三群の磁界の方向が、前記形状磁気異方性による磁界による面内方向に関する容易磁化方向と異なる方向であることを特徴とする、請求項1又は2記載の磁気素子。
  7. 前記磁化自由層は、面内方向に関して形状磁気異方性を有さず、前記第二群または第三群のうち異なる群から選択される少なくとも2つの磁界が、前記磁化自由層に与えられていて、当該少なくとも2つの磁界のうち、2つのそれぞれの磁界による面内方向に関する容易磁化方向が異なる方向であることを特徴とする、請求項1又は2記載の磁気素子。
  8. 前記参照層が面に垂直方向の磁化方向を有する場合は、前記角度θ(0)が、15°≦θ(0)<90°あるいは90°<θ(0)≦165°であり、前記参照層が面内方向の磁化方向を有する場合は、30°<θ(0)<85°と95°<θ(0)<150°であることを特徴とする、請求項1記載の磁気素子。
  9. 当該磁気素子は、前記磁化自由層に前記第1磁界を与える前記磁化自由層以外の磁性層を前記積層構造内にさらに備えることを特徴とする、請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載の磁気素子。
  10. 前記磁化自由層のギルバートダンピング定数αは0.05以上0.5以下であることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の磁気素子。
  11. 請求項1乃至10のいずれか1項記載の磁気素子の複数の集合体である磁気メモリチップ。
  12. 請求項1乃至11のいずれか1項記載の磁気素子を複数含む、不揮発性の磁気記憶装置。
  13. 参照層と、磁化自由層と、前記参照層と前記磁化自由層の間に挟まれるトンネル障壁層とを少なくとも含む積層構造を備え、
    前記磁化自由層の面内形状は、回転対称性又は2軸以上に対して鏡面対称性を有し、
    前記磁化自由層に電圧と外部磁界が実質的に印加されていない状態で、前記磁化自由層の磁化は、
    磁化自由層からトンネル障壁層に向かう第1方向と磁化自由層の磁化方向との間の角度θ(0)が、0°<θ(0)<90°、又は90°<θ(0)<180°の方向であり、
    面内成分の角度φ(0)が0°<|φ(0)|<90°または90°<|φ(0)|<180°の方向であり、但し角度φ(0)は、面内方向に異方性を与える
    第一群:形状磁気異方性による磁界、
    第二群:立方磁気異方性又は誘導磁気異方性の少なくとも1つによる磁界、および
    第三群:磁化自由層以外の磁性層からの漏洩磁界を第1磁界と呼び、層間交換結合による磁界、交換バイアス磁界、及び前記層間交換結合による磁界と前記交換バイアス磁界の合成磁界のいずれかを第2磁界と呼ぶとき、前記第1磁界又は前記第2磁界の少なくとも1つによる磁界、のうちの一つによる容易磁化方向となす角度であり、
    前記トンネル障壁層の面積抵抗が10Ωμm以上500μm以下である磁気素子に、
    双極性のパルス電圧を印加して、双方向磁化反転を誘起することにより、パルス電圧の極性に対応した情報書き込みを行うことを特徴とする、磁気素子の書き込み方法。
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