JP2005119074A - 多層フィルムとその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】特に高速連続包装機での包装において、包装機械適性が良好であり、更に、防曇性も良好であるフィルムを提供する。
【解決手段】特定樹脂の両表面層、芯層、両中間層とからなり、特定の温度で延伸することにより特定の引裂強度の縦横方向のバランスがあり、又、フィルム表面に特定量のグリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤が層状に分布している多層フィルム。
【選択図】選択図なし

Description

本発明は、包装機にて包装され、主にトレーパック等食品包装分野に使用することができる多層フィルムに関する。
これまで連続包装機に使用するフィルムに求められる主な特性は、下記のようなものである。
1)タイトに美麗に仕上がること。
2)連続包装機の高速化に伴い、フィルムのカット性が良いこと。
3)冷蔵の際でも水滴で曇らず視認性が良いこと。
4)硬い鋭利な部分を持つトレー、容器、被包装物の包装の際に破れないこと。
5)連続包装機の高速化に伴い、シール性が良いこと。
使用する包装フィルムには、従来ポリオレフィン系樹脂の多層フィルムが知られている。
例えば、特許文献1には、芯層にポリプロピレン系共重合体樹脂、両表面層にエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、中間層に密度が特定された線状低密度ポリエチレン樹脂からなるストレッチフィルムが開示されている。このフィルムについては、柔軟であり回復性に優れるが、自己密着が優れるが故に連続包装機の高速化について満足されておらず、又、柔軟性に優れるが故に包装機でのカット性が悪化する傾向になってしまい、好適に使用することが困難である。
また、特許文献2には、内部層にポリプロピレン系共重合体樹脂、両表面層にポリエチレン系樹脂からなる3層以上で構成されたストレッチシュリンクフィルムが開示されている。このフィルムについては、ストレッチシュリンク包装用フィルムとして優れているが、残念ながら引裂強度のバランスが横方向の方が強くなってしまい、カット性も悪化し連続包装機で縦裂け伝播のトラブルとなってしまう。又、引裂強度のバランスを改善しようとするとバブルインフレーション法での延伸のコントロールが困難であり、延伸性が悪くなってしまい好適に使用することが困難である。
一方、特許文献3には、内部層に軟質ポリプロピレン系樹脂層とエチレン系重合体層を2層以上有し、両表面層にエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を用い、更にシュリンク包装に必要な物性を特定したフィルムが開示されている。このフィルムについては、シュリンク包装に適した物性を有しており、特に熱収縮応力を特定することで被包装体を電子レンジ加熱した時の変形も少ない長所を持つが、残念ながら引裂強度のバランスが悪く、特に高速化された連続包装機では縦裂け伝播のトラブルとなってしまう。また、フィルムの透明性は優れているが、防曇性が悪く、水分を含むトレーパック包装には向いていないフィルムとなり、好適に使用することが困難である。
特開平11−348204号公報 特開2000−343647号公報 特開2003−112395号公報
本発明の課題は、連続包装機の高速化に好適に使用可能なフィルムの提供、それに加えて防曇性が必要なトレーパック包装にも適しているフィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を達成する為に鋭意検討した結果、本発明の目的に適合しうることを見出した。
すなわち、下記の通りである。
1.両表面層、芯層、さらに各表面層と芯層との間に存在する両中間層を有する5層構成で成り、フィルムの厚みが7〜30μmである多層フィルムであって、以下の(1)〜(4)を特徴とする多層フィルム。
(1)両表面層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂より成り、グリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤を0.5〜5.0重量%含有しており、該界面活性剤が3.0〜30.0mg/mの量で層状に存在している。
(2)芯層が、エチレン含量が2〜10%である結晶性ポリプロピレン系樹脂55〜90重量%を含有しており、非晶性ポリプロピレン系共重合体45〜10重量%、又はシングルサイト系触媒により重合され、密度が0.865〜0.910g/cmであるエチレン−α−オレフィン系樹脂45〜10重量%との混合体である。
(3)両中間層が両表面層樹脂と芯層樹脂で使用されている樹脂を10〜80重量%含有し、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂10〜40重量%、密度が0.900〜0.920g/cmであるエチレン−α−オレフィン系樹脂10〜80重量%との混合体であり、グリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤を0.5〜5.0重量%含有している。
(4)ASTM−D−1992に準じて測定された引裂強度が0.05〜2.00Nであり、フィルムの縦方向の引裂強度が横方向の引裂強度より1.5〜20倍強い。
2.両表面層、芯層、さらに各表面層と芯層との間に存在する両中間層を有する5層構成で成る多層フィルムを円形ダイスを用いて製造する方法であって、両表面層としてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂にグリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤を0.5〜5.0重量%添加し、220〜250℃の温度で、且つ、押出機の一部で50〜200[1/sec]のせん断速度で溶融混練すること、円形ダイスにて溶融押出したものを水で急冷却して未延伸多層チューブを成形し、これを40〜70℃の温度で縦横2〜6倍の倍率でバブルインフレーション延伸し、且つ、横方向の延伸温度が縦方向の延伸温度よりも10〜40℃低い温度で延伸することを特徴とする多層フィルムの製造方法。
本発明の多層フィルムは、高速化された連続包装機においてもカット性に優れ、縦裂伝播等の問題も無く好適に使用可能であり、更に防曇性にも優れている。
以下、本発明について、特に好ましい形態を中心に、具体的に説明する。
まず、本発明の多層フィルムを用いて包装体を得るための工程の一例について説明する。
被包装体をフィルムで包装する方法には、ストレッチ包装、ピローシュリンク包装、ストレッチシュリンク包装、L型包装等様々あり、いずれを選んでも支障はないが、ここではストレッチシュリンク包装で連続包装する方法について説明する。
被包装体については、精肉類、魚介類、練製品類、弁当、惣菜等のようにプラスチック容器に詰められた食品類や、小物や雑貨等の非食品類のことである。
近年、食品類の包装において、プラスチック製の発泡トレー等に精肉類、魚介類、和菓子類、惣菜等を詰め、上蓋無しの状態で包装される連続包装機の開発傾向があり、高速化を長所とする包装機メーカーも多くある。
上蓋がない包装の場合にはフィルムに防曇性が必要となり、また高速化にはカット性、シール性が必要となってくる。
これらの連続包装機では、まず、被包装体を筒状に覆う工程があり、次に回転ローラー式のセンターシール(熱を加えず圧着の場合も多い)装置にて被包装体の裏面にシール線(圧着線)がくるように合掌シールし、続いて被包装体を包んでいるフィルム筒の前後をノコ刃状のカッターでカットし、フィルム筒の前後を閉じるように被包装体の底面に折り込む工程がある。被包装体の底面に折り込まれた状態で底ヒートシールを行い、コンベアで熱風シュリンクトンネルを通過させ包装フィルムを熱収縮させて更にタイトに仕上げることができる。連続包装機の包装スピードは1分間に約20〜40個包装する速度であったが、近年の高速の連続包装機になると1分間に約60〜100個包装するものもある。その為使用される包装フィルムには、その包装スピードに対応できる適性、例えば、引裂強度、滑り性、底シール性、熱収縮特性が強く求められるのである。まず引裂強度についてであるが、ASTM−D−1992に準じて測定された引裂強度において、フィルムの縦方向の引裂強度が横方向の引裂強度よりも高いことが重要となる。この際、引裂強度の縦方向、横方向のバランスで横方向より縦方向の方が弱い場合にはトラブルが発生し易くなり、好適に使用することが困難である。
この場合のフィルムの縦方向というのは、包装機においての走行方向(MD方向)を意味する。横方向というのは、走行方向に対して直角の方向(TD方向)を意味する。フィルムに置きかえると連続包装機の走行方向というのは成膜する際の流れ方向と同じとなるのが一般的である。フィルムの縦方向の引裂強度が弱いとノッチが入った場合に縦方向に伝播し続けて、連続包装は中断されてしまう。また、横方向にカッター刃でカットすることが多く、その際にカット性が悪いと、切れずにつながっていたり、伸びきったフィルム屑が多発したりして使用が非常に困難となるので、横方向の引裂強度は弱い方が好ましいのである。底シール性については、一般的にヒートシール法を採用されることが多く、フィルムの物性としては、高速になるにつれ素早く溶融することが必須となる。
上記、多層フィルムの引裂強度のバランスについて説明する。一般にポリオレフィン系樹脂の熱収縮性フィルムは、バブルインフレーション法、テンター法等により連続的に成膜されることが多い。これらの中で特にバブルインフレーション法によりフィルム成膜する方法の一連の流れを説明する。まずペレット状の樹脂を溶融押出により樹脂の融点以上等を目安にして高温で押出し、ダイスを介してチューブ状に連続押出成形し、これを水冷により冷却固化する。このチューブ状の段階のものをパリソンと呼ぶことがある。この際のダイスからの吐出方向、即ち流れ方向に分子鎖が並び易く、また水冷させる際にある程度引張るのでこの時点では流れ方向に配向しており、引裂強度は縦方向の方が弱い傾向にある。
次に延伸工程について説明する。延伸は上記フィルムの引裂強度のバランスに大きく影響を及ぼす。本発明の多層フィルムの延伸倍率は縦横方向共に2〜6倍の倍率であり、熱収縮性、引裂強度のバランス、生産安定性の面から縦横方向共に3〜5倍であるのが好ましい。延伸方法にはテンター法、バブルインフレーション法等様々な延伸方法があるが、バブルインフレーション法による延伸の方が透明性が良く好ましい。
延伸する際の延伸温度について説明する。延伸温度は表面を接触式温度計で実測した温度を用いている。本発明の多層フィルムは芯層に高結晶性のポリプロピレン系樹脂を使用しており、一般にはその融点より約30℃低い温度、即ち100〜130℃程度の温度で延伸することが多く、その温度範囲では樹脂も充分軟化している為に高倍率に延伸可能であり、バブル内圧も低くなるのでパンクもし難く生産効率も良くなることから好適な条件とされている。しかしこの場合、延伸後もパリソンの配向をそのまま継承することが多く、縦方向の引裂強度は弱いままとなり、本発明の使用分野においては好適に使用できないのである。本発明の多層フィルムの延伸温度は40〜70℃の温度であり、好ましくは50℃〜60℃の範囲の温度で、且つ、横方向の延伸温度は縦方向の延伸温度よりも10〜40℃低い温度であり、好ましくは15〜25℃低い温度で延伸されているものである。それによって本発明の引裂強度、配向バランスを調整することが可能となる。すなわち、本発明の多層フィルムの引裂強度は、ASTM−D−1992に準じて測定された値が0.05〜2.00Nであり、且つ、フィルムの縦方向の引裂強度が横方向の引裂強度より1.5〜20倍強いので、高速化された連続包装機でも好適に使用が可能である。包装品を容易に開封することや製造し易さ等考慮すると、引裂強度は0.1〜1.00Nであり、且つフィルムの縦方向の引裂強度が横方向の引裂強度より2〜5倍強いフィルムが好ましい。
通常バブルインフレーション延伸は、加熱炉や熱風リング等で加熱され縦延伸され、それを出た後に空冷リング等で冷却しながら横方向にバブル状に膨らませ横延伸する。その際若干縦方向も延伸されるが、大抵は縦方向は加熱炉内で、横方向は冷却されながら、バブルが持続される条件にて連続的に延伸される工程となっている。それらの条件ににより、延伸温度は縦方向より横方向の方が低くなることが好ましいのである。そういった延伸法を行うことによって、横方向の低温延伸による配向性の向上効果が発現し、好ましい引裂強度のバランスが確保できるのである。
上記、延伸温度における配向バランスの調整において重要な層である芯層に使用される樹脂構成について説明する。芯層に使用される樹脂構成は、エチレン含量が2〜10%であり、好ましくは4〜7%である結晶性のポリプロピレン系樹脂が主成分であり、非晶性ポリプロピレン系樹脂、又は極低密度のエチレン−α−オレフィン系樹脂との混合体である。該結晶性ポリプロピレン系樹脂の融点は156〜164℃がシールの際の耐熱性の面で好ましく、158〜163℃であると延伸し易いのでより好ましい。又、該ポリプロピレン系樹脂のJIS−K−7210に準じて測定されるメルトフローレートの値(230℃、2.16kgf(21.18N):以下結晶性ポリプロピレン系共重合体樹脂、非晶性ポリプロピレン系共重合体樹脂については同条件)については、0.5〜7.0のものが好ましく、2.0〜4.0のものが非常に延伸し易いのでより好ましい。
芯層の結晶性ポリプロピレンの混合量は55〜90%が好ましいが、60〜80%が延伸し易く、又引裂強度のバランスが調整し易いことからより好ましい。非晶性のポリプロピレン系樹脂にはプロピレン−α−オレフィン系共重合体のものが公知であり、一般に立体規則性を調整することで結晶を抑制しているもので、市販の樹脂のいずれを使用しても良いが、その中でもプロピレンホモポリマーが主成分であって、且つアタクチックのポリプロピレンで結晶性が10〜30%の樹脂が、透明性、回復性が良く、又引裂強度、熱収縮特性バランスが調整し易いことからより好ましい。上記非晶性ポリプロピレンの混合量は10〜45%であり、延伸がし易いことから20〜40%が好ましい。芯層は上記結晶性ポリプロピレン系樹脂と非晶性ポリプロピレン系樹脂との混合体の他に、結晶性ポリプロピレン系樹脂とシングルサイト系触媒により重合された極低密度のエチレン−α−オレフィン系樹脂との混合体でも良い。
具体的にはエチレンと炭素数が3〜18のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種類の単量体とのランダム共重合体が挙げられるが、近年重合触媒として公知となったメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト系触媒により重合されたものは樹脂組成分布を調整することが可能でありポリプロピレン系樹脂と混合しても相溶性が向上しているので透明性を損なわない等のことからポリプロピレン系樹脂の柔軟化剤として好適に用いられるようになってきており、その密度の範囲としては0.865〜0.910g/cmのものであり、0.868〜0.905g/cmのものが延伸し易いことから好ましい。そのJIS−K−7210に準じて測定されたメルトインデックスの値(190℃、2.16kgf(21.18N):以下ポリエチレン系樹脂については同条件)としては、0.1〜15.0のものが好ましく、延伸し易いことから0.3〜9.0のものがより好ましい。
又エチレン−α−オレフィン系樹脂にプロセス油と呼ばれる石油系炭化水素鉱油を可塑剤として予備混合したものを使用することも、透明性、回復性、熱収縮特性が良くなる面でより好ましい。シングルサイト系触媒によりエチレン−α−オレフィン系樹脂の重合する方法には気相法や高圧法等のプロセスがあるが、低密度領域を重合するには高圧法によって重合されたエチレン−α−オレフィン系樹脂がより好ましい。芯層樹脂には、透明性、延伸性を損なわない程度で他の樹脂も混合できる。例えば、エチレン含量が多いポリプロピレン系樹脂を混合することができる。又、石油樹脂や水添テルペン系樹脂等も混合してもよい。これらを混合する場合、透明性、延伸性、柔軟性等の物性を付与することもあるが、引裂強度のバランスの調整が困難になることもあり、それを損なわない範囲で混合することができる。
次に両表面層に使用する樹脂について説明する。表面層に用いられる樹脂はエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂である。その酢酸ビニル成分は5〜25%が好ましいが、防曇剤を混練し易く、又層状にブリード形成し易いので10〜20%がより好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂のJIS−K−7210に準じて測定されたメルトインデックスの値(190℃、2.16kgf(21.18N):以下エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂については同条件)としては0.5〜15のものが好ましく、透明性、底シール性が良好である為1.0〜5.0のものがより好ましい。表面層樹脂には底シール性を損なわない範囲でポリエチレン系樹脂を混合することができる。シングルサイト系のエチレン−α−オレフィン系共重合体樹脂を混合すると透明性や艶が向上する場合もあるが、防曇剤層の形成が困難になる場合があるので、それを損なわない範囲で混合することができる。
本発明に使用されるグリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤について説明する。グリセリン脂肪酸エステルは多価アルコール脂肪酸エステルであり、グリセリンの重合度、脂肪酸の種類、或はエステル化度を変えることにより親水性、新油性を調節することができ、これをフィルム表面に存在させることによって、フィルムに防曇性、滑り性を付与することが可能である。その中でも、ジグリセリンオレート、ジグリセリンラウレート、グリセリンモノオレートを主成分としたものが好ましく、或はそれらの混合物等を主成分としたものが、フィルムの滑り性、光学特性を阻害し難く使い勝手が良いのでより好ましい。また、表面コートのように塗布しただけでは防曇性の持続性に乏しく、フィルム表面に存在する量(以下、フィルム表面量という。)も調整し難い問題があり、本発明のようにフィルムの表面上に層状に所定量分布させるには防曇剤を添加してブリードアウトさせる方法が、表面量を調整し易い、層状に分布し易い、防曇性の持続性がある等の理由により好ましい。
この場合、防曇剤をマスターバッチ法や押出機注入法等で添加するのが好ましいが、少なくともその一部に220〜250℃に設定されたミキシングの部分を設けた押出機を用いて高温で激しく混練させ、樹脂中に防曇剤を微分散させることが好ましい。押出機は二軸押出機、一軸押出機のどちらを用いても良いが、一軸押出機の場合、スクリューはダルメージスクリュー、クロスダルメージスクリュー等の混練性の良いもので、50〜200[sec−1]のせん断速度となるような部分があることが好ましい。押出機によってはスクリューとバレルの間のクリアランスによっては樹脂がそこに入り込み、激しいせん断を受ける事があるが意図的でない場合の高せん断はこの場合対象としていない。
このせん断速度は混練性の尺度にもなるが、例えば、ANSYS社のANSYSというシミュレーションソフト(商品名)等を用いて必要な項目を調査し入力することにより、流路のせん断速度分布を試算することもできる。グリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤とエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂と混練する際は、高温で熱劣化し易く、押出機の温度設定は180℃〜210℃の範囲であることが一般的であるが、220〜250℃の高温度設定で高せん断速度で滞留時間を短くして混練することができる部分を設けることが微分散させることに対してより好ましく、本発明のグリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤の表面分布に影響する特徴的な手段である。
ブリードアウトについては、その量や存在の仕方によって効果が異なる重要な因子である。存在の仕方としては、フィルムの表面に界面活性剤が液滴状ではなく層状で、すなわちほぼ連続した状態で存在している。
界面活性剤を含む添加剤層の厚み方向の分布状態は、デジタルインスツルメンツ社製NanoscopeIIIA(商品名)や島津製作所製のSPM−9500−WET−SPM(商品名)シリーズ等の走査型プローブ顕微鏡を用いて観察することができる。層状分布といっても必ずしも均等な厚みで分布している必要はなく、フィルム下地の凹凸に準じて添加剤層の厚みには斑があるが、フィルム下地がむき出しになることなく連続して添加剤が表面に分布している状態であればよい。走査型プローブ顕微鏡の測定モードにはコンタクトモードとダイナミックモードがあるが、本発明ではダイナミックモードで測定する。ダイナミックモードは、振動モード、或いはタッピングモードとも呼ばれ、コンタクトモードではうまく観察できない柔らかい試料の観察をすることが可能であり、添加剤層と樹脂表面の弾性の違いや吸着力(凝集力)の違いを利用して、添加剤の層の厚みを測定することが可能である。原反より表面をまったく傷付けずに10mm四方にサンプリングし、その表面を全面観察して分布状態を確認することが好ましい。さらに、同じフィルムで巻き付け方向や巾方向など別の部分を数ヶ所観察することがより好ましい。この方法により本発明のフィルム表面を観察すると、添加剤層厚は3〜70nm程度であり、好ましくは5〜40nmである。
なお、界面活性剤が層状に存在するか、液滴状であるかについては、次の方法により確認できる。まず、走査型プローブ顕微鏡のダイナミックモードの凹凸像の観察(倍率100〜3000倍)により、添加剤の分布の様子が観察画面上でも簡易的に視認できる。また、界面活性剤であるのか或いはその他の添加剤であるのかというような表面に存在するものの確認方法としては、特にグリセリン脂肪酸エステル系等の多価アルコール脂肪酸エステル系界面活性剤は水酸基を持つものであり、飛行時間型2次イオン質量分析(Tof−SIMS)や、顕微赤外分光分析(ATR)等の分析法を用いてフィルム表面の化学種や官能基の分布をマッピングして確認することが可能である。
フィルムの表面に存在する添加剤層の量としては、3.0〜30.0mg/mである。包装機での滑り性の面から5.0〜10.0mg/mがより好ましい。
防曇剤の添加量としては、上記フィルム表面に3.0〜30.0mg/mの量で層状に存在させることを考慮すると、エチレン−酢酸ビニル共重合体層に対して0.5〜5.0重量%添加し、より好ましくは1.0〜3.0重量%添加する。
又、より防曇性の持続性を持たせるために中間層にも層に対し0.5〜5.0重量%添加する。又、芯層にも0.5〜5.0重量%添加してもよいが、特に物性には大きく影響しないので添加しなくても問題はない。
更に上記グリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤以外の界面活性剤、酸化防止剤、帯電防止剤、石油樹脂、ミネラルオイル等の液体添加剤を防曇性を損なわない程度に添加しても支障ない。
次に両中間層に使用する樹脂について説明する。フィルムを市販するにおいて他種の樹脂を使用することは、原料供給系機械の増強、保管場所の確保等において好適でない点が多くなる。そこで両中間層には両表面層で使用されている樹脂と芯層で使用されている樹脂を10〜80重量%含有させる。一般にリサイクル原料と呼ばれる再加工ペレットを使用すればコストパフォーマンス的により好ましい。
これに加えて中間層の樹脂組成は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体樹脂10〜40重量%、密度が0.900〜0.920g/cmであるエチレン−α−オレフィン系樹脂10〜80重量%との混合体である。両表面層、芯層に使用されている樹脂を30〜60重量%、エチレン−酢酸ビニル系共重合体樹脂10〜30重量%、エチレン−α−オレフィン系樹脂30〜50重量%との混合体であることがコストパフォーマンス、延伸し易い等の理由で好ましい。両中間層に使用するエチレン−酢酸ビニル系共重合体樹脂については、その酢酸ビニル成分は5〜25%が好ましいが、又層状にブリード形成し易いので10〜20%がより好ましい。エチレン−酢酸ビニル樹脂のJIS−K−7210に準じて測定されたメルトインデックスの値としては0.5〜15.0のものが好ましく、透明性が良好である為1.0〜5.0のものがより好ましい。量表面層で使用されている樹脂を用いることが可能であれば熱収縮後の透明性が非常に良いので更により好ましい。
又両中間層に使用するエチレン−α−オレフィン系樹脂については、その密度の範囲としては0.900〜0.920g/cmのものがあり、0.904〜0.916g/cmのものが延伸し易いことから好ましい。そのJIS−K−7210に準じて測定されたメルトインデックスの値としては、0.1〜15.0のものが好ましく、延伸し易いことから0.3〜9.0のものがより好ましい。マルチサイト系触媒、シングルサイト系触媒のいずれの触媒にて重合されたものでも良いが、シングルサイト系触媒で重合されたものの方が透明性が良いのでより好ましい。上記に述べたようにグリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤を中間層には層に対し0.5〜5.0重量%添加する。
次に、本発明の多層フィルムの厚みについて説明する。好ましい厚みは7〜30μmであり、連続包装機等で使用される際の機械的強度面、又は包装された後、開封する際の易開封性を考慮すると8〜16μmがより好ましい。
その各層構成について説明する。両表面層については、防曇性、シール性について問題無い範囲では両層各10〜20%であることが好ましく、内外対象でなくても良いが、両表面が防曇性や滑り性が同等である方が好適に使用される為、ほぼ対象である方がより好ましい。又、芯層については延伸性、引裂強度バランス、熱収縮特性が問題無い範囲で10〜40%でああることが好ましい。中間層については、上記で述べたようにリサイクル原料を用いる場合に層が厚い方がコストパフォーマンス的に優れることから、両層各20〜35%であることが好ましく、またこれは内外対称でなくても良いが、カールしないので対称である方がより好ましい。
本発明の多層フィルムの各樹脂層には、それぞれその本来の特性を損なわない範囲で、防曇剤、可塑剤、酸化防止剤、界面活性剤、着色剤、紫外線吸収剤、滑剤、無機フィラー、アンチブロッキング剤、難燃剤、粘着剤、着色剤、艶消し剤、帯電防止剤、酸素や炭酸ガスの吸収剤、ガス吸着剤、鮮度保持剤、消臭剤、香料等等を添加しても良い。この他にも本発明の特徴を損なわない限り、必要に応じて他の成分を添加しても良い。
以下に実施例、比較例に基づき、詳細に説明する。なお、本発明で用いる評価方法は下記の通りである。
《延伸温度》
市販の接触式温度計にて測定した値を用いた。
《延伸倍率》
縦方向の延伸倍率については、延伸前後の速度比を倍率として用いた。
横方向の延伸倍率については、延伸前パリソンの巾と延伸後フィルムの巾との比を倍率として用いた。
《エチレン系重合体の密度の測定》
ASTM−D−1505に準拠して測定した。
《グリセリン脂肪酸エステルのフィルム表面量の測定》
1mのフィルムの表面を、予め完全に抽出して無添加を確認したメガネ拭きで全面拭き取り、これを4〜5回メガネ拭きを交換して繰り返す。それらのメガネ拭きを抽出し、抽出液をエバポレーターで乾燥固化させて残留物の重量を測定した。使用しているグリセリン脂肪酸エステル種や混合比率が予めわかっている場合はガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーを用いて測定した。
《グリセリン脂肪酸エステルのフィルム表面の存在状態の確認》
走査型プローブ顕微鏡(デジタルインスツルメンツ社製のNanoscopeIIIA)と赤外分光分析機器(パーキンエルマー社製スペクトラ2000)を用いて界面活性剤層の分布を確認する。その分布が液滴状に点在しているのか、或いは層状に全面に存在しているのかの確認をした。更に走査型プローブ顕微鏡のダイナミックモードで界面活性剤層の厚み分布の測定も確認の意味で行った。
《引裂強度縦横バランスの評価》
ASTM−D−1992に準拠して測定した。軽荷重引き裂き試験器(東洋精機製)を用いて、縦方向と横方向それぞれについて測定した。更にその比率より縦横方向のバランスを評価した。例えば縦方向が0.5Nで横方向が0.1Nの場合、5倍という表現を用いた。
《防曇性の評価》
防曇性の評価として以下のように行った。500mlのビーカーに20℃に調節した水を入れ、ビーカーの口をフィルムで密閉する。そのビーカーを10℃に調整した冷蔵ショーケースに保管し、30分後フィルムに結露した水滴の状態や視認性にて5点が良好として防曇性の評価を行った。
[評価基準]
◎:5点:水滴の斑が無くすっきりして視認性が特に良く、良好な実用レベル
○:4点:大きい水滴が少しあるが、視認性は良く実用レベル
△:2〜3点:水滴がいくつかあり、視認性が悪く使用が困難なレベル
×:1点:小さい水滴で曇っており、視認性が非常に悪く使用できないレベル
《高速連続包装機適性》
市販の底シール型であり、オーバーラップシュリンクタイプの包装機である直線型ストレッチシュリンク包装機(大森機械社製STN−8600等)にて1分間に80個の速度で100個連続包装を行い、非常に高速で過酷な評価包装機での不良個数%と包装仕上りを以下のように評価を行った。その時のトレーはPSPトレーを用い内容物は角がある約200gの直方体の樹脂の塊を用いた。包装機での不良とは、例えば、破れ、シール不良等であり、再包装が必要となるものは特に市場では問題になる。特に引裂強度のバランスが縦方向の引裂強度の方が弱い場合には縦裂き伝播が発生し連続的に不良となった。この実験では樹脂の塊の角で破れるものもあった。又、包装品の仕上り評価とは、白化、艶、容器変形、フィルム弛み等の美麗を損なう要因について評価を行った。これらはシュリンクトンネル等の条件による影響が大きく、それぞれのフィルムにおいて、一番仕上り状態の良い最適条件にて評価を行った。
◎:包装機での不良個数%が0%であり高速包装機適性良好であるレベル:包装仕上りも高品質レベル
○:包装機での不良個数%が1%以上10%以下であり高速包装機適性があるレベル:包装仕上りも問題無いレベル
△:包装機での不良個数%が11%以上50%以下であり、高速包装機にはかかるが、ロスが多く問題が残るレベル:或いは、白化、艶等光学特性を損なっていたり、容器変形していたり、フィルムが弛んでいたりしており、仕上りが満足され難いレベル。
×:包装機での不良個数%が50%を越えており、高速包装機適性が無いレベル。
《総合評価》
[評価基準]
◎:全てが◎であり、好適に使用できるレベル
○:全てが○か◎の評価であり、実用レベル
△:△があり、使用が困難なレベル
×:×があり、実用レベルでない
[実施例1〜19]
表1、2、3および4(表2、3および4の行タイトルは、表1と同じなので、省略)の実施例1〜19に示すような樹脂及び添加剤を用いて、3台の押出機を使用し、3種5層の環状ダイスより両表面層、芯層、中間層からなる5層構成のチューブを溶融押出し、水冷リングを用いて急冷却して未延伸チューブ(パリソン)を得た。各層所定の比率となるように、各押出量を設定し、断面観察にて層構成を確認した。添加剤の添加方法は、実施例1〜19に示すグリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤を主体(純度70%以上)としたもの添加剤を押出機のスクリューの圧縮部手前に高圧ポンプにて注入する方法を用いた。押出機の温度設定は長手方向で6つの温度調節ブロックがあり、樹脂供給ホッパーから順に表面層、中間層の押出機については180℃、200℃、210℃、220℃、230℃、230℃で行い、芯層については200℃、200℃、200℃、190℃、190℃、190℃で行った。
得られた未延伸チューブを延伸部に送り、赤外加熱ヒーター、熱風加熱にて加熱し、そのゾーンでは縦方向に延伸されており、その延伸倍率は、加熱入りのピンチローラーの速度と巻取機の速度との速比で調整した。空冷リングで冷却させながらエアーを注入してバブルを形成する。この時の延伸温度は表1の実施例1〜19のように設定し、デフレーター部で折りたたみダブルのフィルムとなり、若干ヒートセットを50℃で行い巻取機にて巻き取った。この時のフィルムの巾とパリソン巾にて横方向の延伸倍率として調整した。延伸倍率についてはバブルが一番安定する倍率を用い、所定の厚みとなるよう押出量にて調整した。スリッターにて、ダブルのフィルム原反よりシングルに剥ぎながらスリットを行い、実施例1〜19の多層フィルムを得た。
それぞれの多層フィルムの原反を、40℃に温度調節した部屋で3日間保管した後、《グリセリン脂肪酸エステルのフィルム表面量の測定》《グリセリン脂肪酸エステルのフィルム表面の存在状態の確認》《引裂強度縦横バランスの評価》《防曇性の評価》《高速連続包装機適性》《総合評価》を行った。
その結果、得られた多層フィルムの引裂強度のバランスが良いと、高速包装機適性も良好であることがわかる。更に、防曇性能においても、グリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤が所定量フィルム表面に分布し、層を成していることで非常に良い防曇性を得ることがわかる。実施例3,4の結果から、縦方向の延伸温度によって引裂強度のバランスが変化することがわかる。実施例5の結果より、中間層にリサイクルポリマーを用いることができることがわかる。実施例1,2,6,7,8,9,10,11の結果から、コア層のエラストマー成分を特定の範囲で変更しても、延伸条件を特定の条件範囲で調整することにより、高速包装機適性に優れるフィルムになることがわかる。又、実施例1,12,13,14,15,16の結果から、使用するグリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤の種類によって防曇性が変わることがわかる。実施例1,17の結果から、添加量、表面量によって防曇性が変わることがわかる。これらの実施例より、延伸倍率、延伸温度により好適な引裂強度のバランスとなり、高速包装機適性もあり、又、防曇剤の添加方法により防曇性を好適に発現させることができることがわかる。
[比較例1〜19]
表5、6、7および8(表6、7および8の行タイトルは、表5と同じなので、省略)の比較例1〜19に示すような樹脂及び添加剤を用い、記載の延伸条件にて実施例と同様に多層フィルムを作成し評価を行った。
比較例14については、添加剤は一切添加しなかった。又、比較例16については、防曇剤を添加せず塗布法にてコーティングした。
比較例17については、押出機温度を180℃、200℃、200℃、200℃、200℃、200℃と設定を低くくし、せん断速度も低くなるようなデザインのスクリューにて押出混練を少なくした。
その結果、比較例1〜5からわかるように、縦方向、横方向の延伸温度により引裂バランスが悪くなることがわかる。又、比較例6〜10からわかるように、芯層のポリプロピレン種、エラストマー成分、その混合量によって引裂強度のバランスが異なることがわかる。比較例11の結果を見ると、中間層にエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂がないと防曇性が満足されないことがわかる。又、比較例12の結果を見ると、中間層にエチレン−α−オレフィン系共重合体樹脂がないと引裂強度のバランスが悪くなることがわかる。
比較例13〜17の結果を見ると、防曇剤の添加量や分布の仕方によって防曇性が満足されないことがわかる。比較例18,19の結果を見ると厚みによっては高速包装機適性が損なわれることもあることがわかる。
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本発明は、通常の包装機に使用が可能であることは勿論、高速連続包装機にも好適に使用が可能であり、又、防曇性が必要な用途においても好適に使用が可能である。
























Claims (2)

  1. 両表面層、芯層、さらに各表面層と芯層との間に存在する両中間層を有する5層構成で成り、フィルムの厚みが7〜30μmである多層フィルムであって、以下の(1)〜(4)を特徴とする多層フィルム。
    (1)両表面層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂より成り、グリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤を0.5〜5.0重量%含有しており、該界面活性剤が3.0〜30.0mg/mの量で層状に存在している。
    (2)芯層が、エチレン含量が2〜10%である結晶性ポリプロピレン系樹脂55〜90重量%を含有しており、非晶性ポリプロピレン系共重合体45〜10重量%、又はシングルサイト系触媒により重合され、密度が0.865〜0.910g/cmであるエチレン−α−オレフィン系樹脂45〜10重量%との混合体である。
    (3)両中間層が両表面層樹脂と芯層樹脂で使用されている樹脂を10〜80重量%含有し、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂10〜40重量%、密度が0.900〜0.920g/cmであるエチレン−α−オレフィン系樹脂10〜80重量%との混合体であり、グリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤を0.5〜5.0重量%含有している。
    (4)ASTM−D−1992に準じて測定された引裂強度が0.05〜2.00Nであり、フィルムの縦方向の引裂強度が横方向の引裂強度より1.5〜20倍強い。
  2. 両表面層、芯層、さらに各表面層と芯層との間に存在する両中間層を有する5層構成で成る多層フィルムを円形ダイスを用いて製造する方法であって、両表面層としてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂にグリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤を0.5〜5.0重量%添加し、220〜250℃の温度で、且つ、50〜200[1/sec]のせん断速度で溶融混練し、円形ダイスにて溶融押出したものを水で急冷却して未延伸多層チューブを成形し、これを40〜70℃の温度で縦横2〜6倍の倍率でバブルインフレーション延伸し、且つ、横方向の延伸温度が縦方向の延伸温度よりも10〜40℃低い温度で延伸することを特徴とする多層フィルムの製造方法。
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