JP4896421B2 - ストレッチシュリンク積層フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

ストレッチシュリンク積層フィルムおよびその製造方法

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Description

本発明は、ストレッチシュリンクフィルムおよびその製造方法に関し、さらに詳細には、主に、生鮮食品や加工食品を入れた各種トレーや容器のプリパッケージ、オーバーラップシュリンクフィルム用途に用いられるストレッチシュリンク積層フィルムおよびその製造方法に関する。
主に、生鮮食品や加工食品を入れた各種トレーや容器のプリパッケージ、オーバーラップシュリンクフィルム用途に用いられる熱収縮性を有するシュリンクフィルムとしては、ポリ塩化ビニル(以下、PVCと略することがある)系フィルムやポリオレフィン(以下、POと略することがある)系フィルムが知られている。これは、PVCやPO系材料からなるシュリンクフィルムが、主な要求特性である力学強度、透明性、収縮特性等の実用特性およびコスト面も含めて、ユーザーの要求を比較的広く満足するからである。
しかしながら、この中でPVC系フィルムは廃棄物処理等の問題が懸念されることから、PVC以外の材料からなるシュリンクフィルムが強く要望されてきた。したがって上記用途において、現状ではPO系材料からなるシュリンクフィルムが市場をほぼ占有している。
次に、該用途におけるシュリンクフィルムは、主に用いられる容器により大きく2つに大別される。1つは、主にコンビニエンスストア等の弁当や惣菜等の蓋付き容器のオーバーラップシュリンク包装に使用される高収縮タイプのシュリンクフィルムであり、もう1つは、主にストレッチ包装に用いられる発泡ポリスチレンやポリプロピレン系材料からなる蓋なしトレーを容器とし、これをストレッチ包装した後に、主にシワ解消やタイトなフィルムの張りを発現させるためにシュリンク包装される包装方法に使用されるストレッチシュリンクフィルムである。
ここで、高収縮タイプのシュリンクフィルムを用いた包装方法においては、主に横ピロー式と呼ばれる溶断シール方式の包装機が用いられる。本包装方式においてはフィルムの搬送途中において、まず針の付属したロールを通過させ、フィルムに一定のピッチで穴を形成させる。次に容器を包み込むようにフィルムを筒状に形成し、容器の底部でフィルムを長手方向にローラーで圧着して熱シールした後に、容器の前後を溶断シールする。その後シュリンクトンネルを通過せしめ、先に形成したフィルムの針穴からエアを逃がしながら収縮包装する方法である。該包装方法においては、さまざまな形状や大きさの容器に対応してタイトな包装仕上がりを得るために、高い収縮率や針穴でフィルムが引き裂けない等の物性が求められる。これらのこと等のために、各種の素材を特定量組み合わせて多層化したり、電子線等による架橋など複雑な処理を用いた製造方法により製品化したものであるため、製造工程内でのリサイクルが困難であったり、一般にフィルムの製造コストが高いものとなっている(例えば特許文献1、2参照)。
一方、ストレッチシュリンクフィルムを用いた包装方法においては、通常のストレッチ包装に用いられるトレーをフィルムでオーバーラップし、フィルムをトレーの底に折り込んだ後、収縮包装する方式であり、ストレッチ包装機と同一の横ピロー式や突き上げ式と呼ばれる折込みタイプの包装機の後工程にシュリンクトンネルを付加した包装機が用いられる。ここで、ストレッチ包装は、用いるストレッチフィルムの主に応力−歪曲線や応力緩和などの粘弾性特性によりシワ解消や底シール性などの包装仕上がりを発現する包装方法である。これに対して、ストレッチシュリンクフィルムを用いた包装では、ストレッチ包装した後に底部のヒートシール工程とシュリンクトンネルを通過させることによりストレッチ包装後のシワ解消や底シール性などの包装仕上がりを発現する包装方法であること、およびタイトな包装仕上がりが実現できることが、通常のストレッチ包装と大きく異なる点である。
上記包装機のうち、横ピロー式は、包装能力が高い(通常60〜80パック程度/分)ものの包装ラインが長いためにサイズ切り替え等、段替え作業の効率等が悪いことから、同一商品を多量にパックし段替え作業の比較的少ないパックセンターや食品加工工場などで多く採用されており、商品は包装後に各店舗に配送されて陳列される。一方、突き上げ式は、包装能力は低い(通常25〜50パック程度/分)ものの、1サイズのフィルム(例えば、350mm幅のロール)で比較的多くのトレーサイズに対応できることや、比較的コンパクトで設置スペースが少なくて済むことから、パックセンター等にも導入されているが、主にスーパーマーケットのインストア(バックヤード)で多く採用されている。
このように生鮮品等の包装は、パックセンター等で包装し各店舗に配送するものと、インストアで包装し直接店舗内に陳列するものに大別されているが、最近では、人件費や包装作業の効率からみた総合コスト面で、インストアの包装比率が減少しパックセンター等での集約、大量、高速包装の比率が高まりつつある。ここで、パックセンターにおける包装においては、パックした商品を2〜4パック程度積み重ねてコンテナに詰められて保冷車で各店舗に配送される。このため、通常のストレッチ包装のみでは、輸送途中の振動や商品同士の摩擦等により、配送後にフィルムの破れや積み重ねによるフィルムのたるみ等が発生することがあるため、配送後の店舗において商品のディスプレー効果を低下させてしまったり、場合によってはリパック(再包装)が必要となるなどの問題点があった。
これらの問題を解決するために、ストレッチフィルムに比べフィルムの強度やパックした商品のタイトなフィルムの張りが得られるストレッチシュリンクフィルムの使用が増加する傾向にある。該包装方法は、包装機が通常のストレッチ包装機と同一であり、包装後の工程にシュリンクトンネルを付加する程度であり、またトレー形状も多岐にわたらないことから、上記した弁当容器包装のような高い収縮率は要求されず、比較的小さな収縮率で十分良好な包装仕上がりが得られる。但し、内容物が生鮮食品であることが多く、比較的低い温度(通常80℃程度)での熱収縮性(以下、本発明においては低温収縮性と呼ぶ)が求められる。
次に、従来のシュリンク包装用フィルムの製造方法は、溶融押出された樹脂を一旦急冷固化することにより原反フィルムあるいは原反チューブを採取し、次いで再加熱して延伸する方式であるテンター法あるいはチューブラー法による方法が主に採用されている。これは、主に再加熱時の温度と延伸倍率及び延伸速度等を調整することにより、比較的容易に所望の熱収縮特性やフィルム物性を付与することが出来るからであると考えられる。
一方、ストレッチ包装用フィルムの製造方法は、溶融押出された樹脂を一旦急冷固化することなく、環状ダイから円筒状に押出し、この円筒の中にエアを吹き込み、溶融円筒を膨らませる方式であるインフレーション法が主に採用されている。これは、一般的にインフレーション法の方がテンター法あるいはチューブラー法よりも条件設定範囲が比較的広く、また安定して生産できること、さらに製造設備の費用も安価であるためと思われる。一般にインフレーション法では、原料樹脂を融点(Tm点)以上の温度に加熱し、環状ダイから円筒状に押出し、溶融円筒にエアを吹き込んで膨らませてフィルムとするが、この際、エアにより直径方向に、引き取りにより縦方向に延伸がなされる。しかし、この延伸時において、樹脂は高い温度領域にあり、弾性率や粘性が低いため、インフレーション成形したのみでは、熱収縮性歪の付与という点からは、実質未延伸のフィルムであり、若干の熱収縮性は発現するが、特に比較的低い温度(80℃程度)での収縮率(低温収縮性)が発現するような十分な配向を持ったフィルムとは通常なりにくい。
そこで、一般的に良好な生産性と製造設備の費用が安価なインフレーション成形機でも低温収縮性に優れたストレッチシュリンクフィルムが製造できれば、上記の製造コスト面に関する問題点を解決する有効な1つの手段となると考えられる。ここで、溶融時の弾性率や粘性が高い樹脂の1つとしてアイオノマー樹脂が挙げられる。アイオノマー樹脂を用いたストレッチフィルム、ラップフィルム、シュリンク(熱収縮性)フィルム関連の公知文献としては、例えば下記特許文献3及至5が挙げられる。
特許文献3には、アイオノマー樹脂からなる層の両面に、酢酸ビニル含量が5〜40質量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる層を積層してなる食品包装用ストレッチフィルムが提案されている。このようなフィルムは、PVC系フィルムと類似の性質を有し、自動包装適性にも優れているとしている。具体的には、アイオノマー樹脂としてデュポン社の商品名サーリンA1650(ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸共重合体、メタクリル酸含量:9質量%、中和金属イオン種:亜鉛、MFR:1.5g/10分、融点:96℃)が使用され、多層インフレーション成形装置にてブローアップ比5倍で各層の厚みが12.5μm/5μm/12.5μmの三層ストレッチフィルムを得ている実施例が唯一示されている。しかしながら、該特許ではアイオノマー樹脂をヒートシール時の耐熱性を向上させることを主な目的としていることおよびストレッチフィルムとしての必要物性を得るために、中間層の厚みが表裏各層の厚みを越えないことが必要であることを記載している。これらのことから、該特許は、アイオノマー樹脂により収縮特性を発現することを目的としたものではなく、また、仮に収縮特性が発現したとしても中間層の厚み比が低いために十分な低温収縮性が得られず、ストレッチシュリンクフィルムとしては適さないものである。
特許文献4には、高速加工による製造が可能で、光学性、被包装材料に対する密着性、使用時の切れ性等に優れた非ハロゲン系多層ラップフィルム及びその製法を提供することを目的に不飽和カルボン酸含量が3〜20質量%、金属イオンによる中和度が0.1〜10%のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマーからなる層の両面に、エチレン・不飽和エステル共重合体からなる層が積層された多層ラップフィルム、及び、それを共押出Tダイフィルム成形機により製造する方法が提案されている。しかしながら、該特許では、Tダイ成形機における高速成形を主な目的としており、アイオノマー樹脂により収縮特性を発現することを目的としたものではない。
特許文献5には、(a)ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン/エチレン共重合体及びその配合物からなる群から選ばれる物質の1つまたは2つの外層、(b)外層の物質を配向させるのに必要とされる温度以下の融点を有し、エチレン/酸共重合体及び関連するイオノマー;エチレン/酸/アクリレートターポリマー及び関連するイオノマー;上記のいずれかのものと約50%までのエチレンビニルアセテートとの配合物;エチレン/エステル共重合体と約50%までのエチレンビニルアセテートとの配合物;並びに上記物質の組合せよりなる群から選ばれる物質のコア層、からなる多層熱収縮性フィルムにおいて、該コア層が熱収縮性フィルムの全厚さの約50〜95%からなる厚さを有する該多層熱収縮性フィルムと該多層熱収縮性フィルムの製造方法であって、1つまたは2つの該外層及び該コア層からなる多層フィルムを1つのまたは2つの該外層中の物質の配向温度以上であるが該物質の融点以下である温度で延伸する方法が提案されている。ここで、該特許は、高い収縮率と低い収縮力(収縮応力)を有する多層熱収縮性フィルムを得ることが主な目的であり、また、その発明の主旨から、外層中の物質の融点≧延伸温度≧外層中の物質の配向温度(一般に110℃以上)≧コア層中の物質の融点なる関係が成り立つ。また、外層には、低い摩擦係数を有する物質が好ましいことを記載している。さらに、フィルムを配向させる方法としては、公知の方法を採用することが出来るとしているが、好適な方法は「バブル」法(チューブラー延伸法)であると記載されており、また具体的な実施例が示されているのは、方法1として、チューブラー延伸法、方法2として、テンター延伸法である。すなわち、これらの方法は、ともに溶融押出された樹脂を一旦急冷固化することにより原反フィルムあるいは原反チューブを採取し、次いで再加熱して延伸する方式である。
特公平1−47311号公報 特公平5−64589号公報 特開昭54−24982号公報 特開2000−135760号公報 特公平3−80627号公報
本発明の目的は、一般的に良好な生産性と製造設備の費用が安価なインフレーション成形機でも製造可能な低温収縮性と収縮後のタイトなフィルムの張りや自動包装機などにおける包装仕上がりに優れたストレッチシュリンク積層フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、エチレン系重合体を両表面層とし、アイオノマー樹脂を主成分とする中間層を特定の厚み比とすることにより上記課題を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)少なくとも3層から構成される積層フィルムであって、両表面層がエチレン系重合体である(A)成分を主成分とし、また中間層がアイオノマー樹脂である(B)成分を主成分とし、かつ、中間層のフィルム全体の厚みに対する厚み比が35〜90%であるとともに、80℃オイルバス中10秒浸積したときの縦方向及び横方向の熱収縮率の合計値が30%以上であるストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法であり、溶融押出された樹脂を一旦急冷固化することなく、環状ダイから円筒状に押出し、この円筒の中にエアを吹き込み、溶融円筒を膨らませる方式であるインフレーション法で製造することを特徴とするストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法。
(2)エチレン系重合体である(A)成分が、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体およびエチレン−メタクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる少なくとも1種のエチレン系重合体であることを特徴とする(1)に記載のストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法。
(3)エチレン系重合体である(A)成分が、酢酸ビニル含量が8〜30質量%で、メルトフローレート(JIS K7210、190℃、荷重21.18N)が0.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする(1)に記載のストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法。
(4)エチレン系重合体である(A)成分の融点が、65〜100℃であることを特徴とする(1)に記載のストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法。
(5)アイオノマー樹脂である(B)成分が、不飽和カルボン酸含量が10〜30質量%、金属イオンによる中和度が15〜80%のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体であることを特徴とする(1)に記載のストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法。
(6)中間層が上記(A)成分と(B)成分との混合組成物であり、(A)成分と(B)成分の混合質量比が、(A)/(B)=1〜50/99〜50であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法。
(7)フィルムの縦方向及び横方向の30%引っ張り伸び応力がそれぞれ10〜60MPaであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法。
(8)80℃オイルバス中10秒浸積したときの縦方向及び横方向の熱収縮率の合計値が40〜120%であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法。
また、本発明のもう一つの目的は、上記(1)〜(8)のいずれかに記載のストレッチシュリンク積層フィルムをインフレーション成形機により製造することにより達成される。
本発明によれば、良好な低温収縮性と収縮後のタイトなフィルムの張りや自動包装機などにおける包装仕上がりに優れたストレッチシュリンク積層フィルムおよびその製造方法が提供できる。
以下、本発明を詳しく説明する。
なお、本発明における数値範囲の上限値及び下限値は、本発明が特定する数値範囲内から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に包含するものである。また、本発明における主成分とは、最も多量に含有されている成分のことであり、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上含有する成分のことである。
まず、本発明のストレッチシュリンク積層フィルムは、少なくとも3層から構成される積層フィルムであって、両表面層がエチレン系重合体である(A)成分を主成分とし、また中間層がアイオノマー樹脂である(B)成分を主成分とすることを特徴とする。
ここで上記両表面層に用いる主成分であるエチレン系重合体である(A)成分は、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレンを主成分とする共重合体、すなわち、エチレンと、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などの炭素数3〜10のα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル、共役ジエンや非共役ジエンのような不飽和化合物の中から選ばれる1種又は2種以上のコモノマーとの共重合体又は多元共重合体、あるいはそれらの混合組成物が挙げられる。エチレン系重合体のエチレン単位の含有量は、通常50質量%を越えるものである。
これらのエチレン系重合体である(A)成分の中では、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体およびエチレン−メタクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる少なくとも1種のエチレン系重合体が好ましい。アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル等が挙げられる。メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
また、本発明において両表面層は、成形加工時の製膜安定性(例えば、インフレーション成形におけるバブル安定性)や得られるストレッチシュリンク積層フィルムの適度なスリップ性と表面粘着性のバランスあるいは防曇性などの表面特性や透明性および柔軟性などの力学特性を発現する機能を担っているため、上記エチレン系重合体である(A)成分の中では、酢酸ビニル含量が8〜30質量%で、メルトフローレート(以下、MFRと略することがある)(JIS K7210、190℃、荷重21.18N)が0.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体が、これらの諸特性を材料コスト面も含めて比較的容易に調整できることから最も好ましい。
ここで酢酸ビニル含量が8質量%以上であれば、結晶性が低いため得られるフィルムが硬くならず、柔軟性や弾性回復性が良好であり、フィルム全体の透明性や低温収縮性が損なわれることがなく、また表面粘着性も発現しやすいため好ましい。一方、30質量%以下であれば、耐熱性やフィルム強度等が十分確保され、また、添加する防曇剤のブリード性や表面粘着性が強過ぎないためにフィルムの巻き出し性や外観が良好であるため好ましい。これらのことから、該酢酸ビニル含量は、好ましくは10〜28質量%、更に好ましくは12〜25質量%である。
また、MFRが0.2g/10分以上であれば、押出加工性は安定し、一方、10g/10分以下であれば、インフレーション成形においても製膜安定性が得られ、厚み斑や力学強度の低下やバラツキ等が少なくなるため好ましい。これらのことから、該MFRは、好ましくは0.5〜8g/10分、更に好ましくは1〜5g/10分である。
さらに、両表面層の上記した表面特性や力学特性と得られるストレッチシュリンク積層フィルムの熱収縮特性とのバランス、特に低温収縮性からはエチレン系重合体である(A)成分の融点が、65〜100℃であることが最も好ましい。
ここで融点が65℃以上であれば、耐熱性やフィルム強度等が実用的に問題になることが少なく、また、添加する防曇剤のブリード性や表面粘着性が強過ぎないためにフィルムの巻き出し性や外観が良好であるため好ましい。一方、100℃以下であれば、結晶性が低いため得られるフィルムが硬くならず、柔軟性や弾性回復性が良好であり、フィルム全体の透明性や低温収縮性も損なわれることが少なく、また表面粘着性も発現しやすいため好ましい。これらのことから、該融点は、好ましくは70〜100℃、更に好ましくは75〜98℃である。
上記エチレン系重合体である(A)成分の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法等が挙げられる。
次に中間層に用いる主成分であるアイオノマー樹脂である(B)成分は、エチレンと、不飽和カルボン酸と、任意成分として他の不飽和化合物からなる共重合体の不飽和カルボン酸成分の少なくとも一部を金属イオンもしくは有機アミンのうち少なくともいずれか一方で中和することにより得ることができる。また、アイオノマー樹脂は、エチレンと、不飽和カルボン酸エステルと、任意成分として他の不飽和化合物からなる共重合体の不飽和カルボン酸エステル成分の少なくとも一部を鹸化することによっても得ることができる。
アイオノマー樹脂の原料となるエチレンと不飽和カルボン酸、任意成分としてその他不飽和化合物を含む共重合体において、不飽和カルボン酸としては、炭素数3〜8程度のものが好ましく、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどが用いられる。これらの中では、アクリル酸またはメタクリル酸が好ましく用いられる。また任意成分としての他の不飽和化合物として代表的なものは不飽和エステルであり、その具体例としては酢酸ビニルのような飽和カルボン酸の不飽和エステル、あるいはアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどを挙げることができる。なお、これらは1種のみを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これら共重合体中の中和成分としては、Na+、K+、Li+、Ca2+、Mg2+、Zn2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Al3+などの1価から3価の金属の陽イオン(以下、金属イオンと略することがある)または有機アミンを挙げることができる。本発明においては、ナトリウム又は亜鉛が好適に用いられる。なお、これらは1種のみを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、上記のアイオノマー原料となる共重合体において、エチレン含量は50〜90質量%、好ましくは60〜88質量%、不飽和カルボン酸含量は10〜30質量%、好ましくは12〜20質量%、その他不飽和化合物は0〜40質量%、好ましくは0〜20質量%の重合組成のものが好適に用いられる。また、中和度は、前記金属の陽イオンで共重合体成分中の不飽和カルボン酸量の15〜80%、好ましくは20〜60%が中和されたものが好適に用いられる。ここで、前記重合組成および中和度の範囲内であれば、アイオノマー樹脂の結晶性がある程度低下するため、成形工程時の冷却条件で結晶化しにくくなり、フィルムの透明性を保持することが可能となるため好ましい。また同時に、主にイオン性架橋の凝集力により、例えばインフレーション成形のような溶融状態からの冷却過程での延伸加工により良好な低温での熱収縮特性(低温収縮性)を付与することが可能となるため好ましい。なお、アイオノマー樹脂は1種のみを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。この際、金属イオンの異なるアイオノマー樹脂を組み合わせることも可能である。
アイオノマー樹脂は、金属の陽イオンなどにより共重合体中のカルボキシル基を中和すると中和した部分がイオン化される。中和度が高くなるにつれてイオン化された部分がイオン結合力によって凝集しイオン性架橋となる。イオン性架橋はイオン結合によって凝集しているものであり、イオン結合力よりも大きな力を受けた時には凝集していた部分が壊れるが、イオン結合力よりも小さな力では擬似架橋状態となる。よって中和度の量に伴って溶融粘度が増大し、この効果はアイオノマー樹脂の融点に近い方が大きくなる。ここで、上記重合組成および中和度の範囲内であれば、これらの作用によって押出性能、具体的には過度な溶融粘度の上昇が無く、例えばインフレーション成形のような溶融状態からの冷却過程での延伸加工時には、イオン性架橋が擬似架橋状態のままとなるためにストレッチシュリンクフィルムに好適な低温での熱収縮特性(低温収縮性)を付与することが可能となるものと考えられる。
アイオノマー樹脂の中和度に関しては、中和度が高いアイオノマー樹脂に中和していない共重合体をブレンドすることでも中和度の調整が可能となる。具体的には、例えば1価の金属の陽イオンで中和された中和度が80%のアイオノマー樹脂の中和度を40%にする場合には、中和度が80%のアイオノマー樹脂に中和してない共重合体を50質量%/50質量%の割合で溶融混練することで可能となる。
本発明に用いられるアイオノマー樹脂である(B)成分のMFR(JIS K7210、190℃、荷重21.18N)は、0.2〜20g/10分であることが好ましい。かかる範囲内であれば、押出成形時に背圧等が急激にあがることがなく、バブルの安定性などのインフレーション成形性やストレッチシュリンクフィルムに好適な力学特性を得ることが可能となるため好ましい。これらのことから、該MFRは、好ましくは0.3〜10g/10分、更に好ましくは0.5〜3g/10分である。
本発明に用いられるアイオノマー樹脂である(B)成分の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、特公昭39−6810号公報等に示される公知の製造方法を用いることができる。また、金属イオンを含まないエチレンとアクリル酸もしくはメタクリル酸等の共重合体樹脂を原料に、アセチルアセトン金属錯体、酸化金属、脂肪酸金属塩等を必要量後添加してイオン架橋を導入し、成形加工時にアイオノマー樹脂を得てもかまわない。エチレンとアクリル酸もしくはメタクリル酸等の共重合体樹脂は、ポストメタロセン触媒により重合することも可能である。
また、本発明においては市販の原料を用いることもできる。アイオノマー樹脂の具体的な商品としては、三井・デュポンポリケミカル(株)の商品名「ハイミラン」が挙げられる。また、金属イオンを含まないエチレンとアクリル酸もしくはメタクリル酸等の共重合体樹脂の具体的な商品としては、三井・デュポンポリケミカル(株)の商品名「ニュクレル」、日本ポリケム(株)の商品名「ノバテックEAA」などが挙げられる。
上記したように、本発明のストレッチシュリンク積層フィルムは、エチレン系重合体である(A)成分を主成分とする両表面層とアイオノマー樹脂である(B)成分を主成分とする中間層を有する少なくとも3層から構成される積層フィルムであるが、本発明の主旨を超えない範囲で、力学特性や層間接着性の改良など必要に応じて他の層(以下、P層と略することがある)を適宜導入してもかまわない。ここで、表面層(以下、S層と略することがある)は、両表面層以外に、すなわち、中間層に同様の層を有してもかまわない。また、中間層(以下、M層と略することがある)は、両表面層の間に少なくとも1層有してあればよく、2層以上有してもかまわない。例えば、(S層)/(M層)/(S層)からなる3層構成、(S層)/(P層)/(M層)/(S層)からなる4層構成、(S層)/(P層)/(M層)/(P層)/(S層)、(S層)/(M層)/(P層)/(M層)/(S層)、(S層)/(M層)/(S層)/(M層)/(S層)などからなる5層構成を代表的に挙げることができる。この場合、各層の樹脂組成や厚み比に関しては、同一であっても異なっていてもかまわない。
ここで、本発明において好適な積層構成は、(S層)/(M層)/(S層)からなる3層構成であり、この層構成を採用することにより、本発明の目的である良好な低温収縮性と収縮後のタイトなフィルムの張りや自動包装機などにおける包装仕上がり、また、再生添加性(通常は、中間層に添加する)にも優れたストレッチシュリンク積層フィルムを生産性、経済性よく得ることができる。
次に本発明のストレッチシュリンク積層フィルムは、上記した中間層のフィルム全体の厚みに対する厚み比が35〜90%であるとともに、80℃オイルバス中10秒浸積したときの縦方向及び横方向の熱収縮率の合計値が30%以上であることが重要である。
ここで、中間層のフィルム全体の厚みに対する厚み比がかかる範囲内であれば、例えば製膜方法として、インフレーション成形のような溶融状態からの冷却過程での延伸加工を用いても、安定した製膜加工性が得られ、また、ストレッチシュリンクフィルムに好適な低温収縮性などの熱収縮特性や透明性および柔軟性などの力学特性を材料コスト面も含めて比較的容易に付与できるため好ましい。これらのことから、該厚み比は、安定した製膜加工性と柔軟性および材料コスト面をより重視する場合には、好ましくは35〜60%、より好ましくは、35〜50%、インフレーション成形のような溶融状態からの冷却過程での延伸加工で大きな低温収縮性と収縮後のタイトなフィルムの張りなどをより重視する場合には、好ましくは60〜90%、より好ましくは、65〜85%である。ここで、該中間層が上記したように積層構成中に2層以上ある場合には、全ての中間層の合計厚みを用いて厚み比を計算すればよい。なお、本発明のストレッチシュリンク積層フィルムの全体の厚みは、特に制限されるものではないが、通常のストレッチフィルムの厚みと同じ程度の範囲、即ち5〜30μm程度、代表的には8〜20μm程度の範囲にある。
また、80℃オイルバス中10秒浸積したときの縦方向及び横方向の熱収縮率の合計値が30%以上、好ましくは、40〜120%、さらに好ましくは、45〜100%であれば、本発明のストレッチシュリンク積層フィルムを用いてストレッチ包装した後のシワをシュリンクトンネルを通過させることにより解消できることが多く、また、トレーを変形させたり、トレーの底部に折込まれたフィルムがヒートシールする際にカールしてしまったり、自然収縮などにより経時的にロール状フィルム(巻物)に巻き締まりによる変形などの不具合が発生することが少ないため好ましい。
さらに、本発明においては、用いるフィルム幅とトレーのサイズとの大小関係などにより変化するが、80℃オイルバス中10秒浸積したときの縦方向及び横方向の熱収縮率は、それぞれ15〜60%、好ましくは、20〜55%である。かかる範囲内であれば、各種サイズのトレーへの包装仕上がり性やロール状フィルムの経時安定性などが優れておりより好ましい。
上記した熱収縮率は、主に両表面層と中間層の厚み構成比と延伸倍率やブローアップ比(バブル直径/ダイ直径)および延伸温度や冷却条件などの温度条件を変化させることにより所望の範囲に調整することができる。例えば、熱収縮率が所望の値よりも小さい場合には、より低温での熱収縮性歪を大きくするように、縦方向及び/又は横方向の延伸倍率を上げたり、外面冷却における冷却ブロアー量のUPや内面冷却を併用するなどの冷却効率を適宜調整すればよい。逆に、熱収縮率が所望の値よりも大きい場合には、より低温での熱収縮性歪を小さくするように、縦方向及び/又は横方向の延伸倍率を下げたり、外面冷却における冷却ブロアー量のDOWNや内面冷却を弱くするなどの冷却効率を適宜調整すればよい。
次に、本発明のストレッチシュリンク積層フィルムの中間層には、(B)成分であるアイオノマー樹脂が主成分として含有するが、該(B)成分以外に、上記した(A)成分であるエチレン系重合体を本発明の主旨を超えない範囲で混合してもかまわない。例えば、トリミングロス等から発生するリサイクル樹脂の添加や得られるストレッチシュリンク積層フィルム全体での力学特性、特に、弾性率(剛性)や引裂き強度などの特性向上や材料コストの低減などを主目的とする場合に有効な手段となる。混合する場合の混合質量比は、(A)/(B)=1〜50/99〜50、好ましくは、5〜50/95〜50、更に好ましくは、10〜45/90〜55である。
ここで、最も好適に混合できる(A)成分としては、酢酸ビニル含量が10〜25質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体が挙げられる。これは、両表面層としても好適に使用でき、かつ、トリミングロス等から発生するリサイクル樹脂を添加した際の透明性、力学特性や材料コスト面も含めて実用的に大きな問題がなく、工業材料としても安定的に入手可能であるからである。
本発明のストレッチシュリンク積層フィルムには、本発明の主旨を超えない範囲で、防曇性、帯電防止性、滑り性、自己粘着性、力学特性等の諸物性を更に調整、向上させる目的で、必要に応じて各種添加剤及び/又は上記した(A)成分、(B)成分以外の樹脂を表面層及び/又は中間層にそれぞれ適宜配合することができる。
ここで各種添加剤としては、例えば酸化防止剤、防曇剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤などが挙げられ、本発明の主旨を超えなければ特に制限されるものではない。本発明において好適に用いられる添加剤としては、炭素数が1〜12、好ましくは1〜6の脂肪族アルコールと、炭素数が10〜22、好ましくは12〜18の脂肪族との化合物である脂肪族アルコール系脂肪酸エステルが挙げられ、具体的には、モノグリセリンオレート、ジグリセリンモノオレート、ポリグリセリンオレート、グリセリントリリシレート、グリセリンアセチルシノレート、ポリグレセリンステアレート、ポリグリセリンラウレート、メチルアセチルリシノレート、エチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、プロピレングリコールオレート、プロピレングリコールラウレート、ペンタエリスリトールオレート、ポリエチレングリコールオレート、ポリエチレングリコールソルビタンオレート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート等を挙げることができる。また、ポリアルキレンエーテルポリオールを用いることができ、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等を挙げることができる。更に、パラフィン系オイルから選ばれた化合物の少なくとも1種を添加することができる。これらの添加剤の好適な添加量は、各層の樹脂成分の合計を100質量部とした場合に、0.1〜12質量部、好ましくは、1〜8質量部、さらに好ましくは、1〜5質量部であり、本発明においては、少なくとも表面層に添加することがより好ましい。
また、上記した(A)成分、(B)成分以外の樹脂としては、本発明の主旨を超えなければ特に制限されるものではないが、例えば、プロピレン系やスチレン系の熱可塑性エラストマー、各種の耐衝撃性改良剤や相容化剤、粘着付与樹脂、可塑剤などを挙げることが出来る。これらの他の樹脂の好適な添加量は、各層の樹脂成分の合計を100質量部とした場合に、0〜20質量部、好ましくは、0〜15質量部、さらに好ましくは、0〜10質量部である。
なお、本発明のストレッチシュリンク積層フィルムの中間層の主成分であるアイオノマー樹脂には、防曇剤などの添加剤を吸収してしまう特性や反応する場合があるため、表面層のみに防曇剤などの添加剤を配合する場合には、このことを考慮し適宜増量するなどの処方を行うことも重要である。
次に、本発明のストレッチシュリンク積層フィルムの力学特性に関しては、被包装物の形状などの特性や自動包装機の仕様等により、適宜調整すればよく特に制限されるものではないが、多くの包装形態でフィルムの縦方向及び横方向の30%引っ張り伸び応力(以下、σ30と略することがある)がともに10〜60MPaの範囲が好適であり、更に好ましくは20〜50MPaの範囲である。ここで、該σ30がかかる範囲内であれば、多くの包装機でパックした商品に十分なタイト感やフィルムの張りの強さを発現させることができ、また、硬すぎないために突き上げ式包装機に用いた場合にも、トレーの割れや変形を発生させることがないため好ましい。
上記したσ30は、主に両表面層と中間層の厚み構成比と延伸倍率やブローアップ比(バブル直径/ダイ直径)および延伸温度や冷却条件などの温度条件を変化させることにより所望の範囲に調整することができる。例えば、σ30が所望の値よりも小さい場合には、厚み構成比や配合組成などを調整することで積層フィルム全体での結晶性を上げたり、縦方向及び/又は横方向の延伸倍率を上げるなどの調整を適宜すればよい。逆に、σ30が所望の値よりも大きい場合には、厚み構成比や配合組成などを調整することで積層フィルム全体での結晶性を下げたり、縦方向及び/又は横方向の延伸倍率を下げるなどの調整を適宜すればよい。
次に、本発明のストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法について説明する。製造方法は、公知の各種の製造方法が適用でき、本発明の主旨を超えなければ特に制限されるものではない。フィルムの積層方法としては、例えば、共押出積層法、ラミネーション法、ドライラミネーション法などを挙げることができる。これらのうち本発明においては、溶融接着する共押出積層法が好適に用いられる。具体的には、積層数に応じた複数の押出機を用いて溶融押出し、フィードブロックやマルチマニホールドなどにより溶融樹脂を展開、積層化する方法である。
本発明の主目的の1つである低温収縮性を付与するための方法としては、通常用いられるテンター法やチューブラー法などの溶融押出された樹脂を一旦急冷固化することにより原反フィルムあるいは原反チューブを採取し、次いで再加熱して延伸する方式も適用可能である。本発明においては、上記した積層樹脂構成を採用することにより、溶融押出された樹脂を一旦急冷固化することなく、環状ダイから円筒状に押出し、この円筒の中にエア(空気)を吹き込み、溶融円筒を膨らませる方式である、いわゆるインフレーション法でも低温収縮性に優れたストレッチシュリンク積層フィルムが得られることが見出されたものである。
インフレーション法では、環状ダイより溶融樹脂を引き取り、薄膜化する過程で冷却効果が働き、フィルムを構成する分子が配向する。この配向の度合いは、用いる樹脂の溶融粘度と冷却過程における固化速度あるいは結晶化速度の相違やブローアップ比(バブル直径/ダイ直径)およびバブル形状等によって主に変化するものと考えられる。
本発明においては、インフレーション成形する際に、冷風などの媒体で冷却量を調整しながら溶融円筒内に、一定量のエアを入れて加圧量を調整し、ブローアップ比を3.5以上、好ましくは、4〜12、更に好ましくは5〜10とする。続いてフィルムの引き取り速度を調整することによって環状ダイから円筒状に押出された樹脂の変形倍率がフィルム全体で50〜200倍程度、好適には、70〜120倍に調整することが好ましい。ここで、変形倍率とは、環状ダイのリップギャップを得られるフィルムの厚みで除した値のことである。例えば、環状ダイのリップギャップが1mm(1000μm)で、得られるフィルムの厚みが10μmの場合の変形倍率は、100倍となる。また、環状ダイのリップギャップが2mmで、得られるフィルムの厚みが10μmの場合の変形倍率は、200倍となる。該変形倍率の計算には、ブローアップ比の影響を受けないものとする。その際の冷却方法としては、円筒状のフィルムの外面や内面側から冷却する方法、円筒状のフィルムの外面側と内面側の両面から同時に冷却する方法のどちらを採用してもかまわない。
上記した方法で得られたストレッチシュリンク積層フィルムは、熱収縮率の調整、自然収縮率の低減やカールの発生を抑制する等の為に、必要に応じて、加熱ロール間での縦延伸、各種の熱固定、エージング等の熱処理を行うことができる。また防曇性、帯電防止性、粘着性等を付与、促進させる目的で、コロナ放電や熟成等の処理、さらには、印刷、コーティング等の表面処理や表面加工を行うこともできる。
以下に実施例でさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示されるフィルムについての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向、その直交方向を横方向とよぶ。
(1)熱収縮率
得られたフィルムから縦方向および横方向からそれぞれ長さ140mm×幅10mmの短冊状にフィルムを切り出し、その中間に長さ100mm間隔の標線を記入した試験片を、80℃のオイルバスに10秒間浸漬し、取り出した後の標線間の長さを測定し、オイルバス浸漬前後の標線間の長さから収縮率を%値で求めた。なお、測定は各10回行い、その平均値を算出し、少数第一位を四捨五入した値を記載した。
(2)30%引っ張り伸び応力(σ30)
縦方向および横方向からそれぞれ長さ100mm×幅10mmの短冊状のフィルム試験片を切り出し、引張試験機((株)島津製作所製、型番:AGS−H500N)を用いて、チャック間40mm、引張速度200mm/分で引張試験を行い、得られたチャートから30%引っ張り伸び荷重を読み取り、30%引っ張り伸び応力(MPa)に換算した。なお、測定は各3回行い、その平均値を算出し、少数第一位を四捨五入した値を記載した。
(3)包装仕上がり
幅400mmのフィルムを用い、横ピロー型包装機(大森機械(株)製STN7500)+シュリンクトンネル(大森機械(株)製ピロー包装機付属のC−300型、熱風設定温度:90℃、通過時間:3秒)により、200gの粘土(厚み10mm)を入れた通常の発泡ポリスチレントレー(長さ200mm、幅150mm、高さ15mm)を包装し、得られたパックサンプルを下記の基準で評価した。
(◎):トレー上面にシワやたるみがほとんどなく、フィルムの張りも十分あるもの
(○):トレー上面にシワやたるみがほとんどなく、フィルムの張りがあるもの
(×):トレー上面にシワやたるみが発生していたり、フィルムの張りがないもの
(4)経時後のたるみ
上記した(3)で得られたパックサンプルを3段に積み重ねた状態で、5℃の恒温槽内に10時間放置後、最下段のパックサンプルの上面の状態を下記の基準で評価した。
(○):トレー上面にたるみがほとんどなく、フィルムの張りも十分あるもの
(×):トレー上面にたるみが発生し、フィルムの張りがないもの
(実施例1)
エチレン系重合体である(A)成分として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量:15質量%、MFR:2.2g/10分、融点:95℃)(以下、A−1と略する)100質量部に、防曇剤としてジグリセリンモノオレート2.7質量部を押出設定温度180〜200℃で溶融混練した樹脂組成物からなる両表面層を厚みが各々2.5μmとなるように、また、アイオノマー樹脂である(B)成分として、アイオノマー(1)(ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸共重合体、メタクリル酸含量:15質量%、中和金属イオン種:亜鉛、中和度:59%、MFR:0.7g/10分、融点:88℃)(以下、B−1と略する)からなる中間層を厚みが5.0μmとなるように、それぞれ別々の押出機から合流させ、環状三層ダイ温度200℃、リップギャップ1.2mm、ブローアップ比5.5で共押出インフレーション成形して、総厚み12μm(3.0μm/6.0μm/3.0μm)のストレッチシュリンク積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、各層の厚み構成比を表層/中間層/表層=1.5μm/9.0μm/1.5μmに変更した以外は、実施例1と同様にして総厚み12μmのストレッチシュリンク積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、両表面層に添加する防曇剤の量を2.7質量部から4.0質量部とし、(B)成分として用いたB−1からアイオノマー(2)(ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸共重合体、メタクリル酸含量:15質量%、中和金属イオン種:ナトリウム、中和度:54%、MFR:0.9g/10分、融点:89℃)(以下、B−2と略する)に変更した以外は、実施例1と同様にして総厚み12μm(3.0μm/6.0μm/3.0μm)のストレッチシュリンク積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1において、(B)成分として用いたB−1からアイオノマー(3)(ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸共重合体、メタクリル酸含量:15質量%、中和金属イオン種:亜鉛、中和度:20%、MFR:16g/10分、融点:90℃)(以下、B−3と略する)に変更した以外は、実施例1と同様にして総厚み12μm(3.0μm/6.0μm/3.0μm)のストレッチシュリンク積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1において、(B)成分として用いたB−1から上記したA−1/B−2=20質量%/80質量%の混合樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様にして総厚み12μm(3.0μm/6.0μm/3.0μm)のストレッチシュリンク積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例1において、(B)成分として用いたA−1からエチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量:20質量%、MFR:2.5g/10分、融点:91℃)(以下、A−2と略する)に変更した以外は、実施例1と同様にして総厚み12μm(3.0μm/6.0μm/3.0μm)のストレッチシュリンク積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、中間層に(B)成分として用いたB−1から両表面層に用いた樹脂組成物に変更し、実質的に単層フィルムとした以外は、実施例1と同様にして総厚み12μm(3.0μm/6.0μm/3.0μm)のストレッチシュリンク積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1において、(B)成分として用いたB−1からアイオノマー(4)(ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸共重合体、メタクリル酸含量:9質量%、中和金属イオン種:亜鉛、中和度:8%、MFR:5g/10分、融点:98℃)(以下、B−4と略する)に変更した以外は、実施例1と同様にして総厚み12μm(3.0μm/6.0μm/3.0μm)のストレッチシュリンク積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例1において、各層の厚み構成比を表層/中間層/表層=4.8μm/2.4μm/4.8μmに変更した以外は、実施例1と同様にして総厚み12μmのストレッチシュリンク積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
Figure 0004896421
表1より、本発明で規定するストレッチシュリンク積層フィルムは、低温収縮性(80℃×10秒)と収縮後のタイトなフィルムの張りや自動包装機などにおける包装仕上がりに優れていることがわかる。また、インフレーション成形機でも製造可能であることが確認できる(実施例1〜6)。これに対して、アイオノマー樹脂を主成分とする中間層を有さない層構成の場合(比較例1)、中間層の主成分であるアイオノマー樹脂の中和度が低い場合(比較例2)や中間層のフィルム全体の厚みに対する厚み比が本発明で規定する範囲より低い場合(比較例3)には、低温収縮性が不十分となり、収縮後のタイトなフィルムの張りや自動包装機などにおける包装仕上がりに問題があることが確認できる。

Claims (8)

  1. 少なくとも3層から構成される積層フィルムであって、両表面層がエチレン系重合体である(A)成分を主成分とし、また中間層がアイオノマー樹脂である(B)成分を主成分とし、かつ、中間層のフィルム全体の厚みに対する厚み比が35〜90%であるとともに、80℃オイルバス中10秒浸積したときの縦方向及び横方向の熱収縮率の合計値が30%以上であるストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法であり、溶融押出された樹脂を一旦急冷固化することなく、環状ダイから円筒状に押出し、この円筒の中にエアを吹き込み、溶融円筒を膨らませる方式であるインフレーション法で製造することを特徴とするストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法。
  2. エチレン系重合体である(A)成分が、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体およびエチレン−メタクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる少なくとも1種のエチレン系重合体であることを特徴とする請求項1記載のストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法。
  3. エチレン系重合体である(A)成分が、酢酸ビニル含量が8〜30質量%で、メルトフローレート(JIS K7210、190℃、荷重21.18N)が0.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項1記載のストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法。
  4. エチレン系重合体である(A)成分の融点が、65〜100℃であることを特徴とする請求項1記載のストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法。
  5. アイオノマー樹脂である(B)成分が、不飽和カルボン酸含量が10〜30質量%、金属イオンによる中和度が15〜80%のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体であることを特徴とする請求項1記載のストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法。
  6. 中間層が上記(A)成分と(B)成分との混合組成物であり、(A)成分と(B)成分の混合質量比が、(A)/(B)=1〜50/99〜50であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法。
  7. フィルムの縦方向及び横方向の30%引っ張り伸び応力がそれぞれ10〜60MPaであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法。
  8. 80℃オイルバス中10秒浸積したときの縦方向及び横方向の熱収縮率の合計値が40〜120%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法。
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