上記従来構成においては、前記自動調理運転を実行しているときには加熱手段による加熱量や加熱時間等の変更指令についての操作入力の有無の判断は行われないので、例えば、手動操作によって加熱手段による加熱量や加熱時間等の加熱用の運転状態を変更させるために、上記した自動調理運転を行わない状態に切り換える必要があるときは、点消火指令手段により加熱停止を指令する操作を行って加熱手段の加熱を停止させる処理を行い自動調理運転を終了させた後に、再度、点消火指令手段により加熱開始を指令する操作を行って加熱手段の加熱を開始させ、その後、手動操作によって加熱量や加熱時間等の加熱手段の加熱用の運転状態を変更させる操作を行うという煩わしい操作が必要となっており、この点で改善が望まれていた。
本発明は、自動調理運転を実行している途中であっても、簡単な操作で手動操作にて加熱手段の加熱用の運転状態を変更可能な状態に切り換えることが可能となるグリルを提供する点にある。
本発明の第1特徴構成は、グリル庫内に備えられた載置部に載置された被加熱物を加熱する加熱手段と、自動調理開始指令により前記加熱手段の加熱を開始して自動調理運転を実行する制御手段とが備えられたグリルであって、前記自動調理運転の停止を指令する自動運転停止指令手段が備えられ、前記制御手段が、前記自動調理運転を実行しているときに前記自動運転停止指令手段にて停止が指令されると、前記加熱手段の加熱作動を継続させた状態で前記自動調理運転を停止して継続加熱運転を実行するように構成されている点にある。
上記第1特徴構成によれば、制御手段が、前記自動調理運転を実行しているときに前記自動運転停止指令手段にて停止が指令されると、前記自動調理運転を停止させるので、その後は、加熱手段による加熱量や加熱時間等の加熱手段の加熱用の運転状態を変更させるための指令操作を行うことが可能となり、それらを所望の値に変更設定することが可能となる。そして、前記加熱手段の加熱作動を継続させた状態で前記自動調理運転を停止して継続加熱運転を実行するようになっているので、グリルの使用者は、前記自動調理運転を停止させた後に加熱手段の加熱開始を指令することなく、そのまま加熱手段の加熱用の運転状態の変更を指令することができるものとなる。
従って、自動調理運転を実行している途中であっても、煩わしさがなく簡単な操作で、手動操作にて加熱手段の加熱用の運転状態を変更設定することが可能な状態に切り換えることが可能なグリルを提供できるに至った。
本発明の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、グリル庫内の温度を検出する温度検出手段が備えられ、前記制御手段が、前記自動調理運転として、前記加熱手段による加熱が開始された後の前記温度検出手段の検出情報に基づいて被加熱物の熱負荷を判定する負荷判定処理、及び、その被加熱物の熱負荷に基づいて前記負荷の判別処理が行われてから前記加熱手段の加熱作動を終了するまでの残加熱時間を設定する残加熱時間設定処理を実行するように構成されている点にある。
上記第2特徴構成によれば、制御手段が、前記自動調理運転を実行すると、加熱手段による加熱が開始された後の前記温度検出手段の検出情報に基づいて被加熱物の熱負荷を判定する負荷判定処理を実行する。すなわち、加熱手段による加熱を開始してからグリル庫内の温度の上昇度合い、例えば、温度の上昇勾配や判別用の設定温度に達するまでの経過時間等は被加熱物の熱負荷に応じて変化するものであるから、そのような検出情報に基づいて被加熱物の熱負荷を判別することができる。このように被加熱物の熱負荷が判別されると、その熱負荷に基づいて被加熱物を焼き上げるのに必要な残加熱時間を設定することができるのである。このようにして被加熱物の熱負荷に応じた適切な加熱時間を設定することができ、自動調理運転の条件を適正なものとして定めることができる。
本発明の第3特徴構成は、上記第2特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記自動調理運転の実行中であって前記残加熱時間が設定されていないときに前記自動運転停止指令手段にて自動調理運転の停止が指令された場合には、前記継続加熱運転として、被加熱物の調理が完了すると予測される標準加熱時間から前記自動調理運転において前記加熱手段の加熱を開始してから自動調理運転の停止が指令された時点までの加熱経過時間を減算して必要加熱時間を求め、その必要加熱時間が最小設定時間より長ければその必要加熱時間を、前記加熱手段の加熱作動を終了するまでの継続用加熱時間として設定するように構成され、且つ、前記必要加熱時間が前記最小設定時間よりも短ければ前記最小設定時間を前記継続用加熱時間として設定するように構成されている点にある。
上記第3特徴構成によれば、前記制御手段が、前記自動調理運転の実行中であって前記残加熱時間が設定されていないときに前記自動運転停止指令手段にて自動調理運転の停止が指令された場合には、被加熱物の調理が完了すると予測される標準加熱時間から前記自動調理運転において前記加熱手段の加熱を開始してから自動調理運転の停止が指令された時点までの加熱経過時間を減算して求めた必要加熱時間が最小設定時間より長ければ、被加熱物に対する加熱時間が標準加熱時間に対して不足しているので、必要加熱時間を加熱手段の加熱作動を終了するまでの継続用加熱時間として設定する。又、その必要加熱時間が最小設定時間より短い場合には最小設定時間を前記継続用加熱時間として設定するようにしている。
このように前記継続加熱運転に移行した後には継続用加熱時間が設定されることで、使用者が加熱時間の設定操作を実行しなくても被加熱物の調理が完了すると予測される加熱時間に相当する時間が経過する間は被加熱物の加熱が行われることになる。
従って、継続加熱運転においては、手動操作にて加熱手段の加熱用の運転状態を変更設定することが可能なものでありながら、自動調理運転の停止が指令された時点までの加熱経過時間を反映させる構成として、使用者が加熱時間の設定操作を実行しなくても被加熱物の調理が完了すると予測される標準加熱時間での加熱を行うことができ、使い勝手がよいものとなる。
本発明の第4特徴構成は、上記第2特徴構成又は第3特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記自動調理運転の実行中であって前記残加熱時間が設定された後に前記自動運転停止指令手段にて自動調理運転の停止が指令された場合には、前記継続加熱運転として、自動調理運転の停止が指令された時点から前記残加熱時間が満了するまでの残時間を前記加熱手段の加熱作動を終了するまでの継続用加熱時間として設定するように構成されている点にある。
上記第4特徴構成によれば、前記制御手段が、前記自動調理運転の実行中であって残加熱時間が設定された後に自動運転停止指令手段にて自動調理運転の停止が指令された場合には、その時点では既に被加熱物の熱負荷の判別が行われて残加熱時間が設定されており、その残加熱時間が設定されてからの時間の経過と共にその残加熱時間が満了するまでの残時間は減少している。そして、自動調理運転の停止が指令されると、そのときの残加熱時間が満了するまでの残時間を加熱手段の加熱作動を終了するまでの継続用加熱時間として設定するのである。
従って、継続加熱運転において、手動操作にて加熱手段の加熱用の運転状態を変更設定することが可能なものでありながら、自動調理運転の停止が指令された時点における残加熱時間が満了するまでの残時間を反映させる構成として、使用者が加熱時間の設定操作を実行しなくても被加熱物の調理が完了すると予測される標準加熱時間での加熱を行うことができ、使い勝手がよいものとなる。
本発明の第5特徴構成は、上記第1特徴構成〜第4特徴構成のいずれかに加えて、前記継続加熱運転として、前記自動調理運転の停止が指令されたときの前記加熱手段の加熱量を継続用の加熱量として設定するように構成されている点にある。
上記第5特徴構成によれば、自動調理運転の停止が指令されたときの前記加熱手段の加熱量を継続用の加熱量として設定するようになっているので、自動調理運転において設定されている加熱量をそのまま引き続いて加熱を行うことで、加熱量が大きすぎて被加熱物が焼き焦げになったり、加熱量が不足して加熱が不充分になったりするといった不利のない状態で被加熱物に対する加熱を継続させることができ、使い勝手がよいものとなる。
本発明の第6特徴構成は、上記第2特徴構成〜第5特徴構成のいずれかに加えて、複数の調理メニューのうち被加熱物に応じた調理メニューを指令する調理メニュー指令手段が備えられ、前記制御手段が、前記負荷判定処理として、前記加熱手段による加熱が開始された後の前記温度検出手段の検出情報と複数の負荷判別用条件のうち前記調理メニュー指令手段にて指令された調理メニューに応じて選択された負荷判別用条件とに基づいて被加熱物の熱負荷を判定するように構成され、且つ、前記残加熱時間設定処理として、前記熱負荷と複数の算定条件のうち前記調理メニュー指令手段にて指令された調理メニューに応じて選択された算定条件とに基づいて前記負荷判別処理が行われてから被加熱物の加熱が終了するまでの残加熱時間を設定するように構成され、更に、前記負荷判別処理にて判別される熱負荷の大きさにかかわらず、前記加熱手段による加熱が開始された後の前記温度検出手段にて検出される検出温度が、複数の調理メニューに応じて予め設定されている複数の加熱量調整用の設定温度のうち前記調理メニュー指令手段にて指令された調理メニューに応じて選択された加熱量調整用の設定温度に達すると、前記加熱手段の加熱量を減少調整する加熱量抑制処理を実行するように構成されている点にある。
上記第6特徴構成によれば、制御手段が、加熱手段による加熱が開始された後における温度検出手段にて検出されるグリル庫内の温度の検出情報と複数の負荷判別用条件のうち調理メニュー指令手段にて指令された調理メニューに応じて選択された負荷判別用条件とに基づいて被加熱物の熱負荷を判定する。又、そのようにして判別された熱負荷と、複数の算定条件のうち指令された調理メニューに応じて選択された算定条件とに基づいて負荷判別処理が行われてから被加熱物の加熱が終了するまでの残加熱時間を設定するのである。このようにして、調理メニューの差異による誤差が少ない状態で被加熱物の熱負荷の判定及び残加熱時間の設定を行うことができる。
しかも、制御手段は、負荷判別処理にて判別される熱負荷の大きさにかかわらず、加熱手段による加熱が開始された後の温度検出手段にて検出される検出温度が、複数の調理メニューに応じて予め設定されている複数の加熱量調整用の設定温度のうち指令された調理メニューに応じて選択された加熱量調整用の設定温度に達すると、加熱手段の加熱量を減少調整する構成となっている。
その結果、加熱手段による加熱量を調理メニューに対応した加熱量に設定して加熱を行っている場合に、熱負荷の判別結果が実際の熱負荷よりも高めに判別されて残加熱時間が長めに設定されることがあっても、グリル庫内の温度が調理メニューに対応して予め設定されている加熱量調整用の設定温度に達すると、加熱手段の加熱量を減少調整することにより、そのときの調理メニューに対応した設定温度以上になることがなく、被加熱物が加熱し過ぎて焼け焦げる不利を回避することができる。又、このように焼け焦げを回避できるので、加熱手段の初期加熱量を予め低めの値に抑制しておく必要がなく、調理メニューに適した強めの加熱量で加熱することで、極力、短い時間で被加熱物の調理を行うことが可能となる。
従って、自動調理運転において、指令された調理メニューに対応させた状態で適切に被加熱物の熱負荷を判別してその熱負荷に応じた調理残時間を求めることができ、しかも、指令された調理メニューに対応させた状態で適切にグリル庫内の温度が上昇し過ぎないように加熱量の減少調整を行うことで、被加熱物が焼け焦げ状態になったりするおそれを少なくしながら、極力短い調理時間で被加熱物の加熱調理を行うことが可能となる。
本発明の第7特徴構成は、上記第2特徴構成〜第6特徴構成のいずれかに加えて、前記温度検出手段が、前記加熱手段による加熱を開始した後の初期において、前記載置部における被加熱物の載置状態の違いに応じて変化する温度上昇勾配、並びに、被加熱物の熱容量の違いに応じて変化する前記加熱手段による加熱を開始してから設定判別温度に上昇するまでの熱容量判別用経過時間を計測可能な位置に設けられ、前記制御手段が、前記負荷判定処理として、前記温度検出手段の検出情報に基づいて前記被加熱物の負荷の情報として前記温度上昇勾配並びに前記熱容量判別用経過時間を求めるように構成され、且つ、前記残加熱時間設定処理として、前記負荷判別処理にて求めた前記温度上昇勾配並びに前記熱容量判別用経過時間の情報に基づいて前記残加熱時間を設定するように構成されている点にある。
上記第7特徴構成によれば、前記制御手段が、前記負荷判別処理として、前記温度検出手段の検出情報に基づいて、加熱手段による加熱を開始した後の初期において、載置部における被加熱物の載置状態の違いに応じて変化する温度上昇勾配、並びに、被加熱物の熱容量の違いに応じて変化する加熱手段による加熱を開始してから設定判別温度に上昇するまでの熱容量判別用経過時間を求める。そして、前記残加熱時間設定処理として、前記温度上昇勾配並びに熱容量判別用経過時間の情報に基づいて、負荷判別処理を実行してから被加熱物に対する加熱を終了するまでの残加熱時間を設定するのである。つまり、前記残加熱時間として、被加熱物の熱容量並びに載置部に対する載置状態に対応した適切な時間が設定されることになる。
前記温度上昇勾配が前記載置部における被加熱物の載置状態の違いに応じて変化することについて説明を加えると、加熱手段の加熱を開始した初期においては、グリル庫内は温度が上昇していない状態であるが、載置部における排気箇所に近い箇所に被加熱物を載置していたり、排気箇所から遠い箇所に被加熱物を載置する等、載置部に載置される被加熱物の載置状態の違いに応じて加熱された空気の流動状態が異なるので、それに応じて温度上昇勾配が異なるので、その変化を検出するのである。
そして、前記残加熱時間が経過した後に加熱手段による加熱を終了させるようにすると、加熱手段による加熱を開始してから判定用情報算出処理を実行するまでの経過時間と前記残加熱時間とを合せた時間が経過する間、被加熱物に対する調理用の加熱が行われることになり、適切な焼き上がり状態とすることが可能となる。
つまり、前記温度検出手段の検出情報に基づいて、被加熱物の熱容量に対応する情報だけでなく、載置部における被加熱物の載置状態に対応する情報を得ることができ、被加熱物の熱容量の違い、並びに、載置部に対する被加熱物の載置状態の違いに対応して、判定用情報算出処理を実行してから被加熱物に対する加熱を終了するまでの残加熱時間として被加熱物に対する適切な時間を設定することが可能となるのである。
従って、自動調理運転においては、被加熱物の熱容量の違い、並びに、載置部に対する被加熱物の載置状態の違いに対応して、被加熱物に対する適切な加熱時間を設定することが可能となる。
以下、本発明に係るグリルの実施形態をグリル付きガスコンロに適用した場合について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、このガスコンロは、3つのコンロバーナ1a,1b,1c、および、加熱手段としてのグリルバーナ2を備えたグリル部3からなるビルトインタイプのガスコンロにて構成されている。3つのコンロバーナ1a,1b,1cは標準バーナ1aと、小バーナ1bと、高火力バーナ1cとによって構成されている。そして、グリル部3の燃焼排ガスを排気するためのグリル排気口4が形成され、トッププレート5にてガスコンロ上面が覆われており、このトッププレート5の上部に鍋等を受け止め支持するための五徳6が載置支持されている。また、ガスコンロ前側面には各コンロバーナ1a,1b,1c及びグリルバーナ2の点火及び消火や火力調節を指令する手動操作部Sが設けられている。又、このガスコンロは、マイクロコンピュータを備えて各種の制御を実行するように構成された運転状態を制御する制御手段としての制御部Hが手動操作部Sにて指令された運転状態に基づいて、コンロバーナ1a,1b,1cおよびグリルバーナ2を制御するように構成されている。又、ガスコンロ前側面には押し操作式の電源スイッチ9も設けられている。
図2に示すように、3つのコンロバーナ1a,1b,1cの夫々には、点火手段としての点火器7及び着火状態を検出する熱電対8が設けられており、グリルバーナ2は上面バーナ2aと左右一対の下面バーナ2b,2cとを備えた両面バーナにて構成されて、上面バーナ2a及び左右一対の下面バーナ2b,2cの夫々にも点火器7及び熱電対8が夫々備えられている。又、左側に位置する標準バーナ1aには、五徳6にて載置支持された被加熱物の底面部に接触して被加熱物の温度を検出する温度センサ10が設けられている。
前記3つのコンロバーナ1a,1b,1cおよびグリルバーナ2へのガス供給構成について説明すると、元ガス供給路11には元電磁弁12が設けられ、元ガス供給路11から、標準バーナ用分岐路13a、小バーナ用分岐路13b、高火力バーナ用分岐路13c、グリルバーナ用分岐路13dの4系統に分岐しており、標準バーナ用分岐路13a、小バーナ用分岐路13b、高火力バーナ用分岐路13c、及び、グリルバーナ用分岐路13dの夫々には、ステッピングモータの駆動によって燃料ガスの流量を調整して加熱量を調整するための流量制御弁18が備えられている。
そして、グリルバーナ2へのグリルバーナ用分岐路13dは、さらに、上面バーナ用の分岐路と下面バーナ用分岐路とに分岐し、それらの分岐路には夫々、オリフィスof付きの流路15と開閉式電磁弁16を備えたバイパス路17とが設けられている。つまり、前記開閉式電磁弁16を開状態にすることで上面バーナ2a又は左右一対の下面バーナ2b,2cが強火力に調整され、前記開閉式電磁弁16を閉状態にすることで上面バーナ2a又は左右一対の下面バーナ2b,2cが弱火力に調整されることになる。尚、図示はしないが、グリルバーナ用分岐路13dには、元電磁弁12と流量制御弁18の間にガスガバナを設けて、ガス量の安定を図っている。
次に、前記手動操作部Sの構成について説明する。ガスコンロ前側面19には、手動操作部Sとして、標準バーナ1a、小バーナ1b及び高火力バーナ1cの夫々に対して各別に点火及び消火や火力調節を指令するための3つの加熱状態調節部20と、調理の設定を指令する設定入力パネル21と、グリルバーナ2に対して点火及び消火や火力調整を指令するためのグリル用の設定入力パネル22とが設けられている。
図3に示すように、グリル用の設定入力パネル22は、押し操作式のスイッチにて構成されて押し操作する毎にグリルバーナ2に点火を指令するオン状態と消火を指令するオフ状態とに切り換わる点消火スイッチ23、グリルバーナが燃焼すると点灯し消火すると消灯する燃焼ランプ24、加熱用のタイマー時間を増減設定するためのタイマー設定スイッチ25、設定されるタイマー時間を表示するタイマー表示部26、上面バーナ2aと下面バーナ2b,2cの加熱量を切り替えるための火力切替スイッチ27、上面バーナ2aと下面バーナ2b,2c夫々の火力の状態が弱火力であることを示す弱表示部28aと強火力であることを示す強表示部28bとからなる火力表示部28、調理される被加熱物についてのメニューの違いに応じて燃焼状態を切り替えるメニュー切替スイッチ29、焼き加減を調整する焼き加減調整スイッチ30、後述するような自動調理運転を取り消す為の自動運転停止指令手段としてのとりけしスイッチ31等が設けられている。前記メニュー切替スイッチ29により切り替えられるメニューとしては、「姿焼き」「切身」「干物」があり、そのうち選択されたものをLEDランプにて示すメニュー表示部29aが設けられている。焼き加減についても同様に「弱め」「標準」「強め」の3段階に調節できるようになっているが、そのうち選択されたものをLEDランプにて示す焼き加減表示部30aが設けられている。そして、調理するときの具体的なメニュー表が図5に示すように調理内容を目安としている。
前記メニュー切替スイッチ29及び焼き加減調整スイッチ30が、複数の調理メニューのうち被加熱物に応じた調理メニューを指令する調理メニュー指令手段MSを構成することになる。そして、この調理メニュー指令手段MSが、前記調理メニューとして、被加熱物の形態の違い並びに被加熱物に対する焼き加減を指令する構成となっている。
図4に示すように、前記グリル部3は、前面部が開口されかつ後面部が閉塞された箱状に形成されたグリル庫32内に、被加熱物を載置させる載置部としての焼き網33を設けて、その被加熱物をグリルバーナ2にて加熱するように構成されている。前記グリル庫の後方側には、グリルバーナ2の燃焼排ガスを機外に排気させる排気路34が上方側に延びる状態で連設され、その排気路34にてグリルバーナ2の燃焼排ガスをグリル排気口4に導くように構成されている。ちなみに、グリルバーナ2の二次空気は、グリル庫32の底面部や前面部から取り入れるようにして、この二次空気の流動により、後述する汁受皿35を冷却させるように構成されている。
そして、焼き網33の下方には、魚などの被加熱物からの油などを受け止める汁受皿35が設けられ、汁受皿35は、図示はしないが、グリル庫32の側壁部に設けられたガイドの案内により、焼き網33を載置した状態で、グリル庫32に対して、収納移動可能でかつ取り出し移動可能に構成されている。また、汁受皿35の前面部には、汁受皿35をグリル庫32内に収納したときに、グリル庫32の前面部を閉塞する把手付きの扉36が設けられている。そして、使用者は、把手にて扉36を開閉させることにより、汁受皿35と焼き網33をグリル庫32に対して収納移動および取り出し移動させるように構成されている。
そして、前記制御部Hは自動調理開始指令によりグリルバーナ2の加熱を開始して自動調理運転を実行するように構成されている。そして、グリル庫内の温度を検出する温度検出手段Kが備えられ、制御部Hは、前記自動調理運転として、グリルバーナ2による加熱が開始された後の温度検出手段Kの検出情報に基づいて被加熱物の熱負荷を判定する負荷判定処理、及び、その被加熱物の熱負荷に基づいて前記負荷の判別処理が行われてから前記加熱手段の加熱作動を終了するまでの残加熱時間を設定する残加熱時間設定処理を実行するように構成されている。
説明を加えると、制御部Hは、前記負荷判定処理として、グリルバーナ2による加熱が開始された後の温度検出手段Kの検出情報と複数の負荷判別用条件のうち調理メニュー指令手段MSにて指令された調理メニューに応じて選択された負荷判別用条件とに基づいて被加熱物の熱負荷を判定するように構成され、且つ、前記残加熱時間設定処理として、前記熱負荷と複数の算定条件のうち前記調理メニュー指令手段MSにて指令された調理メニューに応じて選択された算定条件とに基づいて前記負荷判別処理が行われてから被加熱物の加熱が終了するまでの残加熱時間を設定するように構成され、更に、前記負荷判別処理にて判別される熱負荷の大きさにかかわらず、グリルバーナ2による加熱が開始された後の温度検出手段Kにて検出される検出温度が、複数の調理メニューに応じて予め設定されている複数の加熱量調整用の設定温度のうち調理メニュー指令手段MSにて指令された調理メニューに応じて選択された加熱量調整用の設定温度に達すると、グリルバーナ2の加熱量を減少調整する加熱量抑制処理を実行するように構成されている。
具体的には、制御部Hは、温度検出手段Kの検出情報に基づいて温度上昇勾配並びに熱容量判別用経過時間を求める前記負荷判別処理の一例としての判定用情報算出処理、及び、その判定用情報算出処理にて求めた前記温度上昇勾配並びに前記熱容量判別用経過時間の情報に基づいて、前記判定用情報算出処理を実行してから被加熱物に対する加熱を終了するまでの残加熱時間を設定する残加熱時間設定処理を実行するように構成されている。
そして、前記温度検出手段Kは、グリルバーナ2による加熱を開始した後の初期において、焼き網33における被加熱物の載置状態の違いに応じて変化する温度上昇勾配、並びに、被加熱物の熱容量の違いに応じて変化するグリルバーナ2による加熱を開始してから設定判別温度に上昇するまでの熱容量判別用経過時間を計測可能に設けられている。すなわち、前記熱容量判別用経過時間を検出するための熱容量判別用の温度センサとしての排ガス温度センサ37と、温度上昇勾配を検出するための温度勾配検出用の温度センサとしての庫内温度センサ38とを夫々備えて構成されている。具体的に説明すると、図4に示すように、前記グリル庫32内における焼き網33の高さよりも少し高い位置であって且つ上面バーナ2a及び左右一対の下面バーナ2b,2cの夫々の燃焼排気ガスが流動して排気路34を通して排出される箇所に排ガス温度センサ37が設けられている。この排ガス温度センサ37の直上方箇所には塵埃の降り掛かりを防止するための防塵板39が設けられ、その防塵板39よりも上方側で庫内内方側によった箇所には排ガスの流れの一部を排ガス温度センサ37に向けて案内する案内板40が設けられている。この排ガス温度センサ37が設けられる位置は、上面バーナ2a及び左右一対の下面バーナ2b,2cの夫々の燃焼排気ガスが流動する箇所であり、加熱を開始してから設定判別温度に上昇するまでの熱容量判別用経過時間の変化が被加熱物の熱負荷の大きさに応じて異なる箇所である。
又、排ガス温度センサ37よりの下方側箇所には、排ガス温度センサ37とは別に、グリル庫32内における焼き網33よりも少し低い位置であって主に下面バーナ2b,2cの夫々の燃焼排気ガスが流動する箇所に庫内温度センサ38が設けられている。尚、この庫内温度センサ38の焼き網33側箇所には被加熱物の下方側を流動する空気の流れを庫内温度センサ38に案内するための案内板41が設けられている。この庫内温度センサ38が設けられる位置は、焼き網33に載置される被加熱物の載置状態の違いによって温度上昇勾配が異なる箇所である。
前記制御部Hが、前記残加熱時間設定処理として、前記判定用情報算出処理にて求められた前記熱容量判別用経過時間と前記温度上昇勾配との比率を求めて、その求めた比率に基づいて前記残加熱時間を設定するように構成され、前記熱容量判別用経過時間と前記温度上昇勾配との比率が大きいほど長くする状態で、且つ、設定上限値を越えない状態で、前記残加熱時間を設定するように構成されている。
前記制御部Hが、前記排ガス温度センサ37の検出温度が加熱量調整用の設定温度を超えるとグリルバーナ2の加熱量を減少させるように構成されている。
又、制御部Hは、判定用情報算出処理として、グリルバーナ2による加熱を開始したときの排ガス温度センサ37の検出温度が基準温度より低ければ、グリルバーナ2による加熱を開始したときの排ガス温度センサ37の検出温度と前記基準温度との差が大きいほど短くなるように、前記熱容量判別用経過時間を補正するように構成され、グリルバーナ2による加熱を開始したときの排ガス温度センサ37の検出温度が基準温度より高ければ、グリルバーナ2による加熱を開始したときの排ガス温度センサ37の検出温度と基準温度との差が大きいほど長くなるように、前記熱容量判別用経過時間を補正するように構成されている。
更に、制御部Hは、前記残加熱時間設定処理として、グリルバーナ2による加熱を開始したときの排ガス温度センサ37の検出温度が基準温度より低ければ、グリルバーナ2による加熱を開始したときの排ガス温度センサ37の検出温度と基準温度との差が大きいほど短くなるように、前記残加熱時間を補正するように構成され、グリルバーナ2による加熱を開始したときの排ガス温度センサ37の検出温度が基準温度より高ければ、グリルバーナ2による加熱を開始したときの排ガス温度センサ37の検出温度と前記基準温度との差が大きいほど長くなるように、前記残加熱時間を補正するように構成されている。
このグリルには、前記自動調理運転の停止を指令する自動運転停止指令手段としてのとりけしスイッチ31が備えられ、制御部Hが、前記自動調理運転を実行しているときに前記とりけしスイッチ31にて停止が指令されると、グリルバーナ2の加熱作動を継続させた状態で前記自動調理運転を停止して継続加熱運転を実行するように構成されている。
そして、制御部Hが、自動調理運転の実行中であって前記残加熱時間が設定されていないときにとりけしスイッチ31にて自動調理運転の停止が指令された場合には、前記継続加熱運転として、被加熱物の調理が完了すると予測される標準加熱時間から前記自動調理運転においてグリルバーナ2の加熱を開始してから自動調理運転の停止が指令された時点までの加熱経過時間を減算して必要加熱時間を求め、その必要加熱時間が最小設定時間より長ければその必要加熱時間を、グリルバーナ2の加熱作動を終了するまでの継続用加熱時間として設定するように構成され、且つ、前記必要加熱時間が前記最小設定時間よりも短ければ前記最小設定時間を前記継続用加熱時間として設定するように構成されている。
又、制御部Hは、自動調理運転の実行中であって前記残加熱時間が設定された後に前記とりけしスイッチ31にて自動調理運転の停止が指令された場合には、前記継続加熱運転として、自動調理運転の停止が指令された時点から前記残加熱時間が満了するまでの残時間をグリルバーナ2の加熱作動を終了するまでの継続用加熱時間として設定するように構成されている。更に、制御部Hは、前記継続加熱運転として、前記自動調理運転の停止が指令されたときのグリルバーナ2の加熱量を継続用の加熱量として設定するように構成されている。
以下、グリルバーナ2に対する制御部Hの動作について説明を加える。
図6に示すように、前記制御部Hは、電源スイッチ9がオン操作された後に点消火スイッチ23がオン操作されるとマニュアル調理運転を実行する(ステップ1、2)。このマニュアル運転について図7のフローチャートに基づいて説明を加えると、先ず、グリルバーナ2に対する点火処理を実行する(ステップ3)。具体的には、点火器7による点火を開始させた後に、元電磁弁12及び流量制御弁18を開弁させてグリルバーナ2に着火させ、熱電対8により着火が確認されると点火器7の動作を停止して燃焼ランプ24を点灯させる。運転開始時には、グリルバーナ2の火力は、上面バーナ2aと下面バーナ2b,2cの加熱量が共に強火力になるように初期設定されることになる。尚、設定時間内に熱電対8により着火が確認されなければ不着火エラーとして元電磁弁12及び流量制御弁18を閉弁して報知処理する。
グリルバーナ2が点火した後には、前記各温度センサ37、38の検出情報に基づいて、グリル庫32内の温度が異常になっているか否かを判別する(ステップ4)。具体的に説明すると、前記排ガス温度センサ37の検出値が140℃以上であり温度上昇勾配が急激であること、前記排ガス温度センサ37の検出値が185℃以上であること、庫内温度センサ38の検出値が190℃以上であることのいずれかが検出されると異常高温状態であると判別する。次に、タイマー表示部26に予め標準的な調理時間として初期設定される調理時間(例えば、9分)及び標準的な火力、つまり、上面バーナ2a及び左右一対の下面バーナ2b,2cが共に強火力に設定されている状態を表示する(ステップ5)。そして、火力の切替指令があればその指令された内容に従って火力を切り替え、且つ、火力表示部28における表示状態を切り替える(ステップ6、7、8)。又、タイマー時間の変更指令があればその指令された内容に従ってタイマー時間を変更し、且つ、表示状態を変更する(ステップ9、10、11)。
そして、設定されているタイマー時間が経過してタイマーがカウントアップすると、グリルバーナ2の消火処理を実行する(ステップ12、13)。つまり、元電磁弁12及び流量制御弁18を閉弁して、火力表示部28及び燃焼ランプ24を消灯させる。又、制御部Hに接続された音声報知用のブザーBZを鳴らして報知してタイマー表示部26に表示されている「00」の表示を10回点滅させたのちにステップ2にリターンする(ステップ14、15)。タイマーがカウントアップするまでに、点消火スイッチ23がオン操作されて消火が指令されると上述したような消火処理を実行してステップ2にリターンする(ステップ16、17)。前記温度異常判別処理にて温度異常が発生していると、消火処理を実行した後に、ブザーBZを鳴らして報知して燃焼ランプ24を10回点滅させた後に処理を終了する(ステップ18〜21)。このときは異常状態であるから、インターロック状態となり、以後の処理は受け付けない。この場合はサービスマン等によるメンテナンス作業が必要となる。
図6に示すように、前記電源スイッチ9がオン操作されたのちに点火指令が指令されずにメニュー切替スイッチ29又は焼き加減調整スイッチ30の少なくともいずれかが操作され、排ガス温度センサ37の検出値が制御動作可能な範囲内(―5℃〜100℃の範囲内)にあれば、そのときの排ガス温度センサ37の検出値TH1をグリルバーナ2が加熱を開始したときの検出温度すなわち点火初期温度tboとして検出して記憶し(ステップ22,23,24)、点火が指令されると自動調理運転を実行することになる(ステップ25)。尚、電源スイッチ9がオン操作されてから3分間が経過してもいずれのスイッチも操作されず入力操作がないときには電源を自動でオフして制御を終了する(ステップ27、28、29)。又、検出温度が制御動作可能な範囲内になければ、ブザーBZを鳴らして警告音を発生させてステップ2に戻る(ステップ26)。
次に、図8のフローチャートに基づいて自動調理運転について説明する。
この自動調理運転においては、先ず、マニュアル調理運転のときと同様にグリルバーナ2に対する点火処理を実行し(ステップ30)、図13(イ)に示すようにタイマー表示部26にて自動調理運転状態であることを示す「AU」を表示する(ステップ31)。そして、前記メニュー切替スイッチ29、焼き加減調整スイッチ30、タイマー設定スイッチ25等による切り替え操作のための入力の受け付けを抑制する入力抑制状態に切り替える(ステップ32)。従って、この自動調理運転が行われている間は、これらの操作により入力は行えない状態となる。但し、とりけしスイッチ31の操作による自動調理運転の取り消し指令は入力可能である。
そして、マニュアル調理運転のステップ4と同様な温度異常判別処理(ステップ33)を実行した後に判定用情報算出処理を実行する(ステップ34)。この判定用情報算出処理について、図9のフローチャートに基づいて説明する。すなわち、グリルバーナ2に対する点火が行われて加熱が開始されてから100秒経過すると、そのときの庫内温度センサ38の検出値を第1検出値TB1として検出し(ステップ100、101)、グリルバーナ2に対する点火が行われて加熱が開始されてから160秒経過すると、そのときの庫内温度センサ38の検出値を第2検出値TB2として検出する(ステップ102、103)。そして、排ガス温度センサ37の検出値が設定判別温度としての第1監視温度X1(例えば、140℃)に達すると、加熱を開始してからその第1監視温度X1に到達するまでに要した経過時間を熱容量判別用経過時間Toとして算出する(ステップ104、105)。
但し、このとき、前記グリルバーナ2による加熱を開始したときの排ガス温度センサ37の検出温度、つまり、ステップ24にて検出された点火初期温度tboが基準温度tbs(例えば、25℃)より低ければ、点火初期温度tboと基準温度tbsとの差が大きいほど短くなるように、熱容量判別用経過時間Toを補正し、点火初期温度tboが基準温度tbsより高ければ、点火初期温度tboと基準温度tbsとの差が大きいほど長くなるように、熱容量判別用経過時間Toを補正するように構成されている。
説明を加えると、図14(イ)に、点火初期温度tboが基準温度tbsより低い場合の例として、点火初期温度tboが10℃の場合の排ガス温度センサ37の検出温度の時間経過に伴う変化を示している。この場合には、グリルバーナ2の加熱を開始した時点から排ガス温度センサ37の検出温度が第1監視温度X1(図13に示す例では140℃)に上昇するまでの経過時間をY1とし、グリルバーナ2の加熱を開始した時点から排ガス温度センサ37の検出温度が基準温度tbsまで上昇するまでの経過時間をYAとすると、熱容量判別用経過時間Toは、下記数1により求めるようにしている。つまり、点火初期温度tboと基準温度tbsとの差が大きいほど短くなるように熱容量判別用経過時間Toが補正されることになる。
[数1]
To=Y1−YA
又、図14(ロ)に、点火初期温度tboが基準温度tbsより高い場合の例として、点火初期温度tboが40℃の場合の排ガス温度センサ37の検出温度の時間経過に伴う変化を示している。この場合には、下記数2に示すように、グリルバーナ2の加熱を開始した時点から排ガス温度センサ37の検出温度が第1監視温度X1(140℃)に上昇するまでの経過時間Y1に対して点火初期温度tboと基準温度tbsとの差Δtbから求めた補正値dTを加算して熱容量判別用経過時間Toを求める構成としている。前記補正値dTは数3により求めることになる。つまり、点火初期温度tboと基準温度tbsとの差が大きいほど長くなるように熱容量判別用経過時間Toが補正されることになる。
[数2]
To=Y1+dT
[数3]
dT=D・Δtb2+E・Δtb
但し、D,Eは実験により求めた定数であり、D=0.03、E=0.69
グリルバーナ2の加熱を開始した時点から最大計測時間Tomaxが経過しても排ガス温度センサ37の検出温度が第1監視温度X1に到達しない場合には、最大計測時間Tomaxを熱容量判別用経過時間Toとして設定するようになっている。つまり、何らかの不具合で温度が計測できない場合であっても調理時間が不必要に長くなることを回避するようにしている。
上述したような第1検出値TB1、第2検出値TB2、及び、熱容量判別用経過時間Toの夫々が全て検出されて判定用算定処理が可能か否かが判断され、全てのデータが検出されて判定用算定処理が可能であれば、前記各データを用いて判定用情報を算出する(ステップ106、107)。具体的に説明すると、先ず、下記数4に示す演算式にて加熱が開始されてから100秒経過した時点から160秒経過するまでの間の庫内温度センサ38による検出温度の温度上昇勾配αを求める。そして、前記熱容量判別用経過時間Toと前記温度上昇勾配αとの比率を前記判定用情報として算出するのである。前記温度上昇勾配αを求める場合に、演算結果が予め設定した下限値(例えば零)を下回るような結果が出た場合には、温度上昇勾配αを下限値に設定するようにしている。このようにして、何らかの不具合で温度が計測できない場合であっても調理時間が不必要に長くなることを回避するようにしている。
前記熱容量判別用経過時間Toを検出するための第1監視温度X1は、図12に示すように、調理メニューに応じて異なる値が予め設定されている。つまり、この温度条件が調理メニュー指令手段MSにて指令された調理メニューに応じて選択された負荷判別用条件に対応することになる。
[数4]
α=(TB2−TB1)/(160−100)
このとき、とりけしスイッチ31が操作されて自動調理運転の取り消しが指令されると、自動運転取消処理を行ったのちにマニュアル調理運転に移行する(ステップ108、109)。この自動運転取消処理については後で説明する。点消火スイッチ23の操作により消火が指令されると、消火処理を実行してステップ2に戻る(ステップ110、111)。前記温度異常判別処理にて温度異常が発生していると、消火処理を実行した後に、ブザーBZを鳴らして報知して燃焼ランプ24を10回点滅させた後に処理を終了する(ステップ112〜115)。このときは上述したように異常状態であるからインターロック状態となり、以後の処理は受け付けない。
次に、前記判定用情報として算出された熱容量判別用経過時間Toと温度上昇勾配αとの比率(To/α)に基づいて、前記判定用情報算出処理を実行してから被加熱物に対する加熱を終了するまでの残加熱時間を設定する残加熱時間設定処理を実行する(ステップ35)。この残加熱時間設定処理について説明すると、残加熱時間TMは、下記数5に記載される演算式に基づいて求める構成となっている。但し、前記比率(To/α)が予め調理条件毎に定められた値Cよりも大きい場合には、数5における(To/α)はCに置き換えて計算する。又、係数A,Bについても前記値Cと同様に、本出願人による実験データに基づいて予め調理メニュー毎に定めた所定の値である(図12参照)。
[数5]
TM=A+(To/α)+B
上記したような演算式により残加熱時間TMが計算されるが、ステップ24にて検出された点火初期温度tboが基準温度tbsより高い場合には、このようにして計算して求めた値に対して更に長くするように補正を加えるようにしている。つまり、上記したような演算式により求めた値に対して、上記数3で求めた補正値dTに係数(1.3)を掛けた値(dT×1.3)を加算して最終的な残加熱時間TMとして求める構成となっている。従って、点火初期温度tboと基準温度tbsとの差が大きいほど長くなるように残加熱時間が補正されることになる。
図11には、調理メニューとして「姿焼き」で「標準」の焼き加減を設定した場合の前記比率(To/α)と残加熱時間TMとの関係をグラフで示している。この図から明らかなように、熱容量判別用経過時間Toと温度上昇勾配αとの比率(To/α)が大きいほど長くする状態で、且つ、設定上限値TMmax(図11に示す例では300秒)を越えない状態で、前記残加熱時間TMを設定する構成となっている。
上述したように、グリルバーナ2の加熱を開始した時点から判定用情報算出処理が行われるまでの間の熱容量判別用経過時間Toとしては最大計測時間Tomaxを越えることはないが、この熱容量判別用経過時間Toとして最大計測時間Tomaxが設定されたときに、求められた残加熱時間TMと前記最大計測時間Tomaxとを合せた合計の調理時間が、調理条件毎に予め設定されている最大燃焼時間(図12参照)を越える場合には、合計時間がこの最大燃焼時間が越えない状態で残加熱時間TMが設定されることになる。
図15〜図17に本出願人の実験に基づく実測データを示している。このうち図15は被加熱物として、さんまを1匹だけ焼き網33の上に載置させた状態でグリルバーナ2を加熱させてから後の排ガス温度センサ37と庫内温度センサ38の検出値の時間経過に伴う変化を示すグラフである。図中の太線が排ガス温度センサ37に対応するデータであり、細線が庫内温度センサ38に対応するデータである。又、図16は、被加熱物として、さばの切身を1切だけ焼き網33の上に載置させた状態でグリルバーナ2を加熱したときの各センサ37、38の検出値の時間経過に伴う変化を示すグラフであり、図17は、被加熱物として4匹のさんまを焼き網33の上に載置させた状態でグリルバーナ2を加熱したときの各センサ37、38の検出値の時間経過に伴う変化を示すグラフである。ちなみに外気温度はいずれも約25℃である。
これらのデータから明らかなように、さんまを1匹だけ加熱する場合と、さばの切身を1切だけ加熱する場合には温度上昇勾配αは共に0.2となっているが、4匹のさんまを加熱する場合には温度上昇勾配αは0.15となっており、焼き網33上での被加熱物の載置状態の違いによって温度上昇勾配αが異なる値となっている。又、さんまとさばの切身とは調理条件が異なるが、さばの切身を1切加熱するときと、さんまを1匹だけ加熱するときとでは、温度上昇勾配αは同じであるが熱容量が異なっている。
又、図18には、ぶりの照り焼き以外のものを対象として、複数の被加熱物についての実測値に基づいて求めた熱容量判別用経過時間To、温度上昇勾配α、それの比率(To/α)のデータを示しており、図19には、それらのデータと被加熱物の重量との関係をグラフとして表している。尚、図中の式は最小自乗法により求めた直線近似式とその決定係数R2を示している。図20には、ぶりの照り焼きを対象として、複数の被加熱物についての実測値に基づいて求めた熱容量判別用経過時間To、温度上昇勾配α、それの比率(To/α)のデータを示しており、図21には、それらのデータと被加熱物の重量との関係をグラフとして表している。図中の式は最小自乗法により求めた直線近似式とその決定係数R2を示している。
上述したような残加熱時間TMが設定されるとタイマー表示部26に残加熱時間TMを表示して、タイマーにて計時しながら時間経過に伴ってタイマー表示部26に表示される残加熱時間TMをカウントダウンさせる(ステップ36)。図13(ロ)にタイマー表示部26に表示される残加熱時間が5分になったことを示している。
その後、排ガス温度センサ37の検出値TH1が加熱量調整用の設定温度としての第2監視温度X2以上になったことが検出されると、グリルバーナ2の火力を減少調整する火力切替処理を行う(ステップ37、38)。つまり、上面バーナ2aと下面バーナ2b,2cの加熱量を共に弱火力になるように、上面バーナ用の分岐路と下面バーナ用分岐路とに分岐した分岐路の夫々に備えられる開閉式電磁弁16を共に閉状態に切り換えるのである。このようにして、グリル庫32内の温度が高くなり過ぎて被加熱物が焼け焦げたりするのを防止している。前記第2監視温度X2は、図12に示すように調理メニュー毎に予め設定されるものである。
残加熱時間TMとして設定されているタイマー時間が経過してタイマーがカウントアップすると、グリルバーナ2の消火処理を実行する(ステップ39,40)。つまり、元電磁弁12及び流量制御弁18を閉弁して、火力表示及び燃焼ランプ24を消灯させる。又、ブザーBZを鳴らして報知してタイマー表示部26に表示されている「00」の表示を10回点滅させたのちにステップ2にリターンする(ステップ41,42)。このときのグリル用の設定入力パネル22の表示状態を図13(ハ)に示している。
タイマーがカウントアップするまでの間に、とりけしスイッチ31の操作により自動調理運転の取り消しが指令されると、自動運転取消処理を実行してマニュアル調理運転に移行する(ステップ43,44)。
次に、とりけしスイッチ31がオン操作されることにより行われる自動運転取消処理について、図10のフローチャートに基づいて具体的に説明する。
自動調理運転の実行中にとりけしスイッチ31がオン操作されると、そのときステップ35の残加熱時間設定処理を終了して残加熱時間TMが設定済みでなければ、標準的な被加熱物が調理が完了すると予測される標準加熱時間Ts(9分)から、自動調理運転においてグリルバーナ2の加熱を開始してからその時点までの加熱経過時間Tkを減算した必要加熱時間が最小設定時間(30秒)より長ければ、その必要加熱時間を継続加熱時間としてのマニュアル調理運転におけるタイマー時間として設定する(ステップ201〜203)。又、必要加熱時間が最小設定時間より短ければ最小設定時間すなわち30秒を前記タイマー時間として設定し、その設定されたタイマー時間をタイマー表示部26に表示する(ステップ204、205)。このとき、加熱経過時間Tkが標準加熱時間Tsより長い場合であっても前記必要加熱時間が最小設定時間よりも短いものとして算出されるので、最小設定時間すなわち30秒を前記タイマー時間として設定することになる。
又、自動調理運転の実行中であって残加熱時間TMが設定された後に、とりけしスイッチ31にて自動調理運転の停止が指令された場合には、その時点における残加熱時間TMの残時間、すなわち、自動調理運転の停止が指令された時点から前記残加熱時間が満了するまでの残時間を継続用加熱時間としてのマニュアル調理運転におけるタイマー時間としてタイマー表示部26に表示する(ステップ206)。その後、タイマー設定スイッチ25の操作によるタイマー時間の変更操作が可能になる(ステップ210)が、グリルバーナ2が燃焼を開始してからタイマー時間がカウントアップするまでの合計の予定燃焼時間が、マニュアル調理運転用の最大燃焼時間として予め設定されている時間(15分)より長く設定されている場合にのみ、最大燃焼時間が(15分)を越えることが許可されており、それ以外の場合には、予定燃焼時間の最大値は最大燃焼可能時間(15分)に規制されることになる(ステップ207〜209)。尚、このとき、メニュー切替スイッチ29及び焼き加減切替スイッチ30の操作による変更設定は入力不可であり、メニュー表示部29aや焼き加減表示部30aは消灯することになる(ステップ211,212)。
マニュアル調理運転に移行した後は、火力切替スイッチ27の操作による火力の切り換え指令やタイマー設定スイッチ25の操作による加熱用のタイマー時間の増減調整等が可能となる。但し、タイマー設定スイッチ25の操作によるタイマー時間の変更操作を行う場合、タイマー時間の変更可能な最小値は1分であり、変更可能な最大値としては、最大燃焼可能時間(15分)からグリルバーナ2が燃焼を開始してからその時点までの経過時間を減算した値である。
上述したように、とりけしスイッチ31がオン操作されることにより行われる自動運転取消処理並びにそれに引き続いて実行されるマニュアル調理運転の動作が継続加熱運転に対応することになる。
図8に示すように、タイマーがカウントアップするまでの間、点消火スイッチ23がオン操作されて消火が指令されると、上述したような消火処理を実行してステップ2にリターンする(ステップ45,46)。前記温度異常判別処理にて温度異常が発生していると、消火処理を実行した後に、ブザーBZを鳴らして報知して燃焼ランプ24を10回点滅させた後に処理を終了する(ステップ47〜50)。
上述したような図表等で例示している数値は、本出願人による実験データを基に算定して値であって例示に過ぎず、本発明はこれらの数値により限定されるものではない。
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
(1)上記実施形態では、前記制御手段が、前記残加熱時間設定処理として、判定用情報算出処理にて求められた熱容量判別用経過時間と温度上昇勾配との比率を求めて、その求めた比率に基づいて残加熱時間を設定するように構成したが、このような構成に限らず、例えば、熱容量判別用経過時間及び温度上昇勾配の夫々に基づいて各別に加熱用の時間を設定するようにして、それらの各時間を合計したりあるいは平均を求めるなど、各種の形態で残加熱時間を設定するようにしてもよく、残加熱時間を設定するための構成が上記構成に限定されるものではない。
(2)上記実施形態では、前記制御手段が、前記負荷判別処理として、前記温度検出手段の検出情報と前記調理メニューに応じて選択された負荷判別用条件とに基づいて前記温度上昇勾配並びに前記熱容量判別用経過時間を求め、それらの熱容量判別用経過時間と温度上昇勾配との比率を求めて、その求めた比率に基づいて残加熱時間を設定するように構成したが、このような構成に限らず次のように構成するものでもよい。
前記熱容量判別用経過時間及び温度上昇勾配の夫々に基づいて各別に加熱用の時間を設定するようにして、それらの各時間を合計したりあるいは平均を求めるなど、各種の形態で残加熱時間を設定するようにしてもよい。
又、前記熱容量判別用経過時間及び前記温度上昇勾配のうちのいずれか1つの情報のみを用いて被加熱物の熱負荷を判別する構成としてもよい。
(3)上記実施形態では、複数の調理メニューに応じて予め前記加熱量調整用の設定温度及び前記判別用設定温度が設定された値を用いるようにした構成を例示したが、このような構成に代えて、次のように構成するものでもよい。
つまり、グリルが設置される部屋の温度を検出する室内温度検出手段としての室内温度センサが設けられ、前記制御部が、前記室内温度センサの検出結果に基づいて前記加熱量調整用の設定温度及び前記判別用設定温度を夫々変更設定するように構成するものでもよい。例えば、前記加熱量調整用の設定温度及び前記判別用設定温度を、室内温度が高いほど複数の調理メニューに応じて設定された値よりも高い値になるように変更設定する構成である。このように構成すると、室内温度の違いによる熱負荷の判別誤差を少ないものにすることができる。
(4)上記実施形態では、前記残加熱時間が経過すると自動で加熱手段による加熱を自動停止させる構成としたが、このような構成に限らず、前記残加熱時間が経過すると加熱を自動停止させる構成に代えて、報知作動を行い使用者の操作にて加熱を停止させるように構成するものでもよい。
(5)上記実施形態では、前記加熱手段としてのグリルバーナにおける上面バーナ及び下面バーナが夫々強弱2段階に火力調整できる構成として、初期運転状態では上下共に強火力になるように調整され、加熱量調整処理において上下共に弱火力になるように調整する構成としたが、このような構成に限らず、加熱量を調理メニューに応じて複数の段階に設定可能な構成として初期運転状態では調理メニューに応じた初期調整値に設定するようにして、加熱量調整処理においてはその初期調整値よりも小さい加熱量に減少調整するように構成してもよい。例えば、調理メニューが(切身・弱め)である場合、初期運転状態で上バーナを強火力、下バーナを弱火力とするように調整したり、初期運転状態で上下共に弱火力になるように調整したりする構成としてもよい。
(6)上記実施形態では、前記熱容量判別用経過時間を求めるときの設定判別温度のような判別用条件や残加熱時間を設定するときの演算条件等が、前記調理メニュー指令手段の指令情報に対応させて、夫々各別に設定される構成としたが、このような構成に限らず常に同じ条件にて前記熱容量判別用経過時間や残加熱時間を求めるようにしてもよい。
(7)上記実施形態では、前記温度検出手段として、前記温度上昇勾配を検出するための温度勾配検出用の温度センサとしての庫内温度センサと、前記熱容量判別用経過時間を検出するための熱容量判別用の温度センサとしての排ガス温度センサとを夫々備える構成としたが、このような構成に限らず、加熱手段による加熱を開始した後の初期において、前記載置部における被加熱物の載置状態の違いに応じて変化する温度上昇勾配、並びに、被加熱物の熱容量の違いに応じて変化する加熱手段による加熱を開始してから設定判別温度に上昇するまでの熱容量判別用経過時間の夫々計測することが可能なものであれば、1つのセンサの検出情報に基づいて制御を行うようにしてもよい。
(8)上記実施形態では、自動調理運転として、被加熱物の負荷を判別して判別結果に基づいて残加熱時間を設定するようにしたが、このような構成に被加熱物の負荷を検出するものに代えて、例えば、調理メニュー毎に予め一定の動作条件を設定しておき、指令された調理メニューに応じて選択された動作条件で自動運転を行うように構成してもよい。
(9)上記実施形態では、判定用情報算出処理における各温度センサによる温度検出方法について詳しく述べていないが、例えば、庫内温度センサ38の検出値において、第1検出値TB1,第2検出値TB2の検出を、各々点火後100秒、160秒後の値ではなく、前後数秒間の値の平均値として検出するようにしてもよい。又、同様に、排ガス温度センサ37の検出値において、前記数秒間の値の平均値が設定判別温度X1に達した時間を熱容量判別用経過時間Toとして検出するようにしてもよい。こうすることで、検出誤差を抑制して、より精緻に制御を行うことが可能となる。
(10)上記実施形態では、グリル燃焼ランプ24をグリル用の設定入力パネル22に設ける構成としたが、このような構成に代えて、ガスコンロ前側面19のグリル扉36に近い場所に設けるようにしてもよい。こうすることで、グリル燃焼状態が離れた場所からでも確認しやすくなる。
(11)上記実施形態では、ビルトイン形式のガスコンロに備えられたガス燃焼式のグリルを例示したが、このような構成に限らず、テーブル式コンロに備えられたグリルであってもよく、又、コンロに組みこまれたグリルに限らず、グリル単体として構成されるものであってもよい。又、ガス燃焼式に限らず、加熱手段としては、電気ヒータや電磁式加熱手段を用いるものでもよい。