上記従来構成は、被加熱物の熱容量が変化するとそれに伴って前記温度上昇量が変化することを利用して、前記温度検出手段にて検出される前記温度上昇量を用いて被加熱物の熱容量に応じて適切な調理を行うための調理用加熱時間を求めるようにしたものである。つまり、グリル装置においては、被加熱物の熱容量が小さければ、加熱手段にて出力する熱量のうち被加熱物の調理のために消費される熱量が小さく前記温度検出手段にて検出される雰囲気温度は早く上昇するので前記温度上昇量は大きなものになるが、被加熱物の熱容量が大きければ、加熱手段にて出力する熱量のうち被加熱物の調理のために消費される熱量が大きく前記温度検出手段にて検出される雰囲気温度は上昇が遅くなり前記温度上昇量は小さなものになるから、そのような点を利用して、前記温度上昇量を計測することにより被加熱物の熱容量に適した調理用加熱時間を求めるようにしたものである。
ところで、上記従来構成では、グリル装置における調理排気を外部に排出させるときにおける排気抵抗がそれほど大きくない場合には良好な結果が得られるのであるが、排気抵抗が大きめとなるグリル装置に上記従来構成を適用した場合においては、被加熱物の熱容量が大きくなったときに調理用加熱時間が被加熱物の量に応じた適切な時間として設定できないことがあり、調理が良好に行えないものとなる不利があった。
すなわち、グリル装置では、調理物として魚等を加熱することが多いが、このような調理物から発生する油分に引火してグリル庫内において火炎が発生する場合がある。そこで、例えば、加熱調理によって発生する調理排気を外部に排出させるための排気路内に、グリル庫内で発生する火炎が排気出口から外方に溢れ出ることを防止するために多孔状の消炎部材を設置することがある。このような消炎部材が排気路内に設けられる構成のグリル装置に対して、上記従来構成を適用すると、被加熱物の熱容量が大きい場合に前記温度上昇量に応じて設定された加熱時間では時間が不足して充分な加熱が行えないことがあった。
そこで、本出願人がその原因について、加熱手段としてガス燃焼式の上バーナと下バーナとを備えるグリル装置を用いて検討した結果、上記したような消炎部材を設ける構成のように排気抵抗が大きい場合には、被加熱物の熱容量が小さい状態では、その熱容量が大きいほど前記温度上昇量が小さくなるような傾向となるが、被加熱物の熱容量が大きい場合には、被加熱物の熱容量が大きいほど前記温度上昇量が大きくなるような傾向となるものであった。
これは、つぎのようなことが原因であると考えられる。排気抵抗が大きいグリル装置では、排気路における排ガスのドラフト作用による燃焼用空気の取り入れが少なくなることに加えて、被加熱物の熱容量が大きい場合、例えば前記載置部としての焼き網の上に被加熱物を隙間無く並べるような場合等においては、下バーナの燃焼による排ガスのドラフト作用により焼き網を通過して上方に流れる上バーナに対する燃焼用空気量が少なくなり、上バーナの排ガスによる温度が上昇する傾向が被加熱物の熱容量の増大に伴って顕著に現れ、しかも、下バーナの排ガスが隙間なく調理物が並置される焼き網の下方側をそのまま排気部側へ流動する割合が増えて、温度が上昇する傾向が被加熱物の熱容量の増大に伴って顕著に現れるからである。
このように被加熱物の予測される熱容量の変動範囲のうちで、被加熱物の熱容量が大きいほど温度上昇量が小さくなる範囲と、被加熱物の熱容量が大きいほど温度上昇量が大きくなる範囲とが存在すると、前記温度上昇量の計測結果からだけでは被加熱物の熱容量が適正に推定できないので、調理用加熱時間が被加熱物の熱容量に対応する適正なものとして求めることができないのである。
そこで、本発明は、この点に着目してなされたものであり、その目的は、調理排気を外部に排出させるときにおける排気抵抗が大きい場合であっても、被加熱物の熱容量に対応した調理用加熱時間を適正に求めることが可能となるグリル装置を提供する点にある。
本発明に係るグリル装置は、グリル庫内に備えられた載置部に載置された被加熱物を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段が加熱を開始したのちに雰囲気温度が上昇する位置であって且つ前記被加熱物の熱容量の違いに応じて温度上昇状態が異なる位置における雰囲気温度を計測する温度検出手段と、
前記温度検出手段の検出情報に基づいて、前記加熱手段による加熱を開始して設定時間経過した後の計測開始時点から計測終了時点までの計測用経過時間が経過する間における温度上昇量を求めて、その温度上昇量に基づいて加熱を開始してから被加熱物に対する調理用の加熱を終了するまでの調理用加熱時間を求める制御手段とを備えて構成されているものであって、
その第1特徴構成は、前記温度検出手段としての一対の温度検出部が、
前記被加熱物の予測される熱容量の変動範囲のうちで前記熱容量が小さい小熱容量範囲においては、前記被加熱物の熱容量の変化に対する前記温度上昇量の変化率が互いに同じ又は略同じ状態で前記被加熱物の熱容量が大きいほど前記温度上昇量が小さくなり、前記熱容量が大きい大熱容量範囲においては、前記被加熱物の熱容量の変化に対する前記温度上昇量の変化率が互いに異なる状態で前記被加熱物の熱容量が大きいほど前記温度上昇量が大きくなるような位置に分散配備され、
前記制御手段が、前記一対の温度検出部夫々の検出情報に基づいて各別に前記温度上昇量を求めて、その一対の前記温度上昇量に基づいて前記調理用加熱時間を求めるように構成され、
前記一対の温度検出部が、
前記被加熱物の熱容量が同じであっても、前記加熱手段による加熱を開始して設定時間経過した後の計測開始時点から計測終了時点までの計測用経過時間が経過する間における温度上昇量が互いに異なる位置に配備され、
前記制御手段が、
前記一対の温度検出部の夫々にて計測された前記温度上昇量のうちのいずれか一方の温度上昇量から、他方の温度上昇量に予め設定されている係数を掛けた修正温度上昇量を減算することにより、前記小熱容量範囲並びに前記大熱容量範囲のいずれにおいても前記熱容量が大きいほど前記温度上昇量が小さくなる補正温度上昇量を求め、その補正温度上昇量に基づいて前記調理用加熱時間を求めるように構成されている点にある。
第1特徴構成によれば、前記載置部に被加熱物が載置された状態で加熱手段による調理加熱が開始されると、加熱手段の加熱によってグリル庫内の温度が上昇するが、そのとき、制御手段は、一対の温度検出部夫々の検出情報に基づいて、加熱手段による加熱を開始して設定時間経過した後の計測開始時点から計測終了時点までの計測用経過時間が経過する間における温度上昇量を夫々求めて、その一対の前記温度上昇量に基づいて加熱を開始してから被加熱物に対する調理用の加熱を終了するまでの調理用加熱時間を求めることになる。
このとき、グリル装置の排気抵抗が大きい場合であれば、一対の温度検出部にて検出される夫々の温度上昇量は、被加熱物の予測される熱容量の変動範囲のうちで前記熱容量が小さい小熱容量範囲においては、被加熱物の熱容量の変化に対する温度上昇量の変化率が互いに同じ又は略同じ状態で被加熱物の熱容量が大きいほど温度上昇量が小さくなり、前記熱容量が大きい大熱容量範囲においては、被加熱物の熱容量の変化に対する温度上昇量の変化率が互いに異なる状態で被加熱物の熱容量が大きいほど温度上昇量が大きくなる状態で求められることになる。
そして、制御手段は、一対の温度検出部夫々の検出情報に基づいて各別に前記温度上昇量を求めて、その一対の前記温度上昇量に基づいて前記調理用加熱時間を求めるのである。例えば、一対の温度検出部にて検出される夫々の温度上昇量の対比により、そのときの被加熱物の熱容量が大きい範囲にあるのか小さい範囲にあるのかを判別して、その判別結果といずれか一方の温度上昇量とから調理用加熱時間を求めるようにする等、種々の演算手法によって、熱容量に対応する適正な調理用加熱時間を求めることが可能となるのである。
従って、第1特徴構成によれば、調理排気を外部に排出させるときにおける排気抵抗が大きい場合であっても、被加熱物の熱容量に対応した調理用加熱時間を適正に求めることが可能となるグリル装置を提供できるに至った。
又、第1特徴構成によれば、被加熱物の熱容量が同じであっても、一対の温度検出部の夫々にて検出される前記温度上昇量が互いに異なる値として検出されることになる。そして、制御手段は、先ず、一対の温度検出部の夫々にて計測された温度上昇量のうちのいずれか一方の温度上昇量を基準として定めて、他方の温度上昇量に予め設定されている係数を掛けた修正温度上昇量を求め、前記基準とする一方の温度上昇量からこの修正温度上昇量を減算して補正温度上昇量を求めるのである。そして、このとき、前記補正温度上昇量は、前記小熱容量範囲並びに前記大熱容量範囲のいずれにおいても前記熱容量が大きいほど前記温度上昇量が小さくなる値として求められることになる。要するに、一対の温度検出部にて検出される夫々の温度上昇量から、一方の温度上昇量を用いて他方の温度上昇量を、被加熱物の予測される熱容量の変動範囲の全範囲にわたり被加熱物の熱容量が大きいほど温度上昇量が小さくなるような状態で補正するのである。
本出願人の実験データを示す図18を参照して説明すると、一方の温度検出部にて検出される温度上昇量(ΔUt)に予め設定した係数(A)を掛けて修正温度上昇量(A×ΔUt)を求める。そして、他方の温度検出部にて検出される温度上昇量(ΔDt)から前記修正温度上昇量(A×ΔUt)を減算して補正温度上昇量(Δt)を求めるのである。尚、図18では、被加熱物の熱容量を種々変化させたときの計測値の変化を表しているが、実際の装置においては、被加熱物の熱容量が定まると、例えば図18の各ライン上の一点にて定まる固定の値として求められることになる。図から判るように、補正温度上昇量(Δt)は、前記小熱容量範囲並びに前記大熱容量範囲のいずれにおいても前記熱容量が大きいほど前記温度上昇量が小さい値として求められる。
そして、上記したように、前記補正温度上昇量は、前記小熱容量範囲並びに前記大熱容量範囲のいずれにおいても前記熱容量が大きいほど前記温度上昇量が小さくなる値として求められることから、制御手段は、この補正温度上昇量からその補正温度上昇量に対応する被加熱物の熱容量、並びに、被加熱物の熱容量に対応した適正な調理用加熱時間を求めることが可能となるのである。
従って、第1特徴構成によれば、一対の温度検出部の夫々にて計測された温度上昇量のうちのいずれか一方に係数を掛けて他方の温度上昇量から減算するという簡単な演算処理によって、被加熱物の熱容量に対応した調理用加熱時間を適正に求めることが可能となるグリル装置を提供できるに至った。
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記加熱手段が、加熱量を変更調整自在に構成され、前記制御手段が、加熱を開始するときは設定加熱量に調整し、加熱を開始してから前記調理用加熱時間に応じて設定される加熱量切替時間が経過すると前記設定加熱量よりも低い低加熱量に変更する形態で、前記加熱手段を制御するように構成されている点にある。
第2特徴構成によれば、制御手段は、被加熱物の加熱調理を開始するときは、加熱手段の加熱量を設定加熱量に調整し、加熱を開始してから前記調理用加熱時間に応じて設定される加熱量切替時間が経過すると、加熱手段の加熱量を前記設定加熱量よりも低い低加熱量に変更するのである。すなわち、加熱を開始してから加熱量切替時間が経過するまでの間は、被加熱物を効率よく加熱調理するのに適切な値として設定される設定加熱量にて加熱調理が行われ、加熱量切替時間が経過して被加熱物の調理加熱がある程度進んだ段階に至ると低加熱量に変更するようにしたので、被加熱物が焼け焦げてしまうといった不利を回避し易いものになる。又、調理用加熱時間が経過するまでは加熱手段による加熱は継続するので、加熱が不十分で被加熱物に対する加熱調理が不完全になるおそれは少なく、適正な加熱調理を行うことが可能となる。
従って、第2特徴構成によれば、被加熱物が焼け焦げてしまうといった不利を回避しながら適正な加熱調理を行うことが可能となるグリル装置を提供できるに至った。
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、複数の調理メニューのうち被加熱物に応じた調理メニューを指令する調理メニュー指令手段が備えられ、前記制御手段が、前記温度検出手段の検出情報と、複数の算出用条件のうち前記調理メニュー指令手段にて指令された調理メニューに応じて選択された算出用条件とに基づいて、前記調理用加熱時間を求めるように構成されている点にある。
第3特徴構成によれば、調理メニュー指令手段にて被加熱物に応じた調理メニューが指令されると、制御手段は、複数の算出用条件のうち調理メニュー指令手段にて指令された調理メニューに応じて選択された算出用条件と、前記温度検出手段の検出情報とに基づいて前記調理用加熱時間を求めるのである。つまり、調理用加熱時間を算出するための算出用条件が複数の調理用メニュー毎に複数用意されており、複数の算出用条件のうち指令された調理メニューに応じて算出用条件が選択され、その選択された算出用条件に基づいて調理用加熱時間を求めることになるので、調理用加熱時間がそのときの調理の仕方に対応する適正な時間として設定されることになる。
従って、第3特徴構成によれば、使用者が調理メニュー指令手段にて所望の調理メニューを指令すると、調理用加熱時間がそのときの調理の仕方に対応する適正な時間として設定されることになり、使い勝手のよいグリル装置を提供できるに至った。
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第4特徴構成のいずれかに加えて、前記グリル庫に連設されて調理排気を上方の排気出口に案内する排気路が上方側ほど前記グリル庫から離れる傾斜姿勢に形成され、その排気路における上端側部よりも前記グリル庫側に片寄った箇所に、前記排気路における底部側に前記排気出口を通して落下侵入した異物を前記グリル庫側に通過させる異物通路を構成するための開口を形成し且つ前記排気路を横断する形態で、多孔状の消炎部材が設けられ、前記グリル庫からの調理排気を前記消炎部材に案内する排気案内部材が、前記異物通路を通して調理排気が流動するのを抑制するように調理排気を案内する形態で、且つ、前記排気出口を通して落下侵入した異物を受止め滞留させない状態で設けられている点にある。
第4特徴構成によれば、前記消炎部材が、前記排気路における上端側部よりもグリル庫側に片寄った箇所に設けられるので、グリル庫で発生する火炎が排気路における上端側部にまで達するような大きな火炎になる前の未だ小さい火炎である状態において、前記消炎部材が消炎作用を発揮することができるので、排気路における上端側部にまで達するような大きな火炎を上端側部に位置する消炎部材によって消炎するような場合に較べて、火炎が排気出口から外方に溢れ出るおそれが少ないものとなり、使用上の安全性を高めることが可能となる。
又、前記消炎部材は、前記排気路における底部側に前記排気出口を通して落下侵入した異物を前記グリル庫側に通過させる異物通路を構成するための開口を形成し且つ前記排気路を横断する形態で設けられており、前記排気出口を通して落下侵入した異物は、消炎部材の上部で受止められて堆積することがなく前記異物通路を通してグリル庫側に通過することになる。このように前記異物通路を通してグリル庫側に通過した異物は、グリル庫における被加熱物を出し入れするために設けられた開口等を通して取り除くことができる。
説明を加えると、この種のグリル装置にあっては、その使用に伴って例えば被調理物の破片等の異物が排気出口を通して排気路内に落下侵入してくることがあるが、排気出口を通して落下侵入した異物が消炎部材の上部で受止められて堆積することがなく消炎部材が目詰りすることを防止して所望の消炎作用を発揮する状態を維持できるものでありながら、消炎部材を排気路における上端側部よりもグリル庫側に片寄った箇所に設けるようにして、グリル庫内で発生する火炎が未だ小さい段階において消炎部材により消炎作用を発揮できるものとなる。
又、前記グリル庫からの調理排気は排気案内部材によって消炎部材に案内されるが、この排気案内部材が前記異物通路を通して調理排気が流動するのを抑制するように調理排気を案内する形態で、且つ、前記排気出口を通して落下侵入した異物を受止め滞留させない状態で設けられているから、前記排気出口を通して落下侵入した異物は、排気案内部材で受止められて堆積することがなく前記異物通路を通してグリル庫側に通過するのであり、しかも、前記異物通路を通して調理排気が流動することが防止されるので、グリル庫で火炎が発生したような場合であっても、その火炎は調理排気と共に排気案内部材によって消炎部材に案内されることになり、異物通路を通して排気出口から溢れ出ることを防止して消炎部材により所望の消炎作用を発揮することができる。
従って、第4特徴構成によれば、グリル庫内で発生する火炎が未だ小さい段階において消炎部材により所望の消炎作用を発揮するようにし、且つ、異物通路を通して排気出口から火炎が溢れ出ることを防止しながら消炎部材による所望の消炎作用を発揮させることができ、使用上の安全性を高めることができるグリル装置を提供できるに至った。
以下、本発明に係るグリル装置の実施形態をグリル付きガスコンロに適用した場合について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、このガスコンロは、3つのコンロバーナ1a,1b,1c、および、加熱手段としてのグリルバーナ2を備えたグリル装置としてのグリル部3からなるビルトインタイプのガスコンロにて構成されている。3つのコンロバーナ1a,1b,1cは標準バーナ1aと、小バーナ1bと、高火力バーナ1cとによって構成されている。そして、グリル部3の燃焼排ガスを排気するためのグリル排気口4が形成され、トッププレート5にてガスコンロ上面が覆われており、このトッププレート5の上部に鍋等を受け止め支持するための五徳6が載置支持されている。また、ガスコンロ前側面には各コンロバーナ1a,1b,1c及びグリルバーナ2の点火及び消火や火力調節を指令する手動操作部Sが設けられている。又、このガスコンロは、マイクロコンピュータを備えて各種の制御を実行するように構成された運転状態を制御する制御手段としての制御部Hが、手動操作部Sにて指令された運転状態に基づいて、コンロバーナ1a,1b,1cおよびグリルバーナ2を制御するように構成されている。又、ガスコンロ前側面には押し操作式の電源スイッチ9も設けられている。
図2に示すように、3つのコンロバーナ1a,1b,1cの夫々には、点火手段としての点火器7及び着火状態を検出する熱電対8が設けられており、グリルバーナ2は上面バーナ2aと左右一対の下面バーナ2b,2cとを備えた両面バーナにて構成されて、上面バーナ2a及び左右一対の下面バーナ2b,2cの夫々にも点火器7及び熱電対8が夫々備えられている。又、左側に位置する標準バーナ1aには、五徳6にて載置支持された被加熱物の底面部に接触して被加熱物の温度を検出する温度センサ10が設けられている。
前記3つのコンロバーナ1a,1b,1cおよびグリルバーナ2へのガス供給構成について説明すると、元ガス供給路11には元電磁弁12が設けられ、元ガス供給路11から、標準バーナ用分岐路13a、小バーナ用分岐路13b、高火力バーナ用分岐路13c、グリルバーナ用分岐路13dの4系統に分岐しており、標準バーナ用分岐路13a、小バーナ用分岐路13b、高火力バーナ用分岐路13c、及び、グリルバーナ用分岐路13dの夫々には、ステッピングモータの駆動によって燃料ガスの流量を調整して加熱量を調整するための流量制御弁18が備えられている。
そして、グリルバーナ2へのグリルバーナ用分岐路13dは、さらに、上面バーナ用の分岐路と下面バーナ用分岐路とに分岐し、それらの分岐路には夫々、オリフィスof付きの流路15と開閉式電磁弁16を備えたバイパス路17とが設けられている。つまり、前記開閉式電磁弁16を開状態にすることで上面バーナ2a又は左右一対の下面バーナ2b,2cが強火力に調整され、前記開閉式電磁弁16を閉状態にすることで上面バーナ2a又は左右一対の下面バーナ2b,2cが弱火力に調整されることになる。尚、図示はしないが、グリルバーナ用分岐路13dには、元電磁弁12と流量制御弁18の間にガスガバナを設けて、ガス量の安定を図っている。
次に、前記手動操作部Sの構成について説明する。ガスコンロ前側面19には、手動操作部Sとして、標準バーナ1a、小バーナ1b及び高火力バーナ1cの夫々に対して各別に点火及び消火や火力調節を指令するための3つの加熱状態調節部20と、調理の設定を指令する設定入力パネル21と、グリルバーナ2に対して点火及び消火や火力調整を指令するためのグリル用の設定入力パネル22とが設けられている。
図3に示すように、グリル用の設定入力パネル22は、押し操作式のスイッチにて構成されて押し操作する毎にグリルバーナ2に点火を指令するオン状態と消火を指令するオフ状態とに切り換わる点消火スイッチ23、グリルバーナ2が燃焼すると点灯し消火すると消灯する燃焼ランプ24、加熱用のタイマー時間を増減設定するためのタイマー設定スイッチ25、設定されるタイマー時間を表示するタイマー表示部26、上面バーナ2aと下面バーナ2b,2cの加熱量を切り替えるための火力切替スイッチ27、上面バーナ2aと下面バーナ2b,2c夫々の火力の状態が弱火力であることを示す弱表示部28aと強火力であることを示す強表示部28bとからなる火力表示部28、調理される被加熱物についての調理メニューの違いに応じて燃焼状態の切り替えを指令する調理メニュー指令手段としてのメニュー切替スイッチ29、焼き加減を調整する焼き加減調整スイッチ30、後述するような自動加熱運転を取り消す為のとりけしスイッチ31等が設けられている。前記メニュー切替スイッチ29により切り替えられる調理メニューとしては、「姿焼き」「切身」「干物」があり、そのうち選択されたものをLEDランプにて示すメニュー表示部29aが設けられている。焼き加減についても同様に「弱め」「標準」「強め」の3段階に調節できるようになっているが、そのうち選択されたものをLEDランプにて示す焼き加減表示部30aが設けられている。そして、調理するときの具体的なメニュー表が図6に示すように別途用意されており、使用者はこのメニュー表を調理内容の目安として設定することになる。
図4に示すように、グリル部3は、魚などの被加熱物Nを加熱するための加熱室Kを形成するグリル庫32が設けられ、このグリル庫32の内部に被加熱物Nを載置させる載置部としての焼き網33を設けて、その被加熱物Nをグリルバーナ2にて加熱して調理するように構成されている。グリル庫32は、加熱室Kの前面部が開口されてその前部側の開口を通して被加熱物Nを出し入れするように構成され、且つ、加熱室Kの背部側に上下方向に沿う排気用開口が形成されている。そして、このグリル庫32の背部に、グリルバーナ2の燃焼により被加熱物Nを加熱したときに発生する煙やグリルバーナ2から発生する燃焼排ガス等を含む調理排気をトッププレート5の後面部側に形成されたグリル排気部4から排気させるための排気筒34が接続されている。
前記排気筒34の上端部には調理排気をグリル排気部4から排気させるための排気出口35が形成されており、この排気筒34の内部に、グリル庫32に連設されて調理排気を上方の排気出口35に案内する上下方向に沿う姿勢の排気路Rを形成する構成となっている。
説明を加えると、排気筒34の内部に形成される前記排気路Rは、調理排気を上方の排気出口35に案内する上下方向に沿う姿勢であり、案内した調理排気をグリル排気部4から外部に排出する構成となっている。すなわち、前記排気路Rは、グリル庫32内の背部に形成されたる排気用開口32aに連なる状態で、且つ、上方側ほどグリル庫32から後方側へ離れる傾斜姿勢に形成されており、調理排気は温度上昇による自然対流によって排気路Rを通して外部に排出されることになる。ちなみに、グリルバーナ2の二次空気はグリル庫32の側面部や底面部及び前面部から取り入れるようにしている。
そして、焼き網33の下方には、魚などの被加熱物からの油などを受け止める汁受皿36が設けられ、汁受皿36は、図示はしないが、グリル庫32の側壁部に設けられたガイドの案内により、焼き網33を載置した状態で、グリル庫32に対して、収納状態と取り出し状態とにスライド移動可能に構成されている。また、汁受皿36の前面部には、汁受皿35をグリル庫32内に収納する収納状態のときに、グリル庫32の前面部を閉塞する把手付きの扉37が設けられている。そして、使用者は、把手にて扉36を開閉させることにより、汁受皿36と焼き網33をグリル庫32に対してスライド移動させるように構成されている。
このグリルには、排気路Rの内部に位置する状態で多孔状の消炎部材40が設けられている。この消炎部材40は、排気路Rにおける前記排気出口35が形成された上端側部よりもグリル庫32側に片寄った箇所に、排気出口35を通して落下侵入した異物を受止め滞留させない状態で設けられ、排気路R内における消炎部材40の設置箇所に、前記排気出口35を通して落下侵入した異物を前記グリル庫32側に通過させる異物通路41が形成されている。
前記消炎部材40は、排気路Rにおける上端側部よりもグリル庫32側に片寄り、且つ、排気路Rにおけるグリル庫32に連なる接続部よりも排気出口35側に片寄った箇所に設けられ、排気路Rにおける底部側に異物通路41を構成するための開口を形成する状態で排気路Rを横断する形態で設けられている。
説明を加えると、前記消炎部材40は、図4に示すように、排気路Rにおける上端側部よりもグリル庫32側に片寄り、且つ、排気路Rにおけるグリル庫32に連なる接続部よりも排気出口35側に片寄った箇所としての排気路Rの長手方向の中間部箇所において、排気筒34の上側面34bから下方側に向かい且つグリル庫32側に向かう斜め下方に延びる状態で設けられている。この消炎部材40は、図5に示すように、多数の通気孔31aが形成された金網であるラス網にて構成されており、各通気孔40aの大きさ(メッシュサイズ)は、4mm×2mmの大きさに設定されている。尚、図5は、グリル庫32における扉37を開放させた状態の正面図であり、グリル庫32における前面側に形成された被加熱物出し入れ用の開口の周囲にはグリル庫32の前壁部32Aが設けられている。
前記消炎部材40は、排気路Rの横幅方向全幅にわたる状態で且つ排気路Rの上下方向の途中位置まで斜め方向に延びる状態で設けられ、排気路Rの長手方向に対して直交する方向の横断面積よりも大きな面積を有する状態で、排気路Rの長手方向に対して直交する姿勢に対して傾けた傾斜姿勢で設けられている。すなわち、消炎部材40は、その上端部を基点として、その位置において排気路Rの通路幅が最も狭くなる横断方向(図4に仮想線Lで示す方向)に沿う方向に対して、グリル庫32側に傾斜した斜め姿勢になるように設けられ、極力、消炎機能を発揮する面積が広くなるように構成されている。そして、この消炎部材40の下端側の端部と排気筒34の底部との間で異物通路41を構成するための開口42が形成されている。
又、グリル庫32からの調理排気を消炎部材40に案内する排気案内部材43が、異物通路41を通して調理排気が流動するのを抑制するように調理排気を案内する形態で、且つ、排気出口35を通して落下侵入した異物を受止め滞留させない状態で設けられている。
つまり、消炎部材40の下端部から前方側つまりグリル庫32側に向かい且つ斜め下方に延びる状態で、横方向に広幅で板状の排気案内部材43が設けられ、この排気案内部材43のグリル庫32側の端部は、焼き網33の背部側端部に近い位置であって焼き網33よりも少し下方側に位置する構成となっている。この排気案内部材43は、平面視で排気出口35とは重複しないように水平方向に位置をずらして設けられており、排気出口35を通して落下侵入した異物を受止め滞留させない状態で設けられている。
そして、排気路Rの底部を構成する排気筒34の下側面34aは、排気出口35から落下侵入してくる異物を受止める位置からグリル庫32に連結されるまでの間の全領域にわたり、グリル庫32に近づくほど下方に位置するような傾斜姿勢となるように構成されている。すなわち、排気筒34の下側面34aが排気出口35を通して落下侵入する異物をグリル庫32内に流下案内する傾斜状の案内面に形成されており、この排気路Rの下側面34aと前記排気案内部材43とによって、前記排気出口35を通して落下侵入した異物をグリル庫32側に通過させる異物通路41が形成されている。
又、排気路Rにおける排気出口35には、前記異物通路41の最も狭い箇所の幅よりも小さく且つ前記消炎部材40の通気孔40aよりも大きい通気孔を多数備えた多孔状の防塵部材44が備えられている。説明を加えると、この防塵部材44は、前記消炎部材40と同じように、多数の通気孔44aが形成された金網であるラス網にて構成されており、排気路Rにおける排気出口35の開口部全領域を覆う状態で設けられている。このラス網は、各通気孔44aの大きさ(メッシュサイズ)は、12mm×6mmの大きさに設定されており、異物通路41の最も狭い箇所の幅である上下方向の幅(約20mm)よりも小さく且つ前記消炎部材40の通気孔40aよりも大きい通気孔となるように構成され、排気抵抗が大きくならずに調理排気の良好に外部に排気されるようにしている。
焼き網33に載置された魚等の被加熱物Nが加熱されるときに、被加熱物Nから発生する油等に引火して火炎が発生して、その火炎が調理排気と共に排気路Rを通して排気出口35に向けて案内されて伸びて行くようなことがあっても、そのとき、調理排気は、前記排気案内部材43によって消炎部材40に向けて案内されるから、その消炎部材40による消炎作用によって火炎が消火されることになる。
又、調理物の破片、例えば野菜の切屑等の異物が防塵部材44を通過して排気出口35から排気路R内に落下侵入した場合であっても、その異物は傾斜状の案内面に形成されている排気筒34の下側面34aによって異物通路41を通過する状態でグリル庫32内に流下案内されることになる。グリル庫32内に回収された異物は、グリル庫32の前面側に形成された被加熱物出し入れ用の開口を通して取り除くことができる。
そして、このグリルには、被加熱物の熱容量の違いに応じて温度上昇量が変化する箇所における雰囲気温度を計測する温度検出手段Kが備えられ、制御部Hが、前記温度検出手段Kの検出情報に基づいて、グリルバーナ2による加熱を開始した後に計測開始時点から計測終了時点までの計測用経過時間が経過する間における温度上昇量を求めて、その温度上昇量に基づいて加熱を開始してから被加熱物Nに対する調理用の加熱を終了するまでの調理用加熱時間を求めるように構成されている。
そして、このグリルでは、前記温度検出手段Kとしての一対の温度検出部である温度センサ45,46が、前記被加熱物Nの予測される熱容量の変動範囲のうちで前記熱容量が小さい小熱容量範囲においては、被加熱物Nの熱容量の変化に対する前記温度上昇量の変化率が互いに同じ又は略同じ状態で被加熱物Nの熱容量が大きいほど前記温度上昇量が小さくなり、前記熱容量が大きい大熱容量範囲においては、被加熱物Nの熱容量の変化に対する前記温度上昇量の変化率が互いに異なる状態で被加熱物Nの熱容量が大きいほど前記温度上昇量が大きくなるような位置に分散配備される状態で設けられている。
具体的に説明すると、図4及び図5に示すように、前記グリル庫32内における焼き網33の高さよりも少し高い位置であって、前記排気案内部材43の上部側の横幅方向の中央位置にサーミスタからなる一方の温度検出部としての上部側温度センサ45が設けられている。この上部側温度センサ45が設けられる位置は、上面バーナ2aの燃焼排ガスが流動するとともに、左右一対の下面バーナ2b,2cの燃焼排ガスのうち焼き網33を通過して上方に流動した燃焼排ガスが流動する箇所であり、グリルバーナ2による加熱を開始した後に計測開始時点から計測終了時点までの計測用経過時間が経過する間における温度上昇量が被加熱物Nの熱容量の大きさに応じて異なる位置である。
又、上部側温度センサ45とは別に、グリル庫32内における焼き網33よりも少し低い位置であって前記異物通路41内に位置して主に下面バーナ2b,2cの燃焼排ガスが流動する箇所に他方の温度検出部としての下部側温度センサ46が設けられている。この下部側温度センサ46が設けられる位置は、グリルバーナ2による加熱を開始した後に計測開始時点から計測終了時点までの計測用経過時間が経過する間における温度上昇量が被加熱物Nの熱容量の大きさに応じて異なる位置である。
前記上部側温度センサ45と前記下部側温度センサ46とが設置される位置は、前記被加熱物Nの熱容量が同じであっても、グリルバーナ2による加熱を開始して設定時間経過した後の計測開始時点から計測終了時点までの計測用経過時間が経過する間における温度上昇量が互いに異なる位置であり、さらには、被加熱物Nの予測される熱容量の変動範囲のうちで熱容量が小さい小熱容量範囲においては、被加熱物Nの熱容量の変化に対する前記温度上昇量の変化率が互いに同じ又は略同じ状態で被加熱物Nの熱容量が大きいほど前記温度上昇量が小さくなり、熱容量が大きい大熱容量範囲においては、被加熱物Nの熱容量の変化に対する前記温度上昇量の変化率が互いに異なる状態で被加熱物Nの熱容量が大きいほど前記温度上昇量が大きくなる位置である。
そして、前記制御部Hが、一対の温度検出部すなわち上部側温度センサ45及び下部側温度センサ46夫々の検出情報に基づいて、各別に、グリルバーナ2による加熱を開始して設定時間経過した後の計測開始時点から計測終了時点までの計測用経過時間が経過する間における温度上昇量ΔUt,ΔDtを求めて、その一対の前記温度上昇量ΔUt,ΔDtに基づいて前記調理用加熱時間を求めるように構成されている。具体的には、制御部Hは、前記一対の温度上昇量ΔUt,ΔDtのうちのいずれか一方の温度上昇量から、他方の温度上昇量に予め設定されている係数を掛けた修正温度上昇量を減算することにより、前記小熱容量範囲並びに前記大熱容量範囲のいずれにおいても前記熱容量が大きいほど前記温度上昇量が小さくなる補正温度上昇量を求め、その補正温度上昇量に基づいて前記調理用加熱時間を求めるように構成されている。
図18に、前記上部側温度センサ45と前記下部側温度センサ46とを用いて、被加熱物Nの熱容量の変化に対するグリルバーナ2による加熱を開始して設定時間が経過した計測開始時点から計測終了時点までの計測用経過時間が経過する間における温度上昇量の変化を計測した計測結果を示している。つまり、前記上部側温度センサ45にて計測される前記温度上昇量ΔUt、及び、前記下部側温度センサ46にて計測される前記温度上昇量ΔDtの被加熱物Nの熱容量の変化に対する変化を示すグラフを示している。ちなみに、被加熱物Nの熱容量は、生魚であるか干物であるか等により異なり、魚の大きさや魚の数の違い等によっても異なるものである。
図18から判るように、前記上部側温度センサ45にて計測される前記温度上昇量ΔUt、及び、前記下部側温度センサ46にて計測される前記温度上昇量ΔDtは、被加熱物Nの熱容量が同じであっても前記温度上昇量が互いに異なっており、前記小熱容量範囲P1においては、被加熱物Nの熱容量の変化に対する前記温度上昇量の変化率が互いに同じ又は略同じ状態で被加熱物の熱容量が大きいほど前記温度上昇量が小さくなっている。つまり、前記温度上昇量ΔUt及び前記温度上昇量ΔDtは平行に右下がり状態となっている。そして、熱容量が大きい大熱容量範囲P2においては、被加熱物Nの熱容量の変化に対する前記温度上昇量の変化率が互いに異なる状態で被加熱物Nの熱容量が大きいほど前記温度上昇量が大きくなっている。つまり、前記温度上昇量ΔUt及び前記温度上昇量ΔDtは共に右上がり状態となっているが変化率(曲がり方)が異なっている。
又、制御部Hが、上部側温度センサ45及び下部側温度センサ46夫々の検出情報と、複数の算出用条件のうちメニュー切替スイッチ29にて指令された調理メニューに応じて選択された算出用条件とに基づいて、前記調理用加熱時間を求めるように構成されている。さらに、制御部Hは、加熱を開始するときは設定加熱量に調整し、加熱を開始してから前記調理用加熱時間Txに応じて設定される加熱量切替時間Tyが経過すると前記設定加熱量よりも低い低加熱量に変更する形態で、グリルバーナ2を制御するように構成されている。
以下、図7〜図10に示す制御フローチャートに基づいてグリルバーナ2に対する制御部Hの具体的な制御動作について説明を加える。
図7に示すように、前記制御部Hは、電源スイッチ9がオン操作された後に点消火スイッチ23がオン操作されるとマニュアル調理運転を実行する(ステップ1、2)。図8に示すように、このマニュアル調理運転では、先ずグリルバーナ2に対する点火処理を実行する(ステップ3)。具体的には、点火器7による点火を開始させた後に、元電磁弁12及び流量制御弁18を開弁させてグリルバーナ2に点火して、熱電対8により着火状態が検知されると点火器7の動作を停止して燃焼ランプ24を点灯させる。尚、設定時間内に熱電対8により着火が確認されなければ不着火エラーとして元電磁弁12及び流量制御弁18を閉弁して報知処理する。
グリルバーナ2に点火してグリル部3の運転を開始する時には、グリルバーナ2の火力は、上面バーナ2aと下面バーナ2b,2cの加熱量が共に強火力になるように初期設定されることになる。この初期設定状態が設定加熱量に対応するものである。
グリルバーナ2への着火が検知された後には、上部側温度センサ45及び下部側温度センサ46の検出情報に基づいて、グリル庫32内の温度が異常になっているか否かを判別する(ステップ4)。具体的に説明すると、前記上部側温度センサ45の検出値が120℃以上であり温度上昇勾配が急激であること、前記上部側温度センサ45の検出値が255℃以上であること、下部側温度センサ46の検出値が180℃以上であることのいずれかが検出されると異常高温状態であると判別する。次に、タイマー表示部26に予め標準的な調理時間として初期設定される調理時間(例えば、9分)及び標準的な火力、つまり、上面バーナ2a及び左右一対の下面バーナ2b,2cが共に強火力に設定されている状態を表示する(ステップ5)。そして、火力の切替指令があればその指令された内容に従って火力を切り替え、且つ、火力表示部28における表示状態を切り替える(ステップ6、7、8)。又、タイマー時間の変更指令があればその指令された内容に従ってタイマー時間を変更し、且つ、表示状態を変更する(ステップ9、10、11)。
そして、設定されているタイマー時間が経過してタイマーがカウントアップすると、グリルバーナ2の消火処理を実行する(ステップ12、13)。つまり、元電磁弁12及び流量制御弁18を閉弁して、火力表示部28及び燃焼ランプ24を消灯させる。又、制御部Hに接続された音声報知用のブザーBZを鳴らして報知してタイマー表示部26に表示されている「00」の表示を10回点滅させたのちにステップ2にリターンする(ステップ14、15)。タイマーがカウントアップするまでに、点消火スイッチ23がオン操作されて消火が指令されると上述したような消火処理を実行してステップ2にリターンする(ステップ16、17)。前記温度異常判別処理にて温度異常が発生していると、消火処理を実行した後に、ブザーBZを鳴らして報知して燃焼ランプ24を10回点滅させた後に処理を終了する(ステップ18〜21)。このときは異常状態であるから、インターロック状態となり、以後の処理は受け付けない。この場合はサービスマン等によるメンテナンス作業が必要となる。
そして、図7に示すように、前記電源スイッチ9がオン操作されたのちに点火指令が指令されずにメニュー切替スイッチ29又は焼き加減調整スイッチ30の少なくともいずれかが操作され、上部側温度センサ45の検出値TH1が制御動作可能な範囲内(―5℃〜100℃の範囲内)にあれば、そのときの下部側温度センサ46の検出値TH2を点火初期温度THBOとして検出して記憶し(ステップ22、23、24)、点火が指令されると自動調理運転を実行することになる(ステップ25)。尚、電源スイッチ9がオン操作されてから3分間が経過してもいずれのスイッチも操作されず入力操作がないときには電源を自動でオフして制御を終了する(ステップ27、28、29)。又、検出温度が制御動作可能な範囲内になければ、ブザーBZを鳴らして警告音を発生させてステップ2に戻る(ステップ26)。
次に、図9のフローチャートに基づいて自動調理運転について説明する。
この自動調理運転においては、先ず、マニュアル調理運転のときと同様にグリルバーナ2に対する点火処理を実行し(ステップ30)、タイマー表示部26にて自動調理運転状態であることを示す「AU」を表示する(図11(イ)参照)(ステップ31)。そして、メニュー切替スイッチ29、焼き加減調整スイッチ30、タイマー設定スイッチ25等による切り替え操作のための入力の受け付けを抑制する入力抑制状態に切り替える(ステップ32)。従って、この自動調理運転が行われている間は、これらの操作により入力は行えない状態となる。但し、とりけしスイッチ31の操作による自動調理運転の取り消し指令は入力可能である。
そして、上部側温度センサ45及び下部側温度センサ46の検出情報に基づいて、グリル庫32内の温度が異常になっているか否かを判別する(ステップ33)。具体的に説明すると、前記上部側温度センサ45の検出値TH1が320℃以上であること、下部側温度センサ46の検出値TH2が220℃以上であることのいずれかが検出されると異常高温状態であると判別する。
次に、判定用情報算出処理を実行する(ステップ34)。この判定用情報算出処理について、図10のフローチャート並びに図12のタイムチャートに基づいて説明すると、グリルバーナ2に対する点火が行われて着火状態が検知されてから設定時間としての温度計測開始時間eが経過した計測開始時点に至ると、そのときの上部側温度センサ45の検出値TH1を第1検出値TA2として検出し、且つ、下部側温度センサ46の検出値TH2を第1検出値TB2として検出する(ステップ100、101)。グリルバーナ2に対する点火が行われ着火状態が検知されてから温度計測終了時間fが経過した計測終了時点、すなわち、前記計測開始時点から計測用経過時間が経過した計測終了時点に至ると、上部側温度センサ45の検出値TH1を第2検出値TA1として検出し、且つ、下部側温度センサ46の検出値TH2を第2検出値TB1として検出する(ステップ102、103)。但し、グリルバーナ2に対する点火が行われ着火状態が検知されてから温度計測終了時間fが経過して計測終了時点に達することがなくても、上部側温度センサ45の検出値TH1が予め設定されている上限温度X2uに達する、又は、下部側温度センサ46の検出値TH2が予め設定されている上限温度X2dに達すると、その時点にて、上部側温度センサ45の検出値TH1を第2検出値TA1として検出し、且つ、下部側温度センサ46の検出値TH2を第2検出値TB1として検出する(ステップ104、105)。
図13〜図16における定数一覧表に示すように、前記温度計測開始時間eとしては、調理メニューや焼き加減が変更されても常に一定の値(100秒間)が設定されるが、前記温度計測終了時間fとしては、設定される調理メニューや焼き加減の違いに応じて互いに異なる値が設定される。又、上限温度X2uとしては調理メニューの違いに拘らずほぼ一定の温度例えば400℃が設定され、上限温度X2dとしては、設定される調理メニューや焼き加減の違いに応じて互いに異なる値が設定される。
上述したような第1検出値TA2,TB2及び第2検出値TA1,TB1が検出されると、各データを用いて判定用情報を算出する(ステップ106)。具体的に説明すると、第2検出値TA1から第1検出値TA2を引いて上部側温度センサ45の検出情報に基づく温度上昇量ΔUtを求め、第2検出値TB1から第1検出値TB2を引いて下部側温度センサ46の検出情報に基づく温度上昇量ΔDtを求める。
従って、この実施形態では、前記温度計測終了時間fから前記温度計測開始時間eを減算した時間が計測用経過時間に対応することになる。
次に、下記数1により補正温度上昇量Δtを求める。但し、ΔDt=TB1-TB2、ΔUt=TA1-TA2であり、演算結果が「1」より小さければ、Δtは1とする。つまり、補正温度上昇量Δtの最小値は1である。又、A、Bは実験データに基づいて予め設定される係数であり、設定される調理メニューや焼き加減の違い、並びに、点火初期温度THBOの違い等に応じて種々異なる値が設定される(図13〜図16参照)。
[数1]
Δt=ΔDt-A×ΔUt-B
図18を参照しながら説明を加えると、上部側温度センサ45にて検出される温度上昇量(ΔUt)に予め設定した係数(A)を掛けて修正温度上昇量(A×ΔUt)を求める。そして、下部側温度センサ46にて検出される温度上昇量(ΔDt)から前記修正温度上昇量(A×ΔUt)を減算して補正温度上昇量(Δt)を求めるのである。尚、実際の計測値は、被加熱物Nの熱容量が定まると図18で示す各ライン上の一点にて定まる固定の値として求められることになる。図18から判るように、補正温度上昇量(Δt)は、前記小熱容量範囲P1並びに前記大熱容量範囲P2のいずれにおいても前記熱容量が大きいほど前記温度上昇量が小さい値として求められる。
次に、前記補正温度上昇量Δtを下記数2に代入して被加熱物の負荷量に相当する仮想負荷量情報Fgを算出する。但し、C,Dは実験データに基づいて予め設定される係数であり、設定される調理メニューや焼き加減の違い、並びに、点火初期温度THBOの違い等に応じて種々異なる値が設定される(図13〜図16参照)。又、ステップ102にて温度計測終了時間fが経過したときは、F=fとなり、ステップ102にて温度計測終了時間fが経過していなくても、上部側温度センサの検出値TH1が上限温度X2uに達する、又は、下部側温度センサの検出値TH2が上限温度X2dに達する場合には、その時点までの経過時間をf’とすると、F=f’となる。図12では、ステップ102にて温度計測終了時間fが経過した状態を示している。
すなわち、上記したように、前記補正温度上昇量Δtは、前記小熱容量範囲並びに前記大熱容量範囲のいずれにおいても前記熱容量が大きいほど前記温度上昇量が小さくなる値として求められることから、前記補正温度上昇量Δtを用いて演算式より被加熱物の熱容量に相当する仮想負荷量情報Fgを算出することが可能となるのである。
[数2]
Fg=(C×(F-e)/Δt+D)/10
次に、前記仮想負荷量情報Fg及び下記数3を用いて加熱を開始してから被加熱物に対する調理用の加熱を終了するまでの調理用加熱時間Txを求め、更に、下記数4を用いてグリルバーナ2に対する点火が行われて着火状態が検知されてからグリルバーナ2の加熱量を初期設定される設定加熱量から低めの低加熱量に切り替える切替タイミングに至るまでの経過時間である加熱量切替時間Tyを求める。但し、i、jは、実験データに基づいて予め設定される係数であり、設定される調理メニューや焼き加減の違いに応じて互いに異なる値が使用される。又、Eは、実験データに基づいて予め設定される係数であるが、設定される調理メニューや焼き加減の違い、並びに、点火初期温度THBOの違い等に応じて種々異なる値が設定される(図13〜図16参照)。そして、調理用加熱時間Txが予め定められた最大燃焼時間Txmaxを超えるときは、調理用加熱時間Txは最大燃焼時間Txmaxとする。
[数3]
Tx=Fg×i/1000+j
[数4]
Ty=E×Tx
前記各データTA1,TA2、TB1,TB2が検出されていない状態で、とりけしスイッチ51が操作されて自動調理運転の取り消しが指令されると、入力抑制状態が解除されてマニュアル調理運転に移行する(ステップ107、108)。取り消し指令がなく点消火スイッチ32の操作により消火が指令されると、入力抑制状態が解除されて消火処理を実行してからステップ2に戻る(ステップ109、110)。前記温度異常判別処理にて温度異常が発生している、具体的には、前記上部側温度センサ37の検出値TH1が320℃以上であること、下部側温度センサ38の検出値TH2が220℃以上であることのいずれかが検出されると、消火処理を実行した後に、ブザーBZを鳴らして報知して燃焼ランプ24を10回点滅させた後に処理を終了する(ステップ111〜114)。このときは上述したように異常状態であるからインターロック状態となり、以後の処理は受け付けない。
次に、上記したようにして求められた前記調理用加熱時間Txにより、被加熱物Nに対する加熱を終了するまでの残加熱時間を設定する(ステップ35)。この残加熱時間は、グリルバーナ2への着火が検知されてから現在までの経過時間を調理用加熱時間Txから差し引いた時間である。従って、この残加熱時間は時間の経過と共にカウントダウンされて徐々に短い時間となるものであり、この残加熱時間はタイマー表示部26にて表示する(ステップ36)。図11(ロ)には、タイマー表示部26に表示される残加熱時間が「5分」になったことを示している。
その後、上部側温度センサ45の検出値TH1が上限温度X2uに達すること、下部側温度センサ46の検出値TH2が上限温度X2dに達すること、及び、グリルバーナ2に対する点火が行われて着火状態が検知されてから加熱量切替時間Tyが経過することの少なくともいずれかの条件が成立すると、グリルバーナ2の火力を減少調整する火力切替処理を行う(ステップ37、38)。つまり、上部側温度センサ45の検出値TH1や下部側温度センサ46の検出値TH2が予め設定されている上限温度にまで上昇しない場合であっても、加熱量切替時間Tyが経過すると、前記低加熱量の一例として、上面バーナ2aと下面バーナ2b,2cの加熱量が共に弱火力になるように上面バーナ用の分岐路と下面バーナ用分岐路とに分岐した分岐路の夫々に備えられる開閉式電磁弁16を共に閉状態に切り換えるのである。このようにして、加熱量切替時間Tyが経過すると加熱量を低めに設定して被加熱物Nが焼け焦げたりするのを防止して良好な焼き具合になるようにしている。
又、調理用加熱時間Txが終了するまでの時間として設定されているタイマー時間が経過してタイマーがカウントアップすると、グリルバーナ2の消火処理を実行する(ステップ39、40)。つまり、元電磁弁12及び流量制御弁18を閉弁して、火力表示及び燃焼ランプ24を消灯させる。又、ブザーBZを鳴らして報知してタイマー表示部26に表示されている「00」の表示を10回点滅させたのちにステップ2にリターンする(ステップ41、42)。図11(ハ)に、このときの表示状態を示している。
タイマーがカウントアップするまでの間に、とりけしスイッチ31の操作により自動調理運転の取り消しが指令されると、入力抑制状態を解除してマニュアル調理運転に移行する(ステップ43、44)。マニュアル調理運転に移行した後は、火力切替スイッチ27の操作による火力の切り換え指令やタイマー設定スイッチ25の操作による加熱用のタイマー時間の増減調整等が可能となる。
タイマーがカウントアップせずに、とりけしスイッチ31の操作も無い状態で点消火スイッチ23がオン操作されて消火が指令されると、上述したような消火処理を実行してステップ2にリターンする(ステップ45、46)。前記温度異常判別処理にて温度異常が発生していると、消火処理を実行した後に、ブザーBZを鳴らして報知して燃焼ランプ24を10回点滅させた後に処理を終了する(ステップ47〜50)。
図17に、被加熱物として、丸あじ5匹、調理メニューとして「姿焼き」、焼き加減として「強め」に設定した状態で、上部側温度センサ45と下部側温度センサ46の検出値の時間経過に伴う変化について本出願人が計測した実測データを示している。つまり、上部側温度センサ45の計測結果を実線で示し、下部側温度センサ46の計測結果を破線で示している。又、そのときに用いた定数一覧表を図16に示している。ちなみに、このデータは、点火初期温度THBOが31℃の場合におけるデータである。
上記実測データにおける各温度検出データは、TB2=35℃、TB1=64℃、TA2=53℃、TA1=139℃である。そして、図16に記載される各種の定数を用いて演算すると、以下のようになる。
Δt=ΔDt-A×ΔUt-B
=(64−35)-0.2333×(139-53)-(-13.998)
=22.9342
Fg=(C×(F-e)/Δt+D)/10
=(978×(350-100)/22.9342+219)/10
=1088
Tx=Fg×i/1000+j
=1088×810/1000+320
=1201(秒)=20(分)1(秒)
Ty=E×Tx
=0.79495×1201
=955(秒)=15(分)55(秒)
図13〜図16に示すように、上記した各種の演算式に用いられる種々の定数は、本出願人が実験データ等に基づいて設定したものであるが、各種の調理メニューや焼き加減の違い、及び、点火初期温度の違い等に応じて設定される値である。従って、これらの図13〜図16に記載される複数の条件が調理メニューに応じて選択されることになる複数の算出用条件に対応することになる。但し、これらの図に示した数値はあくまでも例示であり、本発明はこれらの数値に限定されるものではない。
上部側温度センサ45及び下部側温度センサ46の設置位置は、上記したような位置に限定されるものではなく、被加熱物Nの予測される熱容量の変動範囲のうちで熱容量が小さい小熱容量範囲においては、被加熱物Nの熱容量の変化に対する温度上昇量の変化率が互いに同じ又は略同じ状態で被加熱物Nの熱容量が大きいほど前記温度上昇量が小さくなり、熱容量が大きい大熱容量範囲においては、被加熱物Nの熱容量の変化に対する前記温度上昇量の変化率が互いに異なる状態で被加熱物Nの熱容量が大きいほど前記温度上昇量が大きくなるような位置に分散配備されるものであればよく、設置位置は適宜変更可能である。
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
(1)上記実施形態では、前記制御手段が、加熱量切替時間が経過すると前記設定加熱量よりも低い低加熱量に変更する形態でグリルバーナの加熱量を制御する構成としたが、このような構成に代えて、調理用加熱時間が経過するまでの間は前記設定加熱量を維持する構成としてもよい。
(2)上記実施形態では、前記制御手段が、前記温度検出手段の検出情報と、複数の算出用条件のうち前記調理メニュー指令手段にて指令された調理メニューに応じて選択された算出用条件とに基づいて、前記調理用加熱時間を求めるように構成されるものを例示したが、調理メニューが変化しても算出用条件が常に同じ条件で前記調理用加熱時間を求める構成としてもよい。
(3)上記実施形態では、前記調理用加熱時間が経過するとグリルバーナによる加熱を自動停止させる構成としたが、このような構成に限らず、自動停止させることなく報知作動を行い使用者の操作にて加熱を停止させるように構成するものでもよい。
(4)上記実施形態では、前記加熱手段としてのグリルバーナにおける上面バーナ及び下面バーナが夫々強弱2段階に火力調整できる構成として、設定加熱量として上下共に強火力になるように調整され、低加熱量として上下共に弱火力になるように調整する構成とし
たが、このような構成に限らず、加熱量を調理メニューに応じて複数の段階に設定可能な構成として設定加熱量として調理メニューに応じた値に設定するようにして、低加熱量ではその設定加熱量よりも小さい加熱量に減少調整するように構成してもよい。
(5)上記実施形態では、ビルトイン形式のガスコンロに備えられたガス燃焼式のグリルを例示したが、このような構成に限らず、テーブル式コンロに備えられたグリルであってもよく、又、コンロに組みこまれたグリルに限らず、グリル単体として構成されるものであってもよい。又、ガス燃焼式に限らず、加熱手段としては、電気ヒータや電磁式加熱手段を用いるものでもよい。