上記従来構成においては、上記したような排ガス中の温度が加熱される被加熱物の雰囲気温度の情報を含むものであるから、その排ガス中の温度を温度検出手段にて検出して、加熱手段が加熱した後における温度上昇度合いから被加熱物の熱容量に応じて必要とされる加熱時間を求めるようにしているので被加熱物の熱容量に応じた加熱時間を設定することができるが、このような被加熱物の熱容量のみに基づいて加熱時間を設定するようにしても、次のような不利な面があった。
つまり、被加熱物の熱容量だけを判別するようにした場合であれば、被加熱物として小さめの魚を載置部に載置させて加熱するような場合に、例えば、図21に示すように、排気箇所から遠い箇所に魚を載置させて加熱するような場合と、図22に示すように、排気箇所に近い箇所に魚を載置させて加熱するような場合とを対比すると、被加熱物としての魚の熱容量が同じものであっても、被加熱物に対する焼き上げに必要な加熱時間が異なったものとなる。
説明を加えると、図22に示すように排気箇所に近い箇所に魚を載置させて加熱する場合には、加熱手段の排気箇所に近い加熱領域では被加熱物に加熱作用し、且つ、グリルバーナの排気箇所から遠い加熱領域における排ガスもまた、前記被加熱物が載置される領域を通過して排気されることから、被加熱物に対する加熱作用を充分に発揮することになるから加熱の効率が高いものになる。
これに比べて、図21に示すように、排気箇所から遠い箇所に魚を載置させて加熱する場合には、加熱手段の排気箇所から遠い加熱領域では被加熱物に加熱作用するが、グリルバーナの排気箇所に近い加熱領域における燃焼ガスは被加熱物に何ら作用することなくそのまま排気されることになる。従って、図22に示す加熱状態に比べて被加熱物に対する加熱の効率が低くなる。
又、上述したような被加熱物の載置位置が異なるものだけではなく、例えば、被加熱物全体としての熱容量は同じであっても、大型の魚を1匹焼く場合と、小さい魚を複数匹並べて載置部に敷き詰めて焼く場合とでは、上記したような載置位置が異なる場合と同様な加熱効率の差異が生じるおそれがある。
このように載置部に対する被加熱物の載置状態に違いがあれば、被加熱物に対する加熱の効率が異なるにもかかわらず、上記従来構成においては、被加熱物の熱容量が同じと判断されれば、載置部に対する被加熱物の載置状態に違いかかわらず常に同じ加熱時間が設定されるものとなるから、被加熱物に対する焼き上がり状態が載置部に対する被加熱物の載置状態の違いによって大きく異なることがあり、被加熱物に対する加熱時間の設定を適切に行うことができないものとなる不利があった。
本発明の目的は、被加熱物の熱容量の違い、並びに、載置部に対する被加熱物の載置状態の違いに対応して、被加熱物に対する適切な加熱時間を設定することが可能となるグリルを提供する点にある。
本発明の第1特徴構成は、グリル庫内に備えられた載置部に載置された被加熱物を加熱する加熱手段と、運転状態を制御する制御手段とが備えられたグリルであって、前記加熱手段による加熱を開始した後の初期において、前記載置部における被加熱物の載置状態の違いに応じて変化する温度上昇勾配、並びに、被加熱物の熱容量の違いに応じて変化する前記加熱手段による加熱を開始してから設定判別温度に上昇するまでの熱容量判別用経過時間を計測するための温度検出手段が備えられ、前記制御手段が、前記温度検出手段の検出情報に基づいて前記温度上昇勾配並びに前記熱容量判別用経過時間を求める判定用情報算出処理、及び、その判定用情報算出処理にて求めた前記温度上昇勾配並びに前記熱容量判別用経過時間の情報に基づいて、前記判定用情報算出処理を実行してから被加熱物に対する加熱を終了するまでの残加熱時間を設定する残加熱時間設定処理を実行するように構成されている点にある。
上記第1特徴構成によれば、前記制御手段が、前記温度検出手段の検出情報に基づいて、加熱手段による加熱を開始した後の初期において、載置部における被加熱物の載置状態の違いに応じて変化する温度上昇勾配、並びに、被加熱物の熱容量の違いに応じて変化する加熱手段による加熱を開始してから設定判別温度に上昇するまでの熱容量判別用経過時間を求める判定用情報算出処理を実行する。そして、その求めた温度上昇勾配並びに熱容量判別用経過時間の情報に基づいて、判定用情報算出処理を実行してから被加熱物に対する加熱を終了するまでの残加熱時間を設定する残加熱時間設定処理を実行するのである。つまり、前記残加熱時間として、被加熱物の熱容量並びに載置部に対する載置状態に対応した適切な時間が設定されることになる。
前記温度上昇勾配が前記載置部における被加熱物の載置状態の違いに応じて変化することについて説明を加えると、加熱手段の加熱を開始した初期においては、グリル庫内は温度が上昇していない状態であるが、載置部における排気箇所に近い箇所に被加熱物を載置していたり、排気箇所から遠い箇所に被加熱物を載置する等、載置部に載置される被加熱物の載置状態の違いに応じて加熱された空気の流動状態が異なるので、それに応じて温度上昇勾配が異なるので、その変化を検出するのである。
そして、前記残加熱時間が経過した後に加熱手段による加熱を終了させるようにすると、加熱手段による加熱を開始してから判定用情報算出処理を実行するまでの経過時間と前記残加熱時間とを合せた時間が経過する間、被加熱物に対する調理用の加熱が行われることになり、適切な焼き上がり状態とすることが可能となる。
つまり、前記温度検出手段の検出情報に基づいて、被加熱物の熱容量に対応する情報だけでなく、載置部における被加熱物の載置状態に対応する情報を得ることができ、被加熱物の熱容量の違い、並びに、載置部に対する被加熱物の載置状態の違いに対応して、判定用情報算出処理を実行してから被加熱物に対する加熱を終了するまでの残加熱時間として被加熱物に対する適切な時間を設定することが可能となるのである。
従って、被加熱物の熱容量の違い、並びに、載置部に対する被加熱物の載置状態の違いに対応して、被加熱物に対する適切な加熱時間を設定することが可能となるグリルを提供できるに至った。
また、本発明の第1特徴構成は、前記温度検出手段として、前記温度上昇勾配を検出するための温度勾配検出用の温度センサと、前記熱容量判別用経過時間を検出するための熱容量判別用の温度センサとを夫々備えて構成されている点にある。
上記第1特徴構成によれば、前記温度検出手段として、前記温度上昇勾配を検出するための温度勾配検出用の温度センサと、前記熱容量判別用経過時間を検出するための熱容量判別用の温度センサとを夫々備えているので、温度勾配検出用の温度センサを温度上昇勾配を検出するのに好適な箇所に配置させることで精度よく温度上昇勾配を検出することが可能となり、熱容量判別用の温度センサについても熱容量判別用経過時間を検出するのに好適な箇所に配置させることで精度よく熱容量判別用経過時間を検出することが可能となる。
従って、温度勾配検出用の温度センサと熱容量判別用の温度センサとを各別に設けることから、前記温度上昇勾配並びに前記熱容量判別用経過時間を精度よく検出することが可能となる。
また、本発明の第1特徴構成は、前記制御手段が、前記残加熱時間設定処理として、前記判定用情報算出処理にて求められた前記熱容量判別用経過時間と前記温度上昇勾配との比率を求めて、その求めた比率に基づいて前記残加熱時間を設定するように構成されている点にある。
上記第1特徴構成によれば、前記熱容量判別用経過時間と前記温度上昇勾配との比率を求めて、その求めた比率に基づいて残加熱時間を設定するようにしている。このように比率に基づいて残加熱時間を設定すると、例えば、前記熱容量判別用経過時間と前記温度上昇勾配とから各別に加熱用の時間を求めてそれらの平均値を求めるといった複雑な処理を必要とせず、比率を求めるという簡単な処理によって適切な残加熱時間を求めることができる。
また、本発明の第1特徴構成は、前記熱容量判別用経過時間と前記温度上昇勾配との比率が大きいほど長くする状態で、且つ、設定上限値を越えない状態で、前記残加熱時間を設定するように構成されている点にある。
上記第1特徴構成によれば、前記熱容量判別用経過時間が長いほど被加熱物の熱容量が大きいと考えられ、前記温度上昇勾配が大きいほど載置部上での被加熱物の載置面積が少ないか又は加熱手段による加熱が無駄になっているような載置状態になっていると考えることができる。又、前記熱容量判別用経過時間や前記温度上昇勾配について誤検出が発生していると、前記比率に基づいて設定された残加熱時間が不必要に長くなるおそれがあるが、このようなときでも、被加熱物を加熱するときの加熱時間としては、予め設定した設定上限値を越えない程度に抑制する必要がある。
そして、前記熱容量判別用経過時間と前記温度上昇勾配との比率が大きいほど長くする状態で、且つ、設定上限値を越えない状態で、残加熱時間を設定する構成としている。つまり、熱容量判別用経過時間が長いほど、熱容量が大きく、しかも、温度上昇勾配の逆数が大きいほど、被加熱物の載置面積が広く、匹数が多いと考えられるので、残加熱時間を長く設定することで充分に加熱することができ、逆に、比率が小さいほど残加熱時間を短く設定することで加熱し過ぎることによる焼け焦げ等の不利を回避でき、被加熱物の状況に応じた適切な加熱を行うことができる。
本発明の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、前記加熱手段が加熱量を変更調整自在に構成され、前記制御手段が、前記熱容量判別用の温度センサの検出温度が加熱量調整用の設定温度を超えると、前記加熱手段の加熱量を減少させるように構成されている点にある。
上記第2特徴構成によれば、熱容量判別用の温度センサの検出温度が加熱量調整用の設定温度を超える程高くなったような場合には、そのまま加熱を継続すると、グリル庫内の温度が高くなり過ぎて焼け焦げを起こすおそれがあるが、検出温度が加熱量調整用の設定温度を超えると、前記加熱手段の加熱量を減少させることによって、このような焼け焦げを起こすといった不利の無い状態で適切な加熱を行うことができる。
本発明の第3特徴構成は、上記第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記判定用情報算出処理として、前記加熱手段による加熱を開始したときの前記熱容量判別用の温度センサの検出温度が基準温度より低ければ、前記加熱手段による加熱を開始したときの前記熱容量判別用の温度センサの検出温度と前記基準温度との差が大きいほど短くなるように、前記熱容量判別用経過時間を補正するように構成され、
前記加熱手段による加熱を開始したときの前記熱容量判別用の温度センサの検出温度が基準温度より高ければ、前記加熱手段による加熱を開始したときの前記熱容量判別用の温度センサの検出温度と前記基準温度との差が大きいほど長くなるように、前記熱容量判別用経過時間を補正するように構成されている点にある。
上記第3特徴構成によれば、加熱手段による加熱を開始したときの前記熱容量判別用の温度センサの検出温度が基準温度より低い場合には、加熱手段による加熱を開始しても被加熱物を調理加熱するのに必要な温度に上昇するまでに時間がかかるので、加熱手段による加熱を開始してから設定判別温度に上昇するまでの熱容量判別用経過時間を計測する場合にその計測される時間が長くなり過ぎるおそれがある。そこで、熱容量判別用の温度センサの検出温度と基準温度との差が大きいほど短くなるように前記熱容量判別用経過時間を適正な値に補正するのである。
又、加熱手段による加熱を開始したときの熱容量判別用の温度センサの検出温度が基準温度より高い場合には、逆に加熱手段による加熱を開始したときには温度が高くなっているから加熱手段による加熱を開始してから設定判別温度に上昇するまでの熱容量判別用経過時間を計測する場合にその計測される時間が短くなり過ぎるおそれがある。そこで、熱容量判別用の温度センサの検出温度と基準温度との差が大きいほど長くなるように熱容量判別用経過時間を適正な値に補正するのである。
従って、外部の環境温度の違いに影響を受け難い状態で常に適正な熱容量判別用経過時間を求めることができ、被加熱物に対する残加熱時間を適正な値として設定することが可能となる。
本発明の第4特徴構成は、上記第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、前記制御手段が、前記残加熱時間設定処理として、前記加熱手段による加熱を開始したときの前記熱容量判別用の温度センサの検出温度が基準温度より低ければ、前記加熱手段による加熱を開始したときの前記熱容量判別用の温度センサの検出温度と前記基準温度との差が大きいほど短くなるように、前記残加熱時間を補正するように構成され、前記加熱手段による加熱を開始したときの前記熱容量判別用の温度センサの検出温度が基準温度より高ければ、前記加熱手段による加熱を開始したときの前記熱容量判別用の温度センサの検出温度と前記基準温度との差が大きいほど長くなるように、前記残加熱時間を補正するように構成されている点にある。
上記第4特徴構成によれば、加熱手段による加熱を開始したときの前記熱容量判別用の温度センサの検出温度が基準温度より低い場合には、加熱手段による加熱を開始しても被加熱物を調理加熱するのに必要な温度に上昇するまでに時間がかかるので、加熱手段による加熱を開始してから設定判別温度に上昇するまでの熱容量判別用経過時間が長くなる。その結果、被加熱物における熱容量が実際の熱容量より大きいものと誤判別して残加熱時間が長くなり過ぎるおそれがある。そこで、熱容量判別用の温度センサの検出温度と基準温度との差が大きいほど短くなるように前記残加熱時間を適正な値に補正するのである。
又、加熱手段による加熱を開始したときの熱容量判別用の温度センサの検出温度が基準温度より高い場合には、逆に加熱手段による加熱を開始したときには温度が高くなっているから加熱手段による加熱を開始してから設定判別温度に上昇するまでの熱容量判別用経過時間が短くなる。その結果、被加熱物における熱容量が実際の熱容量より小さいと誤判別して残加熱時間が短くなり過ぎるおそれがある。そこで、熱容量判別用の温度センサの検出温度と基準温度との差が大きいほど短くなるように前記残加熱時間を適正な値に補正するのである。このように残加熱時間を補正することによって、外部温度の違いによって計測誤差が大きくなることを回避しながら適正な残加熱時間を設定することができる。
以下、本発明に係るグリルの実施形態をグリル付きガスコンロに適用した場合について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、このガスコンロは、3つのコンロバーナ1a,1b,1c、および、加熱手段としてのグリルバーナ2を備えたグリル部3からなるビルトインタイプのガスコンロにて構成されている。3つのコンロバーナ1a,1b,1cは標準バーナ1aと、小バーナ1bと、高火力バーナ1cとによって構成されている。そして、グリル部3の燃焼排ガスを排気するためのグリル排気口4が形成され、トッププレート5にてガスコンロ上面が覆われており、このトッププレート5の上部に鍋等を受け止め支持するための五徳6が載置支持されている。また、ガスコンロ前側面には各コンロバーナ1a,1b,1c及びグリルバーナ2の点火及び消火や火力調節を指令する手動操作部Sが設けられている。又、このガスコンロは、マイクロコンピュータを備えて各種の制御を実行するように構成された運転状態を制御する制御手段としての制御部Hが手動操作部Sにて指令された運転状態に基づいて、コンロバーナ1a,1b,1cおよびグリルバーナ2を制御するように構成されている。又、ガスコンロ前側面には押し操作式の電源スイッチ9も設けられている。
図2に示すように、3つのコンロバーナ1a,1b,1cの夫々には、点火手段としての点火器7及び着火状態を検出する熱電対8が設けられており、グリルバーナ2は上面バーナ2aと左右一対の下面バーナ2b,2cとを備えた両面バーナにて構成されて、上面バーナ2a及び左右一対の下面バーナ2b,2cの夫々にも点火器7及び熱電対8が夫々備えられている。又、左側に位置する標準バーナ1aには、五徳6にて載置支持された被加熱物の底面部に接触して被加熱物の温度を検出する温度センサ10が設けられている。
前記3つのコンロバーナ1a,1b,1cおよびグリルバーナ2へのガス供給構成について説明すると、元ガス供給路11には元電磁弁12が設けられ、元ガス供給路11から、標準バーナ用分岐路13a、小バーナ用分岐路13b、高火力バーナ用分岐路13c、グリルバーナ用分岐路13dの4系統に分岐しており、標準バーナ用分岐路13a、小バーナ用分岐路13b、高火力バーナ用分岐路13c、及び、グリルバーナ用分岐路13dの夫々には、ステッピングモータの駆動によって燃料ガスの流量を調整して加熱量を調整するための流量制御弁18が備えられている。
そして、グリルバーナ2へのグリルバーナ用分岐路13dは、さらに、上面バーナ用の分岐路と下面バーナ用分岐路とに分岐し、それらの分岐路には夫々、オリフィスof付きの流路15と開閉式電磁弁16を備えたバイパス路17とが設けられている。つまり、前記開閉式電磁弁16を開状態にすることで上面バーナ2a又は左右一対の下面バーナ2b,2cが強火力に調整され、前記開閉式電磁弁16を閉状態にすることで上面バーナ2a又は左右一対の下面バーナ2b,2cが弱火力に調整されることになる。尚、図示はしないが、グリルバーナ用分岐路13dには、元電磁弁12と流量制御弁18の間にガスガバナを設けて、ガス量の安定を図っている。
次に、前記手動操作部Sの構成について説明する。ガスコンロ前側面19には、手動操作部Sとして、標準バーナ1a、小バーナ1b及び高火力バーナ1cの夫々に対して各別に点火及び消火や火力調節を指令するための3つの加熱状態調節部20と、調理の設定を指令する設定入力パネル21と、グリルバーナ2に対して点火及び消火や火力調整を指令するためのグリル用の設定入力パネル22とが設けられている。
図3に示すように、グリル用の設定入力パネル22は、押し操作式のスイッチにて構成されて押し操作する毎にグリルバーナ2に点火を指令するオン状態と消火を指令するオフ状態とに切り換わる点消火スイッチ23、グリルバーナが燃焼すると点灯し消火すると消灯する燃焼ランプ24、加熱用のタイマー時間を増減設定するためのタイマー設定スイッチ25、設定されるタイマー時間を表示するタイマー表示部26、上面バーナ2aと下面バーナ2b,2cの加熱量を切り替えるための火力切替スイッチ27、上面バーナ2aと下面バーナ2b,2c夫々の火力の状態が弱火力であることを示す弱表示部28aと強火力であることを示す強表示部28bとからなる火力表示部28、調理される被加熱物についてのメニューの違いに応じて燃焼状態を切り替えるメニュー切替スイッチ29、焼き加減を調整する焼き加減調整スイッチ30、後述するような自動加熱運転を取り消す為のとりけしスイッチ31等が設けられている。前記メニュー切替スイッチ29により切り替えられるメニューとしては、「姿焼き」「切身」「干物」があり、そのうち選択されたものをLEDランプにて示すメニュー表示部29aが設けられている。焼き加減についても同様に「弱め」「標準」「強め」の3段階に調節できるようになっているが、そのうち選択されたものをLEDランプにて示す焼き加減表示部30aが設けられている。そして、調理するときの具体的なメニュー表が図5に示すように別途用意されており、使用者はこのメニュー表を調理内容の目安として設定することになる。
図4に示すように、前記グリル部3は、前面部が開口されかつ後面部が閉塞された箱状に形成されたグリル庫32内に、被加熱物を載置させる載置部としての焼き網33を設けて、その被加熱物をグリルバーナ2にて加熱するように構成されている。前記グリル庫の後方側には、グリルバーナ2の燃焼排ガスを機外に排気させる排気路34が上方側に延びる状態で連設され、その排気路34にてグリルバーナ2の燃焼排ガスをグリル排気口4に導くように構成されている。ちなみに、グリルバーナ2の二次空気は、グリル庫32の前面部側箇所及び底面部に形成された通気孔を通して取り入れるようにして、この二次空気の流動により、後述する汁受皿35を冷却させるように構成されている。
そして、焼き網33の下方には、魚などの被加熱物からの油などを受け止める汁受皿35が設けられ、汁受皿35は、図示はしないが、グリル庫32の側壁部に設けられたガイドの案内により、焼き網33を載置した状態で、グリル庫32に対して、収納移動可能でかつ取り出し移動可能に構成されている。また、汁受皿35の前面部には、汁受皿35をグリル庫32内に収納したときに、グリル庫32の前面部を閉塞する把手付きの扉36が設けられている。そして、使用者は、把手にて扉36を開閉させることにより、汁受皿35と焼き網33をグリル庫32に対して収納移動および取り出し移動させるように構成されている。
そして、このグリルには、グリルバーナ2による加熱を開始した後の初期において、焼き網33における被加熱物の載置状態の違いに応じて変化する温度上昇勾配、並びに、被加熱物の熱容量の違いに応じて変化するグリルバーナ2による加熱を開始してから設定判別温度に上昇するまでの熱容量判別用経過時間を計測するための温度検出手段Kが備えられ、制御部Hが、温度検出手段Kの検出情報に基づいて温度上昇勾配並びに熱容量判別用経過時間を求める判定用情報算出処理、及び、その判定用情報算出処理にて求めた前記温度上昇勾配並びに前記熱容量判別用経過時間の情報に基づいて、前記判定用情報算出処理を実行してから被加熱物に対する加熱を終了するまでの残加熱時間を設定する残加熱時間設定処理を実行するように構成されている。
そして、前記温度検出手段Kとして、前記熱容量判別用経過時間を検出するための熱容量判別用の温度センサとしての排ガス温度センサ37と、前記温度上昇勾配を検出するための温度勾配検出用の温度センサとしての庫内温度センサ38とを夫々備えて構成されている。具体的に説明すると、図4に示すように、前記グリル庫32内における焼き網33の高さよりも少し高い位置であって且つ上面バーナ2a及び左右一対の下面バーナ2b,2cの夫々の燃焼排気ガスが流動して排気路34を通して排出される箇所に排ガス温度センサ37が設けられている。この排ガス温度センサ37の直上方箇所には塵埃の降り掛かりを防止するための防塵板39が設けられ、その防塵板39よりも上方側で庫内内方側によった箇所には排ガスの流れの一部を排ガス温度センサ37に向けて案内する案内板40が設けられている。この排ガス温度センサ37が設けられる位置は、上面バーナ2a及び左右一対の下面バーナ2b,2cの夫々の燃焼排気ガスが流動する箇所であり、加熱を開始してから設定判別温度に上昇するまでの熱容量判別用経過時間の変化が被加熱物の熱負荷の大きさに応じて異なる箇所である。
又、排ガス温度センサ37よりの下方側箇所には、排ガス温度センサ37とは別に、グリル庫32内における焼き網33よりも少し低い位置であって主に下面バーナ2b,2cの夫々の燃焼排気ガスが流動する箇所に庫内温度センサ38が設けられている。尚、この庫内温度センサ38の焼き網33側箇所には被加熱物の下方側を流動する空気の流れを庫内温度センサ38に案内するための案内板41が設けられている。この庫内温度センサ38が設けられる位置は、焼き網33に載置される被加熱物の載置状態の違いによって温度上昇勾配が異なる箇所である。
前記制御部Hが、前記残加熱時間設定処理として、前記判定用情報算出処理にて求められた前記熱容量判別用経過時間と前記温度上昇勾配との比率を求めて、その求めた比率に基づいて前記残加熱時間を設定するように構成され、前記熱容量判別用経過時間と前記温度上昇勾配との比率が大きいほど長くする状態で、且つ、設定上限値を越えない状態で、前記残加熱時間を設定するように構成されている。
前記制御部Hが、前記排ガス温度センサ37の検出温度が加熱量調整用の設定温度を超えるとグリルバーナ2の加熱量を減少させるように構成されている。
又、制御部Hは、判定用情報算出処理として、グリルバーナ2による加熱を開始したときの排ガス温度センサ37の検出温度が基準温度より低ければ、グリルバーナ2による加熱を開始したときの排ガス温度センサ37の検出温度と前記基準温度との差が大きいほど短くなるように、前記熱容量判別用経過時間を補正するように構成され、グリルバーナ2による加熱を開始したときの排ガス温度センサ37の検出温度が基準温度より高ければ、グリルバーナ2による加熱を開始したときの排ガス温度センサ37の検出温度と基準温度との差が大きいほど長くなるように、前記熱容量判別用経過時間を補正するように構成されている。
更に、制御部Hは、前記残加熱時間設定処理として、グリルバーナ2による加熱を開始したときの排ガス温度センサ37の検出温度が基準温度より低ければ、グリルバーナ2による加熱を開始したときの排ガス温度センサ37の検出温度と基準温度との差が大きいほど短くなるように、前記残加熱時間を補正するように構成され、グリルバーナ2による加熱を開始したときの排ガス温度センサ37の検出温度が基準温度より高ければ、グリルバーナ2による加熱を開始したときの排ガス温度センサ37の検出温度と前記基準温度との差が大きいほど長くなるように、前記残加熱時間を補正するように構成されている。
以下、制御フローチャートに基づいてグリルバーナ2に対する制御部Hの動作について説明を加える。
図6に示すように、前記制御部Hは、電源スイッチ9がオン操作された後に点消火スイッチ23がオン操作されるとマニュアル調理運転を実行する(ステップ1、2)。このマニュアル運転について図7のフローチャートに基づいて説明を加えると、先ず、グリルバーナ2に対する点火処理を実行する(ステップ3)。具体的には、点火器7による点火を開始させた後に、元電磁弁12及び流量制御弁18を開弁させてグリルバーナ2に着火させ、熱電対8により着火が確認されると点火器7の動作を停止して燃焼ランプ24を点灯させる。運転開始時には、グリルバーナ2の火力は、上面バーナ2aと下面バーナ2b,2cの加熱量が共に強火力になるように初期設定されることになる。尚、設定時間内に熱電対8により着火が確認されなければ不着火エラーとして元電磁弁12及び流量制御弁18を閉弁して報知処理する。
グリルバーナ2が点火した後には、前記各温度センサ37、38の検出情報に基づいて、グリル庫32内の温度が異常になっているか否かを判別する(ステップ4)。具体的に説明すると、前記排ガス温度センサ37の検出値が140℃以上であり温度上昇勾配が急激であること、前記排ガス温度センサ37の検出値が185℃以上であること、庫内温度センサ38の検出値が190℃以上であることのいずれかが検出されると異常高温状態であると判別する。次に、タイマー表示部26に予め標準的な調理時間として初期設定される調理時間(例えば、9分)及び標準的な火力、つまり、上面バーナ2a及び左右一対の下面バーナ2b,2cが共に強火力に設定されている状態を表示する(ステップ5)。そして、火力の切替指令があればその指令された内容に従って火力を切り替え、且つ、火力表示部28における表示状態を切り替える(ステップ6、7、8)。又、タイマー時間の変更指令があればその指令された内容に従ってタイマー時間を変更し、且つ、表示状態を変更する(ステップ9、10、11)。
そして、設定されているタイマー時間が経過してタイマーがカウントアップすると、グリルバーナ2の消火処理を実行する(ステップ12、13)。つまり、元電磁弁12及び流量制御弁18を閉弁して、火力表示部28及び燃焼ランプ24を消灯させる。又、制御部Hに接続された音声報知用のブザーBZを鳴らして報知してタイマー表示部26に表示されている「00」の表示を10回点滅させたのちにステップ2にリターンする(ステップ14、15)。タイマーがカウントアップするまでに、点消火スイッチ23がオン操作されて消火が指令されると上述したような消火処理を実行してステップ2にリターンする(ステップ16、17)。前記温度異常判別処理にて温度異常が発生していると、消火処理を実行した後に、ブザーBZを鳴らして報知して燃焼ランプ24を10回点滅させた後に処理を終了する(ステップ18〜21)。このときは異常状態であるから、インターロック状態となり、以後の処理は受け付けない。この場合はサービスマン等によるメンテナンス作業が必要となる。
そして、図6に示すように、前記電源スイッチ9がオン操作されたのちに点火指令が指令されずにメニュー切替スイッチ29又は焼き加減調整スイッチ30の少なくともいずれかが操作され、排ガス温度センサ37の検出値が制御動作可能な範囲内(―5℃〜100℃の範囲内)にあれば、そのときの排ガス温度センサ37の検出値TH1をグリルバーナ2が加熱を開始したときの検出温度すなわち点火初期温度tboとして検出して記憶し(ステップ22,23,24)、点火が指令されると自動調理運転を実行することになる(ステップ25)。尚、電源スイッチ9がオン操作されてから3分間が経過してもいずれのスイッチも操作されず入力操作がないときには電源を自動でオフして制御を終了する(ステップ27、28、29)。又、検出温度が制御動作可能な範囲内になければ、ブザーBZを鳴らして警告音を発生させてステップ2に戻る(ステップ26)。
次に、図8のフローチャートに基づいて自動調理運転について説明する。
この自動調理運転においては、先ず、マニュアル調理運転のときと同様にグリルバーナ2に対する点火処理を実行し(ステップ30)、図12(イ)に示すようにタイマー表示部26にて自動調理運転状態であることを示す「AU」を表示する(ステップ31)。そして、前記メニュー切替スイッチ29、焼き加減調整スイッチ30、タイマー設定スイッチ25等による切り替え操作のための入力の受け付けを抑制する入力抑制状態に切り替える(ステップ32)。従って、この自動調理運転が行われている間は、これらの操作により入力は行えない状態となる。但し、とりけしスイッチ31の操作による自動調理運転の取り消し指令は入力可能である。
そして、マニュアル調理運転のステップ4と同様な温度異常判別処理(ステップ33)を実行した後に判定用情報算出処理を実行する(ステップ34)。この判定用情報算出処理について、図9のフローチャートに基づいて説明する。すなわち、グリルバーナ2に対する点火が行われて加熱が開始されてから100秒経過すると、そのときの庫内温度センサ38の検出値を第1検出値TB1として検出し(ステップ100、101)、グリルバーナ2に対する点火が行われて加熱が開始されてから160秒経過すると、そのときの庫内温度センサ38の検出値を第2検出値TB2として検出する(ステップ102、103)。そして、排ガス温度センサ37の検出値が設定判別温度としての第1監視温度X1(例えば、140℃)に達すると、加熱を開始してからその第1監視温度X1に到達するまでに要した経過時間を熱容量判別用経過時間Toとして算出する(ステップ104、105)。
但し、このとき、前記グリルバーナ2による加熱を開始したときの排ガス温度センサ37の検出温度、つまり、ステップ24にて検出された点火初期温度tboが基準温度tbs(例えば、25℃)より低ければ、点火初期温度tboと基準温度tbsとの差が大きいほど短くなるように、熱容量判別用経過時間Toを補正し、点火初期温度tboが基準温度tbsより高ければ、点火初期温度tboと基準温度tbsとの差が大きいほど長くなるように、熱容量判別用経過時間Toを補正するように構成されている。
説明を加えると、図13(イ)に、点火初期温度tboが基準温度tbsより低い場合の例として、点火初期温度tboが10℃の場合の排ガス温度センサ37の検出温度の時間経過に伴う変化を示している。この場合には、グリルバーナ2の加熱を開始した時点から排ガス温度センサ37の検出温度が第1監視温度X1(図13に示す例では140℃)に上昇するまでの経過時間をY1とし、グリルバーナ2の加熱を開始した時点から排ガス温度センサ37の検出温度が基準温度tbsまで上昇するまでの経過時間をYAとすると、熱容量判別用経過時間Toは、下記数1により求めるようにしている。つまり、点火初期温度tboと基準温度tbsとの差が大きいほど短くなるように熱容量判別用経過時間Toが補正されることになる。
[数1]
To=Y1−YA
又、図13(ロ)に、点火初期温度tboが基準温度tbsより高い場合の例として、点火初期温度tboが40℃の場合の排ガス温度センサ37の検出温度の時間経過に伴う変化を示している。この場合には、下記数2に示すように、グリルバーナ2の加熱を開始した時点から排ガス温度センサ37の検出温度が第1監視温度X1(140℃)に上昇するまでの経過時間Y1に対して点火初期温度tboと基準温度tbsとの差Δtbから求めた補正値dTを加算して熱容量判別用経過時間Toを求める構成としている。前記補正値dTは数3により求めることになる。つまり、点火初期温度tboと基準温度tbsとの差が大きいほど長くなるように熱容量判別用経過時間Toが補正されることになる。
[数2]
To=Y1+dT
[数3]
dT=D・Δtb2+E・Δtb
但し、D,Eは実験により求めた定数であり、D=0.03、E=0.69
グリルバーナ2の加熱を開始した時点から最大計測時間Tomaxが経過しても排ガス温度センサ37の検出温度が第1監視温度X1に到達しない場合には、最大計測時間Tomaxを熱容量判別用経過時間Toとして設定するようになっている。つまり、何らかの不具合で温度が計測できない場合であっても調理時間が不必要に長くなることを回避するようにしている。
上述したような第1検出値TB1、第2検出値TB2、及び、熱容量判別用経過時間Toの夫々が全て検出されて判定用算定処理が可能か否かが判断され、全てのデータが検出されて判定用算定処理が可能であれば、前記各データを用いて判定用情報を算出する(ステップ106、107)。具体的に説明すると、先ず、下記数4に示す演算式にて加熱が開始されてから100秒経過した時点から160秒経過するまでの間の庫内温度センサ38による検出温度の温度上昇勾配αを求める。そして、前記熱容量判別用経過時間Toと前記温度上昇勾配αとの比率を前記判定用情報として算出するのである。前記温度上昇勾配αを求める場合に、演算結果が予め設定した下限値(例えば零)を下回るような結果が出た場合には、温度上昇勾配αを下限値に設定するようにしている。このようにして、何らかの不具合で温度が計測できない場合であっても調理時間が不必要に長くなることを回避するようにしている。
[数4]
α=(TB2−TB1)/(160−100)
前記各データTB1,TB2、Toが検出されていない状態で、とりけしスイッチ51が操作されて取り消しが指令されると、入力抑制状態が解除されてマニュアル調理運転に移行する(ステップ108、109)。取り消し指令がなく点消火スイッチ32の操作により消火が指令されると消火処理を実行してステップ2に戻る(ステップ110、111)。前記温度異常判別処理にて温度異常が発生していると、消火処理を実行した後に、ブザーBZを鳴らして報知して燃焼ランプ24を10回点滅させた後に処理を終了する(ステップ112〜115)。このときは上述したように異常状態であるからインターロック状態となり、以後の処理は受け付けない。
次に、前記判定用情報として算出された熱容量判別用経過時間Toと温度上昇勾配αとの比率(To/α)に基づいて、前記判定用情報算出処理を実行してから被加熱物に対する加熱を終了するまでの残加熱時間を設定する残加熱時間設定処理を実行する(ステップ35)。この残加熱時間設定処理について説明すると、残加熱時間TMは、下記数5に記載される演算式に基づいて求める構成となっている。但し、前記比率(To/α)が予め調理条件毎に定められた値Cよりも大きい場合には、数5における(To/α)はCに置き換えて計算する。又、係数A,Bについても前記値Cと同様に、本出願人による実験データに基づいて予め調理条件毎に定めた所定の値である(図11参照)。
[数5]
TM=A・(To/α)+B
上記したような演算式により残加熱時間TMが計算されるが、ステップ24にて検出された点火初期温度tboが基準温度tbsより高い場合には、このようにして計算して求めた値に対して更に長くするように補正を加えるようにしている。つまり、上記したような演算式により求めた値に対して、上記数3で求めた補正値dTに係数(1.3)を掛けた値(dT×1.3)を加算して最終的な残加熱時間TMとして求める構成となっている。従って、点火初期温度tboと基準温度tbsとの差が大きいほど長くなるように残加熱時間が補正されることになる。
図10には、調理条件として「姿焼き」で「標準」の焼き加減を設定した場合の前記比率(To/α)と残加熱時間TMとの関係をグラフで示している。この図から明らかなように、熱容量判別用経過時間Toと温度上昇勾配αとの比率(To/α)が大きいほど長くする状態で、且つ、設定上限値TMmax(図10に示す例では300秒)を越えない状態で、前記残加熱時間TMを設定する構成となっている。
上述したように、グリルバーナ2の加熱を開始した時点から判定用情報算出処理が行われるまでの間の熱容量判別用経過時間Toとしては最大計測時間Tomaxを越えることはないが、この熱容量判別用経過時間Toとして最大計測時間Tomaxが設定されたときに、求められた残加熱時間TMと前記最大計測時間Tomaxとを合せた合計の調理時間が、調理条件毎に予め設定されている最大燃焼時間(図11参照)を越える場合には、合計時間がこの最大燃焼時間が越えない状態で残加熱時間TMが設定されることになる。
図14〜図16に本出願人の実験に基づく実測データを示している。このうち図14は被加熱物として、さんまを1匹だけ焼き網33の上に載置させた状態でグリルバーナ2を加熱させてから後の排ガス温度センサ37と庫内温度センサ38の検出値の時間経過に伴う変化を示すグラフである。図中の太線が排ガス温度センサ37に対応するデータであり、細線が庫内温度センサ38に対応するデータである。又、図15は、被加熱物として、さばの切身を1切だけ焼き網33の上に載置させた状態でグリルバーナ2を加熱したときの各センサ37、38の検出値の時間経過に伴う変化を示すグラフであり、図16は、被加熱物として4匹のさんまを焼き網33の上に載置させた状態でグリルバーナ2を加熱したときの各センサ37、38の検出値の時間経過に伴う変化を示すグラフである。ちなみに外気温度はいずれも約25℃である。
これらのデータから明らかなように、さんまを1匹だけ加熱する場合と、さばの切身を1切だけ加熱する場合には温度上昇勾配αは共に0.2となっているが、4匹のさんまを加熱する場合には温度上昇勾配αは0.15となっており、焼き網33上での被加熱物の載置状態の違いによって温度上昇勾配αが異なる値となっている。又、さんまとさばの切身とは調理条件が異なるが、さばの切身を1切加熱するときと、さんまを1匹だけ加熱するときとでは、温度上昇勾配αは同じであるが熱容量が異なっている。
図17には、ぶりの照り焼き以外のものを対象として、複数の被加熱物についての実測値に基づいて求めた熱容量判別用経過時間To、温度上昇勾配α、それの比率(To/α)のデータを示しており、図18には、それらのデータと被加熱物の重量との関係をグラフとして表している。尚、図中の式は最小自乗法により求めた直線近似式とその決定係数R2を示している。又、図19には、ぶりの照り焼きを対象として、複数の被加熱物についての実測値に基づいて求めた熱容量判別用経過時間To、温度上昇勾配α、それの比率(To/α)のデータを示しており、図20には、それらのデータと被加熱物の重量との関係をグラフとして表している。尚、図中の式は最小自乗法により求めた直線近似式とその決定係数R2を示している。
上述したような残加熱時間TMが設定されるとタイマー表示部26に残加熱時間TMを表示して、タイマーにて計時しながら時間経過に伴ってタイマー表示部26に表示される残加熱時間TMをカウントダウンさせる(ステップ36)。図12(ロ)にタイマー表示部26に表示される残加熱時間が5分になったことを示している。
その後、排ガス温度センサ37の検出値TH1が加熱量調整用の設定温度としての第2監視温度X2以上になったことが検出されると、グリルバーナ2の火力を減少調整する火力切替処理を行う(ステップ37、38)。つまり、上面バーナ2aと下面バーナ2b,2cの加熱量を共に弱火力になるように、上面バーナ用の分岐路と下面バーナ用分岐路とに分岐した分岐路の夫々に備えられる開閉式電磁弁16を共に閉状態に切り換えるのである。このようにして、グリル庫32内の温度が高くなり過ぎて被加熱物が焼け焦げたりするのを防止している。前記第2監視温度X2は、図11に示すように調理条件毎に予め設定されるものである。
残加熱時間TMとして設定されているタイマー時間が経過してタイマーがカウントアップすると、グリルバーナ2の消火処理を実行する(ステップ39,40)。つまり、元電磁弁12及び流量制御弁18を閉弁して、火力表示及び燃焼ランプ24を消灯させる。又、ブザーBZを鳴らして報知してタイマー表示部26に表示されている「00」の表示を10回点滅させたのちにステップ2にリターンする(ステップ41,42)。図12(ハ)に、このときの表示状態を示している。
タイマーがカウントアップするまでの間に、とりけしスイッチ31の操作により自動調理運転の取り消しが指令されると、入力抑制状態を解除してマニュアル調理運転に移行する(ステップ43,44)。マニュアル調理運転に移行した後は、火力切替スイッチ27の操作による火力の切り換え指令やタイマー設定スイッチ25の操作による加熱用のタイマー時間の増減調整等が可能となる。
タイマーがカウントアップせずにとりけしスイッチの操作も無い状態で点消火スイッチ23がオン操作されて消火が指令されると、上述したような消火処理を実行してステップ2にリターンする(ステップ45,46)。前記温度異常判別処理にて温度異常が発生していると、消火処理を実行した後に、ブザーBZを鳴らして報知して燃焼ランプ24を10回点滅させた後に処理を終了する(ステップ47〜50)。
上述したような図表等で例示している数値は、本出願人による実験データを基に算定した値であって例示に過ぎず、本発明はこれらの数値により限定されるものではない。
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
(1)上記実施形態では、前記残加熱時間が経過すると自動で加熱手段による加熱を自動停止させる構成としたが、このような構成に限らず、前記残加熱時間が経過すると加熱を自動停止させる構成に代えて、報知作動を行い使用者の操作にて加熱を停止させるように構成するものでもよい。
(2)上記実施形態では、とりけしスイッチが設けられて、グリルバーナの燃焼を継続させる状態で自動調理運転を取り消すことができる構成としたが、このような構成に限らず、点消火スイッチの指令のみに基づいて自動調理運転を終了させるような構成としてもよい。
(3)上記実施形態では、前記熱容量判別用経過時間を求めるときの設定判別温度のような判別用条件や残加熱時間を設定するときの演算条件等が、前記メニュー切替スイッチや焼き加減調整スイッチにて変更設定される複数の調理用条件の夫々に対応させて、夫々各別に設定される構成としたが、このような構成に限らず調理条件にかかわらず常に同じ条件にて前記熱容量判別用経過時間や残加熱時間を求めるようにしてもよい。
(4)上記実施形態では、判定用情報算出処理における各温度センサによる温度検出方法について詳しく述べていないが、例えば、庫内温度センサ38の検出値において、第1検出値TB1,第2検出値TB2の検出を、各々点火後100秒、160秒後の値ではなく、前後数秒間の値の平均値として検出するようにしてもよい。又、同様に、排ガス温度センサ37の検出値において、前記数秒間の値の平均値が設定判別温度X1に達した時間を熱容量判別用経過時間Toとして検出するようにしてもよい。こうすることで、検出誤差を抑制して、より精緻に制御を行うことが可能となる。
(5)上記実施形態では、グリル燃焼ランプ24をグリル用の設定入力パネル22に設ける構成としたが、このような構成に代えて、ガスコンロ前側面19のグリル扉36に近い場所に設けるようにしてもよい。こうすることで、グリル燃焼状態が離れた場所からでも確認しやすくなる。
(6)上記実施形態では、ビルトイン形式のガスコンロに備えられたガス燃焼式のグリルを例示したが、このような構成に限らず、テーブル式コンロに備えられたグリルであってもよく、又、コンロに組みこまれたグリルに限らず、グリル単体として構成されるものであってもよい。又、ガス燃焼式に限らず、加熱手段としては、電気ヒータや電磁式加熱手段を用いるものでもよい。