JP2005097019A - シリカ系メソ多孔体及びその製造方法 - Google Patents

シリカ系メソ多孔体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 固体酸性が十分に高く、触媒活性並びに水等に対する吸着特性に優れており、しかも高温での耐水性及び耐湿性にも十分に優れている添加金属含有シリカ系メソ多孔体、並びにその製造方法を提供すること。
【解決手段】 ケイ素原子及び酸素原子を主成分として骨格が形成されているシリカ系材料からなるシリカ系メソ多孔体であって、Na原子の含有量が100ppm以下であり、かつ、Al、Fe、Ga、Ti、Zr、Sn、V、Cr及びRuからなる群から選択される少なくとも一つの金属原子の含有量が800ppm以上であり、前記金属原子の91モル%以上が前記骨格内に導入されていることを特徴とするシリカ系メソ多孔体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ケイ素原子及び酸素原子を主成分として骨格が形成されているシリカ系材料からなるシリカ系メソ多孔体、並びにその製造方法に関する。
近年、様々な物質を吸着、貯蔵等するための材料として孔径1〜30nm程度のメソサイズの細孔(メソ孔)を有するシリカ系メソ多孔体が合成されており、中でもアルミニウム等の金属原子を導入して固体酸性が発現するようにしたシリカ系メソ多孔体が注目されている。
このような添加金属を導入したシリカ系メソ多孔体(以下、「添加金属含有シリカ系メソ多孔体」という)の製造技術としては、シリカ源に予め添加金属を含有する化合物を混合して合成する方法があり、例えば特開平8−277105号公報(特許文献1)には、カネマイトの原料となる水ガラスにアルミン酸ナトリウム等の金属元素の塩を添加して得られた金属含有カネマイトをシリカ源として用いて添加金属含有シリカ系メソ多孔体を製造する方法が記載されている。また、他の方法としては、シリカ系メソ多孔体を合成する過程でシリカ源と共に添加金属を含有する化合物を共用する方法があり、例えば特表平5−503499号公報(特許文献2)には、シリカゾルを添加金属を含有する化合物と共に水酸化ナトリウムの存在下でアルキルトリメチルアンモニウム(以下、「ATMA」という)と反応させて得られた複合体を焼成して添加金属含有シリカ系メソ多孔体を製造する方法が記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、生成物であるシリカ系メソ多孔体の骨格中に金属原子をある程度多く導入することができるものの、シリカ源の電荷バランスを取るために反応系中に存在するNa原子も同時に骨格中に取り込まれることとなる。また、特許文献2に記載の方法でも、得られるシリカ系メソ多孔体の骨格中に金属原子をある程度多く導入することができるものの、シリカ源と添加金属を含有する化合物とを一旦溶解させて多孔質結晶を形成せしめるために強アルカリ条件下かつ高温で長時間の処理をする必要がある。そのため、特許文献2に記載の方法でもやはり、反応系中に多量に存在するNa原子が骨格中に取り込まれることとなる。このように、特許文献1、2のいずれに記載の方法においても、骨格中に金属原子を比較的多く導入することができる反面、骨格の電荷バランスを保つためにNa原子も同時に骨格中に取り込まれることとなり、焼成時にNa原子がシリカのネットワーク構造を崩壊して吸着特性の低下を招き、また、Na原子の存在により高温での耐水性及び耐湿性に劣るという問題があった。
一方、特開平8−259220号公報(特許文献3)には、珪酸ソーダ水溶液とカチオン交換樹脂を接触させて調製した活性シリカをシリカ源として用い、その活性シリカとカチオン系界面活性剤とをアルカリ性領域で混合反応させる過程で水溶性アルミニウム塩を添加して得られた複合体を焼成してアルミニウム含有シリカ系メソ多孔体を製造する方法が記載されている。しかしながら、特許文献3に記載の方法では、シリカ源および界面活性剤を別々にイオン交換樹脂に流通させる必要があり、合成上の操作が煩雑であった。また、特許文献3に記載の方法で得られたシリカ系メソ多孔体を27Al−NMR測定してみると、骨格内に導入されている酸素4配位Alに対応するピーク以外に骨格内に導入されていない酸素6配位Alに対応するピークも多数存在しており、導入されたアルミニウムの多くは表面に存在しているため固体酸性及び吸着特性の向上に限界があった。さらに、特許文献3に記載の方法では、残存するNa原子の量がある程度は減少するものの限界があり、高温での耐水性及び耐湿性の点においても未だ十分なものではなかった。
特開平8−277105号公報 特表平5−503499号公報 特開平8−259220号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、固体酸性が十分に高く、触媒活性並びに水等に対する吸着特性に優れており、しかも高温での耐水性(耐熱水性)及び耐湿性(耐熱水蒸気性)にも十分に優れている添加金属含有シリカ系メソ多孔体、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、予めNa原子含有量を所定水準以下に低減せしめたシリカ系メソ多孔体を所定の金属イオンを含有する溶液に接触せしめた後に熱水及び/又は熱水蒸気処理を施すことにより、Na原子含有量の低減と骨格中に導入される金属原子の比率の向上とが同時に達成され、固体酸性が十分に高く、触媒活性並びに水等に対する吸着特性に優れており、しかも高温での耐水性(耐熱水性)及び耐湿性(耐熱水蒸気性)にも十分に優れている添加金属含有シリカ系メソ多孔体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のシリカ系メソ多孔体は、ケイ素原子及び酸素原子を主成分として骨格が形成されているシリカ系材料からなるシリカ系メソ多孔体であって、Na原子の含有量が100ppm以下であり、かつ、Al、Fe、Ga、Ti、Zr、Sn、V、Cr及びRuからなる群から選択される少なくとも一つの金属原子の含有量が800ppm以上であり、前記金属原子の91モル%以上が前記骨格内に導入されていることを特徴とするものである。
前記本発明のシリカ系メソ多孔体においては、前記金属がAlであることが好ましく、その場合、27Al−NMRの測定により得られる前記骨格内に導入されている酸素4配位Alに対応するピークの面積が、前記骨格内に導入されていない酸素6配位Alに対応するピークの面積の10倍以上であることが好ましい。
また、本発明のシリカ系メソ多孔体の製造方法は、
ケイ酸塩に界面活性剤を導入して多孔体前駆体を得る第1の工程と、
前記多孔体前駆体に含まれる前記界面活性剤由来の成分及びNa原子を除去し、ケイ素原子及び酸素原子を主成分として骨格が形成されているシリカ系材料からなりかつNa原子の含有量が100ppm以下であるシリカ系メソ多孔体を得る第2の工程と、
Al、Fe、Ga、Ti、Zr、Sn、V、Cr及びRuからなる群から選択される少なくとも一つの金属のイオンを含有する溶液を前記シリカ系メソ多孔体に接触せしめ、前記金属イオンを前記シリカ系メソ多孔体の細孔内に導入する第3の工程と、
熱水及び/又は熱水蒸気を前記シリカ系メソ多孔体に接触せしめ、前記金属原子の含有量が800ppm以上でありかつ前記金属原子の91モル%以上が骨格内に導入されているシリカ系メソ多孔体を得る第4の工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
前記本発明のシリカ系メソ多孔体の製造方法においても、前記金属がAlであることが好ましく、その場合、27Al−NMRの測定により得られる前記骨格内に導入されている酸素4配位Alに対応するピークの面積が、前記骨格内に導入されていない酸素6配位Alに対応するピークの面積の10倍以上であることが好ましい。
さらに、前記本発明のシリカ系メソ多孔体の製造方法においては、前記溶液が前記金属と酸との塩の水溶液であることが好ましい。
なお、本発明によれば、固体酸性が十分に高く、触媒活性並びに水等に対する吸着特性に優れており、しかも耐熱水性及び耐熱水蒸気性にも十分に優れている添加金属含有シリカ系メソ多孔体が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、前記従来のシリカ系メソ多孔体への添加金属の導入方法の場合は、添加金属以外にもアルカリ及びアルカリ土類金属等の不純物、特にNaが骨格中に取り込まれ易く、先にNaが吸着することで導入した添加金属が有効に酸点として働かなくなり、更に骨格中に取り込まれたNaによって耐熱水性及び耐熱水蒸気性が低下していた。それに対して本発明においては、先ずシリカ系メソ多孔体を合成し、洗浄によって余分なNaを可能な限り除去する。このとき、シリカ骨格の電荷バランスは保たれているため、洗浄を繰り返すことで容易にNa濃度を下げることが可能である。この状態でシリカ系メソ多孔体を3価以上の価数を持つ特定の金属イオンを含有する溶液に接触させる。この状態では添加金属はシリカ表面に付着している状態であるが、その後に高温の水またはスチームに晒すことにより部分的に水熱合成がなされ、添加金属が効率良く骨格中に導入される。それにより、本発明のシリカ系メソ多孔体においては、Na含有量は非常に低く、かつ、添加金属が効率良く骨格中に導入されており、導入された金属が有効に酸点として機能するため、固体酸性が十分に高くなり、触媒活性並びに水等に対する吸着特性が向上し、しかも高水準の耐熱水性及び耐熱水蒸気性が達成されると本発明者らは推察する。
本発明によれば、固体酸性が十分に高く、触媒活性並びに水等に対する吸着特性に優れており、しかも高温での耐水性(耐熱水性)及び耐湿性(耐熱水蒸気性)にも十分に優れている添加金属含有シリカ系メソ多孔体を提供することが可能となる。また、本発明のシリカ系メソ多孔体の製造方法によれば、効率良くかつ確実に前記本発明のシリカ系メソ多孔体を製造することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
(シリカ系メソ多孔体)
本発明のシリカ系メソ多孔体は、ケイ素原子及び酸素原子を主成分として骨格が形成されているシリカ系材料からなるシリカ系メソ多孔体であって、Na原子の含有量が100ppm以下であり、かつ、Al、Fe、Ga、Ti、Zr、Sn、V、Cr及びRuからなる群から選択される少なくとも一つの金属原子の含有量が800ppm以上であり、前記金属原子の91モル%以上が前記骨格内に導入されていることを特徴とするものである。
本発明のシリカ系メソ多孔体は、後述する界面活性剤を鋳型として後述するシリカ源を原料として作製されるものであり、ケイ素原子が酸素原子を介して結合した骨格−Si−O−を基本とし、高度に架橋した網目構造を有している。このようなシリカ系材料は、ケイ素原子及び酸素原子を主成分とするものであればよく、ケイ素原子の少なくとも一部が有機基の2箇所以上で炭素−ケイ素結合を形成しているものでもよい。このような有機基としては、例えば、アルカン、アルケン、アルキン、ベンゼン、シクロアルカン等の炭化水素から2以上の水素がとれて生じる2価以上の有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、有機基は、アミド基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、スルフォン基、カルボキシル基、エーテル基、アシル基、ビニル基等を有するものであってもよい。
本発明のシリカ系メソ多孔体は、Na原子の含有量が100ppm以下である必要があり、0〜60ppmであることが特に好ましい。Na原子の含有量が100ppmを超えていると、Na原子の存在により高温での耐水性及び耐湿性が低下し、更に焼成時等にNa原子がシリカのネットワーク構造を崩壊して吸着特性も低下してしまう。
また、本発明のシリカ系メソ多孔体は、Al、Fe、Ga、Ti、Zr、Sn、V、Cr及びRuからなる群から選択される少なくとも一つの金属原子を添加金属として含有していることが必要であり、中でもAl、Fe、Gaが好ましく、Alが特に好ましい。このような3価以上の金属原子がシリカ系メソ多孔体の骨格内に導入されることにより、電荷のバランスが崩れて表面の吸着性が高まり、固体酸性が発現し、触媒活性並びに水等に対する吸着特性が向上する。更に、本発明のシリカ系メソ多孔体においては、前記添加金属の含有量が800ppm以上であることが必要であり、900〜15000ppmであることが特に好ましい。添加金属の含有量が800ppm未満では、発現する固体酸性が不十分となり、触媒活性並びに水等に対する吸着特性が低下してしまう。他方、添加金属の含有量が15000ppmを超えると、メソ多孔体の構造規則性が低下したり、細孔容積が低下する傾向にある。
更に、本発明のシリカ系メソ多孔体においては、前記金属原子の91モル%以上(特に好ましくは95モル%以上)が前記骨格内に導入されていることが必要である。前記骨格内に導入されている金属原子の比率が91モル%未満では、固体酸性が十分に発現せず、触媒活性並びに水等に対する吸着特性が不十分となってしまう。
なお、前述のNa原子の含有量並びに添加金属の含有量は原子吸光光度法又は高周波プラズマ分光分析法(ICP)によって求められる。
また、添加金属が骨格内に効率良く導入されたことについての確認は、例えば25℃での水蒸気吸着等温線を測定することにより行われる。この測定は、ある圧力における水の吸着量を測定するものであり、サンプル表面の親水性が強いほど吸着は低い圧力から始まるため、吸着等温線は低圧力側にシフトする。例えば3価の金属を添加した場合には、4価のSiに対して表面の電化が不足するためによりプロトンを引き込みやすくなり、水の吸着等温線は低圧力側にシフトする。なお、再現性良く安定した吸着等温線を得るために、測定前にシリカ系メソ多孔体表面を十分に水和させ、次いで水分を十分に除去した後に測定を行うことが好ましい。具体的には、水蒸気吸着等温線の測定に先立って以下の前処理を施すことが特に好ましい。すなわち、試料(シリカ系メソ多孔体)0.5gをイオン交換水20mLに分散させて30分間超音波処理を行った後に1晩静置し、次いでろ過により水分を除去した後に一昼夜自然乾燥させ、更に25℃で10-2〜10-3mmHgで3時間真空排気して十分に乾燥せしめる処理を施した後に測定を行う。
更に、前記金属原子がAlの場合は、27Al-NMRの測定によりAlが骨格内に導入されたこと及びその比率について確認できる。かかる測定は、例えばBruker製MSL−300WBを用いて、回転数2500、パルス間隔3秒にて行われ、得られた結果の横軸はケミカルシフト、縦軸はシグナル強度を示している。この測定によれば、骨格内に導入されている酸素4配位Alに対応するピークは0ppm付近に、骨格内に導入されていない外部に存在する酸素6配位Alに対応するピークは50ppm付近に検出され、これらのピークの面積比を求めることにより添加されたAlのうち骨格内に導入されているAlの比率が求められる。本発明のシリカ系メソ多孔体においては、酸素4配位Alに対応するピークの面積が、酸素6配位Alに対応するピークの面積の10倍以上であることが好ましく、20倍以上であることが特に好ましい。この値が10倍未満では、骨格内に導入されているAlの比率が十分には高くなく、固体酸性の発現に限界があり、触媒活性並びに水等に対する吸着特性が低下する傾向にある。
本発明のシリカ系メソ多孔体は、前述のシリカ系材料からなり、いわゆるメソサイズの細孔(メソ孔)を有するものであり、その中心細孔直径は1〜30nm程度であることが好ましい。前記中心細孔直径とは、細孔容積(V)を細孔直径(D)で微分した値(dV/dD)を細孔直径(D)に対してプロットした曲線(細孔径分布曲線)の最大ピークにおける細孔直径である。なお、細孔径分布曲線は、次に述べる方法により求めることができる。すなわち、シリカ系メソ多孔体を液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、定容量法あるいは重量法によりその吸着量を求め、次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットし、吸着等温線を得る。この吸着等温線を用い、Cranston−Inklay法、Pollimore−Heal法、BJH法等の計算法により細孔径分布曲線を求めることができる。本発明のシリカ系メソ多孔体において、中心細孔直径が1nm未満の場合は、後述する金属イオン含有溶液が細孔内に導入されにくくなり、骨格内に導入される金属原子の量が不十分となる傾向にある。他方、中心細孔直径が30nmを超える場合は、比表面積が低下して、触媒活性や吸着特性が低下する傾向にある。
本発明のシリカ系メソ多孔体は、細孔径分布曲線における中心細孔直径の±40%の範囲に全細孔容積の60%以上が含まれることが好ましい。ここで、「細孔径分布曲線における最大ピークを示す細孔直径の±40%の範囲に全細孔容積の60%以上が含まれる」とは、例えば、中心細孔直径が3.00nmである場合、この3.00nmの±40%、すなわち1.80〜4.20nmの範囲にある細孔の容積の合計が、全細孔容積の60%以上を占めていることを意味する。この条件を満たすシリカ系メソ多孔体は、細孔の直径が非常に均一であることを意味する。
また、本発明のシリカ系メソ多孔体の比表面積については特に制限はないが、700m2/g以上であることが好ましい。比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
さらに、本発明のシリカ系メソ多孔体は、そのX線回折パターンにおいて1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークを有することが好ましい。X線回折ピークはそのピーク角度に相当するd値の周期構造が試料中にあることを意味する。したがって、1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークがあることは、細孔が1nm以上の間隔で規則的に配列していることを意味する。
また、本発明のシリカ系メソ多孔体が有する細孔は、多孔体の表面のみならず内部にも形成される。かかる多孔体における細孔の配列状態(細孔配列構造又は構造)は特に制限されないが、2d−ヘキサゴナル構造、3d−ヘキサゴナル構造又はキュービック構造であることが好ましい。また、このような細孔配列構造は、ディスオーダの細孔配列構造を有するものであってもよい。
ここで、多孔体がヘキサゴナルの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が六方構造であることを意味する(S.Inagaki,et al.,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,680,1993;S.Inagaki,et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.,69,1449;1996、Q.Huo,et al.,Science,268,1324,1995参照)。また、多孔体がキュービックの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が立方構造であることを意味する(J.C.Vartuli,et al.,Chem.Mater.,6,2317,1994;Q.Huo,et al.,Nature,368,317,1994参照)。また、多孔体がディスオーダの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が不規則であることを意味する(P.T.Tanev,et al.,Science,267,865,1995;S.A.Bagshaw,et al.,Science,269,1242,1995;R.Ryoo,et al.,J.Phys.Chem.,100,17718,1996参照)。また、前記キュービック構造は、Pm−3n、Im−3m又はFm−3m対称性であることが好ましい。なお、前記対称性とは、空間群の表記法に基づいて決定されるものである。
なお、多孔体がヘキサゴナルやキュービック等の規則的細孔配列構造を有する場合は、細孔の全てがこれらの規則的細孔配列構造である必要はない。すなわち、多孔体は、ヘキサゴナルやキュービック等の規則的細孔配列構造とディスオーダの不規則的細孔配列構造の両方を有していてもよい。しかしながら、全ての細孔のうち70%以上がヘキサゴナルやキュービック等の規則的細孔配列構造となっていることが好ましい。
本発明のシリカ系メソ多孔体の形状は特に限定されないが、粉末、顆粒、支持膜、自立膜、透明膜、配向膜、球状、繊維状、基板上のバーニング、μmサイズの明瞭な形態をもつ粒子などを挙げることができる。また、必要に応じて、成形して使用する。成形する手段はどのようなものでも良いが、押出成形、打錠成形、転動造粒、圧縮成形、CIPなどが好ましい。その形状は使用箇所、方法に応じて決めることができ、たとえば円柱状、破砕状、球状、ハニカム状、凹凸状、波板状などがあげられる。
(シリカ系メソ多孔体の製造方法)
本発明のシリカ系メソ多孔体の製造方法においては、先ず、ケイ酸塩に界面活性剤を導入して多孔体前駆体を得る(第1の工程)。
本発明で用いるケイ酸塩としては、層状ケイ酸塩等を使用できる。この層状ケイ酸塩としては、例えば、カネマイト(NaHSi25・3H2O)、ジケイ酸ナトリウム結晶(Na2Si25 )、マカタイト(Na2Si49・5H2O)、アイラアイト(Na2Si817・xH2O)、マガディアイト(Na2Si1429・xH2O)、ケニヤアイト(Na2Si2041・xH2O)等が挙げられ、これらは単独で又は二種以上混合して使用可能である。また、層状ケイ酸塩以外のケイ酸塩としては、例えば、粉末ケイ酸ソーダ、無定型ケイ酸ナトリウム、アルコキシシラン、水ガラス、ガラス等を例示できる。こららは単独で又は二種以上混合して使用できる。また、例えばセピオライト、モンモリロナイト、バーミュキュライトなどの粘土鉱物を酸性水溶液で処理し、シリカ以外の元素を除去したものも使用できる。更に、アルコキシシランとして、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランなどのアルコキシシランを単独で又は二種以上組み合わせて用いることもできる。
本発明において用いる界面活性剤は、特に限定されるものではなく、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性のうちのいずれであってもよく、具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルアンモニウム、ジアルキルジメチルアンモニウム、ベンジルアンモニウム等の塩化物、臭化物、ヨウ化物あるいは水酸化物;脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤、一級アルキルアミン等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で又は二種以上混合して用いられる。
上記の界面活性剤のうち、ポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤としては、疎水性成分として炭化水素基、親水性部分としてポリエチレンオキサイドをそれぞれ有するポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤等が挙げられる。このような界面活性剤としては、例えば、一般式Cn2n+1(OCH2CH2mOHで表され、nが10〜30、mが1〜30であるものが好適に使用できる。また、このような界面活性剤としては、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸とソルビタンとのエステル、あるいはこれらのエステルにポリエチレンオキサイドが付加した化合物を用いることもできる。
さらに、このような界面活性剤としては、トリブロックコポリマー型のポリアルキレンオキサイドを用いることもできる。このような界面活性剤としては、ポリエチレンオキサイド(EO)とポリプロピレンオキサイド(PO)からなり、一般式(EO)x(PO)y(EO)xで表されるものが挙げられる。x、yはそれぞれEO、POの繰り返し数を表すが、xは5〜110、yは15〜70であることが好ましく、xは13〜106、yは29〜70であることがより好ましい。上記のトリブロックコポリマーとしては、(EO)19(PO)29(EO)19、(EO)13(PO)70(EO)13、(EO)5(PO)70(EO)5、(EO)13(PO)30(EO)13、(EO)20(PO)30(EO)20、(EO)26(PO)39(EO)26、(EO)17(PO)56(EO)17、(EO)17(PO)58(EO)17、(EO)20(PO)70(EO)20、(EO)80(PO)30(EO)80、(EO)106(PO)70(EO)106、(EO)100(PO)39(EO)100、(EO)19(PO)33(EO)19、(EO)26(PO)36(EO)26が挙げられる。これらのトリブロックコポリマーはBASF社、アルドリッチ社等から入手可能であり、また、小規模製造レベルで所望のx値とy値を有するトリブロックコポリマーを得ることができる。
また、エチレンジアミンの2個の窒素原子にそれぞれ2本のポリエチレンオキサイド(EO)鎖−ポリプロピレンオキサイド(PO)鎖が結合したスターダイブロックコポリマーも使用することができる。このようなスターダイブロックコポリマーとしては、一般式((EO)x(PO)y2NCH2CH2N((PO)y(EO)x2で表されるものが挙げられる。ここでx、yはそれぞれEO、POの繰り返し数を表すが、xは5〜110、yは15〜70であることが好ましく、xは13〜106、yは29〜70であることがより好ましい。
このような界面活性剤の中では、結晶性の高いシリカ系メソ多孔体を得ることができることから、アルキルトリメチルアンモニウム[Cp2p+1N(CH33]の塩(好ましくはハロゲン化物塩)を用いることが好ましい。また、その場合は、アルキルトリメチルアンモニム中のアルキル基の炭素数は8〜22であることがより好ましい。このようなものとしては、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化ドコシルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
ケイ酸塩に界面活性剤を導入して多孔体前駆体を得る具体的な方法は特に制限されないが、以下の方法が好ましい。すなわち、先ず、上述のケイ酸塩を界面活性剤の希薄水溶液中に分散させる。これにより、ケイ酸塩中に界面活性剤イオンが導入された複合体が形成される。ケイ酸塩として層状ケイ酸塩を用いた場合には、層状ケイ酸塩の各層の間に界面活性剤イオンが入り込む。一方、層状ケイ酸塩以外のケイ酸塩を用いた場合には、界面活性剤が水溶液中でミセルを形成する。この界面活性剤のミセルは、規則正しく配列し、界面活性剤の周囲にケイ酸塩が集合する。
ここで、界面活性剤水溶液の温度は特に制限されず、好ましくは10〜100℃、より好ましくは40〜100℃に維持すると好適である。このような温度範囲に水溶液を維持すると、界面活性剤のケイ酸塩中への導入が促進され、水溶液の温度が40℃以上であると処理速度がより向上する傾向にある。一方、水溶液を100℃より高く加熱するにはオートクレーブ等の特殊設備が必要であり、設備コストの上昇を招く傾向にある。
また、界面活性剤水溶液のpHとしては、好ましくは9.5以上、より好ましくは10〜13に維持することが望ましい。ケイ酸塩を界面活性剤水溶液中に分散させると、pHは上昇し、それらの種類及び量に対応したアルカリ域の値を示す。この水溶液のpHを調整するには、例えば、1規定の水酸化ナトリウム水溶液といったアルカリ溶液、緩衝液等を適宜添加することによって行うことができる。ケイ酸塩が分散された水溶液のpHが9.5未満に低下した場合には、界面活性剤の作用が低下し、得られる多孔体の結晶性が低下する傾向にある。また、pHが大きくなり過ぎる(例えば13を超える)と、ケイ酸塩の水溶液への溶解量が増大し、回収できる固体状の複合体の収率が低下する傾向にある。
さらに、界面活性剤水溶液の濃度は、0.05〜1mol/Lであることが好ましい。この濃度が前記下限未満であると、界面活性剤イオンがケイ酸塩中に十分に導入されず細孔の形成が不完全となる傾向にあり、層状ケイ酸塩を用いたときに層間の拡幅が不十分となる虞がある。一方、この濃度が前記上限を超えると、界面活性剤イオンのケイ酸塩中への導入量が飽和し、未反応で水溶液中に残留する界面活性剤の量が顕著に増大して細孔の均一性が低下する傾向にある。また、ケイ酸塩の界面活性剤水溶液中への分散量は、Si濃度換算で0.0055〜0.33mol/Lであることが好ましい。この濃度が前記下限未満の場合には、ケイ酸塩に対する界面活性剤の量が過度に多くなり、未反応の界面活性剤が増大して細孔の均一性が低下する傾向にある。一方、この濃度が前記上限を超えると、水溶液のpHが上昇して回収できる固体状の複合体の収率が低下すると共に、細孔の形成が不完全となる傾向にある。更に、Si等の骨格形成原子のモル数が、界面活性剤のモル数の0.02〜10倍であることが好ましく、0.05〜6倍であることがより好ましい。なお、このような反応系を形成する溶媒は主に水であるが、必要に応じてアルコール等の有機溶媒を加えることも可能である。
次に、上記複合体を含有する界面活性剤水溶液を所定のpH値となるように調整し、所定時間(好ましくは1〜24時間)その状態に保持して攪拌する。こうすると、複合体中のケイ酸塩層の表面に存在するシラノール基(−O−H)の脱水縮合が生じ、層間又は層内において部分的に結合が形成される。その結果、二次元又は三次元網目構造が形成され、ケイ酸塩中に導入された界面活性剤イオンが二次元的又は三次元的に配列された構造体である多孔体前駆体が得られる。また、層状を成さないケイ酸塩を用いた場合にも、界面活性剤イオンの周囲でケイ酸塩中のOH基が縮合して多孔体前駆体が形成される。
このときの界面活性剤水溶液のpHは7〜9.5の範囲であることが好ましい。pHの調整で用いる酸としては、塩酸、硫酸、酢酸、硝酸等の他にリン酸等の有機酸を用いることもできる。例えば、分散液を攪拌している状態で2規定塩酸水溶液を混合することによって速やかにpH調整を行うことができる。pHが9.5を超えると、シラノール基の脱水縮合が不十分になり、また得られる多孔体の収量が少なくなる傾向にある。他方、pHが7未満になるとケイ酸イオンが不定形シリカゲルとなって析出し易くなり、このシリカゲルは均一な細孔を持たず結晶性の低い物質であるため、得られる物質の規則性が低下する傾向にある。このときの界面活性剤水溶液の温度は特に制限されず、好ましくは10〜100℃、より好ましくは40〜100℃に維持すると好適である。このような温度範囲に水溶液を維持すると、シラノール基の脱水縮合が促進され、水溶液の温度が40℃以上であると処理速度がより向上する傾向にある。
そして、このようにして縮合反応せしめた分散液から固形生成物をろ過により回収し、以下の工程に使用する多孔体前駆体が得られる。
次に、本発明のシリカ系メソ多孔体の製造方法においては、前記多孔体前駆体に含まれる前記界面活性剤由来の成分及びNa原子を除去し、ケイ素原子及び酸素原子を主成分として骨格が形成されているシリカ系材料からなりかつNa原子の含有量が100ppm以下であるシリカ系メソ多孔体を得る(第2の工程)。このように界面活性剤由来の成分を除去する方法としては、多孔体前駆体を所定温度で焼成する方法或いは多孔体前駆体をイオン交換処理する方法が好適に採用され、それらの方法を組み合わせて実施してもよい。
第2の工程として焼成処理を行う場合、焼成温度は400〜1000℃であることが好ましく、焼成を行う雰囲気は特に限定されない。焼成温度が400℃未満であると界面活性剤成分の燃焼が不十分となって炭素等が残留した多孔体が得られる傾向にあり、他方、1000℃を超える場合には多孔体の結晶性が不良となる傾向にある。そして、本発明においては、このような焼成処理によって得られるシリカ系メソ多孔体におけるNa原子の含有量が100ppm以下となるようにNa原子を除去する必要があるが、Na原子の除去は以下の(i)及び/又は(ii)の洗浄処理によって達成される。
(i)焼成処理に先立って、多孔体前駆体を洗浄液(好ましくはイオン交換水)で十分に洗浄し、多孔体前駆体に含まれるNa原子をできるだけ低減させる((i)の洗浄処理のみの場合は100ppm以下に低減させる)。
(ii)焼成処理の後に、多孔体前駆体を洗浄液(好ましくは濃度0.01〜1Nの酸水溶液)で十分に洗浄し、多孔体前駆体に含まれるNa原子を100ppm以下に低減させる。
また、第2の工程としてイオン交換処理を行う場合、例えば、陽イオン性の界面活性剤を使用した場合には、酸性溶液(好ましくはアルコールに濃度0.01〜3Nの酸を混合した溶液)中に上記多孔体前駆体を浸漬する方法が好適に採用され、それによって細孔内の界面活性剤成分は水素イオンとのイオン交換により除去される。また、陰イオン性の界面活性剤を使用した場合には陰イオンを添加した溶媒により界面活性剤成分を除去でき、非イオン性の界面活性剤を使用した場合には溶媒のみで界面活性剤成分を除去することができる。そして、本発明においては、このようなイオン交換処理によって得られるシリカ系メソ多孔体におけるNa原子の含有量が100ppm以下となるようにNa原子を除去する必要があるが、Na原子の除去は上述のイオン交換処理のみによっても達成され、更に前記(i)と同様の洗浄処理をイオン交換処理に先立って施すことがより好ましい。
なお、Al等の添加金属が既に導入されている多孔体前駆体の場合は、骨格にNa原子が強く取り込まれるため、前記の洗浄処理でNa原子を十分に除去することはできない。それに対して、本発明にかかる前記多孔体前駆体には未だ添加金属が導入されていない状態のため、前記の処理によってNa原子が十分に除去される。
続いて、本発明のシリカ系メソ多孔体の製造方法においては、Al、Fe、Ga、Ti、Zr、Sn、V、Cr及びRuからなる群から選択される少なくとも一つの金属のイオンを含有する溶液を前記シリカ系メソ多孔体に接触せしめ、前記金属イオンを前記シリカ系メソ多孔体の細孔内に導入する(第3の工程)。
このような溶液としては、前記3価以上の金属と酸との塩(金属塩)の水溶液であることが好ましく、酸としては無機酸であっても有機酸であってもよい。かかる無機酸としては特に限定されないが、塩酸、硫酸、炭酸及び硝酸からなる群から選択される少なくとも一つの酸であることが好ましい。また、かかる有機酸としても特に限定されないが、酢酸、シュウ酸、フタル酸及び脂肪酸からなる群から選択される少なくとも一つの酸であることが好ましい。例えば、前記金属としてAlを用いる場合、好適な金属塩としては硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等が挙げられ、入手のし易さ、水への溶解度等に応じて適宜選択される。
前記シリカ系メソ多孔体を前記溶液と接触させる方法としては、前記溶液に多孔体を浸漬させる方法が一般的である。浸漬する際の反応系の温度は0〜100℃であることが好ましく、30〜80℃であることがより好ましい。反応系の温度が前記下限未満では金属イオンが多孔体に添着する速度が遅くなって反応に長時間を要する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとオートクレーブ等の特殊設備が必要であり、設備コストの上昇を招く傾向にある。また、かかる浸漬処理を施す時間は1〜24時間であることが好ましい。そして、このようにして処理を施した多孔体をろ過し、乾燥させることによって、前記金属イオンが細孔内に導入され、前記金属原子の含有量が800ppm以上であるシリカ系メソ多孔体が得られる。なお、乾燥過程で多孔体を加熱してもよいが、本発明では引き続いて後述する熱水及び/又は熱水蒸気による処理を行うため乾燥過程での加熱処理は必ずしも必要ではない。また、乾燥方法は特に制限されず、室温又は加熱オーブン中における風乾又はスプレードライ等が利用される。
多孔体と接触させる溶液中の金属塩の濃度は0.001〜5mol/Lであることが好ましく、0.01〜1mol/Lであることがより好ましい。この濃度が0.001mol/L未満では、骨格原料に対する金属の割合が不十分なため、高温の水または水蒸気に対する耐久性が十分に向上しない傾向にある。他方、この濃度が5mol/Lを超えると、酸性度が強すぎて細孔の一部が破壊され易くなる傾向にある。
シリカ系メソ多孔体を前記溶液と接触させる方法としては、毛管凝縮現象を利用する方法もある。一般に細孔を有する多孔体を水溶液などに浸漬する場合、細孔内から優先的に水溶液で満たされる。このため、細孔が満たされる量の溶液を加えた場合には、その溶液は細孔の表面にはほとんど付着しないで、大部分が細孔内部のみに入ることになる。ここで細孔が満たされる溶液の量は、多孔体の窒素吸着などを測定することで得られる細孔容積の値とほぼ一致する。従って、用いるシリカ系メソ多孔体の細孔が満たされる量の水に上記の金属塩を溶解させて多孔体に接触させることによって、反応に使用する金属を非常に効率良く細孔内部に導入することができる。この方法で金属を導入する場合には、金属塩の水溶液に接触させる前に多孔体の細孔内を乾燥させることが必要である。細孔内が水で既に満たされている場合には、接触させた金属塩の水溶液が細孔内に入らない可能性があるからである。逆に、細孔内の水が除去されていれば、金属塩の水溶液は優先的に多孔体の細孔内に導入されるため、接触させる際に加熱などの必要もなく、室温でも十分に金属イオンを細孔内部に導入することができる。このように毛管凝縮現象を利用する方法は、室温でも非常に効率良く短時間で細孔内部に金属イオンを導入することが可能であるため、好ましい。また、かかる毛管凝縮現象を利用する処理を施す時間は0.1〜5時間であることが好ましい。そして、このようにして処理を施した多孔体を乾燥させることによって、前記金属イオンが細孔内に導入され、前記金属原子の含有量が800ppm以上であるシリカ系メソ多孔体が得られる。
この方法の場合も多孔体と接触させる溶液中の金属塩の濃度は上記の浸漬法の場合と同様であるが、多孔体の外表面に接触する溶液が少なく、また加熱の必要もないため、0.01〜2mol/Lであることがより好ましい。
更に続いて、本発明のシリカ系メソ多孔体の製造方法においては、熱水及び/又は熱水蒸気を前記シリカ系メソ多孔体に接触せしめ、前記金属原子の含有量が800ppm以上でありかつ前記金属原子の91モル%以上が骨格内に導入されている本発明のシリカ系メソ多孔体を得る(第4の工程)。
このように前記金属イオンが細孔内に導入されたシリカ系メソ多孔体を高温の熱水あるいは熱水蒸気に接触させることにより、細孔内部での水熱反応が促進されて細孔壁の再構築が進行し、それによって前記金属原子の91モル%以上が多孔体の骨格中に導入される。かかる処理に用いられる熱水としては40℃以上の熱水が好ましく、40〜100℃の熱水がより好ましく、60〜90℃の熱水が特に好ましい。また、熱水蒸気としては、40℃以上で50〜95%の熱水蒸気が好ましく、40〜100℃で50〜95%の熱水蒸気がより好ましく、60〜90℃で50〜95%の熱水蒸気が特に好ましい。なお、熱水又は熱水蒸気の温度は100℃以上でもよいが、オートクレーブ等の圧力調整容器が必要になるために煩雑となる傾向にある。また、熱水又は熱水蒸気の温度が前記下限未満では、反応時間が過度に長く要する傾向にある。前記の熱水又は熱水蒸気に接触せしめる反応時間は、その温度にもよるが、例えば80℃程度の熱水により処理を行う場合には1時間以上であればよく、工業的な熱源のコストも考えると12時間以上7日間以内であることが好ましい。一方、気体の水は液体の水よりも激しく分子運動を行っているため、回りに伝達するエネルギーも高い。そのため、熱水蒸気に晒す場合には、熱水により処理を行う場合よりも金属原子のシリカ骨格内への導入反応が促進される傾向にある。従って、例えば80℃で90%の熱水蒸気に多孔体を接触させる場合には、反応時間は1時間から5日間程度で十分であり、好ましくは5時間から3日間である。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜15及び比較例1〜9)
(シリカ系メソ多孔体Aの合成)
イオン交換水81.14kg、アーカード10-W35(ライオン社製、成分:デシルトリメチルアンモニウムブロミド)6.22kg、1号ケイ酸ソーダ12.64kgを室温で68時間攪拌した後、得られた混合液を24時間放置した。次いで、上記混合液を室温で再び1時間攪拌した後、上記混合液を1L/min、2N-HClを250ml/minの速度で流通せしめて混合し、混合後の反応液をそのまま1時間、攪拌速度5000rpmで攪拌した。このときの反応液のpHは9.5であった。このようにして得られた分散液から固形生成物をろ過により回収し、50リットルのイオン交換水で5回洗浄した後、45℃に48時間保持して乾燥せしめて多孔体前駆体の粉末を得た。続いて、得られた粉末を日本電磁測器社製の高精度成形装置を用いてCIP成型し、粉砕して粒度を0.15〜0.35mmに調整した後に、以下のイオン交換処理及び焼成処理によって界面活性剤成分の除去を行った。すなわち、得られた多孔体前駆体の粒子60gをカラムに入れ、1N-HCl/メタノール混合溶液200gを30分掛けてゆっくり流し、最後にメタノール200gを流した後、70℃で真空乾燥し、更に560℃で6時間焼成して添加金属を含有していないシリカ系メソ多孔体Aを得た。得られたシリカ系メソ多孔体Aの中心細孔直径は1.4nmであった。
(シリカ系メソ多孔体Bの合成)
イオン交換水893.8g、アーカード10-W35 69.9g、1号ケイ酸ソーダ136.4gを70℃で3時間攪拌した後、得られた混合液に2N-HClを滴下して混合液のpHを9.25に調整した。得られた反応液をそのまま3時間保持した。なお、その途中で反応液のpHを8.48に再調整した。このようにして得られた分散液から固形生成物をろ過により回収し、1リットルのイオン交換水で5回洗浄した後、45℃に48時間保持して乾燥せしめて多孔体前駆体の粉末を得た。続いて、得られた粉末を日本電磁測器社製の高精度成形装置を用いてCIP成型し、粉砕して粒度を0.15〜0.35mmに調整した後に、560℃で6時間焼成して界面活性剤成分の除去を行い、添加金属を含有していないシリカ系メソ多孔体Bを得た。得られたシリカ系メソ多孔体Bの中心細孔直径は1.4nmであった。
(シリカ系メソ多孔体Cの合成)
前記のイオン交換水とアーカード10-W35と1号ケイ酸ソーダとを攪拌する温度を65℃としたこと以外はシリカ系メソ多孔体Bの合成方法と同様にして添加金属を含有していないシリカ系メソ多孔体Cを得た。得られたシリカ系メソ多孔体Cの中心細孔直径は1.4nmであった。
(実施例1)
0.94gの硝酸アルミニウムをイオン交換水10mLに溶解させて得られた溶液に5gのシリカ系メソ多孔体Aを分散せしめ、その状態で室温で10時間保持した。次いで、そのシリカ系メソ多孔体を室温で15時間乾燥せしめた。続いて、このようにして得られたシリカ系メソ多孔体1gを密閉容器に入れてイオン交換水10mLに分散せしめ、80℃のオーブン中で7日間保持した後、シリカ系メソ多孔体をろ過により回収し、室温で15時間保持して乾燥せしめて実施例1のアルミニウム含有シリカ系メソ多孔体を得た。
(実施例2)
0.94gの硝酸アルミニウムをイオン交換水5mLに溶解させて得られた溶液に10gのシリカ系メソ多孔体Aを分散せしめ、このように浸漬させた状態で室温で10時間保持した。次いで、そのシリカ系メソ多孔体を室温で15時間乾燥せしめた。続いて、このようにして得られたシリカ系メソ多孔体1gをシャーレに広げて80℃で湿度90%に保ったオーブン中で48時間保持した後、シリカ系メソ多孔体を70℃の真空乾燥機内に15時間保持して乾燥せしめて実施例2のアルミニウム含有シリカ系メソ多孔体を得た。
(実施例3)
3.76gの硝酸アルミニウム9水和物をイオン交換水1000mLに溶解させて得られた溶液に100gのシリカ系メソ多孔体Bを混合し、密閉容器中において50℃で20時間保持した。次いで、この分散液からシリカ系メソ多孔体をふるいにより回収し、45℃の熱風乾燥機にて12時間保持して乾燥せしめた。続いて、このようにして得られたシリカ系メソ多孔体を再び550℃で6時間焼成した後、シリカ系メソ多孔体2gを密閉容器に入れてイオン交換水20mLに分散せしめ、80℃のオーブン中で5日間保持した後、シリカ系メソ多孔体をろ過により回収し、室温で12時間保持して乾燥せしめて実施例3のアルミニウム含有シリカ系メソ多孔体を得た。
(実施例4)
硝酸アルミニウム9水和物の量を18.8gとしたこと以外は実施例3と同様にして実施例4のアルミニウム含有シリカ系メソ多孔体を得た。
(実施例5)
18.8gの硝酸アルミニウム9水和物をイオン交換水1000mLに溶解させて得られた溶液に100gのシリカ系メソ多孔体Bを混合し、密閉容器中において50℃で20時間保持した。次いで、この分散液からシリカ系メソ多孔体をふるいにより回収し、45℃の熱風乾燥機にて12時間保持して乾燥せしめた。続いて、このようにして得られたシリカ系メソ多孔体に100℃で10時間の加熱処理を施した後、シリカ系メソ多孔体2gをシャーレに広げて80℃で湿度90%に保ったオーブン中で78時間保持した後、シリカ系メソ多孔体を70℃の真空乾燥機内に15時間保持して乾燥せしめて実施例5のアルミニウム含有シリカ系メソ多孔体を得た。
(実施例6)
硝酸アルミニウム9水和物の量を75.2gとしたこと以外は実施例3と同様にして実施例6のアルミニウム含有シリカ系メソ多孔体を得た。
(実施例7)
硝酸アルミニウム9水和物の量を188gとしたこと以外は実施例3と同様にして実施例7のアルミニウム含有シリカ系メソ多孔体を得た。
(実施例8)
0.05mol/Lの硝酸第二鉄(Fe(NO33)水溶液15mLに1.5gのシリカ系メソ多孔体Cを分散せしめ、このように浸漬させた状態で50℃で20時間保持した。次いで、この分散液からシリカ系メソ多孔体をろ過により回収し、再び550℃で6時間焼成した後、得られたシリカ系メソ多孔体をシャーレに広げて80℃で湿度90%に保ったオーブン中で48時間保持した後、シリカ系メソ多孔体を70℃で真空乾燥せしめて実施例8の鉄含有シリカ系メソ多孔体を得た。
(実施例9)
550℃で6時間の焼成処理に代えて100℃で6時間の加熱処理を施したこと以外は実施例8と同様にして実施例9の鉄含有シリカ系メソ多孔体を得た。
(実施例10)
0.05mol/Lの硝酸第二鉄(Fe(NO33)水溶液15mLに代えて0.05mol/Lのシュウ酸チタンアンモニウム((NH42<TiO(C2O4)2>)水溶液15mLを用いたこと以外は実施例8と同様にして実施例10のチタン含有シリカ系メソ多孔体を得た。
(実施例11)
シリカ系メソ多孔体Cの量を3.0gとし、シュウ酸チタンアンモニウム水溶液の量を30mLとし、550℃で6時間の焼成処理に代えて100℃で6時間の加熱処理を施したこと以外は実施例10と同様にして実施例11のチタン含有シリカ系メソ多孔体を得た。
(実施例12)
0.05mol/Lの硝酸第二鉄(Fe(NO33)水溶液15mLに代えて0.05mol/Lの硫酸アルミニウム(Al2(SO43)水溶液15mLを用いたこと以外は実施例8と同様にして実施例12のアルミニウム含有シリカ系メソ多孔体を得た。
(実施例13)
シリカ系メソ多孔体Cの量を3.0gとし、硫酸アルミニウム水溶液の量を30mLとし、550℃で6時間の焼成処理に代えて100℃で6時間の加熱処理を施したこと以外は実施例12と同様にして実施例13のアルミニウム含有シリカ系メソ多孔体を得た。
(実施例14)
0.05mol/Lの硝酸第二鉄(Fe(NO33)水溶液15mLに代えて0.05mol/Lの硝酸ジルコニル(ZrO(NO3)2)水溶液15mLを用い、焼成処理の時間を8時間としたこと以外は実施例8と同様にして実施例14のジルコニウム含有シリカ系メソ多孔体を得た。
(実施例15)
シリカ系メソ多孔体Cの量を4.5gとし、硝酸ジルコニル水溶液の量を45mLとし、550℃で8時間の焼成処理に代えて100℃で8時間の加熱処理を施したこと以外は実施例14と同様にして実施例15のジルコニウム含有シリカ系メソ多孔体を得た。
(比較例1)
イオン交換水3840g、アーカード10-W35 294g、1号ケイ酸ソーダ598.5g、アルミン酸ナトリウム14.671gを70℃で1時間攪拌した後、得られた混合液に2N-HClを滴下して40分かけて混合液のpHを8.5に調整した。得られた反応液を、pHを8.5に調整しながら2時間養生した。このようにして得られた分散液から固形生成物をろ過により回収し、イオン交換水で伝導度が100μS以下になるまで洗浄した後、脱水して45℃の熱風乾燥機にて24時間保持して乾燥せしめて多孔体前駆体の粉末を得た。続いて、得られた粉末を日本電磁測器社製の高精度成形装置を用いてCIP成型し、粉砕して粒度を0.15〜0.35mmに調整した後に、560℃で6時間焼成して界面活性剤成分の除去を行い、比較例1のアルミニウム含有シリカ系メソ多孔体を得た。得られたシリカ系メソ多孔体の中心細孔直径は1.3nmであった。
(比較例2)
アルミン酸ナトリウム14.671gに代えて硝酸アルミニウム9水和物28.0555gを用い、2N-HClの滴下に要した時間を60分としたこと以外は比較例1と同様にして比較例2のアルミニウム含有シリカ系メソ多孔体を得た。得られたシリカ系メソ多孔体の中心細孔直径は1.3nmであった。
(比較例3)
前述の実施例4において550℃で6時間焼成したシリカ系メソ多孔体を、続いての熱水処理を施すことなくそのまま比較例3のアルミニウム含有シリカ系メソ多孔体として用いた。
(比較例4)
前述の実施例5において100℃で10時間の加熱処理を施したシリカ系メソ多孔体を、続いての熱水蒸気処理を施すことなくそのまま比較例4のアルミニウム含有シリカ系メソ多孔体として用いた。
(比較例5)
硝酸アルミニウム9水和物の量を5.611gとしたこと以外は比較例2と同様にして比較例5のアルミニウム含有シリカ系メソ多孔体を得た。
(比較例6)
硝酸アルミニウム9水和物の量を112.22gとしたこと以外は比較例2と同様にして比較例6のアルミニウム含有シリカ系メソ多孔体を得た。
(比較例7)
前述のシリカ系メソ多孔体Aをそのまま比較例7の添加金属を含有していないシリカ系メソ多孔体として用いた。
(比較例8)
前述のシリカ系メソ多孔体Bをそのまま比較例8の添加金属を含有していないシリカ系メソ多孔体として用いた。
(比較例9)
前述のシリカ系メソ多孔体Cをそのまま比較例9の添加金属を含有していないシリカ系メソ多孔体として用いた。
[Na原子及び添加金属原子の含有量についての評価]
実施例3、4、6、7並びに比較例1、2、5、6のシリカ系メソ多孔体におけるNa原子の含有量及びAl原子の含有量を、セイコー電子工業社製、商品名:SAS7500を用いた原子吸光光度法又は島津製作所社製、商品名:ICPS−2000を用いた高周波プラズマ分光分析法によって測定した。得られた結果を表1に示す。
Figure 2005097019
表1に示した結果から明らかなように、本発明のシリカ系メソ多孔体(実施例3、4、6、7)はいずれも、Na原子の含有量が100ppm以下と非常に低く、かつ、Al原子の含有量が800ppm以上であることが確認された。一方、前述の特許文献2に記載の方法に準じて得られた従来のシリカ系メソ多孔体(比較例1、2、5、6)はいずれも多量のNa原子が残存しており、Na原子の含有量は100ppmを遥かに超えていることが確認された。
27Al-NMR測定による添加金属原子の骨格内への導入についての評価]
実施例4並びに比較例1、2、3、4のシリカ系メソ多孔体においてAl原子が骨格内に十分に導入されているか否か、また骨格内に導入されているAl原子の比率について27Al-NMRの測定により確認した。なお、かかる測定は、Bruker製MSL−300WBを用いて、回転数2500、パルス間隔3秒にて行った。実施例4並びに比較例1、2、3、4のシリカ系メソ多孔体で得られた27Al-NMRの測定結果をそれぞれ図1〜5に示す。また、27Al−NMRの測定結果から求めた、(i)骨格内に導入されていない酸素6配位Alに対応するピーク面積に対する骨格内に導入されている酸素4配位Alに対応するピーク面積の比率{(酸素4配位Alピーク面積)/(酸素6配位Alピーク面積)}、並びに、(ii)全Al原子のうち骨格内に導入されているAl原子の割合、を表2に示す。
Figure 2005097019
図1〜5中の50ppm付近のピークが酸素4配位Al、0ppm付近に見られるピークが酸素6配位Alに基づくピークであり、6配位Alとして観察されるものはシリカ骨格中に分散していない集合状のアルミニウムであり、4配位Alとして観測されるものは骨格内に導入されてシリカと強く結びついており、少なくとも一部は骨格を構成している。図1〜5及び表2に示した結果から明らかなように、本発明のシリカ系メソ多孔体(実施例4)は前記ピーク面積比(酸素4配位Alピーク面積/酸素6配位Alピーク面積)が100であり、骨格内のAl原子の割合が99mol%であるのに対して、比較例2のシリカ系メソ多孔体では前記ピーク面積比は8.6であり、骨格内のAl原子の割合は90mol%であった。また、比較例1、3、4のシリカ系メソ多孔体では0ppm付近に非常にシャープな6配位Alによるピークが見られ、前記ピーク面積比も3.3〜3.9と低く、骨格内のAl原子の割合も77〜80mol%と低かった。以上の結果から、本発明のシリカ系メソ多孔体では50mol%以上のAl原子が骨格内に効率良く導入されているのに対して、比較例1、2、3、4のシリカ系メソ多孔体では過半数のAl原子は骨格内以外に偏在していることが確認された。
[水蒸気吸着等温線測定による添加金属原子の骨格内への導入についての評価]
実施例4、5並びに比較例3、4のシリカ系メソ多孔体について25℃での水蒸気吸着等温線を測定し、Al原子が骨格内に十分に導入されているか否かを確認した。すなわち、先ず、試料(シリカ系メソ多孔体)0.5gをイオン交換水20mLに分散させて30分間超音波処理を行った後に1晩静置し、次いでろ過により水分を除去した後に一昼夜自然乾燥させ、更に25℃で10-2〜10-3mmHgで3時間真空排気して十分に乾燥せしめた。次いで、このようにして前処理された試料について、日本ベル社製、商品名:BELSORP18を用いて25℃での水蒸気吸着等温線を測定した。得られた結果を図6〜7に示す。
図6〜7の横軸は相対蒸気圧、縦軸は水の吸着量を示し、実施例4と比較例3との比較では実施例4のシリカ系メソ多孔体の方が低い蒸気圧から等温線の立ち上がりが見られた。実施例4と比較例3のシリカ系メソ多孔体ではAl含有量はほぼ等しいものの、先の27Al-NMRの測定結果からも明らかなように、実施例4の方がAlが骨格内に効率良く導入されているために表面の親水性が高まり、低蒸気圧域から水の吸着が起きることが確認された。また、実施例5と比較例4との比較でも同様に、実施例5のシリカ系メソ多孔体の方が低い蒸気圧から等温線の立ち上がりが見られ、実施例5の方がAlが骨格内に効率良く導入されていることが確認された。
[耐熱水性の評価]
実施例1、2並びに比較例1、2、7のシリカ系メソ多孔体を80℃の熱水に5日間浸漬せしめ、この耐熱水性試験の前後の各シリカ系メソ多孔体のBET比表面積をユアサアイオニクス社製、商品名:オートソーブ1−AGによって測定した。得られた結果を表3に示す。なお、比表面積の低下率の値は下記式:
{((耐熱水性試験前の値)−(耐熱水性試験後の値))/(耐熱水性試験前の値)}×100=比表面積の低下率(%)
により算出した。
Figure 2005097019
表3に示した結果から明らかなように、本発明のシリカ系メソ多孔体(実施例1、2)はいずれも比表面積の低下率が低く、耐熱水性が高いことが確認された。特に、シリカ系メソ多孔体の毛細管凝縮作用を利用して細孔内のみにAlを導入した実施例2で得られたシリカ系メソ多孔体は低下率が0.2%であり、耐熱水性試験による劣化が殆どないことが確認された。それに対して、Alが導入されていない比較例7のシリカ系メソ多孔体は低下率が19%と大きく、また、Alが骨格内に有効に導入されていない比較例1、2のシリカ系メソ多孔体も低下率が大きかった。
[耐熱水蒸気性の評価1]
実施例3、4、5、6、7並びに比較例1、2、8のシリカ系メソ多孔体を80℃で湿度90%の水蒸気雰囲気中に48時間晒し、この耐熱水蒸気性試験後の各シリカ系メソ多孔体のX線回折(XRD)パターンを理学電機社製、商品名:RINT2200を用いて測定した。得られた結果を図8に示す。また、前記の耐熱水蒸気性試験後における実施例4、5、6、7並びに比較例1、2、8のシリカ系メソ多孔体について、前記吸着等温線測定と同様にして25℃での水蒸気吸着等温線を測定した。得られた結果を図9〜10に示す。
各シリカ系メソ多孔体は有機化の鋳型としてデシルトリメチルアンモニウムブロミドを用いて合成されているため、通常は2θ=3°付近にd(100)の回折ピークが見られる。図8に示した結果から明らかなように、本発明のシリカ系メソ多孔体(実施例3、4、5、6、7)はいずれもピーク強度が高く保たれており、耐熱水蒸気性試験による劣化が殆どないことが確認された。それに対して、Alが導入されていない比較例8のシリカ系メソ多孔体では前記ピークが殆ど見られず、激しく劣化していることが確認された。また、Alが骨格内に有効に導入されていない比較例1、2のシリカ系メソ多孔体ではピーク強度が低く、耐熱水蒸気性が高くないことが確認された。
また、図9〜10に示した結果から明らかなように、本発明のシリカ系メソ多孔体(実施例4、5、6、7)はいずれも水蒸気吸着等温線の立ち上がりが維持されており、熱水蒸気性が高いことが確認された。なお、水蒸気吸着等温線の立ち上がりは、多孔体の細孔に毛管凝縮現象により水が吸着することに起因しており、均一な細孔径をもつことの証拠となる。それに対して、Alが導入されていない比較例8のシリカ系メソ多孔体及びAlが骨格内に有効に導入されていない比較例1、2のシリカ系メソ多孔体では明らかに等温線の立ち上がり(傾き)が緩やかになり、高蒸気圧域までなだらかに吸着量が増加しており、熱水蒸気性試験により細孔構造が崩壊したことが確認された。
[耐熱水蒸気性の評価2]
実施例8〜15並びに比較例9のシリカ系メソ多孔体を80℃で湿度90%の水蒸気雰囲気中に48時間晒し、この耐熱水蒸気性試験の前後の各シリカ系メソ多孔体のXRDパターンを前記耐熱水蒸気性の評価1と同様にして測定した。耐熱水蒸気性試験前のXRDパターンを図11及び図13に、耐熱水蒸気性試験後のXRDパターン(実施例8、10、12、13、15及び比較例9のみ)を図12及び図14に示す。
図11〜14に示した結果から明らかなように、本発明のシリカ系メソ多孔体(実施例8、10、12、13、15)はいずれもピーク強度がある程度高く保たれており、耐熱水蒸気性が高いことが確認された。それに対して、Alが導入されていない比較例9のシリカ系メソ多孔体では前記ピークが殆ど消失してしまっており、激しく劣化していることが確認された。
[アンモニア昇温脱離試験による固体酸性の評価]
アンモニア昇温脱離(TPD)法は、強い揮発性の塩基性気体であるアンモニアが試料上の酸点に吸着する特性があることを利用し、アンモニアを吸着させた試料を昇温してその際の脱離ピークを測定する方法であり、これによって固体酸点の量及び強度が評価できる。
ここでは、実施例4並びに比較例3のシリカ系メソ多孔体について以下のようにしてアンモニアTPD測定を行った。すなわち、試料に500℃で1時間前処理を施し、100℃で10分間アンモニアを吸着させた。次いで、100℃から800℃まで10℃/minで昇温し、脱着するNH量をTCDで検出した。得られた結果を図15に示す。
図15に示した結果から明らかなように、本発明のシリカ系メソ多孔体(実施例4)はアンモニアの吸着ピークが高く、固体酸量が多いことが確認された。それに対して、Alが骨格内に有効に導入されていない比較例1、2のシリカ系メソ多孔体Alが導入されていない比較例3のシリカ系メソ多孔体はアンモニアの吸着ピークがさほど高くなく、固体酸量が少ないことが確認された。
以上説明したように、本発明の製造方法によって得られる本発明の添加金属含有シリカ系メソ多孔体は、固体酸性が十分に高く、触媒活性並びに水等に対する吸着特性に優れており、しかも高温での耐水性及び耐湿性にも十分に優れているため、各種ガス、液体等の吸着材、貯蔵材、回収材、調湿材、更には各種触媒の担体といった部材として有用である。
実施例4のシリカ系メソ多孔体における27Al-NMRの測定結果を示すチャートである。 比較例1のシリカ系メソ多孔体における27Al-NMRの測定結果を示すチャートである。 比較例2のシリカ系メソ多孔体における27Al-NMRの測定結果を示すチャートである。 比較例3のシリカ系メソ多孔体における27Al-NMRの測定結果を示すチャートである。 比較例4のシリカ系メソ多孔体における27Al-NMRの測定結果を示すチャートである。 実施例4並びに比較例3のシリカ系メソ多孔体における水蒸気吸着等温線の測定結果を示すグラフである。 実施例5並びに比較例4のシリカ系メソ多孔体における水蒸気吸着等温線を示すグラフである。 実施例3〜7並びに比較例1、2、8のシリカ系メソ多孔体における耐熱水蒸気性試験後のX線回折パターンを示すグラフである。 実施例4〜7並びに比較例8のシリカ系メソ多孔体における耐熱水蒸気性試験後の水蒸気吸着等温線を示すグラフである。 比較例1、2、8のシリカ系メソ多孔体における耐熱水蒸気性試験後の水蒸気吸着等温線を示すグラフである。 実施例9、11、13、15並びに比較例9のシリカ系メソ多孔体における耐熱水蒸気性試験前のX線回折パターンを示すグラフである。 実施例13、15並びに比較例9のシリカ系メソ多孔体における耐熱水蒸気性試験後のX線回折パターンを示すグラフである。 実施例8、10、12、14並びに比較例9のシリカ系メソ多孔体における耐熱水蒸気性試験前のX線回折パターンを示すグラフである。 実施例8、10、12並びに比較例9のシリカ系メソ多孔体における耐熱水蒸気性試験後のX線回折パターンを示すグラフである。 実施例4並びに比較例3のシリカ系メソ多孔体におけるアンモニア昇温脱離測定の結果を示すグラフである。

Claims (5)

  1. ケイ素原子及び酸素原子を主成分として骨格が形成されているシリカ系材料からなるシリカ系メソ多孔体であって、Na原子の含有量が100ppm以下であり、かつ、Al、Fe、Ga、Ti、Zr、Sn、V、Cr及びRuからなる群から選択される少なくとも一つの金属原子の含有量が800ppm以上であり、前記金属原子の91モル%以上が前記骨格内に導入されていることを特徴とするシリカ系メソ多孔体。
  2. 前記金属がAlであり、27Al−NMRの測定により得られる前記骨格内に導入されている酸素4配位Alに対応するピークの面積が、前記骨格内に導入されていない酸素6配位Alに対応するピークの面積の10倍以上であることを特徴とする請求項1記載のシリカ系メソ多孔体。
  3. ケイ酸塩に界面活性剤を導入して多孔体前駆体を得る第1の工程と、
    前記多孔体前駆体に含まれる前記界面活性剤由来の成分及びNa原子を除去し、ケイ素原子及び酸素原子を主成分として骨格が形成されているシリカ系材料からなりかつNa原子の含有量が100ppm以下であるシリカ系メソ多孔体を得る第2の工程と、
    Al、Fe、Ga、Ti、Zr、Sn、V、Cr及びRuからなる群から選択される少なくとも一つの金属のイオンを含有する溶液を前記シリカ系メソ多孔体に接触せしめ、前記金属イオンを前記シリカ系メソ多孔体の細孔内に導入する第3の工程と、
    熱水及び/又は熱水蒸気を前記シリカ系メソ多孔体に接触せしめ、前記金属原子の含有量が800ppm以上でありかつ前記金属原子の91モル%以上が骨格内に導入されているシリカ系メソ多孔体を得る第4の工程と、
    を含むことを特徴とするシリカ系メソ多孔体の製造方法。
  4. 前記金属がAlであり、27Al−NMRの測定により得られる前記骨格内に導入されている酸素4配位Alに対応するピークの面積が、前記骨格内に導入されていない酸素6配位Alに対応するピークの面積の10倍以上であることを特徴とする請求項3記載のシリカ系メソ多孔体の製造方法。
  5. 前記溶液が、前記金属と酸との塩の水溶液であることを特徴とする請求項3又は4記載のシリカ系メソ多孔体の製造方法。
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