JP2008037672A - 多孔質材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】細孔の表面に−M=O基(Mは、Zr(IV)、Fe(III)、Mn(III〜VII)、Ti(IIIまたはIV)、Al(III)、Co(III)およびNi(IIIまたはIV)から選ばれる少なくとも1種である)を含むことを特徴とする多孔質材。多孔質材の骨格を形成する主元素はSiであり、MはSiに対して0.1mol%以上5.0mol%以下の範囲で含有されることが好ましい。
【選択図】図1
Description
更に、特許文献1のように、多孔質材の合成に水熱合成法を用いると、多孔質材の合成量が少なく、また、コストが高いため大量生産が困難であるという問題があった。また、金属元素を添加するための原料として金属アルコキシドを用いた場合、多孔質材の構造が乱れるため、十分な耐水蒸気性が得られない傾向があった。
即ち、本発明は、細孔の表面に−M=O基(Mは原子価が3以上の金属元素である)を含むことを特徴とする多孔質材である。
また、本発明は、有機テンプレートと、シリコンアルコキシドと、−M=O基(Mは原子価が3以上の金属元素である)有する化合物とを酸性水溶液中で混合し、シリコンアルコキシドを加水分解・縮重合反応させて多孔質材前駆ゾルを得る工程と、多孔質材前駆ゾルを乾燥させて多孔質材前駆ゲルを得る工程と、多孔質材前駆ゲルから有機テンプレートを除去する工程とを含むことを特徴とする多孔質材の製造方法である。
実施の形態1.
本発明に係る多孔質材は、細孔表面の少なくとも一部に金属元素Mと酸素元素との間の結合の状態が二重結合である−M=O基(Mは原子価が3以上の金属元素である)を有する。このような−M=O基が細孔表面に存在することにより、水蒸気吸脱着時の細孔付近の構造崩壊が防止され、多孔質材の耐水蒸気性を飛躍的に向上させることができる。多孔質材の耐水蒸気性をより向上させるためには、−M=O基が多孔質材の内部に比較して、その細孔の表面に高濃度で分布していることが望ましい。また、−M=O基が細孔表面に存在することにより、−M=O基と水のOH基とが相互作用し、良好な水蒸気吸脱着特性を与えることができる。ここでの金属元素Mは、原子価が3以上の金属元素であればよいが、多孔質材の耐水蒸気性をより向上させる観点から、Zr(IV)、Fe(III)、Mn(III〜VII)、Ti(IIIまたはIV)、Al(III)、Co(III)およびNi(IIIまたはIV)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、Zr(IV)およびFe(III)から選ばれる少なくとも1種であることが更に好ましい。
本発明に係る多孔質材は、有機テンプレートと、シリコンアルコキシドと、−M=O基(Mは原子価が3以上の金属元素である)有する化合物とを酸性水溶液中で混合し、シリコンアルコキシドを加水分解・縮重合反応させて多孔質材前駆ゾルを得る工程(多孔質材前駆ゾル調製工程)と、多孔質材前駆ゾルを乾燥させて多孔質材前駆ゲルを得る工程(多孔質材前駆ゲル調製工程)と、多孔質材前駆ゲルから有機テンプレートを除去する工程(有機テンプレート除去工程)とを含む方法により製造される。
まず、有機テンプレートと、多孔質材の骨格を形成する成分であるシリコンアルコキシドと、−M=O基を有する化合物とを酸性水溶液中で混合する。この原料を含む水溶液には、シリコンアルコキシド1モルに対して、通常、2モル以上、好ましくは3モル以上、更に好ましくは4モル以上の水が含まれる。また、原料を含む水溶液は酸性であればよいが、pHメーターによる測定値が0.8〜3.0の範囲になるように調整を行うことが好ましい。シリコンアルコキシドの加水分解・縮重合反応を促進させるための触媒(塩酸など)を必要に応じて原料混合液に添加してもよい。−M=O基の細孔表面における濃度をより高くするために、シリコンアルコキシドを混合する前に有機テンプレートと−M=O基を有する化合物とを予め十分に混合しておくことが望ましい。
カチオン系界面活性剤であるC16TACの使用量は、後述するシリコンアルコキシド1モルに対して、0.1〜0.3モルの範囲が望ましい。C16TACの使用量が0.1モル未満であると、有機テンプレートが形成され難くなり所望の細孔が得られなかったり、多孔質材の骨格強度が低下して構造が崩壊する可能性があるため好ましくなく、一方、0.3モルを超えると、C16TACがヘキサゴナル構造を形成し難くなり多孔質材の構造規則性が低下することがあるため好ましくない。
−M=O基を有する化合物の使用量は、後述するシリコンアルコキシドに対して0.1〜5.0モル%の範囲が望ましい。−M=O基を有する化合物の使用量が0.1モル%未満であると、耐水蒸気性が不十分となることがあるため好ましくなく、一方、5.0モル%を超えると、多孔質材の構造規則性が低下して水蒸気吸脱着特性が悪くなることがあるため好ましくない。
減圧に際しては急激な突沸を抑制するため、フラスコ内の圧力を60hPa以上200hPa以下の間に段階的に減圧することが重要である。所定の圧力までフラスコ内を減圧する時間は溶液の量や反応温度により適宜変えればよいが、0.5時間以上3時間以下が好ましい。また、減圧の際はナス型フラスコをウォーターバスにて25℃以上35℃以下の範囲に温度制御することが好ましい。溶媒除去の終点は、多孔質材前駆ゾルのpH値にて判定することができる。例えば、pHメーターで測定されたpH値が0.1以上2.5以下の範囲となれば、アルコール等の溶媒は殆ど除去されているものと判断することができる。pH値の他にも、物理的に粘度あるいは比重、光学的に屈折率あるいは反射率、およびナス型フラスコ内の残量等で判定することができる。
なお、上記ではナス型フラスコをロータリーエバポレータにて減圧処理したが、溶媒を除去する方法であれば、これに限るものではない。例えば、多孔質材前駆ゾルをビーカーに投入して、加熱と減圧による溶媒除去を行ってもよい。
続いて、ナス型フラスコ内にてロータリーエバポレータを用いて10hPa以上60hPa未満に段階的に減圧処理を行い、多孔質材前駆ゾルから水等の揮発成分を除去する(多孔質材前駆ゾルを乾燥させる)ことにより、多孔質材前駆ゲルが得られる。この工程では、フラスコ内圧力を60hPa未満に減圧させることで、多孔質材前駆ゾルが発泡し、ゾル内部に残留していた揮発成分を早急に除去することができる。所定の圧力までフラスコ内を減圧する時間は溶液の量により適宜変えればよいが、0.5以上3時間以下が好ましい。なお、上記では、ゲルを形成する際にロータリーエバポレータにて減圧処理を行ったが、噴霧乾燥法等溶媒を除去できる種々の合成方法で行っても同様の効果を得ることができる。勿論、粉体多孔質材に限らず、粒状、層状、薄膜状でも本発明の効果が得られることは言うまでもない。
多孔質材前駆ゲルをナス型フラスコから取り出し、耐熱容器に移し替えて、カチオン系界面活性剤等の有機テンプレートを除去することにより、多孔質材が得られる。有機テンプレートの除去方法は、焼成法、溶媒抽出法など種々あるが、操作の簡易さおよび完成度が高さから焼成法を採用することが好ましい。焼成温度は、通常、炉内温度350℃以上850℃以下にて行うが、カチオン系界面活性剤の分解温度を踏まえると、550℃以上650℃以下にて4〜6時間保持することが望ましい。
カチオン系界面活性剤C16TACをエタノールに入れて溶解させた(溶液1)。C16TACとエタノールとの混合比1モル:10モルとした。溶液1に多孔質材の骨格形成原料としてのTEOSを1モル加えて更に10分程度撹拌し、溶液2を調製した。−M=O基を有する化合物である硝酸ジルコニル・二水和物:ZrO(NO3)2・2H2Oと加水分解促進触媒である塩酸とを混合し、溶液3を調製した。ZrO(NO3)2・2H2Oと塩酸との混合比は45モル:1モルとした。TEOSに対するZrO(NO3)2・2H2Oの割合(以下、Zr添加量と呼ぶ)が5モル%となるように、溶液3を溶液2に加え、60分間程度撹拌して溶液4を調製した。このとき溶液4のpHは1.0〜2.5の範囲で管理した。
次に、多孔質材前駆ゲルをナス型フラスコから取り出して耐熱容器に移し替え、600℃にて5時間保持してカチオン系界面活性剤を除去し、多孔質材であるメソポーラスシリカを得た。得られたメソポーラスシリカは約300gであった。
図1から、このメソポーラスシリカの水蒸気吸着等温線はIUPAC分類のV型となり、メソ細孔内への毛管凝縮による狭い相対湿度の範囲p/p0=0.3〜0.5において、水蒸気吸着量が急激に増加し、同様の範囲でわずかに低湿度側に寄って脱着量が急変する特性を示しており、非可逆的なヒステリシス特性を有していることが分かった。2回目以降の飽和吸着量は0.05〜0.1(g/g)減少し、さらに細孔内壁のシリカ表面の親水化のため低湿度側の吸着量が増加して毛管凝縮の生じる相対湿度が低湿度側に0.05程度シフトする傾向にあるが、このシフトは2回目以降では全く変化せず、この吸着等温特性を維持しており、耐水蒸気性が高いことが分かった。
カチオン系界面活性剤としてC16TAC、および−M=O基を有する化合物として酸化水酸化鉄(III)を用い、実施例1と同様にロータリーエバポレータを用い溶媒を揮発させて多孔質材前駆ゲルを調製した後、600℃にて3時間保持してカチオン系界面活性剤を除去し、多孔質材であるメソポーラスシリカを得た。TEOSに対する酸化水酸化酸化鉄(III)の割合(以下、Fe添加量と呼ぶ)は5モル%とした。このメソポーラスシリカを用いて水蒸気加圧試験を行い、その試験前後の水蒸気吸脱着特性を比較した。図7は、実施例2のメソポーラスシリカについての水蒸気吸着等温線である。図7において、71はメソポーラスシリカ(Fe添加)の水蒸気加圧試験前の水蒸気吸脱着等温線、72はメソポーラスシリカの水蒸気加圧試験後の水蒸気吸脱着等温線を表している。図7から、細孔表面に−Fe=O基を導入したメソポーラスシリカも耐水蒸気性に優れていることが分かった。また、図8にAl添加量5モル%およびTi添加量5モル%のメソポーラスシリカそれぞれについて、相対湿度に対する窒素吸着量をプロットしたものを示した。図8において、81,83はメソポーラスシリカ(Al添加,Ti添加)の水蒸気加圧試験前の水蒸気吸脱着等温線、82,84はメソポーラスシリカ(Al添加,Ti添加)の水蒸気加圧試験後の水蒸気吸脱着等温線を表している。
なお、ここには図示しないが、発明者らは、金属元素Fe、AlおよびTiの他に、金属元素Co、Ni、Mn、Mgでも耐水蒸気性が向上することを確認した。
カチオン系界面活性剤としてC12TAC、および−M=O基を有する化合物として硝酸ジルコニルを用い、実施例1と同様にロータリーエバポレータを用い溶媒を揮発させて多孔質材前駆ゲルを調製した後、600℃にて5時間保持してカチオン系界面活性剤を除去し、多孔質材であるメソポーラスシリカを得た。水に対する吸着条件が相対湿度10〜60%にて毛管凝縮を生じることができ、且つ相対湿度30%以下にて水蒸気を脱着することが可能な優れた水分吸脱着性能を有するメソポーラスシリカを大量に合成することができた。
カチオン系界面活性剤としてC18TAC、および−M=O基を有する化合物として硝酸ジルコニルを用い、実施例1と同様にロータリーエバポレータを用い溶媒を揮発させて多孔質材前駆ゲルを調製した後、600℃にて5時間保持してカチオン系界面活性剤を除去し、多孔質材であるメソポーラスシリカを得た。水に対する吸着条件が相対湿度40〜60%にて毛管凝縮を生じることが可能な優れた水分吸脱着性能を有するメソポーラスシリカを大量に合成することができた。
カチオン系界面活性剤としてC16TACを用い、金属元素を全く添加せずに、実施例1と同様にロータリーエバポレータを用い溶媒を揮発させて多孔質材前駆ゲルを調製した後、600℃にて5時間保持してカチオン系界面活性剤を除去し、メソポーラスシリカを得た。このメソポーラスシリカを用いて水蒸気加圧試験を行い、その試験前後の水蒸気吸脱着特性を比較した。
図9は、比較例1のメソポーラスシリカについての水蒸気吸着等温線である。図9において、91はメソポーラスシリカ(比較例1)の水蒸気加圧試験前の水蒸気吸脱着等温線、92はメソポーラスシリカの水蒸気加圧試験後の水蒸気吸脱着等温線を表している。図9から分かるように、試験の前には相対湿度0.35〜0.45の範囲に急峻な吸着量増加が見られ、飽和水蒸気量は0.5(g/g)に達し、相対湿度0.32〜0.38の範囲で急激な水脱着が生じたが、水蒸気加圧試験後は吸脱着ともに急峻な挙動ではなくなり、相対湿度0.35からブロードな曲線を描きながら相対湿度1.0まで吸着量が増加し続けた。脱着時も同様に相対湿度1.0から0.35まで水の脱着が続く挙動を示した。
図10に、比較例1のメソポーラスシリカのX線回折パターンを示した。図10において、101はメソポーラスシリカ(比較例1)の水蒸気加圧試験前のXRDパターン、102はメソポーラスシリカの水蒸気加圧試験後のXRDパターンを表している。水蒸気加圧試験前は(100)面に由来するピークの強度が高く、シャープなパターンであり、良好なヘキサゴナル構造を有していたが、水蒸気加圧試験後は、構造の一部が崩壊したため、ピーク強度が小さく、形状もブロードになった。
カチオン系界面活性剤としてC16TACを用い、−M=O基を有する化合物の代わりにZrイソプロポキシド(ZrOiPr)4を用いて実施例1と同様にロータリーエバポレータを用い溶媒を揮発させて多孔質材前駆ゲルを調製した後、600℃にて5時間保持してカチオン系界面活性剤を除去し、メソポーラスシリカを得た。なお、Zr添加量は5.0モル%とした。このメソポーラスシリカを用いて水蒸気加圧試験および耐アルカリ(pH12)試験を行い、それら試験前後のX線回折パターンおよび窒素吸着特性を比較した。図11に、比較例2のメソポーラスシリカのX線回折パターンを示した。図11において、111はメソポーラスシリカの初期のXRDパターン、112はメソポーラスシリカの水蒸気加圧試験後のXRDパターン、113はメソポーラスシリカの耐アルカリ(pH12)試験後のXRDパターンを表している。また、図12は、比較例2のメソポーラスシリカについて、相対湿度に対する窒素吸着量をプロットしたものである。図12において、121はメソポーラスシリカの初期の窒素吸脱着等温線、122はメソポーラスシリカの水蒸気加圧試験後の窒素吸脱着等温線、123はメソポーラスシリカの耐アルカリ(pH12)試験後の窒素吸脱着等温線を表している。
図11から、試験前はおよそ2θ=3.0(degree)付近に(100)面に由来するピーク強度が6000countsあったが、水蒸気加圧試験後はピーク強度が5000countsに低下した。形状もややブロードとなり、細孔のヘキサゴナル構造の一部が崩壊していることが分かる。さらに、耐アルカリ試験後は上記ピークがほとんど見られないまで構造が崩壊しており、耐水蒸気性および耐アルカリ性ともに不十分であると言える。また、図12に示したN2吸着特性においても、水蒸気加圧試験および耐アルカリ試験の後は飽和N2吸着量が著しく減少していることから、構造の崩壊が裏付けられた。
このように、ZrとOとの間に二重結合を有さない金属アルコキシドを用いても、耐水蒸気性を向上させることはできなかった。
Claims (9)
- 細孔の表面に−M=O基(Mは原子価が3以上の金属元素である)を含むことを特徴とする多孔質材。
- 前記Mが、Zr(IV)、Fe(III)、Mn(III〜VII)、Ti(IIIまたはIV)、Al(III)、Co(III)およびNi(IIIまたはIV)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の多孔質材。
- 前記多孔質材の骨格を形成する主元素がSiであり、前記Mが前記Siに対して0.1mol%以上5.0mol%以下の範囲で含有されることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質材。
- 前記多孔質材の骨格を形成する主成分が、SiO2であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質材。
- 細孔配列がヘキサゴナル構造の三次元規則性を有し、細孔径が0.5nm〜4.5nmの範囲にあり、比表面積が800m2/g以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質材。
- 有機テンプレートと、シリコンアルコキシドと、−M=O基(Mは原子価が3以上の金属元素である)有する化合物とを酸性水溶液中で混合し、シリコンアルコキシドを加水分解・縮重合反応させて多孔質材前駆ゾルを得る工程と、
多孔質材前駆ゾルを乾燥させて多孔質材前駆ゲルを得る工程と、
多孔質材前駆ゲルから有機テンプレートを除去する工程と
を含むことを特徴とする多孔質材の製造方法。 - 前記有機テンプレートと、前記−M=O基を有する化合物とを予め混合しておくことを特徴とする請求項6に記載の多孔質材の製造方法。
- 前記−M=O基を有する化合物が、前記金属元素Mに結合している−NO3基、−SO3基、−OH基および−Cl基から選ばれる少なくとも1つの基を更に有することを特徴とする請求項6または7に記載の多孔質材の製造方法。
- 前記−M=O基を有する化合物として、硝酸ジルコニル水和物、酸化水酸化鉄(III)および酸化水酸化マンガン(III)から選ばれる少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項8に記載の多孔質材の製造方法。
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