JP2006306707A - 酸化物複合体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 加熱により重合する第1溶媒にメタロセン又はその誘導体を溶解させた第1溶液を無機多孔体の細孔に含浸させる第1含浸工程と、前記多孔体を加熱し、前記第1溶媒を重合させる重合工程と、前記無機多孔体を、酸素を含む雰囲気下において400℃以上で熱処理し、前記メタロセン又はその誘導体を熱分解させることによって第1金属酸化物を生成させる第1熱処理工程とを備えた酸化物複合体の製造方法、及び、このような方法により得られる酸化物複合体。
【選択図】 図1
Description
ナノ粒子は、凝集を防ぐために、通常、不活性なマトリックス(例えば、シリカ多孔体)中に導入された状態で使用される。また、ナノ粒子のマトリックス中への導入は、合成が困難な不安定相を安定化させる作用もある。
例えば、鉄(III)酸化物には、α−Fe2O3(ヘマタイト)、γ−Fe2O3(マグヘマイト)、ε−Fe2O3、β−Fe2O3などの多形がある。これらの内、ε−Fe2O3は、微粒子の形態では極めて大きな保磁力を示すことが知られているが、単相のε−Fe2O3は、一般に合成が困難である。一方、鉄(III)酸化物をマトリックス中に導入する場合において、導入条件を最適化すると、ε−Fe2O3を生成させることができる。
例えば、非特許文献1には、比表面積1000〜1300m2/gのメソポーラスシリカ(MCM−41、MCM−48)の細孔内に0.5Mの硝酸鉄(Fe(NO3)3)溶液を含浸させ、これを乾燥した後、空気中において673Kで6時間仮焼するメソポーラスシリカ−酸化鉄複合体の製造方法が開示されている。同文献には、このような方法によってFeの含有量が5.3〜7.8wt%であるメソポーラスシリカ−酸化鉄複合体が得られる点、及び、酸化鉄の一部(10〜12nm)は、ホスト構造の外表面にあり、他の一部(3〜4nm)は、メソポア内に導入されている点が記載されている。
しかしながら、鉄化合物は、一般に、溶媒への溶解度が相対的に小さいために、細孔内に導入できる鉄の濃度には限界がある。また、硝酸鉄や塩化鉄のような比較的溶解度の高い鉄化合物は、融点が低く、加熱により溶媒を蒸発させる際に、鉄化合物がその蒸気圧により細孔外へ出やすいために、酸化鉄の一部がシリカの外表面に析出する場合がある。また、シリカの細孔径が小さくなるほど溶液が細孔内に入りにくくなるので、酸化鉄の含有量が低下する。さらに、非特許文献1、2には、得られた試料の磁化曲線が明記されておらず、飽和磁化等の磁気的特性は不明である。
非特許文献3に開示されている、いわゆる「ゾルゲルプロセス」を用いると、磁性酸化鉄を多量に含む複合体を合成することができる。しかしながら、この方法で得られる粉末の形状は、不定形であり、フォトニッククリスタル等への応用は困難である。
一方、非特許文献4に開示されている、いわゆる「ストーバー法」を用いると、単分散球状の複合体を合成することができる。しかしながら、この方法では、酸化鉄含有量は0.5wt%であり、飽和磁化も0.37emu/gと小さい(非特許文献4の第23頁左欄第20行〜第23行参照)。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、無機多孔体の細孔内に相対的に多量の酸化物ナノ粒子が導入され、かつ、その形状が単分散球状である酸化物複合体及びその製造方法を提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、酸化物ナノ粒子を含み、かつ、磁気特性に優れた酸化物複合体及びその製造方法を提供することにある。
この場合、前記第1熱処理工程で得られた酸化物複合体の細孔内に、金属化合物を第2溶媒に溶解させた第2溶液を含浸させる第2含浸工程と、前記酸化物複合体を、酸素を含む雰囲気下において400℃以上で加熱し、前記酸化物複合体内に第2金属酸化物を生成させる第2熱処理工程とをさらに備えていても良い。
また、前記第1熱処理工程又は前記第2熱処理工程で得られた酸化物複合体を、不活性雰囲気又は還元雰囲気下において400℃以上で熱処理し、前記酸化物複合体内に第3金属酸化物を生成させる第3熱処理工程をさらに備えていても良い。
また、本発明に係る酸化物複合体は、このような方法により得られたものからなる。
さらに、第1金属酸化物を含む酸化物複合体に対し、さらに金属化合物を導入し、所定の条件下で熱処理を行うと、第1金属酸化物と金属化合物とが反応し、第2金属酸化物ナノ粒子を含む酸化物複合体が得られる。また、第1金属酸化物又は第2金属酸化物のナノ粒子を含む酸化物複合体を不活性雰囲気下又は還元雰囲気下で加熱すると、ナノ粒子中の酸素の一部が取り除かれた第3金属酸化物ナノ粒子を含む酸化物複合体が得られる。
本発明の第1の実施の形態に係る酸化物複合体の製造方法は、第1含浸工程と、重合工程と、第1熱処理工程とを備えている。また、本発明の第1の実施の形態に係る酸化物複合体は、本実施の形態に係る方法により得られたものからなる。
本発明において、第1溶媒には、加熱により重合するもの(熱重合性溶媒)を用いる。また、無機多孔体への酸化物の導入量を多くするためには、第1溶媒は、メタロセン又はその誘導体の溶解度が大きいものが好ましい。このような熱重合性溶媒としては、具体的には、フルフリルアルコール、アニリン、スチレンなどがある。これらの中でも、フルフリルアルコールは、重合が容易であり、かつ、ある種のメタロセン又はその誘導体を大量に溶解させることができるので、第1溶媒として特に好適である。
なお、メタロセン又はその誘導体に含まれる金属元素は、無機多孔体に含まれる金属元素と異なるものであっても良く、あるいは、同一であっても良い。
例えば、第1溶媒としてフルフリルアルコールを用いる場合において、フルフリルアルコールへの溶解度を著しく向上させるためには、メタロセン誘導体は、アルデヒド基やヒドロキシプロピル基等の含酸素有機官能基が結合しているものが好ましい。
また、例えば、第1溶媒としてスチレンを用いる場合において、スチレンへの溶解度を著しく向上させ、かつ、スチレンと共重合させるためには、メタロセン誘導体は、ビニル基が結合しているものが好ましい。
無機多孔体を構成する無機材料は、後述する第1熱処理工程(並びに、第2熱処理工程及び第3熱処理工程)において、その形状を維持できる程度の耐酸化性を有するものであればよい。このような無機材料としては、
(1) シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、アルミノシリケート、チタノシリケート等の酸化物、
(2) リン酸アルミニウム、リン酸ジルコニウム、アパタイト等のリン酸塩化合物、
などがある。
特に、シリカは、Fe、Co及び/又はNiを含む鉄系酸化物に対して不活性であり、かつ、通常の合成法では得られない不安定相(例えば、ε−Fe2O3)を安定化させる作用があるので、無機多孔体を構成する無機材料として好適である。
ここで、「球状」とは、同一条件下で製造された複数個(好ましくは、20個以上)の粒子を顕微鏡等で観察した場合において、各粒子の真球度の平均値が、13%以下であることをいう。また、「真球度」とは、各粒子の外形の真円からのずれの程度を表す指標であって、粒子の表面に接する最小の外接円の半径(r0)に対する、外接円と粒子表面の各点との半径方向の距離の最大値(Δrmax)の割合(=Δrmax×100/r0(%))で表される値をいう。本発明に係る酸化物複合体をフォトニッククリスタル、ドラッグデリバリー等に応用する場合において、高い特性を得るためには、無機多孔体粉末の真球度は、小さいほど良い。真球度は、さらに好ましくは、7%以下、さらに好ましくは、3%以下である。
ここで、「単分散」とは、次の(1)式で表される単分散度が、10%以下であることをいう。本発明に係る酸化物複合体をフォトニッククリスタル、ドラッグデリバリー等に応用する場合において、高い特性を得るためには、単分散度は、小さいほど良い。単分散度は、さらに好ましくは、5%以下である。
単分散度=(粒子径の標準偏差/平均粒子径)×100(%) ・・・(1)
第1熱処理は、メタロセン又はその誘導体を含むポリマを熱分解させ、有機物を酸化除去するために、酸素を含む雰囲気下(例えば、大気中、純酸素中など)で行う。
また、熱処理温度は、400℃以上が好ましい。熱処理温度が400℃未満であると、熱分解が完全に進行せず、有機物が残留するので好ましくない。
さらに、熱処理時間は、目的とする組成及び特性を有する酸化物複合体が得られるように、熱処理温度に応じて、最適な時間を選択する。
例えば、メタロセン又はその誘導体を酸化させることにより得られる第1金属酸化物を触媒として用いる場合において、高い触媒活性を得るためには、第1金属酸化物表面は、露出していることが好ましい。このような場合には、無機多孔体の細孔が熱処理によって閉塞しないように、相対的に低温で熱処理するのが好ましい。
例えば、無機多孔体としてメソ孔を有するシリカ多孔体を用い、細孔内に酸化鉄を生成させる場合において、熱処理温度を700〜900℃とすると、細孔内にγ−Fe2O3ナノ粒子を生成させることができる。熱処理温度を900℃より高くすると、メソ孔構造は壊れ、細孔は閉塞するが、シリカと酸化鉄ナノ粒子の複合体は得られ、熱処理温度が1000℃の場合にはγ−Fe2O3ナノ粒子がシリカマトリックスに分散した複合体が、また、熱処理温度が1100℃〜1200℃の場合にはε−Fe2O3ナノ粒子がシリカマトリックスに分散した複合体が得られる。熱処理温度が1000〜1100℃の範囲では、γ−Fe2O3とε−Fe2O3がシリカと共存する。熱処理温度が1200℃を超えると、シリカが一部溶融するため好ましくない。
この場合において、メタロセン又はその誘導体を含む第1溶液の含浸条件を最適化すると、第1金属酸化物の含有量が5wt%以上、10wt%以上、あるいは、15wt%以上である酸化物複合体が得られる。また、含浸−重合−熱処理を複数回繰り返すと、第1金属酸化物の含有量が20%以上、あるいは、30%以上である酸化物複合体が得られる。
また、球状の無機多孔体を用いた場合において、熱処理条件を最適化すると、真球度が13%以下、7%以下、あるいは、3%以下である球状の酸化物複合体が得られる。
また、単分散球状の無機多孔体を用いた場合において、熱処理条件を最適化すると、単分散度が10%以下、あるいは、5%以下である単分散球状の酸化物複合体が得られる。
さらに、シリカを含む単分散球状メソ多孔体、及び、フェロセン又はその誘導体を出発原料に用いた場合において、合成条件を最適化すると、平均粒径が50nm〜2μm(あるいは、100nmから1μm)であり、かつ、5wt%以上のγ−Fe2O3ナノ粒子又はε−Fe2O3ナノ粒子を含む単分散球状シリカ−酸化鉄複合体が得られる。
本実施の形態において、第1熱処理工程における熱処理温度は、無機多孔体に含まれる細孔が閉塞しない温度であれば良い。細孔内に形成される第1金属酸化物は、一般に、熱処理温度が低くなるほどアモルファス状態になりやすく、熱処理温度が高くなるほど結晶化しやすくなる。熱処理温度は、第1金属酸化物がアモルファス状態となる温度及び結晶状態となる温度のいずれであっても良い。特に、第1金属酸化物がアモルファス状態となる温度で熱処理を行うと、後述する第2熱処理工程において反応を容易に進行させることができるという利点がある。
無機多孔体の細孔を閉塞させず、かつ、第1金属酸化物をアモルファス状態に止めることができる最適な温度は、無機多孔体及び第1金属酸化物の組成、第1金属酸化物の導入量等に応じて異なる。例えば、無機多孔体がシリカを主成分とするものからなり、かつ、第1金属酸化物が酸化鉄を主成分とするものである場合において、アモルファス状の酸化鉄を生成させるためには、熱処理温度は、400〜600℃が好ましい。
第1熱処理工程に関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
「金属化合物」とは、金属元素を含み、かつ、第2溶媒に溶解させることが可能な化合物をいう。また、溶媒可溶性の金属化合物の中には、溶液のpHが酸性側又はアルカリ性側にずれるものがある。pHのずれが大きくなると、無機多孔体又は酸化物複合体が溶解する場合がある。そのため、金属化合物は、第2溶媒に溶解させることにより得られる第2溶液が無機多孔体及び酸化物複合体を溶解させない化合物が好ましい。
例えば、第1金属酸化物がFeを含む酸化物である場合において、第2溶液のpHが酸性側に大きくずれると、第1金属酸化物が溶解する場合がある。この場合、金属化合物は、第2溶液のpHが3以上になるものが好ましく、さらに好ましくは、4以上である。
また、例えば、無機多孔体がシリカを主成分とする場合において、第2溶液のpHがアルカリ性側に大きくずれると、無機多孔体が溶解する場合がある。この場合、金属化合物は、第2溶液のpHが9以下になるものが好ましく、さらに好ましくは、8以下である。
また、これらの金属元素を含む金属化合物としては、
(1) 塩化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩などの塩類、
(2) メタロセン、
(3) アルコキシド、
(4) アセチルアセトナート、ビピリジン錯体などの金属錯体、
などがある。
(1) 水、アルコールなどの有機溶媒、又は、これらの混合物、
(2) フルフリルアルコール、アニリン、スチレンなどの熱重合性の溶媒、
などがある。
第2溶液中の金属化合物の濃度は、特に限定されるものではなく、金属化合物の第2溶媒への溶解度、酸化物複合体への金属化合物の導入量等に応じて最適な濃度を選択すればよい。一般に、金属化合物の濃度が高くなるほど、1回の含浸処理で多量の金属化合物を細孔内に導入することができる。
第2溶液中に酸化物複合体を加えると、酸化物複合体の細孔内に第2溶液が含浸する。第2溶液を含浸させる際に、必要に応じて、超音波振動の付与、加温、脱気等の処理を施しても良い。含浸後、乾燥させ、あるいは、熱重合性の溶媒を重合させると、金属化合物を細孔内に固定することができる。
第2熱処理は、金属化合物を熱分解させ、酸化物(アモルファス状態にあるものを含む)にするために、酸素を含む雰囲気下(例えば、大気中、純酸素中など)で行う。
第2熱処理工程における熱処理温度は、400℃以上が好ましい。熱処理温度が400℃未満であると、熱分解が不十分となる。
さらに、熱処理時間は、目的とする組成及び特性を有する酸化物複合体が得られるように、熱処理温度に応じて最適な時間を選択する。一般に、熱処理時間が長くなるほど、相対的に短時間で第2金属酸化物の結晶化又は複合酸化物化が進行する。
一般に、熱処理温度が低くなるほど、第2金属酸化物は、アモルファス状態となりやく、あるいは、第1金属酸化物と金属化合物が酸化することにより生ずる金属酸化物の混合物になりやすい。一方、熱処理温度が高くなるほど、第2金属酸化物は、結晶状態となりやすく、あるいは、第1金属酸化物と金属化合物が酸化することにより生ずる金属酸化物とが反応して複合酸化物になりやすい。特に、第2金属酸化物を磁性材料として機能させる場合には、相対的に高温で熱処理を行い、第2金属酸化物を結晶化させ、あるいは、複合酸化物化するのが好ましい。さらに、球状の酸化物複合体を得るためには、熱処理温度は、無機多孔体の形状を維持できる温度以下が好ましい。
例えば、無機多孔体としてメソ孔を有するシリカ多孔体を用い、細孔内に第1金属酸化物としてアモルファス状の酸化鉄を生成させた場合において、細孔内にさらにCo化合物を導入し、CoFe2O4を生成させるときには、熱処理温度は、800〜1000℃が好ましい。
なお、上述した第2含浸工程及び第2熱処理工程は、必要に応じて、複数回繰り返しても良い。
(1) 一般式:MFe2O4で表されるスピネル型フェライト(但し、Mは、Mn、Ni、Co、Znなどから選ばれるいずれか1以上の2価の金属元素)、
(2) 一般式:M3Fe5O12で表されるガーネット型フェライト(但し、Mは、希土類金属から選ばれるいずれか1以上の3価の金属元素)、
(3) 一般式:MFe12O19で表されるマグネトプラムバイト型フェライト(但し、Mは、Ba、Sr、Pbから選ばれるいずれか1以上の2価の金属元素)、
(4) 一般式:MFeO3で表されるペロブスカイト型フェライト(但し、Mは、希土類金属から選ばれるいずれか1以上の3価の金属元素)、
などがある。
なお、酸化物複合体内には、第2含浸条件、第2熱処理条件等に応じて、上述したスピネル型フェライト等以外に、第1金属酸化物、金属化合物が酸化することにより得られる金属酸化物などが含まれる場合がある。
また、球状の無機多孔体を用いた場合において、第1及び第2熱処理条件を最適化すると、真球度が13%以下、7%以下、あるいは、3%以下である球状の酸化物複合体が得られる。同様に、単分散球状の無機多孔体を用いた場合において、第1及び第2熱処理条件を最適化すると、単分散度が10%以下、あるいは、5%以下である単分散球状の酸化物複合体が得られる。
さらに、シリカを含む単分散球状メソ多孔体、及び、フェロセン又はその誘導体を出発原料に用いた場合において、合成条件を最適化すると、平均粒径が50nm〜2μm(あるいは、100nmから1μm)であり、かつ、5wt%以上の第2酸化物ナノ粒子を含む単分散球状シリカ−酸化物複合体が得られる。
本実施の形態において、第1熱処理工程における熱処理温度は、後述する第3熱処理工程において、第1金属酸化物を還元できる温度であれば良い。すなわち、熱処理温度は、無機多孔体に含まれる細孔を閉塞させる温度でも良く、あるいは、第1金属酸化物を結晶化させる温度でも良い。但し、第1金属酸化物の還元を容易化するためには、第1熱処理工程の熱処理温度は、細孔を閉塞させず、かつ、第1金属酸化物を結晶化させない温度が好ましい。一般に、熱処理温度が相対的に低くなるほど、無機多孔体に含まれる細孔を閉塞させず、かつ、第1金属酸化物をアモルファス状態に止めることができる。
無機多孔体の細孔を閉塞させず、かつ、第1金属酸化物をアモルファス状態に止めることができる最適な温度は、無機多孔体及び第1金属酸化物の組成、第1金属酸化物の導入量等に応じて異なる。例えば、無機多孔体がシリカを主成分とするものからなり、かつ、第1金属酸化物が酸化鉄を主成分とするものである場合において、アモルファス状の酸化鉄を生成させるためには、熱処理温度は、400〜600℃が好ましい。
第1熱処理工程に関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
第3熱処理は、第1金属酸化物を還元させるために、不活性雰囲気下又は還元雰囲気下で行う。第1金属酸化物がアモルファス状態である場合、比較的容易に還元が進行するので、第3熱処理は、N2雰囲気、Ar雰囲気などの不活性雰囲気下で行うことができる。一方、第1金属酸化物の結晶化が進行している場合、還元が進行しにくいので、第3熱処理は、水素雰囲気などの還元雰囲気下で行うのが好ましい。
第3熱処理工程における熱処理温度は、400℃以上が好ましい。熱処理温度が400℃未満であると、還元が不十分となる。
熱処理時間は、目的とする組成及び特性を有する酸化物複合体が得られるように、熱処理温度に応じて、最適な時間を選択する。一般に、熱処理温度が高くなるほど、相対的に短時間で還元を進行させることができる。
熱処理温度は、少なくとも第1金属酸化物に含まれる金属元素の価数が変化する温度であればよい。一般に、熱処理温度が高くなるほど及び/又は熱処理時の雰囲気の還元性が強くなるほど、相対的に短時間で金属元素の価数を変化させることができる。また、球状の酸化物複合体を得るためには、熱処理温度は、無機多孔体の形状を維持できる温度以下が好ましい。
例えば、第1金属酸化物がアモルファス状の酸化鉄である場合において、N2雰囲気中で熱処理を行うときには、熱処理温度は、900℃以上が好ましい。
なお、本実施の形態に係る方法は、単独で用いても良いが、第2の実施の形態と組み合わせて用いても良い。すなわち、金属化合物の細孔内への含浸(第2含浸工程)、及び酸素を含む雰囲気下での焼成(第2熱処理工程)を行った酸化物複合体に対し、還元雰囲気下での焼成(第3熱処理工程)を行っても良い。
なお、酸化物複合体内には、従前の工程の条件に応じて、第3金属酸化物以外に、第1金属酸化物、第2金属酸化物、金属化合物を酸化させることにより得られる金属酸化物などが含まれる場合がある。
また、球状の無機多孔体を用いた場合において、第1及び第3熱処理条件(並びに、第2熱処理条件)を最適化すると、真球度が13%以下、7%以下、あるいは、3%以下である球状の酸化物複合体が得られる。
同様に、単分散球状の無機多孔体を用いた場合において、第1及び第3熱処理条件(並びに、第2熱処理条件)を最適化すると、単分散度が10%以下、あるいは、5%以下である単分散球状の酸化物複合体が得られる。
さらに、シリカを含む単分散球状メソ多孔体、及び、フェロセン又はその誘導体を出発原料に用いた場合において、合成条件を最適化すると、平均粒径が50nm〜2μm(あるいは、100nmから1μm)であり、かつ、5wt%以上の第3金属酸化物ナノ粒子を含む単分散球状シリカ−酸化物複合体が得られる。
無機多孔体の熱処理を行う場合において、熱処理条件を最適化すると、無機多孔体の外形がほぼそのまま維持された酸化物複合体が得られる。すなわち、無機多孔体として球状メソ多孔体(あるいは、単分散球状メソ多孔体)を用いる場合において、熱処理条件を最適化すると、球状(又は、球状単分散)の酸化物複合体が得られる。
また、無機多孔体として細孔が中心から表面に向かって放射状に伸びている球状メソ多孔体を用いる場合において、熱処理条件を最適化すると、放射状に伸びた細孔内に金属酸化物ナノ粒子が担持された酸化物複合体が得られる。
(1)水に適量の界面活性剤とシリカ原料(及び必要に応じて他の原料)とを加え、塩基性条件下でシリカ原料(及び必要に応じて添加された他の原料)を加水分解させ、
(2)溶液から生成物を分離し、界面活性剤を除去すること、
により得られる(例えば、特開平10−328558号公報、特開2004−2161号公報等参照)。
(1) テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン(シラン化合物)、
(2) トリメトキシシラノール、トリエトキシシラノール、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシ−3−グリシドキシプロピルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン(シラン化合物)、
(3) ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン等のジアルコキシシラン(シラン化合物)、
(4) メタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)、オルトケイ酸ナトリウム(Na4SiO4)、二ケイ酸ナトリウム(Na2Si2O5)、四ケイ酸ナトリウム(Na2Si4O9)、水ガラス(Na2O・nSiO2、n=2〜4)等のケイ酸ナトリウム、
(5) カネマイト(NaHSi2O5・3H2O)、二ケイ酸ナトリウム結晶(α、β、γ、δ−Na2Si2O5)、マカタイト(Na2Si4O9)、アイアライト(Na2Si8O17・xH2O)、マガディアイト(Na2Si14O17・xH2O)、ケニヤイト(Na2Si20O41・xH2O)等の層状シリケート、
(6) Ultrasil(Ultrasil社)、Cab−O−Sil(Cabot社)、HiSil(Pittsburgh Plate Glass社)等の沈降性シリカ、コロイダルシリカ、Aerosil(Degussa−Huls社)等のフュームドシリカ、
などを用いることができる。
なお、これらのシリカ原料は、単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。但し、2種以上のシリカ原料を用いると、球状メソ多孔体の製造時の反応条件が複雑化する場合がある。このような場合には、シリカ原料は、単独で使用するのが好ましい。
球状メソ多孔体に含まれるシリカの含有量は、特に限定されるものではなく、酸化物複合体の用途等に応じて、最適な含有量を選択する。
(1) アルミニウムブトキシド(Al(OC4H9)3)、アルミニウムエトキシド(Al(OC2H5)3)、アルミニウムイソプロポキシド(Al(OC3H7)3)等のAlを含むアルコキシド類、及び、アルミン酸ナトリウム、塩化アルミニウム等の塩類、
(2) チタンイソプロポキシド(Ti(Oi−C3H7)4)、チタンブトキシド(Ti(OC4H9)4)、チタンエトキシド(Ti(OC2H5)4)等のTiを含むアルコキシド、
(3) マグネシウムメトキシド(Mg(OCH3)2)、マグネシウムエトキシド(Mg(OC2H5)2)等のMgを含むアルコキシド、
(4) ジルコニウムイソプロポキシド(Zr(Oi−C3H7)4)、ジルコニウムブトキシド(Zr(OC4H9)4)、ジルコニウムエトキシド(Zr(OC2H5)4)等のZrを含むアルコキシド、
などを用いることができる。
CH3−(CH2)n−N+(R1)(R2)(R3)X− ・・・(2)
(但し、R1、R2、R3は、炭素数が1〜3であって、同一又は異なるアルキル基、Xはハロゲン原子、nは8〜21の整数。)
(2)式で表される界面活性剤の中でも、アルキルトリメチルアンモニウムハライド(例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムハライド、ノニルトリメチルアンモニウムハライド、デシルトリメチルアンモニウムハライド、ウンデシルトリメチルアンモニウムハライド、ドデシルトリメチルアンモニウムハライド等)が好ましく、特に、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド又はアルキルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
同様に、溶液中の界面活性剤の濃度は、0.005mol/L以上0.04mol/L以下が好ましく、さらに好ましくは、0.007mol/L以上0.03mol/L以下、さらに好ましくは、0.008mol/L以上0.018mol/L以下である。
さらに、界面活性剤/シリカ原料(及び必要に応じて添加される他の原料)の比率(モル比)は、0.1以上3以下が好ましく、さらに好ましくは、0.2以上2.7以下、さらに好ましくは、0.3以上2.5以下である。
一方、シリカ原料としてシラン化合物以外の化合物を用いる場合には、予め、水(又は、必要に応じてアルコールが添加されたアルコール水溶液)にシリカ原料を加えて、水酸化ナトリウム等の塩基性物質を加える。塩基性物質の添加量は、シリカ原料中のケイ素原子と等モル程度の量とするのが好ましい。シラン化合物以外のシリカ原料を含む溶液に塩基性物質を加えると、シリカ原料中に既に形成されているSi−(O−Si)4結合の一部が切断され、均一な溶液が得られる。溶液中に含まれる塩基性物質の量は、球状メソ多孔体の収量や気孔率に影響を及ぼすので、均一な溶液が得られた後、溶液に希薄酸溶液を加え、溶液中に存在する過剰の塩基性物質を中和させる。希薄酸溶液の添加量は、シリカ原料中のケイ素原子に対して1/2〜3/4倍モルに相当する量が好ましい。
界面活性剤を除去する方法としては、具体的には、
(1) 前駆体を大気中又は不活性雰囲気下において、所定温度(300〜1000℃、好ましくは、400〜700℃)で所定時間(30分以上、好ましくは、1時間以上)焼成する焼成方法、
(2) 前駆体を界面活性剤の良溶媒(例えば、少量の塩酸を含むメタノール)中に浸漬し、所定の温度(例えば、50〜70℃)で加熱しながら攪拌し、前駆体中の界面活性剤を抽出するイオン交換法、
などがある。
多孔体の細孔内に金属酸化物の前駆体を含浸させ、前駆体を酸化させることにより酸化物複合体を製造する場合において、前駆体として硝酸鉄のような金属塩を用いる時には、金属塩を適当な溶媒に溶解させる必要がある。しかしながら、金属塩の溶媒に対する溶解度は相対的に小さいので、1回の処理によって細孔内に導入できる金属酸化物の量には限界がある。
これに対し、メタロセン又はその誘導体は、ある種の溶媒に対して極めて多量に溶解する。例えば、フェロセンカルバルデヒドなどのフェロセン誘導体のフルフリルアルコールへの溶解度は、2g/mL以上である。そのため、1回の処理によって、従来より多量の金属酸化物を細孔内に導入することができる。また、含浸・重合・熱処理を複数回繰り返すことによって、さらに多量の金属酸化物を細孔内に導入することができる。
これに対し、メタロセン又はその誘導体を溶解させる溶媒として、熱重合性溶媒を用いると、重合処理によってメタロセン又はその誘導体をポリマーマトリックスに固定することができる。そのため、熱処理中にメタロセン又はその誘導体が細孔外に飛散しにくくなり、細孔内に多量の金属酸化物を生成させることができる。
また、メソ多孔体シリカ及びフェロセン又はその誘導体を出発原料に用いた場合において、製造条件を最適化すると、細孔内に強磁性を示すγ−Fe2O3やε−Fe2O3を生成させることができる。なお、本発明に係る方法により、α−Fe2O3が生成しにくくなる理由は不明であるが、ナノ細孔中での粒成長抑制、及び、酸化鉄とシリカとの相互作用が関係していると考えられる。
さらに、シリカは、シランカップリング剤による修飾が可能であるので、特殊な官能基や配位子を固定させることで酵素等を固定化することもできる。そのため、メソ多孔体シリカをホストとし、酸化鉄のような磁性材料を複合化すれば、磁力を利用したドラッグデリバリーへの応用展開も可能となる。
さらに、スピネル型フェライトは、複数のメタロセン又はその誘導体を細孔内に導入し、酸化雰囲気下で熱処理する方法でも生成させることができる。しかしながら、フェロセン以外のメタロセン化合物は、一般に高価である。これに対し、安価なフェロセンと金属化合物を出発原料に用いると、種々の組成を有する磁性化合物を含む酸化物複合体を低コストで製造することができる。
同様に、第2熱処理工程で得られた酸化物複合体を不活性雰囲気又は還元雰囲気下でさらに焼成すると、第2金属酸化物に含まれる金属元素の全部又は一部が還元された第3金属酸化物を生成させることができる。
[1. 単分散球状メソ多孔体シリカの作製]
水5L、メタノール5Lに、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド35.2g(0.014mol/L)及び1規定水酸化ナトリウム22.8mLを添加した。この溶液に、テトラメトキシシラン13.2g(0.011mol/L)を添加し、完全に溶解させた。溶解後、約200秒で白色粉末が析出した。この溶液をさらに室温で8時間攪拌した後、溶液を一晩放置した。放置後、溶液の濾過及び洗浄を3回繰り返し、白色粉末を得た。この白色粉末を熱風乾燥機で3日間乾燥させた後、550℃で焼成することにより有機成分を除去し、単分散球状メソ多孔体シリカを得た。窒素吸着特性からBJH(Barret-Joyner-Halenda)法により求めたシリカの細孔径は、21.0Å(2.10nm)であった。
フェロセンカルバルデヒド2.14g(0.01mol)をフルフリルアルコール1mLに溶解した。この溶液0.7mLを[1.]で得られた単分散球状メソ多孔体シリカ粉末1.0gに含浸させた。これを150℃で24時間加熱し、細孔内でポリマを重合させた。さらに、これを大気中、1000℃で3時間加熱し、単分散球状シリカ−酸化鉄複合体を得た。
図1に、得られた複合体の走査電子顕微鏡写真を示す。粒子の平均粒子径は0.52μm、単分散度は4.2%であった。
図2に、この複合体のXRDパターンを示す。アモルファスシリカに対応する20°付近のピーク以外の回折パターンは、γ−Fe2O3のそれと一致した。また、EDXから求めたSi/Fe比(原子比)は、86/14であった。これは、Fe2O3換算で19wt%に相当する。
図3に、この粉末の室温で測定した磁化曲線を示す。図3より、得られた複合体が超常磁性を示すことがわかる。複合体の飽和磁化は、5.77emu/gであった。これは、非特許文献4で示された磁性酸化鉄含有単分散球状シリカの飽和磁化の10倍以上の値である。透過電子顕微鏡で観察した結果、球状シリカ内部に約5nmの酸化鉄粒子が分散していることが確認された。
大気中加熱処理の条件を1100℃×3時間とした以外は、実施例1と同一条件下で単分散球状シリカ−酸化鉄複合体を作製した。得られた粒子の平均粒子径は0.51μm、単分散度は3.8%であった。
図4に、得られた複合体のXRDパターンを示す。アモルファスシリカに対応する20°付近のピーク以外の回折パターンは、ε−Fe2O3のそれと一致した。
図5に、この粉末の室温で測定した磁化曲線を示す。図5より、得られた複合体が強磁性を示すことがわかる。複合体の飽和磁化は、3.65emu/gであった。透過電子顕微鏡で観察した結果、球状シリカ内部に10〜20nmの酸化鉄粒子が分散していることが確認された。
フェロセンカルバルデヒド4.28g(0.02mol)をフルフリルアルコール2mLに溶解した。この溶液0.7mLを実施例1で合成した単分散球状メソ多孔体シリカに該浸させた。これを150℃で24時間加熱し、細孔内でポリマを重合させた。さらに、これを大気中、500℃で6時間焼成し、単分散球状シリカ−酸化鉄複合体を得た。窒素吸着特性からBJH法により求めた複合体の細孔径は、19.0Å(1.90nm)であった。
実施例3で合成した複合体粉末1.0gに、実施例2で調製したフェロセンカルバルデヒド/フルフリルアルコール溶液0.42mLを含浸させた。これを150℃で24時間加熱し、細孔内でポリマを重合させた。さらに、これを大気中、500℃で6時間焼成した。窒素吸着特性からBJH法により求めた複合体の細孔径は、17.3Å(1.73nm)であった。
実施例4で合成した複合体粉末1.0gに、前記フェロセンカルバルデヒド/フルフリルアルコール溶液0.28mLを含浸させた。これを150℃で24時間加熱し、細孔内でポリマを重合させた。さらに、これを大気中、500℃で6時間焼成した。窒素吸着特性からBJH法により求めた複合体の細孔径は、16.7Å(1.67nm)であった。
大気中加熱処理の条件を900℃×3時間とした以外は、実施例1と同一条件で単分散球状シリカ−酸化鉄複合体を作製した。得られた粒子の平均粒子径は0.57μm、単分散度は4.7%であった。XRDにより解析した結果、得られた粒子はγ−Fe2O3とアモルファスシリカの複合体であることが判明した。透過電子顕微鏡で観察した結果、球状シリカのメソ孔内に2nm程度の酸化鉄粒子が分散していることが確認された。得られた粒子のBET比表面積は約350m2/g、細孔容量は0.20cm3/gであった。また、複合体の飽和磁化は1.1emu/gであった。
塩化鉄(III)六水和物1.35g(0.005mol)をメタノール2mLに溶解した。この溶液0.7mLを実施例1で合成した単分散球状メソ多孔体シリカ粉末1.0gに含浸させ、大気中、500℃で6時間焼成した。
図6に、得られた複合体の走査電子顕微鏡写真を示す。図6より、球状粒子の回りに不定形の異物が多数析出していることがわかる。XRDにより、異物は、α−Fe2O3と同定された。
[1. 単分散球状メソ多孔体シリカの作製]
実施例1の[1.]と同一の条件下で、単分散球状メソ多孔体シリカを合成した。
[2. 単分散球状シリカ−酸化鉄複合体の作製]
フェロセンカルバルデヒド2.14g(0.01mol)をフルフリルアルコール1mLに溶解した。この溶液0.7mLを[1.]で得られた単分散球状メソ多孔体シリカ粉末1.0gに含浸させた。これを150℃で24時間加熱し、細孔内でポリマを重合させた。さらに、これを大気中、500℃で6時間加熱し、単分散球状シリカ−酸化鉄複合体を得た。この粉末の高角のXRDには、酸化鉄に対応する回折パターンは見られず、酸化鉄は、アモルファスであった。この複合体をさらに窒素気流中、1000℃で3h焼成した。
図7に、得られた粉末のラマンスペクトルを示す。市販のFe3O4及びγ−Fe2O3のスペクトルと比較したところ、Fe3O4のスペクトルと酷似しており、この複合体がFe3O4を含むことがわかる。
図8に、室温で測定したこの粉末の磁化曲線を示す。図8より、得られた複合体が超常磁性を示すことがわかる。この複合体の飽和磁化は、11.4emu/gであった。透過電子顕微鏡で観察した結果、球状シリカ内部に3〜5nmの酸化鉄粒子が分散していることが確認された。
実施例7と同様の方法で、シリカ−アモルファス酸化鉄複合体(大気中、500℃で6h焼成)を得た。この粉末を硝酸コバルトのメタノール溶液(複合体中のFeのモル数/硝酸コバルトのモル数=2)に分散させ、ロータリーエバポレータで乾燥させ、複合体の細孔内に硝酸コバルトを導入した。その後、この粉末を大気中、900℃で3h焼成した。この粉末のXRDパターンは、CoFe2O4のそれと一致した。得られた複合体は、室温で超常磁性を示し、飽和磁化は、12.6emu/gであった。
Claims (14)
- 加熱により重合する第1溶媒にメタロセン又はその誘導体を溶解させた第1溶液を無機多孔体の細孔に含浸させる第1含浸工程と、
前記無機多孔体を加熱し、前記第1溶媒を重合させる重合工程と、
前記無機多孔体を、酸素を含む雰囲気下において400℃以上で熱処理し、前記メタロセン又はその誘導体を熱分解させることによって第1金属酸化物を生成させる第1熱処理工程とを備えた酸化物複合体の製造方法。 - 前記第1溶媒は、フルフリルアルコールである請求項1に記載の酸化物複合体の製造方法。
- 前記無機多孔体は、球状粒子である請求項1又は2に記載の酸化物複合体の製造方法。
- 前記無機多孔体は、(1)式で表される単分散度が10%以下の粒子である請求項1から3までのいずれかに記載の酸化物複合体。
単分散度=(粒子径の標準偏差/平均粒子径)×100(%) ・・・(1) - 前記無機多孔体は、シリカ多孔体である請求項1から4までのいずれかに記載の酸化物複合体の製造方法。
- 前記第1含浸工程は、前記第1金属酸化物の含有量が5wt%以上となるように、前記メタロセン又はその誘導体を前記細孔内に含浸させるものである請求項1から5までのいずれかに記載の酸化物複合体の製造方法。
- 前記メタロセン又はその誘導体は、Fe、Ni又はCoを含む請求項1から6までのいずれかに記載の酸化物複合体。
- 前記第1金属酸化物は、γ−Fe2O3又はε−Fe2O3を含む請求項1から7までのいずれかに記載の酸化物複合体の製造方法。
- 前記第1熱処理工程で得られた酸化物複合体の細孔内に、金属化合物を第2溶媒に溶解させた第2溶液を含浸させる第2含浸工程と、
前記酸化物複合体を、酸素を含む雰囲気下において400℃以上で加熱し、前記酸化物複合体内に第2金属酸化物を生成させる第2熱処理工程と
をさらに備えた請求項1から8までのいずれかに記載の酸化物複合体の製造方法。 - 前記第2金属酸化物は、スピネル型フェライト、ガーネット型フェライト、マグネトプラムバイト型フェライト、又はペロブスカイト型フェライトを含む請求項9に記載の酸化物複合体の製造方法。
- 前記第1熱処理工程又は前記第2熱処理工程で得られた酸化物複合体を、不活性雰囲気又は還元雰囲気下において400℃以上で熱処理し、前記酸化物複合体内に第3金属酸化物を生成させる第3熱処理工程をさらに備えた請求項1から10までのいずれかに記載の酸化物複合体の製造方法。
- 前記第3金属酸化物は、Fe3O4を含む請求項11に記載の酸化物複合体の製造方法。
- 請求項1から12までのいずれかに記載の方法により得られる酸化物複合体。
- その形状が球状である請求項13に記載の酸化物複合体。
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