以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
[球状シリカ系メソ多孔体]
本発明の球状シリカ系メソ多孔体は、平均粒子径が0.1〜1.5μmであり、
平均細孔径が3〜30nmであり、
シリカ骨格内に、メタロシリケートを形成し得る金属(Me)が導入されており、かつ、
該骨格内に含まれるケイ素(Si)と前記金属(Me)との金属原子換算による含有比([Me]/[Si])が0.01〜0.5であること、
を特徴とするものである。
本発明でいう「球状」とは、任意の100個以上の粒子の形状を走査型電子顕微鏡で測定して、各粒子の真球度をそれぞれ求めた後、その真球度の平均値を求めた場合に、得られた真球度の平均値が13%以下であることをいう。また、ここにいう「真球度」とは、各粒子の外形の真円からのずれの程度を表す指標であって、粒子の表面に接する最小の外接円(最小外接円)の半径(ro)に対する、最小外接円と粒子表面の各点との半径方向の距離の最大値(Δrmax)の割合(Δrmax×100/ro[単位:%])をいう。なお、このような真球度の平均値は、パッキング時の密度をより大きくできるといった観点から、8%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましい。
また、本発明の球状シリカ系メソ多孔体は、平均粒子径が0.1〜1.5μm(より好ましくは0.2〜1μm)である。このような平均粒子径が前記下限未満では粒子間の凝集が起こる傾向にあり、他方、前記上限を超えると細孔径の拡大効果が不十分となる傾向にある。また、このような平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(例えば日立ハイテクノロジーズ社製の商品名「SU3500」)により任意の100個以上の粒子の粒子径を測定し、その平均値を計算することにより求めることができる。なお、ここにおいて、粒子が真の球体ではない場合には、粒子の最小の外接円の直径と、粒子の最大の外接円の直径との平均値を、各粒子の「粒子径」として採用する。また、任意の100個以上の各粒子の粒子径は、走査型電子顕微鏡により得られる画像に基づいて各々の粒子の粒子径を測定することで算出できる。
また、本発明の球状シリカ系メソ多孔体は、下記計算式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒子径])×100 (1)
を計算することにより求められる単分散度が10%以下(より好ましくは7%以下)であることが好ましい。このような球状シリカ系メソ多孔体は、粒径が極めて均一であることから、フォトニック結晶をはじめとした光デバイス関係に用いる材料等として非常に有用である。
また、本発明においては、得られる球状シリカ系メソ多孔体を平均細孔径が3〜30nm(より好ましくは3.5〜28nm)である。このような平均細孔径が前記下限未満では細孔内に吸着可能なナノ粒子や化合物の種類が限定される傾向にあり、他方、前記上限を超えると細孔径の均一性が低下し、粒子が脆弱になる傾向にある。なお、このような平均細孔径は窒素吸着等温線に基づいてBJH法により求めることができる。また、窒素吸着等温線は、球状シリカ系メソ多孔体を液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、定容量法あるいは重量法により窒素ガスの吸着量を求め、次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットすることにより求めることができる。
また、前記球状シリカ系メソ多孔体の比表面積は特に制限はないが、50m2/g以上であることが好ましく、70〜1500m2/gであることがより好ましい。このような比表面積は、窒素吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。さらに、前記球状シリカ系メソ多孔体の細孔容量は特に制限されないが0.2cm3/g以上であることが好ましく、0.3cm3/g以上であることがより好ましい。このような細孔容量が前記下限未満では、細孔内に吸着可能なナノ粒子や化合物の量が不十分となる傾向にある。
また、本発明の球状シリカ系メソ多孔体は、シリカ骨格内に、メタロシリケートを形成し得る金属(Me)が導入されたものである。なお、ここで「メタロシリケート」とは、骨格内のケイ素(Si)が他の金属(Me)で置換されて形成される構造を有するものをいい、例えば、前記金属(Me)のイオン(Men+:ここで、nは金属の電荷を示す)をシリカ骨格内に含む構造を有するもの(SiO2−MO2/n)等をいう。
このようなメタロシリケートを形成し得る金属(Me)としては、上述のメタロシリケートの構造を形成し得るものであればよく、特に制限されず、例えば、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、コバルト、マンガン、バリウム、ストロンチウム、ガリウム等が挙げられる。このようなメタロシリケートを形成し得る金属(Me)の中でも、合成の容易さ、及び、導入された金属の安定性の観点からは、アルミニウム、マグネシウム、カルシウムが好ましく、アルミニウム、マグネシウムがより好ましく、アルミニウムが特に好ましい。なお、このようなメタロシリケートを形成し得る金属(Me)としては、得られる粒子の構造を、より効率よく中空構造とすることができるといった観点からは、マグネシウムを用いることがより好ましい。なお、このようなメタロシリケートを形成し得る金属(Me)は、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて利用してもよい。
また、本発明において、球状シリカ系メソ多孔体のシリカ骨格内に、前記メタロシリケートを形成し得る金属(Me)が導入されているか否かは、以下のようにして判断することができる。すなわち、測定装置として走査型電子顕微鏡(例えば、日立ハイテクノロジーズ社製の商品名「SU3500」)に装着した検出器(エネルギー分散型X線分析装置)を用いて、球状シリカ系メソ多孔体の粉末の任意の1000個以上の粒子を含む領域に対して、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により元素分析を行い、各球状シリカ系メソ多孔体の粒子中の酸素と、ケイ素(Si)と、前記金属(Me)の分布状態(EDXマッピング)をそれぞれ求め、それぞれの元素の分布位置が一致しており(各元素が存在する位置が一致しており)、前記金属(Me)が局在化していない場合に、前記金属(Me)が導入されているものと判断する方法(I)を採用してもよい。なお、EDXマッピングのデータにおいて「前記金属(Me)が局在化している」とは、該データにおいて走査型電子顕微鏡で観察される主な粒子の位置(走査型電子顕微鏡により粒子として確認できかつEDX分析によりケイ素が確認される位置)と、EDXマッピングの前記金属(Me)の位置が一致しない場合、すなわち、走査型顕微鏡で主に観察されるケイ素を含んでいる粒子とは異なった位置に、前記金属(Me)が存在している場合をいう。また、EDXマッピングを求めて、前記金属(Me)がシリカ骨格に導入されているか否かを判断する上記方法(I)を採用する場合には、後述の含有比([Me]/[Si])から求められるシリカ骨格中への前記金属(Me)の導入量が、合成時の金属(Me)の使用量(使用割合)と比較して少ないことを更なる基準として利用してもよい。なお、前記メタロシリケートを形成し得る金属(Me)が導入されているか否かの測定方法は、上記方法に限定されず、他の方法を利用してもよい。例えば、金属種によっては、NMR測定により粒子中の金属の配位状態を確認することにより求めてもよい。このようなNMR測定の方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用できる。このようなNMR測定により金属(Me)が導入されているか否かの測定する方法としては、例えば、金属(Me)がアルミニウムの場合に、通常、酸化アルミニウム中のアルミニウムは6配位であり、シリカ骨格に導入されたアルミニウムは4配位であるため、NMR測定により4配位のアルミニウムの存在の有無を確認することで、シリカ骨格へのアルミニウムの導入の有無を判断する方法を採用してもよい。更に、上記方法(I)と併せて、金属(Me)の種類によっては、金属(Me)導入前の粒子と比較して陽イオン物質の吸着性能が向上していることを確認することにより骨格への金属(Me)の導入の有無を判断する方法を採用してもよい。例えば、金属(Me)がアルミニウムやマグネシウムである場合、これらの金属(Al又はMg)が、基本的に、Si4+よりもイオン価数の低い金属(例えばAl3+、Mg2+等)であるため、シリカ骨格内に、それらの金属(Al又はMg)のいずれかが導入されることで、球状シリカ系メソ多孔体は電子リッチな状態となり、陽イオン物質に対する吸着性能が向上する。そのため、金属(Me)を未導入の球状シリカ系メソ多孔体等と比較して陽イオン物質に対する吸着性能が向上していることを確認することで、シリカ骨格に金属元素(マグネシウム又はアルミニウム)が導入されているか否かを判定することも可能である。従って、金属(Me)の種類によっては、上述のEDXマッピングのデータの測定により、ケイ素(Si)と、前記金属(Me)の分布状態(EDXマッピング)をそれぞれ求め、それぞれの元素の分布位置が一致しており、更に、前記金属(Me)が局在化していないことを確認するとともに、陽イオン物質に対する吸着性能を確認して、金属(Me)がシリカ骨格に導入されているか否かを判断してもよい。
また、本発明の球状シリカ系メソ多孔体においては、骨格内に含まれるケイ素(Si)と前記金属(Me)との金属原子換算による含有比([Me]/[Si])が0.01〜0.5(より好ましくは0.02〜0.45、更に好ましくは0.03〜0.4)である。このような含有比([Me]/[Si])が前記下限未満では前記金属(Me)の導入による効果が十分に得られなくなり、他方、前記上限を超えるとシリカによる骨格形成が阻害されるため細孔容量が低下する。なお、このような含有比([Me]/[Si])の測定に際しては、先ず、測定装置として走査型電子顕微鏡(例えば、日立ハイテクノロジーズ社製の商品名「SU3500」)に装着した検出器(エネルギー分散型X線分析装置)を用いて、1000個以上の粒子が確認できるような倍率で、走査透過型電子顕微鏡による測定を行い、分析視野(縦192ピクセル×横256ピクセル)において、任意の1000個以上の粒子が含まれる領域に対して、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により、EDXマッピングを行う。すなわち、前記球状シリカ系メソ多孔体の任意の1000個以上の粒子が含まれる領域が分析視野(縦192ピクセル×横256ピクセル)に含まれるようにして、かかる任意の1000個以上の粒子が含まれる領域に対してEDXマッピングを行う。そして、1微小領域(分析視野を49152(=192×256)分割した領域)ごとのEDXマッピングデータから、平均値としてケイ素(Si)とマグネシウム(Mg)との金属原子換算による含有比([Me]/[Si])を求める。
本発明の球状シリカ系メソ多孔体は、数ナノ〜数十ナノメートルサイズ(より好ましくは1〜20nm)の微粒子が集合した集合体の構造を有していることが好ましい。このような微粒子の状態は走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡を用いて5万倍以上の高倍率で観察することにより確認することができる。
また、このような球状シリカ系メソ多孔体は、中空構造を有するものであってもよい。すなわち、このような球状シリカ系メソ多孔体は、中空粒子からなっていてもよい。このような中空構造は、透過型電子顕微鏡(例えばJEOL社製の商品名「2100F」を利用して、内部構造を確認することにより求めることができる。例えば、樹脂中に球状シリカ系メソ多孔体の粉末を埋め込み、ミクロトーム等を利用してごく薄い切片(例えば100nm厚の薄片)を作成して試料とし、これを透過型電子顕微鏡により確認することで、該切片中においてスライスされた粒子の内部構造を確認でき、これにより中空状態の有無を確認することができる。なお、このような中空構造の粒子においては、空隙率が2〜50%であることが好ましく、5〜30%であることがより好ましい。このような空隙率が前記下限未満では中空部分の容積が不十分であり、中空でない粒子と特性が差別化できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると粒子の機械的強度が低下し、粒子の崩壊が起こる傾向にある。なお、このような空隙率は、前述のように、樹脂中に球状シリカ系メソ多孔体の粉末を埋め込み、ミクロトーム等を利用してごく薄い切片(例えば100nm厚の薄片)を作成して試料とし、これを透過型電子顕微鏡により確認し、画像解析することにより測定される値を採用できる。なお、このような空隙率は、10個以上の中空構造の粒子の平均値として求めることができる。また、本発明においては、粒子中のメソ細孔により形成される空隙部分は空隙として考慮せずに空隙率を求める。
上述のように、本発明の球状シリカ系メソ多孔体は、ケイ素原子及び酸素原子を主成分とし、いわゆるシリカ骨格が形成されているとともに、その骨格内に前記金属(Me)が導入されているものである。このような球状シリカ系メソ多孔体においては、ケイ素原子の少なくとも一部が有機基の2箇所以上で炭素−ケイ素結合を形成していてもよい。このような有機基としては、例えば、アルカン、アルケン、アルキン、ベンゼン、シクロアルカン等の炭化水素から2以上の水素がとれて生じる2価以上の有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、有機基は、アミド基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、スルフォン基、カルボキシル基、エーテル基、アシル基、ビニル基等を有するものであってもよい。
また、このような球状シリカ系メソ多孔体としては、高真球度、高単分散性、細孔の均一性の観点から、後述の本発明の球状シリカ系メソ多孔体の製造方法により得られたものであることが好ましい。
さらに、本発明の球状シリカ系メソ多孔体は、シリカ骨格内にメタロシリケートを形成し得る金属(Me)を導入されているため、その金属に由来して各種特性を発揮することも可能であることから、例えば、触媒担体やカチオン性化合物の吸着材等に有用である。
また、このような球状シリカ系メソ多孔体は、粉末のまま使用してもよいが、必要に応じて成形して使用してもよい。成形する手段はどのようなものでも良いが、押出成形、打錠成形、転動造粒、圧縮成形、CIPなどが好ましい。その形状は使用箇所、方法に応じて決めることができ、たとえば円柱状、破砕状、球状、ハニカム状、凹凸状、波板状等が挙げられる。
なお、このような本発明の球状シリカ系メソ多孔体を製造するための方法としては、特に制限されないが、後述の本発明の球状シリカ系メソ多孔体の製造方法を利用することが好ましい。
[球状シリカ系メソ多孔体の製造方法]
本発明の球状シリカ系メソ多孔体の製造方法は、水と、アルコール及び/又はエーテルとを含有し且つ前記アルコール及び/又はエーテルの含有量が85容量%以下である塩基性溶媒中で、下記一般式(1):
[式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、nは7〜25の整数を示す。]
で表されるアルキルアンモニウムハライドからなる界面活性剤とシリカ原料とを、前記溶媒中における前記界面活性剤の濃度が0.0001〜0.03mol/Lとなり且つ前記溶媒中における前記シリカ原料の濃度がSi濃度換算で0.0005〜0.03mol/Lとなるようにして混合することにより、前記界面活性剤が細孔に導入されてなるシリカ系多孔体前駆体粒子を得る工程(第一工程)と、
前記シリカ系多孔体前駆体粒子及び該シリカ系多孔体前駆体粒子の細孔から前記界面活性剤を除去してなるシリカ系多孔体粒子からなる群から選択される少なくとも1種の粒子を、メタロシリケートを形成し得る金属(Me)の塩の水和物を含有しかつpHが1.0〜9.0である水系溶液中で、100℃以上の加熱温度で加熱することにより、シリカ骨格内に前記金属(Me)が導入されている球状シリカ系メソ多孔体を得る工程(第二工程)と、
を含むことを特徴とする方法である。以下、第一工程と、第二工程とを分けて説明する。
(第一工程)
第一工程は、上述のようにして、前記界面活性剤が細孔に導入されてなるシリカ系多孔体前駆体粒子を得る工程である。
このような第一工程に用いられる塩基性溶媒は、水と、アルコール及び/又はエーテルとを含有するものである。このようなアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、エチレングリコール、グリセリン等が挙げられ、シリカ原料の溶解性の観点からメタノール又はエタノールが好ましい。また、前記エーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル等が挙げられ、シリカ原料の溶解性の観点から、ジエチルエーテルが好ましい。
また、このような塩基性溶媒においては、溶媒中のアルコール及び/又はエーテルの含有量は85容量%以下である必要があり、アルコール及び/又はエーテルの含有量が20〜85容量%であることがより好ましく、25〜75容量%であることがより好ましい。このように比較的多量のアルコール及び/又はエーテルを含有する溶媒を使用することにより、均一な球状体の発生及び成長が実現され、得られるシリカ系多孔体前駆体粒子の粒径が高度に均一に制御されることとなる。このようなアルコール及び/又はエーテルの含有量が85容量%を超える場合には、粒径及び粒径分布の制御が困難となり、得られるシリカ系多孔体前駆体粒子の粒径の均一性が低くなる。他方、アルコール及び/又はエーテルの含有量が前記下限未満の場合は、粒径及び粒径分布の制御が困難となり、得られるシリカ系多孔体前駆体粒子の均一性が低くなる傾向にある。
なお、本発明においては、前記塩基性溶媒中の水と、アルコール及び/又はエーテルとの比率を変化させることにより、粒径の均一性を高水準に保持しつつ、得られるシリカ系多孔体前駆体粒子の粒径を容易に制御することができる。ここで、水の比率が高い場合はシリカ系多孔体が析出し易くなるため、粒径が小さくなり、逆にアルコールの比率が高い場合は大きい粒径のシリカ系多孔体前駆体粒子を得ることが可能となる。
また、このような塩基性溶媒としては、溶媒を塩基性にするために、水酸化ナトリウム等の塩基性物質が添加されていることが好ましい。このような溶媒の塩基性条件に関しては特に制限されないが、添加する塩基性物質のアルカリ当量を全シリカ原料中のケイ素原子モル数で除した値が0.1〜0.9となるようにすることが好ましく、0.2〜0.5となるようにすることがより好ましい。添加する塩基性物質のアルカリ当量を全シリカ原料中のケイ素原子モル数で除した値が0.1未満である場合は、収率が低下してしまう傾向があり、他方、0.9を超える場合は、多孔体の形成が困難となる傾向がある。なお、本発明においては、上述のような塩基性溶媒を用いるが、これは、塩基性条件下においてシリカ原料反応させることでケイ素原子の反応点をより効率よく増加させることができ、耐湿性や耐熱性等の物性に優れたケイ素酸化物を得ることができるためである。また、第一工程において塩基性溶媒を用いるのは、シリカ原料と界面活性剤の濃度が比較的低いため、酸性条件下では反応がほとんど進行しないためである。
また、このような第一工程に用いられる界面活性剤は、下記一般式(1):
[式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、nは7〜25の整数を示す。]
で表されるアルキルアンモニウムハライドである。
このような一般式(1)におけるR1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基を示す。このような炭素数1〜3のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、これらが一分子中に混在してもよいが、界面活性剤分子の対称性の観点からR1、R2及びR3は全て同一であることが好ましい。界面活性剤分子の対称性が優れる場合は、界面活性剤同士の凝集(ミセルの形成等)が容易となる傾向にある。更に、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つはメチル基であることが好ましく、R1、R2及びR3の全てがメチル基であることがより好ましい。
また、一般式(1)におけるXはハロゲン原子を示し、このようなハロゲン原子の種類は特に制限されないが、入手の容易さの観点からXは塩素原子または臭素原子であることが好ましい。
さらに、一般式(1)におけるnは7〜25の整数を示し、ミセルを形成し易いという観点からは、13〜21の整数であることがより好ましく、13〜18の整数であることがより好ましい。前記nの値が前記下限未満のアルキルアンモニウムハライドでは、球状の多孔体前駆体粒子は得られるものの、中心細孔直径が小さくなって細孔径を十分に拡大することが困難となる。他方、前記nの値が前記上限を超えるアルキルアンモニウムハライドでは、界面活性剤の疎水性相互作用が強すぎるため、層状の化合物が生成してしまい、球状の多孔体を得ることができなくなる。
また、このような一般式(1)で表される界面活性剤としては、R1、R2、R3の全てがメチル基であり且つ炭素数8〜26の長鎖アルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムハライドであることが好ましく、中でもテトラデシルトリメチルアンモニウムハライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムハライド、エイコシルトリメチルアンモニウムハライド、ドコシルトリメチルアンモニウムハライドがより好ましい。
さらに、このような界面活性剤は、後述するシリカ原料と共に溶媒中で複合体を形成する。このような複合体中のシリカ原料は反応によりケイ素酸化物へと変化するが、前記界面活性剤が存在している部分ではケイ素酸化物が生成しないため、前記界面活性剤が存在している部分に孔が形成されることになる。すなわち、前記界面活性剤はシリカ原料中に導入されて孔形成のためのテンプレートとして機能する。このように、前記界面活性剤はシリカ原料の反応生成物に孔を形成させる際のテンプレートとして働き、その種類は多孔体の孔の形状に大きな影響を与えるため、前記界面活性剤は1種類もしくは2種類以上を組み合わせて用いることが可能であるが、より均一な球状多孔体を得るという観点からは、かかる界面活性剤としては1種類のみを用いることが好ましい。
また、第一工程に用いられるシリカ原料は、反応によりケイ素酸化物(ケイ素複合酸化物を含む)を形成可能なものであればよく特に制限されるものではないが、反応効率や得られるケイ素酸化物の物性の観点から、アルコキシシラン、ケイ酸ナトリウム、層状シリケート、シリカ、又はこれらの任意の混合物を用いることが好ましく、中でもアルコキシシランを用いることがより好ましい。
前記アルコキシシランとしては、アルコキシ基を4個有するテトラアルコキシシラン、アルコキシ基を3個有するトリアルコキシシラン、アルコキシ基を2個有するジアルコキシシランを用いることができる。このようなアルコキシ基の種類は特に制限されないが、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のようにアルコキシ基中の炭素原子の数が比較的少ないもの(炭素数として1〜4程度のもの)が反応性の点から有利である。また、前記アルコキシシランが有するアルコキシ基が3又は2個である場合は、アルコキシシラン中のケイ素原子には有機基、水酸基等が結合していてもよく、当該有機基はアミノ基やメルカプト基等の官能基をさらに有していてもよい。
また、前記テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等が挙げられ、前記トリアルコキシシランとしては、トリメトキシシラノール、トリエトキシシラノール、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。また、前記ジアルコキシシランとしては、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン等が挙げられる。
このようなアルコキシシランは、単独で用いることもできるが2種類以上を組み合わせて用いることも可能である。また、上記のアルコキシ基を2〜4個有するアルコキシシランは、アルコキシ基を1個有するモノアルコキシシランと組み合わせて使用することも可能である。このようにして用いることのできるモノアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、3−クロロプロピルジメチルメトキシシラン等が挙げられる。
また、前記アルコキシシランは、加水分解によりシラノール基を生じ、生じたシラノール基同士が縮合することによりケイ素酸化物が形成される。この場合において、分子中のアルコキシ基の数が多いアルコキシシランは、加水分解及び縮合で生じる結合が多くなる。したがって、本発明において、アルコキシ基の多いテトラアルコキシシランをアルコキシシランとして用いることが好ましく、テトラアルコキシシランとしては、反応速度の観点からテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランを用いることが特に好ましい。
このようなシリカ原料として用いられるケイ酸ナトリウムとしては、メタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)、オルトケイ酸ナトリウム(Na4SiO4)、二ケイ酸ナトリウム(Na2Si2O5)、四ケイ酸ナトリウム(Na2Si4O9)等が挙げられる。ケイ酸ナトリウムとしては、このような単一物質の他、水ガラス(Na2O・nSiO2、n=2〜4)等のように組成が場合により異なるものを使用することもできる。
層状シリケートとしては、カネマイト(NaHSi2O5・3H2O)、二ケイ酸ナトリウム結晶(α、β、γ、δ−Na2Si2O5)、マカタイト(Na2Si4O9・5H2O)、アイアライト(Na2Si8O17・xH2O)、マガディアイト(Na2Si14O17・xH2O)、ケニヤイト(Na2Si20O41・xH2O)等が挙げられる。また、セピオライト、モンモリロナイト、バーミキュライト、雲母、カオリナイト、スメクタイト等の粘土鉱物を酸性の水溶液で処理してシリカ以外の元素を除去したものも層状シリケートとして使用可能である。
このようなシリカ原料として用いられるシリカとしては、Ultrasil(Ultrasil社)、Cab−O−Sil(Cabot社)、HiSil(Pittsburgh Plate Glass社)等の沈降性シリカ;コロイダルシリカ;Aerosil(Degussa−Huls社)等のフュームドシリカを挙げることができる。
また、このようなシリカ原料は、単独で用いることもできるが2種類以上を組み合わせて用いることも可能である。但し、2種類以上のシリカ原料を用いる場合は、製造時の反応条件が複雑化することがあるため、本発明においては、シリカ原料は単独のものを使用することが好ましい。
また、第一工程においては、前記塩基性溶媒中での界面活性剤の濃度は、溶液の全容量を基準として0.0001〜0.03mol/L(好ましくは、0.0003〜0.02mol/L)とする必要がある。また、前記塩基性溶媒中でのシリカ原料の濃度は、溶液の全容量を基準としてSi濃度換算で0.0005〜0.03mol/L(好ましくは、0.001〜0.02mol/L)とする必要がある。このように、界面活性剤及びシリカ原料の濃度を厳密に制御することにより、前述の塩基性溶媒を使用することとが相俟って、均一な球状体の発生及び成長が実現され、得られるシリカ系多孔体前駆体粒子の粒径が高度に均一に制御される。
前記界面活性剤の濃度が前記下限未満の場合は、テンプレートとなるべき界面活性剤の量が不足するため、良好な多孔体を得ることができず、更には、粒径及び粒径分布の制御が困難となって、得られるシリカ系多孔体前駆体粒子の粒径の均一性が低くなる。他方、前記界面活性剤の濃度が前記上限を超える場合は、形状が球状である多孔体を高比率で得ることができず、更に粒径及び粒径分布の制御が困難となって得られるシリカ系多孔体前駆体粒子の粒径の均一性が低くなる。
前記シリカ原料の濃度が前記下限未満の場合は、形状が球状である多孔体を高比率で得ることができず、更に粒径及び粒径分布の制御が困難となって得られるシリカ系多孔体前駆体粒子の粒径の均一性が低くなる。他方、前記シリカ原料の濃度が前記上限を超える場合は、テンプレートとなるべき界面活性剤の比率が不足するため、良好な多孔体を得ることができず、更には、粒径及び粒径分布の制御が困難となって得られる多孔体の粒径の均一性が低くなる。
また、このような第一工程において、前記シリカ原料と前記界面活性剤とを混合する際には、反応温度の条件は、用いる界面活性剤やシリカ原料の種類に応じて適宜変更することができ、一概には言えないが、一般に、0〜80℃とすることが好ましく、5〜40℃とすることがより好ましい。また、このような反応温度が前記下限未満ではシリカ原料の反応が非常に遅くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとシリカ原料の反応が速くなるために形状が球状である多孔体を高比率で得ることが困難となる傾向にある。
また、第一工程における前記温度以外のその他の条件(反応時間等)は特に制限されず、具体的な反応条件は、用いるシリカ原料の種類等に基づいて決定することが好ましい。また、反応は攪拌状態で進行させることが好ましい。
なお、このような第一工程においては、前記界面活性剤として、一般式(1)のnの値が19〜25の整数であるアルキルアンモニウムハライドを用いる場合には、以下のような条件を採用することが好ましい。すなわち、先ず、前記界面活性剤として一般式(1)中のnの値が19〜25の整数であるアルキルアンモニウムハライドを用いる場合においては、かかる界面活性剤として、細孔の規則性の高い材料を得るという観点から、一般式(1)中のR1、R2及びR3全てがメチル基であり且つ炭素数20〜26の長鎖アルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムハライドを用いることがより好ましく、中でも、エイコシルトリメチルアンモニウムハライド、ドコシルトリメチルアンモニウムハライド、テトラコシルトリメチルアンモニウムハライド、ヘキサコシルトリメチルアンモニウムハライドを用いることが特に好ましい。また、前記塩基性溶媒中のアルコール及び/又はエーテルの含有量は40〜85容量%とすることが好ましく、55〜75容量%とすることがより好ましい。更に、界面活性剤の濃度は溶液の全容量を基準として0.0003〜0.001mol/L(より好ましくは、0.0005〜0.0008mol/L)とすることが好ましく、シリカ原料の濃度は溶液の全容量を基準としてSi濃度換算で0.0005〜0.01mol/L(より好ましくは、0.003〜0.006mol/L)とすることが好ましい。このように、アルコール及び/又はエーテルの含有量、界面活性剤及びシリカ原料の濃度等を厳密に制御することにより、一般式(1)のnの値が19〜25の整数であるアルキルアンモニウムハライドを用いた場合においても、十分に均一な球状体をより効率よく発生させて成長させることができ、得られる球状シリカ系メソ多孔体の粒径をより高度に均一に制御することが可能となる。更に、このような一般式(1)中のnの値が19〜25の整数であるアルキルアンモニウムハライドを用いた系における反応温度は、シリカ原料の種類に応じて異なるものではあるものの、例えば、−20℃〜100℃としてもよく、0℃〜80℃とすることが好ましく、5℃〜40℃とすることがより好ましい。
また、このような第一工程としては、シリカ原料としてアルコキシシランを用いる場合、例えば、以下のようにしてシリカ系多孔体前駆体粒子を得る方法を好適に採用してもよい。すなわち、先ず、水とアルコール及び/又はエーテルとを含有する混合液に対して、前記界面活性剤及び前記塩基性物質を添加して、前記界面活性剤を含有する塩基性溶液を調製する。次いで、この塩基性溶液に、上記反応温度の条件下において、アルコキシシランを添加する。このようにして添加されたアルコキシシランは塩基性溶液中で加水分解(又は、加水分解及び縮合)されるため、添加後数秒〜数十分で白色粉末が析出される。また、塩基性溶液は攪拌することが好ましい。そして、このようにして沈殿物が析出した後においては、前記溶液を上記反応温度の条件で1時間〜10日更に攪拌し、シリカ原料の反応を進行させることが好ましい。次いで、攪拌終了後、必要に応じて室温で一晩放置して系を安定化させ、得られた沈殿物を必要に応じてろ過及び洗浄することによって、孔の形成されている部位に界面活性剤が導入されているシリカからなるシリカ系多孔体前駆体粒子が得られる。
一方、シリカ原料として、アルコキシシラン以外のシリカ原料(ケイ酸ナトリウム、層状シリケートまたはシリカ)を用いる場合は、前記第一工程として、例えば、以下のような方法を好適に採用してもよい。すなわち、先ず、シリカ原料を、前記界面活性剤を含有する水とアルコール及び/又はエーテルの混合液に添加し、シリカ原料中のケイ素原子と等モル程度になるようにした後、水酸化ナトリウム水溶液等の塩基性物質をさらに添加して、均一な塩基性溶液を調製する。その後、希薄酸溶液をシリカ原料中のケイ素原子に対して1/2〜3/4倍モル添加する。このような方法によっても、前記シリカ系多孔体前駆体粒子を得ることができる。なお、このような方法を採用する場合には、塩基性物質は、シリカ原料中に既に形成されているSi−(O−Si)4結合の一部を切断する目的のために過剰分必要となるが、その過剰分は、酸により中和することが好ましい。このような酸としては、塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸等の有機酸のいずれを用いてもよい。
(第二工程)
第二工程は、前記シリカ系多孔体前駆体粒子及び該シリカ系多孔体前駆体粒子の細孔から前記界面活性剤を除去してなるシリカ系多孔体粒子からなる群から選択される少なくとも1種の粒子を、メタロシリケートを形成し得る金属(Me)の塩の水和物を含有しかつpHが1.0〜9.0である水系溶液中で、100℃以上の加熱温度で加熱することにより、シリカ骨格内に前記金属(Me)が導入されている球状シリカ系メソ多孔体を得る工程である。
このような工程において、前記シリカ系多孔体前駆体粒子の細孔から前記界面活性剤を除去してなるシリカ系多孔体粒子を用いる場合には、第二工程を実施する前に、シリカ系多孔体前駆体粒子に含まれる界面活性剤を除去してシリカ系多孔体粒子を得る工程を更に含むことが好ましい。このような界面活性剤を除去する方法としては、例えば、焼成による方法、有機溶媒で処理する方法、イオン交換法等を挙げることができる。このような焼成による方法においては、前記シリカ系多孔体前駆体粒子を300〜1000℃、好ましくは400〜700℃で加熱する方法が挙げられる。このような加熱時間は30分程度でもよいが、完全に界面活性剤を除去するという観点から、1時間以上加熱することがより好ましい。また、焼成は空気中で行うことが可能であるが、多量の燃焼ガスが発生するため、窒素等の不活性ガスを導入して行ってもよい。更に、前記有機溶媒で処理する方法としては、用いた界面活性剤に対する溶解度が高い良溶媒中に多孔体前駆体粒子を浸漬して界面活性剤を抽出する方法を採用してもよい。また、前記イオン交換法としては、前記シリカ系多孔体前駆体粒子を酸性溶液(少量の塩酸を含むエタノール等)に浸漬し、例えば50〜70℃で加熱しながら攪拌を行う。これにより、前記シリカ系多孔体前駆体粒子の孔中に存在する界面活性剤が水素イオンでイオン交換される。なお、イオン交換により孔中には水素イオンが残存することになるが、水素イオンのイオン半径は十分小さいため孔の閉塞の問題は生じない。
また、第二工程においては、前記シリカ系多孔体前駆体粒子及び前記シリカ系多孔体粒子からなる群から選択される少なくとも1種の粒子を用いるが、球状シリカ系メソ多孔体の製造効率の観点からは、このような粒子の中でもシリカ系多孔体前駆体粒子を用いることがより好ましい。
また、第二工程においては、メタロシリケートを形成し得る金属(Me)の塩の水和物を含有し、かつ、pHが1.0〜9.0である水系溶液を用いる。このような水溶液中に含有させる塩の水和物に関し、前記メタロシリケートを形成し得る金属(Me)は、上記本発明の球状シリカ系メソ多孔体において説明した金属(Me)と同様のものを利用することができる。また、このようなメタロシリケートを形成し得る金属(Me)としては、合成の容易さ、及び導入された金属の安定性の観点から、アルミニウム、マグネシウム、カルシウムがより好ましく、アルミニウム、マグネシウムが更に好ましく、アルミニウムが特に好ましい。なお、前記金属(Me)としては、中空構造をより効率よく形成できるといった観点からは、マグネシウムがより好ましい。
さらに、このような金属(Me)の塩の水和物に関して、塩の種類は特に制限されず、例えば、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩等が挙げられる。このような金属(Me)の塩の水和物の中でも、水系溶媒への溶解性の観点から、前記金属(Me)のハロゲン化物の水和物、前記金属(Me)の硝酸塩の水和物、前記金属(Me)の硫酸塩の水和物がより好ましく、前記金属(Me)のハロゲン化物の水和物、前記金属(Me)の硝酸塩の水和物が特に好ましい。
このような金属(Me)の塩の水和物としては、特に制限されるものではないが、塩化マグネシウム6水和物、硝酸アルミニウム9水和物、硝酸マグネシウム6水和物、塩化アルミニウム9水和物等が挙げられる。なお、このような金属(Me)の塩の水和物は市販品を利用してもよい。また、このような金属(Me)の塩の水和物は1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて利用してもよい。
また、このような水系溶液の溶媒は、水、又は、水と有機溶媒との混合溶媒である。このような混合溶媒中の有機溶媒としては特に制限されないが、水に可溶であり且つ沸点が100℃以上のものであることが好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、プロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N−メチルピロリドン等の非プロトン性の極性溶媒、ジオキサン等の環状エーテル系の溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系の溶媒が挙げられ、中でも、化学的安定性の観点から、アルコール系溶媒がより好ましい。また、前記混合溶媒を用いる場合においては、混合溶媒中の水の量が30容量%以上であることが好ましく、50容量%以上であることがより好ましい。このような水の量が前記下限未満ではシリカの溶解が極度に抑制されるため、細孔径の拡大が不十分となる傾向にある。また、このような水系溶液の溶媒としては、工業性や作業性等の観点からは、水が特に好ましい。
また、このような水系溶液のpHは、1.0〜9.0である。このようなpH値が前記上限を超えると、シリカの溶解度が比較的高くなることから、前記粒子から一度溶解したシリカ成分が、他のシリカ粒子の表面へと移動して再析出する現象が繰り返し生じる易くなり、これにより、前記粒子の形態が崩壊して、最終的に得られる多孔体の粒径の均一性が低くなり、単分散度が低下する。他方、pHが前記下限未満では前記金属(Me)イオンが溶媒中で安定化され、シリカ骨格への導入が起こらなくなる。また、上記と同様の観点とともに、前記粒子の球状の形態をより十分に保持することが可能となり、より高い単分散度が得られるといった観点や前記金属(Me)を効率的にシリカ骨格に導入するという観点からは、前記水系溶液のpHは1.5〜8.0であることがより好ましく、2.0〜7.5であることが更に好ましい。このような水系溶液のpHの調整方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、弱酸とその塩からなるpH緩衝液を使用する方法等を採用してもよい。
さらに、前記水系溶液中のメタロシリケートを形成し得る金属(Me)の塩の水和物の含有量は特に制限されないが、金属換算で0.001〜10mol/Lであることが好ましく、0.01〜5mol/Lであることがより好ましい。このような水和物の含有量が前記下限未満ではシリカ骨格に前記金属(Me)を導入した効果を十分に得ることができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると前記水系溶媒中で前記金属(Me)イオンが安定化され、シリカ骨格への導入が抑制される傾向にある。
また、前記水系溶液中での前記粒子の量(含有量)としては、ケイ素換算で0.01〜10mol/Lであることが好ましく、0.1〜5mol/Lであることがより好ましい。このような粒子の含有量が前記下限未満ではシリカの溶解のために、得られる粒子の真球度、単分散性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると細孔径を十分に拡大できなくなる傾向にある。
さらに、前記粒子を前記水系溶液中で加熱する際において、前記水系溶媒中での前記粒子と、前記金属(Me)の塩の水和物との含有比率は、前記粒子中のケイ素(Si)のモル量と前記水和物中の前記金属(Me)のモル量との比([Si]:[Me])に換算して、0.01:50〜50:0.001であることが好ましく、0.02:20〜10:0.01であることがより好ましい。このような粒子中のケイ素(Si)の比率が前記下限未満では前記金属(Me)の導入量が多くなり過ぎ、シリカの骨格の再形成が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると前記金属(Me)をシリカ骨格に導入した効果が十分なものではなくなる傾向にある。
また、第二工程においては、前記粒子を水系溶液中で加熱する際の加熱温度を100℃以上とする必要がある。このような加熱温度としては、100〜250℃であることが好ましく、120〜220℃とすることがより好ましい。このような加熱温度が100℃未満では、細孔径を十分に拡大することができないばかりか、シリカ骨格中に前記金属(Me)を導入することが困難となる。他方、このような加熱温度が前記上限を超えるとシリカの溶解度が増加するため、粒子が変形してしまい、単分散度の高い球状の粒子を得ることが困難となる傾向にある。また、このような加熱温度の条件が前述のような好適な範囲にある場合には、より効率よく細孔径を拡大することが可能となる。また、このような加熱により、得られる球状シリカ系メソ多孔体の細孔径をより効率よく3〜30nmとすることが可能である。
また、このような加熱の際の加熱時間としては、1〜300時間とすることが好ましく、3〜200時間とすることがより好ましい。このような加熱時間が前記下限未満では細孔径の拡大効果が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粒子が変形してしまう傾向にある。また、加熱時間の下限は、同様の観点で、10時間とすることが更に好ましく、20時間とすることが特に好ましい。
さらに、第二工程において、前記粒子を前記水系溶液中で加熱した後においては、得られる球状シリカ系メソ多孔体の細孔内の有機成分を除去するために、有機成分の除去工程を更に実施してもよい。このような有機成分の除去工程としては、例えば、焼成による方法、有機溶媒で処理する方法等を挙げることができる。このような焼成による方法においては、前記球状シリカ系メソ多孔体を300〜1000℃、好ましくは400〜700℃で加熱する方法が挙げられる。このような加熱時間は30分程度でもよいが、完全に有機成分を除去するという観点から、1時間以上加熱することがより好ましい。また、焼成は空気中で行うことが可能であるが、多量の燃焼ガスが発生するため、窒素等の不活性ガスを導入して行ってもよい。更に、前記有機溶媒で処理する方法としては、細孔中の有機成分に対する溶解度が高い良溶媒中に球状シリカ系メソ多孔体を浸漬して有機成分を抽出する方法を採用してもよい。
本発明においては、上述のような第一工程及び第二工程を実施することにより、前記粒子の細孔を拡大化して、シリカ骨格内に前記金属(Me)が導入されている球状シリカ系メソ多孔体を得ることができる。そして、このような本発明の球状シリカ系メソ多孔体の製造方法によれば、上記本発明の球状シリカ系メソ多孔体を効率よく製造することも可能である。
例えば、本発明においては、得られる球状シリカ系メソ多孔体の平均粒子径を、より効率よく、0.1〜1.5μm(より好ましくは0.2〜1μm)とすることができる。すなわち、本発明においては、先ず、第二工程に利用する粒子(水熱処理前の粒子)の平均粒子径を、第一工程において、基本的に0.08〜1.6μmの範囲とすることができる。そして、上記第二工程においては、水系溶媒のpHが1.0〜9.0の条件下において水熱処理を行うため、シリカの溶解、析出を含むシリカの細孔壁の再構築を、より適切な速度で進行させることが可能である。そのため、平均粒子径の変化を十分に小さくしながら、単分散度を十分に維持して、細孔径を拡大させることが可能である。このような観点から、本発明においては、得られる球状シリカ系メソ多孔体の平均粒子径を、より効率よく、0.1〜1.5μm(より好ましくは0.2〜1μm)とすることが可能である。また、同様の理由で、本発明においては、得られる球状シリカ系メソ多孔体を、上記計算式(1)を計算することにより求められる単分散度が10%以下(より好ましくは7%以下)のものとすることも可能である。
さらに、本発明においては、効率よく、得られる球状シリカ系メソ多孔体の平均細孔径を3〜30nm(より好ましくは3.5〜28nm)とすることも可能である。すなわち、本発明においては、先ず、第二工程に利用する粒子(水熱処理前の粒子)の細孔は、基本的に、前記界面活性剤をテンプレートとして形成されるものである。そして、本発明では、上述のような第二工程(水熱処理)により、前記粒子のシリカの細孔壁の再構築が徐々に引き起こされ、前記金属(Me)を導入しつつ、前記粒子の細孔壁の構成成分を、数ナノメーターサイズ〜数十ナノメーターサイズのナノ微粒子へと変化させて、得られる球状シリカ系メソ多孔体を、数ナノメーターサイズ〜数十ナノメーターサイズのナノ微粒子の集合体により構成されたものとすることも可能である。そのため、細孔を十分に拡大させることができ、平均細孔径を、より効率よく3〜30nm(より好ましくは3.5〜28nm)とすることも可能である。このように、本発明の方法により得られる球状シリカ系メソ多孔体は、比較的大きな細孔径を有するものとすることができるため、分子量の大きい色素や酵素等を細孔内に確実に導入することも可能である。
また、本発明においては、メタロシリケートを形成し得る金属(Me)の塩の水和物を利用して、前記金属(Me)のイオンの存在下において、いわゆる水熱処理を行って、前記粒子のシリカの細孔壁の再構築(シリカの溶解、析出)を行うため、細孔壁の再構築の際に、前記金属(Me)のイオンが容易に取り込まれる。そのため、本発明の方法により得られる球状シリカ系メソ多孔体のシリカ骨格内に前記金属(Me)を導入することが可能となる(場合によっては、式:−Si−O−で表される結合中のSiを金属(Me)で置換した構造とすることも可能となる)。このようにして、本発明の方法により得られる球状シリカ系メソ多孔体は、シリカ骨格内に前記金属(Me)が導入されたものとなるため、前記金属(Me)に由来した特性を球状シリカ系メソ多孔体に付与することも可能となる。
また、本発明においては、前記粒子を前記水系溶液中で加熱する際に、前記水系溶媒中において、前記粒子と、前記金属(Me)の塩の水和物との含有比率を上記範囲内に調整することで、シリカ骨格内に含まれるケイ素(Si)と前記金属(Me)との金属原子換算による含有比([Me]/[Si])を、より効率よく、0.01〜0.5(より好ましくは0.02〜0.45)とすることも可能である。
このように、本発明においては、平均粒子径が0.1〜1.5μmであり、平均細孔径が3〜30nmであり、シリカ骨格内に前記金属(Me)が導入されており、かつ、該骨格内に含まれるケイ素(Si)と前記金属(Me)との金属原子換算による含有比([Me]/[Si])が0.01〜0.5である球状シリカ系メソ多孔体を効率よく製造することも可能である。そのため、本発明の球状シリカ系メソ多孔体の製造方法は、上記本発明の球状シリカ系メソ多孔体を製造するための方法として好適に採用し得る。
なお、このようにして得られる球状シリカ系メソ多孔体は、粉末のまま使用してもよいが、必要に応じて成形して使用してもよい。成形する手段はどのようなものでも良いが、押出成形、打錠成形、転動造粒、圧縮成形、CIPなどが好ましい。その形状は使用箇所、方法に応じて決めることができ、たとえば円柱状、破砕状、球状、ハニカム状、凹凸状、波板状等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(合成例1)
水3.5L及びメタノール6.5Lを含む混合液中に、界面活性剤としてのヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド32.0g(0.014mol/L)と、1規定(1mol/L)の水酸化ナトリウム22.8mLとを添加して、前記界面活性剤を含む塩基性溶媒を得た。次に、前記塩基性溶媒中に、テトラメトキシシラン13.2g(0.011mol/L)を添加することにより、テトラメトキシシランを完全に溶解させて、前記塩基性溶媒中で前記界面活性剤とテトラメトキシシランとを混合したところ、約180秒後に白色粉末が析出してきた。その後、前記白色粉末が析出してきた前記塩基性溶媒を、室温(25℃)でテフロン(登録商標)製撹拌羽根を用いてマグネチックスターラーで8時間撹拌した後、一晩(14時間)放置した。次いで、前記塩基性溶媒中の前記白色粉末に対して、ろ過と水による洗浄とを3回繰り返して施し、多孔体前駆体粒子を得た。
このようにして得られた多孔体前駆体粒子を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製の商品名「SU3500」:なお、以下に記載の各実施例及び各合成例においては同様の装置を利用した。)により観測した。このような多孔体前駆体粒子の走査型電子顕微鏡写真を図1に示す。また、走査型電子顕微鏡により任意の100個の粒子の粒子径を測定して多孔体前駆体粒子の平均粒子径及び単分散度を求めたところ、平均粒子径は0.73μmであり、単分散度は4.0%であることが確認された。このような結果から、多孔体前駆体粒子は十分に粒径の均一性が高いものであることが確認された。
また、このようにして得られた多孔体前駆体粒子の一部を550℃で6時間焼成して有機成分を除去し、焼成後の粒子を調製した。このようにして得られた粒子(焼成後の粒子)の窒素吸着等温線を測定した結果を図2に示す。このような窒素吸着等温線に基づいてBJH法から求めたところ、得られた粒子(焼成後の粒子)の平均細孔径は2.3nmであった。なお、このような窒素吸着等温線は、測定装置としてQuantachrome社製の商品名「Autosorb−1」を用いて、液体窒素温度(−196℃)でガス吸着法(定容量法を採用)により窒素ガスの吸着量を求めることにより測定した。
(合成例2)
水4L及びメタノール6Lを含む混合液中に、界面活性剤としてのヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド32.0g(0.014mol/L)と、1規定(1mol/L)の水酸化ナトリウム22.8mLとを添加して、前記界面活性剤を含む塩基性溶媒を得た。次に、前記塩基性溶媒中に、テトラメトキシシラン13.2g(0.011mol/L)を添加することにより、テトラメトキシシランを完全に溶解させて、前記塩基性溶媒中で前記界面活性剤とテトラメトキシシランとを混合したところ、約190秒後に白色粉末が析出してきた。その後、前記白色粉末が析出してきた前記塩基性溶媒を、室温(25℃)でテフロン(登録商標)製撹拌羽根を用いてマグネチックスターラーで8時間撹拌した後、一晩(14時間)放置した。次いで、前記塩基性溶媒中の前記白色粉末に対して、ろ過と水による洗浄とを3回繰り返して施し、多孔体前駆体粒子を得た。
このようにして得られた多孔体前駆体粒子を走査型電子顕微鏡により観測した。このような多孔体前駆体粒子の走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。また、走査型電子顕微鏡により任意の100個の粒子の粒子径を測定して多孔体前駆体粒子の平均粒子径及び単分散度を求めたところ、平均粒子径は0.66μmであり、単分散度は3.9%であることが確認された。このような結果から、多孔体前駆体粒子は十分に粒径の均一性が高いものであることが確認された。
また、このようにして得られた多孔体前駆体粒子の一部を550℃で6時間焼成して有機成分を除去した後、合成例1と同様にして、得られた粒子(焼成後の粒子)の窒素吸着等温線を測定し、BJH法で平均細孔径を求めたところ、得られた粒子(焼成後の粒子)の平均細孔径は2.2nmであった。
(実施例1)
先ず、水60mLに、塩化マグネシウム6水和物1.69g(マグネシウム換算によるモル数:0.0083mol)及び合成例1で得られた多孔体前駆体粒子(焼成前の粒子)1g(ケイ素換算によるモル数:0.0167mol)を添加して、前記多孔体前駆体粒子1gを含有する塩化マグネシウムの水溶液(水系溶液)を得た。なお、かかる水系溶液のpHを測定したところ、pHは7.2であった。次いで、前記多孔体前駆体粒子1gを含有する前記水系溶液を150℃で3日間加熱する処理(水熱処理)を施した。次に、このように加熱した後の前記水系溶液中の固形分を濾過により取り出した。次いで、前記固形分を水100mLで洗浄した後、熱風乾燥機で3日間乾燥させ、更に550℃で6時間焼成することにより、有機成分を除去して、球状シリカ系メソ多孔体を得た。
このようにして得られた球状シリカ系メソ多孔体を走査型電子顕微鏡により観測した。
このような球状シリカ系メソ多孔体の走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。なお、任意の100個の粒子の形状を走査型電子顕微鏡により確認して、各粒子の真球度を求め、その平均値を測定したところ、真球度の平均値は5%であった。このような結果から、得られた粒子が球状の粒子であることが確認された。
また、走査型電子顕微鏡により任意の100個の粒子の粒子径を測定して球状シリカ系メソ多孔体の平均粒子径及び単分散度を求めたところ、平均粒子径は0.75μmであり、単分散度は4.0%であることが確認された。このような結果から、得られた球状シリカ系メソ多孔体は十分に粒径の均一性が高いものであることが確認された。更に、走査型電子顕微鏡による測定により、前記球状シリカ系メソ多孔体においては、数十ナノメーターのナノ粒子の集合体により、各球状粒子が構成されていることも確認された。
また、前記走査型電子顕微鏡に付属の検出器(エネルギー分散型X線分析装置)を用いて、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により、前記球状シリカ系メソ多孔体の任意の10000個程度の粒子を含む領域について、酸素、ケイ素及びマグネシウムの分布を調べた。このような元素分析の結果として得られたEDXマッピングの画像を図5に示す。なお、図5(a)はEDXによる分析を行った球状シリカ系メソ多孔体の電子線像(SEM象)を示し、図5(b)は酸素(O)のEDXマッピングの画像(Kα線)を示し、図5(c)はケイ素(Si)のEDXマッピングの画像(Kα線)を示し、図5(d)はマグネシウム(Mg)のEDXマッピングの画像(Kα線)を示す。
図5に示す結果からも明らかなように、図5(a)の電子線像中に存在する粒子の位置と、各元素の位置が一致しており(酸素、ケイ素及びマグネシウムの分布位置が一致しており)、また、マグネシウムが局在化していなかったことから、マグネシウムがシリカ骨格に導入されていることが分かった。
また、前記球状シリカ系メソ多孔体について、合成例1と同様にして窒素吸着等温線を測定した。得られた窒素吸着等温線を図6に示す。図6に示す球状シリカ系メソ多孔体の窒素吸着等温線と、図2に示す多孔体前駆体粒子の焼成品の窒素吸着等温線とを対比して、水系溶液中での加熱処理(上記水熱処理)により、メソ細孔に基づく吸着が起こる相対蒸気圧P/P0が大幅に高圧側にシフトしていることが確認された。このことから、水系溶液中での加熱処理(上記水熱処理)によって細孔径が大幅に拡大されて、球状シリカ系メソ多孔体が得られたことが確認された。なお、このような窒素吸着等温線に基づいてBJH法により前記球状シリカ系メソ多孔体の平均細孔径を求めたところ、平均細孔径は24.4nmであった。
また、得られた球状シリカ系メソ多孔体において、骨格内に含まれるケイ素(Si)とマグネシウムの金属原子換算による含有比([Mg]/[Si])を、以下のようにして測定したところ、ケイ素(Si)とマグネシウムの金属原子換算による含有比は0.075であった。なお、かかる含有比の測定に際しては、先ず、測定装置として走査透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製の商品名「SU3500」)に装着した検出器(エネルギー分散型X線分析装置)を用いて、2000個以上の粒子が含まれる領域を観測できるように倍率を調整して、前記走査透過型電子顕微鏡にて観察し、分析視野(縦192ピクセル×横256ピクセル)において、任意の2000個以上の粒子が含まれる領域(分析領域)に対して、EDXマッピングを行った。そして、1微小領域(分析視野を49152分割した領域)ごとのEDXマッピングデータから、平均値として、ケイ素(Si)とマグネシウムの金属原子換算による含有比を求めた。
(実施例2)
塩化マグネシウム6水和物の使用量を1.69gから8.5gに変更した以外は、実施例1で採用した方法と同様の方法を採用して、球状シリカ系メソ多孔体を得た。なお、球状シリカ系メソ多孔体の調製時の水系溶液のpHは6.7であった。
このようにして得られた球状シリカ系メソ多孔体を走査型電子顕微鏡により観測した。このような球状シリカ系メソ多孔体の走査型電子顕微鏡写真を図7に示す。なお、任意の100個の粒子の形状を走査型電子顕微鏡により確認して、各粒子の真球度を求め、その平均値を測定したところ、真球度の平均値は4.8%であった。このような結果から、得られた粒子が球状の粒子であることが確認された。
また、走査型電子顕微鏡により任意の100個の粒子の粒子径を測定して球状シリカ系メソ多孔体の平均粒子径及び単分散度を求めたところ、平均粒子径は0.75μmであり、単分散度は4.9%であることが確認された。このような結果から、得られた球状シリカ系メソ多孔体は十分に粒径の均一性が高いものであることが確認された。更に、走査型電子顕微鏡による測定により、前記球状シリカ系メソ多孔体においては、数十ナノメーターのナノ粒子の集合体により、各球状粒子が構成されていることも確認された。
また、実施例1と同様に、前記走査型電子顕微鏡に付属の検出器を用いて、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により、前記球状シリカ系メソ多孔体の任意の10000個程度の粒子を含む領域について、酸素、ケイ素及びマグネシウムの分布を調べた。得られた結果を図8(EDXマッピング)に示す。なお、図8(a)はEDXによる分析を行った球状シリカ系メソ多孔体の電子線像(SEM象)を示し、図8(b)は酸素(O)のEDXマッピングの画像(Kα線)を示し、図8(c)はケイ素(Si)のEDXマッピングの画像(Kα線)を示し、図8(d)はマグネシウム(Mg)のEDXマッピングの画像(Kα線)を示す。
図8に示す結果からも明らかなように、図8(a)の電子線像中に存在する粒子の位置と、各元素の位置が一致しており(酸素、ケイ素及びマグネシウムの分布位置が一致しており)、また、マグネシウムが局在化していなかったことから、マグネシウムがシリカ骨格に導入されていることが分かった。
また、前記球状シリカ系メソ多孔体について、実施例1と同様にして窒素吸着等温線を測定し、窒素吸着等温線に基づいてBJH法により平均細孔径を求めたところ、平均細孔径は19.1nmであった。このような結果から、水系溶液中での加熱処理(上記水熱処理)により多孔体前駆体粒子の細孔径が大幅に拡大され、十分に大きな細孔径を有する球状シリカ系メソ多孔体が得られたことが確認された。
また、得られた球状シリカ系メソ多孔体に関して、骨格内に含まれるケイ素(Si)とマグネシウムの金属原子換算による含有比([Mg]/[Si])を実施例1と同様にして測定したところ、ケイ素(Si)とマグネシウムの金属原子換算による含有比は0.075であった。
さらに、透過型電子顕微鏡(TEM:JEOL社製の商品名「2100F」)を用い、得られた球状シリカ系メソ多孔体の内部構造の観察を行った。すなわち、先ず、得られた球状シリカ系メソ多孔体をエポキシ樹脂に埋め込んだ後、ミクロトームで100nm厚の薄片を製造して試料とした。次に、該試料の表面を透過型電子顕微鏡(TEM:JEOL社製の商品名「2100F」)を用いて測定した。そして、このような100nm厚の薄片(試料)の表面の測定により、スライスされた粒子の内部構造を確認した。該試料の測定面の透過型電子顕微鏡写真であって、倍率の異なる写真を図9及び図10にそれぞれ示す。
図9及び図10に示す結果からも明らかなように、スライスされた粒子は粒子の中が黒くなっており、中空構造を有していることが確認された。なお、試料(薄片)の表面測定において、白く光って見える部分は、スライスされていない粒子の像であると推測される。このように、透過型電子顕微鏡による測定により、得られた球状シリカ系メソ多孔体は中空構造を有する粒子からなることが明らかになった。また、得られた球状シリカ系メソ多孔体の空隙率は12.8%であった。なお、空隙率は、10個の中空構造の粒子の平均値として求めた。
(実施例3)
塩化マグネシウム6水和物の使用量を1.69gから0.85gに変更した以外は、実施例1で採用した方法と同様の方法を採用して、球状シリカ系メソ多孔体を得た。なお、球状シリカ系メソ多孔体の調製時の水系溶液のpHは6.9であった。
また、任意の100個の粒子の形状を走査型電子顕微鏡により確認して各粒子の真球度を求め、その平均値を測定したところ、真球度の平均値は4.8%であり、得られた粒子が球状の粒子であることが確認された。また、走査型電子顕微鏡により任意の100個の粒子の粒子径を測定して球状シリカ系メソ多孔体の平均粒子径及び単分散度を求めたところ、得られた球状シリカ系メソ多孔体の平均粒子径は0.76μmであり、単分散度は4.6%であることが確認された。このような結果から、得られた球状シリカ系メソ多孔体は十分に粒径の均一性が高いものであることが確認された。更に、このような走査型電子顕微鏡による測定により、前記球状シリカ系メソ多孔体においては、数十ナノメーターのナノ粒子の集合体により、各球状粒子が構成されていることも確認された。
また、実施例1と同様に、前記走査型電子顕微鏡に付属の検出器を用いて、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により、前記球状シリカ系メソ多孔体の任意の10000個程度の粒子を含む領域について、酸素、シリコン及びマグネシウムの分布を調べた。その結果、得られたマッピング像より、各元素の存在する位置が一致していることが確認され、また、マグネシウムが局在化していなかったことから、マグネシウムがシリカ骨格に導入されていることが分かった。
また、前記球状シリカ系メソ多孔体について、実施例1と同様にして窒素吸着等温線を測定し、窒素吸着等温線に基づいてBJH法により平均細孔径を求めたところ、平均細孔径は24.1nmであった。このような結果から、水系溶液中での加熱処理(上記水熱処理)により多孔体前駆体粒子の細孔径が大幅に拡大され、十分に大きな細孔径を有する球状シリカ系メソ多孔体が得られたことが確認された。
また、得られた球状シリカ系メソ多孔体に関して、骨格内に含まれるケイ素(Si)とマグネシウムの金属原子換算による含有比([Mg]/[Si])を、実施例1と同様にして測定したところ、ケイ素(Si)とマグネシウムの金属原子換算による含有比は0.068であった。
(実施例4)
水60mLに、硝酸アルミニウム9水和物3.12g(アルミニウム換算によるモル数:0.0083mol)及び合成例2で得られた多孔体前駆体粒子(焼成前の粒子)1g(ケイ素換算によるモル数:0.0167mol)を添加して、前記多孔体前駆体粒子1gを含有する硝酸アルミニウム水溶液(水系溶液)を得た。なお、かかる水系溶液のpHを測定したところ、pHは3.3であった。次いで、前記多孔体前駆体粒子1gを含有する前記水系溶液を150℃で3日間加熱する処理(水熱処理)を施した。次に、このように加熱した後の前記水系溶液中の固形分を濾過により取り出した。次いで、前記固形分を水100mLで洗浄した後、熱風乾燥機で3日間乾燥させ、更に550℃で6時間焼成することにより、有機成分を除去して、球状シリカ系メソ多孔体を得た。
このようにして得られた球状シリカ系メソ多孔体を走査型電子顕微鏡により観測した。このような球状シリカ系メソ多孔体の走査型電子顕微鏡写真を図11に示す。なお、任意の100個の粒子の形状を走査型電子顕微鏡により確認して各粒子の真球度を求め、その平均値を測定したところ、真球度の平均値は5.2%であった。このような結果から、得られた粒子が球状の粒子であることが確認された。
また、走査型電子顕微鏡により任意の100個の粒子の粒子径を測定して球状シリカ系メソ多孔体の平均粒子径及び単分散度を求めたところ、平均粒子径は0.61μmであり、単分散度は7.4%であることが確認された。このような結果から、得られた球状シリカ系メソ多孔体は十分に粒径の均一性が高いものであることが確認された。
また、前記走査型電子顕微鏡に付属の検出器を用いて、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により、前記球状シリカ系メソ多孔体の任意の2000個程度の粒子を含む領域について、酸素、ケイ素及びアルミニウムの分布を調べた。得られた結果を図12(EDXマッピング)に示す。なお、図12(a)はEDXによる分析を行った球状シリカ系メソ多孔体の電子線像(SEM象)を示し、図12(b)は酸素(O)のEDXマッピングの画像(Kα線)を示し、図12(c)はケイ素(Si)のEDXマッピングの画像(Kα線)を示し、図12(d)はアルミニウム(Al)のEDXマッピングの画像(Kα線)を示す。
図12に示す結果からも明らかなように、図12(a)の電子線像中に存在する粒子の位置と、各元素の位置が一致しており(酸素、ケイ素及びアルミニウムの分布位置が一致しており)、また、アルミニウムが局在化していなかったことから、アルミニウムがシリカ骨格に導入されていることが分かった。
また、前記球状シリカ系メソ多孔体について、合成例1と同様にして窒素吸着等温線を測定した。得られた窒素吸着等温線を図13に示す。また、このような窒素吸着等温線に基づいてBJH法により前記球状シリカ系メソ多孔体の平均細孔径を求めたところ、平均細孔径は3.8nmであった。このような結果から、水系溶液中での加熱処理(上記水熱処理)により多孔体前駆体粒子の細孔径を拡大しながら、アルミニウムが導入された球状シリカ系メソ多孔体が得られたことが確認された。
また、得られた球状シリカ系メソ多孔体に関して、骨格内に含まれるケイ素(Si)とマグネシウムの金属原子換算による含有比([Mg]/[Si])を求める代わりに、骨格内に含まれるケイ素(Si)とアルミニウム(Al)の金属原子換算による含有比([Al]/[Si])を測定した以外(マグネシウムの含有率の代わりにアルミニウムの含有率を測定して、ケイ素とアルミニウムの含有比([Al]/[Si])を求めた以外)は、実施例1と同様にして、骨格内に含まれるケイ素(Si)とアルミニウムの金属原子換算による含有比([Al]/[Si])を測定した。その結果、ケイ素(Si)とアルミニウムの金属原子換算による含有比は0.43であった。
(実施例5)
硝酸アルミニウム9水和物の使用量を3.12gから15.6gに変更した以外は、実施例4で採用した方法と同様の方法を採用して、球状シリカ系メソ多孔体を得た。なお、球状シリカ系メソ多孔体の調製時の水系溶液のpHは1.2であった。
このようにして得られた球状シリカ系メソ多孔体を走査型電子顕微鏡により観測した。このような球状シリカ系メソ多孔体の走査型電子顕微鏡写真を図14に示す。なお、任意の100個の粒子の形状を走査型電子顕微鏡により確認して各粒子の真球度を求め、その平均値を測定したところ、真球度の平均値は4.8%であった。このような結果から、得られた粒子が球状の粒子であることが確認された。
また、走査型電子顕微鏡により任意の100個の粒子の粒子径を測定して球状シリカ系メソ多孔体の平均粒子径及び単分散度を求めたところ、平均粒子径は0.64μmであり、単分散度は2.4%であることが確認された。このような結果から、得られた球状シリカ系メソ多孔体は十分に粒径の均一性が高いものであることが確認された。更に、走査型電子顕微鏡による測定により、前記球状シリカ系メソ多孔体においては、数十ナノメーターのナノ粒子の集合体により、各球状粒子が構成されていることも確認された。
また、前記走査型電子顕微鏡に付属の検出器を用いて、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により、前記球状シリカ系メソ多孔体の任意の10000個程度の粒子を含む領域について、酸素、ケイ素及びアルミニウムの分布を調べた。その結果、得られたマッピング像より、各元素の存在する位置が一致していることが確認され、また、アルミニウムが局在化していなかったことから、アルミニウムがシリカ骨格に導入されていることが分かった。
さらに、得られた球状シリカ系メソ多孔体に対してNMR測定を行って、アルミニウム(Al)の結合状態を確認した。図15に得られた球状シリカ系メソ多孔体の27Al−NMRスペクトルのグラフを示す。なお、27Al−NMRスペクトルのグラフにおいては、0ppmの位置に6配位のAlに由来するピークが現れ、50ppmの位置に4配位のAlに由来するピークが現れる。ここで、酸化アルミニウム中のアルミニウムは6配位のものとなり、シリカ骨格に導入されたアルミニウムは4配位のものとなるため、50ppmの位置のピークを確認することにより、Alが骨格に導入されたか否かを判断することが可能である。図15に示す結果からも明らかなように、50ppmの位置にピークが確認されていることから、得られた球状シリカ系メソ多孔体においてはシリカ骨格にアルミニウムが導入されたことが確認された。このように、NMR測定の結果からも、球状シリカ系メソ多孔体のシリカ骨格にアルミニウムが導入されたことが確認された。更に、図15に示す27Al−NMRスペクトルのグラフの0ppmの位置のピークと50ppmの位置のピークの面積比に基づいて、4配位のアルミニウムと6配位のアルミニウムの存在比率([4配位]/[6配位])を求めた結果、71/29であることが確認され、殆どのアルミニウムが4配位のものとなっていることから、殆どのAlが骨格に導入されていることが確認された。
また、前記球状シリカ系メソ多孔体について、実施例4と同様にして窒素吸着等温線を測定した。得られた窒素吸着等温線を図16に示す。また、このような窒素吸着等温線に基づいてBJH法により前記球状シリカ系メソ多孔体の平均細孔径を求めたところ、平均細孔径は10.2nmであった。このような結果から、水系溶液中での加熱処理(上記水熱処理)により多孔体前駆体粒子の細孔径を拡大しながら、アルミニウムが導入された球状シリカ系メソ多孔体が得られたことが確認された。
また、得られた球状シリカ系メソ多孔体に関して、骨格内に含まれるケイ素(Si)とアルミニウムの金属原子換算による含有比([Al]/[Si])を、実施例4と同様にして測定したところ、ケイ素(Si)とアルミニウムの金属原子換算による含有比は0.19であった。
(実施例6)
硝酸アルミニウム9水和物の使用量を3.12gから1.56gに変更した以外は、実施例4で採用した方法と同様の方法を採用して、球状シリカ系メソ多孔体を得た。なお、球状シリカ系メソ多孔体の調製時の水系溶液のpHは3.8であった。
また、任意の100個の粒子の形状を走査型電子顕微鏡により確認して各粒子の真球度を求め、その平均値を測定したところ、真球度の平均値は4.7%であり、得られた粒子が球状の粒子であることが確認された。また、走査型電子顕微鏡により任意の100個の粒子の粒子径を測定して、球状シリカ系メソ多孔体の平均粒子径及び単分散度を求めたところ、得られた球状シリカ系メソ多孔体の平均粒子径は0.63μmであり、単分散度は4.5%であることが確認された。このような結果から、得られた球状シリカ系メソ多孔体は十分に粒径の均一性が高いものであることが確認された。
さらに、前記走査型電子顕微鏡に付属の検出器を用いて、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により、前記球状シリカ系メソ多孔体の任意の10000個程度の粒子を含む領域について、酸素、ケイ素及びアルミニウムの分布を調べた。その結果、得られたマッピング像より、各元素の存在する位置が一致していることが確認され、また、アルミニウムが局在化していなかったことから、アルミニウムがシリカ骨格に導入されていることが分かった。
また、前記球状シリカ系メソ多孔体について、実施例4と同様にして窒素吸着等温線を測定し、窒素吸着等温線に基づいてBJH法により平均細孔径を求めたところ、平均細孔径は4.6nmであった。このような結果から、水系溶液中での加熱処理(上記水熱処理)により多孔体前駆体粒子の細孔径を拡大しながら、アルミニウムが導入された球状シリカ系メソ多孔体が得られたことが確認された。
また、得られた球状シリカ系メソ多孔体に関して、骨格内に含まれるケイ素(Si)とアルミニウムの金属原子換算による含有比([Al]/[Si])を、実施例4と同様にして測定したところ、ケイ素(Si)とアルミニウムの金属原子換算による含有比は0.24であった。
(実施例7)
硝酸アルミニウム9水和物の使用量を3.12gから0.31gに変更した以外は、実施例4で採用した方法と同様の方法を採用して、球状シリカ系メソ多孔体を得た。なお、球状シリカ系メソ多孔体の調製時の水系溶液のpHは5.2であった。
なお、任意の100個の粒子の形状を走査型電子顕微鏡により確認して各粒子の真球度を求め、その平均値を測定したところ、真球度の平均値は4.4%であり、得られた粒子が球状の粒子であることが確認された。また、走査型電子顕微鏡により任意の100個の粒子の粒子径を測定して、球状シリカ系メソ多孔体の平均粒子径及び単分散度を求めたところ、得られた球状シリカ系メソ多孔体の平均粒子径は0.63μmであり、単分散度は4.1%であることが確認された。このような結果から、得られた球状シリカ系メソ多孔体は十分に粒径の均一性が高いものであることが確認された。
また、前記走査型電子顕微鏡に付属の検出器を用いて、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により、前記球状シリカ系メソ多孔体の任意の10000個程度の粒子を含む領域について、酸素、ケイ素及びアルミニウムの分布を調べた。その結果、得られたマッピング像より、各元素の存在する位置が一致していることが確認され、また、アルミニウムが局在化していなかったことから、アルミニウムがシリカ骨格に導入されていることが分かった。
また、前記球状シリカ系メソ多孔体について、実施例4と同様にして窒素吸着等温線を測定し、窒素吸着等温線に基づいてBJH法により平均細孔径を求めたところ、平均細孔径は4.1nmであった。このような結果から、水系溶液中での加熱処理(上記水熱処理)により多孔体前駆体粒子の細孔径を拡大しながら、アルミニウムが導入された球状シリカ系メソ多孔体が得られたことが確認された。
また、得られた球状シリカ系メソ多孔体において、骨格内に含まれるケイ素(Si)とアルミニウムの金属原子換算による含有比([Al]/[Si])を、実施例4と同様にして測定したところ、ケイ素(Si)とアルミニウムの金属原子換算による含有比は0.078であった。
(比較例1)
水50mLに、硝酸アルミニウム9水和物3.12g、合成例2で得られた多孔体前駆体粒子(焼成前の粒子)1g及び2規定(2mol/L)の塩酸10mLを添加して、前記多孔体前駆体粒子1gを含有する硝酸アルミニウムの水溶液(水系溶液)を得た。なお、かかる水系溶液のpHを測定したところ、pHは0.7であった。次いで、前記多孔体前駆体粒子1gを含有する前記水系溶液を150℃で3日間加熱する処理(水熱処理)を施した。次に、このように加熱した後の前記水系溶液中の固形分を濾過により取り出した。次いで、前記固形分を水100mLで洗浄した後、熱風乾燥機で3日間乾燥させ、更に550℃で6時間焼成することにより、有機成分を除去して、比較のための球状シリカ系メソ多孔体を得た。
このようにして得られた球状シリカ系メソ多孔体を走査型電子顕微鏡により観測した。このような球状シリカ系メソ多孔体の走査型電子顕微鏡写真を図17に示す。なお、任意の100個の粒子の形状を走査型電子顕微鏡により確認して各粒子の真球度を求め、その平均値を測定したところ、真球度の平均値は4.0%であり、得られた粒子が球状の粒子であることが確認された。また、走査型電子顕微鏡により任意の100個の粒子の粒子径を測定して球状シリカ系メソ多孔体の平均粒子径及び単分散度を求めたところ、平均粒子径は0.63μmであり、単分散度は2.6%であることが確認された。
また、実施例1と同様に、前記走査型電子顕微鏡に付属の検出器を用いて、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により、前記球状シリカ系メソ多孔体の任意の2000個程度の粒子を含む領域について、酸素、ケイ素及びアルミニウムの分布を調べた。得られた結果を図18(EDXマッピング)に示す。なお、図18(a)はEDXによる分析を行った球状シリカ系メソ多孔体の電子線像(SEM象)を示し、図18(b)は酸素(O)のEDXマッピングの画像(Kα線)を示し、図18(c)はケイ素(Si)のEDXマッピングの画像(Kα線)を示し、図18(d)はアルミニウム(Al)のEDXマッピングの画像(Kα線)を示す。
図18に示す結果からも明らかなように、図18(d)においてアルミニウムが全く検出されなかったことから、シリカ骨格にアルミニウムが導入されていないことが分かった。このように、pHが0.7の水系溶媒を用いた場合には、シリカ骨格にアルミニウムが導入された球状シリカ系メソ多孔体が得られなかったことが確認された。なお、このような結果に関して、水系溶液のpHが0.7であることに起因して、Alイオンが溶液中に安定に存在し、シリカ壁の再構築の際にアルミニウムの析出が起こらなかったことから、アルミニウムがシリカ骨格に導入されなかったものと本発明者らは推察する。また、このような結果から、pHが1未満となるような酸性の溶液中では、水熱処理によってもシリカ骨格中に金属種の導入することは困難であることが確認された。
(比較例2)
水60mLに、硝酸アルミニウム9水和物3.12g、合成例2で得られた多孔体前駆体粒子(焼成前の粒子)1gを添加した後、更に、10質量%のアンモニア水を加えて溶液のpHを9.5に調整して、前記多孔体前駆体粒子1gを含有する硝酸アルミニウムの水溶液(水系溶液)を得た。次いで、前記多孔体前駆体粒子1gを含有する前記水系溶液を150℃で3日間加熱する処理(水熱処理)を施した。次に、このように加熱した後の前記水系溶液中の固形分を濾過により取り出した。次いで、前記固形分を水100mLで洗浄した後、熱風乾燥機で3日間乾燥させ、更に550℃で6時間焼成することにより、有機成分を除去して、比較のためのシリカ系メソ多孔体を得た。
このようにして得られたシリカ系メソ多孔体を走査型電子顕微鏡により観測した。このようなシリカ系メソ多孔体の走査型電子顕微鏡写真を図19に示す。図19に示す結果からも明らかなように、図3に示す合成例2で得られた多孔体前駆体粒子の走査型電子顕微鏡写真と比較して、得られたシリカ系メソ多孔体においては、粒子の形態が崩壊していることが確認された。なお、図19に示す走査型電子顕微鏡写真から、真球度は13%を超えた値となることは明白であり、得られたシリカ系メソ多孔体は球状の粒子ではないことは明らかである。このように、比較例2においては、球状のシリカ系メソ多孔体を得ることができなかった。このような結果に関して、本発明者らは、水系溶媒のpHが高かったことに起因してシリカの溶解が早く進行したため、水熱処理において球状の形態を保持できず、球状の多孔体が得られなかったものと推察する。
(比較例3)
水60mLに、塩化第二鉄6水和物2.25g、合成例2で得られた多孔体前駆体粒子(焼成前の粒子)1gを添加して、前記多孔体前駆体粒子1gを含有する塩化第二鉄の水溶液(水系溶液)を得た。なお、かかる水系溶液のpHを測定したところ、pHは7であった。次いで、前記多孔体前駆体粒子1gを含有する前記水系溶液を150℃で3日間加熱する処理(水熱処理)を施した。次に、このように加熱した後の前記水系溶液中の固形分を濾過により取り出した。次いで、前記固形分を水100mLで洗浄した後、熱風乾燥機で3日間乾燥させ、更に550℃で6時間焼成することにより、有機成分を除去して、比較のためのシリカ系メソ多孔体を得た。
また、前記走査型電子顕微鏡に付属の検出器を用いて、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により、前記シリカ系メソ多孔体の任意の2000個程度の粒子を含む領域について、酸素、ケイ素及び鉄の分布を調べた。得られた結果を図20(EDXマッピング)に示す。なお、図20(a)はEDXによる分析を行ったシリカ系メソ多孔体の電子線像(SEM象)を示し、図20(b)は酸素(O)のEDXマッピングの画像(Kα線)を示し、図20(c)はケイ素(Si)のEDXマッピングの画像(Kα線)を示し、図20(d)は鉄(Fe)のEDXマッピングの画像(Kα線)を示す。図20に示す結果からも明らかなように、SiとFeの位置は全く一致していないことが確認された一方で、FeとOの位置が一致していることが確認された。更に、図20に示す結果からも明らかなように、Feは走査型電子顕微鏡で主に観察される粒子とは異なった位置に存在しており、局在化して存在することが分かった。このような結果から、シリカよりも大きな粒子として、鉄の酸化物の粒子が存在していることが分かった。このように、得られたマッピング像より、ケイ素と鉄の検出位置が異なっていること、鉄が局在化して存在すること、等から、シリカ系メソ多孔体のシリカ骨格に鉄が導入されていないことが分かった。
(比較例4)
水60mLに、塩化銅2水和物1.42g、合成例2で得られた多孔体前駆体粒子(焼成前の粒子)1gを添加して、前記多孔体前駆体粒子1gを含有する塩化銅の水溶液(水系溶液)を得た。なお、かかる水系溶液のpHを測定したところ、pHは7.2であった。次いで、前記多孔体前駆体粒子1gを含有する前記水系溶液を150℃で3日間加熱する処理(水熱処理)を施した。次に、このように加熱した後の前記水系溶液中の固形分を濾過により取り出した。次いで、前記固形分を水100mLで洗浄した後、熱風乾燥機で3日間乾燥させ、更に550℃で6時間焼成することにより、有機成分を除去して、比較のためのシリカ系メソ多孔体を得た。
また、前記走査型電子顕微鏡に付属の検出器を用いて、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により、前記シリカ系メソ多孔体の任意の10000個程度の粒子を含む領域について、酸素、ケイ素及び銅の分布を調べた。得られた結果を図21(EDXマッピング)に示す。なお、図21(a)はEDXによる分析を行ったシリカ系メソ多孔体の電子線像(SEM象)を示し、図21(b)は酸素(O)のEDXマッピングの画像(Kα線)を示し、図21(c)はケイ素(Si)のEDXマッピングの画像(Kα線)を示し、図21(d)は銅(Cu)のEDXマッピングの画像(Kα線)を示す。図21に示す結果からも明らかなように、SiとCuの存在する位置は全く一致していないことが確認された。したがって、シリカ系メソ多孔体のシリカ骨格に銅が導入されていないことが分かった。
(比較例5)
水50mlに、2規定(2mol/L)の塩酸10mL、合成例1で得られた多孔体前駆体粒子(焼成前の粒子)1gを添加した後、150℃で3日間加熱する処理(水熱処理)を施した。次に、このように加熱した後の前記水系溶液中の固形分を濾過により取り出した。次いで、前記固形分を水100mLで洗浄した後、熱風乾燥機で3日間乾燥させ、更に550℃で6時間焼成することにより、有機成分を除去して、比較のためのシリカ系メソ多孔体[金属(Me)未導入の粒子]を得た。
走査型電子顕微鏡により任意の100個の粒子の粒子径を測定して、比較のためのシリカ系メソ多孔体の平均粒子径及び単分散度を求めたところ、得られた球状シリカ系メソ多孔体の平均粒子径は0.72μmであり、単分散度は3.5%であることが確認された。また、前記比較のためのシリカ系メソ多孔体について、実施例1と同様にして窒素吸着等温線を測定し、窒素吸着等温線に基づいてBJH法により平均細孔径を求めたところ、平均細孔径は18.9nmであった。
[シリカ系メソ多孔体の特性の評価]
<吸着試験1>
実施例2で得られた球状シリカ系メソ多孔体(0.2g)、実施例5で得られた球状シリカ系メソ多孔体(0.2g)、合成例1で焼成後に得られた粒子(0.2g)、並びに、比較例5で得られた比較のためのシリカ系メソ多孔体(0.2g)をそれぞれ試料として準備し、以下のようにして、各試料のローダミンBの吸着性能を測定して、シリカ系メソ多孔体の吸着特性を評価した。すなわち、先ず、前記試料を2mM(2mmol/L)のローダミンBの溶液(該溶液の溶媒はエタノールとした)4mL中に添加し、得られた混合液を室温(25℃)でロータリー撹拌機を用いて一晩(12時間)撹拌した。その後、前記混合液を、遠心分離機にて固相と液相に分離した。次いで、得られた液相に対して波長542nmの光の吸光度を測定して、ローダミンBの濃度を算出(吸光光度法)して、前記試料へのローダミンBの吸着量を求めた。このようにして、各試料のローダミンBの吸着量をそれぞれ測定して、各試料1mgあたりのローダミンBの吸着量(単位:mg)を求めた。
その結果、実施例2で得られた球状シリカ系メソ多孔体は1mgあたりのローダミンBの吸着量が10.4mgであり、また、実施例5で得られた球状シリカ系メソ多孔体は1mgあたりのローダミンBの吸着量が6.65mgであった。他方、合成例1で焼成後に得られた粒子においては、1mgあたりのローダミンBの吸着量は3.06mgであり、
、また、比較例5で得られたシリカ系メソ多孔体においては、1mgあたりのローダミンBの吸着量は0.63mgであった。
このような結果からも明らかなように、本発明の球状シリカ系メソ多孔体(実施例2及び5)においては、合成例1で得られた焼成後の粒子及び比較例5で得られたシリカ系メソ多孔体と比較して、少なくとも2倍以上の吸着特性を示すことが確認された。また、実施例2で得られた球状シリカ系メソ多孔体に至っては、合成例1で得られた焼成後の粒子と比較して3倍以上もローダミンBの吸着性能を示しており、非常に高度な吸着特性を示すことが分かった。このような結果から、本発明の球状シリカ系メソ多孔体は、ローダミンBに対する十分に高度な吸着性能を示すことが確認された。
なお、上述のように、本発明の球状シリカ系メソ多孔体(実施例2及び5)においては、カチオン性色素であるローダミンBの吸着特性が向上していること(陽イオンの吸着能が向上していること)からも、シリカ骨格に金属元素(マグネシウム又はアルミニウム)が導入されていることが分かる。すなわち、アルミニウム及びマグネシウムは、基本的に、Si4+よりもイオン価数の低い金属(例えばAl3+、Mg2+等)であるため、シリカ骨格内に、それらの金属(Al又はMg)のいずれかが導入されることで、球状シリカ系メソ多孔体は電子リッチな状態となり、陽イオン物質(ローダミンB)に対する吸着性能が向上することから、これらの金属(Al又はMg)が導入されていない比較例5で得られた粒子等と比較して、陽イオン物質に対する吸着性能が向上していることを確認することによっても、シリカ骨格に金属元素(マグネシウム又はアルミニウム)が導入されていることが分かる。
<吸着試験2>
実施例4で得られた球状シリカ系メソ多孔体(0.1g)及び合成例1で焼成後に得られた粒子(0.1g)をそれぞれ試料として準備し、以下のようにして、各試料の銅イオンの吸着性能を測定し、シリカ系メソ多孔体の吸着特性を評価した。すなわち、先ず、前記試料を58.7mM(58.7mmol/L)の塩化銅水溶液10mL中に添加し、室温(25℃)でロータリー撹拌機を用いて一晩(12時間)撹拌して混合液を得た。その後、前記混合液を、遠心分離機にて固相と液相に分離した。次いで、得られた液相に対して波長814nmの光の吸光度を測定して、銅イオンの濃度を算出(吸光光度法)して、前記試料への銅イオンの吸着量を求めた。このようにして、各試料の銅イオンの吸着量をそれぞれ測定して、各試料1mgあたりの銅イオンの吸着量(単位:μmol)を求めた。
このようにして測定した結果、実施例4で得られた球状シリカ系メソ多孔体においては、1mgあたりの銅イオンの吸着量が0.38μmolであった。他方、合成例1で焼成後に得られた粒子に関しては、1mgあたりの銅イオンの吸着量が0.30μmolであった。このような結果からも明らかなように、本発明の球状シリカ系メソ多孔体(実施例4)においては、合成例1で得られた焼成後の粒子よりも銅イオンに対して高度な吸着性能を示していることが確認された。
以上のような結果から、上述のような水熱処理により、処理前の粒子の単分散度を十分に維持しつつ、十分に細孔径を拡大できるとともに、シリカ骨格内にメタロシリケートを形成し得る金属(Me)を導入することが可能であることが確認されるとともに、そのようにして得られた球状シリカ系メソ多孔体が十分に高度な吸着特性を有するものとなることも確認された。