JP2005089911A - 水解紙の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 湿潤強度が高いにもかかわらず水解性の良好な水解紙を生産性良く製造し得る方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の水解紙の製造方法では、少なくとも2つの乾燥機を用いた湿式抄紙法を用いている。第1乾燥機にて水分率40重量%以下に乾燥された紙に、高粘度のポリマーバインダー溶液を添加すると同時に、剥離剤を該紙または第2乾燥機であるヤンキードライヤー表面に供給し、該バインダー含有紙を第2乾燥機で乾燥させる。
【選択図】 図1

Description

本発明は各種ワイパー等に好適に用いられる水解紙の製造方法に関し、更に詳しくは、ウェットワイパーとして用いた場合に清掃時の湿潤強度が高く、水解性の良好な水解紙を生産性良く製造し得る方法に関する。
ワイパー用の水解紙は、その使用目的上、使用中に破れが起こらないという安心感を使用者に与え、使用後には速やかに水解して下水管を詰まらせないことが必要である。特に洗浄剤を含浸させたウェットワイパー用水解紙に関しては、湿潤状態で強度があり、水解性も良好にすることは非常に有用である。
上記洗浄剤を含浸させたウェットワイパー用水解紙は、例えば以下の特許文献1及び2に記載されている。これらの特許文献は、水溶性バインダーとしてカルボキシメチルセルロースを用い、水溶性溶剤存在下で特定金属イオンとの架橋により湿潤強度を向上させた水解紙を用いた水解性清掃物品に関するものである。かかる水解紙の製造においては、通常の製造工程では高粘度の水溶性ポリマーを添加して製造するにあたり、いくつかの課題が存在する。
一般的な従来のクレープ紙の湿式抄紙法では、パルプを水に分散したパルプ懸濁液をワイヤー上に噴出してワイヤー下部より吸引脱水する事で紙層を形成するか、あるいは円網で紙層を形成し、その後フェルトに転写して紙を搬送し、プレスロールにより脱水、ヤンキードライヤー等により乾燥を行って紙を製造している。水解紙の製造においては、水溶性バインダーを紙に特定量添加する必要があり、一般的にはパルプ分散懸濁液中に水溶性バインダーを添加して、マイナスに帯電するパルプにイオン的に吸着させる方法が採用されている。しかし、カルボキシメチルセルロース(CMC)のような水溶性アニオン性バインダーを用いる場合は、イオン的にパルプに吸着させることができない。
カルボキシメチルセルロースを分散懸濁液状態でパルプに吸着させるために水溶性カチオン性ポリマーのような歩留まり剤を併用することでパルプへの定着を達成できることが知られている(特許文献3参照)。しかし、そのようなカチオン性ポリマーを利用することにより水解紙の製造コストがアップするという問題があった。よって、コスト的に紙に直接CMC溶液をスプレー噴霧あるいは塗工するような製造方法の方が有利である。直接CMCを紙へスプレー噴霧するような製造法においては、スプレー時のCMC溶液粘度に限度があり、低濃度(1〜10%等程度)の溶液で噴霧することが必要となり、乾燥前の湿紙にスプレー添加するケースにおいては紙の水分量が多大となり乾燥不足を招くという問題があった。また、最も技術的に大きな課題として、CMC溶液をスプレー噴霧した湿紙をヤンキードライヤーで乾燥した際にCMCの全てが紙に定着せず、ヤンキードライヤー表面に一部付着するという問題があった。このような状態が続くと安定生産を達成しえない。特にこのようなヤンキドライヤー表面へのCMCの付着は、CMC溶液をスプレー噴霧した紙面がヤンキドライヤー表面に接触するようなプロセスで顕著であった。
特開平2−149237号公報 特開平2−154095号公報 特開平3−193996号公報
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する種々の欠点のない水解紙の製造方法を提供することにある。
本発明は、少なくとも2つの乾燥機を用いた湿式抄紙法において、第1乾燥機にて水分率40重量%以下に乾燥された紙に、高粘度のポリマーバインダー溶液を添加すると同時に、剥離剤を該紙または第2乾燥機であるヤンキードライヤー表面に供給し、該バインダー含有紙を第2乾燥機で乾燥させる水解紙の製造方法を提供することにより達成したものである。
本発明の水解紙の製造方法によれば、湿潤強度が高いにもかかわらず水解性の良好な水解紙を生産性良く製造することができる。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には本発明の水解紙製造方法の実施に好ましく用いられる水解紙の製造装置の一例の概略図が示されている。
図1に示す製造装置(抄紙機)100は、フォーマー1と、ワイヤーパート2と、第1ドライパート3と、スプレーパート4と、第2ドライパート5とを備えて構成されている。フォーマー1は、調製装置(図示せず)から供給された完成紙料を所定の濃度に調節してワイヤーパート2へ供給するものである。図示しない調製装置は、パルプ繊維等の原料を離叩解する装置と、離叩解された原料にサイズ剤、顔料、紙力増強剤、漂白剤、凝集剤等の添加剤を添加する添加装置とを備え、水解紙の特性に応じた所定濃度の原料からなる紙料を完成紙料として調製するように構成されている。ワイヤーパート2は、フォーマー1から供給された完成紙料を抄き網に湿紙として形成するものである。第1ドライパート3は、ワイヤーパート2において形成された湿紙を乾燥させるものである。スプレーパート4は、第1ドライパート3で乾燥された紙にバインダーを噴霧するものである。第2ドライパート5は、スプレーパート4でバインダーが噴霧され湿潤状態になっている紙を乾燥させるものである。また図示していないが、第2ドライパート5の下流側には、第2ドライパート5において乾燥された紙を、水解紙として巻き取るワインダーパートが設置されている。
本製造装置100を用いた水解紙の製造方法について説明すると、フォーマー1から供給された完成紙料がワイヤーパート2において抄造され、ワイヤー21上に湿紙10aが形成される。湿紙10aは、ワイヤーパート2に設置されているサクションボックス22による吸引によって水分が除去され、所定の水分率となされる。水分率は一般に60〜80重量%程度である。完成紙料にはパルプやレーヨンなどの繊維が含まれている。完成紙料の配合は通常の紙製造の場合と同様とすることができる。またパルプは、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)等の漂白された木質パルプ、化学処理を施したアルカリ膨潤したマーセル化パルプ、螺旋構造をした化学架橋パルプを用いることができ、同じセルロース系繊維で生分解性を有するコットン繊維や再生セルロース繊維であるレーヨンを用いることができる。また、生分解性を有する繊維としてポリ乳酸からなる繊維を用いることも可能である。その他にもポリビニルアルコール繊維や他のポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維等も利用することが可能である。
ワイヤーパート2において形成された湿紙10aは、第1ドライパート3に導入されて乾燥される。本実施形態における第1ドライパート3はスルーエアードライヤ(以下、TADという)から構成されている。なお、第1ドライパートで使用可能なものには、TAD以外にヤンキードライヤーやヒートロール等の乾燥機がある。ただし、以下に説明する理由によりTADを用いた乾燥が好ましい。TADは、周面が通気性を有する回転ドラム31と、該回転ドラム31をほぼ気密に覆うフード32とを備えている。TADにおいては、所定温度に加熱された空気がフード32内に供給されるようになされている。加熱された空気は回転ドラム31の外側から内部に向けて流通する。湿紙10aは、図1中、矢印方向に回転する回転ドラム31の周面に抱かれた状態で搬送される。TAD内を搬送されている間、湿紙10aにはその厚み方向へ加熱空気が貫通し、それによって湿紙10aは乾燥され紙10bとなる。つまり湿紙10aは熱風通過によって乾燥される。この乾燥過程においては、湿紙10aは圧密化を受けていないので、その嵩の減少が極力抑えられている。その結果、最終的に得られる水解紙は、高価な嵩高化原料を用いなくても十分に嵩高なものとなり、使用時に破れないという安心感を使用者に与える。また嵩高であることに起因してパルプ間の結合点の数が少なくなり水解性が良好なものとなる。
第1ドライパート3で得られた紙10bには、スプレーパート4においてバインダーを含む水溶液が噴霧される。スプレーパート4は第1及び第2ドライパート3,5間の位置で且つ第2ドライパート5の直ぐ上流側に設置されている。両ドライパート3,5は、コンベア41を介して連結されている。
コンベア41は、それぞれ矢示方向に回転する上コンベアベルト42と下コンベアベルト43とを備えている。コンベア41は、第1ドライパート3のTADによって乾燥された紙10bをこれら両ベルト42,43間に挟持した状態で第2ドライパート5へ搬送するように構成されている。上コンベアベルト42の下流側の折り返し端には真空ロール44が配置されている。真空ロール44は、上コンベアベルト42の表面に紙10bを吸着させ、その吸着状態下に上コンベアベルト42を搬送させるようになっている。
上コンベアベルト42及び下コンベアベルト43は何れもプラスチック製のネットから構成されている。一般的な水解紙の製造装置においてはこれらのベルトはフェルト製であるが、本製造装置においてはフェルト製のベルトは用いていない。この理由は次の通りである。後述するように、本発明においては、紙10bを第2ドライパート5へ導入する直前に、該紙10bにバインダーを含む噴霧液を外添する。このとき、紙10bは上コンベアベルト42の表面に吸着された状態となっている。従って、上コンベアベルト42がフェルト製である場合には、紙10bに外添したバインダーの多くがフェルトに吸収されてしまい、十分な量が紙10bに付着されない。これに対して上コンベアベルト42がプラスチック製のベルトであれば、そのような不都合は生ぜず十分な量のバインダーが紙10bに付着する。またプラスチック製のネットはフェルト製のベルトに比べて洗浄しやすいという利点もある。同様の観点から下コンベアベルト43もプラスチック製としている。プラスチック製ベルトの材質としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン6、ナイロン610、カイナー、ポリフェニレンサルファイド、ケブラー等を用いることができ、重織、平織、綾織、朱子織の織方で、条件に応じてメッシュ、目開きを変えたワイヤーである。しかし、バインダーを含む噴霧液をスプレーノズル54の位置で紙10bに噴霧する場合には、コンベアベルト42、43はフェルト製のものを用いることが可能である。
図1に示すように、スプレーパート4はスプレーノズル45を備えている。スプレーノズル45は第2ドライパート5の下方で且つ真空ロール44に対向するように配設されている。スプレーノズル45は、真空ロール44に向けてバインダーを含む噴霧液を噴霧して、紙10bの幅方向全域に該噴霧液を均一にまたは所定のパターン形状で塗布するものである。噴霧液は、その噴霧に支障のない程度の粘度に希釈されて噴霧される。
スプレーノズル45は紙10bの幅方向にわたり複数個配置されている。スプレーノズル間の間隔は、隣り合うスプレーノズルから噴霧される噴霧液がオーバーラップするような間隔とすることが、噴霧液の均一塗布の点から好ましい。スプレーノズル45は可動になっており、スプレーノズル45の真空ロール44に対する距離や角度を適宜調節できるようになっている。噴霧液の噴射圧も調節できるようになっている。これによって、噴霧液が紙10bの内部へ浸透する程度を適宜制御することができる。噴霧液の紙10bへの浸透度は、真空ロール44の真空度を調節することによっても制御できる。
スプレーノズル45はそのノズルチップ部が、例えばタングステンカーバイドなどの超硬合金製であり且つ耐摩耗処理が施されていることが好ましい。バインダーを含む噴霧液を紙10bに外添するに際して該噴霧液を高圧噴霧すると、該噴霧液が微粒化して均一塗布が可能になるという利点がある。しかし、バインダーとして例えば後述するカルボキシメチルセルロース系バインダー(以下、CMCという)を用いる場合、CMCは高粘度であることから該噴霧液を高圧噴霧するとノズルチップ部の摩耗が激しくなる。そこでノズルチップ部を前述のように構成することで、そのような不都合が生じることを効果的に防止できる。また、高粘度であるが故に高濃度で噴霧しづらいCMCを、高圧のうえ高濃度で噴霧することも可能となり、これにより高速生産が可能になるという利点もある。
紙10bに噴霧される噴霧液はバインダーを含む水性液である。バインダーは、最終的に得られる水解紙に十分な湿潤強度を付与する目的で用いられる。この目的のため、バインダーを歩留まり良く紙10bに付着させることが重要である。この観点から本実施形態においてはバインダーを外添している。
バインダーとしては、従来この種の水解紙に用いられている高粘度のポリマーバインダーを特に制限なく用いることができる。バインダーとしては水溶性及び水不溶性のものの双方を用いることができるが、水溶性のものを用いることが好ましい。水溶性バインダーとしては、例えばカルボキシル基を有する水溶性バインダー、ポリビニルアルコール、デンプンまたはその誘導体、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルプラン、ポリエチレンオキシド、ビスコース、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸のヒドロキシル化誘導体、ポリビニルピロリドン/ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらのバインダーのうち、水解性が良好である点や後述する架橋剤との架橋反応により湿潤強度を発現しうる点からカルボキシル基を有する水溶性バインダーを用いることが好ましい。バインダーは、50〜80℃の温度下で粘度が500〜1200mPa・sという高粘度のものである。
カルボキシル基を有する水溶性バインダーは、水中で容易にカルボキシラートを生成するアニオン性の水溶性バインダーである。その例としては多糖誘導体、合成高分子、天然物が挙げられる。多糖誘導体としてはカルボキシメチルセルロース又はその塩、カルボキシエチルセルロース又はその塩、カルボキシメチル化デンブン又はその塩などが挙げられ、特にカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩が好ましい。合成高分子としては、不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体の塩、不飽和カルボン酸と該不飽和カルボン酸と共重合可能な単量体との共重合体の塩などが挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸などが挙げられる。これらと共重合可能な単量体としては、これら不飽和カルボン酸のエステル、酢酸ビニル、エチレン、アクリルアミド、ビニルエーテルなどが挙げられる。特に好ましい合成高分子は、不飽和カルボン酸としてアクリル酸やメタクリル酸を用いたものであり、具体的にはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸メタクリル酸共重合体の塩、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキルとの共重合体の塩が挙げられる。天然物としては、アルギン酸ナトリウム、ザンサンガム、ジェランガム、タラガントガム、ペクチンなどが挙げられる。
カルボキシル基を有する水溶性バインダーのうち特に好ましいものはカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩である。CMCはそのエーテル化度が0.8〜1.2、特に0.85〜1.1であることがバインダーとしての性能が良好となる点、及び後述する架橋剤との架橋反応が良好である点から好ましい。またCMCは溶液粘度が高いため、攪拌、加熱により粘度を1200mPa・s以下に下げたものを添加するのが好ましい。またバインダー添加法としては、バインダー液をスプレー噴霧、グラビア塗工、あるいは浸漬法等を行うことができるが、生産上スプレー噴霧することが好ましい。
バインダーを外添すると、外添後の紙を更に乾燥させなければならず、生産効率が低下するおそれがある。そこで本発明においては、第1ドライパート3において湿紙10aを低水分率になるまで乾燥させて紙10bを得ると共に、スプレーパート4において噴霧する噴霧液中のバインダーの濃度を出来るだけ高くして噴霧液の噴霧量を少なくすることが乾燥効率の面から好ましい。
具体的には、第1ドライパート3において湿紙10aをその水分率が40重量%以下、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下、特に10重量%以下となるように乾燥させることが好ましい。水分率の下限値に特に制限はなく、低ければ低いほど好ましい。例えば絶乾まで乾燥させてもよい。また噴霧液中におけるバインダーの濃度は、該バインダーの種類にもよるが、例えばCMCを用いる場合には3〜10重量%、特に3〜7重量%であることが均一なスプレー噴霧を達成する面から好ましい。このような濃度でバインダーが溶解している噴霧液のスプレーパート4における噴霧量は、紙10bの重量(絶乾重量)に対して50〜300重量%、特に100〜200重量%程度の少量とすることが、紙への均一なバインダー添加及び第2ドライパート5における効率的な乾燥の点から好ましい。つまり、バインダーが外添され且つヤンキードライヤーに導入される前の紙10bの水分率が25〜80重量%、特に40〜70重量%程度の低水分率であることが好ましい。
バインダーの供給量は、目的とする水解紙の用途や水溶性バインダーの種類に応じて適切な値とすることができる。例えばバインダーとしてCMCを用いる場合には、CMCが供給される前の紙10bの重量(絶乾重量)に対するCMCの添加量は1〜30重量%、特に2〜15重量%であることが、清掃時の強度と水解性の良好な紙を得る点から好ましい。なおティッシュペーパー等の通常の紙製造において、クレープ加工を効果的に行うことを目的として、ヤンキードライヤーに導入される直前の紙に少量のバインダーを外添して、該紙をヤンキードライヤーの周面に接着させる操作を行う場合がある。しかしこの操作は、多量のバインダーの外添によって繊維間を接着させ湿潤強度を高めようとする本発明の外添操作とは全く異なるものである。
噴霧液にはバインダーに加えて剥離剤を含有させておき、水溶性バインダーと共に剥離剤を外添する。本発明においては、水解紙に十分な湿潤強度を付与する観点からバインダーを多量に施すが、これによって第2ドライパート5に紙10bが付着して破れやすくなるおそれがある。そこで、紙10bの過度の付着を抑制する観点から剥離剤も外添する。剥離剤を外添する箇所は、スプレーパート4の位置である。この位置で外添する場合には、剥離剤が紙10bに直接供給される。剥離剤は、バインダーとは別の単独で外添してもよい。その場合には、第2ドライパート5のヤンキードライヤーの表面に対向する位置にスプレーノズル53を設置し、該スプレーノズル53から剥離剤を噴霧してヤンキードライヤーの表面に供給することができる。この場合には、剥離剤がヤンキードライヤーの表面を介して間接的に紙10bに供給される。特に長時間の製造を安定的に維持する観点からは、剥離剤をバインダー中に添加して噴霧するのと同時にヤンキドライヤー51の表面に直接剥離剤を添加する方法が好ましい。この剥離剤の添加により、ヤンキードライヤーにバインダーが付着するのを抑制する効果が得られる。
剥離剤としては、例えばオレイン酸を主成分としている剥離剤を用いることができる。具体的には、オレイン酸を40〜60重量%程度含み、更にポリアルキレンアルキルエーテル等の非イオン界面活性剤などの界面活性剤を数%程度含み、残部が水からなる剥離剤を用いることができる。剥離剤の添加量は、0.05〜0.15重量%、特に0.12〜0.14重量%であることが、第2ドライパート5における紙10bの剥離のしやすさと、後述するドクターナイフ52によるクレープ加工の効率とが適度にバランスする点から好ましい。
スプレーパート4においてバインダーや剥離剤が供給された後、紙10bは第2ドライヤパート5へ搬送される。第2ドライヤーパート5はヤンキードライヤーから構成されている。噴霧液が噴霧されて湿潤状態となっている紙10bは、ヤンキードライヤーの回転ドラム51の周面に抱かれた状態で搬送される。回転ドラム51に抱かれて搬送されている間に紙10bの乾燥が進行する。TADと異なりヤンキードライヤーで湿紙を乾燥させると、一般に紙は圧密化を受けるが、本実施形態においては紙10bに噴霧される噴霧液の量が多量ではなく、過度に湿潤していないことから、紙10bは圧密化を受けず嵩高な状態が維持されている。
ヤンキードライヤーの出口にはドクターナイフ52が設置されている。ドクターナイフ52は、紙10bにクレープをかけながら、ヤンキードライヤーの回転ドラム51から紙10bを剥離させるものである。紙10bにクレープがかけられ、目的とする水解紙10が得られる。
以上の通り本実施形態によれば、TADを用いることで、高価な嵩高化原料を用いなくても十分に嵩高で水解性の良好な水解紙が得られる。嵩高であることによって水解紙の単位面積当たりのパルプ量を減らすことができるので、水解紙を例えばワイパーとして用いる場合に該ワイパーを大判高坪量としても水解性が低下しない。また、水解紙には十分な量のバインダーが付着しているので、該水解紙の湿潤強度は十分に高いものとなる。更に乾燥工程を2段にしており、第1段目の乾燥工程で湿紙を十分に低い水分率まで乾燥させ且つ2つの乾燥工程間において水溶性バインダーを外添することで、湿潤強度の高い水解紙を生産性良く得ることができる。
このようにして得られた水解紙はドライの状態で、或いは水性洗浄剤等を含浸させたウエットの状態で用いられる。例えばトイレや台所など水回りの拭き取り清掃用、おしり拭き用、おしぼりなどとして用いられる。ウエットの状態で用いられる場合には、使用中に崩壊してしまうことを防止するために、含浸させる水性洗浄剤等に、バインダーの架橋剤と水溶性溶剤を含有させておくことが好ましい。架橋剤によってバインダーが架橋して不溶化する結果、水性洗浄剤含浸下では該バインダーが溶解しなくなる。しかし大量の水中に廃棄すれば不溶化していた該バインダーが再び水に溶解するようになって、速やかに且つ繊維レベルでばらばらに崩壊する。
架橋剤は、バインダーの種類に応じて適切なものが用いられる。例えば、バインダーが前述したCMCなどのカルボキシル基を有する水溶性バインダーである場合には、架橋剤として多価金属イオンを用いることが好ましい。特にアルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルからなる群から選択される1種又は2種以上の金属イオンを用いることが、繊維間が十分に結合されて清掃作業に耐え得る強度が発現する点、及び水解性が十分になる点から好ましい。これらの金属イオンのうち、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、コバルト、ニッケルのイオンを用いることが特に好ましい。
金属イオンは、水酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、酢酸塩などの水溶性金属塩の形で水性洗浄剤に添加される。金属イオンは、水溶性バインダにおけるカルボキシル基1モルに対して1/4モル以上、特に1/2モル以上の量となるように添加されることが、十分な架橋反応を起こさせる点から好ましい。
架橋剤とともに水性洗浄剤に配合される水溶性溶剤は、エタノール、イソプロピルアルコール等の1価のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、ヘキシレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールおよびその誘導体等を用いることができる。特に仕上がり性と臭いの面からプロピレングリコールモノメチルエーテルやエタノールを用いるのが好ましい。また、水溶性溶剤の水性洗浄剤中の濃度はCMCを効果的に不溶化し、かつ良好な水解性を発現する観点から5〜50%、特に10%〜30%、さらには15%〜25%が特に好ましい。
本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては第1ドライパート3としてTADを用い且つ第2ドライパート5としてヤンキードライヤーを用いたが、これに代えて第1及び第2ドライパートともヤンキードライヤーを用いてもよい。
またTADからなる第1ドライパートによる乾燥の前の湿紙に、バインダーを補助的に外添してもよい。外添の位置は、図1中45’で示す位置、即ち、ワイヤーパート2と第1ドライパート3との間とする。符号45’で示す位置においてバインダを補助的に外添することで、紙の両面からバインダを付着させることができる。このことは、水解紙として厚手のものを製造する場合に特に有効である。
またスプレーパート4に代えて、ロールコータ等の塗布装置からなるコーターパートを用いてもよい。
以下実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかし本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。特に断らない限り「%」は「重量%」を意味する。
〔実施例1〕
図1に示す製造装置を用いて水解紙を製造した。針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)100%の紙料を用いて湿式抄造した。紙の坪量は30g/m2になるようにし、フォーミングされた湿紙を第1乾燥機としてのスルーエアードライヤーで水分率を4%で乾燥させた。得られた紙を一対のプラスチック製コンベア間に挟持して搬送し、コンベアの折り返し部(スプレーノズル45)において紙に、5%溶液で60℃、1000mP・sであるCMC(エーテル化度0.9、日本製紙製)バインダー液を噴霧した。噴霧量は、紙の重量に対して120重量%で、噴霧液は剥離剤を0.07%含有するものであった。また、第2乾燥機としてのヤンキードライヤーの表面に直接剥離剤をスプレー噴霧(スプレーノズル53)して乾燥後、ドクターナイフによってクレープ加工を行い、目的とする水解紙を得た。剥離剤はオレイン酸を約50%含みポリオキシエチレンアルキルエーテルを3%含む水溶液であった。
〔実施例2〕
実施例1と同様の製造装置を用い、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)100%の紙料を用いて湿式抄造した。紙の坪量は30g/m2になるようにし、フォーミングされた湿紙を第1乾燥機としてのスルーエアードライヤーで水分率を4%で乾燥させた。得られた紙を一対のプラスチック製コンベア間に挟持して搬送し、コンベアの折り返し部(スプレーノズル45)において紙に、5%溶液で60℃、1000mP・sであるCMC(エーテル化度0.9、日本製紙製)バインダー液を噴霧した。噴霧量は紙の重量に対して120重量%で、噴霧液は剥離剤を0.07%含有するものであった。剥離剤はオレイン酸を約50%含みポリオキシエチレンアルキルエーテルを3%含む水溶液であった。第2乾燥機としてのヤンキードライヤで乾燥後、ドクターナイフによってクレープ加工を行い、目的とする水解紙を得た。
〔実施例3〕
実施例1と同様の製造装置を用い、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)100%の紙料を用いて湿式抄造した。紙の坪量は30g/m2になるようにし、第1乾燥機としてのスルーエアードライヤーで水分率を4%で乾燥させた。得られた紙を一対のプラスチック製コンベア間に挟持して搬送し、コンベアの折り返し部(スプレーノズル45)において紙に、5%溶液で60℃、1000mP・sであるCMC(エーテル化度0.9、日本製紙製)バインダー液を噴霧した。噴霧量は、紙の重量に対して120重量%であった。また、第2乾燥機としてのヤンキードライヤーの表面に直接剥離剤をスプレー噴霧(スプレーノズル53)して乾燥後、ドクターナイフによってクレープ加工を行い、目的とする水解紙を得た。剥離剤はオレイン酸を約50%含みポリオキシエチレンアルキルエーテルを3%含む水溶液であった。
〔実施例4〕
実施例1と同様の製造装置を用い、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)100%の紙料を用いて湿式抄造した。紙料のパルプ坪量は30g/m2になるようにし、第1乾燥機としてのスルーエアードライヤーで水分率を20%で乾燥させた。得られた紙を一対のプラスチック製コンベア間に挟持して搬送し、コンベアの折り返し部(スプレーノズル45)において紙に、5%溶液で60℃、1000mP・sであるCMC(エーテル化度0.9、日本製紙製)バインダー液を噴霧した。噴霧量は、紙の重量に対して120重量%で、噴霧液は剥離剤を0.07重量%含有するものであった。また、第2乾燥機としてのヤンキードライヤーの表面に直接剥離剤をスプレー噴霧(スプレーノズル53)して乾燥後、ドクターナイフによってクレープ加工を行い、目的とする水解紙を得た。剥離剤はオレイン酸を約50%含みポリオキシエチレンアルキルエーテルを3%含む水溶液であった。
〔比較例1〕
実施例1と同様の製造装置を用い、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)100%の紙料を用いて湿式抄造した。紙料のパルプ坪量は30g/m2になるようにし、第1乾燥機としてのスルーエアードライヤーで水分率を4%で乾燥させた。得られた紙を一対のプラスチック製コンベア間に挟持して搬送し、コンベアの折り返し部(スプレーノズル45)において紙に、5%溶液で60℃、1000mP・sであるCMC(エーテル化度0.9、日本製紙製)バインダー液を噴霧した。噴霧量は、紙の重量に対して120重量%であった。第2乾燥機としてのヤンキードライヤーで乾燥させた後、ドクターナイフによってクレープ加工を行った。
〔比較例2〕
図2に示す製造装置を用い、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)100%の紙料を用いて湿式抄造した。紙料のパルプ坪量は30g/m2になるようにし、第1乾燥機を使用せず、サクションボックス22、プレスロール23により脱水して水分率を80%とした。プラスチック製コンベア46で紙を搬送し、スプレーノズル46において紙に、5%溶液で60℃、1000mP・sであるCMC(エーテル化度0.9、日本製紙製)バインダー液を噴霧した。噴霧量は、紙の重量に対して120重量%であった。噴霧液は剥離剤を0.07%含有するものであった。また、第2乾燥機としてのヤンキードライヤーの表面に直接剥離剤をスプレー噴霧(スプレーノズル55)して乾燥後、ドクターナイフによってクレープ加工を行い、目的とする水解紙を得た。剥離剤はオレイン酸を約50%含みポリオキシエチレンアルキルエーテルを3%含む水溶液であった。なお、図2において図1と同じ部材には同じ符号を付してある。
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られた水解紙について、表1に示す洗浄液を200%含浸させて、湿潤強度、水解性及び生産性を評価した。結果を表2に示す。
〔湿潤強度〕
水解紙から長さ150mm×幅25mmの試験片を切り出す。試験片に洗浄液を200%含浸させる。JIS P8113に準じて湿潤強度を測定する。引張試験機のチャック間隔は50mmとし、引張速度は300mm/分とする。測定は、水解紙の流れ方向(MD)及び幅方向(CD)の両方向について行った。湿潤強度は最大点の平均を算出する。
〔ほぐれやすさの程度〕
トイレットペーパーのほぐれやすさ試験(JIS P4501)に準じて測定した。
〔生産性〕
水解紙の製造時に生じたトラブル等について記載した。
Figure 2005089911
Figure 2005089911
表2に示す結果から明らかなように、実施例1〜4においては、湿潤強度が高く水解性が良好な水解紙を生産良く製造できることが判る。これに対して比較例1は、第2乾燥での剥離剤をスプレーしないのでヤンキードライヤーに紙料やバインダーが付着して生産が不可であった。比較例2は、第1乾燥を行わないので水分量の多い状態でバインダーを噴霧するのでバインダーの塗布状態が不均一になりやすく、ヤンキードライヤーでの乾燥不充分となりシート破れが発生するため、生産が不可であった。
本発明の水解紙製造方法の実施に好ましく用いられる水解紙の製造装置の一例を示す概略図である。 本発明の水解紙製造方法の比較として用いる製造装置の概略図である。
符号の説明
1 フォーマー
2 ワイヤーパート
3 第1ドライパート(スルーエアードライヤー)
4 スプレーパート(バインダー)
5 第2ドライパート(ヤンキードライヤー)
10 水解紙

Claims (4)

  1. 少なくとも2つの乾燥機を用いた湿式抄紙法において、第1乾燥機にて水分率40重量%以下に乾燥された紙に、高粘度のポリマーバインダー溶液を添加すると同時に、剥離剤を該紙または第2乾燥機であるヤンキードライヤー表面に供給し、該バインダー含有紙を第2乾燥機で乾燥させる水解紙の製造方法。
  2. 第1乾燥機によって乾燥された紙の水分率を40重量%以下にし、濃度3〜10重量%で且つ50〜80℃の温度下で粘度が500〜1200mPa・sのポリマーバインダー溶液を対紙(絶乾重量)に対して50〜300重量%添加する請求項1記載の水解紙の製造方法。
  3. ポリマーバインダーがカルボキシル基を有している請求項1又は2記載の水解紙の製造方法。
  4. ポリマーバインダーを添加した紙を搬送するベルトがプラスチック製ネットである請求項1〜3の何れかに記載の水解紙の製造方法。
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