JP4301996B2 - 水解紙の製造方法 - Google Patents
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バインダー溶液の粘度は、噴射時の温度における粘度である。バインダー溶液の粘度は、バインダー溶液中のバインダー溶液の組成(バインダー成分の濃度等)、バインダー溶液の温度、攪拌状態等を適宜に調節することで上記範囲に調整することができる。
<温度の測定方法>
バインダー液の配合タンクに設置した温度計を用いて温度を測定する。
バインダー液の配合タンクから回収したバインダー溶液、または設定濃度に溶かしたバインダー溶液を用い、スプレーノズルの温度と同じ温度まで加熱させ、B型粘度計(ローターNO.4)にセットして測定する。換算係数表により係数を求めて実測値にかけて粘度を出した。
バインダー溶液の噴射圧が0.7MPa未満であると、高い粘度のバインダー溶液を噴霧すると、溶液の詰まりや均一な状態で噴霧をすることができない。このような不都合を防止し、良好なスプレー噴霧を行う観点から、噴射圧は0.7MPa以上であることが好ましく、更に好ましくは1.4MPa以上である。
<噴射圧の測定方法>
噴霧ポンプの吐出圧力計およびスプレーヘッダーについた圧力計から求めた
オリフィス部(噴射孔の周囲を構成する部材又は部分)に施す耐摩耗処理としては、イオンプレーディング処理またはイオンプレーディング処理を組み合わせた複合処理により形成された、ビッカース硬度2000HV以上の硬化膜のコート処理が好ましい。特に、炭素系硬質膜を形成させるものがより好ましい。
図1に示す製造装置を用いて水解紙を製造した。針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)100%の紙料を用いて湿紙を湿式抄造した。この湿紙をスルーエアードライヤーで水分率が4%となるまで乾燥させた。得られた紙を一対のプラスチック製コンベア間に挟持して搬送し、コンベアの折り返し部において、この紙(原料シート)に対して、該紙の幅方向と平行な方向に10cm間隔で並列配置された複数のスプレーノズル45からバインダー溶液を噴霧した。スプレーノズル45は、共通する一本の本管から分岐した各分岐管の先端に設けられており、スプレーノズル45は、それぞれ、オリフィス直径が0.53mmの、Spraying Systems社製のスプレーチップに、(株)ディスコ社製のDiscoコート(炭素系硬質膜)耐摩耗処理したものであった。バインダー溶液は、CMC(エーテル化度0.9、日本製紙製)を5.1重量%、剥離剤を0.1重量%含有し、残部が水であった。このバインダー溶液は、25℃における粘度が3000mpa・s以上であるが、温度80℃における粘度は500mpa.sである。バインダー溶液の噴霧は、温度80℃に加熱することによって粘度を500mpa.sとして行った。一つのスプレーノズル当たりの噴射量は650cc/分とした。
バインダー溶液スプレー後の紙(バインダー含有紙)を、ヤンキードライヤーの表面に直接剥離剤をスプレー噴霧(スプレーノズル53)しつつ乾燥した後、ドクターナイフによってクレープ加工を行い、目的とする水解紙を得た。剥離剤はオレイン酸を約50%含みポリオキシエチレンアルキルエーテルを3%含む水溶液であった。
噴射するバインダー溶液の粘度及び温度を表1に示す通りに代えた以外は実施例1と同様にして水解紙を製造した。
噴射時におけるバインダー溶液の粘度及び温度を表1に示す通りに代え、二流体方式のスプレーノズルを用い、バインダー溶液を微粒化させる流体として圧搾空気を使用して噴射させた以外は、実施例1と同様にして水解紙を製造した。
実施例及び比較例のそれぞれについて、スプレーノズルから噴射されるバインダー液の性状を目視にて観察した。またヤンキードライヤーの表面からドクターナイフで剥がしたシートを目視観察し、該シートに巾方向にクレープが均一に生じているか否かを評価した。結果を表1に示した。
また実施例及び比較例で得られた水解紙に後加工としてエンボス加工を施し、エンボスロールの山と山との間に紙粉がたまるか否かを観察した。紙粉が多量に貯まった場合を×とし、紙粉が殆ど貯まらない場合を○として、これを、シートの内部にまでバインダーが浸透しているか否かのシート浸透性の指標とした。結果を表1に示した。
比較例2は、バインダー溶液の粘度に対して噴霧圧力が不足する為、バインダーが噴射孔から霧状に噴射されず、連続した水流を形成するように液状に噴射され、紙に均一にバインダーを塗布するには至らなかった。
比較例3は、スプレー噴霧できたが、同時に噴射される気体により気流が生じること及び粒子が小さすぎることによって、飛散して原料シートに到達しない粒子も少なくなく、生産設備にバインダーミストを広く拡散させて生産性を悪化させた。また、水解紙の物性面でも、バインダーがシートの内部にまで浸透しにくく、後加工におけるエンボスにおいて、水解紙の表面強度が弱い為、エンボスのパターン凹部に紙粉を大量に付着堆積させ、生産性を悪化させた。
〔試験例1〕
図5に示す装置を用い、スプレーノズルの耐久時間を測定した。CMC濃度を2重量%、温度を25℃、粘度を800mpsに調整されたバインダー液(CMC水溶液)85をタンク80に入れ、これをポンプ81を介してスプレーノズル84に導きスプレーを行う。この際、圧力条件が均一になる様に圧力計82を見ながら圧力逃がしバルブ83を調整する。スプレーノズル84にノズルチップ部を装着して一定圧力条件下における噴霧量を測定し、一定時間連続運転を行い、その後、噴霧量を測定する事で、噴霧流量の変化を測定した。試験例1で用いたスプレーノズルは、オリフィス部と本体部とが一体に形成されたもので、オリフィス部を含むスプレーチップ全体の材質がタングステンカーバイドで、オリフィス部を含むスプレーチップ全体に炭素系硬質膜処理したものを用いた。
使用したスプレーノズルの材質、耐摩耗処理を表2に示す通りに代えた以外は試験例1と同様にして行った。尚、試験例2及び試験例3のものは、オリフィス部と本体部とが一体的に形成されたもので、オリフィス部を含むスプレーチップ全体に耐摩耗処理が施されている。
図5の装置を用いてテストを行い、そのテスト時間、使用初期とテスト後の流量増加量(%)を時間で割った時間当たりの流量増加率を算出した。結果を表2に示した。この増加率が高いものほど摩耗が大きいものとして評価した。
更にスプレーチップの材料素材にタングステンカーバイトを使用し、これに炭素系硬質膜処理を施した試験例1は、流量増加率が更に低い0.002%/hrになる。
これらの試験例及び比較試験例より、スプレーオリフィス部の材料にタングステンカーバイトを使用し、かつ炭素系硬質膜処理を施したスプレーチップは、高粘度のバインダーの噴霧時の摩耗に対して非常に効果がある事が判る。
2 ワイヤーパート
3 第1ドライパート(スルーエアードライヤー)
4 スプレーパート
5 第2ドライパート(ヤンキードライヤー)
10b, 10b’,10b” 原料シート
10 水解紙
Claims (6)
- バインダー溶液を、粘度500〜1200mpa.sとし、圧力0.7MPa以上の噴射圧でスプレーノズルから原料シートに向けて噴射し、得られたバインダー含有紙を乾燥させる水解紙の製造方法であって、
前記スプレーノズルが一流体方式のノズルである水解紙の製造方法。 - 前記バインダー溶液は、粘度を低下させるため50〜100℃に加熱することにより粘度500〜1200mpa.sとした状態で噴射する請求項1記載の水解紙の製造方法。
- 前記バインダー溶液は、カルボキシル基を有する水溶性バインダーを含有する請求項1又は2記載の水解紙の製造方法。
- 前記カルボキシル基を有する水溶性バインダーが、カルボキシメチルセルロースであり、前記バインダー溶液中のカルボキシメチルセルロースの濃度が3〜10重量%である請求項3記載の水解紙の製造方法。
- 前記一流体方式のノズルとして、スプレーノズルチップの材質が、タングステンカーバイト合金であるスプレーノズルを使用する請求項1〜4の何れか記載の水解紙の製造方法。
- 前記一流体ノズルのノズルとして、スプレーノズルチップのオリフィス部に炭素系硬質膜のコート処理をしたスプレーノズルを使用する請求項1〜5の何れか記載の水解紙の製造方法。
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