JP4301996B2 - 水解紙の製造方法 - Google Patents

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本発明は、各種ワイパー等に好適に用いられる水解紙の製造方法に関する。
ワイパー用の水解紙は、その使用目的上、使用中に破れが起こらないという安心感を使用者に与え、使用後には速やかに水解して下水管を詰まらせないことが必要である。特に洗浄剤を含浸させたウェットワイパー用水解紙に関しては、湿潤状態で強度があり、水解性も良好にすることは非常に有用である。
上記洗浄剤を含浸させたウェットワイパー用水解紙は、例えば以下の特許文献1及び2に記載されている。これらの特許文献は、水溶性バインダーとしてカルボキシメチルセルロースを用い、水溶性溶剤存在下で特定金属イオンとの架橋により湿潤強度を向上させた水解紙を用いた水解性清掃物品に関するものである。かかる水解紙の製造においては、通常の製造工程では高粘度の水溶性ポリマーを添加して製造するにあたり、いくつかの課題が存在する。
一般的な従来のクレープ紙の湿式抄紙法では、パルプを水に分散したパルプ懸濁液をワイヤー上に噴出してワイヤー下部より吸引脱水する事で紙層を形成するか、あるいは円網で紙層を形成し、その後フェルトに転写して紙を搬送し、プレスロールにより脱水、ヤンキードライヤー等により乾燥を行って紙を製造している。水解紙の製造においては、水溶性バインダーを紙に特定量添加する必要があり、一般的にはパルプ分散懸濁液中に水溶性バインダーを添加して、マイナスに帯電するパルプにイオン的に吸着させる方法が採用されている。しかし、カルボキシメチルセルロース(CMC)のような水溶性アニオン性バインダーを用いる場合は、イオン的にパルプに吸着させることができない。
カルボキシメチルセルロースを分散懸濁液状態でパルプに吸着させるために水溶性カチオン性ポリマーのような歩留まり剤を併用することでパルプへの定着を達成できることが知られている(特許文献3参照)。しかし、そのようなカチオン性ポリマーを利用することにより水解紙の製造コストがアップするという問題があった。よって、コスト的に紙に直接CMC溶液をスプレー噴霧あるいは塗工するような製造方法の方が有利である。
良好な水解性と湿潤時の清掃強度を得る為には、対パルプ3重量%以上のCMCを添加する事が必要である。この量のCMCを直接CMCを紙へスプレー噴霧するような製造法においては、紙に均一にスプレーする事が重要である。一般的に使用される一流体のスプレーノズルでCMC溶液を噴霧する場合、スプレーの均一性を優先した場合は、均一なスプレー状態を得る為にCMCの水溶液濃度を低くして溶液粘度を低くする必要があり、それによって、続く乾燥工程において乾燥不足を招いたり、乾燥機での水分蒸発量が多く生産性が悪いという問題があった。また、CMC溶液濃度を高くして、蒸発させる水分を削減させる場合、スプレーするCMC水溶液粘度も高くなる。この液を均一にスプレーする場合は、スプレー圧力を0.7MPa以上に高くする必要があり、これにより、均一なスプレー状態は得られるが、逆にスプレーチップが液体との摩耗によって、寿命が短くなり、生産性が悪いと言う欠点があった。
特開平2−149237号公報 特開平2−154095号公報 特開平3−193996号公報
従って、本発明の目的は、原料シートに高濃度のバインダー溶液を均一にスプレーでき、強度等にむらのない水解紙を生産性良く製造することのできる水解紙の製造方法を提供することにある。
本発明は、バインダー溶液を、粘度500〜1200mpa.sとし、圧力0.7MPa以上の噴射圧で一流体方式のスプレーノズルから原料シートに向けて噴射し、得られたバインダー含有紙を乾燥させる水解紙の製造方法を提供することにより前記目的を達成したものである。
本発明の水解紙の製造方法によれば、原料シートに高濃度のバインダー溶液を均一にスプレーでき、強度等にむらのない水解紙を生産性良く製造することができる。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には本発明の水解紙の製造方法の実施に好ましく用いられる水解紙の製造装置の一例の概略図が示されている。
図1に示す製造装置(抄紙機)100は、フォーマー1と、ワイヤーパート2と、第1ドライパート3と、スプレーパート4と、第2ドライパート5とを備えて構成されている。フォーマー1は、調製装置(図示せず)から供給された完成紙料を所定の濃度に調節してワイヤーパート2へ供給するものである。図示しない調製装置は、パルプ繊維等の原料を離叩解する装置と、離叩解された原料にサイズ剤、顔料、紙力増強剤、漂白剤、凝集剤等の添加剤を添加する添加装置とを備え、水解紙の特性に応じた所定濃度の原料からなる紙料を完成紙料として調製するように構成されている。ワイヤーパート2は、フォーマー1から供給された完成紙料を抄き網に湿紙として形成するものである。第1ドライパート3は、ワイヤーパート2において形成された湿紙を乾燥させるものである。スプレーパート4は、第1ドライパート3で乾燥された紙(原料シート)にバインダーを噴霧するものである。第2ドライパート5は、スプレーパート4でバインダーが噴霧され湿潤状態になっている紙(バインダー含有紙)を乾燥させるものである。また図示していないが、第2ドライパート5の下流側には、第2ドライパート5において乾燥された紙を、水解紙として巻き取るワインダーパートが設置されている。
本製造装置100を用いた水解紙の製造方法について説明すると、フォーマー1から供給された完成紙料がワイヤーパート2において抄造され、ワイヤー21上に湿紙10aが形成される。湿紙10aは、ワイヤーパート2に設置されているサクションボックス22による吸引によって水分が除去され、所定の水分率となされる。水分率は一般に60〜80重量%程度である。完成紙料にはパルプやレーヨンなどの繊維が含まれている。完成紙料の配合は通常の紙製造の場合と同様とすることができる。またパルプは、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)等の漂白された木質パルプ、化学処理を施したアルカリ膨潤したマーセル化パルプ、螺旋構造をした化学架橋パルプを用いることができ、同じセルロース系繊維で生分解性を有するコットン繊維や再生セルロース繊維であるレーヨンを用いることができる。また、生分解性を有する繊維としてポリ乳酸からなる繊維を用いることも可能である。その他にもポリビニルアルコール繊維や他のポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維等も利用することが可能である。
ワイヤーパート2において形成された湿紙10aは、第1ドライパート3に導入されて乾燥される。本実施形態における第1ドライパート3はスルーエアードライヤ(以下、TADという)から構成されている。なお、第1ドライパートで使用可能なものには、TAD以外にヤンキードライヤーやヒートロール等の乾燥機がある。TADは、周面が通気性を有する回転ドラム31と、該回転ドラム31をほぼ気密に覆うフード32とを備えている。TADにおいては、所定温度に加熱された空気がフード32内に供給されるようになされている。加熱された空気は回転ドラム31の外側から内部に向けて流通する。湿紙10aは、図1中、矢印方向に回転する回転ドラム31の周面に抱かれた状態で搬送される。TAD内を搬送されている間、湿紙10aにはその厚み方向へ加熱空気が貫通し、それによって湿紙10aは乾燥され紙10bとなる。つまり湿紙10aは熱風通過によって乾燥される。この乾燥過程においては、湿紙10aは圧密化を受けていないので、その嵩の減少が極力抑えられている。その結果、最終的に得られる水解紙は、高価な嵩高化原料を用いなくても十分に嵩高なものとなる。また湿紙10aが嵩高であっても、後述するバインダー溶液の噴射に一流体方式のスプレーノズル45を用いることによって、厚み方向の内部までバインダーが浸透するため、充分な湿潤強度が得られる。また嵩高であることに起因してパルプ間の結合点の数が少なくなり水解性が良好なものとなる。
第1ドライパート3で得られた紙10bは、本実施形態における原料シートであり、スプレーパート4においては、この紙10bに対して、バインダーを含む水溶液が噴霧される。スプレーパート4は第1及び第2ドライパート3,5間の位置で且つ第2ドライパート5の直ぐ上流側に設置されている。両ドライパート3,5は、コンベア41を介して連結されている。
コンベア41は、それぞれ矢示方向に回転する上コンベアベルト42と下コンベアベルト43とを備えている。コンベア41は、第1ドライパート3のTADによって乾燥された紙10bをこれら両ベルト42,43間に挟持した状態で第2ドライパート5へ搬送するように構成されている。上コンベアベルト42の下流側の折り返し端には真空ロール44が配置されている。真空ロール44は、上コンベアベルト42の表面に紙10bを吸着させ、その吸着状態下に上コンベアベルト42を搬送させるようになっている。
上コンベアベルト42及び下コンベアベルト43は何れもプラスチック製のネットから構成されている。一般的な水解紙の製造装置においてはこれらのベルトはフェルト製であるが、本製造装置においてはフェルト製のベルトは用いていない。この理由は次の通りである。後述するように、本実施形態においては、紙10bを第2ドライパート5へ導入する直前に、該紙10bにバインダーを含む噴霧液を外添する。このとき、紙10bは上コンベアベルト42の表面に吸着された状態となっている。従って、上コンベアベルト42がフェルト製である場合には、紙10bに外添したバインダーの多くがフェルトに吸収されてしまい、十分な量が紙10bに付着されない。これに対して上コンベアベルト42がプラスチック製のベルトであれば、そのような不都合は生ぜず十分な量のバインダーが紙10bに付着する。またプラスチック製のネットはフェルト製のベルトに比べて洗浄しやすいという利点もある。同様の観点から下コンベアベルト43もプラスチック製としている。プラスチック製ベルトの材質としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン6、ナイロン610、カイナー、ポリフェニレンサルファイド、ケブラー等を用いることができ、重織、平織、綾織、朱子織の織方で、条件に応じてメッシュ、目開きを変えたワイヤーである。しかし、例えば、バインダーを含む噴霧液をスプレーノズル54の位置で紙10bに噴霧する場合には、コンベアベルト42、43はフェルト製のものを用いることが可能である。
図1に示すように、スプレーパート4はスプレーノズル45を備えている。スプレーノズル45は第2ドライパート5の下方で且つ真空ロール44に対向するように配設されている。スプレーノズル45は、真空ロール44に向けてバインダーを含む噴霧液を噴霧して、原料シートとしての紙10bの幅方向の全域又は幅方向の所定幅の部分に該噴霧液を均一に塗布するものである。
スプレーノズル45は紙10bの幅方向と平行に複数個配置されている。スプレーノズル間の間隔は、隣り合うスプレーノズルから噴霧される噴霧液がオーバーラップするような間隔とすることが、噴霧液の均一塗布の点から好ましい。スプレーノズル45は可動になっており、スプレーノズル45の真空ロール44に対する距離や角度を適宜調節できるようになっている。噴霧液の噴射圧も調節できるようになっている。これによって、噴霧液が紙10bの内部へ浸透する程度を適宜制御することができる。噴霧液の紙10bへの浸透度は、真空ロール44の真空度を調節することによっても制御できる。
原料シートとしての紙10bに向けてスプレー噴射される噴霧液は、バインダー溶液である。バインダーは、最終的に得られる水解紙に十分な湿潤強度を付与する目的で用いられるため、バインダーを歩留まり良く紙10bに付着させることが重要である。この観点から本実施形態においてはバインダーを外添している。
スプレーノズル45は、一流体方式のスプレーノズルである。スプレーノズルとしては、圧搾空気等の気体と液体とを混合し、該気体の力を利用して液体を霧状に噴射させる方式のノズルである二流体方式のノズルと、加圧した液体を単独で噴射させる方式のノズルである一流体方式のノズルとがある。二流体方式のノズルは、液体を、細かな粒子に分散させて噴射することができる点では優れているが、大量の気流により、粒子が飛散し易く、生産性が低下する。また、バインダーが、表面に局在し、紙(原料シート)10bの厚み方向の内部にまで浸透しにくいため、バインダー含有紙や、最終的に得られる水解紙に充分な強度が得られない恐れがある。一流体方式のノズルを用いることにより、このような不都合を防止でき、湿潤強度等に優れた水解紙が得られる。
本発明では、バインダー溶液を、粘度500〜1200mpa.sとして噴射する。
バインダー溶液の粘度は、噴射時の温度における粘度である。バインダー溶液の粘度は、バインダー溶液中のバインダー溶液の組成(バインダー成分の濃度等)、バインダー溶液の温度、攪拌状態等を適宜に調節することで上記範囲に調整することができる。
バインダー溶液の粘度が500mpa.s未満であると、スプレーノズルからバインダー溶液の噴霧に関しては圧力負荷をかけずに良好に行うことができるが、バインダー濃度が低くて粘度が低くなっている場合には、バインダー溶液を噴霧するシートへの水分量が増加し、乾燥工程での負荷が大きくなる。他方、バインダー溶液の粘度が1200mpa.s超であると、粘度が高すぎてスプレーノズルに圧力負荷がかかりすぎて良好な噴霧ができなかったり、圧力負荷によってノズルの摩耗が早くなったり、スプレーポンプの負荷も大きく、場合により破損が生じてしまう。
高粘度によるノズルの摩耗抑制、スプレー設備の破損防止の観点から、バインダー溶液の粘度は1000mpa.s以下であることが好ましい。
バインダー溶液は、加熱した状態で噴射することが好ましく、加熱による粘度低下の観点から、50℃以上が好ましく、カルボキシメチルセルロースの分解等が生じる100℃よりも低い温度にすることが好ましい。更に60〜80℃の温度にバインダー溶液をするのがより好ましい。
バインダー溶液噴射時における、バインダー溶液の粘度及び温度は、以下のようにして測定することができる。
<温度の測定方法>
バインダー液の配合タンクに設置した温度計を用いて温度を測定する。
<粘度の測定方法>
バインダー液の配合タンクから回収したバインダー溶液、または設定濃度に溶かしたバインダー溶液を用い、スプレーノズルの温度と同じ温度まで加熱させ、B型粘度計(ローターNO.4)にセットして測定する。換算係数表により係数を求めて実測値にかけて粘度を出した。
本発明では、バインダー溶液を、圧力0.7MPa以上の噴射圧で噴射する。
バインダー溶液の噴射圧が0.7MPa未満であると、高い粘度のバインダー溶液を噴霧すると、溶液の詰まりや均一な状態で噴霧をすることができない。このような不都合を防止し、良好なスプレー噴霧を行う観点から、噴射圧は0.7MPa以上であることが好ましく、更に好ましくは1.4MPa以上である。
バインダー溶液の噴射圧は、以下のようにして測定することができる。
<噴射圧の測定方法>
噴霧ポンプの吐出圧力計およびスプレーヘッダーについた圧力計から求めた
スプレーノズル45は、そのノズルチップ部がタングステンカーバイド合金などの超硬合金製であるか、又はそのノズルチップ部に耐摩耗処理が施されていることが好ましく、超硬合金製であり且つ耐摩耗処理が施されていることがより好ましい。
バインダーを含む噴霧液を紙10bに外添するに際して該噴霧液を高圧噴霧すると、該噴霧液が微粒化して均一塗布が可能になるという利点がある。しかし、バインダーとして、例えば後述するカルボキシメチルセルロース系バインダー(以下、CMCという)を用いる場合、CMCは高粘度であることから該噴霧液を高圧噴霧するとノズルチップ部の摩耗が激しくなる。摩耗によりノズルチップ部の噴射孔の口径が拡がると、スプレー量が多くなったり、スプレー角度が狭くなって複数箇所に分割されて散布されたり、スプレーの粒子の粒子径が大きくなったりして、品質上、強度のばらつき等の不良が発生したり、局所的な乾燥不良により、乾燥機からの引き剥がし時に穴があいたり、巻き中の紙同士が接着する等の不都合が生じる。スプレーノズルのノズルチップ部を前述のように構成することで、そのような不都合が生じることを効果的に防止できる。また、高粘度であるが故に高濃度で噴霧しづらいCMCを、高圧のうえ高濃度で噴霧することが可能となり、これにより高速生産が可能になるという利点もある。
噴射孔の摩耗抑制及びスプレーノズルの製造(加工)コスト削減等の観点から、スプレーノズル45のノズルチップ部61は、図2に示すように、噴射孔62の周囲を構成するオリフィス部63と、オリフィス部63の周囲を構成し、バインダー溶液の供給管64等に接続される本体部65とが別材から形成されており、そのオリフィス部63がタングステンカーバイド合金などの超硬合金製であるか、又はそのオリフィス部63に耐摩耗処理が施されていることが好ましい。オリフィス部63は、超硬合金製であり且つ耐摩耗処理が施されていることがより好ましい。耐摩耗処理は、オリフィス部63及び本体部65の両者に施されていても良い。
図2に示す例では、軸芯に沿って噴射孔62が形成された円柱状のオリフィス部形成部材によりオリフィス部63が形成されており、そのオリフィス部形成部材は、本体部65を構成する略円筒状の本体部形成部材の一端部近傍に設けられた内径一定の嵌挿部内に嵌挿され固定されている。噴射孔62は、原料シートに向けて開口する外側端部が略円錐状に拡がっている。本体部65は、前記嵌挿部側から供給管64側に向かって内径が漸増する拡径部を有している。本体部65は、その外周部にフランジ部66を有し、該フランジ部66を介して、ナット等67の接続手段で供給管64の先端に固定されている。
オリフィス部(噴射孔の周囲を構成する部材又は部分)の形成素材としての耐摩耗性材料としては、上述したタングステンカーバイド合金の他に、コバルト基合金(Co-Cr-W-C系)(例えば、三菱ステライト6B)、TiおよびTi合金、ニッケル基合金(Ni-Cr−B系)等の金属の他、セラミックス(SiC)、等が挙げられるが、硬度、耐摩耗性・耐久性に優れる点から、特にタングステンカーバイド合金であることが好ましい。
オリフィス部(噴射孔の周囲を構成する部材又は部分)に施す耐摩耗処理としては、イオンプレーディング処理またはイオンプレーディング処理を組み合わせた複合処理により形成された、ビッカース硬度2000HV以上の硬化膜のコート処理が好ましい。特に、炭素系硬質膜を形成させるものがより好ましい。
表面硬質膜を得る方法としては、イオンプレーディング処理法(PVD法)による方法が好ましい。この方法による膜の種類としては、炭素系硬質膜、Ti系薄膜(TiN,TiC,TiCN,TiAlN),CrNがあるが、硬度の点から、ビッカース硬度で2000Hv以上の硬度の得られる、炭素系硬質膜を形成する方法(discoコート)がより好ましく用いられる。
ビッカース硬度2000HV以上の硬化膜のコート処理に用いる表面改質処理は、プラズマ反応を利用した気層メッキ法による表面硬化処理による方法が好ましく用いられる。
尚、ビッカース硬度は、ビッカースダイヤモンドの圧痕を測定する事により被検査材料の硬度を測る方法であり、HV(Vickers hardness value)=F/A 〔但し、F=荷重(Force applied in the Vickers hardness test)、A=圧痕面積(area of indentation)〕で表される。
オリフィス部63とは別の形成素材から本体部65を形成する場合の形成素材としては、ステンレス、真鍮等が使用されるが、CMCによる腐食性の観点から本ノズルでは、ステンレス製の材料が好ましい。
噴射孔47は、ノズルのオリフィス径については、生産速度、シート巾、スプレーノズルのピッチ・CMC水溶液の濃度等により、対紙添加量が3重量%〜10重量%の添加量になる様に噴射口の口径の選定がなされるが、CMC水溶液の粘度が500〜1500mPa・sの範囲の液体を良好にスプレーする為には、スプレーの噴射口のオリフィス直径が0.4〜5.2mm、より好ましくは0.45〜1.1mmであり、かつフラットタイプのスプレー形状となる型式の物が、特に好ましい。
バインダーとしては、従来この種の水解紙に用いられている高粘度のポリマーバインダーを特に制限なく用いることができる。バインダーとしては水溶性及び水不溶性のものの双方を用いることができるが、水溶性のものを用いることが好ましい。水溶性バインダーとしては、例えばカルボキシル基を有する水溶性バインダー、ポリビニルアルコール、デンプンまたはその誘導体、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルプラン、ポリエチレンオキシド、ビスコース、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸のヒドロキシル化誘導体、ポリビニルピロリドン/ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらのバインダーのうち、水解性が良好である点や後述する架橋剤との架橋反応により湿潤強度を発現しうる点からカルボキシル基を有する水溶性バインダーを用いることが好ましい。
カルボキシル基を有する水溶性バインダーは、水中で容易にカルボキシラートを生成するアニオン性の水溶性バインダーである。その例としては多糖誘導体、合成高分子、天然物が挙げられる。多糖誘導体としてはカルボキシメチルセルロース又はその塩、カルボキシエチルセルロース又はその塩、カルボキシメチル化デンブン又はその塩などが挙げられ、特にカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩が好ましい。合成高分子としては、不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体の塩、不飽和カルボン酸と該不飽和カルボン酸と共重合可能な単量体との共重合体の塩などが挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸などが挙げられる。これらと共重合可能な単量体としては、これら不飽和カルボン酸のエステル、酢酸ビニル、エチレン、アクリルアミド、ビニルエーテルなどが挙げられる。特に好ましい合成高分子は、不飽和カルボン酸としてアクリル酸やメタクリル酸を用いたものであり、具体的にはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸メタクリル酸共重合体の塩、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキルとの共重合体の塩が挙げられる。天然物としては、アルギン酸ナトリウム、ザンサンガム、ジェランガム、タラガントガム、ペクチンなどが挙げられる。
カルボキシル基を有する水溶性バインダーのうち特に好ましいものはカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩である。CMCはそのエーテル化度が0.8〜1.2、特に0.85〜1.1であることがバインダーとしての性能が良好となる点、及び後述する架橋剤との架橋反応が良好である点から好ましい。
本実施形態においては、原料シートとしての紙10bの水分率を比較的低めにすると共に、スプレーパート4において噴霧するバインダー溶液中のバインダーの濃度を出来るだけ高くして噴霧液の噴霧量を少なくすることが乾燥効率の面から好ましい。
具体的には、第1ドライパート3において乾燥させた後の紙(原料シート)10bは、その水分率が40重量%以下であることが好ましく、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。水分率の下限値に特に制限はなく、例えば第1ドライパート3で絶乾まで乾燥させてもよい。またバインダー溶液中におけるバインダーの濃度は、該バインダーの種類にもよるが、例えばCMCを用いる場合には、均一なスプレー噴霧を安定且つ確実に達成する観点から、3〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは3〜7重量%である。
このような濃度でバインダーが溶解している噴霧液のスプレーパート4における噴霧量は、紙10bの重量(絶乾重量)に対して50〜300重量%、特に100〜200重量%程度の少量とすることが、紙への均一なバインダー添加及び第2ドライパート5における効率的な乾燥の点から好ましい。つまり、バインダーが外添され且つヤンキードライヤーに導入される前の紙10bの水分率が25〜80重量%、特に40〜70重量%程度の低水分率であることが好ましい。
バインダーの供給量は、目的とする水解紙の用途や水溶性バインダーの種類に応じて適切な値とすることができる。例えばバインダーとしてCMCを用いる場合には、CMCが供給される前の紙10bの重量(絶乾重量)に対するCMCの添加量は1〜30重量%、特に2〜15重量%であることが、清掃時の強度と水解性の良好な紙を得る点から好ましい。なおティッシュペーパー等の通常の紙製造において、クレープ加工を効果的に行うことを目的として、ヤンキードライヤーに導入される直前の紙に少量のバインダーを外添して、該紙をヤンキードライヤーの周面に接着させる操作を行う場合がある。しかしこの操作は、多量のバインダーの外添によって繊維間を接着させ湿潤強度を高めようとする本発明の外添操作とは全く異なるものである。
噴霧するバインダー溶液にはバインダーに加えて剥離剤を含有させておき、水溶性バインダーと共に剥離剤を外添する。本実施形態においては、水解紙に十分な湿潤強度を付与する観点からバインダーを多量に施すことが好ましいが、これによって第2ドライパート5に紙10bが付着して破れやすくなるおそれがある。そこで、紙10bの過度の付着を抑制する観点から剥離剤も外添する。剥離剤を外添する箇所は、スプレーパート4の位置である。この位置で外添する場合には、剥離剤が紙10bに直接供給される。剥離剤は、バインダーとは別の単独で外添してもよい。その場合には、第2ドライパート5のヤンキードライヤーの表面に対向する位置にスプレーノズル53を設置し、該スプレーノズル53から剥離剤を噴霧してヤンキードライヤーの表面に供給することができる。この場合には、剥離剤がヤンキードライヤーの表面を介して間接的に紙10bに供給される。特に長時間の製造を安定的に維持する観点からは、剥離剤をバインダー溶液中に添加してスプレー噴霧するのと同時にヤンキドライヤー51の表面に直接剥離剤を添加する方法が好ましい。この剥離剤の添加により、ヤンキードライヤーにバインダーが付着するのを抑制する効果が得られる。
剥離剤としては、例えばオレイン酸を主成分としている剥離剤を用いることができる。具体的には、オレイン酸を40〜60重量%程度含み、更にポリアルキレンアルキルエーテル等の非イオン界面活性剤などの界面活性剤を数%程度含み、残部が水からなる剥離剤を用いることができる。バインダー溶液の剥離剤の添加量は0.05〜0.15重量%、特に0.12〜0.14重量%であることが、第2ドライパート5における紙10bの剥離のしやすさと、後述するドクターナイフ52によるクレープ加工の効率とが適度にバランスする点から好ましい。
スプレーパート4においてバインダーや剥離剤が供給された後、バインダー含有紙としての紙10cは第2ドライヤパート5へ搬送される。第2ドライヤーパート5はヤンキードライヤーから構成されている。噴霧液が噴霧されて湿潤状態となっている紙10cは、ヤンキードライヤーの回転ドラム51の周面に抱かれた状態で搬送される。回転ドラム51に抱かれて搬送されている間に紙10cの乾燥が進行する。TADと異なりヤンキードライヤーで湿紙を乾燥させると、一般に紙は圧密化を受けるが、本実施形態においては紙10bに噴霧される噴霧液の量が多量ではなく、過度に湿潤していないことから、紙10bは圧密化を受けず嵩高な状態が維持されている。
ヤンキードライヤーの出口にはドクターナイフ52が設置されている。ドクターナイフ52は、紙10cにクレープをかけながら、ヤンキードライヤーの回転ドラム51から紙10cを剥離させるものである。紙10cにクレープがかけられ、目的とする水解紙10が得られる。
本実施形態によれば、バインダー溶液を特定の粘度として特定圧力の噴射圧で一流体方式のスプレーノズルからスプレー噴射することで、高濃度のバインダー溶液を原料シートに対して均一に散布でき、湿潤強度等にむらのない水解紙を製造することができる。また、水解紙には十分な量のバインダーが付着しているので、該水解紙の湿潤強度は十分に高いものとなる。また、乾燥機での水分蒸発量を減少させることができ、生産性を向上させることができる。
このようにして得られた水解紙はドライの状態で、或いは水性洗浄剤等を含浸させたウエットの状態で用いられる。例えばトイレや台所など水回りの拭き取り清掃用、おしり拭き用、おしぼりなどとして用いられる。ウエットの状態で用いられる場合には、使用中に崩壊してしまうことを防止するために、含浸させる水性洗浄剤等に、バインダーの架橋剤と水溶性溶剤を含有させておくことが好ましい。架橋剤によってバインダーが架橋して不溶化する結果、水性洗浄剤含浸下では該バインダーが溶解しなくなる。しかし大量の水中に廃棄すれば不溶化していた該バインダーが再び水に溶解するようになって、速やかに且つ繊維レベルでばらばらに崩壊する。
架橋剤は、バインダーの種類に応じて適切なものが用いられる。例えば、バインダーが前述したCMCなどのカルボキシル基を有する水溶性バインダーである場合には、架橋剤として多価金属イオンを用いることが好ましい。特にアルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルからなる群から選択される1種又は2種以上の金属イオンを用いることが、繊維間が十分に結合されて清掃作業に耐え得る強度が発現する点、及び水解性が十分になる点から好ましい。これらの金属イオンのうち、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、コバルト、ニッケルのイオンを用いることが特に好ましい。
金属イオンは、水酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、酢酸塩などの水溶性金属塩の形で水性洗浄剤に添加される。金属イオンは、水溶性バインダにおけるカルボキシル基1モルに対して1/4モル以上、特に1/2モル以上の量となるように添加されることが、十分な架橋反応を起こさせる点から好ましい。
架橋剤とともに水性洗浄剤に配合される水溶性溶剤は、エタノール、イソプロピルアルコール等の1価のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、ヘキシレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールおよびその誘導体等を用いることができる。特に仕上がり性と臭いの面からプロピレングリコールモノメチルエーテルやエタノールを用いるのが好ましい。また、水溶性溶剤の水性洗浄剤中の濃度はCMCを効果的に不溶化し、かつ良好な水解性を発現する観点から5〜50%、特に10%〜30%、さらには15%〜25%が特に好ましい。
本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては第1ドライパート3としてTADを用い且つ第2ドライパート5としてヤンキードライヤーを用いたが、これに代えて第1及び第2ドライパートともヤンキードライヤーを用いてもよい。
また湿式抄紙法により得られた紙10bに代えて、図3に示すように、乾式抄紙法により得られた原料シート10b’を用いて水解紙を製造することもできる。この場合においても、上述した実施形態と同様の条件でバインダー溶液をスプレーノズル45からスプレーすることにより、強度等にむらのない水解紙を生産性良く製造することができる。この場合における原料シート10b’は、公知の積繊機を用いて製造することができ、図3に示す例では、積繊機1’で繊維状に分散させたパルプ繊維を、裏面側から吸引したメッシュコンベアー41’上に堆積させて原料シート10b’を得ている。
また図4に示すように、ロール状の巻回体から繰り出した原料シート10”に対してバインダー溶液をスプレーすることにより、水解紙を製造することもできる。この場合においても、上述した実施形態と同様の条件でバインダー溶液をスプレーノズル45からスプレーすることにより、強度等にむらのない水解紙を生産性良く製造することができる。バインダー散布後のバインダー含有紙10c”を乾燥する乾燥機5”としては、公知の乾燥機であるスルーエアードライヤー(TAD)、トンネル型熱風乾燥機、ヤンキードライヤー等を用いることができる。
以下実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかし本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。特に断らない限り「%」は「重量%」を意味する。
〔実施例1〕
図1に示す製造装置を用いて水解紙を製造した。針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)100%の紙料を用いて湿紙を湿式抄造した。この湿紙をスルーエアードライヤーで水分率が4%となるまで乾燥させた。得られた紙を一対のプラスチック製コンベア間に挟持して搬送し、コンベアの折り返し部において、この紙(原料シート)に対して、該紙の幅方向と平行な方向に10cm間隔で並列配置された複数のスプレーノズル45からバインダー溶液を噴霧した。スプレーノズル45は、共通する一本の本管から分岐した各分岐管の先端に設けられており、スプレーノズル45は、それぞれ、オリフィス直径が0.53mmの、Spraying Systems社製のスプレーチップに、(株)ディスコ社製のDiscoコート(炭素系硬質膜)耐摩耗処理したものであった。バインダー溶液は、CMC(エーテル化度0.9、日本製紙製)を5.1重量%、剥離剤を0.1重量%含有し、残部が水であった。このバインダー溶液は、25℃における粘度が3000mpa・s以上であるが、温度80℃における粘度は500mpa.sである。バインダー溶液の噴霧は、温度80℃に加熱することによって粘度を500mpa.sとして行った。一つのスプレーノズル当たりの噴射量は650cc/分とした。
バインダー溶液スプレー後の紙(バインダー含有紙)を、ヤンキードライヤーの表面に直接剥離剤をスプレー噴霧(スプレーノズル53)しつつ乾燥した後、ドクターナイフによってクレープ加工を行い、目的とする水解紙を得た。剥離剤はオレイン酸を約50%含みポリオキシエチレンアルキルエーテルを3%含む水溶液であった。
〔実施例2〜4及び比較例1,2〕
噴射するバインダー溶液の粘度及び温度を表1に示す通りに代えた以外は実施例1と同様にして水解紙を製造した。
〔比較例3〕
噴射時におけるバインダー溶液の粘度及び温度を表1に示す通りに代え、二流体方式のスプレーノズルを用い、バインダー溶液を微粒化させる流体として圧搾空気を使用して噴射させた以外は、実施例1と同様にして水解紙を製造した。
〔均一塗工性の評価〕
実施例及び比較例のそれぞれについて、スプレーノズルから噴射されるバインダー液の性状を目視にて観察した。またヤンキードライヤーの表面からドクターナイフで剥がしたシートを目視観察し、該シートに巾方向にクレープが均一に生じているか否かを評価した。結果を表1に示した。
また実施例及び比較例で得られた水解紙に後加工としてエンボス加工を施し、エンボスロールの山と山との間に紙粉がたまるか否かを観察した。紙粉が多量に貯まった場合を×とし、紙粉が殆ど貯まらない場合を○として、これを、シートの内部にまでバインダーが浸透しているか否かのシート浸透性の指標とした。結果を表1に示した。
また実施例及び比較例のそれぞれについて、スプレー時の性状、巾方向のバインダースプレーのクレープ性状を指標とした均一性、得られたシートをエンボス加工した際の紙粉付着を指標としたシート浸透性、以上を総合評価し、抄紙から紙加工までの工程を考慮して、生産性の良い実施条件を○、生産性が悪く、あるいは、シートの巾方向、流れ方向において均一な性能の得られない実施条件を×として評価し、それを総合評価として表1に示した。
Figure 0004301996
表1に示す結果から明らかなように、実施例1〜4においては、バインダー溶液を均一にスプレーできており、強度等にむらのない水解紙を生産性良く製造することができることが判る。尚、実施例1〜4においては、噴射孔から霧状に噴射されたバインダー溶液は、巾方向に均一に拡がって原料シートに到達していた。
これに対して比較例1は、バインダー溶液の粘度が高い為、噴霧ポンプの負荷が過大となり噴霧圧力の短時間での変動が大きくなり、流れ方向での噴霧状態が布均一になった。また、粘度の高いバインダーが噴霧ノズル出口に付着成長し、このバインダーの付着堆積物により噴射孔から均一な霧状に噴射されず、部分的に霧とはならない連続水流状のバインダーが噴出された。その結果、バインダー含有紙、延いては水解紙に対するバインダーの塗布状態が巾方向・流れ方向とも不均一となった。
比較例2は、バインダー溶液の粘度に対して噴霧圧力が不足する為、バインダーが噴射孔から霧状に噴射されず、連続した水流を形成するように液状に噴射され、紙に均一にバインダーを塗布するには至らなかった。
比較例3は、スプレー噴霧できたが、同時に噴射される気体により気流が生じること及び粒子が小さすぎることによって、飛散して原料シートに到達しない粒子も少なくなく、生産設備にバインダーミストを広く拡散させて生産性を悪化させた。また、水解紙の物性面でも、バインダーがシートの内部にまで浸透しにくく、後加工におけるエンボスにおいて、水解紙の表面強度が弱い為、エンボスのパターン凹部に紙粉を大量に付着堆積させ、生産性を悪化させた。
次にノズルチップ材質と耐久時間について述べる。
〔試験例1〕
図5に示す装置を用い、スプレーノズルの耐久時間を測定した。CMC濃度を2重量%、温度を25℃、粘度を800mpsに調整されたバインダー液(CMC水溶液)85をタンク80に入れ、これをポンプ81を介してスプレーノズル84に導きスプレーを行う。この際、圧力条件が均一になる様に圧力計82を見ながら圧力逃がしバルブ83を調整する。スプレーノズル84にノズルチップ部を装着して一定圧力条件下における噴霧量を測定し、一定時間連続運転を行い、その後、噴霧量を測定する事で、噴霧流量の変化を測定した。試験例1で用いたスプレーノズルは、オリフィス部と本体部とが一体に形成されたもので、オリフィス部を含むスプレーチップ全体の材質がタングステンカーバイドで、オリフィス部を含むスプレーチップ全体に炭素系硬質膜処理したものを用いた。
〔試験例2,3及び比較試験例1〜3〕
使用したスプレーノズルの材質、耐摩耗処理を表2に示す通りに代えた以外は試験例1と同様にして行った。尚、試験例2及び試験例3のものは、オリフィス部と本体部とが一体的に形成されたもので、オリフィス部を含むスプレーチップ全体に耐摩耗処理が施されている。
〔耐久時間;流量増加率の測定〕
図5の装置を用いてテストを行い、そのテスト時間、使用初期とテスト後の流量増加量(%)を時間で割った時間当たりの流量増加率を算出した。結果を表2に示した。この増加率が高いものほど摩耗が大きいものとして評価した。
比較試験例1及び比較試験例2では、表2に表す様に、時間あたりの流量増加量が0.114〜0.119%/hr増加して行くのに対し、炭素系硬質膜処理を施したスプレーチップを使用した試験例2、試験例3は、流量増加率は一桁小さい0.02〜0.021%/hrになる。
更にスプレーチップの材料素材にタングステンカーバイトを使用し、これに炭素系硬質膜処理を施した試験例1は、流量増加率が更に低い0.002%/hrになる。
比較試験例3は、スプレーチップ素材にTiを使用したスプレーチップであるが、流量増加率は0.153%/hrであった。
これらの試験例及び比較試験例より、スプレーオリフィス部の材料にタングステンカーバイトを使用し、かつ炭素系硬質膜処理を施したスプレーチップは、高粘度のバインダーの噴霧時の摩耗に対して非常に効果がある事が判る。
Figure 0004301996
本発明の水解紙製造方法の実施に好ましく用いられる水解紙の製造装置の一例を示す概略図である。 本発明の水解紙製造方法の実施に好ましく用いられるスプレーノズルの構成を示す概略断面図である。 本発明の水解紙製造方法の実施に好ましく用いられる水解紙の製造装置の他の例を示す概略図である。 本発明の水解紙製造方法の実施に好ましく用いられる水解紙の製造装置の更に他の例を示す概略図である。 本発明のスプレーノズルの耐久時間を測定するのに用いられる装置の概略図である。
符号の説明
1 フォーマー
2 ワイヤーパート
3 第1ドライパート(スルーエアードライヤー)
4 スプレーパート
5 第2ドライパート(ヤンキードライヤー)
10b, 10b’,10b” 原料シート
10 水解紙

Claims (6)

  1. バインダー溶液を、粘度500〜1200mpa.sとし、圧力0.7MPa以上の噴射圧でスプレーノズルから原料シートに向けて噴射し、得られたバインダー含有紙を乾燥させる水解紙の製造方法であって、
    前記スプレーノズルが一流体方式のノズルである水解紙の製造方法。
  2. 前記バインダー溶液は、粘度を低下させるため50〜100℃に加熱することにより粘度500〜1200mpa.sとした状態で噴射する請求項1記載の水解紙の製造方法。
  3. 前記バインダー溶液は、カルボキシル基を有する水溶性バインダーを含有する請求項1又は2記載の水解紙の製造方法。
  4. 前記カルボキシル基を有する水溶性バインダーが、カルボキシメチルセルロースであり、前記バインダー溶液中のカルボキシメチルセルロースの濃度が3〜10重量%である請求項3記載の水解紙の製造方法。
  5. 前記一流体方式のノズルとして、スプレーノズルチップの材質が、タングステンカーバイト合金であるスプレーノズルを使用する請求項1〜4の何れか記載の水解紙の製造方法。
  6. 前記一流体ノズルのノズルとして、スプレーノズルチップのオリフィス部に炭素系硬質膜のコート処理をしたスプレーノズルを使用する請求項1〜5の何れか記載の水解紙の製造方法。
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