JP6162738B2 - 水解性シートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水解性シートの製造方法に関する。
従来、トイレの清掃には、繰り返し使用される織布製の雑巾等が使われてきたが、これに替わって、近年、紙製の使い捨てのウェットシートが使用されるようになってきている。そして、この種のウェットシートは、洗浄剤が含浸された状態で提供され、また使用後にトイレに流して処理可能とされるものが好まれる。
係るウェットシートにおいては、拭き取り作業時の洗浄剤が含浸された湿潤状態において破れない紙力と、トイレ等に流した際に配管等に詰まらない程度の水解性を確保することが求められるところであるが、これらを効果的に達成する一つの技術として、その基材紙としてカルボキシメチルセルロース(以下、CMCと記述する)を含む水溶性バインダー等を添加した水解性シートを用いることが知られている。
そして、この水溶性バインダーの添加方法としては、抄紙工程の例えば第1ドライパートと第2ドライパートとの間において、1流体方式のスプレーノズルからバインダー溶液を原紙シートの表面(片面)に対して噴霧する方法や、オフラインにおいて、水溶性バインダーを含んでいない乾燥した1枚の原紙シートの表面(片面)に対して水溶性バインダー溶液を1流体方式のスプレーノズルから噴霧する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1には、抄紙工程やオフラインで原紙シートに対して水溶性バインダー溶液と共に圧縮空気を噴霧する2流体方式のスプレーノズルについても開示されている。
特許第4301996号
しかしながら、特許文献1に記載された1流体方式の製造方法では、アニオン性の水溶性バインダーが原紙シートの内部にまで浸透することにより、原紙シートの表面では塗布ムラが生じ易く、水溶性バインダーを均一に原紙シートの表面に塗布することができないといった問題点があった。
また、1流体方式のスプレーノズルでは水溶性バインダーの噴霧により原紙シートの表面に塗布される水溶性バインダーのパターン(形状)の端部にムラが発生する。例えば、1流体方式のスプレーノズルで水溶性バインダーを噴射した場合、図2(a)に示すような水溶性バインダーのパターンPT21が塗布されるものの、端部にムラUE21が発生する。
このため、水溶性バインダーを均一に原紙シートの表面に塗布するためには、図2(b)に示すように、水溶性バインダーのパターンPT21のムラUE21の部分を重ね合わせて噴霧して、ムラUE21の部分を上塗りする必要があり、このため、水溶性バインダーの噴霧量が増加してしまうといった問題点があった。
一方、2流体方式のスプレーノズルから水溶性バインダーを噴霧した場合には、ミストが大量に発生してしまい、このような粒子の細かいミストは原料シートに定着しにくいため、生産性を悪化させてしまうといった問題点があった。
また、先行文献特許4301996号の比較例3では、1MPaの噴射圧で噴射した場合、スプレー噴霧できたが、飛散して原料シートに到達しない粒子も少なくなく、生産設備にバインダーミストを広く拡散させて生産性を悪化させたとの記載がある。
本発明の課題は、2流体方式を用いて、水溶性バインダーを均一に且つ生産性良く原紙シートの表面に塗布することができる水解性シートの製造方法を提供することにある。
前記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、
水解性シートの製造方法であって、
2流体方式のスプレーノズルからバインダー溶液を原紙シートに付与する溶液付与工程を有し、
前記溶液付与工程は、前記バインダー溶液の噴射圧が3.0MPa以上、噴射幅が100mm以上130mm未満、噴射距離が50mm以上75mm未満、圧縮空気圧が0.10MPa以上0.30MPa未満の条件で、前記原紙シートの外面に前記バインダー溶液を噴射することを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の水解性シートの製造方法において、前記溶液付与工程は、原紙シートの外面に対応して、前記2流体方式のスプレーノズルを前記シートの搬送方向に直角な方向に複数設けて、前記バインダー溶液を噴射することを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の水解性シートの製造方法において、前記溶液付与工程は、原紙シートの両方の外面に前記2流体方式のスプレーノズルをそれぞれ設けて、前記バインダー溶液を噴射することを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の水解性シートの製造方法において、前記溶液付与工程は、複数の原紙シートをプライ加工するプライ加工工程の前工程或いは後工程であることを特徴とする。
本発明によれば、溶液付与工程において、バインダー溶液の噴射圧が3.0MPa以上、噴射幅が100mm以上130mm未満、噴射距離が50mm以上75mm未満、圧縮空気圧が0.10MPa以上0.30MPa未満の条件で、原紙シートの外面にバインダー溶液が噴射されるので、水溶性バインダーの塗布面のパターンの崩れやミストの発生を防止できることとなって、水溶性バインダーを均一に且つ生産性良く原紙シートの表面に塗布することができる。
本実施形態に係る水解性シートの製造設備の模式図である。 1流体方式のスプレーノズルで水溶性バインダーを噴射して塗布されるパターンの一例を示す説明図である。
以下、本発明に係る水解性シートの製造方法の実施形態を、図1に示す水解性シートの製造設備の模式図を参照しながら詳述する。
本発明のCMCを含む水溶性バインダーが付与された水解性シートの製造方法では、抄造された原紙を巻き取った2本の原反ロール1,1からそれぞれ繰り出される連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工しプライ連続シート1Bとするプライ加工工程と、プライ連続シート1Bに対してバインダー溶液を付与し連続シート1Cとする溶液付与工程と、連続シート1Cを乾燥させる乾燥工程と、乾燥させた連続水解性シート1Dをスリットし巻き取る巻き取り工程とを有する。
〔連続乾燥原紙〕
連続乾燥原紙1Aは、例えば、既知のパルプ繊維等を主原料とする抄紙原料を抄造してなる薄葉紙、クレープ紙が好適に用いられる。連続乾燥原紙1Aの抄造工程は本発明では限定されるものではない。既知の抄造設備、抄造方法により製造できる。好適には、湿紙の搬送にフェルトを用い、一つのヤンキードライヤーを有する設備である。
なお、連続乾燥原紙1Aの原料は特に限定されないが、既知のバージンパルプ、古紙パルプなどを利用できる。少なくともパルプを含むものであるのが望ましい。これにより、CMCの定着、洗浄剤とCMCとの作用が効果的に発揮されることとなる。原料となるパルプは、特にLBKPとNBKPを適宜の割合で配合したものが適する。なお、連続乾燥原紙1Aとしては、パルプ繊維以外の繊維として、レーヨン繊維や合成繊維などが含有されていてもよい。
連続乾燥原紙1Aの物性としては、好適には、目付けが15〜75gsm程度である。また、プライ加工された水溶性バインダーを含む原紙シート(連続水解性シート1D)の目付けは、30〜150gsm程度である。なお、目付けは、JIS P 8124に基づくものである。
連続乾燥原紙1Aは、プライ加工・バインダー溶液付与・乾燥・スリット・巻き取り工程を経て、プライ加工された水解紙となり、別のワイプ等加工工程でエンボス・裁断・折り・薬液含浸等の工程を経て、トイレ・掃除用・からだ拭きなどの水に溶けるワイプ等に加工される。これらの工程で、必要な強度・嵩高さ・表面の凹凸等が付与されるが、連続乾燥原紙1Aの目付けが15〜75gsmであれば、プライ加工された状態では30〜150gsmであり、ワイプ等の加工工程での折り・裁断・エンボス・薬液含浸など加工適正が良く、また、調整しやすく、加工条件を調整することで、ワイプとして必要な強度・嵩高さ・表面の凹凸など、用途に応じた品質を得ることができる。
〔プライ加工工程〕
次いで、本発明に係るプライ加工工程について説明する。本発明のプライ加工工程では、図1に示すように、原反ロール1から連続的に繰り出される各連続乾燥原紙1A,1Aを、その連続方向に沿ってプライ加工しプライ連続シート1Bとする重ね合わせ部2に供給される。重ね合わせ部2は、一対のロールで構成され、各連続原紙1A,1Aをプライ加工し、プライ加工されたプライ連続シート1Bを形成する。なお、連続乾燥原紙1A,1A同士を重ね合わせる際に、連続乾燥原紙1A,1A同士がずれにくくなるように、ピンエンボス(コンタクトエンボス)で軽く留めておいてもよい。
〔バインダー溶液〕
次いで、本発明が対象とするバインダー溶液について説明する。本発明に係るバインダー溶液は、カルボキシルメチルセルロース(CMC)を含むものである。この本発明に係るバインダー溶液中におけるカルボキシルメチルセルロースの濃度としては、1〜30重量%、好ましくは、2〜15重量%とする。
他方、CMCについては、そのエーテル化度が0.6〜2.0、特に0.9〜1.8、さらに好ましくは1.0〜1.5であるのが望ましい。水解性と湿潤紙力の発現が極めて良好となる。
また、CMCは、水膨潤性のものを用いることができる。これは、洗浄剤中の特定金属イオンの架橋により、未膨潤化のままシートを構成する繊維をつなぎとめる機能を発揮し、清掃・清拭作業に耐えうる拭き取りシートとしての強度を発現することができる。
バインダー溶液中のカルボキシルメチルセルロース以外の成分としては、ポリビニルアルコール、デンプン又はその誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルプラン、ポリエチレンオキシド、ビスコース、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸のヒドロキシル化誘導体、ポリビニルピロリドン/ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体等のバインダー成分が挙げられる。
水解性が良好となる点や架橋反応により湿潤強度を発現しうる点からカルボキシル基を有する水溶性バインダーを用いることが好ましい。
カルボキシル基を有する水溶性バインダーは、水中で容易にカルボキシラートを生成するアニオン性の水溶性バインダーである。その例としては多糖誘導体、合成高分子、天然物が挙げられる。多糖誘導体としてはカルボキシメチルセルロースの塩、カルボキシエチルセルロース又はその塩、カルボキシメチル化デンブン又はその塩などが挙げられ、特にカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩が好ましい。
合成高分子としては、不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体の塩、不飽和カルボン酸と該不飽和カルボン酸と共重合可能な単量体との共重合体の塩などが挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸などが挙げられる。これらと共重合可能な単量体としては、これら不飽和カルボン酸のエステル、酢酸ビニル、エチレン、アクリルアミド、ビニルエーテルなどが挙げられる。特に好ましい合成高分子は、不飽和カルボン酸としてアクリル酸やメタクリル酸を用いたものであり、具体的にはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸メタクリル酸共重合体の塩、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキルとの共重合体の塩が挙げられる。天然物としては、アルギン酸ナトリウム、ザンサンガム、ジェランガム、タラガントガム、ペクチンなどが挙げられる。
〔溶液付与工程〕
次いで、本発明に係る溶液付与工程について説明する。本発明の溶液付与工程では、図1に示すように、プライ連続シート1Bの両方の外面(連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工した時に連続乾燥原紙1A,1A同士が対向しない面)に2流体方式のノズルの各スプレーノズル3,3により上述のバインダー溶液を噴射する。
プライ加工工程においてプライ加工された直後のプライ連続シート1Bは、連続乾燥原紙1A,1Aが単に重なっているに過ぎないため、溶液付与工程においてプライ連続シート1Bの両面から、バインダー溶液をスプレーノズル3,3で塗布すると、連続乾燥原紙1A,1Aが離れた状態でバインダー溶液を付与する場合と実質的に同様であり、バインダー溶液が厚さ方向に浸透し、搬送中にシート同士が密着し、スリット・巻き取り工程で圧着する中で、さらに浸透するのである。
2流体方式のスプレーノズルは、2系統に分けられた圧縮空気と液体を混合し、噴射させる方式のスプレーノズルであり、圧縮した液体を単独で噴射させる1流体方式のスプレーノズルに比べて、液体をきめ細かく均一に噴射して塗布することができる。
Figure 0006162738
例えば、表1に示すように、スプレーノズルからの吐出量が少なくなると、水溶性バインダーの平均粒子径は小さくなる傾向にあり、いずれの吐出量であっても、2流体方式の方が1流体方式よりも水溶性バインダーの平均粒子径は小さくなる。
液圧条件としては3.0MPa以上の場合が好ましい。3.0MPa未満の液圧条件の場合、平均粒子径が大きく、噴射した後に粒子同士の結合が発生し、見掛け上の基材表面に塗布される粒子径が大きくなる。ノズル径については0.06gal/min未満の径を使用するのが好ましい。
本実施形態で2流体方式のスプレーノズルを使用する場合、プライ加工されたプライ連続シート1Bの各々の外面に高い圧力(噴射圧3.0MPa以上)でバインダー溶液(粘度400〜1300MPa.s)を塗布するので、シートの厚さ方向にバインダー溶液を含浸させやすい。
また、液圧条件は3.0MPa以上の場合、80〜90μmの平均粒子径を満たすことが可能だが、液圧条件が3.0MPa未満の場合は同一ノズルを使用した場合80〜90μmの平均粒子径を満たすことができない。バインダー溶液の粘度は温度依存性、濃度依存性があり、使用する濃度3〜4%の範囲で20〜60°Cの温度範囲では400〜1300mPa.sの粘度となる。また、使用するバインダー溶液は、濃度3〜4%、温度20〜60°Cが好ましい。
〔乾燥工程〕
次いで、本発明に係る乾燥工程について説明する。本発明に係る乾燥工程では、図1に示すように、乾燥設備4において、上述の連続シート1Cのバインダー溶液中の不溶な液分を蒸発させて、有効成分、特にCMCを繊維に対して定着させる。乾燥設備4としては、連続シート1Cに対して熱風を吹き付けて乾燥させるフード付きドライヤー設備が利用できる。乾燥工程を通過する連続シート1Cは、搬送中にシート同士が密着し、対向するシート面に浸透した水溶性バインダーにより、対向面同士が接着されていく。なお、シート同士をより密着させるために、プレスロールやターンロールを設置し、乾燥工程前に当該プレスロールや当該ターンロールに連続シート1Cを通しても良い。
なお、上記乾燥設備として赤外線照射による設備を用いても良い。この場合、上記連続シート1Cの搬送方向に複数の赤外線照射部を並列し、搬送される当該連続シート1Cに対して赤外線を照射して乾燥を行なう。赤外線により水分が発熱し乾燥されるものであるため、熱風によるドライヤーと比較して、均一な乾燥が可能であり、後段のスリット・巻き取り工程においての皺の発生が防止できる。
〔スリット・巻き取り工程〕
次いで、本発明に係るスリット・巻き取り工程について説明する。本発明に係るスリット・巻き取り工程では、プライ加工された連続水解性シート1Dをオフラインの加工機で加工する際の原反とするために、上述の乾燥工程で乾燥されCMCの定着が図られた連続水解性シート1Dをテンションを調整しながら、スリッター5で所定の幅にスリットし、ワインダー設備6において、巻き取ることとなる。巻き取り速度は、プライ加工工程、溶液付与工程、乾燥工程を考慮して適宜定める。過度に早いとシートの破断が生じ、過度に遅いと皺が発生するのでこれに留意する。
スリット・巻き取り工程で、プライ加工された連続水解性シート1Dが圧着されることにより、連続水解性シート1Dがより一体化され、1枚相当のシートとなる。
以上の各工程を経ることにより、本発明の水解性シートが製造される。
次に、本実施形態の水解性シートの製造方法により製造された上述の連続水解性シートを用いて、圧縮空気の空気圧に対する水溶性バインダーの塗布面のパターンの崩れ及び水溶性バインダーの平均粒子径について評価・測定した結果を表2を用いて説明する。表2は、連続水解性シートを製造する際に、2流体方式のスプレーノズルを使用してバインダー溶液を付与した時の評価結果を示す表である。
<実施条件>
水溶性バインダーを含んでいない水解紙(連続乾燥原紙1A,1A)を上述のプライ加工工程にて2プライ加工し、次いで、上述の溶液付与工程にて、2プライ加工された連続シート1Bの両方の外面に2流体方式のノズルの各スプレーノズル3,3により水溶性バインダー溶液を噴射して塗布し、次いで、上述の乾燥工程にて、水溶性バインダー溶液が塗布された連続シート1Cを乾燥させ、次いで、スリット・巻き取り工程にて、所定の幅にスリットし、巻き取った後の連続水解性シート1Dにて、水溶性バインダーの平均粒子径を測定し、水溶性バインダーの塗布面のパターンの崩れについて評価を行った。
条件
水溶性バインダー噴射量:含有されるCMC噴射量がドライの原紙重量に対し、1重量%相当
水溶性バインダー溶液中のCMC(エーテル化度1.0)の濃度:3〜4%
水溶性バインダー溶液の成分:CMC、水
水溶性バインダー溶液の粘度:400〜1300mPa・s
水溶性バインダー溶液の噴射圧:3.0MPa以上
ノズルの噴射幅:100mm以上130mm未満
噴射距離:50mm
塗布濃度:3〜4%
Figure 0006162738
表2における、水溶性バインダーの塗布面のパターンの崩れの評価方法としては、水溶性バインダーの噴射によりシート表面に形成される水溶性バインダーのパターン(水溶性バインダーの塗布面のパターン)の崩れ具合により評価した(形状が良好で、塗布量の偏りがない場合「◎」、形状は少し悪いが、塗布量に偏りがない場合「○」、形状及び塗布に偏りがある場合「△」、形状及び塗布に大きく偏りがある場合「×」)。
表2から分かるように、空気圧が0.00(1流体方式と同等)〜0.10MPa未満の場合には、2流体方式の効果が表れずに、水溶性バインダーの塗布面のパターンが崩れてしまう。また、空気圧が0.10〜0.30MPa未満の場合には、2流体方式の効果が表れて水溶性バインダーの塗布面のパターンの崩れが生じない。一方、空気圧が0.30MPa以上の場合には、2流体方式の効果が強く表れてしまい、水溶性バインダーの塗布面のパターンの崩れが生じてしまう。
なお、スプレーノズルの噴射幅が100mm未満であると、噴射された圧縮空気を水溶性バインダー溶液に効率的にあてることができず、水溶性バインダーの塗布面のパターンの崩れの原因になってしまうので、スプレーノズルの噴射幅が100mm以上130mm未満であることが好ましい。また、130mm以上の場合、噴射した水溶性バインダーが飛散しシートに効率的に定着させることができない。
また、2流体方式を用いることにより、水溶性バインダーの平均粒子径が小さくなるので、水溶性バインダーが原紙シートの表面上に留まって表面強度を得ることができる。
また、2流体方式を用いることにより、スプレーノズルをシートに近づけることができる。具体的には、1流体方式では、水溶性バインダーの平均粒子径が大きいため、シートにスプレーノズルを近づけると、圧力影響が生じてしまうので、噴射距離は75mm未満に近づけることができない。
これに対して、2流体方式では、水溶性バインダーの平均粒子径が小さいため、噴射距離を50mm程度にまで短くすることができて、ミストの発生をシートの表面近傍に抑えることができるので、例えば、ミストの定着率が1.1〜1.2倍になる。
すなわち、噴射距離を50mm〜75mmとすることにより、ミストの定着率を向上させることができる。噴射距離を近づけすぎるとはね返りが強く、噴射した水溶性バインダーの定着率が低下する。逆に噴射距離を遠ざけると粒子が細かいため、原紙シートに定着しない。
また、空気圧が0.10〜0.30MPa未満の場合には、2流体方式の効果が表れて水溶性バインダーの塗布面のパターンの崩れが生じないので、水溶性バインダーのパターンを重ね合わせて噴射する必要がなくなり、水溶性バインダーの塗布量を低減できて、コストを低減することができる。例えば、1流体方式では1.0gsm必要であった水溶性バインダーの塗布量を、0.8gsm(20%低減)に削減することができる。
以上のように、本実施形態の水解性シートの製造方法によれば、溶液付与工程において、バインダー溶液の噴射圧が3.0MPa以上、噴射幅が100mm以上130mm未満、噴射距離が50mm以上75mm未満、圧縮空気圧が0.10MPa以上0.30MPa未満の条件で、原紙シートの外面にバインダー溶液が噴射されるので、水溶性バインダーの塗布面のパターンの崩れやミストの発生を防止できることとなって、水溶性バインダーを均一に原料シートの表面に塗布することができる。バインダー溶液の噴射圧・圧縮空気圧の値は実測の値ではなく、圧縮ゲージの値から読み取った値を使用した。使用した圧縮ゲージは東洋計器興業(株)圧縮ゲージを使用した。
また、水溶性バインダーのパターンの塗布面の崩れが生じないので、水溶性バインダーのパターンを重ね合わせて噴射する必要がなくなり、水溶性バインダーの塗布量を低減できて、コストを低減することができる。
また、2流体方式を用いることにより、水溶性バインダーの平均粒子径が小さくなるので、水溶性バインダーがシートの表面上に留まって表面強度を得ることができる。
また、2流体方式を用いることにより、溶性バインダーの平均粒子径が小さくなるので、1流体方式と比較して、噴射距離を短くすることができて、ミストの発生をシートの表面近傍に抑えることができるので、ミストの定着率を向上させることができ、生産性を向上させることができる。
なお、本実施形態の水解性シートの製造方法によれば、プライ連続シート1Bの両方の外面に2流体方式のノズルの各スプレーノズル3,3(2つのスプレーノズル)により水溶性バインダー溶液を噴射していたが、2流体方式のスプレーノズルをシートの搬送方向に直角な方向に複数個設けて、水溶性バインダーを噴射させてもよい。
例えば、プライ連続シート1Bの両方の外面に、それぞれ2個の2流体方式のスプレーノズル(両方の外面で合計4個のスプレーノズル)を設けてもよい。
また、本実施形態の水解性シートの製造方法によれば、プライ連続シート1Bの両方の外面に、水溶性バインダー溶液を噴射させているが、原紙シートの一方の外面に水溶性バインダー溶液を噴射するものであってもよい。
また、本実施形態の水解性シートの製造方法によれば、複数の原紙シートをプライ加工するプライ加工工程の後工程で、溶液付与工程を行っているが、プライ加工工程の前工程で、溶液付与工程を行ってもよい。すなわち、プライ加工する前の原紙シートにそれぞれの2流体方式のスプレーノズルにより水溶性バインダーを噴射させて塗布し、その後、水溶性バインダーが塗布された数の原紙シートにプライ加工をするものであってもよい。
1 原反ロール
1A 連続乾燥原紙
1B プライ連続シート
1C 連続シート
1D 連続水解性シート
2 重ね合わせ部
3 スプレーノズル
4 乾燥設備
5 スリッター
6 ワインダー設備

Claims (4)

  1. 前記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、
    水解性シートの製造方法であって、
    2流体方式のスプレーノズルからバインダー溶液を原紙シートに付与する溶液付与工程を有し、
    前記溶液付与工程は、前記バインダー溶液の噴射圧が3.0MPa以上、噴射幅が100mm以上130mm未満、噴射距離が50mm以上75mm未満、圧縮空気圧が0.10MPa以上0.30MPa未満の条件で、前記原紙シートの外面に前記バインダー溶液を噴射することを特徴とする水解性シートの製造方法。
  2. 前記溶液付与工程は、原紙シートの外面に、前記2流体方式のスプレーノズルを前記シートの搬送方向に直角な方向に複数設けて、前記バインダー溶液を噴射することを特徴とする請求項1に記載の水解性シートの製造方法。
  3. 前記溶液付与工程は、原紙シートの両方の外面に前記2流体方式のスプレーノズルをそれぞれ設けて、前記バインダー溶液を噴射することを特徴とする請求項1又は2に記載の水解性シートの製造方法。
  4. 前記溶液付与工程は、複数の原紙シートをプライ加工するプライ加工工程の前工程或いは後工程であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の水解性シートの製造方法。
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