JP5455414B2 - 水解性シートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、トイレなどの清掃用途に用いられる予め洗浄剤が含浸された拭き取りシートの基剤紙となる水解性シートの製造方法に関するものである。
トイレの清掃には、旧来、繰り返し使用される織布製の雑巾等が使われてきたが、これに替わって、近年、紙製の使い捨ての拭き取りシートが使用されるようになってきている。そして、この種の拭き取りシートは、洗浄剤が含浸された状態で提供され、また使用後にトイレに流して処理可能とされるものが好まれる。
かかる拭き取りシートにおいては、洗浄剤が含浸された状態において拭き取り作業時に破れない湿潤時の紙力と、トイレ等に流した際に配管等に詰まらない程度の水解性を確保することが求められるところであるが、これを効果的に達成する一つの技術として、その基材紙としてカルボキシメチルセルロース(以下、CMCと記述する)を含む薬液と金属イオンとを担持させた水解性シートを用いることが知られている。
しかし、このCMC等を担持させた水解性シートの製造は、従来、湿紙をワイヤーにて搬送する抄紙設備で行なわれている。CMC等をワイヤー搬送される湿紙に対して散布し、その後に当該湿紙を乾燥させるのである。特に、2つの乾燥工程を有する抄紙設備が好適に採用され、中でも1つ目の乾燥工程にTAD方式を用いたものが特に好適であるとされている。
これは、2つの乾燥工程を持つ抄紙設備は1つ目の乾燥により湿紙の水分含有量が、極めて少なくなるため、2つ目の乾燥工程の前に薬液を外添した場合、薬液の歩留が比較的高くでき、また、ワイヤー等の用具に付着した薬液の清掃も比較的簡易に可能だからである。
これに対して、湿紙の搬送をワイヤーではなく、フェルトにて行なう抄紙設備においては、湿紙の搬送過程における脱水効率が低く、さらにフェルトが湿紙中に含まれるCMC等を吸収するためCMC等の歩留が悪くなるため、また、搬送にフェルトを採用したものでは、フェルト自体の汚染を招き、地合形成の不良による操業性の悪化を招くおそれがあるため、用具の洗浄が頻繁に必要とされるので、フェルトにて湿紙を搬送する抄紙設備においては、CMC等を担持させた所望の水解性シートを製造するのが極めて困難であった。
しかし、湿紙を搬送するのにフェルトを用いた抄紙設備は、得られる紙は比較的低米坪でも良好な地合が得られるなどの利点があるとともに、極めて一般的な設備で、現在、稼動台数も多い設備である。そして、2つ以上のドライヤーを備えた抄紙設備は、CMC等を担持させたシートにおいて上記利点はあるものの、一般的な点で設備コスト、エネルギーコストが大きくなり、メンテンナンスに時間がかかる等の欠点もある。
特開2008−194635号公報 特許第4097583号
そこで、本発明の主たる課題は、抄紙設備に関わらず、CMCを含む薬液を担持させた水解性シートを製造可能とする技術及びこの水解性シートを用いた拭き取り用シートの製造技術を提供することにある。
次に、上記課題を解決するための手段とそれらの作用効果は以下にとおりである。
<請求項1記載の発明>
カルボキシメチルセルロースを含む薬液を含む水解性シートの製造方法であって、
薬液を付与する薬液付与工程と、薬液が付与された原紙を乾燥させる乾燥工程と、乾燥された原紙を巻取る巻き取り工程とを有し、
前記薬液付与工程は、抄造された原紙を巻取った原反ロールから繰り出される坪量を25〜60g/m2のクレープ紙である連続乾燥原紙を、一つのバックアップロールに巻き掛けてそのバックアップロール上を搬送する過程で、そのバックアップロールと対になる二つの刷版ロールから連続的に二段階で薬液を付与し、かつ、その薬液付与工程における、薬液の温度を20〜40℃、粘度を500〜2500mPa・s以下とし、各刷版ロールを網点のないベタ版仕様とするとともに、各刷版ロールに薬液を付与するアニロックスロールを線数70〜120線/インチ、セル容量30〜65ml/m2の仕様とし、さらに各アニロックスロールに対しては、ドクターチャンバー又はパンから付与されたディップロールにより薬液を付与する、
ことを特徴とする水解性シートの製造方法。
<請求項2記載の発明>
前記乾燥工程は、薬液が付与された連続紙に対して、赤外線を照射して乾燥する工程である、請求項1記載の水解性シートの製造方法。
(作用効果)
カルボキシルメチルセルロースを含む薬液を、水解性シートとして使用するに十分な量を乾燥原紙に対して付与することは極めて困難なことである。特に、背景技術で示した、二段階の乾燥工程を持ち、前段の乾燥工程の後、つまり後段の乾燥工程の前に湿紙に対して薬液を付与する方法により製造される水解性シートと同等以上の品質のものを乾燥原紙から製造することは極めて難しいことであった。
これは、乾燥原紙に対して付与する場合、例えば、単なるスプレー転写では、均一に転写することが困難であり、また、単なるロール転写では、所望量の薬液を担持させることが困難であるからである。
特に、単なるロール転写では、所望量の薬液を付与するためには、極めて高濃度の薬液が必要となり、かかる薬液は粘度が高くなるためにロール転写で均一転写することができない。また、粘度を低くするために濃度を低くすれば、上述のとおり所望の付与量とすることができない。
このように乾燥原紙に対して薬液を付与することが極めて困難なことであった。
そこで、本発明では、一つのバックアップロールに対して対になる二つの刷版ロールと、各刷版ロールと対になるアニロックスロールと、各アニロックスロールに対して薬液を付与するドクターチャンバーを備える転写設備(以下、ドクターチャンバー方式)、もしくは/および、一つのバックアップロールに対して対になる二つの刷版ロールと、各刷版ロールと対になるアニロックスロールと、各アニロックスロールに対して薬液を付与するディップロールと、ディップロールに薬液を付与するパンを備える転写設備(以下、3ロール方式)を用い、これにより、薬液を付与することとした。
本発明では、一つのバックアップロールに対して対となる刷版ロールを設けたことにより、各刷版ロールにおける付与量が少なくとも、合計量において十分な量の薬液を乾燥原紙に対して付与できる。また、バックアップロールが一つであることにより、極めて均一に付与できる。これは、バックアップロールが一つであることで、最初の刷版ロールから次の刷版ロールまでの間の張力が極めて安定して一定であることから、二つの刷版ロールで二段階付与しても、連続原紙に対して極めて均一に薬液を付与することができるのである。また、二つの刷版ロールの間隔が短くなることから、最初の刷版ロールで薬液が付与された後、直ちに次の刷版ロールでの付与がなされることからも、付与ムラなく均一転写ができるのである。このような効果は、単に、バックアップロールと刷版ロールを一対二段にしただけでは得ることはできない。
また、本発明では、より好ましくはドクターチャンバー方式で薬液を付与する方が、3ロール方式より幅方向でより均一に安定して薬液を転写できるため好ましい。
さらに、本発明においては、薬液が付与された連続紙を乾燥させる乾燥工程を有する。この乾燥工程は、連続紙に直接的に接触しない間接乾燥が望ましく、特に赤外線照射によるものが望ましい。間接乾燥の場合には皺の発生が抑制される。特に、赤外線照射によるものとすると、紙面各所の乾燥が均一に生ずるので、乾燥時における皺や歪みなどの発生が効果的に防止できる。
他方、本発明では、好ましく、転写ロール設備における各刷版ロールをベタ仕様とし、アニロックスロールの線数を70〜120線/インチ、セル容量30〜65ml/m2のものとする。これにより、薬液をより効果的に乾燥原紙に付与することができる。
また、本発明においては、乾燥原紙を坪量25〜60g/m2のものとすると極めて高品質、特に強度面、水解性面において優れた水解性シートが製造される。
さらに、上記説明の水解性シートに対して多価の金属陽イオンを含む洗浄剤を、原紙重量の100〜200重量%含浸させると、CMCと金属陽イオンとの作用によって、拭き取り性能に優れ、しかも、水解性に優れる拭き取りシートが製造される。
以上のことから明らかなとおり、本発明によれば、乾燥連続原紙に対して薬液を付与するので湿紙を製造する工程にかかる抄紙設備に依存せず、どのような抄紙設備であっても、カルボキシルメチルセルロースを含む薬液を担持させた水解性シートを製造することができる。また、水解性、拭き取り性に優れた拭き取りシートを製造することができる。
本発明に係る水解性シートの製造方法を模式的に示した図である。
次いで、本発明に係る水解性シートの製造方法の実施形態を、図1に示される水解性シートの製造設備例X1を参照ながら詳述する。
本発明のカルボキシメチルセルロースを含む薬液が担持された水解性シートの製造方法では、抄造された原紙を巻取った原反ロール1から繰り出される連続乾燥原紙1Aに対して前記薬液を付与する薬液付与工程と、薬液が付与された原紙を乾燥させる乾燥工程と、乾燥された原紙を巻取る巻き取り工程とを有する。
〔連続乾燥原紙〕
まず、連続乾燥原紙1Aについて説明する。本発明においては、乾燥連続原紙1Aは、例えば、既知のパルプ繊維等を主原料とする抄紙原料を抄造してなる薄葉紙、クレープ紙が好適に用いられる。
この乾燥連続原紙1Aの抄造工程は本発明では限定されるものではない。既知の抄造設備、抄造方法により製造できる。好適には、湿紙の搬送にフェルトを用い、一つのヤンキードライヤーを有する設備である。地合の良い連続乾燥原紙が得られる。
なお、連続乾燥原紙の原料は特に限定されないが、既知のバージンパルプ、古紙パルプなどを利用できる。少なくともパルプを含むものであるのが望ましい。CMCの定着、後述する洗浄剤とCMCとの作用が効果的に発揮される。原料となるパルプは、特にLBKPとNBKPを適宜の割合で配合したものが適する。
なお、連続乾燥原紙としては、パルプ繊維以外の繊維として、レーヨン繊維や合成繊維などが含有されていてもよい。
原反ロール1の幅は、100〜500cmであるのが望ましい。100cm未満であると製造効率が悪く、500cmを超えると後述するロール転写にて均一に薬液を付与することが困難となる。
この連続乾燥原紙1Aの物性としては、好適には、坪量が25〜60g/m2、紙厚さが160〜250μm程度である。所謂プライ数などは特に限定されない。
なお、坪量は、JIS P 8124に基づくものである。また、各シートをプライ構造とする場合には、プライ全体としての坪量である。
また、紙厚は、JIS P 8111の条件下で、ダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定するものとする。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。なお、紙厚は測定を10回行って得られる平均値とする。また、各シートをプライ構造とする場合には、プライ全体としての紙厚とする。
〔薬液〕
次いで、本発明が対象とする薬液について説明する。本発明にかかる薬液は、カルボキシルメチルセルロースを含むものである。
この本発明にかかる薬液中におけるカルボキシルメチルセルロースの濃度としては、1.5〜21重量%、好ましくは、2.0〜15重量%とする。1.5〜21重量%の範囲外では、本技術によって所望量を乾燥連続原紙に対して付与することが困難となる。
他方、CMCについては、そのエーテル化度が0.6〜2.0、特に0.9〜1.8、更に好ましくは1.0〜1.5であるのが望ましい。水解性と湿潤紙力の発現とが極めて良好となる。
ここで、本発明に用いる薬液については、CMCを含む薬液は、当該CMCに起因して低温等であると溶液粘度が高くなり薬液付与が困難になる傾向にあるため、乾燥連続原紙に付与するにあたって、撹拌、加熱により粘度を500〜2500mPa・s以下、より好ましくは500〜1500mPa・sに調整したものとするのが望ましい。このため薬剤の転写時には、本発明の薬剤の温度は20〜40℃前後で塗布することが望ましい。40℃超ではCMC溶液の粘度コントロールが難しく、またCMCの劣化が速くなって連続操業に適さない。20℃未満ではCMC濃度が低く所定のCMC塗布量が得られない。
また、CMCは、水膨潤性のものを用いることができる。これは、洗浄剤中の特定金属イオンの架橋により、未膨潤化のままシートを構成する繊維をつなぎとめる機能を発揮し、清掃・清拭作業に耐えうる拭き取りシートとしての強度を発現することができる。
薬液中のカルボキシルメチルセルロース以外の成分としては、ポリビニルアルコール、デンプンまたはその誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルプラン、ポリエチレンオキシド、ビスコース、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸のヒドロキシル化誘導体、ポリビニルピロリドン/ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体等のバインダー成分が挙げられる。
水解性が良好となる点や後述する架橋反応により湿潤強度を発現しうる点からカルボキシル基を有する水溶性バインダーを用いることが好ましい。
カルボキシル基を有する水溶性バインダーは、水中で容易にカルボキシラートを生成するアニオン性の水溶性バインダーである。その例としては多糖誘導体、合成高分子、天然物が挙げられる。多糖誘導体としてはカルボキシメチルセルロースの塩、カルボキシエチルセルロース又はその塩、カルボキシメチル化デンブン又はその塩などが挙げられ、特にカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩が好ましい。
合成高分子としては、不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体の塩、不飽和カルボン酸と該不飽和カルボン酸と共重合可能な単量体との共重合体の塩などが挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸などが挙げられる。これらと共重合可能な単量体としては、これら不飽和カルボン酸のエステル、酢酸ビニル、エチレン、アクリルアミド、ビニルエーテルなどが挙げられる。特に好ましい合成高分子は、不飽和カルボン酸としてアクリル酸やメタクリル酸を用いたものであり、具体的にはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸メタクリル酸共重合体の塩、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキルとの共重合体の塩が挙げられる。天然物としては、アルギン酸ナトリウム、ザンサンガム、ジェランガム、タラガントガム、ペクチンなどが挙げられる。
また、本発明にかかる薬液には、CMCのパルプ繊維への歩留まりを向上させるために、カチオン性ポリマーを添加することができる。但し、カチオン性ポリマーの中には湿紙強度を向上させるものがあり、同時に水溶性も悪化する点には注意する。
〔薬液付与工程〕
(薬液付与)
次いで、本発明にかかる薬液付与工程ついて説明する。本発明の薬液付与工程は、原反ロール1から連続的に繰り出される連続乾燥原紙1Aに対して、ドクターチャンバー方式、もしくは/および、3ロール方式の転写設備によって上述の薬液を付与する。以下にドクターチャンバー方式を例に説明する。(転写設備11)
このドクターチャンバー方式による転写設備11は、特に図1からも理解されるように、一つのバックアップロール12に対して二つの刷版ロール13,13が上流側と下流側とに設けられている。
薬液塗布加工速度は90〜350m/分で操業が好ましい。90m/分未満では1段目と2段目の薬液転写の時間間隔が開きすぎて、シワが発生しやすい。逆に350m/分以上では十分な転写量が得られなかったり、幅方向での塗布量のバラツキにより、湿潤強度や水解性にバラツキが生じる。
バックアップロールの直径は250〜420mmが適当である。直径が250mm未満であると1段目の転写と2段目の転写の時間間隔が小さく、1段目の薬液を吸収しきれずに2段目の転写効率が低下する。直径が420mm超であると1段目の転写と2段目の転写の時間間隔が長く、湿紙が伸びてシワが入りやすい。
好ましいバックアップロールの径と加工速度は互いに相対的に決まるが、1段目の転写と2段目の転写の時間間隔を80〜200ms程度に設定することが好ましい。
各刷版ロール13,13には、これに薬液を受け渡すアニロックスロール14,14がそれぞれ設けられており、このアニロックスロール14,14に対しては、これに薬液を受け渡す付与するドクターチャンバー15,15が設けられている。
原反ロール1から繰り出された連続乾燥原紙1Aは、適宜のガイドロール5,5…を介して、前記バックアップロール12に巻き掛けられて、適宜の張力と表面の安定性が付与される。
そして、本発明では、このバックアップロール12に巻きかけられた連続乾燥原紙1Aに対して まず、上流側の刷版ロール13から薬液がロール転写され、さらに下流側の刷版ロール13にて薬液がロール転写される。
ここで、各刷版ロール13,13は、凹溝のないベタ版仕様のものとし、連続乾燥原紙1Aの全体に薬液をベタ印刷の如く付与する。
他方、刷版ロール13,13に薬液を受け渡すアニロックスロール14,14の線数及びセル容量は、薬液の濃度にもよるが、線数70〜120線/インチ、セル容量30〜65ml/m2とするのが望ましい。線数が70線/インチ未満であると刷版ロール13,13に過度の薬液が受け渡され、結果的に連続乾燥原紙1Aに対して刷版ロール13,13からムラを持って薬液が付与されるおそれが高まる。反対に、線数が120線/インチを超えると十分な量かつ刷版ロール13,13の周面全体に薬液を受け渡すことが困難となる。また、セル容量が30ml/m2未満であると十分な量の薬液を刷版ロール13,13に受け渡すことが困難となり、セル容量が65ml/m2を超えても歩留まりの悪化を招くだけである。
かくしてドクターチャンバー方式による転写により薬液が付与された連続原紙1Bは、後段の処理工程へと連続的に搬送される。
〔乾燥工程〕
前段の薬液付与工程において、薬液付与された連続原紙1Bは、次いで、乾燥設備20において前記薬液中の不溶な液分を蒸発させて、有効成分、特にCMCを繊維にたいして定着させる。乾燥設備20としては、既知の連続原紙1Bに対して熱風を吹き付けて乾燥させるフード付きドライヤー設備が利用できる。
本発明においては、特に好ましくは、赤外線照射による乾燥設備である。連続原紙の搬送方向に複数の赤外線照射部21,21を並列して、搬送される連続原紙1Bに対して赤外線を照射して乾燥を行なう。この乾燥設備20では、赤外線により水分が発熱し乾燥されるものであるため、熱風によるドライヤーと比較して、均一な乾燥が可能であり、後段の巻き取り工程においての皺の発生が防止できる。
ここで、赤外線照射の出力や照射部と連続原紙との離間距離は適宜の設計事項である。その外気温や湿紙に含まれる水分量、水分ムラの状態に応じて適宜調整する。乾燥後の水分率は5〜6%に調整する。
〔巻き取り工程〕
前記乾燥工程にて、乾燥され薬液の定着が図られて、連続水解性シート1Cとなったシートは、適宜のワインダー設備30を用いて巻取る。巻き取り速度は、乾燥工程、3ロール転写及びスプレー転写による薬液付与工程を考慮して適宜定める。過度に早いとシートの破断が生じ、過度に遅いと皺が発生するので、これに留意する。
以上の、各工程を経ることにより、本発明の水解性シートが製造される。
〔拭き取りシート〕
次いで、本発明にかかる拭き取りシートについて説明する。本発明の拭き取りシートは、上述の各工程を経て製造された水解性シートに対して、水溶性洗浄剤を含浸させて製造される。
洗浄剤の含浸は、例えば、シートの連続的などぶ付け工程、洗浄剤のスプレー転写、適宜の方法により行なうことができる。この洗浄剤の含浸は、連続水解性シートに対して連続的に行なっても良いし、製品大きさに裁断後に含浸させてもよい。
ここで、本発明の拭き取りシートにおいては、水分の含浸量が、原紙重量の100〜200重量%であるのが望ましい、100重量%未満であると洗浄性に劣るおそれがあり、200重量%を超えて含浸させても、使用人にその量を保持することが困難で結果的にコストのみが高くなる。
(洗浄剤)
本発明にかかる水解性シートに対して含浸して拭き取り用シートとするための水性洗浄剤は、適宜の溶媒を用いることができる。
ここで、本発明にかかる洗浄剤中には、特徴的に多価の金属陽イオンが含有される。特にアルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルからなる群から選択される1種又は2種以上の多価金属用イオンが含有されているのが望ましい。特には、二価の金属陽イオンが望ましく、特にカルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、コバルト、ニッケルのイオンが適する。その中でもカルシウムイオンが望ましい。
かかる多価金属陽イオンが含有されていると、水解性シートに定着されたCMCと作用によって架橋効果により、洗浄剤含浸時に繊維間が十分に結合されて使用に耐え得る湿潤強度が発現する。これは拭き取り操作時に十分な強度が発現されることを意味する。
そして、拭き取り操作後、トイレに流す際など多量の水に触れたときには、かかる架橋効果が減退して効果的な水解性を発現する。
多価金属用イオンは、水酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、酢酸塩などの水溶性金属塩の形で水性洗浄剤に含有することができる。
この多価金属用イオンは、薬液中に含有される成分中のカルボキシル基1モルに対して1/2モル以上、特に1/1モル以上の量となるように含有されるのがよい。十分な架橋反応が生じて十分な湿潤時の強度が発揮される。
以上、詳述の本発明の水解性シートは、抄紙設備に関わらず製造でき、しかもこれを素材とする拭き取りシートは湿潤時の強度が十分で、しかも効果的な水解性を有するものとなる。
次に、本発明に係る水解性シートの製造方法にかかる実施例を示し、本発明の作用効果を明らかにする。
表1に示す本発明に係る水解性シートの製造方法で製造された実施例1〜14と、その他の水解性シートの製造方法で製造された比較例1〜6とについて、紙力及び水解性の測定を行った。各例にかかる製造方法の詳細、物性・組成の測定方法等は次記のとおりである。
米坪(g/m2)については、JIS P 8124に基づいて測定した。
表紙厚(μm)については、尾崎製作所製ピーコックにより測定した。
湿潤紙力・縦(cN/25mm)、湿潤紙力・横(cN/25mm)、については、それぞれJIS P 8135に基づいて測定した。付与する洗浄液量は原紙重量の170%とした。
水解性(秒)については、JIS P 4501のほぐれやすさの試験に準じて測定した。
湿潤紙力のばらつきは、製造設備の幅方向15点にて試験を行い、その15点の標準偏差の値を示した。
CMCについては、ダイセル化学工業株式会社製のCMCダイセル1330の4重量%水溶液を使用した。
実施例1〜14及び比較例1〜6共に、原紙については、針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプとの配合率が9:1とされたものを用い、紙料は水解性を持たせるため未叩解とした。 また、抄紙速度は、毎分250mの速度で行い、クレープ率が15%となるよう調整した。なお、各例にかかる原紙の抄紙設備は、湿紙の搬送にフェルトを用いるものであり、また、一つのヤンキードライヤーを備える設備である。薬液塗布前の原紙の伸び率は16%となった。原紙の水分は6%に調整した。
Figure 0005455414
表1の結果から理解されるように、本発明に係る水解性シートの製造方法で製造された実施例1〜14に係る水解性シートにかかる拭き取りシートは、紙力及び水解性に優れたものである。
以上、詳述のとおり、本発明によれば、従来の抄紙設備によらずとも、優れた水解性及び湿潤紙力を確保できる拭き取りシートの基紙となる水解性シートを製造することが可能である。
X1…水解性シート製造設備、1…原反ロール、1A…原紙、5…ガイドロール、11…薬液転写設備、12…バックアップロール、13…刷版ロール、14…アニロックスロール、15…ドクターチャンバー、1B…塗布後の原紙、20…乾燥工程(乾燥設備)、1C…乾燥後の原紙、21…赤外線照射部、30…巻き取り工程(ワインダー設備)。

Claims (2)

  1. カルボキシメチルセルロースを含む薬液を含む水解性シートの製造方法であって、
    薬液を付与する薬液付与工程と、薬液が付与された原紙を乾燥させる乾燥工程と、乾燥された原紙を巻取る巻き取り工程とを有し、
    前記薬液付与工程は、抄造された原紙を巻取った原反ロールから繰り出される坪量を25〜60g/m2のクレープ紙である連続乾燥原紙を、一つのバックアップロールに巻き掛けてそのバックアップロール上を搬送する過程で、そのバックアップロールと対になる二つの刷版ロールから連続的に二段階で薬液を付与し、かつ、その薬液付与工程における、薬液の温度を20〜40℃、粘度を500〜2500mPa・s以下とし、各刷版ロールを網点のないベタ版仕様とするとともに、各刷版ロールに薬液を付与するアニロックスロールを線数70〜120線/インチ、セル容量30〜65ml/m2の仕様とし、さらに各アニロックスロールに対しては、ドクターチャンバー又はパンから付与されたディップロールにより薬液を付与する、
    ことを特徴とする水解性シートの製造方法。
  2. 前記乾燥工程は、薬液が付与された連続紙に対して、赤外線を照射して乾燥する工程である、請求項1記載の水解性シートの製造方法。
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