JP6423307B2 - 水解性シートの製造方法 - Google Patents
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このようなウェットシートの基材シートとしては、例えば、抄紙工程においてカチオン系の歩留まり剤を添加したものが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
これらを効果的に達成する一つの技術として、カルボキシメチルセルロース(以下、CMCと記述する)を含む水溶性バインダーを、ウェットシートの基材シートに対して添加する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
水溶性バインダーを添加することで、ウェットシートの基材シートの強度を向上させることができると共に、トイレ等に流した際に水溶性バインダーが溶解することで、ウェットシートに所望の水解性を付与できることとなる。
また、パルプを凝集した状態で水溶性バインダーを添加しようとすると、バインダーが浸透しにくくなり、所望の湿潤強度を得難いという問題がある。
請求項1に記載の発明は、水解性シートの製造方法において、
パルプを含む繊維成分とアニオン系の凝集剤を含むスラリーを抄紙して原紙シートを生成する抄紙工程と、
前記抄紙工程により生成された原紙シートの外面に対して、スプレーノズルにより水溶性バインダー溶液を噴射して付与する溶液付与工程と、
前記水溶性バインダー溶液が付与されたシートを乾燥させる乾燥工程と、
乾燥後のシートに薬液を付与する薬液付与工程と、
を含むことを特徴とする。
前記溶液付与工程に用いるスプレーノズルは、二流体方式のノズルであることを特徴とする。
また、アニオン系の凝集剤を用いて抄紙することで、原紙シートの凝集を低下させることができるので、毛細管現象により水解性を向上させることができる。
よって、湿潤強度と水解性に優れる水解性シートを製造することができる。
本発明にかかる抄造工程について説明する。
本発明の抄造工程では、例えば、公知の湿式抄紙技術により抄紙原料を抄紙して原紙シートを形成する。すなわち、抄紙原料を湿紙の状態とした後に、ドライヤーなどによりこれを乾燥して、薄葉紙、クレープ紙などの原紙シートを形成する。
アニオン性PAMとは、アクリルアミド系単量体とアニオン性単量体とを共重合して得られる重合体である。
アクリルアミド系単量体としては、アクリルアミド単独や、アクリルアミドと以下のようなアクリルアミドと共重合可能なノニオン性単量体等と、の混合物である。アクリルアミドと共重合可能なノニオン性単量体としては、メタクリルアミド、N、N−ジメチルアクリルアミド、N、N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドが例示される。これらは単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
アニオン性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びこれらの中和塩が例示される。
なお、アニオン性PAMの水溶性を損ねない程度であれば、スチレン、アクリルニトリル、(メタ)アクリル酸エステル等の単量体を配合してもよい。
このような、パルプと同電荷のアニオン系の凝集剤を用いて抄紙することで、原紙シートの凝集を低下させることができ、毛細管現象により水解性を向上させることができる。
原紙シートは、溶液付与・乾燥・巻き取り工程を経て、巻き取られた状態の水解性シートとなり、別のワイプ等加工工程でエンボス・裁断・折り・薬液含浸等の工程を経て、トイレ・掃除用・からだ拭きなどの水に溶けるワイプ等に加工される。これらの工程で、必要な強度・嵩高さ・表面の凹凸等が付与されるが、原紙シートの目付けが15〜75gsm、2プライ化し、30〜150gsmであれば、ワイプ等の加工工程での折り・裁断・エンボス・薬液含浸など加工適正が良く、また、調整しやすく、加工条件を調整することで、ワイプとして必要な強度・嵩高さ・表面の凹凸など、用途に応じた品質を得られることができる。
次いで、本発明にかかる溶液付与工程ついて説明する。
本発明の溶液付与工程では、原紙シートの外面に二流体方式または一流体方式のノズルのスプレーノズルにより、水溶性バインダー溶液を噴射して塗布する。
この際、上述の抄造工程において、パルプと同電荷のアニオン系の凝集剤を用いて抄紙することで、原紙シートの凝集を低下させているため、水溶性バインダー溶液を塗布した際に、水溶性バインダー溶液を原紙の内部にまで均一に分散させることができ、湿潤強度を向上させることができる。
本実施形態で二流体方式のスプレーノズルを使用する場合、原紙シートの外面に高い圧力(噴射圧1.5MPa以上)で水溶性バインダー溶液(粘度400〜1200MPa・s)を塗布するので、シート表面に水溶性バインダー溶液を均一に塗布させやすくすることができる。 また、本実施形態では、パルプと同電荷のアニオン系の凝集剤を用いて抄紙することで、原紙シートの凝集を低下させているため、きめ細かく均一に噴霧された水溶性バインダー溶液がシートの厚さ方向に含浸しやすくなっている。
また、CMCについては、そのエーテル化度が0.6〜2.0、特に0.9〜1.8、更に好ましくは1.0〜1.5であるのが望ましい。水解性と湿潤紙力の発現が極めて良好となる。
本発明にかかる乾燥工程では、乾燥設備において、水溶性バインダー溶液中の不溶な液分を蒸発させて、有効成分、特にCMCを繊維に対して定着させる。
乾燥設備としては、特に限定はないが、溶液付与シートに対して熱風を吹き付けて乾燥させるフード付きドライヤー設備が利用できる。
また、乾燥設備として赤外線照射による設備を用いても良い。この場合、上記溶液付与シートの搬送方向に複数の赤外線照射部を並列し、搬送される溶液付与シートに対して赤外線を照射して乾燥を行なう。赤外線により水分が発熱し乾燥されるものであるため、熱風によるドライヤーと比較して、均一な乾燥が可能であり、後続の巻き取り工程においての皺の発生が防止できる。
次いで、本発明にかかる巻き取り工程について説明する。
本発明にかかる巻取り工程では、乾燥された乾燥シートをオフラインの加工機で加工する際の原反とするために、上述の乾燥工程で乾燥されCMCの定着が図られた乾燥シートをテンションを調整しながら、スリッターで所定の幅にスリットし、ワインダー設備において、巻き取ることとなる。巻き取り速度は、溶液付与工程、乾燥工程を考慮して適宜定める。過度に早いと乾燥シートの破断が生じ、過度に遅いと皺が発生するのでこれに留意する。
次いで、本発明にかかる薬液付与工程ついて説明する。
本発明の薬液付与工程では、スプレーノズルにより、上述の巻き取り工程で巻き取られた水解性シートを繰り出し、これに対して薬液を付与する。
なお、薬液付与工程に先立って、上述の巻き取り工程により巻き取られた乾燥シートに所望の液保持性等を担保すべく、一旦乾燥シートを湿らせてエンボス加工を施し、再度乾燥させる等の工程を実施しても良い。
先ず、NBKPとLBKPの割合40/60のパルプと、下記1〜4の条件の凝集剤とを原料として、原紙シート1〜4を作製した(実施例1、比較例1〜3)。原紙シート1〜4の米坪は、何れも45g/m2であった。
条件2:凝集剤の添加なし(比較例1、原紙シート2)。
条件3:凝集剤として、高カチオン性凝集剤(ポリアクリル酸エステル系:ハイモロックNR−883,ハイモ社)を500ppm添加した(比較例2、原紙シート3)。
条件4:凝集剤として、カチオン性凝集剤(ポリアクリル酸エステル系:ハイモロックDR−8500,ハイモ社)を500ppm添加した(比較例3、原紙シート4)。
表1に、水解性試験の結果を示す。
次に、上記した原紙シート1〜4に対して、CMC(CMC 1330,ダイセル社)を含む同一の水溶性バインダー溶液を表2に示す条件で塗布して溶液付与シートを作製し、これを乾燥させた乾燥シートに薬液を付与して水解性シートを作製した(実施例1−1〜1−5、比較例1−1〜1−5、比較例2−1〜1−5、比較例3−1〜3−5、)。なお、薬液は、硫酸亜鉛3%、プロピレングリコールモノメチルエーテル15%、水82%に調合した。薬液の含浸率は、紙重量に対し175%とした。
また、上述にようにして作製した水解性シートに対して、JIS P4501(2006)4.5「ほぐれやすさ」に基づく試験方法にて水解性を測定した。
表2に、湿潤強度試験及び水解性の結果を示す。
なお、水解性の判断基準は、100秒以内にほぐれる場合は「○」、100秒を超える場合は「×」とした。
また、原紙シート3、4からなる水解性シートの場合(比較例2−1〜2−5、比較例3−1,3−5)の場合は、原紙シート1からなる水解性シート(実施例1−1〜1−5)と比較し湿潤強度が低く、表1の結果より、水解性も著しく悪化することが確認できた。
また、水解性シートの状態でも、原紙シートと同じように、アニオン性凝集剤を用いた原紙シート1からなる水解性シートの場合(実施例1−1〜1−5)、及び凝集剤を用いていない原紙シート2からなる水解性シートの場合(比較例1−1〜1−5)は、水解性に問題はないが、原紙シート3、4からなる水解性シートの場合(比較例2−1〜2−5、比較例3−1〜3−5)の場合は、基準を満たさないことがわかる。
このため、パルプと同電荷のアニオン系の凝集剤を用いて抄紙することで、原紙シートの繊維の凝集を低下させることができるので、水溶性バインダー溶液を付与した際に、当該水溶性バインダー溶液を原紙シートの内部にまで均一に分散させることができ、湿潤強度を向上させることができる。
また、アニオン系の凝集剤を用いて抄紙することで、原紙シートの繊維の凝集を低下させることができるので、毛細管現象により水解性を向上させることができる。
このため、溶液付与工程(ステップS2)に用いるスプレーノズルを二流体方式のものとすることにより、原紙シートの外面に斑なく均一に水溶性バインダー溶液を吹き付けることができると共に、原紙シートの内部に水溶性バインダー溶液を浸透させることができる。
Claims (2)
- パルプを含む繊維成分とアニオン系の凝集剤を含むスラリーを抄紙して原紙シートを生成する抄紙工程と、
前記抄紙工程により生成された原紙シートの外面に対して、スプレーノズルにより水溶性バインダー溶液を噴射して付与する溶液付与工程と、
前記水溶性バインダー溶液が付与されたシートを乾燥させる乾燥工程と、
乾燥後のシートに薬液を付与する薬液付与工程と、
を含むことを特徴とする水解性シートの製造方法。 - 前記溶液付与工程に用いるスプレーノズルは、二流体方式のノズルであることを特徴とする請求項1に記載の水解性シートの製造方法。
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