JP6514932B2 - 水解性シートの製造方法、及び水解性シート - Google Patents

水解性シートの製造方法、及び水解性シート Download PDF

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Description

本発明は、トイレクリーナー等の予め洗浄剤が含浸されたウェットシートの基材紙となる水解性シート及びその製造方法に関する。
従来、トイレの清掃には、繰り返し使用される織布製の雑巾等が使われてきたが、これに替わって、近年、紙製の使い捨てのウェットシートが使用されるようになってきている。そして、この種のウェットシートは、洗浄剤が含浸された状態で提供され、また使用後にトイレに流して処理可能とされるものが好まれる。
かかるウェットシートにおいては、拭取り作業時の洗浄剤が含浸された湿潤状態において破れない紙力と、トイレ等に流した際に配管等に詰まらない程度の水解性を確保することが求められるところであるが、これらを効果的に達成する一つの技術として、その基材紙としてカルボキシメチルセルロース(以下、CMCと記述する)を含む水溶性バインダー等を添加した水解性シートを用いることが知られている。
また、水解性シートにおいては、多価の金属陽イオンを含む洗浄剤を、原紙重量の100〜200重量%含浸させ、CMCと金属陽イオンとの作用によって拭き取り性能を向上させたものが知られている(例えば、特許文献1)。
特開2010−236161号公報 特許第4219323号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、化学的作用による拭き取り性能の向上を図るものであるが、トイレクリーナー等に用いられた場合、便器にこびり付いた汚れを物理的に拭き取る必要があり、物理的な拭き取り機能の向上だけでなく、見た目にもふんわり感があり、ふき取り効果が高そうな見栄えと汚れの掻きとり効果が求められている。この状況下で、特許文献2(特許第4219323号)に、水溶性バインダーを含んだ水解紙に、水を噴霧した上で、エンボス加工し、このエンボス加工と同時又は直後に過熱することにより、凹凸形状の保形性に優れ、かつ強度低下の少ない水解紙を得ること、さらにエンボス加工後に特定成分を含む水性薬剤を含浸させることで、バインダーが一時的に不溶化或いは膨潤が抑制されることにより、さらに凹凸形状の保形性向上・強度低下を少なくできることが開示されているが、深いエンボスの場合、エンボスパターンの成形性(見栄え・形状保持)は充分ではない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、エンボスを入りやすくし、その形状を保持することができる水解性シートの製造方法、及び当該製造方法により製造された水解性シートを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
水解性シートの製造方法であって、
原紙に対して保湿系薬剤を付与する薬剤付与工程と、
前記保湿系薬剤が付与された原紙に対して、エンボス加工を施すエンボス加工工程と、
前記エンボス加工が施された原紙を乾燥させる乾燥工程と、
前記原紙に対してバインダー溶液を付与する溶液付与工程と、
前記バインダー溶液が付与された原紙を乾燥させる原紙乾燥工程を有し、
前記薬剤付与工程は、前記原紙乾燥工程の直前と直後のうちの少なくとも何れかにおいて行うことを特徴とする。
なお、ここでの原紙とは、抄紙工程で抄造される紙が含まれるものとする。
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の水解性シートの製造方法において、
前記薬剤付与工程において、前記原紙に対して1〜20重量%の前記保湿系薬剤を付与することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、
請求項1又は2に記載の水解性シートの製造方法において
記薬剤付与工程は、前記溶液付与工程において行うことを特徴とする。
請求項に記載の発明は、
請求項に記載の水解性シートの製造方法において、
前記溶液付与工程において、前記原紙に対して1〜30重量%の前記バインダー溶液を付与することを特徴とする。
請求項に記載の発明は、
請求項3又は4に記載の水解性シートの製造方法において、
前記バインダー溶液が付与された原紙は、バインダーを含む坪量が30〜150g/mであることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、
請求項1〜の何れか一項に記載の水解性シートの製造方法において、
前記エンボス加工工程では、熱ロールによりエンボス加工を行うことを特徴とする。
請求項に記載の発明は、
請求項1〜の何れか一項に記載の製造方法にて製造されたことを特徴とする前記保湿系薬剤が塗布された水解性シートである。
本発明によれば、保湿系薬剤を原紙に付与することにより、この原紙の紙質がしなやかになった状態でエンボス加工を施すので、エンボス加工の際に当該原紙の破れを抑制することができるとともに、型どおりにエンボスを形成することができる。また、エンボス加工が施された原紙を乾燥させることにより、形成されたエンボスを固化し、当該エンボスの形状を保持することができるようになる。
これにより、本発明の水解性シートを基材紙として、嵩高く且つ高強度のエンボス形状を維持できることによって物理的な拭き取り性を向上させるとともに、ふんわり感を維持することができるウェットシート(拭き取りシート)を製造することができるようになる。
本発明の水解性シートを基材紙とするウェットシートの製造方法を示すフローチャートである。 本実施形態に係る水解性シートの製造設備(溶液付与設備)の模式図である。 本実施形態に係る水解性シートの製造設備(加工設備)の模式図である。
以下、本発明に係る水解性シートの製造方法の実施形態を、図1〜3を参照しながら詳述する。図1は、本発明の水解性シートを基材紙とするウェットシートの製造方法を示すフローチャートである。図2は、水解性シートの原紙に対してバインダー溶液を付与する溶液付与設備の模式図である。図3は、図2に示す溶液付与設備でバインダー溶液が付与された原紙を加工する加工設備の模式図である。
本発明の水解性シートを基材紙とするウェットシートの製造方法では、図1に示すように、先ず、抄紙機(図示省略)で原紙となる紙を抄造する抄紙工程(S1)を行う。
次いで、図1及び図2に示すように、溶液付与設備において、抄造された原紙を巻取った複数(例えば、2本)の1次原反ロール1,1からそれぞれ繰り出される連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工しプライ連続シート1Bとするプライ加工工程(S2)と、プライ連続シート1Bに対してバインダー溶液を付与し連続シート1Cとするバインダー溶液付与工程(S3)と、連続シート1Cを乾燥させる第1乾燥工程(S4)と、第1乾燥工程(S4)で乾燥させた連続水解性シート1Dに対して保湿系薬剤を付与する薬剤付与工程(S5)と、当該保湿系薬剤が付与された連続水解性シート1Dをスリットし巻取るスリット・巻き取り工程(S6)とを行う。なお、1次原反ロールは2本以上であれば適宜本数を変更可能であるが、以下の説明においては、2本使用する場合の例について説明する。
次いで、図1及び図3に示すように、加工設備において、上記スリット・巻き取り工程(S6)で巻取った2次原反ロール11から繰り出される連続水解性シート1Dに対してエンボス加工を施すエンボス加工工程(S7)と、エンボス加工が施されたエンボス済シート1Eを乾燥させる第2乾燥工程(S8)と、第2乾燥工程(S8)で乾燥させたエンボス済シート1Eに対して仕上げ加工を施す仕上げ加工工程(S9)とを行う。なお、各工程の詳細については、後述する。
〔抄紙工程〕
本実施形態の抄紙工程(S1)は、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート(抄紙乾燥工程)等からなる既知のものであるため、その詳述は省略する。
〔連続乾燥原紙〕
連続乾燥原紙1Aは、上記抄紙工程(S1)にて抄造された薄葉紙、クレープ紙が好適に用いられる。なお、連続乾燥原紙1Aの原料は特に限定されないが、既知のバージンパルプ、古紙パルプなどを利用できる。少なくともパルプを含むものであるのが望ましい。これにより、CMCの定着、洗浄剤とCMCとの作用が効果的に発揮されることとなる。原料となるパルプは、特にLBKPとNBKPを適宜の割合で配合したものが適する。なお、連続乾燥原紙1Aとしては、パルプ繊維以外の繊維として、レーヨン繊維や合成繊維などが含有されていてもよい。
連続乾燥原紙1Aの物性としては、好適には、坪量が15〜75g/m(後述するプライ加工後の総坪量が30〜150g/m)程度である。なお、坪量は、JIS P 8124に基づくものである。
〔プライ加工工程〕
次いで、本実施形態のプライ加工工程(S2)について説明する。プライ加工工程(S2)では、図2に示すように、1次原反ロール1,1から連続的に繰り出される各連続乾燥原紙1A,1Aを、その連続方向に沿ってプライ加工しプライ連続シート1Bとする重ね合わせ部2に供給される。重ね合わせ部2は、一対のニップロールで構成され、各連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工し、プライ加工されたプライ連続シート1Bを形成する。なお、連続乾燥原紙1A,1A同士を重ね合わせる際に、連続乾燥原紙1A,1A同士がずれにくくなるように、ピンエンボス(コンタクトエンボス)で軽く留めておいてもよい。
〔バインダー溶液〕
次いで、本発明が対象とするバインダー溶液について説明する。本発明にかかるバインダー溶液は、カルボキシルメチルセルロース(CMC)を含むものである。この本発明にかかるバインダー溶液中におけるカルボキシルメチルセルロースの濃度としては、1〜30重量%とする。
他方、CMCについては、そのエーテル化度が0.6〜2.0、特に0.9〜1.8、更に好ましくは1.0〜1.5であるのが望ましい。水解性と湿潤紙力の発現が極めて良好となる。
また、CMCは、水膨潤性のものを用いることができる。これは、洗浄剤中の特定金属イオンの架橋により、未膨潤化のままシートを構成する繊維をつなぎとめる機能を発揮し、清掃・清拭作業に耐えうる拭き取りシートとしての強度を発現することができる。
バインダー溶液中のカルボキシルメチルセルロース以外の成分としては、ポリビニルアルコール、デンプンまたはその誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルプラン、ポリエチレンオキシド、ビスコース、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸のヒドロキシル化誘導体、ポリビニルピロリドン/ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体等のバインダー成分が挙げられる。
水解性が良好となる点や架橋反応により湿潤強度を発現しうる点からカルボキシル基を有する水溶性バインダーを用いることが好ましい。
カルボキシル基を有する水溶性バインダーは、水中で容易にカルボキシラートを生成するアニオン性の水溶性バインダーである。その例としては多糖誘導体、合成高分子、天然物が挙げられる。多糖誘導体としてはカルボキシメチルセルロースの塩、カルボキシエチルセルロース又はその塩、カルボキシメチル化デンブン又はその塩などが挙げられ、特にカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩が好ましい。
合成高分子としては、不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体の塩、不飽和カルボン酸と該不飽和カルボン酸と共重合可能な単量体との共重合体の塩などが挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸などが挙げられる。これらと共重合可能な単量体としては、これら不飽和カルボン酸のエステル、酢酸ビニル、エチレン、アクリルアミド、ビニルエーテルなどが挙げられる。特に好ましい合成高分子は、不飽和カルボン酸としてアクリル酸やメタクリル酸を用いたものであり、具体的にはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸メタクリル酸共重合体の塩、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキルとの共重合体の塩が挙げられる。天然物としては、アルギン酸ナトリウム、ザンサンガム、ジェランガム、タラガントガム、ペクチンなどが挙げられる。
〔バインダー溶液付与工程〕
次いで、本実施形態のバインダー溶液付与工程(S3)ついて説明する。バインダー溶液付与工程(S3)では、図2に示すように、プライ連続シート1Bの両方の外面(連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工した時に連続乾燥原紙1A,1A同士が対向しない面)に対して、スプレーノズル3,3により上述のバインダー溶液を噴霧する。スプレーノズル3,3は、一流体方式のものと二流体式ノズルのものがあるが、求められる品質特性に応じて、いずれかを選択することができる。
〔第1乾燥工程〕
次いで、本実施形態の第1乾燥工程(S4)について説明する。第1乾燥工程(S4)では、図2に示すように、第1乾燥設備4において、バインダー溶液が付与された連続シート1Cのバインダー溶液中の不溶な液分を蒸発させて、有効成分、特にCMCを繊維に対して定着させる。第1乾燥設備4としては、連続シート1Cに対して熱風を吹き付けて乾燥させるフード付きドライヤー設備が利用できる。
なお、上記第1乾燥設備4として赤外線照射による設備を用いても良い。この場合、連続シート1Cの搬送方向に複数の赤外線照射部を並列し、搬送される当該シート1Cに対して赤外線を照射して乾燥を行なう。赤外線により水分が発熱し乾燥されるものであるため、熱風によるドライヤーと比較して、均一な乾燥が可能であり、後段のスリット・巻き取り工程(S6)においての皺の発生が防止できる。
〔薬剤付与工程〕
次いで、本実施形態の薬剤付与工程(S5)ついて説明する。薬剤付与工程(S5)では、図2に示すように、上述の第1乾燥工程(S4)で乾燥されCMCの定着が図られた連続水解性シート1Dの表面及び裏面に対してスプレーノズル5,5により保湿系薬剤を塗布する。この保湿系薬剤の添加量は、プライ連続シート1Bに対して1〜20重量%の割合とする。
なお、グラビア印刷方式やフレキソ印刷方式により当該保湿系薬剤を連続水解性シート1Dの表面及び裏面に対して塗布するようにしても良い。
保湿系薬剤は、一般的に使用されているものであればどのようなものでも良い。具体的には、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等及びその誘導体の多価アルコールを用いることができる。
〔スリット・巻き取り工程〕
次いで、本実施形態のスリット・巻き取り工程(S6)について説明する。スリット・巻き取り工程(S6)では、連続水解性シート1Dをオフラインの加工機で加工する際の原反とするために、この連続水解性シート1Dのテンションを調整しながら、スリッター6で所定の幅にスリットし、ワインダー設備7において巻き取ることとなる。巻き取り速度は、プライ加工工程(S2)、バインダー溶液付与工程(S3)、第1乾燥工程(S4)、薬剤付与工程(S5)を考慮して適宜定める。過度に早いとシートの破断が生じ、過度に遅いと皺が発生するので、これに留意する。
〔エンボス加工工程〕
次いで、本実施形態のエンボス加工工程(S7)について説明する。エンボス加工工程(S7)では、図3に示すように、2次原反ロール11から繰り出される、保湿系薬剤が付与された連続水解性シート1Dに対して、エンボスロール12によって、シート全面に所定の形状をなすエンボス加工が施される。このエンボス加工は、シートの強度、嵩高性、拭き取り性等を高めるとともに、デザイン性を高めることを目的としてなされている。
〔第2乾燥工程〕
次いで、本実施形態の第2乾燥工程(S8)について説明する。第2乾燥工程(S8)では、図3に示すように、第2乾燥設備13において、上述のエンボス加工工程(S7)でエンボス加工が施されたエンボス済シート1Eを乾燥させることにより、エンボス部分を固化し、エンボス形状を保持させる。第2乾燥設備13としては、第1乾燥設備4と同様、フード付きドライヤー設備を用いても良く、また、赤外線照射による設備を用いても良い。
なお、第2乾燥工程(S8)において、エンボス済シート1Eを乾燥させる方法以外に、上述したエンボス加工工程(S7)において、加熱されたエンボスロール(熱ロール)を用いることにより、エンボス加工と同時にシートを乾燥させる方法を採用しても良い。
〔仕上げ加工工程〕
次いで、本実施形態の仕上げ加工工程(S9)について説明する。仕上げ加工工程(S9)では、図3に示すように、仕上げ加工設備14において、第2乾燥工程(S8)で乾燥させたエンボス済シート1Eの裁断加工、裁断された各シートの折り加工、折り加工がなされた各シートへの水溶性洗浄剤の含浸、水溶性洗浄剤を含浸させた各シートの包装を一連の流れで行う。
以上の、各工程を経ることにより、本発明の水解性シートを基材紙とするウェットシート(例えば、トイレクリーナー)が製造される。
次に、本実施形態の水解性シートの製造方法により製造された水解性シートを用いて、当該シートに施されたエンボスの見栄え、保形性、及びエンボスの汚れ具合について官能評価を行った結果を表2を用いて説明する。
<実施条件>
実施例1〜5では、水溶性バインダーを含んでいない水解紙(連続乾燥原紙1A,1A)を上述のプライ加工工程にて2プライ加工し、次いで、上述のバインダー溶液付与工程にて、2プライ加工されたプライ連続シート1Bの両方の外面に二流体方式のノズルの各スプレーノズル3,3によりバインダー溶液を噴霧し、次いで、上述の第1乾燥工程にて、バインダー溶液が噴霧された連続シート1Cを乾燥させ、次いで、所定量のグリセリン(保湿系薬剤)をスプレーで噴霧した後、スリット・巻き取り工程にて、所定の幅にスリットした。そして、スリットしたバインダー及びグリセリンを塗布した水解紙(連続水解性シート1D)を別の加工機において、まず熱エンボス装置にて、170℃でエンボス加工し、そのエンボス済シート1Eを裁断し、裁断されたシートに水性薬剤を含浸させた加工シートを作成し、当該加工シートにて、上述の官能評価を行った。
水溶性バインダーを含んでいない水解紙(原紙)の各条件は下記表1に示す通りである。なお、各条件の値は、JISに基づく試験方法で測定されたものである。
Figure 0006514932

また、上述の水解紙(原紙)に対して付与されるバインダー溶液、及び水性薬剤の各条件は下記に示す通りである。
<バインダー溶液>
バインダー溶液中のCMC(エーテル化度1.0)の濃度:3.25重量%
バインダー溶液の成分:CMC、水
バインダー噴霧量:CMC換算で原紙に対し1.0%相当(90gsm原紙に対し0.9gsm)
<含浸させる水性薬剤>
精製水83%、プロピレングリコール5%、プロピレングリコールモノメチルエーテル10%、硫酸亜鉛1.0%、その他塩化ベンザルコニウムなど、1.8%
原紙重量に対し、200%含浸させる。
実施例1〜5では、薬剤付与工程にて塗布されるグリセリンの量をそれぞれ異ならせている。具体的には、実施例1におけるグリセリン塗布量は、0.9gsm(原紙重量に対し、1重量%)、実施例2におけるグリセリン塗布量は、2.7gsm(原紙重量に対し、3重量%)、実施例3におけるグリセリン塗布量は、11.7gsm(原紙重量に対し、13重量%)、実施例4におけるグリセリン塗布量は、18gsm(原紙重量に対し、20重量%)、実施例5におけるグリセリン塗布量は、22.5gsm(原紙重量に対し、25重量%)とした。
また、上記のようにグリセリンの塗布量を異ならせた各実施例1〜5に対し、グリセリンを塗布せず、水を塗布してエンボス加工したサンプル、及び、グリセリンや水を塗布せずにエンボス加工したサンプルを試作し、これらのサンプルを比較例に用いて比較評価を行った。
比較例1〜5では、水溶性バインダーを含んでいない水解紙(連続乾燥原紙1A,1A)を上述のプライ加工工程にて2プライ加工し、次いで、上述のバインダー溶液付与工程にて、2プライ加工されたプライ連続シート1Bの両方の外面に二流体方式のノズルの各スプレーノズル3,3によりバインダー溶液を噴霧し、次いで、上述の第1乾燥工程にて、バインダー溶液が噴霧された連続シート1Cを(水分率5%)乾燥させる。そして、比較例1〜5では、上記実施例1〜5とは異なり、グリセリンを塗布せず、乾燥させた水解紙(連続水解性シート1D)を、スリット・巻き取り工程にて、所定の幅にスリットした。
そして、別の加工機において、スリットしたバインダーを塗布した水解紙に対して水(原紙重量に対し1〜25重量%)をスプレーした後、熱エンボス装置にて170℃のヒートエンボスにてエンボス加工し、そのエンボス済シート1Eを裁断し、裁断されたシートに水性薬剤を含浸させた加工シートを作成し、当該加工シートにて、上述の官能評価を行った。 なお、水溶性バインダーを含んでいない水解紙(原紙)、バインダー溶液、及び水性薬剤の各条件は、上記実施例1〜5の条件と同一の条件とする。
比較例6では、比較例1〜5と同様、水溶性バインダーを含んでいない水解紙(連続乾燥原紙1A,1A)を上述のプライ加工工程にて2プライ加工し、次いで、上述のバインダー溶液付与工程にて、2プライ加工されたプライ連続シート1Bの両方の外面に二流体方式のノズルの各スプレーノズル3,3によりバインダー溶液を噴霧し、次いで、上述の第1乾燥工程にて、バインダー溶液が噴霧された連続シート1Cを(水分率5%)乾燥させる。そして、比較例6では、比較例1〜5と同様、グリセリンを塗布せず、乾燥させた水解紙(連続水解性シート1D)を、スリット・巻き取り工程にて、所定の幅にスリットした。
そして、別の加工機において、比較例6では、比較例1〜5とは異なり、スリットしたバインダーを塗布した水解紙に対して水をスプレーせず、170℃のヒートエンボスにてエンボス加工し、そのエンボス済シート1Eを裁断し、裁断されたシートに水性薬剤を含浸させた加工シートを作成し、当該加工シートにて、上述の官能評価を行った。
なお、水溶性バインダーを含んでいない水解紙(原紙)、バインダー溶液、及び水性薬剤の各条件は、実施例1〜5、及び比較例1〜5の条件と同一の条件とする。
<評価方法>
実施例1〜5、比較例1〜6では、それぞれエンボスの見栄え・保形性・エンボスの汚れ具合を以下の通り評価した。
エンボスの見栄えについては、加工シートを目視にて確認し、くっきりとエンボス凹凸が形状通り入り、全く破れのない状態を「◎」、くっきりとエンボス凹凸が形状通り入り、殆ど破れのない状態を「○」、エンボス凹凸が形状通りくっきり入るが、やや破れが見られる状態またはエンボス凹凸がやや型崩れしている状態を「△」、破れが見られる状態やエンボス凹凸が型崩れしている状態を「×」として評価した。
エンボスの保形性については、指でエンボスに軽く触れた時の弾力で評価し、全く型崩れしない場合を「◎」、殆ど型崩れがない状態を「○」、やや型崩れする場合を「△」、型崩れする場合を「×」とした。
エンボスの汚れについては、加工シートのエンボス表面を目視にて確認するとともに、エンボスに指先で触れて、紙粉・粘着物が全く付着しない状態を「◎」、付着しない状態を「○」、やや付着する状態を「△」、付着する状態を「×」として評価した。
Figure 0006514932

上記表2に示す結果の通り、比較例1は、エンボスの見栄え、及びエンボスの保形性はいずれも「×」であり、エンボスの汚れ具合は「◎」であった。また、比較例2は、エンボスの見栄え、及びエンボスの保形性はいずれも「△」であり、エンボスの汚れ具合は「○」であった。また、比較例3は、エンボスの見栄え、及びエンボスの保形性はいずれも「○」であり、エンボスの汚れ具合は「△」であった。また、比較例4、5は、エンボスの見栄え、及びエンボスの保形性はいずれも「○」であり、エンボスの汚れ具合は「×」であった。また、比較例6は、エンボスの見栄え、及びエンボスの保形性はいずれも「×」であり、エンボスの汚れ具合は「◎」であった。
これに対して、実施例1、2は、エンボスの見栄え、及びエンボスの保形性はいずれも「○」であり、エンボスの汚れ具合は「◎」であった。また、実施例3、4は、エンボスの見栄え、及びエンボスの保形性はいずれも「◎」であり、エンボスの汚れ具合は「○」であった。また、実施例5は、エンボスの見栄え、及びエンボスの保形性はいずれも「○」であり、エンボスの汚れ具合は「△」であった。
表2に示す結果から、比較例1のようにエンボス加工の前に原紙重量に対し1重量%の水をスプレー(塗布)しただけでは、水もグリセリンも塗布しない比較例6と比べて、エンボスの見栄え、エンボスの保形性、及びエンボスの汚れ具合のいずれの評価結果においても差がないことが分かった。
これに対し、比較例2〜5のようにエンボス加工の前に所定量(原紙重量に対し3〜25重量%)の水をスプレー(塗布)することにより、比較例6と比べて、エンボスの汚れ具合は劣るものの、エンボスの見栄え、及びエンボスの保形性が向上することが分かった。
また、表2に示す結果から、実施例1は、比較例1と比べて、エンボスの見栄え、及びエンボスの保形性が向上することが分かった。また、実施例2〜4は、それぞれの比較例2〜4と比べて、エンボスの見栄え、エンボスの保形性、エンボスの汚れ具合のいずれも向上することが分かった。また、実施例5は、比較例5と比べて、エンボスの汚れ具合が向上することが分かった。
つまり、原紙重量に対する塗布量(対原紙重量%)が同一であれば、水を塗布する場合よりもグリセリンを塗布する場合の方がエンボスの見栄え、エンボスの保形性、エンボスの汚れ具合のいずれにおいても向上することが分かった。 さらに、実施例1〜4のように、グリセリンの塗布量を原紙重量に対し1〜20重量%とすることにより、エンボスの見栄え、エンボスの保形性、エンボスの汚れ具合のいずれにおいても「○」以上の評価結果となることが分かった。
以上のように、本実施形態によれば、保湿系薬剤を連続水解性シート1Dに付与することにより、この連続水解性シート1Dの紙質がしなやかになった状態でエンボス加工が施されることとなるので、エンボス加工の際に当該シートの破れを抑制することができるとともに、型どおりにエンボスを形成することができる。また、エンボス加工と同時または直後に、エンボス済シート1Eを乾燥させることにより、形成されたエンボスを固化し、当該エンボスの形状を保持することができるようになる。
これにより、本実施形態の水解性シートを基材紙として、強度が高まり嵩高いエンボス部分で汚れをごしごし掻き取ることができ、物理的な拭き取り性を向上させるとともに、ふんわり感を維持することができるウェットシート(拭き取りシート)を製造することができるようになる。
また、本実施形態によれば、プライ連続シート1Bに対して1〜20重量%のグリセリン(保湿系薬剤)を付与することにより、連続水解性シート1Dの破れを一段と抑制することができるとともに、型どおりにエンボスを形成することができる。また、エンボス形状の型崩れを一段と抑制することができるようになる。
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
上記実施形態では、第1乾燥工程(S4)の直後に薬剤付与工程(S5)を行うようにしたが、第1乾燥工程(S4)の直前に行っても良いし、また、第1乾燥工程(S4)の直前及び直後の両方で薬剤付与工程(S5)を行うようにしても良い。また、バインダー溶液付与工程(S3)において、バインダー溶液と保湿系薬剤とを混合させて、プライ連続シート1Bに対して、二流体方式の各スプレーノズル3,3により噴霧するようにしても良い。
また、薬剤付与工程(S5)は、水解性シートの原紙を抄造する抄紙工程(S1)において行うようにしても良い。具体的には、抄造された原紙(湿紙)を乾燥させるドライパート(抄紙乾燥工程)の直前と直後のうちの少なくとも何れかにて行うようにする。
また、上記実施形態では、プライ加工工程(S2)の後にバインダー溶液付与工程(S3)を行うようにしたが、プライ加工工程(S2)の前にバインダー溶液付与工程(S3)を行うようにしても良い。かかる場合、各1次原反ロール1,1から連続的に繰り出される各連続乾燥原紙1A,1Aの外面だけではなく対向面に対しても、スプレーノズルから上述のバインダー溶液を噴霧するようにしても良い。これにより、各連続乾燥原紙1A,1Aの厚さ方向にバインダー溶液を一層浸透させ易くなる。
また、プライ加工工程(S2)の前にバインダー溶液付与工程(S3)を行うようにした場合、バインダー溶液が付与された各連続乾燥原紙1A,1Aの間に当該バインダー溶液を付与しない連続乾燥原紙1Aを挟み込み3プライ加工するようにしても良い。なお、各連続乾燥原紙1A,1Aの間に挟み込む連続乾燥原紙1Aに対してもバインダー溶液を付与するようにしても良い。
1 1次原反ロール
1A 連続乾燥原紙
1B プライ連続シート
1C 連続シート
1D 連続水解性シート
1E エンボス済シート
2 重ね合わせ部
3 スプレーノズル
4 第1乾燥設備
5 スプレーノズル
6 スリッター
7 ワインダー設備
11 2次原反ロール
12 エンボスロール
13 第2乾燥設備
14 仕上げ加工設備

Claims (7)

  1. 水解性シートの製造方法であって、
    原紙に対して保湿系薬剤を付与する薬剤付与工程と、
    前記保湿系薬剤が付与された原紙に対して、エンボス加工を施すエンボス加工工程と、
    前記エンボス加工が施された原紙を乾燥させる乾燥工程と、
    前記原紙に対してバインダー溶液を付与する溶液付与工程と、
    前記バインダー溶液が付与された原紙を乾燥させる原紙乾燥工程を有し、
    前記薬剤付与工程は、前記原紙乾燥工程の直前と直後のうちの少なくとも何れかにおいて行うことを特徴とする水解性シートの製造方法。
  2. 前記薬剤付与工程において、前記原紙に対して1〜20重量%の前記保湿系薬剤を付与することを特徴とする請求項1に記載の水解性シートの製造方法。
  3. 記薬剤付与工程は、前記溶液付与工程において行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の水解性シートの製造方法。
  4. 前記溶液付与工程において、前記原紙に対して1〜30重量%の前記バインダー溶液を付与することを特徴とする請求項に記載の水解性シートの製造方法。
  5. 前記バインダー溶液が付与された原紙は、バインダーを含む坪量が30〜150g/mであることを特徴とする請求項3又は4に記載の水解性シートの製造方法。
  6. 前記エンボス加工工程では、熱ロールによりエンボス加工を行うことを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の水解性シートの製造方法。
  7. 請求項1〜の何れか一項に記載の製造方法にて製造されたことを特徴とする前記保湿系薬剤が塗布された水解性シート。
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