JP2018123448A - 水解性シート及び当該水解性シートの製造方法 - Google Patents

水解性シート及び当該水解性シートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】水解性を確保しつつ、強く擦ったときの破れにくさを向上させる。【解決手段】原紙シートに対して水性薬剤を含浸させた水解性シートであって、原紙シートは、目付量が30〜150gsmであり、水溶性バインダーを含有するとともに、化学変性したセルロースナノファイバーを含有しており、水性薬剤は、水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含んでいる。【選択図】図1

Description

本発明は、トイレクリーナー等の予め水性薬剤が含浸された水解性シート及び当該水解性シートの製造方法に関する。
従来、トイレの清掃には、繰り返し使用される織布製の雑巾等が使われてきたが、これに替わって、近年、紙製の使い捨ての水解性シートが使用されるようになってきている。そして、この種の水解性シートは、洗浄剤が含浸された状態で提供され、また使用後にトイレに流して処理可能とされる。
かかる水解性シートにおいては、拭取り作業時の洗浄剤が含浸された湿潤状態において破れない紙力と、トイレ等に流した際に配管等に詰まらない程度の水解性を確保することが求められるところであるが、これらを効果的に達成する一つの技術として、その基材紙としてカルボキシメチルセルロース(以下、CMCと記述する)を含む水溶性バインダー等を添加した水解性シートを用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許第3865506号公報
ところで、例えば、トイレの清掃に水解性シートを使用した場合、従来の水解性シートでは、便器の縁等を強く擦ると破れることがあった。そのため、水解性を確保しつつ、更に、強く擦ったときの破れにくさを向上させることが課題となっていた。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、水解性を確保しつつ、強く擦ったときの破れにくさを向上させた水解性シート及び当該水解性シートの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
原紙シートに対して水性薬剤を含浸させた水解性シートであって、
前記原紙シートは、
目付量が30〜150gsmであり、
水溶性バインダーを含有するとともに、
化学変性したセルロースナノファイバーを含有しており、
前記水性薬剤は、水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含んでいることを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の水解性シートであって、
前記化学変性したセルロースナノファイバーは、TEMPO酸化セルロースナノファイバー又はリン酸エステル化セルロースナノファイバーであることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、
水解性シートの製造方法であって、
原紙シートに対して、水溶性バインダーを含有する溶液を付与するバインダー付与工程と、
原紙シートに対して、化学変性したセルロースナノファイバーを付与するCNF付与工程と、
原紙シートに対して、水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含む水性薬剤を付与する水性薬剤付与工程と、
を有することを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、
請求項3に記載の水解性シートの製造方法であって、
前記水溶性バインダー及び前記化学変性したセルロースナノファイバーの付与されたシートを乾燥させる乾燥工程を有し、
前記水性薬剤付与工程は、前記乾燥工程で乾燥させたシートに対して、前記水性薬剤を付与することを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、
請求項3又は4に記載の水解性シートの製造方法であって、
前記CNF付与工程において、原紙シートに対して、TEMPO酸化又はリン酸エステル化により化学変性したセルロースナノファイバーを付与することを特徴とする。
本発明によれば、原紙シートに水溶性バインダー及び化学変性したセルロースナノファイバーが含有されているので、化学変性したセルロースナノファイバーにより湿潤引張り強度を向上させることができ。これにより、水解性を確保しつつ、強く擦ったときの破れにくさを向上させることができるので、拭き取り性を向上させることができる。
本実施形態に係るトイレクリーナーの一例を示す平面図である。 (a)は、従来の紙の繊維配向を示す図、(b)は、本発明の繊維配向を示す図である。 トイレクリーナーのエンボス部分の拡大図及び断面図である。 エンボスの接触面積の一例を示す説明図である。 本実施形態に係るトイレクリーナーの製造方法を示すフローチャートである。 本実施形態に係るトイレクリーナーの製造設備(溶液付与設備)の模式図である。 本実施形態に係るトイレクリーナーの製造設備(加工設備)の模式図である。 抄造装置の一例を示す概略図である。 本実施形態に係るトイレクリーナーの他の一例を示す平面図である。 本実施形態に係るトイレクリーナーの他の一例を示す平面図である。 図10のA−A部分拡大図である。 (a)は、図11のB−B切断部端面図、(b)は、図11のC−C切断部端面図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態である水解性シートを詳細に説明する。但し、発明の範囲は、図示例に限定されない。
なお、水解性シートはトイレクリーナーを一例にして説明するが、水解性シートにはトイレクリーナー以外の清拭用途の水性薬剤を含浸させたウェットティシューなども含まれる。また、トイレクリーナーの製造時の紙の搬送方向をY方向(縦方向)、搬送方向に直交する方向をX方向(横方向)として説明する。
[トイレクリーナーの説明]
トイレクリーナー100は、複数枚(例えば、2枚)の原紙シートがプライ加工(積層)されたものであって、所定の水性薬剤が含浸されている。なお、原紙シートは、プライ加工されていない、1枚の原紙シートにより構成されていてもよい。
原紙シートの目付け量は、30〜150gsm程度である。なお、目付け量は、JIS P8124に基づくものである。
トイレクリーナー100の原紙シートは、トイレを掃除した後、そのまま便器の水溜りに廃棄できるように、水解性の繊維集合体から構成されている。
繊維集合体としては、水解性を有する繊維集合体であれば特に限定されないが、単層又は複数層の紙又は不織布を好適に用いることができる。原料繊維は、天然繊維でも合成繊維でも良く、これを混合することも可能である。好適な原料繊維としては、木材パルプ、非木材パルプ、レーヨン、コットン等のセルロース系繊維、ポリ乳酸等からなる生分解性繊維等を挙げることができる。また、これらの繊維を主体としてポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニールアルコール繊維、ポリエステル繊維、ポリアクリニトリル繊維、合成パルプ、ガラスウール等を併用することができる。
特に、繊維集合体として、少なくともパルプを含むものであることが好ましく、原料となるパルプは、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を適宜の割合で配合したものが適する。
より好ましくは、広葉樹晒クラフトパルプの配合割合が50重量%を超えるもの、すなわち広葉樹晒クラフトパルプに対する針葉樹晒クラフトパルプの配合比が1/1未満となるものがあげられる。針葉樹晒クラフトパルプに対する広葉樹晒クラフトパルプの配合比を多くすることで、繊維間隙間が減少し、水分蒸散が抑制されるため、乾きにくさを向上させることができる。
また、粉砕されたパルプからなるシート、粉砕パルプを水解紙で覆ったり、挟んだりしたシートにより構成されていてもよい。
また、トイレクリーナー100の原紙シートには紙力増強のための水溶性バインダーが添加されている。水溶性バインダーとしては、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、デンプンまたはその誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルプラン、ポリエチレンオキシド、ビスコース、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸のヒドロキシル化誘導体、ポリビニルピロリドン/ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体等のバインダー成分が挙げられる。
特に、水解性が良好となる点や架橋反応により湿潤強度を発現しうる点からカルボキシル基を有する水溶性バインダーを用いることが好ましい。
カルボキシル基を有する水溶性バインダーは、水中で容易にカルボキシラートを生成するアニオン性の水溶性バインダーである。その例としては多糖誘導体、合成高分子、天然物が挙げられる。
多糖誘導体としてはカルボキシメチルセルロースの塩、カルボキシエチルセルロース又はその塩、カルボキシメチル化デンブン又はその塩などが挙げられ、特にカルボキシメチルセルロース(CMC)のアルカリ金属塩が好ましい。
CMCについては、そのエーテル化度が0.6〜2.0、特に0.9〜1.8、更に好ましくは1.0〜1.5であるのが望ましい。水解性と湿潤紙力の発現が極めて良好となる。
また、CMCは、水膨潤性のものを用いることが好ましい。これは、水性薬剤中の架橋剤である特定金属イオンとの架橋により、未膨潤化のままシートを構成する繊維をつなぎとめる機能を発揮し、清掃・清拭作業に耐えうる拭き取りシートとしての強度を発現することができるからである。
本実施形態のトイレクリーナー100の場合には、水溶性バインダーとして、CMCが添加されている。
合成高分子としては、不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体の塩、不飽和カルボン酸と該不飽和カルボン酸と共重合可能な単量体との共重合体の塩などが挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸などが挙げられる。これらと共重合可能な単量体としては、これら不飽和カルボン酸のエステル、酢酸ビニル、エチレン、アクリルアミド、ビニルエーテルなどが挙げられる。特に好ましい合成高分子は、不飽和カルボン酸としてアクリル酸やメタクリル酸を用いたものであり、具体的にはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸メタクリル酸共重合体の塩、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキルとの共重合体の塩が挙げられる。天然物としては、アルギン酸ナトリウム、ザンサンガム、ジェランガム、タラガントガム、ペクチンなどが挙げられる。
また、トイレクリーナー100には、化学変性したセルロースナノファイバー(以下、化学変性CNFと称す)が添加されている。
即ち、水溶性バインダー(本実施形態の場合には、CMC)には、化学変性CNFが添加されている。
ここで、CNFとは、パルプ繊維を解繊して得られる微細なセルロース繊維をいい、一般的に繊維幅がナノサイズ(1nm以上、1000nm以下)のセルロース微細繊維を含むセルロース繊維をいうが、平均繊維幅は、100nm以下の繊維が好ましい。平均繊維幅の算出は、例えば、一定数の数平均、メジアン、モード径(最頻値)などを用いる。
CNFの製造に使用可能なパルプ繊維としては、広葉樹パルプ(LBKP)、針葉樹パルプ(NBKP)等の化学パルプ、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、更紙古紙等から製造される古紙パルプ、古紙パルプを脱墨処理した脱墨パルプ(DIP)などが挙げられる。これらは、本発明の効果を損なわない限り、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態に用いる「化学変性CNF」は、上記パルプ繊維に対して化学的処理を施したものを解繊することによって得ることができる。
化学的処理を施すことにより、解繊において、平均繊維幅を5nm以下にまで解繊できるようになる。
なお、本発明では、化学的処理済みの市販の化学変性CNFを用いてもよいし、CNFに化学的処理を施すことにより化学変性CNFを用意してもよい。
化学的処理の例としては、例えば、以下に詳述する、CNFをN−オキシル化合物と共酸化剤とを用いて酸化すること、CNFをリン酸基を有する化合物で処理すること等が挙げられるが、これらに限定されない。
(1)N−オキシル化合物と共酸化剤とを用いて酸化されたCNF
N−オキシル化合物及び共酸化剤を含む反応液中でセルロース原料(パルプ繊維)を酸化することにより酸化セルロース繊維を得ることができる。この処理により、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、表面にアルデヒド基と、カルボキシル基(−COOH)またはカルボキシレート基(−COO−)とを有する酸化セルロース繊維を得ることができる。セルロース繊維の表面にカルボキシル基またはカルボキシレート基を導入することによって、セルロース繊維同士を電気的に反発させることができ、これにより、ナノオーダーの繊維幅へと容易に解繊(ナノ分散)することができるようになり、TEMPO酸化CNFが得られる。
N−オキシル化合物は、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物であり、目的の酸化反応を促進する化合物であれば特に制限なく使用することができる。
具体的には、N−オキシル化合物としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(以下、「TEMPO」と称することがある)とその誘導体、例えば、4−ヒドロキシTEMPO、4−アセトアミドTEMPO、4−カルボキシ−TEMPO、4−ホスホノオキシ−TEMPO、4−スルホキシTEMPOなど、また、特開2009−161613号公報に記載されるアザアダマンタン型ニトロキシラジカルなどが挙げられる。
共酸化剤は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸、又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化水素や過有機酸などの過酸化物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
具体的には、共酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウムなどが挙げられ、次亜塩素酸ナトリウムは好ましい。
また、酸化反応における反応系には、上述したセルロース繊維、N−オキシル化合物、及び共酸化剤に加えて、臭化物、ヨウ化物、又はこれらの混合物等の添加物を加えてもよい。
また、酸化反応後の酸化セルロース繊維は、解繊前に、洗浄を行っても良い。洗浄により、未反応の共酸化剤や各種副生成物を除去することができる。
(2)リン酸基を有する化合物で処理されたCNF
リン酸基を有する化合物によってセルロース繊維の水酸基の一部をリン酸基に修飾することにより、セルロース繊維同士を電気的に反発させ、セルロース繊維の解繊(ナノファイバー化)を促進することができ、リン酸エステル化CNFが得られる。
リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上記化合物のうち、工業的に利用しやすい点から、リン酸二水素ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウムが好ましい。
上記化学変性CNFを得るための解繊処理としては、高圧ホモジナイザー法、マイクロフリュイダイザー法、グラインダー磨砕法、ビーズミル凍結粉砕法、超音波解繊法等の機械的手法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
このようなトイレクリーナー100は、CMC・化学変性CNFが原紙シートの厚み方向に均一に含浸された状態でも良いが、原紙シートの厚み方向の中央から表面及び裏面に向かうにつれてCMC・化学変性CNFの含有量が徐々に増加した状態となっていることが好ましい。これにより、トイレクリーナー100は、同量の水溶性バインダーを均一に含浸させた従来品に比べて便器の縁等を強く擦っても破れにくくなるからである。
また、トイレクリーナー100の縦横の繊維配向の比率(縦/横)については、特に限定するものではないが、0.8〜2.0であることが好ましく、0.8〜1.2であることがより好ましい。
紙の製造工程である抄紙工程においては抄紙機のワイヤーの上に繊維を敷き詰めて搬送方向に流すため、一般的には、紙は、抄紙機の搬送方向である縦方向に多くの繊維が並んでいる(例えば、縦:横=2.3:1等。図2(a)参照)という特性がある。そのため、横方向の繊維密度が薄く繊維が断裂しやすい。即ち、拭くときの方向によって破れやすい。そこで、本実施形態においては、図2(b)に示すように、トイレクリーナー100の縦横の繊維配向比率を0.8〜2.0、好ましくは、0.8〜1.2とすることで、どの方向から拭いても破れにくいトイレクリーナー100を提供することができる。なお、縦横の繊維配向の比率は、MD及びCD方向の湿潤強度の比により求めることができる。
また、本実施形態のトイレクリーナー100には、水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含む所定の水性薬剤が含浸されており、具体的には、架橋剤の他、水性洗浄剤、香料、防腐剤、除菌剤、有機溶剤等の補助剤を含む所定の水性薬剤が含浸されている。当該水性薬剤は、トイレクリーナー100の基材である原紙シートの重量に対して100〜500重量%含浸させるが、好ましくは150〜300重量%である。
架橋剤としては、ホウ酸、種々の金属イオン等を使用することができるが、CMCを水溶性バインダーとして用いた場合、多価金属イオンを用いることが好ましい。特に、アルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルからなる群から選択される1種又は2種以上の多価金属イオンを用いることが、繊維間が十分に結合されて使用に耐え得る湿潤強度が発現する点、及び水解性が十分になる点から好ましい。これらの金属イオンのうち、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、コバルト、ニッケルのイオンを用いることが特に好ましい。
水性洗浄剤としては、例えば、界面活性剤の他、低級又は高級(脂肪族)アルコールを使用することができる。
香料としては、例えば、水性香料の他、オレンジオイル等の油性香料の中から、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン等のパラベン類を使用することができる。除菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ポピドンヨード、エタノール、セチル酸化ベンザニウム、トリクロサン、クロルキシレノール、イソプロピルメチルフェノール等を使用することができる。有機溶剤としては、グリコール(2価)、グリセリン(3価)、ソルビトール(4価)等の多価アルコールを使用することができる。
また、上述した水性薬剤の成分の補助剤については適宜選択可能であり、必要に応じて他の機能を果たす成分を水性薬剤に含ませてもよい。
本発明によれば、原紙シートに、水溶性バインダー及び化学変性CNFを配合するとともに、水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含む水性薬剤を含浸させることで、原紙シートに水溶性バインダーを配合し、水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含む水性薬剤を含浸させる場合より、湿潤引張り強度を向上させることができる。
また、トイレクリーナー100の表面は原紙シートのままでも良いが、エンボス加工が施されていることが好ましく、トイレクリーナー100の場合、例えば、図1に示す通り、2種類のエンボスEM11及びEM12がエンボス加工により施されている。
エンボスの形状、数、面積率等は任意であるが、トイレクリーナー100の場合、エンボスEM11は、菱形格子となるように配置されており、これにより、エンボスEM11が正方格子や矩形格子に配置される場合と比較して拭きムラを軽減することができる。また、エンボスEM12は、エンボスEM11の間に配置されている。
エンボスEM11は、図3(a)に示すように、膨出部PR21が曲面の形状を有している。
また、エンボスEM12は、図3(b)に示すように、膨出部PR22が平面の形状を有している。
そして、エンボスEM12は、エンボスEM11の間に配置されているので、エンボスEM11の膨出部PR21及びEM12の膨出部PR22は近接して密着することにより、図3(c)に示すように連なったエンボスEM21として形成されることになる。
また、エンボスEM11の膨出部PR21とエンボスEM12の膨出部PR22が近接するだけであって、連なっていない場合であってもよい。
このように形成された2種類のエンボスEM11及びEM12により、清掃対象物等との接触面積を増やすことができるので、トイレクリーナー100の硬さが緩和されて、拭き取り性能が高くなる。
すなわち、トイレクリーナー100のシート全面に、膨出部PR21が曲面であるエンボスEM11と、膨出部PR22が平面であるエンボスEM12を組み合わせて形成することにより、拭取り作業時にトイレクリーナー100に力が加わった時点で各エンボスが変形して、初めて接触面積が増加することになるので、接触面積を増加させると共に、各エンボスの変形に起因して、しなやかさも向上することになる。
例えば、図4(a)に示すように、単一のエンボスEM11の場合には、拭取り作業時にトイレクリーナー100に加わる力によりエンボスEM11が変形して生じる接触面積CN31は、エンボスEM11近傍に離散的に生じる。これに対して、2種類のエンボスEM11及びEM12を組み合わせた場合には、図4(b)に示すように、拭取り作業時にトイレクリーナー100に加わる力によりエンボスEM11及びEM12が変形して生じる接触面積SN32は、図4(a)の接触面積CN31と比較して、増加することが分かる。
また、2種類のエンボスEM11及びEM12は、通常のエンボスの効果を同様に得ることができ、トイレクリーナーの風合い、吸収性及び嵩高性等を向上させることができる。さらに、連なったエンボスEM21は、通常のエンボスと同様に、エンボスを施すことによる見栄えの良さの効果も得ることができる。
また、トイレクリーナー100は、折り加工されることにより、Y方向の中央部で2つ折りに折り畳まれる。そして、折り畳まれた状態で保管用のプラスチックケースや包装フィルム内等に保管され、使用時には必要に応じて広げて使用される。なお、トイレクリーナー100の折り畳み方は、2つ折りに限ることはなく、例えば、4つ折りにしても良く8つ折りにしても良い。
[トイレクリーナーの製造方法]
次に、トイレクリーナーの製造方法について説明する。図5は、トイレクリーナーの製造方法を示すフローチャートである。図6は、トイレクリーナーの原紙シート(抄紙シート)に対してバインダー溶液を付与する溶液付与設備の模式図である。図7は、図6に示す溶液付与設備でバインダー溶液が付与された原紙シートを加工する加工設備の模式図である。
トイレクリーナーの製造方法では、図5に示すように、先ず、抄紙機(図示省略)で原紙となる紙を抄造する抄紙工程(S1)を行う。
次いで、図5及び図6に示すように、溶液付与設備において、抄造された原紙を巻取った複数(例えば、2本)の1次原反ロール1,1からそれぞれ繰り出される連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工しプライ連続シート1Bとするプライ加工工程(S2)と、プライ連続シート1Bに対してバインダー溶液を付与し連続シート1Cとする溶液付与工程(S3)と、連続シート1Cを乾燥させる乾燥工程(S4)と、乾燥させた連続水解性シート1Dをスリットし巻取るスリット・巻き取り工程(S5)とを行う。なお、1次原反ロールは2本以上であれば適宜本数を変更可能であるが、以下の説明においては、2本使用する場合の例について説明する。
次いで、図5及び図7に示すように、加工設備において、上記スリット・巻き取り工程(S5)で巻取った2次原反ロール11から繰り出される連続水解性シート1Dに対してエンボス加工を施すエンボス加工工程(S6)と、エンボス加工が施されたエンボス済シート1Eに対して仕上げ加工を施す仕上げ加工工程(S7)と、を行う。なお、各工程の詳細については、後述する。
〔抄紙工程〕
まず、本実施形態にかかる抄紙工程(S1)について説明する。本発明の抄紙工程(S1)では、例えば、公知の湿式抄紙技術により抄紙原料を抄紙して原紙シートを形成する。すなわち、抄紙原料を湿紙の状態とした後に、ドライヤーなどによりこれを乾燥して、薄葉紙、クレープ紙などの原紙シートを形成する。
なお、原紙シートには、パルプ及び凝集剤の他、湿潤紙力剤、接着剤、剥離剤等の抄紙用薬品を適宜用いてもよい。
また、本発明の実施形態では、後述する溶液付与設備の溶液付与工程でバインダー溶液が付与されるが、抄紙工程の段階でバインダー溶液を付与するようにしてもよい。
抄紙工程でもバインダー溶液を付与した場合、得られる水解性シート全体の強度を高めることができ、後工程の溶液付与工程で更にバインダー溶液を付与することにより、当該水解性シートの表面強度をより一層高めることができるようになる。
抄紙工程でバインダー溶液を付与する方法としては、例えば、抄紙原料であるパルプを含む分散液中に水溶性バインダーと該水溶性バインダーのパルプ繊維への定着剤を添加して、これを原料として湿式抄造する方法が知られている(特開平3−193996号公報)。つまり水溶性バインダーを内添する方法である。また、パルプを含む分散液からシートを湿式抄紙し、プレス脱水或いは半乾燥した後に水溶性バインダーを噴霧乾燥或いは塗工乾燥して、所定量の水溶性バインダーを含有する繊維シートを製造することも可能である。つまり水溶性バインダーを外添する方法である。この際には、プレス脱水を行うよりも熱風通過乾燥機などのプレ乾燥方式を用いた方が、低密度でより水解性の良い繊維シートを得ることができる。更に上述の湿式抄紙法ではなく、水を使わずにパルプ繊維を乾式で解繊して、ウェブを形成した後に水溶性バインダーを噴霧し、その後乾燥して繊維シートを製造することも可能である。いわゆるエアレイド製法である。
図8には、バインダーとして水溶性バインダーを用いた場合の繊維シートの製造に好ましく用いられる製造装置の一例の概略図が示されている。図8に示す製造装置(湿式抄造機)は、フォーマー14と、ワイヤーパートと、第1ドライパート17と、スプレーパートと、第2ドライパート24とを備えて構成されている。
フォーマー14は、調製装置(図示せず)から供給された完成紙料を所定の濃度に調節してワイヤーパートへ供給するものである。図示しない調製装置は、パルプ繊維等の原料を離叩解する装置と、離叩解された原料にサイズ剤、顔料、紙力増強剤、漂白剤、凝集剤等の添加剤を添加する添加装置とを備え、水解紙の特性に応じた所定濃度の原料からなる紙料を完成紙料として調製するように構成されている。また、パルプスラリーにバインダーを混合することも可能である。ワイヤーパートは、フォーマーから供給された完成紙料を抄き網に湿紙として形成するものである。第1ドライパート17は、ワイヤーパートにおいて形成された湿紙を乾燥させるものである。スプレーパートは、第1ドライパート17で乾燥された紙にバインダーを噴霧するものである。第2ドライパート24は、スプレーパートでバインダーが噴霧され湿潤状態になっている紙を乾燥させるものである。
フォーマー14から供給された完成紙料がワイヤーパートにおいて抄造され、ワイヤー15上に湿紙が形成される。湿紙は、ワイヤーパートに設置されているサクションボックス16による吸引によって水分が除去され、所定の水分率となされる。次いで湿紙は、第1ドライパート17に導入されて乾燥される。第1ドライパート17はスルーエアードライヤー(以下、TADという)から構成されている。TADは、周面が通気性を有する回転ドラム18と、該回転ドラム18をほぼ気密に覆うフード19とを備えている。TADにおいては、所定温度に加熱された空気がフード19内に供給されるようになされている。加熱された空気は回転ドラム18の外側から内部に向けて流通する。湿紙は、図8中、矢印方向に回転する回転ドラム18の周面に抱かれた状態で搬送される。TAD内を搬送されている間、湿紙にはその厚み方向へ加熱空気が貫通し、それによって湿紙は乾燥され紙となる。
第1ドライパート17で得られた紙には、スプレーパートにおいてバインダーを含む水溶液(バインダー溶液)が噴霧される。スプレーパートは第1及び第2ドライパート17,24間の位置である。両ドライパート17,24は、コンベアを介して連結されている。
コンベアは、それぞれ矢示方向に回転する上コンベアベルト20と下コンベアベルト21とを備えている。コンベア20は、第1ドライパート17のTADによって乾燥されて紙をこれら両ベルト20,21間に挟持した状態で第2ドライパート24へ搬送するように構成されている。上コンベアベルト20の下流側の折り返し端には真空ロール22が配置されている。真空ロール22は、上コンベアベルト20の裏面に紙を吸着させ、その吸着状態下に上コンベアベルト20を搬送させるようになっている。
図8に示すように、スプレーパートはスプレーノズル23を備えている。スプレーノズル23は第2ドライパート24の下方で且つ真空ロール22に対向するように配設されている。スプレーノズル23は、真空ロール22に向けてバインダーを含む噴霧液を噴霧して、紙に該噴霧液を添加(外添)するものである。
スプレーパートにおいてバインダーが供給された後、紙は第2ドライヤーパート24へ搬送される。第2ドライヤーパート24はヤンキードライヤーから構成されている。噴霧液が噴霧されて湿潤状態となっている紙は、フード26内に設置されたヤンキードライヤーの回転ドラム25の周面に抱かれた状態で搬送される。回転ドラム25に抱かれて搬送されている間に紙の乾燥が進行する。
なお、スプレーパートにおいてバインダーを供給する位置は、第1及び第2ドライパート17,24間の位置であればよく、例えば、上コンベアベルト20の上方(図8に示す第1及び第2ドライパート17,24間の矢印位置)からバインダーを噴霧するようにしてもよい。また、さらに第2ドライパート24で乾燥させた後の紙に対して上方(図8に示す第2ドライパート24の右側の矢印位置)からバインダーを噴霧するようにしてもよい。また、第1及び第2ドライパート17,24間、及び第2ドライパート24の後において、バインダーを噴霧する方向は上方からに限らず、下方からでも、上下両方からでもよい。
本実施形態では、抄紙工程において、原紙シートの縦横の繊維配向の比率(縦/横)が0.8〜2.0、好ましくは0.8〜1.2となるように調整が行われる。繊維配向の調整は、例えば、抄紙機において、抄紙原料をワイヤーパートに供給する角度を調整することで行うことができる。抄紙原料を供給する角度は、例えば、ヘッドボックスのスライス開度を調整することにより行うことができる。または、抄紙機の搬送方向(走行方向)と直交する方向に振動を与える等により繊維配向を調整することとしてもよい。
〔プライ加工工程〕
次いで、本実施形態のプライ加工工程(S2)について説明する。プライ加工工程(S2)では、図6に示すように、原反ロール1から連続的に繰り出される各連続乾燥原紙1A,1Aを、その連続方向に沿ってプライ加工しプライ連続シート1Bとする重ね合わせ部2に供給される。重ね合わせ部2は、一対のロールで構成され、各連続原紙1A,1Aをプライ加工し、プライ加工されたプライ連続シート1Bを形成する。なお、連続乾燥原紙1A,1A同士を重ね合わせる際に、連続乾燥原紙1A,1A同士がずれにくくなるように、ピンエンボス(コンタクトエンボス)で軽く留めておいてもよい。
〔溶液付与工程〕
次いで、本実施形態の溶液付与工程(S3)ついて説明する。溶液付与工程(S3)では、図6に示すように、プライ連続シート(抄紙シート)1Bの両方の外面(連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工した時に連続乾燥原紙1A,1A同士が対向しない面)に2流体方式の各スプレーノズル3,3によりバインダー溶液を噴霧して連続シート1Cを生成する。
バインダー溶液は、カルボキシルメチルセルロース(CMC)を水溶性バインダーとして含むものである。バインダー溶液中におけるカルボキシルメチルセルロースの濃度としては、0.6〜10重量%、好ましくは、0.7重量%以上、4重量%未満とする。
また、バインダー溶液は、化学変性CNFを含んでいる。
なお、バインダー溶液の噴霧方法として、プライ連続シート1Bの片方の外面に上述のバインダー溶液を噴霧するようにしても良い。また、上述の1次原反ロール1,1からそれぞれ繰り出される連続乾燥原紙1A,1Aの少なくとも一方のシートの外面(各シートが対向しない面)に対して、2流体方式のスプレーノズルより上述のバインダー溶液を噴霧し、直後に当該連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工することにより、上述の連続シート1Cと同等のシートを生成するようにしても良い。
2流体方式のスプレーノズル3は、2系統に分けられた圧縮空気と液体を混合し、噴射させる方式のスプレーノズルであり、圧縮した液体を単独で噴射させる1流体方式のスプレーノズルに比べて、液体をきめ細かく均一に噴霧することができる。
本実施形態において、スプレーノズル3のノズル径は、0.09gal/min以下とする。また、本実施形態のスプレー条件としては、バインダー溶液の濃度;4%未満、バインダー溶液の粘度;400〜1300MPa.s、吐出温度;50〜70℃、液圧;2MPa以上、エア圧;0.05〜0.2MPsとなるようにすることが好ましい。また、バインダー(CMC)の添加量が原紙(プライ連続シート1B)に対して0.7重量%以上となるようにバインダー溶液を噴霧することが好ましい。また、CNFの添加量が原紙(プライ連続シート1B)の重量に対して0.1重量%以上、2.0重量%以下となるようにバインダー溶液を噴霧することが好ましい。
このようにして、プライ連続シート1Bの外面にバインダー溶液を噴霧することで、トイレクリーナーは、厚み方向において中央(両面に塗布した場合)又はバインダー溶液の非塗布面(片面に塗布した場合)からバインダー溶液の塗布面に向かうにつれて水溶性バインダーの含有量が徐々に増加した状態となるので、水解性を確保しつつ、表面強度を向上させることができ、強く擦ってもダメージが生じにくいトイレクリーナーを製造することが可能となる。
〔乾燥工程〕
次いで、本実施形態の乾燥工程(S4)について説明する。乾燥工程(S4)では、図6に示すように、乾燥設備4において、上述の連続シート1Cのバインダー溶液中の不溶な液分を蒸発させて、有効成分、特にCMCを繊維に対して定着させる。
ここで、連続シート1Cの外面から厚み方向内側に向かうにつれて、バインダー溶液の浸み込む量が減少していくことから、当該厚み方向内側に向かうにつれて、CMCの定着量が減少することとなる。そのため、後述する仕上げ加工工程(S7)で水性薬剤が含浸された際、当該厚み方向内側に向かうにつれて、架橋反応が起こり難く、空隙を多く有することから、シート内部に当該水性薬剤を閉じ込めた状態とすることができる。これにより、得られるトイレクリーナーを乾き難くすることができる。また、連続シート1Cの外面付近でCMCの架橋反応が多く生じることとなるので、得られるトイレクリーナーの表面強度を強固なものとすることができる。
乾燥設備4としては、連続シート1Cに対して熱風を吹き付けて乾燥させるフード付きドライヤー設備が利用できる。なお、シート同士をより密着させるために、プレスロールやターンロールを設置し、乾燥工程(S4)の前に当該プレスロールや当該ターンロールに連続シート1Cを通しても良い。
また、上記乾燥設備として赤外線照射による設備を用いても良い。この場合、上記連続シート1Cの搬送方向に複数の赤外線照射部を並列し、搬送される当該連続シート1Cに対して赤外線を照射して乾燥を行なう。赤外線により水分が発熱し乾燥されるものであるため、熱風によるドライヤーと比較して、均一な乾燥が可能であり、後段のスリット・巻き取り工程においての皺の発生が防止できる。
〔スリット・巻き取り工程〕
次いで、本実施形態のスリット・巻き取り工程(S5)について説明する。スリット・巻き取り工程(S5)では、プライ加工された連続水解性シート1Dをオフラインの加工機で加工する際の原反とするために、上述の乾燥工程(S4)で乾燥されCMCの定着が図られた連続水解性シート1Dをテンションを調整しながら、スリッター5で所定の幅にスリットし、ワインダー設備6において、巻き取ることとなる。巻き取り速度は、プライ加工工程(S2)、溶液付与工程(S3)、乾燥工程(S4)を考慮して適宜定める。過度に早いとシートの破断が生じ、過度に遅いと皺が発生するのでこれに留意する。
スリット・巻き取り工程(S5)で、プライ加工された連続水解性シート1Dが圧着されることにより、連続水解性シート1Dがより一体化され、1枚相当のシートとなる。
〔エンボス加工工程〕
次いで、本実施形態のエンボス加工工程(S6)について説明する。エンボス加工工程(S6)では、図7に示すように、2次原反ロール11から繰り出される、連続水解性シート1Dに対して、エンボスロール12によって、シート全面に所定の形状をなすエンボス加工が施される。このエンボス加工は、シートの強度、嵩高性、拭き取り性等を高めるとともに、デザイン性を高めることを目的としてなされている。
〔仕上げ加工工程〕
次いで、本実施形態の仕上げ加工工程(S7)について説明する。仕上げ加工工程(S7)では、図7に示すように、仕上げ加工設備13において、エンボス済シート1Eの裁断加工、裁断された各シートの折り加工、折り加工がなされた各シートへの水性薬剤(水性洗浄剤、香料、防腐剤、除菌剤、紙力増強剤、有機溶剤等を含む)の含浸、当該水性薬剤を含浸させた各シートの包装を一連の流れで行う。
以上の各工程を経ることにより、トイレクリーナーが製造される。
次に、本発明の実施例及び比較例について、湿潤引張り強度試験を行った結果、水解性を評価した結果、及び、表面強度の結果を、表1を用いて説明する。
実施例1で使用したCNFは、TEMPO触媒処理を施した化学変性CNF(レオクリスタ(第一工業製薬社製)である。
また、比較例1〜5で使用したCNFは、NBKP100%のCNFである。またCNFの平均繊維幅(メジアン径)が49nmのCNFを使用した。このCNFは、NBKPをリファイナー処理して粗解繊した後、高圧ホモジナイザーを用いて、4回処理して解繊することにより得られたものである。バインダー溶液へのCNFの添加方法は3.0%の分散溶液としてバインダー溶液に添加する。
ここで、CNFの繊維幅(平均繊維幅)の測定方法について説明する。
まず、固形分濃度0.01〜0.1質量%のセルロースナノファイバーの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t−ブタノール20mlで3回溶媒置換する。
次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて5000倍、10000倍又は30000倍のいずれかの倍率(本実施例では、30000倍の倍率)で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径(メジアン径)を平均繊維径とする。なお、計測値の中位径に限らず、例えば、数平均径や、モード径(最頻径)を平均繊維径としてもよい。
各実施例及び比較例の条件は、下記の通りである。なお、各実施例に対応する試料は、下記条件に合致するように、水溶性バインダー塗布設備にて、秤量(ドライ状態)45gsmの原紙を2プライにした後各シートの外面に、CMC・化学変性CNF、又は、CMC・CNFが混合された水溶液(CMC塗布量は0.6g/m、1.2g/mとする)を、スプレー塗布した後、熱風乾燥機(温度180℃)を通過させ、水分率が約8%になるまで乾燥させ、所定幅にスリットしながら、原紙シートの加工用原反を作成する。サンプリングした原紙シートに、シリンジで、薬液をシートの重量の200重量%となるよう均一に含浸させ、試料とした。
[実施例1]
パルプ配合;NBKP:LBKP=40:60
秤量(ドライ状態);90g/m(2プライ)
CMC品番;CMC 1330 ダイセル社
CMC塗布量;1.2dry・g/m
CNFの種類;化学変性したCNF
CNF配合率;0.1重量%
水性薬剤成分;架橋剤(亜鉛)3.56重量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)14.5重量%、プロピレングリコール(PG)3.0重量%
水性薬剤含浸量;原紙重量の200重量%
[比較例1]
CNFの種類;化学変性していないCNF
CNF配合率;0.0重量%
他の条件は、実施例1と同じである。
[比較例2]
CNFの種類;化学変性していないCNF
他の条件は、実施例1と同じである。
[比較例3]
CNFの種類;化学変性していないCNF
CNF配合率;0.5重量%
他の条件は、実施例1と同じである。
[比較例4]
CNFの種類;化学変性していないCNF
CNF配合率;1.0重量%
他の条件は、実施例1と同じである。
[比較例5]
CNFの種類;化学変性していないCNF
CNF配合率;2.0重量%
他の条件は、実施例1と同じである。
[湿潤引張り強度試験]
300mm×300mmの原紙を用いて作成した、上記実施例1及び比較例1〜5に対応するサンプルにつき、MD方向の引張強度[cN/25mm]を測定する。引張強度を測定する際、上記サンプルは、JIS P8113に準じてダンベルカッターで幅25mm×120mmに裁断し、試験機条件を引張速度500mm/分、チャック間距離50mmとして測定を行う。なお、各湿潤引張り強度の値は、5回測定を行った引張強度の平均値である。
[水解性の評価]
実施例1及び比較例1〜5に対応するサンプルにつき、水解性を、JIS P4501(2006)4.5「ほぐれやすさ」に準じた方法に従って測定する。
評価は、「80秒以下の場合:◎」、「81〜100秒未満の場合:〇」、「100秒以上の場合:×」とした。
[表面強度の評価]
(試験方法)
原紙にエンボス加工を施した、実施例1及び比較例1〜5に対応するサンプルにつき、プライを剥がさずに幅75mm×長さ240mmにそれぞれ切り取って、幅方向の両端部領域が重なるように3つ折りにし、測定部分を学振型摩擦堅牢度試験機で擦り、目視で紙面に毛羽立ちや破れ等のダメージが確認された時点の回数を計測する。この際、線状部が測定部分となるようにサンプルを切り取って折り畳むようにする。
なお、学振型摩擦堅牢度試験機による試験条件は下記のとおりである。
・学振型摩擦堅牢度試験機:テスター産業株式会社製 品番AB301
・摩擦子:形状 20mm×R50mm
荷重 200gf(白綿布止め、アーム含む)
単位面積あたりの荷重 50gf/cm(荷重200gf/接触面積4.0cm
摩擦子の綿布止めにPPバンド(積水樹脂株式会社 品番19K(幅15mm×長さ60mm))1枚を隙間が生じたり、しわが生じたりしないように、ねじ止めで摩擦子に固定する。
・試料台:形状 R200mm
ストローク 120mm
往復速度 30cps
・サンプル:幅25mm(プライを剥がさず幅75mmを3つ折り)
×長さ240mm(試料台側)
・試験手順:(1)サンプルを試料台に弛まないように取り付ける。
(2)摩擦子を試料台に静かに降ろす。
(3)スタートSWを押して試験開始。
・判定方法:学振させてサンプルの状態を確認し、目視で紙面に毛羽立ちや破れ
等のダメージが確認された時点の回数を計測した。
上記試験では、トイレクリーナーを実際に使用する場面を想定、すなわち汚れが付着したことにより便器の縁等がザラザラした状態を想定し、表面に網目模様が施されたPPバンドを学振子として使用している。これにより、トイレクリーナーの実際の使用時を想定した環境試験が可能となり、トイレクリーナーが実際の使用時に耐え得るか否かについて信頼性の高い評価を行うことができる。
評価は、MD方向及びCD方向のいずれの方向でも平均値が50回を越えた場合は◎、40〜49径は〇、30〜39回を△、30回未満を×とした。
各試験の結果を表Iに示す。
表Iには、実施例1及び比較例1〜5についての湿潤引張り強度、水解性、表面強度の結果を示す。
Figure 2018123448
表Iに示すように、化学変性していないCNFを添加した場合(比較例1〜5)に比べて、化学変性したCNFを添加した場合(実施例1)の方が湿潤引張強度の値が格段に大きく、CNFがトイレクリーナー(水解性シート)の紙力を向上させることを確認した。
これは、化学変性CNFは幅が細かく、原紙シート繊維の中に入りやすくなっていること、そしてカルボキシル基などの官能基を含み、電荷を有する状態であるため、パルプ繊維同士を接着するためにより効果的に働くためであると考えられる。
以上のように、本実施形態によれば、水溶性バインダーであるCMCに化学変性CNFを添加し、架橋剤を含む水性薬剤を原紙シートに含浸させることによって、湿潤引張強度を向上させることができる。従って、湿潤引張強度を向上させることができるので、水解性を確保しつつ、強く擦ったときの破れにくさを向上させることができる。
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本発明の実施形態等の説明に際しては、水解性シートとして、トイレクリーナーを例示したが、これに限らず、身体を拭くための体拭き用シート、お尻拭き用シートなど、使用後にトイレなどで大量の水とともに流して廃棄するニーズのある物品に適用可能である。
また、本発明の実施形態等の説明に際しては、膨出部PR21が曲面の形状を有しているエンボスEM11と、膨出部PR22が平面の形状を有しているエンボスEM12を例示しているが、必ずしもこの形状に限定されるものではなく、いかなる形状のエンボスでも適用可能である。
例えば、本発明の実施形態等の説明に際しては、すべてのエンボスEM11及びEM12が、図1の図面手前方向に凸になっているが、図面手前方向に凸なエンボスEM11及びEM12と、図面手前方向に凹なエンボスEM11及びEM12を交互に配置するものであってもよい。
具体的には、図9に示すように、図9の図面手前方向に凸なエンボスEM11及びEM12(実線部分)と、図9の図面手前方向に凹なエンボスEM11及びEM12(破線部分)を交互に配置することにより、エンボス加工により水解性シートの表面強度を高めると共に、トイレクリーナー100両面のどちらでも拭き取り性能の高い水解性シートを提供することができる。
また、トイレクリーナーのエンボスパターンのみを変更した変形例を図10〜12に示す。
図10〜図12において、凹部e2は、凸部e1を反転した形状である。凸部e1と凹部e2は、交互に一例に配置され、この列が多列に、かつ隣り合う列における凸部e1と凹部e2が互いに半ピッチずれるように配列されたエンボスパターンを形成している。このように、凸部e1及び凹部e2が縦方向においても横方向においても交互に形成されていることで、凸部同士や凹部同士が一列に並んでいるエンボスパターンよりも汚れの拭き取り性を向上させることができる。なお、凸部e1と凹部e2の形状は、特に限定されず、円形、楕円形、多角形等が用いられる。各形状を組み合わせたものとしてもよい。
また、本発明の実施形態等の説明に際しては、スプレー方式により、CNFを添加したバインダー溶液を塗布するようにしたが、1次原反ロール1から連続的に繰り出される連続乾燥原紙1Aに対して、ドクターチャンバー方式(一つのバックアップロールに対して対になる二つの刷版ロールと、各刷版ロールと対になるアニロックスロールと、各アニロックスロールに対してバインダー溶液を付与するドクターチャンバーを備える転写設備)、または/および、3ロール方式(一つのバックアップロールに対して対になる二つの刷版ロールと、各刷版ロールと対になるアニロックスロールと、各アニロックスロールに対してバインダー溶液を付与するディップロールと、ディップロールにバインダー溶液を付与するパンを備える転写設備)によってバインダー溶液を塗布するようにしてもよい。つまり、水解性シートの表面及び裏面となる原紙の少なくとも何れか一方の面に対応して設けられた印刷機からバインダー溶液を対応する原紙に転写するようにすることとしても良い。
また、水溶性バインダーと化学変性CNFを別々のタイミングでシートに付与しても良い。即ち、化学変性CNFを水溶性バインダーに添加せず、別途、化学変性CNFを含む溶液をシートに付与しても良い。また、化学変性CNFを、水性薬剤に添加して、シートに付与することとしても良い。
100、101 トイレクリーナー
1 1次原反ロール
1A 連続乾燥原紙
1B プライ連続シート
1C 連続シート
1D 連続水解性シート
1E エンボス済シート
2 重ね合わせ部
3 スプレーノズル
4 第1乾燥設備
5 スリッター
6 ワインダー設備
11 2次原反ロール
12 エンボスロール
13 仕上げ加工設備
14 フォーマー
15 ワイヤー
16 サクションボックス
17 第1ドライパート
18 回転ドラム
19 フード
20 上コンベアベルト
21 下コンベアベルト
22 真空ロール
23 スプレーノズル
24 第2ドライパート
25 回転ドラム
26 フード
EM11 エンボス
EM12 エンボス
PR21 膨出部
PR22 膨出部
HT21 膨出部の高さ
HT22 膨出部の高さ
CN31 接触面積
SN32 接触面積
e1 凸部
e2 凹部

Claims (5)

  1. 原紙シートに対して水性薬剤を含浸させた水解性シートであって、
    前記原紙シートは、
    目付量が30〜150gsmであり、
    水溶性バインダーを含有するとともに、
    化学変性したセルロースナノファイバーを含有しており、
    前記水性薬剤は、水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含んでいることを特徴とする水解性シート。
  2. 前記化学変性したセルロースナノファイバーは、TEMPO酸化セルロースナノファイバー又はリン酸エステル化セルロースナノファイバーであることを特徴とする請求項1に記載の水解性シート。
  3. 水解性シートの製造方法であって、
    原紙シートに対して、水溶性バインダーを含有する溶液を付与するバインダー付与工程と、
    原紙シートに対して、化学変性したセルロースナノファイバーを付与するCNF付与工程と、
    原紙シートに対して、水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含む水性薬剤を付与する水性薬剤付与工程と、
    を有することを特徴とする水解性シートの製造方法。
  4. 前記水溶性バインダー及び前記化学変性したセルロースナノファイバーの付与されたシートを乾燥させる乾燥工程を有し、
    前記水性薬剤付与工程は、前記乾燥工程で乾燥させたシートに対して、前記水性薬剤を付与することを特徴とする請求項3に記載の水解性シートの製造方法。
  5. 前記CNF付与工程において、原紙シートに対して、TEMPO酸化又はリン酸エステル化により化学変性したセルロースナノファイバーを付与することを特徴とする請求項3又は4に記載の水解性シートの製造方法。
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