JP2005079565A - 熱電変換材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 環境負荷物質を含まず、材料特性の安定性、高温における熱電特性の再現性に優れた熱電変換材料及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明に係る熱電変換材料は、YbFe類縁型層状構造を有し、一般式:ABO(CO)(但し、2<y<4、2≦m<5。Aサイト元素は、IIIb族元素、並びにSc、Y及びランタノイド元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。Bサイト元素は、IIIb族元素並びにFe及びCrから選ばれる少なくとも1種類の元素。Cサイト元素は、Zn及びIIa族元素、並びに2価の3d遷移金属元素、4d遷移金属元素及び5d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。)で表される複合酸化物の多結晶体からなり、かつ酸素を含む雰囲気下において、1050℃以上1350℃以下の温度で焼成することにより得られたものからなる。
【選択図】 図5

Description

本発明は、熱電変換材料及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、熱電変換素子を構成するn型熱電変換材料として好適な熱電変換材料及びその製造方法に関する。
熱電変換とは、ゼーベック効果やペルチェ効果を利用して、電気エネルギーを冷却や加熱のための熱エネルギーに、また逆に熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換することをいう。熱電変換は、(1)エネルギー変換の際に余分な老廃物を排出しない、(2)排熱の有効利用が可能である、(3)材料が劣化するまで継続的に発電を行うことができる、(4)モータやタービンのような可動装置が不要であり、メンテナンスの必要がない、等の特徴を有していることから、エネルギーの高効率利用技術として注目されている。
熱エネルギと電気エネルギとを相互に変換できる材料、すなわち、熱電変換材料の特性を評価する指標としては、一般に、性能指数Z(=Sσ/κ、但し、S:ゼーベック係数、σ:電気伝導度、κ:熱伝導度)、又は、性能指数Zと、その値を示す絶対温度Tの積として表される無次元性能指数ZTが用いられる。ゼーベック係数は、1Kの温度差によって生じる起電力の大きさを表す。熱電変換材料は、それぞれ固有のゼーベック係数を持っており、ゼーベック係数が正であるもの(p型)と、負であるもの(n型)に大別される。
また、熱電変換材料は、通常、p型の熱電変換材料とn型の熱電変換材料とを接合した状態で使用される。このような接合対は、一般に、熱電変換素子と呼ばれている。熱電変換素子の性能指数は、p型熱電変換材料の性能指数Z、n型熱電変換材料の性能指数Z、並びに、p型及びn型熱電変換材料の形状に依存し、また、形状が最適化されている場合には、Z及び/又はZが大きくなるほど、熱電変換素子の性能指数が大きくなることが知られている。従って、性能指数の高い熱電変換素子を得るためには、性能指数Z、Zの高い熱電変換材料を用いることが重要である。
このような熱電変換材料としては、例えば、Bi−Te系、Pb−Te系、Si−Ge系、酸化物セラミックス系等の種々の材料が知られている。これらの中で、Bi−Te系及びPb−Te系の化合物半導体は、それぞれ、室温近傍及び300〜500℃の中温域において、優れた熱電特性(ZT〜0.8)を示す。しかしながら、これらの化合物半導体は、高温域での使用は困難である。また、材料中には高価な稀少元素(例えば、Te、Sb、Seなど)や、毒性の強い環境負荷物質(例えば、Te、Sb、Se、Pbなど)を含むという問題がある。
一方、Si−Ge系の化合物半導体は、1000℃付近の高温域において優れた熱電特性を示し、また、材料中に環境負荷物質を含まないという特徴がある。しかしながら、Si−Ge系の化合物半導体は、高温大気中において長時間使用するためには、材料表面を保護する必要があり、熱的耐久性が低いという問題がある。
これに対し、酸化物セラミックス系の熱電変換材料は、材料中に稀少元素や環境負荷物質を必ずしも含まない。また、高温大気中において長時間使用しても熱電特性の劣化が少なく、熱的耐久性に優れるという特徴がある。そのため、酸化物セラミックス系の熱電変換材料は、化合物半導体に代わる材料として注目されており、熱電特性の高い新材料やその製造方法について、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、Zn−In−O系酸化物であって、ZnとInとの組成比率がZnO/Inモル比で5〜19であり、かつ大気中において1550℃で2時間焼成することにより得られる熱電変換材料が開示されている。同文献には、Inサイトの一部をIn3+イオンより大きなイオン半径を持つ3価陽イオンにより置換するか、あるいはZnサイトの一部をZn2+イオンより小さなイオン半径を持つ2価陽イオンにより置換することによって、結晶構造の変化が起こり、熱電性能が向上する点が記載されている。
また、特許文献2には、YbFe類縁型層状構造を有し、一般式ABO(CO)(2<y<3、1≦m≦19)で表される化合物に酸素欠陥を導入した熱電変換材料、及びYbFe類縁型層状構造を有し、一般式ABO(CO)(2<y<3、1≦m≦19)で表される化合物のAサイト又はBサイトの少なくとも一方を、IVb族元素で置換した熱電変換材料が開示されている。同文献には、IVb族元素を含む出発原料を空気中において1400℃で焼結させた後、アルゴン雰囲気中において800℃で24時間還元処理すると、化合物中に酸素欠陥又はIVb族元素に由来するキャリアが導入され、電気抵抗率が低下する点が記載されている。
また、特許文献3には、ZnSO・3Zn(OH)・nHOからなるアスペクト比10以上の板状粒子及びIn粉末を含むスラリ(ZnO:In=5:1(モル比))をドクターブレード法によりテープ状に成形し、このテープを積層・圧着して厚さ1.6mmの成形体とし、さらに、成形体を大気雰囲気中において1550℃で2時間焼結させることにより、ab面が配向した(ZnO)・In配向焼結体が得られる点が記載されている。
また、Y.Masudaらは、Zn2+又はIn3+の一部が、それぞれ、価数の等しい他の金属イオン(なわち、Mg2+若しくはCo2+、又は、Fe3+若しくはY3+)で置換された(ZnO)In焼結体を作製し、その熱電特性の評価を行っている(非特許文献1参照)。同文献には、成形体を大気中において1550℃で2時間焼結させた場合、(ZnO)(In0.970.03)組成を有する焼結体について最大の性能指数1.3×10−4−1が得られる点が記載されている。
さらに、H.Ohtaらは、mの値の異なる種々の(ZnO)In(但し、mは、3〜11までの整数)焼結体を作製し、その熱電特性の評価を行っている(非特許文献2参照)。同文献には、ZnO/Inのモル比が3〜11である成形体を大気中において1550℃で2時間焼結させた場合、mの値が大きくなるほど、焼結体の性能指数Zが大きくなる点が記載されている。また、同文献には、性能指数が最大となるmの値の最適値は、mが9から∞の間にある点が示唆されている。
特開2000−012915号公報(段落番号「0039」〜「0045」) 特開2001−085751号公報(段落番号「0021」〜「0034」) 特開2002−016297号公報 Y.Masuda et al., J.Solid State Chem., 150, 221(2000) H.Ohta et al., J.Am.Ceram.Soc., 78, 2193(1996)の第2194頁右欄第37行〜第42行
In(ZnO)やInGaO(ZnO)に代表されるYbFe類縁型層状構造を有する複合酸化物は、相対的に大きな負のゼーベック係数Sを有しているが、電気伝導度σは、相対的に低い。そのため、従来のIn(ZnO)系の熱電変換材料の性能指数Zは、実用レベルより低く、改善が望まれていた。
これに対し、この複合酸化物に電子キャリアをドープすると、電気伝導度σが高くなり、高い性能指数Zを示すn型熱電変換材料となる。しかしながら、電子キャリアとして酸素欠陥を導入する方法は、還元雰囲気下において長時間の熱処理を行う必要があるために、生産性が低いという問題がある。また、導入される酸素欠陥の量を厳密に制御するのが困難であり、熱電特性の再現性に乏しいという問題がある。さらに、酸素欠陥が導入された複合酸化物を高温大気中において使用すると、酸素欠陥が徐々に消滅し、熱電特性が不安定になるという問題がある。
一方、特許文献1あるいは非特許文献1に記載されているように、還元性雰囲気下で焼成することなく、複合酸化物を構成する金属元素の一部を他の金属元素に置換する方法を用いた場合、その置換量を最適化すれば、性能指数Zを向上させることができる。しかしながら、従来は、いずれも、1550℃前後の相対的に高温で焼結を行っているために、材料特性が不安定になり、熱電特性の再現性も乏しいという問題がある。
本発明が解決しようとする課題は、環境負荷物質を含まず、高温大気中においても高い熱電特性を安定して示す熱電変換材料を提供することにある。また、本発明が解決しようとする他の課題は、材料特性を安定化させ、高温における熱電特性の再現性に優れた熱電変換材料を提供することにある。さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、このような優れた熱電特性を有する熱電変換材料を再現性良く、かつ高い生産性で製造することが可能な熱電変換材料の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る熱電変換材料の1番目は、YbFe類縁型層状構造を有し、
一般式:ABO(CO)
(但し、2<y<4、2≦m<5。Aサイト元素は、IIIb族元素、並びにSc、Y及びランタノイド元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。Bサイト元素は、IIIb族元素並びにFe及びCrから選ばれる少なくとも1種類の元素。Cサイト元素は、Zn及びIIa族元素、並びに2価の3d遷移金属元素、4d遷移金属元素及び5d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。)
で表される複合酸化物の多結晶体からなり、かつ酸素を含む雰囲気下において、1050℃以上1350℃以下の温度で焼成することにより得られたものからなることを要旨とする。
また、本発明に係る熱電変換材料の2番目は、YbFe類縁型層状構造を有し、
一般式:ABO(CO)
(但し、2<y<4、2≦m<5。Aサイト元素は、IIIb族元素、並びにSc、Y及びランタノイド元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。Bサイト元素は、IIIb族元素並びにFe及びCrから選ばれる少なくとも1種類の元素。Cサイト元素は、Zn及びIIa族元素、並びに2価の3d遷移金属元素、4d遷移金属元素及び5d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。)
で表され、さらに前記Aサイト元素及び/又は前記Bサイト元素の0.001at%以上20at%以下が、IIA族元素から選ばれる少なくとも1種類の元素Dによって置換された複合酸化物の多結晶体からなることを要旨とする。この場合、酸素を含む雰囲気下において、1050℃以上1350℃以下の温度で焼成するのが好ましい。
また、本発明に係る熱電変換材料の製造方法の1番目は、請求項1に記載の複合酸化物のAO層又はCO層と格子整合性を有する結晶面を発達面とする異方形状粉末と、該異方形状粉末と反応し又は反応することなく前記複合酸化物となる第2粉末とを含む原料を調製する原料調製工程と、前記異方形状粉末が配向するように前記原料を成形する成形工程と、該成形工程で得られた成形体を、酸素を含む雰囲気下において、1050℃以上1350℃以下の温度で焼成する焼結工程とを備えていることを要旨とする。
さらに、本発明に係る熱電変換材料の製造方法の2番目は、請求項2に記載の複合酸化物のAO層又はCO層と格子整合性を有する結晶面を発達面とする異方形状粉末と、該異方形状粉末と反応し又は反応することなく前記複合酸化物となる第2粉末とを含む原料を調製する原料調製工程と、前記異方形状粉末が配向するように前記原料を成形する成形工程と、該成形工程で得られた成形体を焼成する焼結工程とを備えていることを要旨とする。この場合、前記焼結工程は、前記成形体を、酸素を含む雰囲気下において、1050℃以上1350℃以下の温度で焼成するのが好ましい。
一般式ABO(CO)で表される複合酸化物において、その焼成を従来の方法に比べて低温で行い、さらに必要に応じて添加元素の種類及び量を最適化すると、その性能指数は、mの値が2以上5未満の範囲内において極大値をとる。また、その熱電特性は、相対的に高温で焼成した場合に比べて安定化し、高温における再現性も向上する。また、Aサイト元素及び/又はBサイト元素の一部をイオン結合性の強いIIa族元素(元素D)で置換すると、キャリア濃度が最適値に近づくと同時に、フォノン散乱が促進されるために低熱伝導度化する。さらに、複合酸化物のab面を一方向に配向させると、配向方向の電気伝導度及び熱電特性が向上する。
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の第1の実施の形態に係る熱電変換材料は、YbFe類縁型層状構造を有し、次の(1)式に示す一般式で表される複合酸化物を基本組成とする。
ABO(CO) ・・・(1)
(但し、2<y<4、2≦m<5。
Aサイト元素は、IIIb族元素、並びにSc、Y及びランタノイド元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。
Bサイト元素は、IIIb族元素並びにFe及びCrから選ばれる少なくとも1種類の元素。
Cサイト元素は、Zn及びIIa族元素、並びに2価の3d遷移金属元素、4d遷移金属元素及び5d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。)
YbFeは、YbO層とFe層とがc軸方向に所定の周期で積層された層状構造を備えている。(1)式で表される複合酸化物は、YbFeのYbO層がAO層に置き換わり、かつFe層がBCm+1層に置き換わったものと考えられている。
化1の式において、「y」は、複合酸化物に含まれる酸素量を示す。酸素量yは、理想的には「3」であるが、製造条件、使用条件等に応じて、複合酸化物中に若干の過剰酸素又は酸素欠損が導入される場合がある。酸素量yに幅があるのは、本発明に係る熱電変換材料には、このような不可避的に導入される過剰酸素又は酸素欠損が含まれていても良いことを示す。但し、安定性及び高温における再現性に優れた熱電変換材料を得るためには、過剰酸素及び酸素欠損は、少ない方が好ましい。
「m」は、BCm+1層に含まれるCO層の層数であり、CO層の層数mが大きくなるほど、BCm+1層が厚くなることを意味する。本発明において、層数mは、2以上5未満が好ましい。層数mが2未満である場合、及び層数mが5以上である場合、いずれも性能指数Zが低下するので好ましくない。なお、層数mは、非整数も取り得る。層数mが非整数である場合、複合酸化物は、層数mが整数である複合酸化物を含む混相となる。
Aサイト元素は、3価の金属元素の内、IIIb族元素(B、Al、Ga、In、Tl)、並びにSc、Y、及びランタノイド元素(57La〜71Lu)から選ばれる少なくとも1種類の元素からなる。また、Bサイト元素は、3価の金属元素の内、IIIb族元素、並びに、Fe及びCrから選ばれる少なくとも1種類の元素からなる。さらに、Cサイト元素は、Zn、及びIIa族元素(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、並びに、3d遷移金属元素(21Sc〜29Cu)、4d遷移金属元素(39Y〜47Ag)、及び5d遷移金属元素(72Hf〜79Au)の内の2価の価数を取るものから選ばれる少なくとも1種類の元素からなる。
Aサイト元素、Bサイト元素及びCサイト元素は、これらの内のいずれかであれば良く、各元素の組み合わせ、比率等は、特に限定されるものではない。特に、Cサイト元素としてZnを含み、並びに/又は、Aサイト元素及び/若しくはBサイト元素としてInを含む複合酸化物は、優れた熱電特性を示す熱電変換材料となる。Cサイトに占めるZnの割合は、具体的には、10at%以上が好ましく、さらに好ましくは、20at%以上である。また、Aサイト及びBサイトに占めるInの割合は、具体的には、10at%以上が好ましく、さらに好ましくは、20at%以上である。
図1に、(1)式で表される複合酸化物の一種であるInGaZnOの結晶構造を示す。InGaZnOは、InO層と、GaZnO層とがc軸方向に所定の周期で積層された層状構造を備えている。これらの内、InO層は、正八面体の中心に1個のIn原子があり、かつ、その頂点に合計6個のO原子があるInO八面体が、稜を共有する形で二次元的に連結したものからなる。一方、GaZnO層は、2重三角錐(bipyramid)の中心にGa原子又はZn原子があり、かつ、その頂点に合計5個のO原子があるMO2重三角錐が、頂点を共有する形で二次元的に連結したものからなる。
本実施の形態に係る熱電変換材料は、(1)式で表される複合酸化物からなる多結晶体であって、酸素を含む雰囲気下において、1050℃以上1350℃以下の温度で焼成することにより得られたものからなる。酸素を含む雰囲気とは、大気雰囲気若しくは酸素雰囲気、又はその中間の酸素濃度を有する雰囲気等の酸化雰囲気をいう。還元雰囲気下で焼成を行うと、材料の特性が不安定となり、熱電特性の再現性にも劣るので好ましくない。また、焼成温度が1200℃未満になると、常圧下では緻密な材料を得ることが困難になってくるが、ホットプレス等の加圧下では、1050℃以上でも緻密化する。一方、焼成温度が1350℃を越えると、材料特性が不安定化し、高温における熱電特性の再現性が低下する。
本実施の形態に係る熱電変換材料は、(1)式で表される複合酸化物を構成するAサイト元素及び/若しくはBサイト元素の一部が4価の金属元素によりさらに置換され、並びに/又は、Cサイト元素が3価の金属元素によりさらに置換されているものでも良い。
3価の金属元素からなるAサイト元素又はBサイト元素を置換する4価の金属元素としては、具体的には、IVa属元素(Ti、Zr、Hf)、IVb族元素(C、Si、Ge、Sn、Pb)等が好適な一例として挙げられる。この場合、Aサイト元素及び/又はBサイト元素は、これらの4価の金属元素の内、いずれか1種で置換されていても良く、あるいは、2種以上で置換されていても良い。また、Aサイト元素又はBサイト元素のいずれか一方が4価の金属元素により置換されていても良く、あるいは、双方が置換されていても良い。さらに、Aサイト元素及びBサイト元素の双方を置換する場合において、Aサイト元素を置換する4価の金属元素とBサイト元素を置換する4価の金属元素とは、同一元素であっても良く、あるいは、異なる元素であっても良い。
4価の金属元素によりAサイト元素を置換する場合、その置換量は、Aサイトの20at%以下が好ましい。同様に、4価の金属元素によりBサイト元素を置換する場合、その置換量は、Bサイトの20at%以下が好ましい。4価の金属元素によるAサイト元素及び/又はBサイト元素の置換量が20at%を越えると、散乱によってキャリア移動度μが低下し、電気伝導度σが低下するので好ましくない。
一方、4価の金属元素によるAサイト元素及び/又はBサイト元素の置換量が0.001at%未満になると、キャリア濃度に与える影響が小さくなり、大きな効果は得られない。4価の金属元素によるAサイト元素の置換量は、さらに好ましくは、0.1at%以上10at%以下である。また、4価の金属元素によるBサイト元素の置換量は、さらに好ましくは、0.1at%以上10at%以下である。
2価の金属元素からなるCサイト元素を置換する3価の金属元素としては、具体的には、IIIa属元素(Sc、Y、ランタノイド元素(57La〜71Lu)、アクチノイド元素(89Ac〜103Lr))及びIIIb属元素(B、Al、Ga、In、Tl)等が好適な一例として挙げられる。この場合、Cサイト元素は、これらの3価の金属元素の内、いずれか1種で置換されていても良く、あるいは、2種以上で置換されていても良い。
3価の金属元素によりCサイト元素を置換する場合、その置換量は、Cサイトの20at%以下が好ましい。3価の金属元素によるCサイトの置換量が20at%を越えると、散乱によってキャリア移動度が低下し、電気伝導度σが低下するので好ましくない。一方、置換量が0.001at%未満になると、キャリア濃度に与える影響が小さくなり、大きな効果は得られない。3価の金属元素によるCサイト元素の置換量は、さらに好ましくは、0.1at%以上10at%以下である。
さらに、4価の金属元素によりAサイト元素及び/又はBサイト元素を置換すると同時に、3価の金属元素によりCサイト元素を置換しても良い。この場合、各元素の置換量は、それぞれ、上述した範囲内にあればよい。
Aサイト元素、Bサイト元素及び/又はCサイト元素を、それぞれ上述した置換元素で置換すると、電子キャリアが導入され、複合酸化物の電気伝導度σが向上する。特に、Cサイト元素を3価の金属元素で置換すると、キャリア移動度を低下させることなくキャリア濃度を高めることができるので、高い電気伝導度σが得られる。
また、本実施の形態に係る熱電変換材料において、多結晶体を構成する各結晶粒は、無配向であっても良く、あるいは、ab面が配向していても良い。但し、高い性能指数Zを得るためには、ab面は、一方向に配向していることが望ましい。
本発明において、「ab面」とは、AO層と平行な面(電気伝導度σの高い面)をいう。また、「ab面が配向する」とは、各結晶粒のab面が互いに平行に配列すること(以下、これを「面配向」という。)、及び各結晶粒のab面が多結晶体を貫通する1つの軸に対して平行に配列すること(以下、これを「軸配向」という。)の双方を意味する。高い熱電特性を備えた熱電変換材料を得るためには、各結晶粒のab面は、面配向していることが望ましい。
ab面の面配向の程度は、次の数1の式に示すロットゲーリング(Lotgering)法による平均配向度Q(HKL)により表すことができる。
Figure 2005079565
なお、数1の式において、ΣI(hkl)は、配向焼結体について測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和であり、ΣI(hkl)は、配向焼結体と同一組成を有する無配向焼結体について測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和である。また、Σ'I(HKL)は、配向焼結体について測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総和であり、Σ'I(HKL)は、配向焼結体と同一組成を有する無配向焼結体について測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総和である。
また、本発明において、平均配向度Q(HKL)の算出には、X線源としてCu−Kα線を用いてX線回折を行ったときに得られる回折ピークであって、2θ=5°〜60°の範囲にあるものを用いた。
従って、多結晶体を構成する各結晶粒が無配向である場合には、平均配向度Q(HKL)は0%となる。また、多結晶体を構成するすべての結晶粒の(HKL)面が測定面に対して平行に配向している場合には、平均配向度Q(HKL)は100%となる。
本実施の形態に係る熱電変換材料において、高い性能指数を得るためには、ab面の配向度は高いほど良い。ab面の配向度は、具体的には、50%以上が好ましく、さらに好ましくは、80%以上である。
なお、ab面を軸配向させる場合には、その配向の程度は、数1の式では定義できない。しかしながら、配向軸に垂直な面に対してX線回折を行った場合の(HKL)回折に関するLotgering法による平均配向度(以下、これを「軸配向度」という。)を用いて、軸配向の程度を表すことができる。ab面が軸配向している多結晶体の場合、軸配向度は負の値となる。また、ab面がほぼ完全に軸配向している多結晶体の軸配向度は、ab面がほぼ完全に面配向している多結晶体について測定された軸配向度と同程度になる。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る熱電変換材料について説明する。本実施の形態に係る熱電変換材料は、YbFe類縁型層状構造を有し、(1)式に示す一般式で表される複合酸化物を基本組成とする点は、上述した第1の実施の形態と同様であるが、Aサイト元素及び/又はBサイト元素が、さらにIIa族元素から選ばれる少なくとも1種類の元素Dにより置換されている点が異なっている。
Aサイト元素及び/又はBサイト元素をさらに元素Dで置換すると、キャリア濃度nが最適化され、性能指数Zが向上する。また、IIa族元素は、イオン結合性が強いので、複合酸化物を低熱伝導度化することができるという利点がある。この場合、元素Dの種類は、特に限定されるものではないが、中でもCaは、他のIIa族元素に比べて、複合酸化物の高出力因子化及び低熱伝導度化への寄与が大きいので、元素Dとして特に好適である。また、焼結体を作製する場合、Caが焼結助剤として機能し、高い焼結体密度が得られるという利点がある。
元素DによりAサイト元素を置換する場合、その置換量は、0.001at%以上20at%以下が好ましい。同様に、元素DによりBサイト元素を置換する場合、その置換量は、0.001at%以上20at%以下が好ましい。元素DによるAサイト元素及び/又はBサイト元素の置換量が0.001at%未満であると、複合酸化物のキャリア濃度nあるいは低熱伝導化に対する寄与が小さくなる。一方、置換量が20at%を越えると、性能指数Zが低下する。元素DによるAサイト元素及び/又はBサイト元素の置換量は、さらに好ましくは、1.0at%以上4.0at%以下である。
本実施の形態に係る熱電変換材料において、その焼成温度は、特に限定されるものではなく、相対的に高温で焼成されたものであっても良い。しかしながら、材料の特性を安定化し、熱電特性の再現性を向上させるためには、酸素を含む雰囲気下において、1050℃以上1350℃以下で焼成するのが好ましい。なお、焼成温度、焼成雰囲気等に関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
また、本実施の形態に係る熱電変換材料は、Aサイト元素及び/又はBサイト元素の一部が元素Dにより置換されていることに加えて、Aサイト元素及び/若しくはBサイト元素の一部が4価の金属元素により置換され、並びに/又は、Cサイト元素の一部が3価の金属元素により置換されていても良い。この場合、元素Dと4価の金属元素及び/又は3価の金属元素の種類、置換量等の組み合わせは、性能指数Zが最大となるように選択するのが好ましい。なお、4価の金属元素及び3価の金属元素の種類、置換量等に関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
さらに、本実施の形態に係る熱電変換材料において、多結晶体を構成する各結晶粒は、無配向であっても良く、あるいは、ab面が配向しているものであっても良い。ab面の配向の定義、好適な配向度等に関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
次に、本発明に係る熱電変換材料の作用について説明する。図2に、一定の条件下で計算された各種熱電パラメータとキャリア濃度nとの関係を示す(西田 勲夫、上村 欣一著、「熱電半導体とその応用」、日刊工業新聞社、p149)。図2に示すように、一般に、ゼーベック係数S、電気伝導度σ、及び熱伝導度κは、いずれもキャリア濃度nの関数であり、性能指数Zが極大値を示す最適なキャリア濃度nが存在することが知られている。また、(1)式に示す複合酸化物において、電気伝導度σ及びゼーベック係数Sは、いずれも層数mにも依存することが知られている。
上述したように、(1)式に示す複合酸化物を相対的に高温で焼成するか、あるいは、還元雰囲気下で熱処理すると電気伝導度σが向上するが、これは、焼成中に酸素欠損又は過剰酸素(以下、これらを総称して「酸素欠陥」という。)が導入され、キャリア濃度nが増大したためと考えられる。しかしながら、従来の方法では、非特許文献2に記載されるように、性能指数Zが極大を示す(すなわち、キャリア濃度nが最適となる)層数mは、9以上の領域にあると考えられていた。しかも、焼成中に導入される酸素欠陥の量を厳密に制御するのは難しく、材料特性が不安定となりやすい。さらに、このような複合酸化物を高温で使用すると、使用中に酸素欠陥の量(すなわち、キャリア濃度n)が変動し、熱電特性の再現性に劣る。
これに対し、(1)式に示す複合酸化物を従来に比べて低温で焼成すると、層数mが2以上5未満の領域で性能指数Zが極大値を示す。これは、従来の方法では、そのプロセス上、キャリアが相対的に過剰となるのに対し、低温で焼成した場合には、キャリア濃度nが相対的に少なくなり、性能指数Zが極大値を示す層数mが変化したためと考えられる。また、低温で焼成すると、材料特性が安定化し、高温における熱電特性の再現性も向上する。これは、低温で焼成することによって酸素欠陥の導入量が相対的に少なくなり、製造時あるいは使用時における酸素欠陥量の変動(すなわち、キャリア濃度nの変動)が抑制されるため考えられる。
さらに、相対的に低温で焼成することに代えて又はこれに加えて、Aサイト元素及び/又はBサイト元素の一部を元素Dで置換すると、高い性能指数Zが得られる。その理由の詳細は明らかではないが、プロセス上導入されやすい過剰のキャリアが元素Dをドープすることによって中和され、キャリア濃度nが最適値に近づくためと考えられる。また、Aサイト元素及び/又はBサイト元素の一部をイオン結合性の強いIIa族元素で置換することによってフォノン散乱が大きくなり、低熱伝導度化するためと考えられる。
また、(1)式で表される複合酸化物において、3価のAサイト元素及び/又はBサイト元素の一部を4価の金属元素で置換するか、あるいは、2価のCサイト元素の一部を3価の金属元素で置換すると、キャリア濃度nは増加する。一方、Aサイト元素及び/又はBサイト元素の一部を2価の元素Dで置換すると、キャリア濃度nは低下する。従って、相対的に低温で焼成することに代えて又はこれに加えて、これらのドーパントの種類及び量を最適化すると、キャリア濃度nが最適化され、性能指数Zを向上させることができる。しかも、このようにして得られた複合酸化物は、毒性が少なく、構成元素の存在量が高く、かつ高温でも安定に作動するため、環境に調和した実用性の高い熱電変換材料となる。
また、YbFe類縁型層状構造を有する熱電変換材料として、これまでにIn(ZnO)とInGa(ZnO)が報告されている。これらの複合酸化物において、いずれも電気伝導は、主にInの5s軌道が担っていると考えられている。また、これらの複合酸化物に適量の電子キャリアをドープすると、電気伝導度σが高くなり、高い熱電特性を示す。
しかしながら、これらの複合酸化物に対し、酸素欠陥を導入したり、あるいは、In3+を4価の陽イオンで置換ドープする方法を用いて電子キャリアを導入する場合、キャリア濃度nが大きくなるほど、伝導面(InO層と平行な面)におけるキャリアの散乱が増加し、キャリア移動度μが低下する。その結果、到達可能な電気伝導度σ(すなわち、性能指数Z)には、限界がある。この点は、本発明に係る熱電変換材料も同様である。
これに対し、伝導層と考えられるAO層に含まれる3価のAサイト元素(例えば、In)を4価の金属元素で置換することに加えて又はこれに代えて、BCm+1層に含まれるBサイト元素を4価の金属元素で置換するか、あるいは2価のCサイト元素を3価の金属元素で置換すると、伝導面(AO層と平行な面)におけるキャリアの散乱を増加させることなく、キャリア濃度nを増加させることができる。特に、Cサイト元素を3価の金属元素で置換した場合には、高いキャリア移動度μが得られ、これに応じて性能指数Zも向上する。
さらに、熱電変換材料の性能指数Zは、「物質因子β」と呼ばれる定数と相関があり、物質因子βが大きくなるほど、到達可能な性能指数の最大値Zmaxが大きくなることが知られている。また、物質因子βは、キャリアの有効質量m、キャリア移動度μ及び格子の熱伝導度κphと相関があり、キャリアの有効質量mが大きくなるほど、キャリア移動度μが大きくなるほど、及び/又は格子の熱伝導度κphが小さくなるほど、大きくなることが知られている。
一方、(1)式で表される複合酸化物及びこれにドーパントを加えた複合酸化物は、電気伝導を担う伝導面がab面に沿って配列しているため、電気伝導に異方性がある。特に、CO層の層数mを増加させていくと、電気伝導の2次元性が強くなり、キャリアの有効質量mを増加させることができる。しかしながら、CO層の層数mが増加すると、同時に伝導層の厚さも相対的に薄くなる。そのため、この種の複合酸化物からなる多結晶体において、各結晶粒が無配向状態である場合には、CO層の層数mが増加するほど、伝導面が不連続となるために、キャリア移動度μが低下する傾向がある。
これに対し、各結晶粒のab面を配向させると、伝導面が連続となり、ab面内方向のキャリア移動度μが増加する。特に、ab面を面配向させた場合には、高いキャリア移動度μが得られる。また、これと同時に、CO層の層数mを増加させると、キャリアの有効質量mも増加する。そのため、層数mを最適化することによって、高い性能指数Zを示す熱電変換材料が得られる。
次に、本発明に係る熱電変換材料の内、ab面が配向した配向焼結体の製造に用いられる異方形状粉末について説明する。(1)式で表される複合酸化物のような複雑な組成を有するセラミックスは、通常、成分元素を含む単純化合物を化学量論比になるように混合し、この混合物を成形・仮焼した後に解砕し、次いで解砕粉を再成形・焼結する方法によって製造される。しかしながら、このような方法では、各結晶粒の特定の結晶面が特定の方向に配向した配向焼結体を得るのは極めて困難である。
後述する製造方法においては、この問題を解決するために、特定の条件を満たす針状、板状等の異方形状粉末を成形体中に配向させ、この異方形状粉末をテンプレート又は反応性テンプレートとして用いて複合酸化物の合成及びその焼結を行わせ、これによって多結晶体を構成する各結晶粒のab面を一方向に配向させた点に特徴がある。本発明において、異方形状粉末には、以下の条件を満たすものが用いられる。
第1に、異方形状粉末には、成形時に一定の方向に配向させることが容易な形状を有しているものが用いられる。そのためには、異方形状粉末の平均アスペクト比(=異方形状粉末の最大寸法/最小寸法の平均値)は、3以上であることが望ましい。平均アスペクト比が3未満であると、成形時に異方形状粉末を一方向に配向させるのが困難となる。異方形状粉末の平均アスペクト比は、さらに好ましくは5以上である。
一般に、異方形状粉末の平均アスペクト比が大きくなるほど、異方形状粉末の配向が容易化される傾向がある。但し、平均アスペクト比が過大になると、後述する原料調製工程において原料の均一な混合が妨げられる場合がある。従って、異方形状粉末の平均アスペクト比は、100以下が好ましく、さらに好ましくは20以下である。
また、異方形状粉末の平均粒径(=異方形状粉末の最大寸法の平均値)は、0.05μm以上20μm以下が好ましい。異方形状粉末の平均粒径が0.05μm未満であると、成形時に作用する剪断応力によって異方形状粉末を一定の方向に配向させるのが困難になる。一方、異方形状粉末の平均粒径が20μmを超えると、焼結性が低下する。異方形状粉末の平均粒径は、さらに好ましくは、0.1μm以上10μm以下である。
第2に、異方形状粉末には、その発達面(最も広い面積を占める面)が(1)式に示す複合酸化物のAO層又はCO層と格子整合性を有する結晶面からなるものが用いられる。所定の形状を有する異方形状粉末であっても、その発達面が複合酸化物のAO層又はCO層と格子整合性を有していない場合には、本発明に係る熱電変換材料を製造するためのテンプレートとして機能しない場合があるので好ましくない。
格子整合性の良否は、異方形状粉末の発達面の格子寸法(例えば、陽イオンが作る三角格子における陽イオン間距離)と複合酸化物のAO層又はCO層の格子寸法(例えば、陽イオンが作る三角格子における陽イオン間距離)の差の絶対値を異方形状粉末の発達面の格子寸法で割った値(以下、この値を「格子整合率」という。)で表すことができる。この格子整合率は、格子をとる方向によって若干異なる場合がある。一般に、平均格子整合率(各方向について算出された格子整合率の平均値)が小さくなるほど、その異方形状粉末は、良好なテンプレートとして機能することを示す。高配向度の熱電変換材料を製造するためには、異方形状粉末の平均格子整合率は、20%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
第3に、異方形状粉末は、必ずしも作製しようとする複合酸化物と同一組成を有するものである必要はなく、後述する第2粉末と反応して、目的とする組成を有する複合酸化物を生成するもの(以下、これを「複合酸化物の前駆体」という。)であっても良い。従って、異方形状粉末は、作製しようとする複合酸化物に含まれる陽イオン元素の内のいずれか1種以上の元素を含む化合物あるいは固溶体の中から選ばれることになる。
以上のような条件を満たす異方形状粉末であれば、いずれも本発明に係る熱電変換材料を製造するためのテンプレート又は反応性テンプレートとして機能する。このような条件を満たす材料としては、具体的には、
(a) (1)式で表される複合酸化物又はこれに種々の元素をドーピングしたものであって、作製しようとする熱電変換材料と同一又は異なる組成を有するもの、
(b) AO層と同様な構造であって、Aサイト元素を含む酸化物又は水酸化物、
(c) CO層と同様な構造であって、Cサイト元素を含む酸化物又は水酸化物、
等が好適である。これらは、いずれも、AO層又はCO層と格子整合性を有する結晶面を発達面とする板状粉末を比較的容易に合成することができる。
例えば、(ZnO)In(m=1〜19)からなり、かつab面を発達面とする板状粉末は、当然にAO層又はCO層と格子整合性を有しているので、本発明に係る熱電変換材料を製造するための反応性テンプレートとして機能する。このような板状粉末は、その構成元素を含む酸化物等をフラックスと共に加熱するフラックス法、その構成元素を含む酸化物等をアルカリ水溶液等と共にオートクレーブ中で加熱する水熱合成法、溶液からの沈殿法等を用いて合成することができる。また、この時、合成条件を適宜制御すれば、板状粉末の形状制御も比較的容易に行うことができる。(1)式で表される複合酸化物であって、(ZnO)In以外の組成を有し、かつ、ab面を発達面とする板状粉末もまた、これらと同様の方法により製造することができる。
また、Aサイト元素を含む酸化物又は水酸化物の板状粉末としては、例えば、水熱法で作製した六方晶InあるいはIn(OH)の板状粉末等が挙げられる。さらに、Cサイト元素を含む酸化物又は水酸化物の板状粉末としては、例えば、ZnOの板状粉末、塩基性硫酸亜鉛の板状粉末等が挙げられる。
次に、本発明の一実施の形態に係る熱電変換材料の製造方法について説明する。本実施の形態に係る製造方法は、原料調製工程と、成形工程と、焼結工程とを備えている。
初めに、原料調製工程について説明する。原料調製工程は、(1)式で表される複合酸化物又はこれに種々の元素をドーピングした複合酸化物(以下、これらを単に「複合酸化物」という。)を生成可能な組成を有し、かつ複合酸化物を構成する陽イオン元素の少なくとも1種類を含む、少なくとも1種類の粉末を含む原料を調製する工程である。
例えば、無配向焼結体を製造する場合、出発原料として、作製しようとする複合酸化物と同一組成及び同一結晶構造を有する1種類の微粉末を用いても良い。あるいは、このような複合酸化物の微粉末に対し、さらに、所定の陽イオン元素を含む単純化合物からなる1種又は2種以上の微粉末を化学量論組成となるように配合し、これを出発原料として用いても良い。
また、相対的に少数の陽イオン元素を含む単純化合物のみを化学量論組成となるように秤量し、これを出発原料として用いても良い。あるいは、化学量論組成に配合された単純化合物の仮焼及び粉砕を所定回数繰り返し、これを出発原料として用いても良い。
この場合、複合酸化物以外の原料の形態は、特に限定されるものではなく、焼成によって陽イオン元素を含む酸化物を形成可能なものであれば良い。具体的には、水酸化物、酸化物、塩類(例えば、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩など)、アルコキシド等を用いることができる。また、各微粉末の平均粒径は、10μm以下が好ましく、さらに好ましくは、5μm以下である。各微粉末の平均粒径は、成形性や取扱性が低下しない限りにおいて、小さい程良い。
一方、配向焼結体を作製する場合には、出発原料として、少なくとも複合酸化物のAO層又はCO層と格子整合性を有する結晶面(以下、これを「結晶面X」という。)を備えた粉末(以下、これを「第1粉末」という。)を用いる。第1粉末は、その発達面が結晶面Xからなる異方形状粉末が好ましく、特に、その発達面が結晶面Xからなる板状粉末が好ましい。また、第1粉末は、作製しようとする複合酸化物と同一組成を有するものであっても良く、あるいは、複合酸化物の前駆体であっても良い。さらに、第1粉末は、1種類の化合物からなるものであっても良く、あるいは、2種以上の化合物の混合物であっても良い。
第1粉末が、作製しようとする複合酸化物と同一組成を有するものである場合、第1粉末のみを出発原料として用いても良く、あるいは、これと第2粉末とを組み合わせて用いても良い。また、第1粉末が作製しようとする複合酸化物の前駆体である場合、第1粉末と、第2粉末とを所定の比率で混合する。
「第2粉末」とは、第1粉末と反応し又は反応することなく、目的とする組成を有する複合酸化物となる化合物であって、作製しようとする複合酸化物に含まれる少なくとも1種類の陽イオン元素を含むものをいう。第2粉末の組成及び配合比率は、合成しようとする熱電変換材料の組成、及び、テンプレート又は反応性テンプレートとして使用する第1粉末の組成に応じて定まる。また、第2粉末の形態は、特に限定されるものではなく、焼成によって陽イオン元素を含む酸化物を形成可能なものであれば良い。具体的には、第2粉末として、水酸化物、酸化物、塩類(例えば、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩など)、アルコキシド等を用いることができる。
例えば、CaがドープされたIn(ZnO)(2≦m<5)配向焼結体を作製する場合において、第1粉末としてZnSO・Zn(OH)板状粉末を用いるときには、第2粉末として、In粉末、及びCaCO粉末を用い、これらを化学量論組成となるように配合すればよい。他の組成を有する複合酸化物を作製する場合も同様である。
また、第1粉末が複合酸化物の前駆体である場合において、第2粉末として、第1粉末と反応して目的とする複合酸化物となるものに加えて、さらに、作製しようとする複合酸化物と同一組成を有する複合酸化物からなる微粉(以下、これを「第3粉末」という。)を添加しても良い。原料中に第3粉末を添加すると、焼結体密度が向上するという効果がある。
第2粉末及び第3粉末が固体である場合、又は固体状態のまま混合を行う場合、第2粉末及び第3粉末の平均粒径は、それぞれ、10μm以下が好ましい。平均粒径が10μmを超えると、反応が不均一となったり、焼結性が低下するので好ましくない。第2粉末及び第3粉末の平均粒径は、さらに好ましくは5μm以下である。第2粉末及び第3粉末の平均粒径は、成形性や取扱性が低下しない限りにおいて、小さいほど良い。
また、第2粉末及び/又は第3粉末の配合比率が過大になると、必然的に原料全体に占める第1粉末の配合比率が小さくなり、ab面の配向度が低下するおそれがある。従って、第2粉末及び/又は第3粉末の配合比率は、要求されるab面の配向度及び焼結体密度が得られるように、最適な値を選択するのが好ましい。原料全体に占める第1粉末の割合は、具体的には、0.1重量%以上80重量%以下が好ましく、さらに好ましくは、1重量%以上40重量%以下である。
なお、出発原料として2種以上の原料を用いる場合、原料調製工程において、これらを混合する。この場合、その混合は、乾式で行っても良く、あるいは、水、アルコール等の適当な分散媒を加えて湿式で行っても良い。さらに、この時、必要に応じてバインダ及び/又は可塑剤を加えても良い。
次に、成形工程について説明する。成形工程は、原料調製工程で得られた原料を所定の形状に成形する工程である。無配向焼結体を作製する場合、原料の成形方法は、特に限定されるものではなく、種々の方法を用いて、所定の形状に成形すれば良い。
一方、配向焼結体を作製する場合には、結晶面Xが一方向に配向するように原料を成形する。結晶面Xを面配向させる成形方法としては、具体的には、ドクターブレード法、プレス成形法、圧延法、押出法(シート状)等が好適である。一方、結晶面Xを軸配向させる方法としては、具体的には、押出成形法(非シート状)が好適である。
また、結晶面Xを成形体中に面配向させる場合において、結晶面Xの配向度を高めるためには、ドクターブレード(テープキャスト)法、押出法、プレス成形等を用いて成形体を作製し、次いで得られた成形体を圧延(ロールプレス)するのが好ましい。あるいは、シート状の成形体の積層圧着及び圧延を複数回繰り返しても良い。結晶面Xの配向度の高い配向焼結体を得るためには、成形体中の結晶面Xの配向度は、高い程良い。
さらに、成形方法として磁場中成形法を用いても良い。結晶面Xを発達面とする異方形状粉末を含む原料に対して強力な磁場を作用させながら成形する場合において、磁場の組み合わせを最適化すると、成形体中に結晶面Xを高い配向度で配向させることができる。
次に、焼結工程について説明する。焼結工程は、成形工程で得られた成形体を所定の条件下で焼成する工程である。所定の組成を有する原料を含む成形体を所定の温度に加熱すると、原料組成に応じて、目的とする組成を有する複合酸化物が成長及び/又は生成すると同時に、複合酸化物の焼結も進行する。
複合酸化物の場合、焼結は、通常、600℃以上1700℃以下で行われる。最適な加熱温度は、反応及び焼結が効率よく進行し、かつ異相の生成や、成分元素の揮発が生じないように、使用する原料及び作製しようとする複合酸化物の組成、焼結方法等に応じて選択する。但し、材料特性を安定化させ、かつ高温における熱電特性の再現性を向上させるためには、加熱温度は、1050℃以上1350℃以下が好ましい。また、加熱時の雰囲気は、酸素を含む雰囲気下とするのが好ましい。さらに、加熱時間は、所定の焼結体密度が得られるように、焼結温度に応じて最適な値を選択すればよい。
加熱方法としては、室温から所定温度に徐々に昇温する方法や、あらかじめ所定温度に加熱した炉内に配向成形体を導入し、一気に加熱する方法などがあり、作製しようとする複合酸化物の組成などに応じて、最適な方法を選択すればよい。また、焼結は、常圧で行っても良く、あるいは、ホットプレス、ホットフォージング、HIP等、加圧下で行っても良い。
また、焼結工程においては、Cサイト元素から選ばれる少なくとも1種類の元素を含む酸化物の蒸気が外部から供給される雰囲気下において、成形体を焼成するのが好ましい。Cサイト元素の酸化物は、蒸気圧の高いものが多いために、焼成中にCサイト元素が酸化物の蒸気となって成形体から揮発する場合がある。焼成中にCサイト元素が揮発すると、特に焼結体の表面近傍の組成が目的とする組成からずれ、熱電特性の低下や製品歩留まりの低下の原因となる。
これに対し、Cサイト元素を含む酸化物の蒸気が外部から供給される雰囲気下で焼成すると、Cサイト元素の揮発が抑制され、熱電特性の低下や製品歩留まりの低下を抑制することができる。この方法は、特に、Cサイト元素としてZnを含む場合に有効な方法となる。
このような雰囲気を形成する方法には、種々の方法がある。第1の方法は、Cサイト元素の酸化物を含む粉末(詰め粉)中に成形体を埋設し、この状態で焼成する方法である。この場合、詰め粉は、Cサイト元素の酸化物のみからなるものであっても良く、あるいは、Cサイト元素の酸化物と他の粉末(例えば、Aサイト元素の酸化物、Bサイト元素の酸化物など)との混合物であっても良い。詰め粉中に含まれるCサイト元素の酸化物の割合は、成形体の形状、組成等に応じて、最適なものを選択する。
第2の方法は、Cサイト元素の酸化物を含むバルク材料を成形体の周囲に配置する方法である。この場合、バルク材料は、Cサイト元素の酸化物のみからなるものであっても良く、あるいは、Cサイト元素の酸化物と他の材料(例えば、Aサイト元素の酸化物、Bサイト元素の酸化物など)との複合体であっても良い。また、「バルク材料」は、Cサイト元素の酸化物を含む粉末の成形体、単結晶、あるいは焼結体のいずれであっても良い。さらに、成形体の周囲に配置するバルク材料の大きさ、個数、位置等は、成形体の形状、組成等に応じて、最適なものを選択する。
第3の方法は、Cサイト元素の酸化物の蒸気を含むガスを成形体の周囲に供給する方法である。具体的には、成形体を焼結するための焼結手段とは別個の加熱手段を用いてCサイト元素の酸化物の蒸気を発生させ、この蒸気を単独で又は適当な搬送ガスを用いて成形体の周囲に搬送すればよい。
なお、バインダを含む成形体の場合、焼結工程の前に、脱脂を主目的とする熱処理を行っても良い。この場合、脱脂の温度は、特に限定されるものではなく、少なくともバインダを熱分解させるに十分な温度であれば良い。また、脱脂は、酸素が存在する雰囲気下で行うのが好ましい。
また、配向焼結体を作製する場合において、成形体の脱脂を行うと、成形体中に配向させた結晶面Xの配向度が低下したり、あるいは、反応が進行して成形体が膨張する場合がある。このような場合には、脱脂を行った後、焼結を行う前に、成形体に対して、さらに静水圧(CIP)処理を行うのが好ましい。脱脂後の成形体に対して、さらに静水圧処理を行うと、脱脂に伴う配向度の低下、あるいは、成形体の密度低下に起因する焼結体密度の低下を抑制できるという利点がある。
次に、本実施の形態に係る熱電変換材料の製造方法の作用について説明する。出発原料として複合酸化物のみを含む成形体を所定の温度で焼成すると、出発原料の焼結が進行し、所定の密度を有する焼結体が得られる。また、出発原料として複合酸化物の前駆体又は単純化合物を含む成形体を所定の温度で焼成すると、複合酸化物の生成及び成長と同時に、焼結が進行する。
また、第1粉末、並びに、必要に応じて添加された第2粉末及び/又は第3粉末を含む原料を調製し、これを第1粉末に対して剪断応力が作用するような成形方法を用いて成形すると、結晶面Xが成形体中に配向する。このような配向成形体を所定の温度で加熱すると、第1粉末、第2粉末及び第3粉末が反応し、複合酸化物が成長及び/又は生成する。
この時、結晶面Xと複合酸化物のAO層又はCO層との間には格子整合性があるので、結晶面Xが、複合酸化物のab面として承継される。その結果、焼結体中には、ab面が一方向に配向した状態で、複合酸化物の板状結晶が成長し、各結晶粒のab面が高い配向度で配向した熱電変換材料が得られる。
また、このような工程を経て得られた焼結体中の複合酸化物のab面の配向度(特に、高配向度領域におけるab面の配向度)は、成形体に含まれる第1粉末の結晶面Xの配向度に強く依存する。そのため、異方形状を有する第1粉末に強い剪断力を作用させることによって、結晶面Xの配向度が所定の値以上である成形体を作製し、これを焼結すれば、各結晶粒のab面が極めて高い配向度で配向した熱電変換材料が得られる。
さらに、焼成を相対的に低温で行うと、層数mが2以上5未満の領域において、性能指数Zが極大値を示す。また、焼成時に導入される酸素欠陥の量が相対的に少なくなるので、材料特性が安定化し、高温における熱電特性の再現性も向上する。さらに、ドーピング元素の種類及び量を最適化すると、キャリア濃度nが最適化され、しかも、キャリア移動度μを高くすることができるので、高い性能指数Zが得られる。
本実施の形態に係る製造方法は、無配向焼結体を作製する場合に限らず、配向焼結体を作製する場合であっても、通常のセラミックスプロセスをそのまま用いることができるので、低コストである。また、この方法により得られる熱電変換材料は、多結晶体であるので、単結晶より破壊靱性が大きく、また、粒界や空孔でフォノンが散乱されるので、単結晶より熱伝導率が低くなる。
また、テンプレート又は反応性テンプレートを用いて配向焼結体を作製する場合には、ab面の配向度が高いだけでなく、配向度及び組成が均一であり、しかも断面積の大きな熱電変換材料が得られる。さらに、この方法により得られる熱電変換材料は、電気伝導度の高いab面が高い配向度で配向しているため、同一組成を有する無配向焼結体より高い性能指数を示す。そのため、これを熱電変換材料として用いれば、安定性、再現性、耐久性及び熱電特性に優れた熱電変換素子を作製することができる。
In粉末(平均粒径:1.0μm)とZnO粉末(平均粒径:0.4μm)とを、組成式(ZnO)In(但し、mは、2〜5の範囲とし、かつ、0.25間隔の値とした。)となるように秤量し、ボールミルにより湿式混合した。スラリーを乾燥させた後、一軸成形(圧力:96MPa)により成形体を作製した。次いで、大気中において1150℃で12時間仮焼し、さらに大気中において1300℃で3時間本焼成した。得られた焼結体を粉砕し、X線回折により生成相の評価を行った。表1に、その結果を示す。
Figure 2005079565
層数mが2である場合を除き、層数mが整数である場合、生成相は、(ZnO)In(mは、整数)単相であった。一方、層数mが非整数である場合、生成相は、層数mが整数である複合酸化物の混相となった。また、層数mが3未満である場合、生成相は、Inと(ZnO)Inの混相であり、(ZnO)Inは、検出されなかった。
層数mが2以上5未満の整数となるように出発原料を配合した以外は、実施例1と同一の手順に従い、ノンドープ(ZnO)In(2≦m<5、mは整数。)無配向焼結体を作製した。
(比較例1)
層数mが1又は5以上19以下の整数となるように出発原料を配合した以外は、実施例2と同一の手順に従い、ノンドープ(ZnO)In(m=1、5〜19、mは整数。)無配向焼結体を作製した。
層数mが2以上5未満の整数となり、かつ、Inサイトの2.5at%がCaで置換されるように出発原料を配合した以外は、実施例1と同一の手順に従い、Caドープ(ZnO)In(2≦m<5、mは整数。)無配向焼結体を作製した。なお、Ca源には、CaCO(平均粒径:1.0μm)を用いた。得られた焼結体について、X線回折により生成相の同定を行った。その結果、Caは、Inサイトに固溶していることが確認された。
(比較例2)
層数mが1又は5以上19以下の整数となるように出発原料を配合した以外は、実施例3と同一の手順に従い、Caドープ(ZnO)In(m=1、5〜19、mは整数。)無配向焼結体を作製した。得られた焼結体について、X線回折により生成相の同定を行った。その結果、Caは、Inサイトに固溶していることが確認された。
実施例2、3及び比較例1、2で得られた焼結体から、プレス成形面に平行な方向を長手方向とする矩形試料を加工し、1053Kにおけるゼーベック係数S、電気伝導度σ及び熱伝導度κを測定した。さらに、得られた熱電パラメータから出力因子PF(=Sσ)及び無次元性能指数ZTを算出した。図3、図4、及び図5に、それぞれ、出力因子PF、熱伝導度κ、及び無次元性能指数ZTを示す。
図3より、ノンドープ焼結体(実施例2、比較例1)及びCaドープ焼結体(実施例3、比較例2)のいずれの場合も、出力因子PFは、層数mが2以上5未満の領域において、極大値を取ることがわかる。また、図4より、ノンドープ焼結体及びCaドープ焼結体のいずれの場合も、熱伝導度κは、層数mが3以上5未満の領域において、極小値を取ることがわかる。その結果、図5に示すように、1053Kにおける無次元性能指数ZTは、いずれの場合も、層数mが2以上5未満の領域において、極大値を示した。
さらに、Caドープ焼結体の無次元性能指数ZTは、ノンドープ焼結体の無次元性能指数ZTより高い値を示した。これは、InサイトにCaを固溶させることによってキャリア濃度nが最適化されたこと、及び、熱伝導度κが低下したことによると考えられる。
層数mが3.5であり、かつ、ノンドープ焼結体、Caドープ焼結体、Snドープ焼結体又はMg焼結体が得られるように出発原料を配合した以外は、実施例1と同一の手順に従い、各種(ZnO)3.5In系無配向焼結体を作製した。なお、Caドープ量は、Inサイトの2.5at%とし、Ca源には、CaCO粉末(平均粒径:1.0μm)を用いた。また、Snドープ量は、Inサイトの2.0at%とし、Sn源には、SnO(平均粒径:1.0μm)を用いた。さらに、Mgドープ量は、Inサイトの2.0at%とし、Mg源には、MgO(平均粒径:0.5μm)を用いた。得られた焼結体について、実施例2と同一の手順に従い、各種熱電パラメータを測定した。表2に、その結果を示す。
Figure 2005079565
表2より、ノンドープ(ZnO)3.5Inに対してCa又はSnをドープすることによって、出力因子と熱伝導度の双方が改善されていることがわかる。また、ノンドープ(ZnO)3.5Inに対してMgをドープすることによって、熱伝導度が改善されていることがわかる。さらに、SnドープとMgドープの熱電性能のピークは、層数mが2以上5未満の領域において極大値を示した。
層数mが3.5であり、かつ、Inサイトの2.5at%がCaで置換されるように出発原料を配合した以外は、実施例3と同一の手順に従い、Caドープ(ZnO)3.5In無配向焼結体を作製した。得られた焼結体について、X線回折により生成相の同定を行った。その結果、Caは、Inサイトに固溶していることが確認された。
層数mが3.5であり、かつ、Znサイトの2.5at%がCaで置換されるように出発原料を配合した以外は、実施例3と同一の手順に従い、Caドープ(ZnO)3.5In無配向焼結体を作製した。得られた焼結体について、X線回折により生成相の同定を行った。その結果、Caは、Znサイトに固溶していることが確認された。
層数mが3.5となるように出発原料を配合した以外は、実施例1と同一の手順に従い、ノンドープ(ZnO)3.5In無配向焼結体を作製した。
(比較例3)
焼結温度を1550℃とした以外は実施例5と同一の手順に従い、Caドープ(ZnO)3.5In無配向焼結体を作製した。得られた焼結体について、X線回折により生成相の同定を行った。その結果、Caは、Inサイトに固溶していることが確認された。
実施例5〜7、及び比較例3で得られた焼結体からプレス成形面に平行な方向を長手方向とする矩形試料を加工し、270℃〜780℃における電気伝導度σを測定した。図6に、その結果を示す。
電気伝導度σは、1550℃で焼結したCaドープ焼結体(比較例3)が最も高く、次いで、1300℃で焼結したノンドープ焼結体(実施例7)、InサイトにCaをドープした焼結体(実施例5)、及びZnサイトにCaをドープした焼結体(実施例6)の順に低下した。しかしながら、比較例3で得られたCaドープ焼結体は、性能の変動が見られ、素子特性が不安定であった。これに対し、実施例5〜7で得られた焼結体は、測定値に再現性があり、高温酸化雰囲気でも耐えうる安定な試料が作製できた。また、低温で焼成し、かつInサイトにCaをドープした焼結体(実施例5)の場合、電気伝導度σは、比較例3より低下したが、性能指数Zは、これらの試料中、最も高い値となった。これは、相対的に低温で焼成し、かつCaをドープしたことによって、キャリア濃度nが最適化され、かつ低熱伝導化したためである。
以下の手順に従い、Inサイトに2.5at%のCaをドープしたCaドープ(ZnO)In配向焼結体を作製した。まず、出発原料として、塩基性硫酸亜鉛(ZnSO・3Zn(OH)・nHO)からなる板状粉末(平均粒径:2〜10μm、アスペクト比:8〜15)、In粉末(平均粒径:1.0μm)及びCaCO粉末(平均粒径:1.0μm)を用い、これらを所定のモル比となるように秤量し、有機溶媒であるトルエンとエタノールの混合溶媒中でボールミルにより5時間混合した。混合終了後、スラリーに対して、さらにバインダーとして有機系のポリビニルブチルアルコール(PVB)、及び可塑剤としてフタル酸ジ−n−ブチルを加え、さらに1時間混合した。
得られたスラリーを、ドクターブレード法を用いて、厚さ約200μmのテープ状に成形した。このテープを約80枚重ねて約16mm厚とし、これを80℃の温度で圧着させ、板状の成形体を得た。次いで、成形体を800℃まで30℃/hの昇温スピードで昇温し、800℃で30分の熱処理を行った。さらに、熱処理後の成形体に対して冷間等方加圧(CIP)処理を行い、材料密度を高めた後、大気中において1150℃×12時間の条件下で仮焼し、さらに大気中において1300℃×24時間の条件下で本焼結を行った。
出発原料中にCaCO粉末を添加せず、かつ、層数mが3.25となるように出発原料を配合した以外は、実施例7と同一の手順に従い、ノンドープ(ZnO)3.25In配向焼結体を作製した。
実施例8、9で得られた配向焼結体からテープ面に平行な方向を長手方向とする矩形試料を加工し、270℃〜780℃におけるゼーベック係数S及び電気伝導度σを測定した。さらに、得られた熱電パラメータから出力因子PF(=Sσ)を算出した。図7に、その結果を示す。
700℃以下の領域においては、Caドープ配向焼結体(実施例7)及びノンドープ配向焼結体(実施例8)の出力因子PFは、ほぼ同等であったが、780℃(1053K)においては、Caドープ配向焼結体の出力因子PFは、ノンドープ配向焼結体より高い値を示した。Caドープ配向焼結体(実施例7)の1053Kにおける出力因子PFは、同一組成を有する無配向焼結体に比べて約20%向上した。また、ノンドープ配向焼結体(実施例8)の1053Kにおける出力因子PFは、同一組成を有する無配向焼結体に比べて約30%向上した。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
例えば、上記実施例において、焼結方法として、常圧焼結法が用いられているが、これに代えて、ホットプレス法、常圧焼結+HIP処理等、他の焼結法を用いても良い。また、上記実施例において、成形体中の結晶面Xの配向度を高くするためにドクターブレード法が用いられているが、結晶面Xの配向度を高めることができる限り、他の成形方法を用いても良い。
また、例えば、上記実施例では、ドクターブレード法によって板状粉末を面配向させているが、押出成形法を用いて、板状粉末を軸配向させても良い。板状粉末をこのように軸配向させた場合であっても、無配向焼結体より高い性能指数を有する熱電変換材料が得られる。また、押出成形法を用いると、ある程度の厚さを有する焼結体を低コストで作製できるという利点がある。
さらに、第1粉末として、(1)式に示す複合酸化物からなる異方形状粉末を用いる場合、第1粉末に対して、さらに、作製しようとする複合酸化物を生成可能な組成比を有する第2粉末、及び/又は、作製しようとする複合酸化物と同一組成を有する微粒状の第3粉末を所定の比率で配合しても良い。
本発明に係る熱電変換材料は、太陽熱発電器、海水温度差熱電発電器、化石燃料熱電発電器、工場排熱や自動車排熱の回生発電器等の各種の熱電発電器、光検出素子、レーザーダイオード、電界効果トランジスタ、光電子増倍管、分光光度計のセル、クロマトグラフィーのカラム等の精密温度制御装置、恒温装置、冷暖房装置、冷蔵庫、時計用電源等に用いられる熱電変換素子を構成するn型熱電変換材料として使用することができる。
InGaZnOの結晶構造を示す模式図である。 各種熱電パラメータとキャリア濃度との関係を示す図である。 層数mと出力因子との関係を示す図である。 層数mと熱伝導度との関係を示す図である。 層数mと無次元性能指数との関係を示す図である。 各種複合酸化物の温度と電気伝導度との関係を示す図である。 配向焼結体の温度と出力因子との関係を示す図である。

Claims (11)

  1. YbFe類縁型層状構造を有し、
    一般式:ABO(CO)
    (但し、2<y<4、2≦m<5。
    Aサイト元素は、IIIb族元素、並びにSc、Y及びランタノイド元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。
    Bサイト元素は、IIIb族元素並びにFe及びCrから選ばれる少なくとも1種類の元素。
    Cサイト元素は、Zn及びIIa族元素、並びに2価の3d遷移金属元素、4d遷移金属元素及び5d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。)
    で表される複合酸化物の多結晶体からなり、かつ
    酸素を含む雰囲気下において、1050℃以上1350℃以下の温度で焼成することにより得られる熱電変換材料。
  2. YbFe類縁型層状構造を有し、
    一般式:ABO(CO)
    (但し、2<y<4、2≦m<5。
    Aサイト元素は、IIIb族元素、並びにSc、Y及びランタノイド元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。
    Bサイト元素は、IIIb族元素並びにFe及びCrから選ばれる少なくとも1種類の元素。
    Cサイト元素は、Zn及びIIa族元素、並びに2価の3d遷移金属元素、4d遷移金属元素及び5d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。)
    で表され、さらに
    前記Aサイト元素及び/又は前記Bサイト元素の0.001at%以上20at%以下が、IIa族元素から選ばれる少なくとも1種類の元素Dによって置換された複合酸化物の多結晶体からなる熱電変換材料。
  3. 酸素を含む雰囲気下において、1050℃以上1350℃以下の温度で焼成することにより得られる請求項2に記載の熱電変換材料。
  4. 前記複合酸化物は、前記Aサイト元素及び/若しくは前記Bサイト元素の0.001at%以上20at%以下が4価の金属元素によりさらに置換され、並びに/又は、
    前記Cサイト元素の0.001at%以上20at%以下が3価の金属元素によりさらに置換されたものからなる請求項1から3までのいずれかに記載の熱電変換材料。
  5. 前記元素Dは、Caである請求項2から4までのいずれかに記載の熱電変換材料。
  6. 前記Cサイト元素は、Znである請求項1から5までのいずれかに記載の熱電変換材料。
  7. 前記Aサイト元素及び/又は前記Bサイト元素は、Inである請求項1から6までのいずれかに記載の熱電変換材料。
  8. 前記多結晶体を構成する各結晶粒のab面が一方向に配向している請求項1から7までのいずれかに記載の熱電変換材料。
  9. 請求項1に記載の複合酸化物のAO層又はCO層と格子整合性を有する結晶面を発達面とする異方形状粉末と、該異方形状粉末と反応し又は反応することなく前記複合酸化物となる第2粉末とを含む原料を調製する原料調製工程と、
    前記異方形状粉末が配向するように前記原料を成形する成形工程と、
    該成形工程で得られた成形体を、酸素を含む雰囲気下において、1050℃以上1350℃以下の温度で焼成する焼結工程とを備えた熱電変換材料の製造方法。
  10. 請求項2に記載の複合酸化物のAO層又はCO層と格子整合性を有する結晶面を発達面とする異方形状粉末と、該異方形状粉末と反応し又は反応することなく前記複合酸化物となる第2粉末とを含む原料を調製する原料調製工程と、
    前記異方形状粉末が配向するように前記原料を成形する成形工程と、
    該成形工程で得られた成形体を焼成する焼結工程とを備えた熱電変換材料の製造方法。
  11. 前記焼結工程は、前記成形体を、酸素を含む雰囲気下において、1050℃以上1350℃以下の温度で焼成するものである請求項10に記載の熱電変換材料の製造方法。
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