JP4776916B2 - n型熱電変換材料 - Google Patents

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Description

本発明は、電気エネルギーを熱エネルギーに、あるいは熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換可能な熱電変換素子を形成する酸化物熱電変換材料、特にn型熱電変換材料に関するものである。
近年、環境負荷の低減が世界的規模で推進されている。エネルギーの合理的利用を促進する一環として、空調機器や熱機関等から発生する低品位の廃熱の一部を回収し、回収した熱を電気に変換する技術や、回収した熱を蓄熱し適時熱源として利用する技術が盛んに研究開発されている。
電気エネルギーを熱エネルギーに、あるいは熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換する手段として熱電変換素子がある。熱電変換素子はp型半導体からなるp型熱電変換材料とn型半導体からなるn型熱電変換材料とを組み合わせて形成されている。熱電変換素子を使用することにより、従来利用価値がないとされてきた低品位廃熱を電気に変換することが可能となるだけでなく、省スペース型の温熱源もしくは冷熱源としてIT機器や自動車用シートの精密温度調節に利用可能である。
熱電変換材料の性能は、次式(1)で表される性能指数で評価される。
Z=α2 /κρ・・・・・(1)
ただし、Z:性能指数
α:ゼーベック係数
κ:熱伝導率
ρ:電気抵抗率
ゼーベック係数α、熱伝導率κ、電気抵抗率ρの各単位は、それぞれμV/K、W/mK、およびΩmであるので、性能指数の単位は1/Kとなり、性能指数の大きなものが熱電変換材料として優れている。
式(1)から、優れた熱電変換材料は、ゼーベック係数が大きく、熱伝導率および電気抵抗率が小さい材料であることがわかる。
そして、次式(2)で表されるように性能指数に使用温度を乗じた値を無次元性能指数と呼び、一般的に、無次元性能指数が1を超えることを目標として開発が行われている。 ZT=α2 T/κρ・・・・・(2)
ただし、T:使用温度
なお、使用温度は絶対温度で示され、単位はKである。
また、電気的な観点から出力因子で熱電変換材料の性能を評価する場合は次式(3)で表される出力因子を用いる。
P=α2 /ρ・・・・・(3)
ただし、P:出力因子
熱電変換材料の最大変換効率は、次式(4)、(5)で示される。
μmax ={(Th−Tc)/Th}{(M−1)/(M+Tc/Th)}・・・・・(4)
M=[{1+Z(Th+Tc)}/2]0.5 ・・・・・(5)
ただし、μmax :最大変換効率
Th:高温端温度
Tc:低温端温度
式(4)、(5)より、性能指数および高温端と低温端との温度差が大きくなると熱電変換効率が向上することがわかる。
従来研究あるいは実用化されてきた熱電変換材料には、Bi2 Te3 系、Fe2 Si系、CoSb3 系、Zn4 Sb3 系、B4 C系等がある。Bi2 Te3 系熱電変換材料は、室温(300K)付近で高い無次元性能を示す特性から低温域(250K〜500K)での用途を目的として、無次元性能指数のさらなる向上のため熱伝導率低下の検討が行われている。
しかし、その熱電変換効率が未だ10%未満と低く、価格も高いことから、熱電変換より電熱変換、すなわち、レーザーダイオード用の冷却素子、温冷庫用の加熱素子、あるいは、温冷庫用の冷却素子等の設置スペースが小さく可搬性が要求される製品への適用に限定され需要拡大に至っていない。また、Bi2 Te3 系熱電変換材料を製造する際、毒物のBi2 Se3 や劇物のSb2 Te3 を固溶させるため、特別な作業環境対策が必要となる。
一方、中温域(500K〜800K)から高温域(800K〜)の範囲で使用可能な熱電変換材料として、従来のFe2 Si系、CoSb3 系、Zn4 Sb3 系、B4 C系以外に酸化物熱電変換材料の開発が進められている。酸化物熱電変換材料は、従来のFe2 Si系、CoSb3 系、Zn4 Sb3 系、B4 C系等が中温域から高温域の範囲で大気に触れると酸化し、性能が劣化する欠点を改善し得る材料である。
酸化物熱電変換材料としては、一般式NaCo2 4 で表されるp型熱電変換材料があり、この材料については低温域から高温域までを網羅でき、また、高効率な熱電変換の可能性が示唆されている(特許文献1参照)。
NaCo2 4 の性能指数は、低温域でBi2 Te3 系よりも劣るが、低温域から高温域に向かって上昇し、800K付近では無次元性能指数が1を超える。従って、NaCo2 4 が非常に優れた熱電変換材料であることが窺える。その熱電変換特性から勘案すると、室温(300K)付近でNaCo2 4 の無次元性能指数が向上すれば、NaCo2 4 は低温域から高温域に至る広範囲の廃熱を高効率で電気に変換することが可能となる。一般的なNaCo2 4 は多結晶体であるが、性能指数が約33×10-5-1、室温(300K)における無次元性能指数が約0.1であり、NaCo2 4 の単結晶では、多結晶に比較して電気抵抗率が1/10程度になるため、その出力因子と無次元性能指数がそれぞれ約10倍の値を示すとされている。
さらに、Bi2 Te3 系のように毒物や劇物を使用しないので、製造のために特別な作業環境対策を必要とせず理想的な熱電変換材料であると考えられる。
ところで、NaCo2 4 と組み合わせて高い熱電変換効率を示す熱電変換素子を形成するためには、NaCo2 4 と同程度の熱電特性を有するn型熱電変換材料が必要不可欠であるが、現時点ではNaCo2 4 と同程度の性能指数を有するn型熱電変換材料は見出されていない。
従来のn型熱電変換材料には、次の一般式(6)、(7)で示される材料がある(特許文献2参照)。
(Lp 1-p )(Coz Niq 1-z-q x y ・・・・・(6)
(Lp 1-p )(Coz Niq Cur 1-z-q-r x y ・・・・・(7)
一般式(6)では、0.5≦x≦1.5、2≦y≦4、0≦p≦1、0<z<1、0<q<1、0<r<1、0≦1−z−q<1であり、Lはランタノイド、AはBa、Sr、Ca及びMgから選ばれた1種または2種以上の元素、BはMn、Fe、Znから選ばれた1種または2種以上の元素である。
一般式(7)では、0.5≦x≦1.5、2≦y≦4、0≦p≦1、0<z<1、0<q<1、0<r<1、0≦1−z−q−r<1であり、Lはランタノイド、AはBa、Sr、Ca及びMgから選ばれた1種または2種以上の元素、BはMn、Fe、Znから選ばれた1種または2種以上の元素である。
このn型熱電変換材料の一例であるLa0.5 Sr0.5 Co0.8 Ni0.1 Cu0.1 3 は、電気抵抗率が極めて小さく出力因子が21×10-5W/mK2 である。
また、他のn型熱電変換材料として、基本酸化物In2 3 に対してZr、Sn、Ti、Ce、V、Hf、OsおよびIrから選ばれた少なくとも1種の4価の元素をドープしてなるIn2 3 を主体とするn型熱電変換材料がある(特許文献3参照)。
このn型熱電変換材料の出力因子は19×10-5W/mK2 程度で、性能指数は14×10-5-1程度である。
さらに、安価なチタン酸化物を原料とするn型熱電変換材料として、ストロンチウム酸化物とチタン酸化物を主構成成分とする複合酸化物や、ストロンチウム酸化物、バリウム酸化物及びチタン酸化物を主構成成分とする複合酸化物がある(特許文献4参照)。
このn型熱電変換材料の一例であるSr2 TiO4 では、ゼーベック係数が−201μV/K、電気抵抗率が1.1×10-5Ωmであるので、出力因子は367×10-5W/mK2 に達する。このときの熱伝導率は2.8W/mKであるので、性能指数は134×10-5-1を示している。
同様に、安価なチタン酸化物を原料とするn型熱電変換材料として、ストロンチウム酸化物とチタン酸化物を主構成成分とし、これに希土類元素、Nb、Ta、Sb、W、Si、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znから選ばれる少なくとも1種の特定元素を加えた複合酸化物がある(特許文献5参照)。
このn型熱電変換材料の一例であるSr0.996 Nb0.006 Ti0.998 3 では、ゼーベック係数が−203μV/K、電気抵抗率が0.9×10-5Ωmであるので、出力因子は458×10-5W/mK2 に達する。このときの熱伝導率は2.9W/mKであるので、性能指数は156×10-5-1を示している。
特開平09−321346号公報 特開2003−8086号公報 特開2001−127350号公報 特開平08−231223号公報 特開平08−236818号公報
しかしながら、特許文献2のn型熱電変換材料は、電気抵抗率は小さいが、ゼーベック係数が実用化するには未だ小さく、更なる向上が必要である。
特許文献3のn型熱電変換材料も、その性能指数及び出力因子は実用化するのに十分とは言い難い値である。
さらに、特許文献2及び特許文献3のn型熱電変換材料は、出発原料の資源が偏在していたり副産物であることから供給が不安定であるうえ、比較的高価な酸化コバルトや酸化インジウムを用いるのでコストが高くなるという欠点がある。
また、発明者らが特許文献4及び特許文献5で開示された各複合酸化物を実際に作製して性能指数を測定したところ、ゼーベック係数が−203μV/K前後で、且つ電気抵抗率が1×10-4Ωm以下である複合酸化物を得ることはできなかった。
得られた複合酸化物の熱伝導率は約8W/mKと高く、ストロンチウムの一部を置換する元素の種類により熱電変換特性が大きく変化することがわかり、開示された条件だけでは所定の熱電変換特性が得られなかった。
すなわち、特許文献2のn型熱電変換材料はゼーベック係数が低く、特許文献3の各n型熱電変換材料では、電気抵抗率を低下させるために還元処理又は他元素ドープを行うと、ゼーベック係数が極端に低下し、出力因子又は性能指数を向上させることが困難であるという欠点がある。
また、特許文献4及び特許文献5の各n型熱電変換材料では高い性能指数が示されているが、高い性能指数を得るためには別の因子の探求が必要であり、且つ性能指数のより一層の向上には熱伝導率を低下させることが必要である。
本発明は、n型熱電変換材料における上記問題を解決するものであって、安価な原料を使用して、低い電気抵抗率を維持したまま、高いゼーベック係数を有し、且つ熱伝導率の低いn型熱電変換材料を提供することを目的とする。
本発明のn型熱電変換材料は、Aをストロンチウム、Bをチタン、Oを酸素とするとき、一般式ABO3 で示されるペロブスカイト構造からなる化合物を主成分とし、ストロンチウムの1〜5原子%がセリウムで置換され、チタンの1〜10原子%に相当するジルコニウム又はハフニウムが過剰に存在する酸化物であることを特徴とする。
酸化物がSr1-X CeX TiZrY 3 (0.02≦X≦0.03、0.02≦Y≦0.03)又はSr1-X CeX TiHfY 3 (0.02≦X≦0.03、0.01≦Y≦0.03)で表されるペロブスカイト構造からなる場合には、極めて良好な特性を示す。
ただし、Sr1-X CeX TiZrY 3 およびSr1-X CeX TiHfY 3 の酸素量は、ペロブスカイト構造を維持できる範囲で任意に変動するため、化合物1モル当たり正確に3原子を有することはない。
セリウムは、他の希土類元素と異なり、+3と+4の高い価数を有する。このため、 ストロンチウムの一部をセリウムで置換すると、4f電子が結晶中で有効な伝導電子供給源として働き、電気抵抗率が低下すると考えられる。
なお、+3と+4の価数を有する希土類元素にはプラセオジウムやテルビウムもある。しかし、ペロブスカイト構造中で、プラセオジウムは、ストロンチウムと同じ12配位を取り難い。また、テルビウムのイオンの半径は、ストロンチウムのイオンの半径より約16%小さい。従って、ストロンチウムの一部をプラセオジウムやテルビウムで置換すると、結晶格子に歪みが発生して電気抵抗率が増加し、出力因子が低下することになり好ましくない。
セリウムにより置換されるストロンチウムが1原子%未満であると、セリウムから供給される伝導電子が不足し、電気抵抗率が十分に低下せず、大きな出力因子が得られない。また、セリウムにより置換されるストロンチウムが3原子%を超えると、固溶限界を超えるため第2相として酸化セリウムが混在し始め、5原子%より多くなるとゼーベック係数の低下が顕著になる。第2相として酸化セリウムが混在しても、電気抵抗率は一様に低下するが、ゼーベック係数は5原子%を超えるとその低下が顕著になるため、結晶中のストロンチウムをセリウムで置換する量は1〜5原子%に限定される。
酸化物においてジルコニウム又はハフニウムはチタンと同様にストロンチウムとペロブスカイト構造のSrZrO3 又はSrHfO3 を形成する。また、このSrZrO3 又はSrHfO3 はSrTiO3 と固溶体を形成する。
過剰に添加したジルコニウム又はハフニウムはチタン酸ストロンチウムのチタンサイトに配置され、チタン酸ストロンチウムの結晶の極微小領域においてジルコン酸ストロンチウム又はハフニウム酸ストロンチウムの原子配置をとる部分が発生する。チタン酸ストロンチウムとジルコン酸ストロンチウム又はハフニウム酸ストロンチウムの界面では、フォノンの散乱により熱伝導率が低下し、且つチタン酸ストロンチウムとジルコン酸ストロンチウム又はハフニウム酸ストロンチウムの急峻なバンドギャップの違いから高いゼーベック係数が発生するので、低い熱伝導率と高いゼーベック係数を併せ持つ材料になると考えられる。
ジルコニウム又はハフニウムの添加量がチタンの1原子%未満ではゼーベック係数の増加及び熱伝導率の低下は認められない。ジルコニウム又はハフニウムは3原子%までペロブスカイト構造の結晶中に固溶することが可能であるが、3原子%より多くなると高い電気抵抗率を有する酸化ジルコニウム又は酸化ハフニウムが第2相として混在し始める。しかし酸化物作製時にチタン酸ストロンチウムと酸化ジルコニウム又は酸化ハフニウムとの接触界面で起こる液相焼結が酸化物ペレットの焼結密度向上に寄与するため、電気抵抗率の大きな増加は起こらない。ただし10原子%より多い場合には第2相の酸化ジルコニウム又は酸化ハフニウムがペロブスカイト構造の結晶粒界に偏析し、電気抵抗率が著しく増加する。従って10原子%より多い添加量は、性能指数向上に効果がない。
最適なジルコニウム添加量は、ペロブスカイト構造の結晶中に固溶する範囲であり、低い熱伝導率を示し、電気抵抗率が抑制される2〜3原子%である。
また、最適なハフニウム添加量は、ペロブスカイト構造の結晶中に固溶する範囲であり、低い熱伝導率を示し、電気抵抗率が抑制される1〜3原子%である。
本発明により、環境負荷が小さく、安価な原料を使用して、低い電気抵抗率を維持したまま、高いゼーベック係数を示し、且つ熱伝導率の低いn型熱電変換材料を提供することができる。
n型熱電変換材料は、Aをストロンチウム、Bをチタン、Oを酸素とするとき、一般式ABO3 で示されるペロブスカイト構造からなる化合物を主成分とし、ストロンチウムの1〜5原子%がセリウムで置換され、チタンの1〜10原子%に相当するジルコニウム又はハフニウムが過剰に存在する酸化物である。
なお、ペロブスカイト構造ABO3 では、体心立方格子の中心にA元素が配置され、各格子点にB元素が配置され、各格子点間にO元素が配置されている。
このn型熱電変換材料を作製する方法について説明する。
原料として、酸化チタン又は水酸化チタンの粉末と、酸化ストロンチウム又は炭酸ストロンチウムの粉末と、酸化セリウム又は炭酸セリウムの粉末と、酸化ジルコニウム又は酸化ハフニウムの粉末を用い、これらの粉末を所定量秤量後混合し、混合物を加圧成型して一次原料ペレットとする。
原料調整は、モル比で、TiO2 又はH2 TiO3 :SrO又はSrCO3 :CeO2 :ZrO2 又はHfO2 =1:0.99〜0.95:0.01〜0.05:0.001〜0.1に秤量するか、あるいはTiO2 又はH2 TiO3 :SrO又はSrCO3 :Ce2 (CO3 3 ・8H2 O:ZrO2 又はHfO2 =1:0.99〜0.95:0.005〜0.025:0.001〜0.1に秤量して行う。
次いで、一次原料ペレットを大気中又は酸素気流中で900〜1200℃において8〜12時間加熱し、仮焼成ペレットとする。この仮焼成ペレットを粉砕し、再び加圧成型して二次原料ペレットとする。二次原料ペレットを大気中又は酸素気流中で900〜1500℃において8〜12時間加熱し、本焼成ペレットとする。
本焼成ペレットの結晶中には化学量論組成よりも過剰な酸素が取り込まれているので、結晶格子が歪んだ状態となっている。また、この結晶中では、セリウムにより付与される電子が酸素にトラップされているため、電子の伝導が不十分であり、電気抵抗率が高い。
そこで、本焼成ペレットを、水素気流中で1100〜1500℃において5〜24時間加熱し、部分的に還元処理した酸化物ペレットとする。この酸化物ペレットがn型熱電変換材料である。
本焼成ペレットの還元処理初期には、まず結晶中から過剰な酸素が除去される。そして還元時間の増加とともに、酸素欠陥が生じ、結晶の電気抵抗率が低下する。
還元処理時の加熱温度及び加熱時間の最適化を行うことで、適度な酸素欠損を生じさせることが可能となる。酸素欠陥を生じさせる他の方法としては、酸素濃度を可能な限り低下させた雰囲気下で1973K以上に加熱する方法がある。
ただし発明者らは、水素気流中で還元処理を行った後の酸化物ペレット中の水素濃度が3×1018〜6×1018原子/cm3 に達していることを確認している。その作用は明確ではないが、ストロンチウムの一部を置換したセリウムが深く関連するものと考えられ、結晶中に非常に大きな活性を有するO- が生成し、O- の一部あるいは全部がマイナスの価数を有するH- と入れ替わり、H- から伝導電子が供給される可能性が示唆された。
なお、酸化物ペレットの作製時間短縮のために、一次原料ペレットを、水素気流中で900〜1500℃において10〜48時間加熱して還元処理を行い、酸化物ペレットを直接作製することも可能である。しかし、この場合には酸化物ペレットが作製される以前に原料そのものが部分還元されるため、酸素濃度が過不足した酸化物ペレットとなり易く、そうなると所定の熱電変換特性が得られない。この問題を解決するには、昇温時間の綿密な温度制御が必要である。
n型熱電変換材料として上述の作製方法で得られた酸化物は、安価な酸化物原料である酸化チタン、水酸化チタン、酸化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、酸化セリウム、炭酸セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウムを原料としており、毒性のあるセレンを使用することもないので、作製時の特別な作業環境対策を必要としない。
この酸化物は、一般式ABO3 で示されるペロブスカイト構造からなる化合物の結晶を主成分としているが、ペロブスカイト構造の結晶は、その製造方法や製造条件により、A、B及びOの組成比が微妙に変化し、ゼーベック係数、電気抵抗率及び熱伝導率が変化する。このため、製造方法及び製造条件の最適化は必須である。
この酸化物は、ストロンチウムの1〜5原子%がセリウムにより置換されている。
ペロブスカイト構造の結晶中では、電子がB−O結合すなわちTi−O結合により形成されるネットワーク上を移動するので、チタンを他の元素で置換すると、イオン半径の違いやイオンの価数の違いから電子がトラップされ、電気抵抗が増加する可能性がある。このような電気抵抗率の増加を防止するため、先ずストロンチウムの一部をセリウムで置換する。
セリウムで置換することによって、4f電子が結晶中で有効な伝導電子供給源として働くため、電気抵抗率が低下するが、水素気流中で高温に加熱することで、酸化物の結晶中に適度な酸素欠損が生じ、より一層の電気抵抗率低下が可能となる。
さらに、この酸化物は、チタンの1〜10原子%に相当するジルコニウム又はハフニウムが過剰に添加されている。ジルコニウム又はハフニウムを添加すると、チタン酸ストロンチウム結晶の極微小領域においてジルコン酸ストロンチウム又はジルコン酸ハフニウムの原子配置をとる部分が発生する。チタン酸ストロンチウムとジルコン酸ストロンチウム又はジルコン酸ハフニウムの界面では、フォノンの散乱により熱伝導率が低下し、且つ急峻なバンドギャップの違いから高いゼーベック係数が発生する。
ジルコニウム又はハフニウム添加によって起こる液相焼結は、酸化物ペレットの焼結密度を向上させ、その焼結密度の向上が電気抵抗率の低下に寄与する。従来の課題であったチタンサイトをジルコニウム又はハフニウムで置換することによる電気抵抗率の増加や、第2相として混在する酸化ジルコニウム又は酸化ハフニウムによる電気抵抗率の増加は、焼結密度向上による電気抵抗率の低下と相殺されることで、酸化物の電気抵抗率は大きな増加を示さない。
この酸化物は、作製が容易である上に、大気中で安定である。経時変化による熱電特性の劣化は起こり難く、電気抵抗率の低下がゼーベック係数の低下を引き起こすという現象も現れない。
なお、電気抵抗率を、より大きく低下させる方法として、結晶粒径を大きくして粒界抵抗を現象させる方法がある。例えば、単結晶であれば、電気抵抗率が最も低く出力因子や性能指数が最大となる。一般式ABO3 で示されるペロブスカイト構造の結晶は、ベルヌーイ法やフローティング法など単結晶成長技術が確立されており、単結晶の供給が可能である。
従って、この酸化物は非常に高い性能指数を示し、高い熱電特性のp型熱電変換材料であるNaCo2 4 と組み合わせて高い熱電変換効率を示す熱電変換素子を形成できるため、従来、高温では使用できなかったBi2 Te3 系に代わる環境負荷の小さな熱電変換素子を提供できる。
Sr1-X CeX TiZrY 3 (0.00≦X≦0.08、0.00≦Y≦0.10)で表される組成範囲で酸化物ペレット約10gをn型熱電変換材料として各種作製した。
まず、原料となるSrCO3 、Ce2 (CO3 3 ・8H2 O、TiO2 及びZrO2 を所定量秤量し、乳鉢にて20分間混合して混合粉末とした。
混合粉末を98kPaの圧力で成形して直径20mm×厚さ2mmの円盤状の一次原料ペレットとし、一次原料ペレットを1200℃の大気中で10時間加熱し、仮焼成ペレットとした。
仮焼成ペレットを乳鉢で粉砕し、98kPaの圧力で成形して直径20mm×厚さ2mmの円盤状の二次原料ペレットとし、二次原料ペレットを1400℃の大気中で10時間加熱し、本焼成ペレットとした。
本焼成ペレットに対して、1100℃の水素気流中で5時間加熱する還元処理を合計4回行って酸化物ペレットとし、酸化物ペレットを室温まで冷却した。
作製した各酸化物ペレットについて、粉末X線回折で生成相を同定し、300Kでのゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率を測定し、出力因子及び性能指数を算出した。
ゼーベック係数は起電力の温度変化の傾きから求め、電気抵抗率の測定には四端針法を用い、熱伝導率の測定にはキセノン閃光を利用したハーフタイム法を適用した。
表1にゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率の測定結果並びに出力因子及び性能指数を示す。
Figure 0004776916
なお、表1において、No8〜12、No14〜18、No20〜24、No26〜30が本発明の実施例であり、No1〜7、No13、No19、No25は比較例である。
No1〜6については、セリウムによるストロンチウムの置換によって電気抵抗率が低下する傾向が見られるが、熱伝導率の低下については改善が見られない。
No7、No13、No19、No25では、ジルコニウム添加量が少ないため、熱伝導率低下の効果が十分現れていない。
No8〜12、No14〜18、No20〜24、No26〜30については、セリウムによるストロンチウムの置換が1〜5原子%、ジルコニウムの添加が1〜10原子%の範囲にあり、低い電気抵抗率が維持されたまま、高いゼーベック係数と低い熱伝導率を併せ持つことが示されている。
生成相としては、粉末X線回折による同定結果から判断すると、SrTiO3 単一相である場合が優れており、最適な組成はSr1-X CeX TiZrY 3 (0.02≦X≦0.03、0.02≦Y≦0.03)で、そのときの性能指数は46×10-5-1以上を示すことが判明した。
Sr1-X CeX TiHfY 3 (0.01≦X≦0.05、0.00≦Y≦0.10)で表される組成範囲で酸化物ペレット約10gをn型熱電変換材料として各種作製した。
原料となるSrCO3 、Ce2 (CO3 3 ・8H2 O、TiO2 及びHfO2 を所定量秤量する以外は、実施例1と同様の操作で酸化物ペレットを作製した。
作製した各酸化物ペレットについて、粉末X線回折で生成相を同定し、300Kでのゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率を測定し、出力因子及び性能指数を算出した。
ゼーベック係数は起電力の温度変化の傾きから求め、電気抵抗率の測定には四端針法を用い、熱伝導率の測定にはキセノン閃光を利用したハーフタイム法を適用した。
表2にゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率の測定結果並びに出力因子及び性能指数を示す。
Figure 0004776916
なお、表2において、No2〜6、No8〜12、No14〜18、No20〜24が本発明の実施例であり、No1、No7、No13、No19は比較例である。
No1、No7、No13、No19では、ハフニウム添加量が少ないため、熱伝導率低下の効果が十分現れていない。
No2〜6、No8〜12、No14〜18、No20〜24については、セリウムによるストロンチウムの置換が1〜5原子%、ハフニウムの添加が1〜10原子%の範囲にあり、低い電気抵抗率が維持されたまま、高いゼーベック係数と低い熱伝導率を併せ持つことが示されている。
生成相としては、粉末X線回折による同定結果から判断すると、SrTiO3 単一相である場合が優れており、最適な組成はSr1-X CeX TiHfY 3 (0.02≦X≦0.03、0.01≦Y≦0.03)で、そのときの性能指数は47×10-5-1以上を示すことが判明した。

Claims (2)

  1. Aをストロンチウム、Bをチタン、Oを酸素とするとき、一般式ABO3 で示されるペロブスカイト構造からなる化合物を主成分とし、ストロンチウムのX原子%がセリウムで置換され、チタンのY原子%に相当するジルコニウムが過剰に存在する、Sr 1-X Ce X TiZr Y 3 (0.02≦X≦0.03、0.02≦Y≦0.03)で表される酸化物であることを特徴とするn型熱電変換材料。
  2. Aをストロンチウム、Bをチタン、Oを酸素とするとき、一般式ABO 3 で示されるペロブスカイト構造からなる化合物を主成分とし、ストロンチウムのX原子%がセリウムで置換され、チタンのY原子%に相当するハフニウムが過剰に存在する、Sr 1-X Ce X TiHf Y 3 (0.02≦X≦0.03、0.01≦Y≦0.03)で表される酸化物であることを特徴とするn型熱電変換材料。
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