しかしながら、特許文献1に記載の複合粒子は、機械的な強度が弱く電極形成中において二酸化マンガン粒子の表面に固定化された炭素材料粉末が剥離し易いため、得られる電極中の炭素材料粉末の分散性が不十分となり易く、期待される電極特性の向上を確実かつ十分に図ることができていないことを本発明者らは見出した。
また、特許文献2に記載の有機電解液電池用正極合剤は、溶媒からなるスラリーを熱風中に噴霧乾燥(spray drying)することにより正極活物質、導電剤及び結着剤からなる塊(複合粒子)として製造される。この場合、正極活物質、導電剤及び結着剤が溶媒中に分散した状態で乾燥及び固化が進行するため、乾燥中に結着剤同士の凝集及び導電剤の凝集が進行し、得られる塊(複合粒子)を構成する各正極活物質からなる粒子の表面に、導電剤及び結着剤がそれぞれ効果的な導電ネットワークを保ち十分に分散した状態で密着していないことを本発明者らは見出した。
より詳しくは、特許文献2に記載の技術では、図25に示すように、得られる塊(複合粒子)P100を構成する各正極活物質からなる粒子の中には、大きな結着剤からなる凝集体P33のみに囲まれて、該塊(複合粒子)P100中に電気的に孤立して利用されないものP11が多く存在することことを本発明者らは見出した。また、乾燥中に導電剤からなる粒子が凝集体となると、得られる塊(複合粒子)P100中で、導電剤からなる粒子が凝集体P22として偏在してしまい、該塊(複合粒子)P100中十分な電子伝導パス(電子伝導ネットワーク)を構築できず、十分な電子伝導性を得ることができていないことを本発明者らは見出した。更に、導電剤からなる粒子の凝集体P22が大きな結着剤からなる凝集体P33のみに囲まれて電気的に孤立することもあり、この観点からも該塊(複合粒子)P100中十分な電子伝導パス(電子伝導ネットワーク)を構築できず、十分な電子伝導性を得ることができていないことを本発明者らは見出した。
また、上述の特許文献1及び特許文献2に記載の複合粒子をはじめとする従来の電極では、電極の形状安定性を確保する観点から絶縁性或いは電子伝導性の低い結着剤(バインダー)を電極活物質及び導電助剤とともに使用するため、この観点からも電極の電子伝導性を確保することが十分にできていなかった。更に、上述の特許文献1及び特許文献2に記載の複合粒子を使用して電極を作成する場合においても結着剤を使用しているため、上記の問題が発生することを本発明者らは見出した。
更に、上記のリチウムイオン2次電池の他の種類の1次電池及び2次電池においても、先に述べた従来一般の製造方法(湿式法)、即ち、電極活物質、導電助剤及び結着剤を少なくとも含む塗布液又は混練物を用いる方法により製造した電極を有するものについては、上述と同様の問題があった。
更に、電池における電極活物質のかわりに電子伝導性の材料(炭素材料又は金属酸化物)を用い、これと導電助剤及び結着剤を少なくとも含む塗布液又は混練物を用いる方法により製造した電極を有するキャパシタ(電気二重層キャパシタとはじめとする電気化学キャパシタ等)及び電気分解セルにおいても、上述と同様の問題があった。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、電極の構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた電極特性を有する電極を容易かつ確実に形成することのできる電極用複合粒子の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた電極特性を得ることのできる電極の製造方法を提供することを目的とする。
更に、本発明は、電極の構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた充放電特性を得ることのできる電気化学素子の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、電極の構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた電極特性を有する電極を容易かつ確実に形成することのできる電極用複合粒子を容易かつ確実に製造可能な電極用複合粒子製造装置を提供することを目的とする。
更に、本発明は、構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた電極特性を得ることのできる電極を容易かつ確実に製造可能な電極製造装置を提供することを目的とする。
また本発明は、電極の構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた充放電特性を得ることのできる電気化学素子を容易かつ確実に製造可能な電気化学素子製造装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、従来の電極形成方法では、電極形成の際に先に述べた電極活物質、導電助剤及び結着剤を少なくとも含む塗布液(スラリー)又は混練物を用いる方法を採用しているため、得られる電極の活物質含有層中の電極活物質、導電助剤及び結着剤の分散状態が効果的な導電ネットワークを構築できていない状態、例えば、この分散状態が不均一となっていることが上述の問題の発生に対して大きな影響を及ぼしていることを見出した。
すなわち、特許文献1に記載の複合粒子をはじめとする従来の塗布液又は混練物を用いる方法では、塗布液又は混練物を集電部材の表面に塗布して当該表面に塗布液又は混練物からなる塗膜を形成し、この塗膜を乾燥させて溶媒を除去することにより活物質含有層を形成する。本発明者らは、この塗膜の乾燥の過程において、比重の軽い導電助剤及び結着剤が塗膜表面付近まで浮き上がってしまい、その結果、塗膜中の電極活物質、導電助剤及び結着剤の分散状態が効果的な導電ネットワークを構築できていない状態、例えば、この分散状態が不均一となり、電極活物質、導電助剤及び結着剤の三者間の密着性が充分に得られず、得られる活物質含有層中に良好な電子伝導パスが構築されなくなっていることを見出した。
更に、特許文献2に記載の複合粒子をはじめとする従来のスラリーを噴霧乾燥方式(spray drying)で造粒する方法では、同一のスラリー中に、正極活物質(カソードの活物質)、導電剤(導電助剤)、及び、結着剤を含ませているために、得られる造粒物(複合粒子)中の電極活物質、導電助剤及び結着剤の分散状態は、スラリー中の電極活物質、導電助剤及び結着剤の分散状態(特に、スラリーの液滴の乾燥が進行する過程での電極活物質、導電助剤及び結着剤の分散状態)に依存するため、先に図25を用いて述べた、結着剤の凝集とその偏在、及び、導電助剤の凝集とその偏在が起こり、得られる造粒物(複合粒子)中の電極活物質、導電助剤及び結着剤の分散状態が効果的な導電ネットワークを構築できていない状態、例えば、この分散状態が不均一となり、電極活物質、導電助剤及び結着剤の三者間の密着性が充分に得られず、得られる活物質含有層中に良好な電子伝導パスが構築されなくなっていることを見出した。
また、本発明者らは、この場合、導電助剤及び結着剤を電解液に接触し、電極反応に関与できる電極活物質の表面に選択的にかつ良好に分散させることができず、反応場で発生する電子を効率よく伝導させる電子伝導ネットワークの構築に寄与しない無駄な導電助剤が存在したり、単に電気抵抗を増大させるだけの存在となる無駄な結着剤が存在していることことを見出した。
更に、本発明者らは、特許文献1及び特許文献2の複合粒子をはじめとする従来技術では、塗膜中の電極活物質、導電助剤及び結着剤の分散状態が不均一となるため、集電体に対する電極活物質及び導電助剤の密着性も充分に得られていないことも見出した。特に、塗膜及びこれより得られる電極中の電極活物質、導電助剤及び結着剤の分散状態が不均一となり、これらの成分がそれぞれ電極中で偏在してしまう問題は、電極の厚さを大きくする場合に顕著となる。
すなわち、本発明は、電極活物質からなる粒子に対し、導電助剤と、電極活物質と導電助剤とを結着させることが可能な結着剤とを密着させて一体化することにより、電極活物質と、導電助剤と、結着剤とを含む電極用複合粒子を形成する造粒工程を有しており、
造粒工程は、
結着剤と導電助剤と溶媒とを含む原料液を調製する原料液調製工程と、
流動槽中に電極活物質からなる粒子を投入し、電極活物質からなる粒子を流動層化させる流動層化工程と、
電極活物質からなる粒子を含む流動層中に原料液を噴霧することにより、原料液を電極活物質からなる粒子に付着、乾燥させ、電極活物質からなる粒子の表面に付着した原料液から溶媒を除去し、結着剤により電極活物質からなる粒子と導電助剤からなる粒子とを密着させる噴霧乾燥工程と、
を含んでおり、かつ、
造粒工程を不活性ガス雰囲気中で行うこと、
を特徴とする電極用複合粒子の製造方法を提供する。
本発明の電極用複合粒子の製造方法により得られる複合粒子は、導電助剤、電極活物質及び結着剤のそれぞれを極めて良好な分散状態で互いに密着せしめた粒子である。そして、この複合粒子は、電極の活物質含有層を後述する乾式法により製造する際の粉体の主成分として使用されるか、又は、電極の活物質含有層を後述する湿式法により製造する際の塗布液又は混練物の構成材料に使用される。
この複合粒子内部には、極めて良好な電子伝導パス(電子伝導ネットワーク)が3次元的に構築されている。この電子伝導パスの構造は、電極の活物質含有層を後述する乾式法により製造する際の粉体の主成分として使用する場合には加熱処理により活物質含有層を形成した後においてもほぼ当初の状態を保持させることができる。また、この電子伝導パスの構造は、電極の活物質含有層を後述する湿式法により製造する際の塗布液又は混練物の構成材料として使用する場合、この複合粒子を含む塗布液又は混練物を調製した後においても、調製条件を調節すること(例えば、塗布液を調製する際の分散媒又は溶媒の選択等)によりほぼ当初の状態を保持させることが容易にできる。
そのため、上記の観点から、本発明の電極用複合粒子の製造方法により得られる複合粒子を構成材料として用いることにより、十分な電気化学的特性を得ることのできる電極及び電気化学素子を得ることができる。
ここで、本発明において、複合粒子の構成材料となる「電極活物質」とは、形成すべき電極により以下の物質を示す。すなわち、形成すべき電極が1次電池のアノードとして使用される電極の場合には「電極活物質」とは還元剤を示し、1次電池のカソードの場合には「電極活物質」とは酸化剤を示す。また、「電極活物質よりなる粒子」中には、本発明の機能(電極活物質の機能)を損なわない程度の電極活物質以外の物質が入っていてもよい。
また、形成すべき電極が2次電池に使用されるアノード(放電時)の場合には、「電極活物質」とは還元剤であって、その還元体及び酸化体の何れの状態においても化学的安定に存在可能な物質であり、酸化体から還元体への還元反応及び還元体から酸化体への酸化反応が可逆的に進行可能である物質を示す。更に、形成すべき電極が2次電池に使用されるカソード(放電時)の場合には、「電極活物質」とは酸化剤であって、その還元体及び酸化体の何れの状態においても化学的安定に存在可能な物質であり、酸化体から還元体への還元反応及び還元体から酸化体への酸化反応が可逆的に進行可能である物質を示す。
また、上記以外にも、形成すべき電極が1次電池及び2次電池に使用される電極の場合、「電極活物質」は、電極反応に関与する金属イオンを吸蔵又は放出(インターカレート、又は、ドープ・脱ドープ)することが可能な材料であってもよい。この材料としては、例えば、リチウムイオン2次電池のアノード及び/又はカソードに使用される炭素材料や、金属酸化物(複合金属酸化物を含む)等が挙げられる。
なお、説明の便宜上、本明細書においては、アノードの電極活物質を「アノード活物質」といい、カソードの電極活物質を「カソード活物質」という。この場合の「アノード活物質」という場合の「アノード」とは、電池の放電時の極性を基準とするもの(負極活物質)であり、「カソード活物質」という場合の「カソード」は、電池の放電時の極性を基準とするもの(正極活物質)である。アノード活物質及びカソード活物質の具体的な例示については後述する。
また、形成すべき電極が電気分解セルに使用される電極又はキャパシタ(コンデンサ)に使用される電極の場合には、「電極活物質」とは、電子伝導性を有する、金属(金属合金を含む)、金属酸化物又は炭素材料を示す。
上述の構成の造粒工程を採用することにより、先に述べた極めて良好な電子伝導パス(電子伝導ネットワーク)が3次元的に構築された複合粒子をより確実に形成することができるようになる。
そして、造粒工程を経て得られる電極用複合粒子を用いて形成される電極は、上記の複合粒子の構造を維持した状態で形成され、活物質含有層において、「電極活物質と導電助剤とが孤立せずに電気的に結合している」状態が実現される。そのため、活物質含有層中には、極めて良好な電子伝導パス(電子伝導ネットワーク)が3次元的に構築される。
ここで、「複合粒子中において、電極活物質と導電助剤とが孤立せずに電気的に結合していること」とは、活物質含有層において、電極活物質からなる粒子(又はその凝集体)と導電助剤からなる粒子(又はその凝集体)とが「実質的に」孤立せずに電気的に結合していることを示す。より詳しくは、電極活物質からなる粒子(又はその凝集体)と導電助剤からなる粒子が完全に孤立せずに電気的に結合しているのではなく、本発明の効果を得られる水準の電気抵抗を達成できる範囲で電気的に結合していることを示す。
そして、この「複合粒子中において、電極活物質と導電助剤とが孤立せずに電気的に結合している」状態は、本発明の電極の複合粒子中の断面のSEM(Scaning Electron Micro Scope:走査型電子顕微鏡)写真、TEM(Transmission Electron Microscope:透過型電子顕微鏡)写真及びEDX(Energy Dispersive X‐ray Fluorescence Spectrometer:エネルギー分散型X線分析装置)分析データにより確認することができる。また、本発明の電極は、その複合粒子中の断面のSEM写真、TEM写真及びEDX分析データと、従来の電極(又は複合粒子)のSEM写真、TEM写真及びEDX分析データとを比較することにより、従来の電極(又は複合粒子)と明確に区別することができる。
より詳しくは、上述の造粒工程では、流動槽中において、電極活物質からなる粒子に、導電助剤と結着剤とを含む原料液の微小な液滴を直接噴霧するため、複合粒子を構成する各構成粒子の凝集の進行を十分に防止でき、その結果、得られる複合粒子中の各構成粒子の偏在化を十分に防止できる。また、導電助剤及び結着剤を電解液に接触し、電極反応に関与できる電極活物質の表面に選択的にかつ良好に分散させることができる。
そのため、複合粒子は、導電助剤、電極活物質及び結着剤のそれぞれを極めて良好な分散状態で互いに密着せしめた粒子となる。また、本発明の複合粒子は、造粒工程において、流動槽中の温度、流動槽中に噴霧する原料液の噴霧量、流動槽中に発生させる流体流(例えば、気流)中に投入する電極活物質の投入量、流動層の速度、流動層(流体流)の流れ(循環)の様式(層流、乱流等)等を調節することにより、その粒子サイズ及び形状を任意に調節することができる。
このように上述の造粒工程では、流動している粒子に導電助剤等を含む原料液の液滴を直接噴霧できればよいため、その流動の方法は特に限定されず、例えば、気流を発生させてこの気流により、粒子を流動させる流動槽や、撹拌羽により粒子を回転流動させる流動槽や、振動により粒子を流動させる流動槽等を用いることができる。但し、電極用複合粒子の製造方法においては、乾燥効率を良くし、また、得られる複合粒子の形状・大きさを均一とする観点から、流動層化工程において、流動槽中に気流を発生させ、該気流中に前記電極活物質からなる粒子を投入し、前記電極活物質からなる粒子を流動層化させることが好ましい。
この複合粒子内部には、極めて良好な電子伝導パス(電子伝導ネットワーク)が3次元的に構築されている。その結果、本発明者らは、本発明の電気化学素子に使用される電極(複合粒子)内には従来の電極に比較して極めて良好な電子伝導パス(電子伝導ネットワーク)が3次元的に構築されていると推察している。
ここで、本発明における造粒工程において、上述の「電極活物質からなる粒子に導電助剤と結着剤とを密着させて一体化すること」とは、電極活物質からなる粒子の表面の少なくとも一部分に、導電助剤からなる粒子と結着剤からなる粒子とをそれそれ接触させた状態とすることを示す。すなわち、電極活物質からなる粒子の表面は、導電助剤からなる粒子と結着剤からなる粒子とによりその一部が覆われていれば十分であり、全体が覆われている必要は無い。なお、本発明の複合粒子の製造方法の造粒工程において使用する「結着剤」は、これとともに使用される電極活物質と導電助剤とを結着させることが可能なものを示す。
ここで本発明において、「不活性ガス」とは、希ガス及び窒素ガスを示す。また、「不活性ガス雰囲気」とは、不活性ガスの割合が99.9%以上、好ましくは99.9%以上でありかつ、相対湿度が0.5%(露点温度で約−40℃)以下、好ましくは0.04%(露点温度で約−60℃)以下であり、酸素の割合が10ppm以下、好ましくは1ppm以下である雰囲気を示す。
本発明の電極用複合粒子の製造方法においては、このように、造粒工程を不活性ガス雰囲気中でおこなう。これにより、全製造工程にわたって、電極活物質からなる粒子の表面が大気中などの水分及び酸素を含む雰囲気中に曝されることを十分に防止することができる。そのため、この観点からも、本発明の電極用複合粒子の製造方法により得られる複合粒子を構成材料として用いることにより、十分な電気化学的特性を得ることのできる電極及び電気化学素子を得ることができる。
ここで、例えば、電極活物質からなる粒子の表面に分が付着したり、該表面で酸素との反応が進行して表面に酸素含有官能基(カルボキシ基、カルボニル基等)が結合すると、電気化学特性の向上が期待されるほど十分に得られなくなることを本発明者らは見出した。
例えば、電極中の炭素材料に水分が付着している場合には、電気化学素子に電圧印加した際にこの水が容易に分解し、不可逆容量の発生要因となりサイクル特性が低下する。更に、電極中において、水の分解により発生するガスが存在するか或いは水が水蒸気として存在することにより十分な電気二重層が形成できず容量が低下する。更に、水分(液体又は固体)が付着していると電極のインピーダンスが増加して、サイクル特性が低下する。また、電極中の微量の水分により、特に高温(45℃以上)における非水電解質溶液の分解反応が促進されるため、特に高温(45℃以上)保存時における安定性が低下する。更に、酸素含有官能基が存在すると、十分な電気二重層が形成できず容量が低下する。
なお、造粒工程以降の製造工程における「不活性ガス雰囲気」は、造粒工程以降の製造工程をドライルーム又はグローブボックス等の「不活性ガス雰囲気形成手段」を用いて行うことにより実現することができる。
また、電極活物質からなる粒子が電子伝導性を有する炭素材料を主成分とする粒子の場合には、本発明の電極用複合粒子の製造方法においては、プラズマガス雰囲気中において、炭素質材料からなる原料に対して高周波熱プラズマ処理を施すことにより電子伝導性を有する電極活物質からなる粒子を得るプラズマ処理工程を更に有しており、造粒工程は、プラズマ処理工程後に得られる電極活物質からなる粒子を用いて行われ、かつ、プラズマ処理工程後における製造工程を不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。ここで、「炭素質材料からなる原料」とは、上記の高周波熱プラズマ処理を施すことにより電子伝導性を有する炭素材料となるものをいう。この炭素質材料からなる原料自体は電子伝導性を必ずしも有していなくてもよい。この場合の炭素質材料としては、炭素材料のほかに炭素を構成元素として含む樹脂材料が含まれる。例えば、黒鉛、ピッチ系材料、ヤシガラ、フェノール樹脂等が挙げられる。
電池の充放電電位、可逆容量、サイクル特性といった電気化学特性は、アノード活物質(負極活物質)として用いられる炭素材料の結晶化度(黒鉛化度)、表面形態、内部構造、表面化学組成などに強く依存する。また、アノード活物質に炭素材料を用いたリチウムイオン二次電池では、初回の充電時にアノード活物質表面上に形成されるSEI(Solid Electrolyte Interface)による特性への影響が大きい。SEIは、アノード活物質と電解液との反応によって生成し、いったんSEIが形成されるとそれ以上の反応が抑制されるため、黒鉛の層間へのリチウム挿入が可能となる。しかし、SEIは、不可逆容量を生む原因の一つでもある。また、電池の安全性に関わる熱安定性は、SEIの安定性に左右される。SEIは、アノード活物質と電解液との反応により形成されるという機構上、カルボキシ基やカルボニル基などの含酸素官能基の炭素粒子表面における量や、炭素粒子の表面結晶性といった炭素材料の表面構造の影響を大きく受ける。
詳細なメカニズムについては解明されていないが、一般に、電気化学キャパシタの可逆容量、耐電圧特性、サイクル特性、高温保存時の安定性といった電気化学特性は、電極活物質となる炭素材料からなる粒子の結晶化度(黒鉛化度)、表面形態、内部構造、表面化学組成、吸着水分量などに大きな影響を受けることが知られている。また、炭素材料の粒子表面における、カルボキシ基やカルボニル基などの含酸素官能基の量も上記の電気化学特性に大きな影響を与えることが知られている。
そして、このような問題点を解決し、良好な電極特性及び電池特性を得ること、特に、不可逆容量を低減することが望まれている。
例えば、本発明者らは、高周波熱プラズマ処理後に得られる炭素材料のうち大気中(温度:25℃、相対湿度:45%)に2時間放置したものについて、昇温脱離質量分析計(TDS)により測定を行ったところ、水酸基に由来するガスが炭素材料表面から大量に発生することを確認した。
上述のように、プラズマ処理工程を用いた場合、プラズマ処理工程後の製造工程を不活性ガス雰囲気中で行なうことにより、プラズマ処理により得られる電極活物質となる炭素材料の表面を清浄化するとともに、その表面の物理的状態及び化学的状態を十分な電気化学的特性を得るために適した状態を保持することができる。
そして、プラズマ処理工程を用いた場合の本発明の電極用炭素材料は、このような高周波熱プラズマ処理が施されているため、材料表面近傍が乱層構造化しており、且つ、材料表面に存在していた微量の酸素や水素を除去して表面が改質される。特に、本発明においては、上記プラズマ処理をプラズマガス雰囲気中で行うため、SEIの生成反応を良好なものとし、且つ、SEIの安定性を向上させることができる。そして、SEIによって生じる不可逆容量を十分に低減することができできる。
そのため、上記の観点から、この炭素材料を用いて形成された電極用複合粒子を構成材料として用いることにより、十分な電気化学的特性を得ることのできる電極及び電気化学素子を得ることができる。特に、電極及び電気化学素子の可逆容量及び充放電効率(初回充放電効率)を向上させることができる。
ここで、「高周波熱プラズマ」は、中圧(10〜70kPa程度)から1気圧において発生するプラズマであり、通常の低圧プラズマと異なり熱平衡に近いプラズマが得られるため、単にプラズマ等で局所的な反応を行うだけでなく、系に存在する物質まで高温にすることができる。したがって、高周波熱プラズマにより高温相の生成及び表面改質の両方が可能になる。具体的な現象としては、例えばプラズマガスにN2を用いたときの表面の窒素化、H2を用いたときの表面の水素化、あるいは原子レベルでの物理的破壊、あるいは粒子表面のクリーニング等が考えられる。
高周波熱プラズマを炭素質材料からなる粒子の表面処理に用いる場合、炭素材料からなる粒子の「原料」(炭素質材料からなる粒子)を高周波熱プラズマ雰囲気を用いて超高温処理によって黒鉛化し、更に、表面をイオン、ラジカル等で叩いて修飾する。
そして、本発明の複合粒子の製造方法のプラズマ処理工程により得られる電極の構成材料となる炭素材料は、このような高周波熱プラズマ処理が施されているため、材料表面近傍が乱層構造化しており、且つ、材料表面に存在していた微量の酸素や水素が該表面と反応し、新たな官能基が導入されるなど、十分な電気化学的特性を得るために適した表面の状態が実現されていると考えられる。
また、本発明においては、複合粒子を形成する際に構成材料としてイオン伝導性を有する導電性高分子を更に添加することによっても、複合粒子(すなわち電極)内に極めて良好なイオン伝導パスを容易に構築することができる。
更に、複合粒子の構成材料となる結着剤としてイオン伝導性を有する導電性高分子を使用可能な場合には、イオン伝導性を有する導電性高分子を使用してもよい。イオン伝導性を有する結着剤も電極(複合粒子)内のイオン伝導パスの構築に寄与すると考えられる。この複合粒子を用いることにより複合粒子からなるポリマー電極を形成することができる。また、複合粒子の構成材料となる結着剤として、電子伝導性を有する高分子電解質を使用してもよい。
このような構成とすることにより、本発明では、従来の電極よりも優れた電子伝導性及びイオン伝導性を有する電極を容易かつ確実に形成することができる。複合粒子からなる電極は、その内部で進行する電荷移動反応の反応場となる導電助剤、電極活物質及び電解質(固体電解質又は液状電解質)との接触界面が、3次元的にかつ充分な大きさで形成されている。
また、本発明においては、導電助剤、電極活物質及び結着剤のそれぞれの分散状態が極めて良好な複合粒子を予め形成するため、導電助剤及び結着剤の添加量を従来よりも充分に削減できる。
なお、本発明において、導電性高分子を用いる場合、導電性高分子は、先に述べた複合粒子の構成要素となる導電性高分子と同種であっても異種であってもよい。
また、本発明においては、先に述べた構造を有する複合粒子をより容易かつより確実に形成する観点から、造粒工程は、流動槽中の温度を50℃以上で、結着剤の融点を大幅に越えない温度に調節することが好ましく、流動槽中の温度を50℃以上で、結着剤の融点以下に調節することがより好ましい。この結着剤の融点とは、その結着剤の種類にもよるが、例えば200℃程度である。流動槽中の温度が50℃未満となると、噴霧中の溶媒の乾燥が不十分となる傾向が大きくなる。流動槽中の温度が結着剤の融点を大幅に越えると、結着剤が溶融し粒子の形成に大きな支障をきたす傾向が大きくなる。流動槽中の温度が結着剤の融点よりも若干上回る程度の温度であれば、条件により上記の問題の発生を十分に防止することができる。また、流動槽中の温度が結着剤の融点以下であれば、上記の問題は発生しない。
更に、本発明においては、先に述べた構造を有する複合粒子をより容易かつより確実に形成する観点から、造粒工程において、流動槽中に発生させる気流は不活性ガスからなる気流であることが好ましい。更に、造粒工程において、流動槽中の湿度(相対湿度)は、上記の好ましい温度範囲において露点−40℃以下とすることが好ましい。「不活性ガス」とは、先にも述べたように希ガス及び窒素ガスに属するガスを示す。
また、本発明においては、造粒工程において、原料液に含まれる溶媒は結着剤を溶解可能又は分散可能であるとともに導電助剤を分散可能であることが好ましい。これによっても、得られる複合粒子中の結着剤、導電助剤及び電極活物質の分散性をより高めることができる。複合粒子中の結着剤、導電助剤及び電極活物質の分散性をより高める観点から、原料液に含まれる溶媒は結着剤を溶解可能であるとともに導電助剤を分散可能であることがより好ましい。
また、本発明においては、複合粒子中の結着剤、導電助剤及び電極活物質の分散性をより確実に高める観点から、原料液に含まれる上記溶媒中の水分の割合が100ppm以下であることが好ましい。溶媒中の水分の割合が100ppmを超えると、複合粒子に吸着する水分が多くなり、電気化学反応における副反応による損失が増加する傾向にある。
更に、本発明においては、造粒工程の後、得られる電極用複合粒子を不活性ガス雰囲気中で密閉した状態で保存可能なケース内に密閉する粒子保存工程を更に含むことを特徴としていてもよい。これにより、製造した電極用複合粒子に含まれる電極活物質(炭素材料又は金属酸化物)の清浄化された表面をより確実に保持することが可能となる。
また、本発明は、電極活物質を含む導電性の活物質含有層と、活物質含有層に電気的に接触した状態で配置される導電性の集電体と、を少なくとも有する電極の製造方法であって、
先に述べた本発明の電極用複合粒子の製造方法のうちの何れかにより電極用複合粒子を形成する複合粒子形成工程と、
集電体の活物質含有層を形成すべき部位に、複合粒子を用いて活物質含有層を形成する活物質含有層形成工程と、
を有しており、かつ
全ての製造工程を不活性ガス雰囲気中で行うこと、
を特徴とする電極の製造方法を提供する。
このように、先に述べた本発明の電極用複合粒子の製造方法により得られる電極用複合粒子を用いて活物質含有層を形成することにより、構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた電極特性を得ることのできる電極を得ることができる。また、先に述べたプラズマ処理を導入する場合には、更に、不可逆容量を十分に低減することが可能な電極を得ることができる。
また、本発明の電極の製造方法において、活物質含有層形成工程は、複合粒子を少なくとも含む粉体に加熱処理及び加圧処理を施してシート化し、複合粒子を少なくとも含むシートを得るシート化工程と、シートを活物質含有層として集電体上に配置する活物質含有層配置工程と、を有すること、を特徴としていてもよい。このように乾式法を採用しても先に述べた構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた電極特性を得ることのできる電極、及び、不可逆容量を十分に低減することが可能な優れた電極特性を有する電極をより確実に得ることができる。
ここで、「複合粒子を少なくとも含む粉体」は、複合粒子のみからなるものであってもよい。また、「複合粒子を少なくとも含む粉体」には、結着剤及び/又は導電助剤が更に含まれていてもよい。このように粉体に複合粒子以外の構成成分が含まれる場合、粉体中の複合粒子の割合は、粉体の総質量を基準として、80質量%以上であることが好ましい。
また、本発明の電極の製造方法においては、シート化工程を、熱ロールプレス機を用いて行なうことが好ましい。熱ロールプレス機は、1対の熱ロールを有しており、この1対の熱ロールの間に「複合粒子を少なくとも含む粉体」を投入し、加熱及び加圧してシート化する構成を有するものである。これにより、活物質含有層となるシートを容易かつ確実に形成することができる。
以上のように本発明の電極の製造方法においては、活物質含有層形成工程において複合粒子を用いて乾式法により活物質含有層を形成してもよいが、以下のように湿式法により活物質含有層を形成しても先に述べた本発明の効果を得ることができる。
すなわち、本発明の電極の製造方法においては、活物質含有層形成工程は、複合粒子を分散又は混練可能な液体に複合粒子を添加して電極形成用塗布液を調製する塗布液調製工程と、集電体の活物質含有層を形成すべき部位に、電極形成用塗布液を塗布する工程と、集電体の活物質含有層を形成すべき部位に塗布された電極形成用塗布液からなる液膜を固化させる工程と、を含むこと、を特徴としていてもよい。
この場合にも、構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた電極特性を得ることのできる電極、及び、不可逆容量を十分に低減することが可能な優れた電極特性を有する電極を容易かつ確実に得ることができる。ここで、「複合粒子を分散可能な液体」とは、複合粒子中の結着剤を溶解しない液体であることが好ましいが、活物質含有層を形成する過程において、複合粒子同士の電気的接触を十分に確保できて本発明の効果を得られる範囲であれば複合粒子の表面近傍の結着剤を一部溶解させる特性を有するものであってもよい。なお、本発明の効果を得られる範囲であれば、複合粒子を分散可能な液体には複合粒子の他の成分として、結着剤、及び、導電助剤が更に添加されていてもよい。この場合の他の成分として添加される結着剤は、「複合粒子を分散可能な液体」に溶解可能な結着剤である。
また、活物質含有層形成工程において、複合粒子を混練可能な液体を使用する場合、この液体に複合粒子を添加して複合粒子を含む電極形成用混練物を調製する混練物調製工程と、集電体の活物質含有層を形成すべき部位に、電極形成用混練物を塗布する工程と、集電体の活物質含有層を形成すべき部位に塗布された電極形成用混練物からなる塗膜を固化させる工程と、を含むこと、を特徴としていてもよい。
この場合にも、構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた電極特性を得ることのできる電極、及び、不可逆容量を十分に低減することが可能な優れた電極特性を有する電極を容易かつ確実に得ることができる。
また、本発明の電極の製造方法においては、活物質含有層形成工程の後、得られる電極を不活性ガス雰囲気中で密閉した状態で保存可能なケース内に密閉する電極保存工程を更に含むこと、を特徴としていてもよい。これにより、製造した電極に含まれる電極用複合粒子中の電極活物質(炭素材料又は金属酸化物)の清浄化された表面をより確実に保持することが可能となる。
更に、本発明は、アノードと、カソードと、イオン伝導性を有する電解質層とを少なくとも備えており、アノードとカソードとが電解質層を介して対向配置された構成を有する電気化学素子の製造方法であって、
アノード及びカソードのうちの少なくとも一方の電極として、先に述べた本発明の電極の製造方法のうちの何れかにより電極を形成する電極形成工程を有しており、
電極形成工程により得られる電極が常に不活性ガス雰囲気中におかれた状態で、全ての製造工程を行うこと、
を特徴とする電気化学素子の製造方法を提供する。
上述した本発明の電極の製造方法により得られる電極を、アノード及びカソードのうちの少なくとも一方、好ましくは両方として使用することにより、不可逆容量を十分に低減することが可能な優れた充放電特性を有する電気化学素子を容易かつ確実に得ることができる。
ここで、本明細書において、「電気化学素子」とは、互いに対向する第1の電極(アノード)及び第2の電極(カソード)とを少なくとも有しており、これら第1の電極と第2の電極との間に配置されるイオン伝導性を有する電解質層を少なくとも備えた構成を有するものを示す。また、「イオン伝導性を有する電解質層」とは、(1)絶縁性材料から形成された多孔質のセパレータであって、その内部に電解質溶液(或いは電解質溶液にゲル化剤を添加することにより得られるゲル状の電解質)が含浸されているもの、(2)固体電解質膜(固体高分子電解質からなる膜又はイオン伝導性無機材料を含む膜)、(3)電解質溶液にゲル化剤を添加することにより得られるゲル状の電解質からなる層、(4)電解質溶液からなる層を示す。
なお、上記(1)〜(4)の構成の何れの場合にも、第1の電極及び第2の電極の内部にもそれぞれに使用される電解質が含有されている構成を有していてもよい。
また、本明細書においては、(1)〜(3)の構成において、第1の電極(アノード)、電解質層、第2の電極(カソード)からなる積層体を、必要に応じて「素体」という。更に、素体は、上記(1)〜(3)の構成のように、3層構造のものの他に、上記電極と電解質層とが交互に積層された5層以上の構成を有していてもよい。
また、上記(1)〜(4)の構成の何れの場合にも、電気化学素子は、複数の単位セルを1つのケース内に直列或いは並列に配置させたモジュールの構成を有していてもよい。
また、本発明の電気化学素子の製造方法により得られる電気化学素子は、電解質層が固体電解質からなることを特徴としていてもよい。この場合、固体電解質が、セラミックス固体電解質、固体高分子電解質、又は、液状電解質にゲル化剤を添加して得られるゲル状電解質からなることを特徴としていてもよい。
この場合には、構成要素が全て固体である電気化学素子(例えば、いわゆる「全固体型電池」)を構成することができる。これにより電気化学素子の軽量化、エネルギー密度の向上及び安全性の向上をより容易に図ることができる。
電気化学素子として「全固体型電池」を構成した場合(特に全固体型のリチウムイオン2次電池を構成した場合)には、下記(I)〜(IV)の利点を有する。即ち、(I)電解質層が液状電解液ではなく固体電解質からなるため、液漏れの発生がなく、優れた耐熱性(高温安定性)を得ることができ、電解質成分と電極活物質との反応を十分に防止できる。そのため、優れた電池の安全性及び信頼性を得ることができる。(II)液状電解液からなる電解質層では困難であった金属リチウムをアノードとして使用すること(いわゆる「金属リチウム2次電池」を構成すること)が容易にでき、更なるエネルギー密度の向上を図ることができる。(III)複数の単位セルを1つのケース内に配置させたモジュールを構成する場合に、液状電解液からなる電解質層では実現不可能であった複数の単位セルの直列接合が可能になる。そのため、様々な出力電圧、特に比較的大きな出力電圧を有するモジュールを構成することができる。(IV)液状電解液からなる電解質層を備える場合に比較して、採用可能な電池形状の自由度が広くなると共に電池をコンパクトに構成することが容易にできる。そのため、電源として搭載される携帯機器等の機器内の設置条件(設置位置、設置スペースの大きさ及び、設置スペースの形状等の条件)に容易に適合させることができる。
また、本発明の電気化学素子の製造方法においては、電解質層が、絶縁性の多孔体からなるセパレータと、セパレータ中に含侵された液状電解質又は固体電解質と、からなることを特徴としてもよい。この場合にも固体電解質を用いる場合は、セラミックス固体電解質、固体高分子電解質、又は、液状電解質にゲル化剤を添加して得られるゲル状電解質を使用することができる。
また、本発明は、不活性ガス雰囲気中で、電極活物質からなる粒子に対し、導電助剤と、電極活物質と導電助剤とを結着させることが可能な結着剤とを密着させて一体化することにより、電極活物質と、導電助剤と、結着剤とを含む電極用複合粒子を形成する造粒処理を行う造粒処理部と、
全ての製造工程を不活性ガス雰囲気中で行うための不活性ガス雰囲気形成手段と、
を有していること、
を特徴とする電極用複合粒子製造装置を提供する。
このように、先に述べた本発明の電極用複合粒子の製造方法に基づいて作動する造粒処理部、及び不活性ガス雰囲気形成手段を設けることにより得られる電極用複合粒子を用いて活物質含有層を形成することにより、電極の構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた電極特性を有する電極を容易かつ確実に形成することのできる電極用複合粒子を容易かつ確実に得ることができる。
また、電極活物質からなる粒子が電子伝導性を有する炭素材料を主成分とする粒子の場合には、本発明の電極用複合粒子製造装置は、プラズマガス雰囲気中において、炭素質材料からなる原料に対して高周波熱プラズマ処理を施すことにより電子伝導性を有する電極活物質からなる粒子を得るプラズマ処理を行うプラズマ処理部を更に備えており、造粒処理部における造粒処理は、プラズマ処理工程後に得られる電極活物質からなる粒子を用いて行われ、かつ、プラズマ処理工程後における全ての製造工程を不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
このように、先に述べた本発明の電極用複合粒子の製造方法に基づいて作動する造粒処理部、及び不活性ガス雰囲気形成手段を設けることによりより得られる電極用複合粒子を用いて活物質含有層を形成することにより、構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた電極特性を得ることのできる電極を容易かつ確実に形成可能な電極用複合粒子、及び、不可逆容量を十分に低減することが可能な電極用複合粒子をより容易かつ確実に得ることができる。
更に、本発明の電極用複合粒子製造装置は、造粒処理の後、得られる電極用複合粒子を前記不活性ガス雰囲気中で密閉した状態で保存可能なケース内に密閉する粒子保存処理を行う粒子保存処理部を更に備えていること、を特徴としていてもよい。これにより、製造した電極用複合粒子に含まれる電極活物質(炭素材料又は金属酸化物)の清浄化された表面をより確実に保持することが可能となる。
また、本発明は、電極活物質を含む導電性の活物質含有層と、活物質含有層に電気的に接触した状態で配置される導電性の集電体と、を少なくとも有する電極を製造するための電極製造装置であって、
不活性ガス雰囲気中で、電極活物質からなる粒子に対し、導電助剤と、電極活物質と導電助剤とを結着させることが可能な結着剤とを密着させて一体化することにより、電極活物質と、導電助剤と、結着剤とを含む電極用複合粒子を形成する造粒処理を行う造粒処理部と、
集電体の活物質含有層を形成すべき部位に、複合粒子を用いて活物質含有層を形成する活物質含有層形成処理部と、
全ての製造工程を不活性ガス雰囲気中で行うための不活性ガス雰囲気形成手段と、
を有していること、
を特徴とする電極製造装置を提供する。
このように、先に述べた本発明の電極用複合粒子の製造方法及び本発明の電極の製造方法に基づいて作動するプラズマ処理部、造粒処理部、活物質含有層形成処理部及び不活性ガス雰囲気形成手段を備えることにより、構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた電極特性を得ることのできる電極電極を容易かつ確実に得ることができる。
また、電極活物質からなる粒子が電子伝導性を有する炭素材料を主成分とする粒子の場合には、本発明の電極製造装置は、プラズマガス雰囲気中において、炭素質材料からなる原料に対して高周波熱プラズマ処理を施すことにより電子伝導性を有する電極活物質からなる粒子を得るプラズマ処理を行うプラズマ処理部を更に備えており、造粒処理部における造粒処理は、プラズマ処理工程後に得られる電極活物質からなる粒子を用いて行われ、かつ、プラズマ処理工程後における製造工程を不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
このように、先に述べた本発明の電極用複合粒子の製造方法及び本発明の電極の製造方法に基づいて作動するプラズマ処理部、造粒処理部、活物質含有層形成処理部及び不活性ガス雰囲気形成手段を備えることにより、構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた電極特性を得ることのできる電極、及び、不可逆容量を十分に低減することが可能な電極を容易かつ確実に得ることができる。
更に、本発明の電極製造装置は、活物質含有層形成処理部において前記活物質含有層を形成した後、得られる電極を前記不活性ガス雰囲気中で密閉した状態で保存可能なケース内に密閉する電極保存処理を行う電極保存処理部を更に備えていること、を特徴としていてもよい。これにより、製造した電極の活物質含有層に含まれる電極用複合粒子中の電極活物質(炭素材料又は金属酸化物)の清浄化された表面をより確実に保持することが可能となる。
また、本発明は、アノードと、カソードと、イオン伝導性を有する電解質層とを少なくとも備えており、アノードとカソードとが電解質層を介して対向配置された構成を有し、かつ、アノード及びカソードが電極活物質を含む導電性の活物質含有層と、活物質含有層に電気的に接触した状態で配置される導電性の集電体と、を少なくとも有する構成を有する電気化学素子を製造するための電気化学素子製造装置であって、
不活性ガス雰囲気中で、電極活物質からなる粒子に対し、導電助剤と、電極活物質と導電助剤とを結着させることが可能な結着剤とを密着させて一体化することにより、電極活物質と、導電助剤と、結着剤とを含む電極用複合粒子を形成する造粒処理を行う造粒処理部と、
集電体の活物質含有層を形成すべき部位に、複合粒子を用いて活物質含有層を形成する活物質含有層形成処理部と、
集電体と活物質含有層との積層体を、アノード及びカソードのうちの少なくとも一方の電極として使用し、電気化学素子を組み立てる素子組立処理部と、
全ての製造工程を不活性ガス雰囲気中で行うための不活性ガス雰囲気形成手段と、
を有していること、
を特徴とする電気化学素子製造装置を提供する。
このように、先に述べた本発明の電極用複合粒子の製造方法、本発明の電極の製造方法及び本発明の電気化学素子の製造方法に基づいて作動するプラズマ処理部、造粒処理部、活物質含有層形成処理部、素子組立処理部及び不活性ガス雰囲気形成手段を備えることにより、電極の構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた充放電特性を得ることのできる電気化学素子を容易かつ確実に得ることができる。
また、電極活物質からなる粒子が電子伝導性を有する炭素材料を主成分とする粒子の場合には、本発明の電気化学素子製造装置は、プラズマガス雰囲気中において、炭素質材料からなる原料に対して高周波熱プラズマ処理を施すことにより電子伝導性を有する電極活物質からなる粒子を得るプラズマ処理を行うプラズマ処理部を更に備えており、造粒処理部における造粒処理は、プラズマ処理工程後に得られる電極活物質からなる粒子を用いて行われ、かつ、プラズマ処理工程後における全ての製造工程を不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
このように、先に述べた本発明の電極用複合粒子の製造方法、本発明の電極の製造方法及び本発明の電気化学素子の製造方法に基づいて作動するプラズマ処理部、造粒処理部、活物質含有層形成処理部、素子組立処理部及び不活性ガス雰囲気形成手段を備えることにより、電極の構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた充放電特性を得ることのできる電気化学素子、及び、不可逆容量を十分に低減することが可能な電気化学素子を容易かつ確実に得ることができる。
本発明によれば、電極の構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた電極特性を有する電極を容易かつ確実に形成することのできる電極用複合粒子の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた電極特性を得ることのできる電極の製造方法を提供することができる。
更に、本発明によれば、電極の構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた充放電特性を得ることのできる電気化学素子の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、電極の構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた電極特性を有する電極を容易かつ確実に形成することのできる電極用複合粒子を容易かつ確実に製造可能な電極用複合粒子製造装置を提供することができる。
更に、本発明によれば、構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた電極特性を得ることのできる電極を容易かつ確実に製造可能な電極製造装置を提供することができる。
また、本発明によれば、電極の構成材料に結着剤を使用した場合であっても、優れた充放電特性を得ることのできる電気化学素子を容易かつ確実に製造可能な電気化学素子製造装置を提供することができる。
以下、図面を参照しながら本発明のリチウムイオン2次電池の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
本発明の製造方法及び本発明の製造装置の好適な一実施形態により製造される電気化学素子の好適な基本構成について説明する。図1は本発明の製造方法の好適な一実施形態により製造される電気化学素子の一例(リチウムイオン2次電池)の基本構成を示す正面図である。また、図2は図1に示す電気化学素子の内部をアノード10の表面の法線方向からみた場合の展開図である。更に、図3は図1に示す電気化学素子を図1のX1−X1線に沿って切断した場合の模式断面図である。また、図4は図1に示す電気化学素子を図1のX2−X2線に沿って切断した場合の要部を示す模式断面図である。また、図5は図1に示す電気化学素子を図1のY−Y線に沿って切断した場合の要部を示す模式断面図である。
図1〜図5に示すように、リチウムイオン2次電池1は、主として、互いに対向する板状のアノード10及び板状のカソード20と、アノード10とカソード20との間に隣接して配置される板状の電解質層40(セパレータ等)と、非水電解質溶液と、これらを密閉した状態で収容するケース50と、アノード10に一方の端部が電気的に接続されると共に他方の端部がケース50の外部に突出されるアノード用リード12と、カソード20に一方の端部が電気的に接続されると共に他方の端部がケース50の外部に突出されるカソード用リード22とから構成されている。ここで、「アノード」10及び「カソード」20は説明の便宜上、リチウムイオン2次電池1の放電時の極性を基準に決定したものである。従って、充電時には、「アノード10」が「カソード」となり、「カソード20」が「アノード」となる。
そして、リチウムイオン2次電池1は、先に述べた本発明の目的を達成するために、以下に説明する構成を有している。以下に図1〜図9に基づいて本実施形態の各構成要素の詳細を説明する。
ケース50は、互いに対向する一対のフィルム(第1のフィルム51及び第2のフィルム52)を用いて形成されている。ここで、図2に示すように、本実施形態における第1のフィルム51及び第2のフィルム52は連結している。すなわち、本実施形態におけるケース50は、一枚の複合包装フィルムからなる矩形状のフィルムを、図2に示す折り曲げ線X3−X3において折り曲げ、矩形状のフィルムの対向する1組の縁部同士(図中の第1のフィルム51の縁部51B及び第2のフィルム52の縁部52B)を重ね合せて接着剤を用いるか又はヒートシールを行うことにより形成されている。
そして、第1のフィルム51及び第2のフィルム52は、1枚の矩形状のフィルム53を上述のように折り曲げた際にできる互いに対向する面を有する該フィルムの部分をそれぞれ示す。ここで、本明細書において、接合された後の第1のフィルム51及び第2のフィルム52のそれぞれの縁部を「シール部」という。
これにより、折り曲げ線X3−X3の部分に第1のフィルム51と第2のフィルム52とを接合させるためのシール部を設ける必要がなくなるため、ケース50におけるシール部をより低減することができる。その結果、リチウムイオン2次電池1の設置されるべき空間の体積を基準とする体積エネルギー密度をより向上させることができる。
そして、本実施形態の場合、図1及び図2に示すように、アノード10に接続されたアノード用リード12及びカソード用リード22のそれぞれの一端が、上述の第1のフィルム51の縁部51Bと第2のフィルムの縁部52Bとを接合したシール部から外部に突出するように配置されている。
また、第1のフィルム51及び第2のフィルム52を構成するフィルムは先に述べたように、可とう性を有するフィルムである。フィルムは軽量であり薄膜化が容易なため、リチウムイオン2次電池自体の形状を薄膜状とすることができる。そのため、本来の体積エネルギー密度を容易に向上させることができるとともに、リチウムイオン2次電池の設置されるべき空間の体積を基準とする体積エネルギー密度も容易に向上させることができる。
このフィルムは可とう性を有するフィルムであれば特に限定されないが、ケースの充分な機械的強度と軽量性を確保しつつ、ケース50外部からケース50内部への水分や空気の侵入及びケース50内部からケース50外部への電解質成分の逸散を効果的に防止する観点から、非水電解質溶液に接触する合成樹脂製の最内部の層と、最内部の層の上方に配置される金属層とを少なくとも有する「複合包装フィルム」であることが好ましい。
第1のフィルム51及び第2のフィルム52として使用可能な複合包装フィルムとしては、例えば、図6及び図7に示す構成の複合包装フィルムが挙げられる。図6に示す複合包装フィルム53は、その内面F53において非水電解質溶液に接触する合成樹脂製の最内部の層50aと、最内部の層50aのもう一方の面(外側の面)上に配置される金属層50cとを有する。また、図7に示す複合包装フィルム54は、図6に示す複合包装フィルム53の金属層50cの外側の面に更に合成樹脂製の最外部の層50bが配置された構成を有する。
第1のフィルム51及び第2のフィルム52として使用可能な複合包装フィルムは、上述の最内部の層をはじめとする1以上の合成樹脂の層、金属箔などの金属層を備えた2以上の層を有する複合包装材であれば特に限定されないが、上記と同様の効果をより確実に得る観点から、図7に示した複合包装フィルム54のように、最内部の層50aと、最内部の層50aから最も遠いケース50の外表面の側に配置される合成樹脂製の最外部の層50bと、最内部の層50aと最外部の層50bとの間に配置される少なくとも1つの金属層50cとを有する3層以上の層から構成されていることがより好ましい。
最内部の層50aは可とう性を有する層であり、その構成材料は上記の可とう性を発現させることが可能であり、かつ、使用される非水電解質溶液30に対する化学的安定性(化学反応、溶解、膨潤が起こらない特性)、並びに、酸素及び水(空気中の水分)に対する化学的安定性を有している合成樹脂であれば特に限定されないが、更に酸素、水(空気中の水分)及び非水電解質溶液30の成分に対する透過性の低い特性を有している材料が好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン酸変成物、ポリプロピレン酸変成物、ポリエチレンアイオノマー、ポリプロピレンアイオノマー等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
また、図7に示した複合包装フィルム54のように、最内部の層50a以外に、最外部の層50b等のような合成樹脂製の層を更に設ける場合、この合成樹脂製の層も、上記最内部の層50aと同様の構成材料を使用してよい。
金属層50cとしては、酸素、水(空気中の水分)及び非水電解質溶液に対する耐腐食性を有する金属材料から形成されている層であることが好ましい。例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、クロム等からなる金属箔を使用してもよい。
また、ケース50における全てのシール部のシール方法は、特に限定されないが、生産性の観点から、ヒートシール法であることが好ましい。
次に、アノード10及びカソード20について説明する。図8は図1に示すリチウムイオン2次電池のアノードの基本構成の一例を示す模式断面図である。また、図9は、図1に示すリチウムイオン2次電池のカソードの基本構成の一例を示す模式断面図である。
図8に示すようにアノード10は、集電体16と、該集電体16上に形成されたアノード活物質含有層18とからなる。また、図9に示すようにカソード20は、集電体26と、該集電体26上に形成されたカソード活物質含有層28とからなる。
集電体16及び集電体26は、アノード活物質含有層18及びカソード活物質含有層28への電荷の移動を充分に行うことができる良導体であれば特に限定されず、公知のリチウムイオン2次電池に用いられている集電体を使用することができる。例えば、集電体16及び集電体26としては、アルミニウム、銅などの金属箔が挙げられる。
また、アノード10の活物質含有層18は、主として、図10に示す複合粒子P10から構成されている。図10は、本発明の製造方法における造粒工程において製造される複合粒子の基本構成の一例を示す模式断面図である。更に、複合粒子P10は、電極活物質からなる粒子P1と、導電助剤からなる粒子P2と、結着剤からなる粒子P3とから構成されている。この複合粒子P10の平均粒子径は特に限定されない。この複合粒子P10は、電極活物質からなる粒子P1と導電助剤からなる粒子P2とが孤立せずに電気的に結合した構造を有している。そのため、活物質含有層18においても、電極活物質からなる粒子P1と導電助剤からなる粒子P2とが孤立せずに電気的に結合した構造が形成されている。
アノード10に含まれる複合粒子P10を構成する電極活物質は特に限定されず公知の電極活物質を使用してよい。例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出(インターカレート、或いはドーピング・脱ドーピング)可能な黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等の炭素材料、Al、Si、Sn等のリチウムと化合することのできる金属、SiO2、SnO2等の酸化物を主体とする非晶質の化合物、チタン酸リチウム(Li3Ti5O12)等が挙げられる。
アノード10に含まれる複合粒子P10を構成する導電助剤は特に限定されず公知の導電助剤を使用してよい。例えば、カーボンブラック類、高結晶性の人造黒鉛、天然黒鉛等の炭素材料、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、上記炭素材料及び金属微粉の混合物、ITOのような導電性酸化物が挙げられる。
アノード10に含まれる複合粒子P10を構成する結着剤は、上記の電極活物質の粒子と導電助剤からなる粒子P2とを結着可能なものであれば特に限定されない。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂が挙げられる。また、この結着剤は、上記の電極活物質からなる粒子P1と導電助剤からなる粒子P2とを結着するのみならず、箔(集電体24)と複合粒子P10との結着に対しても寄与している。
また、上記の他に、結着剤は、例えば、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴムを用いてもよい。
更に、上記の他に、結着剤は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等を用いてもよい。また、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子を用いてもよい。更に、シンジオタクチック1、2−ポリブタジエン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン(炭素数2〜12)共重合体等を用いてもよい。また、導電性高分子を用いてもよい。
また、複合粒子P10には、導電性高分子からなる粒子を当該複合粒子P10の構成成分として更に添加してもよい。更に、複合粒子P10を用いて乾式法により電極を形成する際には、複合粒子を少なくとも含む粉体の構成成分として添加してもよい。また、複合粒子P10を用いて湿式法により電極を形成する際には、複合粒子P10を含む塗布液又は混練物を調製する際に、導電性高分子からなる粒子を当該塗布液又は混練物の構成材料として添加してもよい。
例えば、導電性高分子は、リチウムイオンの伝導性を有していれば特に限定されない。例えば、高分子化合物(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物、ポリエーテル化合物の架橋体高分子、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリル等)のモノマーと、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiCl、LiBr、Li(CF3SO2)2N、LiN(C2F5SO2)2リチウム塩又はリチウムを主体とするアルカリ金属塩と、を複合化させたもの等が挙げられる。複合化に使用する重合開始剤としては、例えば、上記のモノマーに適合する光重合開始剤または熱重合開始剤が挙げられる。
なお、2次電池1を金属リチウム2次電池とする場合には、そのアノード(図示せず)は、集電体を兼ねた金属リチウム又はリチウム合金のみからなる電極であってもよい。リチウム合金は特に限定されず、例えば、Li−Al,LiSi,LiSn等の合金(ここでは、LiSiも合金として取り扱うものとする)があげられる。この場合、カソードは後述する構成の複合粒子P10を用いて構成する。
図1に示す2次電池1のカソード20は、膜状の集電体34と、集電体34と電解質層40との間に配置される膜状の活物質含有層28とから構成されている。なお、このカソード20は充電時においては外部電源のカソード(何れも図示せず)に接続され、アノードとして機能する。また、このカソード20の形状は特に限定されず、例えば、図示するように薄膜状であってもよい。カソード20の集電体34としては、例えば、アルミ箔が用いられる。
カソード20に含まれる複合粒子P10を構成する電極活物質は特に限定されず公知の電極活物質を使用してよい。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn2O4)、及び、一般式:LiNixMnyCozO2(x+y+z=1)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物、V2O5、オリビン型LiMPO4(ただし、Mは、Co、Ni、Mn又はFeを示す)、チタン酸リチウム((Li3Ti5O12)等が挙げられる。
更に、カソード20に含まれる複合粒子P10を構成する電極活物質以外の各構成要素は、アノード10に含まれる複合粒子P10を構成するものと同様の物質を使用することができる。また、このカソード20に含まれる複合粒子P10を構成する結着剤も、上記の電極活物質からなる粒子P1と導電助剤からなる粒子P2とを結着のみならず、箔(集電体34)と複合粒子P10との結着に対しても寄与している。この複合粒子P10は、先にも述べたように電極活物質からなる粒子P1と導電助剤からなる粒子P2とが孤立せずに電気的に結合した構造を有している。そのため、活物質含有層28においても、電極活物質からなる粒子P1と導電助剤からなる粒子P2とが孤立せずに電気的に結合した構造が形成されている。
ここで、導電助剤、電極活物質及び固体高分子電解質との接触界面を3次元的にかつ充分な大きさで形成する観点から、上記のアノード10及びカソード20にそれぞれ含まれる各電極活物質からなる粒子P1のBET比表面積は、カソード20の場合0.1〜1.0m2/gであることが好ましく、0.1〜0.6m2/gであることがより好ましい。また、アノード10の場合0.1〜10m2/gであることが好ましく、0.1〜5m2/gであることがより好ましい。なお、電気化学素子が2重層キャパシタの場合には、カソード20及びアノード10ともに500〜3000m2/gであることが好ましい。
更に、同様の観点から、各電極活物質からなる粒子P1の平均粒径は、カソード20の場合5〜20μmであることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましい。また、アノード10の場合1〜50μmであることが好ましく、1〜30μmであることがより好ましい。更に、同様の観点から、電極活物質に付着する導電助剤及び結着剤の量は、100×(導電助剤の質量+結着剤の質量)/(電極活物質の質量)の値で表現した場合、1〜30質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることがより好ましい。
電解質層40は、電解液からなる層であってもよく、固体電解質(セラミックス固体電解質、固体高分子電解質)からなる層であってもよく、セパレータと該セパレータ中に含浸された電解液及び/又は固体電解質とからなる層であってもよい。
電解液30は、リチウム含有電解質を非水溶媒に溶解して調製する。リチウム含有電解質としては、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6等から適宜選択すればよく、また、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2Nのようなリチウムイミド塩や、LiB(C2O4)2などを使用することもできる。非水溶媒としては、例えば、エーテル類、ケトン類、カーボネート類等、特開昭63−121260号公報などに例示される有機溶媒から選択することができるが、本発明では特にカーボネート類を用いることが好ましい。カーボネート類のうちでは、特にエチレンカーボネートを主成分とし他の溶媒を1種類以上添加した混合溶媒を用いることが好ましい。混合比率は、通常、エチレンカーボネート:他の溶媒=5〜70:95〜30(体積比)とすることが好ましい。エチレンカーボネートは凝固点が36.4℃と高く、常温では固化しているため、エチレンカーボネート単独では電池の電解液としては使用できないが、凝固点の低い他の溶媒を1種類以上添加することにより、混合溶媒の凝固点が低くなり、使用可能となる。この場合の他の溶媒としてはエチレンカーボネートの凝固点を低くするものであれば何でもよい。例えばジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−パレロラクトン、γ−オクタノイックラクトン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−エトキシメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,3−ジオキソラナン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキサン、ブチレンカーボネート、蟻酸メチルなどが挙げられる。アノードの活物質として炭素質材料を用い、且つ上記混合溶媒を用いることにより、電池容量が著しく向上し、不可逆容量率を十分に低くすることができる。
固体高分子電解質としては、例えば、イオン伝導性を有する導電性高分子が挙げられる。
上記導電性高分子としては、リチウムイオンの伝導性を有していれば特に限定されず、例えば、高分子化合物(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物、ポリエーテル化合物の架橋体高分子、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリル等)のモノマーと、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiCl、LiBr、Li(CF3SO2)2N、LiN(C2F5SO2)2リチウム塩又はリチウムを主体とするアルカリ金属塩と、を複合化させたもの等が挙げられる。複合化に使用する重合開始剤としては、例えば、上記のモノマーに適合する光重合開始剤又は熱重合開始剤が挙げられる。
更に、高分子固体電解質を構成する支持塩としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiCF3CF2SO3、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3CF2SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)及びLiN(CF3CF2CO)2等の塩、又は、これらの混合物が挙げられる。
電解質層40にセパレータを使用する場合、その構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフイン類の一種又は二種以上(二種以上の場合、二層以上のフィルムの張り合わせ物等がある)、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル類、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体のような熱可塑性フッ素樹脂類、セルロース類等がある。シートの形態はJIS−P8117に規定する方法で測定した通気度が5〜2000秒/100cc程度、厚さが5〜100μm程度の微多孔膜フィルム、織布、不織布等がある。なお、固体電解質のモノマーをセパレータに含浸、硬化させて高分子化して使用してもよい。また、先に述べた電解液を多孔質のセパレータ中に含有させて使用してもよい。
以上説明した電気化学素子(リチウムイオン2次電池は)は、本発明の電極用複合粒子の製造方法、電極の製造方法、及び、電気化学素子の製造方法に従い製造することができる。また、以上説明した電気化学素子(リチウムイオン2次電池は)は、上記本発明の各製造方法に基づいて作動する機構を有する、本発明の電極用複合粒子製造装置、電極製造装置、及び、電気化学素子の製造装置により製造することができる。
次に、本発明の各製造方法及び上記本発明の各製造装置の好適な一実施形態について説明する。
図11は、本発明の電気化学素子製造装置の好適な一実施形態の基本構成を示す説明図である。図11に示す素子組立処理部90は、主として、プラズマ処理部91と、造粒処理部92と、活物質含有層形成処理部93と、素子組立処理部94と、不活性ガス雰囲気形成手段95とから構成されている。この素子組立処理部90は、本発明の各製造方法に基づいて作動する機構を有している。
以下、プラズマ処理部91、造粒処理部92、活物質含有層形成処理部93、素子組立処理部94、及び、不活性ガス雰囲気形成手段95の構成を詳細に説明し、同時に各々の動作方法について説明することにより本発明の各製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
不活性ガス雰囲気形成手段95は、後述するプラズマ処理部91におけるプラズマ処理後における全ての製造工程を不活性ガス雰囲気中で行うための機構を有している。不活性ガス雰囲気形成手段95としては、例えば、グローブボックスが好ましく挙げられる。素子組立処理部90では、グローブボックス等の不活性ガス雰囲気形成手段95により、プラズマ処理後における全ての製造工程を不活性ガス雰囲気中で製造作業が進行されるようになっている。例えば、グローブボックス等の不活性ガス雰囲気形成手段95内部を不活性ガスで満たし、酸素濃度を1ppm以下に調節し、かつ、相対湿度を0.04%(露点温度で約−60℃)以下に調節して製造作業を行なう。
プラズマ処理部91では、プラズマガス雰囲気中において、炭素質材料からなる原料に対して高周波熱プラズマ処理を施すことにより電子伝導性を有する電極活物質からなる粒子を得るプラズマ処理工程を行が行われる。
プラズマ処理部91には、高周波熱プラズマの発生装置(プラズマトーチ)が配置されている。図12はプラズマ処理を行うために用いる高周波熱プラズマの発生装置(プラズマトーチ)の概略構成図である。
先ず、アノード10の活物質含有層18に含まれる複合粒子P10又はカソード20の活物質含有層28に含まれる複合粒子P10の構成材料となる炭素質材料からなる原料の粒子(以下、「原料粒子P50」という)を得る。具体的には、プラズマガス雰囲気中において、原料粒子に対して高周波熱プラズマ処理を施す。
ここで、上記炭素質材料からなる原料としては、上記の高周波熱プラズマ処理を施すことにより電子伝導性を有する炭素材料となるものであればよく、例えば、黒鉛、ピッチ系材料、ヤシガラ、フェノール樹脂等が挙げられる。
更に、上記高周波熱プラズマ処理により電極活物質となる炭素質材料からなる原料としては、例えば、フェノール樹脂、アクリル系樹脂、フラン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル等の鎖状ビニル系高分子、ポリフェニレンのようなビフェニル結合からなる高分子等の各種樹脂が挙げられ、含窒素樹脂、例えばポリアニリン、ポリイミド、ナイロン等のポリアミド、窒素含有フェノール樹脂等も使用可能である。また、このほか、多糖類等の各種糖類を用いることも可能である。これらのうちではフェノール樹脂、特に真球状のフェノール樹脂が好ましい。
また、上記の他の炭素質材料からなる原料としては、グラファイト、グラッシーカーボン、パイロリティックグラファイト、カーボンファイバー、カーボンペースト、活性炭等が挙げられるが、特に活性炭が好ましい。活性炭であれば特に制限はなく、原料炭{例えば、石油系重質油の流動接触分解装置のボトム油や減圧蒸留装置の残さ油を原料油とするディレードコーカーより製造された石油コークス又は樹脂を炭化したもの(フェノール樹脂など)や天然材料を炭化したもの(例えばヤシ殻炭)等}を賦活処理することにより得られるものを主成分としているものが好ましい。
これらの中では、特にMCMB(メソフェーズカーボンマイクロビーズ)が好ましい。このMCMBはピッチから得られる真球状の炭素質材料を黒鉛化したものであり、従来の黒鉛材料に比べて電極材料の作製において取扱いが容易である。すなわち、流動性に優れているので、高周波熱プラズマ処理に供するのに適し、大量処理が可能で生産性に優れる傾向がある。また、電極を形成する際の膜化が容易となる傾向がある。
高周波熱プラズマ処理に供される材料及び高周波熱プラズマ処理後の炭素質材料は、粒子状又は粉末状であることが好ましく、その平均粒径は0.5〜100μm程度であることが好ましい。これらの粒子は球状であることが好ましいが、球状以外の形状、例えば、回転楕円体状や不定形状であってもよい。
高周波熱プラズマ処理は、例えば、「石垣隆正,セラミックス,30(1995)No.11,1013〜1016」、特開平7−31873号公報、特開平10−92432号公報及び特開2000−223121号公報に従って行うことができる。
図12に示す高周波熱プラズマ発生装置(熱プラズマトーチ)100は、プラズマトーチ中へ連続的に対象物を導入し、下部において回収するものである。高周波熱プラズマ発生装置100は、水冷二重管110の外周に高周波コイル12を巻いた構成を有する。そして、高周波電磁誘導を行い、水冷二重管110の内部に熱プラズマを形成するものである。水冷二重管11の上部に位置する開口部には蓋130が取り付けられており、蓋130には高周波熱プラズマ処理に供する原料の粉末とキャリアガスとを供給する粉末供給用水冷プローブ140が設置されている。また、装置100内部には、主としてプラズマ流を形成するためのセントラルガス(Gp)、主としてプラズマ流の外側を包むためのシースガス(Gs)が導入される。
なお、本発明においては、セントラルガス、シースガス及びキャリアガスを合わせて「プラズマガス」という。そして、このプラズマガス雰囲気中において、高周波熱プラズマ処理が行われる。
また、プラズマガスとしては、少なくともArを用いることが好ましく、N2、H2、CO2及びCOのうちの少なくとも一種と、Arとを併用することがより好ましい。特に、N2又はH2とArとの併用や、これらに更にCO2を加えることが好ましい。プラズマガス中のAr以外のガスの含有量は、プラズマガス全量に対して1〜20体積%であることが好ましい。セントラルガス、シースガス及びキャリアガスのそれぞれに用いるガスの種類は特に制限されないが、いずれも少なくともArを含むことが好ましく、特にシースガスには、トーチ内壁を保護するため、N2やH2のような二原子気体を混合することが好ましい。プラズマガスとして少なくともH2を用いると、不可逆容量を低減して、初回の充放電効率をより十分に向上することができる傾向がある。セントラルガスとシースガスとの合計流量は、通常、2〜200L/minであり、好ましくは30〜130L/minである。
更に、導入する原料の量は、1〜500g/minとすることが好ましく、キャリアガスの流量は、1〜100L/minとすることが好ましい。
また、プラズマガスを適宜選択することにより、高周波熱プラズマ処理による効果を制御することができ、例えば、N2に比べてH2は熱伝導率が高いので、H2を用いた場合には、通常、加熱効率が高くなる傾向がある。
高周波熱プラズマの発生条件は、通常、周波数が0.5〜6MHz、好ましくは3〜6MHzであり、投入電力が3〜60kWであり、トーチ内部の圧力が1〜100kPa、好ましくは10〜70kPaである。
このような装置100を用いることにより、3,000〜15,000℃での高周波熱プラズマ処理が可能となる。本発明では、3,000〜15,000℃の温度域における原料の滞留時間を、0.001〜10秒、特に0.02〜0.5秒程度とすることが好ましい。
また、高周波熱プラズマ発生装置100(プラズマトーチ)の大きさは特に制限されないが、図12に示す構造とする場合には、管径を10〜1000mmとすることが好ましく、50〜100mmとすることがより好ましく、高さを50〜3000mmとすることが好ましく、200〜3000mmとすることがより好ましい。
なお、原料は、単独で高周波熱プラズマ処理してもよいが、酸化物を混合した状態で高周波熱プラズマ処理してもよい。この場合に用いる酸化物としては、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn2O4)、リチウムバナジウム化合物、V2O5、オリビン型LiMPO4(M:Co、Ni、Mn、Fe)等が好ましい。酸化物の配合量は、混合物(原料+酸化物)全量を基準として、10質量%以下とすることが好ましい。
次に、造粒処理部92について説明する。造粒処理部92では、不活性ガス雰囲気中で、プラズマ処理後に得られる電極活物質からなる粒子P1に対し、導電助剤と、電極活物質と導電助剤とを結着させることが可能な結着剤とを密着させて一体化することにより、電極活物質と、導電助剤と、結着剤とを含む電極用複合粒子P10を形成する造粒処理を行う。
このように、複合粒子P10は、造粒処理部92において電極活物質からなる粒子P1に導電助剤と結着剤とを密着させて一体化することにより、電極活物質と、導電助剤と、結着剤とを含む複合粒子を形成する造粒工程を経て形成される。
造粒工程は、結着剤と前記導電助剤と溶媒とを含む原料液を調製する原料液調製工程と、流動槽中に気流を発生させ、該気流中に電極活物質からなる粒子を投入し、電極活物質からなる粒子を流動層化させる流動層化工程と、電極活物質からなる粒子を含む流動層中に原料液を噴霧することにより、原料液を電極活物質からなる粒子に付着、乾燥させ、電極活物質からなる粒子の表面に付着した原料液から溶媒を除去し、結着剤により電極活物質からなる粒子と導電助剤からなる粒子とを密着させる噴霧乾燥工程と、とを含む。そして、造粒処理部92には、上記原料液調製工程、流動層化工程及び噴霧乾燥工程を行うための機構が備えられている。
この造粒処理部92で行われる造粒工程について図13を用いて具体的に説明する。図13は、複合粒子を製造する際の造粒工程の一例を示す説明図である。
先ず、原料液調製工程では、結着剤を溶解可能な溶媒を用い、この溶媒中に結着剤を溶解させる。次に得られた溶液に、導電助剤を分散させて原料液を得る。なお、この原料液調製工程では、結着剤を分散可能な溶媒(分散媒)であってもよい。
次に、流動層化工程においては、図13に示すように、流動槽5内において、所定の気流発生手段(図示せず)により気流を発生させ、該気流中に電極活物質からなる粒子P1を投入することにより、電極活物質からなる粒子を流動層化させる。
次に、噴霧乾燥工程では、図13に示すように、流動槽5内において、所定の噴霧手段(図示せず)により原料液の液滴6を噴霧することにより、原料液の液滴6を流動層化した電極活物質からなる粒子P1に付着させ、同時に流動槽5内において乾燥させ、電極活物質からなる粒子P1の表面に付着した原料液の液滴6から溶媒を除去し、結着剤により電極活物質からなる粒子P1と導電助剤からなる粒子P2とを密着させ、複合粒子P10を得る。
より具体的には、この流動槽5は、例えば、筒状の形状を有する容器であり、その底部には、温風(又は熱風)L5を外部から流入させ、流動槽5内で電極活物質からなる粒子を対流させるための開口部52が設けられている。また、この流動槽5の側面には、流動槽5内で対流させた電極活物質からなる粒子P1に対して、噴霧される原料液の液滴6を流入させるための開口部54が設けられている。流動槽5内で対流させた電極活物質からなる粒子P1に対してこの結着剤と導電助剤と溶媒とを含む原料液の液滴6を噴霧する。
このとき、電極活物質からなる粒子P1の置かれた雰囲気の温度を、例えば温風(又は熱風)の温度を調節する等して、原料液の液滴6中の溶媒を速やかに除去可能な所定の温度{好ましくは、50℃から結着剤の融点を大幅に超えない温度、より好ましくは50℃から結着剤の融点以下の温度(例えば、200℃)}に保持しておき、電極活物質からなる粒子P1の表面に形成される原料液の液膜を、原料液の液滴6の噴霧とほぼ同時に乾燥させる。これにより、電極活物質からなる粒子の表面に結着剤と導電助剤とを密着させ、複合粒子P10を得る。
ここで、結着剤を溶解可能な溶媒は、結着剤を溶解可能であり導電助剤を分散可能であれば特に限定されるものではないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等を用いることができる。
次に、活物質含有層形成処理部93について説明する。活物質含有層形成処理部では、集電体の活物質含有層を形成すべき部位に、複合粒子P10を用いて活物質含有層を形成する。より具体的には、以下に述べる湿式法又は乾式法に基づき活物質含有層を形成する。そして、活物質含有層形成処理部93には、後述する湿式法又は乾式法に基づき活物質含有層を形成するための機構が設けられている。
(湿式法)
先ず、上述した造粒工程を経て製造した複合粒子P10を使用し、電極形成用塗布液を調製し、これを用いて電極を形成する場合の好適な一例について説明する。先ず、電極形成用塗布液の調製方法の一例について説明する。
電極形成用塗布液は、例えば、造粒工程を経て作製した複合粒子P10と、複合粒子P10を分散又は溶解可能な液体と、必要に応じて添加される導電性高分子とを混合した混合液を作製し、混合液から上記液体の一部を除去して、塗布に適した粘度に調節することにより電極形成用塗布液を得ることができる。
より具体的には、導電性高分子を用いる場合には、図14に示すように、例えば、スターラー等の所定の撹拌手段(図示せず)を有する容器8内において、複合粒子P10を分散又は溶解可能な液体と、導電性高分子又は該導電性高分子の構成材料となるモノマーとを混合した混合液を調製しておく。次に、この混合液に複合粒子P10を添加して充分に撹拌することにより、電極形成用塗布液L2を調製することができる。
次に、電極形成用塗布液L2を用いて活物質含有層を形成する。
先ず、電極形成用塗布液L2を、集電体の表面に塗布し、当該表面上に、塗布液の液膜を形成する。次に、この液膜を乾燥させることにより、集電体上に活物質含有層を形成し電極の作製を完了する。ここで、電極形成用塗布液を集電体の表面に塗布する際の手法は特に限定されるものではなく、集電体の材質や形状等に応じて適宜決定すればよい。例えば、メタルマスク印刷法、静電塗装法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
また、電極形成用塗布液L2の液膜から活物質含有層を形成する際の手法としては、乾燥以外に、塗布液L2の液膜から活物質含有層を形成する際に、液膜中の構成成分間の硬化反応(例えば、導電性高分子の構成材料となるモノマーの重合反応)を伴う場合があってもよい。例えば、紫外線硬化樹脂(導電性高分子)の構成材料となるモノマーを含む電極形成用塗布液L2を使用する場合、先ず、集電体上に、電極形成用塗布液L2を上述の所定の方法により塗布する。次に、塗布液の液膜に、紫外線を照射することにより活物質含有層を形成する。
この場合、導電性高分子(導電性高分子からなる粒子)を予め電極形成用塗布液L2に含有させておく場合に比較して、集電体上に電極形成用塗布液の液膜を形成した後、液膜中でモノマーを重合させて導電性高分子を生成させることにより、液膜中での複合粒子P10の良好な分散状態をほぼ保持したまま、複合粒子P10間の間隙に導電性高分子を生成させることができるので、得られる活物質含有層中の複合粒子P10と導電性高分子との分散状態をより良好にすることができる。
すなわち、得られる活物質含有層中に、より微細で緻密な粒子(複合粒子P10と導電性高分子からなる粒子)が一体化したイオン伝導ネットワーク及び電子伝導ネットワークを構築することができる。そのためこの場合、比較的低い作動温度領域においても電極反応を充分に進行させることが可能な優れた分極特性を有するポリマー電極をより容易かつより確実に得ることができる。
更にこの場合、紫外線硬化樹脂の構成材料となるモノマーの重合反応は、紫外線照射により進行させることができる。
更に、得られる活物質含有層を、必要に応じて、熱平板プレスや熱ロールを使用して熱処理し、シート化する等の圧延処理を施してもよい。
また、以上の説明では、複合粒子P10を用いた電極の形成方法の一例として、複合粒子P10を含む電極形成用塗布液7を調製しこれを用いて電極を形成する場合について説明したが、複合粒子P10を用いた電極の形成方法(湿式法)はこれに限定されない。
次に、電極形成用塗布液L2、並びに、図15及び図16に示すような装置70及び装置80を用いて図16に示す電極シートES10を形成する、湿式法についてのより具体的な態様について説明する。なお、以下の説明においては、アノード10用の電極シートES10(図16参照)、及び、電極シートES10から得られるアノード10の形成方法について説明し、アノード10と同様の構成を有するカソード20の形成方法については省略する。
図15に示す装置70は、主として、第1のロール71と、第2のロール72と、第1のロール71と第2のロール72との間に配置される乾燥機73と、2つの支持ロール79とから構成されている。第1のロール71は、円柱状の巻心74とテープ状の積層体シート75とから構成されている。この積層体シート75の一端は巻心74に接続されており、更に積層体シート75は巻心74に巻回されている。更に積層体シート75は、基体シートB1上に金属箔シート16Aが積層された構成を有している。
また、第2のロール72は、上記積層体シート75の他端が接続された円柱状の巻芯76を有している。更に、第2のロール72の巻芯76には当該巻芯76を回転させるための巻芯駆動用モータ(図示せず)が接続されており、電極形成用の塗布液L1を塗布し更に乾燥機73中において乾燥処理を施された後の積層体シート77が所定の速度で巻回されるようになっている。
先ず、巻芯駆動用モータが回転すると、第2のロール72の巻芯76が回転し、第1のロール71の巻心74に巻回されている積層体シート75が第1のロール71の外部に引き出される。次に、引き出された積層体シート75の金属箔シート16A上に、電極形成用塗布液L2を塗布する(塗布工程)。これにより、金属箔シート16A上には電極形成用塗布液L2からなる塗膜L4が形成される。
次に、巻芯駆動用モータの回転により、塗膜L4の形成された積層体シート75の部分は、支持ロール79により乾燥機73中に導かれる。乾燥機73中において、積層体シート75上の塗膜L4は乾燥されて電極とされたときの多孔体層18の前駆体となる層78(以下、「前駆体層78」という)となる(液体除去工程)。そして、巻芯駆動用モータの回転により、積層体シート75上に前駆体層78の形成された積層体シート77は、支持ロール79により巻芯76へ導かれて巻芯76に巻回される。
次に、上記の積層体シート77と、図16に示す装置80を使用して電極シートES10を作製する。
図16に示す装置80は、主として、第1のロール81と、第2のロール82と、第1のロール81と第2のロール82との間に配置されるロールプレス機83とから構成されている。第1のロール81は、円柱状の巻心84と先に述べたテープ状の積層体シート77とから構成されている。この積層体シート77の一端は巻心84に接続されており、更に積層体シート77は巻心84に巻回されている。積層体シート77は、基体シートB1上に金属箔シート16Aが積層された積層体シート75上に前駆体層78が更に積層された構成を有している。
また、第2のロール82は、上記積層体シート77の他端が接続された円柱状の巻芯86を有している。更に、第2のロール82の巻芯86には当該巻芯86を回転させるための巻芯駆動用モータ(図示せず)が接続されており、ロールプレス機83中においてプレス処理を施された後の積層体シート87が所定の速度で巻回されるようになっている。
先ず、巻芯駆動用モータが回転すると、第2のロール82の巻芯86が回転し、第1のロール81の巻心84に巻回されている積層体シート77が第1のロール81の外部に引き出される。次に、巻芯駆動用モータの回転により、積層体シート77は、ロールプレス機83中に導かれる。ロールプレス機83中には、2つの円柱状のローラ83Aとローラ83Bが配置されている。ローラ83Aとローラ83Bとは、これらの間に積層体シート77が挿入されるように配置されており、これらの間に積層体シート77が挿入される際に、ローラ83Aの側面と積層体シート77の前駆体層78の外表面が接触し、ローラ83Bの側面と積層体シート77の基体シートB1の外表面(裏面)が接触する状態となり、かつ、所定の温度と圧力で積層体シート77を押圧できるように設置されている。
また、この円柱状のローラ83A及びローラ83Bは、それぞれが積層体シート77の移動方向に従う方向に回転する回転機構が備えられている。更に、この円柱状のローラ83A及びローラ83Bは、それぞれの底面間の長さが積層体シート77の幅以上となる大きさを有している。
ロールプレス機83中において、積層体シート77上の前駆体層78は必要に応じて加熱及び加圧処理され、多孔体層18A(アノードとされたときの多孔体層18)となる。そして、巻芯駆動用モータの回転により、積層体シート77上に多孔体層18Aの形成された積層体シート87は、巻芯86に巻回される。
次に、図17(a)に示すように、巻芯86に巻回された積層体シート87を所定の大きさに切断し、電極シートES10を得る。なお、図17(a)に示す電極シートES10の場合、金属箔シート16Aの表面が露出した縁部12Aが形成されている。縁部12Aは、電極形成用塗布液L2を積層体シート75の金属箔シート16A上に塗布する際に、金属箔シート16Aの中央部にのみ電極形成用塗布液L2を塗布するように調節することにより形成することができる。
次に、図17(b)に示すように、作製する電気化学素子のスケールに合わせて、電極シートES10を打ち抜き、図17(c)に示すアノード10を得る。このとき、先に述べた縁部12Aの部分がアノード用リード12として含まれるように電極シートES10を打ち抜くことにより、予めアノード用リード12が一体化された状態のアノード10を得ることができる。なお、アノード用リード導体12及びカソード用リード22を接続していない場合には、アノード用リード導体12及びカソード用リード22を別途用意し、アノード10及びカソード20のそれぞれに対して電気的に接続する。
(乾式法)
次に、上述した造粒工程を経て製造した複合粒子P10を使用し、溶媒を用いない乾式法により電極を形成する場合について説明する。
この場合、活物質含有層は以下の活物質含有層形成工程を経て形成される。この活物質含有層形成工程は、複合粒子P10を少なくとも含む粉体P12に加熱処理及び加圧処理を施してシート化し、複合粒子を少なくとも含むシート180を得るシート化工程と、シート180を活物質含有層(活物質含有層18又は活物質含有層28)として集電体上に配置する活物質含有層配置工程とを有する。
乾式法は、溶媒を用いずに電極を形成する方法であり、1)溶媒が不溶で安全である、2)溶媒を使用せず粒子のみを圧延するため電極(多孔体層)の高密度化を容易に行なうことができる、3)溶媒を使用しないので、湿式法で問題となる、集電体上に塗布した電極形成用塗布液からなる液膜の乾燥過程において、電極活物質からなる粒子P1、導電性を付与するための導電助剤からなる粒子P2、及び、結着剤からなる粒子P3の凝集及び偏在が発生しない、等の利点がある。
そしてこのシート化工程は、図18に示す熱ロールプレス機を用いて好適に行なうことができる。
図4は乾式法により電極を製造する際のシート化工程の一例(熱ロールプレス機を用いる場合)を示す説明図である。
この場合、図18に示すように、熱ロールプレス機(図示せず)の一対の熱ロール84及び熱ロール85の間に、複合粒子P10を少なくとも含む粉体P12を投入し、これらを混合して混練すると共に、熱及び圧力により圧延し、シート180(活物質含有層)に成形する。このとき、熱ロール84及び85の表面温度は60〜120℃であることが好ましく、圧力は20〜5000kgf/cmであることが好ましい。
ここで、複合粒子P10を少なくとも含む粉体P12には、電極活物質からなる粒子P1、導電性を付与するための導電助剤からなる粒子P2、結着剤からなる粒子P3のうちの少なくとも1種の粒子を更に混合してもよい。
また、図18に示す熱ロールプレス機に投入する前に、複合粒子P10を少なくとも含む粉体P12をミルなどの混合手段により予め混練しておいてもよい。
次に、シート180(活物質含有層)と集電体を電気的に接触させて、図17(a)に示したものと同様の電極シートES10を作製する。なお、集電体とシート180(活物質含有層)とを電気的に接触させることは、シート180(活物質含有層)を熱ロールプレス機で成形してから行ってもよいが、集電体と、該集電体の一方の面上に撒布された活物質含有層の構成材料(複合粒子P10を少なくとも含む粉体P12)とを熱ロール84及び熱ロール85に供給して、活物質含有層のシート成形及び活物質含有層と集電体との電気的な接続を同時に行うようにしてもよい。
次に、図17(a)〜(c)に示した方法と同様の方法により、作製する電気化学素子のスケールに合わせて、電極シートES10を打ち抜き、アノード10(及びカソード20)を得る。このとき、先に述べた縁部12Aの部分がアノード用リード12として含まれるように電極シートES10を打ち抜くことにより、予めアノード用リード12が一体化された状態のアノード10を得ることができる。なお、アノード用リード導体12及びカソード用リード22を接続していない場合には、アノード用リード導体12及びカソード用リード22を別途用意し、アノード10及びカソード20のそれぞれに対して電気的に接続する。
以上説明した湿式法及び乾式法により形成された活物質含有層(活物質含有層18又は活物質含有層28)中においては、図19に模式的に示す内部構造が形成されている。すなわち、活物質含有層(活物質含有層18又は活物質含有層28)においては、結着剤からなる粒子P3が使用されているにもかかわらず、電極活物質からなる粒子P1と導電助剤からなる粒子P2とが孤立せずに電気的に結合した構造が形成されている。
次に、素子組立処理部94では、集電体と活物質含有層との積層体(電極)を、アノード及びカソードのうちの少なくとも一方、好ましくは両方の電極として使用し、電気化学素子を組み立てる。
より具体的には、先ず、別途用意したセパレータ40をアノード10とカソード20との間に接触した状態で配置し、素体60を完成する。
次に、ケース50を作製する。まず、第1のフィルム及び第2のフィルムを先に述べた複合包装フィルムから構成する場合には、ドライラミネ−ション法、ウエットラミネ−ション法、ホットメルトラミネ−ション法、エクストル−ジョンラミネ−ション法等の既知の製造法を用いて作製する。なお、このケースの作製は、不活性ガス雰囲気中で行なうことが好ましいが、必ずしも不活性ガス雰囲気中で行わなくてもよい。ただし、ケース50中に素体60、電解質溶液30を封入する作業は不活性ガス雰囲気中で行なう。
例えば、複合包装フィルムを構成する合成樹脂製の層となるフィルム、アルミニウム等からなる金属箔を用意する。金属箔は、例えば金属材料を圧延加工することにより用意することができる。
次に、好ましくは先に述べた複数の層の構成となるように、合成樹脂製の層となるフィルムの上に接着剤を介して金属箔を貼り合わせる等して複合包装フィルム(多層フィルム)を作製する。そして、複合包装フィルムを所定の大きさに切断し、矩形状のフィルムを1枚用意する。
次に、先に図2を参照して説明したように、1枚のフィルム53を折り曲げて、素体60を配置する。
次に、第1のフィルム51及び第2のフィルム52の熱融着させるべき接触部分のうち、第1のフィルム51の熱融着すべき縁部(シール部51B)と第2のフィルム52の熱融着すべき縁部(シール部52B)との間に第1のリード及び第2のリードが配置される部分に対して熱融着処理を行う。ここで、アノード用リード12の表面にはケース50の充分な密封性をより確実に得る観点から、先に述べた接着剤を塗布しておくことが好ましい。これにより、熱融着処理の後において、アノード用リード12と、第1のフィルム51及び第2のフィルム52との間には、これらの密着性に寄与する接着剤からなる接着剤層14が形成される。次に、以上説明した手順と同様の手順で、カソード用リード22の周囲の部分についても熱融着処理を上記の熱融着処理と同時或いは別途行うことにより、充分な密封性を有するケー-ス50を形成することができる。
次に、第1のフィルム51のシール部51B(縁部51B)と第2のフィルムのシール部52B(縁部52B)のうち、上述のアノード用リード12の周囲の部分及びカソード用リード22の周囲の部分以外の部分を、例えば、シール機を用いて所定の加熱条件で所望のシール幅だけヒートシール(熱溶着)する。
このとき、図20に示すように、非水電解質溶液30を注入するための開口部H51を確保するために、一部のヒートシールを行わない部分を設けておく。これにより開口部開口部H51を有した状態のケース50が得られる。
そして、不活性ガス雰囲気中で、図20に示すように、開口部H51から非水電解質溶液30を注入する。続いて、減圧シール機を用いて、ケース50の開口部H51をシールする。更に、図21に示すように、得られる電気化学キャパシタ1の設置されるべき空間の体積を基準とする体積エネルギー密度を向上させる観点から、必要に応じてケース5リチウムイオン2次電池1(電気化学素子)の作製が完了する。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、本発明の製造方法により形成される電気化学素子は本発明の製造方法により形成される電極をアノード及びカソードのうちの少なくとも一方の電極として備えていればよく、それ以外の構成及び構造は特に限定されない。
例えば、上記実施形態の説明においては、アノード10及びカソード20をそれぞれ1つずつ備えた電気化学素子を製造する場合について説明したが、アノード10及びカソード20をそれぞれ1以上備え、アノード10とカソード20との間にセパレータ40が常に1つ配置される構成の電気化学素子を製造してもよい。すなわち、図22に示すように、単位セル(アノード10、カソード20及びセパレータを兼ねる電解質層40からなるセル)102を複数積層し、これを所定のケース9内に密閉した状態で保持させた(パッケージ化した)モジュール200の構成を有していてもよい。
更に、この場合、各単位セルを並列に接続してもよく、直列に接続してもよい。また、例えば、このモジュール200を更に直列又は並列に複数電気的に接続させた電池ユニットを構成してもよい。この電池ユニットとしては、例えば、図23に示す電池ユニット300のように、例えば、1つのモジュール200のカソード端子104と別のモジュール200のアノード端子102とが金属片108により電気的に接続されることにより、直列接続の電池ユニット300を構成することができる。
このようにモジュール200を製造する場合には、素子組立処理部94において、以下のような素子を組み立てる機構を設ければよい。
すなわち、例えば、3つのアノード10a〜10c及びカソード20a〜20c及び5つのセパレータ40a〜40eを積層した構成とする場合には、例えば、図24に示すように、不活性ガス雰囲気中で、3つのアノード10a〜10c及びカソード20a〜20c及び5つのセパレータ40a〜40eを順次積層した積層体60Aを形成する。そして、不活性ガス雰囲気中で、積層体60Aをケース50中に密封する。
更に、上述のモジュール200や電池ユニット300を構成する場合、必要に応じて、既存の電池に備えられているものと同様の保護回路(図示せず)やPTC(図示せず)を更に設けてもよい。
また、上述した電気化学素子の実施形態の説明では、2次電池の構成を有するものについて説明したが、例えば、本発明の電気化学素子は、アノードと、カソードと、イオン伝導性を有する電解質層とを少なくとも備えており、アノードとカソードとが電解質層を介して対向配置された構成を有していればよく、一次電池であってもよい。複合粒子P10の電極活物質としては上述の例示物質の他に、既存の一次電池に使用されているものを使用してよい。導電助剤及び結着剤は上述の例示物質と同様であってよい。
更に、本発明の電極は、電池用の電極に限定されず、例えば、電気分解セル、電気化学キャパシタ(電気二重層キャパシタ、アルミ電解コンデンサ等)、又は、電気化学センサに使用される電極であってもよい。また、本発明の電気化学素子も、電池のみに限定されるものではなく、例えば、電気分解セル、電気化学キャパシタ(電気二重層キャパシタ、アルミ電解コンデンサ等)、又は、電気化学センサであってもよい。例えば、電気二重層キャパシタ用電極の場合、複合粒子P10を構成する電極活物質としては、ヤシガラ活性炭、ピッチ系活性炭、フェノール樹脂系活性炭等の電気二重層容量の高い炭素材料を使用することができる。
更に、例えば、食塩電解に使用されるアノードとして、例えば、酸化ルテニウム(或いは酸化ルテニウムとこれ以外の金属酸化物との複合酸化物)を熱分解したものを本発明における電極活物質として、複合粒子P10の構成材料として使用し、得られる複合粒子P10を含む活物質含有層をチタン基体上に形成した電極を構成してもよい。
また、本発明の電気化学素子が電気化学キャパシタの場合、電解質溶液としては、特に限定されず、公知の電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタに用いられている非水電解質溶液(有機溶媒を使用する非水電解質溶液)を使用することができる。
更に、非水電解質溶液30の種類は特に限定されないが、一般的には溶質の溶解度、解離度、液の粘性を考慮して選択され、高導電率でかつ高電位窓(分解開始電圧が高い)の非水電解質溶液であることが望ましい。有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、ジエチレンカーボネート、アセトニトリルが挙げられる。また、電解質としては、例えば、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(4フッ化ホウ素テトラエチルアンモニウム)のような4級アンモニウム塩が挙げられる。なお、この場合、混入水分を厳重に管理する必要がある。
1…電気化学素子(リチウムイオン2次電池)、5・・・流動槽、6・・・原料液の液滴、10…アノード、12…アノード用リード、14…絶縁体、20…カソード、22…カソード用リード、24…絶縁体、22・・・活物質含有層、24…集電体、30…非水電解質溶液、32・・・活物質含有層、34…集電体、40…電解質層、50…ケース、52・・・開口部、54・・・開口部、60…素体、84,85・・・熱ロール、90・・・電気化学素子製造装置、91・・・プラズマ処理部、92・・・造粒処理部、93・・・活物質含有層形成処理部、94・・・素子組立処理部、95・・・不活性ガス雰囲気形成手段(グローブボックス)、100・・・高周波熱プラズマの発生装置(プラズマトーチ)、110…水冷二重管、120・・・高周波コイル、130…蓋、140・・・粉末(電極活物質からなる粒子)供給用水冷プローブ、150…チャンバ、180・・・シート(活物質含有層)、200・・・モジュール、300・・・電池ユニット、L2・・・電極形成用塗布液、P1・・・電極活物質からなる粒子、P2・・・導電助剤からなる粒子、P3・・・結着剤からなる粒子、P10・・・複合粒子、P12・・・複合粒子P10を含む粉体。