JP2005078800A - 非水二次電池の正極活物質粉末及びその製造方法並びにこれを用いた非水二次電池 - Google Patents

非水二次電池の正極活物質粉末及びその製造方法並びにこれを用いた非水二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】非水二次電池の電池容量を殆ど低下させずに、活物質粒子と電解液との反応性のみを低下させる。
【解決手段】非水二次電池の正極活物質粉末21は、リチウム、マンガン及び酸素からなるリチウムマンガン酸化物を含む。また正極活物質粉末21は、上記リチウムマンガン酸化物がスピネル構造のLiMn12である活物質粒子22と、この活物質粒子22の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層23とを備える。この被覆層23はAl,ZrO,TiO,SiO,Si及びCからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属酸化物からなる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池等の非水二次電池に用いられる正極活物質粉末及びその製造方法と、この正極活物質粉末を用いた非水二次電池に関するものである。なお、この非水二次電池は電圧が数Vであるボタン型電池(コイン型電池)に適する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の二次電池として、正極活物質粉末を含む正極と、負極活物質粉末を含む負極と、溶媒及び支持塩を含む電解液と、セパレータと、ガスケット等の部材からなる有機電解液二次電池が知られている(例えば、特許文献1参照)。この有機電解液二次電池では、正極活物質粉末としてマンガン酸リチウム、負極にリチウムアルミ合金が用いられる。また電解液の溶媒として常圧での沸点が250℃以上のスルホランを主成分とする溶媒系が用いられ、電解液の支持塩としてフッ素を含有するトリフルオロメタンスルホン酸リチウム等が用いられる。更にセパレータ及びガスケットとして熱変形温度が250℃以上のポリフェニレンスルフィド等の樹脂(ガラス繊維等のフィラー添加)が用いられる。
【0003】
このように構成された有機電解液二次電池では、電解液、セパレータ及びガスケットに高い耐熱性を有する材料をそれぞれ用いたので、リフロー炉による自動はんだ付けを行っても、高い耐熱性を有しており、従って二次電池の急激な膨張が生じずに、有機電解液二次電池を効率良く製造できるようになっている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−40525号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1に示された有機電解液二次電池では、リフロー炉による自動はんだ付けを行うときに、電解液とリチウムアルミ合金とが反応して、二次電池の内部が高圧になるため、ガスケットを大型化してガスケットの機械的強度を確保しなければならない。このため、上記特許文献1に示された有機電解液二次電池では、はんだこてを用いてはんだ付けを行う二次電池と比較して、ガスケットの占める割合が大きくなるので、電池容量が低下してしまう不具合があった。
本発明の目的は、電池容量を殆ど低下させずに、リフロー炉による自動はんだ付け時の活物質粒子と電解液の反応性のみを低減することができる、非水二次電池の正極活物質粉末及びその製造方法並びにこれを用いた非水二次電池を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、図1及び図2に示すように、リチウム、マンガン及び酸素からなるリチウムマンガン酸化物を含む非水二次電池10の正極活物質粉末21の改良である。
その特徴ある構成は、上記リチウムマンガン酸化物がスピネル構造のLiMn12である活物質粒子22と、この活物質粒子22の表面の少なくとも一部を被覆しAl,ZrO,TiO,SiO,Si及びCからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属酸化物からなる被覆層23とを備えたところにある。
この請求項1に記載された非水二次電池の正極活物質粉末では、活物質粒子22と電解液との接触が電解液との反応性の低い被覆層23により阻止されるか、或いは活物質粒子22と電解液との接触面積が上記被覆層23の存在で減少するので、正極活物質粉末21が電解液と接触した状態で230〜280℃の高温に曝されても、活物質粒子22は電解液と全く又は殆ど反応しない。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に電解液と接触させた状態で230〜280℃に10〜60秒間熱処理したときに発火しないことを特徴とする。
この請求項2に記載された非水二次電池の正極活物質粉末では、この正極活物質粉末21を電解液と接触させた状態でリフロー炉による自動はんだ付けを行っても、即ち二次電池10をリフロー炉に収容して230〜280℃に10〜60秒間保持しても、活物質粒子22は電解液と全く又は殆ど反応しない。
【0008】
請求項3に係る発明は、図2に示すように、マンガン化合物とリチウム化合物を混合する工程と、この混合物を酸素雰囲気下0.1〜1MPaの圧力及び350〜600℃の温度で3〜10時間焼成して平均粒径5〜50μmの活物質粒子22を作製する工程と、この活物質粒子22を温度10〜30℃、相対湿度80〜98%の恒温恒湿中に置いて活物質粒子22を調湿する工程と、この調湿した活物質粒子22をAl,Zr,Ti及びSiからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属アルコキシドのアルコール溶液に混合してスラリーを調製する工程と、このスラリーからアルコール溶液を除去した活物質粒子22を酸素雰囲気下0.1〜1MPaの圧力及び350〜500℃の温度で3〜10時間焼成して活物質粒子22表面の少なくとも一部に被覆層23を形成することにより正極活物質粉末21を作製する工程とを含む非水二次電池の正極活物質粉末の製造方法である。
この請求項3に記載された非水二次電池の正極活物質粉末の製造方法では、活物質粒子22の少なくとも一部を被覆層23にて被覆することにより、活物質粒子22と電解液との接触が電解液との反応性の低い被覆層23により阻止されるか、或いは活物質粒子22と電解液との接触面積が上記被覆層23の存在で減少する。このためリフロー炉による自動はんだ付け時に、正極活物質粉末21が電解液と接触した状態で230〜280℃の高温に曝されても、活物質粒子22は電解液と全く又は殆ど反応しない。
【0009】
請求項4に係る発明は、図3に示すように、マンガン化合物とリチウム化合物を混合する工程と、この混合物を酸素雰囲気下0.1〜1MPaの圧力及び350〜600℃の温度で3〜10時間焼成して平均粒径5〜50μmの活物質粒子42を作製する工程と、この活物質粒子42表面の少なくとも一部にSi又はCのいずれか一方又は双方をCVD法で蒸着して被覆層43を形成することにより正極活物質粉末41を作製する工程とを含む非水二次電池の正極活物質粉末の製造方法である。
この請求項4に記載された非水二次電池の正極活物質粉末の製造方法では、活物質粒子42の少なくとも一部を被覆層43にて被覆することにより、活物質粒子42と電解液との接触が電解液との反応性の低い被覆層43により阻止されるか、或いは活物質粒子42と電解液との接触面積が上記被覆層43の存在で減少する。このためリフロー炉による自動はんだ付け時に、正極活物質粉末41が電解液と接触した状態で230〜280℃の高温に曝されても、活物質粒子42は電解液と全く又は殆ど反応しない。
【0010】
またマンガン化合物は一酸化マンガン、二酸化マンガン、三酸化二マンガン、四酸化三マンガン、炭酸マンガン又は硝酸マンガンであることが好ましい。
更に上記請求項1又は2に記載された正極活物質粉末を用いて、或いは請求項3ないし5いずれか1項に記載された方法で製造された正極活物質粉末を用いて、非水二次電池を製造することにより、リフロー炉による自動はんだ付け時に活物質粒子が電解液と全く又は殆ど反応せず、二次電池内部の圧力が上昇しないので、ガスケットを大型化しなくても機械的強度を確保できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、非水二次電池10は、正極11と、負極12と、正極11及び負極12間に介装されたセパレータ13とを備える。上記正極11、負極12及びセパレータ13は正極ケース14a及び負極ケース14bを有する電池ケース14内に収容される。また正極11は正極集電板16を介して正極ケース14aに電気的に接続され、負極12は負極集電板17を介して負極ケース14bに電気的に接続され、正極ケース14aの周縁は負極ケース14bの周縁に対して電気絶縁性を有するガスケット18により電気的に絶縁される。更に正極ケース14aの周縁はガスケット18を介して負極ケース14bの周縁にかしめられ、これにより電池ケース14の内部が封止される。
【0012】
図1及び図2に示すように、正極11は正極活物質粉末21と導電剤と結着剤を含む。正極活物質粉末21としてはリチウム、マンガン及び酸素からなるリチウムマンガン酸化物が用いられ、導電剤としてはアセチレンブラック、カーボン、グラファイト等の炭素材料系の導電剤が用いられ、結着剤としてはポリビニリデンフルオライド(PVDF)、N−メチルピロリドン等が用いられる。また負極12は負極活物質粉末と結着剤を含む。負極活物質粉末としてはカーボン、グラファイト等のが用いられ、結着剤としてはポリビニリデンフルオライド(PVDF)、N−メチルピロリドン等が用いられる。
【0013】
セパレータ13はポリフェニレンスルフィド等の不織布により形成され、このセパレータには有機溶媒に溶質としてリチウム塩を溶解した非水電解液が含浸される。有機溶媒としてはプロピレンカーボネート(PC)やγ−ブチロラクトン(GBL)等が挙げられ、リチウム塩としてはLiPF、LiBF、LiClO等が挙げられる。また正極集電板16はアルミ箔により形成され、負極集電板17は銅箔により形成される。更にガスケットはポリプロピレンやポリフェニレンスルフィド等により形成される。
【0014】
上記正極活物質粉末21はリチウム、マンガン及び酸素からなるリチウムマンガン酸化物を含む。また正極活物質粉末21は、上記リチウムマンガン酸化物がスピネル構造のLiMn12である活物質粒子22と、この活物質粒子22の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層23とを備える。被覆層23はAl,ZrO,TiO,SiO,Si及びCからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属酸化物からなる。なお、上記被覆層23の厚さは0.1〜5μm、好ましくは0.5〜1μmである。ここで、被覆層23の厚さを0.1〜5μmの範囲に限定したのは、0.1μm未満では電解液が被覆層23を透過して活物質粒子22に接触してしまい、5μmを越えるとリチウムイオンが被覆層23を透過し難くなるからである。
【0015】
更に上記正極活物質粉末21は、電解液と接触させた状態で230〜280℃、好ましくは250〜280℃に、10〜60秒間、好ましくは30〜60秒間熱処理したときに発火しないように構成される。ここで、正極活物質粉末21を電解液と接触させた状態で発火しない温度を230〜280℃の範囲に限定したのは、二次電池10をリフロー炉に入れて自動はんだ付けを行うときに正極活物質粉末21が電解液と反応させないためである。また正極活物質粉末21を電解液と接触させた状態で230〜280℃に保持する時間を10〜60秒間の範囲に限定したのは、リフロー炉に入れて自動はんだ付けを行う時間に対応させるためである。
【0016】
このように構成された正極活物質粉末21の製造方法を説明する。
先ず、マンガン化合物とリチウム化合物を所定の割合で混合する。ここで所定の割合とは、リチウムとマンガンとのモル比Li/Mnが0.75〜0.85、好ましくは0.8となる割合である。またマンガン化合物は、一酸化マンガン、二酸化マンガン、三酸化二マンガン、四酸化三マンガン、炭酸マンガン又は硝酸マンガンである。リチウム化合物は、硝酸リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム又は酢酸リチウムである。
【0017】
次いで上記混合物を酸素雰囲気下0.1〜1MPa、好ましくは0.1〜0.5MPaの圧力及び350〜500℃、好ましくは400〜450℃の温度で、3〜10時間、好ましくは5〜10時間焼成して平均粒径5〜50μm、好ましくは10〜30μmの活物質粒子22を作製する。ここで、焼成時の圧力を0.1〜1MPaの範囲に限定したのは、0.1MPa未満では酸素不足により酸素欠損構造となり容量不足となるからであり、1MPaを越えると特別な圧力容器が必要となるからである。焼成温度を350〜600℃の範囲に限定したのは、350℃未満では十分に反応が進行せず所望の化合物が得られないからであり、600℃を越えると高温相になってLiMnOやLiMnが形成されてしまうからである。焼成時間を3〜10時間の範囲に限定したのは、3時間未満では未反応物質が残るからであり、10時間を越えても反応が全体的に進んでこれ以上効果が得られない。また上記活物質粒子22の平均粒径を5〜50μmの範囲に限定したのは、5μm未満では表面積増加により電極ペーストの作製が困難になるからであり、50μmを越えると充填密度が低下し単位体積当りの容量が低下する。
【0018】
次に上記活物質粒子22を温度10〜30℃、好ましくは20〜30℃、相対湿度80〜98%、好ましくは85〜95%の恒温恒湿中に1〜20時間、好ましくは5〜10時間置いて活物質粒子22を調湿した後に、この調湿した活物質粒子22をAl,Zr,Ti及びSiからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属アルコキシドのアルコール溶液に混合してスラリーを調製する。ここで、活物質粒子22を温度10〜30℃、相対湿度80〜98%の恒温恒湿中に1〜20時間置くのは、活物質粒子22から離れた部位をゾル化させずに、活物質粒子22の表面のみをゾル化させるためである。またアルコキシドの金属としてAl,Zr,Ti及びSiを選択したのは、これらの金属酸化物、即ちAl,ZrO,TiO及びSiOは電解液に対して反応性が低く、しかもリチウムイオンを透過できるためである。更に上記スラリーの調製時にこのスラリー(アルコキシド、活物質粒子22表面の水分、アルコール)を20〜80℃、好ましくは5〜50℃の温度で攪拌機にて5〜50時間、好ましくは10〜20時間攪拌することにより、上記アルコキシドの加水分解及び重縮合を行わせ、金属酸化物の粒子を活物質粒子22の表面で成長させてゾル化し、更に反応を進めて活物質粒子22の表面でゲル化させる。
【0019】
なお、Alのアルコキシドのアルコール溶液としてはアルミニウムトリイソプロポキシド(Al(O−iso−C)を分散した2−プロパノール溶液が挙げられ、Zrのアルコキシドのアルコール溶液としてはジルコニウムテトライソプロポキシド(Zr(O−iso−C)を分散した2−プロパノール溶液が挙げられる。またTiのアルコキシドのアルコール溶液としてはチタニウムテトライソプロポキシド(Ti(O−iso−C)を分散した2−プロパノール溶液が挙げられ、Siのアルコキシドのアルコール溶液としてはテトラエトキシシラン(Si(OC)を分散したエタノール溶液が挙げられる。
【0020】
更に上記スラリーからアルコール溶液を除去した活物質粒子22を酸素雰囲気下0.1〜1MPa、好ましくは0.1〜0.5MPaの圧力及び350〜500℃、好ましくは400〜450℃の温度で3〜10時間、好ましくは5〜10時間焼成することにより活物質粒子22表面の少なくとも一部に被覆層23を形成する。これにより正極活物質粉末21が作製される。ここで、焼成時の圧力を0.1〜1MPaの範囲に限定したのは、0.1MPa未満では酸素不足により酸素欠損構造となり容量不足となるからであり、1MPaを越えると特別な圧力容器が必要となるからである。焼成温度を350〜500℃の範囲に限定したのは、350℃未満ではゲルの分解が不十分になり、500℃を越えると正極活物質が酸素欠損構造になるからである。焼成時間を3〜10時間の範囲に限定したのは、3時間未満ではゲルの分解が不十分になり、10時間を越えても反応が全体的に進んでこれ以上効果が得られない。なお、スラリーからアルコール溶液を除去する方法としては、スラリーを濾過する方法や、スラリーからアルコールを蒸発させる方法などが挙げられる。
【0021】
このように製造された正極活物質粉末21では、活物質粒子22の少なくとも一部を被覆層23にて被覆することにより、活物質粒子22と電解液との接触が電解液との反応性の低い被覆層により阻止されるか、或いは活物質粒子22と電解液との接触面積が上記被覆層23の存在で減少する。このためリフロー炉による自動はんだ付け時に、正極活物質粉末21が電解液と接触した状態で230〜280℃の高温に曝されても、活物質粒子22は電解液と全く又は殆ど反応しないので、発火することはない。
【0022】
このため、上記正極活物質粉末21を用いた二次電池10では、リフロー炉による自動はんだ付けを行っても、電池内部の圧力が上昇しないので、ガスケット18を大型化しなくても機械的強度を確保できる。従って、電池容量を殆ど低下させることなく、二次電池10をリフロー炉にて自動はんだ付けすることができるとともに、従来のはんだこてを用いたはんだ付け作業より工数を低減できるので、二次電池10の製造コストを低減できる。
【0023】
図3は本発明の第2の実施の形態を示す。
この実施の形態では、先ず、上記第1の実施の形態と同様に、マンガン化合物とリチウム化合物を所定の割合で混合する。次いで上記第1の実施の形態と同様に、混合物を酸素雰囲気下0.1〜1MPa、好ましくは0.1〜0.5MPaの圧力及び350〜600℃、好ましくは400〜450℃の温度で、3〜10時間、好ましくは5〜10時間焼成した後、この焼成して平均粒径5〜50μm、好ましくは10〜30μmの活物質粒子42を作製する。
【0024】
次に上記活物質粒子42表面の少なくとも一部にSi又はCのいずれか一方又は双方をCVD法(化学気相成長法)で蒸着して被覆層43を形成することにより正極活物質粉末41を作製する。ここでの焼成条件は第1の実施の形態と同じ理由で決められる。
【0025】
このように製造された正極活物質粉末41では、活物質粒子42の表面にCVD法にて被覆層43を形成するため、活物質粒子42の全面に被覆層43を形成することは難しいけれども、正極活物質粉末41の製造工数を第1の実施の形態より低減できるとともに、被覆層と正極活物質の密着性が高いという利点がある。
【0026】
【実施例】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
図2に示すように、先ず化学合成二酸化マンガン粉末(平均粒径20μmのMnO)と、硝酸リチウム粉末(平均粒径50μmのLiNO)とを、モル比Li/Mnが0.8となるようにそれぞれ秤量した後に混合した。次いで上記混合物を酸素雰囲気下0.1MPaの圧力及び450℃の温度で10時間焼成して平均粒径20μmのリチウムマンガン酸化物(LiMn12)からなる多数の活物質粒子22を作製した。
【0027】
次に上記活物質粒子22を温度25℃、相対湿度90%の恒温恒湿中に10時間置いて活物質粒子22を調湿した後に、アルミニウムトリイソプロポキシド(Al(O−iso−C)を分散した2−プロパノール溶液(Alのアルコキシドのアルコール溶液)に混合してスラリーを調製した。このとき上記スラリーを室温で攪拌機により15時間攪拌した。これにより上記アルコキシドの加水分解及び重縮合を行わせ、金属酸化物の粒子を活物質粒子22の表面で成長させてゾル化し、更に反応を進めて活物質粒子22の表面でゲル化させた。更に上記スラリーからアルコール溶液を除去した活物質粒子22を酸素雰囲気下0.1MPaの圧力及び400℃の温度で5時間焼成した。これにより活物質粒子22表面の少なくとも一部が被覆層23にて被覆された正極活物質粉末21を作製した(図4)。この正極活物質粉末21を実施例1とした。
【0028】
<実施例2>
図3に示すように、活物質粒子42を温度25℃、相対湿度90%の恒温恒湿中に10時間置いて活物質粒子42を調湿した後に、ジルコニウムテトライソプロポキシド(Zr(O−iso−C)を分散した2−プロパノール溶液(Zrのアルコキシドのアルコール溶液)に混合してスラリーを調製したことを除いて、実施例1と同様にして正極活物質粉末41を作製した(図5)。この正極活物質粉末41を実施例2とした。
<比較例1>
表面に被覆層を形成しない活物質粒子を比較例1の正極活物質粉末とした。
【0029】
<比較試験1及び評価>
実施例1、実施例2及び比較例1の正極活物質粉末10mgに1mlの電解液を混合した。この電解液の有機溶媒としてはエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの比が1:1の溶液を用い、リチウム塩としてはLiPFを用いた。この電解液に接触させた実施例1、実施例2及び比較例1の正極活物質粉末を室温(25℃)から230℃まで徐々に加熱して所定温度上昇毎に正極活物質粉末の重量変化を熱重量分析(Thermogravimetric Analysis)法により測定した。その結果を図6に示す。なお、重量変化は室温での重量を100%とする百分率で示した。また、図6に示す参考例は電解液のみに対して熱重量分析を行ったときのデータである。
【0030】
図6から明らかなように、比較例1では温度上昇とともに重量が急激に減少したのに対し、実施例1及び2では温度上昇による重量の変化が比較的緩やかであり、参考例に近かった。また比較例1では230℃において重量の低下が約55%と大きかったのに対し、実施例2では230℃において重量の低下が約40%と小さかった。この結果、実施例1及び2の正極活物質粉末は比較例1の正極活物質粉末より発火し難くかつ燃焼速度が遅いため、耐熱性に優れていることが判った。
【0031】
<比較試験2及び評価>
実施例1、実施例2及び比較例1の正極活物質粉末を用いて非水二次電池を作製し、これらの二次電池の放電容量の変化に対する放電電圧の変化を測定した。この結果を図7に示す。
図7から明らかなように、実施例1及び2の二次電池の放電容量・電圧特性は比較例1の二次電池の放電容量・電圧特性より低下したけれども、その低下の程度は実用上問題がない範囲であることが判った。
【0032】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、スピネル構造のLiMn12からなる活物質粒子の表面の少なくとも一部を、Al,ZrO,TiO,SiO,Si及びCからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属酸化物からなる被覆層により被覆したので、活物質粒子と電解液との接触が電解液との反応性の低い被覆層により阻止されるか或いは活物質粒子と電解液との接触面積が上記被覆層の存在で減少する。この結果、正極活物質粉末を電解液と接触した状態で230〜280℃の高温に曝されても、活物質粒子が電解液と全く又は殆ど反応しないので、この正極活物質粉末を用いた二次電池をリフロー炉にて自動はんだ付けすることができる。
また正極活物質粉末を電解液と接触させた状態で230〜280℃に10〜60秒間熱処理したときに発火しなければ、二次電池をリフロー炉にて自動はんだ付けしても、活物質粒子は電解液と全く又は殆ど反応しないので、二次電池のリフロー炉による自動はんだ付けが可能となり、二次電池の製造コストを低減できる。
【0033】
またマンガン化合物とリチウム化合物との混合物を酸素雰囲気下で焼成して活物質粒子を作製し、この活物質粒子を調湿した後に所定の金属アルコキシドのアルコール溶液に混合してスラリーを調製し、更にこのスラリーからアルコール溶液を除去した活物質粒子を酸素雰囲気下で焼成すれば、活物質粒子表面の少なくとも一部に被覆層が形成された上記正極活物質粉末を得ることができる。
またマンガン化合物とリチウム化合物との混合物を酸素雰囲気下で焼成して活物質粒子を作製し、この活物質粒子表面の少なくとも一部にSi又はCのいずれか一方又は双方をCVD法で蒸着して被覆層を形成した後に酸素雰囲気下で焼成すれば、活物質粒子表面の少なくとも一部に被覆層が形成された上記正極活物質粉末を得ることができる。
【0034】
更に上記正極活物質粉末を用いたリチウム二次電池、或いは上記方法で製造された正極活物質粉末を用いたリチウム二次電池であれば、リフロー炉による自動はんだ付け時に活物質粒子が電解液と全く又は殆ど反応せず、二次電池内部の圧力が上昇しないので、ガスケットを大型化しなくても機械的強度を確保できる。このため電池容量を殆ど低下させることなく、二次電池をリフロー炉にて自動はんだ付けすることができる。従って、本発明では、従来のはんだこてを用いたはんだ付け作業より工数を低減できるので、二次電池の製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明第1実施形態の非水二次電池の断面図。
【図2】その非水二次電池の正極活物質粉末を示す模式図。
【図3】本発明第2実施形態の非水二次電池の正極活物質粉末を示す模式図。
【図4】実施例1の正極活物質粉末を示す電子顕微鏡写真図。
【図5】実施例2の正極活物質粉末を示す電子顕微鏡写真図。
【図6】実施例1、実施例2及び比較例1の正極活物質粉末の温度変化に伴う重量変化を示す図。
【図7】実施例1、実施例2及び比較例1の正極活物質粉末を用いて作製した非水二次電池の放電容量・電圧特性を示す図。
【符号の説明】
10 非水二次電池
21,41 正極活物質粉末
22,42 活物質粒子
23,43 被覆層

Claims (7)

  1. リチウム、マンガン及び酸素からなるリチウムマンガン酸化物を含む非水二次電池(10)の正極活物質粉末(21,41)において、
    前記リチウムマンガン酸化物がスピネル構造のLiMn12である活物質粒子(22,42)と、
    前記活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆しAl,ZrO,TiO,SiO,Si及びCからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属酸化物からなる被覆層(23,43)と
    を備えたことを特徴とする非水二次電池の正極活物質粉末。
  2. 電解液と接触させた状態で230〜280℃に10〜60秒間熱処理したときに発火しないことを特徴とする請求項1記載の非水二次電池の正極活物質粉末。
  3. マンガン化合物とリチウム化合物を混合する工程と、
    前記混合物を酸素雰囲気下0.1〜1MPaの圧力及び350〜600℃の温度で3〜10時間焼成して平均粒径5〜50μmの活物質粒子(22)を作製する工程と、
    前記活物質粒子(22)を温度10〜30℃、相対湿度80〜98%の恒温恒湿中に置いて前記活物質粒子(22)を調湿する工程と、
    前記調湿した活物質粒子(22)をAl,Zr,Ti及びSiからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属アルコキシドのアルコール溶液に混合してスラリーを調製する工程と、
    前記スラリーから前記アルコール溶液を除去した活物質粒子(22)を酸素雰囲気下0.1〜1MPaの圧力及び350〜500℃の温度で3〜10時間焼成して前記活物質粒子(22)表面の少なくとも一部に被覆層(23)を形成することにより正極活物質粉末(21)を作製する工程と
    を含む非水二次電池の正極活物質粉末の製造方法。
  4. マンガン化合物とリチウム化合物を混合する工程と、
    前記混合物を酸素雰囲気下0.1〜1MPaの圧力及び350〜600℃の温度で3〜10時間焼成して平均粒径5〜50μmの活物質粒子(42)を作製する工程と、
    前記活物質粒子(42)表面の少なくとも一部にSi又はCのいずれか一方又は双方をCVD法で蒸着して被覆層(43)を形成することにより正極活物質粉末(21)を作製する工程と
    を含む非水二次電池の正極活物質粉末の製造方法。
  5. マンガン化合物が一酸化マンガン、二酸化マンガン、三酸化二マンガン、四酸化三マンガン、炭酸マンガン又は硝酸マンガンである請求項3又は4記載のリチウム二次電池の正極活物質粉末の製造方法。
  6. 請求項1又は2に記載の正極活物質粉末を用いたリチウム二次電池。
  7. 請求項3ないし5いずれか1項に記載の方法で製造された正極活物質粉末を用いたリチウム二次電池。
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