JP2005041892A - 活性エネルギー線硬化型インクジェットインク及び印刷物 - Google Patents
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Abstract
【課題】エポキシ化合物およびエネルギー線硬化型組成物の安全性および安定性が高く、高湿度下でも光重合性に優れ、硬化性が良好で、オキセタン環含有化合物及びインクとしての安定性も良好で、硬化膜の強度が強靭で、ノズルでの吐出安定性にも優れ、基材への密着性、耐溶剤性および耐水性も良好な活性エネルギー線硬化型インクジェットインク及びそれを用いた印刷物を提供する。
【解決手段】少なくとも2つのオキシラン環を有するエポキシ化合物について、オキシラン環の連結鎖に分岐構造を有するエポキシ化合物を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【選択図】 なし
【解決手段】少なくとも2つのオキシラン環を有するエポキシ化合物について、オキシラン環の連結鎖に分岐構造を有するエポキシ化合物を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は活性エネルギー線硬化型インクジェットインク及びそれを用いた印刷物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、耐水性の良好なインクジェットインクとしては、油溶性染料を高沸点溶剤に分散ないし溶解したもの、油溶性染料を揮発性の溶剤に溶解したものがあるが、染料は耐光性等の諸耐性で顔料に劣るため、着色剤として顔料を用いたインクが望まれている。しかしながら、顔料を安定して有機溶剤に分散することは困難であり、安定な分散性および吐出性を確保することも難しい。一方、高沸点溶剤を用いたインクは、非吸収性の基材においては、インク中の溶剤が揮発せず、溶剤の蒸発による乾燥は困難なので、非吸収性の基材への印字は不可能である。
【0003】
揮発性の有機溶剤を用いたインクにおいては、使用する樹脂の密着性及び溶剤の揮発によって非吸収性の基材においても良好な印字を形成することができる。しかしながら、揮発性の溶剤がインクの主成分となるためヘッドのノズル面において溶剤の揮発による乾燥が非常に早く、頻繁なメンテナンスを必要とする。また、インクは本質的に溶剤に対する再溶解性が必要とされるため、溶剤に対する耐性が十分得られないことがある。
【0004】
また、ピエゾ素子によるオンデマンド方式のプリンタにおいては、揮発性の溶剤を多量に使用することはメンテナンスの頻度を増やし、またプリンタ内のインク接触材料の溶解膨潤という問題を誘発しやすくする。また、揮発溶剤は消防法でいう危険物による制約も大きくなる。そこで、ピエゾ素子を用いるオンデマンドタイププリンタにおいては、揮発性溶剤の少ないインクとする必要がある。しかしながら、活性エネルギー線硬化型のインクに用いる材料は比較的粘度の高い材料であり、従来のプリンタにて吐出できるような粘度において、硬化性がよく安定性が良好なインクを設計することは困難であった。
【0005】
一方、特開2001−220526号公報(特許文献1)ではこのような問題点を解決すべく、エポキシ化合物とオキセタン環含有化合物やビニルエーテル化合物を含有する活性エネルギー線硬化型組成物が開示されている。該公報記載のエポキシ化合物を検討してみると、活性エネルギー線硬化型組成物の安全性、安定性、高湿度下での硬化性、硬化膜の強度に問題があり、またノズルでの吐出安定性、基材への密着性、耐溶剤性および耐水性に問題を抱えており、早急な解決手段の開発が要望されていた。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−220526号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、エポキシ化合物およびエネルギー線硬化型組成物の安全性および安定性が高く、高湿度下でも光重合性に優れ、硬化性が良好で、オキセタン環含有化合物及びインクとしての安定性も良好で、硬化膜の強度が強靭で、ノズルでの吐出安定性にも優れ、基材への密着性、耐溶剤性および耐水性も良好な活性エネルギー線硬化型インクジェットインク及びそれを用いた印刷物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成された。
【0009】
1.少なくとも2つのオキシラン環を有するエポキシ化合物について、オキシラン環の連結鎖に分岐構造を有するエポキシ化合物を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0010】
2.前記エポキシ化合物が、前記オキシラン環の連結鎖にエステル基を少なくとも2つ有することを特徴とする前記1記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0011】
3.前記エポキシ化合物が、前記一般式(VI)または(VII)で表される脂環式エポキシ化合物であることを特徴とする前記1又は2記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0012】
4.前記エポキシ化合物の分子量が170以上、1,000以下であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0013】
5.更に、オキセタン環含有化合物、ビニルエーテル化合物のいずれか一方を含むことを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0014】
6.更に、光カチオン重合開始剤を含むことを特徴とする前記1〜5のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0015】
7.更に、顔料を含むことを特徴とする前記1〜6のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0016】
8.更に、顔料分散剤を含むことを特徴とする前記1〜7のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0017】
9.前記顔料が平均粒経10〜150nmであることを特徴とする前記7又は8記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0018】
10.前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの25℃での粘度が5〜50mPa・sであることを特徴とする前記1〜9のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0019】
11.前記1〜10のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを、基材上に用いて作製することを特徴とする印刷物。
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、特定構造のエポキシ化合物を含有することを特徴とする。また、本発明は、それに加えて更にオキセタン環含有化合物、ビニルエーテル化合物、光カチオン重合開始剤、顔料、顔料分散剤を含むことを特徴としている。本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、更に顔料が平均粒経10〜150nmの微細顔料であることを特徴とする。又、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、25℃での粘度が5〜50mPa・sであることを特徴とする。又、本発明の印刷物は、基材に上記本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを印刷してなることを特徴とする。
【0021】
本発明のインクジェットインクに含まれる顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無彩色無機顔料または有彩色の有機顔料を使用することができる。有機顔料としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系有機顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系有機顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系有機顔料、イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系有機顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロンイエローなどのキノフタロン系有機顔料、イソインドリンイエローなどのイソインドリン系有機顔料、その他の顔料として、フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
【0022】
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、110、117、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が挙げられる。
【0023】
上記顔料の中で、キナクリドン系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、イソインドリノン系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、キノフタロン系有機顔料、イソインドリン系有機顔料等は耐光性が優れているため好ましい。有機顔料はレーザ散乱による測定値で平均粒径10〜150nmの微細顔料であることが好ましい。顔料の平均粒径が10nm未満の場合は、粒径が小さくなることによる耐光性の低下が生じ、150nmを越える場合は、分散の安定維持が困難になり、顔料の沈澱が生じやすくなる。
【0024】
有機顔料の微細化は下記の方法で行うことができる。即ち、有機顔料、有機顔料の3質量倍以上の水溶性の無機塩および水溶性の溶剤の少なくとも3つの成分からなる混合物を粘土状の混合物とし、ニーダー等で強く練りこんで微細化したのち水中に投入し、ハイスピードミキサー等で攪拌してスラリー状とする。次いで、スラリーの濾過と水洗を繰り返して、水溶性の無機塩および水溶性の溶剤を除去する。微細化工程において、樹脂、顔料分散剤等を添加してもよい。水溶性の無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。これらの無機塩は有機顔料の好ましくは3質量倍以上、より好ましくは20質量倍以下の範囲で用いる。無機塩の量が3質量倍よりも少ないと、所望の大きさの処理顔料が得られない。また、20質量倍よりも多いと、後の工程における洗浄処理が多大であり、有機顔料の実質的な処理量が少なくなる。
【0025】
水溶性の溶剤は、有機顔料と破砕助剤として用いられる水溶性の無機塩との適度な粘土状態をつくり、充分な破砕を効率よく行うために用いられ、水に溶解する溶剤であれば特に限定されないが、混練時に温度が上昇して溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から沸点120〜250℃の高沸点の溶剤が好ましい。水溶性の溶剤としては、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、低分子量ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0026】
本発明において、顔料は十分な濃度及び十分な耐光性を得るため、インクジェットインク中に3〜15質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0027】
本発明のエポキシ化合物は、少なくとも2つのオキシラン環を有するエポキシ化合物について、オキシラン環の連結鎖に分岐構造を有するエポキシ化合物である。更には、前記エポキシ化合物が、前記オキシラン環の連結鎖にエステル基を少なくとも2つ有するものが好ましく用いられ、そして更には、前記一般式(VI)または(VII)で表される脂環式エポキシ化合物が好ましいものとして挙げられる。
【0028】
本発明の一般式(VI)または(VII)で表される脂環式エポキシ化合物について説明する。
【0029】
前記一般式(VI)または(VII)において、
R601、R701はオキシラン環のα、β位以外の脂肪族基を表し、該脂肪族基としては、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、等)、炭素数3〜6個のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、等)、炭素数1〜6個のアルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、等)、炭素数1〜6個のアルキニル基(例えば、アセチレニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、等)等が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜3個のアルキル基であり、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0030】
m6、m7は0〜2の整数を表し、1以上が好ましい。
X1は−(CH2)n6−または−(O)n6−を表し、X2は−(CH2)n7−または−(O)n7−を表す。n6、n7は0または1の整数を表し、n6、n7が0の場合はX1、X2が存在しないことを表す。
【0031】
m6は0〜2の整数を表し、m7は0〜2の整数を表す。m6+n6またはm7+n7は1以上が好ましい。
【0032】
p2、q2は1または2の整数を表す。
L3は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr1+1価の分岐構造を有する連結基あるいは単結合を表し、L4は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr2+1価の分岐構造を有する連結基あるいは単結合を表す。
【0033】
主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15の2価の連結基としては、例えば、下記の基およびこれらの基と−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
【0034】
エチリデン基[>CHCH3]
イソプロピリデン基[>C(CH3)2]
2,2−ジメチル−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(CH3)2CH2−]
2,2−ジメトキシ−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(OCH3)2CH2−]
2,2−ジメトキシメチル−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(CH2OCH3)2CH2−]
1−メチル−1,3−プロパンジイル基[−CH(CH3)CH2CH2−]
1,3−ジメチル−2−オキサ−1,4−ブタンジイル基[−CH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2−]
1,4−ジメチル−3−オキサ−1,5−ペンタンジイル基[−CH(CH3)CH2CH2OCH(CH3)CH2−]
1,3,5−トリメチル−2,4−ジオキサ−1,6−ヘキサンジイル基[−CH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2−]
4,4−ジメチル−2,5−ジオキサ−1,7−ヘプタンジイル基[−CH2CH2OCH2C(CH3)2CH2OCH2CH2−]
4,4−ジメトキシ−2,5−ジオキサ−1,7−ヘプタンジイル基[−CH2CH2OCH2C(OCH3)2CH2OCH2CH2−]
4,4−ジメトキシメチル−2,5−ジオキサ−1,7−ヘプタンジイル基[−CH2CH2OCH2C(CH2OCH3)2CH2OCH2CH2−]
1,4,7−トリメチル−3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイル基[−CH(CH3)CH2CH2OCH(CH3)CH2CH2OCH(CH3)CH2−]
5,5−ジメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2CH2C(CH3)2CH2CH2OCH2CH2−]
5,5−ジメトキシ−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2CH2C(OCH3)2CH2CH2OCH2CH2−]
5,5−ジメトキシメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2CH2C(CH2OCH3)2CH2CH2OCH2CH2−]
イソプロピリデン−ビス−p−フェニレン基[−p−C6H4−C(CH3)2−p−C6H4−]
3価以上の連結基としては以上に挙げた2価の連結基から任意の部位の水素原子を必要なだけ除いてできる基およびそれらと−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
【0035】
L3、L4は置換基を有していても良い。該置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、等)、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基、等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、等)等が挙げられる。置換基として好ましいのは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基である。
【0036】
以下に、本発明のエポキシ化合物(本発明の一般式(VI)または(VII)で表される脂環式エポキシ化合物等)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
【化3】
【0038】
本発明のエポキシ化合物は、その製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry of heterocyclic compounds−Small Ring Heterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,An Interscience Publication,NewYork,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号、特願平2−140732号、特願平2−182124号公報等の文献を参考にして合成できる。
【0039】
本発明のエポキシ化合物は、分子量が170以上、1,000以下であることが好ましい。より好ましくは300以上、700以下である。分子量が170未満では安全性、安定性が悪くなることがある。また、1,000を越えるとインクの粘度が高くなりノズルでの吐出安定性が悪くなることがある。
【0040】
本発明に用いられるオキセタン環含有化合物(オキセタン化合物ともいう)は、分子内に1以上のオキセタン環を有する化合物である。具体的には、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成(株)製商品名OXT101等)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン(同OXT121等)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(同OXT211等)、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテル(同OXT221等)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(同OXT212等)等を好ましく用いることができ、特に、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテルを好ましく用いることができる。これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
本発明のインクジェットインクには本発明のエポキシ化合物以外のオキシラン基含有化合物も併用することが出来る。分子中に1個以上の下記に示されるオキシラン環を有する化合物である。
【0042】
【化4】
【0043】
通常、エポキシ樹脂として用いられている、モノマー、オリゴマー又はポリマーいずれも使用可能である。具体的には、従来公知の芳香族エポキシド、脂環族エポキシド及び脂肪族エポキシドが挙げられる。尚、以下エポキシドとは、モノマーまたはそのオリゴマーを意味する。これら化合物は一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。
【0044】
芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジまたはポリグリシジルエーテルであり、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、ならびにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0045】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく、具体例としては、例えば、ダイセル化学工業(株)製、セロキサイド2021、セロキサイド2021A、セロキサイド2021P、セロキサイド2080、セロキサイド2000、エポリードGT301、エポリードGT302、エポリードGT401、エポリードGT403、EHPE−3150、EHPEL3150CE、ユニオンカーバイド社製、UVR−6105、UVR−6110、UVR−6128、UVR−6100、UVR−6216、UVR−6000等を挙げることができる。
【0046】
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0047】
更に、これらの化合物の他に、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルおよびフェノール、クレゾールのモノグリシジルエーテル等も用いることができる。これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0048】
これらオキシラン基含有化合物は、本発明のエポキシ化合物、オキセタン環含有化合物及び必要に応じて配合されるビニルエーテル化合物からなる液状成分中、0〜50質量%、好ましくは0〜30質量%配合される。
【0049】
本発明のインクジェットインクに含まれるビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0050】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0051】
ビニルエーテル化合物は任意の配合成分であり、配合させることによってインクジェットインクに要求される低粘度化が実現できる。また、硬化速度の向上もできる。ビニルエーテル化合物はオキシラン基含有化合物およびオキセタン環含有化合物からなる液状成分中、通常0〜40質量%、好ましくは0〜20質量%が配合される。
【0052】
本発明で用いられる光カチオン重合開始剤としては、アリールスルホニウム塩誘導体(例えば、ユニオン・カーバイド社製のサイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−6974、旭電化工業社製のアデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172)、アリルヨードニウム塩誘導体(例えば、ローディア社製のRP−2074)、アレン−イオン錯体誘導体(例えば、チバガイギー社製のイルガキュア261)、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤及びその他のハロゲン化物等の酸発生剤が挙げられる。
【0053】
また、本発明においては、スルホニウム塩が光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)として好適に用いられる。特に、活性光線照射によりベンゼンを発生しないスルホニウム塩が特に好適に用いられる。
【0054】
本発明における「活性光線照射によりベンゼンを発生しない」とは、実質的にベンゼンを発生しないことを指し、具体的には、インク組成物中にスルホニム塩(光酸発生剤)を5質量%含有したインクを用いて厚さ15μm・約100m2の画像を印字し、インク膜面を30℃に保った状態で光酸発生剤が十分分解する量の活性光線を照射した際に発生するベンゼンの量が、5μg以下の極微量あるいは皆無であることを指す。該スルホニム塩としては、下記一般式〔1〕〜〔4〕で表されるスルホニウム塩化合物が好ましく、S+と結合するベンゼン環に置換基をもつものであれば、上記条件を満たす。
【0055】
【化5】
【0056】
〔式中、R1〜R17はそれぞれ水素原子、または置換基を表し、R1〜R3が同時に水素原子を表すことがなく、R4〜R7が同時に水素原子を表すことがなく、R8〜R11が同時に水素原子を表すことがなく、R12〜R17が同時に水素原子を表すことはない。X−は、非求核性のアニオン残基を表す。〕
上記一般式〔1〕〜〔4〕において、R1〜R17はそれぞれ水素原子、または置換基を表し、R1〜R3が同時に水素原子を表すことがなく、R4〜R7が同時に水素原子を表すことがなく、R8〜R11が同時に水素原子を表すことがなく、R12〜R17が同時に水素原子を表すことはない。
【0057】
R1〜R17で表される置換基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピル基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等のアルコキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、デシルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンゾイルオキシ基等のカルボニル基、フェニルチオ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基等を挙げることができる。
【0058】
X−は、非求核性のアニオン残基を表し、例えば、F、Cl、Br、I等のハロゲン原子、B(C6F5)4、R18COO、R19SO3、SbF6、AsF6、PF6、BF4等を挙げることができる。ただし、R18およびR19は、それぞれメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基等で置換されていもよいアルキル基もしくはフェニル基を表す。この中でも、安全性の観点から、B(C6F5)4、PF6が好ましい。
【0059】
一般式〔1〕〜〔4〕で表されるスルホニウム塩化合物の例示化合物(下記一般式〔5〕〜〔13〕)を下記に挙げる。
【0060】
【化6】
【0061】
上記一般式〔5〕〜〔13〕において、X−は非求核性のアニオン残基を表し、一般式〔1〕〜〔4〕におけるX−と同様である。
【0062】
上記化合物は、THE CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN Voi.71 No.11, 1998年、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、に記載の光酸発生剤と同様、公知の方法にて容易に合成することができる。
【0063】
本発明においては、一般式〔I〕〜〔4〕で表されるスルホニウム塩が、上記一般式〔5〕〜〔13〕から選ばれるスルホニウム塩の少なくとも1種であることが、特に好ましい。
【0064】
光カチオン重合開始剤は、脂環式エポキシ基を有する化合物100質量部に対して、0.2〜20質量部の比率で含有させることが好ましい。光カチオン重合開始剤の含有量が0.2質量部未満では硬化物を得ることが困難であり、20質量部を越えて含有させてもさらなる硬化性向上効果はない。これら光カチオン重合開始剤は、1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0065】
光重合促進剤としては、アントラセン、アントラセン誘導体(例えば旭電化工業社製のアデカオプトマーSP−100)が挙げられる。これらの光重合促進剤は1種または複数を組み合わせて使用することができる。
【0066】
顔料分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系界面活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート、顔料誘導体等を挙げることができる。
【0067】
顔料分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Anti−Terra−U(ポリアミノアマイド燐酸塩)」、「Anti−Terra−203/204(高分子量ポリカルボン酸塩)」、「Disperbyk−101(ポリアミノアマイド燐酸塩と酸エステル)、107(水酸基含有カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアマイド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「400」、「Bykumen」(高分子量不飽和酸エステル)、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸)」、「P104S、240S(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン系)」、「Lactimon(長鎖アミンと不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン)」が挙げられる。
【0068】
また、Efka CHEMICALS社製「エフカ44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766」、「エフカポリマー100(変性ポリアクリレート)、150(脂肪族系変性ポリマー)、400、401、402、403、450、451、452、453(変性ポリアクリレート)、745(銅フタロシアニン系)」、共栄化学社製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「フローノンSH−290、SP−1000」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合物)」、楠本化成社製「ディスパロンKS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)」が挙げられる。
【0069】
更に、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、EP」、「ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子)」、「エマルゲン920、930、931、935、950、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン24(ココナッツアミンアセテート)、86(ステアリルアミンアセテート)」、ゼネカ社製「ソルスパーズ5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13240、13940(ポリエステルアミン系)、17000(脂肪酸アミン系)、24000、32000」、日光ケミカル社製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)、Hexagline4−0(ヘキサグリセリルテトラオレート)」等が挙げられる。
【0070】
顔料分散剤は、インク中に0.1〜10質量%の範囲で含有させることが好ましい。
【0071】
本発明のインクジェットインクは、活性エネルギー線硬化性化合物、顔料分散剤と共に、顔料をサンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散することにより製造される。予め顔料高濃度の濃縮液を作製しておいて活性エネルギー線硬化性化合物で希釈することが好ましい。通常の分散機による分散においても充分な分散が可能であり、このため、過剰な分散エネルギーがかからず、多大な分散時間を必要としないため、インク成分の分散時の変質を招きにくく、安定性に優れたインクが調製される。インクは孔径3μm以下、更には1μm以下のフィルターにて濾過することが好ましい。
【0072】
本発明のインクジェットインクは、25℃での粘度を5〜50mPa・sと高めに調整することが好ましい。25℃での粘度が5〜50mPa・sのインクは、特に通常の4〜10KHzの周波数を有するヘッドから、10〜50KHzの高周波数のヘッドにおいても安定した吐出特性を示す。粘度が5mPa・s未満の場合は、高周波数のヘッドにおいて、吐出の追随性の低下が認められ、50mPa・sを越える場合は、加熱による粘度の低下機構をヘッドに組み込んだとしても吐出そのものの低下を生じ、吐出の安定性が不良となり、全く吐出できなくなる。
【0073】
また、本発明のインクジェットインクは、ピエゾヘッドにおいては、10μS/cm以下の電導度とし、ヘッド内部での電気的な腐食のないインクとすることが好ましい。また、コンティニュアスタイプにおいては、電解質による電導度の調整が必要であり、この場合には、0.5mS/cm以上の電導度に調整する必要がある。
【0074】
本発明で用いる基材としては、従来各種の用途で使用されている広汎な合成樹脂が全て対象となり、具体的には、例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート等が挙げられ、これらの合成樹脂基材の厚みや形状は何ら限定されない。
【0075】
本発明のインクジェットインクを使用するには、まずこのインクジェットインクをインクジェット記録方式用プリンタのプリンタヘッドに供給し、このプリンタヘッドから基材上に吐出し、その後紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射する。これにより印刷媒体上の組成物は速やかに硬化する。
【0076】
なお、活性エネルギー線の光源としては、紫外線を照射する場合には、例えば、水銀アークランプ、キセノンアークランプ、螢光ランプ、炭素アークランプ、タングステン−ハロゲン複写ランプおよび太陽光を使用することができる。電子線により硬化させる場合には、通常300eVの以下のエネルギーの電子線で硬化させるが、1〜5Mradの照射量で瞬時に硬化させることも可能である。
【0077】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0078】
実施例1
〔本発明のインク1〜6の作製〕
表1に示す顔料と分散剤及びエポキシ化合物、オキセタン環含有化合物、ビニルエーテル化合物を共にサンドミルに入れて分散を4時間行い、活性エネルギー線硬化型インク原液を得た。次いで光カチオン重合開始剤をインク原液に加え、光カチオン重合開始剤が溶解するまで、穏やかに混合させた後、これをメンブランフィルターで加圧濾過し、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク(本発明のインク1〜6)を作製した。
【0079】
【表1】
【0080】
表中の化合物は下記に示す。数字は部数を示す。
顔料
P1:粗製銅フタロシアニン(東洋インク製造社製「銅フタロシアニン」)、250部、塩化ナトリウム、2500部及びポリエチレングリコール(東京化成社製「ポリエチレングリコール300」)、160部をスチレン製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、3時間混練した。次に、この混合物を2.5Lの温水に投入し、約80℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌しスラリー状とした後、濾過、水洗を5回繰り返して塩化ナトリウムおよび溶剤を除き、次いでスプレードライをして乾燥した処理顔料P1を得た。
【0081】
オキセタン環含有化合物
OXT221:オキセタン化合物(東亞合成社製)
オキシラン化合物
CEL2000:3−Vinyl−7−oxa−bicyclo[4.1.0]heptane(ダイセル化学社製)
ビニルエーテル化合物
DVE−3:トリエチレングリコールジビニルエーテル(ISP社製)
顔料分散剤
32000:脂肪族変性系分散剤(「ソルスパーズ32000」ゼネカ社製)
光カチオン重合開始剤
【0082】
【化7】
【0083】
〔比較のインク1の作製〕
本発明のインク1について、本発明のエポキシ化合物に代えて、セロキサイド2021P(脂環式エポキシ、分子量252、ダイセル化学製)を20部用いた以外は同様にして比較のインク1を作製した。
【0084】
本発明のインク1〜6、比較のインク1及びそれらで得られた印刷物について、下記の評価を行った。
【0085】
〔評価方法〕
印刷物の作製
インクを、ピエゾヘッドを有するインクジェットプリンタにてポリエチレンテレフタラート(基材)に印字を行い、その後UV照射装置(冷陰極管8灯:出力20W)により、基材の搬送速度500mm/秒、表2に示す環境条件下(温度、湿度)で硬化を行って印刷物を作製した。
【0086】
硬化性:
指触によりタックがなくなるまでのコンベアUVランプのパス回数。
【0087】
安定性(エポキシ化合物):
エポキシ化合物を100℃で1ヵ月保存後の分散状態を目視及び粘度変化により評価した。
【0088】
○:粘度の変化なし
△:粘度が増加
×:ゲル化物の発生が認められる。
【0089】
安定性(インク):
インクを25℃で1ヵ月保存後の分散状態を目視及び粘度変化により評価した。
【0090】
○:沈殿物の発生が認められず、粘度の変化なし
△:沈殿物の発生が認められず、粘度が増加
×:沈殿物の発生が認められる。
【0091】
安定性(吐出):
30分間の連続出射を行った後、ノズル欠の有無について観察を行い、下記の基準により、連続出射性の評価を行った。
【0092】
○:30分連続出射でノズル欠が生じない
△:30分連続出射でノズル欠が生じないが、サテライトが発生する
×:30分連続出射でノズル欠が生じる。
【0093】
安全性(エポキシ化合物):皮膚に付着した場合の刺激性について下記基準により評価した。
【0094】
○:皮膚に付着しても皮膚がほとんど変化しない
△:皮膚に付着すると発赤する
×:皮膚に付着すると水泡ができる。
【0095】
安全性(インク):
○:皮膚に付着しても皮膚がほとんど変化しない
△:皮膚に付着すると発赤する
×:皮膚に付着すると水泡ができる
膜強度:
硬化膜の強度を爪の引っ掻き試験で行った。25℃45%RHで硬化した試料を使用。
【0096】
○:引っ掻いても印字画像が全くとれない
△:強く引っ掻くと印字画像が若干とれる
×:引っ掻くと印字画像が簡単にとれてしまう。
【0097】
密着性:
上記作製した印字画像について、全く印字面に傷をつけない試料と、JIS K 5400に準拠して、印字面上に1mm間隔で縦、横に11本の切れ目をいれ、1mm角の碁盤目を100個作った試料を作製し、各印字面上にセロテープ(R)を貼り付け、90度の角度で素早く剥がし、剥がれずに残った印字画像あるいは碁盤目の状況について、下記の基準に則り評価した。25℃45%RHで硬化した試料を使用。
【0098】
○:碁盤目テストでも、印字画像の剥がれが全く認められない
△:碁盤目テストでは若干のインク剥がれが認められるが、インク面に傷をつけなければ剥がれは殆ど認められない
×:両条件共に、簡単にセロテープ(R)での剥がれが認められる。
【0099】
耐溶剤性、耐水性:
基材(フィルム)に印字したサンプルを50℃のアルコールまたは温水に10秒間漬けた後、画像の破損、収縮具合を以下の基準により耐溶剤性または耐水性をそれぞれ目視評価した。25℃45%RHで硬化した試料を使用。
【0100】
○:変化なし
△:僅かに破損、収縮が生じる
×:明らかに破損、収縮が生じる。
【0101】
結果を表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
表2から、エポキシ化合物およびインクの安定性および安全性、硬化性、ノズルでの吐出安定性、膜強度、印字画像の密着性、印字画像の耐溶剤性、耐水性については本発明が比較に対し優れていることは明らかである。
【0104】
【発明の効果】
本発明により、エポキシ化合物およびエネルギー線硬化型組成物の安全性および安定性が高く、高湿度下でも光重合性に優れ、硬化性が良好で、オキセタン環含有化合物及びインクとしての安定性も良好で、硬化膜の強度が強靭で、ノズルでの吐出安定性にも優れ、基材への密着性、耐溶剤性および耐水性も良好な活性エネルギー線硬化型インクジェットインク及びそれを用いた印刷物を提供することができた。
【発明の属する技術分野】
本発明は活性エネルギー線硬化型インクジェットインク及びそれを用いた印刷物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、耐水性の良好なインクジェットインクとしては、油溶性染料を高沸点溶剤に分散ないし溶解したもの、油溶性染料を揮発性の溶剤に溶解したものがあるが、染料は耐光性等の諸耐性で顔料に劣るため、着色剤として顔料を用いたインクが望まれている。しかしながら、顔料を安定して有機溶剤に分散することは困難であり、安定な分散性および吐出性を確保することも難しい。一方、高沸点溶剤を用いたインクは、非吸収性の基材においては、インク中の溶剤が揮発せず、溶剤の蒸発による乾燥は困難なので、非吸収性の基材への印字は不可能である。
【0003】
揮発性の有機溶剤を用いたインクにおいては、使用する樹脂の密着性及び溶剤の揮発によって非吸収性の基材においても良好な印字を形成することができる。しかしながら、揮発性の溶剤がインクの主成分となるためヘッドのノズル面において溶剤の揮発による乾燥が非常に早く、頻繁なメンテナンスを必要とする。また、インクは本質的に溶剤に対する再溶解性が必要とされるため、溶剤に対する耐性が十分得られないことがある。
【0004】
また、ピエゾ素子によるオンデマンド方式のプリンタにおいては、揮発性の溶剤を多量に使用することはメンテナンスの頻度を増やし、またプリンタ内のインク接触材料の溶解膨潤という問題を誘発しやすくする。また、揮発溶剤は消防法でいう危険物による制約も大きくなる。そこで、ピエゾ素子を用いるオンデマンドタイププリンタにおいては、揮発性溶剤の少ないインクとする必要がある。しかしながら、活性エネルギー線硬化型のインクに用いる材料は比較的粘度の高い材料であり、従来のプリンタにて吐出できるような粘度において、硬化性がよく安定性が良好なインクを設計することは困難であった。
【0005】
一方、特開2001−220526号公報(特許文献1)ではこのような問題点を解決すべく、エポキシ化合物とオキセタン環含有化合物やビニルエーテル化合物を含有する活性エネルギー線硬化型組成物が開示されている。該公報記載のエポキシ化合物を検討してみると、活性エネルギー線硬化型組成物の安全性、安定性、高湿度下での硬化性、硬化膜の強度に問題があり、またノズルでの吐出安定性、基材への密着性、耐溶剤性および耐水性に問題を抱えており、早急な解決手段の開発が要望されていた。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−220526号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、エポキシ化合物およびエネルギー線硬化型組成物の安全性および安定性が高く、高湿度下でも光重合性に優れ、硬化性が良好で、オキセタン環含有化合物及びインクとしての安定性も良好で、硬化膜の強度が強靭で、ノズルでの吐出安定性にも優れ、基材への密着性、耐溶剤性および耐水性も良好な活性エネルギー線硬化型インクジェットインク及びそれを用いた印刷物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成された。
【0009】
1.少なくとも2つのオキシラン環を有するエポキシ化合物について、オキシラン環の連結鎖に分岐構造を有するエポキシ化合物を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0010】
2.前記エポキシ化合物が、前記オキシラン環の連結鎖にエステル基を少なくとも2つ有することを特徴とする前記1記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0011】
3.前記エポキシ化合物が、前記一般式(VI)または(VII)で表される脂環式エポキシ化合物であることを特徴とする前記1又は2記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0012】
4.前記エポキシ化合物の分子量が170以上、1,000以下であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0013】
5.更に、オキセタン環含有化合物、ビニルエーテル化合物のいずれか一方を含むことを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0014】
6.更に、光カチオン重合開始剤を含むことを特徴とする前記1〜5のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0015】
7.更に、顔料を含むことを特徴とする前記1〜6のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0016】
8.更に、顔料分散剤を含むことを特徴とする前記1〜7のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0017】
9.前記顔料が平均粒経10〜150nmであることを特徴とする前記7又は8記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0018】
10.前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの25℃での粘度が5〜50mPa・sであることを特徴とする前記1〜9のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0019】
11.前記1〜10のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを、基材上に用いて作製することを特徴とする印刷物。
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、特定構造のエポキシ化合物を含有することを特徴とする。また、本発明は、それに加えて更にオキセタン環含有化合物、ビニルエーテル化合物、光カチオン重合開始剤、顔料、顔料分散剤を含むことを特徴としている。本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、更に顔料が平均粒経10〜150nmの微細顔料であることを特徴とする。又、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、25℃での粘度が5〜50mPa・sであることを特徴とする。又、本発明の印刷物は、基材に上記本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを印刷してなることを特徴とする。
【0021】
本発明のインクジェットインクに含まれる顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無彩色無機顔料または有彩色の有機顔料を使用することができる。有機顔料としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系有機顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系有機顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系有機顔料、イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系有機顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロンイエローなどのキノフタロン系有機顔料、イソインドリンイエローなどのイソインドリン系有機顔料、その他の顔料として、フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
【0022】
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、110、117、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が挙げられる。
【0023】
上記顔料の中で、キナクリドン系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、イソインドリノン系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、キノフタロン系有機顔料、イソインドリン系有機顔料等は耐光性が優れているため好ましい。有機顔料はレーザ散乱による測定値で平均粒径10〜150nmの微細顔料であることが好ましい。顔料の平均粒径が10nm未満の場合は、粒径が小さくなることによる耐光性の低下が生じ、150nmを越える場合は、分散の安定維持が困難になり、顔料の沈澱が生じやすくなる。
【0024】
有機顔料の微細化は下記の方法で行うことができる。即ち、有機顔料、有機顔料の3質量倍以上の水溶性の無機塩および水溶性の溶剤の少なくとも3つの成分からなる混合物を粘土状の混合物とし、ニーダー等で強く練りこんで微細化したのち水中に投入し、ハイスピードミキサー等で攪拌してスラリー状とする。次いで、スラリーの濾過と水洗を繰り返して、水溶性の無機塩および水溶性の溶剤を除去する。微細化工程において、樹脂、顔料分散剤等を添加してもよい。水溶性の無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。これらの無機塩は有機顔料の好ましくは3質量倍以上、より好ましくは20質量倍以下の範囲で用いる。無機塩の量が3質量倍よりも少ないと、所望の大きさの処理顔料が得られない。また、20質量倍よりも多いと、後の工程における洗浄処理が多大であり、有機顔料の実質的な処理量が少なくなる。
【0025】
水溶性の溶剤は、有機顔料と破砕助剤として用いられる水溶性の無機塩との適度な粘土状態をつくり、充分な破砕を効率よく行うために用いられ、水に溶解する溶剤であれば特に限定されないが、混練時に温度が上昇して溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から沸点120〜250℃の高沸点の溶剤が好ましい。水溶性の溶剤としては、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、低分子量ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0026】
本発明において、顔料は十分な濃度及び十分な耐光性を得るため、インクジェットインク中に3〜15質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0027】
本発明のエポキシ化合物は、少なくとも2つのオキシラン環を有するエポキシ化合物について、オキシラン環の連結鎖に分岐構造を有するエポキシ化合物である。更には、前記エポキシ化合物が、前記オキシラン環の連結鎖にエステル基を少なくとも2つ有するものが好ましく用いられ、そして更には、前記一般式(VI)または(VII)で表される脂環式エポキシ化合物が好ましいものとして挙げられる。
【0028】
本発明の一般式(VI)または(VII)で表される脂環式エポキシ化合物について説明する。
【0029】
前記一般式(VI)または(VII)において、
R601、R701はオキシラン環のα、β位以外の脂肪族基を表し、該脂肪族基としては、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、等)、炭素数3〜6個のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、等)、炭素数1〜6個のアルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、等)、炭素数1〜6個のアルキニル基(例えば、アセチレニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、等)等が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜3個のアルキル基であり、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0030】
m6、m7は0〜2の整数を表し、1以上が好ましい。
X1は−(CH2)n6−または−(O)n6−を表し、X2は−(CH2)n7−または−(O)n7−を表す。n6、n7は0または1の整数を表し、n6、n7が0の場合はX1、X2が存在しないことを表す。
【0031】
m6は0〜2の整数を表し、m7は0〜2の整数を表す。m6+n6またはm7+n7は1以上が好ましい。
【0032】
p2、q2は1または2の整数を表す。
L3は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr1+1価の分岐構造を有する連結基あるいは単結合を表し、L4は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr2+1価の分岐構造を有する連結基あるいは単結合を表す。
【0033】
主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15の2価の連結基としては、例えば、下記の基およびこれらの基と−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
【0034】
エチリデン基[>CHCH3]
イソプロピリデン基[>C(CH3)2]
2,2−ジメチル−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(CH3)2CH2−]
2,2−ジメトキシ−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(OCH3)2CH2−]
2,2−ジメトキシメチル−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(CH2OCH3)2CH2−]
1−メチル−1,3−プロパンジイル基[−CH(CH3)CH2CH2−]
1,3−ジメチル−2−オキサ−1,4−ブタンジイル基[−CH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2−]
1,4−ジメチル−3−オキサ−1,5−ペンタンジイル基[−CH(CH3)CH2CH2OCH(CH3)CH2−]
1,3,5−トリメチル−2,4−ジオキサ−1,6−ヘキサンジイル基[−CH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2−]
4,4−ジメチル−2,5−ジオキサ−1,7−ヘプタンジイル基[−CH2CH2OCH2C(CH3)2CH2OCH2CH2−]
4,4−ジメトキシ−2,5−ジオキサ−1,7−ヘプタンジイル基[−CH2CH2OCH2C(OCH3)2CH2OCH2CH2−]
4,4−ジメトキシメチル−2,5−ジオキサ−1,7−ヘプタンジイル基[−CH2CH2OCH2C(CH2OCH3)2CH2OCH2CH2−]
1,4,7−トリメチル−3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイル基[−CH(CH3)CH2CH2OCH(CH3)CH2CH2OCH(CH3)CH2−]
5,5−ジメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2CH2C(CH3)2CH2CH2OCH2CH2−]
5,5−ジメトキシ−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2CH2C(OCH3)2CH2CH2OCH2CH2−]
5,5−ジメトキシメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2CH2C(CH2OCH3)2CH2CH2OCH2CH2−]
イソプロピリデン−ビス−p−フェニレン基[−p−C6H4−C(CH3)2−p−C6H4−]
3価以上の連結基としては以上に挙げた2価の連結基から任意の部位の水素原子を必要なだけ除いてできる基およびそれらと−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
【0035】
L3、L4は置換基を有していても良い。該置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、等)、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基、等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、等)等が挙げられる。置換基として好ましいのは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基である。
【0036】
以下に、本発明のエポキシ化合物(本発明の一般式(VI)または(VII)で表される脂環式エポキシ化合物等)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
【化3】
【0038】
本発明のエポキシ化合物は、その製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry of heterocyclic compounds−Small Ring Heterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,An Interscience Publication,NewYork,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号、特願平2−140732号、特願平2−182124号公報等の文献を参考にして合成できる。
【0039】
本発明のエポキシ化合物は、分子量が170以上、1,000以下であることが好ましい。より好ましくは300以上、700以下である。分子量が170未満では安全性、安定性が悪くなることがある。また、1,000を越えるとインクの粘度が高くなりノズルでの吐出安定性が悪くなることがある。
【0040】
本発明に用いられるオキセタン環含有化合物(オキセタン化合物ともいう)は、分子内に1以上のオキセタン環を有する化合物である。具体的には、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成(株)製商品名OXT101等)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン(同OXT121等)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(同OXT211等)、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテル(同OXT221等)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(同OXT212等)等を好ましく用いることができ、特に、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテルを好ましく用いることができる。これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
本発明のインクジェットインクには本発明のエポキシ化合物以外のオキシラン基含有化合物も併用することが出来る。分子中に1個以上の下記に示されるオキシラン環を有する化合物である。
【0042】
【化4】
【0043】
通常、エポキシ樹脂として用いられている、モノマー、オリゴマー又はポリマーいずれも使用可能である。具体的には、従来公知の芳香族エポキシド、脂環族エポキシド及び脂肪族エポキシドが挙げられる。尚、以下エポキシドとは、モノマーまたはそのオリゴマーを意味する。これら化合物は一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。
【0044】
芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジまたはポリグリシジルエーテルであり、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、ならびにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0045】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく、具体例としては、例えば、ダイセル化学工業(株)製、セロキサイド2021、セロキサイド2021A、セロキサイド2021P、セロキサイド2080、セロキサイド2000、エポリードGT301、エポリードGT302、エポリードGT401、エポリードGT403、EHPE−3150、EHPEL3150CE、ユニオンカーバイド社製、UVR−6105、UVR−6110、UVR−6128、UVR−6100、UVR−6216、UVR−6000等を挙げることができる。
【0046】
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0047】
更に、これらの化合物の他に、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルおよびフェノール、クレゾールのモノグリシジルエーテル等も用いることができる。これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0048】
これらオキシラン基含有化合物は、本発明のエポキシ化合物、オキセタン環含有化合物及び必要に応じて配合されるビニルエーテル化合物からなる液状成分中、0〜50質量%、好ましくは0〜30質量%配合される。
【0049】
本発明のインクジェットインクに含まれるビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0050】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0051】
ビニルエーテル化合物は任意の配合成分であり、配合させることによってインクジェットインクに要求される低粘度化が実現できる。また、硬化速度の向上もできる。ビニルエーテル化合物はオキシラン基含有化合物およびオキセタン環含有化合物からなる液状成分中、通常0〜40質量%、好ましくは0〜20質量%が配合される。
【0052】
本発明で用いられる光カチオン重合開始剤としては、アリールスルホニウム塩誘導体(例えば、ユニオン・カーバイド社製のサイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−6974、旭電化工業社製のアデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172)、アリルヨードニウム塩誘導体(例えば、ローディア社製のRP−2074)、アレン−イオン錯体誘導体(例えば、チバガイギー社製のイルガキュア261)、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤及びその他のハロゲン化物等の酸発生剤が挙げられる。
【0053】
また、本発明においては、スルホニウム塩が光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)として好適に用いられる。特に、活性光線照射によりベンゼンを発生しないスルホニウム塩が特に好適に用いられる。
【0054】
本発明における「活性光線照射によりベンゼンを発生しない」とは、実質的にベンゼンを発生しないことを指し、具体的には、インク組成物中にスルホニム塩(光酸発生剤)を5質量%含有したインクを用いて厚さ15μm・約100m2の画像を印字し、インク膜面を30℃に保った状態で光酸発生剤が十分分解する量の活性光線を照射した際に発生するベンゼンの量が、5μg以下の極微量あるいは皆無であることを指す。該スルホニム塩としては、下記一般式〔1〕〜〔4〕で表されるスルホニウム塩化合物が好ましく、S+と結合するベンゼン環に置換基をもつものであれば、上記条件を満たす。
【0055】
【化5】
【0056】
〔式中、R1〜R17はそれぞれ水素原子、または置換基を表し、R1〜R3が同時に水素原子を表すことがなく、R4〜R7が同時に水素原子を表すことがなく、R8〜R11が同時に水素原子を表すことがなく、R12〜R17が同時に水素原子を表すことはない。X−は、非求核性のアニオン残基を表す。〕
上記一般式〔1〕〜〔4〕において、R1〜R17はそれぞれ水素原子、または置換基を表し、R1〜R3が同時に水素原子を表すことがなく、R4〜R7が同時に水素原子を表すことがなく、R8〜R11が同時に水素原子を表すことがなく、R12〜R17が同時に水素原子を表すことはない。
【0057】
R1〜R17で表される置換基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピル基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等のアルコキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、デシルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンゾイルオキシ基等のカルボニル基、フェニルチオ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基等を挙げることができる。
【0058】
X−は、非求核性のアニオン残基を表し、例えば、F、Cl、Br、I等のハロゲン原子、B(C6F5)4、R18COO、R19SO3、SbF6、AsF6、PF6、BF4等を挙げることができる。ただし、R18およびR19は、それぞれメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基等で置換されていもよいアルキル基もしくはフェニル基を表す。この中でも、安全性の観点から、B(C6F5)4、PF6が好ましい。
【0059】
一般式〔1〕〜〔4〕で表されるスルホニウム塩化合物の例示化合物(下記一般式〔5〕〜〔13〕)を下記に挙げる。
【0060】
【化6】
【0061】
上記一般式〔5〕〜〔13〕において、X−は非求核性のアニオン残基を表し、一般式〔1〕〜〔4〕におけるX−と同様である。
【0062】
上記化合物は、THE CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN Voi.71 No.11, 1998年、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、に記載の光酸発生剤と同様、公知の方法にて容易に合成することができる。
【0063】
本発明においては、一般式〔I〕〜〔4〕で表されるスルホニウム塩が、上記一般式〔5〕〜〔13〕から選ばれるスルホニウム塩の少なくとも1種であることが、特に好ましい。
【0064】
光カチオン重合開始剤は、脂環式エポキシ基を有する化合物100質量部に対して、0.2〜20質量部の比率で含有させることが好ましい。光カチオン重合開始剤の含有量が0.2質量部未満では硬化物を得ることが困難であり、20質量部を越えて含有させてもさらなる硬化性向上効果はない。これら光カチオン重合開始剤は、1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0065】
光重合促進剤としては、アントラセン、アントラセン誘導体(例えば旭電化工業社製のアデカオプトマーSP−100)が挙げられる。これらの光重合促進剤は1種または複数を組み合わせて使用することができる。
【0066】
顔料分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系界面活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート、顔料誘導体等を挙げることができる。
【0067】
顔料分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Anti−Terra−U(ポリアミノアマイド燐酸塩)」、「Anti−Terra−203/204(高分子量ポリカルボン酸塩)」、「Disperbyk−101(ポリアミノアマイド燐酸塩と酸エステル)、107(水酸基含有カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアマイド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「400」、「Bykumen」(高分子量不飽和酸エステル)、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸)」、「P104S、240S(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン系)」、「Lactimon(長鎖アミンと不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン)」が挙げられる。
【0068】
また、Efka CHEMICALS社製「エフカ44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766」、「エフカポリマー100(変性ポリアクリレート)、150(脂肪族系変性ポリマー)、400、401、402、403、450、451、452、453(変性ポリアクリレート)、745(銅フタロシアニン系)」、共栄化学社製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「フローノンSH−290、SP−1000」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合物)」、楠本化成社製「ディスパロンKS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)」が挙げられる。
【0069】
更に、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、EP」、「ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子)」、「エマルゲン920、930、931、935、950、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン24(ココナッツアミンアセテート)、86(ステアリルアミンアセテート)」、ゼネカ社製「ソルスパーズ5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13240、13940(ポリエステルアミン系)、17000(脂肪酸アミン系)、24000、32000」、日光ケミカル社製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)、Hexagline4−0(ヘキサグリセリルテトラオレート)」等が挙げられる。
【0070】
顔料分散剤は、インク中に0.1〜10質量%の範囲で含有させることが好ましい。
【0071】
本発明のインクジェットインクは、活性エネルギー線硬化性化合物、顔料分散剤と共に、顔料をサンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散することにより製造される。予め顔料高濃度の濃縮液を作製しておいて活性エネルギー線硬化性化合物で希釈することが好ましい。通常の分散機による分散においても充分な分散が可能であり、このため、過剰な分散エネルギーがかからず、多大な分散時間を必要としないため、インク成分の分散時の変質を招きにくく、安定性に優れたインクが調製される。インクは孔径3μm以下、更には1μm以下のフィルターにて濾過することが好ましい。
【0072】
本発明のインクジェットインクは、25℃での粘度を5〜50mPa・sと高めに調整することが好ましい。25℃での粘度が5〜50mPa・sのインクは、特に通常の4〜10KHzの周波数を有するヘッドから、10〜50KHzの高周波数のヘッドにおいても安定した吐出特性を示す。粘度が5mPa・s未満の場合は、高周波数のヘッドにおいて、吐出の追随性の低下が認められ、50mPa・sを越える場合は、加熱による粘度の低下機構をヘッドに組み込んだとしても吐出そのものの低下を生じ、吐出の安定性が不良となり、全く吐出できなくなる。
【0073】
また、本発明のインクジェットインクは、ピエゾヘッドにおいては、10μS/cm以下の電導度とし、ヘッド内部での電気的な腐食のないインクとすることが好ましい。また、コンティニュアスタイプにおいては、電解質による電導度の調整が必要であり、この場合には、0.5mS/cm以上の電導度に調整する必要がある。
【0074】
本発明で用いる基材としては、従来各種の用途で使用されている広汎な合成樹脂が全て対象となり、具体的には、例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート等が挙げられ、これらの合成樹脂基材の厚みや形状は何ら限定されない。
【0075】
本発明のインクジェットインクを使用するには、まずこのインクジェットインクをインクジェット記録方式用プリンタのプリンタヘッドに供給し、このプリンタヘッドから基材上に吐出し、その後紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射する。これにより印刷媒体上の組成物は速やかに硬化する。
【0076】
なお、活性エネルギー線の光源としては、紫外線を照射する場合には、例えば、水銀アークランプ、キセノンアークランプ、螢光ランプ、炭素アークランプ、タングステン−ハロゲン複写ランプおよび太陽光を使用することができる。電子線により硬化させる場合には、通常300eVの以下のエネルギーの電子線で硬化させるが、1〜5Mradの照射量で瞬時に硬化させることも可能である。
【0077】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0078】
実施例1
〔本発明のインク1〜6の作製〕
表1に示す顔料と分散剤及びエポキシ化合物、オキセタン環含有化合物、ビニルエーテル化合物を共にサンドミルに入れて分散を4時間行い、活性エネルギー線硬化型インク原液を得た。次いで光カチオン重合開始剤をインク原液に加え、光カチオン重合開始剤が溶解するまで、穏やかに混合させた後、これをメンブランフィルターで加圧濾過し、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク(本発明のインク1〜6)を作製した。
【0079】
【表1】
【0080】
表中の化合物は下記に示す。数字は部数を示す。
顔料
P1:粗製銅フタロシアニン(東洋インク製造社製「銅フタロシアニン」)、250部、塩化ナトリウム、2500部及びポリエチレングリコール(東京化成社製「ポリエチレングリコール300」)、160部をスチレン製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、3時間混練した。次に、この混合物を2.5Lの温水に投入し、約80℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌しスラリー状とした後、濾過、水洗を5回繰り返して塩化ナトリウムおよび溶剤を除き、次いでスプレードライをして乾燥した処理顔料P1を得た。
【0081】
オキセタン環含有化合物
OXT221:オキセタン化合物(東亞合成社製)
オキシラン化合物
CEL2000:3−Vinyl−7−oxa−bicyclo[4.1.0]heptane(ダイセル化学社製)
ビニルエーテル化合物
DVE−3:トリエチレングリコールジビニルエーテル(ISP社製)
顔料分散剤
32000:脂肪族変性系分散剤(「ソルスパーズ32000」ゼネカ社製)
光カチオン重合開始剤
【0082】
【化7】
【0083】
〔比較のインク1の作製〕
本発明のインク1について、本発明のエポキシ化合物に代えて、セロキサイド2021P(脂環式エポキシ、分子量252、ダイセル化学製)を20部用いた以外は同様にして比較のインク1を作製した。
【0084】
本発明のインク1〜6、比較のインク1及びそれらで得られた印刷物について、下記の評価を行った。
【0085】
〔評価方法〕
印刷物の作製
インクを、ピエゾヘッドを有するインクジェットプリンタにてポリエチレンテレフタラート(基材)に印字を行い、その後UV照射装置(冷陰極管8灯:出力20W)により、基材の搬送速度500mm/秒、表2に示す環境条件下(温度、湿度)で硬化を行って印刷物を作製した。
【0086】
硬化性:
指触によりタックがなくなるまでのコンベアUVランプのパス回数。
【0087】
安定性(エポキシ化合物):
エポキシ化合物を100℃で1ヵ月保存後の分散状態を目視及び粘度変化により評価した。
【0088】
○:粘度の変化なし
△:粘度が増加
×:ゲル化物の発生が認められる。
【0089】
安定性(インク):
インクを25℃で1ヵ月保存後の分散状態を目視及び粘度変化により評価した。
【0090】
○:沈殿物の発生が認められず、粘度の変化なし
△:沈殿物の発生が認められず、粘度が増加
×:沈殿物の発生が認められる。
【0091】
安定性(吐出):
30分間の連続出射を行った後、ノズル欠の有無について観察を行い、下記の基準により、連続出射性の評価を行った。
【0092】
○:30分連続出射でノズル欠が生じない
△:30分連続出射でノズル欠が生じないが、サテライトが発生する
×:30分連続出射でノズル欠が生じる。
【0093】
安全性(エポキシ化合物):皮膚に付着した場合の刺激性について下記基準により評価した。
【0094】
○:皮膚に付着しても皮膚がほとんど変化しない
△:皮膚に付着すると発赤する
×:皮膚に付着すると水泡ができる。
【0095】
安全性(インク):
○:皮膚に付着しても皮膚がほとんど変化しない
△:皮膚に付着すると発赤する
×:皮膚に付着すると水泡ができる
膜強度:
硬化膜の強度を爪の引っ掻き試験で行った。25℃45%RHで硬化した試料を使用。
【0096】
○:引っ掻いても印字画像が全くとれない
△:強く引っ掻くと印字画像が若干とれる
×:引っ掻くと印字画像が簡単にとれてしまう。
【0097】
密着性:
上記作製した印字画像について、全く印字面に傷をつけない試料と、JIS K 5400に準拠して、印字面上に1mm間隔で縦、横に11本の切れ目をいれ、1mm角の碁盤目を100個作った試料を作製し、各印字面上にセロテープ(R)を貼り付け、90度の角度で素早く剥がし、剥がれずに残った印字画像あるいは碁盤目の状況について、下記の基準に則り評価した。25℃45%RHで硬化した試料を使用。
【0098】
○:碁盤目テストでも、印字画像の剥がれが全く認められない
△:碁盤目テストでは若干のインク剥がれが認められるが、インク面に傷をつけなければ剥がれは殆ど認められない
×:両条件共に、簡単にセロテープ(R)での剥がれが認められる。
【0099】
耐溶剤性、耐水性:
基材(フィルム)に印字したサンプルを50℃のアルコールまたは温水に10秒間漬けた後、画像の破損、収縮具合を以下の基準により耐溶剤性または耐水性をそれぞれ目視評価した。25℃45%RHで硬化した試料を使用。
【0100】
○:変化なし
△:僅かに破損、収縮が生じる
×:明らかに破損、収縮が生じる。
【0101】
結果を表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
表2から、エポキシ化合物およびインクの安定性および安全性、硬化性、ノズルでの吐出安定性、膜強度、印字画像の密着性、印字画像の耐溶剤性、耐水性については本発明が比較に対し優れていることは明らかである。
【0104】
【発明の効果】
本発明により、エポキシ化合物およびエネルギー線硬化型組成物の安全性および安定性が高く、高湿度下でも光重合性に優れ、硬化性が良好で、オキセタン環含有化合物及びインクとしての安定性も良好で、硬化膜の強度が強靭で、ノズルでの吐出安定性にも優れ、基材への密着性、耐溶剤性および耐水性も良好な活性エネルギー線硬化型インクジェットインク及びそれを用いた印刷物を提供することができた。
Claims (11)
- 少なくとも2つのオキシラン環を有するエポキシ化合物について、オキシラン環の連結鎖に分岐構造を有するエポキシ化合物を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
- 前記エポキシ化合物が、前記オキシラン環の連結鎖にエステル基を少なくとも2つ有することを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
- 前記エポキシ化合物が、下記一般式(VI)または(VII)で表される脂環式エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
- 前記エポキシ化合物の分子量が170以上、1,000以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
- 更に、オキセタン環含有化合物、ビニルエーテル化合物のいずれか一方を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
- 更に、光カチオン重合開始剤を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
- 更に、顔料を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
- 更に、顔料分散剤を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
- 前記顔料が平均粒経10〜150nmであることを特徴とする請求項7又は8記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
- 前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの25℃での粘度が5〜50mPa・sであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
- 請求項1〜10のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを、基材上に用いて作製することを特徴とする印刷物。
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