JP4277492B2 - 活性エネルギー線硬化型インクジェットインク - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は活性エネルギー線硬化型インクジェットインクに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、耐水性の良好なインクジェットインクとしては、油溶性染料を高沸点溶剤に分散ないし溶解したもの、油溶性染料を揮発性の溶剤に溶解したものがあるが、染料は耐光性等の諸耐性で顔料に劣るため、着色剤として顔料を用いたインクが望まれている。しかしながら、顔料を安定して有機溶剤に分散することは困難であり、安定な分散性および吐出性を確保することも難しい。一方、高沸点溶剤を用いたインクは、非吸収性の基材においては、インク中の溶剤が揮発せず、溶剤の蒸発による乾燥は困難なので、非吸収性の基材への印字は不可能である。
【0003】
揮発性の有機溶剤を用いたインクにおいては、使用する樹脂の密着性及び溶剤の揮発によって非吸収性の基材においても良好な印字を形成することができる。しかしながら、揮発性の溶剤がインクの主成分となるためヘッドのノズル面において溶剤の揮発による乾燥が非常に早く、頻繁なメンテナンスを必要とする。また、インクは本質的に溶剤に対する再溶解性が必要とされるため、溶剤に対する耐性が十分得られないことがある。
【0004】
また、ピエゾ素子によるオンデマンド方式のプリンタにおいては、揮発性の溶剤を多量に使用することはメンテナンスの頻度を増やし、またプリンタ内のインク接触材料の溶解膨潤という問題を誘発しやすくする。また、揮発溶剤は消防法でいう危険物による制約も大きくなる。そこで、ピエゾ素子を用いるオンデマンドタイププリンタにおいては、揮発性溶剤の少ないインクとする必要がある。しかしながら、活性エネルギー線硬化型のインクに用いる材料は比較的粘度の高い材料であり、従来のプリンタにて吐出できるような粘度において、硬化性がよく安定性が良好なインクを設計することは困難であった。
【0005】
一方、特開2002−188025ではこのような問題点を解決すべく、特定組成比のオキシラン基含有化合物、オキセタン環含有化合物およびビニルエーテル化合物からなる活性エネルギー線硬化型インクジェットインクが開示されている。該公報記載の特にオキセタン環含有化合物を検討してみると、その化合物およびインクの安定性は比較的良好であるが、硬化性、硬化膜の強度、ノズルでの吐出安定性、基材への密着性、耐溶剤性および耐水性には問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、光重合性に優れ、硬化性が良好で、オキセタン環含有化合物及びインクとしての安定性も良好で、硬化膜の強度が強靭で、ノズルでの吐出安定性にも優れ、基材への密着性、耐溶剤性および耐水性も良好な活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成された。
【0008】
1)オキシラン基含有化合物10〜50質量%、オキセタン環含有化合物50〜90質量%及びビニルエーテル化合物0〜40質量%を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクにおいて、オキセタン環含有化合物が前記一般式(2)〜(5)、(6)、(7)、(13)で表される化合物から選ばれることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0009】
2)更に光カチオン重合開始剤を含むことを特徴とする前記1)に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0010】
3)更に顔料を含むことを特徴とする前記1)又は2)に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0011】
4)更に顔料分散剤を含むことを特徴とする前記1)〜3)のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0012】
5)顔料が平均粒経10〜150nmであることを特徴とする前記3)又は4)に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0013】
6)活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの25℃での粘度が5〜50mPa・sであることを特徴とする前記1)〜5)のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0015】
本発明を更に詳しく説明する。
本発明は、オキシラン基含有化合物10〜50質量%、特定構造のオキセタン環含有化合物50〜90質量%及びビニルエーテル化合物0〜40質量%を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインクである。また、本発明は、それに加えて更に光カチオン重合開始剤、顔料、顔料分散剤を含むことを特徴としている。本発明は、更に顔料が平均粒経10〜150nmの微細顔料であることを特徴とする上記活性エネルギー線硬化型インクジェットインクに関する。又、本発明は、25℃での粘度が5〜50mPa・sであることを特徴とする上記インクジェットインクに関する。又、本発明は、基材に上記活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを印刷してなる印刷物に関する。
【0016】
本発明のインクジェットインクに含まれる顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無彩色無機顔料または有彩色の有機顔料を使用することができる。有機顔料としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系有機顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系有機顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系有機顔料、イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系有機顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロンイエローなどのキノフタロン系有機顔料、イソインドリンイエローなどのイソインドリン系有機顔料、その他の顔料として、フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
【0017】
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、110、117、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が挙げられる。
【0018】
上記顔料の中で、キナクリドン系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、イソインドリノン系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、キノフタロン系有機顔料、イソインドリン系有機顔料等は耐光性が優れているため好ましい。有機顔料はレーザ散乱による測定値で平均粒径10〜150nmの微細顔料であることが好ましい。顔料の平均粒径が10nm未満の場合は、粒径が小さくなることによる耐光性の低下が生じ、150nmを越える場合は、分散の安定維持が困難になり、顔料の沈澱が生じやすくなる。
【0019】
有機顔料の微細化は下記の方法で行うことができる。即ち、有機顔料、有機顔料の3質量倍以上の水溶性の無機塩および水溶性の溶剤の少なくとも3つの成分からなる混合物を粘土状の混合物とし、ニーダー等で強く練りこんで微細化したのち水中に投入し、ハイスピードミキサー等で攪拌してスラリー状とする。次いで、スラリーの濾過と水洗を繰り返して、水溶性の無機塩および水溶性の溶剤を除去する。微細化工程において、樹脂、顔料分散剤等を添加してもよい。水溶性の無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。これらの無機塩は有機顔料の3質量倍以上、好ましくは20質量倍以下の範囲で用いる。無機塩の量が3質量倍よりも少ないと、所望の大きさの処理顔料が得られない。また、20質量倍よりも多いと、後の工程における洗浄処理が多大であり、有機顔料の実質的な処理量が少なくなる。
【0020】
水溶性の溶剤は、有機顔料と破砕助剤として用いられる水溶性の無機塩との適度な粘土状態をつくり、充分な破砕を効率よく行うために用いられ、水に溶解する溶剤であれば特に限定されないが、混練時に温度が上昇して溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から沸点120〜250℃の高沸点の溶剤が好ましい。水溶性の溶剤としては、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、低分子量ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0021】
本発明において、顔料は十分な濃度及び十分な耐光性を得るため、インクジェットインク中に3〜15質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0022】
本発明のインクジェットインクに含まれるオキシラン基含有化合物は、分子中に1個以上の下式で示されるオキシラン環を有する化合物である。
【0023】
【化2】
【0024】
通常、エポキシ樹脂として用いられている、モノマー、オリゴマー又はポリマーいずれも使用可能である。具体的には、従来公知の芳香族エポキシド、脂環族エポキシド及び脂肪族エポキシドが挙げられる。尚、以下エポキシドとは、モノマーまたはそのオリゴマーを意味する。これら化合物は一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。
【0025】
芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジまたはポリグリシジルエーテルであり、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、ならびにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0026】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく、具体例としては、例えば、ダイセル化学工業(株)製、セロキサイド2021、セロキサイド2021A、セロキサイド2021P、セロキサイド2080、セロキサイド3000、セロキサイド2000、エポリードGT301、エポリードGT302、エポリードGT401、エポリードGT403、EHPE−3150、EHPEL3150CE、ユニオンカーバイド社製、UVR−6105、UVR−6110、UVR−6128、UVR−6100、UVR−6216、UVR−6000等を挙げることができる。
【0027】
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0028】
更に、これらの化合物の他に、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルおよびフェノール、クレゾールのモノグリシジルエーテル等も用いることができる。これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0029】
オキシラン基含有化合物は、オキセタン環含有化合物及び必要に応じて配合されるビニルエーテル化合物からなる液状成分中、10〜50質量%、好ましくは30〜50質量%配合される。オキシラン基含有化合物が上記数値より少ないと硬化膜の強度が弱くなってしまい、印字物としての耐性が得られず、上記数値より大きいと印字物の耐性はよくなるが、粘度が非常に高くなってしまい、インクジェットインクとして適用できなくなるため好ましくない。
【0030】
本発明における前記一般式(1)で表されるオキセタン環含有化合物としては、分子中に1個または2個以上のオキセタン環を有する化合物が挙げられる。
【0031】
一般式(1)において、R1〜R6はそれぞれ水素原子、有機基を表し、R3〜R6の少なくとも一つは有機基である。R1〜R6で各々表される有機基としては、例えば、フッ素原子、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等)、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、フリル基またはチエニル基を表す。
【0032】
分子中に1個のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(2)〜(5)で表される化合物を挙げることができる。
【0033】
【化3】
【0034】
式中、R1〜R6は、水素原子または有機基を表し、R7、R8は有機基を表し、Zは、各々独立で、酸素または硫黄原子、あるいは主鎖に酸素または硫黄原子を含有してもよい2価の炭化水素基を表す。
【0035】
一般式(2)〜(5)において、R1〜R6で各々表される有機基は、前記一般式(1)のR1〜R6で各々表される有機基と同義である。R7、R8で各々表される有機基としては、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等)、炭素数1〜6個のアルケニル基(例えば、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基または3−ブテニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基等)、炭素数1〜6個のアシル基(例えば、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基またはペンチルカルボニル基等)、炭素数1〜6個のアルコキシカルボニル基(例えば、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等)、炭素数1〜6個のアルキルカルバモイル基(例えば、プロピルカルバモイル基、ブチルペンチルカルバモイル基等)、アルコキシカルバモイル基(例えば、エトキシカルバモイル基等)を表す。一般式(2)及び(4)においては、R3〜R6の少なくとも一つは上記の有機基である。
【0036】
Zで表される主鎖に酸素または硫黄原子を含有してもよい2価の炭化水素基としては、アルキレン基(例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等)、アルケニレン基(例えば、ビニレン基、プロペニレン基等)、アルキニレン基(例えば、エチニレン基、3−ペンチニレン基等)が挙げられる。
【0037】
本発明で使用するオキセタン環含有化合物としては、上記一般式(2)〜(5)において、R1が低級アルキル基、特にエチル基、R7およびR8がプロピル基、ブチル基、フェニル基又はベンジル基、Zは酸素又は硫黄原子を含まない炭化水素基であるものが好ましい。
【0038】
分子中に2個以上のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(6)、(7)で表わされる化合物を挙げることができる。
【0039】
【化4】
【0040】
式中、mは2、3又は4、Zは一般式(2)〜(5)のZと同一である。R1〜R6は水素原子、有機基を表し、有機基は前記一般式(1)のR1〜R6で各々表される有機基と同義である。一般式(6)においては、R3〜R6の少なくとも一つは上記の有機基である。
【0041】
R9は、炭素数1〜12の線形又は分岐アルキレン基、線形或いは分岐ポリ(アルキレンオキシ)基、または下記一般式(9)、(10)及び(11)からなる群から選択される多価基を表す。上記炭素数1〜12の線形又は分岐アルキレン基、線形或いは分岐ポリ(アルキレンオキシ)基としては、下記一般式(8)で表される基が好ましい。
【0042】
【化5】
【0043】
一般式(8)中、R10はメチル基、エチル基又はプロピル基等の低級アルキル基を表す。
【0044】
【化6】
【0045】
一般式(9)中、nは0又は1〜2000の整数、R11はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜10個のアルキル基及び下記一般式(12)から成る群から選択される基を表す。
【0046】
【化7】
【0047】
一般式(12)中、jは0又は1〜100の整数、R13は1〜10個の炭素原子を有するアルキルを表す。
【0048】
R12はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0049】
一般式(10)中、R14は水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜10個のアルキル基、炭素数1〜10個のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシレート基又はカルボキシル基を表す。
【0050】
一般式(11)中、R15は酸素原子、硫黄原子、NH、SO、SO2、CH2、C(CH3)2又はC(CF3)2を表す。
【0051】
本発明で使用されるオキセタン環含有化合物として、上記一般式(6)、(7)において、R1が低級アルキル基、特にエチル基、R9が一般式(10)においてR14が水素原子である基、ヘキサメチレン基、一般式(8)においてR10がエチル基、一般式(9)、(12)においてR12及びR13はメチル基、Zは酸素又は硫黄原子を含まない炭化水素基であるものが好ましい。
【0052】
分子中に2個以上のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(13)で表わされる化合物も挙げることができる。
【0053】
【化8】
【0054】
一般式(13)において、rは25〜200の整数であり、R1、R3〜R6、R13は上記に定義した基であり、R16は炭素数1〜4のアルキル基又はトリアルキルシリル基である。R3〜R6の少なくとも一つは上記の有機基である。
【0055】
本発明のオキセタン化合物の合成は、以下の文献を参考に合成することができる。
【0056】
Hu Xianming,Richard M.Kellogg,Synthesis,533〜538,May(1995)、A.O.Fitton,J.Hill,D.Ejane,R. Miller,Synth.,12,1140(1987)、Toshiro Imai and Shinya Nishida,Can.J.Chem.Vol.59,2503〜2509(1981)、Nobujiro Shimizu,Shintaro Yamaoka,and Yuho Tsuno,Bull.Chem.Soc.Jpn.,56,3853〜3854(1983)、Walter Fisher and Cyril A.Grob,Helv.Chim.Acta.,61,2336(1978)、Chem.Ber.101,1850(1968)、”Heterocyclic Compounds with Three− and Four−membered Rings”,Part Two,ChapterIX,Interscience Publishers,John Wiley&Sons,New York(1964)、Bull.Chem.Soc.Jpn.,61,1653(1988)、Pure Appl.Chem.,A29(10),915(1992)、Pure Appl.Chem.,A30(2&3),189(1993)、特開平6−16804号、西独特許第1,021,858号。
【0057】
前記文献に従って、下記合成例により例示化合物を合成した。
例示化合物1:trans−3−tert−Butyl−2−phenloxetane
【0058】
【化9】
【0059】
Benzaldehydeと3,3−Dimethyl−butyraldehydeのメタノール中に水酸化カリウムを加え、Cross Cannizzaro反応によりジオールを得た。次いで、ジクロルメタン、ジオールおよび乾燥トリエチルアミンの溶液に、メタンスルフォニルクロライドのジクロルメタン溶液を0℃で滴下した。0℃で30分、室温に戻して1時間攪拌を続けた。混合物を水で洗浄し、トシレート化合物をジクロルメタンから再結晶させた。次に、硫酸水素テトラブチルアンモニウムを加え、室温で水酸化ナトリウムを滴下して、24時間反応させた。水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水後、真空蒸留により目的の化合物を得た。
【0060】
例示化合物2:3,3,4,4−Tetramethyl−2,2−diphenyloxetane
【0061】
【化10】
【0062】
Benzophenoneと2,3−Dimethyl−2−buteneのベンゼン溶液をアルゴンガスを封入したパイレックス(R)製の光化学反応装置に入れ、攪拌下、高圧水銀灯を用いて紫外線を12時間照射した。溶媒を除去した後、真空蒸留を行い、目的の化合物を得た。
【0063】
例示化合物3:Di[3−ethyl(2−methoxy−3−oxetanyl)]methylether
【0064】
【化11】
【0065】
2−Ethyl−2−[2−(hydroxy−methoxy−methyl)−2−hydroxymethyl−butoxymethyl]−1−methoxy−propane−1,3−diol、炭酸ジエチル及び炭酸カリウムの混合物を、120℃を下回る温度になるまで還流した。混合物を76〜78℃に保持したまま、真空蒸留し、目的の化合物を得た。
【0066】
例示化合物4:1,4−Bis(2,3,4,4−tetramethyl−3−ethyl−oxetanyl)butane
【0067】
【化12】
【0068】
3,10−Diethyl−2,3,4,9,10,11−hexamethyl−dodecane−2,4,9,11−tetraol、炭酸ジエチル及び炭酸カリウムの混合物を、120℃を下回る温度になるまで還流した。混合物を74〜76℃に保持したまま、真空蒸留し、目的の化合物を得た。
【0069】
例示化合物5:1,4−Bis(3−methyl−3−ethyl−oxetanyl)butane
【0070】
【化13】
【0071】
2,9−Diethyl−2,9−dimethyl−decane−1,3,8,10−tetraol、炭酸ジエチル及び炭酸カリウムの混合物を、120℃を下回る温度になるまで還流した。混合物を70〜72℃に保持したまま、真空蒸留し、目的の化合物を得た。
【0072】
例示化合物6:Di(3,4,4−trimethyl−3−ethyl−oxetanyl)methylether
【0073】
【化14】
【0074】
3−Ethyl−1−(2−ethyl−1,3−dihydroxy−2,3−dimethyl−butoxy)−3,4−dimethyl−pentane−2,4−diol、炭酸ジエチル及び炭酸カリウムの混合物を、120℃を下回る温度になるまで還流した。混合物を80〜82℃に保持したまま、真空蒸留し、目的の化合物を得た。
【0075】
例示化合物7:3−(2−Ethyl−hexyloxymethyl)−2,2,3,4−tetramethyl−oxetane
【0076】
【化15】
【0077】
(2,2,3,4−Tetramethyl−oxetan−3−yl)−methanolの1−bromo−2−ethylhexyl溶液と水酸化カリウムの水溶液に、攪拌下、tetra−n−butylammonium bromideを滴下し、24時間後、メチレンクロライドと水を加えた。有機相を水で洗い、硫酸マグネシウムで洗浄後、ろ過、溶媒除去を行い、真空蒸留を行って、目的の化合物を得た。
【0078】
例示化合物8:2−(2−Ethyl−hexyloxy)−2,3,3,4,4−pentamethyl−oxetane
【0079】
【化16】
【0080】
2,3,3,4,4−Pentamethyl−oxetan−2−olの1−bromo−2−ethylhexyl溶液と水酸化カリウムの水溶液に、攪拌下、tetra−n−butylammonium bromideを滴下し、24時間後、メチレンクロライドと水を加えた。有機相を水で洗い、無水硫酸マグネシウムで脱水後、ろ過、溶媒除去を行い、真空蒸留を行って、目的の化合物を得た。
【0081】
例示化合物9:4,4′−bis[(2,4−dimethyl−3−ethyl−3−oxetanyl)methoxy]biphenyl
【0082】
【化17】
【0083】
3−Chloromethyl−3−ethyl−2,4−dimethyl−oxetane、4,4′−biphenolおよびtetra−butylphosphonium bromideを80℃で加熱攪拌した。これに、水酸化カリウム水溶液を滴下、還流するまで(約110℃)昇温し、還流下で8時間反応を続けた。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却して、純水を添加し、よく攪拌した後、析出物をロ別した。この析出物を水で洗浄し、続いてメタノールで洗浄した。次いで、減圧乾燥器で乾燥し、目的の化合物を得た。
【0084】
例示化合物10:1,7−Bis(2,3,3,4,4−pentamethyl−oxetanyl)heptane
【0085】
【化18】
【0086】
2,12−Diethyl−2,12−dimethyl−tridecane−1,3,11,13−tetraol、炭酸ジエチルおよび炭酸カリウムの混合物を、120℃を下回る温度になるまで還流した。混合物を80〜82℃に保持したまま、真空蒸留し、目的の化合物を得た。
【0087】
例示化合物11:Oxetanyl Silsesquioxanes
【0088】
【化19】
【0089】
イソプロピルアルコール、水酸化テトラメチルアンモニウムの水溶液、水を仕込んだ後、下記オキセタン化合物を徐々に加え、室温で24時間攪拌放置した。反応終了後、系内にトルエンを加え、分液ロートを用いて反応溶液を飽和食塩水により水洗した。分液ロートの水層が中性になるまで水洗を繰り返した後、有機層を分取し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、減圧下でトルエンを留去させることで目的の化合物を得た。
【0090】
【化20】
【0091】
本発明では、組成物として、上記の分子中に一個以上のオキセタン環を有する化合物を2種類以上が併用されたものであってもよい。また、従来から公知の特開2001−181386、特開2000−256571、特開平10−204072号、特開平11−24654号、特開2000−86646、特開2000−302774、特開2002−20376、特開平8−143806号、特開平11−322735号、特開2000−1482、特開2001−220526、特開2002−188025等のオキセタン環を有する化合物を併用することもできる。
【0092】
オキセタン環含有化合物は、必要に応じて配合されるビニルエーテル化合物からなる液状成分中、50〜90質量%、好ましくは50〜70質量%配合される。オキセタン環含有化合物が上記数値より少ないと硬化性が悪くなってしまい、上記数値より大きいと硬化性はよくなるが、硬化膜の強度が弱く印刷物としての耐性がでなくなるため、好ましくない。
【0093】
本発明のインクジェットインクに含まれるビニルエーテル化合物は、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0094】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0095】
ビニルエーテル化合物は任意の配合成分であり、配合させることによってインクジェットインクに要求される低粘度化が実現できる。また、硬化速度の向上もできる。ビニルエーテル化合物はオキシラン基含有化合物およびオキセタン環含有化合物からなる液状成分中、0〜40質量%、好ましくは0〜20質量%が配合される。
【0096】
本発明で用いられる光カチオン重合開始剤としては、アリールスルホニウム塩誘導体(例えば、ユニオン・カーバイド社製のサイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−6974、旭電化工業社製のアデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172)、アリルヨードニウム塩誘導体(例えば、ローディア社製のRP−2074)、アレン−イオン錯体誘導体(例えば、チバガイギー社製のイルガキュア261)、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤及びその他のハロゲン化物等の酸発生剤が挙げられる。光カチオン重合開始剤は、脂環式エポキシ基を有する化合物100質量部に対して、0.2〜20質量部の比率で含有させることが好ましい。光カチオン重合開始剤の含有量が0.2質量部未満では硬化物を得ることが困難であり、20質量部を越えて含有させてもさらなる硬化性向上効果はない。これら光カチオン重合開始剤は、1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0097】
光重合促進剤としては、アントラセン、アントラセン誘導体(例えば旭電化工業社製のアデカオプトマーSP−100)が挙げられる。これらの光重合促進剤は1種または複数を組み合わせて使用することができる。
【0098】
顔料分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート、顔料誘導体等を挙げることができる。
【0099】
顔料分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Anti−Terra−U(ポリアミノアマイド燐酸塩)」、「Anti−Terra−203/204(高分子量ポリカルボン酸塩)」、「Disperbyk−101(ポリアミノアマイド燐酸塩と酸エステル)、107(水酸基含有カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアマイド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「400」、「Bykumen」(高分子量不飽和酸エステル)、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸)」、「P104S、240S(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン系)」、「Lactimon(長鎖アミンと不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン)」が挙げられる。
【0100】
また、Efka CHEMICALS社製「エフカ44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766」、「エフカポリマー100(変性ポリアクリレート)、150(脂肪族系変性ポリマー)、400、401、402、403、450、451、452、453(変性ポリアクリレート)、745(銅フタロシアニン系)」、共栄化学社製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「フローノンSH−290、SP−1000」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合物)」、楠本化成社製「ディスパロンKS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)」が挙げられる。
【0101】
更に、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、EP」、「ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子)」、「エマルゲン920、930、931、935、950、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン24(ココナッツアミンアセテート)、86(ステアリルアミンアセテート)」、ゼネカ社製「ソルスパーズ5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13240、13940(ポリエステルアミン系)、17000(脂肪酸アミン系)、24000、32000」、日光ケミカル社製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)、Hexagline4−0(ヘキサグリセリルテトラオレート)」等が挙げられる。
【0102】
顔料分散剤は、インク中に0.1〜10質量%の範囲で含有させることが好ましい。
【0103】
本発明のインクジェットインクは、活性エネルギー線硬化性化合物、顔料分散剤と共に、顔料をサンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散することにより製造される。予め顔料高濃度の濃縮液を作製しておいて活性エネルギー線硬化性化合物で希釈することが好ましい。通常の分散機による分散においても充分な分散が可能であり、このため、過剰な分散エネルギーがかからず、多大な分散時間を必要としないため、インク成分の分散時の変質を招きにくく、安定性に優れたインクが調製される。インクは孔径3μm以下、更には1μm以下のフィルターにて濾過することが好ましい。
【0104】
本発明のインクジェットインクは、25℃での粘度を5〜50mPa・sと高めに調整することが好ましい。25℃での粘度が5〜50mPa・sのインクは、特に通常の4〜10KHzの周波数を有するヘッドから、10〜50KHzの高周波数のヘッドにおいても安定した吐出特性を示す。粘度が5mPa・s未満の場合は、高周波数のヘッドにおいて、吐出の追随性の低下が認められ、50mPa・sを越える場合は、加熱による粘度の低下機構をヘッドに組み込んだとしても吐出そのものの低下を生じ、吐出の安定性が不良となり、全く吐出できなくなる。
【0105】
また、本発明のインクジェットインクは、ピエゾヘッドにおいては、10μS/cm以下の電導度とし、ヘッド内部での電気的な腐食のないインクとすることが好ましい。また、コンティニュアスタイプにおいては、電解質による電導度の調整が必要であり、この場合には、0.5mS/cm以上の電導度に調整する必要がある。
【0106】
本発明で用いる基材としては、従来各種の用途で使用されている広汎な合成樹脂が全て対象となり、具体的には、例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート等が挙げられ、これらの合成樹脂基材の厚みや形状は何ら限定されない。
【0107】
本発明のインクジェットインクを使用するには、まずこのインクジェットインクをインクジェット記録方式用プリンタのプリンタヘッドに供給し、このプリンタヘッドから基材上に吐出し、その後紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射する。これにより印刷媒体上の組成物は速やかに硬化する。
【0108】
なお、活性エネルギー線の光源としては、紫外線を照射する場合には、例えば、水銀アークランプ、キセノンアークランプ、螢光ランプ、炭素アークランプ、タングステン−ハロゲン複写ランプおよび太陽光を使用することができる。電子線により硬化させる場合には、通常300eVの以下のエネルギーの電子線で硬化させるが、1〜5Mradの照射量で瞬時に硬化させることも可能である。
【0109】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0110】
〔本発明インク1〜8の作製〕
表1に示す顔料と分散剤及びオキシラン基含有化合物、オキセタン環含有化合物、ビニルエーテル化合物を共にサンドミルに入れて分散を4時間行い、活性エネルギー線硬化型インク原液を得た。次いで光開始剤をインク原液に加え、光開始剤が溶解するまで、穏やかに混合させた後、これをメンブランフィルターで加圧濾過し、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを得た。このインクはピエゾヘッドを有するインクジェットプリンタにてポリエチレンテレフタラートに印字を行い、その後UV照射装置(冷陰極管8灯:出力20W)により、基材の搬送速度500mm/秒の条件で硬化を行った。
【0111】
【表1】
【0112】
表中の化合物は下記に示す。数字は部数を示す。
顔料
P1:粗製銅フタロシアニン(東洋インク製造社製「銅フタロシアニン」)、250部、塩化ナトリウム、2500部及びポリエチレングリコール(東京化成社製「ポリエチレングリコール300」)、160部をスチレン製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、3時間混練した。次に、この混合物を2.5Lの温水に投入し、約80℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌しスラリー状とした後、濾過、水洗を5回繰り返して塩化ナトリウムおよび溶剤を除き、次いでスプレードライをして乾燥した処理顔料を得た。
【0113】
P2:キナクリドン系赤顔料(Ciba Geigy社製「シンカシアマゼンタRT−355−D」)、250部、塩化ナトリウム、2500部及びポリエチレングリコール(東京化成社製「ポリエチレングリコール300」)、160部をスチレン製1ガロンニーダーに仕込み、P1と同様にして処理顔料を得た。
【0114】
P3:ベンズイミダゾロン系黄顔料(ヘキスト社製「ホスタパーム イエローH3G」)、250部、塩化ナトリウム、2500部及びポリエチレングリコール(東京化成社製「ポリエチレングリコール300」)、160部をスチレン製1ガロンニーダーに仕込み、P1と同様にして処理顔料を得た。
【0115】
P4:カーボンブラック顔料「Printex 150T」(デグサ社製)
オキシラン基含有化合物
セロキサイド3000:脂環式エポキシ(ダイセル社製)
セロキサイド2021P:脂環式エポキシ(ダイセル社製)
ビニルエーテル化合物
DVE−3:トリエチレングリコールジビニルエーテル(ISP社製)
顔料分散剤
32000:脂肪族変性系分散剤(「ソルスパーズ32000」ゼネカ社製)
開始剤
SP−152:トリフェニルスルホニウム塩(「アデカオプトマーSP−152」旭電化社製)
SP−172:トリフェニルスルホニウム塩(「アデカオプトマーSP−170」旭電化社製)
UVI6990:トリフェニルスルホニウム塩(「サイラキュアUVI6990」ユニオンカーバイド社製)
〔比較インク1〜8の作製〕
表2に示す顔料と分散剤及びモノマを共にサンドミルに入れて分散を4時間行ない、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク原液を得た。次いで光開始剤をインク原液に加え、光開始剤が溶解するまで、穏やかに混合させた後、これをメンブランフィルターで加圧濾過し、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを得た。このインクはピエゾヘッドを有するインクジェットプリンタにて上記の基材に印字を行い、その後UV照射装置(冷陰極管8灯:出力20W)により、基材の搬送速度500mm/秒の条件で硬化を行った。
【0116】
【表2】
【0117】
表中の化合物で下記のオキセタン環含有化合物以外は、本発明インク1〜8に使用したものと同じものを使用した。
【0118】
オキセタン環含有化合物
OXT−121:1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン(東亜合成社製)
OXT−211:3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(東亜合成社製)
OXT−101:3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成社製)
本発明インク1〜8、比較インク1〜8及びそれらで得られた印刷物について、下記の評価を行った。結果を表3に示す。
【0119】
表中の評価方法は以下の通りである。
硬化性:指触によりタックがなくなるまでのコンベアUVランプのパス回数
安定性(オキセタン環含有化合物):オキセタン環含有化合物を100℃で1ヵ月保存後の分散状態を目視及び粘度変化により評価した。
【0120】
○:粘度の変化なし
△:粘度が増加
×:ゲル化物の発生が認められる。
【0121】
安定性(インク):インクを25℃で1ヵ月保存後の分散状態を目視及び粘度変化により評価した。
【0122】
○:沈殿物の発生が認められず、粘度の変化なし
△:沈殿物の発生が認められず、粘度が増加
×:沈殿物の発生が認められる。
【0123】
安定性(吐出):30分間の連続出射を行った後、ノズル欠の有無について観察を行い、下記の基準に則り、連続出射性の評価を行った。
【0124】
○:30分連続出射でノズル欠が生じない
△:30分連続出射でノズル欠が生じないが、サテライトが発生する
×:30分連続出射でノズル欠が生じる。
【0125】
膜強度:硬化膜の強度を爪の引っ掻き試験で行った。
○:引っ掻いても全くとれない
△:強く引っ掻くと若干とれる
×:引っ掻くと簡単にとれてしまう。
【0126】
密着性:上記作成した印字画像について、全く印字面に傷をつけない試料と、JIS K 5400に準拠して、印字面上に1mm間隔で縦、横に11本の切れ目をいれ、1mm角の碁盤目を100個作った試料を作製し、各印字面上にセロテープ(R)を貼り付け、90度の角度で素早く剥がし、剥がれずに残った印字画像あるいは碁盤目の状況について、下記の基準に則り評価した。
【0127】
○:碁盤目テストでも、印字画像の剥がれが全く認められない
△:碁盤目テストでは若干のインク剥がれが認められるが、インク面に傷をつけなければ剥がれは殆ど認められない
×:両条件共に、簡単にセロテープ(R)での剥がれが認められる。
【0128】
耐溶剤性、耐水性:フィルムに印字したサンプルを50℃のアルコール、温水に10秒間漬けた後、画像の破損、収縮具合を以下の基準により目視評価した。
【0129】
○:変化なし
△:僅かに破損、収縮が生じる
×:明らかに破損、収縮が生じる。
【0130】
【表3】
【0131】
表3より、硬化性、ノズルでの吐出安定性、膜強度、印字画像の密着性、印字画像の耐溶剤性、耐水性については本発明が比較に対し優れていることは明らかである。
【0132】
【発明の効果】
本発明により、硬化膜の強度が強靭で、硬化性がよく、オキセタン環含有化合物及びインクの安定性が良好で、ノズルでの吐出安定性がよい活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを得ることができた。又、本発明のインクジェットインクにより記録した印刷物は、印字画像の密着性がよく、耐溶剤性、耐水性が優れるものであった。
Claims (6)
- オキシラン基含有化合物10〜50質量%、オキセタン環含有化合物50〜90質量%及びビニルエーテル化合物0〜40質量%を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクにおいて、オキセタン環含有化合物が下記一般式(2)〜(5)、(6)、(7)、(13)で表される化合物から選ばれることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
- 更に光カチオン重合開始剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
- 更に顔料を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
- 更に顔料分散剤を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
- 顔料が平均粒経10〜150nmであることを特徴とする請求項3又は4に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
- 活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの25℃での粘度が5〜50mPa・sであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
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