JP6604000B2 - インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
[1]
環状エステル化合物と下記一般式(1)で表される化合物からなる溶剤群Aの少なくとも1種を含む溶剤と、顔料としてC.I.ピグメントオレンジ−43(PO−43)と、を含む非水系インクジェットインク組成物。
[1]において、さらに、定着樹脂を含む、非水系インクジェットインク組成物。
[1]又は[2]において、
溶剤群Aの総含有量に対する定着樹脂の総含有量の比が0.1〜1.0である、非水系インクジェットインク組成物。
[1]〜[3]の何れか一において、さらに、溶剤として下記一般式(2)で表される化合物の1種以上を含む、非水系インクジェットインク組成物。
R1O−(R2O)m−R3 ・・・(2)
[一般式(2)中、R1及びR3は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上5以下のアルキル基を表し、R2は、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2〜6の整数を表す。ただし、R1及びR3の少なくとも何れかは炭素数1以上5以下のアルキル基である。]
[4]において、
前記一般式(2)で表される化合物の合計含有量が、前記インクジェットインク組成物の全量に対して、10質量%以上90質量%以下である、非水系インクジェットインク組成物。
[1]〜[5]の何れか1において、
溶剤Aの含有量が2〜40質量%である、非水系インクジェットインク組成物。
塩化ビニル系記録媒体への記録に用いられる、[1]〜[6]のいずれか一に記載の非水系インクジェットインク組成物。
定着樹脂が、(メタ)アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂の少なくとも何れかである、[1]〜[7]のいずれか一に記載の非水系インクジェットインク組成物。
[9]
定着樹脂が、インク組成物に対し2.5〜5質量%の(メタ)アクリル系樹脂と、インク組成物に対し0.5〜2.5質量%の塩化ビニル系樹脂を含む、[1]〜[8]のいずれか一に記載の非水系インクジェットインク組成物。
溶剤と顔料としてピグメントオレンジ−43(PO−43)とを含む特定の非水系インクジェットインク組成物と、溶剤と顔料とを含む非水系シアンインクジェットインク組成物と、溶剤と顔料とを含む非水系マゼンタインクジェットインク組成物と、溶剤と顔料とを含む非水系イエローインクジェットインク組成物と、を少なくとも備えるインクセット。
前記特定の非水系インクジェットインク組成物、非水系シアンインクジェットインク組成物、非水系マゼンタインクジェットインク組成物、非水系イエローインクジェットインク組成物が、それぞれ溶剤として下記一般式(2)で表される化合物の1種以上を含む、[10]記載のインクセット。
R1O−(R2O)m−R3 ・・・(2)
[一般式(2)中、R1及びR3は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上5以下のアルキル基を表し、R2は、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2〜6の整数を表す。ただし、R1及びR3の少なくとも何れかは炭素数1以上5以下のアルキル基である。]
前記特定の非水系インクジェットインク組成物が、[1]〜[9]の何れか一に記載の非水系インクジェットインク組成物である、[10]又は[11]に記載のインクセット。
[1]〜[9]のいずれか一に記載のインクジェットインク組成物または[10]〜[12]の何れか一に記載のインクセットを用いて、記録媒体にインクジェット法により記録を行う、インクジェット記録方法。
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、溶剤と、顔料と、を含む。本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、非水系インク組成物であり、揮発性の溶剤(主に有機溶剤)を主成分とする溶剤系インク組成物とすることが好ましい。記録媒体上に付着させた後、加熱あるいは常温により溶剤を乾燥させて固形分を定着させて記録を行う非光硬化型インクとすることが好ましい。放射線(光)を照射して硬化させる光硬化型インクとしてもよいが、放射線照射を不要とする点で非光硬化型インクが好ましい。
非水系インク組成物は、水を主要な溶媒成分とするものではなく、インクの機能や性能を奏するための機能成分としては水を含有しないインク組成物である。インク組成物に対する水の含有量は5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以下であり、より特に好ましくは0.1質量%以下であり、さらには水を含有しないとしてもよい。本実施形態における非水系インクジェットインク組成物の溶剤の含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは85〜98質量%である。
本実施形態に係るインクジェットインク組成物に含有される溶剤は、環状エステル化合物または下記一般式(1)で表される化合物からなる溶剤群Aの少なくとも1種を含むことが好ましい。
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、溶剤として環状エステル(環状ラクトン)を含有することが好ましい。インクジェットインク組成物は、環状エステル(環状エステル化合物)が含有されることにより、記録媒体の記録面(好ましくは塩化ビニル系樹脂を含む記録面)の一部を溶解して記録媒体の内部にインクジェットインク組成物を浸透させることができる。このように記録媒体の内部にインク組成物が浸透することで、記録媒体上に記録した画像の耐擦性(摩擦堅牢性)を向上させることができる。換言すると、環状エステルは、塩化ビニル系樹脂との親和性が高いため、インクジェットインク組成物の成分を記録面に浸潤させやすい(食い付かせやすい)。環状エステルがこのような作用を有する結果、これを配合したインクジェットインク組成物が、屋外環境等の厳しい条件下であっても、耐擦性に優れた画像を形成できるものと考えられる。また、インク組成物中に含む定着樹脂などの固形分成分の溶解性にも優れるため、インクの長期保管中や使用中のインク中の樹脂の析出を防止してインクジェットヘッドからインクを吐出する際の吐出不良の原因となることが無いことや、記録物表面に付着した顔料を樹脂により均一に覆うことができ記録物の耐候性が一層優れ傾向があり好ましい。反面、上記環状エステルは、記録媒体内部へのインクの浸透を促進するため、記録媒体の表面の横方向へインクが広がることを抑制し、このため記録物におけるインク組成物の発色性を妨げる傾向がある。
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、溶剤として一般式(1)で表される化合物(環状エステルや環状ラクトンともいう)を含有することが好ましい。
式(1)中、R1は、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。「炭素数1〜4のアルキル基」は、直鎖状または分岐状のアルキル基であることができ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基であることができる。R1は、炭素数が少ない場合、炭素数が多い場合と比べて沸点が低くインク組成物の乾燥性を比較的高める点で好ましく、炭素数1が特に好ましい。R2およびR3も同様の点で炭素数が少ない場合好ましい。
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、溶剤として一般式(2)で表される化合物(グリコールエーテルともいう)を含有することが好ましい。
R1O−(R2O)m−R3 ・・・(2)
[一般式(1)中、R1及びR3は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上5以下のアルキル基を表し、R2は、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2〜6整数を表す。ただし、R1及びR3は、少なくとも何れかは炭素数1以上5以下のアルキル基である。]
ここで、炭素数1以上5以下のアルキル基としては、直鎖状または分岐状のアルキル基であることができ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、又はtert−ブチル基が挙げられる。また、炭素数2又は3のアルキレン基としては、エチレン基(ジメチレン)、プロピレン基(トリメチレン、又は、メチルエチレン)が挙げられる。なお、上記一般式(2)に示す化合物は、アルキレングリコールアルキルエーテルである。上記一般式(2)で表される化合物は、1種単独で含有されてもよいし、2種以上含有されてもよい。
式(1)で表される化合物のうちR1及びR3の何れかが水素であるグリコールモノエーテル化合物をインクが含有する場合、上述の効果に加え、凝集ムラが特に優れる傾向があり好ましい。グリコールモノエーテル化合物をインクが含有する場合、その含有量は、上記の点で2〜20質量%が好ましく、3〜15質量%がより好ましく、3〜10質量%が更に好ましい。グリコールモノエーテル化合物は引火点は問わない。
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、溶剤として、上記の他に、以下のような化合物を用いることができる。
本実施形態のインクジェットインク組成物は、顔料としてC.I.ピグメントオレンジ−43(PO−43)を含むことが好ましい。C.I.ピグメントオレンジ−43(PO−43)を含むことで、記録物が、屋外での使用にも好適な優れた耐候性と暖色系の広い色再現範囲が得られる。
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は定着樹脂を含有することが好ましい。定着樹脂は顔料などのインクに含む固形分を記録媒体に保護、接着し耐擦性を高める樹脂である。使用し得る定着樹脂としては塩化ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂などがある。定着樹脂は、インクに含む溶剤が前記溶剤群Aの溶剤である場合、良好に溶解されインクに溶解させることができる。その結果、定着樹脂により記録媒体の表面にインクを強固に定着させることができ記録物の耐擦性に優れ、また、インクに溶解しきらずに異物となりインクジェット吐出時の吐出安定性を低下させることがない。定着樹脂の中でも、塩化ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂は、溶剤、特に溶剤群Aへの溶解性が特に優れ、耐擦性に特に優れ好ましい。
インクジェットインク組成物中における塩化ビニル系樹脂の含有量は、例えば、0.05〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%、さらに好ましくは0.5〜2.5質量%とすることができ、特に好しくは1〜2質量%とすることができる。含有量が前記範囲であると、溶剤への溶解性が良好でインクの吐出安定性に優れ、記録媒体に対して特に優れた定着性が得られ耐擦性が優れる。また含有量が上記範囲内であると、記録物が白っぽく濁って見えてしまうことがなく優れた発色が得られる。このことは、特にC.I.ピグメントオレンジ−43を含むインクの場合、暖色系の色の優れた発色性を得るために特に好ましい。
(メタ)アクリルモノマーと他のモノマーとの共重合体としては、スチレン(メタ)アクリル共重合樹脂などのオレフィン(メタ)アクリル共重合樹脂が挙げられる。(メタ)アクリルモノマーと他のモノマーとの共重合体における(メタ)アクリルモノマーの質量比としては、30質量%以上が好ましく50質量%以上がより好ましい。
インクが定着樹脂として塩化ビニル系樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂を含有する場合、耐擦性、耐候性、吐出安定性などを共にバランスよく優れたものとできる点で好ましい。
(界面活性剤)
本実施の形態に係るインクジェットインク組成物には、前記有機溶媒の他に、表面張力を低下させ記録媒体との濡れ性を向上させる観点から、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、または非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン誘導体を添加してもよい。
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、顔料の分散安定性を向上させる観点から、通常のインク組成物において用いられる任意の分散剤を用いることができる。このような分散剤の具体例としては、ヒノアクトKF1−M、T−6000、T−7000、T−8000、T−8350P、T−8000E(いずれも武生ファインケミカル株式会社製)等のポリエステル系高分子化合物、Solsperse20000、24000、32000、32500、33500、34000、35200、37500(いずれもLUBRIZOL社製「ソルスパース」)、Disperbyk−161、162、163、164、166、180、190、191、192(いずれもビックケミー・ジャパン社製)、フローレンDOPA−17、22、33、G−700(いずれも共栄社化学株式会社製)、アジスパーPB821、PB711(いずれも味の素株式会社製)、LP4010、LP4050、LP4055、POLYMER400、401、402、403、450、451、453(いずれもEFKAケミカルズ社製)等が挙げられる。
本実施形態のインクジェットインク組成物は、上記の成分の他にも、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)等のキレート化剤、防腐剤・防かび剤、及び防錆剤など、所定の性能を付与するための物質を含有することができる。
本実施の形態に係るインクセットは、溶剤と、ピグメントオレンジ−43(PO−43)を含む顔料と、を含む非水系インクジェットインク組成物と、溶剤と顔料とを含む非水系シアンインクジェットインク組成物と、溶剤と顔料とを含む非水系マゼンタインクジェットインク組成物と、溶剤と顔料とを含む非水系イエローインクジェットインク組成物と、を少なくとも備えるインクセットとすることが、暖色系の色再現範囲が広く、記録物の耐候性にも優れる点で好ましい。インクセットにおいて、溶剤とピグメントオレンジ−43(PO−43)を含む顔料とを含む非水系インクジェットインク組成物をオレンジインク組成物とすると特に好ましい。以下、溶剤とピグメントオレンジ−43(PO−43)を含む顔料とを含む非水系インクジェットインク組成物をオレンジインク組成物としても記載するがオレンジインク組成物には限られない。
本実施の形態に係るインクジェット記録方法は、前述したインクジェットインク組成物またはインクセットを用いて、記録媒体に対してインクジェット法により記録することを特徴とする。本実施の形態に係るインクジェット記録方法によれば、前述したインクジェットインク組成物またはインクセットを用いるので、耐候性が良好で暖色系色再現領域が広い画像を形成でき、さらに、かつ、安定したインクジェット記録が可能で、画質及び堅牢性の良好な画像の記録が可能である。記録媒体は塩化ビニル系記録媒体が上記の点で好ましい。
以下に実施例を示し、本発明をさらに説明するが、本発明は以下の例によってなんら限定されるものではない。
3.1.1.顔料分散液の調製
顔料として一次粒径160nmのピグメントオレンジ43(PO−43)を用意した。分散剤としてソルスパース17000(ルーブリゾール社製、ポリエステルポリアミン)を用い、当該顔料に対して同質量の範囲で分散剤の添加量をして分散液を作製した。分散媒としては、各インク組成例ごとに溶剤として最も含有量の多い溶剤を分散媒として用い顔料分散液とした。ピグメントオレンジ31、64、71についてもこれと同様にして顔料分散液を得た。顔料の体積平均粒子径はいずれも約200nmとした。
上記で調製された顔料分散液を用いて、表に示す材料組成にて顔料や組成の異なるインク組成物を調製した。各インク組成物は、表中に示す材料を容器中に入れ、マグネチックスターラーにて2時間混合撹拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターにて濾過してゴミや粗大粒子等の不純物を除去することにより調製した。なお、表中の組成欄の数値は、質量%を示す。
<顔料>
・PO−43:C.I.ピグメントオレンジ43
・PO−31:C.I.ピグメントオレンジ31
・PO−64:C.I.ピグメントオレンジ64
・PO−71:C.I.ピグメントオレンジ71
<環状エステル溶剤>
・γ−ブチロラクトン:商品名、関東化学株式会社製
・σ−バレロラクトン:商品名、キシダ化学株式会社製
<一般式(1)溶剤>
・M100:商品名、出光興産社製。
・B100:商品名、出光興産社製。
・DEGMEE:ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、商品名「ハイソルブEDM」、東邦化学工業株式会社製、引火点64℃)
・DEGdME:ジエチレングリコールジメチルエーテル、商品名「ジエチレングリコールジメチルエーテル」、東京化成工業株式会社製、引火点56℃)
・DEGDEE:ジエチレングリコールジエチルエーテル、商品名「ジエチレングリコールジエチルエーテル」、東京化成工業株式会社製、引火点71℃)
・DEGBME:ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、商品名「ハイソルブBDM」、東邦化学工業株式会社製、引火点94℃)
・TriEGdME:トリエチレングリコールジメチルエーテル、商品名「トリエチレングリコールジメチルエーテル」、キシダ化学株式会社製、引火点113℃)
・TetraEGdME:テトラエチレングリコールジメチルエーテル、商品名「テトラエチレングリコールジメチルエーテル」、東京化成工業株式会社製、引火点141℃)
・TetraEGmBE:テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、商品名「ブチセノール40」、KHネオケム株式会社製、引火点177℃)
<その他溶剤>
・AF−7:JX日鋼日石エネルギー社製、ナフテン系炭化水素溶剤。
・パルミチン酸イソオクチル:日光ケミカルズ社製、脂肪酸エステル溶剤。
・ソルスパース17000:商品名、ルーブリゾール社製、ポリエステルポリアミン
<界面活性剤>
・BYK340:商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、シリコン系界面活性剤
<定着樹脂>
・ソルバインCL:商品名、日信化学工業株式会社製、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体
・パラロイドB60:商品名、ダウケミカル社製、(メタ)アクリル樹脂。
3.1.3.1.耐候性
調製した各インク組成物を用いて、インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、型式「SC−S70650」)により、初期OD値が0.5、1.0、最大値となるようにDutyを調整しながら印刷を行った。記録解像度1440×1440dpiとした。記録媒体には、光沢ポリ塩化ビニルシート(ローランドDG社、型番SV−G−1270G)を使用した。得られた記録物を一般環境下で1時間放置して乾燥させた。その後、得られた記録物をキセノンウェザーメーター(スガ試験機株式会社製)のチャンバー内に投入し、「光照射25分間」→「光照射+水降雨20分間」→「光照射30分間」→「水降雨60分間」のサイクル試験を行った。このサイクル試験を4週間連続して行い、4週間後にその記録物を取り出した。取り出した各記録物について、グレタグ濃度計(グレタグマクベス社製)を用いてOD値を測定し、OD値の残存率(%)を求め、初期OD値が0.5、1.0、最大値の3種の記録物のうち、残存率が最も低い記録物を評価の対象とした。耐候性は、下記基準に基づき判定した。その結果を表に示す。
5:OD値残存率が90%以上
4:OD値残存率が87%以上90%未満
3:OD値残存率が84%以上87%未満
2:OD値残存率が81%以上84%未満
1:OD値残存率が81%未満
インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、型式「SC−S70650」)に搭載されているピエゾ素子の振動数を7kHzとし、その駆動波形を最適化した状態で、各インク組成物についてヘッドの各ノズルから250秒間の液滴の連続吐出を行い、その後300秒間液滴の吐出を中断した(1シーケンス)。その後、同様に、液滴の連続吐出、及び、吐出の中断の操作を10シーケンス繰り返し行った。10シーケンス終了時において、ノズル360個中の不吐出ノズル数をカウントすることにより印字安定性評価(間欠評価)を行った。その評価結果を表に示す。なお、評価基準は、以下の通りである。
4:不吐出ノズル数が0個
3:不吐出ノズル数が1〜2個
2:不吐出ノズル数が3〜4個
1:不吐出ノズル数が5個以上
上記プリンターを用いて、実施例および比較例の各インク組成物を光沢ポリ塩化ビニルシート(ローランドDG社、型番SV−G−1270G)上に記録解像度1440×1440dpiの100%濃度でベタ印刷をした後、25℃−65%RH(相対湿度)にて1日間乾燥させて各例の記録物を作製した。このようにして得られた記録物を、光沢度計MULTI Gloss 268(コニカミノルタ社製)を用いて、記録面20°反射の光沢度を測定した。その評価結果を表に示す。なお、評価基準は、以下の通りである。
4:50以上
3:40以上50未満
2:30以上40未満
1:30未満
上記「光沢性の評価」と同様にして各例の記録物を作製した。このようにして得られた記録物の記録面における顔料の凝集ムラを目視にて観察することにより、凝集ムラの評価を行った。その評価結果を表に示す。なお、評価基準は、以下の通りである。
4:凝集ムラが認められない。
3:拡大観察で凝集ムラが認められる。
2:若干の凝集ムラが認められる。
1:凝集ムラが目立つ。
上記「光沢性の評価」と同様にして各例の記録物を作製した。このようにして得られた記録物につき、JIS K5701(ISO 11628)に準じて、学振式摩擦堅牢度試験機(テスター産業株式会社製、商品名「AB−301」)を用いて耐擦性の評価を行った。すなわち、記録物の記録面に綿布を載せ、荷重500gで20回往復させて擦り、擦った後の記録物の記録面の剥離状態を目視にて観察した。その評価結果を表に示す。なお、評価基準は、以下の通りである。
3:綿布に汚れが無い。記録面に傷が無い。
2:綿布に記録物の付着がある。記録面に傷がほとんど無い。
1:綿布に記録物の付着がある。記録面に傷がある。
上記の耐候性評価と同様にして印刷を行い、同様に初期OD値を測定した。ただし、記録媒体へのインクの付着量は何れの例も8mg/inch2の付着量とし、記録解像度1440×1440dpiとした。評価結果を表に示す。
4:初期OD値が1.0以上
3:初期OD値が0.85以上1.0未満
2:初期OD値が0.7以上0.85未満
1:初期OD値が0.7未満
溶剤群Aとピグメントオレンジ43を含むインク組成物である組成物1〜16は何れも優れた耐候性、耐擦性、発色性を示した。これに対し、溶剤群Aの溶剤を含まないインク組成物17は耐擦性が劣り、ピグメントオレンジ43を含まない組成物18〜20は耐候性と発色性の何れかが劣った。溶剤群Aの溶剤もピグメントオレンジ43も含まないインク組成物21は、組成物20と比べて発色性は比較的良かったが、耐擦性が劣った。また、塩化ビニル系樹脂を比較的多く含有するインク組成物16は発色性がやや劣る傾向が見られたが、記録物が白く白濁して見え、このため発色性がやや劣ったと推測する。このことから、特にピグメントオレンジ43を含有するインクとして暖色系の優れた発色を得る場合に、塩化ビニル系樹脂の特に好ましい範囲があることがわかった。
3.2.1.インク組成物調製
顔料と顔料分散剤の種類を変え、前述のインク組成物例と同様に他の色のインク組成物22〜25を調製した。顔料分散液は、顔料毎に適した顔料分散剤を使用した。
<顔料>
・P.B.15:3 C.I.ピグメントブルー15:3
・P.R.122: C.I.ピグメントレッド122
・P.Y.155: C.I.ピグメントイエロー155
・CB: カーボンブラック顔料
3.2.2.1.耐候性
前述のインク組成物例の耐候性評価と同様にして印刷を行った。ただし、各インクセットの備えるインクを使用して記録媒体へ色再現が可能な、L*値が70、a*b*の成すa*b*平面上の色相角が45°においてC*=√(a*2+b*2)の値が最も大きい色の印刷物を印刷し評価に用いた。その際のL*a*b*値の確認には、分光測色系(コニカミノルタ社製)を用いた。耐候加速試験、OD値測定、評価基準はインク組成物例の耐候性評価と同様にして行った。評価結果を表に示す。
上記耐候性評価と同様にして印刷を行った。ただし、各インクセットのインクを使用して記録媒体へ色再現が可能な全ての色の印刷を行い、印刷可能なL*a*b*色空間のガマット体積を計算した。結果を表に示す。
前述のインク組成物の凝集ムラ評価と同様にして印刷と評価を行った。ただし、インクセットによる二次色以上の色を印刷した場合の凝集ムラの評価をするために、印刷は、インクセットを構成する5つのインクの記録媒体に対する合計のインクの付着量を、インク組成物の凝集ムラの評価の場合のインク付着量と同じとして、各インクごとのインクの付着量は等しくして5等分とした。インクセット1、2を用いて行った。結果を下記に記す。
インクセットNo. 凝集ムラ
インクセット1 4
インクセット2 1
ピグメントオレンジ43を含むオレンジインク組成物を備えるインクセット1、2は、記録物の優れた耐候性を示しガマット体積も広かった。これに対し、ピグメントオレンジ43を含むオレンジインク組成物を備えないインクセット3〜5は、耐候性が劣ったかガマット体積が狭かった。また、各インクが溶剤郡Aの溶剤を含有するインクを含むインクセット1は二次色凝集ムラ低減にも優れていたが、溶剤郡Aの溶剤を含まないインク組成物17を含むインクセット2は二次色凝集ムラ低減の点で劣っていた。
Claims (9)
- 溶剤として環状エステル化合物の少なくとも1種と、顔料としてC.I.ピグメントオレンジ−43(PO−43)と、定着樹脂として塩化ビニル系樹脂を含み、
前記環状エステル化合物の含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して、2〜40質量%であり、
前記塩化ビニル系樹脂の含有量が前記インクジェットインク組成物の全量に対して、0.5〜5質量%である、非水系インクジェットインク組成物。 - 請求項1において、
前記環状エステルの総含有量に対する定着樹脂の総含有量の比が0.1〜1.0である、非水系インクジェットインク組成物。 - 請求項1又は2において、さらに、溶剤として下記一般式(2)で表される化合物の1種以上を含む、非水系インクジェットインク組成物。
R1O−(R2O)m−R3 ・・・(2)
[一般式(2)中、R1及びR3は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上5以下のアルキル基を表し、R2は、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2〜6の整数を表す。ただし、R1及びR3の少なくとも何れかは炭素数1以上5以下のアルキル基である
。] - 請求項3において、
前記一般式(2)で表される化合物の合計含有量が、前記インクジェットインク組成物の全量に対して、10質量%以上90質量%以下である、非水系インクジェットインク組成物。 - 請求項1〜4の何れか1項において、
前記環状エステルの含有量が5〜40質量%である、非水系インクジェットインク組成物。 - 塩化ビニル系記録媒体への記録に用いられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の非水系インクジェットインク組成物。
- 前記定着樹脂が、さらに(メタ)アクリル系樹脂を含有する、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の非水系インクジェットインク組成物。 - 請求項1〜7のいずれか一項に記載の非水系インクジェットインク組成物と、溶剤として環状エステル化合物の少なくとも1種と顔料とを含む非水系シアンインクジェットインク組成物と、溶剤として環状エステル化合物の少なくとも1種と顔料とを含む非水系マゼンタインクジェットインク組成物と、溶剤として環状エステル化合物の少なくとも1種と顔料とを含む非水系イエローインクジェットインク組成物と、を少なくとも備えるインクセット。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物または請求項8に記載のインクセットを用いて、記録媒体にインクジェット法により記録を行う、インクジェット記録方法。
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