JP2005023430A - 繊維束集束装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ニップ点通過後の繊維束に対しても吸引集束作用を及ぼすことができ、糸品質を向上させることができる繊維束集束装置を提供する。
【解決手段】ドラフト装置の最終送出ローラ対の下流側に繊維束集束装置12が配設され、繊維束集束装置12はニップローラ対13、吸引部14及び多孔エプロン15を備えている。トップニップローラ13bはボトムニップローラ13aに多孔エプロン15を介して押圧される。吸引部14はボトムニップローラ13aのニップ点を挟んで繊維束Fの移動方向の上流側に延びる吸引用スリット19aと、下流側に延びる吸引用スリット19bとを備えた摺動案内面19を有する筒部20を備えている。筒部20は上流側の吸引用スリット19aが形成された部分20aと、下流側の吸引用スリット19bが形成された部分20bとに分割された状態に形成されている。
【選択図】 図2
【解決手段】ドラフト装置の最終送出ローラ対の下流側に繊維束集束装置12が配設され、繊維束集束装置12はニップローラ対13、吸引部14及び多孔エプロン15を備えている。トップニップローラ13bはボトムニップローラ13aに多孔エプロン15を介して押圧される。吸引部14はボトムニップローラ13aのニップ点を挟んで繊維束Fの移動方向の上流側に延びる吸引用スリット19aと、下流側に延びる吸引用スリット19bとを備えた摺動案内面19を有する筒部20を備えている。筒部20は上流側の吸引用スリット19aが形成された部分20aと、下流側の吸引用スリット19bが形成された部分20bとに分割された状態に形成されている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は繊維束集束装置に係り、詳しくは例えば精紡機のドラフト装置(ドラフトパート)の下流に配置され、ドラフト装置でドラフトされた繊維束を集束する繊維束集束装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の繊維束集束装置として、特開平7−238425号公報には、ドラフト装置を構成する最終ローラ対の下流に、繊維束搬送面を形成する多孔エプロンを具備した送出ローラ対を設け、この多孔エプロンの搬送面に吸引気流を作用させる空気吸引装置を設けたものが開示されている。この装置では多孔エプロンをガイドするエプロンケージに形成された溝孔を介して多孔エプロンの搬送面に吸引気流が作用する。
【0003】
また、特開平11−286837号公報に開示された装置では、図7に示すように、ドラフト装置の最終ローラ51,52の下流のボトム側に吸引スリット53aを有する静止摺動案内面を構成するガイド筒53を設け、ガイド筒53に輸送用の孔開けベルト54が巻き掛けられている。また、トップ側には孔開けベルト54と当接してニップ点を画成するニップローラ55が設けられている。ニップローラ55は最終ローラ52により移送ベルト56を介して駆動されるようになっている。ニップローラ55を移送ベルト56を介して駆動する構成に代えて、最終ローラ52に当接する移送ローラを介して駆動する構成も開示されている。
【0004】
また、特開平2−118127号公報には図8に示すように、ドラフト装置の最終ローラのボトム側にほぼ90°の吸引区域57aを設け、その吸引区域57aの両端に出口ローラ58,59を設けた構成が開示されている。吸引区域57aは大径のガイドロール57に設けられ、ガイドロール57の外側に多孔筒60が回動可能に設けられている。出口ローラ58,59は多孔筒60に押圧され、吸引区域57aの両端において繊維束61をニップする。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特開平7−238425号公報に開示された装置では、繊維束の吸引が送出ローラ対のニップ点から相当離れた手前で終わらざるを得ず、一旦集束された繊維束がニップ点に到達するまでに再び拡がる可能性が高い。従って、集束が不十分となって送出ローラの出口で所謂フリーストライアングルが形成され、糸質の改善効果が低い。
【0006】
特開平11−286837号公報の装置では、ニップ点までスリット吸引が実現できるため、繊維束の集束効果は特開平7−238425号公報の装置に比較して改善される。しかし、フリーストライアングルは存在するため、糸質の改善効果は低い。また、孔開けベルト54はニップ点においてニップローラにより押圧されることで静止状態のガイド筒53の周囲を摺動し、相対的な滑りが生じるため、摺動案内面、特に押圧されるニップ点近傍が摩耗しやすいと言う問題がある。さらに、ニップローラ55は最終ローラ52から伝達手段(移送ベルト56等)を介して駆動されるため、最終ローラ52とニップローラ55との周速比の変更調整が難しい。また、前記周速比はゴム製のトップローラの径比で決定されるため、同ローラの摩耗により径比が変わると変化するため、管理が難しいという問題もある。
【0007】
また、特開平2−118127号公報の装置では、二つの出口ローラ58,59の周速が同じため、繊維束61に適度な緊張がかけられず、糸質の向上の点でマイナスとなる。また、多孔筒60の製作が難しく風綿が詰まり易いという問題もある。
【0008】
また、従来から図9に示すように、送出ローラ(ニップローラ)62のニップ点通過後に、所謂フリーストライアングル63が発生すると、毛羽が発生し易いことが知られている。しかし、その発生メカニズムについては説明がなされていなかった。本願発明者は、そのメカニズムを研究した結果、フリーストライアングル63が発生すると、集束された繊維束61の両端から遊離した構成繊維64が撚り込み時にコア繊維に完全に撚り込まれず、結果として毛羽あるいは落綿(材料利用率低下)となることがわかった。そして、前記従来装置ではいずれもニップ点を過ぎた領域では繊維束に吸引作用が及ばないため、フリーストライアングル63の発生が避けられず、糸質の向上が不充分となる。
【0009】
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的はニップ点通過後の繊維束に対しても吸引集束作用を及ぼすことができ、糸品質を向上させることができる繊維束集束装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、ドラフトパートでドラフトされた繊維束を集束する繊維束集束装置であって、前記ドラフトパートの最終送出ローラ対の下流側に設けられるとともにニップローラを備えた送出部と、該送出部のニップ点を挟んで繊維束の移動方向の上流側と下流側に延びる吸引用スリットを備えた摺動案内面を有する吸引部と、前記送出部を構成するとともに前記摺動案内面に接触する状態で回転される多孔エプロンとを備え、前記摺動案内面は前記多孔エプロンから送り出される繊維束がフリース角度をもって転向するように配置されている。
【0011】
この発明では、ドラフトパートでドラフトされた繊維束は、ドラフトパートの最終送出ローラ対の下流側に設けられた送出部のニップローラの回転に伴って送り出される。送出部のニップ点を挟んで繊維束の移動方向上流側及び下流側に配置された吸引用スリットから、多孔エプロンを介して繊維束に吸引作用が及ぶ。そして、繊維束が吸引用スリットと対応する位置に吸引集束された状態で移動する。従来装置では吸引用スリットがニップ点の上流側にのみ配置されているため、ニップ点に至るまでに一度集束された繊維束がニップ点を過ぎた後に拡がり、糸質の改善効果が不充分となる。しかし、この発明では繊維束がニップ点を過ぎた後も吸引作用を受けて集束された状態で移動するため、ニップローラの出口にフリーストライアングルが殆ど形成されない。その結果、毛羽の発生や落綿が抑制されて糸質の改善効果が大幅に向上する。ドラフトパートの最終送出ローラを通過した繊維束は、適度な緊張状態でニップ点まで移動し、ニップ点を過ぎた後、転向して撚り掛けを受けながら下流側へ移動する。ニップ点より下流側に設けられた吸引用スリットによる集束効果は、ニップ点より上流側にもある程度伝播し、ニップ点到達までの繊維束の拡がりを抑制する。
【0012】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記送出部はニップローラ対を備え、前記多孔エプロンは前記摺動案内面及び前記ニップローラ対の一方のニップローラの一部と接触する状態に巻き掛けられている。この発明では、ニップ点におけるニップローラの押圧が多孔エプロンを挟んで対向するニップローラに負荷されて多孔エプロンは回転するため、多孔エプロンとニップローラとの相対的な滑りは生じない。従って、多孔エプロンがニップローラに巻き掛けられずに静止状態の支持筒に巻き掛けられて、多孔エプロンを支持筒に押圧しながら回転するニップローラにより回転される構成に比較して、支持筒や多孔エプロンの摩耗が抑制される。
【0013】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記吸引用スリットは、前記ニップ点の上流側に位置する上流側の吸引用スリットの幅が下流側に位置する下流側の吸引用スリットの幅より広く、下流側の吸引用スリットはその幅が下流側ほど狭くなるように形成されている。
【0014】
この発明では、ニップ点より下流側において繊維束の拡がりを抑制する効果が高まり、糸質の向上効果が高くなる。
請求項4に記載の発明では、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記吸引用スリットは、前記多孔エプロンの移動方向に対して斜めに延びるように形成されている。この発明では、仮撚り効果により集束性が向上する。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記吸引部は前記ニップ点の上流側に位置する上流側の吸引用スリットが形成された部分と、下流側に位置する下流側の吸引用スリットが形成された部分とが分割された状態に形成されている。
【0016】
上流側の吸引用スリットが形成された部分と、下流側の吸引用スリットが形成された部分とが一体に形成されている場合は、吸引部と多孔エプロンとの間に風綿や塵埃が溜まり易くなるが、この発明では、風綿や塵埃は分割された吸引部の開放部分から放出される。従って、ごみが多孔エプロンの裏面と吸引部との間に溜まり難くなる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記吸引部は樹脂製で2錘単位に形成されている。この発明では、樹脂製のため、金属製の場合に比較して軽量となる。また、2錘一体型のため、交換作業が容易となる。
【0018】
請求項7に記載の発明では、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記吸引部はローラスタンド間を1単位として形成されている。この発明では、紡機1台に必要な吸引部の部品点数が少なくなる。また、ローラスタンドは一般に紡機の機台フレームを構成するスプリングピースの設置間隔で配置され、吸引用ダクト等もその間隔に対応した長さのものを連結して構成されるものが多い。従って、吸引部もその長さに対応した構成とすることにより、運搬時などの梱包等がし易くなる。
【0019】
請求項8に記載の発明では、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の発明において、前記多孔エプロンは織布により形成されている。この発明では、多孔エプロンを構成するベルトに小さな孔をわざわざ開ける手間をかけずとも、適度な通気性を確保できる織布を選択することにより、多孔エプロンを安価に製造できる。
【0020】
請求項9に記載の発明では、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の発明において、前記多孔エプロンは編み地により形成されている。この発明では、多孔エプロンを安価にできるとともに、編み地の伸縮性により、テンション装置を特に設けなくても多孔エプロンが適度な張力状態で回転される。
【0021】
請求項10に記載の発明では、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の発明において、前記吸引部は吸引力が調整可能に構成されている。この発明では、繊維種、紡出速度等の紡出条件が変更された場合も、吸引部の吸引力を紡出条件に対応した適正な吸引力に調整できる。
【0022】
請求項11に記載の発明では、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の発明において、前記吸引部は糸切れ時にドラフトパートから送出されるフリースを吸引する作用をなすニューマ装置と一部が共用されている。この発明では、吸引作用をなすニューマ装置と完全に独立して吸引部を設ける場合に比較して、両装置の設置スペースを小さくできるとともに、製造コストも低減できる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を2錘単位で精紡機に装備される装置に具体化した一実施の形態を図1〜図3に従って説明する。図1はドラフト装置の片側を示す模式側面図、図2(b)は要部拡大図である。
【0024】
図1に示すように、ドラフトパートとしてのドラフト装置1はフロントボトムローラ2、ミドルボトムローラ3及びバックボトムローラ4を備えた3線式の構成となっている。フロントボトムローラ2はローラスタンド5に対して所定位置に支持され、ミドル及びバックの各ボトムローラ3,4はローラスタンド5に対して前後方向に位置調整可能に固定された支持ブラケット3a,4aを介して支持されている。支持ブラケット3a,4aはローラスタンド5に形成された長孔を貫通するボルト及びナット(いずれも図示せず)により所定位置に締め付け固定されるようになっている。ボトムエプロン6はボトムテンサ7と、ミドルボトムローラ3とに巻き掛けられている。
【0025】
ウエイティングアーム8にはフロントトップローラ9、ミドルトップローラ10及びバックトップローラ11が、それぞれフロントボトムローラ2、ミドルボトムローラ3及びバックボトムローラ4と対応する位置にトップローラ支持部材を介してそれぞれ支持されている。各トップローラ9〜11は2錘1組として支支持されている。フロントボトムローラ2及びフロントトップローラ9がドラフト装置1の最終送出ローラ対を構成する。
【0026】
ウエイティングアーム8にはレバー8aが加圧位置と解放位置とに回動可能に配設されている。レバー8aが図1に示すウエイティングアーム8のフレーム8bと当接する加圧位置に配置された状態では、ウエイティングアーム8に支持された各トップローラ9〜11をボトムローラ2,3,4側に押圧する加圧位置(紡出位置)にロック状態で保持される。また、レバー8aが図1に示す状態から上方の解放位置に回動された状態では、前記ロック状態が解除されるようになっている。
【0027】
図1に示すように、ドラフト装置1の最終送出ローラ対の下流側に繊維束集束装置12が配設されている。繊維束集束装置12はニップローラ対13、吸引部14及び多孔エプロン15を備えている。ニップローラ対13はフロントボトムローラ2と平行に配設されたボトムニップローラ13aと、ボトムニップローラ13aに多孔エプロン15を介して押圧されるトップニップローラ13bとで構成されている。ボトムニップローラ13aは各ボトムローラ2〜4と同様に積極駆動可能に構成されている。例えば、機台のギヤエンドに設けられたモータによりギヤ列を介して駆動されるようになっており、ギヤの変更によりボトムニップローラ13aとフロントボトムローラ2の周速比が調整される。トップニップローラ13bは各トップローラ9〜11と同様に2錘毎に、支持部材16(図1にのみ図示)を介してウエイティングアーム8に支持されている。
【0028】
図1に示すように、精紡機機台にはその長手方向(図1の紙面と垂直方向)に延びるように吸引ダクト17が配設され、吸引部14は接続パイプ18を介して吸引ダクト17に連結されている。図1及び図2に示すように、吸引部14はボトムニップローラ13aのニップ点を挟んで繊維束(フリース)Fの移動方向の上流側に延びる吸引用スリット19aと、下流側に延びる吸引用スリット19bとを備えた摺動案内面19を有する部分20a,20bからなる筒部20を備えている。
【0029】
図2及び図3に示すように、吸引部14はボトムニップローラ13aの周方向のほぼ半分を覆う円弧状の支持筒部21を中心に、左右対称に筒部20が一対設けられるている。筒部20はボトムニップローラ13aのニップ点の上流側に位置する上流側の吸引用スリット19aが形成された部分20aと、下流側の吸引用スリット19bが形成された部分20bとに分割された状態に形成されている。即ち、吸引部14は前記ニップ点上流側の吸引用スリット19aが形成された部分20aと、下流側の吸引用スリット19bが形成された部分20bとが分割された状態に形成されている。なお、図2(a)及び図3では、多孔エプロン15を仮想線で示している。また、図3では、後記するニューマ装置の吸引ノズル22の図示を省略している。
【0030】
上流側の部分20aは、多孔エプロン15をフロントボトムローラ2とフロントトップローラ9とのニップ点の近傍に至るように案内可能な形状に形成されている。下流側の部分20bは、多孔エプロン15から送り出される繊維束Fがある程度のフリース角度をもって転向するように配置されている。なお、フリース角度とは繊維束(フリース)Fのニップ点を通過した後、繊維束Fを引き出し位置まで案内する円弧面の曲率中心とニップ点とを結ぶ線分と、前記曲率中心と繊維束Fの引き出し点とを結ぶ線分との成す角度を意味する。多孔エプロン15は一部が筒部20に、一部がボトムニップローラ13aに接触するように巻掛けられ、ボトムニップローラ13aの回転伴って摺動案内面19に沿って摺動しつつ回転されるようになっている。この実施の形態では多孔エプロン15は、適度な通気性を確保できる織布により形成されている。
【0031】
図2(a)に示すように、吸引用スリット19a,19bは、ニップ点の上流側に位置する吸引用スリット19aの幅が、下流側に位置する吸引用スリット19bの幅より広く形成されている。下流側の吸引用スリット19bはその幅が下流側ほど狭くなるように形成されている。
【0032】
吸引用スリット19a,19bのうち、上流側の吸引用スリット19aは多孔エプロン15の移動方向(図2(a)における上下方向)に対して斜めに延びるように形成され、下流側の吸引用スリット19bは多孔エプロン15の移動方向と同方向に延びるように形成されている。この実施の形態では各一対の吸引用スリット19a,19bはそれぞれ対称に形成されている。
【0033】
図1及び図2(a)に示すように、接続パイプ18の途中には、糸切れ時にドラフト装置1から送出される繊維束Fを吸引する作用をなすシングルタイプの吸引ノズル22が左右対称に分岐されている。即ち、この実施の形態では、吸引部14は糸切れ時にドラフトパートから送出される繊維束Fを吸引する作用をなすニューマ装置と、一部が共用されている。
【0034】
次に前記のように構成された装置の作用を説明する。
精紡機が運転されると、繊維束Fはドラフト装置1のボトムローラ2〜4と、トップローラ9〜11との間を通過することによりドラフトされた後、繊維束集束装置12へ案内される。ニップローラ対13は両フロントローラ2,9の表面速度より若干速く回転され、繊維束Fは適度な緊張状態でニップローラ対13のニップ点を過ぎた後、転向して撚り掛けを受けながら下流側へ移動する。
【0035】
また、ニップローラ運転時、吸引ダクト17の吸引作用が接続パイプ18を介して吸引部14に及び、摺動案内面19に形成された吸引用スリット19a,19bの吸引作用が多孔エプロン15を介して繊維束Fに及ぶ。そして、繊維束Fが吸引用スリット19a,19bと対応する位置に吸引集束された状態で移動する。
【0036】
従来装置のように吸引用スリットがニップ点の上流側にのみ配置されている構成では、ニップ点に至るまでに一度集束された繊維束がニップ点を過ぎた後に拡がり、ニップローラの出口にフリーストライアングルが形成される。しかし、この実施の形態ではニップローラ対13のニップ点を挟んで上流側及び下流側に吸引用スリット19a,19bが存在するため、繊維束Fはニップ点を過ぎた後も吸引作用を受けて集束された状態で移動する。そして、図3に示すようにニップローラ対13の出口にフリーストライアングルが殆ど形成されない。その結果、ニップ点通過後の繊維束Fの両端から繊維の遊離が抑制され、毛羽の発生や落綿が抑制されて糸質の改善効果が大幅に向上する。
【0037】
ニップ点より下流側に設けられた吸引用スリット19bによる集束効果は、ニップ点より上流側にもある程度伝播し、ニップ点到達までの繊維束Fの拡がりを抑制する。
【0038】
この実施の形態は以下の効果を有する。
(1) ドラフト装置1の下流側に、ニップローラを備えた送出部と、該送出部のニップ点を挟んで繊維束Fの移動方向の上流側と下流側に延びる吸引用スリット19a,19bを備えた摺動案内面19を有する吸引部14と、摺動案内面19と接触する状態で回転される多孔エプロン15とを備えた。従って、ドラフトされた繊維束Fが、ニップ点に至るまでに集束されるとともに、ニップ点を過ぎた後も吸引作用を受けて集束された状態で移動するため、ニップローラの出口にフリーストライアングルが殆ど形成されず、毛羽の発生や落綿が抑制されて糸質の改善効果が大幅に向上する。
【0039】
(2) 多孔エプロン15は摺動案内面19及びニップローラ13対の一方のニップローラ13aの一部と接触する状態に巻き掛けられ、ニップローラ対13の回転力が多孔エプロン15に直接伝達される。従って、多孔エプロン15がボトムニップローラ13aに巻き掛けられずに静止状態の支持筒(ガイド筒)に巻き掛けられて、多孔エプロン15を支持筒に押圧しながら回転するニップローラにより回転される構成に比較して、支持筒や多孔エプロン15の摩耗が抑制される。
【0040】
(3) トップニップローラ13bが多孔エプロン15を押圧する力がボトムニップローラ13aで担われ、吸引部14にトップニップローラ13bの押圧力が作用しない。従って、吸引部14は従来装置(特開平11−286837号公報)に比較して、剛性が必要とされず、樹脂製で2錘単位の製品としても充分な強度を確保できる。
【0041】
(4) トップニップローラ13b側を駆動側とした構成では、トップニップローラが一般にゴム製のため、その摩耗の進行により回転速度が一定でも周速が変化する。しかし、ニップローラ対13の駆動がボトムニップローラ13a側を駆動側とした構成のため、トップニップローラ13bの摩耗に拘らず周速が一定となり、安定した糸品質の確保が可能となる。
【0042】
(5) ニップ点より下流側に設けられた吸引用スリット19bによる集束効果が、ニップ点より上流側にもある程度伝播し、ニップ点到達までの繊維束Fの拡がりが抑制されて、集束効果がより向上する。
【0043】
(6) ニップローラ対13のニップ点より上流側の吸引用スリット19aの幅が下流側の吸引用スリット19bの幅より広く、下流側の吸引用スリット19bはその幅が下流側ほど狭くなるように形成されている。従って、両吸引用スリット19a,19bの幅が一定の場合に比較して、ニップ点より下流側において繊維束Fの拡がりを抑制する効果が高まり、糸質の向上効果が高くなる。
【0044】
(7) 吸引用スリット19a,19bのうち、上流側の吸引用スリット19aが多孔エプロン15の移動方向に対して斜めに延びるように形成されている。従って、繊維束Fがニップ点より上流側を移動する際に繊維束Fに仮撚りが掛かり、繊維束Fの集束性が向上する。
【0045】
(8) 吸引部14は上流側の吸引用スリット19aが形成された部分20aと、下流側の吸引用スリット19bが形成された部分20bとが分割された状態に形成されている。両部分20a,20bがボトムニップローラ13aの下側を覆う形状で互いに連通するように形成されていると、筒部20と多孔エプロン15との間に風綿や塵埃が溜まり易くなる。しかし、筒部20が部分20a,20bに分割されているため、多孔エプロン15の裏面と筒部20との間に入り込んだ風綿や塵埃は、分割された筒部20の開放部分から放出される。従って、風綿等が多孔エプロン15の裏面と筒部20との間に溜まり難くなる。また、両部分20a,20bの広い側の間隔がボトムニップローラ13aの直径より大きいため、吸引部14の組付けも容易になる。
【0046】
(9) 吸引部14は樹脂製のため、金属製の場合に比較して軽量となる。
(10) 吸引部14は筒部20が多孔エプロン15との摩擦により摩耗した際に交換する必要があるが、2錘一体型のため、交換作業が容易となる。
【0047】
(11) 多孔エプロン15は織布により形成されている。従って、多孔エプロン15を構成するベルトに小さな孔をわざわざ開ける手間をかけずとも、適度な通気性を確保できる織布を選択することにより、多孔エプロン15を安価に製造できる。
【0048】
(12) 吸引部14は糸切れ時にドラフトパートから送出されるフリースを吸引する作用をなすニューマ装置と一部が共用されている。従って、吸引作用をなすニューマ装置と完全に独立して吸引部14を設ける場合に比較して、両装置の設置スペースを小さくできるとともに、製造コストも低減できる。
【0049】
実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
○ 吸引用スリット19a,19bの延びる方向は、上流側の吸引用スリット19aが多孔エプロン15の移動方向に対して斜めに延び、下流側の吸引用スリット19bが多孔エプロン15の移動方向に延びる構成に限らない。図4(a)に示すように、両吸引用スリット19a,19bとも多孔エプロン15の移動方向と同方向としてもよい。また、図4(b)に示すように、両吸引用スリット19a,19bとも多孔エプロン15の移動方向に対して斜めとしてもよい。上流側の吸引用スリット19aが斜めに延びるように形成されていれば仮撚り効果は期待できる。
【0050】
○ 吸引用スリット19a,19bの幅を一定としてもよい。
○ 吸引部14の筒部20を分割せずに、図5に示すように、筒部20をトップニップローラ13bと対向する側が開放された円弧状に形成してもよい。
【0051】
○ 吸引部14の筒部20を分割した場合でも、分割された部分20a,20bと連通する支持筒部21を、ボトムニップローラ13aの周方向の下側のほぼ半分を覆う円弧状に形成してもよい。
【0052】
○ 吸引部14をローラスタンド5間を1単位として形成してもよい。例えば図6(a),(b)に示すように、8錘分の吸引用スリット19a,19b(2錘分は図示省略)を備えた吸引部14を設けてもよい。吸引部14は前記実施の形態の筒部20を構成する部分20a,20bを支持筒部21の両側に長く延出し、各部分20a,20bにそれぞれ4錘分の吸引用スリット19a,19bを形成した構成となっている。この場合、紡機1台に必要な吸引部14の部品点数が少なくなり、吸引ダクト17と吸引部14とを連結する接続パイプ18の本数を減らすことができるため、組み付けの手間が少なくなる。また、ローラスタンド5は一般に紡機の機台フレームを構成するスプリングピースの設置間隔で配置され、吸引ダクト17等もその間隔に対応した長さのものを連結して構成されるものが多い。従って、吸引部14もその長さに対応した構成とすることにより、運搬時などの梱包等がし易くなる。
【0053】
○ 吸引部14は2錘を1単位としたり、ローラスタンド5間を1単位として形成する構成に限らず、1錘毎に設けたり、ローラスタンド5間の長さに関係なく、3錘以上の錘に対応する構成としてもよい。
【0054】
○ 吸引部14に多孔エプロン15の横ずれを防止するための規制ガイドや、多孔エプロン15に適度な張力を与えるテンション装置を設けてもよい。
○ 多孔エプロン15を織布で形成する代わりに、編み地により形成してもよい。この場合も織布と同様に多孔エプロン15を構成するベルトに小さな孔をわざわざ開ける手間をかけずとも適度な通気性が得られ、多孔エプロン15を安価に製造できる。さらに、編み地の伸縮性により、テンション装置を特に設けなくても多孔エプロン15が適度な張力状態で回転される。
【0055】
○ 多孔エプロン15を織布や編み地で形成する代わりに、ゴム製や弾性を有する樹脂製のベルトに孔を開けて形成してもよい。
○ 吸引ノズル22を接続パイプ18から分岐させる構成に代えて、吸引ノズル22を専用の接続パイプを介して吸引ダクト17に接続する構成としてもよい。
【0056】
○ 吸引部14の負圧源とニューマ装置の負圧源とを独立に設けてもよい。
○ 吸引部14の吸引力を調整可能な構成としてもよい。例えば、負圧源としての吸引ダクト17に連通する管路としての接続パイプ18に調整弁(図1に鎖線で図示)23を設け、調整弁23の開度を調整することにより吸引力を調整可能にする。この場合、繊維種、紡出速度等の紡出条件が変更された場合も、吸引用スリット19a,19bの吸引力を紡出条件に対応した適正な吸引力に調整できる。なお、接続パイプ18を吸引ノズル22と共用する構成の場合は、吸引ノズル22の接続パイプ18からの分岐部より吸引部14側に調整弁を設ける方が、調整が容易になる。
【0057】
○ ボトムニップローラ13aはドラフト装置1の各ボトムローラ2〜4と同様に機台のギヤエンドに設けられたモータによりギヤ列を介して駆動される構成に限らない。例えば、ボトムニップローラ13aを全錘共通のシャフトとする代わりに、複数錘毎に分割するとともに、フロントボトムローラ2からそれぞれギヤあるいはベルト伝動装置を介して回転を伝達する構成としてもよい。
【0058】
○ 繊維束集束装置12の送出部は、ニップローラ対13を装備する構成に限らず、特開平11−286837号公報に開示された装置のように、ボトムニップローラ13aを設けずに多孔エプロン15をガイド筒の周面に沿って摺動可能に設けてもよい。そして、トップニップローラ13bが多孔エプロン15に圧接された状態で回転されることにより多孔エプロン15が回転される構成とし、ガイド筒のトップニップローラ13bによるニップ点を挟んで繊維束Fの移動方向の上流側と下流側に吸引用スリット19a,19bを設ける。この場合も繊維束Fのニップ点を挟んで上流側及び下流側に吸引用スリット19a,19bが存在するため、繊維束Fはニップ点を過ぎた後も吸引作用を受けて集束された状態で移動するため、前記実施の形態と同様に従来装置に比較して糸質の改善効果が大幅に向上する。
【0059】
○ 多孔エプロン15をトップ側に設ける構成としてもよい。
○ 精紡機のドラフト装置に限らず、他の紡機のドラフト装置に適用してもよい。
【0060】
前記実施の形態から把握される発明(技術的思想)について、以下に記載する。
(1) 請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の発明において、前記送出部の駆動はボトムニップローラ側を駆動側とした構成である。
【0061】
(2) 請求項1〜請求項11及び(1)のいずれか一項に記載の繊維束集束装置を備えたリング精紡機。
【0062】
【発明の効果】
以上詳述したように請求項1〜請求項11に記載の発明によれば、ニップ点通過後の繊維束に対しても吸引集束作用を及ぼすことができ、糸品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施の形態の側断面図。
【図2】(a)は繊維束集束装置の吸引部とボトムニップローラとの関係を示す模式図、(b)は要部模式側断面図。
【図3】繊維束集束装置の部分模式正面図。
【図4】別の実施の形態の図2(a)に対応する模式図。
【図5】別の実施の形態の要部模式側断面図。
【図6】(a)は別の実施の形態の図2(a)に対応する一部省略模式図、(b)は同じく図3に対応する一部省略模式図。
【図7】従来装置の側断面図。
【図8】別の従来装置の側断面図。
【図9】フリーストライアングルを示す模式図。
【符号の説明】
1…ドラフトパートとしてのドラフト装置、2…ドラフトパートの最終送出ローラとしてのフロントボトムローラ、5…ローラスタンド、9…同じくフロントトップローラ、12…繊維束集束装置、13…送出部を構成するニップローラ対、13a…同じくニップボトムローラ、13b…同じくニップトップローラ、14…吸引部、15…送出部を構成する多孔エプロン、19…摺動案内面、19a,19b…吸引用スリット、20…筒部、20a,20b…部分、22…ニューマ装置を構成する吸引ノズル、F…繊維束。
【発明の属する技術分野】
本発明は繊維束集束装置に係り、詳しくは例えば精紡機のドラフト装置(ドラフトパート)の下流に配置され、ドラフト装置でドラフトされた繊維束を集束する繊維束集束装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の繊維束集束装置として、特開平7−238425号公報には、ドラフト装置を構成する最終ローラ対の下流に、繊維束搬送面を形成する多孔エプロンを具備した送出ローラ対を設け、この多孔エプロンの搬送面に吸引気流を作用させる空気吸引装置を設けたものが開示されている。この装置では多孔エプロンをガイドするエプロンケージに形成された溝孔を介して多孔エプロンの搬送面に吸引気流が作用する。
【0003】
また、特開平11−286837号公報に開示された装置では、図7に示すように、ドラフト装置の最終ローラ51,52の下流のボトム側に吸引スリット53aを有する静止摺動案内面を構成するガイド筒53を設け、ガイド筒53に輸送用の孔開けベルト54が巻き掛けられている。また、トップ側には孔開けベルト54と当接してニップ点を画成するニップローラ55が設けられている。ニップローラ55は最終ローラ52により移送ベルト56を介して駆動されるようになっている。ニップローラ55を移送ベルト56を介して駆動する構成に代えて、最終ローラ52に当接する移送ローラを介して駆動する構成も開示されている。
【0004】
また、特開平2−118127号公報には図8に示すように、ドラフト装置の最終ローラのボトム側にほぼ90°の吸引区域57aを設け、その吸引区域57aの両端に出口ローラ58,59を設けた構成が開示されている。吸引区域57aは大径のガイドロール57に設けられ、ガイドロール57の外側に多孔筒60が回動可能に設けられている。出口ローラ58,59は多孔筒60に押圧され、吸引区域57aの両端において繊維束61をニップする。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特開平7−238425号公報に開示された装置では、繊維束の吸引が送出ローラ対のニップ点から相当離れた手前で終わらざるを得ず、一旦集束された繊維束がニップ点に到達するまでに再び拡がる可能性が高い。従って、集束が不十分となって送出ローラの出口で所謂フリーストライアングルが形成され、糸質の改善効果が低い。
【0006】
特開平11−286837号公報の装置では、ニップ点までスリット吸引が実現できるため、繊維束の集束効果は特開平7−238425号公報の装置に比較して改善される。しかし、フリーストライアングルは存在するため、糸質の改善効果は低い。また、孔開けベルト54はニップ点においてニップローラにより押圧されることで静止状態のガイド筒53の周囲を摺動し、相対的な滑りが生じるため、摺動案内面、特に押圧されるニップ点近傍が摩耗しやすいと言う問題がある。さらに、ニップローラ55は最終ローラ52から伝達手段(移送ベルト56等)を介して駆動されるため、最終ローラ52とニップローラ55との周速比の変更調整が難しい。また、前記周速比はゴム製のトップローラの径比で決定されるため、同ローラの摩耗により径比が変わると変化するため、管理が難しいという問題もある。
【0007】
また、特開平2−118127号公報の装置では、二つの出口ローラ58,59の周速が同じため、繊維束61に適度な緊張がかけられず、糸質の向上の点でマイナスとなる。また、多孔筒60の製作が難しく風綿が詰まり易いという問題もある。
【0008】
また、従来から図9に示すように、送出ローラ(ニップローラ)62のニップ点通過後に、所謂フリーストライアングル63が発生すると、毛羽が発生し易いことが知られている。しかし、その発生メカニズムについては説明がなされていなかった。本願発明者は、そのメカニズムを研究した結果、フリーストライアングル63が発生すると、集束された繊維束61の両端から遊離した構成繊維64が撚り込み時にコア繊維に完全に撚り込まれず、結果として毛羽あるいは落綿(材料利用率低下)となることがわかった。そして、前記従来装置ではいずれもニップ点を過ぎた領域では繊維束に吸引作用が及ばないため、フリーストライアングル63の発生が避けられず、糸質の向上が不充分となる。
【0009】
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的はニップ点通過後の繊維束に対しても吸引集束作用を及ぼすことができ、糸品質を向上させることができる繊維束集束装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、ドラフトパートでドラフトされた繊維束を集束する繊維束集束装置であって、前記ドラフトパートの最終送出ローラ対の下流側に設けられるとともにニップローラを備えた送出部と、該送出部のニップ点を挟んで繊維束の移動方向の上流側と下流側に延びる吸引用スリットを備えた摺動案内面を有する吸引部と、前記送出部を構成するとともに前記摺動案内面に接触する状態で回転される多孔エプロンとを備え、前記摺動案内面は前記多孔エプロンから送り出される繊維束がフリース角度をもって転向するように配置されている。
【0011】
この発明では、ドラフトパートでドラフトされた繊維束は、ドラフトパートの最終送出ローラ対の下流側に設けられた送出部のニップローラの回転に伴って送り出される。送出部のニップ点を挟んで繊維束の移動方向上流側及び下流側に配置された吸引用スリットから、多孔エプロンを介して繊維束に吸引作用が及ぶ。そして、繊維束が吸引用スリットと対応する位置に吸引集束された状態で移動する。従来装置では吸引用スリットがニップ点の上流側にのみ配置されているため、ニップ点に至るまでに一度集束された繊維束がニップ点を過ぎた後に拡がり、糸質の改善効果が不充分となる。しかし、この発明では繊維束がニップ点を過ぎた後も吸引作用を受けて集束された状態で移動するため、ニップローラの出口にフリーストライアングルが殆ど形成されない。その結果、毛羽の発生や落綿が抑制されて糸質の改善効果が大幅に向上する。ドラフトパートの最終送出ローラを通過した繊維束は、適度な緊張状態でニップ点まで移動し、ニップ点を過ぎた後、転向して撚り掛けを受けながら下流側へ移動する。ニップ点より下流側に設けられた吸引用スリットによる集束効果は、ニップ点より上流側にもある程度伝播し、ニップ点到達までの繊維束の拡がりを抑制する。
【0012】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記送出部はニップローラ対を備え、前記多孔エプロンは前記摺動案内面及び前記ニップローラ対の一方のニップローラの一部と接触する状態に巻き掛けられている。この発明では、ニップ点におけるニップローラの押圧が多孔エプロンを挟んで対向するニップローラに負荷されて多孔エプロンは回転するため、多孔エプロンとニップローラとの相対的な滑りは生じない。従って、多孔エプロンがニップローラに巻き掛けられずに静止状態の支持筒に巻き掛けられて、多孔エプロンを支持筒に押圧しながら回転するニップローラにより回転される構成に比較して、支持筒や多孔エプロンの摩耗が抑制される。
【0013】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記吸引用スリットは、前記ニップ点の上流側に位置する上流側の吸引用スリットの幅が下流側に位置する下流側の吸引用スリットの幅より広く、下流側の吸引用スリットはその幅が下流側ほど狭くなるように形成されている。
【0014】
この発明では、ニップ点より下流側において繊維束の拡がりを抑制する効果が高まり、糸質の向上効果が高くなる。
請求項4に記載の発明では、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記吸引用スリットは、前記多孔エプロンの移動方向に対して斜めに延びるように形成されている。この発明では、仮撚り効果により集束性が向上する。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記吸引部は前記ニップ点の上流側に位置する上流側の吸引用スリットが形成された部分と、下流側に位置する下流側の吸引用スリットが形成された部分とが分割された状態に形成されている。
【0016】
上流側の吸引用スリットが形成された部分と、下流側の吸引用スリットが形成された部分とが一体に形成されている場合は、吸引部と多孔エプロンとの間に風綿や塵埃が溜まり易くなるが、この発明では、風綿や塵埃は分割された吸引部の開放部分から放出される。従って、ごみが多孔エプロンの裏面と吸引部との間に溜まり難くなる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記吸引部は樹脂製で2錘単位に形成されている。この発明では、樹脂製のため、金属製の場合に比較して軽量となる。また、2錘一体型のため、交換作業が容易となる。
【0018】
請求項7に記載の発明では、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記吸引部はローラスタンド間を1単位として形成されている。この発明では、紡機1台に必要な吸引部の部品点数が少なくなる。また、ローラスタンドは一般に紡機の機台フレームを構成するスプリングピースの設置間隔で配置され、吸引用ダクト等もその間隔に対応した長さのものを連結して構成されるものが多い。従って、吸引部もその長さに対応した構成とすることにより、運搬時などの梱包等がし易くなる。
【0019】
請求項8に記載の発明では、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の発明において、前記多孔エプロンは織布により形成されている。この発明では、多孔エプロンを構成するベルトに小さな孔をわざわざ開ける手間をかけずとも、適度な通気性を確保できる織布を選択することにより、多孔エプロンを安価に製造できる。
【0020】
請求項9に記載の発明では、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の発明において、前記多孔エプロンは編み地により形成されている。この発明では、多孔エプロンを安価にできるとともに、編み地の伸縮性により、テンション装置を特に設けなくても多孔エプロンが適度な張力状態で回転される。
【0021】
請求項10に記載の発明では、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の発明において、前記吸引部は吸引力が調整可能に構成されている。この発明では、繊維種、紡出速度等の紡出条件が変更された場合も、吸引部の吸引力を紡出条件に対応した適正な吸引力に調整できる。
【0022】
請求項11に記載の発明では、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の発明において、前記吸引部は糸切れ時にドラフトパートから送出されるフリースを吸引する作用をなすニューマ装置と一部が共用されている。この発明では、吸引作用をなすニューマ装置と完全に独立して吸引部を設ける場合に比較して、両装置の設置スペースを小さくできるとともに、製造コストも低減できる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を2錘単位で精紡機に装備される装置に具体化した一実施の形態を図1〜図3に従って説明する。図1はドラフト装置の片側を示す模式側面図、図2(b)は要部拡大図である。
【0024】
図1に示すように、ドラフトパートとしてのドラフト装置1はフロントボトムローラ2、ミドルボトムローラ3及びバックボトムローラ4を備えた3線式の構成となっている。フロントボトムローラ2はローラスタンド5に対して所定位置に支持され、ミドル及びバックの各ボトムローラ3,4はローラスタンド5に対して前後方向に位置調整可能に固定された支持ブラケット3a,4aを介して支持されている。支持ブラケット3a,4aはローラスタンド5に形成された長孔を貫通するボルト及びナット(いずれも図示せず)により所定位置に締め付け固定されるようになっている。ボトムエプロン6はボトムテンサ7と、ミドルボトムローラ3とに巻き掛けられている。
【0025】
ウエイティングアーム8にはフロントトップローラ9、ミドルトップローラ10及びバックトップローラ11が、それぞれフロントボトムローラ2、ミドルボトムローラ3及びバックボトムローラ4と対応する位置にトップローラ支持部材を介してそれぞれ支持されている。各トップローラ9〜11は2錘1組として支支持されている。フロントボトムローラ2及びフロントトップローラ9がドラフト装置1の最終送出ローラ対を構成する。
【0026】
ウエイティングアーム8にはレバー8aが加圧位置と解放位置とに回動可能に配設されている。レバー8aが図1に示すウエイティングアーム8のフレーム8bと当接する加圧位置に配置された状態では、ウエイティングアーム8に支持された各トップローラ9〜11をボトムローラ2,3,4側に押圧する加圧位置(紡出位置)にロック状態で保持される。また、レバー8aが図1に示す状態から上方の解放位置に回動された状態では、前記ロック状態が解除されるようになっている。
【0027】
図1に示すように、ドラフト装置1の最終送出ローラ対の下流側に繊維束集束装置12が配設されている。繊維束集束装置12はニップローラ対13、吸引部14及び多孔エプロン15を備えている。ニップローラ対13はフロントボトムローラ2と平行に配設されたボトムニップローラ13aと、ボトムニップローラ13aに多孔エプロン15を介して押圧されるトップニップローラ13bとで構成されている。ボトムニップローラ13aは各ボトムローラ2〜4と同様に積極駆動可能に構成されている。例えば、機台のギヤエンドに設けられたモータによりギヤ列を介して駆動されるようになっており、ギヤの変更によりボトムニップローラ13aとフロントボトムローラ2の周速比が調整される。トップニップローラ13bは各トップローラ9〜11と同様に2錘毎に、支持部材16(図1にのみ図示)を介してウエイティングアーム8に支持されている。
【0028】
図1に示すように、精紡機機台にはその長手方向(図1の紙面と垂直方向)に延びるように吸引ダクト17が配設され、吸引部14は接続パイプ18を介して吸引ダクト17に連結されている。図1及び図2に示すように、吸引部14はボトムニップローラ13aのニップ点を挟んで繊維束(フリース)Fの移動方向の上流側に延びる吸引用スリット19aと、下流側に延びる吸引用スリット19bとを備えた摺動案内面19を有する部分20a,20bからなる筒部20を備えている。
【0029】
図2及び図3に示すように、吸引部14はボトムニップローラ13aの周方向のほぼ半分を覆う円弧状の支持筒部21を中心に、左右対称に筒部20が一対設けられるている。筒部20はボトムニップローラ13aのニップ点の上流側に位置する上流側の吸引用スリット19aが形成された部分20aと、下流側の吸引用スリット19bが形成された部分20bとに分割された状態に形成されている。即ち、吸引部14は前記ニップ点上流側の吸引用スリット19aが形成された部分20aと、下流側の吸引用スリット19bが形成された部分20bとが分割された状態に形成されている。なお、図2(a)及び図3では、多孔エプロン15を仮想線で示している。また、図3では、後記するニューマ装置の吸引ノズル22の図示を省略している。
【0030】
上流側の部分20aは、多孔エプロン15をフロントボトムローラ2とフロントトップローラ9とのニップ点の近傍に至るように案内可能な形状に形成されている。下流側の部分20bは、多孔エプロン15から送り出される繊維束Fがある程度のフリース角度をもって転向するように配置されている。なお、フリース角度とは繊維束(フリース)Fのニップ点を通過した後、繊維束Fを引き出し位置まで案内する円弧面の曲率中心とニップ点とを結ぶ線分と、前記曲率中心と繊維束Fの引き出し点とを結ぶ線分との成す角度を意味する。多孔エプロン15は一部が筒部20に、一部がボトムニップローラ13aに接触するように巻掛けられ、ボトムニップローラ13aの回転伴って摺動案内面19に沿って摺動しつつ回転されるようになっている。この実施の形態では多孔エプロン15は、適度な通気性を確保できる織布により形成されている。
【0031】
図2(a)に示すように、吸引用スリット19a,19bは、ニップ点の上流側に位置する吸引用スリット19aの幅が、下流側に位置する吸引用スリット19bの幅より広く形成されている。下流側の吸引用スリット19bはその幅が下流側ほど狭くなるように形成されている。
【0032】
吸引用スリット19a,19bのうち、上流側の吸引用スリット19aは多孔エプロン15の移動方向(図2(a)における上下方向)に対して斜めに延びるように形成され、下流側の吸引用スリット19bは多孔エプロン15の移動方向と同方向に延びるように形成されている。この実施の形態では各一対の吸引用スリット19a,19bはそれぞれ対称に形成されている。
【0033】
図1及び図2(a)に示すように、接続パイプ18の途中には、糸切れ時にドラフト装置1から送出される繊維束Fを吸引する作用をなすシングルタイプの吸引ノズル22が左右対称に分岐されている。即ち、この実施の形態では、吸引部14は糸切れ時にドラフトパートから送出される繊維束Fを吸引する作用をなすニューマ装置と、一部が共用されている。
【0034】
次に前記のように構成された装置の作用を説明する。
精紡機が運転されると、繊維束Fはドラフト装置1のボトムローラ2〜4と、トップローラ9〜11との間を通過することによりドラフトされた後、繊維束集束装置12へ案内される。ニップローラ対13は両フロントローラ2,9の表面速度より若干速く回転され、繊維束Fは適度な緊張状態でニップローラ対13のニップ点を過ぎた後、転向して撚り掛けを受けながら下流側へ移動する。
【0035】
また、ニップローラ運転時、吸引ダクト17の吸引作用が接続パイプ18を介して吸引部14に及び、摺動案内面19に形成された吸引用スリット19a,19bの吸引作用が多孔エプロン15を介して繊維束Fに及ぶ。そして、繊維束Fが吸引用スリット19a,19bと対応する位置に吸引集束された状態で移動する。
【0036】
従来装置のように吸引用スリットがニップ点の上流側にのみ配置されている構成では、ニップ点に至るまでに一度集束された繊維束がニップ点を過ぎた後に拡がり、ニップローラの出口にフリーストライアングルが形成される。しかし、この実施の形態ではニップローラ対13のニップ点を挟んで上流側及び下流側に吸引用スリット19a,19bが存在するため、繊維束Fはニップ点を過ぎた後も吸引作用を受けて集束された状態で移動する。そして、図3に示すようにニップローラ対13の出口にフリーストライアングルが殆ど形成されない。その結果、ニップ点通過後の繊維束Fの両端から繊維の遊離が抑制され、毛羽の発生や落綿が抑制されて糸質の改善効果が大幅に向上する。
【0037】
ニップ点より下流側に設けられた吸引用スリット19bによる集束効果は、ニップ点より上流側にもある程度伝播し、ニップ点到達までの繊維束Fの拡がりを抑制する。
【0038】
この実施の形態は以下の効果を有する。
(1) ドラフト装置1の下流側に、ニップローラを備えた送出部と、該送出部のニップ点を挟んで繊維束Fの移動方向の上流側と下流側に延びる吸引用スリット19a,19bを備えた摺動案内面19を有する吸引部14と、摺動案内面19と接触する状態で回転される多孔エプロン15とを備えた。従って、ドラフトされた繊維束Fが、ニップ点に至るまでに集束されるとともに、ニップ点を過ぎた後も吸引作用を受けて集束された状態で移動するため、ニップローラの出口にフリーストライアングルが殆ど形成されず、毛羽の発生や落綿が抑制されて糸質の改善効果が大幅に向上する。
【0039】
(2) 多孔エプロン15は摺動案内面19及びニップローラ13対の一方のニップローラ13aの一部と接触する状態に巻き掛けられ、ニップローラ対13の回転力が多孔エプロン15に直接伝達される。従って、多孔エプロン15がボトムニップローラ13aに巻き掛けられずに静止状態の支持筒(ガイド筒)に巻き掛けられて、多孔エプロン15を支持筒に押圧しながら回転するニップローラにより回転される構成に比較して、支持筒や多孔エプロン15の摩耗が抑制される。
【0040】
(3) トップニップローラ13bが多孔エプロン15を押圧する力がボトムニップローラ13aで担われ、吸引部14にトップニップローラ13bの押圧力が作用しない。従って、吸引部14は従来装置(特開平11−286837号公報)に比較して、剛性が必要とされず、樹脂製で2錘単位の製品としても充分な強度を確保できる。
【0041】
(4) トップニップローラ13b側を駆動側とした構成では、トップニップローラが一般にゴム製のため、その摩耗の進行により回転速度が一定でも周速が変化する。しかし、ニップローラ対13の駆動がボトムニップローラ13a側を駆動側とした構成のため、トップニップローラ13bの摩耗に拘らず周速が一定となり、安定した糸品質の確保が可能となる。
【0042】
(5) ニップ点より下流側に設けられた吸引用スリット19bによる集束効果が、ニップ点より上流側にもある程度伝播し、ニップ点到達までの繊維束Fの拡がりが抑制されて、集束効果がより向上する。
【0043】
(6) ニップローラ対13のニップ点より上流側の吸引用スリット19aの幅が下流側の吸引用スリット19bの幅より広く、下流側の吸引用スリット19bはその幅が下流側ほど狭くなるように形成されている。従って、両吸引用スリット19a,19bの幅が一定の場合に比較して、ニップ点より下流側において繊維束Fの拡がりを抑制する効果が高まり、糸質の向上効果が高くなる。
【0044】
(7) 吸引用スリット19a,19bのうち、上流側の吸引用スリット19aが多孔エプロン15の移動方向に対して斜めに延びるように形成されている。従って、繊維束Fがニップ点より上流側を移動する際に繊維束Fに仮撚りが掛かり、繊維束Fの集束性が向上する。
【0045】
(8) 吸引部14は上流側の吸引用スリット19aが形成された部分20aと、下流側の吸引用スリット19bが形成された部分20bとが分割された状態に形成されている。両部分20a,20bがボトムニップローラ13aの下側を覆う形状で互いに連通するように形成されていると、筒部20と多孔エプロン15との間に風綿や塵埃が溜まり易くなる。しかし、筒部20が部分20a,20bに分割されているため、多孔エプロン15の裏面と筒部20との間に入り込んだ風綿や塵埃は、分割された筒部20の開放部分から放出される。従って、風綿等が多孔エプロン15の裏面と筒部20との間に溜まり難くなる。また、両部分20a,20bの広い側の間隔がボトムニップローラ13aの直径より大きいため、吸引部14の組付けも容易になる。
【0046】
(9) 吸引部14は樹脂製のため、金属製の場合に比較して軽量となる。
(10) 吸引部14は筒部20が多孔エプロン15との摩擦により摩耗した際に交換する必要があるが、2錘一体型のため、交換作業が容易となる。
【0047】
(11) 多孔エプロン15は織布により形成されている。従って、多孔エプロン15を構成するベルトに小さな孔をわざわざ開ける手間をかけずとも、適度な通気性を確保できる織布を選択することにより、多孔エプロン15を安価に製造できる。
【0048】
(12) 吸引部14は糸切れ時にドラフトパートから送出されるフリースを吸引する作用をなすニューマ装置と一部が共用されている。従って、吸引作用をなすニューマ装置と完全に独立して吸引部14を設ける場合に比較して、両装置の設置スペースを小さくできるとともに、製造コストも低減できる。
【0049】
実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
○ 吸引用スリット19a,19bの延びる方向は、上流側の吸引用スリット19aが多孔エプロン15の移動方向に対して斜めに延び、下流側の吸引用スリット19bが多孔エプロン15の移動方向に延びる構成に限らない。図4(a)に示すように、両吸引用スリット19a,19bとも多孔エプロン15の移動方向と同方向としてもよい。また、図4(b)に示すように、両吸引用スリット19a,19bとも多孔エプロン15の移動方向に対して斜めとしてもよい。上流側の吸引用スリット19aが斜めに延びるように形成されていれば仮撚り効果は期待できる。
【0050】
○ 吸引用スリット19a,19bの幅を一定としてもよい。
○ 吸引部14の筒部20を分割せずに、図5に示すように、筒部20をトップニップローラ13bと対向する側が開放された円弧状に形成してもよい。
【0051】
○ 吸引部14の筒部20を分割した場合でも、分割された部分20a,20bと連通する支持筒部21を、ボトムニップローラ13aの周方向の下側のほぼ半分を覆う円弧状に形成してもよい。
【0052】
○ 吸引部14をローラスタンド5間を1単位として形成してもよい。例えば図6(a),(b)に示すように、8錘分の吸引用スリット19a,19b(2錘分は図示省略)を備えた吸引部14を設けてもよい。吸引部14は前記実施の形態の筒部20を構成する部分20a,20bを支持筒部21の両側に長く延出し、各部分20a,20bにそれぞれ4錘分の吸引用スリット19a,19bを形成した構成となっている。この場合、紡機1台に必要な吸引部14の部品点数が少なくなり、吸引ダクト17と吸引部14とを連結する接続パイプ18の本数を減らすことができるため、組み付けの手間が少なくなる。また、ローラスタンド5は一般に紡機の機台フレームを構成するスプリングピースの設置間隔で配置され、吸引ダクト17等もその間隔に対応した長さのものを連結して構成されるものが多い。従って、吸引部14もその長さに対応した構成とすることにより、運搬時などの梱包等がし易くなる。
【0053】
○ 吸引部14は2錘を1単位としたり、ローラスタンド5間を1単位として形成する構成に限らず、1錘毎に設けたり、ローラスタンド5間の長さに関係なく、3錘以上の錘に対応する構成としてもよい。
【0054】
○ 吸引部14に多孔エプロン15の横ずれを防止するための規制ガイドや、多孔エプロン15に適度な張力を与えるテンション装置を設けてもよい。
○ 多孔エプロン15を織布で形成する代わりに、編み地により形成してもよい。この場合も織布と同様に多孔エプロン15を構成するベルトに小さな孔をわざわざ開ける手間をかけずとも適度な通気性が得られ、多孔エプロン15を安価に製造できる。さらに、編み地の伸縮性により、テンション装置を特に設けなくても多孔エプロン15が適度な張力状態で回転される。
【0055】
○ 多孔エプロン15を織布や編み地で形成する代わりに、ゴム製や弾性を有する樹脂製のベルトに孔を開けて形成してもよい。
○ 吸引ノズル22を接続パイプ18から分岐させる構成に代えて、吸引ノズル22を専用の接続パイプを介して吸引ダクト17に接続する構成としてもよい。
【0056】
○ 吸引部14の負圧源とニューマ装置の負圧源とを独立に設けてもよい。
○ 吸引部14の吸引力を調整可能な構成としてもよい。例えば、負圧源としての吸引ダクト17に連通する管路としての接続パイプ18に調整弁(図1に鎖線で図示)23を設け、調整弁23の開度を調整することにより吸引力を調整可能にする。この場合、繊維種、紡出速度等の紡出条件が変更された場合も、吸引用スリット19a,19bの吸引力を紡出条件に対応した適正な吸引力に調整できる。なお、接続パイプ18を吸引ノズル22と共用する構成の場合は、吸引ノズル22の接続パイプ18からの分岐部より吸引部14側に調整弁を設ける方が、調整が容易になる。
【0057】
○ ボトムニップローラ13aはドラフト装置1の各ボトムローラ2〜4と同様に機台のギヤエンドに設けられたモータによりギヤ列を介して駆動される構成に限らない。例えば、ボトムニップローラ13aを全錘共通のシャフトとする代わりに、複数錘毎に分割するとともに、フロントボトムローラ2からそれぞれギヤあるいはベルト伝動装置を介して回転を伝達する構成としてもよい。
【0058】
○ 繊維束集束装置12の送出部は、ニップローラ対13を装備する構成に限らず、特開平11−286837号公報に開示された装置のように、ボトムニップローラ13aを設けずに多孔エプロン15をガイド筒の周面に沿って摺動可能に設けてもよい。そして、トップニップローラ13bが多孔エプロン15に圧接された状態で回転されることにより多孔エプロン15が回転される構成とし、ガイド筒のトップニップローラ13bによるニップ点を挟んで繊維束Fの移動方向の上流側と下流側に吸引用スリット19a,19bを設ける。この場合も繊維束Fのニップ点を挟んで上流側及び下流側に吸引用スリット19a,19bが存在するため、繊維束Fはニップ点を過ぎた後も吸引作用を受けて集束された状態で移動するため、前記実施の形態と同様に従来装置に比較して糸質の改善効果が大幅に向上する。
【0059】
○ 多孔エプロン15をトップ側に設ける構成としてもよい。
○ 精紡機のドラフト装置に限らず、他の紡機のドラフト装置に適用してもよい。
【0060】
前記実施の形態から把握される発明(技術的思想)について、以下に記載する。
(1) 請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の発明において、前記送出部の駆動はボトムニップローラ側を駆動側とした構成である。
【0061】
(2) 請求項1〜請求項11及び(1)のいずれか一項に記載の繊維束集束装置を備えたリング精紡機。
【0062】
【発明の効果】
以上詳述したように請求項1〜請求項11に記載の発明によれば、ニップ点通過後の繊維束に対しても吸引集束作用を及ぼすことができ、糸品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施の形態の側断面図。
【図2】(a)は繊維束集束装置の吸引部とボトムニップローラとの関係を示す模式図、(b)は要部模式側断面図。
【図3】繊維束集束装置の部分模式正面図。
【図4】別の実施の形態の図2(a)に対応する模式図。
【図5】別の実施の形態の要部模式側断面図。
【図6】(a)は別の実施の形態の図2(a)に対応する一部省略模式図、(b)は同じく図3に対応する一部省略模式図。
【図7】従来装置の側断面図。
【図8】別の従来装置の側断面図。
【図9】フリーストライアングルを示す模式図。
【符号の説明】
1…ドラフトパートとしてのドラフト装置、2…ドラフトパートの最終送出ローラとしてのフロントボトムローラ、5…ローラスタンド、9…同じくフロントトップローラ、12…繊維束集束装置、13…送出部を構成するニップローラ対、13a…同じくニップボトムローラ、13b…同じくニップトップローラ、14…吸引部、15…送出部を構成する多孔エプロン、19…摺動案内面、19a,19b…吸引用スリット、20…筒部、20a,20b…部分、22…ニューマ装置を構成する吸引ノズル、F…繊維束。
Claims (11)
- ドラフトパートでドラフトされた繊維束を集束する繊維束集束装置であって、前記ドラフトパートの最終送出ローラ対の下流側に設けられるとともにニップローラを備えた送出部と、該送出部のニップ点を挟んで繊維束の移動方向の上流側と下流側に延びる吸引用スリットを備えた摺動案内面を有する吸引部と、前記送出部を構成するとともに前記摺動案内面に接触する状態で回転される多孔エプロンとを備え、前記摺動案内面は前記多孔エプロンから送り出される繊維束がフリース角度をもって転向するように配置されている繊維束集束装置。
- 前記送出部はニップローラ対を備え、前記多孔エプロンは前記摺動案内面及び前記ニップローラ対の一方のニップローラの一部と接触する状態に巻き掛けられている請求項1に記載の繊維束集束装置。
- 前記吸引用スリットは、前記ニップ点の上流側に位置する上流側の吸引用スリットの幅が下流側に位置する下流側の吸引用スリットの幅より広く、下流側の吸引用スリットはその幅が下流側ほど狭くなるように形成されている請求項1又は請求項2に記載の繊維束集束装置。
- 前記吸引用スリットは、前記多孔エプロンの移動方向に対して斜めに延びるように形成されている請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の繊維束集束装置。
- 前記吸引部は前記ニップ点の上流側に位置する上流側の吸引用スリットが形成された部分と、下流側に位置する下流側の吸引用スリットが形成された部分とが分割された状態に形成されている請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の繊維束集束装置。
- 前記吸引部は樹脂製で2錘単位に形成されている請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の繊維束集束装置。
- 前記吸引部はローラスタンド間を1単位として形成されている請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の繊維束集束装置。
- 前記多孔エプロンは織布により形成されている請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の繊維束集束装置。
- 前記多孔エプロンは編み地により形成されている請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の繊維束集束装置。
- 前記吸引部は吸引力が調整可能に構成されている請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の繊維束集束装置。
- 前記吸引部は糸切れ時にドラフトパートから送出されるフリースを吸引する作用をなすニューマ装置と一部が共用されている請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の繊維束集束装置。
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