JP2005023246A - 高圧ホース - Google Patents
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Abstract
【課題】冷媒等の流体の透過(損失)が格段に低減され、十分な加硫によって可撓性及び作業性に優れ、且つ容易に製造することができる、冷媒輸送等に好適な高圧ホースを提供すること。
【解決手段】下記の式(1)
R1R2R3R4−N+・X− (1)
(但し、R1、R2、R3およびR4が炭化水素基であり、このうち3個以上が炭素原子数1〜5であり、X−が陰イオンである)で表されるアルキル化アンモニウム塩で処理された層状鉱物フィラーおよびゴムを含むゴム組成物から形成されている管状ゴム層を含むことを特徴とする高圧ホース。
【選択図】 図1
【解決手段】下記の式(1)
R1R2R3R4−N+・X− (1)
(但し、R1、R2、R3およびR4が炭化水素基であり、このうち3個以上が炭素原子数1〜5であり、X−が陰イオンである)で表されるアルキル化アンモニウム塩で処理された層状鉱物フィラーおよびゴムを含むゴム組成物から形成されている管状ゴム層を含むことを特徴とする高圧ホース。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車用クーラー等に有利に使用することができる冷媒輸送用高圧ホース等の高圧ホースに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用クーラーの配管等に使用される冷媒輸送用高圧ホースは、一般の高圧ホースと同様に管状の複数層から構成される。即ち、管状の内側ゴム層と、その上を覆う管状の繊維が、例えば螺旋状に巻かれた補強層、さらにその上を覆う管状の外側ゴム層の基本構成を有する。補強層は、求められる強度に応じて、複数層設けられ、その際補強層の間には一般に中間層が設けられる。そして、冷媒輸送用では、フロン等の冷媒の漏洩を防止するために、上記内側ゴム層の内側に更にポリアミド(ナイロン)からなるガスバリヤ層が設けられている(特開平7−171930号公報参照)。
【0003】
一方、特開平11−159667号公報には、ナイロンからなるバリヤ層の代わりに有機化クレーと無水カルボキシル基を有する変性ブチルゴムとから成る内側ゴム層を含む冷媒輸送用ホース、更に内側ゴム層の内側にさらに有機化クレーとナイロンからなるガスバリヤ層を有する冷媒輸送用ホースが開示されている。これらのホースは振動吸収性、流体遮断性に優れたものであることが記載されている。この公報では、クレーのほかに使用できるフィラーとしてマイカも記載されているが具体的な配合、効果は示されていない。
【0004】
更に、特開2000−160024号公報には、クレー等の層状粘土鉱物とナイロン等の熱可塑性樹脂とのナノ複合体に、動的に架橋されたゴム層が分散した組成物の高圧ホースへの使用が開示されている。しかしながら、ナノ複合体自体がナイロンからなるものであるため、それ自体硬く、また層状粘土鉱物の分散性も充分でない。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−171930号公報
【特許文献2】
特開平11−159667号公報
【特許文献3】
特開2000−160024号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等の検討によれば、特開平7−171930号公報で使用し、また特開平11−159667号公報でも使用されているナイロンのガスバリヤ層を有する場合、ホース自体がこの層の存在のために硬くなり、ホース本来に求められるしなやかさが低下し、ホース取り付け時の操作の自由度が小さく取り付けし難いこと、またこの層を接着するための接着工程が増えること、さらにカークーラーの冷媒として使用されるポリアルキレングリコール類により劣化しやすく耐久性が充分でないこと等の問題があることが判明した。一方、上記ガスバリヤ層を設けない場合、特開平11−159667号公報の有機化クレーと無水カルボキシル基を有する変性ブチルゴムを用いて、通常の混練機(バンバリーミキサー等)でゴム組成物を得ようとすると、クレー等の層状粘土物を超微分散状態にすることが困難であることが検討により判明した。また、特開2000−160024号公報では、ナノ複合体自体がナイロンからなるものであるため、それ自体硬く、また層状粘土鉱物の分散性も充分でないことから、上記冷媒等の流体遮断性、可撓性が満足できるものではないことが明らかとなった。また、高圧ホースを作製するために、このナノ複合体の層とゴム組成物の層を複合化する際には接着剤が必要となり、製造が煩雑になるとの問題もある。
【0007】
本発明者等は、層状鉱物フィラーを用いたゴム組成物を用いて高いガスバリヤ性(低い気体透過率)を有する高圧ホースを得るために鋭意研究を重ねてきた。既に、本出願人は、層状鉱物フィラーを層間剥離させて、1枚1枚の層をゴム中に分散させる、ナノ分散技術を開発し、種々出願を行っている。即ち、層状鉱物フィラーをナノ分散させることにより、少量のフィラーを用いて優れたガスバリヤ性を有し、冷媒等の流体の透過(損失)が格段に低減された高圧ホースを開発した。
【0008】
例えば、本出願人の出願である特願2002−169964号明細書において、ジメチルアルキルアンモニウム塩で処理したマイカを用いた優れたガスバリヤ性を有する冷媒輸送用高圧ホースを記載している。即ち、前記特開平11−159667号公報に記載のアンモニウムイオンを用いた場合は、マイカをナノ分散させることが困難であったが、上記特定の化合物を用いることによりナノ分散を可能として優れた高圧ホースを開発したものである。
【0009】
尚、ナノ分散によるガスバリヤ性の向上の機構は、層状剥離した扁平フィラーがゴム中に相互に平行関係で高度に配向し、その結果、組成物中に無数の壁が形成され、この組成物を透過するガス分子が、その壁を迂回しながら拡散するため、見かけ上透過すべき組成物の厚さが増加した状態になるためとされている。このため、層状剥離した扁平フィラーの配向が不充分であったり、押出、複合化、架橋等の加工工程において、その配向が不均一となったり、破損した場合充分なガスバリヤ性が得られないと考えられる。
【0010】
層状鉱物フィラーを用いて高いガスバリヤ性を有し、冷媒等の流体の透過(損失)が格段に低減された高圧ホースを得るために、本発明者等がさらに検討したところ、前記特定のジメチルアルキルアンモニウム塩で処理したマイカを用いたゴム組成物を使用した場合であってもなお、ガスバリヤ性をさらに向上させようとした場合に、アルキル化アンモニウム塩を用いて処理された影響として、ガスバリア性が高くなる一方で、ゴム組成物は加硫不十分となり、圧縮永久歪みも悪くなる傾向にあり、このために高圧ホースに望まれる機械特性が失われる場合があることが明らかになった。
【0011】
本発明は、冷媒等の流体の透過(損失)が格段に低減され、且つ十分な加硫によって可撓性及び作業性に優れた、冷媒輸送等に好適な高圧ホースを提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、冷媒等の流体の透過(損失)が格段に低減され、十分な加硫によって可撓性及び作業性に優れ、且つ容易に製造することができる、冷媒輸送等に好適な高圧ホースを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の式(1)
R1R2R3R4−N+・X− (1)
(但し、R1、R2、R3およびR4が炭化水素基であり、このうち3個以上が炭素原子数1〜5であり、X−が陰イオンである)
で表されるアルキル化アンモニウム塩で処理された層状鉱物フィラーおよびゴムを含むゴム組成物から形成されている管状ゴム層を含むことを特徴とする高圧ホース;及び
管状の内側ゴム層、その上を覆う管状の繊維の補強層、及びその上を覆う管状の外側ゴム層を含む高圧ホースにおいて、
少なくとも内側ゴム層が、下記の式(1)
R1R2R3R4−N+・X− (1)
(但し、R1、R2、R3およびR4が炭化水素基であり、このうち3個以上が炭素原子数1〜5であり、X−が陰イオンである)
で表されるアルキル化アンモニウム塩で処理された層状鉱物フィラーおよびゴムを含むゴム組成物から形成されていることを特徴とする高圧ホースにある。
【0014】
高圧ホースは、上記内側ゴム層とその上を覆う補強層、及びさらにその上を覆う外側ゴム層からなる3層構造を基本として、外側ゴム層と補強層の間に、さらにゴム層と補強層からなる組を1組以上加えた多層構造とすることができ、1組を加えることが好ましい。また内側にゴム層を設けても好適である。
【0015】
層状鉱物フィラーは、ゴム中に分散されていることが好ましい。また、一般に層状鉱物フィラーは、その平面が相互に平行に配列していることが好ましく、層状鉱物フィラーの長軸方向が、それを含む管状ゴム層の表面に対して平行に存在している状態が特に好ましい。また、層状鉱物フィラーの層間にアルキル化アンモニウム塩が存在していることが好ましい。
【0016】
上記アルキル化アンモニウム塩は、式(1)におけるR1、R2、R3およびR4のそれぞれが炭素原子数5以下であるものが好ましく、特に、式(1)におけるR1、R2、R3およびR4の炭素原子数が2〜4であるものが加硫の点で好ましい。式(1)におけるR1、R2、R3およびR4の炭素原子数が同一であるものがさらに好ましい。
【0017】
式(1)におけるX−が、ハロゲン化物イオン(特に、Cl−、Br−)であることが好ましい。
【0018】
上記層状鉱物フィラーとしては、例えばマイカ、タルク及びクレーから選択される少なくとも1種であり、これらの2種以上の混合物でもよい。
【0019】
また層状鉱物フィラーが、ゴムに対して0.1〜200質量%、特に0.5〜150質量%が好ましく、さらに1〜130質量%が好ましい。
【0020】
ゴムは、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴム、天然ゴムから選択される少なくとも1種が好ましく、これらの2種以上の混合物でもよい。ハロゲン化ブチルゴムが好ましく、特にイソブチレンを主成分とする共重合体のハロゲン化物からなるハロゲン化ブチルゴムが好ましく、臭素化(イソブチレン−4−メチルスチレン共重合体)及び臭素化(イソブチレン−イソプレン共重合体)が特に好ましい。
【0021】
さらに本発明は、上記組成物を架橋(加硫)して得られるゴム組成物を使用した高圧ホースにもあり、前記したゴム組成物のいずれかを架橋(加硫)して得られる架橋(加硫)ゴム組成物が使用されていることが好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の高圧ホースに使用されるゴム組成物は、ゴム中に層状鉱物フィラーがアルキル化アンモニウム塩により高度に分散された基本構成を有する。本発明では、特定のアルキル化アンモニウム塩を用いることにより、極めて高いガスバリア性を示すとともに、圧縮永久歪みの悪化もほとんどみられず、ゴムとして期待される可撓性を有している。これは、上記アルキル化アンモニウム塩を含むゴム組成物ではフィラーが高度に分散されていることに加えて、加硫の阻害がほとんど生じないためと考えられる。
【0023】
このゴム組成物を使用した本発明の高圧ホースは、加硫が十分になされたゴム組成物を使用することにより、圧縮歪みや可撓性等の機械特性に優れ、且つガスバリヤ性が高度に優れたものである。特にフロン、フレオン、ユーコン、ゲネトロン等のフッ化炭素等の冷媒に対して優れた遮断性を示すことに加えて、水素、窒素、空気等の一般的な気体や水等の流体に対しても優れた遮断性を示すため、これらの輸送用高圧ホースとしても適している。
【0024】
本発明の代表的な冷媒輸送用高圧ホースの構造の1例を図1に示す。管状の内側ゴム層11、その表面を覆う管状の繊維の補強層12a、その表面を覆う管状の中間ゴム層13、その表面を覆う管状の補強層12b、そしてその表面を覆う管状の外側ゴム層14から構成されている。内側ゴム層11は、ゴム及びアルキル化アンモニウム塩で処理された層状鉱物フィラーを含むゴム組成物から形成されている。中間ゴム層13は、前記ゴム組成物から形成されるものでも良いが、一般にアルキル化アンモニウム塩で処理された層状鉱物フィラーを含まないブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴム組成物を含むものである。
【0025】
図2に、上記図1の高圧ホースの内側ゴム層11の内側に、さらに管状の内管ゴム層15が設けられた、別の代表的な冷媒輸送用高圧ホースの構造の1例を示す。即ち、管状の内管ゴム層15、その表面を覆う管状の内側ゴム層11、その表面を覆う管状の繊維の補強層12a、その表面を覆う管状の中間ゴム層13、その表面を覆う管状の補強層12b、そしてその表面を覆う管状の外側ゴム層14から構成されている。内管ゴム層15は、前記ゴム組成物から形成されるものでも良いが、一般にアルキル化アンモニウム塩で処理された層状鉱物フィラーを含まないブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴム組成物を含むものである。
【0026】
図3に、ナイロン等のポリアミドを内層に適用した従来の冷媒輸送用高圧ホースを示す。管状のナイロンガスバリヤ層16、その表面を覆う管状の内管ゴム層15、その表面を覆う管状の繊維の補強層12a、その表面を覆う管状の中間ゴム層13、その表面を覆う管状の補強層12b、そしてその表面を覆う管状の外側ゴム層14から構成されている。これは従来の冷媒輸送用高圧ホースであるが、先に述べたようにホースとして硬く、可撓性が充分でなく、さらにはナイロンとゴムの接着処理、カシメ金具との接着処理等も必要とするものであった。
【0027】
本発明では、形状が鱗片状である有機化マイカが特定の臭素化ゴム中に超微細に分散した、冷媒等の気体遮蔽性に優れたゴム組成物を内側ゴム層に用いているため、従来必要とされたナイロンのガスバリヤ層を設けなくても良いことから、可撓性に優れ、カシメ金具との接着処理等も必要としない高圧ホースを得ることができたものである。
【0028】
管状の繊維の補強層12a,12bは、一般に有機繊維の編組構造体である。有機繊維としてはビニロン、ポリエステル、ポリアミド、芳香族ポリアミド等を挙げることができる。これらの繊維をスパイラル状又はブレード状に編みあげたものが好ましい。これらの繊維は、一般に56〜778tex(500〜7000d)、特に222〜556tex(2000〜5000d)を有することが好ましい。
【0029】
本発明の高圧ホースに使用されるゴム組成物は、一般に、層状鉱物フィラー、アルキル化アンモニウム塩及びゴム等を、或いはアルキル化アンモニウム塩で処理された層状鉱物フィラー及びゴム等を、バンバリー等のインターナルミキサー等の通常の混練機を用いて混合することによって得られるものであり、さらにこれに架橋剤(加硫剤)を加えると、架橋(加硫)ゴム組成物が得られる。
【0030】
本発明の高圧ホースに使用されるゴム組成物の特徴は、前記のようにゴム中に層状鉱物フィラーを高度に分散させるために、下記の式(1)
R1R2R3R4−N+・X− 式(1)
(但し、R1、R2、R3およびR4が炭化水素基であり、このうち3個以上が炭素原子数1〜5であり、X−が陰イオンである)
で表される特定のアルキル化アンモニウム塩を使用することにある。上記アルキル化アンモニウム塩は、式(1)におけるR1、R2、R3およびR4のそれぞれが炭素原子数5以下であるものが好ましく、特に、式(1)におけるR1、R2、R3およびR4の炭素原子数が2〜4であるものが加硫の点で好ましい。式(1)におけるR1、R2、R3およびR4の炭素原子数が同一であるものがさらに好ましい。
【0031】
アルキル化アンモニウム塩は、アルキル化アンモニウム塩ハロゲン化物(特にクロリド、ブロミド)であることが好ましい。
【0032】
本発明の高圧ホースに使用されるゴム組成物は、炭素原子数5以下のアルキル鎖を含むアルキル化アンモニウム塩が用いられているために、炭素原子数6以上のアルキル鎖を含むアルキル化アンモニウム塩を用いた場合と比べて、加硫への悪影響は極めて少なく、十分な加硫が可能であるために、加硫後のゴム組成物は、高いガスバリア性を有しつつ、圧縮永久歪みの悪化が極めて少ない等の優れた機械特性を有している。即ち本発明の高圧ホースに使用されるゴム組成物とは、架橋(加硫)用ゴム組成物及び架橋(加硫)されたゴム組成物も含むものである。
【0033】
本発明で使用される層状鉱物フィラーとしては、クレー、マイカ、タルク等を挙げることができ、なかでも形状が扁平状であるクレー、マイカ、タルクが好ましい。層状鉱物フィラーの平均粒径20μm以下、好ましくは0.1〜15μm、特に0.1〜8μmの範囲が好ましい。
【0034】
クレーとは、一般に、1種あるいは2種以上の粘土鉱物からなる平均粒径20μm以下、さらに0.1〜15μm、特に0.1〜8μmの範囲の微細な粒子である。粘土鉱物とは微細な層状ケイ酸塩であり、Si4+イオンが酸化物イオン(O2−)に対して4配位をとる4面体が構成する層と、Al3+、Fe2+、Fe3+、Mg2+などのイオンがO2−および水酸化物イオン(OH−)に対して6配位をとる8面体層とが1:1あるいは2:1で結合し、さらにそれらが積み重なって層状構造を構成するものが、一般的である。粘土鉱物としては、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト、ゼオライト、バーミキュライトなどを挙げることができる。
【0035】
マイカ(雲母)は、完全な基底劈開により特徴付けられる斜晶系層状珪酸塩であり、複雑なアルミノケイ酸カリウムであり、その一般化学組成式はXY2〜3Zn4O10(OH、F)2[但し、XがBa、Ca、(H3O)、K、Na、(NH4)を表し、YがAl、Cr3+、Fe2+、Fe3+、Li、Mg、Mn2+、V3+を表し、ZがAl、Be、Fe、Siを表す]で表される。マイカの平均粒径は20μm以下、さらに0.1〜15μm、特に0.1〜8μmの範囲が好ましい。
【0036】
タルクは、ケイ酸マグネシウムで、一般にMg2Si4O10(OH)2で表される。
【0037】
上記層状鉱物フィラーの添加量は、ゴムに対して0.1〜200質量%、特に0.5〜150質量%、さらに1〜130質量%が好ましい。
【0038】
上記層状粘土鉱物に加えて他の無機フィラーを使用しても良い、その例としては、カオリン、炭酸カルシウム、シリカ等を挙げることができる。
【0039】
本発明で使用されるゴム(ゴム又はゴムラテックス)の例として、例えば天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、フッ素ゴムラテックス、シリコーンゴムラテックス、ウレタンゴムラテックスが挙げられる。アクリロニトリル・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルのブレンド、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムが好ましい。これらは、単独でも、混合物としても使用することができる。特に、ハロゲン化ブチルゴムが好ましい。
【0040】
上記ハロゲン化ブチルゴムは、イソブチレンを主体とする他のモノマーとの共重合体で、ハロゲン化されたものである。他のモノマーとしては、一般に炭素炭素2重結合を1個又は2個有する炭化水素である。炭素炭素2重結合を1個有する炭化水素としては、エチレン、プロペン、ブテン、ヘキセン、スチレン、アルキルスチレン(例、4−メチルスチレン)等を挙げることができ、炭素炭素2重結合を2個有する炭化水素としては、イソプレン、ブタジエン等を挙げることができる。共重合体のイソプレンの割合は、80〜99モル%が好ましく、特に90〜99モル%が好ましい。ハロゲン化は一般に他のモノマー単位に対してなされる。ハロゲン化を行う際のハロゲンとしては塩素、臭素が好ましい。例えば、イソブチレン・イソプレン共重合体を塩素化した場合、イソブチレン・クロロイソプレン共重合体となる。ハロゲン化ゴム中のハロゲン含有量は、0.5〜1.5モル%が好ましく、特に0.75〜1.2モル%が好ましい。
【0041】
本発明で使用することができる好ましい塩素化ゴムとしては、塩素化(イソブチレン・イソプレン共重合体)(いわゆる塩素化ブチルゴム)又は塩素化(イソブチレン−4−メチルスチレン共重合体)を挙げることができ、特に塩素化(イソブチレン・イソプレン共重合体)が好ましい。
【0042】
本発明で使用することができる好ましい臭化ゴムとしては、臭素化(イソブチレン−イソプレン共重合体)(いわゆる臭素化ブチルゴム)又は臭素化(イソブチレン−4−メチルスチレン共重合体)を挙げることができ、特に臭素化(イソブチレン−4−メチルスチレン共重合体)が好ましい。
【0043】
本発明のゴム組成物において、上記ゴムと通常の熱可塑性樹脂等のポリマーとを併用してもよい。
【0044】
架橋(加硫)を行なうための加硫剤としては、一般に種々の市販の化合物(例、硫黄、有機過酸化物)を使用することができる。
【0045】
硫黄系加硫剤としては、粉末硫黄、高分散性硫黄、不溶性硫黄等の、一般にゴム用加硫剤として用いられている硫黄、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム類、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン塩、ピペコリルジチオカルバミン酸ピペコリン塩、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオカルバミン酸塩類、ブチルキサントゲン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム等のキサントゲン酸塩類、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド類、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール類等を挙げることができる。
【0046】
また加硫促進剤として、TMTD(テトラメチルジスルフィド)等のチウラム系、EZ(ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛)等のジチオカルバミン酸塩類を使用することができる。
【0047】
加硫剤の使用量は、ゴムに対して0.5〜4.0質量%、特に1.0〜2.5質量%が好ましい。
【0048】
有機過酸化物として、例えば、過酸化水素水、クメンヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレラート、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゼン、ビニルトリス(t−ブチルペルオキシ)シランなどを使用することができる。ジクミルペルオキシドが好ましい。使用量は、ゴムに対して、0.2〜8.0質量%、特に0.25〜4.0質量%、さらに0.3〜2.0質量%が好ましい。
【0049】
また、臭化ゴムの架橋(加硫)を行なうための加硫剤としては、一般に酸化亜鉛が使用され、必要により(例えば、他のゴム材料の使用の際)種々の市販の化合物(例、硫黄、有機過酸化物)を使用することができる。またステアリン酸等の高級脂肪酸との併用が好ましい。
【0050】
また加硫促進剤として、TMTD(テトラメチルジスルフィド)等のチウラム系、EZ(ジエチルジチオカルバミン産亜鉛)等のジチオカルバミン酸塩類を使用することができる。
【0051】
さらに、これらと組み合わせて、有機過酸化物、キノンジオキシム、多官能性アクリルモノマー{例、トリメチロールエタントリアクリレート(TMETA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ジペンタエリスリトールエーテルヘキサアクリレート(DPEHA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(DPEHA)、ジメチロールプロパンジアクリレート(TMPTA)、ステアリルアクリレート(SA)}、トリアジンチオールを用いることができる。
【0052】
加硫剤の使用量は、ゴムに対して0.1〜4.0質量%、特に0.1〜2.5質量%が好ましい。
【0053】
有機過酸化物の使用量は、ゴムに対して、0.1〜1.0質量%、特に0.1〜0.8質量%、さらに0.3〜0.5質量%が好ましい。
【0054】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含んでいてもよい。例えば、カーボンブラック標準品種であるSAF,ISAF,HAF、FEF、GPF、SRF(以上ゴム用ファーネス),MTカーボンブラック(熱分解カーボン)を挙げることができる。ゴムに対して一般に0.1〜80質量%、好ましくは0.1〜70質量%の量で使用される。
【0055】
さらに本発明の高圧ホースに使用するゴム組成物は、可塑剤を含んでもよい。また、汎用のゴム工業の配合で使用する、老化防止剤、加工助剤としてのオイル、樹脂、防着剤、シランカップリング剤などを併用することもできる。
【0056】
次に本発明の高圧ホースに使用するゴム組成物の製造方法を、例を挙げて説明する。
【0057】
先ず、アルキル化アンモニウム塩で処理された層状鉱物フィラー及びゴムを含むゴム組成物は以下のように作製される。
【0058】
本発明で使用されるアルキル化アンモニウム塩で処理されたマイカ等の層状鉱物フィラーは、特開平9−87432号公報に記載の実施例の方法を参考にして製造することができる。本発明のゴム組成物は、これをゴム等と混合するか、或いは層状鉱物フィラーを予めアルキル化アンモニウム塩と混合し、これをゴム等と混合し、その後の処理を行うことにより得られる。
【0059】
この処理又は混合された層状鉱物フィラーと、原料ゴム等とを汎用の混練機、例えばブラベンダー型ミキサーに投入する。或いは未処理の層状鉱物フィラーとアルキル化アンモニウム塩及び原料ゴム等とを投入することもできる。混練機の温度は、処理又は混合された層状鉱物フィラーがゴムに微分散可能な温度に設定することが好ましく、一般に50〜160℃、好ましくは50〜120℃である。混練の時間も、層状鉱物フィラーがゴムに微分散可能な時間であればよく、一般に1〜15分間である。このような条件で混練し、ゴム組成物を得る。このゴム組成物を、適当な加硫剤および/又は加硫促進剤をロールを用いて添加し、適当な条件下で加硫して加硫ゴム組成物を得るか、或いは加硫する必要がなければそのまま射出成形などの方法で成形する。
【0060】
これまで説明したゴム組成物を成形して、本発明の高圧ホースとすることができる。
【0061】
本発明の冷媒輸送用高圧ホースは、公知の方法で製造することができる。例えば、以下のように行うことができる。
【0062】
内管(内側ゴム層)押出機の先端に設けた高剛性のマンドレル上に、内側ゴム層を成形する。次いで、この内側ゴム層上に、スパイラル編み上げ機により、例えば4000d(デニール)のPET糸を20本スパイラルし、中間ゴム層を挿入後、更に同数のPET糸を逆方向にスパイラルし、補強層の形成を完了する。その表面に、押出機によりその表面に外側ゴム層を形成し、その後、適当な条件にて加硫し、マンドレルを抜き出し、高圧ホースを得る。
【0063】
本発明において中間層は、前記ゴム組成物から形成されるものでも良いが、一般にアルキル化アンモニウム塩で処理された層状鉱物フィラーを含まないブチルゴム/ハロゲン化ブチルゴム組成物を含むものである。また外側ゴム層は、前記ゴム組成物から形成されるものでも良いが、一般に耐候性を付与するためにEPDM系(エチレンプロピレン系)ゴム組成物を含むものである。
【0064】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。本発明は実施例に限定されるものではない。
【0065】
実施例で使用される材料は以下の通りである。尚、有機化マイカ等の有機化層状鉱物フィラーの表面の有機化処理量(有機化率meq/100g)は、マイカ等の層状鉱物フィラーに存在する無機カチオンをアンモニウム塩等の有機カチオンで交換した時の、マイカ100g当たりの有機カチオンで交換されたカチオンの当量数である。
【0066】
(A)ゴム
Exxpro3433 : 臭化ブチルゴム{臭化(イソブチレン−4−メチルスチレン共重合体)、臭素含有率0.75モル%;商品名Exxpro3433;エクソンケミカル(株)製}
【0067】
(B)アンモニウム塩
TMAC : テトラメチルアンモニウムクロリド{商品名 TMAC100%結晶粉末;ライオン・アクゾ(株)製}
TEAC : テトラエチルアンモニウムクロリド{商品名 TEAC100%結晶粉末;ライオン・アクゾ(株)製}
【0068】
(C)層状鉱物フィラー
MAE : 塩化ジアルキル(C14〜18)ジメチルアンモニウム処理マイカ{商品名 ソマシフMAE;コープケミカル(株)製、有機化率120meq/100g}
TMACマイカ : TMACで処理したマイカ(有機化率119meq/100g)
TEACマイカ : TEACで処理したマイカ(有機化率104meq/100g)
ミストロンベーパー : タルク{商品名 MISTRON VAPOR;日本ミストロン(株)製}
【0069】
(D)加硫剤/加硫促進剤
ZnO : 酸化亜鉛{商品名 銀嶺SR;東邦亜鉛(株)製}
促進剤TT : テトラメチルチウラムジスルフィド{商品名 サンセラーTT−G;三新化学工業(株)製}
【0070】
[実施例1〜2、比較例1]
(1)ゴム組成物及びシートの作製
ゴム組成物の作製に先立って、アルキル化アンモニウム塩処理した層状鉱物フィラー(有機化マイカ)を、(B)アンモニウム塩をそれぞれ用いて作製した。
【0071】
表1に示す配合で,(A)ゴム及び(C)層状鉱物フィラーを混合し、ブラベンダー型ミキサーを用いて120℃で約5分間攪拌し、均一な混合物を得た。有機化マイカの配合量は、含有する4級アンモニウムイオンのモル数が同じになるようにした(3.2×10−3モル/ポリマー100g)。
【0072】
得られた混合物に、上記(D)加硫剤/加硫促進剤をロールを用いて添加し、ゴム圧延用ロールを用いて圧延処理する。得られた圧延シートを表面が十分平滑なスラブシート用金型を用いて160℃、60分の条件下において架橋させ、1mm厚のスラブシートサンプルを得る。
【0073】
(2)冷媒輸送用高圧ホースの作製
実施例1〜2及び比較例1で得られたゴム組成物を用いて、図1の構造を有する高圧ゴムホースを製造した。内側ゴム層は実施例1〜2及び比較例1で得られたゴム組成物を用い、補強層はPET繊維を用いた。
【0074】
内側ゴム層を、実施例1〜2及び比較例1で得られたゴム組成物を押出機を用いて押し出すことにより形成した。得られたチューブ状内側ゴム層は厚さ1.3mmであった。
【0075】
次いで得られたチューブ状内側ゴム層上に、補強層としてPET繊維(4000d(デニール))を合計40本スパイラルに編み上げた。
【0076】
上記補強層の外周に内側ゴム層と同じ組成の中間層を押出被覆した。上記と同様にこの内側ゴム層の外周に補強層を形成した。
【0077】
上記補強層の外周に外側ゴム層を押出被覆した(厚さ1.1mm)。
【0078】
以上のようにして冷媒輸送用高圧ホースを製造した。得られたホースの寸法は内径が10.0mm、外径が19.0mmであった。
(3)高圧ホースかしめ部の作製
実施例1〜2及び比較例1で得られた高圧ホースを用いて、図4の構造を有する、かしめ部を作製した。かしめ部の継手は、高圧ホースに嵌り込んで高圧ホース管路を外部の管路に連結するためのニップルと、高圧ホースを介在させてこのニップルと同時配置されたソケットとを有し、ソケットをニップル側に圧縮変形させてホースを圧縮挟持するように構成されている。この圧縮変形においては、図4に示すように、3箇所でソケット21をニップル23の側に向けて環状に陥没してかしめ成形し、このかしめ箇所25a、25b、25cでそれぞれ、ホース27を圧縮挟持した。このかしめ箇所では、ホース27の肉厚が、圧縮前の肉厚(L)4.5mmから、圧縮後の肉厚(l)2.7mmとなった。かしめ率は40%であった。尚、かしめ率(%)は、{(L−l)/L}×100の式で算出される。
【0079】
<評価方法>
ガス漏れの評価
ガス漏れを評価するために、かしめ部を含む実施例1〜2及び比較例1の高圧ホースを熱老化させ、その後にホース内部の圧力を徐々に上げて3MPaになるまで窒素ガスを充填して、120℃でガス漏れが生じるかどうかを観察した。熱老化は、高圧ホースを120℃にて、24時間後、72時間後、168時間後、336時間後までそれぞれ保持することにより行った。
【0080】
【表1】
【0081】
上記結果として以下のことがわかった。
【0082】
実施例1〜2及び比較例1の高圧ホースのかしめ部ではいずれも、熱老化前及び熱老化処理24時間後の場合には、かしめ部のガス漏れはなく、この点では差異は認められなかった。しかし、比較例1の高圧ホースのかしめ部では、熱老化処理72時間後においては3Mpaでガス漏れが生じ、熱老化処理168時間後においては1MPaでガス漏れが生じ、熱老化処理366時間後においては加圧開始直後にガス漏れが生じた。これは比較例1の高圧ホースのゴム組成物においては加硫が十分に進行していなかったために、十分な可撓性や機械特性を備えておらず、熱老化に伴ってゴム組成物に劣化が生じて、加圧に伴ってかしめ部での損傷が発生し、ガス漏れに至ったものと考えられる。これに対して、実施例1〜2の高圧ホースの高圧ホースのかしめ部では、熱老化処理366時間後においてもなお3MPaの加圧に対してもガス漏れが生じなかった。これは加硫が十分に進行した結果、優れた可撓性や熱老化に対する耐性や機械特性を有するに至ったためと考えられる。
【0083】
一般に、流体を輸送する高圧ホースは、そのホース端部に固定された継手部分において、流体の漏れや損傷を起こすことが知られており、かしめ部において優れた可撓性や熱老化に対する耐性を示すことは、過酷な条件でもゴムらしい機械特性を保つことを示したということができる。
【0084】
すなわち、本発明の高圧ホースは、十分に加硫が進行した結果、かしめ部において熱老化処理後も十分な気密性能を示す優れた可撓性や機械特性、及びガスバリヤ性(気体遮断性)を備えていた。そしてこの高圧ホースは、かしめ部の作業性に優れ、且つ製造の容易なものであった。また熱老化にも優れた耐性を有していた。本発明の高圧ホースは、ガスバリア性(気体遮断性)の評価においては、短鎖でないアルキル化アンモニウム塩処理による有機化マイカを含むゴム組成物を用いた高圧ホースとほぼ同等であった。上記ガス漏れ評価においては窒素ガスを用いているが、フロンR134a等のフッ化炭素等の冷媒、及び水素、空気等の一般的な気体や水等の流体に対しても優れた遮断性を示し、これらにおいても、窒素ガスに対するのと同様の十分な気密性能を示すものであった。
【0085】
【発明の効果】
本発明の高圧ホースに使用されるゴム組成物は、層状鉱物フィラーが特定の炭素原子数のアルキル鎖を有するアルキル化アンモニウム塩の使用により、従前のアルキル化アンモニウム処理層状鉱物フィラーよりも、優れたガスバリヤ性を維持しながら、加硫への悪影響が少なく、加硫が十分に進行する点で優れている。このために、本発明のゴム組成物を架橋(加硫)して得られたゴム組成物は、従前のアルキル化アンモニウム処理層状鉱物フィラーによるものと比べて、圧縮永久歪みが良好であり、その他の機械的特性が良好であるものとすることができる。
【0086】
これにより、本発明の高圧ホースは、優れたガスバリヤ性、優れた冷媒遮断性(流体遮断性)と、十分に加硫が進行することによる優れた可撓性、熱老化に対する耐性及び機械特性等を備えている。またこのためカシメ等の作業性にも優れたものである。
【0087】
また、層状鉱物フィラー及びゴムを含むゴム組成物に特定の炭素数を有する短鎖アルキル化アンモニウム塩が導入された本発明の高圧ホースに使用されるゴム組成物は、十分な加硫の進行を可能とする結果、様々な特性の高圧ホースの設計が容易になるとの利点も得られる。
【0088】
さらに、本発明の冷媒輸送用高圧ホース等の高圧ホースに使用されるゴム組成物は、層状鉱物フィラー、特定の炭素数を有する短鎖アルキル化アンモニウム塩及びゴム等を、通常の簡易な混練機で分散することにより得られるので、良好な生産性を有するものである。このため本発明の高圧ホースも高い生産性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の冷媒輸送用高圧ホースの代表的な構造の1例を示す斜視図である。
【図2】本発明の冷媒輸送用高圧ホースの代表的な構造の別の1例を示す斜視図である。
【図3】従来の冷媒輸送用高圧ホースの代表的な構造の1例を示す斜視図である。
【図4】かしめ部を含む高圧ホースの端部を一部軸方向に破断して示す部分断面図である。
【符号の説明】
11 管状の内側ゴム層
12a,12b 補強層
13 管状の中間ゴム層
14 外側ゴム層
15 管状の内管ゴム層
16 ナイロンガスバリヤ層
21 ソケット
23 ニップル
25a 第1のかしめ箇所
25b 第2のかしめ箇所
25c 第3のかしめ箇所
27 高圧ホース
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車用クーラー等に有利に使用することができる冷媒輸送用高圧ホース等の高圧ホースに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用クーラーの配管等に使用される冷媒輸送用高圧ホースは、一般の高圧ホースと同様に管状の複数層から構成される。即ち、管状の内側ゴム層と、その上を覆う管状の繊維が、例えば螺旋状に巻かれた補強層、さらにその上を覆う管状の外側ゴム層の基本構成を有する。補強層は、求められる強度に応じて、複数層設けられ、その際補強層の間には一般に中間層が設けられる。そして、冷媒輸送用では、フロン等の冷媒の漏洩を防止するために、上記内側ゴム層の内側に更にポリアミド(ナイロン)からなるガスバリヤ層が設けられている(特開平7−171930号公報参照)。
【0003】
一方、特開平11−159667号公報には、ナイロンからなるバリヤ層の代わりに有機化クレーと無水カルボキシル基を有する変性ブチルゴムとから成る内側ゴム層を含む冷媒輸送用ホース、更に内側ゴム層の内側にさらに有機化クレーとナイロンからなるガスバリヤ層を有する冷媒輸送用ホースが開示されている。これらのホースは振動吸収性、流体遮断性に優れたものであることが記載されている。この公報では、クレーのほかに使用できるフィラーとしてマイカも記載されているが具体的な配合、効果は示されていない。
【0004】
更に、特開2000−160024号公報には、クレー等の層状粘土鉱物とナイロン等の熱可塑性樹脂とのナノ複合体に、動的に架橋されたゴム層が分散した組成物の高圧ホースへの使用が開示されている。しかしながら、ナノ複合体自体がナイロンからなるものであるため、それ自体硬く、また層状粘土鉱物の分散性も充分でない。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−171930号公報
【特許文献2】
特開平11−159667号公報
【特許文献3】
特開2000−160024号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等の検討によれば、特開平7−171930号公報で使用し、また特開平11−159667号公報でも使用されているナイロンのガスバリヤ層を有する場合、ホース自体がこの層の存在のために硬くなり、ホース本来に求められるしなやかさが低下し、ホース取り付け時の操作の自由度が小さく取り付けし難いこと、またこの層を接着するための接着工程が増えること、さらにカークーラーの冷媒として使用されるポリアルキレングリコール類により劣化しやすく耐久性が充分でないこと等の問題があることが判明した。一方、上記ガスバリヤ層を設けない場合、特開平11−159667号公報の有機化クレーと無水カルボキシル基を有する変性ブチルゴムを用いて、通常の混練機(バンバリーミキサー等)でゴム組成物を得ようとすると、クレー等の層状粘土物を超微分散状態にすることが困難であることが検討により判明した。また、特開2000−160024号公報では、ナノ複合体自体がナイロンからなるものであるため、それ自体硬く、また層状粘土鉱物の分散性も充分でないことから、上記冷媒等の流体遮断性、可撓性が満足できるものではないことが明らかとなった。また、高圧ホースを作製するために、このナノ複合体の層とゴム組成物の層を複合化する際には接着剤が必要となり、製造が煩雑になるとの問題もある。
【0007】
本発明者等は、層状鉱物フィラーを用いたゴム組成物を用いて高いガスバリヤ性(低い気体透過率)を有する高圧ホースを得るために鋭意研究を重ねてきた。既に、本出願人は、層状鉱物フィラーを層間剥離させて、1枚1枚の層をゴム中に分散させる、ナノ分散技術を開発し、種々出願を行っている。即ち、層状鉱物フィラーをナノ分散させることにより、少量のフィラーを用いて優れたガスバリヤ性を有し、冷媒等の流体の透過(損失)が格段に低減された高圧ホースを開発した。
【0008】
例えば、本出願人の出願である特願2002−169964号明細書において、ジメチルアルキルアンモニウム塩で処理したマイカを用いた優れたガスバリヤ性を有する冷媒輸送用高圧ホースを記載している。即ち、前記特開平11−159667号公報に記載のアンモニウムイオンを用いた場合は、マイカをナノ分散させることが困難であったが、上記特定の化合物を用いることによりナノ分散を可能として優れた高圧ホースを開発したものである。
【0009】
尚、ナノ分散によるガスバリヤ性の向上の機構は、層状剥離した扁平フィラーがゴム中に相互に平行関係で高度に配向し、その結果、組成物中に無数の壁が形成され、この組成物を透過するガス分子が、その壁を迂回しながら拡散するため、見かけ上透過すべき組成物の厚さが増加した状態になるためとされている。このため、層状剥離した扁平フィラーの配向が不充分であったり、押出、複合化、架橋等の加工工程において、その配向が不均一となったり、破損した場合充分なガスバリヤ性が得られないと考えられる。
【0010】
層状鉱物フィラーを用いて高いガスバリヤ性を有し、冷媒等の流体の透過(損失)が格段に低減された高圧ホースを得るために、本発明者等がさらに検討したところ、前記特定のジメチルアルキルアンモニウム塩で処理したマイカを用いたゴム組成物を使用した場合であってもなお、ガスバリヤ性をさらに向上させようとした場合に、アルキル化アンモニウム塩を用いて処理された影響として、ガスバリア性が高くなる一方で、ゴム組成物は加硫不十分となり、圧縮永久歪みも悪くなる傾向にあり、このために高圧ホースに望まれる機械特性が失われる場合があることが明らかになった。
【0011】
本発明は、冷媒等の流体の透過(損失)が格段に低減され、且つ十分な加硫によって可撓性及び作業性に優れた、冷媒輸送等に好適な高圧ホースを提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、冷媒等の流体の透過(損失)が格段に低減され、十分な加硫によって可撓性及び作業性に優れ、且つ容易に製造することができる、冷媒輸送等に好適な高圧ホースを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の式(1)
R1R2R3R4−N+・X− (1)
(但し、R1、R2、R3およびR4が炭化水素基であり、このうち3個以上が炭素原子数1〜5であり、X−が陰イオンである)
で表されるアルキル化アンモニウム塩で処理された層状鉱物フィラーおよびゴムを含むゴム組成物から形成されている管状ゴム層を含むことを特徴とする高圧ホース;及び
管状の内側ゴム層、その上を覆う管状の繊維の補強層、及びその上を覆う管状の外側ゴム層を含む高圧ホースにおいて、
少なくとも内側ゴム層が、下記の式(1)
R1R2R3R4−N+・X− (1)
(但し、R1、R2、R3およびR4が炭化水素基であり、このうち3個以上が炭素原子数1〜5であり、X−が陰イオンである)
で表されるアルキル化アンモニウム塩で処理された層状鉱物フィラーおよびゴムを含むゴム組成物から形成されていることを特徴とする高圧ホースにある。
【0014】
高圧ホースは、上記内側ゴム層とその上を覆う補強層、及びさらにその上を覆う外側ゴム層からなる3層構造を基本として、外側ゴム層と補強層の間に、さらにゴム層と補強層からなる組を1組以上加えた多層構造とすることができ、1組を加えることが好ましい。また内側にゴム層を設けても好適である。
【0015】
層状鉱物フィラーは、ゴム中に分散されていることが好ましい。また、一般に層状鉱物フィラーは、その平面が相互に平行に配列していることが好ましく、層状鉱物フィラーの長軸方向が、それを含む管状ゴム層の表面に対して平行に存在している状態が特に好ましい。また、層状鉱物フィラーの層間にアルキル化アンモニウム塩が存在していることが好ましい。
【0016】
上記アルキル化アンモニウム塩は、式(1)におけるR1、R2、R3およびR4のそれぞれが炭素原子数5以下であるものが好ましく、特に、式(1)におけるR1、R2、R3およびR4の炭素原子数が2〜4であるものが加硫の点で好ましい。式(1)におけるR1、R2、R3およびR4の炭素原子数が同一であるものがさらに好ましい。
【0017】
式(1)におけるX−が、ハロゲン化物イオン(特に、Cl−、Br−)であることが好ましい。
【0018】
上記層状鉱物フィラーとしては、例えばマイカ、タルク及びクレーから選択される少なくとも1種であり、これらの2種以上の混合物でもよい。
【0019】
また層状鉱物フィラーが、ゴムに対して0.1〜200質量%、特に0.5〜150質量%が好ましく、さらに1〜130質量%が好ましい。
【0020】
ゴムは、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴム、天然ゴムから選択される少なくとも1種が好ましく、これらの2種以上の混合物でもよい。ハロゲン化ブチルゴムが好ましく、特にイソブチレンを主成分とする共重合体のハロゲン化物からなるハロゲン化ブチルゴムが好ましく、臭素化(イソブチレン−4−メチルスチレン共重合体)及び臭素化(イソブチレン−イソプレン共重合体)が特に好ましい。
【0021】
さらに本発明は、上記組成物を架橋(加硫)して得られるゴム組成物を使用した高圧ホースにもあり、前記したゴム組成物のいずれかを架橋(加硫)して得られる架橋(加硫)ゴム組成物が使用されていることが好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の高圧ホースに使用されるゴム組成物は、ゴム中に層状鉱物フィラーがアルキル化アンモニウム塩により高度に分散された基本構成を有する。本発明では、特定のアルキル化アンモニウム塩を用いることにより、極めて高いガスバリア性を示すとともに、圧縮永久歪みの悪化もほとんどみられず、ゴムとして期待される可撓性を有している。これは、上記アルキル化アンモニウム塩を含むゴム組成物ではフィラーが高度に分散されていることに加えて、加硫の阻害がほとんど生じないためと考えられる。
【0023】
このゴム組成物を使用した本発明の高圧ホースは、加硫が十分になされたゴム組成物を使用することにより、圧縮歪みや可撓性等の機械特性に優れ、且つガスバリヤ性が高度に優れたものである。特にフロン、フレオン、ユーコン、ゲネトロン等のフッ化炭素等の冷媒に対して優れた遮断性を示すことに加えて、水素、窒素、空気等の一般的な気体や水等の流体に対しても優れた遮断性を示すため、これらの輸送用高圧ホースとしても適している。
【0024】
本発明の代表的な冷媒輸送用高圧ホースの構造の1例を図1に示す。管状の内側ゴム層11、その表面を覆う管状の繊維の補強層12a、その表面を覆う管状の中間ゴム層13、その表面を覆う管状の補強層12b、そしてその表面を覆う管状の外側ゴム層14から構成されている。内側ゴム層11は、ゴム及びアルキル化アンモニウム塩で処理された層状鉱物フィラーを含むゴム組成物から形成されている。中間ゴム層13は、前記ゴム組成物から形成されるものでも良いが、一般にアルキル化アンモニウム塩で処理された層状鉱物フィラーを含まないブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴム組成物を含むものである。
【0025】
図2に、上記図1の高圧ホースの内側ゴム層11の内側に、さらに管状の内管ゴム層15が設けられた、別の代表的な冷媒輸送用高圧ホースの構造の1例を示す。即ち、管状の内管ゴム層15、その表面を覆う管状の内側ゴム層11、その表面を覆う管状の繊維の補強層12a、その表面を覆う管状の中間ゴム層13、その表面を覆う管状の補強層12b、そしてその表面を覆う管状の外側ゴム層14から構成されている。内管ゴム層15は、前記ゴム組成物から形成されるものでも良いが、一般にアルキル化アンモニウム塩で処理された層状鉱物フィラーを含まないブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴム組成物を含むものである。
【0026】
図3に、ナイロン等のポリアミドを内層に適用した従来の冷媒輸送用高圧ホースを示す。管状のナイロンガスバリヤ層16、その表面を覆う管状の内管ゴム層15、その表面を覆う管状の繊維の補強層12a、その表面を覆う管状の中間ゴム層13、その表面を覆う管状の補強層12b、そしてその表面を覆う管状の外側ゴム層14から構成されている。これは従来の冷媒輸送用高圧ホースであるが、先に述べたようにホースとして硬く、可撓性が充分でなく、さらにはナイロンとゴムの接着処理、カシメ金具との接着処理等も必要とするものであった。
【0027】
本発明では、形状が鱗片状である有機化マイカが特定の臭素化ゴム中に超微細に分散した、冷媒等の気体遮蔽性に優れたゴム組成物を内側ゴム層に用いているため、従来必要とされたナイロンのガスバリヤ層を設けなくても良いことから、可撓性に優れ、カシメ金具との接着処理等も必要としない高圧ホースを得ることができたものである。
【0028】
管状の繊維の補強層12a,12bは、一般に有機繊維の編組構造体である。有機繊維としてはビニロン、ポリエステル、ポリアミド、芳香族ポリアミド等を挙げることができる。これらの繊維をスパイラル状又はブレード状に編みあげたものが好ましい。これらの繊維は、一般に56〜778tex(500〜7000d)、特に222〜556tex(2000〜5000d)を有することが好ましい。
【0029】
本発明の高圧ホースに使用されるゴム組成物は、一般に、層状鉱物フィラー、アルキル化アンモニウム塩及びゴム等を、或いはアルキル化アンモニウム塩で処理された層状鉱物フィラー及びゴム等を、バンバリー等のインターナルミキサー等の通常の混練機を用いて混合することによって得られるものであり、さらにこれに架橋剤(加硫剤)を加えると、架橋(加硫)ゴム組成物が得られる。
【0030】
本発明の高圧ホースに使用されるゴム組成物の特徴は、前記のようにゴム中に層状鉱物フィラーを高度に分散させるために、下記の式(1)
R1R2R3R4−N+・X− 式(1)
(但し、R1、R2、R3およびR4が炭化水素基であり、このうち3個以上が炭素原子数1〜5であり、X−が陰イオンである)
で表される特定のアルキル化アンモニウム塩を使用することにある。上記アルキル化アンモニウム塩は、式(1)におけるR1、R2、R3およびR4のそれぞれが炭素原子数5以下であるものが好ましく、特に、式(1)におけるR1、R2、R3およびR4の炭素原子数が2〜4であるものが加硫の点で好ましい。式(1)におけるR1、R2、R3およびR4の炭素原子数が同一であるものがさらに好ましい。
【0031】
アルキル化アンモニウム塩は、アルキル化アンモニウム塩ハロゲン化物(特にクロリド、ブロミド)であることが好ましい。
【0032】
本発明の高圧ホースに使用されるゴム組成物は、炭素原子数5以下のアルキル鎖を含むアルキル化アンモニウム塩が用いられているために、炭素原子数6以上のアルキル鎖を含むアルキル化アンモニウム塩を用いた場合と比べて、加硫への悪影響は極めて少なく、十分な加硫が可能であるために、加硫後のゴム組成物は、高いガスバリア性を有しつつ、圧縮永久歪みの悪化が極めて少ない等の優れた機械特性を有している。即ち本発明の高圧ホースに使用されるゴム組成物とは、架橋(加硫)用ゴム組成物及び架橋(加硫)されたゴム組成物も含むものである。
【0033】
本発明で使用される層状鉱物フィラーとしては、クレー、マイカ、タルク等を挙げることができ、なかでも形状が扁平状であるクレー、マイカ、タルクが好ましい。層状鉱物フィラーの平均粒径20μm以下、好ましくは0.1〜15μm、特に0.1〜8μmの範囲が好ましい。
【0034】
クレーとは、一般に、1種あるいは2種以上の粘土鉱物からなる平均粒径20μm以下、さらに0.1〜15μm、特に0.1〜8μmの範囲の微細な粒子である。粘土鉱物とは微細な層状ケイ酸塩であり、Si4+イオンが酸化物イオン(O2−)に対して4配位をとる4面体が構成する層と、Al3+、Fe2+、Fe3+、Mg2+などのイオンがO2−および水酸化物イオン(OH−)に対して6配位をとる8面体層とが1:1あるいは2:1で結合し、さらにそれらが積み重なって層状構造を構成するものが、一般的である。粘土鉱物としては、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト、ゼオライト、バーミキュライトなどを挙げることができる。
【0035】
マイカ(雲母)は、完全な基底劈開により特徴付けられる斜晶系層状珪酸塩であり、複雑なアルミノケイ酸カリウムであり、その一般化学組成式はXY2〜3Zn4O10(OH、F)2[但し、XがBa、Ca、(H3O)、K、Na、(NH4)を表し、YがAl、Cr3+、Fe2+、Fe3+、Li、Mg、Mn2+、V3+を表し、ZがAl、Be、Fe、Siを表す]で表される。マイカの平均粒径は20μm以下、さらに0.1〜15μm、特に0.1〜8μmの範囲が好ましい。
【0036】
タルクは、ケイ酸マグネシウムで、一般にMg2Si4O10(OH)2で表される。
【0037】
上記層状鉱物フィラーの添加量は、ゴムに対して0.1〜200質量%、特に0.5〜150質量%、さらに1〜130質量%が好ましい。
【0038】
上記層状粘土鉱物に加えて他の無機フィラーを使用しても良い、その例としては、カオリン、炭酸カルシウム、シリカ等を挙げることができる。
【0039】
本発明で使用されるゴム(ゴム又はゴムラテックス)の例として、例えば天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、フッ素ゴムラテックス、シリコーンゴムラテックス、ウレタンゴムラテックスが挙げられる。アクリロニトリル・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルのブレンド、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムが好ましい。これらは、単独でも、混合物としても使用することができる。特に、ハロゲン化ブチルゴムが好ましい。
【0040】
上記ハロゲン化ブチルゴムは、イソブチレンを主体とする他のモノマーとの共重合体で、ハロゲン化されたものである。他のモノマーとしては、一般に炭素炭素2重結合を1個又は2個有する炭化水素である。炭素炭素2重結合を1個有する炭化水素としては、エチレン、プロペン、ブテン、ヘキセン、スチレン、アルキルスチレン(例、4−メチルスチレン)等を挙げることができ、炭素炭素2重結合を2個有する炭化水素としては、イソプレン、ブタジエン等を挙げることができる。共重合体のイソプレンの割合は、80〜99モル%が好ましく、特に90〜99モル%が好ましい。ハロゲン化は一般に他のモノマー単位に対してなされる。ハロゲン化を行う際のハロゲンとしては塩素、臭素が好ましい。例えば、イソブチレン・イソプレン共重合体を塩素化した場合、イソブチレン・クロロイソプレン共重合体となる。ハロゲン化ゴム中のハロゲン含有量は、0.5〜1.5モル%が好ましく、特に0.75〜1.2モル%が好ましい。
【0041】
本発明で使用することができる好ましい塩素化ゴムとしては、塩素化(イソブチレン・イソプレン共重合体)(いわゆる塩素化ブチルゴム)又は塩素化(イソブチレン−4−メチルスチレン共重合体)を挙げることができ、特に塩素化(イソブチレン・イソプレン共重合体)が好ましい。
【0042】
本発明で使用することができる好ましい臭化ゴムとしては、臭素化(イソブチレン−イソプレン共重合体)(いわゆる臭素化ブチルゴム)又は臭素化(イソブチレン−4−メチルスチレン共重合体)を挙げることができ、特に臭素化(イソブチレン−4−メチルスチレン共重合体)が好ましい。
【0043】
本発明のゴム組成物において、上記ゴムと通常の熱可塑性樹脂等のポリマーとを併用してもよい。
【0044】
架橋(加硫)を行なうための加硫剤としては、一般に種々の市販の化合物(例、硫黄、有機過酸化物)を使用することができる。
【0045】
硫黄系加硫剤としては、粉末硫黄、高分散性硫黄、不溶性硫黄等の、一般にゴム用加硫剤として用いられている硫黄、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム類、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン塩、ピペコリルジチオカルバミン酸ピペコリン塩、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオカルバミン酸塩類、ブチルキサントゲン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム等のキサントゲン酸塩類、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド類、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール類等を挙げることができる。
【0046】
また加硫促進剤として、TMTD(テトラメチルジスルフィド)等のチウラム系、EZ(ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛)等のジチオカルバミン酸塩類を使用することができる。
【0047】
加硫剤の使用量は、ゴムに対して0.5〜4.0質量%、特に1.0〜2.5質量%が好ましい。
【0048】
有機過酸化物として、例えば、過酸化水素水、クメンヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレラート、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゼン、ビニルトリス(t−ブチルペルオキシ)シランなどを使用することができる。ジクミルペルオキシドが好ましい。使用量は、ゴムに対して、0.2〜8.0質量%、特に0.25〜4.0質量%、さらに0.3〜2.0質量%が好ましい。
【0049】
また、臭化ゴムの架橋(加硫)を行なうための加硫剤としては、一般に酸化亜鉛が使用され、必要により(例えば、他のゴム材料の使用の際)種々の市販の化合物(例、硫黄、有機過酸化物)を使用することができる。またステアリン酸等の高級脂肪酸との併用が好ましい。
【0050】
また加硫促進剤として、TMTD(テトラメチルジスルフィド)等のチウラム系、EZ(ジエチルジチオカルバミン産亜鉛)等のジチオカルバミン酸塩類を使用することができる。
【0051】
さらに、これらと組み合わせて、有機過酸化物、キノンジオキシム、多官能性アクリルモノマー{例、トリメチロールエタントリアクリレート(TMETA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ジペンタエリスリトールエーテルヘキサアクリレート(DPEHA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(DPEHA)、ジメチロールプロパンジアクリレート(TMPTA)、ステアリルアクリレート(SA)}、トリアジンチオールを用いることができる。
【0052】
加硫剤の使用量は、ゴムに対して0.1〜4.0質量%、特に0.1〜2.5質量%が好ましい。
【0053】
有機過酸化物の使用量は、ゴムに対して、0.1〜1.0質量%、特に0.1〜0.8質量%、さらに0.3〜0.5質量%が好ましい。
【0054】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含んでいてもよい。例えば、カーボンブラック標準品種であるSAF,ISAF,HAF、FEF、GPF、SRF(以上ゴム用ファーネス),MTカーボンブラック(熱分解カーボン)を挙げることができる。ゴムに対して一般に0.1〜80質量%、好ましくは0.1〜70質量%の量で使用される。
【0055】
さらに本発明の高圧ホースに使用するゴム組成物は、可塑剤を含んでもよい。また、汎用のゴム工業の配合で使用する、老化防止剤、加工助剤としてのオイル、樹脂、防着剤、シランカップリング剤などを併用することもできる。
【0056】
次に本発明の高圧ホースに使用するゴム組成物の製造方法を、例を挙げて説明する。
【0057】
先ず、アルキル化アンモニウム塩で処理された層状鉱物フィラー及びゴムを含むゴム組成物は以下のように作製される。
【0058】
本発明で使用されるアルキル化アンモニウム塩で処理されたマイカ等の層状鉱物フィラーは、特開平9−87432号公報に記載の実施例の方法を参考にして製造することができる。本発明のゴム組成物は、これをゴム等と混合するか、或いは層状鉱物フィラーを予めアルキル化アンモニウム塩と混合し、これをゴム等と混合し、その後の処理を行うことにより得られる。
【0059】
この処理又は混合された層状鉱物フィラーと、原料ゴム等とを汎用の混練機、例えばブラベンダー型ミキサーに投入する。或いは未処理の層状鉱物フィラーとアルキル化アンモニウム塩及び原料ゴム等とを投入することもできる。混練機の温度は、処理又は混合された層状鉱物フィラーがゴムに微分散可能な温度に設定することが好ましく、一般に50〜160℃、好ましくは50〜120℃である。混練の時間も、層状鉱物フィラーがゴムに微分散可能な時間であればよく、一般に1〜15分間である。このような条件で混練し、ゴム組成物を得る。このゴム組成物を、適当な加硫剤および/又は加硫促進剤をロールを用いて添加し、適当な条件下で加硫して加硫ゴム組成物を得るか、或いは加硫する必要がなければそのまま射出成形などの方法で成形する。
【0060】
これまで説明したゴム組成物を成形して、本発明の高圧ホースとすることができる。
【0061】
本発明の冷媒輸送用高圧ホースは、公知の方法で製造することができる。例えば、以下のように行うことができる。
【0062】
内管(内側ゴム層)押出機の先端に設けた高剛性のマンドレル上に、内側ゴム層を成形する。次いで、この内側ゴム層上に、スパイラル編み上げ機により、例えば4000d(デニール)のPET糸を20本スパイラルし、中間ゴム層を挿入後、更に同数のPET糸を逆方向にスパイラルし、補強層の形成を完了する。その表面に、押出機によりその表面に外側ゴム層を形成し、その後、適当な条件にて加硫し、マンドレルを抜き出し、高圧ホースを得る。
【0063】
本発明において中間層は、前記ゴム組成物から形成されるものでも良いが、一般にアルキル化アンモニウム塩で処理された層状鉱物フィラーを含まないブチルゴム/ハロゲン化ブチルゴム組成物を含むものである。また外側ゴム層は、前記ゴム組成物から形成されるものでも良いが、一般に耐候性を付与するためにEPDM系(エチレンプロピレン系)ゴム組成物を含むものである。
【0064】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。本発明は実施例に限定されるものではない。
【0065】
実施例で使用される材料は以下の通りである。尚、有機化マイカ等の有機化層状鉱物フィラーの表面の有機化処理量(有機化率meq/100g)は、マイカ等の層状鉱物フィラーに存在する無機カチオンをアンモニウム塩等の有機カチオンで交換した時の、マイカ100g当たりの有機カチオンで交換されたカチオンの当量数である。
【0066】
(A)ゴム
Exxpro3433 : 臭化ブチルゴム{臭化(イソブチレン−4−メチルスチレン共重合体)、臭素含有率0.75モル%;商品名Exxpro3433;エクソンケミカル(株)製}
【0067】
(B)アンモニウム塩
TMAC : テトラメチルアンモニウムクロリド{商品名 TMAC100%結晶粉末;ライオン・アクゾ(株)製}
TEAC : テトラエチルアンモニウムクロリド{商品名 TEAC100%結晶粉末;ライオン・アクゾ(株)製}
【0068】
(C)層状鉱物フィラー
MAE : 塩化ジアルキル(C14〜18)ジメチルアンモニウム処理マイカ{商品名 ソマシフMAE;コープケミカル(株)製、有機化率120meq/100g}
TMACマイカ : TMACで処理したマイカ(有機化率119meq/100g)
TEACマイカ : TEACで処理したマイカ(有機化率104meq/100g)
ミストロンベーパー : タルク{商品名 MISTRON VAPOR;日本ミストロン(株)製}
【0069】
(D)加硫剤/加硫促進剤
ZnO : 酸化亜鉛{商品名 銀嶺SR;東邦亜鉛(株)製}
促進剤TT : テトラメチルチウラムジスルフィド{商品名 サンセラーTT−G;三新化学工業(株)製}
【0070】
[実施例1〜2、比較例1]
(1)ゴム組成物及びシートの作製
ゴム組成物の作製に先立って、アルキル化アンモニウム塩処理した層状鉱物フィラー(有機化マイカ)を、(B)アンモニウム塩をそれぞれ用いて作製した。
【0071】
表1に示す配合で,(A)ゴム及び(C)層状鉱物フィラーを混合し、ブラベンダー型ミキサーを用いて120℃で約5分間攪拌し、均一な混合物を得た。有機化マイカの配合量は、含有する4級アンモニウムイオンのモル数が同じになるようにした(3.2×10−3モル/ポリマー100g)。
【0072】
得られた混合物に、上記(D)加硫剤/加硫促進剤をロールを用いて添加し、ゴム圧延用ロールを用いて圧延処理する。得られた圧延シートを表面が十分平滑なスラブシート用金型を用いて160℃、60分の条件下において架橋させ、1mm厚のスラブシートサンプルを得る。
【0073】
(2)冷媒輸送用高圧ホースの作製
実施例1〜2及び比較例1で得られたゴム組成物を用いて、図1の構造を有する高圧ゴムホースを製造した。内側ゴム層は実施例1〜2及び比較例1で得られたゴム組成物を用い、補強層はPET繊維を用いた。
【0074】
内側ゴム層を、実施例1〜2及び比較例1で得られたゴム組成物を押出機を用いて押し出すことにより形成した。得られたチューブ状内側ゴム層は厚さ1.3mmであった。
【0075】
次いで得られたチューブ状内側ゴム層上に、補強層としてPET繊維(4000d(デニール))を合計40本スパイラルに編み上げた。
【0076】
上記補強層の外周に内側ゴム層と同じ組成の中間層を押出被覆した。上記と同様にこの内側ゴム層の外周に補強層を形成した。
【0077】
上記補強層の外周に外側ゴム層を押出被覆した(厚さ1.1mm)。
【0078】
以上のようにして冷媒輸送用高圧ホースを製造した。得られたホースの寸法は内径が10.0mm、外径が19.0mmであった。
(3)高圧ホースかしめ部の作製
実施例1〜2及び比較例1で得られた高圧ホースを用いて、図4の構造を有する、かしめ部を作製した。かしめ部の継手は、高圧ホースに嵌り込んで高圧ホース管路を外部の管路に連結するためのニップルと、高圧ホースを介在させてこのニップルと同時配置されたソケットとを有し、ソケットをニップル側に圧縮変形させてホースを圧縮挟持するように構成されている。この圧縮変形においては、図4に示すように、3箇所でソケット21をニップル23の側に向けて環状に陥没してかしめ成形し、このかしめ箇所25a、25b、25cでそれぞれ、ホース27を圧縮挟持した。このかしめ箇所では、ホース27の肉厚が、圧縮前の肉厚(L)4.5mmから、圧縮後の肉厚(l)2.7mmとなった。かしめ率は40%であった。尚、かしめ率(%)は、{(L−l)/L}×100の式で算出される。
【0079】
<評価方法>
ガス漏れの評価
ガス漏れを評価するために、かしめ部を含む実施例1〜2及び比較例1の高圧ホースを熱老化させ、その後にホース内部の圧力を徐々に上げて3MPaになるまで窒素ガスを充填して、120℃でガス漏れが生じるかどうかを観察した。熱老化は、高圧ホースを120℃にて、24時間後、72時間後、168時間後、336時間後までそれぞれ保持することにより行った。
【0080】
【表1】
【0081】
上記結果として以下のことがわかった。
【0082】
実施例1〜2及び比較例1の高圧ホースのかしめ部ではいずれも、熱老化前及び熱老化処理24時間後の場合には、かしめ部のガス漏れはなく、この点では差異は認められなかった。しかし、比較例1の高圧ホースのかしめ部では、熱老化処理72時間後においては3Mpaでガス漏れが生じ、熱老化処理168時間後においては1MPaでガス漏れが生じ、熱老化処理366時間後においては加圧開始直後にガス漏れが生じた。これは比較例1の高圧ホースのゴム組成物においては加硫が十分に進行していなかったために、十分な可撓性や機械特性を備えておらず、熱老化に伴ってゴム組成物に劣化が生じて、加圧に伴ってかしめ部での損傷が発生し、ガス漏れに至ったものと考えられる。これに対して、実施例1〜2の高圧ホースの高圧ホースのかしめ部では、熱老化処理366時間後においてもなお3MPaの加圧に対してもガス漏れが生じなかった。これは加硫が十分に進行した結果、優れた可撓性や熱老化に対する耐性や機械特性を有するに至ったためと考えられる。
【0083】
一般に、流体を輸送する高圧ホースは、そのホース端部に固定された継手部分において、流体の漏れや損傷を起こすことが知られており、かしめ部において優れた可撓性や熱老化に対する耐性を示すことは、過酷な条件でもゴムらしい機械特性を保つことを示したということができる。
【0084】
すなわち、本発明の高圧ホースは、十分に加硫が進行した結果、かしめ部において熱老化処理後も十分な気密性能を示す優れた可撓性や機械特性、及びガスバリヤ性(気体遮断性)を備えていた。そしてこの高圧ホースは、かしめ部の作業性に優れ、且つ製造の容易なものであった。また熱老化にも優れた耐性を有していた。本発明の高圧ホースは、ガスバリア性(気体遮断性)の評価においては、短鎖でないアルキル化アンモニウム塩処理による有機化マイカを含むゴム組成物を用いた高圧ホースとほぼ同等であった。上記ガス漏れ評価においては窒素ガスを用いているが、フロンR134a等のフッ化炭素等の冷媒、及び水素、空気等の一般的な気体や水等の流体に対しても優れた遮断性を示し、これらにおいても、窒素ガスに対するのと同様の十分な気密性能を示すものであった。
【0085】
【発明の効果】
本発明の高圧ホースに使用されるゴム組成物は、層状鉱物フィラーが特定の炭素原子数のアルキル鎖を有するアルキル化アンモニウム塩の使用により、従前のアルキル化アンモニウム処理層状鉱物フィラーよりも、優れたガスバリヤ性を維持しながら、加硫への悪影響が少なく、加硫が十分に進行する点で優れている。このために、本発明のゴム組成物を架橋(加硫)して得られたゴム組成物は、従前のアルキル化アンモニウム処理層状鉱物フィラーによるものと比べて、圧縮永久歪みが良好であり、その他の機械的特性が良好であるものとすることができる。
【0086】
これにより、本発明の高圧ホースは、優れたガスバリヤ性、優れた冷媒遮断性(流体遮断性)と、十分に加硫が進行することによる優れた可撓性、熱老化に対する耐性及び機械特性等を備えている。またこのためカシメ等の作業性にも優れたものである。
【0087】
また、層状鉱物フィラー及びゴムを含むゴム組成物に特定の炭素数を有する短鎖アルキル化アンモニウム塩が導入された本発明の高圧ホースに使用されるゴム組成物は、十分な加硫の進行を可能とする結果、様々な特性の高圧ホースの設計が容易になるとの利点も得られる。
【0088】
さらに、本発明の冷媒輸送用高圧ホース等の高圧ホースに使用されるゴム組成物は、層状鉱物フィラー、特定の炭素数を有する短鎖アルキル化アンモニウム塩及びゴム等を、通常の簡易な混練機で分散することにより得られるので、良好な生産性を有するものである。このため本発明の高圧ホースも高い生産性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の冷媒輸送用高圧ホースの代表的な構造の1例を示す斜視図である。
【図2】本発明の冷媒輸送用高圧ホースの代表的な構造の別の1例を示す斜視図である。
【図3】従来の冷媒輸送用高圧ホースの代表的な構造の1例を示す斜視図である。
【図4】かしめ部を含む高圧ホースの端部を一部軸方向に破断して示す部分断面図である。
【符号の説明】
11 管状の内側ゴム層
12a,12b 補強層
13 管状の中間ゴム層
14 外側ゴム層
15 管状の内管ゴム層
16 ナイロンガスバリヤ層
21 ソケット
23 ニップル
25a 第1のかしめ箇所
25b 第2のかしめ箇所
25c 第3のかしめ箇所
27 高圧ホース
Claims (13)
- 下記の式(1)
R1R2R3R4−N+・X− (1)
(但し、R1、R2、R3およびR4が炭化水素基であり、このうち3個以上が炭素原子数1〜5であり、X−が陰イオンである)
で表されるアルキル化アンモニウム塩で処理された層状鉱物フィラーおよびゴムを含むゴム組成物から形成されている管状ゴム層を含むことを特徴とする高圧ホース。 - 管状の内側ゴム層、その上を覆う管状の繊維の補強層、及びその上を覆う管状の外側ゴム層を含む高圧ホースにおいて、
少なくとも内側ゴム層が、下記の式(1)
R1R2R3R4−N+・X− (1)
(但し、R1、R2、R3およびR4が炭化水素基であり、このうち3個以上が炭素原子数1〜5であり、X−が陰イオンである)
で表されるアルキル化アンモニウム塩で処理された層状鉱物フィラーおよびゴムを含むゴム組成物から形成されていることを特徴とする高圧ホース。 - 層状鉱物フィラーがゴム中に分散されている請求項1又は請求項2に記載の高圧ホース。
- 層状鉱物フィラーの層間にアルキル化アンモニウム塩が存在している、請求項1〜3のいずれかに記載の高圧ホース。
- 式(1)におけるR1、R2、R3およびR4の全てがそれぞれ炭素原子数1〜5の範囲にある請求項1〜4のいずれかに記載の高圧ホース。
- X−が、ハロゲン化物イオンである請求項1〜5のいずれかに記載の高圧ホース。
- 層状鉱物フィラーが、マイカ、タルクおよびクレーから選択される少なくとも1種である請求項1〜6のいずれかに記載の高圧ホース。
- ゴムが、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴム、天然ゴムから選択される少なくとも1種である請求項1〜7のいずれかに記載の高圧ホース。
- ハロゲン化ブチルゴムが、イソブチレンを主成分とする共重合体のハロゲン化物からなる請求項8に記載の高圧ホース。
- イソブチレンを主成分とする共重合体のハロゲン化物が、臭素化(イソブチレン−4−メチルスチレン共重合体)である請求項9に記載の高圧ホース。
- アルキル化アンモニウム塩で処理された層状鉱物フィラーが、ゴムに対して0.5〜150質量%含まれている請求項1〜10のいずれかに記載の高圧ホース。
- ゴム組成物が架橋されている請求項1〜11のいずれかに記載の高圧ホース。
- 層状鉱物フィラーの長軸方向が、それを含む管状ゴム層の表面に対して平行に存在している請求項1〜12のいずれかに記載の高圧ホース。
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