JP4547727B2 - 冷媒輸送用ホースおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷媒輸送用ホース、ラジエーターホース、熱水ホース、スチームホースを含むホースの材料に適するゴム組成物、および、該組成物から構成された内管および/または外管を有するホース、さらには該組成物から構成された内管を有する冷媒輸送用ホースとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷媒輸送用ホース、ラジエーターホース、熱水ホース、スチームホース等のホースに用いるゴム組成物のゴムとして、従来、EPDMあるいはIIR等が用いられてきたが、近年イソモノオレフィンとp−アルキルスチレンとの共重合ゴムのハロゲン化物(以下、BIMSと記す)が、耐水分透過性と耐候性が両立するという点から用いられ始めた。例えば、特表平6−506013号公報には、BIMS、充填剤、プロセス油、および硬化剤を含む型締め硬化要素用組成物が、特表平8−500385号公報には、少なくとも約5重量%のp−アルキルスチレンと、少なくとも約0.4モル%のハロゲンを含むBIMS、充填剤、ゴム配合添加剤、および硬化剤を含むゴム組成物が開示されている。
【0003】
特公平7−116339号公報には、特定の臭素原子含有量/p−アルキルスチレン含有量の比を有するBIMSと、加硫助剤として脂肪酸亜鉛を含有する、主としてホース用のゴム組成物が繊維との接着性がよいことが開示されている。また、特開平9−124848号公報には、BIMSと熱可塑性樹脂とを含有するエラストマー組成物、すなわち、特定のp−アルキルスチレン含有量、特定のハロゲン含有量のBIMSと、熱可塑性樹脂からなる樹脂成分とを含有し、樹脂成分の少なくとも一部が連続相をなし、ゴム成分の少なくとも一部が分散相をなした低透過性ホース用熱可塑性エラストマー組成物が開示されている。
【0004】
このようなホースは、システムとの接続のため、ホース両端部を金具にて加締め変形させ、その反力によって接続部での接続および冷媒等の漏洩を防止している。したがって、金具接触部および/または金具周辺部での冷媒等の漏洩防止機能(金具装着性)、言い換えれば耐セット性は、内管のゴム組成物および/または外管のゴム組成物の使用温度におけるモジュラスおよび老化による圧縮永久歪に大きく影響される。しかしながら、BIMSは上述のようなホースの金具装着性に係わる耐圧縮永久歪性が、IIRよりは優れるものの、EPDMよりは劣り、その改善が望まれている。圧縮永久歪が加硫系の影響を大きく受けることは公知であるが、BIMSの加硫は独特であり、BIMSの加硫についてこれまで十分解明されていない。このため、耐圧縮永久歪性には優れるが、スコーチ性が悪く、加工が極めて困難である等、他の特性、特にスコーチ性と耐圧縮永久歪性をバランスよく改善したBIMS組成物はいまだ知られていない。
【0005】
また冷媒輸送用ホースは、地球温暖化への対応から耐冷媒透過性(冷媒に対するバリアー性)を改善するため、ポリアミド樹脂などのバリヤー樹脂が、冷媒と接触する最内層に積層される場合がある。一方、自動車の居住快適性の要求も強く、ホースの振動吸収性の向上への要求も強い。
冷媒に対するバリヤー性に優れるバリヤー樹脂は、高いヤング率を有し、柔軟性に劣るものがあり、自動車用ホースに適用した時に、圧縮機などから発生する振動や騒音の吸収特性が低く、ホースの振動や騒音の伝達防止に寄与しない場合があった。すなわち、耐冷媒透過性と振動吸収性を両立する材料・技術は見いだされていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、スコーチ性、耐圧縮永久歪性に優れ、安定的に加工でき、ホースの耐水分透過性、耐候性、耐セット性に優れるホース用ゴム組成物、および該ゴム組成物を用いたホース、さらに、それらに加え、ホースの耐冷媒透過性、振動吸収性に優れるホース用ゴム組成物、および、該ゴム組成物を用いた冷媒輸送用ホースとその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、特定組成範囲のBIMSに、特定の加硫系を組み合わせたゴム組成物を用いることにより、スコーチ性を悪化させることなく加工でき、ホースの内管とその外側の補強層との接着性が増大するため、ホースの破壊圧力、耐圧縮永久歪性、耐水分透過性、耐候性が改善されること、さらに特定組成範囲のBIMSに、特定の充填剤を配合したゴム組成物を用い、特定構造の押出機を用いて内管を製造すれば、前記特性に加え、さらに耐冷媒透過性、振動吸収性にも優れる冷媒輸送用ホースが得られることを知得し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、第一の本発明は、
(A)p−アルキルスチレン(PMS)含有量が5〜25重量%、臭素(Br)含有量が1.5重量%以上であり、p−アルキルスチレン単位と臭素単位との重量比が0.15≦Br/PMS≦0.40である、炭素原子数4〜7のイソモノオレフィンとp−アルキルスチレンとの共重合ゴムの臭素化物100重量部、
(B)亜鉛華0.1〜10重量部、および
(C)臭素化アルキルフェノール樹脂1〜15重量部
を含有することを特徴とするホース用ゴム組成物および該組成物を内管および/または外管に用いたことを特徴とするホース
である。
【0009】
第二の本発明は、
(A)p−アルキルスチレン(PMS)含有量が5〜25重量%、臭素(Br)含有量が1.5重量%以上であり、p−アルキルスチレン単位と臭素単位との重量比が0.15≦Br/PMS≦0.40である、炭素原子数4〜7のイソモノオレフィンとp−アルキルスチレンとの共重合ゴムの臭素化物100重量部、および
(D)無機層状化合物25〜200重量部またはタルク20〜200重量部
を含有することを特徴とするホース用ゴム組成物および該組成物を内管に用いたことを特徴とする冷媒輸送用ホース
である。
【0010】
第三の本発明は、
(A)p−アルキルスチレン(PMS)含有量が5〜25重量%、臭素(Br)含有量が1.5重量%以上であり、p−アルキルスチレン単位と臭素単位との重量比が0.15≦Br/PMS≦0.40である、炭素原子数4〜7のイソモノオレフィンとp−アルキルスチレンとの共重合ゴムの臭素化物100重量部、
(B)亜鉛華0.1〜10重量部、
(C)臭素化アルキルフェノール樹脂1〜15重量部、および
(D)無機層状化合物25〜200重量部またはタルク20〜200重量部
を含有することを特徴とするホース用ゴム組成物および該組成物を内管に用いたことを特徴とする冷媒輸送用ホース
である。
【0011】
また、第四の本発明は、
内管とその外側に配する補強層を含む少なくとも2層からなる冷媒輸送用ホースの製造方法において、上記第二の発明または第三の発明のホース用ゴム組成物を用いて、ダイ入口の断面積(a)と、ダイ出口での押出成形物の断面積(b)との比a/b(引落率)が5以上であるダイ内引き落とし押出方式で、内管を成形することを特徴とする冷媒輸送用ホースの製造方法
である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のホース用ゴム組成物(以下、本発明の組成物と記す)とホースと、さらに冷媒輸送用ホースとその製造方法について詳細に説明する。
第一の発明は、BIMSと亜鉛華と臭素化アルキルフェノール樹脂を含有するゴム組成物である。BIMSは、p−アルキルスチレン(PMS)含有量と臭素(Br)含有量が特定範囲にあり、p−アルキルスチレン単位と臭素単位との重量比Br/PMSが特定範囲にある、炭素原子数4〜7のイソモノオレフィンとp−アルキルスチレンとの共重合ゴムの臭素化物である。
【0013】
すなわち、BIMSは、アルキルスチレン(PMS)含有量が5〜25重量、臭素(Br)含有量が1.5重量%以上であり、p−アルキルスチレン単位と臭素単位との重量比が0.15≦Br/PMS≦0.40である、炭素原子数4〜7のイソモノオレフィンとp−アルキルスチレンとの共重合ゴムの臭素化物である。ムーニー粘度(ML1+8、125℃)は30以上である。
【0014】
炭素原子数4〜7のイソモノオレフィンとしては、イソブチレン等を例示することができる。
p−アルキルスチレンとしては、例えば、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン等の炭素原子数1〜5のアルキル基をパラ位に有するスチレンが挙げられる。p−アルキルスチレン含有量は、後述のp−アルキルスチレンのアルキル基の臭素化物も含め、p−アルキルスチレン骨格を有するもの全てについて、BIMS中に、5〜25重量%、好ましくは5〜10重量%である。5重量%未満では、後述するp−アルキルスチレンのアルキル基の臭素化物が所望の含有量に至らず、ゴム組成物の耐圧縮永久歪性が悪化したり、架橋密度が低いため、耐冷媒透過性等が不足するので好ましくない。25重量%超では、ゴム組成物が低温で脆化しやすくなるなど、耐寒性が悪化するので好ましくない。
【0015】
これら、イソモノオレフィンとp−アルキルスチレンとの共重合ゴムの臭素化物としては、含有されるp−アルキルスチレンのパラ位の置換基が炭素原子数1〜5のアルキル基であり、これらの第一および/または第二アルキルの臭素化物から構成されていればいずれのものも使用できる。
臭素含有量は、BIMS中、1.5重量%以上、好ましくは1.5〜3重量%である。1.5重量%未満であると、得られる本発明のゴム組成物の架橋点が少ないため耐圧縮永久歪性、耐冷媒透過性が十分でなく、また補強層を構成する繊維との接着力が弱く、好ましくない。
【0016】
BIMSが、内管としての機能を十分に発揮するためには、一定レベルの架橋密度(したがって一定レベルのモジュラス)と、一定レベルの補強層との接着力を維持することが重要である。そのためには、p−アルキルスチレン(PMS)の含有量が2〜25重量%で、臭素(Br)含有量が1.5重量%以上であり、かつ臭素単位とp−アルキルスチレン単位との重量比が0.15≦Br/PMS≦0.40であるBIMSが必要である。
【0017】
Br/PMSが0.15未満では、加硫が不十分で、モジュラスが不足する。
Br/PMSが0.40を超えると、反応点であるPMSに対し、Brの量が過多となり、Br/PMSが安定しない。要するに、0.15≦Br/PMS≦0.40であると、これから得られた内管および/または外管と補強層との接着強度が大きく、架橋密度が適度であるため、冷媒や水分の透過を抑制する効果が大きい。該重量比が0.20≦Br/PMS≦0.40であると、それらの抑制効果が一段と良好になる。
【0018】
BIMSのムーニー粘度(ML1+8、125℃)が30以上であると、良好な加工特性および優れた機械的強度が得られるが、35〜70であるとさらに好ましい。
BIMSは、例えば、下記の方法で製造される。すなわち、共重合反応器中で、ルイス酸触媒等の触媒および希釈剤等の存在下、イソモノオレフィンとp−アルキルスチレンとを混合して重合させ、共重合ゴムを得る。重合法としては、スラリー重合法、溶液重合法、セメント懸濁重合法等を挙げることができる。溶液重合法、セメント懸濁重合法では、使用する触媒系、共重合ゴムの分子量にもよるが、重合温度を−35〜−100℃とすればよい。総合的な滞留時間は、触媒の活性および濃度、モノマー濃度、反応温度等によるが、一般的には約1分〜5時間、好ましくは約10〜60分である。
【0019】
臭素化は、イソモノオレフィンとp−アルキルスチレンとの共重合ゴムに、ラジカルハロゲン化等の公知の方法により実施される。臭素化に使用するラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチルニトリル等が挙げられる。
BIMSには、市販品があり、例えば、エクソン化学(株)のEXXPRO(登録商標)が挙げられる。
【0020】
第一の発明では、上記特定組成のBIMSに、特定の加硫系を組み合わせることにより、ゴム組成物のスコーチ性と耐圧縮永久歪性が共に改善される。結果として耐セット性の良好なホース、金具装着性の良好なホースが得られる。特定の加硫系は亜鉛華と臭素化アルキルフェノール樹脂の組み合わせである。
【0021】
亜鉛華(ZnO)の含有量は、BIMS100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。0.1重量部未満では、加硫が不十分で、強度等の物性が十分には得られず、したがって耐圧縮永久歪性に劣るので好ましくない。10重量部を超えると、加硫への効果が飽和し、また耐熱性も損なわれるので、好ましくない。
【0022】
臭素化アルキルフェノール樹脂は、フェノールと臭素化アルキルフェノールのホルムアルデヒド等による縮合物を骨格とする樹脂である。市販品があり、例えば、田岡化学工業(株)のタッキロール(登録商標)250−I等を使用することができる。臭素化アルキルフェノール樹脂の含有量は、BIMS100重量部に対し、1〜15重量部、好ましくは2〜10重量部である。1重量部未満では、耐圧縮永久歪性の改善効果がない。15重量部を超えると、耐圧縮永久歪性の改善効果は飽和し、また、耐熱性が損なわれる場合がある。
【0023】
本発明の上記加硫系には、さらに、他のゴム、加硫助剤、加硫促進剤を加えてもよい。特に加硫助剤は、本発明の必須成分である亜鉛華を活性化させるのに有効であり、使用が推奨される。
他のゴムとしては、ブチル系ゴム、エチレン・プロピレン系共重合ゴム等が例示される。
【0024】
加硫助剤としては、アセチル酸、プロピオン酸、ブタン酸、ステアリン酸、アクリル酸、マレイン酸等の脂肪酸;アセチル酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、ブタン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、マレイン酸亜鉛等の脂肪酸亜鉛等が挙げられる。
加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)等のチウラム系;ヘキサメチレンテトラミン等のアルデヒド・アンモニア系;ジフェニルグアニジン等のグアニジン系;ジベンゾチアジルジサルファイド(DM)等のチアゾール系;シクロヘキシルベンゾチアジルスルフェンアマイド等のスルフェンアミド系;等が挙げられる。
【0025】
本発明の組成物には、上記必須成分に加え、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の添加剤を必要に応じて配合してもよい。その他の添加剤としては、例えば、カーボンブラック、クレー等の充填剤、パラフィン系オイル等の軟化剤、可塑剤、加工助剤、老化防止剤、顔料等が挙げられる。
本発明の組成物は、上記構成をとることにより、耐水分透過性、耐候性に加え、耐圧縮永久歪性にも優れ、同時に、耐スコーチ性に優れ、安定的に加工することができる。
【0026】
本発明の組成物の製造方法としては、BIMSに、必要に応じてカーボンブラック、パラフィン系オイル等のその他の添加剤を加え、ロール、バンバリーミキサー等により混合し、引き続いて、上記特定量の亜鉛華およびアルキルフェノール樹脂、必要に応じてその他の加硫助剤、加硫促進剤を加えて混合し、例えば140〜250℃で約5〜200分間、加熱加硫する方法が例示される。
【0027】
第二の発明では、上記特定組成のBIMSに、無機層状化合物を配合することにより、ホースの耐冷媒透過性と振動吸収性が共に改善される。
第三の発明では、上記特定組成のBIMSに、亜鉛華、臭素化アルキルフェノール樹脂および無機層状化合物を配合することにより、組成物の耐スコーチ性が改善され、安定的に加工でき、ホースの耐水分透過性、耐候性、耐冷媒透過性と振動吸収性が共に改善される。
【0028】
無機層状化合物とは、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を形成している物をいう。層状構造とは、原子が共有結合等によって強く結合して蜜に配列した面が、ファン・デル・ワールス等の弱い結合力によってほぼ平行に積み重なった構造をいう。無機層状化合物としては、グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、粘土系鉱物等を挙げることができる。具体的には、タルク、カオリナイト、ベントナイト等のクレー、モンモリロナイト、白雲母・金雲母等のマイカ、緑泥石等が例示される。
【0029】
無機層状化合物の中では、微粉末タルクが好ましく、比表面積17,000cm2 /g以上で、平均粒径が0.2〜20μm、特に0.2〜2.5μmのものが好ましい。また平均粒径5μm以上の粒子の含有量が10重量%以下、好ましくは8重量%以下であるとより有効である。なおタルクの平均粒径の測定には、レーザー光散乱方式粒度分布計を用いた。微粉末タルクは、その平均アスペクト比が3以上、好ましくは4以上、特に好ましくは5以上のものがより有効である。
【0030】
無機層状化合物、特にタルクは、表面処理をしてあっても無処理であっても差し支えない。表面処理としては、シランカップリング剤、高級脂肪酸、脂肪酸金属塩、有機チタネート等の処理剤を用いた化学的または物理的処理が例示される。表面処理したものを用いると、混合加工性、押出加工性等の加工性に優れたゴム組成物を得ることができる。
【0031】
無機層状化合物の配合量は、BIMS100重量部に対し、25〜200重量部であり、好ましくは25〜150重量部である。ただしタルクの場合の配合量は20〜150重量部であり、好ましくは25〜150重量部である。この範囲を逸脱すると、ホースの耐冷媒透過性が十分でなく、柔軟性と加工性も損なわれる場合がある。
第二の発明および第三の発明においても、第一の発明の配合物等がそのまま使用可能であり、第一の発明の組成物の製造方法と何ら変わることなく、実施される。
【0032】
次に、上記の本発明のホース用組成物を用いた冷媒輸送用ホース(以下、本発明のホースと記す)と第四の発明の冷媒輸送用ホースの製造方法について説明する。
本発明の冷媒輸送用ホースの第一の態様は、内管と補強層と外管を有し、ホース内を冷媒が流通するホースであって、本発明の組成物をホースの内管および/または外管に用いる場合である。すなわち、本発明の冷媒輸送用ホースの内外管共に本発明の組成物を用いてもよいし、内外管のいずれか一方に、本発明の組成物を用い、他方を一般的なゴム組成物等で構成してもよい。さらに、ホースの内管、外管は、一層または複数層としてもよく、その際、少なくとも内管の一層を本発明のゴム組成物で構成すればよい。
【0033】
また例えば、内管と外管の中間に中間層を設け、補強層を二重に設けた構造のホースをも包含する。なお、内管および/または外管の一部の層に、ホースの柔軟性、振動吸収性を損なわない範囲で、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー等またはそれらの組成物を使用してもよい。
【0034】
本発明の冷媒輸送用ホースの第二の態様は、内管と補強層の少なくとも2層を有するホースであって、本発明の組成物を少なくともホースの内管に用いる場合である。内管は、一層または複数層としてもよく、その際、少なくとも内管の一層を本発明のゴム組成物で構成すればよい。なお、内管の一部の層に、ホースの柔軟性、振動吸収性を損なわない範囲で、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー等またはそれらの組成物を使用してもよい。
ホースの内管の厚さは、1.5mm以上であるのが好ましく、1.5〜3.0mmであるのがより好ましい。この範囲を逸脱すると、耐冷媒透過性、柔軟性が十分でない場合がある。
【0035】
補強層としては、補強糸や補強鋼線で形成されるブレード状、スパイラル状、補強糸で形成されるネット状、さらにはフィルム状の構造が例示される。補強糸としては、例えば、アラミド繊維、ナイロン、レーヨン、ビニロン、ポリエステル等の糸が例示される。補強鋼線としては、防錆および接着性付与のためにブラスメッキあるいは亜鉛メッキされた鋼線が例示される。振動吸収性の点からは、補強糸がより好ましい。
【0036】
本発明のホースは、補強層の外側に外管を形成してもよい。外管は、内管のゴム組成物と同様な加硫条件で加硫できるゴム組成物で構成されていればよく、ゴムとしては、ハロゲン化ブチルゴム等のブチル系ゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム等のエチレン・プロピレン系共重合ゴム、クロロプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム等を挙げることができる。好ましいのは、本発明のゴム組成物、ブチル系ゴム、エチレン・プロピレン系共重合ゴムである。
外管の厚さは、一般のホースの場合と変わるところはなく、1.0mm以上であるのが好ましく、1.0〜1.5mmであるのがより好ましい。この範囲を逸脱すると、耐水分透過性、柔軟性が十分でない場合がある。
【0037】
第一の発明の組成物からなるホースの製造には、従来のホースの製造方法を用いることができる。例えば、未加硫の本発明のゴム組成物を、予め離型剤を塗布したマンドレル上に押出機により押し出し、内管を形成する。次に、内管上に必要に応じて接着剤を塗布し、さらに内管上に、編組機を使用して補強糸あるいは補強鋼線を編組し、補強層を形成する。必要に応じて補強層上に、外管との接着のために接着剤を塗布した後、押出機により本発明の組成物を押し出し、外管を形成する。
【0038】
その後、スチーム等による圧力と温度を直接、あるいはテープ等を用いてホースを包むことによりかけ、130〜200℃、好ましくは150〜170℃に加熱して加硫する。加硫後、冷却し、最後にマンドレルを引抜き、本発明のホースを製造することができる。上記接着剤としては、イソシアネート系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、フェノール樹脂系、レゾルシン系、塩化ゴム系等が挙げられる。
【0039】
第二の発明および第三の発明の組成物、すなわち、無機層状化合物を含有する組成物からなる冷媒輸送用ホースの製造は、ダイ内引き落とし押し出し方式の押出機を用いて実施するのが好ましい。製造方法の1例を、クロスヘッドダイ型の押出機の要部を示す図1を用いて説明する。
【0040】
予め混合して得られた本発明のゴム組成物が、押出機2より供給ライン3、ついで、クロスヘッドダイ1の入口5に供給される。該組成物は、ダイ1内に配設されるマンドレル4上に押し出され、クロスヘッドダイ出口6の外に配設されたキャタピラー(図示せず)によりマンドレル4に沿って、引張られ、マンドレル4の外周にホースの内管として成形される。クロスヘッドダイ1の入口5における、クロスヘッドダイ1の内壁とマンドレル4により囲まれる空間(クリアランス)の断面積aと、クロスヘッドダイ出口6から押し出された内管の断面積bとの比a/b(引落率)が5以上、好ましくは10以上、より好ましくは10〜100となるようにする。
【0041】
上記引落率を維持するために、上記空間の断面積a、クロスヘッドダイ1の入口5と出口6の間の距離、キャタピラーによる引っ張り速度を調節すればよい。クロスヘッドダイ1の出口6から押し出された内管をさらにキャタピラーで引っ張るとホース内管の肉厚を一層薄くすることができる。
上記引落率が上記範囲内であると、ゴム組成物中の無機層状化合物が、押し出し方向、すなわち内管の長さ方向に平行に配列し、しかも積み重なった状態になり、ホース内管からの冷媒等のガスの透過を抑制する。
補強層および必要ならば設ける外管の成形は、上記第一の発明のゴム組成物を用いる場合と同様に実施される。
【0042】
第一の発明のゴム組成物からなるホースは、該組成物を内管および/または外管に用いているので、耐水分透過性、耐候性に加え、耐圧縮永久歪性(耐セット性)にも優れ、したがって、流体への水分の混入を嫌うフレオンホース、エアコンホース等の冷媒輸送用ホース、高温水が通るラジエーターホース、熱水ホース、水蒸気が通るスチームホース等のホースとして好適に用いることができる。
【0043】
第二の発明のゴム組成物からなる冷媒輸送用ホースは、該組成物を内管に用いているので、耐水分透過性、耐候性に加え、耐セット性、耐冷媒透過性、振動吸収性にも優れ、したがって、流体への水分の混入を嫌うフレオンホース、エアコンホース等の冷媒輸送用ホースとして好適に用いることができる。
【0044】
また第三の発明のゴム組成物からなる冷媒輸送用ホースは、該組成物を内管に用いているので、耐水分透過性、耐候性に加え、耐冷媒透過性、振動吸収性にも優れ、したがって、流体への水分の混入を嫌うフレオンホース、エアコンホース等の冷媒用ホースとして好適に用いることができる。またさらに、高温水が通るラジエーターホース、熱水ホース、水蒸気が通るスチームホース等のホースとしても好適に用いることができる。
【0045】
【実施例】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。
(実施例1〜8、比較例1〜12、従来例1〜2)
表1に示す実施例、比較例のゴム組成物を、ラボ用混合機を用いて混練し、製造した。表1中、各成分の配合量の単位は重量部である。無配合の場合は空欄である。得られた組成物について、以下に示す方法で耐スコーチ性、耐圧縮永久歪性、接着性を測定し評価した。結果を表1に示した。また、耐水分透過性を必要とするホース用のゴム組成物として、従来用いられてきたIIRまたはEPDMを、それぞれ用いた組成物を同様に製造し、参考のためにそれらの評価結果も併せて表1に示した。
【0046】
1)耐スコーチ性
JIS K 6300 5 ムーニー・スコーチ試験に記載の方法に準拠して、試験温度125℃でムーニー・スコーチ(t5=ML−5up)を測定した。単位は〔分〕である。ML−5upは、加工の安定性から長い方が好ましく、目標値は8〔分〕以上である。
【0047】
2)耐圧縮永久歪性
組成物をラボ用プレス加硫機を用い、160℃で30分間加硫し、JIS K6262に規定された大型試験片を作製した。JIS K6262に準拠して、試験片を25%圧縮し、120℃に70時間または150℃に70時間保持し、その後、加圧を除き、常温で30分放置した後の圧縮永久歪率を測定した。0%は、完全に歪みが無くなり原形に復帰したことを示し、100%は、歪みが全く回復しなかったことを示す。単位は〔%〕である。なお、目標値は、120℃×70時間では50%以下、150℃×70時間では70%以下である。
【0048】
3)100%モジュラス
組成物をラボ用プレス加硫機を用い、160℃で30分間加硫し、厚さ2mmのシートを成形し、ダンベル状試験片を作製した。JIS K6251に準拠して、試験片の100%モジュラス(引張試験における100%伸長時のゴム組成物の引張応力値)を測定した。
【0049】
4)糸との接着性・剥離試験
組成物をラボ用プレス加硫機を用い、160℃で30分間加硫し、JIS K6256に準拠して、短冊状試験片(25mm幅)を作製し、試験片の剥離試験を行った。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
(実施例1〜3、比較例1〜9)
本発明のBIMS中の臭素含有量、Br/PMSの効果および臭素化アルキルフェノール樹脂の配合効果を説明する実施例である。
実施例1〜3と比較例1〜9を比較すると、比較例1〜6は、BIMS中の臭素含有量が本発明の範囲外であり、かつ、臭素化アルキルフェノール樹脂を配合せず、本発明の範囲外であるため、いずれも耐圧縮永久歪性(耐セット性)が劣ることが分かる。
【0054】
また、比較例7〜9は、臭素化アルキルフェノール樹脂を配合しているが、BIMS中のBr/PMSが本発明の範囲外であるため、本発明の加硫系を用いても、比較例1〜3に対し、耐圧縮永久歪性の改善効果が不十分であり、また、補強糸との接着性が劣っている。これに対し、実施例1〜3は、BIMS中の臭素含有量、臭素化アルキルフェノール樹脂の配合量、BIMS中のBr/PMSのすべてが本発明の範囲内であるため、耐圧縮永久歪性、補強糸との接着性に優れている。
【0055】
(実施例2、4〜7、比較例10〜12)
本発明の亜鉛華、臭素化アルキルフェノール樹脂の配合効果を説明する実施例である。
実施例2に対し、比較例10は本発明の臭素化アルキルフェノール樹脂を配合していない点が相違する。そのため、比較例10は、加硫系の選択により耐圧縮永久歪性は改善できたが、耐スコーチ性に劣ることが分かる。したがって、比較例10の組成物では、成形加工時にヤケが発生し、それ以上の加工ができなかった。これに対し、実施例2では、耐圧縮永久歪性が改良されると共に、耐スコーチ性にも優れている。したがって、実施例2の組成物は、成形加工が容易であり、かつ、耐圧縮永久歪性に優れる。
【0056】
実施例4、5と比較例11を比較すると、比較例11は、本発明の必須成分の一つである亜鉛華を配合していないため、加硫が進行せず、したがって、耐圧縮永久歪性も悪い。これに対し、実施例4、5は、亜鉛華の含有量が本発明の範囲内であり、加硫が良好で、耐圧縮永久歪性が良好である。また、実施例5は、亜鉛華の含有量が本発明の範囲の上限値であり、耐圧縮永久歪性の改善効果が飽和していることが分かる。
【0057】
実施例6、7と比較例12を比較すると、比較例12は、本発明の必須成分の一つである臭素化アルキルフェノール樹脂を配合していないため、耐圧縮永久歪性が劣る。これに対し、実施例6、7は、臭素化アルキルフェノール樹脂の含有量が本発明の範囲内であり、耐圧縮永久歪性に優れていることが分かる。実施例6では、臭素化アルキルフェノール樹脂の含有量が本発明の範囲の下限値であり、耐圧縮永久歪性の改善効果は実施例2と比較してやや小さい。実施例7は、臭素化アルキルフェノール樹脂の含有量が本発明の範囲の上限値であり、実施例2との比較で、耐圧縮永久歪性の改善効果が飽和していることが分かる。
【0058】
実施例と比較例から得られた、BIMSのBr/PMSと、ゴム組成物の100%モジュラス(引張試験における100%伸長時のゴム組成物の引張応力値)との関係を図3に示した。これはBIMSのBr/PMSと、ゴム組成物の架橋密度との関係を示唆するが、これから一定のBr/PMSの時に、一定のモジュラスが得られることが分かる。
【0059】
実施例と比較例から得られた、BIMSのBr/PMSと、ゴム組成物のポリエステル補強糸との剥離強度との関係を図4に示した。これはBIMSの一定のBr/PMSが、接着力に大きい影響を与えることが分かる。
【0060】
なお、実施例、比較例、従来例で用いた配合物は以下のとおりである。
Cl−IIR :エクソンブチル1066、エクソン化学(株)製
EPDM :三井EPT4070、三井石油化学工業(株)製
カーボンブラック(HAF級):シースト3(登録商標)、東海カーボン(株)製
パラフィン系オイル:マシン油22、昭和シェル石油(株)製
亜鉛華(酸化亜鉛):亜鉛華3号、正同化学工業(株)製
ステアリン酸 :ビーズステアリン酸、日本油脂(株)製
ステアリン酸亜鉛 :ステアリン酸亜鉛、正同化学工業(株)製
臭素化アルキルフェノール樹脂:タッキロール250−I(登録商標)、田岡化学工業(株)製
イオウ :粉末イオウ、(株)軽井沢精錬所製
【0061】
シリカ :ニップシールVN3(登録商標),日本シリカ工業(株)製
炭酸カルシウム :重質炭酸カルシウム、丸尾カルシウム(株)製
クレー :SUPREX・clay(登録商標)、HUBER Corp.製
マイカ :ヤマグチマイカA−51、山口雲母工業(株)製
タルク :ミストロンベーパー(登録商標)、日本ミストロン(株)製
加硫促進剤TT :テトラメチルチウラムジスルフィド、ノクセラーTT(登録商標)大内新興化学(株)製
加硫促進剤DM :ジベンゾチアジルジサルファイド、ノクセラーDM(登録商標)、大内新興化学(株)製
加硫促進剤TRA :2−ジペンタメチレン−チウラムテトラスルフィド、サンセラーTRA(登録商標)、三新化学工業(株)製
加硫促進剤CZ :N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル スルフェンアミド、ノクセラーCZ(登録商標)、大内新興化学(株)製
【0062】
(実施例8〜18、比較例5、13〜24)
表2に示す実施例、比較例のゴム組成物を、ラボ用混合機を用いて混練し、製造した。表2中、各成分の配合量の単位は重量部である。得られた組成物を、ラボ用プレス加硫機を用いて、160℃で30分間加硫し、膜厚0.5mmのシートを製造した。このシートを用いて、以下に示す方法で耐冷媒透過性、耐水分透過性を測定し評価した。結果を表2に示した。合わせて組成物のムーニースコーチ、圧縮永久歪および接着性も表2に示した。
【0063】
5)耐冷媒透過性
図2に示すステンレス鋼製カップ10に、カップ容量の半分の冷媒12(代替フロンHFC134a)を入れ、カップ10の開口部を、上記シート14で覆い、その上部に焼結金属板16を載せ、固定部材18を介して、ボルト20とナット22で締める。その後、カップ10を、100℃の雰囲気に放置し、24時間後に全体の重量を測定し、減量分を算出して、下記数式でガス透過係数を算出し、耐冷媒透過性を評価した。
ガス透過係数[mg・mm/24hr・cm2 ]=(M・t)/(T・A)
式中、Aは透過面積[cm2 ]、Tは試験時間[day]、Mは減少重量[mg]、tはシートの膜厚[mm]である。
耐冷媒透過性は、ガス透過係数が8.0mg・mm/24hr・cm2 未満であるのが好ましい。
【0064】
6)耐水分透過性
冷媒12の代わりに、水を用い、雰囲気温度を80℃にする以外は、上記5)と同様に重量変化を測定し、同様に計算して、水分透過係数を算出し、耐水分透過性を評価した。
耐水分透過性は、水分透過係数が1.2mg・mm/24hr・cm2 未満であるのが好ましい。
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
(実施例8、9、比較例5、13〜18)
無機層状化合物およびタルクの配合効果を説明する実施例である。
実施例8、9と比較例5、13〜18を比較すると、実施例8、9は、それぞれ無機層状化合物のクレーまたはマイカの含有量が25重量部以上であるため、いずれもホースの耐冷媒透過性の改善効果が十分である。一方比較例5はBIMS中に無機層状化合物を含有していないため、比較例13〜16は含有する無機化合物が層状構造でないため、いずれもホースの耐冷媒透過性の改善効果が認められない。
また比較例17、18は、それぞれ無機層状化合物のクレーまたはマイカの含有量が25重量部未満であるため、いずれもホースの耐冷媒透過性の改善効果が不十分である。
【0069】
(実施例10、11、比較例3、5、19、20)
BIMSのポリマー組成の効果を説明する実施例である。
実施例10、11、比較例5と比較例19、20を比較すると、臭素含有量が2.0重量%のBIMSの場合は、タルク含有量が15重量部以上で耐冷媒透過性が優れるのに対し、臭素含有量が1.2重量%のBIMSの場合は、タルク含有量が30重量部を超えて同等になることが分かる。また、無機層状化合物がタルクの場合は、他の無機層状化合物の含有量より、少量であっても有効なことを意味する。これは、臭素含有量が多いBIMSを用いる方が、BIMSの架橋密度が高くなり、冷媒の透過を防止する効果が高くなるためと推考される。
【0070】
(実施例10、12、13、比較例21〜23)
タルクの配合量の効果を説明する実施例である。
実施例10、12、13と比較例21の対比から、タルクの含有量が20重量部未満であると、タルクの配合量が少なすぎるため、耐冷媒透過性の改善が不十分であることが分かる。
また、実施例10、12、13と比較例23の対比から、タルクの含有量が200重量部を超えると、組成物の混合加工性および押出加工性が悪くなり、安定してホースを成形することができず、ホースにボイドが生じる場合があり、耐冷媒透過性がばらつく原因になることが分かる。
【0071】
(実施例14〜18、比較例24)
本発明の亜鉛華、臭素化アルキルフェノール樹脂およびタルクを同時に配合した効果を説明する実施例である。
実施例14〜16は、タルクの配合量を変えた実施例であり、実施例17、18はBIMSの組成を変えた実施例であるが、いずれも本発明の範囲内であるため、耐圧縮永久歪性、耐スコーチ性に優れ、かつ、耐冷媒透過性にも優れており、最も好ましい実施例である。なお、比較例24は、タルクの配合量は20重量部未満であるため、耐冷媒透過性が僅かに不足している。
【0072】
(応用実施例1〜2、応用比較例1〜2)
実施例11のゴム組成物(ただし応用比較例1の場合に限り、比較例5のゴム組成物)を、ゴム用クロスヘッドダイ型の押出機で、直径14mmのマンドレルの外周に押出し、ホースの内管を成形した。内管の肉厚を表3に示した。内管の外側に、ポリエステル繊維からなる補強材を編み組して、補強層を形成した。その後、ゴム用クロスヘッドダイ型の押出機を用いて、表3に示すゴム組成物を押出し、肉厚1.2mmの外管を成形した。ついで、外管の外側に、被鉛機で被鉛し、154℃で60分間、スチーム加硫した。その後、剥鉛機で剥鉛し、マンドレルを抜取り、ホースを得た。
【0073】
得られたホースの耐冷媒透過性、耐水分透過性および振動吸収性の測定と評価を下記の方法によって行った。結果を表3に示した。
7)耐冷媒透過性
長さ45cmのホース4本のうち、3本に冷媒(HFC134a)をホースの容積1cm3 当たり0.6g±0.1g封入し、他の1本は空のまま密栓した。
これら4本を、80℃の恒温槽に96時間保持し、24時間毎に重量を測定した。このとき冷媒を封入したホースの96時間後の内圧は、試験温度における飽和蒸気圧に保持されていることを確認した。冷媒透過量は、24時間以降96時間までのホースの自重変化分を除く、重量損失分として、下記数式により算出した。
D=[(B/S1)−(C/S2)]×100
式中、Dは冷媒透過量[g/72hr/m]、Bは冷媒封入ホースの24〜96時間の間の損失重量[g]、Cは冷媒未封入ホースの24〜96時間の間の損失重量[g]、S1は冷媒封入ホースの長さ[m]、S2は冷媒未封入ホースの長さ[m]を示す。
冷媒透過量は4g/72hr/m未満であるのが、好ましい。
【0074】
長さ45cmのホース3本を、50℃のオーブンに5時間保持後、冷却し、ホースの内容積の80%に相当する容量の乾燥剤モレキュラーシーブ3Aを充填し、密封した。これを50℃、95%RHの雰囲気下に放置し、120時間毎に400時間まで乾燥剤の重量変化を測定し、増加分をホース面積および24時間で除して、1日当たりの水分透過量を示す水分透過係数[mg/cm2 /24h]を算出した。水分透過係数が1mg/cm2 /24h未満であるのが好ましい。
【0075】
長さ45cmのホース2本を、所定の曲率半径を有する円弧に沿って曲げ、曲げ力を測定した。曲率半径は、ホース外径の10倍(10D)から3倍の間である。得られた曲げ力と曲率半径との関係をプロットした曲線より、規定の半径(4D)のときの曲げ力を読み取り、ホースの柔軟性、すなわち振動吸収性として評価した。曲げ力は、15[N]未満であるのが好ましい。
【0076】
【表7】
【0077】
応用実施例1と応用比較例1との比較から、本発明のゴム組成物を用いたホースが、耐冷媒透過性および振動吸収性に優れることが分かる。
応用実施例1〜2と、応用比較例2との比較から、内管の肉厚が1.5mm以上であると、耐冷媒透過性および振動吸収性に優れることが分かる。
【0078】
(応用実施例3〜7)
実施例11のゴム組成物を、ゴム用クロスヘッドダイ型の押出機で、直径14mmのマンドレルの外周に肉厚2.0mmで押出し、クロスヘッドダイの入り口断面積aとクロスヘッドダイ出口での押出物の断面積bとの比a/b(引落率)を表4に示す値となるようにクロスヘッドダイ内で引き落として押し出しを行い、ホースの内管を成形した。補強層および外管の成形は、応用実施例1と同様に実施した。ホースの性能評価結果(冷媒透過量、水分透過量、曲げ力)を表4に示した。
【0079】
【表8】
【0080】
図5に、応用実施例3〜7で得られたホースについて、クロスヘッドダイ内の引落率を横軸に、冷媒透過量を横軸にプロットしたグラフである。
表4より、ダイ内の引落率の増加に伴い、耐冷媒透過性が改良されることが分かる。また図5から、引落率5以上で、耐冷媒透過性に効果があることが推定される。また引落率が100を超えると、耐冷媒透過性の効果が鈍化し、かつ押出圧力の上昇等があり、事実上成形が困難になる。したがって、実効のある引落率は5〜100であり、好ましくは10〜100である。さらに引落率の増加によって、振動吸収性がほとんど変わらないことが分かる。
【0081】
【発明の効果】
本発明のゴム組成物の一つは、耐圧縮永久歪性に優れ、同時に、耐スコーチ性に優れ安定に加工でき、耐水分透過性、耐候性にも優れる。また、他のゴム組成物は、クロスヘッドダイ型の引き落とし押し出し方式で内管に成形すると、耐水分透過性、耐冷媒透過性、振動吸収性に優れる冷媒輸送用ホースになる。したがって、本発明のゴム組成物を用いたホースは、冷媒輸送用ホース、さらにはラジエーターホース、熱水ホース、スチームホース等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の冷媒輸送用ホースの製造に用いるクロスヘッドダイの要部の1例を示す模式図である。
【図2】 本発明のホース用ゴム組成物の耐冷媒透過性と耐水分透過性を測定するために用いる測定用カップの断面図である。
【図3】 本発明のイソモノオレフィンとp−アルキルスチレン(PMS)との共重合ゴムの臭素化物の臭素含有量とPMS含有量との重量比(Br/PMS)と、ゴムの100%モジュラス(引張試験における100%伸長時の引張応力値)との関係を示すグラフである。
【図4】 本発明の内管に使用されたイソモノオレフィンとp−アルキルスチレン(PMS)との共重合ゴムの臭素化物の臭素含有量とPMS含有量との重量比(Br/PMS)と、本発明ゴム組成物とポリエステル補強糸との剥離強度との関係を示すグラフである。
【図5】 本発明の冷媒輸送用ホースを製造する際の、クロスヘッドダイ内の引落率と冷媒輸送用ホースの冷媒透過量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 クロスヘッドダイ
2 押出機
3 供給ライン
4 マンドレル
5 クロスヘッドダイ入り口
6 クロスヘッドダイ出口
10 カップ
12 冷媒または水
14 シート
16 焼結金属板
18 固定部材
20 ボルト
22 ナット
Claims (2)
- 内管とその外側に配する補強層を含む少なくとも2層からなる冷媒輸送用ホースにおいて、内管が下記のホース用ゴム組成物で構成されていることを特徴とする冷媒輸送用ホース。
(A)p−アルキルスチレン(PMS)含有量が5〜25重量%、臭素(Br)含有量が1.5〜3重量%であり、p−アルキルスチレン単位と臭素単位との重量比が0.15≦Br/PMS≦0.40である、炭素原子数4〜7のイソモノオレフィンとp−アルキルスチレンとの共重合ゴムの臭素化物100重量部、
(B)亜鉛華0.1〜10重量部、
(C)臭素化アルキルフェノール樹脂1〜15重量部、および
(D)無機層状化合物としてタルク20〜200重量部
を含有し、シートの冷媒ガス透過係数が8.0mg・mm/24hr・cm2未満であり、水分透過係数が1.2mg・mm/24hr・cm2未満であることを特徴とする冷媒輸送ホース用ゴム組成物。 - 内管とその外側に配する補強層を含む少なくとも2層からなる冷媒輸送用ホースの製造方法において、下記のホース用ゴム組成物を用いて、ダイ入口の断面積(a)と、ダイ出口での押出成形物の断面積(b)との比a/bが5以上であるダイ内引き落とし押出方式で、内管を成形することを特徴とする冷媒輸送用ホースの製造方法。
(A)p−アルキルスチレン(PMS)含有量が5〜25重量%、臭素(Br)含有量が1.5〜3重量%であり、p−アルキルスチレン単位と臭素単位との重量比が0.15≦Br/PMS≦0.40である、炭素原子数4〜7のイソモノオレフィンとp−アルキルスチレンとの共重合ゴムの臭素化物100重量部、
(B)亜鉛華0.1〜10重量部、
(C)臭素化アルキルフェノール樹脂1〜15重量部、および
(D)無機層状化合物としてタルク20〜200重量部
を含有し、 シートの冷媒ガス透過係数が8.0mg・mm/24hr・cm2未満であり、水分透過係数が1.2mg・mm/24hr・cm2未満であることを特徴とする冷媒輸送ホース用ゴム組成物。
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