JP2005014776A - 車両用走行支援装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】走行支援中の速度超過を運転者に報知する警報車速を操舵領域では保舵領域より低く設定し、好ましくは、操舵領域に入る手前から低く設定することにより、操舵領域では車速を十分に下げて設定した操舵量が実現できるようにする一方、保舵領域では車速を上げることを可能として移動時間の短縮を実現する。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、目標位置への走行経路を求めて、この経路に沿って車両が走行するよう、その走行を支援する車両用走行支援装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動操舵や操舵指示を用いて、車両を目標位置へと誘導する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1の技術では、自動操舵時には、操舵アクチュエータの応答速度に合わせた車速に調整するため、ブレーキペダルの基準操作量を予め設定しておき、この基準操作量と実際の運転者による操作量との偏差を計算して、運転者にこの偏差を報知することで、車速が過大あるいは過小になることが防止されて適切な自動駐車制御が可能となると記載されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−278825号公報(段落0024〜0027、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この技術では、車速が一律に設定されているが、実際の制御においては、操舵アクチュエータを駆動して舵角を変更する場合の車速と、舵角を保持している場合の車速とが一律である必要はない。このように車速を一律に設定していると、目標位置までの走行に時間を要したり、運転者が増速を意図する場合でも、十分な速度を得ることができず、制御性が低下する可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、経路に応じて適切な車速で経路誘導を行うことができる車両用走行支援装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明に係る車両用走行支援装置は、初期位置から目標位置へと至る経路を算出する経路算出手段と、該経路に沿った操舵を行い、車両を誘導する自動操舵手段と、自動操舵手段の作動時に、車速が設定されている警報車速を超えた場合には、運転者に対して警報を発する警報装置と、を備えている車両用走行支援装置において、経路算出手段で算出される経路は、操舵角を変化させる操舵領域と、操舵角を保持する保舵領域から構成されており、警報装置においては、保舵領域における警報車速が操舵領域における警報車速より大きく設定されていることを特徴とする。
【0007】
このように保舵領域と操舵領域で警報車速を異ならせ、自動操舵装置の駆動装置が操舵系を駆動する操舵領域では警報車速を低く設定して、駆動装置への負荷を低減することで、操舵を精度よく行うとともに、駆動装置が操舵系を駆動しない保舵領域では、警報車速を高く設定して、操舵領域より高速での移動を可能とすることにより、目標位置への到達時間を短縮することができる。このように経路に応じて警報車速を切り替えることで、制御性が向上する。
【0008】
保舵領域から操舵領域への切替に先立って警報車速を変更するよう設定経路に応じて警報車速を切り替えることが好ましい。このようにすると、保舵領域から操舵領域へ移行するのに先立って運転者は車速を低下させることができるので、操舵領域の初期に警報車速を超える状態が発生するのを抑制することができ、駆動装置への負荷を低減して操舵を精度よく行うことができる。
【0009】
車速がそれを超えたら走行支援を中止する制御限界速度が該当領域の警報車速より大きい車速に設定されており、保舵領域における制御限界速度は、操舵領域における制御限界速度より大きく設定されていることが好ましい。このように制御を中止する速度についても警報車速と同様の設定を行うことで操舵の精度を確保しつつ、制御性を向上させることができる。
【0010】
操舵領域における制御限界速度は、保舵領域における警報車速より大きく設定されていることが好ましい。このようにすると、保舵領域における警報車速を超えた状態で操舵領域へと移行した場合に、すぐに制御が中止されることがないため、制御性を確保できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0012】
以下、本発明に係る走行支援装置として駐車支援装置を例に説明する。図1は、本発明の実施形態である駐車支援装置100のブロック構成図である。この駐車支援装置100は、自動操舵装置20を備えており、制御装置である駐車支援ECU1により制御される。駐車支援ECU1は、CPU、ROM、RAM、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などにより構成され、後述する後方カメラ32で取得された画像を処理する画像処理部10と、自動操舵装置の制御を行う操舵制御部11を有している。この画像処理部10と操舵制御部11とは駐車支援ECU1内でハード的に区分されていてもよいが、共通のCPU、ROM、RAM等を用い、ソフト的に区分されていてもよい。
【0013】
ステアリングホイール22の動きを転舵輪25に伝えるステアリングシャフト21には、ステアリングシャフト21の操舵量を検出する操舵角センサ23と、操舵力を付与する操舵アクチュエータ24が接続されている。ここで、操舵アクチュエータ24は、自動操舵時に操舵力を付与するほか、運転者の操舵時にアシスト操舵力を付与するパワーステアリング装置を兼ねてもよい。操舵制御部11は、操舵アクチュエータ24の駆動を制御するとともに、操舵角センサ23の出力信号が入力される。
【0014】
また、操舵制御部11には、操舵角センサ23の出力のほか、各輪に配置されてその車輪速を検出する車輪速センサ41と、車両の加速度を検出する加速度センサ42の出力が入力されている。
【0015】
駐車支援ECU1の前述した画像処理部10には、車両後部に配置されて、後方画像を取得する後方カメラ32の出力信号である画像信号が入力されるほか、駐車支援にあたって運転者の操作入力を受け付ける入力手段31と、運転者に対して画像により情報を表示するモニタ34と、音声により情報を提示するスピーカー33が接続されている。
【0016】
次に、この駐車支援装置における支援動作を具体的に説明する。ここでは、図2に示されるように、道路210に面して設けられた車庫220内に、後退によって車両200を収容する、いわゆる車庫入れ操作の支援を行う例を説明する。図3は、この第1の制御形態の制御フローチャートであり、図4は、この装置における操舵角と旋回曲率の関係を示す図であり、図5は、この制御において設定される支援経路における旋回曲率、警報速度、限界速度の走行距離に対するグラフである。
【0017】
図3に示される制御は、運転者が入力手段31を操作して、駐車支援制御の開始を駐車支援ECU1に指示してから、指示した目標駐車位置近傍へ到達するまで、あるいは、目標駐車位置へ1回の後退で到達することができないと判定されるまで、運転者が入力手段31から支援動作をキャンセルしない限り駐車支援ECU1により実行され続ける。
【0018】
具体的には、運転者は、モニタ34に表示される後方カメラ32の撮像画像内に目標駐車位置が表示される初期位置に車両200を移動させた後、図3に示される駐車支援処理をスタートさせる。以下、車両200の位置をその基準点(ここでは、車両の後輪の軸中心とする。)を用いて表すこととし、この初期位置をA点、A点における車両を200aで示す。
【0019】
まず、駐車支援ECU1は、操舵角センサ23の出力から操舵角δの絶対値としきい値δthとを比較する(ステップS1)。δがδth以下であって十分に小さいときには、舵角中立状態であると判定し、駐車支援制御への移行を許可し、ステップS2へと移行する。図4に示されるように、中立付近では、ステアリングホイール22、ステアリングシャフト21の回転量である操舵角δに対して転舵輪25の転舵量である曲率γは小さく設定されているため、このしきい値δthは、γが略0の範囲を規定しうるよう設定されていればよく、例えば、15度程度に設定される。これに対して、舵角が中立状態でない場合には、ステップS30へと移行し、スピーカ33とモニタ34により、運転者に対して、舵角が制御範囲から外れている旨を報知し、ステアリングホイール22を操作して、舵角中立状態へと戻すよう促し、再びステップS1へと戻る。これにより、運転者が据え切り操作等によって舵角を略中立状態に戻すと駐車支援制御へと移行することができる。
【0020】
ステップS2では、運転者はモニタ34に表示されている後方カメラ32で撮像した画像を見ながら、入力手段31を操作することにより、画面上に表示されている駐車枠を動かして目標駐車位置へと移動させることにより目標駐車位置の設定を行う。
【0021】
駐車支援ECU1は、画像認識処理により目標駐車位置における車両位置200g、具体的には、基準点Gの位置と、その位置における車両の方向を求める(ステップS4)。このG点の位置は、例えば現在の車両位置における基準点Aに対する相対座標として求めればよい。以下、図2に示されるように、目標位置G点を原点とし、目標位置における車両の向きをz軸方向にとり、これに直交する方向をx軸にとった座標系により説明する。以下、現在の車両の向きとz軸のなす角度を偏向角θと称する。また、A点の位置を座標(x0,z0)で表す。
【0022】
次に、現在位置(初期位置A点)、現在の偏向角θ0から、偏向角θを0にする最短経路(以下、基本経路と称する。)P0を算出する(ステップS6)。この走行軌跡P0は、走行距離に対する旋回曲率(=旋回半径の逆数)変化として設定される。図5(a)は、この基本経路P0の走行距離−旋回曲率線図を示している。
【0023】
この最短経路P0は、舵角を増大させる過程(過程1)と、増大した状態で舵角を維持する過程(過程2)と、舵角を中立に戻す過程(過程3)の3つの過程からなり、過程1と過程3においては、走行距離に対する旋回曲率の変化量(旋回曲率の変化速度)を一定としている。この旋回曲率の変化速度は、車速が走行支援時の上限値の場合であっても、操舵アクチュエータ24の最大操舵速度での曲率変化量を下回るように設定されている。これにより、確実に操舵が行える経路を算出しうる。このとき設定される軌跡の代表例は、まず、初期位置B点からC点まで操舵角の走行距離に対する変化速度を一定として操舵角を増大させていき、C点で操舵角、旋回曲率が設定最大値で、旋回半径が設定最小旋回半径(Rmin、曲率γmax=1/Rmin)となる状態に移行する(過程1)。C点からD点まではこの操舵角(旋回曲率、旋回半径)を維持する(過程2)。D点からは逆に操舵角の走行距離に対する変化速度を一定として操舵角を減少させて、E点で舵角0の中立状態へと移行する(過程3)。この結果、走行軌跡Pは、CD間が半径Rminの円弧であり、BC間、DE間は、それぞれ一端が曲率1/Rmin、他端が曲率0のクロソイド曲線となる。
【0024】
偏向角θが小さい場合には、円弧区間を有しない場合もありうる。ここでBE間の偏向角θの変化量Δθは、以下の(1)式で表せる。
【0025】
【数1】
ここで、γ(p)は、走行距離pにおける曲率を表す。すなわち、偏向角の変化量Δθは、図5(a)に示される走行軌跡の面積S0に合致する。この面積はBC間の経路長をL1(DE間の経路長も同じL1になる。)、CD間の経路長をL2とすると、円弧区間が存在するときは、γmax×(L1+L2)で表せる。一方、Δθが小さい場合には、走行距離に対する曲率変化量を増大時はω、減少時は−ωで一定とした場合、その面積はω×L1 2で表せる。したがって、簡単な演算で経路を求めることができる。
【0026】
次に、この基本経路P0のX方向、Z方向のそれぞれの長さを求める(ステップS8)。基本経路P0のX方向の長さXfとZ方向の長さZfは、以下の(2)(3)式から求めることができる。
【0027】
【数2】
ここで、θ(p)は走行距離pにおける偏向角である。
【0028】
続いて、基本経路P0に直線経路を付与して目標経路P1を設定する(ステップS10)。すなわち、図6に示されるように、基本経路P0の両端を延長してA点からG点へと至る経路を求める。具体的には、A点から基本経路P0の始点B点へと至る直線経路の経路長をL0、基本経路P0の終点E点からG点へと至る直線経路の経路長をL3とすると、次の(4)(5)式が成り立つ。
【0029】
【数3】
L0、L3以外は既知であるから、2式からL0、L3を簡単に求めることができる。
【0030】
図5(b)にこうして設定された目標経路P1の走行距離に対する曲率の対応を示す。図6には、この目標経路P1が描く軌跡を示している。この経路P1においては、目標経路が車両の速度、加速度に依存しない。そのため、走行時に経路に追従する制御が簡略化できる利点がある。
【0031】
続く、ステップS12では、経路が設定できたか否かを判定する。具体的には、L0、L3のいずれもが負でない。つまり、0か正であれば経路が設定できたと判断される。L0が負の場合とは、基本経路P0のX方向の長さXfが、A点とG点とのX方向の距離(x0)を上回る場合であり、L3が負の場合とは、基本経路P0のZ方向の長さZfが、A点とG点とのZ方向の長さz0から初期直線経路のZ軸方向の長さL0×sinθを差し引いた長さを超えている場合である。A点から目標位置G点に到達する経路が正しく設定できないと判定した場合には、ステップS50に移行し、現在位置Aからは目標位置G点に到達できない旨をモニタ34やスピーカー33を用いて運転者に報知し、処理を終了する。運転者は、必要であれば、車両200を移動させて再度駐車支援動作を作動させればよい。
【0032】
次に、設定した目標走行軌跡を基にして走行軌跡上の各位置における警報速度Valarmと、限界速度Vlimitを設定する(ステップS14)。ここで、警報速度Valarmとは、車速がこれを超えたらスピーカ33とモニタ34により、運転者に対して速度を落とすよう指示する車速しきい値であり、限界速度Vlimitとは、車速がこれを超えたら制御を中止する車速しきい値である。したがって、Vlimit>Valarmとなるよう設定される。
【0033】
さらに、本実施形態では、VlimitとValarmを設定した経路に応じて変更していることを特徴とする。初期位置からの走行距離pにおける単位走行距離に対する旋回曲率γの変化量(dγ/dp)を旋回曲率速度ω(p)とすると、走行距離pにおけるVlimit(p)、Valarm(p)は、それぞれ以下の(6)、(7)式で表される。
【0034】
【数4】
ここで、V1>V2、V3>V4に設定される。
【0035】
目標走行軌跡上の走行距離pと、こうして設定したVlimit(p)、Valarm(p)の対応を図5(c)に示す。すなわち、限界速度Vlimit(p)は、旋回曲率γが一定の操舵状態でない(ω(p)=0)場合(保舵領域)には、比較的高い車速であるV1に設定される。これに対して、旋回曲率γを変化させている操舵状態(ω(p)≠0)の場合(操舵領域)には、V1より低いV2に設定される。ここで、V2はこの速度以下であれば、設定した旋回曲率速度の最大値ωmaxを実現するのに操舵アクチュエータ24で実現可能な転舵速度の最高速度以下で足りるよう設定されている。一方、V1はこれより高い速度に設定されている。また、警報速度Valarm(p)は、操舵開始より所定距離(p0)手前から操舵終了までの間、それ以外の場合の警報速度であるV3より低いV4に設定される。図では、V2>V3の場合を例に示したが、V2≦V3に設定してもよい。
【0036】
このように、操舵状態に応じてValarm、Vlimitを変更することで、操舵中は、操舵アクチュエータ24の能力により制限される速度範囲を超えないよう抑制し、制御を確実に実行するともに、操舵中でない場合には、これより高い速度まで許容することにより、目標位置までの移動時間を短縮することができる。さらに、警報速度を操舵開始より所定距離手前から操舵中の値に変更することにより、操舵開始前に十分に減速を行うことができ、制御性が向上する。
【0037】
限界速度Vlimitと警報速度Valarmの設定後、ステップS16からの実際の支援制御へと移行する。ここで、駐車支援ECU1は、シフトレバーが後退位置に設定されたら、図示していない駆動系に対して、エンジンのトルクアップ制御を行うよう指示することが好ましい。トルクアップ制御とは、エンジンを通常のアイドル時より高い回転数で回転させることで、駆動力の高い状態(トルクアップ状態)に移行させるものである。これにより、運転者がアクセル操作を行うことなく、ブレーキペダルのみで調整できる車速範囲が拡大し、車両のコントロール性が向上する。運転者がブレーキペダルを操作すると、そのペダル開度に応じて各輪に付与される制動力を調整することで車速の調整を行う。
【0038】
誘導制御においては、まず、車両の現在位置の判定を行う(ステップS16)。この現在位置判定は、後方カメラ32で撮像している画像における特徴点の移動を基に判定することも可能であるし、車輪速センサ41や加速度センサ42の出力を基にした走行距離変化と操舵角センサ23の出力を基にした舵角変化を基にして判定を行えばよい。
【0039】
次に、現在の車速VとVlimit(p)とを比較する(ステップS18)。車速VがVlimit(p)を超えていると判定された場合には、ステップS50へと移行して、車速が設定した上限値を超えている旨を報知して、制御を中止する。現在の車速VがVlimit(p)以下と判定された場合には、さらに、現在の車速VとValarm(p)とを比較する(ステップS20)。車速VがValarm(p)を超えていると判定された場合には、ステップS40へと移行して、スピーカ33とモニタ34により、運転者に減速を促す。ステップS20で車速VがValarm(p)以下と判定された場合にはステップS40はバイパスする。
【0040】
そして、ステップS16で判定した現在位置(走行距離)を基に先に設定した走行距離−旋回曲率の設定軌跡に基づいて設定した旋回曲率が得られるよう操舵を行う(ステップS22)。具体的には、操舵制御部11は、操舵角センサ23の出力を監視しながら、操舵アクチュエータ24を制御してステアリングシャフト21を駆動し、転舵輪25を転動させて、設定した旋回曲率が実現されるよう制御する。ここで、旋回曲率γを直接実測することは難しいため、当該車両における操舵角δと旋回曲率γの関係を予め把握しておき、この関係に基づいて所望の旋回曲率γに対応する操舵角δとなるよう制御を行えばよい。
【0041】
こうして設定した経路に沿った移動が行われるので、運転者は進路上の安全確認と車速調整に専念することができる。進路上に障害物や歩行者等が存在した場合は、運転者がブレーキペダルを踏み込むと、それに応じた制動力が各車輪へと付与されるので安全に減速、停止することができる。また、車速Vが警報速度Valarmを超えた場合には、運転者に減速を促し、さらに限界速度Vlimitを超えて駐車支援装置100による経路誘導が困難と判定した場合には、処理を中止するので、確実に誘導を行うことができる。
【0042】
本実施形態では、操舵時には操舵アクチュエータ24の操舵速度の限界を超えないような値に限界速度Vlimitを設定する一方、操舵アクチュエータ24を駆動させていない非操舵時には、限界速度Vlimitを高く設定することで、車速Vを上げることを可能とし、移動時間を短縮することを可能としている。車速が高くなると操舵アクチュエータ24の操舵速度を上げなければ車両走行時に必要とされる操舵が得られなくなるので、操舵アクチュエータ24の操舵速度に基づいて操舵時の限界速度Vlimit、警報速度Valarmは決定されることになる。さらに、警報速度Valarmについては、目標経路における操舵開始位置より所定距離前から低く抑えることで、操舵開始位置において十分な減速を行う余裕をもたせることができる。
【0043】
例えば、操舵開始より十分前の時点でV3に近い車速であったケースを考えると、操舵時点で警報速度Valarmを切り替えると、操舵開始前の時点では警報速度Valarmに達しなかったにもかかわらず、下り坂やエンジンの出力変動等の影響で車速が限界速度VlimitであるV2を超えて制御中止に至る可能性がある。これに対して、本実施形態では、操舵開始前に警報速度ValarmをV4に下げているため、運転者は車速を限界速度VlimitであるV2より十分に低く下げておくことができるため、頻繁な制御中止に陥ることがなく制御性が向上し、目的位置へと至る確実性が向上する。
【0044】
舵角制御後は、現在位置が目標経路上からずれていないかを判定し、ずれが大きい場合には経路修正を要すると判定する(ステップS24)。この目標経路からのずれは、目標位置と現在の位置のずれ、あるいは、目標操舵量と実際の操舵量のずれを走行距離に対して積算すること等により求めることができる。経路修正を要する場合には、ステップS6へと戻ることで、経路を設定し直す。
【0045】
一方、目標経路とのずれが小さい場合には、ステップS26へと移行し、目標駐車位置G点近傍に到達したか否かを判定する。目標駐車位置へ到達していない場合には、ステップS16へと戻ることで、支援制御を継続する。目標駐車位置へと到達したと判定された場合には、ステップS28へと移行し、モニタ34、スピーカー33により運転者に目標駐車位置へと到達した旨を報知して処理を終了する。
【0046】
このように、基本経路を求め、必要ならその両端またはいずれか一方に直線経路を付与することで経路設定を行うので、経路演算のアルゴリズムが単純化され、また、計算も簡略化できるので、演算負荷が小さくて済み、少ない計算機資源で容易にリアルタイムでの演算を行うことができる。また、計算に際して精度の低下もないため、目的位置へ高精度で誘導することができる。
【0047】
次に、支援動作の第2の制御形態について説明する。この第2の制御形態は、上述した第1の制御形態と同様に、車庫入れ操作の支援を行うものである。本実施形態では、基本経路P0からの目標経路の設定方法のみが異なる。具体的には、図7にその設定部分のフローチャートを示すように、基本経路P0に直線経路を付与して目標経路を設定するのではなく、基本経路P0を相似拡大した経路P2に直線経路を付与して目標経路P3を生成する(ステップS11)。
【0048】
図8は設定される経路の位置関係を示す図である。相似拡大の倍率をεとし、この相似拡大経路P2の始点をB’、終点をE’で表す。そして、A点からB’点へと至る直線経路の経路長をL0、E’点からG点へと至る直線経路の経路長をL3とすると、次の(8)(9)式が成り立つ。
【0049】
【数5】
ここでεは、Zf/Xfがz0/x0以下のとき、つまり、基本経路P0のZ方向とX方向の比が、目標経路のZ方向とX方向の比に比べて小さく、横(X方向)に長い場合には、ε≦x0/Xfに設定すればよい。逆に基本経路が縦に長い場合には、例えば、ε=x0/Xfとすると、相似拡大経路の終点が目標駐車位置G点を通過してしまうので、これより小さい値、に設定する必要がある。この場合、εの最大値は、L3を0とした時の値であり、(8)(9)式より
【0050】
【数6】
となる。最大値でなく、これを下回る任意の値を用いてもよい。相似拡大係数εを設定すれば、(8)(9)式より各直線区間の長さを計算できる。これにより、目標経路P3を設定することができる。
【0051】
ここで、こうして設定された目標経路P3における相似変換経路P2においては、基本経路P0において、A点から走行距離p離れた位置における曲率がγ(p)で表されるとき、そのA点から走行距離εp離れた位置における曲率は、γ(p)/εとして表される。図9に示されるように、この相似拡大経路P2は、基本経路P0を距離方向にε倍に引き延ばすとともに、曲率方向に1/ε倍へと圧縮(旋回半径をε倍に拡大)したものである。したがって、相似変換経路P2の走行距離−曲率線図における面積は、基本経路P0の走行距離−曲率線図における面積は合致し、偏向角の変化量は同一に保たれる。ここで、警報速度、限界速度の位置も相似拡大した経路に応じて変更される。
【0052】
この相似変換によって、曲率の最大値は基本経路のγmaxから1/ε倍のγmax/εへと低下し、操舵速度ωは1/ε2に低下させることができるので、操舵アクチュエータ24の負荷を減らすことができ、操舵制御の制御性が向上する。
【0053】
本実施形態においても、VlimitとValarmを設定した経路に応じて変更することで、自動操舵装置が精度よく追従しうる範囲に車速を制限することができる。なお、本実施形態においては第1の実施形態に比較して操舵速度を抑えることができるので、設定する操舵時のVlimitとValarmを第1の実施形態よりも高速側に設定することが可能であり、これにより、目標位置までの移動時間を短縮することができる。
【0054】
ここでは、警報速度を操舵領域への移行に先立って変更する例を説明してきたが、警報速度を目標経路における操舵領域への移行に合わせて変更してもよい。この場合は、V3をV2より十分に低く設定することが好ましい。上述したように、警報速度を操舵領域への移行に先立って変更するようにすると、V3をV2より高く設定することも可能となり、保舵領域で車速を高くすることができるので、より好ましい。
【0055】
また、ここでは、上限車速であるVlimitを超えた場合には、制御を中止する例を説明したが、Vlimitを超えそうな場合には、自動的に制動力を付与したり、エンジンの出力を抑制することで車速がVlimit以下になるよう車速を制御するシステムを搭載してもよい。このようにすると、確実に車速を所定範囲内に抑えることができるので、目的位置へ確実に到達できるようになり好ましい。
【0056】
以上の説明では、車庫入れの場合を例に説明してきたが、縦列駐車やその他の走行支援の場合でも基本的にこの手法を組み合わせることで対応することができる。また、ここでは、初期操舵角(旋回曲率)が略0の場合に、経路を設定し、初期操舵角(旋回曲率)が大きい場合には、経路設定を行わない例を説明したが、初期操舵角が大きい場合には、初期操舵角を略0とする据え切り操作を運転者に指示するようにしてもよい。このようにすれば、初期操舵角が略0でない場合であっても、支援制御を中止することなく、そのまま継続することができるため、操作性が向上する。
【0057】
なお、基本経路は、演算によって求めてもよいが、駐車支援ECU1内に、偏向角θに対して状態量をマップ形式で保持しておいてもよい。このようにすると、駐車支援ECU1の演算能力を高くする必要がなく、また、経路の算出をより高速で行うことができる。
【0058】
以上の説明では、自動操舵機能を有する駐車支援装置における実施例を説明してきたが、自動的に操舵を行う技術だけではなく、運転者に対して適切な操舵量を指示する操舵ガイダンスを行う技術においても同様に用いることができる。また、駐車支援装置に限らず、経路に応じた移動を誘導する走行支援装置、レーンキープシステム等にも適用可能である。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、走行支援中に運転者に速度超過を報知する警報速度を設定した経路に応じて変更することで、不要に警報が鳴動し続けるのを避けつつ、経路に応じた速度で移動することにより確実な誘導と移動時間の短縮を両立させることができる。
【0060】
さらに、保舵領域から操舵領域への切り替えに先立ってこの警報車速を変更するよう予め設定しておけば、実際に操舵領域へ進入する前に十分に減速を行うことができるので、保舵領域における車速を上げて移動時間のさらなる短縮が行えるとともに、操舵領域の初期における速度超過を確実に抑制できる。
【0061】
制御限界速度についても操舵領域と保舵領域で設定速度を異ならせておくと、保舵領域においてより高速で移動することができ、移動時間の短縮が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態である駐車支援装置100のブロック構成図である。
【図2】図1の装置の第1の制御形態における駐車支援である車庫入れ操作を説明する図である。
【図3】図1の装置における第1の制御形態の制御を示すフローチャートである。
【図4】図1の装置における操舵角δと旋回曲率γの関係を示す図である。
【図5】図3の制御形態で設定される支援経路における旋回曲率、警報速度、限界速度の走行距離に対するグラフである。
【図6】図3の制御形態で設定される支援経路を車両と目標位置の位置関係とともに説明する図である。
【図7】図1の装置における第2の制御形態の特徴部分を示すフローチャートである。
【図8】図7の制御形態により設定される経路の位置関係を示す図である。
【図9】図7の制御形態により設定される支援経路における旋回曲率、警報速度、限界速度の走行距離に対するグラフである。
【符号の説明】
1…駐車支援ECU、10…画像処理部、11…操舵制御部、20…自動操舵装置、31…入力手段、32…後方カメラ、33…スピーカー、34…モニタ、41…車輪速センサ、42…加速度センサ、24…操舵アクチュエータ、22…ステアリングホイール、21…ステアリングシャフト、23…操舵角センサ、100…駐車支援装置、200…車両、201…前車両、202…後車両、210、211…道路、220…車庫、221…駐車スペース。
Claims (4)
- 初期位置から目標位置へと至る経路を算出する経路算出手段と、該経路に沿った操舵を行い、車両を誘導する自動操舵手段と、前記自動操舵手段の作動時に、車速が設定されている警報車速を超えた場合には、運転者に対して警報を発する警報装置と、を備えている車両用走行支援装置において、
前記経路算出手段で算出される経路は、操舵角を変化させる操舵領域と、操舵角を保持する保舵領域から構成されており、前記警報装置においては、前記保舵領域における警報車速が前記操舵領域における警報車速より大きく設定されていることを特徴とする車両用走行支援装置。 - 前記保舵領域から前記操舵領域への切替に先立って前記警報車速を変更するよう設定経路に応じて前記警報車速を切り替えることを特徴とする請求項1記載の車両用走行支援装置。
- 車速がそれを超えたら走行支援を中止する制御限界速度が該当領域の警報車速より大きい車速に設定されており、前記保舵領域における制御限界速度は、前記操舵領域における制御限界速度より大きく設定されている請求項1または2に記載の車両用走行支援装置。
- 前記操舵領域における制御限界速度は、前記保舵領域における警報車速より大きく設定されている請求項1〜3のいずれかに記載の車両用走行支援装置。
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