JP2004530055A - 生理活性繊維製品 - Google Patents

Abstract

本発明は、効果的な生理活性を有する構成成分として、結合を有するポリエステルから大部分作製されるまたは当該ポリエステルからのみ作製され、一緒に縮合され、リンを含む、一種のポリエステルのみを含む生理活性繊維製品に関するものである。この生理活性繊維製品は、抗菌、殺真菌、殺ダニ及び同様の効果が求められるすべての布製品に適する。

Description

【技術分野】
【０００１】
本発明は、生理活性糸及び不織布、織布、編布などの編織布ならびに服飾及び下着用布、スポーツ用布、家庭用布及び寝具、衛生及び医療用布、自動車用布、食品包装、建築及び濾過用の工業用布、オムツ、ナプキン、タオルなどの既製物品（ｍａｄｅ−ｕｐ ａｒｔｉｃｌｅ）ならびに例えば、縫合糸またはタンポンの引き出し紐（ｒｅｔｒｉｅｖａｌ ｃｏｒｄ）などの特定の生理活性フィラメントまたは糸などの生理活性繊維製品に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
本発明の目的のために生理活性である物品に関しては、生物学的に活性のある機能を行なう、すなわち、殺菌、殺真菌または殺ダニ作用を有する、例えば、簡単にいうと、細菌、ダニ、真菌、ウィルス及び同様の微生物に対して活性があるものでなければならない。
【０００３】
生理活性繊維製品を製造することはよく知られている。例えば、抗微生物作用を有するという点で生理活性のある病床のカーテンは、Ａｍｅｒｉｃａ’ｓ Ｔｅｘｔｉｌｅｓ Ｉｎｔｅｒｎａｔｉｏｎａｌ， ｖｏｌｕｍｅ ２５ （１９９６）， ｎｕｍｂｅｒ １２， ｐａｇｅ １１８に記載される。このカーテンは、混合繊維に基づいた糸から作製される；この混合繊維は、第一に、難燃性のポリエステル繊維、および第二に、ミクロバンＢ（Ｍｉｃｒｏｂａｎ Ｂ）として知られている抗微生物添加剤の混合によって抗微生物性であるセルロースアセテート繊維を含む。
【０００４】
これらの生理活性のあるカーテンは、まず、混合繊維から製造されなければならない、および第二に、セルロースアセテート繊維は抗微生物添加剤の添加によって別途抗微生物性を付与されなければならないという欠点を有する。
【０００５】
さらに、抗微生物剤が洗濯の間に多少迅速に流れ出すようになったり、抗微生物剤が布から流れ出て、感受性のある人にアレルギーを引き起こすことを完全に防止できない。
【０００６】
加えて、抗菌効果が使用中に消失する。
【０００７】
１９９５年１１月２１日に公開された特開平７−３０５２７９号には、抗菌特性を有し、これにより使用できるポリエステル繊維が記載される。抗菌作用を出すために、上記日本国公報は、ポリエステルをアルキルリン酸エステルの第４級アンモニウム塩と混合することを示唆している。
【０００８】
添加剤を含むポリエステルは、難燃特性を目的として重合リン化合物を含む。
【０００９】
同様にして、上記に記載される繊維を含む製品は、混合物が繊維から流れ出ると、例えば、布製品を着用する際にまたは洗濯時に、アレルギーを引き起こしうる。
【００１０】
すでに布形態の生理活性繊維製品自体は存在するものの、改善された生理活性繊維製品に対する必要性が依然としてある。
【発明の開示】
【００１１】
本発明の目的は、永久的に生理活性を有し、その生理活性の減少が、洗濯や着用によってあったとしても最小限にされ、あったとしても、かなりアレルギー作用が抑えられ、簡単に製造され、かつ広範な生理活性スペクトルを有する、生理活性繊維製品を提供することである。
【００１２】
この目的は、驚くべきことに、共縮合したリン含有鎖式要素（ｃｈａｉｎ ｍｅｍｂｅｒ）を有するポリエステルからのみ構成されるまたは当該ポリエステルから実質的に若しくは部分的に構成されるポリエステル繊維を生理活性成分として含む生理活性繊維製品によって達成される。好ましくは、本発明による生理活性繊維製品は、さらなる生理活性成分または添加剤を含まない。本発明の目的のための鎖式要素は、ポリマー分子の直鎖（最も長い鎖）中に、ならびに存在するいずれかの側鎖及び分岐鎖に配置される鎖式要素を意味するものと解される。
【００１３】
生理活性繊維製品は、好ましくは、織布、編布及び不織布などのシート状の布構造物（ｔｅｘｔｉｌｅ ｓｈｅｅｔｌｉｋｅ ｓｔｒｕｃｔｕｒｅ）ならびに服飾及び下着用布、スポーツ用布、家庭用布及び寝具、衛生及び医療用布、自動車用布、食品包装、建築及び濾過用の工業用布、オムツ、ナプキン、タオルならびに例えば、縫合糸またはタンポンの引き出し紐（ｒｅｔｒｉｅｖａｌ ｃｏｒｄ）などの特定の生理活性フィラメントまたは糸である。
【００１４】
本発明の特に好ましい実施態様においては、生理活性繊維製品は、病院での作業用の既製の最終製品（病室でのカーテン及び寝具、医師や医療従事者（ｃａｒｅ ｐｅｒｓｏｎｎｅｌ）の衣服、ＯＲアパレル、タオル、応急処置者用のジャケット、ドレッシング材料及びドレープ、患者の車椅子用のカバー、縫合糸、エアコンのフィルターなど）のための、動物衛生（有害生物管理を含む）のための、製薬及び食品工業での作業用衣服（オーバーオール、下着など）のための、キッチンや浴室の家庭用品（シャワーカーテン、バスマットなど）のための、乳児のオムツ、生理用ナプキン、成人のオムツ、出産直後の女性の下着などの衛生用品のためのならびにスポーツ用品（ソックス、下着）のための及び例えば、エアコンや自動車のフィルターなどの多くの工業用途のための既製の最終製品である。詰綿、寝具の詰め物及び靴のライナー等の大量生産製品に加えて、生理活性繊維から形成された最終製品は、宇宙旅行等の非常に苛酷な用途にも適している。
【００１５】
生理活性繊維製品を構成する生理活性繊維は、ステープルファイバー、フィラメントとしておよび生理活性繊維製品を構成するためのモノフィルとして機能してもよい。繊維の連結において、共縮合したリン含有鎖式要素を有するポリエステルから完全に構成されてもよい。しかし、いわゆる複合繊維を用いることも可能である。複合繊維は、一の繊維に複数の異なる材料を組み合わせるものである。例としては、コア−シース方式（ｃｏｒｅ−ｓｈｅａｔｈ）またはサイド−バイ−サイド（ｓｉｄｅ ｂｙ ｓｉｄｅ）方式の繊維として構成される生体成分（ｂｉｏｃｏｍｐｏｎｅｎｔ）繊維がある。サイド−バイ−サイド方式のフィラメントの一部が生理活性ポリエステル成分から構成され、他方が例えば非生理活性ポリエステルなどの非生理活性材料から構成されてもよい。
【００１６】
コア−シース方式のフィラメントの場合には、コアにまたはシースに生理活性成分を提供してもよい。シースの成分が生理活性材料であるコア−シース方式のフィラメントが好ましい。
【００１７】
本発明の目的のための繊維は、ステープルファイバー、フィラメント及びモノフィルであってもよい。
【００１８】
本発明のさらなる実施態様においては、生理活性ポリエステル繊維は、いわゆるハイブリッド繊維またはハイブリッド糸（ｈｙｂｒｉｄ ｙａｒｎ）として使用される。
【００１９】
これらのハイブリッド繊維または糸は、複数の、好ましくは２種のポリマー成分から構成され、このうち一方は、他方に比べて少なくとも１０℃低い融点を有する。より低い融点の成分としてまたはより高い融点の成分として生理活性ポリエステル成分を使用してもよい。
【００２０】
これらのハイブリッド糸では、より高い温度を用いてより低い融点の成分を溶融させた後、より高い融点の繊維成分のマトリックスとして作用させても、または完全な若しくは初期の溶融によって、編織布でのより良好な一体性を可能にする；例えば、織布の場合には滑り止めをまたは不織布の場合には繊維の結合性を改善することが可能である。
【００２１】
複合紡糸及びハイブリッド糸の双方では、生理活性ポリエステル成分を低融点成分として使用することによって、通常、完全または初期の溶融によって表面積が増大し、これにより生理活性性能は向上されうる。
【００２２】
共縮合したリン含有鎖式要素が下記成分由来であるポリエステルを使用することが特に好ましい：
【００２３】
【化１】

【００２４】
［ただし、Ｒ_１は、ＣＨ_３、Ｃ_６Ｈ_５であり、
Ｒ_２は、ＣＨ_２−ＣＨ_２であり、
Ｒ_３、Ｒ_４は、Ｈ、（ＣＨ_２）_２−ＯＨ、（ＣＨ_２）_２−Ｏ−（ＣＨ_２）_２ＯＨ、ＣＨ_２−ＣＨ_２−ＣＨ_２−ＣＨ_２ＯＨ、ＣＨ_２−ＣＨ_２−ＣＨ_２ＯＨである］
ポリエステルは、また、式２の内部エステルを含んでもよい。
【００２５】
【化２】

【００２６】
ただし、Ｒ_１及びＲ_２は、それぞれ、式１で規定されたのと同様である。環は共縮合中に切断されると考えられるであろう。好ましくはＲ_１は、ＣＨ_３である。
【００２７】
ポリエステルが共縮合したリン含有鎖式要素を有する相当するポリエステル繊維の製造は、それ自体既知である。ここで、下記ドイツ特許出願または特許出願明細書を参照し、この際、これらの開示内容は本明細書中に特に引用する：ＤＥ−ＯＳ ２ ２３６ ０３７、ＤＥ−ＯＳ ２ ２４２ ００２、ＤＥ−ＯＳ ２ ３２８ ００ ３４３、ＤＥ−ＰＳ ２ ３４６ ７８７、ＤＥ−ＰＳ ２ ４５４ １８９。
【００２８】
本明細書中に記載される繊維は、従来、その難燃性を目的としてのみでそのように使用されてきた。生理活性繊維製品を製造しようとする際には、例えば、最初に示したように、生理活性効果に応答する添加剤を使用することがオプションとしてあるのみであった。
【００２９】
ここで、驚くべきことに、単に共縮合したリン含有鎖式要素を有するポリエステルから構成される繊維を生理活性成分として使用することによって生理活性効果を有する繊維製品を製造することが可能であることを知得した。
【００３０】
本発明のさらなる実施態様においては、共縮合したリン含有鎖式要素を有するポリエステルは、さらに生理活性スペクトルを広げるために生理活性のある添加剤、特に銀化合物、微細金属銀または例えば、ＥＰ １１６ ８６５、ＷＯ ９４／１５４６２及びＤＥ ４ １０６ １６５に記載されるような添加剤または銀イオンを含む燐酸塩ガラスを含む。このような添加剤は、ポリマー製造中にまたは溶融ポリマーに添加される。
【００３１】
好ましい実施態様においては、ポリエステルは、さらなる添加剤として銀金属を含む。さらなる特に好ましい実施態様においては、銀元素は、１〜５００ナノメーターの直径を有するナノ粒子の形態で存在する。１〜１００及び特に１〜１０ナノメーターの直径を有するナノ粒子が特に好ましい。ナノ粒子は市販されている。
【００３２】
シースが生理活性成分である生理活性を有するコア−シース方式の繊維を含む繊維製品が、本発明の目的のためには特に好ましい。シース成分が複合繊維の断面積に対して５０％以下、特に１５〜５０％、好ましくは１５〜２５％である繊維を使用することがここでは可能である。
【００３３】
薄いシースを有する複合繊維からの繊維製品が非常に好ましい。第一に、これらの繊維は、融解紡糸によって高品質で簡単に製造される。生理活性粒子のみが含まれ、ポリエステルが共縮合した鎖式要素を持たない、ポリエステル繊維、特にコア−シース方式の繊維は、融解紡糸によって加工しにくい。第二に、生理活性添加剤の添加により得られるさらなる効果は、かなりより少ない添加剤を用いて達成しうる。例えば、ポリエステルのみが添加剤として０．５％の銀ジルコニウムホスフェート（ｓｉｌｖｅｒ ｚｉｒｃｏｎｉｕｍ ｐｈｏｓｐｈａｔｅ）を含む本発明による製品は、１％の銀ジルコニウムホスフェートを含むが共縮合したリン含有鎖式要素を含まない製品と同様の生理活性性能を示す。
【００３４】
繊維製品は、当業者に既知の方法によって製造される、すなわち、織布及びループニット（ｆｏｒｍｅｄ ｌｏｏｐ ｋｎｉｔ）は、通常の機械を用いて製造され、不織布は、例えば、不織工程（ｓｐｕｎｂｏｎｄ ｐｒｏｃｅｓｓ）によって、例えば、ステープルファイバーからまたは連続フィラメント繊維から製造されうる。本発明による不織布、織布及び編布はまた、層状製品またはコンポジットが形成されるようにおよび成形物品が形成されるように加工されてもよい。
【００３５】
本発明によると、単に共縮合したリン含有鎖式要素を有するポリエステルから構成されるポリエステル繊維を使用することによって生理活性効果を有する製品が得られることが特に驚くべきことである。今までの意見では、生理活性性能を得るためには、ポリエステルにさらなる添加物を添加するまたは他の物質を含ませることが必要であると考えられてきた。
【００３６】
本発明によって、相当する生理活性繊維製品を簡単にかつ素早く製造することが可能である。製品の生理活性は永久であり、水系でまたは有機溶剤が使用されるドライクリーニングによってにかかわらず、洗濯によって損なわれない。共縮合した化合物は、流れ出ず、流れ出たとしても、従来の繊維状製品の場合に比べて、アレルギーの可能性をかなり低く抑えられる。
【００３７】
下記実施例によって、本発明を詳細に説明する。
【００３８】
ＰＥＴ繊維 １．７ ｄｔｅｘ ３８ｍｍを、Ｎｍ５０ヤーン（ｙａｒｎ）にリング精紡し、加工して、平織りの延伸ループニット（ｐｌａｉｎ ｄｒａｗｎ−ｌｏｏｐ ｋｎｉｔ）を形成した。サンプル１は、一般的なＰＥＴ１００％から構成される。サンプル２の繊維は、ポリマー溶融物中に１％の銀ジルコニウムホスフェートを混合した。サンプル３は、本発明によるポリエステルの繊維１００％から構成される。これら３種の延伸ループニットを染め、同様の条件下で還元洗浄した（ｒｅｄｕｃｔｉｏｎ ｃｌｅａｒ）。
【００３９】
サンプルの生理活性を、布の抗菌性に関するＪＩＳ Ｌ １９０２：１９９８試験法に従って測定した。使用された試験微生物は、スタフィロコッカス アウレウス(Staphylococcus aureus)ＡＴＣＣ ６５３８Ｐ及びクレブシエラ ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)ＤＳＭ ７８９であった。
【００４０】
この方法は、１８時間のインキュベーション時間後に、差 Ｓ＝Ｍｂ−Ｍｃを測定するものであり、この際、
Ｓは、制生値（ｂｉｏｓｔａｔｉｃ ｖａｌｕｅ）であり、
Ｍｂは、１８時間のインキュベーション時間後の未修飾の試験片の活動性細菌の数の対数であり、
Ｍｃは、１８時間のインキュベーション時間後の修飾された試験片の活動性細菌の数の対数である。
【００４１】
使用された未修飾の試験片は、一般的なＰＥＴ１００％から構成されるサンプル１であった。
【００４２】
以下のｌｏｇ減少分Ｓを、サンプルについて測定した。
【００４３】
【表１】

【００４４】
すなわち、本発明によるサンプル３は、公知の抗菌性修飾ＰＥＴ繊維に比べて、一方の場合では同等であり及び第二の場合では優れた抗微生物性能（ｌｏｇ減少分）を示した。

Claims (14)

1. 共縮合したリン含有鎖式要素を有するポリエステルから実質的に構成されるまたは当該ポリエステルからのみ構成されるポリエステル繊維を生理活性成分として含む生理活性繊維製品。
2. さらなる生理活性成分または添加剤を含まないことを特徴とする、請求項１に記載の生理活性繊維製品。
3. 織布、編布、不織布などのシート状の布構造を有することを特徴とする、請求項１または２に記載の生理活性繊維製品。
4. 繊維製品は、縫合糸などの特定の生理活性フィラメントまたは糸であることを特徴とする、請求項１または２に記載の生理活性繊維製品。
5. 生理活性繊維製品は、服飾及び下着用布、スポーツ用布、家庭用布及び寝具、衛生及び医療用布、自動車用布、食品包装、建築及び濾過用の工業用布、オムツ、ナプキン、タオルなどの既製製品ならびに例えば、縫合糸などの特定の生理活性フィラメントまたは糸であることを特徴とする、請求項１〜３のいずれか１項に記載の生理活性繊維製品。
6. 生理活性繊維は複合繊維として存在することを特徴とする、請求項１〜５のいずれか１項に記載の生理活性繊維製品。
7. 生理活性繊維は生体成分繊維として存在することを特徴とする、請求項６に記載の生理活性繊維製品。
8. 繊維はハイブリッド繊維として存在することを特徴とする、請求項１〜５のいずれか１項に記載の生理活性繊維製品。
9. 共縮合したリン含有鎖式要素は、式Ｉおよび／またはＩＩ：
   

   

   ［ただし、Ｒ_１は、ＣＨ_３、Ｃ_６Ｈ_５であり、好ましくはＲ_１は、ＣＨ_３であり、
   Ｒ_２は、ＣＨ_２−ＣＨ_２であり、
   Ｒ_３、Ｒ_４は、Ｈ、（ＣＨ_２）_２−ＯＨ、（ＣＨ_２）_２−Ｏ−（ＣＨ_２）_２ＯＨ、ＣＨ_２−ＣＨ_２−ＣＨ_２−ＣＨ_２ＯＨ、ＣＨ_２−ＣＨ_２−ＣＨ_２ＯＨである］
   

   

   を有する化合物由来であることを特徴とする、請求項１〜５のいずれか１項に記載の生理活性繊維製品。
10. ポリエステルはさらに生理活性のある添加剤を含むことを特徴とする、請求項１および請求項３〜６のいずれか１項に記載の生理活性繊維製品。
11. ポリエステルはさらに生理活性のある銀含有添加剤を含むことを特徴とする、請求項１０に記載の生理活性繊維製品。
12. ポリエステルはさらに銀ジルコニウムホスフェートを含むことを特徴とする、請求項１０に記載の生理活性繊維製品。
13. ポリエステル繊維は、ポリエステルシースを有する多成分コア−シース方式の繊維であり、シース部分が、繊維の断面積に対して、１５〜５０％、好ましくは１５〜２５％であることを特徴とする、請求項１〜１２のいずれか１項に記載の生理活性繊維製品。
14. 繊維は、好ましくはナノ粒子の形態を有する、金属銀を含むことを特徴とする、請求項１及び３〜１３のいずれか１項に記載の生理活性繊維製品。