JP2004503415A - 生物分解性物質及びそれから製造された製品 - Google Patents

Abstract

本発明は、木材代用品を形成するために使用することができる物質に関する。この物質は高分子量の脂肪族ポリエステルを３０〜７０体積％と、残部としてセルロースを含有する植物材料を含んでいる。本発明は、さらにその物質から木材代用品を製造する方法を提供する。木材代用品は、自然の木材の特性を有している。木材代用品で作られた製品は生物分解性で、燃やされた時に有毒蒸気を放出しない。

Description

【０００１】
【技術分野】
本発明は木材代用品として使用することができる合成材料に関する。本発明は、特に、木材のような材料に成形することができるポリマー／セルロース物質に関する。
【０００２】
【背景技術】
歴史上、木材または材木は、最も充分に利用されている自然の材料の一つである。木材は建築材料として、紙および燃料のような他の材料の原料として、人類に貢献してきたし、人類に貢献し続ける。確かに、木材が役割を果たさないところでは、ほとんど人間の活動の場がない。
【０００３】
森林の破壊と結びつけられた人類の木材の利用は、ある種の木材が不足するか又は全く足りなくなるという結果を招いた。継続的な木材の利用によって、ほとんどすべての木材で供給不足以上の結果を招くであろう。従って、建築で木材をより効率的に使用することは充分有意義である。例えば、木を材木にする従来の処理ではなく、木全体を削り、その生成チップを木製パネル等を製造するために使用することが一般的に行われている。木材チップから製造された木製パネルは、一般にチップボードと呼ばれ、完全なパネルを得るためにバインダーが必要である。
【０００４】
チップボードのような木材製品の欠点は、材料が燃えるとき、有毒蒸気が放出されることである。さらに、すべての木材製品は、容易に生物分解されず、また、生物分解物は有毒残留物になる。
【０００５】
強さと耐久性において自然の木材と同じ特性を実質的に有しており、有毒残留物を残すことなく生物分解することができ、そして、有毒蒸気を放出せずに燃やすことができる木材代用品を利用することが要望されている。
【０００６】
【発明の要約】
本発明の目的は、建築目的用の自然木材に必要な特性を有し、有毒残留物なしに生物分解することができ、有毒蒸気を放出せずに燃焼することができる木材代用品を提供することにある。
【０００７】
本発明の他の目的は、木材代用品を製造するための物質と木材代用品を製造する方法を提供することにある。
【０００８】
一つの実施形態では、本発明は木材代用品を形成するための物質を提供する。その物質は、高分子量の脂肪族ポリエステルを３０〜７０体積％と、残部として、粉砕されたセルロースを含有する植物材料を含み、上記脂肪族ポリエステルは、アジピン酸及び／又はコハク酸と１，４−ブタンジオールとの縮合物である。
【０００９】
別の実施形態では、本発明は、次のステップを含む木材代用品の製造方法を提供する。
【００１０】
ａ）流動材料を提供するために、高分子量の脂肪族ポリエステルを３０〜７０体積％と、残部として粉砕されたセルロースを含有する植物材料を含む物質を１１０〜１８０℃で加熱し、上記脂肪族ポリエステルは、アジピン酸及び／又はコハク酸と１，４−ブタンジオールとの縮合物であって、
ｂ）ステップ（ａ）で加熱された材料を所望の製品に成形し、
ｃ）上記製品を少なくとも周囲の温度に冷却すること。
【００１１】
本発明の他の実施形態では、本発明の物質を使用して形成された木材代用製品が提供される。
【００１２】
本発明者は、バインダーとして特別の高分子量の脂肪族ポリエステルと粉砕された植物材料を含む物質から、木材の望ましい特性のすべてを有する材料を製造できることを発見した。その物質から形成された製品は生物分解性であり、燃焼しても有毒蒸気を放出しない。
【００１３】
その物質の重要な成分は高分子量の脂肪族ポリエステルである。高分子量とは、ポリエステルが少なくとも５０００の数平均分子量（Ｍｎ）及び少なくとも３００００の重量平均分子量（Ｍｗ）を有していることを意味する。典型的には、脂肪族ポリエステルの分子量（Ｍｗ）は４００００〜３０００００の範囲内にある。
【００１４】
本発明の上記実施形態の中に示されたように、脂肪族ポリエステルは、１，４−ブタンジオールおよびコハク酸とアジピン酸のような脂肪族ジカルボン酸を含む。これらのポリエステル及びそれらの製造方法は、米国特許Ｎｏ５，３１０，７８２及び５，４３６，０５６に記載されている。それらの内容は、本明細書に組込まれている。生物分解性を含むポリエステルの特性は、「ポリマーの減成と安定」という表題の第５９巻、第２０９−２１４頁（１９９８年）のタカシ・フジマキの論文で議論されている。その全内容は、本明細書に組込まれている。先の刊行物の主題であるポリエステルは、日本の東京の昭和高分子（株）によって製造されており、商標「Ｂｉｏｎｏｌｌｅ」として販売されている。２つのポリエステルのシリーズは工業上利用可能である。これらは、ポリブチレンコハク酸塩ポリエステル　コード＃１０００シリーズとポリブチレンコハク酸塩アジピン酸エステル共重合体　コード＃３０００シリーズとである。
【００１５】
本発明による物質のセルロース含有植物材料は、いくつかの植物材料を適切に含んでいるが、植物の表皮及び皮層、並びに、種皮のような材料に限定されない。適切な植物材料の例は次のとおりである。ピーカン堅果の果皮、ピーナッツの殻等の堅果の果皮、並びに、サトウキビの茎のバガスような他のセルロース含有廃棄物。
【００１６】
植物材料は、当業者に既知の手段を使って粉砕される。粉砕された粒子は、約５ｍｍまでの大きさの微細な粉末からなる。
【００１７】
本発明の物質は、視覚効果及び重量低減のための他の添加物を含むことができる。例えば、飛散灰、滑石、顔料等の化合物は視覚効果のために加えることができる。一方、重量低減のために、微小気泡、中空ガラス球体、発泡剤等を含むことができる。添加物は、生物分解性に影響しないように、最終物質の２〜５体積％とすることができる。
【００１８】
１つの応用例では、木材代用品が、苗トレーか鉢植えのような植物容器として使用される。この応用例では、木材代用物質を、植物成長化合物（合成か自然）及び／又は植物繊維と化合することができる。本発明の木材代用物質で作られた植物容器は、プラスチックの植物容器のように硬いが、容易に生物分解しうるという長所を有している。さらに、それらは自動化植物栽培に適している。
【００１９】
脂肪族ポリエステルと粉砕された植物材料を混合するために、適切な方法を使用することができる。例えば、原料ポリマー、粉砕された植物材料および他の添加物は、一対のスクリュ押出成形機を使用して混合することができる。押出プロセスは、１６０〜２４０℃の温度範囲にわたり行われる。その温度範囲ではポリエステルが液化される。その後、押出成形機の鋳造品は圧縮されて、木材代用物質の成形に便利な大きさに仕上げられる。
【００２０】
また、木材代用物質は液体窒素を使用する極低温プロセスによってあらかじめポリエステル材料を粉砕すること（ペレットとして利用可能である）によって準備することができる。その後、粉末のポリエステルは、乾燥した材料を混合するのに適した機械を使用して、粉砕された植物材料および他の添加物と化合することができる。そのように混合した後、その物質は、木材代用品の製造における最終用途に適した大きさに分割することができる。
【００２１】
上記したは第１の実施形態による物質は、貯蔵が乾燥した雰囲気中であるならば、木材代用製品へ処理するに先立って貯蔵することができる。
【００２２】
木材代用品の製造方法において、熱硬化性のプラスチック材料に類似していると考えることができる物質は、充分に加熱され、完全な重合体になる。上記の方法で形成されるステップの中のステップ（ｂ）は、当業者に既知のいずれの方法でも採用できる。例えば、圧縮、真空、射出、押出又は回転成形を使用して製品を得ることができる。製品はさらにシートとして後続する型成形に付するか、あるいは粉砕して後続する回転成形に付することができる。
【００２３】
方法のステップ（ｃ）の冷却は、もし望むならば周囲の温度未満とすることもできる。そのような場合、冷却は機械的に行われる。機械的に行われる冷却は、周囲温度まで又はより低温まで、急速に製品の温度を低下させるために適用される。
【００２４】
本発明の木材代用製品は、家具材や、建築構造物や、パネル、装飾品および灰皿、保管容器、トレー等の家財またはオフィス製品を含む建築構成要素のように、木材で通常作られている物品を形成するために使用することができる。木材代用品は押出成形によって、包装材料としてふさわしい波形材料のシートに成形することができる。木材代用品のそのようなパネルあるいは中実のパネルも建築の際の型枠として使用することができる。
【００２５】
木材代用品は、特に、棺又は小箱、つぼ、飾り額及び棺装飾品のような葬式関連品の生産に適している。葬式関連品の生産に適した材料には、容易に生物分解し、有毒蒸気の放出なしに燃焼することが求められる。
【００２６】
幅広く本発明を説明したが、さらに、何らの限定も付する必要はないが、本発明の化合物および方法の適用例について、以下に説明する。
【００２７】
【本発明を実施するための最良の形態および他の形態】
（実施例１）
この実施例において、本発明の物質について記載する。
【００２８】
昭和高分子（株）製のＢｉｏｎｏｌｌｅ＃３０２０の合計４０２ｇは、液化されるまで加熱された。それから、粉砕されたピーカン堅果の果皮１２５ｇが加えられ、また手混合によって均質な混合物とされた。ピーカン堅果の果皮は、粉状にするために電気混合機を使用して粉砕された。得られた物質は、赤茶色のプラスティシン状のペーストであった。
（実施例２）
この実施例において、実施例１に記載された物質からの単純なボウルの製造について記載する。
【００２９】
上記実施例の物質の合計５００ｇが直ちに直径約７０ｍｍのボウルに圧縮成形された。その成形品は、流水により室温まで冷却された。その製品は木の外観、感じ、及び重量特性を有しており、オーストラリアの硬材より強いとわかった。その製品は埋められるか、土及び他の堆肥材料にさらされることで、生物分解性であることがわかった。燃焼された時、その製品は有毒蒸気を放出せず、環境へ検知可能な有害物を放出しなかった。
（実施例３）
昭和高分子（株）製のＢｉｏｎｏｌｌｅ＃１９０３と粉砕されたピーカン堅果の果皮は等容積で、一対のスクリュ押出成形機を使用して、１６０〜２２０℃で混合された。ピーカン堅果の果皮は、０．２５〜２．０ｍｍの大きさの範囲の粒子を製造するために、製粉およびサイズ調整工程とを使用して粉砕された。得られた物質は、ピーカン堅果の果皮の濃いチョコレートブラウンの色を保持していた。
【００３０】
ピーカン堅果の果皮の選択によって物質の色を変えることができ、また、混合物を焦がす及び／又は着色剤を加えることによって暗くできることがわかった。
【００３１】
物質の７５０ｇの部分は直ちにステンレス鋼型を使用して、直径２００ｍｍのボウルに圧縮成形された。使用したプロセスは、本質的に実施例２で記載したとおりであった。得られた製品は、実施例２の製品と同じ特性を有していた。
（実施例４）
この実施例において、実施例３に記載されたものと類似の物質を使用したシート成形品の製造について記載する。
【００３２】
Ｂｉｏｎｏｌｌｅ＃１９０３の合計３７５ｇが、あらかじめ加熱した（２２０°Ｃ）　一対のローラーミルに投入された。溶解後に、粉砕されたピーカン堅果の果皮２５０ｇが、物質中の比率が前者成分６０で後者成分４０となるように、添加された。シート形でミルから取り出すことにより、その物質は大量生産に適する特性を有することがわかった。その物質のＭＦＩ（メルトフローインデックス）は、４．５ＭＦＩを有している純粋のＢｉｏｎｏｌｌｅ＃１９０３より高くて、４．８まで上昇した。この特性はこの物質を、射出成形、圧縮成形、生地成形、押出成形およびプラスチック製造機械を使用したシート成形に適したものにする。
（実施例５）
この実施例において、植物のための生物分解性自己肥沃鉢の製造について記載する。鉢が形成された物質は下記の重量％からなる。
【００３３】
６０％のポリエステル（＃１０００シリーズのＢｉｏｎｏｌｌｅ）
１０％の動物肥料
２％の化学肥料
３％の植物繊維
２５％の粉砕された植物材料
上記した組成の物質が混合された。また、その物質は適正に成形され、適正な大きさの鉢にされた。
【００３４】
使用された植物繊維はサトウキビの茎のかす（バガスのようなもの）、麻状の製品及び他の繊維材料であった。粉砕された植物材料は、ピーカン堅果の果皮又は、おがくずであった。
【００３５】
上記物質から製造された鉢は、あらゆる植物の成長のために使用することができる。１〜２ｍｍの厚さの壁があり、多くの肥料を施す条件の下に埋められた鉢で行なわれた実験では、鉢の分解が約４か月で完成した。
（実施例６）
本発明による木材代用物質及びそれから製造された木材代用品の特性が決定された。実施例１で記載したように、次の物質は、Ｂｉｏｎｏｌｌｅ＃３０２０、並びに、粉砕されたピーカン堅果の果皮又は杉の木から本質的に製造された。その物質は次のとおりであった。
【００３６】
７０％Ｂｉｏｎｏｌｌｅ／３０％ピーカン堅果の果皮の混合物（７０Ｂ／３０ＰＦ）
６０％Ｂｉｏｎｏｌｌｅ／４０％ピーカン堅果の果皮の混合物（６０Ｂ／４０ＰＦ）
５０％Ｂｉｏｎｏｌｌｅ／５０％ピーカン堅果の果皮の混合物（５０Ｂ／５０ＰＦ）
５０％Ｂｉｏｎｏｌｌｅ／５０％杉の木の混合物（５０Ｂ／５０ＣＦ）
その物質は射出成形による犬の骨形状の試験片を成形するために使用された。各試験片は、１５０ｍｍの長さと、２０ｍｍの端部幅と４ｍｍの厚さを有していた。試験片の最も狭い部分の幅は１０ｍｍであった。
【００３７】
比較のために、標準のチップボードパネルが同じ大きさの試験片に成形された。
ａ）引張特性
試験片は、インストロン５５８４試験機を使用して、破断するまで、５ｍｍ／ｍｉｎの一定の速度で引っ張られた。全歪み範囲にわたる応力が記録された。また、この引張試験結果から、各物質の機械的特性が計算された。この試験結果は表１に示されている。
【００３８】
【表１】

引張試験結果は、本発明の物質から製造された木材代用品は、少なくともチップボードより優れた引張強さを有していることを示す。
ｂ）ロックウェル硬さ特性
６０ｋｇの試験荷重で、切り込みの入った１２．７ｍｍの球が使用された。試験片への球の浸入深さが記録された。また、この浸入深さから、Ｒスケールの標準のロックウェル硬さ値（α）が決定された。次の結果が得られた。
【００３９】
試験片　　　　　　　　 ロックウェル硬さ値
７０Ｂ／３０ＰＦ　　　　　　　　１１０
６０Ｂ／４０ＰＦ　　　　　　　　１２４
５０Ｂ／５０ＰＦ　　　　　　　　１１２
５０Ｂ／５０ＣＦ　　　　　　　　１３８
チップボード　　　　　　　　　−１４
試験結果は、本発明による木材代用品がチップボードよりはるかに優れた硬さを有していることを示す。
ｃ）流動特性
驚くべき発見は、本発明による物質がポリエステルそれ自身より優れた流動特性を有しているということであった。１９０℃では、Ｂｉｏｎｏｌｌｅ＃１９０３ポリエステルが、４．５のＭＦＩを有している。６０Ｂ／４０ＰＦの物質で行なわれた試験では、１６０℃で４．８のＭＦＩが得られた。物質が射出成形プロセスで使用される場合、上昇したＭＦＩは有利である。
ｄ）可燃性
燃焼試験は、クィーズランドのホワイト・アイランド・アカデミーにあるクィーズランド・ファイア・アンド・レスキュー・オーソリィティによって行なわれた。５０％Ｂｉｏｎｏｌｌｅ／５０％ピーカン堅果の果皮の混合物から形成された１３ｍｍの厚い壁を有する２００ｍｍの直径の皿が、試験に供された。制御されていない火炎に完全にさらされた試験室のベンチに品物を置いて、試験が実行された。試験中の温度は少なくとも３００℃であった。
【００４０】
品物によって占められたベンチの範囲は、ベンチの残りより高い温度に燃焼されなかった。品物から流れる液体を示す証拠があった。しかし、この液体が燃焼に寄与したという徴候はなかった。
【００４１】
品物の燃焼試験は、充分な熱が加えられるならば、材料は燃えるけれども、火炎は自己消滅することを示した。燃焼試験は、さらに材料が燃えているとき、わずかな煙があることを示した。
【００４２】
本発明の技術的範囲を逸脱せずに、上記実施例の物質およびそれか製品を製造する方法に多くの変更が可能であることは当業者に理解できる。
【００４３】
用語「含む」および「含んでいる」、「含まれた」のような変形は、もし文脈において限定的な解釈が必要とされなければ、定められた物を含むことを示すために使用されている。

Claims (22)

1. 高分子量の脂肪族ポリエステルを３０〜７０体積％、残部として粉砕されたセルロースを含有する植物材料を含む木材代用品を形成する物質であって、上記脂肪族ポリエステルは、アジピン酸及び／又はコハク酸と１，４−ブタンジオールとの縮合物であるもの。
2. 脂肪族ポリエステルは、４００００〜３０００００の範囲の重量平均分子量（Ｍｗ）を有する請求項１記載の物質。
3. 脂肪族ポリエステルは、ポリ（ブチレン）コハク酸塩である請求項１記載の物質。
4. 脂肪族ポリエステルは、ポリ（ブチレン）コハク酸塩／アジピン酸エステルである請求項１記載の物質。
5. セルロースを含有する植物材料は、植物の表皮又は皮層からなるもの、または、種皮材料である請求項１記載の物質。
6. セルロースを含有する植物材料は、堅果の果皮の材料である請求項５記載の物質。
7. 堅果の果皮は、ピーカン堅果の果皮である請求項６記載の物質。
8. セルロースを含有する植物材料は、おがくず、製粉くず、又は、サトウキビの茎のバガスである請求項５記載の物質。
9. 粉砕されたセルロースを含有する植物材料の粒子は、約５ｍｍまでの大きさの微細な粉末である請求項１記載の物質。
10. 着色剤及び／又は重量低減剤を有する請求項１記載の物質。
11. 着色剤は、飛散灰、滑石及び着色顔料から選択される請求項１０記載の物質。
12. 重量低減剤は、微小気泡、中空ガラス球体又は発泡剤である請求項１０記載の物質。
13. 植物成長物質及び／又は植物繊維を含有している請求項１記載の物質。
14. 植物成長物質は、有機肥料及び／又は化学肥料である請求項１３記載の物質。
15. 次のステップを含む木材代用品の製造方法。
    ａ）高分子量の脂肪族ポリエステルを３０〜７０体積％と、残部として粉砕されたセルロースを含有する植物材料を含む物質を１１０〜１８０℃で加熱して流動材料を得、上記脂肪族ポリエステルは、アジピン酸及び／又はコハク酸と１，４−ブタンジオールとの縮合物であって、
    ｂ）ステップ（ａ）で加熱された材料を所望の製品に成形し、
    ｃ）上記製品を少なくとも周囲の温度に冷却すること。
16. ステップ（ｂ）において所望の製品への成形は、圧縮、真空、射出、又は、回転成形である請求項１５記載の方法。
17. ステップ（ｂ）において所望の製品への成形は、押出成形である請求項１５記載の方法。
18. ステップ（ｃ）の冷却は、機械的に行われる請求項１５記載の方法。
19. 請求項１の物質から形成された木材代用品。
20. 請求項１５の方法によって製造された木材代用品。
21. ４００００〜３０００００の範囲の重量平均分子量（Ｍｗ）であるポリ（ブチレン）コハク酸塩を５０〜７０体積％、残部として粉砕されたセルロースを含有する植物材料を含む木材代用品を形成するための物質。
22. 粉砕されたセルロースを含有する植物材料が、粉砕されたピーカン堅果の果皮である請求項２１記載の物質。