JP2004352863A - 多孔質フィルム - Google Patents

多孔質フィルム Download PDF

Info

Publication number
JP2004352863A
JP2004352863A JP2003152328A JP2003152328A JP2004352863A JP 2004352863 A JP2004352863 A JP 2004352863A JP 2003152328 A JP2003152328 A JP 2003152328A JP 2003152328 A JP2003152328 A JP 2003152328A JP 2004352863 A JP2004352863 A JP 2004352863A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
porous film
battery
film according
temperature
weight
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2003152328A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4189961B2 (ja
Inventor
Toshisuke Nomi
俊祐 能見
Takashi Yamamura
隆 山村
Seiryu Nakayama
生龍 中山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nitto Denko Corp
Original Assignee
Nitto Denko Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nitto Denko Corp filed Critical Nitto Denko Corp
Priority to JP2003152328A priority Critical patent/JP4189961B2/ja
Publication of JP2004352863A publication Critical patent/JP2004352863A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4189961B2 publication Critical patent/JP4189961B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Landscapes

  • Manufacture Of Porous Articles, And Recovery And Treatment Of Waste Products (AREA)
  • Electric Double-Layer Capacitors Or The Like (AREA)
  • Cell Separators (AREA)
  • Secondary Cells (AREA)

Abstract

【課題】架橋構造により高温での耐破膜性に優れ、しかも高温でも幅方向の形状維持性に優れた多孔質フィルム、並びにその用途を提供する。
【解決手段】本発明の多孔質フィルムは、ポリオレフィン類を含有する樹脂組成物が架橋されてなり、シャットダウン温度以上の温度領域で幅方向(TD方向)収縮力のピークを有し、そのピークでの収縮力が80N/cm 以下であることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン類を含有する樹脂組成物が架橋されてなる多孔質フィルム、並びにその用途に関する。さらに詳しくは幅方向収縮力の小さい多孔質フィルム、該多孔質フィルムを用いてなる電池、及びキャパシターなどに関する。
【0002】
【従来の技術】
リチウムなどの軽金属のイオンを電極反応に用いる非水電解質電池は、エネルギー密度が高く自己放電も少ないため、電子機器の高性能化、小型化などを背景として利用範囲を大きく広げてきている。このような非水電解質電池の構成としては帯状の正極、負極、およびセパレータを積層し巻回することにより、広い有効電極面積を確保した渦巻状巻回体が主に用いられている。セパレータは、基本的には両極の短絡を防止するとともに、その多孔質構造によりイオンを透過させて電池反応を可能とするものであるが、誤接続などにより異常電流が発生した場合に電池内部温度の上昇に伴い樹脂が熱変形して多孔質を塞ぎ電池反応を停止させる、いわゆるシャットダウン機能(SD機能)を有するものが安全性向上の観点から採用されている。このようなSD機能を有するセパレータは、例えば、ポリエチレン製多孔質フィルムやポリエチレンとポリプロピレンとの多層構造の多孔質フィルムなどが知られている。
【0003】
さらに近年、上記非水電解質電池の用途が格段に広がりを見せており、様々な危険状況を想定して電池を設計する必要が出てきた。その安全性を確認する指標として、例えば、電池を150℃の高温状態に曝しても、すぐには煙を発生するなどの非定常状態にならないこと、といった厳しい条件が設定されている。かかる異常な温度上昇が起こったときに、内部の2つの電極が短絡した場合、蓄積されていたエネルギーが瞬時に放出されるため、非常に危険である。
【0004】
近年では電池の容量増大はとどまることが無く、よりエネルギーの蓄積が大きくなっている。それゆえ、異常な温度上昇が起こってもセパレータが自身の形状を維持し、電池及びキャパシターの2つの電極の電気絶縁性を保ち続ける事は大変重要である。非水電解質電池の構成としては、シート状の電極、セパレータを交互に積み重ねる手法もあるが、一般には製造効率の観点から、前述の通り、帯状の正極、負極、およびセパレータを積層し巻回することにより、広い有効電極面積を確保した渦巻状巻回体が主に用いられているため、セパレータにとって長さ方向(MD方向)よりも幅方向(TD方向)の方が変形の自由度が大きい構成といえる。従って、電池に構成されたセパレータの形状を維持するためにはTD方向の形状維持がより重要である。
【0005】
例えば特許文献1では、ポリオレフィン性多孔質フィルムの孔閉塞温度以下でのTD方向の最大収縮応力及び/または最大収縮率の上限を規定する事によって孔閉塞温度以下での電池の安全性を高める方法が開示されている。この多孔質フィルムは、耐熱性向上のための架橋構造を有するものではなく、孔閉塞温度を超える温度での電池の安全性は想定されていない。ところが、孔閉塞(シャットダウン)が起こった後も暴走反応により電池温度が上がり続けるケースが報告されており、SD温度以上での安全性を維持することが急務である。
【0006】
一方、ポリオレフィン系の多孔質フィルムでは、構成樹脂の融点以上でメルトダウンと呼ばれる、樹脂が溶融して強度低下や流動がおこって破膜、電気絶縁機能を失う現象が起きる場合がある。このため、高温での電池の安全性を向上するためには、高温での破膜を確実に抑制する必要がある。
【0007】
このため、本発明者らは多孔質フィルムを新規な方法で架橋処理する技術を発明し、高強度かつ、高耐熱性の多孔質フィルムの開発に成功した(特許文献2参照)。これにより、高温での溶融等による破膜の問題は解決するに至った。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−322989号公報(第2頁)
【特許文献2】
国際公開WO01/016219号公報(第2頁)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような架橋構造を有する多孔質フィルムでは、孔閉塞温度を超える温度でもフィルム構造が維持される結果、当該温度領域においてTD方向の収縮力が最大となり、これが高温に電池を曝した際に、電極の短絡を引き起こす原因となることが判明した。
【0010】
以上を要約すると、セパレータ等に使用される多孔質フィルムには、電池等が高温になった場合に、TD収縮による内部短絡、および溶融等による破膜による内部短絡の2つの問題を起こすおそれがあり、この両者の問題を解決する必要があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、架橋構造により高温での耐破膜性に優れ、しかも高温でも幅方向の形状維持性に優れた多孔質フィルム、並びにその用途を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するべく、鋭意検討した結果、TD方向の収縮力が多孔質フィルムのシャットダウン温度以上でピークを有し、そのピーク値が電池の高温安全性と密接に相関することを見いだした。具体的には、架橋処理を施した多孔質フィルムにおいて、TD方向収縮力を80N/cm 以下に抑制すれば、150℃ホットボックス試験で10分以上破膜短絡しないことを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明の多孔質フィルムは、ポリオレフィン類を含有する樹脂組成物が架橋されてなり、シャットダウン温度以上の温度領域で幅方向(TD方向)収縮力のピークを有し、そのピークでの収縮力が80N/cm 以下であることを特徴とする。架橋構造により高温での耐破膜性に優れる多孔質フィルムに対して、この範囲内にTD方向収縮力を制御することにより、高温でも幅方向の形状維持性に優れ、これを使用した電池の高温での内部短絡等を防止して、安全性を高めることができる。本発明における各種の物性値は、具体的には実施例に記載された測定方法により測定される値である。
【0014】
上記において、120℃で1時間加熱後の収縮率が、長さ方向(MD方向)収縮率<幅方向収縮率であることが好ましい。このような二軸延伸に特有の特性を有するため、両方向に対するフィルム強度が良好になる。
【0015】
また、針突刺強度が3N/25μm以上であることが好ましい。これにより、高温での耐熱性と相まって、高温での耐破膜性により優れたものとなる。
【0016】
前記樹脂組成物が、少なくとも二重結合を有する重合体を1〜50重量%と、重量平均分子量50万以下のポリオレフィン類、熱可塑性エラストマーおよびグラフトコポリマーからなる群より選ばれる1種以上の樹脂成分を1〜50重量%とを含有することが好ましい。二重結合を有する重合体を使用することで、架橋構造が形成し易くなり、他の上記成分を併用することにより、比較的低温でシャットダウン機能を発現することができるようになる。
【0017】
更に、前記樹脂組成物が、重量平均分子量100万以上の超高分子量ポリエチレンを含有することが好ましい。超高分子量ポリエチレンの使用により、多孔質化の際の延伸効果により、高い強度がより確実に得られるようになり、また、耐熱性向上のための架橋反応にも有利になる。
【0018】
また、前記二重結合を有する重合体が、二重結合を有し、そのα位炭素に水素原子が結合している樹脂であることが好ましい。当該樹脂は、ポリノルボルネン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、およびEPDMからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。これらの樹脂成分により、耐熱性向上のための架橋反応を好適に発現させることができる。
【0019】
本発明の電気絶縁維持膜(非水電解質電池用セパレータを含む)は、上記いずれかに記載の多孔質フィルムからなることを特徴とする。架橋構造により高温での耐破膜性に優れ、しかも高温でも幅方向の形状維持性に優れた多孔質フィルムからなるため、高温における電気絶縁性を維持して短絡を防止することにより、高い安全性を確保することができる。
【0020】
特に、リチウムイオン2次電池用セパレータであって、150℃ホットボックス試験において10分以上短絡破膜することのない非水電解質電池用セパレータが、高温での安全性に優れたものとなる。
【0021】
本発明の電池は、上記いずれかに記載の多孔質フィルムを電気絶縁維持膜として用いてなることを特徴とする。当該電池が、リチウムイオン電池である場合に、本発明は特に有効である。
【0022】
本発明のキャパシターは、上記いずれかに記載の多孔質フィルムを電気絶縁維持膜として用いてなることを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の多孔質フィルムは、ポリオレフィン類を含有する樹脂組成物が架橋されてなり、好ましくは樹脂組成物が、少なくとも二重結合を有する重合体と、重量平均分子量50万以下のポリオレフィン類、熱可塑性エラストマーおよびグラフトコポリマーからなる群より選ばれる1種以上の樹脂成分とを含有する。
【0024】
二重結合を有する重合体(以下、第1樹脂成分ともいう)は、ポリマー主鎖及び/または側鎖に二重結合を有するものであり、その二重結合の一部が水素やハロゲン等の添加によって消失されていてもよく、また二重結合の一部の水素原子が他の置換基に置き換わった誘導体であってもよい。
【0025】
当該重合体としては、二重結合のα位に水素原子が結合しているものが好ましく、具体的には、例えば、ポリノルボルネン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、EPDM(エチレンプロピレンジエンターポリマー)、ポリクロロプレン等が挙げられる。上記の通り、これらの二重結合の一部が改質されていても良く、2種類以上の混合物でも良い。原料供給の観点、及び分散性の観点から、中でもポリノルボルネン、ポリブタジエン、EPDMがより好ましく用いられる。
【0026】
さらに詳細には、ポリブタジエンにおいては、屈曲性構造をとりやすく、二重結合の反応が進行しやすいシス型1,4−ポリブタジエン骨格を多く有するポリブタジエンが好ましい。前記シス型1,4−骨格の割合は30%以上が、良好な架橋反応をすすめる上で好ましく用いられる。EPDMでは共重合性に優れたエチリデンノルボルネンを原料に用いた種類が好ましく、中でも残存二重結合量の多い方が好適である。
【0027】
また、本発明の多孔質フィルムには、重量平均分子量50万以下のポリオレフィン類、熱可塑性エラストマー、グラフトコポリマ−からなる群より選ばれる1種以上の樹脂成分(以下、第2樹脂成分ともいう)が用いられる。重量平均分子量50万以下のポリオレフィン類としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、エチレン−アクリルモノマー共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの変性ポリオレフィン樹脂があげられる。
【0028】
熱可塑性エラストマーとしてはポリスチレン系やポリオレフィン系、ポリジエン系、塩ビ系、ポリエステル系などの熱可塑性エラストマーがあげられる。
【0029】
グラフトコポリマ−としては主鎖にポリオレフィン、側鎖に非相溶性基を有するビニル系ポリマーを側鎖としたグラフトコポリマーがあげられるが、ポリアクリル類、ポリメタクリル類、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリオキシアルキレン類が好ましい。なお、ここで非相溶性基とは、ポリオレフィンに対して非相溶性の基を意味し、例えば、ビニル系ポリマーに由来する基などがあげられる。
【0030】
これらの樹脂は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも重量平均分子量50万以下のポリオレフィン樹脂、特に低融点性のあるポリエチレンや、結晶性を有するポリオレフィン系エラストマー、溶融温度の低いポリメタクリル類を側鎖に有するグラフトコポリマーなどが、低いシャットダウン温度をもたらす点で好ましい。
【0031】
また、多孔質フィルムの強度を高くするために、重量平均分子量50万を超え、特に重量平均分子量100万以上の超高分子量ポリエチレンなどの超高分子量ポリオレフィン樹脂をさらに配合することが好ましい。つまり、本発明の多孔質フィルムは、前記第1樹脂と第2樹脂成分、さらに所望により重量平均分子量50万を越える超高分子量ポリオレフィン樹脂を含有した樹脂組成物からなるものである。
【0032】
本発明において、二重結合を有する重合体の配合量は、例えば樹脂組成物中1〜50重量%の範囲であり、1〜40重量%が好ましく、1〜35重量%がより好ましい。該配合量の下限は、十分な耐熱性を有する多孔質フィルムを得る観点から、1重量%以上であり、また、その上限は、電池用セパレータとしての多孔質フィルムの特性を維持する観点から、50重量%以下である。
【0033】
また、第2樹脂成分の配合量は、例えば樹脂組成物中1〜50重量%の範囲であり、5〜45重量%が好ましく、5〜40重量%がより好ましい。該配合量の下限は、十分なSD温度を得る観点から、1重量%以上であり、また、その上限は、十分な空孔率を有し、電池用セパレータとしての多孔質フィルムの特性を維持する観点から、50重量%以下である。
【0034】
また、重量平均分子量50万を超える超高分子量ポリオレフィン樹脂の配合量は、樹脂組成物中5〜98重量%が好ましく、10〜90重量%がより好ましい。
【0035】
次に、本発明による多孔質フィルムの製造方法について説明する。本発明による多孔質フィルムの製造には、湿式製膜法に関する公知の方法を利用することができる。例えば、前記樹脂組成物を溶媒と混合し、混練、加熱溶融しながらシート状に成形した後、圧延し、一軸方向以上に延伸し、溶媒を加熱除去することにより製造することができる。
【0036】
該溶媒としては、例えば、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、デカリン、流動パラフィンなどの脂肪族または環式の炭化水素、沸点がこれらに対応する鉱油留分などがあげられ、流動パラフィンなどの脂環式炭化水素を多く含む不揮発性溶媒が好ましい。また、溶媒の使用量としては、樹脂組成物と溶媒の混合物を混練りし、シート状に成形する工程は、公知の方法により行うことができ、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いてバッチ式で混練りし、ついで、冷却された金属板に挟み込み冷却して急冷結晶化によりシート状成形物にしてもよく、Tダイなどを取り付けた押出機などを用いてシート状成形物を得てもよい。なお、混練りは、適当な温度条件下であればよく、特に限定されないが、好ましくは100℃〜200℃である。このようにして得られるシート状成形物の厚みとしては、特に限定されないが、3〜20mmが好ましく、ヒートプレスなどの圧延処理により0.5〜3mmの厚みにしてもよい。ヒートプレス方法としては、特に限定されないが、例えば特開2000−230072号公報に記載のベルトプレス機が好適に用いることが出来る。また、圧延処理の温度は100〜140℃が好ましい。
【0037】
前記シート状成形物の延伸処理の方式としては、特に限定されるものではなく、通常のテンター法、ロール法、インフレーション法またはこれらの方法の組み合わせであってもよく、公知の延伸方式をも適用することができる。二軸延伸の場合、縦横同時延伸または逐次延伸のいずれでもよい。膜の均一性、強度の観点から、なかでも同時二軸延伸にて製膜するのが好ましい。延伸処理の温度は、100℃〜140℃であることが好ましい。
【0038】
本発明の多孔質フィルムは、シャットダウン温度以上の温度領域で幅方向(TD方向)収縮力のピークを有し、そのピークでの収縮力が80N/cm 以下であることを特徴とする。このような、結晶融点以上の高温での収縮力の発生は、結晶融解により、延伸時の残留応力が解放されるためと考えられる。そこでTD方向に向く結晶の割合を下げる目的で、MD配向性を付与した結果、結晶融点以上でのTD方向の収縮力を抑制できることを見いだした。MD配向にするプロセスは各工程単体もしくは2工程以上の組み合わせで制御することができる。
【0039】
例えば、混練り後のダイスを用いた押出工程では、MD方向の流れが出来ており、従来、これを解消するためにダイス内部で横方向の流れを作るフィッシュテール型のダイスを用いる等の工夫をされているが、MD配向を目的とするためには、例えばMD方向に素直に押し出す平型ダイスを使用するのが有利となる。
【0040】
また圧延、延伸工程においても、MD、TDの延伸比率によりMD配向にすることが出来る。例えば、MD倍率>TD倍率に制御することによりMD配向に有利となる。本発明では、押出工程や圧延工程におけるMD配向の度合いにもよるが、特に、延伸工程においてMD倍率/TD倍率が1.0〜3.5が好ましく、MD倍率/TD倍率が1.1〜3.0がより好ましい。
【0041】
乾式一軸延伸膜は、TD方向に延伸しないため、上記目的には合致する。しかし、フィルムが裂けやすく、強度が低い。従って、二軸延伸にて製膜して強度を高く保ちつつ、MD配向性を高める製法が有効である。従って、延伸工程におけるTD倍率は、2〜6が好ましい。
【0042】
このような配向性の性質から、シャットダウン温度以下の120℃において1時間加熱した際の収縮率がTD>MDとなることが好ましく、これによって、強度が不十分となる一軸延伸膜と明確に区別することが出来る。
【0043】
脱溶媒処理は、シート状成形物から溶媒を除去して多孔質構造を形成させる工程であり、溶媒除去が出来れば特に方法は限定されないが、例えば、シート状成形物を溶媒で洗浄して残留する溶媒を除去することにより行うことができる。溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカンなどの炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素などの塩素炭化水素、三フッ化エタンなどのフッ化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などの易揮発性溶媒があげられ、これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。かかる溶媒を用いた洗浄方法は特に限定されず、例えば、シート状成形物を溶媒中に浸漬して溶媒を抽出する方法、溶媒をシート状成形物にシャワーする方法などがあげられる。
【0044】
これらの公知の方法によって前記樹脂組成物を製膜して多孔質フィルムを得た後、好ましくは、該多孔質フィルムを熱、紫外線、電子線および可視光線からなる群より選ばれる1種以上を用いる架橋処理を施すことによりポリブタジエン等の二重結合を全部または一部消失させる。これらの中では、熱、紫外線を用いる架橋処理が、多孔質フィルムの構造安定性の点で望ましい。これらの架橋処理を施すことによって上記多孔質フィルムの耐熱性は高温での耐熱性(耐破膜性)は大きく向上する。
【0045】
この耐熱性向上の理由は、必ずしも明白ではないが、各処理で生じたポリマーラジカルが二重結合に付加し、その際に二重結合を有する重合体同士、あるいはその重合体とその他の樹脂成分との間で架橋反応が起こること。また、主鎖における二重結合の消失によってポリマー鎖自体のガラス転移温度が大きく上昇するであろうことなどが考えられる。二重結合を消失させる割合は所望の耐熱性を考慮して適宜選択されるが、80〜100%(IRのピークの大きさに基づき算出)の消失率が好ましい。そして、これらにより耐熱性が大きく向上するものと考えられる。
【0046】
前記架橋処理の方法として熱を用いる場合、一回で熱処理する一段式熱処理法でも、最初に低温でまず熱処理し、その後さらに高温での熱処理を行う多段式の熱処理法でもよく、あるいは昇温しながら熱処理する昇温式熱処理法でもよいが、通気度等の多孔質フィルムの元の諸特性を損なうことなく処理することが望ましい。一段式熱処理の場合には、多孔質フィルムの組成にもよるが、40℃〜140℃が好ましい。また、低温から熱処理を開始し、その後、処理温度を上げていくと、多孔質フィルムの架橋とともに耐熱性がしだいに向上していくので、加熱によって通気度等の元の諸特性を損なうことなく高温に暴露することができるようになる。そのため、諸特性を損なわずに、短時間で熱処理を完了するためには、多段式あるいは昇温式熱処理法が好ましい。
【0047】
多段式の熱処理法の最初の熱処理温度としては、多孔質フィルムの組成にもよるが、好ましくは40〜90℃、2段目の熱処理温度としては、多孔質フィルムの組成にもよるが、好ましくは90〜140℃である。
【0048】
紫外線を用いる場合、例えば、製膜後の多孔質フィルムをそのまま空気中で、あるいは重合開始剤を含むメタノール溶液等に含浸させ溶媒乾燥後に、この多孔質フィルムを水銀ランプにて照射することにより、架橋処理を施すことができる。また、照射時の熱コントロールのため、水中で紫外線照射を行ってもよい。
【0049】
電子線を用いる場合、例えば、製膜後の多孔質フィルムを放射線量0.1〜10Mrad照射することにより行う。照射時の雰囲気は、熱処理法同様、空気中でもかまわないし、架橋状態をコントロールする意味で窒素ガスまたはアルゴンガスのような不活性ガスの雰囲気でも良い。
【0050】
また、前記架橋処理工程に続いて、熱収縮の防止のために一般に多孔質フィルムをヒートセット(熱固定)しても良い。特に、本発明においては、前記のように熱を用いた架橋処理を行うことで、処理条件によっては実質的にヒートセットも可能となるが、ヒートセットとして不十分な場合には、熱収縮をよりよく防止するために、前記架橋処理後に、さらに加熱してヒートセットを行っても良い。該ヒートセットする際の温度は、例えば110〜140℃で0.5〜2時間程度行えばよい。
【0051】
本発明の多孔質フィルムの厚みとしては1〜60μm、好ましくは5〜50μmが望ましい。その通気度としては、例えばJIS P8117に準拠した方法で100〜1000秒/100cc、好ましくは100〜900秒/100ccが望ましい。そのシャットダウン温度としては150℃以下、好ましくは145℃以下が望ましい。また、本発明の多孔質フィルムはTD延伸倍率を低く抑えながら、高強度の性能を満足するものであり、突き刺し強度は2N/25μm以上が好ましく、3N/25μm以上がより好ましい。フィルムのシャットダウン温度以上の温度で収縮力のピークを持ち、そのTD収縮力ピークが80N/cm 以下であることが好ましく、さらに好ましくは60N/cm 以下である。その一例を図1に示す。
【0052】
配向の性質から、融点以下の120℃の収縮率がMD収縮率<TD収縮率となる。このような本発明による多孔質フィルムは、高温でのTD方向の形状維持性、耐破膜性に優れる非水電解質電池用セパレータとして、電池の様々な大きさや用途に対してより安全性を向上させることが期待できる。
【0053】
[電池]
本発明の多孔質フィルムは従来のセパレータと同様に、正極と負極の間に介在せしめた状態で用いて非水電解質電池を組み立てることが出来る。この際の正極、負極、電池ケース、電解質等の材質やこれら構成要素の配置構造も何ら格別なことは要求されず、従来と同様で良く、例えば特開昭63−205048号公報に示される通りであってよい。
以下、非水電解質電池であるリチウムイオン2次電池の製造に用いる材料について具体的に説明する。リチウムイオン2次電池用セパレータとしては、150℃ホットボックス試験において10分以上短絡破膜することのないことが好ましい。正極はリチウムイオンを吸蔵放出する活物質、バインダー、集電体で構成されたものである。バインダーを溶媒で溶解し、該活物質を混ぜてペーストを作り、集電体に塗工後溶媒を乾燥して作製する方法が一般的に用いられる。乾燥後プレス工程を経る場合もある。
【0054】
活物質としては、種々公知の化合物が挙げられ、LiCoO 、LiMnO 、LiNiO などのリチウム含有遷移金属酸化物、またはそれらの遷移金属の一部をその他の遷移金属で置換されたリチウム含有遷移金属酸化物、二硫化チタン、二硫化モリブデンなどのカルコゲン化合物などが挙げられる。
【0055】
バインダーには、既に公知の種々の樹脂が挙げられる。例えば、ポリふっ化ビニリデン、ヘキサフロロプロピレン、ポリテトラフロロエチレンなどのフッ素系樹脂、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンターポリマー等の炭化水素系樹脂、またはそれらの混合物等が挙げられる。また導電助剤としてカーボンブラック等の導電性粉末を添加しても差し支えない。
【0056】
集電体は耐酸化性に優れた金属が用いられ、中でも箔状やメッシュ状に加工されたアルミニウムが好適に用いられる。
【0057】
負極は炭素系活物質またはリチウム含有合金、バインダー、集電体で構成されたものである。バインダーとしては正極同様のものが用いられる。負極についても正極同様、公知の方法で製造される。なお、場合により正極同様導電肋剤を含有しても差し支えない。
【0058】
炭素系活物質としては例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、コークスやピッチの焼成体、フェノール樹脂やポリイミド、セルロースなどを焼結したもの等が挙げられる。リチウム含有合金としては例えば、Al、Sn、Si系の合金が挙げられる。
【0059】
集電体は、還元安定性に優れた金属が用いられ、中でも箔状やメッシュ状に加工された銅が好適に用いられる。
【0060】
電解質はリチウム塩を非水溶媒に溶解した電解液、該電解液を含むゲル電解質、リチウム塩を例えばポリエチレンオキシド等のポリマーに溶解分散させた固体電解質等、公知の電解質が挙げられる。具体的なリチウム塩としてはホウ四ふっ化リチウムLiBF 、六ふっ化リン酸リチウムLiPF 、過塩素酸リチウムLiClO 、トリフロロスルホン酸リチウムLiCF SO 等を用いることが出来る。また、非水溶媒には、例えばプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、1,2−ジメトキシエタン(DME )、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、等の溶媒、またはこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0061】
本発明の電池は、TD収縮力が小さく、耐熱性に優れた本発明の多孔質フィルムを用いた電池であり、上記リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質電池の他、太陽電池、燃料電池などが挙げられる。
【0062】
一般に色素増感型太陽電池では、例えば文献(早瀬修二「色素増感太陽電池の研究開発動向」スイッチング電源・バッテリーシステムシンポジウム2003)のように、色素が化学吸着したナノサイズの酸化チタン多孔質薄膜電極と電解質で構成される。電極間の絶縁には枠状のスペーサが利用されていたが、多孔質フィルムを用いることにより、電解質層の薄化、均一化、大面積化が容易に出来、出力向上に寄与する。また、該多孔質フィルムは電解質を含浸させることにより透明化し、反応に必要な光を透過するため、好適に用いられる。
【0063】
高分子を電解質として用いる燃料電池では、例えばWO01/022514号公報のように、触媒層とガス拡散層からなる正極及び負極の間に高分子電解質膜を介在せしめた状態で積層し、電池が組み立てられる。本発明の多孔質フィルムの中に高分子電解質を含浸させて、高分子電解質膜として使用することにより、電解質層の補強と薄膜化を両立でき、出力を向上させることが出来る。本多孔質フィルムはTD収縮力が小さく、積層されて摩擦力が存在するため高温でも形状維持性に優れ、しかも架橋構造により溶融しないため、強度が維持でき、好適に用いられる。
【0064】
また、本発明の多孔質フィルムは従来のセパレータと同様に、一対の電極の間に介在せしめた状態で用いてキャパシターを組み立てることが出来る。この際の電極、電解質、ケース等の材質やこれらの構成要素の配置構造も何ら格別なことは要求されず、従来と同様で良い。例えば、電気二重層キャパシターでは、電極にはPTFEをバインダーとして形成した活性炭電極、電解質には炭酸プロピレンに0.5MEt PBF を添加した溶液を用いることが出来る。
【0065】
【実施例】
本発明を実施例、比較例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。なお、各種特性については、下記要領にて測定を行なった。
【0066】
(重量平均分子量)
ウォーターズ社製のゲル浸透クロマトグラフ[GPC−150C]を用い、溶媒にo−ジクロロベンゼンを、また、カラムとして昭和電工(株)製の[Shodex−80M]を用いて135℃で測定する。データ処理は、TRC社製データ収集システムを用いて行なう。分子量はポリスチレンを基準として算出する。
【0067】
(フィルム厚)
1/10000シックネスゲージにより測定した。
【0068】
(空孔率)
測定対象の多孔質フィルムを直径6cmの円状に切り抜き、その体積と重量を求め、得られる結果から次式を用いて計算する。
空孔率(体積%)=100×(体積(cm )−重量(g)/樹脂の平均密度(g/cm ))/体積(cm
(通気度(ガーレ値))
JIS P8117に準拠して測定した。
【0069】
(シャットダウン温度)
25mmφの筒状の試験室を有し、試験室が密閉可能なSUS製のセルを用い、下部電極はφ20mm、上部電極は10mmφの白金板(厚さ1.0mm)を使用した。24mmφに打ち抜いた測定試料を電解質に浸漬して電解質を含浸し、電極間に挟み、セルにセットした。電極はセルに設けられたばねにて一定の面圧がかかるようにした。電解質はプロピレンカーボネートとジメトキシエタンを容量比で1:1の割合で混合した溶媒に、ホウフッ化リチウムを1.0mol/Lの濃度になるように溶解したものを用いた。
【0070】
このセルに熱伝対温度計と、抵抗計を接続して温度と抵抗を測定できるようにし、180℃恒温器中へ投入し、温度と抵抗を測定した。100〜150℃の平均昇温速度は10℃/分であった。この測定により、抵抗が100Ω・cm に達した時の温度をシャットダウン温度とした。
【0071】
(突刺強度)
カトーテック(株)製圧縮試験機「KES−G5」を用いて、突き刺し試験を行った。得られた荷重変位曲線から最大荷重を読みとり、突き刺し強度とした。針は直径1mm、先端の曲率半径0.5mmのものを用い、2cm/secの速度で突き刺しを行った。得られた値に厚みの比率を乗じて、単位:N/25μmに換算した。
【0072】
(MD/TD収縮比)
MD方向60mm、TD方向40mmの形状に打ち抜いた長方形のサンプルを、120℃×1時間高温乾燥機中に保持し、取り出した後にMD、TD方向のサンプルの大きさを測り、次式を用いて収縮率を求めた。
収縮率(MD)= 100×(60−L1)/60
〔ここで、L1は収縮後のMDの大きさ(mm)である〕
収縮率(TD)=100×(40−L2)/40
〔ここで、L2は収縮後のTDの大きさ(mm)である〕
MD/TD収縮比は次式を用いて求めた。
MD/TD収縮比=収縮率(MD)/収縮率(TD)
(収縮力)
幅10mmの短冊状サンプルをTD方向に採取し、チャック間を30mmとして取り付け、170℃に設定した無風型電熱加熱乾燥機に下チャックを静置し、デジタルフォースゲージ(日本電産シンポ(様)製、FGC−02)に上チャックをつるし、サンプルのたるみが始まる時点のロードを0mNにセットし、昇温を行った(図2参照)。このとき、昇温カーブは図1の様になる。130℃から150℃における平均昇温速度は2℃/minである。140℃付近のピーク値を読みとり収縮力とした。この値をサンプルの断面積で割り、単位面積当たりの収縮力(単位:N/cm )を算出した。
【0073】
(ホットボックス試験)
電池の正極負極に端子を押しつけた状態を保持できるケースに電池をはめ、蓋がロック出来るSUS製密閉容器に電池も含むケース、及び熱電対を入れてロックし、その密閉容器を熱風乾燥機に入れて電池の強制加熱を行った。約30分で密閉容器内が150℃になるようにセットし、150℃に達した後はそのままで温度維持し、電池の内部抵抗の変化を交流抵抗測定機にて測定した。150℃に達してから電池抵抗が急激に低下(内部短絡)するまでの時間を測定し、これを維持時間と定めた。
【0074】
(架橋構造の確認)
IRスペクトル中のC=C二重結合に由来する吸収ピーク(960cm−1)の消失を確認した。また、10mm角の試料を金属メッシュに挟んで熱キシレン(255℃)中で溶解させ、残存する成分の比率をゲル分率として測定し、熱処理前の多孔質フィルムのゲル分率(通常は0%)と比較した。
【0075】
実施例1
ポリノルボルネン樹脂(日本ゼオン製、「ノーソレックスNB」3重量%、オレフィン系熱可塑性エラストマー(住友化学製TPE821)16重量%、重量平均分子量100万の超高分子量ポリエチレン(融点137℃)81重量%からなる重合体組成物20重量部と流動パラフィン80重量部とをスラリー状に均一に混合し、160℃の温度で二軸押出機にて溶解混練りしMD配向に適した平型ダイスにて厚さ8mmのシート状に押出しをおこなった。これらの混練物を一定テンション下で引取り、一旦−10℃の不凍液中にて冷却したのち、設定温度130℃のベルトプレス機にて1mmのシートに成型した。このとき横幅は3倍に圧延されていた。120℃の温度でMD・TD方向に5×4.5倍に同時二軸延伸をおこない、フィルムを得た。上記延伸フィルムをヘプタンを使用して脱溶媒処理を行ったのち、得られた多孔質フィルムを空気中で85℃で6時間熱処理し、ついで115℃で2時間熱処理して、本発明による多孔質フィルムを得た。この多孔質フィルムはIRとゲル分率との測定から架橋構造が確認され、得られた多孔質フィルムについて特性評価をおこなった。収縮力測定(設定170℃)において、主材料の融点を超える165℃でも溶融破断は起こらなかった。続いて、上記多孔質フィルムを用いた電池の作製をおこなった。
【0076】
[正極]
リチウムコバルト酸化物(LiCoO )89重量部、アセチレンブラック5重量部、PVdF6重量部およびNMP90重量部を混合し、正極合材スラリーを得た。この正極合剤スラリーを70メッシュの網を通過させて粒径の大きな固形物を取り除いた後、厚さ20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗布し、乾燥した後プレスを行って正極を得た。本実施例において、正極の塗布面積(W1×W2)は、55×35mm である。
【0077】
[負極]
黒鉛化メソカーボンマイクロビーズ(MCMB、大阪ガスケミカル製d(002)=0.34nm未満)粉末95重量部、PVdF5重量部およびN−メチルピロリドン(NMP)110重量部を混合し、負極合材スラリーを得た。該スラリーを厚さ18μmの銅箔からなる負極集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後プレスを行ない、負極を得た。負極の塗布面積(W1×W2)は、56×36mm である。
【0078】
なお、正負極電極には活物質が塗布されていない集電部が設けられている。
【0079】
[電池の作製]
上記で得られた正極6枚、負極5枚(内片面電極2枚)を本発明の多孔質フィルム(TD方向57×MD方向40mm )を介して、交互に積層し、電極積層体を作成し、MD方向の2mmのセパレータ余裕部分(すなわち、多孔質フィルム40mmに対し、電極36mmのため、両側に2mmの余裕がある)をヒートシールした。得られた電極積層体の正極耳部分および負極耳部分をタブ(正極:アルミニウム、負極:ニッケル)と溶接し、電解液としてエチレンカーボネート、ジエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートを1/2/1重量比で混合した溶媒に1mol/Lの濃度になるようにホウフツ化リチウムを溶解した溶液を含浸した後、厚さ0.11mmのアルミニウム−樹脂ラミネートフィルム(アルミニウム層0. 02mm)を外装体として、減圧下(0.1気圧)真空封止することにより、電池を得た。
【0080】
この電池を0.2Cの電流で4.2Vまで充電した後、4.2Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を合計5時間おこなった。
【0081】
[ホットボックス試験]
上記のごとく、室温で4.2Vまで充電した状態で、電池のホットボックス試験を行った。電池周囲が150℃に達してから、電池の内部短絡が観測されるまでの維持時間を測定した。この結果を、多孔質フィルムの特性と共に表1に示す。
【0082】
実施例2
EPDM樹脂(住友化学(株)製、「エスプレン553」10重量%、重量平均分子量20万の高密度ポリエチレン20重量%、重量平均分子量100万の超高分子量ポリエチレン70重量%からなる重合体組成物20重量部と流動パラフィン80重量部とをスラリー状に均一に混合し、160℃の温度で二軸押出機にて溶解混練りし、シート状に押出しをおこなった。これらの混練物を一旦冷却したのち、設定温度130℃の連続プレス機にてlmmのシートに成型し、120℃の温度でMD・TD方向に6×4倍に同時二軸延伸をおこない、フィルムを得た。上記延伸フィルムをへプタンを使用して脱溶媒処理を行ったのち、得られた多孔質フィルムを空気中で85℃で6時間熱処理し、ついで110℃で3時間熱処理して、本発明による多孔質フィルムを得た。この多孔質フィルムはIRとゲル分率との測定から架橋構造が確認され、得られた多孔質フィルムについて特性評価をおこなった。収縮力測定(設定170℃)において、主材料の融点を超える165℃でも溶融破断は起こらなかった。続いて、実施例1同様に、上記多孔質フィルムを用いた電池を作製し、ホットボックス試験を行った。
【0083】
実施例3
123℃の温度でMD・TD方向に7×3.5倍に同時二軸延伸をおこなった以外は実施例1と同様にして本発明による多孔質フィルムを得た。この多孔質フィルムはIRとゲル分率との測定から架橋構造が確認され、得られた多孔質フィルムについて特性評価をおこなった。収縮力測定(設定170℃)において、主材料の融点を超える165℃でも溶融破断は起こらなかった。続いて、実施例1同様に、上記多孔質フィルムを用いた電池を作製し、ホットボックス試験を行った。
【0084】
実施例4
127℃の温度でMD・TD方向に8×3倍に同時二軸延伸をおこなった以外は実施例1と同様にして本発明による多孔質フィルムを得た。この多孔質フィルムはIRとゲル分率との測定から架橋構造が確認され、得られた多孔質フィルムについて特性評価をおこなった。収縮力測定(設定170℃)において、主材料の融点を超える165℃でも溶融破断は起こらなかった。続いて、実施例1同様に、上記多孔質フィルムを用いた電池を作製し、ホットボックス試験を行った。
【0085】
比較例1
125℃の温度でMD・TD方向に3.5×7倍に同時二軸延伸をおこなった以外は実施例1と同様にして本発明による多孔質フィルムを得た。得られた多孔質フィルムについて特性評価をおこなった。収縮力測定(設定170℃)において、主材料の融点を超える165℃でも溶融破断は起こらなかった。続いて、実施例1同様に、上記多孔質フィルムを用いた電池を作製し、ホットボックス試験を行った。
【0086】
比較例2
実施例1において、ポリノルボルネン樹脂を使用しないこと以外は、全く同様にして架橋構造を有しない多孔質フィルムを得た。得られた多孔質フィルムについて特性評価をおこなった。収縮力測定(設定170℃)において、145℃で溶融破断が生じた。続いて、実施例1同様に、上記多孔質フィルムを用いた電池を作製し、ホットボックス試験を行った。
【0087】
以上の実施例、比較例で得られたセパレータの特性を表1に示す。
【0088】
【表1】
Figure 2004352863
表1の結果が示すように、TD方向の収縮力が小さいほどホットボックス試験における維持時間が長く、安全性が向上することが判る。150℃と高温に耐える高耐熱性を持ち、かつTD方向の収縮力を減らし電極露出が起こりにくくなることにより、高い安全性を達成したと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】MD・TD方向の延伸倍率が異なる多孔質フィルムを用いた、TD方向の収縮力の測定結果を示すグラフ
【図2】TD方向の収縮力を測定する際の装置構成を示す概略図

Claims (13)

  1. ポリオレフィン類を含有する樹脂組成物が架橋されてなり、シャットダウン温度以上の温度領域で幅方向(TD方向)収縮力のピークを有し、そのピークでの収縮力が80N/cm 以下である多孔質フィルム。
  2. 120℃で1時間加熱後の収縮率が、長さ方向(MD方向)収縮率<幅方向収縮率である請求項1記載の多孔質フィルム。
  3. 針突刺強度が3N/25μm以上である請求項1又は2に記載の多孔質フィルム。
  4. 前記樹脂組成物が、少なくとも二重結合を有する重合体を1〜50重量%と、重量平均分子量50万以下のポリオレフィン類、熱可塑性エラストマーおよびグラフトコポリマーからなる群より選ばれる1種以上の樹脂成分を1〜50重量%とを含有する請求項1〜3いずれかに記載の多孔質フィルム。
  5. 前記樹脂組成物が、重量平均分子量100万以上の超高分子量ポリエチレンを含有する請求項1〜4いずれかに記載の多孔質フィルム。
  6. 前記二重結合を有する重合体が、二重結合を有し、そのα位炭素に水素原子が結合している樹脂である請求項4記載の多孔質フィルム。
  7. 前記α位炭素に水素原子が結合している樹脂が、ポリノルボルネン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、およびEPDMからなる群より選ばれる1種以上である請求項6記載の多孔質フィルム。
  8. 請求項1〜7いずれかに記載の多孔質フィルムからなる電気絶縁維持膜。
  9. 請求項1〜7いずれかに記載の多孔質フィルムからなる非水電解質電池用セパレータ。
  10. リチウムイオン2次電池用セパレータであって、150℃ホットボックス試験において10分以上短絡破膜することのない請求項9記載の非水電解質電池用セパレータ。
  11. 請求項1〜7いずれかに記載の多孔質フィルムを電気絶縁維持膜として用いてなる電池。
  12. リチウムイオン電池である請求項11記載の電池。
  13. 請求項1〜7いずれかに記載の多孔質フィルムを電気絶縁維持膜として用いてなるキャパシター。
JP2003152328A 2003-05-29 2003-05-29 多孔質フィルム Expired - Fee Related JP4189961B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003152328A JP4189961B2 (ja) 2003-05-29 2003-05-29 多孔質フィルム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003152328A JP4189961B2 (ja) 2003-05-29 2003-05-29 多孔質フィルム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2004352863A true JP2004352863A (ja) 2004-12-16
JP4189961B2 JP4189961B2 (ja) 2008-12-03

Family

ID=34047571

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003152328A Expired - Fee Related JP4189961B2 (ja) 2003-05-29 2003-05-29 多孔質フィルム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4189961B2 (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008013730A (ja) * 2006-07-10 2008-01-24 Nitto Denko Corp 多孔質フィルム
JP2008226703A (ja) * 2007-03-14 2008-09-25 Nitto Denko Corp 多孔質フィルム
EP2116372A1 (en) 2007-01-30 2009-11-11 Asahi Kasei E-materials Corporation Multilayer porous membrane and method for producing the same
JP2014232703A (ja) * 2013-05-30 2014-12-11 株式会社Gsユアサ 蓄電素子及び蓄電素子の製造方法
WO2015146733A1 (ja) * 2014-03-26 2015-10-01 東ソー株式会社 超高分子量ポリエチレン製延伸微多孔膜
JP2017048334A (ja) * 2015-09-03 2017-03-09 旭化成株式会社 ポリオレフィン微多孔膜、蓄電デバイス用セパレータ、及び蓄電デバイス

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1997044839A1 (en) * 1996-05-22 1997-11-27 Kureha Chemical Industry Co., Ltd. Porous film and separator for batteries comprising porous film
JPH1160789A (ja) * 1997-08-08 1999-03-05 Asahi Chem Ind Co Ltd 微多孔膜の製造方法
JPH11268118A (ja) * 1998-01-26 1999-10-05 Mitsui Chem Inc ポリオレフィン多孔フィルムおよびその製造方法なら びに電池用セパレータフィルム
JP2002121313A (ja) * 2000-10-18 2002-04-23 Nitto Denko Corp 多孔質フィルム
JP2002284918A (ja) * 2001-03-23 2002-10-03 Tonen Chem Corp ポリオレフィン微多孔膜及びその製造方法並びに用途
JP2003147109A (ja) * 2001-11-12 2003-05-21 Nitto Denko Corp 多孔質フィルム、非水電解液電池用セパレータ及び非水電解液電池

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1997044839A1 (en) * 1996-05-22 1997-11-27 Kureha Chemical Industry Co., Ltd. Porous film and separator for batteries comprising porous film
JPH1160789A (ja) * 1997-08-08 1999-03-05 Asahi Chem Ind Co Ltd 微多孔膜の製造方法
JPH11268118A (ja) * 1998-01-26 1999-10-05 Mitsui Chem Inc ポリオレフィン多孔フィルムおよびその製造方法なら びに電池用セパレータフィルム
JP2002121313A (ja) * 2000-10-18 2002-04-23 Nitto Denko Corp 多孔質フィルム
JP2002284918A (ja) * 2001-03-23 2002-10-03 Tonen Chem Corp ポリオレフィン微多孔膜及びその製造方法並びに用途
JP2003147109A (ja) * 2001-11-12 2003-05-21 Nitto Denko Corp 多孔質フィルム、非水電解液電池用セパレータ及び非水電解液電池

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008013730A (ja) * 2006-07-10 2008-01-24 Nitto Denko Corp 多孔質フィルム
EP2116372A1 (en) 2007-01-30 2009-11-11 Asahi Kasei E-materials Corporation Multilayer porous membrane and method for producing the same
US9293752B2 (en) 2007-01-30 2016-03-22 Asahi Kasei E-Materials Corporation Multilayer porous membrane and production method thereof
JP2008226703A (ja) * 2007-03-14 2008-09-25 Nitto Denko Corp 多孔質フィルム
JP2014232703A (ja) * 2013-05-30 2014-12-11 株式会社Gsユアサ 蓄電素子及び蓄電素子の製造方法
WO2015146733A1 (ja) * 2014-03-26 2015-10-01 東ソー株式会社 超高分子量ポリエチレン製延伸微多孔膜
US10340492B2 (en) 2014-03-26 2019-07-02 Tosoh Corporation Ultrahigh molecular weight polyethylene stretched porous film
JP2017048334A (ja) * 2015-09-03 2017-03-09 旭化成株式会社 ポリオレフィン微多孔膜、蓄電デバイス用セパレータ、及び蓄電デバイス

Also Published As

Publication number Publication date
JP4189961B2 (ja) 2008-12-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6171117B1 (ja) 非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池
JP4204321B2 (ja) 多成分系複合フィルムを利用した電気化学素子(electrochemicalelementusingmulticomponentcompositefilm)
KR101434377B1 (ko) 비수계 이차전지용 세퍼레이터 및 비수계 이차전지
CN108352484B (zh) 非水系二次电池用隔膜及非水系二次电池
JP6823718B2 (ja) ポリオレフィン微多孔膜、蓄電デバイス用セパレータ、及び蓄電デバイス
JP6187650B2 (ja) 積層多孔質フィルム、蓄電デバイス用セパレータおよび蓄電デバイス
JPWO2008044761A1 (ja) 非水電解質二次電池用セパレータ、及び、非水電解質二次電池用複数層セパレータ
JP7409301B2 (ja) ポリオレフィン微多孔膜及びポリオレフィン微多孔膜の製造方法
CN111244369B (zh) 聚烯烃微多孔膜
JP4189961B2 (ja) 多孔質フィルム
JP2000348703A (ja) 電池用セパレータ及びそれを用いたリチウム電池
WO2017026482A1 (ja) 積層多孔質フィルム、蓄電デバイス用セパレータおよび蓄電デバイス
JP2004204141A (ja) 多孔質フィルム
JP5352075B2 (ja) リチウム二次電池
JP5657977B2 (ja) 多孔質フィルム、電気絶縁維持膜、非水電解質電池用セパレータ及び電気化学素子
JP3974264B2 (ja) 電池用セパレータおよびそれを用いた非水系電解液電池
KR101025394B1 (ko) 다공질 필름
JP6877611B1 (ja) リチウムイオン二次電池
JP4952193B2 (ja) リチウム二次電池
US7704597B2 (en) Porous film
JP2013218925A (ja) セパレータ、及びそれを用いた非水系二次電池
JP2003147109A (ja) 多孔質フィルム、非水電解液電池用セパレータ及び非水電解液電池
JP2004263012A (ja) 多孔質フィルム及び電池用セパレータ
CN1780028B (zh) 多孔膜
JP4582675B2 (ja) 非水電解液電池用セパレータ及び非水電解液電池

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20051114

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080128

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080130

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080324

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20080324

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20080513

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080710

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20080723

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080910

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20080911

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110926

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4189961

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140926

Year of fee payment: 6

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees