JP5657977B2 - 多孔質フィルム、電気絶縁維持膜、非水電解質電池用セパレータ及び電気化学素子 - Google Patents

多孔質フィルム、電気絶縁維持膜、非水電解質電池用セパレータ及び電気化学素子 Download PDF

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Description

本発明は、ポリオレフィンを含む多孔質フィルムと、前記多孔質フィルムからなる電気絶縁維持膜と、前記電気絶縁維持膜からなる非水電解質電池用セパレータと、前記電気絶縁維持膜を備えた電気化学素子とに関する。
リチウムイオン電池などの非水電解質電池は、エネルギー密度が高く自己放電も少ないため、電子機器の高性能化、小型化などを背景として利用範囲を大きく広げてきている。このような非水電解質電池の構成としては、帯状の正極、負極、及びセパレータを積層し巻回することにより得られる、広い有効電極面積を確保した渦巻状巻回体が用いられている。
セパレータは、基本的には両極の短絡を防止するとともに、その多孔質構造によりイオンを透過させて電池反応を可能とするものである。さらに、このような機能に加えて、いわゆるシャットダウン機能(SD機能)を有するセパレータが、安全性向上の観点から採用されている。SD機能とは、誤接続などにより異常電流が発生した場合に、電池内部温度の上昇に伴いセパレータを構成している樹脂が熱変形して、多孔質構造を形成している孔を塞ぎ電池反応を停止させる機能のことである。このようなSD機能を有するセパレータとしては、例えば、ポリオレフィン製多孔質フィルム、より具体的にはポリエチレン製多孔質フィルムや、ポリエチレンとポリプロピレンとの多層構造を有する多孔質フィルムなどが知られている。
非水電解質電池のセパレータとして用いられるこれらの多孔質フィルムとしては、電極間の絶縁を保持することと、電解液の保液性とを考慮して、サブミクロンの微小孔を有する多孔質フィルムが好適に使用される。
非水電解質電池の構成としては、シート状の電極とセパレータとを交互に積み重ねる手法もある。しかし、一般には、製造効率の観点から、前述の通り、帯状の正極、負極及びセパレータを積層し捲回することにより得られる、広い有効電極面積を確保した渦巻状捲回体が主に用いられている。生産効率の向上は日進月歩で進んでおり、装置の稼動速度が飛躍的に上がっている状況下、渦巻状捲回体作製時におけるセパレータと電池製造装置(特にロール)との摩擦のコントロールは、電池の安全性にも影響を及ぼす重要な点となっている。
上記のような、製造時に生じる問題について、本発明者らが検討を行ったところ、製造時の表面の摩擦により、ポリオレフィン製多孔質フィルムの微小孔が閉塞するという問題が起こることが確認された。孔の閉塞は、その部分の電池としての機能が失われる、もしくは著しく低下することにつながるため、電池特性の観点、及び均質反応に根ざした安全性の観点から好ましくない。このような理由から、電池製造装置だけでなく、多孔質フィルムの方でも対策が必要であった。
さらに、非水電解質電池内部では、正極と負極に挟まれる形で多孔質フィルムが使用される。充放電により、正極及び負極は膨張及び収縮を繰り返す。それゆえ、電池内部において、多孔質フィルムは電極から圧力と摩擦を受けている状態にある。したがって、電池内部での上記負荷により、多孔質フィルムの孔閉塞ないし孔縮小が起こることもあった。
そこで、非水電解質電池用セパレータとして用いられる多孔質フィルムには、以上のような問題に対する改善解決策が望まれていた。
例えば、特許文献1には、酸化珪素及び酸化アルミニウムの少なくとも一方からなる無機薄膜が、多孔質フィルムの表面に当該多孔質フィルムの空孔を塞ぐことなく形成されている電池用セパレータが開示されている。このような構成によれば、電極粉などの導電性微粒子が貫通しにくい、高い機械的強度を備えた電池用セパレータを得ることができる。
また、特許文献2には、ポリオレフィン系樹脂にポリシロキサンの分子鎖が化学結合した変性ポリオレフィン系樹脂を用いた多孔質フィルムが開示されている。このような材料を用いて形成された多孔質フィルムは、良好な滑り性を実現できるため、電池用セパレータとして好適に使用できる。
特許3797729号公報 特開2000−7819号公報
しかし、特許文献1に開示されている多孔質フィルムでは、無機薄膜が塗工液を用いる塗工手法によって形成されているため、無機薄膜が孔の一部に偏在して、孔を閉塞したり不均一になったりするおそれがある。
また、特許文献2に開示されている技術によれば、多孔性フィルムの滑り性を改善できるので、摩擦による多孔質フィルムへのダメージをある程度抑制することは可能である。しかしながら、フィルムの表層に選択的に耐久性を持たせる手法ではないため、また、耐摩擦性の改善を目的とした手法ではないため、製造時の摩擦や電池内部に組み込まれた際の摩擦及び圧力によって生じる孔閉塞や孔縮小を抑制することはできなかった。したがって、さらなる改善が切望されていた。
そこで、本発明は、電池用セパレータとして用いられた場合でも電池特性や電池の安全性を低下させることのない、耐摩擦性に優れた多孔質フィルムを提供することを目的とする。さらに、本発明は、そのような多孔質フィルムを用いた電気絶縁維持膜と、当該電気絶縁維持膜を用いた非水電解質電池用セパレータ及び電気化学素子とを提供することも目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、下記に記載の解決手段を用いて本発明に到達したものである。
本発明の多孔質フィルムは、少なくともポリオレフィンを含有する、多孔質の基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくとも一方の面に形成された被膜と、を含み、前記被膜が設けられている面について、押し込み硬さ試験による表面硬さが50MPa以上である。
さらに、本発明は、上記本発明の多孔質フィルムからなる電気絶縁維持膜を提供する。
さらに、本発明は、上記本発明の電気絶縁維持膜からなる非水電解質電池用セパレータを提供する。
さらに、本発明は、一対の電極と、前記一対の電極間に配置された上記本発明の電気絶縁維持膜とを備えた電気化学素子を提供する。
本発明の多孔質フィルムは、少なくとも一方の面の表面硬さが50MPa以上であるので、優れた耐摩擦性を実現できる。これにより、本発明の多孔質フィルムは、例えば非水電解質電池のセパレータとして用いられる場合であっても、製造時に電池製造装置との摩擦によって微小孔の閉塞や縮小が起こることを抑制できる。さらに、電池内に組み込まれた状態でも、微小孔の閉塞や縮小が起こりにくい。このように、本発明によれば、電池用セパレータとして用いられた際に電池特性や電池の安全性を低下させることのない、耐摩耗性に優れた多孔質フィルムを提供できる。さらに、このような多孔質フィルムを電気絶縁維持膜として備えた電気化学素子、例えばこのような多孔質フィルムをセパレータとして備えた非水電解質電池は、優れた電池特性と安全性とを実現できる。
本発明の電池の一例である非水電解質電池の構成例を示す一部断面図である。
本発明の多孔質フィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の面に被膜が設けられることによって形成されている。基材フィルムは、少なくともポリオレフィンを含有し、多孔質である。また、基材フィルムは、平均孔径1μm以下の微小孔を有していることが好ましい。本発明の多孔質フィルムの被膜が設けられている面では、押し込み硬さ試験による表面硬さが50MPa以上である。
以下、本発明の多孔質フィルムの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の記載は本発明を限定するものではない。
<基材フィルム>
まず、基材フィルムについて説明する。
本実施の形態において用いられる多孔質の基材フィルムは、少なくともポリオレフィンを含有する材料を用い、成形、延伸、抽出、洗浄などの工程を経ることによって作製できる。
前記基材フィルムは、ポリオレフィンとして、重量平均分子量50万以上の超高分子量ポリエチレンなどの超高分子量ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。超高分子量ポリオレフィン樹脂を含む基材フィルムを用いることによって、高い機械的強度を実現できる。基材フィルムに含まれる全樹脂成分のうち、超高分子量ポリオレフィン樹脂の含有量は、10〜100重量%が好ましく、20〜100重量%がより好ましい。
基材フィルムは、樹脂成分として、以下に説明する第1樹脂成分及び/又は第2樹脂成分をさらに含んでいてもよい。
本実施の形態における第1樹脂成分とは、炭素間二重結合を有する重合体のことである。ここでいう炭素間二重結合を有する重合体とは、ポリマー主鎖及び/又は側鎖に炭素間二重結合を有するものであり、その炭素間二重結合の一部が水素やハロゲンなどの付加によって消失されていてもよく、また炭素間二重結合の一部の水素原子が他の置換基に置き換わった誘導体であってもよい。当該重合体としては、炭素間二重結合のα位に水素原子が結合しているものが好ましく、具体的には、例えば、ポリノルボルネン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、EPDM(エチレンプロピレンジエンターポリマー)、ポリクロロプレンなどがあげられる。上記の通り、これらの炭素間二重結合の一部が改質されていてもよく、2種類以上の混合物でもよい。原料供給の観点、及び分散性の観点から、中でもポリノルボルネン、ポリブタジエン、EPDMがより好ましく用いられる。
さらに詳細には、ポリブタジエンにおいては、屈曲性構造をとりやすく、炭素間二重結合の反応が進行しやすいシス型1,4−ポリブタジエン骨格を多く有するポリブタジエンが好ましい。良好な架橋反応をすすめる上では、前記シス型1,4−ポリブタジエン骨格の割合が30%以上のポリブタジエンが、好ましく用いられる。EPDMでは、共重合性に優れたエチリデンノルボルネンを原料に用いた種類が好ましく、中でも残存二重結合量の多い方が好適である。
基材フィルムが前記第1樹脂成分を含む場合、その含有量は、基材フィルムに含まれる全樹脂成分に対して50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、35重量%以下が特に好ましい。第1樹脂成分の含有量の上限値を50重量%とすることにより、電池用セパレータとして用いる場合に必要とされる多孔質フィルムの特性(例えばSD機能や機械的強度など)を維持することができる。
本実施の形態において、第2樹脂成分としては、重量平均分子量50万未満のポリオレフィン類、熱可塑性エラストマー及びグラフトコポリマーからなる群より選ばれる1種以上の樹脂が用いられる。
重量平均分子量50万未満のポリオレフィン類としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、エチレン−アクリルモノマー共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの変性ポリオレフィン樹脂があげられる。
熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリジエン系、塩化ビニル系、ポリエステル系などの熱可塑性エラストマーがあげられる。
グラフトコポリマーとしては、ポリオレフィン鎖を有するものであれば、特には限定されない。例えば、主鎖にポリオレフィン、側鎖に非相溶性基を有するグラフトコポリマーがあげられる。なお、ここで、非相溶性基とは、ポリオレフィンに対して非相溶性の基を意味し、例えば、ビニル系ポリマーに由来する基などがあげられる。グラフト成分としては、ポリアクリル類、ポリメタクリル類、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリオキシアルキレン類が好ましい。
これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
本実施の形態の多孔質フィルムを電池用セパレータとして用いる場合には、第2樹脂成分の例として上記に列挙した中でも、重量平均分子量50万未満のポリオレフィン樹脂、特に低融点性のあるポリエチレンや、結晶性を有するポリオレフィン系エラストマー、溶融温度の低いポリメタクリル類を側鎖に有するグラフトコポリマーなどが、低いシャットダウン温度をもたらす点で好ましい。
基材フィルムが前記第2樹脂成分を含む場合、その含有量は、基材フィルムに含まれる全樹脂成分に対して50重量%以下が好ましく、5〜45重量%がより好ましく、5〜40重量%が特に好ましい。第2樹脂成分の含有量の上限値を50重量%とすることにより、電池用セパレータとして用いる場合に必要とされる多孔質フィルムの特性を維持することができる。
本実施の形態で用いられる基材フィルムは多孔質であり、好ましくは平均孔径1μm以下(例えば平均孔径0.03〜1μm)の微小孔を有する。本発明の多孔質フィルムを例えば電池用セパレータとして用いる場合、電解液の保液性や微小異物の通過抑制などを考慮すると、平均孔径1μm以下の微小孔を有する基材フィルムが好適に用いられる。このような微小孔を有する基材フィルムは、摩擦による孔閉塞ないし孔縮小が起こりやすいが、本発明のように表面に被膜が設けられた構成とすることによって、このような問題の発生を抑制できる。
なお、基材フィルムには、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、造核剤、顔料、帯電防止剤、無機フィラーなどの添加剤が、本発明の目的を損なわない範囲でさらに含まれていてもよい。
<基材フィルムの製造方法>
次に、本発明による基材フィルムの製造方法について説明する。
本発明による基材フィルムの製造には、湿式成膜法などの公知の方法を利用できる。例えば、前記樹脂成分(超高分子量ポリオレフィン樹脂、第1樹脂成分、第2樹脂成分など)を溶媒と混合し、混練、加熱溶融しながらシート状に成形した後、圧延し、一軸方向以上に延伸し、溶媒を加熱除去することにより製造することができる。
溶媒としては、例えば、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、デカリン、流動パラフィンなどの脂肪族または環式の炭化水素、沸点がこれらに対応する鉱油留分などがあげられる。流動パラフィンなどの脂環式炭化水素を多く含む不揮発性溶媒が好ましい。
また、樹脂成分と溶媒の混合物を混練りし、シート状に成形する工程は、公知の方法により行うことができる。例えば、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いてバッチ式で混練りし、次いで、冷却された金属板に挟み込み冷却して急冷結晶化によりシート状成形物にしてもよく、Tダイなどを取り付けた押出機などを用いてシート状成形物を得てもよい。なお、混練りは、適当な温度条件下であればよく、特に限定されないが、好ましくは100℃〜200℃である。
このようにして得られるシート状成形物の厚みとしては、特に限定されないが、1〜20mmが好ましく、ヒートプレスなどの圧延処理により0.5〜3mmの厚みにしてもよい。ヒートプレス方法としては、特に限定されないが、例えば特開2000−230072号公報に記載されているベルトプレス機が好適に用いられる。また、圧延処理の温度は100〜140℃が好ましい。
前記シート状成形物の延伸処理の方式としては、特に限定されるものではなく、通常のテンター法、ロール法、インフレーション法などの公知の方法が利用でき、これらの方法の組み合わせであってもよい。また、一軸延伸、二軸延伸などのいずれの方式も適用できる。二軸延伸の場合、縦横同時延伸または逐次延伸のいずれでもよい。膜の均一性、強度の観点から、同時二軸延伸にて成膜するのが好ましい。延伸処理の温度は、100℃〜140℃であることが好ましい。
脱溶媒処理は、シート状成形物から溶媒を除去して多孔質構造を形成させる工程であり、その方法は特に限定されない。例えば、シート状成形物を溶媒で洗浄して残留する溶媒を除去することにより行うことができる。溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及びデカンなどの炭化水素、塩化メチレン及び四塩化炭素などの塩素炭化水素、三フッ化エタンなどのフッ化炭化水素、ジエチルエーテル及びジオキサンなどのエーテル類、メタノール及びエタノールなどのアルコール類、アセトン及びメチルエチルケトンなどのケトン類などの易揮発性溶媒があげられる。これらは、単独または2種以上を混合して用いることができる。かかる溶媒を用いた洗浄方法は特に限定されず、例えば、シート状成形物を溶媒中に浸漬して溶媒を抽出する方法、溶媒をシート状成形物にシャワーする方法などがあげられる。
上記の方法によって多孔質の基材フィルムを得た後、架橋処理を施してもよい。基材フィルムの樹脂成分に炭素間二重結合を有する重合体(第1樹脂成分)が含まれる場合は、架橋構造の形成が可能であるため、架橋処理を施すことが望ましい。例えば、熱、紫外線、電子線及び可視光線からなる群より選ばれる1種以上を用いて、基材フィルムに架橋処理を施すことができる。上記の架橋処理の手段の中では、熱又は紫外線を用いる架橋処理が、基材フィルムの構造安定性の点で望ましい。これらの架橋処理を施すことによって、基材フィルムがより高強度化、高耐熱化され、高温時の耐破膜性が大きく向上する。
架橋処理による高温時の耐破膜性向上の理由としては、各処理で生じたポリマーラジカルが炭素間二重結合に付加し、炭素間二重結合を有する重合体同士、又はその重合体と他の樹脂成分との間で架橋反応が起こること、あるいは、主鎖における炭素間二重結合の消失によってポリマー鎖自体のガラス転移温度が大きく上昇することが考えられる。炭素間二重結合を消失させる割合は所望の耐熱性を考慮して適宜選択されるが、80〜100%(IR(赤外線吸収スペクトル)のピークの大きさに基づき算出)の消失率が好ましい。そして、これらにより耐熱性が大きく向上するものと考えられる。また、樹脂成分が混練される際に、非常に長いポリオレフィン同士、又は架橋成分とポリオレフィンが複雑に絡み合うことにより擬似的な架橋が起こって硬化に寄与していると考えられる。ポリオレフィンが長鎖の場合は、分子同士の絡み合い点が増大するため、架橋同様に耐熱性が向上する効果を持つ。この耐熱性向上は、たとえばシャットダウン測定におけるメルトダウン温度の上昇でも確認できる。
前記架橋処理の方法として熱を用いる場合、一回で熱処理する一段式熱処理法、最初に低温でまず熱処理し、その後さらに高温での熱処理を行う多段式熱処理法、又は昇温しながら熱処理する昇温式熱処理法を用いることが可能であるが、熱によって通気度などの基材フィルムの元の諸特性が損なわれないように処理することが望ましい。一段式熱処理の場合には、基材フィルムの組成にもよるが、40℃〜140℃が好ましい。また、低温から熱処理を開始し、その後、処理温度を上げていくと、基材フィルムの硬化とともに耐熱性がしだいに向上していくので、加熱によって通気度などの元の諸特性を損なうことなく基材フィルムを高温に暴露することが可能となる。そのため、諸特性を損なわずに、短時間で熱処理を完了するためには、多段式あるいは昇温式熱処理法が好ましい。
多段式の熱処理法を用いる場合、最初の熱処理温度としては、基材フィルムの組成にもよるが、好ましくは40〜90℃である。2段目の熱処理温度としては、基材フィルムの組成にもよるが、好ましくは90〜140℃である。
架橋処理に紫外線を用いる場合、例えば、成膜後の基材フィルムに対してそのまま空気中で、又は、成膜後の基材フィルムを重合開始剤を含むメタノール溶液などに含浸させ、その後溶媒を乾燥させたものに対して、水銀ランプにて紫外線を照射することにより、架橋処理を施すことができる。また、照射時の熱コントロールのため、水中で紫外線照射を行ってもよい。
電子線を用いる場合、例えば、成膜後の基材フィルムに対して放射線量1〜10kGy(0.1〜10Mrad)の電子線を照射することにより、架橋処理を施すことができる。照射時の雰囲気は、熱処理法と同様に空気中でもよいし、架橋状態をコントロールする目的で、窒素ガス又はアルゴンガスのような不活性ガスの雰囲気中でもよい。
また、架橋処理工程に続いて、熱収縮の防止のために、基材フィルムをヒートセット(熱固定)してもよい。前記のように熱を用いて架橋処理を行う場合、処理条件によっては、架橋処理によって実質的にヒートセットも可能となる。しかし、その場合でも、ヒートセットとして不十分な場合には、熱収縮をより確実に防止するために、架橋処理後にさらに加熱してヒートセットを行ってもよい。ヒートセットは、例えば110〜140℃で0.5〜2時間程度行えばよい。なお、基材フィルムに炭素間二重結合を有する重合体が添加されていない場合には、架橋処理は省略することが可能である。したがって、その場合は、成膜後にただちにヒートセット(熱固定)してもよい。
以上のようにして得られる基材フィルムの厚みは、1〜60μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。その空孔率は、20〜80%が好ましく、25〜75%がより好ましい。その通気度としては、例えばJIS P8117に準拠した方法で100〜1000秒/100ccが好ましく、より好ましくは100〜900秒/100ccである。そのシャットダウン温度としては150℃以下が好ましく、より好ましくは145℃以下である。その機械的強度は、例えば、針刺強度にて1N以上が好ましく、2N以上がより好ましい。なお、該針刺強度の測定方法は、後述の実施例に記載の方法があげられる。
<被膜>
被膜は、基材フィルムの少なくとも一方の面に設けられる。被膜は、多孔質フィルムの当該被膜が設けられている面について、押し込み硬さ試験による表面硬さが50MPa以上となるように形成されている。好ましくは、多孔質フィルムの表面硬さ200MPa以上を実現できるような被膜を形成することである。
被膜は、多孔質フィルムの表面硬さを50MPa以上、好ましくは200MPa以上とできればよいため、その材料は特に限定されない。例えば、シリカ、ジルコニア及びアルミナなどの金属酸化物や、ダイヤモンドライクカーボンなどを用いて、被膜を形成できる。
被膜は、基材フィルムの通気性を大きく低下させることがないように形成されることが望ましい。基材フィルムに被膜が形成されたことによる、多孔質フィルムの通気度の増大変化量は、例えばJIS P8117に準拠した方法で、0〜200秒/100ccが好ましく、0〜100秒/100ccがより好ましい。
被膜の厚みは、用いる材料の硬度なども考慮して適宜選択すればよいため特には限定されないが、例えば2〜500nmとすることが好ましく、5〜200nmとすることがより好ましい。
上記のような被膜を形成することにより、多孔質フィルムの耐摩擦性を向上させることができる。当該多孔質フィルムを非水電解質電池用セパレータとして用いた場合、摩擦による孔閉塞及び孔縮小が起こりにくく、特性上では通気度の変化が小さい。評価方法として、被膜を形成した面に対して後述の表面摩擦試験を行った場合に、通気度の増大は、好ましくは50秒/100cc以下であり、より好ましくは30秒/100cc以下である。通気度が50秒/100ccを超えて増大する場合、電池の充放電特性が低下する場合がある。
被膜の形成方法は、公知の薄膜形成方法から適宜選択可能である。例えば、シリカ被膜やジルコニア被膜形成用のコーティング剤を塗布することによるシリカ被膜やジルコニア被膜の形成、アルミナやシリカなどのナノ粒子が添加されたスラリーを塗工後固定処理することによる被膜の形成、スパッタ法(反応性スパッタ)やCVD(Chemical Vapor Deposition)法による金属酸化物被膜の形成、プラズマCVD法やイオンプレーティング法などによるダイヤモンドライクカーボン被覆の形成、などがあげられる。中でも、好適な被膜であるダイヤモンドライクカーボンをイオンプレーティング法で形成する場合、真空チャンバー内にベンゼンなどの炭化水素ガスを導入し、直流アーク放電プラズマ中で炭化水素イオンを発生させ、この炭化水素イオンを負荷電を持った被コーティング材に衝突させ、固体化、形成する方法があげられる。
上記のように形成される被膜のうち、融点の低いポリオレフィンを含有する基材フィルムにも形成でき、薄くても高い硬度を実現でき、さらに基材フィルムの表面に選択的に薄膜を形成できるなどの点から、ダイヤモンドライクカーボンを用いた被膜が好適に用いられる。
被覆は、少なくとも基材フィルムの一方の面に形成すればよいが、両面に形成してもよい。電池用セパレータとして用いる場合の製造ラインのロールとの関係、電池内部での圧迫及び摩擦状態、電極との反応性などを加味して、被膜を形成する面や被膜を形成する領域を適宜選択すればよい。被膜は、基材フィルムの一方の面全体に設けられている必要はなく、例えば、ストライプ状の被覆や、ドット状の被覆など、部分的に形成されていてもよい。
<非水電解質電池>
本発明の多孔質フィルムは、電気絶縁維持膜として用いることが可能である。その一例として、非水電解質電池用セパレータがあげられる。この非水電解質電池用セパレータを、従来のセパレータと同様に、正極と負極の間に介在させた状態で用いて、電池を組み立てることができる。本実施の形態では、本発明の多孔質フィルムを電池用セパレータとして備えた非水電解質電池を例にあげて説明する。この非水電解質電池に用いられる正極、負極、電池ケース、電解液などの材質やこれら構成要素の配置構造は特に限定されず、従来と同様でよく、例えば、特開昭63−205048号公報に示される通りであってもよい。
本実施の形態では、非水電解質電池の一例として、図1に示すような円筒型の非水電解質電池1について説明する。なお、図1では、図を見やすくする目的で、一部ハッチングを省略する。
図1に示すように、非水電解質電池1では、正極2と、負極3と、正極2と負極3との間に配置されたセパレータ(非水電解質電池用セパレータ)4とが一体的に渦巻状に巻回されて、有底の電池ケース5に収容されている。セパレータ4は、本発明の多孔質フィルムからなる非水電解質電池用セパレータである。正極2に連接する正極リード(図示せず)は、下部絶縁スリーブ(図示せず)を介して電池ケース5と電気的に接続されている。図中、5aは正極端子部を示している。負極3に電気的に接続された負極タブ7は、上部絶縁スリーブ8の空洞部8aを介して負極端子部6aに電気的に接続されている。電池内部には非水電解質(図示せず)が充填されている。電池ケース5は、負極端子部6aを含む蓋体6と、蓋体6と電池ケース5との隙間を塞ぐパッキング9とによって封口されており、電池外部に非水電解質が漏出できない構造となっている。また、セパレータ4には電解質が含浸しており、結果、セパレータ4を挟む正極2と負極3との間でイオン担体の移動が行われ、二次電池として放電及び充電を行うことができることになる。なお、この例では、2枚のセパレータ4を貼り合わせて袋状とし、その中に負極3を挿入して正極2と共に巻回することによって形成されている。しかしながら、巻回後の状態で、互いに隣接する正極2と負極3との間にセパレータ4が配置されるような構成となっていればよいため、必ずしもセパレータ4を袋状とする必要はない。
正極2は、リチウムイオンを吸蔵・放出する活物質と、バインダーと、集電体とで形成されている。正極2は、例えば、バインダーを溶解させた溶媒に前記活物質を混合してペーストを作製し、このペーストを集電体上に塗布して乾燥させることによって、作製できる。乾燥後に、さらにプレスをしてもよい。
正極活物質としては、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いられている公知の化合物を使用できる。具体的には、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2などのリチウム含有遷移金属酸化物、またはそれらの遷移金属の一部が他の遷移金属で置換されたリチウム含有遷移金属酸化物、二硫化チタン、二硫化モリブデンなどのカルコゲン化合物などがあげられる。
バインダーには、正極2を構成するバインダーとして公知の樹脂が使用できる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ヘキサフロロプロピレン及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンターポリマーなどの炭化水素系樹脂、または、それらの混合物などが使用できる。また、導電助剤として、カーボンブラックなどの導電性粉末を添加してもよい。
正極2の集電体としては、耐酸化性に優れた金属が用いられ、例えば箔状やメッシュ状に加工されたアルミニウムが好適に用いられる。
負極3は、炭素系活物質またはリチウム含有合金と、バインダーと、集電体とで形成されている。負極3も、正極2と同様の方法で作製できる。また、バインダーも、正極2で用いたバインダーと同様のものが使用できる。
炭素系活物質としては、例えば人造黒鉛、天然黒鉛、コークスやピッチなどの焼成体、フェノール樹脂、ポリイミド及びセルロースなどを焼結したもの、などがあげられる。リチウム含有金属としては、例えばAl、Sn、Si系の合金があげられる。
負極3の集電体としては、還元安定性に優れた金属が用いられ、例えば箔状やメッシュ状に加工された銅が好適に用いられる。
非水電解質は、非水溶媒及び電解質を含んでいる。具体的には、リチウム塩(電解質)を非水溶媒に溶解させた電解液、当該電解液を含むゲル電解液、リチウム塩を例えばポリエチレンオキシドなどのポリマーに溶解分解させた固体電解質など、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の非水電解質があげられる。電解質として用いられるリチウム塩の具体例は、ホウ四フッ化リチウム(LiBF4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)及びトリフロロスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)などを用いることができる。また、非水溶媒には、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、1,2−ジメトキシエタン(DME)及びγ−ブチロラクトン(γ−BL)などの溶媒、またはこれらの混合溶媒が使用できる。
セパレータ4には、上述の本発明の電気絶縁維持膜、すなわち多孔質フィルムが用いられる。
なお、本実施の形態では、本発明の非水電解質電池として、円筒型の非水電解質電池を例にあげて説明したが、他の構成、例えば筒型やラミネート型の非水電解質電池であっても、本発明の構成を適用できる。
<その他>
本発明の多孔質フィルムを電気絶縁維持膜として備える本発明の電気化学素子としては、上記リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質電池の他、太陽電池、燃料電池などがあげられる。
一般に、色素増感型太陽電池は、色素が化学吸着したナノサイズ酸化チタン多孔質薄膜電極と電解質とで構成される。電極間の絶縁には枠状のスペーサが利用されていたが、本発明の多孔質フィルムからなる電気絶縁維持膜を電極間の絶縁に利用することにより、電解質層の薄化、均一化、大面積化が容易にでき、出力向上に寄与する。
高分子を電解質として用いる燃料電池では、例えば国際公開第01/022514号に示されているように、触媒層とガス拡散層とからなる正極及び負極の間に高分子電解質膜を介在させた状態で積層し、電池が組み立てられる。本発明の多孔質フィルム中に高分子電解質を含浸させて、高分子電解質膜として使用することにより、電解質層の補強と薄膜化を両立でき、出力を向上させることができる。
また、本発明の多孔質フィルムからなる電気絶縁維持膜を一対の電極の間に介在させて、キャパシタを組み立てることもできる。このようなキャパシタでは、電極、電解質及びケースなどの材質やこれらの構成要素の配置構造は特に限定されず、従来のキャパシタと同様でよい。例えば、電気二重層キャパシタでは、電極にはPTFEをバインダーとして形成した活性炭電極用い、電解質には炭酸プロピレンに0.5MのEt4PBF4を添加した溶液を用いることができる。
本発明を、実施例及び比較例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。なお、各種特性については、下記要領にて測定を行なった。
〔フィルム厚〕
1/10000シックネスゲージにより測定した。
〔空孔率〕
測定対象の多孔質フィルムを直径6cmの円状に切り抜き、その体積(cm3)と重量(g)を求め、得られる結果から次式を用いて計算した。
空孔率(%)=100×(体積(cm3)−重量(g)/構成成分の平均密度(g/cm3))/体積(cm3
〔通気度〕
JIS P8117に準拠して測定した。
〔針刺強度〕
カトーテック(株)製圧縮試験機「KES−G5」を用いて、室温(25℃)で針刺試験を行った。得られた荷重変位曲線から最大荷重を読みとり、針刺強度とした。針は直径0.5mm、先端の曲率半径0.25mmのものを用い、2mm/秒の速度で突き刺しを行った。
〔表面硬さ〕
MTS社製、ナノインデンター(Nanoindenter DCM)を用い、連続剛性測定モードにて微小領域の硬さを表面から深さ方向に測定した。表面硬さとして、最表面近傍の極大値の数値を読み取った。
〔表面摩擦試験〕
幅50mm、長さ400mmの短冊状に切り出した多孔質フィルムを2点で固定して、その2点間で宙に浮いた状態となるように設置した。ワイヤーバー(RDS社製、No.3)を用い、ワイヤーバーの自重(103.5g)を使って、宙に浮いた状態のうち箇所300mmの長さにわたり、フィルム表面を擦った。約300mm/秒の速度で、10往復繰り返し、表面摩擦試験とした。
(実施例1)
重量平均分子量100万の超高分子量ポリエチレン(融点137℃)12重量部と、重量平均分子量25万の無水マレイン酸変性ポリエチレン(日本ポリエチレン製、ADTEX ER403A)3重量部と、ポリノルボルネン(日本ゼオン製、ノーソレックスNB)0.5重量部と、流動パラフィン85重量部とをスラリー状に均一に混合し、160℃の温度で二軸押出機にて溶解混練して、厚さ1.5mmのシート状に押出成形した。該シート成形物を一定のテンション下で引き取り、一旦10℃の冷却水にて冷却されたロールにて冷却成形し、樹脂シートを作製した。その後、該樹脂シートを温度123℃で縦横同時に5.0×4.5倍に二軸延伸して、延伸フィルムを作製した。次に、ヘプタンを使用して、延伸フィルムから溶剤を除去した。この延伸フィルムに対して架橋処理及びヒートセット処理を行うために、125℃の恒温槽中に入れ、気流を当てつつ2時間処理して多孔質の基材フィルムを作製した。得られた基材フィルムの片面に、ベンゼンを炭化水素ガスとして用い、イオンプレーティング法にてダイヤモンドライクカーボン薄膜を形成した。ただし、基材フィルムの変形を防止する目的で、基材フィルムの周囲をテープで固定して処理を行った。透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察の結果、被覆厚みは40nmであった。得られた多孔質フィルムについて、フィルム厚、空孔率、表面硬さ、針刺強度及び表面硬さを測定し、さらに、表面摩擦試験前後の通気度も測定した。それらの結果を表1に示す。なお、表面硬さ及び針刺強度は、被膜が設けられている面について行った。
(比較例1)
基材フィルムの表面に被膜を形成しなかった点以外が、実施例1と同様の方法で多孔質フィルムを作製した。すなわち、比較例1の多孔質フィルムは、実施例1で用いた基材フィルムである。比較例1の多孔質フィルムについても、実施例1と同様に、フィルム厚などの測定を行った。結果を表1に示す。
(実施例2)
重量平均分子量100万の超高分子量ポリエチレン(融点137℃)15重量部と、流動パラフィン85重量部とをスラリー上に均一に混合し、160℃の温度で二軸押出機にて溶解混練して、厚さ1.5mmのシート状に押出成形した。該シート成形物を一定のテンション下で引き取り、一旦10℃の冷却水にて冷却されたロールにて冷却成形し、樹脂シートを作製した。その後、該樹脂シートを温度124℃で縦横同時に5.0×4.5倍に二軸延伸して、延伸フィルムを作製した。次に、デカンを使用して延伸フィルムから溶剤を除去した。この延伸フィルムを128℃の恒温槽中に入れ、気流を当てつつ2時間処理して、多孔質の基材フィルムを作製した。得られた基材フィルムの片面に、ベンゼンを炭化水素ガスとして用い、イオンプレーティング法にてダイヤモンドライクカーボン薄膜を形成した。TEMによる断面観察の結果、被覆厚みは20nmであった。得られた多孔質フィルムについて、フィルム厚、空孔率、表面硬さ、針刺強度及び表面硬さを測定し、さらに、表面摩擦試験前後の通気度も測定した。結果を表1に示す。なお、表面硬さ及び針刺強度は、被膜が設けられている面について行った。
(比較例2)
重量平均分子量100万の超高分子量ポリエチレン(融点137℃)15重量部と、流動パラフィン85重量部とをスラリー上に均一に混合し、160℃の温度で二軸押出機にて溶解混練して、厚さ1.2mmのシート状に押出成形した。該シート成形物を一定のテンション下で引き取り、一旦10℃の冷却水にて冷却されたロールにて冷却成形し、樹脂シートを作製した。その後、該樹脂シートを温度124℃で縦横同時に5.0×4.5倍に二軸延伸して、延伸フィルムを作製した。次に、デカンを使用して延伸フィルムから溶剤を除去した。この延伸フィルムを128℃の恒温槽中に入れ、気流を当てつつ2時間処理して、多孔質の基材フィルムを作製した。被膜が形成されていない状態の基材フィルムについて、実施例2と同様に、フィルム厚などの測定を行った。結果を表1に示す。
Figure 0005657977
表面に被膜が設けられている実施例1、2の多孔質フィルムは、被膜が設けられていない比較例1、2と比較して、高い表面硬さが得られた。また、摩擦試験前後の通気度を比較すると、被膜が設けられている実施例1の多孔質フィルムでは、摩擦試験による通気度の大幅な低下は見られなかった。これに対し、被膜が設けられていない比較例1の多孔質フィルでは、摩擦試験後に通気度が大きく低下した。実施例2と比較例2の比較でも、同様に、実施例2では摩擦試験前後で通気度の大きな差はなかったが、比較例2では摩擦試験によって通気度が大幅に低下した。これらの結果から、被膜を設けることによって、摩擦による孔閉塞ないし孔縮小を抑制し、良好な特性を維持できることが確認された。
また、実施例1,2の多孔質フィルムは、基材フィルム表面に被膜を形成した構成であるが、被膜が形成されていない比較例1、2の多孔質フィルムとほぼ同程度の空孔率及び初期通気度(摩擦試験前の通気度)が得られた。したがって、本発明の多孔質フィルムは、電池用のセパレータとして用いることが可能であることも確認された。
本発明の多孔質フィルムは、摩擦に対して特性が低下しにくく、高い耐摩擦性を有する。したがって、高い耐摩擦性が要求される電池用セパレータにも好適に用いられる。また、本発明の多孔質フィルムは、電池用セパレータのような電気絶縁維持膜としての利用のみならず、耐摩擦性が要求される多孔質フィルムの用途であれば、広く好適に用いることができる。また、例えば被膜材料や被膜形成条件を調整して導電性を調整すれば、フィルター用途などで、電極付き多孔質フィルムとしての使用も可能である。
1 非水電解質電池
2 正極
3 負極
4 セパレータ(多孔質フィルム)
5 電池ケース
5a 正極端子
6 蓋体
6a 負極端子
7 負極タブ
8 上部絶縁スリーブ
8a 空洞部
9 パッキング

Claims (9)

  1. 少なくとも重量平均分子量50万以上の超高分子量ポリオレフィン、第1樹脂成分及び第2樹脂成分を含有する、多孔質の基材フィルムと、
    前記基材フィルムの少なくとも一方の面に形成された被膜と、を含み、
    前記第1樹脂成分は、炭素間二重結合を有する重合体であり、
    前記第2樹脂成分は、重量平均分子量50万未満のポリオレフィン類、熱可塑性エラストマー及びグラフトコポリマーからなる群より選ばれる1種以上の樹脂であり、
    前記被膜が設けられている面について、押し込み硬さ試験による表面硬さが50MPa以上であり、
    前記被膜は、ベンゼンを炭化水素ガスとして用い、前記炭化水素ガスを炭素供給源としてイオンプレーティング法で形成されたダイヤモンドライクカーボンによって形成されている、多孔質フィルム。
  2. 前記基材フィルムは、平均孔径1μm以下の微小孔を有する、請求項1に記載の多孔質フィルム。
  3. 前記被膜が設けられている面について、前記押し込み硬さ試験による表面硬さが200MPa以上である、請求項1又は2に記載の多孔質フィルム。
  4. 前記基材フィルムは、前記超高分子量ポリオレフィンとして、重量平均分子量50万以上の超高分子量ポリエチレンを含んでおり、
    前記基材フィルムに含まれる全樹脂成分に対して、前記超高分子量ポリエチレンの含有量が10重量%以上である、請求項1〜3の何れか1項に記載の多孔質フィルム。
  5. 前記被膜は、前記基材フィルムの通気度に対する前記多孔質フィルムの通気度の増大変化量が0〜200秒/100ccとなるように形成されており、
    前記通気度は、JIS P8117に準拠した方法で測定される値である、請求項1〜の何れか1項に記載の多孔質フィルム。
  6. 請求項1〜の何れか1項に記載の多孔質フィルムからなる、電気絶縁維持膜。
  7. 請求項に記載の電気絶縁維持膜からなる、非水電解質電池用セパレータ。
  8. 一対の電極と、前記一対の電極間に配置された請求項に記載の電気絶縁維持膜とを備えた電気化学素子。
  9. 非水電解質電池である、請求項に記載の電気化学素子。
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