JP2006190507A - リチウム二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】ノート型PC内部や夏場の自動車内等で想定される50〜90℃という高温環境下で使用されたり、放置されたりした場合であっても、すぐれた電池特性を維持することができる長寿命リチウム二次電池を提供する。
【解決手段】正極、負極、セパレータ及び電解液からなるリチウム二次電池において、上記セパレータをポリオレフィン重合体とに二重結合を有するエラストマー重合体との架橋体を含み、ガーレー値が500秒以下である多孔質フィルムから形成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、高温環境下における使用においても、また、充電状態で高温環境下に長期間放置された後であっても、高い電池特性が維持されるリチウム二次電池に関する。
金属リチウムやリチウム合金等を負極とするリチウム二次電池は、エネルギー密度が高く、自己放電も少ないので、電子機器の高性能化や小型化等を背景として、その利用が拡大しつつある。
このようなリチウム二次電池においては、通常、それぞれシート状の正極と負極の間に樹脂からなる多孔質フィルムを介在させつつ、積層した積層体や、また、積層しながら渦巻状に捲回した捲回体からなる電極/セパレータ素子が用いられている。このような電極/セパレータ素子において、上記多孔質フィルムは、両極の短絡を防止すると共に、その多孔質構造によってイオンを透過させ、かくして、電池反応を可能とすることが基本的な機能であるが、更に、誤接続等によって異常電流が発生した場合に、電池内部温度の上昇に伴って、樹脂が熱変形し、微多孔を閉塞することによって電池反応を停止させる所謂シャットダウン機能(以下、SD機能という。)を有する多孔質フィルムが電池の安全性向上の観点から広く採用されている。
このようなSD機能を有する多孔質フィルムとしては、従来、例えば、ポリエチレン樹脂からなる多孔質フィルム、ポリオレフィン樹脂に充填剤と液状ゴム等を配合してなる多孔性フィルム(特許文献1参照)、ポリエチレン及びエチレン−プロピレンゴムからなる多孔質フィルム(特許文献2参照)、ポリオレフィン樹脂とポリオレフィンエラストマーとからなり、特定温度雰囲気下での収縮率を制御した低収縮性の多孔質フィルム(特許文献3参照)等が知られている。
しかしながら、これら従来の多孔質フィルムをセパレータとして用いたリチウム二次電池は、ノート型パーソナルコンピュータ(以下、ノート型PCという。)内部や夏場の自動車内等の高温環境下で使用されたり、また、充電状態でそのような高温環境下に長期間放置されたような場合には、必ずしも、その初期性能が長く維持されない。
例えば、上述したノート型PC内部や自動車内等において想定される50℃から90℃のような高温環境下でリチウム二次電池を使用されたり、また、充電状態で長期間放置された場合、電極/セパレータ素子の内部張力や圧力によって、次第に多孔質フィルムが変形して、通気度が低下(即ち、ガーレー(Gurley) 値が上昇)し、これが電池寿命の低下を招くこととなる。従って、例えば、前記した低収縮性の多孔質フィルムのように、700〜800秒のように大きいガーレー値を有する多孔質フィルムをセパレータとして用いてなるリチウム二次電池は、上述したような高温環境下においては高い電池特性が維持されない。
このように、例えば、90℃近い高温環境下での使用や放置にも耐えて、高い電池特性が維持されるリチウム二次電池の開発が強く要望されている。
特開平1−18091号公報 特開平6−163023号公報 特開2003−119306号公報
本発明は、上記要望に応えるためになされたものであって、特に、ノート型PC内部や夏場の自動車内等で想定される50〜90℃という高温環境下で使用されても、また、充電状態で長期間放置されたりした場合であっても、すぐれた電池特性が維持される電池寿命の長いリチウム二次電池を提供することを目的とする。
即ち、本発明によれば、正極、負極、セパレータ及び電解液からなるリチウム二次電池において、上記セパレータがポリオレフィン重合体と二重結合を有するエラストマー重合体との架橋体を含み、ガーレー値が500秒以下である多孔質フィルムからなることを特徴とするリチウム二次電池が提供される。
本発明のリチウム二次電池においては、セパレータがポリオレフィン重合体と二重結合を有するエラストマー重合体との架橋体からなり、ガーレー値が500秒以下である多孔質フィルムからなるので、特に、ノート型PC内部や夏場の自動車内等で想定される50〜90℃という高温環境下で使用されても、また、充電状態で長期間にわたって放置された場合であっても、充放電特性の低下が少なく、すぐれた電池特性が維持される。
本発明によるリチウム二次電池は、正極、負極、セパレータ及び電解液からなり、上記セパレータがポリオレフィン重合体と二重結合を有するエラストマー重合体との架橋体のを含む多孔質フィルムからなり、この多孔質フィルムは500秒以下のガーレー値を有する。
上記ポリオレフィン重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等が用いられるが、特に、ポリエチレン又はポリプロピレンが好ましく用いられる。ポリエチレンとしては、なかでも、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等が用いられるが、得られる多孔質フィルムが高強度を有するところから、好ましくは、重量平均分子量が50万から500万のポリエチレンが用いられ、最も好ましくは、重量平均分子量が100万から500万の超高分子量ポリエチレンが好ましく用いられる。またポリプロピレンとしては、例えば、アイソタクチッタポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン等が好ましく用いられるが、なかでも、多孔質構造を形成しやすいところから、結晶性の高いアイソタクチックポリプロピレンが好ましく用いられる。
他方、二重結合を有するエラストマー重合体としては、上記ポリオレフィン重合体との間に架橋構造を形成することができる炭素−炭素二重結合を有するものであればよく、例えば、ポリブタジエン、ポリペンタジエン、ポリイソプレン、ポリノルボルネンや、更には、その他の架橋性ゴムの未加硫物等が用いられるが、ポリオレフィン重合体との架橋性にすぐれる点から、特に、ポリノルボルネンが好ましく用いられる。これらのエラストマー重合体は、重量平均分子量が50万から500万のものが好ましく用いられる。
本発明によるリチウム二次電池においては、上記ポリオレフィン重合体とエラストマー重合体との架橋体を含む多孔質フィルムがセパレータとして用いられている。このように、上記ポリオレフィン重合体とエラストマー重合体との架橋体とを含む多孔質フィルムは、例えば、前記ポリオレフィン重合体とエラストマー重合体とからなる多孔質フィルムを常法にて得た後、酸素、オゾン等の存在下に加熱し、又は紫外線や電子線を照射することによって得ることができる。このように、本発明によれば、セパレータは、好ましくは、上記ポリオレフィン重合体とエラストマー重合体との架橋体からなるが、しかし、本発明においては、多孔質フィルムは、未架橋のポリオレフィン重合体やエラストマー重合体を含んでいてもよい。
このように、ポリオレフィン重合体とエラストマー重合体との架橋体とを含む多孔質フィルムは、通常、エラストマー重合体を1重量%以上含み、特に、5重量%以上含むことが好ましい。このように、多孔質フィルムがエラストマー重合体を1重量%以上含むことによって、上述したように、ポリオレフィン重合体とエラストマー重合体とを含む多孔質フィルムを加熱し、又は紫外線や電子線を照射することにって、ポリオレフィン重合体とエラストマー重合体との間で容易に架橋させることができる。
他方、得られる多孔質フィルムがセパレータとして十分な強度を有するように、多孔質フィルム中のエラストマー重合体の割合は、通常、40重量%以下であり、好ましくは、35重量%以下である。
本発明によれば、多孔質フィルムは、セパレータとしてのシャットダウン(以下、SDという。)温度が低く、よって、電池が高い安全性を有するように、前述したポリオレフィン重合体とエラストマー重合体との架橋体と共に、SD温度低下成分(以下、SD成分という。)を併せて含んでいることが好ましい。かかるSD成分としては、例えば、前述したポリオレフィン重合体やエラストマー重合体のなかでも、比較的融点の低いものを用いることができ、また、熱可塑性エラストマーやグラフトコポリマーも好ましく用いられる。
上記熱可塑性エラストマーは、既に、種々のものが知られており、本発明においても、例えば、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリジエン系、塩化ビニル系、ポリエステル系等の熱可塑性エラストマーが用いられる。また、上記グラフトコポリマーとしては、例えば、主鎖であるポリオレフィン鎖にこれに非相溶性基を有するビニル系ポリマーをグラフトさせたものを挙げることができる。ここで、上記非相溶性基とは、ポリオレフィンに対して非相溶性の基を意味し、例えば、ビニル系ポリマーに由来する基を例示することができ、例えば、ポリアクリル類、ポリメタクリル類、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリオキシアルキレン類を好ましい具体例として挙げることができる。
このようなSD成分の多孔質フィルム中の含有量は、多孔質フィルムのSD温度を下げ、安全性を高める効果を十分に発現させるために、通常、1重量%以上であり、特に、5重量%以上であることが好ましい。但し、多孔質フィルム中のSD成分の含有量が余りに多いときは、多孔質フィルムの機械強度を損なうおそれがあるので、通常、40重量%以下であり、特に、35重量%以下であることが好ましい。
次に、上述したような多孔質フィルムの製造方法について説明する。多孔質フィルムの製造には、従来より知られている方法、例えば、乾式製膜法や湿式製膜法等を用いることができる。そのような多孔質フィルムの製造方法の一例を示す。先ず、それぞれ配合量を適宜調整したポリオレフィン重合体、エラストマー重合体、必要に応じて、SD成分等をこれらを溶解する適宜の混練溶媒、例えば、流動パラフィン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素や脂環式炭化水素のような溶媒と混合し、上記重合体やSD成分等の組成に応じて、例えば、100〜300℃、なかでも、120〜200℃の温度で、0.05〜5時間、好ましくは、0.08〜3時間混練し、加熱溶解しながら押し出して、押出シートを得る。
次いで、このようにして得られた押出シートを冷却速度1〜200℃/分、好ましくは、5〜150℃/分にて−20℃〜120℃、好ましくは、10〜80℃まで冷却し、ゲル化(固化)させて、ゲル状シートを得る。次いで、このゲル状シートを100〜140℃、好ましくは、110〜130℃の加熱下、圧延法や延伸法にて一軸方向以上に2〜2000倍、好ましくは、100〜1000倍に延伸して、延伸フィルムを得る。この後、この延伸フィルムを、上記混練溶媒に応じて、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル等の抽出溶剤にて延伸フィルムを洗浄し、延伸フィルムに残存する前記混練溶媒を抽出除去することによって、目的とする多孔質フィルムを得ることができる。
このような多孔質フィルムの製造において、ポリオレフィン重合体、エラストマー重合体、必要に応じて、SD成分等を溶媒と共に混練し、これに加熱溶解させる際に、望ましくない酸化反応を抑えるために、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)やチバスペシャルティー(株)製イルガノックス1010等の酸化防止剤を用いることが好ましい。
本発明によれば、ポリオレフィン重合体とエラストマー重合体との架橋は、上述した多孔質フィルムの製造において、溶媒を抽出除去した後に行うことが好ましい。例えば、溶媒を抽出除去した多孔質フィルムを40〜140℃、好ましくは、70〜130℃に加熱したり、又は紫外線や電子線等を照射したりする等の方法によって、ポリオレフィン重合体とエラストマー重合体との架橋を行わせることができる。これによって、延伸配向されていると共に、ポリオレフィン重合体とエラストマー重合体とが架橋している多孔質フィルムを得ることができる。
本発明によれば、このようにして得られる多孔質フィルムは、ガーレー値なる指標によって、その物性が評価される。このガーレー値とは、JIS P 8117に記載の方法に準拠して測定する透気抵抗度である。本発明によるリチウム二次電池において、上記多孔質フィルムからなるセパレータは、高温環境下で使用されても、また、電池が充電状態で高温環境下に長期間にわたって放置された後であっても、電池の充放電特性の低下をよく抑えることができる点から、ガーレー値は500秒以下が好ましく、特に、400秒以下であることが好ましい。
本発明において、多孔質フィルムのガーレー値は、用いるポリオレフィン重合体、エラストマー重合体、SD成分等の種類や割合、前記ゲル化時の冷却速度、熱処理条件、延伸条件等を適宜に選ぶことによって調節することができる。また、多孔質フィルムの膜厚は、リチウム二次電池において、電極間に介在させるセパレータとして、電解液の含浸量や電池内部の電気抵抗を考慮すれば、通常、5〜100μmの範囲であり、好ましくは、10〜80μmの範囲であり、平均孔径は、通常、0.02〜0.2μmの範囲であり、好ましくは、0.03〜0.18μmの範囲であり、空孔率は、通常、30〜70%の範囲であり、好ましくは、35〜65%の範囲である。
本発明によるリチウム二次電池は、上述したような多孔質フィルムからなるセパレータを挟んでシート状の負極と正極を積層した積層体や、多孔質フィルムからなるセパレータを挟んでシート状の負極と正極を積層しながら、渦巻状に捲回した捲回体からなる電極/セパレータ素子を電池ケースに収納し、これに電解液を注入し、密封したものである。上記電解液としては、例えば、リチウム塩を電解質塩とし、これを有機溶媒に溶解した溶液が用いられる。
上記リチウム塩は、特に限定はないが、例えば、LiPF6 、LiBF4 、LiN(C25SO2)2 、LiAsF6 、LiSbF6 、LiAlF4 、LiGaF4 、LiInF4 、LiClO4 、LiN(CF3SO2)2 、LiCF3SO3 、LiSiF6 、LiN(CF3SO2)(C49SO2) 等を挙げることができる。
また、上記有機溶媒も、上記リチウム塩を溶解し得る限りは、特に限定はないが、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート、プロピオン酸メチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシメタン、ジメトキシプロパン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン等のエーテル類、更には、スルフォラン等の単独又は2種類以上の混合溶媒が用いられる。
上記負極としては、例えば、金属リチウムのほか、リチウムを吸蔵、放出し得る材料からなる負極活物質と、必要に応じて、導電助剤やポリテトラフルオロエチレンのような結着剤等を適宜添加して合剤とし、これをステンレス鋼製網や銅箔等の集電材料と一体化したものが用いられる。上記リチウムを吸蔵、放出し得る材料としては、例えば、リチウム合金、スズ合金、ケイ素合金等の合金類、チタンやスズの酸化物や窒化物、黒鉛や活性炭等の炭素材料等を挙げることができる。
正極としては、例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、二酸化マンガン、五酸化バナジウム、クロム酸化物等の金属酸化物、二硫化モリブデン等の金属硫化物等からなる正極活物質に導電助剤やポリテトラフルオロエチレンのような結着剤等を適宜添加して合剤とし、これをステンレス鋼製網やアルミニウム箔等の集電材料と一体化したものが用いられる。
本発明においては、上記正極活物質は、その構成元素の一部が他の元素に置換されていてもよい。例えば、リチウムコバルト酸化物であれば、コバルト元素の一部がニッケルやマンガン等の元素で置換されているものも、正極活物質として用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。以下において、多孔質フィルムの特性は次のようにして測定した。
膜厚
1/10000シックネスゲージによる測定と多孔質フィルム断面の10000倍走査型電子顕微鏡写真に基づいて求めた。
空孔率
単位面積S(cm2)あたりの多孔質フィルムの重量W(g)と多孔質フィルムを構成する樹脂の密度d(g/cm3)を求め、上記膜厚t(μm)と併せて以下の式に基づいて算出した。
空孔率(%)={1−(104 W/dSt)}×100
ガーレー値
JIS P 8117に記載の方法に準拠して測定した。
実施例1
超高分子量ポリエチレン(重量平均分子量100万)15重量、主鎖に二重結合を有するエラストマー重合体としてポリノルボルネン樹脂(日本ゼオン(株)製ノーソレックスNB、重量平均分子量200万以上)1重量部及び熱可塑性エラストマー(住友化学工業(株)製熱可塑性エラストマーTPE821、ポリエチレン・ポリプロピレン共重合体)3重量部からなる重合体混合物に溶媒として流動パラフィン80重量部を加え、更に、上記超高分子量ポリエチレン100重量部に対して、それぞれ0.6重量部の酸化防止剤イルガノックス1010と0.3重量部のBHTを加え、上記重合体混合物を上記溶媒と共にスラリー状に均一に混合し、160℃の温度で二軸混練機を用いて0.3時間混練、溶解させ、押出成形して、押出シートを得た。
次いで、このようにして得られた押出シートを−60℃に冷却した金属板に挟み込み、冷却速度35℃/分で厚さ2mmのシート状に急冷してゲル状シートを得た。このゲル状シートを110℃の温度で厚さ1mmになるまでヒートプレスした後、120℃の温度で5×5倍に縦横同時に二軸延伸した。このようにして得られた延伸フィルムをヘプタンに10分間浸漬して、延伸フィルムを洗浄、脱溶媒した。このようにして延伸フィルムを脱溶媒した後、85℃で6時間、更に、110℃で2時間、空気中にて加熱して、上記重合体混合物の架橋体からなる多孔質フィルムを得た。この多孔質フィルムの膜厚、空孔率及びガーレー値を表1に示す。
次いで、上記多孔質フィルムを用いて、図1に示すようなラミネートリチウム二次電池を作製した。即ち、先ず、アルゴンガス置換したグローブボックス中でエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合溶媒(容量比1/2)に1.4モル/L濃度となるように電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させて、電解液を調製した。
アルミニウム箔からなる正極集電体1の片面にコバルト酸リチウムを主成分とする活物質層2を形成すると共に、この集電体にタブ3を溶接し、これに正極リード体4を接続して正極5とした。また、銅箔からなる負極集電体6の片面に天然黒鉛を主成分とする活物質層7を形成すると共に、この集電体にタブ8を溶接し、これに負極リード体9を接続して負極10とした。
上記正極5とセパレータとしての多孔質フィルム11と上記負極10とをこの順序に積層し、得られた積層体に前記電解液を含浸させ、これをアルミニウムラミネートシート12で挟んだ後、正負両電極リード体を外部に導くようにして外周部をヒートシールし、密封して、ラミネートリチウム二次電池を作製した。
次に、このようにして得られたラミネートリチウム二次電池の高温環境試験について説明する。リチウム二次電池を高温環境下に置くとき、通常、電池を構成する材料、例えば、電極、電解質、セパレータ等が劣化し、その結果、充放電特性が低下する。従って、前述したように、ノート型PC内部や夏場の自動車内等で想定される50℃から90℃のような高温環境下において使用されても、また、充電状態で高温環境下において長期間放置されても、電池は、特に放電特性が高く維持されることが要求される。このような放電特性は、例えば、高温環境下において放置した前後の放電容量を比較することによって評価することができる。より過酷な高温環境を想定すれば、高温環境は温度70℃以上とすることが好ましい。また、放置前の放電容量の評価は、0.5CmA以下のレートで行うことが好ましい。これより高いレートで放電させると、容量値が小さくなる場合があるからである。高温環境下に電池を放置した後の放電容量は、放電レートが高くても、放電量の多いことが望ましいが、1CmAのレートによる放電容量を高く保つことができれば十分な実用範囲と観られる。
そこで、本発明によるリチウム二次電池の高温環境試験においては、25℃の環境下にリチウム二次電池に4.2Vまで0.2CmAにて8時間定電流定電圧充電した後、2.75Vまで0.2CmAにて定電流放電し、このときの放電容量を初期放電容量、即ち、高温環境下に放置する前の放電容量とした。
次いで、0.2CmAにて充電した後、0.5CmAにて放電した。この後、再度0.2CmAにて充電し、満充電状態とした後、85℃の高温環境下に2日間放置した。この後、リチウム二次電池が環境温度(25℃)になるまで放置し、そこで、25℃の環境下に0.2CmA放電を2回、0.5CmA放電を1回、1CmA放電を1回行い、それぞれ高温環境下で放置後の放電容量とした。尚、0.2CmA放電容量は上記2回目の放電の際の値を採用した。また、各放電後の充電は、4.2Vまで0.2CmAにて定電流定電圧で行った。
初期放電容量と上記高温環境下に放置した後の0.2CmA、0.5CmA及び1CmAレートでの放電容量をそれぞれ表1に示す。また、初期放電容量をC0 とし、高温環境下での放置の後の各レートでの放電容量Cとして、次式から各レートでの放電における放電容量維持率Rを求めた。結果を表1に示す。
R=(C/C0) ×100(%)
実施例2
押出シートを厚さ6mmのゲル状シートとした以外は、実施例1と同様にして、多孔質フィルムを得た。この多孔質フィルムの物性を表1に示す。また、この多孔質フィルムを用い、実施例1と同様にして、電池を作製し、高温環境試験を行った。結果を表1に示す。
比較例1
延伸フィルムの洗浄において、ヘプタンに代えてデカンを用い、浸漬時間を5分、脱溶媒後の加熱条件を114℃で2時間とした以外は、実施例1と同様にして、多孔質フィルムを得た。この多孔質フィルムの物性を表1に示す。また、この多孔質フィルムを用い、実施例1と同様にして、電池を作製し、高温環境試験を行った。結果を表1に示す。
比較例2
押出シートを厚さ6mmのゲル状シートとすると共に延伸フィルムの洗浄において、ヘプタンに代えてデカンを用い、浸漬時間を10分、脱溶媒後の加熱条件を114℃で2時間とした以外は、実施例1と同様にして、多孔質フィルムを得た。この多孔質フィルムの物性を表1に示す。また、この多孔質フィルムを用い、実施例1と同様にして、電池を作製し、高温環境試験を行った。結果を表1に示す。
比較例3
押出シートを厚さ3mmのゲル状シートとすると共に延伸フィルムの洗浄において、ヘプタンに代えてデカンを用い、浸漬時間を10分、脱溶媒後の加熱条件を114℃で2時間とした以外は、実施例1と同様にして、多孔質フィルムを得た。この多孔質フィルムの物性を表1に示す。また、この多孔質フィルムを用い、実施例1と同様にして、電池を作製し、高温環境試験を行った。結果を表1に示す。
Figure 2006190507
実施例1及び2に示すように、ガーレー値が500秒以下である多孔質フィルムをセパレータとして用いた本発明のリチウム二次電池は、初期放電容量を0.2CmAという低いレートで測定し、しかも、85℃という高温環境下に2日間放置した後の放電容量を過酷な測定条件、即ち、1CmAという高い放電レートで測定した場合であっても、放電容量維持率は、通常、60%以上であり、好ましい態様によれば、70%以上である。
これに対して、比較例1〜3に示すように、ガーレー値が500秒を超える多孔質フィルムを用いたリチウム二次電池の放電容量維持率は、上記と同じ条件下での測定によれば、通常、50%に満たない。特に、1CmAという高い放電レートで測定した場合には、放電容量維持率は僅かに5%程度にすぎない。かくして、本発明によるリチウム二次電池は、高温環境下で使用されても、また、高温環境下に長期間放置された後であっても、比較例による電池に比べて、初期の電池性能を格段によく維持することができる。
ラミネートリチウム二次電池の一例を示す断面図である。
符号の説明
1…正極集電体
2…正極活物質層2
4…正極リード体4
5…正極
6…負極集電体
7…負極活物質層
9…負極リード体
10…負極
11…セパレータとしての多孔質フィルム
12…アルミニウムラミネートシート

Claims (7)

  1. 正極、負極、セパレータ及び電解液からなるリチウム二次電池において、上記セパレータがポリオレフィン重合体と二重結合を有するエラストマー重合体との架橋体を含み、ガーレー値が500秒以下である多孔質フィルムからなることを特徴とするリチウム二次電池。
  2. 多孔質フィルムにおいて、ポリオレフィン重合体が50万から500万の重量平均分子量を有するポリエチレンである請求項1に記載のリチウム二次電池。
  3. 多孔質フィルムにおいて、ポリオレフィン重合体がアイソタクチックポリプロピレンである請求項1に記載のリチウム二次電池。
  4. 多孔質フィルムにおいて、エラストマー重合体がポリノルボルネン樹脂である請求項1に記載のリチウム二次電池。
  5. 多孔質フィルムが450秒以下のガーレーを有する請求項1から4のいずれかに記載のリチウム二次電池。
  6. 多孔質フィルムが更にシャットダウン温度低下成分を含んでいる請求項1〜6のいずれかに記載のリチウム二次電池。
  7. 満充電状態で温度85℃の高温環境下に2日間放置した後の1CmAでの放電容量が放置前の0.2CmAでの放電容量の60%以上である請求項1から6のいずれかに記載のリチウム二次電池。

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