JP2003147109A - 多孔質フィルム、非水電解液電池用セパレータ及び非水電解液電池 - Google Patents

多孔質フィルム、非水電解液電池用セパレータ及び非水電解液電池

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JP2003147109A
JP2003147109A JP2001346281A JP2001346281A JP2003147109A JP 2003147109 A JP2003147109 A JP 2003147109A JP 2001346281 A JP2001346281 A JP 2001346281A JP 2001346281 A JP2001346281 A JP 2001346281A JP 2003147109 A JP2003147109 A JP 2003147109A
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porous film
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separator
aqueous electrolyte
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Kazunari Yamamoto
一成 山本
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Nitto Denko Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 未架橋のポリオレフィン樹脂の融点付近から
更に高温(好ましくは樹脂の分解温度に近い温度)ま
で、厚みを確実に維持して耐久性を高めることができる
多孔質フィルム、該多孔質フィルムからなる非水電解液
電池用セパレータ、および該セパレータを用いてなる非
水電解液電池を提供する。 【解決手段】 架橋構造を有しポリオレフィン樹脂を含
有する多孔質フィルムにおいて、針入プローブ式熱機械
的分析装置を用いて、プローブ径1mmφ、荷重70
g、室温から昇温速度2℃/minで厚み変化を測定し
たとき、100〜150℃の範囲内で厚みが極小値をと
る極小温度(極小温度がない場合は変曲点温度)での厚
みに対し、一旦増加した厚みが再び極小温度での厚みと
なる再降下温度が、250℃以上であることを特徴とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリオレフィン樹
脂を含有し架橋構造を有する多孔質フィルム、該多孔質
フィルムからなる非水電解液電池用セパレータ、および
該セパレータを用いてなる非水電解液電池に関する。
【0002】
【従来の技術】リチウムなどの軽金属を電極とする非水
電解液電池は、エネルギー密度が高く自己放電も少ない
ため、電子機器の高性能化、小型化などを背景として利
用範囲を大きく広げてきている。このような非水電解液
電池の電極としては帯状の正極、負極、およびセパレー
タを積層し捲回して構成することにより、広い有効電極
面積を確保した渦巻状捲回体が用いられている。セパレ
ータは、基本的には両極の短絡を防止するとともに、そ
の微多孔構造によりイオンを透過させて電池反応を可能
とするものであるが、誤接続などにより異常電流が発生
した場合に電池内部温度の上昇に伴い樹脂が熱変形して
微多孔を塞いで電池反応を停止させる、いわゆるシャッ
トダウン機能(SD機能)を有するものが安全性向上の
観点から採用されている。
【0003】このようなSD機能を有するセパレータ
は、例えば、ポリエチレン製微多孔膜やポリエチレンと
ポリプロピレンとの多層構造の微多孔膜などが知られて
いる。
【0004】しかしながら、昨今のリチウムイオン二次
電池などの進歩により、上記シャットダウン機能のみな
らず、耐熱性に係わる各種特性がより重要性を増してい
る。すなわち、シャットダウン後にさらに温度が上昇し
た時に、セパレータ自身が溶融破膜(メルトダウン)し
たり、溶融まで至らない場合でも厚みが減少して破断す
る状態がおこり得ることを考慮すると、より高い温度で
対応できることが望まれている。特に、高容量化された
電池や電池内部抵抗の低減がすすむと、発熱が大きくな
る要素が増すため、より高温における各種特性がますま
す重要な要素となる。
【0005】上記問題に対しては、シャットダウン温度
と破膜温度の差が大きく、また、破膜温度が高いほど、
高温特性が良好で安全性の高い電池用セパレータになり
うると考えられる。例えば、特開昭63−308866
号公報には、低融点ポリエチレンと高融点のポリプロピ
レンからなる単膜を積層化することにより、高強度かつ
優れた高温特性を有する微孔性多孔膜を得る方法が開示
されている。しかし、積層構造のためセパレータの内部
抵抗が高くなり、高出力用途など高性能電池に対するセ
パレータとしては不向きである。
【0006】また、特開平10−298325号公報に
は、低分子量ポリエチレンとポリプロピレンを含有した
高分子量ポリエチレン組成物からなる微多孔膜を得る方
法が開示されている。しかし、急激に温度が上昇する場
合には大部分を占めるポリエチレン素材が容易に溶融す
るため、厚みが減少し破断しやすくなり危険性が大きく
なる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】一方、電池用セパレー
タとして、架橋構造を有するポリオレフィン樹脂を含有
する多孔質フィルムを使用する技術も幾つか知られてい
る。例えば、特開平10−7831号公報には、架橋点
間分子量が20万以下で特定の収縮残存率と気孔率を有
するポリエチレン微多孔膜が開示されている。しかし、
この発明では、溶融突き刺し強度の測定を160℃で行
っており、シャットダウン後の更なる昇温(例えば25
0℃以上)に対して、十分な耐久性、特に厚み維持特性
を有し、電池の安全性を確保するものではない。
【0008】そこで、本発明の目的は、未架橋のポリオ
レフィン樹脂の融点付近から更に高温(好ましくは樹脂
の分解温度に近い温度)まで、厚みを確実に維持して耐
久性を高めることができる多孔質フィルム、該多孔質フ
ィルムからなる非水電解液電池用セパレータ、および該
セパレータを用いてなる非水電解液電池を提供すること
にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、耐熱破膜
温度などの評価方法と比較して、より高温における電池
等の耐久性を反映できる評価方法として、所定の条件に
おける高温での厚み維持特性に着目し、これを改善する
ことにより、好ましくは樹脂の分解温度に近い温度まで
電池等の耐久性を高められることをことを見出し、本発
明を完成するに至った。
【0010】即ち、本発明の多孔質フィルムは、ポリオ
レフィン樹脂を含有し架橋構造を有する多孔質フィルム
において、針入プローブ式熱機械的分析装置を用いて、
プローブ径1mmφ、荷重70g、室温から昇温速度2
℃/minで厚み変化を測定したとき、100〜150
℃の範囲内で厚みが極小値をとる極小温度(極小温度が
ない場合は変曲点温度)での厚みに対し、一旦増加した
厚みが再び極小温度での厚みとなる再降下温度が、25
0℃以上であることを特徴とする。ここで、再降下温度
などの物性は、より具体的には実施例で記載された測定
方法による値である。
【0011】上記において、JIS P8117に準拠
する通気度(室温)が、100〜1000sec/10
0mlであることが好ましい。
【0012】また、超高分子量ポリエチレンと二重結合
を有する重合体とが架橋してなる架橋物を含有すること
が好ましい。
【0013】一方、本発明の非水電解液電池用セパレー
タは、上記いずれかに記載の多孔質フィルムからなるも
のである。
【0014】他方、本発明の非水電解液電池は、上記い
ずれかに記載の多孔質フィルムからなるセパレータを用
いてなることを特徴とする。
【0015】[作用効果]本発明の多孔質フィルムによ
ると、所定の条件における高温での厚み維持特性におい
て上記再降下温度が250℃以上であるため、実施例の
結果が示すように、例えば、従来のセパレータを用いた
電池に比べて、未架橋のポリオレフィン樹脂の融点付近
からの更なる昇温における耐久性、安全性をより高める
ことができる。
【0016】上記の通気度(室温)が、100〜100
0sec/100mlである場合、上記のように高温で
の厚み維持特性を改善しながら、セパレータ等としての
イオン透過機能などを十分発現することができる。
【0017】超高分子量ポリエチレンと二重結合を有す
る重合体とが架橋してなる架橋物を含有する場合、より
高温においても厚みを確実に維持して、電池等の耐久
性、安全性を高めることができる。
【0018】一方、本発明の非水電解液電池用セパレー
タによると、上記いずれかに記載の多孔質フィルムから
なるため、従来のセパレータを用いた電池に比べて、未
架橋のポリオレフィン樹脂の融点付近からの更なる昇温
における耐久性、安全性をより高めることができる。
【0019】他方、本発明の非水電解液電池によると、
上記いずれかに記載の多孔質フィルムからなるセパレー
タを用いてなるため、従来のセパレータを用いた電池に
比べて、未架橋のポリオレフィン樹脂の融点付近からの
更なる昇温における耐久性、安全性をより高めることが
できる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。本発明の多孔質フィルムは、針入プローブ
式熱機械的分析装置を用いて、プローブ径1mmφ、荷
重70g、室温から昇温速度2℃/minで厚み変化を
測定したとき、100〜150℃の範囲内で厚みが極小
値をとる極小温度(極小温度がない場合は変曲点温度)
での厚みに対し、一旦増加した厚みが再び極小温度での
厚みとなる再降下温度が、250℃以上であることを特
徴とする。
【0021】ここで、針入プローブ式熱機械的分析装置
を通してみられる現象について説明する。まず、多孔質
フィルムに荷重のかかった針径1mmφの円筒型針をセ
ットすると、荷重により幾分厚みが減少する。その後、
緩やかに多孔質フィルムが昇温とともに少しづつ減少し
ていき、多孔質膜を形成する樹脂が溶融または半溶融状
態になるときには大きな厚みの減少をともない、次ぎに
その後の収縮のため少し厚みが戻る減少がみられる。こ
のとき厚みの変化は谷を形成するような極小値を示す
(戻り収縮が小さいときは変曲点となる)。厚み極小温
度とは、この最初の厚み極小値を示す温度のことをい
う。この温度は電池用セパレータのシャットダウン温度
に類似した温度と考えられる。
【0022】さらに昇温していくと、通常の電池用セパ
レータに用いる多孔質フィルムでは、収縮による厚み増
加後に再び厚み低下が始まる。このとき厚みが再降下し
続けて、前述の厚み極小値(極小温度での厚み)となる
際の温度を再降下温度とし、膜厚維持性の目安とするも
のである。この温度が高ければ、より高い温度まで膜厚
が維持でき、絶縁膜としての機能が長く保持されること
になる。特に架橋型多孔質フィルムでない場合では、例
え高粘度性の高分子量体であっても、次第に溶融してい
くため膜厚が減少していく。今後電気自動車用途など電
池の大容量化がすすめば、200℃を十分越えた状態で
も絶縁膜としての厚み維持特性が望まれてくる。
【0023】上記の再降下温度が250℃未満の多孔質
フィルムでは、十分架橋状態を維持した構造体とはいえ
ず、250℃以上が好ましい。また、より高温における
電池等の耐久性、安全性を確保する上で、再降下温度が
300℃以上が好ましく、350℃以上が更に好まし
い。
【0024】また、多孔質フィルムの厚みとしては1〜
60μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。J
IS P8117に準拠する通気度(室温)が、100
〜1000sec/100mlであるのが好ましく、1
00〜900秒/100mlがより好ましい。
【0025】多孔質フィルムの材料は、ポリオレフィン
樹脂を含有し架橋構造を有するものであり、ポリオレフ
ィン樹脂としては、特に制限されるものではなく、ポリ
エチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなどが挙げら
れる。さらにポリエチレンとしては、高密度ポリエチレ
ン、低密度ポリエチレンなどが好ましく、特に高密度ポ
リエチレンや超高分子量ポリエチレンが多孔性、膜強度
の観点から好ましい。特に、超高分子量ポリエチレンが
好ましく、重量平均分子量50万以上のものが好まし
く、100万以上がより好ましい。
【0026】本発明では、ポリオレフィン樹脂以外の樹
脂を併用することも可能であり、架橋構造を形成するた
めの重合体や、ナイロン、セルロースアセテート、ポリ
アクリロニトリルなどを用いることもできる。
【0027】但し、電池用セパレータとして用いる場合
には、ポリオレフィン類とポリブタジエンやポリノルボ
ルネンなど分子鎖に二重結合を有する架橋性ゴムを含有
させ潜在的架橋性をもたせたり、後工程により架橋処理
を行うなど、特に架橋処理を施すことにより高い熱破膜
性、膜厚維持性が期待できる。従って、本発明では、超
高分子量ポリエチレンと二重結合を有する重合体(架橋
性ゴムの未加硫物を含む)とが架橋してなる架橋物を含
有するものを使用するのが好ましい。その際、二重結合
を有する重合体を多孔質フィルム中に、2〜40重量
%、特に5〜35重量%配合しておくのが好ましい。
【0028】また、セパレータのシャットダウン温度を
下げ、安全性を高める目的で、上記の樹脂成分のうち、
融点の比較的低いものを併用してもよく、また、熱可塑
性エラストマー、グラフトコポリマーを併用してもよ
い。熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレン系
や、ポリオレフィン系、ポリジエン系、塩化ビニル系、
ポリエステル系等の熱可塑性エラストマーが挙げられ
る。グラフトコポリマーとしては、主鎖にポリオレフィ
ン、側鎖に非相溶性基を有するビニル系ポリマーを側鎖
としたグラフトコポリマーが挙げられるが、ポリアクリ
ル類、ポリメタクリル類、ポリスチレン、ポリアクリト
ニトリル、ポリオキシアルキレン類が好ましい。なお、
ここで非相溶性基とは、ポリオレフィンに対して非相溶
性基を意味し、例えば、ビニル系ポリマーに由来する基
などが挙げられる。これらのSD成分の含有量は、多孔
質フィルム中に60重量%以下、特に50重量%以下が
好ましい。
【0029】次に、本発明における多孔質フィルムの製
造方法について説明する。当該多孔質フィルムの製造に
は、乾式成膜法、湿式成膜法など公知の方法を利用する
ことができる。たとえば、前記樹脂組成物を溶媒と混合
し、混練、加熱溶解しながらシート状に押出し、冷却し
てゲル化(固化)させた後、加熱下で圧延や延伸により
一軸方向以上に延伸し、溶媒を抽出除去することにより
製造することができる。乾式成膜法としては、非晶質部
分を有するフィルムを所定の温度で加熱しつつ、延伸し
て多孔質化させる方法等が挙げられる。
【0030】また、二重結合を有する重合体を含有する
多孔質フィルムに対し、二重結合部位を熱、紫外線、電
子線等の架橋処理することにより、耐熱性を高めて、高
温での厚み維持特性を向上させることも有効である。
【0031】一方、本発明の非水電解液電池用セパレー
タは、以上のような多孔質フィルムからなるものであ
る。本発明の多孔質フィルムを用いることにより、シャ
ットダウン(膜孔閉塞)後の高温条件下において膜厚維
持性に優れて、容易に破膜しない電池用セパレータとし
て電池の安全性を向上させることが期待できる。
【0032】本発明の非水電解液電池用セパレータの厚
みは、5〜50μmが好ましい。空孔率は20〜80%
が好ましく、また、平均孔径は0.01〜0.5μmが
好ましい。これらによる総合的な特性として、JIS
P8117に準拠する通気度は、100〜1000se
c/100mlが好ましい。
【0033】次に本発明の非水電解液電池について説明
する。当該非水電解液電池は、以上の如き多孔質フィル
ムからなるセパレータを用いてなり、その構造は、例え
ば帯状の負極、正極およびセパレータを積層捲回して得
た捲回型電極体を電池缶に収納し、これに電解液を注入
し、さらに電池上下の絶縁板など必要な部材を市販の電
池に準じて適宜配して構成したものである。
【0034】電解液としては、例えば、リチウム塩を電
解液とし、これを有機溶媒に溶解した電解液が用いられ
る。有機溶媒としては、特に限定されるものではない
が、たとえば、プロピレンカーボネート、エチレンカー
ボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクト
ン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート、プロ
ピオン酸メチル、酢酸ブチルなどのエステル類、アセト
ニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、
1,2−ジメトキシメタン、ジメトキシプロパン、1,
3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテ
トラヒドロフラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン
などのエーテル類、さらにはスルフォランなどの単独、
もしくは二種類以上の混合溶媒が使用できる。
【0035】負極としてはアルカリ金属またはアルカリ
金属を含む化合物をステンレス鋼製網などの集電材料と
一体化したものが用いられる。その際のアルカリ金属と
して、たとえばリチウム、ナトリウム、カリウムなどが
挙げられ、アルカリ金属を含む化合物としては、たとえ
ばアルカリ金属とアルミニウム、鉛、インジウム、カリ
ウム、カドミウム、スズ、マグネシウムなどの合金、さ
らにはアルカリ金属と炭素材料との化合物、低電位のア
ルカリ金属と金属酸化物、硫化物との化合物などが挙げ
られる。負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料として
は、リチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであ
ればよく、たとえば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス
類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソ
カーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用い
ることができる。
【0036】正極としては、たとえばリチウムコバルト
酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸
化物、二酸化マンガン、五酸化バナジウム、クロム酸化
物、などの金属酸化物、二硫化モリブデンなどの金属窒
化物などが活物質として用いられ、これらの正極活物質
に導電助剤やポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤
などを適宜添加した合剤を、ステンレス鋼製網などの集
電材料を芯材として成形体に仕上げたものが用いられ
る。
【0037】
【実施例】以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実
施例等について説明する。なお、実施例における試験方
法は次の通りである。
【0038】(フィルム厚)1/10000シックネス
ゲージにより測定した。
【0039】(通気度)JIS P8117に準拠して
測定した。
【0040】(架橋構造の確認)IRスペクトル中のC
=C二重結合に由来する吸収ピーク(960cm-1)の
消失を確認した。また、40mm角の試料を金属メッシ
ュに挟んで熱キシレン(160℃)中で溶解させ、残存
する成分の比率をゲル分率として測定し、熱処理前の多
孔質フィルムのゲル分率(通常は0%)と比較した。
【0041】(シャットダウン温度)25mmφの筒状
の試験室を有し、試験室が密閉可能なSUS製のセルを
用い、下部電極はの20mmφ、上部電極は10mmφ
の白金板(厚さ1.0mm)を使用した。24mmφに
打ち抜いた測定試料を電解液に浸漬して電解液を含浸
し、電極間に挟み、セルにセットした。電極はセルに設
けられたばねにて一定の面圧がかかるようにした。電解
液はプロピレンカーボネートとジメトキシエタンを容量
比で1:1の割合で混合した溶媒に、ホウフッ化リチウ
ムを1.0mol/Lの濃度になるように溶解したもの
を用いた。
【0042】このセルに熱伝対温度計と、抵抗計を接続
して温度と抵抗を測定できるようにし、180℃恒温器
中へ投入し、温度と抵抗を測定した。100〜150℃
の平均昇温速度は10℃/分であった。この測定によ
り、抵抗が100Ω・cm2 に達した時の温度をシャッ
トダウン温度とした。
【0043】(針入プローブ式熱機械的分析装置による
厚み変化の測定)セイコー電子製EXSTAR6000
を用いて、幅5mm角のサンプル片に先端1mmφの針
入プローブを乗せ、プローブ上に70gの荷重をかけた
ときの厚みの変化を昇温2℃/minで計測した。計測
後のデータから厚み極小温度、厚み再降下温度を読みと
った。
【0044】[調製例1]ノルボルネンの開環重合体の
粉末(ノーソレックスNB、重量平均分子量200万以
上)6重量%、重量平均分子量300万の超高分子量ポ
リエチレン94重量%からなる重合体組成物20重量部
と流動パラフィン80重量部とをスラリー状に均一に混
合し、160℃の温度で小型ニーダーを用い約60分溶
解混練りした。その後これらの混練物を0℃に冷却され
たロールまたは全属板に挟み込みシート状に急冷した。
これらの急冷シート状樹脂を、117℃の温度でシート
厚が0.5mmになるまでヒートプレスし、1 1 7 ℃の
温度で同時に縦横3.8×3.8倍に二軸延伸し、ヘプ
タンを使用して脱溶媒処理を行った。その後、得られた
多孔質フィルムを空気中で85℃・6時間熱処理し、つ
いで125℃で2時間熱処理して、架橋構造(ゲル分率
65%)を有する本発明の多孔質フィルムを得た。この
多孔質フィルムは25μm、通気度310、シャットダ
ウン温度149℃であった。
【0045】[調製例2]ノルボルネンの開環重合体の
粉末(ノーソレックスNB、重量平均分子量200万以
上)8重量%、熱可塑性エラストマー(住友化学製TP
E824)12重量%、重量平均分子量350万の超高
分子量ポリエチレン80重量%からなる重合体組成物1
6重量部と流動パラフィン84重量部とをスラリー状に
均一に混合し、160℃の温度で小型ニーダーを用い約
60分溶解混練りした。その後これらの混練物を0℃に
冷却されたロールまたは金属板に挟み込みシート状に急
冷した。これらの急冷シート状樹脂を、115℃の温度
でシート厚が0.5mmになるまでヒートプレスし、1
1 5 ℃の温度で同時に縦横4.5×4.5倍に二軸延伸
し、ヘプタンを使用して脱溶媒処理を行った。その後、
得られた多孔質フィルムを空気中で85℃・6時間熱処
理し、ついで118℃で1.5時間熱処理して、架橋構
造(ゲル分率60%)を有する本発明の多孔質フィルム
を得た。この多孔質フィルムは25μm、通気度51
0、シャットダウン温度135℃であった。
【0046】[調製例3]調製例2で得られたシート状
樹脂を、1 1 5 ℃の温度でシート厚が0.3mmになる
までヒートプレスし、115℃の温度で同時に縦横4.
5×4.5倍に二軸延伸し、ヘプタンを使用して脱溶媒
処理を行った。その後、得られた多孔質フィルムを空気
中で85℃・6時間熱処理し、ついで118℃で1.5
時間熱処理して、架橋構造(ゲル分率62%)を有する
本発明の多孔質フィルムを得た。この多孔質フィルムは
15μm、通気度420、シャットダウン温度135℃
であった。
【0047】[調製例4]シス型1,4−ポリブタジエ
ン(日本ゼオン製、Nipol BR−1241、シス
1,4含量36.5%、ムーニー粘度38)10重量
%、重量平均分子量30万のポリエチレン35重量%、
重量平均分子量150万の超高分子量ポリエチレン55
重量%からなる重合体組成物20重量部と流動パラフィ
ン80重量部とをスラリー状に均一に混合し、160℃
の温度で小型ニーダーを用い約60分溶解混練りした。
その後これらの混練物を0℃に冷却されたロールまたは
金属板に挟み込みシート状に急冷した。これらの急冷シ
ート状樹脂を、1 1 5 ℃の温度でシート厚が0.5mm
になるまでヒートプレスし、1 1 5 ℃の温度で同時に縦
横3.5×3.5倍に二軸延伸し、アセトンを使用して
脱溶媒処理を行った。その後、得られた多孔質フィルム
を空気中で115℃・10分間熱処理し、ついで高圧水
銀ランプを用いて1J/cm2 で紫外線照射し、さらに
115℃・20分間熱処理して架橋構造(ゲル分率47
%)を有する本発明の多孔質フィルムを得た。この多孔
質フィルムは25μm、通気度460、シャットダウン
温度132℃であった。
【0048】[調製例5]重量平均分子量300万の超
高分子量ポリエチレン15重量部と流動パラフィン85
重量部とをスラリー状に均一に混合し、160℃の温度
で小型ニーダーを用い約60分溶解混練りした。その後
これらの混練物を0℃に冷却されたロールまたは全属板
に挟み込みシート状に急冷した。これらの急冷シート状
樹脂を、118℃の温度でシート厚が0.5mmになる
までヒートプレスし、118℃の温度で同時に縦横3.
8×3.8倍に二軸延伸し、ヘプタンを使用して脱溶媒
処理を行った。その後、得られた多孔質フィルムを空気
中で85℃・6時間熱処理し、ついで125℃で2時間
熱処理して、多孔質フィルム(ゲル分率0%)を得た。
この多孔質フィルムは25μm、通気度280、シャッ
トダウン温度148℃であった。
【0049】[調製例6]重量平均分子量20万のポリ
エチレン60重量%、重量平均分子量150万の超高分
子量ポリエチレン40重量%からなる重合体組成物15
重量部と流動パラフィン85重量部とをスラリー状に均
一に混合し、160℃の温度で小型ニーダーを用い約6
0分溶解混練りした。その後これらの混練物を0℃に冷
却されたロールまたは金属板に挟み込みシート状に急冷
した。これらの急冷シート状樹脂を、115℃の温度で
シート厚が0.5mmになるまでヒートプレスし、11
5℃の温度で同時に縦横4×4倍に二軸延伸し、ヘプタ
ンを使用して脱溶媒処理を行った。その後、得られた多
孔質フィルムを空気中で85℃・1時間熱処理し、つい
で116℃で1時間熱処理して、多孔質フィルム(ゲル
分率0%)を得た。この多孔質フィルムは25μm、通
気度490、シャットダウン温度132℃であった。
【0050】[実施例1]調製例1で得られた多孔質フ
ィルムを用い、針侵入式熱機械的分析装置により厚み極
小温度、厚み再降下温度を測定した。
【0051】[実施例2]調製例2で得られた多孔質フ
ィルムを用い、針侵入式熱機械的分析装置により厚み極
小温度、厚み再降下温度を測定した。
【0052】[実施例3]調製例4で得られた多孔質フ
ィルムを用い、針侵入式熱機械的分析装置により厚み極
小温度、厚み再降下温度を測定した。
【0053】[実施例4]調製例3で得られた多孔質フ
ィルムを用い、針侵入式熱機械的分析装置により厚み極
小温度、厚み再降下温度を測定した。
【0054】[比較例1]調製例5で得られた多孔質フ
ィルムを用い、針侵入式熱機械的分析装置により厚み極
小温度、厚み再降下温度を測定した。
【0055】[比較例2]調製例6で得られた多孔質フ
ィルムを用い、針侵入式熱機械的分析装置により厚み極
小温度、厚み再降下温度を測定した。
【0056】実施例、比較例で得られた多孔質フィルム
の特性を表1に示す。また、実施例4、比較例2の針入
プローブ式熱機械的分析のグラフを示す。
【0057】
【表1】 表1の結果が示すように、本発明の多孔質フィルムは、
通気性に優れたバランスの良好な多孔質フィルムであ
り、かつ従来に比して高温まで膜厚維持特性を有する、
絶縁膜としての優れた隔壁構造をもつ多孔質フィルムで
ある。
【0058】[電池の実施例]リチウムコバルト酸化物
(LiCoO2 )に導電助剤としてリン状黒鉛を重量比
90:5で加えて混合し、この混合物と、ポリフッ化ビ
ニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液とを
混合してスラリーにした。この正極合剤スラリーを70
メッシュの網を通過させて大きなものを取り除いた後、
厚さ20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両
面に均一に塗布して乾燥し、その後、ローラプレス機に
より圧縮成形した後、切断し、リード体を溶接して、帯
状の正極を作製した。
【0059】つぎに平均粒径10μmの炭素材料を、フ
ッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶
液と混合してスラリーにした。この負極合剤スラリーを
70メッシュの網を通過させて大きなものを取り除いた
後、厚さ18μmの帯状の銅箔からなる負極集電体の両
面に均一に塗布して乾燥し、その後ローラプレス機によ
り圧縮成形し切断した後、リード体を溶接して帯状負極
を作製した。
【0060】セパレータは調製例1〜6で得られた多孔
質フィルムを用いた。これらの正極、負極およびセパレ
ータを両極がセパレータを介して互いに重なるように、
渦巻き状に捲回して渦巻状捲回電極体として巻き止めテ
ープで外側を止めて捲回体とし、外径18mmの有底円
筒状の電池ケース内に充填し、正極及び負極のリード体
の溶接を行った。つぎに電解液としてエチレンカーボネ
ートが1重量部に対してメチルエチルカーボネートを2
重量部の混合溶媒中にLiPF6 を1.4モル/リット
ルの割合で溶解した電解液を調製した。これを、電池ケ
ース内に注入し、電解液がセパレータなどに十分に浸透
した後、封口して、未充電の筒型二次電池を作製した。
【0061】このように作製した各非水電解液二次電池
をステンレスパッド(170mm×220mm)に横置
きに寝かせ、パッドふたを載せた後、熱風乾燥機中に入
れ昇温10℃/分で加温した。シャットダウン温度以上
の180℃に達した後、1時間保持した。その後、電池
を取り出し急冷させて室温まで冷却した。この電池を分
解して、正極・負極間のセパレータが破膜している箇所
の数を調べたところ、表2の通りであった。
【0062】
【表2】 表2の結果が示すように、多孔質フィルムの再降下温度
が250℃以上であると、シャットダウン後の更なる昇
温に対して、電極の短絡の発生を防止することができ、
より高温での電池の安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例4と比較例2で得られた多孔質フィルム
を用いた針入プローブ式熱機械的分析の結果を示すグラ
フロントページの続き Fターム(参考) 4F074 AA16 AA97 CA03 CB03 CB17 CC07Y CC22X DA24 DA49 5H021 BB20 EE04 EE39 HH00 HH03 HH06 5H024 AA02 AA03 AA12 DD09 EE09 HH11 5H029 AJ12 AK02 AK03 AK05 AL03 AL04 AL06 AL07 AL08 AL12 AL13 AM02 AM03 AM04 AM05 AM07 DJ04 EJ12 HJ14

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリオレフィン樹脂を含有し架橋構造を
    有する多孔質フィルムにおいて、針入プローブ式熱機械
    的分析装置を用いて、プローブ径1mmφ、荷重70
    g、室温から昇温速度2℃/minで厚み変化を測定し
    たとき、100〜150℃の範囲内で厚みが極小値をと
    る極小温度(極小温度がない場合は変曲点温度)での厚
    みに対し、一旦増加した厚みが再び極小温度での厚みと
    なる再降下温度が、250℃以上であることを特徴とす
    る多孔質フィルム。
  2. 【請求項2】 JIS P8117に準拠する通気度
    (室温)が、100〜1000sec/100mlであ
    る請求項1記載の多孔質フィルム。
  3. 【請求項3】 超高分子量ポリエチレンと二重結合を有
    する重合体とが架橋してなる架橋物を含有する請求項1
    又は2に記載の多孔質フィルム。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3いずれかに記載の多孔質フ
    ィルムからなる非水電解液電池用セパレータ。
  5. 【請求項5】 請求項1〜3いずれかに記載の多孔質フ
    ィルムからなるセパレータを用いてなる非水電解液電
    池。
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