JP2017048334A - ポリオレフィン微多孔膜、蓄電デバイス用セパレータ、及び蓄電デバイス - Google Patents

ポリオレフィン微多孔膜、蓄電デバイス用セパレータ、及び蓄電デバイス Download PDF

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Abstract

【課題】リチウムイオン二次電池およびその他の電気化学デバイス用セパレータとしたときに高温下での性能に優れ、且つ、高い耐熱安全性を付与できる、ポリオレフィン微多孔膜、該ポリオレフィン微多孔膜からなる蓄電デバイス用セパレータ、及び該蓄電デバイス用セパレータを用いた蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】ポリオレフィン微多孔膜の膜幅方向の熱機械分析測定より得られる、熱機械分析一次微分曲線において、前記ポリオレフィン微多孔膜の融点Tmより10℃低い温度(Tm−10℃)未満の領域における微分値の最大値が、0.1以下である、ポリオレフィン微多孔膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリオレフィン微多孔膜、蓄電デバイス用セパレータ、及び蓄電デバイスに関する。
ポリオレフィン微多孔膜(以下、単に「PO微多孔膜」と略記することがある。)は、種々の物質の分離、選択透過分離膜、隔離材等として広く用いられている。その用途としては、例えば、精密ろ過膜;リチウムイオン電池、燃料電池等の電池のセパレータ;コンデンサー用セパレータ;機能材を孔の中に充填させ新たな機能を出現させるための機能膜の母材等が挙げられる。中でも、ノート型パーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話、タブレットPC、デジタルカメラ等に広く使用されているリチウムイオン電池用のセパレータとして、PO微多孔膜が好適に使用されている。
近年、リチウムイオン電池等の蓄電デバイスは高容量化が進んでおり、セル一つ当たりのエネルギー密度が大きくなってきたため、安全性の担保が重要となってきている。
電池の安全性については、衝突や圧壊した際に発火および爆発しないことが重要な要素の一つである。
衝突や圧壊が起こった際の発火及び爆発はセパレータが破膜することによる内部短絡に起因している。そのため、セパレ−タの破膜強度を高めることで衝撃等による内短を防ぐことが求められている。
また、PO微多孔膜からなるセパレータはリチウムイオン二次電池が発熱した際、セパレータの溶融と収縮により閉孔し、シャットダウンする事で電極間を絶縁することができ、発火、爆発等のリスクを下げることができる。
一方でセパレータの収縮が大きすぎると膜端部の電極が露出してしまい、短絡が起こり、さらなる発熱が起きる可能性がある。そのためシャットダウン温度がおこるポリオレフィン樹脂の融点近傍まではセパレータの収縮が起こらないことが好ましい。
一方、近年、車載向けチウムイオン電池の開発が盛んに行われ、エンジンルーム内や気温の高い地域での使用等、高温環境下で性能維持が求められてきている。
そのため100℃程度の高温下において膜の収縮が起きてしまうと、内部抵抗が上昇し電池容量が低下してしまう。
これらの事から、セパレータはセルの発熱が起きた際、シャットダウン温度までは収縮がおこらず、シャットダウンが起きる際には速やかに収縮する事が求められる。さらに、衝突などの衝撃が加わった際に内部短絡が起きないために高い機械的強度が求められている。
さらに、セルの高容量化により単位体積内に捲回されている電極とセパレータの量を増加させるため、電極とセパレータの捲回張力を強める傾向にある。その結果、セパレータと電極を捲回する捲回ピンが抜けにくくなるという問題がある。このことから、捲回時のピン抜け性が良好なセパレータが求められてきている。
この点、特許文献1、2には、隔離膜厚で標準化した外部応力2mN/μmを加え、低応力モードで行った、TMA(熱機械分析:Thermomechanical Analysis)測定の横方向最大収縮率が0%以下であり、120℃で1時間放置時、縦方向、横方向に収縮率が10%以下であり、かつ高い穿孔強度を有し、破膜性、耐熱安定性に優れるPO微多孔膜が開示されている。このようなPO微多孔膜は電池が高温になった際に電極が露出せず、内部短絡を防ぎ、発火爆発のリスクを低減できるとしている。
特許第5127671号 特許第5592745号
しかしながら、このようなPO微多孔膜はシャットダウンが始まる温度に達しても収縮がおこらず、瞬間的なシャットダウンによる電極間の絶縁が起きないという点が問題である。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、リチウムイオン二次電池およびその他の電気化学デバイス用セパレータとしたときに高温下での性能に優れ、且つ、高い耐熱安全性を付与できる、ポリオレフィン微多孔膜、該ポリオレフィン微多孔膜からなる蓄電デバイス用セパレータ、及び該蓄電デバイス用セパレータを用いた蓄電デバイスを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、膜幅方向の熱機械分析測定において所定の特徴を有する熱機械分析一次微分曲線を有することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明をするに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
ポリオレフィン微多孔膜の膜幅方向の熱機械分析測定より得られる、熱機械分析一次微分曲線において、
前記ポリオレフィン微多孔膜の融点Tmより10℃低い温度(Tm−10℃)未満の領域における微分値の最大値が、0.1以下である、
ポリオレフィン微多孔膜。
〔2〕
前記熱機械分析一次微分曲線において、
前記ポリオレフィン微多孔膜の融点Tmより10℃低い温度(Tm−10℃)以上、前記ポリオレフィン微多孔膜の融点Tm未満の領域における微分値の最大値が、0.15以上である、
〔1〕に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔3〕
前記熱機械分析一次微分曲線において、
前記ポリオレフィン微多孔膜の融点Tmより10℃低い温度(Tm−10℃)未満の前記領域における微分値の最大値が、0.05以下である、
〔1〕または〔2〕に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔4〕
前記熱機械分析一次微分曲線において、
前記ポリオレフィン微多孔膜の融点Tmより10℃低い温度(Tm−10℃)以上、前記ポリオレフィン微多孔膜の融点Tm未満の領域における微分値の最大値が0.2以上である、
〔1〕〜〔3〕いずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔5〕
前記熱機械分析一次微分曲線において、
前記ポリオレフィン微多孔膜の融点Tm以上、前記ポリオレフィン微多孔膜の融点Tmより5℃高い温度(Tm+5℃)未満の領域における熱機械分析微分値の最小値が、0.2以上である、
〔1〕〜〔4〕いずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔6〕
膜幅方向の動摩擦係数が、0.4以下である、
〔1〕〜〔5〕いずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔7〕
長手方向引張強度と膜幅方向引張強度が、ともに1500kg/cm2以上である、
〔1〕〜〔6〕いずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔8〕
膜厚12μm換算透気度が、150秒/100cc以下である、
〔1〕〜〔7〕いずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔9〕
膜厚が、5μm以上20μm以下である、
の〔1〕〜〔8〕いずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔10〕
〔1〕〜〔9〕に記載のポリオレフィン微多孔膜からなる、蓄電デバイス用セパレータ。
〔11〕
〔10〕に記載の蓄電デバイス用セパレータを備える、蓄電デバイス。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池およびその他の電気化学デバイス用セパレータとしたときに高温下での性能に優れ、且つ、高い耐熱安全性を付与できる、PO微多孔膜を提供することができる。
実施例2における熱機械分析一次微分曲線を示す。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と略記することがある。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
〔ポリオレフィン微多孔膜〕
本実施形態のPO微多孔膜は、PO微多孔膜の膜幅方向(TD)のTMA測定により得られる熱機械分析一次微分曲線において、ポリオレフィン微多孔膜の融点Tmより10℃低い温度(Tm−10℃)未満の領域(以下、「領域I」ともいう)における微分値の最大値が、0.1以下である。ここで、「熱機械分析一次微分曲線」とは、縮応力と温度からなる熱機械分析曲線(以下、「TMA曲線」ともいう)の一次微分した曲線である。
(領域Iにおける微分値の最大値)
領域Iにおける微分値の最大値は、0.1以下であり、好ましくは0.075以下であり、より好ましくは0.05以下ある。また、領域Iにおける微分値の最大値の下限は、特に限定されないが、0以上である。
TMA測定においては、サンプルの長手方向がTDに平行となるように15mm×3mmに切り出したサンプルを用いる。「TD」とは、押出工程における長手方向(原料樹脂吐出方向及び機械方向)をMD(以下、「MD」と略記)とした時にMDに直行する方向のことを指す(以下、「TD」と略記)。このサンプル(PO微多孔膜)を長手方向に10mm幅でチャックに固定し、初期荷重を0.0049N(0.5gf)とし、定長モードにて、30℃から10℃/minの速度で250℃まで昇温する。この時、チャッキングした試験片は定変位の状態で把持し、1秒の間隔で各温度における応力の測定を行う。得られたデータより温度と収縮応力の関係示すTMA曲線を描き、さらに、応力値を温度で微分することによりTMA一次微分曲線を得る。TMA一次微分曲線は温度上昇における膜の収縮状態を示しており、TMA曲線の一次微分値が大きいことは、その温度における収縮力が増加の傾向にあることを示している。
領域Iにおける微分値の最大値が上記の範囲であることにより、PO微多孔膜が高温下に曝された場合であっても、シャットダウン温度に達するまで収縮力が増加していないことを示す。すなわち、シャットダウン温度前において収縮により電極が露出することによる内部短絡が起こりにくいことを示す。そのため、領域Iにおける微分値の最大値が上記範囲であることにより、熱暴走時や高温下に曝された場合においても発火や爆発の危険性が低く、高い安全性を担保することができる。当該効果は、オーブン試験等の耐熱安全性試験において確認することができる。さらに、領域Iにおける微分値の最大値が上記範囲であることにより、シャットダウン温度に達するまで収縮力の増加が起きず収縮による閉孔がおこらないため、イオン伝導経路の減少が起こらず、セル抵抗の上昇が抑えられる。そのため、高温下における電池性能、特にサイクル特性を良好に保つことができる。PO微多孔膜の融点TmとはDSC測定(示差走査熱量測定、Differential Scanning Calorimetric)における2回目の昇温の最大ピーク値が示す温度を指す。
領域Iにおける微分値の最大値は、一次延伸倍率、一次延伸温度を調整することにより高く制御することができ、熱処理緩和倍率と固定温度を調整することと抽出工程前後の最大歪速度比率を調整することにより低く制御することができる。
(領域IIにおける微分値の最大値)
また、PO微多孔膜の融点Tm−10℃より低い温度以上、融点Tm未満の間の領域(以下、「領域II」ともいう。)におけるTMA一次微分曲線の微分値の最大値は、好ましくは0.15以上であり、より好ましくは0.2以上であり、さらに好ましくは0.26以上である。領域IIにおけるTMA一次微分曲線の微分値の最大値が上記範囲であることにより、PO微多孔膜が高温下に曝され、融点Tmに達した場合、PO微多孔膜の収縮力が瞬時に増加し、より速やかに閉孔がおこりシャットダウンする傾向にある。これにより高い耐熱安全性を担保することができる傾向にある。シャットダウン温度に達した際、瞬時にシャットダウンが起こることにより、部分的にイオン伝導経路が形成されてしまうことにより電極反応が部分的に活発になり、熱暴走の起点となってしまうことをより抑制できる傾向にある。なお、領域IIにおける微分値の最大値の上限は、特に限定されないが、0.8以下が好ましい。
領域IIにおける微分値の最大値は、領域Iにおける微分値の最大値と同様の方法により測定することができる。領域IIにおける微分値の最大値は、延伸温度を下げるすることにより高く制御することができ、抽出工程前後の最大歪速度比率を調整することにより低く制御することができる。
(領域IIIにおける微分値の最大値)
さらに、PO微多孔膜の融点Tm以上、融点Tm+5℃未満の間の領域(以下、「領域III」ともいう。)におけるTMA一次微分曲線の微分値の最小値は、0.2以上であり、より好ましくは0.22以上であり、さらに好ましくは0.23以上である。領域IIIにおける微分値の最大値が上記範囲であることにより、PO微多孔膜が融点以上の高温下に曝され、シャットダウンが開始された際において、収縮応力が継続的に増加し、イオン電導経路の遮断がより確実なものになり、高温下での発火、爆発のような危険性がより低減される傾向にある。なお、領域IIIにおける微分値の最大値の上限は、特に限定されないが、0.8以下が好ましい。
領域IIIにおける微分値の最大値は、領域Iにおける微分値の最大値と同様の方法により測定することができる。領域IIIにおける微分値の最大値は、抽出前後の最大歪速度比率大きくすることにより高く制御することができる。
本実施形態におけるPO微多孔膜のTD方向の動摩擦係数は、好ましくは0.4以下であり、より好ましくは0.3以下であり、さらに好ましくは0.25以下である。TD方向の動摩擦係数が上記範囲にあるPO微多孔膜は、電池作製工程において、捲回工程におけるピン抜け不良の低減により効果を発揮する傾向にある。ここで、「ピン抜け不良」とは、捲回時の巻き芯である捲回ピンを捲回体から引き抜く際にセパレータが捲回ピンに纏わりついてしまうことを指す。なお、TD方向の動摩擦係数の下限は、特に限定されず、0以上である。TD方向の動摩擦係数は、延伸温度を下げることにより高く制御することができ、熱処理固定温度を高くすることにより低く制御することができる。TD方向の動摩擦係数は、また、実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態におけるPO微多孔膜のMD及びTD引張強度(長手方向引張強度と膜幅方向引張強度)は、共に、好ましくは1500kg/cm2以上であり、より好ましくは2000kg/cm2以上であり、さらに好ましくは2300kg/cm2以上である。MD及びTD引張強度が上記範囲にあるPO微多孔膜は、電池衝撃試験などにおいて変形をより受けにくくなる傾向にある。これにより、電池の衝撃が加わった際に破膜等による内部短絡が起こらない点で有利である。なお、PO微多孔膜のMD及びTD引張強度の上限は、共に、4000kg/cm2以下であることが好ましい。MD及びTD引張強度は、総延伸倍率を大きくすることにより高く制御することができ、延伸倍率を小さくすることにより低く制御することができる。また、MD及びTD引張強度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態におけるPO微多孔膜の膜厚12μm換算透気度は、好ましくは150秒/100cc以下であり、より好ましくは120秒/100cc以下であり、さらに好ましくは100秒/100cc以下である。膜厚12μm換算透気度が上記範囲にあるPO微多孔膜は、イオン透過性が良好であるため出力特性及びサイクル特性により優れる傾向にある。なお、PO微多孔膜の膜厚12μm換算透気度の下限は、特に限定されず、0秒/100cc以上である。膜厚12μm換算透気度は、気孔率を低くすることにより高く制御することができ、透気度を高くすることにより低く制御することができる。また、膜厚12μm換算透気度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態におけるPO微多孔膜の膜厚は、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは6μm以上であり、さらに好ましくは8μm以上である。膜厚が上記範囲にあるPO微多孔膜は、衝突等の衝撃が加わった際に破膜しないための強度を保つことができる傾向にある。また、PO微多孔膜の膜厚は、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは18μm以下であり、さらに好ましくは15μm以下である。また、膜厚が上記範囲にあるPO微多孔膜は電池とした際に体積当たりの電極捲回量を増やすことが可能であり高容量化に効果を発揮する傾向にある。膜厚は、実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態におけるPO微多孔膜の気孔率は、特に限定されないが、出力特性の点から、好ましくは30%以上であり、より好ましくは40%以上であり、さらに好ましくは45%以上である。また、PO微多孔膜の気孔率は、耐破膜性の点から、好ましくは70%以下であり、より好ましくは65%以下であり、さらに好ましくは60%以下である。気孔率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態におけるPO微多孔膜の突刺強度は、特に限定されないが、機械的強度の点から、好ましくは2N以上であり、より好ましくは3N以上であり、さらに好ましくは4N以上である。
〔ポリオレフィン微多孔膜の製造方法〕
本実施形態のPO微多孔膜の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂及び孔形成材料を含む樹脂組成物を溶融混練して押出す押出工程(a)と、前記工程(a)で得られた押出物をシート状に成形するシート成形工程(b)と、前記工程(b)で得られたシート状成形物を、少なくとも一回、少なくとも一軸方向に延伸する一次延伸工程(c)と、前記工程(c)で得られた一次延伸膜から孔形成材料を抽出する抽出工程(d)と、前記工程(d)で得られた一次延伸膜を、少なくとも一軸方向に延伸する二次延伸工程(e)と、前記工程(e)で得られた二次延伸膜を、所定の温度で熱固定する熱固定工程(f)と、を有する方法が挙げられる。
上記PO微多孔膜の製造方法により、リチウムイオン二次電池およびその他の電気化学デバイス用セパレータとして用いる場合に高温下での性能に優れ、且つ、高い耐熱安全性を付与できる、PO微多孔膜を提供することができる。なお、本実施形態のPO微多孔膜の製造方法は、上記製造方法に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
〔押出工程(a)〕
押出工程(a)は、ポリオレフィン樹脂及び孔形成材料を含む樹脂組成物を溶融混練して押出す工程である。なお、押出工程(a)においては、必要に応じて他の成分を混合してもよい。他の成分としては、特に限定されないが、例えば、無機材等が挙げられる。
(ポリオレフィン樹脂)
上記工程(a)の押出工程における溶融混練に用いられるポリオレフィン樹脂(以下、「PO」ともいう。)としては、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン等のポリオレフィンの単独重合体;エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及びノルボルネンよりなる群から選ばれる少なくとも2つのモノマーを重合して得られる共重合体等が挙げられる。上記単独重合体としては、エチレン又はプロピレンの単独重合体が好ましい。
上記POは、特に限定されず、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。POを2種以上を用いる場合、2種以上のPOを予め混合した混合物とした後、孔形成材料等の他の成分と混合してもよいし、各種のPOを他の成分に別々に添加して混合物とした後、それら混合物同士を混合して用いてもよい(以下、「混合物」との記載は、前記両方の場合を包含することがある。)。2種以上のPOを用いることにより、セパレータのヒューズ温度及び短絡温度の制御が容易とし、高温サイクル特性、オーブン試験における耐熱性を良好にする観点から好ましい。例えば、粘度平均分子量(以下「Mv」と略記することがある。)500,000以上の超高分子量POとMv500,000未満のPOとの混合物は、その適度な分子量分布により、セパレータの強度と透過性とを両立し、出力特性、衝突試験における耐衝撃性を良好にする観点からより好ましい。
PO微多孔膜全体のMvは、POを単独で使用する場合も、2種以上を併用する場合も、好ましくは100,000〜1,200,000であり、より好ましくは300,000〜800,000である。PO微多孔膜全体のMvが100,000以上であることにより、領域IIにおけるTMA一次微分値が大きくなる傾向にあり、衝突試験、オーブン試験における耐熱性が向上する傾向にある。また、PO微多孔膜全体のMvが1,200,000以下であることにより、領域IにおけるTMA一次微分値が小さくなる傾向にあり高温サイクル特性が良好となる傾向にある。また、微多孔膜中におけるPO樹脂の配向が抑制され、微多孔膜全体の均一性を発現し易い傾向にある。
本実施形態においては、衝突試験、オーブン試験の結果を向上させる観点から、ポリオレフィン樹脂としてポリエチレン及びポリプロピレンの混合物を用いることが好ましい。
ポリエチレンの含有量は、ポリオレフィン樹脂の総量に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上である。ポリエチレンの含有量が上記範囲内であることにより、セパレータのヒューズ機能がより向上する傾向にあり、衝突試験、オーブン試験における耐熱安全性を向上させることが出来る。ポリエチレンの含有量の上限は、特に限定されないが、100質量%以下である。
また、ポリプロピレンの含有量は、ポリオレフィン樹脂の総量に対して、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上である。160℃付近でポリプロピレンの融解による吸熱が起こる。そのため、ポリプロピレンの含有量が上記範囲内であることにより、電池内部において、短絡による局所的発熱が生じたにおいて、高温サイクル特性が向上し、さらに衝突試験、オーブン試験等の耐熱安全性がより向上する傾向にある。また、ポリプロピレンの含有量は、ポリオレフィン樹脂の総量に対して、好ましくは50質量以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。ポリプロピレンの含有量が50質量以下であることにより、セパレータのシャットダウン機能がより向上する傾向にある。
POの配合割合は特に限定されないが、POと孔形成材料(可塑剤)と必要に応じて配合される無機材との合計質量に対して、好ましくは1〜60質量%、より好ましくは10〜40質量%である。
(孔形成材料)
孔形成材料とは、可塑剤、及び必要に応じて配合する無機材のことを指し、後の(d)抽出工程で孔形成材料を除去した際に微多孔膜の孔となる部分に相当する材料である。
可塑剤としては、特に限定されないが、ポリオレフィンの融点以上において均一溶液を形成し得る不揮発性溶媒を用いることが好ましい。このような不揮発性溶媒の具体例としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス等の炭化水素類;フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル等のエステル類;オレイルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。可塑剤の中でも、流動パラフィンは、ポリオレフィン樹脂がポリエチレン又はポリプロピレンである場合には、これらとの相溶性が高く、溶融混練物を延伸しても樹脂と可塑剤との界面剥離が起こり難く、均一な延伸を実施し易くなる傾向にあるため、好ましい。なお、これらの可塑剤は、抽出後、蒸留等の操作により回収して再利用してよい。
ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤の比率は、これらを均一に溶融混練して、シート状に成形できる範囲であれば特に限定はない。例えば、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤とからなる組成物中に占める可塑剤の質量分率は、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%である。可塑剤の質量分率が90質量%以下であると、溶融成形時のメルトテンションが不足し難く、成形性が向上する傾向にある。一方、可塑剤の質量分率が20質量%以上であると、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤との混合物を高倍率で延伸した場合でもポリオレフィン鎖の切断が起こらず、セパレータに必要な均一かつ微細な孔構造を形成し易く、強度も増加し易い。
無機材としては、特に限定されず、例えば、アルミナ、シリカ(珪素酸化物)、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス;ガラス繊維等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、電気化学的安定性の観点から、シリカ、アルミナ、及びチタニアより成る群から選択される1種以上が好ましい。
無機材の配合割合は、特に限定されないが、例えば、POと無機材との合計質量に対して、良好な隔離性を得る観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、高い強度を確保する観点から、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。
無機材は孔形成材として使用することもできるが、耐熱性向上の観点から、孔形成材として使用せずに、PO微多孔膜に含有させることも可能である。
(任意の添加剤)
工程(a)において、POを含む樹脂組成物には、任意の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂以外の重合体;フェノール系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物等の酸化防止剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類;紫外線吸収剤;光安定剤;帯電防止剤;防曇剤;着色顔料等が挙げられる。これらの添加剤の総添加量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
工程(a)における混練の方法としては、特に限定されないが、例えば、原材料の一部又は全部を必要に応じてヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等を用いて予め混合した後、全ての原材料を、一軸押出機、二軸押出機等のスクリュー押出機;ニーダー;ミキサー等により溶融混練する方法が挙げられる。
本実施形態では、混練時において、特に限定されないが、原料のPOに酸化防止剤を所定の濃度で混合した後、それらの混合物の周囲を窒素雰囲気に置換し、窒素雰囲気を維持した状態で溶融混練を行うことが好ましい。溶融混練時の温度は、160℃以上が好ましく、180℃以上が更に好ましい。また、その温度は300℃未満が好ましい。
工程(a)においては、上記混練を経て得られた混練物が、T型ダイ、環状ダイ等の押出機により押し出される。このとき、単層押出しであってもよく積層押出しであってもよい。押出しの際の諸条件は特に限定されず、例えば公知の方法を採用できる。
〔シート成形工程(b)〕
シート成形工程(b)は、押出工程(a)で得られた押出物をシート状に成形する工程である。シート成形工程(b)により得られるシート状成形物は、単層であってもよく、積層であってもよい。シート成形の方法としては、特に限定されないが、例えば、押出物を圧縮冷却により固化させる方法が挙げられる。圧縮冷却方法としては、特に限定されないが、例えば、冷風、冷却水等の冷却媒体に押出物を直接接触させる方法;冷媒で冷却した金属ロール、プレス機等に押出物を接触させる方法等が挙げられる。このなかでも、冷媒で冷却した金属ロール、プレス機等に押出物を接触させる方法が、膜厚制御が容易な点で好ましい。この場合の冷却温度は、押出物が固化する温度であれば特に限定されないが、例えば、20〜90℃が好ましい。
〔一次延伸工程(c)〕
一次延伸工程(c)は、シート成形工程(b)で得られたシート状成形物を、少なくとも一回、少なくとも一軸方向に延伸する工程である。この延伸工程(次の抽出工程(d)より前に行う延伸工程)を「一次延伸」と呼ぶこととし、一次延伸によって得られた膜を「一次延伸膜」と呼ぶこととする。一次延伸では、シート状成形物を、少なくとも一方向へ延伸することができ、MD及びTDの両方向で行ってもよいし、MD又はTDの片方だけ行ってもよい。
一次延伸の延伸方法としては、特に限定されないが、例えば、ロール延伸機による一軸延伸;テンターによるTD一軸延伸;ロール延伸機及びテンター、又は複数のテンターの組み合わせによる逐次二軸延伸;同時二軸テンター又はインフレーション成形による同時二軸延伸等が挙げられる。
一次延伸のMD及び/又はTDの延伸倍率は、好ましくは2倍以上であり、より好ましくは3倍以上である。一次延伸のMD及び/又はTDの延伸倍率が上記範囲内であることにより、得られるPO微多孔膜の強度がより向上する傾向にある。また、一次延伸のMD及び/又はTDの延伸倍率は、好ましくは10倍以下であり、より好ましくは5倍以下である。一次延伸のMD及び/又はTDの延伸倍率が上記範囲内であることにより、延伸破断がより抑制される傾向にある。二軸延伸を行う際は、逐次延伸でも同時二軸延伸でもよいが、各軸方向の延伸倍率は、それぞれ、好ましくは2倍以上10倍以下であり、より好ましくは3倍以上5倍以下である。
一次延伸温度は、特に限定されず、PO組成物に含まれる原料樹脂組成及び濃度を参照して選択することが可能である。延伸温度は、過大な延伸応力による破断を防ぎ、強度と熱収縮をバランスさせる観点からPO樹脂の融点Tmの融点の範囲(Tm−30〜Tm℃)であることが好ましい。PO微多孔膜の主要組成樹脂がポリエチレンの場合、延伸温度は110℃以上であることが好ましく、微多孔膜の強度を高める観点から130℃以下であることが好ましい。具体的には、延伸温度は、好ましくは100〜135℃であり、より好ましくは110〜130℃であり、さらに好ましくは115〜129℃である。
〔抽出工程(d)〕
抽出工程(d)は、一次延伸工程(c)で得られた一次延伸膜から孔形成材料を抽出して、多孔膜を得る工程である。孔形成材を除去する方法としては、例えば、抽出溶剤に一次延伸膜を浸漬して孔形成材を抽出し、充分に乾燥させる方法等が挙げられる。孔形成材を抽出する方法は、バッチ式及び連続式のいずれであってもよい。また、多孔膜中の孔形成材、特に可塑剤の残存量は、多孔膜全体の質量に対して1質量%未満にすることが好ましい。
孔形成材を抽出する際に用いられる抽出溶剤としては、ポリオレフィン樹脂に対して貧溶媒で、かつ孔形成材可塑剤に対して良溶媒であり、沸点がポリオレフィン樹脂の融点より低いものを用いることが好ましい。このような抽出溶剤としては、特に限定されないが、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン等の非塩素系ハロゲン化溶剤;エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が挙げられる。なお、これらの抽出溶剤は、蒸留等の操作により回収して再利用してよい。また、孔形成材として無機材を用いる場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を抽出溶剤として用いることができる。なお、抽出の順序、方法、及び回数については、特に制限はない。
〔二次延伸工程(e)〕
二次延伸工程(e)は、抽出工程(d)で得られた一次延伸膜を、少なくとも一軸方向に延伸する工程である。この延伸工程(抽出工程(d)の後に行う延伸工程)を「二次延伸」と呼ぶこととし、二次延伸によって得られた膜を「二次延伸膜」と呼ぶこととする。二次延伸では、工程(d)の抽出工程を経て得られた多孔膜を、少なくとも一方向へ延伸することができ、MD及びTDの両方向で行ってもよいし、MD又はTDの片方だけ行ってもよい。
二次延伸のMDの延伸倍率は、好ましくは1.1倍以上であり、より好ましくは2.0倍以上であり、さらに好ましくは3.0倍以上である。また、二次延伸のTDの延伸倍率は、好ましくは1.1倍以上であり、より好ましくは1.5倍以上であり、さらに好ましくは2.0倍以上である。二軸方向に延伸する場合は、MD及びTD少なくともどちらかの方向で、1.1倍以上が好ましく、2.0倍以上延伸するのがより好ましい。二次延伸の延伸倍率が上記範囲であることにより、領域IにおけるTMA一次微分曲線の微分値の低減と、領域IIにおけるTMA一次微分曲線の微分値の増大とをバランスすることができる。
また、本実施形態の延伸工程には、一次延伸と二次延伸とがあるが、両工程を経た後の最終的な各軸方向の総延伸倍率は、それぞれ、好ましくは3倍以上であり、より好ましくは5倍以上であり、さらに好ましくは10倍以上である。また、工程(c)及び工程(e)の両工程を経た後の最終的な総面積延伸倍率は、好ましくは9倍以上であり、より好ましくは16倍以上であり、さらに好ましくは50倍以上である。総延伸倍率及び総面積延伸倍率が上記範囲内であることにより、得られるPO微多孔膜の強度及び透過性がより向上する傾向にある。また、寸法安定性、及び延伸時の破断防止の点から、各軸方向の総延伸倍率は、好ましくは20倍未満であり、総面積倍率は、好ましくは200倍以下である。
本実施形態の延伸工程には、一次延伸と二次延伸とがあるが、各延伸工程における最大歪速度比(一次延伸最大歪速度/二次延伸最大歪速度)は、好ましくは0.4以下であり、より好ましくは0.3以下であり、さらに好ましくは0.2以下である。最大歪速度比が上記の範囲にある事は、理由は明確になってはいないがPO微多孔膜の融点−10℃未満のTMA曲線の微分値の低減、及び、融点+5℃未満の領域におけるTMA曲線の微分値の増大に効果的である。歪速度は以下のように求める。
歪速度 (%/秒)=(延伸倍率−1)×100÷延伸時間(秒)
延伸時間(秒) =延伸距離(m)÷延伸速度(m/秒)
各延伸工程において、多段階で延伸を行う場合、歪速度が一定の値をとらない事がある。その場合は歪速度が最大となる段階の歪速度を当該延伸工程における最大歪速度とする。例えば、複数の段数を有するロール延伸機を用いて延伸を行った場合、歪速度が最大となるロール間距離及びロール間速度を延伸距離、延伸速度とし最大歪速度を算出する。
二次延伸温度は、特に限定されず、PO組成物に含まれる原料樹脂組成及び濃度を参照して選択することが可能である。延伸温度は、過大な延伸応力による破断を防ぐ観点から、(PO微多孔膜の融点−30℃)〜主要組成樹脂の融点の範囲であることが好ましい。PO微多孔膜の主要組成樹脂がポリエチレンの場合、延伸温度は110℃以上であることが好ましく、微多孔膜の強度を高める観点から130℃以下であることが好ましい。延伸温度はより好ましくは115〜129℃、更に好ましくは118〜127℃である。
また、二次延伸することにより、孔の拡大が起こり、気孔率が増加する。二次延伸膜の気孔率は50%以上が好ましく、60%以上がさらに好ましい。二次延伸膜の気孔率が50%以上であることは次工程である工程(f)において熱固定温度を高く設定でき、領域IにおけるTMA一次微分曲線の微分値を減少できる傾向にある。また二次延伸膜の気孔率は強度の観点から90%以下が好ましい。
〔熱固定工程(f)〕
熱固定工程(f)は、二次延伸工程(e)で得られた二次延伸膜を、所定の温度で熱固定する工程である。この際の熱処理の方法としては、特に限定されないが、テンターやロール延伸機を利用して、延伸及び緩和操作を行う熱固定方法が挙げられる。
熱固定工程(f)における延伸操作は、MD及びTDのうちの少なくとも1つの方向にPO微多孔膜を延伸する操作であり、MD及びTDの両方向で行ってもよいし、MD又はTDの片方だけ行ってもよい。熱固定工程(f)におけるMD及びTDの延伸倍率は、それぞれ、好ましくは1.5倍以上であり、より好ましくは1.6倍以上である。なお、熱固定工程(f)におけるMD及びTDの延伸倍率の上限は、特に限定されないが、5倍以下が好ましい。延伸倍率が上記範囲内であることにより、融点近傍での収縮応力が残存し、領域II及び領域IIIにおけるTMA一次微分曲線の微分値がより増大する傾向にある。また、延伸倍率が上記範囲内であることにより、多孔膜の強度及び気孔率がより向上する傾向にある。
この延伸操作における延伸温度は、特に限定されないが、PO微多孔膜の融点Tmより15℃低い温度以上でことが好ましく、PO微多孔膜の融点Tmより10℃低い温度から10℃高い温度の範囲(Tm−10℃〜Tm+10℃)がより好ましく、PO微多孔膜の融点Tmより5℃低い温度から8℃高い温度の範囲(Tm−5℃〜Tm+8℃)がより好ましい。延伸温度が上記範囲内であることにより、得られるPO微多孔膜の熱収縮率がより低減し、気孔率及び強度がより向上する傾向にある。
熱固定工程(f)における緩和操作は、MD及びTDのうちの少なくとも1つの方向にPO微多孔膜を縮小する操作のことであり、MD及びTDの両方向で行ってもよいし、MD又はTDの片方だけ行ってもよい。熱固定工程(f)における緩和率は、好ましくは1.0以下であり、より好ましくは0.97以下であり、さらに好ましくは0.95以下である。熱固定工程(f)における緩和率が1.0以下であることにより、オーブン試験における耐熱性がより向上する傾向にある。また、緩和率は膜品位の観点から0.8以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.85以上とすることが緩和温度を高める観点から好ましい。また、緩和率が上記範囲であることは、領域IのTMA一次微分曲線の微分値の低減と、領域II、及び領域IIIにおけるTMA一次微分曲線の微分値の増大とをバランスさせることができる。ここで「緩和率」とは、緩和操作後の膜の寸法を緩和操作前の膜の寸法で除した値のことであり、MD及びTDの双方を緩和した場合は、MDの緩和率とTDの緩和率を乗じた値のことである。
この緩和操作における緩和温度は、特に限定されないが、PO微多孔膜Tmの融点より10℃高い温度以下であることが好ましく、PO微多孔膜の融点Tmより−5℃から+8℃の範囲(Tm−5℃〜Tm+8℃)がより好ましく、PO微多孔膜の融点Tmより−3℃から+5℃の範囲(Tm−3℃〜Tm+5℃)が更に好ましく、PO微多孔膜の融点Tmより−1℃から+3℃の範囲(Tm−1℃〜Tm+3℃)が特に好ましい。緩和操作における温度が上記の範囲であることで延伸工程による残留応力を除去することができるだけでなく、分子鎖の配向を強固に固定化することができるため、領域IにおけるTMA一次微分曲線の一次微分値を小さくすることができる。また、緩和操作における温度が上記の範囲であることはPO微多孔膜の表面形態を粗面化させ動摩擦係数を小さくする観点からも好ましい。
〔他の工程〕
本実施形態のPO微多孔膜の製造方法は、上記工程(a)〜(f)以外の他の工程を含むことができる。他の工程としては、特に限定されないが、例えば、上記熱固定の工程に加え、積層体であるPO微多孔膜を得るための工程として、単層体であるPO微多孔膜を複数枚重ね合わせる積層工程が挙げられる。また、本実施形態のPO微多孔膜の製造方法は、PO微多孔膜の表面に対して、電子線照射、プラズマ照射、界面活性剤の塗布、化学的改質等の表面処理を施す表面処理工程を含んでもよい。更には、上記の無機材を、PO微多孔膜の片面又は両面に塗工して無機材層を備えたPO微多孔膜を得てもよい。
更に、上記の後加工工程の後に、微多孔膜を捲回したマスターロールに対して、所定の温度下においてエージング処理を施した後、該マスターロールの巻き返し操作を行うこともできる。これにより、より熱的安定性の高いPO微多孔膜を得易くなる傾向にある。上記の場合、マスターロールをエージング処理する際の温度は、特に限定されないが、好ましくは35℃以上であり、より好ましくは45℃以上であり、さらに好ましくは60℃以上である。また、PO微多孔膜の透過性保持の観点から、マスターロールをエージング処理する際の温度は、120℃以下が好ましい。エージング処理に要する時間は、特に限定されないが、24時間以上であると、上記効果が発現し易いため好ましい。
〔用途〕
上記ポリオレフィン微多孔膜は、蓄電デバイス用セパレータ、特にリチウムイオン電池用セパレータに好適に用いることができる。本実施形態の蓄電デバイス用セパレータは、上記ポリオレフィン微多孔膜からなる。また、本実施形態の蓄電デバイスは、上記ポリオレフィン微多孔膜を備える。
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施形態をより具体的に説明する。しかし、本実施形態はその要旨を超えない限り、下記の実施例に限定されるものではない。
(1)TMA測定(熱機械分析:Thermomechanical Analysis)
ポリオレフィン微多孔膜のTMA測定は、島津製作所TMA50(商標)を用いて行った。まず、TD方向に約15mm、MD方向に幅3mmに切り出したサンプル(ポリオレフィン微多孔膜)を、チャック間距離(TD方向)が10mmとなるようにチャックに固定し、専用プローブにセットした。初期荷重を0.0049N(0.5gf)とし、定長モードにて30℃より10℃/minの速度にてプローブを250℃まで昇温させた。250℃まで到達する間、1秒間隔で温度と応力をサンプリングした。得られたデータに基づいて、温度と収縮応力の関係示すTMA曲線を作成した。なお、専用プローブとしては、引張型を用いた。
(2)TMA一次微分曲線:
TMA測定により得られた、温度と応力のデータからある時間nにおける応力の微分値Inを求めた。Inは下記の式で表され、Tn、Fnはそれぞれn秒の時の温度、応力を示し、Tn+1、Fn+1はそれぞれn+1秒の温度と応力を示す。
n=Fn+1−Fn/Tn+1−Tn
測定範囲における全てのTnを横軸にとり、Inを縦軸にとることでTMA測定における温度と応力の微分値の関係を示す曲線を得た。さらにInを5点区間の移動平均近似によりスムージングを行い、TMA一次微分曲線とした。
(3)DSC測定(示差走査熱量測定:Differential Scanning Calorimetric)
DSCは、島津製作所社製DSC60を使用して測定した。まず、セパレータを直径5mmの円形に打ち抜き、数枚重ね合わせて3mgとしたものを測定サンプルとして用いた。このサンプルを、直径5mmのアルミ製オープンサンプルパンに敷き、クランピングカバーを乗せ、サンプルシーラーによりアルミパン内に固定した。窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で30℃から200℃まで昇温し、200℃で5分ホールドした後、降温速度10℃/分で200℃から30℃まで降温した。続いて、30℃において5分間ホールドした後、再度、昇温速度10℃/分で30℃から200℃まで昇温した。この時の融解吸熱曲線において、極大となる温度をPO微多孔膜の融点とした。極大値が複数ある場合は、一番大きな融解吸熱曲線の極大値となる温度をPO微多孔膜の融点として採用した。
(4)引張破断強度(kg/cm2
引張試験機(島津オートグラフAG−A型)を用いて引張試験を行い、サンプル破断時の強度を、試験前のサンプル断面積で除し、引張破断強度(kg/cm2)とした。測定条件は、温度;23±2℃、サンプル形状;幅10mm×長さ100mm、チャック間距離;50mm、引張速度;200mm/minである。引張伸度(%)は、破断に至るまでの伸び量(mm)をチャック間距離(50mm)で除して、100を乗じることにより求めた。
(5)膜厚(μm)
東洋精機製の微小測厚器、KBM(商標)を用いて、室温(23±2℃)において、PO微多孔膜の膜厚を測定した。
(6)気孔率(%)
PO微多孔膜から10cm×10cm角を切り取ってサンプルを得、室温23±2℃におけるその体積(cm3)と質量(g)とを測定した。それらの値と膜密度(g/cm3)とから、PO微多孔膜の気孔率を次式により算出した。
気孔率(%)=(体積−質量/膜密度)/体積×100
なお、膜密度は0.95g/cm3の一定値と仮定して計算した。
(7)透気度(秒/100cc)
JIS P−8117に準拠し、ガーレー式透気度計(東洋精器(株)製、G−B2(商標))を使用して、室温23±2℃におけるPO微多孔膜の透気抵抗度(以下、透気度とも言う)を測定した。「透気度」とは、100ccの空気が、6.452cm2の試料面積を通過するのに要する時間(秒)を指す。また、膜厚12μm換算透気度は以下の式で求められる。
膜厚12μm換算透気度(秒/100cc)=透気度(秒/100cc)/膜厚(μm)*12μm
(8)動摩擦係数
カトーテック株式会社製、KES−SE摩擦試験機を用い、荷重50g、接触子面積10×10=100mm2(0.5mmφの硬質ステンレス線SUS304製ピアノ線を互いに隙間なく、かつ、重ならないように20本巻きつけたもの)、接触子送りスピード1mm/sec、張力6kPa、温度23℃、湿度50%の条件にて幅50mm×測定方向200mmのサンプルサイズをついてTDに3回測定し、その平均を求めた。なお、当該動摩擦係数の値は電池作成時に負極に接する面の値を用いた。
〔電池の製造方法〕
出力特性、サイクル特性、高温サイクル特性、ピン抜け性、衝突試験、オーブン試験は簡易な組電池を作成して行った。以下に組電池の作成方法と各特性の評価方法を示す。
a.正極の作製
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物LiCoO2、導電材としてグラファイト及びアセチレンブラックを、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びN‐メチルピロリドン(NMP)に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを正極集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔にダイコーターで塗布し、130℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。得られた成形体を57.0mm幅にスリットして正極を得た。
b.負極の作製
負極活物質として人造グラファイト、バインダーとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩とスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスとを精製水に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる銅箔にダイコーターで塗布し、120℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。得られた成形体を58.5mm幅にスリットして負極を得た。
c.非水電解液の調製
エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート:=1:1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF6を濃度1mol/Lとなるように溶解させて、非水電解液を調製した。
d.電池組立
正極、後述のPO微多孔膜及び負極を積層した後、常法により捲回電極体を作製した。なお、PO微多孔膜の厚みによって巻回数を調整した。得られた巻回電極体の最外周端部を絶縁テープの貼付により固定した。負極リードを電池缶に、正極リードを安全弁にそれぞれ溶接して、巻回電極体を電池缶の内部に挿入した。その後、非水電解液を電池缶内に5g注入し、ガスケットを介して蓋を電池缶にかしめることにより、外径18mm、高さ65mmの円筒型二次電池を得た。この円筒型二次電池を25℃雰囲気下、0.2C(定格電気容量の1時間率(1C)の0.2倍の電流)の電流値で電池電圧4.2Vまで充電し、到達後4.2Vを保持するようにして電流値を絞り始めるという方法で、合計3時間充電を行った。続いて0.2Cの電流値で電池電圧3.0Vまで放電し、そのときの電池容量をXmAhとした。
e.サイクル試験
上記のようにして組み立てた電池を用いて、(i)電流量0.5C、上限電圧4.2V
、合計8時間の定電流定電圧充電、(ii)10分間の休止、(iii)電流量0.5C、終止電圧2.5Vの定電流放電、(iv)10分間の休止、のサイクル条件で都合50回の充放電を行った。上記充放電処理は全て25℃の雰囲気下にてそれぞれ実施した。その後、上記電池容量XmAhに対する上記50サイクル目の放電容量の比を100倍することで、容量維持率(%)を求めた。なお、下記基準に即して評価した。
◎:容量維持率(%)が70%以上。
○:容量維持率(%)が50%以上70%未満。
△:容量維持率(%)が30%以上30%未満。
×:容量維持率(%)が30%未満。
f.高温サイクル試験
上記のようにして組み立てた電池を用いて、(i)電流量0.5C、上限電圧4.2V
、合計8時間の定電流定電圧充電、(ii)10分間の休止、(iii)電流量0.5C、終止電圧2.5Vの定電流放電、(iv)10分間の休止、のサイクル条件で都合50回の充放電を行った。上記充放電処理は全て90℃の雰囲気下にてそれぞれ実施した。その後、上記電池容量XmAhに対する上記50サイクル目の放電容量の比を100倍することで、容量維持率(%)を求めた。なお、下記基準に即して評価した。
◎:容量維持率(%)が70%以上。
○:容量維持率(%)が50%以上70%未満。
△:容量維持率(%)が30%以上30%未満。
×:容量維持率(%)が30%未満。
g.出力特性試験
上記のようにして組み立てた電池を25℃の恒温状態で放電終止電圧3Vまでの1C放電容量と5C放電容量を測定し、5C容量/1C容量を出力特性値とした。なお、下記基準に即して評価した。
◎:出力特性値が0.85以上。
○:出力特性値が0.75以上0.85未満。
△:出力特性値が0.65以上0.75未満。
×:出力特性値が0.5未満。
h.オーブン試験
上記のようにして組み立てた電池を用いて、充電後の電池を室温から150℃まで5℃/分で昇温し、150℃で所定の時間放置し、発火状況を確認した。なお、下記基準に即して評価した。
◎:放置時間1時間以上でも発火しなかったもの
○:放置時間30分〜1時間で発火したもの
△:放置時間10分〜30分で発火したもの
×:放置時間10分未満で発火したもの
i.衝突試験
上記のようにして組み立てた電池を用いて、直径15.8mmφのSUS棒を電池の長さ方向に垂直に配備させた後、高さ61cmの位置から、重さ9.1kgの重りを自由落下させて衝突させ、衝突後の電池の温度上昇や、発火状況の確認を5セルで実施した。なお、下記基準に即して評価した。
◎:5セル全てにおいて、表面温度上昇が30℃以下
○:1〜2セルにおいて、表面温度上昇が30℃超過80℃以下であり、他のセルの表面温度上昇が30℃以下
△:3〜5セルにおいて、表面温度上昇が30℃超過80℃以下であり、他のセルの表面温度上昇が30℃以下
×:1〜5セルにおいて、表面温度上昇が80℃超過、もしくはセルが発火。
j.ピン抜け性試験
上記のようにして作製した捲回電極体より捲回軸であるピンを手でひっぱり、捲回電極体より抜き終わった際の捲回姿からピン抜け特性(ピンに引っ張られ捲き姿が2mm以上ずれること)を確認した。捲回電極体100個を確認し、ピンに引っ張られ捲き姿が2mm以上ずれた捲回電極体の個数に基づいて、下記評価基準によりピン抜け性を評価した。
◎:ピンに引っ張られ捲き姿が2mm以上ずれた捲回電極体の個数が1個
○:ピンに引っ張られ捲き姿が2mm以上ずれた捲回電極体の個数が2〜4個
△:ピンに引っ張られ捲き姿が2mm以上ずれた捲回電極体の個数が5〜9個
×:ピンに引っ張られ捲き姿が2mm以上ずれた捲回電極体の個数が10個以上
[実施例1]
Mvが700,000であるホモポリマーのポリエチレン(融点:135.5℃)47.5質量部と、Mvが300,000であるホモポリマーのポリエチレン(融点:135.5℃)47.5質量部と、Mvが400,000であるポリプロピレン5質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られたPO混合物99質量部に、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、混合物を得た。得られた混合物を、窒素雰囲気下で二軸押出機へフィーダーにより供給した。また、流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-52/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。押し出される全混合物中に占める流動パラフィンの割合が65質量%、ポリマー濃度(以下、「PC」と略記することがある。)が35質量%となるように、フィーダー及びポンプの運転条件を調整した。次いで、これらを二軸押出機内で溶融混練した。
続いて、得られた溶融混練物を、冷却固化することにより、シート状成形物を得た。得られたシート状成形物をMDロール延伸機に導き、続いてTD一軸テンターに導き一次延伸膜を得た(一次延伸工程)。設定延伸条件は、MD倍率3倍、TD倍率3倍、及びMD延伸温度120℃、TD延伸温度117℃とした。次いで、得られた一次延伸膜を塩化メチレン槽に導き、十分に浸漬して、可塑剤である流動パラフィンを抽出除去した後、塩化メチレンを乾燥除去し、多孔膜を得た。
得られた多孔膜をMD一軸ロール延伸機に導き、続いてTD一軸テンターに導き二次延伸膜を得た(二次延伸工程)。この二次延伸の設定延伸条件は、MD4倍、TD倍率2倍、及びMD延伸温度120℃、TD延伸温度120℃とした。続いて、熱固定を行なうべく二次延伸膜をTD一軸テンターに導いた。なお、最大歪速度比(一次延伸最大歪速度/二次延伸最大歪速度)は、0.12であった。
熱固定工程として延伸温度127℃、延伸倍率1.9倍の延伸操作の後、緩和温度135.5℃、緩和率0.89倍の緩和操作を行った。得られたPO微多孔膜の各種特性を上記方法により評価した。結果を表1に示す。
[実施例2〜17、並びに比較例1〜4]
一次延伸倍率、一次延伸温度、二次延伸倍率、二次延伸温度、緩和温度、緩和率、それぞれ表1に示すように設定した以外は実施例1と同様にしてPO微多孔膜を得た。なお、表中に延伸倍率を記載していない場合はMD一軸ロール延伸機及びTD一軸テンターに通膜していない。得られたPO微多孔膜の各種特性を上記方法により評価した。結果を表2に示す。また、実施例2における熱機械分析一次微分曲線を図1に示す。
※Tm :DSC 2nd heat 最大ピーク温度(融点)
領域I :熱機械分析一次微分曲線におけるTm−10℃未満の範囲
領域II :熱機械分析一次微分曲線におけるTm−10℃以上、Tm未満の範囲
領域III:熱機械分析一次微分曲線におけるTm以上、Tm+5℃以下の範囲
本発明は、セパレータ、特にリチウムイオン電池用セパレータに好適なポリオレフィン微多孔膜として、産業上の利用可能性を有する。

Claims (11)

  1. ポリオレフィン微多孔膜の膜幅方向の熱機械分析測定より得られる、熱機械分析一次微分曲線において、
    前記ポリオレフィン微多孔膜の融点Tmより10℃低い温度(Tm−10℃)未満の領域における微分値の最大値が、0.1以下である、
    ポリオレフィン微多孔膜。
  2. 前記熱機械分析一次微分曲線において、
    前記ポリオレフィン微多孔膜の融点Tmより10℃低い温度(Tm−10℃)以上、前記ポリオレフィン微多孔膜の融点Tm未満の領域における微分値の最大値が、0.15以上である、
    請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  3. 前記熱機械分析一次微分曲線において、
    前記ポリオレフィン微多孔膜の融点Tmより10℃低い温度(Tm−10℃)未満の前記領域における微分値の最大値が、0.05以下である、
    請求項1または請求項2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  4. 前記熱機械分析一次微分曲線において、
    前記ポリオレフィン微多孔膜の融点Tmより10℃低い温度(Tm−10℃)以上、前記ポリオレフィン微多孔膜の融点Tm未満の領域における微分値の最大値が0.2以上である、
    請求項1〜3いずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  5. 前記熱機械分析一次微分曲線において、
    前記ポリオレフィン微多孔膜の融点Tm以上、前記ポリオレフィン微多孔膜の融点Tmより5℃高い温度(Tm+5℃)未満の領域における熱機械分析微分値の最小値が、0.2以上である、
    請求項1〜4いずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  6. 膜幅方向の動摩擦係数が、0.4以下である、
    請求項1〜5いずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  7. 長手方向引張強度と膜幅方向引張強度が、ともに1500kg/cm2以上である、
    請求項1〜6いずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  8. 膜厚12μm換算透気度が、150秒/100cc以下である、
    請求項1〜7いずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  9. 膜厚が、5μm以上20μm以下である、
    の請求項1〜8いずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  10. 請求項1〜9に記載のポリオレフィン微多孔膜からなる、蓄電デバイス用セパレータ。
  11. 請求項10に記載の蓄電デバイス用セパレータを備える、蓄電デバイス。
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